ベンチャー白書2016 -...

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ベンチャー白書2016 ベンチャービジネスに関する年次報告 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター ベンチャーニュース特 別 版

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ベンチャー白書2016ベンチャービジネスに関する年次報告

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター

ベンチャーニュース特別版

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ベンチャー白書 2016 ベンチャービジネスに関する年次報告

2016 年 11 月

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター

ベンチャーニュース特別版

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ベンチャー白書 2016 に含まれているコンテンツ

コンテンツ 電子版 ベンチャーニュース

特別版(このファイル) 冊子版

分析編

日本の VC による投資の動向 ● ●

海外の VC による投資の動向 ● ●

VB と大企業との協働 ● ●

VB 向けアンケート調査 ● ●

コラム ● ●

データ

VC 投資動向調査 ● ●

VC 等ファンド状況調査 ● ●

付録 政府・関連団体のベンチャー支援 ● ●

● : 含まれていることを示す

VC : ベンチャーキャピタル

VB : ベンチャー企業

ベンチャーニュース : 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の HP

にて無償で発信しているニュースレター

発行スケジュール 発行日 媒体 発行場所

電子版 2016 年 10 月 3 日 PDF

VEC の HP

コンテンツ販売サイト

データ提供先様サイト

ベンチャーニュース特別版

(このファイル) 2016 年 11 月 2 日 PDF VEC の HP

冊子版 2016 年 11 月 28 日 紙製本 全国の書店

オンライン書店

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目次ベンチャー白書 2016

海外のベンチャーキャピタルによる投資の動向

1.世界各国におけるベンチャー投資の動向

2.米国のベンチャー投資動向 I-17

- ベンチャーニュース特別版 -

各国のデータについて I-2

2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本) I-5

ベンチャー投資の国際比較(2011 ~ 2015 年) I-4

2015 年のベンチャー投資の状況 I-172015 年のファンド組成状況 I-222015 年の Exit 状況 I-232016 年上半期のベンチャー投資の状況 I-27

3.欧州のベンチャー投資動向 I-39欧州のプライベート・エクイティ投資の状況 I-402015 年のベンチャー投資の状況 I-41欧州内 VCファンドによる 2015 年の資金調達状況 I-452015 年の Exit 状況 I-482015 年のベンチャー投資の状況(国別) I-49

