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17 2  「やり取り」の帯活動アイデア 活動のねらい 「英語の授業は,教師・生徒間も生徒・生徒間も英 語でコミュニケーションを取りながら進めたい」そん な願いを持ちながら授業が行われている。しかし,常 に日本語を使って生活している教室で,生徒に「英語 を使ってコミュニケーションを取りたい」と思わせる 雰囲気を作ることは容易なことではない。 「英語の授業は英語で」という雰囲気を作り出すに は,単発の活動だけではなく,毎日継続的に「やり取り」 に取り組ませることが大切である。 そこで,短時間で取り組ませることができる帯活動 と,すでに取り組んでいる帯活動に「やり取り」的要素 を盛り込む工夫を紹介する。 「やり取り」がメインの帯活動 新学習指導要領の「話すこと[やり取り]」の目標のア (関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて 即興で伝え合うことができるようにする。)の達成に向 けて,次のような活動をする。 ◆教科書ピクチャーカードを利用した Picturedescription(指示も含めて 3~ 4分程度) 新学習指導要領の「話すこと[やり取り]」の目標の イ(日常的な話題について,事実や自分の考え,気持 ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり, 相手からの質問に答えたりすることができるように する。)の達成を目指して,既習の教科書ページのピ クチャーカード(以下 PC)を見て,その絵の内容を口 頭で伝える活動も効果的である。 生徒(S)はペアを作る。S1 は教師(T)に顔を向 け,S2 は教師が見えないように座り,ペンと紙 を用意する。 T が教科書の既習ページの PC 1 枚示す。 例) S1 PC の内容を英語で伝える。S2 S1 の説明 を聞きながら紙にイラストを描き,PC を再現し ていく。(S2 からS1 に質問をすることができる。) S1: Saki is writing a letter. She looks excited. Her brother, Haruki, is sleeping in the bed. ... など ❹クラス全体で,伝え方の確認をする。 既習の他学年の PC も使うことができ,くり返し取 り組むことができる。また,文法事項の復習機会とし ても有効に活用することができる。 Round 使用する ワークシート 活動 目標 1〜2 A B 10 の疑問文の意味を確認し,相手に質問する。 スムーズに発音できる。質問に応じた答えを スムーズに発する。 3〜4 A 答える役割のときは,WS を縦半分に折り,答 え方を見ないようにして答える。余裕ができ たら,WS を見ずに答える。 質問に応じた答えを言えるようになる。相づ ちをまじえながら会話する。 5〜6 B Round3 4 と同様に活動する。 日本語の意味に合うように疑問文を言えるよ うになる。 7〜9 A / B 相手の答えに応じて,追加の質問を考えてす る。 決められたものだけでなく,自分で習ったこ とを応用し使う。 10 A / B Round7 9 と同様の活動後,相手について の情報を英文にまとめる。 相手からの情報を聞き取る。 ◆QuickQ&A(指示も含めて3 分程度) 本書次々ページのような両面印刷のワークシー ト(以下 WS)を使い,10 の質問をパートナーにす る活動をする。(手順は以下の表参照) WS の自由度を徐々に高める。(例えば,「食べ物 に関する質問をしなさい」など,具体的な質問内容 ではない指示にする。)この活動を経て,自由な会話 (チャット)へつなげられるように実施する。

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Page 1: 2 「やり取り」の帯活動アイデア...17 2 「やり取り」の帯活動アイデア 1 活動のねらい 「英語の授業は,教師・生徒間も生徒・生徒間も英

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2 「やり取り」の帯活動アイデア

1 �活動のねらい

「英語の授業は,教師・生徒間も生徒・生徒間も英語でコミュニケーションを取りながら進めたい」そんな願いを持ちながら授業が行われている。しかし,常に日本語を使って生活している教室で,生徒に「英語を使ってコミュニケーションを取りたい」と思わせる雰囲気を作ることは容易なことではない。「英語の授業は英語で」という雰囲気を作り出すに

は,単発の活動だけではなく,毎日継続的に「やり取り」に取り組ませることが大切である。

そこで,短時間で取り組ませることができる帯活動と,すでに取り組んでいる帯活動に「やり取り」的要素を盛り込む工夫を紹介する。

2 �「やり取り」がメインの帯活動

新学習指導要領の「話すこと[やり取り]」の目標のア(関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。)の達成に向けて,次のような活動をする。

◆教科書ピクチャーカードを利用した Picture�description(指示も含めて 3~ 4分程度)

新学習指導要領の「話すこと[やり取り]」の目標のイ(日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり,相手からの質問に答えたりすることができるようにする。)の達成を目指して,既習の教科書ページのピクチャーカード(以下PC)を見て,その絵の内容を口頭で伝える活動も効果的である。❶ 生徒(S)はペアを作る。S1 は教師(T)に顔を向

け,S2 は教師が見えないように座り,ペンと紙を用意する。

❷Tが教科書の既習ページのPCを 1 枚示す。 例)

Unit 10U10

Part 1 できることを述べよう ① 106ページ【1 -- 170】

❸ S1 はPCの内容を英語で伝える。S2 はS1 の説明を聞きながら紙にイラストを描き,PCを再現していく。(S2からS1に質問をすることができる。)

 S1: Saki is writing a letter. She looks excited.

Her brother, Haruki, is sleeping in the bed. ...

