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1 OSの役割と動作 ここでは、コンピューターの基本的な構成やオペレーティングシステムの基本的な役割と 操作を学習します。 1-1-1 コンピューターの基本構成 現代社会では、さまざまな種類のコンピューター機器が各分野で利用されています。身近 なものでは、パソコン、タブレット、スマートフォンなどがありますが、こうしたコンピュー ター機器は「ハードウェア」と「ソフトウェア」で構成されています。 ハードウェアとは、コンピューターの物理的な構成要素を指します。たとえば、CPU やメ モリなどの内部装置、マウスやプリンターの周辺機器などがあり、これらはすべてハードウェ アに分類されます。 それに対して、コンピューターを動かすためのプログラムをソフトウェアと呼びます。た とえば、ハードウェアを動かすための処理手順プログラムや、文書やイラストを作成するプ ログラムなどがあり、これらはすべてソフトウェアに分類されます。 このように、すべてのコンピューター機器はハードウェアとソフトウェアの 2 つの要素か ら構成されています。 1-1-2 OS とアプリケーション ソフトウェアを大きく分けると「OS」と「アプリケーション」の 2 つに分類されます。 OSの役割 OSとは「オペレーティングシステム」のことで、コンピューター機器のシステム全体を管理 するためのソフトウェアです。複雑化するコンピューター機器を制御するためには欠かせな いソフトウェアで、 「基本ソフトウェア」とも呼ばれます。 1 1 オペレーテ ングシステム OSの基礎 1-1

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Page 1: 1 オペレーテ ングシステム OS の基礎Android(アンドロイド) グーグル社などが中心となり設立した団体「Open Handset Alliance(OHA)」が「Linux」をベースとして開発した携帯情

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OSの役割と動作

 ここでは、コンピューターの基本的な構成やオペレーティングシステムの基本的な役割と

操作を学習します。

1-1-1 コンピューターの基本構成

 現代社会では、さまざまな種類のコンピューター機器が各分野で利用されています。身近

なものでは、パソコン、タブレット、スマートフォンなどがありますが、こうしたコンピュー

ター機器は「ハードウェア」と「ソフトウェア」で構成されています。

 ハードウェアとは、コンピューターの物理的な構成要素を指します。たとえば、CPUやメ

モリなどの内部装置、マウスやプリンターの周辺機器などがあり、これらはすべてハードウェ

アに分類されます。

 それに対して、コンピューターを動かすためのプログラムをソフトウェアと呼びます。た

とえば、ハードウェアを動かすための処理手順プログラムや、文書やイラストを作成するプ

ログラムなどがあり、これらはすべてソフトウェアに分類されます。

 このように、すべてのコンピューター機器はハードウェアとソフトウェアの2つの要素か

ら構成されています。

1-1-2 OSとアプリケーション

 ソフトウェアを大きく分けると「OS」と「アプリケーション」の2つに分類されます。

OSの役割 OSとは「オペレーティングシステム」のことで、コンピューター機器のシステム全体を管理

するためのソフトウェアです。複雑化するコンピューター機器を制御するためには欠かせな

いソフトウェアで、「基本ソフトウェア」とも呼ばれます。

第1章 オペレーティングシステム(OS)の基礎

第1章

オペレーティングシステム(OS)の基礎

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Page 2: 1 オペレーテ ングシステム OS の基礎Android(アンドロイド) グーグル社などが中心となり設立した団体「Open Handset Alliance(OHA)」が「Linux」をベースとして開発した携帯情

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OSの役割と動作

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第1

 OSの主な役割としては、ハードウェアの管理、ソフトウェアの管理、ファイルの管理など

があります。

表1-1 OSの役割

アプリケーションの役割 コンピューター機器の発展とともにその使用目的も多様化が進んできました。資料の作成、

情報の検索、写真の加工など多岐にわたります。こうした目的を達成するためには、そのため

の機能を持ったソフトウェアが必要です。たとえば、コンピューターで文書や表を作成するに

は、ワープロソフトや表計算ソフトなどのソフトウェアを使用します。

 こうした特定の目的のために使用するソフトウェアを総称してアプリケーションと呼びま

す。OSが「基本ソフトウェア」と呼ばれるのに対して、アプリケーションソフトウェアは「応

用ソフトウェア」とも呼ばれます。

 アプリケーションは、OSが提供する機能を利用することを前提として開発されています。

そのため、アプリケーションが正常に動作するためには、それに対応したOSが必要です。

OSの種類やバージョンが異なると動作しないアプリケーションもあるので注意しましょう。

 アプリケーションの具体的な役割については第3章で学習します。

1-1-3 ソフトウェアとハードウェアの関係

 コンピューターが正常に動作するためには、ハードウェアとソフトウェア(OS、アプリケー

ション)が正しく連携することが必要です。コンピューター全体のデータの流れは次のとおり

です。

第1

*1 ユーザーインターフェイス:ユーザーがデータを入力する際の表示形態や、処理の結果をユーザーに提供する際の表示様式など、コンピューターの操作環境のことです。

外部記憶装置(第 2 章 2-1-3 記憶装置の種類と役割)▶ P.74

役割 説明

ハードウェアの管理 さまざまな種類のハードウェアが競合しないよう管理したり、ハードウェアとソフトウェアのデータのやり取りを制御したりする。また、新しいハードウェアが接続されたときには、自動的に認識して使用できるようにする。

ソフトウェアの管理 複数のソフトウェアを並行して実行できるよう管理したり、ソフトウェアにユーザーインターフェイス*1を提供したりする。

ファイルの管理 ファイルを外部記憶装置に書き込んだり、外部記憶装置から読み込んだりする。

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第1章 オペレーティングシステム(OS)の基礎

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1.データ入力:入力装置と呼ばれるハードウェアでさまざまなデータを入力します。データはOSを介してアプリケーションに渡されます。