I-2

I-1

I-6アジアのベンチャー投資の概況①

I-8アジアのベンチャー投資の概況②

I-11中国のシード・アクセラレーター

I-14フィリピンのスタートアップ・エコシステム

I-29米国ベンチャー投資の変調

I-31株式型クラウドファンディングの幕開け

I-35シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情

I-33人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情

I-50英国の巻き返し

I-51オーストリアの参戦

I-53熱きインド

I-52バンコクの春

I-55明るいベルリン

20161102_04_ベンチャーニュース特別版_目次_1ページ.ai 1 2016/11/02 11:26:41

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ベンチャー企業と大企業との協働

1.ベンチャー企業と大企業との協働  ―協働をどのように進めていくか―

新興大企業と伝統的大企業…VBとの向き合い方に大きな違い I-70伝統的大企業にも大きな変化が …VBはイノベーションを起こす有力な選択肢の一つと認識 I-70

大企業における具体的な変化 I-76

協働相手の VBをどのように探すか I-72

おわりに ーイノベーション創出のために VBの担い手を増やすにはー I-84

2. 仮想座談会 I-87

I-70

I-69

国際編 I-56米国編 I-57欧州編 I-60

データ集

I-73大企業とベンチャーのマッチングが花盛り

I-74メガバンク、ベンチャー支援の主役に フィンテックがきっかけ

I-75研究と開発の間 ―「魔の川」― をつなぐ仲介者 

I-85学び方革命

I-66ベンチャー争奪 欧州各国、起業イベントが花盛り

I-67海外で CVC、オープンイノベーションを促進

I-67増えるアフリカに挑戦する起業家 VCも意欲

I-95スマートニュースやメルカリ、大型調達

I-96VR にゲーム各社のファンドが集中

I-97有力ベンチャーキャピタル、農水産業に焦点

I-98大学系 VCが本格始動

I-99大学発ベンチャー、世界へ飛躍

I-100シェアリングエコノミー協会が発足 政府とも連動

I-101FinTech への挑戦

I-80大企業がベンチャーとともに事業作るコーポレートアクセラレータープログラム

I-82カーブアウト、大企業の技術や人材生かす

I-77増加基調を続ける CVC 投資について留意すべきポイント

20161102_04_ベンチャーニュース特別版_目次_2ページ.ai 1 2016/11/02 11:20:54

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ベンチャー企業向けアンケート調査 I-103

付録

2.回答企業のプロフィールI-105業種 I-I-106ステージ

3.事業展開の状況I-108海外展開の状況I-109今後の事業計画

5.ベンチャー企業のニーズについてI-115当面の経営ニーズI-116人材ニーズ

6.その他の傾向I-117ピボットの有無I-118何社目の起業か

7.ベンチャー企業の創出・成長のための  政府等の政策面に関する要望

I-107ステージ×従業員数

4. 資金調達の状況I-111直近 1年間の資金調達状況I-112設立から現在までの資金調達状況I-114今後期待する資金調達元

1.2016 年調査概要 I-104

I-119

政府・関連団体のベンチャー支援 I-136

I-110起業するなら、米国? 日本?

I-122「地方創生ファンド」の現状と課題について

I-125専門的経営人材の蓄積が、創業と成長を加速させつつある

I-128ベンチャーと規制緩和

I-130ドローン規制

I-132ベンチャー創出は教育から

I-133ベンチャー企業、地方へ 地方での起業、促進の動きも

I-134ベンチャー倒産、水面下で休眠も相次ぐ

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I-1

海外のベンチャーキャピタルによる投資の動向

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I-2

1. 世界各国におけるベンチャー投資の動向

(1) 各国のデータについて

世界各国のベンチャー企業への投資の動向については、各国の関係組織がベンチャー投資に関

するデータを取りまとめている。本章では、米国、欧州、中国、日本の 4 地域に焦点を絞り、ベ

ンチャー投資の動向について比較する。また、米国と欧州については、NVCA(National Venture Capital Association)および Invest Europe(旧名 EVCA : European Private Equity and Venture Capital Association)による公表データをもとに、より詳細に解説する。

なお、各地域に関する公表資料については、下記の通り、各資料によって「ベンチャー投資」

に含まれる範囲が異なることに留意してほしい。また、日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)、

他 3 地域は暦年ベース(1 月~12 月)のデータである。

図表 2-1 各資料の「ベンチャー投資」に含まれるデータの内訳

(注 1)日本:日本での法人格を所有している VC が対象 欧州:欧州内に投資活動の拠点がある PE/VC が対象 米国/中国:詳細は不明

(注 2)a と b の 2 種類のデータが存在する(詳細は、3.欧州のベンチャー投資動向:I-39 ページ参照)。本章ではどちらのデータを使用しているか、各図表下に記載。

(注 3)「適格投資ラウンド」※への投資参加、またはそれ以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満たすべき基準を満たしているものを含む(バイアウトや現物出資ではなく現金出資など) ※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への

投資

米国 欧州 中国 日本

NVCA YEARBOOK 2016(NVCA)

2015 European PrivateEquity Activity

(Invest Europe)

China VC/PE MarketReview 2015(Zero2IPO)

ベンチャー白書2016(VEC)

国内VC(注1)→ 国内ベンチャーへの投資 ○ ○a 注2 ○ ○

国外VC → 国内ベンチャーへの投資 ○ ○b 注2 ○ ×

国内VC(注1)→ 海外ベンチャーへの投資 × ○a 注2 × ○

政府機関による投資 ○ ○ 不明 ○

エンジェル、インキュベーター、アクセラレーターによる投資

○注3 × × ×

「M&A」データの基準

・「売却」との区別なし・secondary saleを含む・マイノリティ投資でも含まれるケースがある

「売却」の中に含む 不明 「売却」と区別している

その他 -

比較的成熟したベンチャー企業への投資については「グロース投資」としてデータを取りまとめているため、「グロース投資」のデータの中には、VCから出資を受けた企業についても一定割合で含まれている。そのため、「VC投資」のデータについては、実際の数字よりも小さく出ている可能性がある。

- -

地域

データの出所

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I-3

また、4 地域の比較に当たっては、各通貨の 2015 年の平均為替レートで 2011 年~2015 年のデ

ータを日本円に換算した。

地域 為替レート

米国 1 ドル=121.0 円

欧州 1 ユーロ=134.3 円

中国 1 人民元=19.4 円

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I-4

(2) ベンチャー投資の国際比較(2011~2015 年)

米国、欧州、中国、日本の 4 地域におけるベンチャー企業に対する投資金額について、2011年から 2015 年の 5 年間を比較すると、米国が群を抜いており、特に 2015 年は過去 5 年間で最高

額の 7 兆円超であった。米国に次いでベンチャー投資が活発なのは中国であり、米国と同様、2015年は 2.5 兆円と最高額を記録している。欧州と日本については、過去 5 年間の投資金額に大きな

