1 書類は必ずファイリングしましょう。 - kurume ·...
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第
1
章
ケア豆事典 1-15
利用者との出会い
一元管理が必要です。書類がばらばらにならないように、利用者ごとにファイリングしておくこ
とが大切です。コンピューター管理の場合も、整理していつでも引き出せるようにしておきましょう。
■ 書類は必ずファイリングしましょう。
書類を保管する場所を確保する必要があります。書類保管用のスペース・棚は十分ゆとりをもっ
て準備しておきましょう。また、誰の書類がどこにあるかすぐにわかるように、ファイルを順序良
く整列させることも大切です。保管に関しては個人名が来所者にわからないよう設置しましょう。
■ 書類の保管場所を確保しておきましょう。
事業所内外の誰もが閲覧できるような管理では、守秘義務をきちんと守っているとはいえません。
多くの事業所を併設している場合も、いつでも・誰でも自由に書類を見てよいわけではありません。
介護支援専門員以外は書類を引き出せないようにすることや、事務所内外で情報を共有する際の取
り決めも必要です。
○ 同施設にあっても違う事業者 !
○ 書類は勝手に見ることは出来ません !!
○ 書類の保管に関しては、利用が完結して5年が原則です。(書類の整備・運営基準第 29条)
○ 書類の取り扱い方、管理責任など必ず事業所内で取り決め、利用者の情報の管理は厳重に !!
(秘密保持 運営基準第 23条)
■ 書類は介護支援専門員が責任を持って管理しましょう。
書類の管理
契約書やケアプランなど、介護支援専門員は利用者に関する重要な個人情報を握っています。
第
1
章
ケア豆事典 1-17
利用者との出会い
課題分析標準項目
(出典:介護支援専門員基本テキスト、長寿社会開発センター、2003)
第
1
章
ケア豆事典 1-18
利用者との出会い
利用者が悩んでいることや改善したいと思っていることを尋ねます。(主観的事実を把握する)
1. 利用者の悩みや要望を聴取する
利用者の思いは「○○ができなくて困っている」という形で語られることがありますが、これをよ
く聴いていくと「○○をしたいのだけれど、○○ができないので困っている」という内容であること
がわかってきます。この困りごとについて、利用者と介護支援専門員のやりとりの中で確認をとっ
ていきます。
2. 悩みや要望を明確化し確認をとる
利用者から客観的情報「どんなところができるのか」を尋ねたり、動作に関する物理的な情報を得
て本人の要望について聞きます。利用者自身が自立への可能性を整理していくことで、ケアプラン
を受け入れやすくなります。
3. 自立支援の可能性を探る
介護支援専門員が利用者の望む暮らしのありかたと、それを阻害している要因を整理して説明する
と、利用者も自らの感じている悩みの内容を整理していくことができます。この説明によって利用
者から返答が得られれば、生活ニーズに関する利用者と介護支援専門員との受け止め方の合意がで
きます。
4. 望む生活から生活ニーズを導き出す
生活ニーズについての合意形成ができたことで、自立支援に向けての方策についても利用者と話し
合うことができるようになります。利用者と介護支援専門員が共同でケアプランを作成していくこ
とが重要です。
5. 生活ニーズからプランニングを協働作業で行ないます
総合的な援助の方針はサービス提供におけるケース目標といえます。①利用者がどこで生活したい
か、②どのような生活がしたいかという情報を考慮した上で、利用者がみても「自分の生活をこんな
ふうに考えて支えようとしてくれているのか」と理解できる表現で記述される必要があります。
6. 総合的な援助の方針を考える
得られた情報をもとに利用者の状態を判断し、なぜそのような状態が生じたのか、どうすれば改善で
きるのかを考えます。
利用者の持っている個人の中にある力や、利用者を取り巻く環境の中にある力=強さ(Strengs)を
意識し、引き出そうとするエンパワメントの姿勢をもって動機付けを考える必要があります。(自立支
援の視点)またケアマネジメントのプロセスの先にどういった利用者の生活の質の向上があるかを見据
えていく必要があります。
情報分析することで、生活課題(ニーズ)が導かれます。
以下に、課題分析の進めかたをまとめました。
<課題分析の進めかた>
第
1
章
ケア豆事典 1-19
利用者との出会い
利用者の困り事は一つの場合もあれば、複数の場合もあります。利用者が意識していないけれども、
実際にはその他にも生活ニーズが隠れています。
介護支援専門員は、利用者の訴えに関連する事柄についても徐々に話題を広げていき、本人の困り
ごと以外の生活ニーズについても明らかにする必要があります。
7. 生活ニーズの明確化
生活ニーズの中には今すぐに解決を必要としているものと、しばらく解決のための活動を待っても
支障がないもの、あるいは利用者と介護支援専門員の間で生活ニーズとして合意に至らないものが
あります。サービスを結び付ける優先順位を付けるにあたっては、以下のような考え方をしていく
と良いでしょう。
サービス利用の優先度の判断は、利用者・介護者が危機的な状況にならないことです。
① 本人の生命の維持に関わることを優先する。
② 生活維持の困難に関わることを優先する。
③ セルフケア能力や介護力低下の原因を優先する。
④ 利用者を取り巻く環境の変化を優先する。
8. 生活ニーズに優先順位をつける
アセスメントの段階では、問題状況全体の把握・個々の生活ニーズの把握と共に、今後起こりうる危
険性について予測を立てることも重要です。
<アセスメントにおける留意点>
○ 疾病の状態の悪化
○ ADLの悪化
○ 意欲の低下、喪失
○ 介護負担の増加
○ 家族関係の悪化
○ 孤立、閉じこもり
介護支援専門員はアセスメント面接を通じ、
利用者を情緒的に支え、利用者との信頼関係を
作って行きます。アセスメント面接自身が利用
者への支援でもあるのです。
■ 予測される危険因子
ちょっと一 言
ここで予測した今後起こるかもしれない危機は、モニタリングにおいて利用者の状況を確認していく視点ともなるものです。
第
1
章
ケア豆事典 1-20
利用者との出会い
では、実際のアセスメントの場面を想定してみましょう。
利用者の思い → 「買物や調理ができなくて困っている」
これをよく聴いていくと…「買物とか調理をしたいけれど、腰が痛くてできないため困っている」
という内容がわかってきます。
そのことを順序立てて話を進めていきましょう。
以上のアセスメント場面が先に記載している1~9の流れを取り入れた展開に沿って行なわれて
いることはご理解いただけたでしょうか?
