2012デジタル教科書学会 web用
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タブレット端末の表計算アプリ活用
から見直す中学校数学科
-「ミニマックス戦略」を扱う授業開発を通して-
小池 翔太 千葉大学大学院教育学研究科
阿部 学 千葉大学大学院人文社会学研究科
根岸 千悠 千葉大学大学院人文社会学研究科
猪狩 裕 千葉大学教育学部 学部生
藤川 大祐 千葉大学教育学部
日本デジタル教科書学会 設立記念全国大会 2012.8.18
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はじめに(問題の所在) 1
研究の目的 0
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
はじめに(問題の所在) 1
研究の目的 0
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
研究の目的
中学3年生対象の選択数学において、
・タブレット端末(Apple iPad2)
・表計算アプリ(Numbers)
を活用した授業を実践する
授業の成果を示すことで、 中学校数学科の教育課程を見直していく
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はじめに(問題の所在) 1
研究の目的 0
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
問題の所在 1
-数学の教育課程・教育研究の現状と課題(1)
近年のコンピュータの進歩によって、 数学研究が大きく変化してきている。
こうした情報化社会における数学の教育課程の見直しが議論されている。
しかし、実生活に近い状況、 実生活に直接関わる状況を数学の教科で、 十分取り上げられていない現状がある。
問題の所在 1
-数学の教育課程・教育研究の現状と課題(2)
「教具・作業の限界を克服する役目をパソコンに負わせ、子どもの直感的思考と統合的思考の 調和を助長させること」(岡森、1990)
韓国では、情報化に伴い発達した離散数学 (グラフ理論・ゲーム理論など)が、2000年から高等学校の教育課程に組み込まれている (国立教育政策研究所、2002 )
問題の所在 1
-「教育の情報化ビジョン」から見る数学科
平成23年4月28日 文部科学省
教育の情報化ビジョン ~21世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~
(第2章 情報活用能力の育成)
情報活用能力の今後の在り方や、必要とされる具体的な教育内容、その指導方法等について 検証することが考えられる。
タブレット端末・スマートフォンなどのデバイスが登場する中で、日本の数学科はどうあるべきか
はじめに(問題の所在) 1
研究の目的 0
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
授業の開発 2
-「ゲーム理論」と「ミニマックス戦略」
【ゲーム理論】
人間社会の社会的行動を厳密に分析するための数学的方法と、それによる社会認識を提供する手法。 (鈴木光男(1997)『新ゲーム理論』勁草書房)
【ミニマックス戦略】
片方が勝った分だけもう片方が負けるゲーム (2人ゼロ和ゲーム)において、確実ではない勝利を求めるのではなく確実な勝利を狙い、損失が 出る場合はできるだけ損失を少なくする。 (トム・ジークフリード(2008)『もっとも美しい数学 ゲーム理論』文藝春秋)
授業の開発 2
-ミニマックス戦略を中学生が理解するには?
ミニマックス戦略は、リスクマネージメントの理論で、実社会における意思決定に必要となる→中学生に教えることにも意義あることでは
武蔵(2009)は、じゃんけんゲームである 「グリコゲーム」を題材として、ミニマックス戦略を扱った授業実践を行った。
馴染みのゲームとはいえ、戦略の手法は難しい。 そこで、タブレット端末の表計算アプリが有効に。
はじめに(問題の所在) 1
研究の目的 0
授業の開発 2
授業の実践と結果 3
授業の実践と結果 3
-授業の内容(45分×4回)
回 内 容
1 グリコゲームのルール確認。アルゴリズムを知る。 必勝法を予想する。
2 ミニマックス戦略を知る。 Numbersを操作し、勝負を大量にシミュレートする。
3 ミニマックス戦略を、樹形図を用いて確率的に考える。Numbersを活用する。
4 ミニマックス法の証明。投資などを例にして、 ミニマックス戦略で社会を読み解く。
・千葉大学教育学部附属中学校 3年生20名
・選択教科10時間のうちの4時間で実施
※詳しくは、http://ace-npo.org/fujikawa-lab/other/math1.htmlか「社会を読み解く数学 千葉」で検索
授業の実践と結果 3
-授業の内容(1時間目/4時間)
(1)グリコゲームのルール確認。
(2)アルゴリズム(※)を知る。 (※)計算の手順を表現・整理する。
(3)グリコゲームの必勝法を予想する。
・必勝法『ある』7名
・必勝法『ない』11名
「やってみてわかったことは、相手がチョキを出す割合が高かった」
「グー・パーの場合は心理戦になる」
「じゃんけんが公平なら確率とかから考えても、絶対に勝つことは難しい」
「負けない方法ならある。それは「やらない」こと。 」
(Image)
授業の実践と結果 3
-授業の内容(2時間目/4時間)
(1)ミニマックス戦略を知る。
(2)Numbersを操作し、勝負を大量にシミュレートする。
・「必勝法」が存在しないことを、背理法を使って証明。
・ ど ん な 戦 略 の 相 手 で も 「負けない」比率がないか、Numbersで再計算をして、シミュレーションをする。
・計算結果は、プリントに記録を残すようにする。
(Image)
授業の実践と結果 3
-授業の内容(3時間目/4時間)
・対戦回数を30回と想定した時、確率と獲得できる点(歩数)を、樹形図を使って整理する。
・自分の比・相手の比をシミュレートし、Numbersで計算して予想される合計点を出す。
・ミニマックス戦略の比を導く。
※5グループで出た比率の回答
→ 0:2:1,2:3:2,3:3:2,1:3:2,3:4:2
Numbersを活用して、ミニマックス戦略を樹形図を用いて確
率的に考える。
(Image)
授業の実践と結果 3
-授業の内容(4時間目/4時間)
・相手の比が極端な戦略を出す際に、自分の比をどうするか調整して、ミニマックス戦略の比を導き出す。
・社会で使われる例:
投資のリスク・リターン(現代ポートフォリオ理論)
出版社の雑誌発行部数を増やすときの販売戦略
(1)ミニマックス法の証明。
(2)投資などを例にして、ミニマックス戦略で社会を読み解く。
授業の実践と結果 3
-授業の成果
【成果】
・ iPad2活用でミニマックス戦略についての試行錯誤・ シミュレーションが効率的にできたこと
・数人で覗きこみながら手書きでの作業と併用して
操作ができた
(生徒の感想より)
○いろいろな可能性を考える時、表計算ソフトを使うと便利
●現実味のない手は計算をして求めても意味が無いと思うので、できるだけ現実的かつ負けにくい数を早く知りたいと思いました
授業の実践と結果 3
-授業の課題
【課題】
・Numbersでは再計算を行う機能が無く、操作が複雑であったり誤操作をしてしまったりすることがあった。
(オートフィルを行うことが現状で可能な方法)
・iPadの台数が十分に確保できず、1人当たりの活動時間が不十分であった。
(今回は4人で1台で実施)
タブレット端末の表計算アプリ活用
から見直す中学校数学科
-「ミニマックス戦略」を扱う授業開発を通して-
小池 翔太 千葉大学大学院教育学研究科
阿部 学 千葉大学大学院人文社会学研究科
根岸 千悠 千葉大学大学院人文社会学研究科
猪狩 裕 千葉大学教育学部 学部生
藤川 大祐 千葉大学教育学部
日本デジタル教科書学会 設立記念全国大会 2012.8.18
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