2.データ処理:ユーザーからの命令や指示によりコマンドが実行されると、アプリケーションはデータ処理を行います。

3.データ出力:アプリケーションにより処理されたデータは、OSを介して出力装置と呼ばれるハードウェアで表示、印刷されます。

 次にそれぞれの処理手順について詳しく見てみましょう。

データ入力 「入力」とは、入力装置を使ってデータをコンピューターに入れる処理のことです。データに

はさまざまなタイプがあり、そのタイプに応じた入力装置を使って入力します。たとえば、文

字や数値データはキーボード、画像はデジカルカメラ、音声はマイク、映像はデジタルビデオ

カメラを使って入力します。入力したデータはOSを介してアプリケーションに渡されます。

入力装置 (第 2 章 2-1-4 ■ 入力装置)▶ P.81 出力装置 (第 2 章 2-1-4 ■ 出力装置)▶ P.82

コンピューター本体

3. データ出力1. データ入力 2. データ処理

出力装置入力装置

アプリケーション

OS

データの流れ

データの流れコンピューター本体

OS

入力装置アプリケーション

文字

画像

映像

音声

OS

入力装置

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第1

コマンドの実行とデータ処理 「コマンド」とは、アプリケーションに与える命令や指示のことです。ユーザーは、アプリ

ケーションの持つ機能をコマンドとして実行して、さまざまな処理を行います。たとえば、

文書を印刷したいときには印刷コマンドを、画像を保存したいときには保存コマンドを実行

します。

 コマンドを実行するには、マウスでコマンドボタンをクリックしたり、キーボードでコ

マンドを直接入力したりします。これらの実行命令はOSを介してアプリケーションに伝え

られます。ユーザーによってコマンドが実行されると、アプリケーションにあらかじめ組

み込まれているルールに従ってデータを処理します。このような、特定の目的を達成する

ために決められたルールのことを「アルゴリズム」といいます。たとえば、表計算ソフトの

場合、あるセルに対してSUM関数*1を入力すると、指定したセル範囲の合計が表示されます。

これは、表計算ソフトにあらかじめ組み込まれている加算ルールに従ってデータ処理が行

われるからです。

データの出力 アプリケーションにより処理されたデータは、OSを介して出力装置と呼ばれるハードウェ

アで表示されます。このように、コンピューター内で処理された結果を、出力装置を使って

表示する処理を「出力」といいます。出力装置には、処理結果を表示するモニター、文書や画

像を用紙に印刷するプリンター、音声や音楽を伝えるスピーカーなどがあります。

*1 SUM 関数:マイクロソフト社の表計算ソフト「Microsoft Excel (エクセル)」で使われている関数。指定範囲の合計の値を求めることができます。

入力装置

コンピューター本体

OS

文字 画像 映像 音声

データ処理の結果

アプリケーション

アルゴリズム

OS

コマンドの実行

実行命令の流れ

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第1章 オペレーティングシステム(OS)の基礎

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1-1-4 OSの種類

 OSにはさまざまな種類があり、コンピューターの種類や使用目的に合わせてそれぞれ利用

されています。

表1-2 OSの種類

OSの名称 特徴

MS-DOS(エムエスドス) マイクロソフト社が開発したCUI*1のOS。アイビーエム社のパソコン「PC/AT」に採用されたことで全世界に普及し、Windowsが登場するまでPC/AT互換機用のOSとして利用されていた。

Windows(ウィンドウズ) マイクロソフト社が開発したOS。GUI*2を採用した「Windows 3.1」が、PC/AT互換機用の標準OSとして一気に普及した。その後、バージョンアップを繰り返して、現在パソコン用のOSとしては最も多く利用されている。

*1 CUI:「Character-based User Interface」(キャラクターベースユーザーインターフェース)の略。文字で情報を表示し、キーボードから文字列(コマンド)を入力して操作を行う方式です。*2GUI:「Graphical User Interface」(グラフィカルユーザーインターフェース)の略。情報を画像やアイコンなどグラフィックで表示し、マウスなどのポインティングデバイスから操作が実行できる方式です。

出力装置

コンピューター本体 アプリケーション

OS

データ処理の結果

データの流れ

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Mac OS(マックオーエス) アップル社が開発したOS。同社のパソコン「Macintosh(Mac)」専用のOSで、洗練されたGUIが特徴。主に画像や動画を扱う業界などで広く利用されている。

UNIX(ユニックス) AT&T社のベル研究所が開発したOS。高い信頼性を持つOSで、学術機関や研究所などのコンピューターで利用されている。UNIXから派生したOSが多数あり、「Linux」(リナックス)や「FreeBSD」(フリービーエスディ)などは基本的に無償で入手できる。※図は Linux(debian)

Windows Phone(ウィンドウズフォン)

マイクロソフト社が開発した携帯情報端末用のOS。モバイル版のオフィスソフト「Microsoft Office Mobile」が標準搭載されており、パソコンで作成した文書や表計算シートの閲覧、編集ができる。

iOS(アイオーエス) アップル社が「Mac OS」をベースとして開発した携帯情報端末用のOS。同社のスマートフォン「iPhone」やタブレット

「iPad」などに搭載されている。

Android(アンドロイド) グーグル社などが中心となり設立した団体「Open Handset Alliance(OHA)」が「Linux」をベースとして開発した携帯情報端末用のOS。基本的に無償で提供されており、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末に搭載されている。

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