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1 定義一覧
定義 1.1 (極形式). z = a + bi, a, b ∈ Rを 0ではない複素数とする.実数 a, bのうちどちらかが 0ではないということと
√a2 + b2 ̸= 0 は同値であるから,
z = a+ bi =√
a2 + b2(
a√a2 + b2
+b√
a2 + b2i
)という変形が可能である.r =
√a2 + b2 および実数 θを方程式
cos θ =a√
a2 + b2, sin θ =
b√a2 + b2
でもって 2π×整数のずれを除いて間接的に定めると,z = r(cos θ + i sin θ) となる.このような表示を極形式表示という.
定義 1.2 (∞,−∞).
1. ∞は実数ではないが,すべての実数 aに対して a < ∞が成り立っていると約束する.
2. −∞は実数ではないが,すべての実数 aに対して a > −∞が成り立っていると約束する.
3. aが実数もしくは,±∞であることを強調するべく a ≤ ∞, a ≥ −∞, −∞ ≤ a ≤ ∞なる書き方をする.
定義 1.3 (上界). 集合Aにつき,次の条件を満たしているM ≤ ∞のことを上界という.
条件: a ∈ Aのときはいつでも a ≤ M が成り立つ. (1)
定義 1.4 (上限). 実数の連続性とは,任意の空でない集合 Aの上界には最小値M が存在するという性質である.すなわち,次のような実数M がひとつだけ定まる.
1. (M は上界である.)a ∈ Aのときに,a ≤ M が成り立つ.
2. (M は上界の最小値である.つまり,M より小さい上界は存在しない.)M ′ < Mとすると,a > M ′となる a ∈ Aが存在する.
この数M を supAと書く.
定義 1.5 (下界,下限). 空でない実数の部分集合 Aにつき,次の条件を満たしているm ≥ −∞のことを下界 (かかい)という.
a ∈ Aのときはいつでも a ≥ mが成り立つ. (2)
定義 1.6 (上に有界,下に有界,有界,非有界,数列の有界性). 実数の部分集合Aが与えられたとする.
1. 実数値である上界が存在するとき,Aを上に有界という.
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2. 実数値である下界が存在するとき,Aを下に有界という.
3. 上に有界かつ下に有界の集合を有界集合という.
4. 有界集合でない集合を非有界集合という.
5. 数列 {an}n∈Nが与えられたとき,A = {an}n∈Nとおいて得られるこれらの概念を数列が有界などという.
定義 1.7 (数列の記号).
1. 実数列は一般に無限,有限に応じて {an}Jn=1, {an}∞n=1などと書く.たとえば,10項からなる有限数列 a1, a2, a3, · · · , a10は {an}10n=1と表す.
2. 無限数列を {ak}∞k=1や {ak}∞k=1でもって表す.無限級数は∞∑n=1
anで表す.
定義 1.8 (単調数列). 実数列 {an}∞n=1が与えられたとする.
1. {an}∞n=1が単調増大であるとは,a1 ≤ a2 ≤ a3 ≤ · · · が成り立つことである.≤がすべて<に置き換わる場合は数列 {an}∞n=1が狭義単調増加という.
2. {an}∞n=1が単調減少であるとは,a1 ≥ a2 ≥ a3 ≥ · · · が成り立つことである.≥がすべて>に置き換わる場合は数列 {an}∞n=1が狭義単調減少という.
3. 単調増大数列,単調減少数列を総称して単調数列という.
定義 1.9 (数列の上限,下限,上極限,下極限). 実数列 {an}∞n=1が与えられたとする.
1. {an}∞n=1の上限,下限をsupn∈N
an := sup{an : n ∈ N}
infn∈N
an := inf{an : n ∈ N}
と定める.k = 1, 2, · · · に対してsupn≥k
an := sup{an : n ≥ k}
infn≥k
an := inf{an : n ≥ k}
なども同様である.
2. {an}∞n=1の上極限,下極限をlim supn→∞
an := infk∈N
(supn≥k
an
)= inf
{supn≥k
an : k ∈ N
}lim infn→∞
an := supk∈N
(infn≥k
an
)= sup
{infn≥k
an : k ∈ N}
と定義する.
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3. {an}∞n=1の極限を次のようにして定める.
(a) lim supn→∞
an = lim infn→∞
an ∈ R のときは
limn→∞
an = lim supn→∞
an = lim infn→∞
an (3)
と定める.
(b) lim infn→∞
an =
(lim supn→∞
an =
)∞ のときは
limn→∞
an = ∞ (4)
と定める.
(c) lim supn→∞
an =(lim infn→∞
an =)−∞ のときは
limn→∞
an = −∞ (5)
と定める.
もし,lim supn→∞
an ̸= lim infn→∞
an のときは, limn→∞
an は存在しないという.
定義 1.10 (ε-δ式の収束,コーシー列の (再)定義).
1. 無限数列 {ak}∞k=1が αに収束するとは,以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数 ϵに対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|an − α| ≤ ϵが成立する.
[注意] lim supn→∞
an = lim infn→∞
an と同値である.
2. 無限数列 {ak}∞k=1がコーシー列であるとは以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数 ϵに対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 n,mに対して,n,m > N ならば,|an − am| ≤ ϵが成立する.
[注意] lim supn→∞
an = lim infn→∞
an と同値である.しかし,コーシー列は収束
先を特定しないで収束列を表現できるので,よく使われる.
3. 無限数列 {ak}∞k=1が∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数K > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,an > K が成立する.
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[注意] lim infn→∞
an = ∞ と同値である.
4. 無限数列 {ak}∞k=1が−∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数K > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,an < −K が成立する.
[注意] lim supn→∞
an = −∞ と同値である.
定義 1.11 (複素数列の収束,発散). {an}∞n=1 を複素数列とする.
1.∞∑n=1
an が収束するとは, limN→∞
N∑n=1
an が複素数値として存在することと定める.
2.
∞∑n=1
an が絶対収束するとは,∞∑n=1
|an| が収束することと定める.
3.
∞∑n=1
an が条件収束するとは,∞∑n=1
an が収束しているが,絶対収束はしていないこ
とを意味する.
定義 1.12 (2重数列). 2重数列とは {am,n}∞m,n=1とm,nの 2つの文字で与えられる数列のことである.
定義 1.13 (有限集合,無限集合,可算集合,非可算集合). Aを集合とする.
1. Aが有限集合であるとは,自然数N ∈ Nが存在して,{1, 2, · · · , N}とAの間に全単射が存在することである.
2. Aが有限でないときにはAは無限集合という.
3. Aが可算集合であるとは,NとAの間に全単射が存在することである.
4. Aが有限,もしくは可算のときにAは高々可算であるという.
5. Aが可算でも有限でもないときにはAは非可算集合という.
定義 1.14 (Rn). Rnとは,実数の n個の対を集めてきて得られる集合のことである.したがって,x ∈ Rn とは実数 x1, x2, · · · , xn を用いて x = (x1, x2, · · · , xn)とあらわされることを意味する.以後,x = (x1, x2, · · · , xn)と書いたら,x1, x2, · · · , xn ∈ R および,x ∈ Rnを意味しているものとする.
定義 1.15 (Rn の演算,ユークリッド球). x = (x1, x2, · · · , xn), y = (y1, y2, · · · , yn),a ∈ Rとする.ε > 0とする.
1. 和を x+ y = (x1 + y1, x2 + y2, · · · , xn + yn)と定める.
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2. スカラー倍を a x = (a x1, a x2, · · · , a xn)と定める.
3. ノルムを ∥x∥ =√
x12 + x22 + · · ·+ xn2 =
√√√√ n∑k=1
xk2 と定める.(高校数学でいう
ところのベクトルの長さ)
4. ε > 0に対して,
B(x; ε) = {y ∈ Rn : ∥x− y∥ < ε}, B(x; ε) = {y ∈ Rn : ∥x− y∥ < ε} (6)
と定める.x = 0のときは,x;を省略して,B(ε), B(ε)と表す.
定義 1.16 (開集合,閉集合,有界集合). A ⊂ Rnとする.
1. Aが開集合であるとは,任意のx ∈ Rnに対して,ある ε > 0が存在して,B(x; ε) ⊂Aが成り立つことである.
2. Aが閉集合であるとは,Ac = {x ∈ Rn : xはAに属さない } が開集合であることを意味する.
3. Aが有界集合であるとは,R > 0が存在して,A ⊂ B(R)が成立することである.
4. Aの開集合とは,Aと Rnの開集合の共通部分として表される集合のことである.
定義 1.17 (写像). A ⊂ Rn,B ⊂ Rm とする.f : A → Bが写像であるとは,a ∈ Aに対して,f(a) ∈ Bが一つ定まっている事を言う.
定義 1.18 (写像による像集合,逆像集合). A ⊂ Rn,B ⊂ Rm とする.写像 f : A → Bが与えられたとする.