変化はみられず、横ばい状態が続いている。2015 年で言えば、日本のベンチャー投資の金額は、

米国の 2%にも及ばない状況である。

一方、投資先数をみると、投資金額と比例するように投資件数が伸びている中国と比べて、米

国の投資件数は過去 5 年間ほぼ横ばいである。2014 年と 2015 年を比較すると、投資金額が約 1兆円増えているにもかかわらず、投資件数は 62 件減っていることから、2015 年は 1 件当たりの

投資金額が大きかったことがうかがえる。欧州の投資金額は米国、中国に比べて小さいが、投資

先社数は 5 年間の平均で 3000 件以上と 4 地域の中でも 2 番目に多い。したがって、欧州は 1 社

当たりの投資金額が小額であることがわかる。

図表 2-2 2015 年のベンチャー投資実行額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)

(注 1)欧州:件数ではなく、投資先「社数」を統計数字として使用

(注 2)欧州:欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)

(注 3)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)

36,19133,469

36,663

61,516

71,475

5,305 4,553 4,606 4,848 5,359

15,927

8,924 7,779

20,13725,084

1,240 1,026 1,818 1,171 1,302

4,050 3,9914,295 4,442 4,380

3,186 3,132 3,2063,408

3,006

1,5051,071 1,148

1,917

3,445

1,017 8241,000 969 1,162

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0

15,000

30,000

45,000

60,000

75,000

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(件/社)(億円)

米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額)米国(件数) 欧州(社数) 中国(件数) 日本(件数)

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I-5

(3) 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)

4 地域におけるベンチャーファンドの新規組成額について、2015 年から過去 5 年間を比較する

と、米国の組成額は 2014 年がピークとなっており、2015 年は前年よりも減少している。一方、

中国は 2012 年以降伸び悩んでいたが、2014 年から回復に転じ、2015 年は 2011 年を上回る約 3.9兆円に達している。欧州については、過去 5 年間ほぼ横ばいである。日本は 2015 年度が 1,932億円と伸びており、2014 年度までと比較して 2 倍程度増加している。 ファンド本数をみると、中国は 2015 年に 597 本の新規ファンドが組成されており、2014 年の

258 本と比べて 2 倍程度となっている。

図表 2-3 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)

(注)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)

23,08724,091

21,478

37,631

34,146

6,9435,184

6,1916,648

7,158

34,532

11,368 8,148

22,698

38,722

1,1971,036 921 911

1,932

192 218 209272

236

152117 113 129

98

382

252

199

258

597

31 26 35 39 51

0

150

300

450

600

0

10,000

20,000

30,000

40,000

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(本)(億円)

米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額)米国(本数) 欧州(本数) 中国(本数) 日本(本数)

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I-6

近年、アジアのベンチャーブームが脚光を浴びている。中国やインドという大国だけでなく、東南アジ

アのベンチャー業界の動きも活発になってきており注目を集めている。

今回は、そもそもアジアのベンチャー業界の規模感は世界の他の地域に比べてどのぐらいの大きさなの

か、について統計データをもとに明らかにしたい。

KPMG International と CB Insights が共同で発表した、”Q4’15(2015 年第 4 四半期), Global Analysis

of Venture Funding” (2016/1/19)によると、2015 年のアジアのベンチャー投資総額は、397 億ドル

(年末時点の為替レートで約 4.7 兆円)に上り、過去最高額を記録した。しかも、これは 2011 年から 2014

年の 4 年間の投資総額の合計を超える額であり、いかに急激な成長を遂げているかが浮き彫りになってい

る(Figure1)。

Figure 1: 2011 年から 2015 年にかけてのアジアベンチャー投資トレンド

(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th, 2016)

これを世界の他の地域と比較してみると Figure 2 の通り、アジアのベンチャー投資額は、第 1 位の北米

(742 億ドル)に続く第 2 位となっており、世界全体のベンチャー投資額(1,285 億ドル)の 30%を超

えるシェアとなっている。また、第 3 位のヨーロッパ(135 億ドル)を大きく引き離しており、その差は

実に 3 倍近くまで拡大している。

アジアのベンチャー投資の概況①

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I-7

Figure2:地域別ベンチャー投資の規模比較(2015)

(KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成)