など❹クラス全体で,伝え方の確認をする。

既習の他学年のPCも使うことができ,くり返し取り組むことができる。また,文法事項の復習機会としても有効に活用することができる。

Round 使用するワークシート 活動 目標

1 〜 2 A & B10 の疑問文の意味を確認し,相手に質問する。 スムーズに発音できる。質問に応じた答えを

スムーズに発する。

3 〜 4 A答える役割のときは,WSを縦半分に折り,答え方を見ないようにして答える。余裕ができたら,WSを見ずに答える。

質問に応じた答えを言えるようになる。相づちをまじえながら会話する。

5 〜 6 BRound3 ~ 4 と同様に活動する。 日本語の意味に合うように疑問文を言えるよ

うになる。

7 〜 9 A / B相手の答えに応じて,追加の質問を考えてする。

決められたものだけでなく,自分で習ったことを応用し使う。

10 A / BRound7 ~ 9 と同様の活動後,相手についての情報を英文にまとめる。

相手からの情報を聞き取る。

◆Quick�Q&A(指示も含めて 3分程度)本書次々ページのような両面印刷のワークシー

ト(以下WS)を使い,10 の質問をパートナーにする活動をする。(手順は以下の表参照)

WSの自由度を徐々に高める。(例えば,「食べ物に関する質問をしなさい」など,具体的な質問内容ではない指示にする。)この活動を経て,自由な会話

(チャット)へつなげられるように実施する。

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3 �帯活動に「やり取り」的要素を盛り込む工夫

各教室では,すでに様々な帯活動が行われている。「やり取り」以外の技能をメインとした帯活動の中でも,少しの工夫で「やり取り」の雰囲気を作り出すことができる。帯活動は毎時間行われるので,たとえわずかな時間の「やり取り」であっても,くり返し取り組ませることによりスローラーナーにも定着する。一人一人が自信をもって英語による「やり取り」を行うことができるようになる。

◆帯活動BINGOでの工夫BINGOの活動の主な目的は,授業の導入として

英語の音に慣れさせること,文字と音の一致について意識的に理解させること,などがあるが,その活動の流れの中に定型的ではあるが以下のような短い会話をさせる。❶ 曜日・日付・天気をペアで確認し,BINGOの所定の

位置に書く。

 ( “What day is it?” / “What is the date?” / “How is

the weather?” の問答をペアで行う。)

❷BINGO実施。

❸ 勝者の確認。ペアでどちらが多くBINGOを獲得し

たか確認する。

 S1: How many BINGOs did you get?

 S2: Five.

 S1: Really? I got two.

❹BINGOの地図でどこにいるかを確認する。

 S1: Where are you on the map?

 S2: I’m in London. How about you?

 S1: I’m in Los Angeles.

 S2: Wow. You are lucky!

※ 上記のようなやり取りに慣れてきたら,Where were

you? やHow long have you been there? などの表現

を導入してやり取りさせることができる。既習の文

法事項の復習にすることもでき,また未習の文法事

項の導入にすることもできる。

▲使用教材:浜島書店「Let’s Enjoy BINGO」

いずれの「やり取り」も,最初のうちはできるだけ生徒が聞き慣れているフレーズから始める。例えば聞き返す場合には S1“Pardon?”,その後 “Say that again.”,

“Will you say that again?”, “Would you say that

again?”などを導入する。S2 の返答も “OK.”, “I see.”, “Of course.”など,既習事項を思い出させてバリエーションを増やすことができる。

◆宿題点検での工夫-授業前・後の帯活動毎日の宿題点検を行いながら “Have you finished

your homework?” などから始めて,その日に応じた短いやり取りを一人一人の生徒とする。

授業内で様々な工夫を試みてはいるものの,「間違えたらどうしよう」という不安や緊張,恥ずかしさなどから,英語でやり取りすることへの抵抗がある生徒は少なくない。しかしそうした生徒でも,授業の始まる前,個別に英語で話しかけたりすると,思いのほか英語だけでコミュニケーションを取ろうとする。少人数授業を実施していれば,授業前後合わせて 10 分あれば,全員の生徒とやり取りすることができるだろう。

4 �最後に

「やり取り」する力を育てていくには,「やり取り」することを多く体験させていくことが大切であるのは言うまでもない。授業の中で,「やり取り」のきっかけとなるフレーズを段階的に導入し,継続的に取り組ませることにより,「やり取り」することへの気持ちのハードルを徐々に低くすることができる。

帯活動の工夫によって,スローラーナーにも「やり取り」できることが増えると,日本語によらなくても英語の「やり取り」の中で教室にいる全員と楽しい話で盛り上がることができるようになる。英語を使って楽しい体験ができたという思いを一つでも多く生徒の内面に刻むことが,次の学習への動機付けにつながっていくだろう。

短い会話を通してやり取りの雰囲気作り

える。 S1: Will you choose a short sentence, please?

 S2: OK.

❸ S2 はページから一文選び読み上げる。S1 は聞いて書き取る。聞き取れなかった場合は再度言うように伝える。

 S1: Will you say that again?

 S2: Sure.

◆帯活動ディクテーションでの雰囲気作り教科書の既習ページから,一文を聞き取って書く

活動。❶既習ページの音読練習をする。❷ ペアになり,S1 は教科書を閉じて要望をS2 に伝

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