1. A0 ⊂ Aに対して,Bの部分集合を f(A0) = {f(a) ∈ B : a ∈ A0} と定める.
2. B0 ⊂ Bに対して,Aの部分集合を f−1(B0) = {a ∈ A : f(a) ∈ B0} と定める.
定義 1.19 (一般の関数の極限). aを含む開区間 I で定義された実数値関数 f に対して,
limx→a
f(x) = α (7)
であるとは,
infδ>0
(sup
x∈I, |x−a|<δ|f(x)− α|
)= 0 (8)
であることと定める.
定義 1.20 (Rnの 1点における写像の極限,連続性,連続写像). A ⊂ Rn とする.また,写像 f : A → Rmが与えられたとする.
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1. a ∈ Aとする.lim
x→a, x∈Af(x) = α (9)
とは,
infδ>0
(sup
∥x−a∥<δ, x∈A∥f(x)− α∥
)= 0
が成り立つことである.
2. a ∈ Aとする.f が aで連続であるとは,
infδ>0
(sup
x∈A, ∥x−a∥<δ∥f(x)− f(a)∥
)= 0 (10)
つまり,lim
x→a, x∈Af(x) = f(a) (11)
が成り立つことである.
3. f がAで連続であるとは,f の各点で連続であることである.
定義 1.21 (閉包). A ⊂ Rnとする.
1. Aの閉包AはA := {x ∈ Rn : すべての ε > 0に対してB(x, ε)∩A ̸= ∅} で与えられる.
2. Aの開核は Int(A) = (Ac)cで与えられる.
定義 1.22 (一様収束). 区間 I で定義された実数値関数列 {fn}∞n=1が f に一様収束するとは,
limn→∞
(supx∈I
|f(x)− fn(x)|)
= 0 (12)
が成り立つことである.
定義 1.23 (広義一様収束). 開集合 U 上で定義された実数値関数列 {fn}∞n=1 が広義一様収束するとは任意の閉球 Bで U に含まれるもののうち B上で一様収束することと定義する.
定義 1.24 (被覆,有限被覆,部分被覆).
1. {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn とは
(a) Λは何らかの集合で
(b) λ ∈ Λに対して,Rn の部分集合 Uλが与えられている
ことである.このとき,{Uλ}λ∈Λ を Rnの部分集合族という.
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2. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn に対して,∪λ∈Λ
Uλ = {x ∈ Rn : 少なくとも一つの λ ∈ Λにつき,x ∈ Uλ} (13)
と定める.
3. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn に対して,∩λ∈Λ
Uλ = {x ∈ Rn : すべての λ ∈ Λにつき,x ∈ Uλ} (14)
と定める.
4. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn がAの被覆であるとは,
A ⊂∪λ∈Λ
Uλ (15)
が成立することである.
(a) {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn が開被覆とは被覆であり,それぞれの集合Uλが開集合であることをさす.
(b) {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn が有限被覆であるとは,Λが有限であることを意味する.
(c) Λ0 ⊂ Λとする.このとき,{Uλ}λ∈Λ0 は {Uλ}λ∈Λ の部分被覆という.
定義 1.25 (コンパクト性). Aがコンパクトであるとは,Aの任意の開被覆が有限部分被覆を持つことである.
定義 1.26 (一様連続). A ⊂ Rn とする.また,写像 f : A → Rmが与えられたとする.f がAで一様連続であるとは,
limδ↓0
(sup
x,x′∈A, |x′−x|<δ∥f(x′)− f(x)∥
)= 0 (16)
が成り立つことである.
定義 1.27 (連結集合,不連結集合,弧状連結集合,領域). A ⊂ Rnとする.
1. Aが不連結であるとは,次の条件を満たしている開集合U, V が存在することである.
A = (A ∩ U) ∪ (A ∩ V ), (A ∩ U) ∩ (A ∩ V ) = ∅, (A ∩ U), (A ∩ V ) ̸= ∅. (17)
つまり,Aが不連結であるとは,Aの空ではない開集合の互いに交わらない和として表されることである.
2. Aが連結であるとは,Aが不連結ではないことである.
3. Aが弧状連結であるとは,任意の p, q ∈ Aに対して連続関数 γ : [0, 1] → Aが存在して,γ(0) = p, γ(1) = qが成立することである.このような γを連続曲線という.
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4. 弧状連結である開集合を領域という.
定義 1.28 (微分可能). I = (a, b)を開区間とする.f が c ∈ (a, b)で微分可能であるとは,
f ′(c) = limx→c
f(x)− f(c)
x− c(18)
が存在することを言う.これは,
limx→c
∆f,c(x) = 0 (19)
となる関数を用いて
f(x) = f(c) + (x− c)f ′(c) + (x− c)∆f,c(x) (20)
と表されることと同値であることに注意しよう.
定義 1.29 (高次導関数). n ≥ 2のとき,f (n)を f (n−1)の微分として帰納的に定義していく.f
′′などの記号も必要に応じて使う.
定義 1.30 (C1-級,Ck-級,C∞-級). a, b ∈ Rがa < bを満たしているとする.f : (a, b) →RがC1-級とは fは (a, b)で微分可能で,導関数 f ′が連続であることを言う.fが k階までの導関数をもち,導関数すべてが連続の時,fはCk-級と言う.記号として,f ∈ Ck((a, b))と表す.C∞-級とは,すべての kに対して,Ck-級であることを言う.
定義 1.31 (べき級数).∞∑n=0
an (x− x0)n, x0 ∈ R の形の級数を冪(べき)級数という.
定義 1.32 (ex, sinx, cosxの定義).
1. ex = exp(x) = 1 + x+x2
2+
x3
6+ · · ·+ xn
n!+ · · ·
2. sinx = x− 1
6x3 +
1
120x5 · · ·+ (−1)k
(2k + 1)!x2k+1 + · · · =
∞∑k=0
(−1)kx2k+1
(2k + 1)!
3. cosx = 1− x2
2+
x4
24− x6
720+ · · ·+ (−1)n
(2n)!x2n + · · ·
また,自然対数 eは
e = e1 = 1 + 1 +1
2+
1
6+ · · ·+ 1
n!+ · · · (21)
で定める.
定義 1.33 (対数関数).
1. 関数 log xを exの逆関数として定める.
2. ax = ex log a, a > 1と定める.
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3. loga b = log b/ log a, a ∈ (0, 1) ∪ (1,∞), b > 0 と定める.
定義 1.34 (円周率). cosx = 0, 0 < x < 2の最小の解の 2倍を πと定める.
定義 1.35 (tan). tanx =sinx
cosxと定める.
定義 1.36 (逆関数).
1. sin :[−π
2,π
2
]→ [−1, 1] の逆関数を sin−1 : [−1, 1] →
[−π
2,π
2
]で表す.
2. cos : [0, π] → [−1, 1] の逆関数を cos−1 : [−1, 1] → [0, π] で表す.
3. tan :(−π
2,π
2
)→ R の逆関数を tan−1 : R →
(−π
2,π
2
)で表す.
定義 1.37 (分割,細分,細分の幅). −∞ < a < b < ∞とする.
1. 数列 {xi}Ni=0が [a, b]の分割であるとは,x0 = a, xN = bを満たす単調増加数列であることを意味する.分割全体の集合をD[a, b]と表す.
2. [a, b]の分割 {yi}Mi=0が [a, b]の分割 {xi}Ni=0の細分であるとは,{yi}Mi=0 ⊃ {xi}Ni=0
を満たしていることを意味する.
3. {ξi}Ni=1が [a, b]の分割 {xi}Ni=0の分点であるとは,xi−1 ≤ ξi ≤ xi, i = 1, 2, · · · , Nであることを意味する.
4. {xi}Ni=0 ∈ D[a, b]に対して,
|∆| = supi=1,2,··· ,n
|xi − xi−1| (22)
と定める.
定義 1.38 (上限和,下限和,リーマン上積分,リーマン下積分). 有界関数 f : [a, b] → Rが与えられたとする.
1. [a, b]の分割∆ = {xi}Ni=0が与えられたとする.f の上限和と下限和はそれぞれ
S∆(f) =N∑i=1
(xi − xi−1) supxi−1≤x≤xi
f(x) (23)
s∆(f) =
N∑i=1
(xi − xi−1) infxi−1≤x≤xi
f(x) (24)
で与えられる.
2. リーマン上積分とリーマン下積分を∫ b
af(x) dx = inf
∆∈D[a,b]S∆(f) (25)∫ b
a
f(x) dx = sup∆∈D[a,b]
s∆(f) (26)
で定める.
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3. リーマン上積分とリーマン下積分が一致するとき,その値を以ってリーマン積分の値と定義する.つまり, ∫ b
af(x) dx =
∫ b
a
f(x) dx (27)
ならば, ∫ b
af(x) dx =
∫ b
af(x) dx =
∫ b
a
f(x) dx (28)
と定める.
定義 1.39 (原始関数,不定積分).