興味深いのは、投資案件数で比較すると、アジアとヨーロッパの間にはあまり差がないということであ

る。これはアジアにおける 1 億ドル超のメガ投資案件が、特に 2015 年の前半に目立ったためである。

さらに、アジアのベンチャー投資額を地域・国別にブレークダウンすると(Figure3)、中国とインドの

二国が実に 90%近くを占めていることがわかる。東南アジアは 12.3 億ドル(年末時点の為替レートで約

1,450 億円)となっており、全体の 3%に過ぎないが、この額は、2015 年度の日本国内のベンチャーファ

ンド等組織の国内外ベンチャー投資総額(1,302 億円:VEC ベンチャー白書 2016)を超える数字となっ

ている。

Figure3: アジアにおけるベンチャー投資の地域・国別割合(2015)

(KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成)

このように、2015 年のアジアベンチャー投資額は歴代最高を記録し、世界のベンチャー投資の中でもよ

り一層の存在感を示している。しかし、2015 年第 4 四半期(9 月~12 月)にみられた米国のベンチャー

投資の急激なブレーキは、米国だけにとどまらず、アジアでも同じような急ブレーキの動きがみられてい

ることは注意したい。アジアでは第 3 四半期の投資額に比べて第 4 四半期は実に 32%もの落ち込みをみせ

ている。アジアベンチャー市場も、2016 年はまさに勝負の年となりそうだ。

【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.1」より転載(一部修正)】

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I-8

アジアのベンチャー投資の概況①では、アジアのベンチャー投資が 2015 年に急拡大し、世界のベンチ

ャー投資の中では、北米に次ぐ第 2 位の規模となる 397 億ドル(約 4.7 兆円)を記録したことなどマクロ

的な動きを概観した。

本コラムでは、CB Insights 及び KPMG International がまとめたベンチャー投資レポート(Venture

Pulse Q4 2015)を参考に、アジアのベンチャー投資の特徴や北米との違いについて、いくつかポイント

を絞って紹介したい。

①インターネット、モバイルセクターへの偏重

アジアのベンチャー投資はインターネット及びモバイル分野への投資件数が全体の 80%と圧倒的に多

く、その他のセクターへの投資が少ない。北米では、インターネット及びモバイル分野への投資件数が全

体の 62%と半分以上を占めてはいるものの、ヘルスケア分野が 15%、インターネットやモバイル以外の

ソフトウェア分野への投資が 7%となっており、アジアに比べて多くのセクターに分散されている。 アジ

アにおける特定セクターへの投資の偏重は、アジアのベンチャー投資基盤の脆弱性を示唆していると言え

よう。

Figure 1: アジアのベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース) (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th, 2016)

アジアのベンチャー投資の概況②

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I-9

Figure 2: 北米のベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース) (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th, 2016)

②メガディールへの集中

さらに、アジアにおける投資額が Top 10 の案件をみると、その合計は投資総額の 60.8%となっている。

これは北米における Top 10 案件が投資総額の 20%だけであることと対照的である。つまり、アジアでは

少数のメガディールに投資資金が集中しており 、案件が分散している北米に比べて、やはり基盤が脆弱で

あると言える。

Figure 3: アジアのベンチャー投資における Top 10 ディール(投資額ベース)

(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th, 2016)

③CVC の投資が多い

北米ではベンチャー投資のうちコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による投資が直近で 23%と

なっているが、アジアでは 35%と、12%も高い数字を示している。北米では、 独立型ベンチャーキャピ

タルの存在が大きく歴史も長いが、アジアにおいては大企業の CVC が大きな存在感を示していることがわ

かる。アジアの CVC として存在感を示しているのは Alibaba、Tencent、Baidu、楽天などである。

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I-10

CVC は親会社の方針や業績にも影響を受けやすく、かつ初期の段階で CVC から資金調達すると、その

企業の色が強くなり、以降は他ファンドからの調達が難しくなることもあり、決して安定した資金調達源

とは言えないだろう。

Figure 4: アジアのベンチャー投資における CVC の投資参加比率 (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th, 2016)

