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2010 年度 太陽光発電用パワーコンディショナの 出荷量動向調査報告 一般社団法人 日本電機工業会 PV パワコン統計委員会 1.まえがき 太陽光発電システムの出荷量動向調査は、1987 年に旧通 産省工業技術院委託事業である新発電システムの標準化に 関する調査研究の一環として、一般社団法人 日本電機工業 会(JEMA)太陽光発電システム・機器分科会が、調査内容 を審議し、1987 年度出荷分から本格調査を開始した。2001 年度からは JEMA の自主事業として実施していたが、この数 年は、システム数の増加及び流通経路の複雑化により、シス テム単位での出荷量を把握することが困難になってきた。そ のため、JEMA 太陽光発電システム技術専門委員会で調査 方法および調査内容について審議し、2008 年度から対象を パワーコンディショナ(以下、PCS とする。)に絞り調査を行 うこととした。2011 年度からは、コンプライアンス整理など のために、新たに PV パワコン統計委員会を設置し、JEMA 会員のうち太陽光発電用 PCS を取り扱う 30 社に対して調査 票を送付し、PCS を生産している 16 社(表1 参照)から調 査票による回答を得た。本調査報告は、各社から回答された データを分析した結果をまとめたものである。 2.太陽光発電システム用 PCS 出荷量の調査方法 今回実施した調査の概要を以下にまとめた。 a) 調査対象期間:2010 年度分(2010 年 4 月 1 日~ 2011 年 3 月 31 日) b) 調査項目:上記対象期間中に出荷された太陽光発電用 PCS について、次の項目について調査した。 仕向け先(国内住宅向け・国内非住宅向け・海外向け・ その他 *1 )別の年間出荷台数、年間出荷金額 出力容量、出力電圧方式(単相・三相、直流・交流)、 自立運転機能の区別 3.調査結果 3.1 総出荷台数 2010 年度の総出荷台数は 256,315 台で、前年度 172,791 台の 148.3%に達した。仕向け先別では、国内住宅向け出荷 が対前年比 142.1%の 233,304 台、国内非住宅向け出荷が対 表1 2010 年度太陽光発電用 PCS 出荷量動向調査回答会社一覧表 (五十音順) ABB 株式会社 オムロン株式会社 サンケン電気株式会社 株式会社 GS ユアサ シャープ株式会社 株式会社 ダイヘン 東芝三菱電機産業システム株式会社 三菱電機株式会社 三洋電機株式会社 山洋電気株式会社 日新電機株式会社 パナソニック電工株式会社 株式会社 日立製作所 日立産機システム株式会社 富士電機株式会社 株式会社 明電舎 (計 16 社) * 1:“その他”はすべての調査票において 0 であったため、今回の各図から省いている。 [トピックス]調査事業紹介/ 2010 年度 太陽光発電用パワーコンディショナの出荷量動向調査報告 19

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Page 1: 2010年度 太陽光発電用パワーコンディショナの 出荷量動向調査 … › Japanese › res › solar › pdf › denki... · 2020-06-29 · 2010年度の総出荷台数は256,315台で、前年度172,791

2010年度 太陽光発電用パワーコンディショナの出荷量動向調査報告

一般社団法人日本電機工業会

PVパワコン統計委員会

1.まえがき

太陽光発電システムの出荷量動向調査は、1987 年に旧通産省工業技術院委託事業である新発電システムの標準化に関する調査研究の一環として、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)太陽光発電システム・機器分科会が、調査内容を審議し、1987 年度出荷分から本格調査を開始した。2001年度からは JEMAの自主事業として実施していたが、この数年は、システム数の増加及び流通経路の複雑化により、システム単位での出荷量を把握することが困難になってきた。そのため、JEMA太陽光発電システム技術専門委員会で調査方法および調査内容について審議し、2008 年度から対象をパワーコンディショナ(以下、PCSとする。)に絞り調査を行うこととした。2011 年度からは、コンプライアンス整理などのために、新たにPVパワコン統計委員会を設置し、JEMA会員のうち太陽光発電用PCSを取り扱う30社に対して調査票を送付し、PCSを生産している16社(表 1参照)から調査票による回答を得た。本調査報告は、各社から回答されたデータを分析した結果をまとめたものである。

2. 太陽光発電システム用 PCS出荷量の調査方法

今回実施した調査の概要を以下にまとめた。a) 調査対象期間:2010 年度分(2010 年 4 月 1日~ 2011年 3月31日)

b) 調査項目:上記対象期間中に出荷された太陽光発電用PCSについて、次の項目について調査した。● 仕向け先(国内住宅向け・国内非住宅向け・海外向け・その他*1 )別の年間出荷台数、年間出荷金額● 出力容量、出力電圧方式(単相・三相、直流・交流)、自立運転機能の区別

3.調査結果

3.1 総出荷台数2010 年度の総出荷台数は 256,315 台で、前年度 172,791

台の 148.3%に達した。仕向け先別では、国内住宅向け出荷が対前年比 142.1%の 233,304 台、国内非住宅向け出荷が対

表1(五十音順)