1. 関数 f の不定積分とは,微分すると与えられた関数 f に一致するような新たな関数(原始関数)を求める操作のこと,およびその原始関数の全体と定める.
2. 同じく(ここでは)∫
f(x) dxは微分して f(x)になる関数のことと定める.
f が定義されている区間の 1点 aを固定して∫
f(x) dx =
∫ x
af(u)du と定める流儀も
ある.
定義 1.40 (f の xにおける振動量). 有界関数 f : [a, b] → Rに対して,xでの振動量を
f(x) = limδ↓0
(sup
y∈[a,b]∩(x−δ,x+δ)f(y)
)= lim
δ↓0
(sup
y∈(x−δ,x+δ)F (y)
)(29)
f(x) = limδ↓0
(inf
y∈[a,b]∩(x−δ,x+δ)f(y)
)= lim
δ↓0
(inf
y∈(x−δ,x+δ)F (y)
)(30)
と定める.ここで,
F (x) =
f(b) (x ≥ bのとき)
f(x) (a ≥ x ≤ bのとき)
f(a) (x ≤ aのとき)
と定めた.
定義 1.41 (0 集合). E ⊂ R が 0 集合であるとは,任意の ε > 0 に対してある区間I1, I2, · · · , Ij , · · · が存在して,
E ⊂∞∪j=1
Ij ,
∞∑j=1
ℓ(Ij) < ε (31)
が成り立つことである.
定義 1.42 (広義積分).
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1. f : [a,∞) → Rを関数とする.任意の b > aに対して,f は [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ ∞
af(x) dx = lim
R→∞
∫ R
af(x) dx (32)
と定める.ただし,極限が存在しないならば,そのときは∫ ∞
af(x) dx は存在しな
いと定義する.
2. f : [a, c) → Rを関数とする.任意の a ≤ b < cに対して,f は [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ c
af(x) dx = lim
R↑c
∫ R
af(x) dx (33)
と定める.ただし,極限が存在しないならば,そのときは∫ c
af(x) dx は存在しな
いと定義する.
3. f : [a, c)∪ (c, b]を関数とする.任意の a ≤ A < c, c < B ≤ bを満たすA,Bにつき,f は [a,A]上と [B, b]上でそれぞれ有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ b
af(x) dx = lim
A↑c
∫ A
af(x) dx+ lim
B↓c
∫ b
Bf(x) dx (34)
と定める.ただし,両方の極限が存在しないならば,そのときは∫ b
af(x) dx は存
在しないと定義する.
4. 上で定義していないそのほかの積分も類似の方法で定義する.
定義 1.43 (連続曲線の長さ). γ(t) = (x1(t), x2(t), · · · , xn(t))を [a, b]から Rnへの連続曲線とする.γの長さ L(γ)を
L(γ) = sup
N∑j=1
√√√√ n∑k=1
(xk(tj)− xk(tj−1))2 : {tj}Nj=0は [a, b]の分割
とおく.
定義 1.44 (数列の表記). 数列のあらわし方として,
a1, a2, · · · , an, · · · (35)
や(an)
∞n=1 (36)
などがあるが,ここでは{an}∞n=1 (37)
という記号を用いる.
11
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定義 1.45 (有理数のコーシー列). {an}∞n=1 ⊂ Q がコーシー列であるとは,任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,m,n ≥ N のときに,
|am − an| < ε (38)
が成り立つことをいう.
定義 1.46 (有理数のコーシー列の相等). {an}∞n=1と {bn}∞n=1を有理数のコーシー列とする.これらが『同じ』であるというのは次の条件を満たしていることである.
[条件] 任意の ε > 0に対してそれに応じてN ∈ Nが決まって n ≥ N のときに,|an − bn| < ε となる.
定義 1.47 (有界数列). 数列 {an}∞n=1 が有界であるとは,あるM が存在して,|an| ≤M, n ∈ Nが成り立つことである.
定義 1.48 (コーシー列の演算). {an}∞n=1, {bn}∞n=1 をコーシー列とする.
1. {an}∞n=1 + {bn}∞n=1 ≡ {an + bn}∞n=1 と定める.
2. {an}∞n=1 − {bn}∞n=1 ≡ {an − bn}∞n=1 と定める.
3. {an}∞n=1 · {bn}∞n=1 ≡ {anbn}∞n=1 と定める.
4. {bn}∞n=1 と 0は『同じ』ではないとする.{an}∞n=1 ÷ {bn}∞n=1 ≡ {an/bn}∞n=1 と定める.
定義 1.49 (コーシー列の大小関係). {an}∞n=1 と{bn}∞n=1 をコーシー列とする.{an}∞n=1 ≤{bn}∞n=1 とは,任意の有理数 ε > 0に対してある実数 N が定まり,n ≥ N のときにbn − an > −ε が成り立つこととする.
定義 1.50 (有理数コーシー列の列). {{am,n}∞n=1}∞m=1 が有理数のコーシー列の列であるとは,各m ∈ Nに対して {am,n}∞n=1 がコーシー列である事を意味する.
定義 1.51 (有理数コーシー列の列のなすコーシー列). 自然数 m = 1, 2, · · · に対して,コーシー列αm = {am,n}∞n=1 が与えられたとする.有理数のコーシー列の列 {αm}∞m=1 ={{am,n}∞n=1}∞m=1 がコーシー列であるとは,任意の有理数のコーシー列 ε = {εn}∞n=1 で0より真に大きいものに対してあるN ≥ nが存在して,n,m > N であるなら,
−ε < αm − αn < ε (39)
が成り立つことを意味する.
定義 1.52 (有理数のコーシー列の列の収束). α = {αn}∞n=1を有理数のコーシー列とする.有理数のコーシー列の列 {αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 が αに収束するとは,任意の有理数のコーシー列 ε = {εn}∞n=1 で 0より真に大きいものに対してあるN ≥ nが存在して,n,m > N であるなら,
−ε < αm − α < ε (40)
が成り立つことを意味する.収束先 αを明示しない(もしくは出来ない)場合は,有理数のコーシー列の列 {αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 が収束するとか有理数のコーシー列の列 {αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 が収束列であるという.
12
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2 定理一覧
定理 2.1 (ド・モアブルの定理). θ ∈ R, n ∈ Zとする.このとき,
(cos θ + i sin θ)n = cosnθ + i sinnθ
が成り立つ.
定理 2.2 (実数の完備性).
1. 単調増加な数列 {an}∞n=1に対して limn→∞
an が存在して,
limn→∞
an = supn∈N
an
が成り立つ.ただし,両辺が∞になる場合を認める.したがって,あるM ∈ Rが存在して単調増加な数列 {an}∞n=1が an ≤ M, n = 1, 2, · · · を満たすならば,{an}∞n=1
は収束する.
2. 単調減少の場合は省略.
定理 2.3 (コーシー列=収束列). 数列 {an}n∈Nにつき,次の命題は同値である.
1. limn→∞
an が存在する.
2. 任意の ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,n,m > Nのときに,|an−am| < εが成り立つ.
定理 2.4 (絶対収束,条件収束の言いかえ). {an}∞n=1 を複素数列とする.
1.
∞∑n=1
an が絶対収束する必要十分条件は
supN∈N
N∑n=1
|an| < ∞ (41)
が成立することである.
2.∞∑n=1
an が収束すると仮定する.∞∑n=1
an が条件収束する必要十分条件は
∞∑n=1
|an| = ∞ (42)
が成立することである.
定理 2.5 (コーシー判定法). {an}∞n=1 を複素数列とする.また,{bn}∞n=1 を正数列とす
る.|an| ≤ bnが n = 1, 2, · · · に対して成り立ち,∞∑n=1
bn が収束するならば,∞∑n=1
an は絶
対収束する.
13
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定理 2.6 ((ライプニッツの)交項級数). {an}∞n=1は
an ≥ an+1, n = 1, 2, · · · , limn→∞
an = 0 (43)
を満たしているとする.このとき,∞∑n=1
(−1)n−1an は収束する.
定理 2.7 (条件収束の性質). {an}∞n=1を条件収束する実数列とする.このとき,任意の
実数 αに対してある全単射 σ : N → Nが存在して,∞∑k=1
aσ(k) = α が成立する.
定理 2.8 (正値 2重数列の和の順序交換). {am,n}∞m,n=1を正値 2重数列とする.つまり,m,n ∈ Nに対して非負の実数 am,nが与えられているとする.このとき,次の意味でこの数列は足し方によらない.
∞∑m=1
( ∞∑n=1
am,n
)=
∞∑n=1
( ∞∑m=1
am,n
)=
∞∑n=1
(n∑
m=1
am,n+1−m
). (44)
定理 2.9 (複素絶対収束 2重数列の和の順序交換). {am,n}∞m,n=1を複素 2重数列とする.
∞∑m=1
( ∞∑n=1
|am,n|
),
∞∑n=1
( ∞∑m=1
|am,n|
),
∞∑n=1
(n∑
m=1
|am,n+1−m|
)(45)
のうちどれかひとつが有限であるとする.このとき,次の意味でこの数列は足し方によらない.