何気ない会話のようにも見えますが、ポイントを抑えたアセスメントになっています。
ケアマネ
利用者
ケアマネ
利用者
ケアマネ
利用者
ケアマネ
ケアマネ
利用者
ケアマネ
利用者
ケアマネ
「息子さんが東京に行かれたんですか~。寂しくなりましたね。他に子供さんや親戚
等はいらっしゃらないですか?」
「ひとり息子やけんねぇ。親戚はおるばってん迷惑かけられんけん…」
「そうですか…。腰の痛みもあるっておっしゃってありましたよね?」
「1年前くらいに階段から落ちてから、だいぶ強~打ったっちゃん。入院まではせん
でよかったばってん、それからが調子の悪かごたる。」
「なるほど。『腰が痛くなければ、ご自分でも買物や調理もできるようになります』よ
ね。」
「そうやんね。でもこれがなかなか…。」
「それでは困っていることが解消できる方法を一緒に考えていきましょう。」
「腰痛に対する治療は何かされていますか?」
「待ち時間がせからしかけん、いっちょんいきよらんたい。」
「ちゃんと治療すると痛みがとれてくるかもしれませんよ。」
「そうやろか?あんたがそげん言うならいってみようかねぇ。」
「でもすぐには痛みがとれるかどうかわからないし、親戚達にも迷惑をかけたくない
ということならば、ご不自由な間はヘルパーさんに手伝ってもらうこともできますよ。
最初はヘルパーさんに手伝ってもらいながら、無理しない程度に、そしてご自分でで
きるところはご自分でもやっていけるといいですね。」…
1-11ページの例で「腰が痛くて買物や調理が難しい」ということが把握できたケースがありました。ここではそれについて掘り下げていきましょう。
ケアマネの 常 識
生活ニーズをとらえるにあたっては ICF の視点や考え方を
理解しておくと便利です。
第
1
章
ケア豆事典 1-21
利用者との出会い
ICFとは国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health)
人間のあらゆる健康状態に関係した生活機能状態から、その人を取り巻く社会制度や社
会資源までをアルファベットと数字を組み合わせた方式で分類し、記述・表現しようと
するものです。
ICFは、できないこと(障害)に着目するのではなく、できていること(実行状況・して
いる状況)できること(能力・できる活動)に着目しその活動範囲を拡大しようとする
考え方です。つまりICFは生活機能や、障害を分類する「考え方」であり、ケアマネジメ
ントの支援過程とは異なります。(注:ケアプラン作成については、ICFの考え方や、視
点を活用することは必要ですが、1424項目からなるICFの生活機能分類を基本にケアプ
ラン作成するという意味ではありません。)
以下にICFの概念図を示し、根本的な考え方をご紹介いたします。
背 景 因 子環 境 因 子 個 人 因 子
個人因子個人の人生や生活の特別な背景であり、健康状態や健康状態以外のその人の特徴からなる。
社会的環境因子コミュニティーや社会における公式または非公式な社会構造、サービス、全般的なアプローチ、または制度であり、個人に影響を与えるもの。
個人的環境因子家庭や職場、学校などの場面を含む個人にとって身近な環境のこと。
ICF(国際生活機能分類)モデル
健康状態
活 動 参 加心身機能・身体構造
環境因子 個人因子
第
1
章
ケア豆事典 1-22
利用者との出会い
生活機能の階層構造(各階層の特徴)
参 加
例:主婦としての役割、親や祖
父母としての役割、地域社会(町内会や交友関係)のなかでの役
割、その他色々な社会参加での
役割。
それらが困難になった状態は参加制約。
活 動
日常生活活動(ADL)から家事、
仕事、人との交際、趣味等、生活行為のすべて。
それらが困難になった状態は
活動制限。
心身機能・身体構造
社会レベル
(人生レベル)
個人レベル
(生活レベル)
生物レベル
(生命レベル)
それに問題が起こった状態は機
能障害(例:手足の麻痺、関節の拘縮)と構造障害(例:手足
の一部の切断など)。
*社会的な出来事に関与したり、
役割を果たすこと。
*生きていくのに役立つ様々な
行為のこと。
*体の働きや精神の働き、また
体の一部分の構造のこと。
ICFモデルに沿ってケアプランを考える