ABB株式会社オムロン株式会社サンケン電気株式会社株式会社GSユアサシャープ株式会社株式会社 ダイヘン

東芝三菱電機産業システム株式会社三菱電機株式会社三洋電機株式会社山洋電気株式会社日新電機株式会社パナソニック電工株式会社

株式会社 日立製作所日立産機システム株式会社富士電機株式会社株式会社 明電舎

(計16社)

* 1:“その他”はすべての調査票において 0であったため、今回の各図から省いている。

[トピックス]調査事業紹介/ 2010年度 太陽光発電用パワーコンディショナの出荷量動向調査報告 19

Page 2: 2010年度 太陽光発電用パワーコンディショナの 出荷量動向調査 … › Japanese › res › solar › pdf › denki... · 2020-06-29 · 2010年度の総出荷台数は256,315台で、前年度172,791

前年比 152.4%の 4,937 台と順調に増加した。一方、海外向け出荷は対前年比 421.5%の 15,484 台となっている。前年度に一度落ち込んだということを考慮しても急激な増加と言える。(図1参照)出力容量別の出荷台数を図 2に示す。10kW 未満が

244,348 台で 95%を占めており、前年度の97%と比べてもほぼ同様の水準となっている。仕向け先別の出力容量台数の割合を図3に示す。海外向け 10kW未満の台数割合が 67%と大幅に増加しており、海外向けの全体台数も増加していることと併せて見ると、一部の海外市場の獲得が進んでいるようである。

3.2 PCSの各仕様の内訳PCSの仕様について仕向け先別に以下の各項目に示す。3.2.1 単相・三相単相・三相の区別について図4に示す。海外向けの単

相の割合が前年度に続き増加傾向にある。

3.2.2 直流・交流全てのPCSにおいて直流出力はなく、交流出力を具備

している。3.2.3 自立運転機能自立運転機能の有無を図5に示す。国内住宅向けは例

年通り、全てに自立運転機能が搭載されている。また、前年度まで海外向けの自立運転機能を搭載したものの割合は0%(0台)だったのに対し、2010 年度は 6,250 台が同機能を搭載しており、この点においてトレンドの変化が見られる。

20 電機 2012・April

TOPICS トピックス

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000

合計国内住宅国内非住宅海外向け

2010年度

2009年度

2008年度

6,0541,825

59,38267,261

3,6734,937

164,181172,791

15,4847,527

233,304256,315

図1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

100kW以上10kW以上100kW未満10kW未満

2010年度

2009年度

国内住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

国内非住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

海外向け 2008年度 0% 99% 1%

0% 97% 3%

0% 92% 8%

9% 86% 5%

100% 0%

100% 0%

100% 0%

0% 96% 4%

67% 31% 2%

図3

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000

10kW未満10kW以上100kW未満100kW以上

2010年度

2009年度

2008年度

372

213

593

3,765

5,382

11,374

63,124

167,196

244,348

図2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

三相単相

2010年度

2009年度

国内住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

国内非住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

海外向け 2008年度 3,518 2,536

359 1,466

996 3,941

2,023 5,504

59,382 0

164,181 0

233,304 0

2,573 1,100

9,436 5,945

図4

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* 2: 出典:太陽光発電協会:日本における太陽電池出荷量の推移(http://www.jpea.gr.jp/pdf/qlg2010.pdf)

* 3: 生産動態統計調査における販売金額:http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result-4.html

4.あとがき

2010 年度のPCSの総出荷台数は対前年比 148.3%、前年度のように対前年比 256.9%といった大幅な増加はなかったものの、順当に伸びているといえる。また、総容量では対前年比 168.6%(今年度 1.24MW)となっており、総出荷台数における対前年比と合せると、システムの大型化に合せた大容量PCSの出荷が増えていることもわかる。対して海外向け出荷は、小容量の台数が伸び、かつ自立運

転機能を具備するものが出荷されているなど、これまでとは違った需要も出てきているものと思われる。

PCSの国内住宅向け出荷台数は対前年比 142.1%となっているが、これは太陽電池(セル・モジュール)の国内住宅向け出荷量(容量:kW)の対前年比 158.6%*2と比べてもほぼ同程度の増加率である。なお、市場規模(金額)については、経済産業省 生産動

態統計調査の「販売金額*3」を定義として調査したところ、8割ほどの企業にご協力いただけたため、ご回答頂けた各社の金額から1kWあたりの価格を算出し、全体容量に乗じて算出した。その結果、451.3 億円となった。

全ての[PCS台数×PCS容量]

算出式(参考):

[金額の合計]

[金額の回答のあった各社の PCS台数×PCS容量 ]×

2011 年度以降の出荷量動向調査については、新規参入メーカや輸入も増えることから、今回のように会員メーカ限定で実施することについても議論し、対応して行くことが必要と思われる。最後に、ご回答頂いた各社に厚く感謝するとともに、今後

も日本電機工業会の自主事業として、太陽光発電用パワーコンディショナ出荷量動向調査を継続していく所存である。

[トピックス]2010年度 太陽光発電用パワーコンディショナの出荷量動向調査報告 21

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自立運転無し自立運転有り

2010年度

2009年度

国内住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

国内非住宅向け 2008年度

2010年度

2009年度

海外向け 2008年度 0 6,022

233 1,575

613 4,324

558 6,969

58,652 730

162,265 1,916

231,552 1,752

0 3,673

6,250 9,234

図5