∞∑m=1
( ∞∑n=1
am,n
)=
∞∑n=1
( ∞∑m=1
am,n
)=
∞∑n=1
(n∑
m=1
am,n+1−m
). (46)
定理 2.10 (Rの非可算性). Rは非可算無限である.
定理 2.11 (可算集合の例と性質).
1. Zは可算である.
2. 可算集合Aの部分集合は高々可算である.
3. 可算集合Aとの全単射が存在する集合Bは可算である.
定理 2.12 (像集合,逆像の基本性質). f : X → Y を集合 X から Y への写像とする.A,B ⊂ X, C,D ⊂ Y とする.
1. f(A ∪B) = f(A) ∪ f(B)が成り立つ.
2. f(A ∩B) ⊂ f(A) ∩ f(B)が成り立つ.
3. f−1(C ∪D) = f−1(C) ∪ f−1(D)が成り立つ.
4. f−1(C ∩D) = f−1(C) ∩ f−1(D)が成り立つ.
14
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定理 2.13 (点列による極限の書き換え). aを含む開区間 Iで定義された実数値関数 f に対して次は同値である.
1. limx→a
f(x) = α.
2. I 内の数列 {an}∞n=1が limn→∞
an = a を満たしていれば, limn→∞
f(an) = α.
3. 任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,y ∈ (x − δ, x + δ) ∩ I のときに,|f(y)− α| < εとなる.
定理 2.14 (ε-δによる極限の書き換え). A ⊂ Rn とする.また,a ∈ Aと写像 f : A → Rm
が与えられたとする.このときに次は同値である.
(1) limx→a, x∈A
f(x) = α が成り立つ.
(2) 任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,もし,x ∈ Aが ∥x− a∥ < δを満たすならば,∥f(x)− α∥ ≤ ε となる.
(3) A内の点列 {an}n∈Nが aに収束していれば,{f(an)}n∈Nは αに収束する.
定理 2.15 (引き戻しによる連続性の書き換え). A ⊂ Rn を開集合とする.また,写像f : A → Rmが与えられたとする.このときに次は同値である.
1. f はAで連続である.
2. 任意の開集合 U ⊂ Rmに対して f−1(U)はAの開集合である.
定理 2.16 (閉包による連続性の書き換え). 写像 f : A → Rmが与えられたとする.このときに次は同値である.
1. f はAで連続である.
2. 任意の集合E ⊂ Rnに対して f(E ∩A ∩A) ⊂ f(E ∩A) となる.
定理 2.17 (一様収束による連続性の伝播). 区間 Iで定義された実数値連続関数列 {fn}∞n=1
が f に一様収束するなら f も連続である.
定理 2.18 (ハイネボレルの定理1). R > 0につき,
[−R,R]n = {x = (x1, x2, · · · , xn) : すべての i = 1, 2, · · · , nにつき,−R ≤ xi ≤ R}(47)
はコンパクトである.
定理 2.19 (ハイネボレルの定理2). A ⊂ Rnにつき,次は同値である.
1. Aは有界閉集合である.
2. Aはコンパクトである.
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定理 2.20 (コンパクト性の保存). A ⊂ Rnをコンパクト集合とする.f : A → Rmが連続写像のときに,f(A)はコンパクト集合である.
定理 2.21 (ワイエルストラスの定理の一般化). コンパクト集合上定義された実数値連続関数は最大値を取る.
定理 2.22 (一様連続性の ε-δ による書き換え). A ⊂ Rn とする.また,a ∈ Aと写像f : A → Rmが与えられたとする.このときに次は同値である.
1. f はAで一様連続である.
2. 任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,任意の x, x′ ∈ Aにつき,|x−x′| < δならば,|f(x)− f(x′)| ≤ ε となる.
定理 2.23 (ルベーグ数). K を Rnのコンパクト集合とする.{Uλ}λ∈Λ を開被覆とするとき,次の条件を満たしている数 δ > 0が存在する.x, y ∈ K かつ |x − y| 5 δならば,x, y ∈ Uλとなる λ ∈ Λ が存在する.
定義 2.24. このような δを被覆 {Uλ}λ∈Λのルベーグ数という.
定理 2.25 (連続の一様性). コンパクト集合上定義された実数値連続関数は一様連続である.
定理 2.26 (Rの連結性). Rは連結である.
定理 2.27 (弧状連結集合の連結性). Rnの弧状連結集合は連結である.
定理 2.28 (Rn,Rの区間の連結性). Rnは連結である.Rの区間も同様に区間である.
定理 2.29 (Rの連結集合の特徴づけ). Rの連結集合は区間である.
定理 2.30 (Rの開集合の特徴づけ). R の開集合は互いに交わらない高々可算個の開区間の和集合として表される.ただし,R, (a,∞), (−∞, a) の形の無限区間も開区間であるとする.
定理 2.31 (Rnの開集合の連結性の言い換え). 開集合G ⊂ Rnに対して次は同値である.
1. Gは連結である.
2. Gは弧状連結である.
3. Gは領域である.
定理 2.32 (連結性の保存). A ⊂ Rnを連結集合とする.f : A → Rmが連続写像のとき,f(A)は連結集合である.
定理 2.33 (中間値の定理). A ⊂ Rnを領域とする.また,f : A → Rを連続関数とする.このとき,f(A)は区間である.
定理 2.34 (中間値の定理,ワイエルストラスの定理). I = [a, b]を閉区間,f : I → Rを連続関数とする.
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(1) (中間値の定理)f(a), f(b)の間にある任意の数を f は I上でとることができる.すなわち,γ ∈ Rが (f(a)− γ)(f(b)− γ) ≤ 0 を満たしているなら,ある c ∈ I が存在して,f(c) = γを満たす.
(2) (ワイエルストラスの定理)f は I 上で最大値と最小値を取る.
定理 2.35 (m乗根の存在). mを 2以上の整数とする.また,a > 0とする.このとき,方程式 xm = aは唯一の実数解をもつ.この解 xを m
√aと記す.
定理 2.36 (微分可能関数の連続性). I = (a, b)を開区間とする.f が微分可能であるとする.このとき,f は連続である.
定理 2.37 (微分の公式). 次の公式が成り立つ.f(x), g(x)を関数,
1. (f(x) + g(x))′ = f ′(x) + g′(x)
2. (a f(x))′ = a f ′(x)
3. (f(x)g(x))′ = f ′(x)g(x) + f(x)g′(x)
4. g′(x) ̸= 0とする.(f(x)
g(x)
)′=
f ′(x)
g(x)− f(x)g′(x)
g(x)2=
f ′(x)g(x)− f(x)g′(x)
g(x)2
また,kをを自然数とするとき,xk = k xk−1 が成り立つ.さらに,定数関数の微分は 0である.
定理 2.38 (連鎖率,合成関数の微分). I, J を Rの区間とする.f : I → J, g : J → Rを微分可能な関数とするとき,g ◦ f : I → Rは微分可能で,
f(g(x))′ = f ′(g(x))g′(x) (48)
が成り立つ.
定理 2.39. I = (a, b)を開区間とする.fが微分可能で最大値もしくは最小値を x = c ∈ Iで取るとする.このとき,f ′(c) = 0である.
定理 2.40 (平均値の定理). a, b ∈ Rが a < bを満たしているとする.f : [a, b] → Rが連続で,f は (a, b)で微分可能であるとする.このとき,
a < c < b,f(b)− f(a)
b− a= f ′(c) (49)
を満たしている実数 cが存在する.
定理 2.41 (コーシーの平均値の定理). a, b ∈ Rが a < bを満たしているとする.f, g :[a, b] → Rが連続で,f, gは (a, b)で微分可能であるとする.さらに,g′は (a, b)において 0にならないとする.このとき,
a < c < b,f(b)− f(a)
g(b)− g(a)=
f ′(c)
g′(c)(50)
を満たしている実数 cが存在する.
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定理 2.42 (ロピタルの定理). a, b ∈ Rが a < bを満たしているとする.f, g : [a, b] → Rが連続で,f, gは (a, b)で微分可能であるとする.さらに,g′は (a, b)において 0にならないとする.このとき,p ∈ (a, b)に対して右辺の極限が存在するなら
limx→p
f(x)− f(p)
g(x)− g(p)= lim
x→p
f ′(x)
g′(x)(51)
を満たしている.
定理 2.43 (逆関数定理). fを開区間 I上で定義されたC1-級関数とする.f ′(x) ̸= 0, x ∈ Iが成り立つならば,f は逆関数をもち,逆関数 g : f(I) → I も C1-級である.
定理 2.44 (マクローリン展開). A < x, a < Bとする.n = 1, 2, · · · につき,f : (A,B) →Rが n回微分可能なときには,a, xの間の数 cが存在して,
f(x) = f(a) + (x− a)f ′(a) + · · ·+ (x− a)n−1
(n− 1)!f (n−1)(a) +
1
n!(x− a)nf (n)(c) (52)
が成り立つ.
定理 2.45 (テーラー展開). f : (A,B) → Rは何回でも微分可能であるとする.もし,定数M,Rが存在して,
|f (n)(x)| ≤ MRn (53)
がA < x < Bで成り立つならば,任意のA < x < bに対して,
f(x) = f(a) + (x− a)f ′(a) + · · ·+ (x− a)n−1
(n− 1)!f (n−1)(a) + · · · (54)
が成り立つ.
定理 2.46. 関数 f : (a, b) → Rが C2-級で,f ′(c) = 0, f ′′(c) > 0を仮定する.このとき,f は極小値である.つまり,ある区間 δ > 0が存在して,(c− δ, c+ δ) ⊂ (a, b) かつf(c) = min{f(x) : x ∈ (c− δ, c+ δ)} が成り立つ.
定理 2.47 (収束半径,アダマールの公式). 冪級数∞∑n=0
an (x−x0)n に対して,R ∈ [0,∞]
を1
R= lim sup
n→∞n√
|an| (55)
で定めると次のことが成り立つ.このRを冪級数∞∑n=0
an (x− x0)n の収束半径という.
1. |x− x0| > Rなら,冪級数∞∑n=0
an (x− x0)n は発散する.
2. |x− x0| < Rなら,冪級数∞∑n=0
an (x− x0)n は絶対収束する.
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3. |x− x0| < Rに対して f(x) =
∞∑n=0
an (x− x0)n とおくと,
f ′(x) =
∞∑n=0
(n+ 1) an+1(x− x0)n (56)
が成り立つ.
特に,f は何回でも微分可能である.
定理 2.48. 正数列 {an}n∈Nに対して, limn→∞
an+1
anが存在するならば, lim
n→∞n√an が存在
して,この値に等しい.
定理 2.49 (微分公式).
1. (sinx)′ = cosx
2. (cosx)′ = − sinx
3. (ex)′ = ex
定理 2.50 (指数関数の加法定理). x, yを実数とする.
1. 加法定理 ex+y = ex ey が成り立つ.
2. ex > 0となる.
定理 2.51. 1階微分可能な x関数 f : R → Rが f ′(x) = f(x)と f(0) = aを満たすとき,f(x) = a expxが成り立つ.
定理 2.52 (sin, cosの加法定理). α, β ∈ Rにつき,
sin(α+ β) = sinα cosβ + cosα sinβ
cos(α+ β) = cosα cosβ − sinα cosβ
となる.
定理 2.53 (2階線形常微分方程式の基本解). 2階微分可能な x関数 f : R → Rが f ′′(x) =−f(x)と f(0) = a, f ′(0) = bを満たすとき,f(x) = a cosx+ b sinxが成り立つ.
定理 2.54 (微分公式).
1. aを実数とするとき,(xa)′ = a xa−1
2. (tanx)′ = tan2 x+ 1 =1
cos2 x
3. (ax)′ = ax log a, a > 0
4. (log x)′ =1
x
19
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5. (loga x)′ =
1
x log a, a ∈ (0,∞) \ {1}
定理 2.55 (逆三角関数の微分公式). 逆関数の微分は次の式で与えられる.
d
dxsin−1 x =
1√1− x2
, x ∈ (−1, 1)
d
dxtan−1 x =
1
1 + x2, x ∈ R
定理 2.56 (ダルブーの定理). f : [a, b] → Rを有界関数とする.このとき,任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,|∆| < δ のときに,∫ b
af(x) dx− ε < S∆(f) (57)
が成り立つ.
定理 2.57 (ダルブーの定理の定理の言い換え). f : [a, b] → Rを有界関数とする.このとき,任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,|∆| < δ のときに,∣∣∣∣∣
∫ b
af(x) dx− S∆(f)
∣∣∣∣∣+∣∣∣∣∣∫ b
a
f(x) dx− s∆(f)
∣∣∣∣∣ < ε (58)
が成り立つ.
定理 2.58 (リーマン積分の線形性). f, g : [a, b] → Rをリーマン積分可能な関数とする.このとき,f + g, f · gもリーマン積分が可能である.さらに,lをスカラーとするとき∫ b
a(f(x) + g(x)) dx =
∫ b
af(x) dx+
∫ b
ag(x) dx,
∫ b
alf(x) dx = l
∫ b
af(x) dx (59)
が成り立つ.
定理 2.59 (リーマン積分の加法性). a < b < cとする.f : [a, c] → Rがリーマン積分可能な有界関数であるならば,f は [a, b]上,[b, c]上でもリーマン積分可能で,∫ c
af(x) dx =
∫ b
af(x) dx+
∫ c
bf(x) dx (60)
が成り立つ.
定理 2.60 (微積分学の基本定理 I). f : [a, b] → R が連続であるとする.このとき,
F (x) =
∫ x
af(t) dt, x ∈ (a, b) は微分可能で,
F ′(x) = f(x) (61)
が成り立つ.
20
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定理 2.61 (微分積分学の基本定理). Iを開区間,a, b ∈ Iとする.f が I上で微分可能でf ′がリーマン積分可能なときに,∫ b
af ′(x) dx = f(b)− f(a), a, b ∈ I (62)
が成り立つ.
定理 2.62 (テーラー展開の積分形). n = 1, 2, · · · につき,f が n回微分可能なときには,
f(x) = f(a)+(x−a)f ′(a)+ · · ·+ (x− a)n−1
(n− 1)!f (n−1)(a)+
1
(n− 1)!
∫ x
a(x−s)n−1f (n)(s) ds
(63)が成り立つ.
定理 2.63 (不定積分公式). 次の公式が成り立つ.∫ √1− x2 dx =
1
2
(x√1− x2 + sin−1 x
)+ C∫
dx√1− x2
= sin−1 x+ C∫dx√1 + x2
= log(x+√
x2 + 1) + C∫dx√x2 − 1
= log(x+√
x2 − 1) + C∫ √1 + x2 dx =
1
2
(x√1 + x2 + log(x+
√x2 + 1)
)+ C∫ √
x2 − 1 dx =1
2
(x√x2 − 1− log(x+
√x2 − 1)
)+ C
定理 2.64 (積分の単調性). f, g : [a, b] → Rをリーマン積分可能な有界関数とする.不等式 f(x) ≤ g(x), x ∈ [a, b]が成り立つなら∫ b
af(x) dx ≤
∫ b
ag(x) dx (64)
が成り立つ.
定理 2.65 (三角不等式). f : [a, b] → Rをリーマン積分可能な有界関数とする.このとき,∣∣∣∣∫ b
af(x) dx
∣∣∣∣ ≤ ∫ b
a|f(x)| dx (65)
が成り立つ.
定理 2.66 (積分の (第一)平均値の定理). f : [a, b] → Rが連続であるとする.このとき,∫ b
af(x) dx = (b− a)f(c) (66)
となる c ∈ [a, b]が存在する.
21
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定理 2.67 (ヘルダーの不等式). 1 < p, q < ∞が関係式
1
p+
1
q= 1 (67)
を満たしているとする.このとき, 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な実数値有界関数 f, gに対して,∣∣∣∣∫ b
af(x)g(x) dx
∣∣∣∣ ≤ (∫ b
a|f(x)|p dx
) 1p(∫ b
a|g(x)|q dx
) 1q
(68)
が成り立つ.
定理 2.68 (ミンコフスキーの不等式). 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な有界関数f, gに対して,(∫ b
a|f(x) + g(x)|p dx
) 1p
≤(∫ b
a|f(x)|p dx
) 1p
+
(∫ b
a|g(x)|p dx
) 1p
(69)
が成り立つ.
定理 2.69 (コーシー・シュワルツ (Cauchy-Schwarz)の不等式, 三角不等式). 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な実数値有界関数 f, gに対して,
1.
(∫ b
af(x)g(x) dx
)2
5∫ b
a(f(x))2 dx
∫ b
a(g(x))2 dx.
2.
(∫ b
a(f(x) + g(x))2 dx
)1/2
5(∫ b
af(x)2 dx
)1/2
+
(∫ b
ag(x)2 dx
)1/2
.
定理 2.70 (limと積分の入れ替え定理). 区間 I = [a, b]で定義された連続関数列 {fn}∞n=1
が f に一様収束するなら
limt→∞
∫ b
afn(t) dt =
∫ b
af(t) dt (70)
が成り立つ.
定理 2.71 (limと微分の入れ替え). 区間 I = (a, b)で定義された C1-級関数列 {fn}∞n=1
が与えられたとする.
1. {fn}∞n=1は f に各点収束する.
2. {f ′n}∞n=1は連続関数 gに一様収束する.
このとき,g = f ′で limn→∞
f ′n(x) = f ′(x), x ∈ (a, b) が成り立つ.
定理 2.72 (ルベーグの定理). f : [a, b] → Rに対して次の条件は同値である.
22
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1. f はリーマン積分可能である.
2. f の不連続点全体の集合B = {x ∈ [a, b] : f(x) > f(x)} は 0集合をなす.
定理 2.73 (広義積分のコーシー判定法).
1. f, g : [a,∞) → Rを関数とする.任意の b > aに対して,f, gは [a, b]上有界でリー
マン可積分であるとする.|f(x)| ≤ g(x)で∫ ∞
ag(x) dx が有限値として存在する
ならば,∫ ∞
af(x) dx が存在する.
2. f, g : [a, c) → Rを関数とする.任意の a ≤ b < cに対して,f, gは [a, b]上有界で
リーマン可積分であるとする.|f(x)| ≤ g(x)で∫ c
ag(x) dx が有限値として存在す
るならば,∫ c
af(x) dx が存在する.
定理 2.74 (ガンマ関数の基本性質). n = 0, 1, 2, · · · とする.
1. Γ関数を定義している積分は収束する.
2. Γ(x+ 1) = xΓ(x), x > 0.
3. 0! = 1と定義する. ∫ ∞
0tn e−t dt = lim
R→∞
∫ R
0tn e−t dt = n!. (71)
とくに,nが自然数のとき,Γ(n) = (n− 1)!.
【注意】ガンマ関数 Γ(x) =
∫ ∞
0tx−1 e−t dt, x > 0 を用いると,
∫ ∞
0tn e−t dt が計算しや
すい.実際,これは Γ(n+ 1) = n!である.
定理 2.75 (ガンマ関数の特徴づけ).
1. k ∈ Nに対して,Γ(k)(α) =
∫ ∞
0(log t)ktα−1e−t dt (72)
が成り立つ.また,積分は次の意味で絶対収束している.∫ ∞
0| log t|ktα−1e−t dt < ∞ (73)
2. Γ関数は次の条件が成り立つ 2回微分可能な正値関数として特徴付けられる.
(a) logφは凸関数.
(b) φ(1) = 1.
23
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(c) φ(x) = (x− 1)φ(x− 1), x > 1.
定理 2.76 (ベータ関数の基本性質). α, β > 0とする.
1. B(α, β) =
∫ 1
0xα−1(1− x)β−1 dx は収束している.
2. B(α, β) =Γ(α)Γ(β)
Γ(α+ β)となる.
B(α, β)をベータ関数という.
定理 2.77 (Γ(12
)とその周辺).
1. Γ
(1
2
)=
√π.
2.
∫ ∞
−∞e−x2
dx =√π.
定理 2.78 (1/2公式). Γ(2x) =√πΓ(x)Γ
(x+
1
2
), x > 0 となる.
定理 2.79 (ガンマ関数の相補公式). sinπx =π
Γ(x)Γ(1− x)が x ∈ (0, 1)に対して成り
立つ.
定理 2.80. γ : (A,B) → Rnを C1-級とする.つまり,γの各成分 x1, x2, · · · , xnが微分でき,その各成分が連続であるとする.
L(γ) =
∫ b
a
√√√√ n∑k=1
x′k(t)2 dt
となる.
定理 2.81 (有理数のコーシー列の書き換え,等号に関する注意). 有理数列 {an}∞n=1 ⊂ Qにつき次は同値である.
1. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N のときに, |am − an| < ε (74)
が成り立つ.
2. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n > N のときに, |am − an| < ε (75)
が成り立つ.
24
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3. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N のときに, |am − an| ≤ ε (76)
が成り立つ.
4. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n > N のときに, |am − an| ≤ ε (77)
が成り立つ.
したがって,これらの 4条件はどれもコーシー列の定義として採用できる.
定理 2.82 (有理数のコーシー列の書き換え,N, εに関する注意). 有理数列 {an}∞n=1 ⊂ Qにつき次は同値である.
1. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N のときに,|am − an| < ε (78)
が成り立つ.
2. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N のときに,|am − an| < 2ε (79)
が成り立つ.
3. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N + 1のときに,|am − an| < ε (80)
が成り立つ.
4. 任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,
m,n ≥ N のときに,|am − an| <1
2ε (81)
が成り立つ.
したがって,これらの 4条件はどれもコーシー列の定義として採用できる.
定理 2.83 (コーシー列に関する同値律). {an}∞n=1, {bn}∞n=1, {cn}∞n=1 を有理数のコーシー列とする.
1. (反射律){an}∞n=1 と {an}∞n=1 は『同じ』である.
2. (対称律){an}∞n=1 と {bn}∞n=1 が『同じ』であるなら,{bn}∞n=1 と {an}∞n=1 は『同じ』である.
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3. (推移律){an}∞n=1 と {bn}∞n=1 が『同じ』で,{bn}∞n=1 と {cn}∞n=1 が『同じ』であるなら,{an}∞n=1 と {cn}∞n=1 は『同じ』である.
定理 2.84 (コーシー列の有界性). 有理数のコーシー列は有界である.
定理 2.85 (有理数の稠密性). 有理数のコーシー列 α = {an}∞n=1 に対して,有理数列αm = {am}∞n=1は αに収束している.
定理 2.86 (コーシー列の言い換え). 有理数のコーシー列のコーシー列は収束列である.
定理 2.87 (有界な単調増大数列の性質). K = {kn}∞n=1 を有理数のコーシー列,{αm} ={{am,n}∞n=1} を有理数のコーシー列の列とする.もし,
α1 ≤ α2 ≤ · · · ≤ αm ≤ αm+1 ≤ · · · ≤ K (82)
が成り立つならば,α = {αm}∞m=1 は収束する.
定理 2.88 (上限の存在). 実数の部分集合Aが次の条件を満たしているとする.
あるM が存在して,a ∈ Aならば,a ≤ M となる.
このとき,このようなM には最小値M0が存在する.つまり,次のような条件を満たしているM0が存在する.
1. a ∈ Aならば,a ≤ M0となる.
2. m < M0であるなら,ある a ∈ Aが存在して,a > mとなる.
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3 定義の理解確認
定義 3.1 (極形式). z = a+ bi, a, b ∈ Rを 0ではない複素数とする.
定義 3.2 (∞,−∞).
定義 3.3 (上界). 集合Aにつき,次の条件を満たしているM ≤ ∞のことを上界という.
定義 3.4 (上限). 実数の連続性とは,任意の空でない集合 Aの上界には最小値M が存在するという性質である.すなわち,次のような実数M がひとつだけ定まる.
1.
2.
この数M を supAと書く.
定義 3.5 (下界,下限). 空でない実数の部分集合 Aにつき,次の条件を満たしているm ≥ −∞のことを下界 (かかい)という.
定義 3.6 (上に有界,下に有界,有界,非有界,数列の有界性). 実数の部分集合Aが与えられたとする.
定義 3.7 (数列の記号).
定義 3.8 (単調数列). 実数列 {an}∞n=1が与えられたとする.
1. {an}∞n=1が単調増大であるとは,
2. {an}∞n=1が単調減少であるとは,
3. 単調増大数列,単調減少数列を総称して単調数列という.
定義 3.9 (数列の上限,下限,上極限,下極限). 実数列 {an}∞n=1が与えられたとする.
定義 3.10 (ε-δ式の収束,コーシー列の (再)定義).
1. 無限数列 {ak}∞k=1が αに収束するとは,
2. 無限数列 {ak}∞k=1がコーシー列であるとは
3. 無限数列 {ak}∞k=1が∞に発散するとは,
4. 無限数列 {ak}∞k=1が−∞に発散するとは,
定義 3.11 (複素数列の収束,発散). {an}∞n=1 を複素数列とする.
1.
∞∑n=1
an が収束するとは,
27
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2.
∞∑n=1
an が絶対収束するとは,
3.∞∑n=1
an が条件収束するとは,
定義 3.12 (2重数列).
定義 3.13 (有限集合,無限集合,可算集合,非可算集合). Aを集合とする.
1. Aが有限集合であるとは,
2. 無限集合
3. Aが可算集合であるとは,
4. 高々可算
5. 非可算集合
定義 3.14 (Rn).
定義 3.15 (Rn の演算,ユークリッド球). x = (x1, x2, · · · , xn), y = (y1, y2, · · · , yn),a ∈ Rとする.ε > 0とする.
1. 和を
2. スカラー倍を
3. ノルムを
4. ε > 0に対して,B(x; ε) (83)
と定める.x = 0のときは,x;を省略して,B(ε), B(ε)と表す.
定義 3.16 (開集合,閉集合,有界集合). A ⊂ Rnとする.
1. Aが開集合であるとは,
2. Aが閉集合であるとは,
3. Aが有界集合であるとは,
4. Aの開集合とは,
定義 3.17 (写像). A ⊂ Rn,B ⊂ Rm とする.f : A → Bが写像であるとは,
定義 3.18 (写像による像集合,逆像集合). A ⊂ Rn,B ⊂ Rm とする.写像 f : A → Bが与えられたとする.
1. A0 ⊂ Aに対して,Bの部分集合を f(A0) =
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2. B0 ⊂ Bに対して,Aの部分集合を f−1(B0) =
定義 3.19 (Rnの 1点における写像の極限,連続性,連続写像). A ⊂ Rn とする.また,写像 f : A → Rmが与えられたとする.
1. a ∈ Aとする.lim
x→a, x∈Af(x) = α (84)
とは,
が成り立つことである.
2. a ∈ Aとする.f が aで連続であるとは,
(85)
つまり,lim
x→a, x∈Af(x) = f(a) (86)
が成り立つことである.
3. f がAで連続であるとは,
定義 3.20 (閉包). A ⊂ Rnとする.
1. Aの閉包Aは
2. Aの開核は
定義 3.21 (一様収束). 区間 I で定義された実数値関数列 {fn}∞n=1が f に一様収束するとは,
(87)
が成り立つことである.
定義 3.22 (広義一様収束). 開集合 U 上で定義された実数値関数列 {fn}∞n=1 が広義一様収束するとは
定義 3.23 (被覆,有限被覆,部分被覆).
1. {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn とは
(a) Λは何らかの集合で
(b) λ ∈ Λに対して,Rn の部分集合 Uλが与えられている
ことである.このとき,{Uλ}λ∈Λ を Rnの部分集合族という.
2. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn に対して,∪λ∈Λ
Uλ = {x ∈ Rn : 少なくとも一つの λ ∈ Λにつき,x ∈ Uλ} (88)
と定める.
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3. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn に対して,∩λ∈Λ
Uλ = (89)
と定める.
4. Rnの部分集合族 {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn がAの被覆であるとは,
A ⊂∪λ∈Λ
Uλ (90)
が成立することである.
(a) {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn が開被覆とは被覆であり,それぞれの集合Uλが開集合であることをさす.
(b) {Uλ}λ∈Λ ⊂ Rn が有限被覆であるとは,Λが有限であることを意味する.
(c) Λ0 ⊂ Λとする.このとき,{Uλ}λ∈Λ0 は {Uλ}λ∈Λ の部分被覆という.
定義 3.24 (コンパクト性). Aがコンパクトであるとは,
定義 3.25 (一様連続). A ⊂ Rn とする.また,写像 f : A → Rmが与えられたとする.f がAで一様連続であるとは,
(91)
が成り立つことである.
定義 3.26 (連結集合,不連結集合,弧状連結集合,領域). A ⊂ Rnとする.
1. Aが不連結であるとは,次の条件を満たしている開集合U, V が存在することである.
(92)
つまり,Aが不連結であるとは,Aの空ではない開集合の互いに交わらない和として表されることである.
2. Aが連結であるとは,
3. Aが弧状連結であるとは,
4. 弧状連結である開集合を
定義 3.27 (微分可能). I = (a, b)を開区間とする.f が c ∈ (a, b)で微分可能であるとは,
(93)
が存在することを言う.これは,
limx→c
∆f,c(x) = 0 (94)
となる関数を用いて(95)
と表されることと同値であることに注意しよう.
30
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定義 3.28 (C1-級,Ck-級,C∞-級). a, b ∈ Rがa < bを満たしているとする.f : (a, b) →Rが C1-級とは
定義 3.29 (べき級数).
定義 3.30 (ex, sinx, cosxの定義).
1. ex =
2. sinx =
3. cosx =
また,自然対数 eは
e = e1 = 1 + 1 +1
2+
1
6+ · · ·+ 1
n!+ · · · (96)
で定める.
定義 3.31 (対数関数).
1. 関数 log xを
2. axと定める.
3. loga b = と定める.
定義 3.32 (円周率).
定義 3.33 (tan).
定義 3.34 (逆関数).
1. sin :[−π
2,π
2
]→ [−1, 1] の逆関数を
2. cos : [0, π] → [−1, 1] の逆関数を
3. tan :(−π
2,π
2
)→ R の逆関数を
定義 3.35 (分割,細分,細分の幅). −∞ < a < b < ∞とする.
1. 数列 {xi}Ni=0が [a, b]の分割であるとは,
2. [a, b]の分割 {yi}Mi=0が [a, b]の分割 {xi}Ni=0の細分であるとは,
3. {ξi}Ni=1が [a, b]の分割 {xi}Ni=0の分点であるとは,
4. {xi}Ni=0 ∈ D[a, b]に対して,|∆| = (97)
と定める.
31
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定義 3.36 (上限和,下限和,リーマン上積分,リーマン下積分). 有界関数 f : [a, b] → Rが与えられたとする.
1. [a, b]の分割∆ = {xi}Ni=0が与えられたとする.f の上限和と下限和はそれぞれ
S∆(f) = (98)
s∆(f) = (99)
で与えられる.
2. リーマン上積分とリーマン下積分を∫ b
af(x) dx = (100)∫ b
a
f(x) dx = (101)
で定める.
3. リーマン積分の値
定義 3.37 (原始関数,不定積分).
1. 関数 f の不定積分とは,
2.
∫f(x) dx
定義 3.38 (f の xにおける振動量). 有界関数 f : [a, b] → Rに対して,xでの振動量を
f(x) = (102)
f(x) = (103)
と定める.ここで,
F (x) =
f(b) (x ≥ bのとき)
f(x) (a ≥ x ≤ bのとき)
f(a) (x ≤ aのとき)
と定めた.
定義 3.39 (0集合). E ⊂ Rが 0集合であるとは,
定義 3.40 (広義積分).
1. f : [a,∞) → Rを関数とする.任意の b > aに対して,f は [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ ∞
af(x) dx (104)
と定める.ただし,極限が存在しないならば,そのときは∫ ∞
af(x) dx は存在しな
いと定義する.
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2. f : [a, c) → Rを関数とする.任意の a ≤ b < cに対して,f は [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ c
af(x) dx (105)
と定める.ただし,極限が存在しないならば,そのときは∫ c
af(x) dx は存在しな
いと定義する.
3. f : [a, c)∪ (c, b]を関数とする.任意の a ≤ A < c, c < B ≤ bを満たすA,Bにつき,f は [a,A]上と [B, b]上でそれぞれ有界でリーマン可積分であるとする.このとき,∫ b
af(x) dx = (106)
と定める.ただし,両方の極限が存在しないならば,そのときは∫ b
af(x) dx は存
在しないと定義する.
4. 上で定義していないそのほかの積分も類似の方法で定義する.
定義 3.41 (連続曲線の長さ). γ(t) = (x1(t), x2(t), · · · , xn(t))を [a, b]から Rnへの連続曲線とする.γの長さ L(γ)を
L(γ) =
とおく.
定義 3.42 (数列の表記). 数列のあらわし方として,
定義 3.43 (有理数のコーシー列). {an}∞n=1 ⊂ Q がコーシー列であるとは,
定義 3.44 (有理数のコーシー列の相等). {an}∞n=1と {bn}∞n=1を有理数のコーシー列とする.これらが『同じ』であるというのは次の条件を満たしていることである.
[条件]
定義 3.45 (有界数列). 数列 {an}∞n=1が有界であるとは,
定義 3.46 (コーシー列の演算). {an}∞n=1, {bn}∞n=1 をコーシー列とする.
1. {an}∞n=1 + {bn}∞n=1 ≡
2. {an}∞n=1 − {bn}∞n=1 ≡
3. {an}∞n=1 · {bn}∞n=1 ≡
4. {bn}∞n=1 と 0は『同じ』ではないとする.{an}∞n=1 ÷ {bn}∞n=1 ≡
定義 3.47 (コーシー列の大小関係). {an}∞n=1 と{bn}∞n=1 をコーシー列とする.{an}∞n=1 ≤{bn}∞n=1 とは,
33
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定義 3.48 (有理数コーシー列の列). {{am,n}∞n=1}∞m=1 が有理数のコーシー列の列であるとは,
定義 3.49 (有理数コーシー列の列のなすコーシー列). 自然数 m = 1, 2, · · · に対して,コーシー列αm = {am,n}∞n=1 が与えられたとする.有理数のコーシー列の列 {αm}∞m=1 ={{am,n}∞n=1}∞m=1 がコーシー列であるとは,
定義 3.50 (有理数のコーシー列の列の収束). α = {αn}∞n=1を有理数のコーシー列とする.有理数のコーシー列の列 {αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 が αに収束するとは,
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4 定理の理解確認
定理 4.1 (ド・モアブルの定理).
定理 4.2 (実数の完備性).
1. 単調増加な数列 {an}∞n=1に対して
定理 4.3 (コーシー列=収束列). 数列 {an}n∈Nにつき,次の命題は同値である.
1. limn→∞
an が存在する.
2.
定理 4.4 (絶対収束,条件収束の言いかえ). {an}∞n=1 を複素数列とする.
1.
∞∑n=1
an が絶対収束する必要十分条件は
(107)
が成立することである.
2.∞∑n=1
an が収束すると仮定する.∞∑n=1
an が条件収束する必要十分条件は
(108)
が成立することである.
定理 4.5 (コーシー判定法). {an}∞n=1 を複素数列とする.また,{bn}∞n=1 を正数列とする.
定理 4.6 ((ライプニッツの)交項級数).
定理 4.7 (無条件収束の性質). {an}∞n=1を条件収束する実数列とする.
定理 4.8 (正値 2重数列の和の順序交換). {am,n}∞m,n=1を正値 2重数列とする.つまり,m,n ∈ Nに対して非負の実数 am,nが与えられているとする.
定理 4.9 (複素絶対収束 2重数列の和の順序交換). {am,n}∞m,n=1を複素 2重数列とする.
定理 4.10 (Rの非可算性).
定理 4.11 (可算集合の例と性質).
定理 4.12 (像集合,逆像の基本性質). f : X → Y を集合 X から Y への写像とする.A,B ⊂ X, C,D ⊂ Y とする.
1. f(A ∪B)?f(A) ∪ f(B)が成り立つ.
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2. f(A ∩B)?f(A) ∩ f(B)が成り立つ.
3. f−1(C ∪D)?f−1(C) ∪ f−1(D)が成り立つ.
4. f−1(C ∩D)?f−1(C) ∩ f−1(D)が成り立つ.
定理 4.13. 1階微分可能な x関数 f : R → Rが f ′(x) = f(x)と f(0) = aを満たすとき,
定理 4.14 (sin, cosの加法定理). α, β ∈ Rにつき,
sin(α+ β) =
cos(α+ β) =
となる.
定理 4.15 (2階線形常微分方程式の基本解). 2階微分可能な x関数 f : R → Rが f ′′(x) =−f(x)と f(0) = a, f ′(0) = bを満たすとき,f(x) =
定理 4.16 (微分公式).
1. aを実数とするとき,(xa)′ =
2. (tanx)′ =
3. (ax)′ =
4. (log x)′ =
5. (loga x)′ =
定理 4.17 (逆三角関数の微分公式). 逆関数の微分は次の式で与えられる.
d
dxsin−1 x =
d
dxtan−1 x =
定理 4.18 (ダルブーの定理). f : [a, b] → Rを有界関数とする.このとき,任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,|∆| < δ のときに,
(109)
が成り立つ.
定理 4.19 (ダルブーの定理の定理の言い換え). f : [a, b] → Rを有界関数とする.このとき,任意の ε > 0に対してある δ > 0が存在して,|∆| < δ のときに,
(110)
が成り立つ.
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定理 4.20 (リーマン積分の線形性). f, g : [a, b] → Rをリーマン積分可能な関数とする.このとき,f + g, f · gもリーマン積分が可能である.さらに,lをスカラーとするとき
(111)
が成り立つ.
定理 4.21 (リーマン積分の加法性). a < b < cとする.f : [a, c] → Rがリーマン積分可能な有界関数であるならば,f は [a, b]上,[b, c]上でもリーマン積分可能で,
(112)
が成り立つ.
定理 4.22 (微積分学の基本定理 I). f : [a, b] → R が連続であるとする.このとき,
F (x) =
∫ x
af(t) dt, x ∈ (a, b) は微分可能で,
(113)
が成り立つ.
定理 4.23 (微分積分学の基本定理). Iを開区間,a, b ∈ Iとする.f が I上で微分可能でf ′がリーマン積分可能なときに,
(114)
が成り立つ.
定理 4.24 (テーラー展開の積分形). n = 1, 2, · · · につき,f が n回微分可能なときには,
(115)
が成り立つ.
定理 4.25 (不定積分公式). 次の公式が成り立つ.∫ √1− x2 dx =∫
dx√1− x2
=∫dx√1 + x2
=∫dx√x2 − 1
=∫ √1 + x2 dx =∫ √x2 − 1 dx =
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定理 4.26 (積分の単調性). f, g : [a, b] → Rをリーマン積分可能な有界関数とする.不等式 f(x) ≤ g(x), x ∈ [a, b]が成り立つなら
(116)
が成り立つ.
定理 4.27 (三角不等式). f : [a, b] → Rをリーマン積分可能な有界関数とする.このとき,
(117)
が成り立つ.
定理 4.28 (積分の (第一)平均値の定理). f : [a, b] → Rが連続であるとする.このとき,
(118)
となる c ∈ [a, b]が存在する.
定理 4.29 (ヘルダーの不等式). 1 < p, q < ∞が関係式
1
p+
1
q= 1 (119)
を満たしているとする.このとき, 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な実数値有界関数 f, gに対して,
(120)
が成り立つ.
定理 4.30 (ミンコフスキーの不等式). 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な有界関数f, gに対して,
(121)
が成り立つ.
定理 4.31 (コーシー・シュワルツ (Cauchy-Schwarz)の不等式, 三角不等式). 閉区間 [a, b]上でのリーマン積分可能な実数値有界関数 f, gに対して,
1.
(∫ b
af(x)g(x) dx
)2
2.
(∫ b
a(f(x) + g(x))2 dx
)1/2
5
定理 4.32 (limと積分の入れ替え定理). 区間 I = [a, b]で定義された連続関数列 {fn}∞n=1
が f に一様収束するなら(122)
が成り立つ.
定理 4.33 (limと微分の入れ替え). 区間 I = (a, b)で定義された C1-級関数列 {fn}∞n=1
が与えられたとする.
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1.
2.
このとき,g = f ′で
が成り立つ.
定理 4.34 (ルベーグの定理). f : [a, b] → Rに対して次の条件は同値である.
1.
2.
定理 4.35 (広義積分のコーシー判定法). 1. f, g : [a,∞) → Rを関数とする.任意のb > aに対して,f, gは [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.
が有限値として存在するならば,∫ ∞
af(x) dx が存在する.
2. f, g : [a, c) → Rを関数とする.任意の a ≤ b < cに対して,f, gは [a, b]上有界でリーマン可積分であるとする.
が有限値として存在するならば,∫ c
af(x) dx が存在する.
定理 4.36 (ガンマ関数の基本性質). n = 0, 1, 2, · · · とする.
1. Γ関数を定義している積分は収束する.
2. Γ(x+ 1) =
3. 0! = 1と定義する. ∫ ∞
0tn e−t dt = lim
R→∞
∫ R
0tn e−t dt = (123)
とくに,nが自然数のとき,Γ(n) = (n− 1)!.
【注意】ガンマ関数 Γ(x) =
∫ ∞
0tx−1 e−t dt, x > 0 を用いると,
∫ ∞
0tn e−t dt が計算しや
すい.実際,これは Γ(n+ 1) = n!である.
定理 4.37 (ガンマ関数の特徴づけ).
1. k ∈ Nに対して,Γ(k)(α) = (124)
が成り立つ.また,積分は次の意味で絶対収束している.
(125)
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2. Γ関数は次の条件が成り立つ 2回微分可能な正値関数として特徴付けられる.
(a)
(b)
(c)
定理 4.38 (ベータ関数の基本性質). α, β > 0とする.
1. B(α, β) = は収束している.
2. B(α, β) = となる.
B(α, β)をベータ関数という.
定理 4.39 (Γ(12
)とその周辺).
1. Γ
(1
2
)=.
2.
∫ ∞
−∞e−x2
dx =.
定理 4.40 (1/2公式).
定理 4.41 (ガンマ関数の相補公式).
定理 4.42. γ : (A,B) → Rnを C1-級とする.つまり,γの各成分 x1, x2, · · · , xnが微分でき,その各成分が連続であるとする.
L(γ) =
となる.
定理 4.43 (有理数のコーシー列の書き換え,等号に関する注意). 有理数列 {an}∞n=1 ⊂ Qにつき次は同値である.
定理 4.44 (有理数のコーシー列の書き換え,N, εに関する注意).
定理 4.45 (コーシー列に関する同値律). {an}∞n=1, {bn}∞n=1, {cn}∞n=1 を有理数のコーシー列とする.
1. (反射律)
2. (対称律){an}∞n=1 と {bn}∞n=1 が『同じ』であるなら,
3. (推移律){an}∞n=1 と {bn}∞n=1 が『同じ』で,{bn}∞n=1 と {cn}∞n=1 が『同じ』であるなら,
定理 4.46 (コーシー列の有界性).
40
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定理 4.47 (有理数の稠密性). 有理数のコーシー列 α = {an}∞n=1 に対して,有理数列αm = {am}∞n=1は αに収束している.
定理 4.48 (コーシー列の言い換え).
定理 4.49 (有界な単調増大数列の性質). K = {kn}∞n=1 を有理数のコーシー列,{αm} ={{am,n}∞n=1} を有理数のコーシー列の列とする.もし,
(126)
が成り立つならば,α = {αm}∞m=1 は収束する.
定理 4.50 (上限の存在). 実数の部分集合Aが次の条件を満たしているとする.
41