このように、アジアのベンチャー投資は規模こそ北米に次ぐ2位につけたものの、その中身をみると、

ベンチャー投資の基盤は未だ脆弱であると言わざるを得ない。しかし、アジアでのベンチャー投資の歴史

は北米に比べてまだ浅く、今後、時間をかけて成熟することでより安定感のある投資基盤ができていくの

ではないかと期待される。しかし、昨近噂されるシリコンバレーバブルの崩壊の影響が飛び火して、成長

しているアジアのベンチャー投資業界に冷水を浴びせるようなことがないことを願うばかりだ。

【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.2」より転載(一部修正)】

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I-11

米国でブームとなったアクセラレーター設立の動きは世界中に飛び火し、中国でも数々のアクセラレー

ターが雨後の筍のように立ち上がっている。その中には中国人起業家を対象としたドメスティックなアク

セラレーターもあれば、中国市場進出の足掛かりとして参加希望する外国人起業家も対象とした、よりイ

ンターナショナルなアクセラレーターもある。

今回のコラムでは、サンフランシスコ在住の IT 起業家で、現在、中国・上海に拠点を置くアクセラレー

ターである”Chinaccelarator(中国加速)”に参加している David Collier さんの体験談インタビューをお

届けする。

David さんは英国出身のエンジニアで、ゲーム会社で CTO を務めるなどキャリアを積んだ後、サンフラ

ンシスコで RIKAI Labs というスタートアップを立ち上げ、英語学習者がチャットプラットフォームを通

してゲーム感覚で英語を習得できるユニークなチャットアプリを開発している。 中国では有数のアクセラ

レーターである Chinaccelarator の選考を通過し、2016 年 3 月から上海に滞在しながら、現地でプログ

ラムに参加している。

Chinaccelarator では、年に 2 回のバッチ(期)があり、選ばれたチームは 6%の株式比率と引き換え

に 3 万ドルの資金(転換社債の形)と起業サポートを受けられることになっている 。参加チームは上海に

最低 3~6 ヶ月滞在し、アクセラレータープログラムに参加し、Demo Day で発表を行い、投資家と接触

をする。その過程で、現地の事業立ち上げに詳しいメンターと定期的に会ってディスカッションをしなが

ら戦略を深めていく。Chinaccelarator のウェブサイトを見ると、メンター陣は中国人だけでなく、多く

の外国人がリストアップされており、非常に国際的なプログラムであることがわかる。と同時に、現地で

の外国人の起業エコシステムの層の厚さを感じさせる。

中国のシード・アクセラレーター

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I-12

以下、David さんの体験談をインタビュー形式で紹介する。

----------------

Q: まずは RIKAI Labs のコンセプトについて教えて下さい。

David: コンテントデリバリーのプラットフォームは約 7 年おきに変遷をとげており、これまで CD-ROM

からウェブへ、ウェブからスマホアプリへ、そして今まさに新たな動きとして(LINE、WhatsApp、

WeChat などの)メッセージングプラットフォームへの流れが出来つつあります。メッセージン

グプラットフォームは新たなブラウザー的な役割をするようになってきています。そして、今現

在、中国で最大のユーザーベースを抱える WeChat(日本での LINE 的存在のチャットメッセー

ジングプラットフォーム)は世界でも最も進んだメッセージングプラットフォームとなっており、

ペイメントシステムもビルトインされていて、アプリケーションがどんどん広がっています。私

たちはそこに目をつけ、この最先端のメッセージングプラットフォームをもとに、まずは手始め

に、英語学習のコンテンツをデリバリーするアプリケーションを開発しています。Chatbots、人

工知能、ゲームなどのメカニズムを取り入れて、新たなユーザーエクスペリエンスを開発してい

ます。

(Source: RIKAI Labs 提供)

Q: 中国のアクセラレーターに参加しようと思ったきっかけは?

David: 世界最大の英語学習者を抱える中国市場のマーケットの大きさ、そして世界で最も進んだ

WeChat プラットフォームがあることが中国に目をつけた理由ですが、ここ中国で外国人として

事業を展開するにあたり、現地のアクセラレーターに参加することは事業開発のための良い足掛

かりになると思ったからです。特に Chinaccelarator は外国人起業家を積極的に受け入れ、現地

で事業をする基盤作りを支援する環境を提供しているため、このアクセラレーターに参加するこ

とを決めました。

Q: どのぐらいの割合で外国人起業家が参加していますか? どのような国から来ていますか?

David: いま私が参加しているバッチには 12 のチームが参加していますが、そのうち半分が外国人のチー

ムですね。アメリカの他に、アルゼンチンとかメキシコなど様々です。あとは台湾とか香港から

来る人たちですね。皆、中国市場進出の足掛かりとして参加しています。

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I-13

Q: 実際参加してみてどういう印象ですか? 良い面と悪い面は?

David: Co-Working Space を提供されていて、アメリカの施設などと比べても遜色ない充実した施設環

境ですね。スタッフも皆英語が話せる人たちです。来た当初は開発タスクで忙しくてオフィスに

缶詰になって作業していましたが、少しずつ現地のコンテントパートナーを模索したり、リーガ

ルの専門家と話をしたりと事業面の方に時間を割くようにしています。中国で外国人が事業をす

るには色々な規制があって、やはりこういうことは現地の専門家のサポートが必要なので、アク

セラレーターのようなサポートインフラは重要ですね。

悪い面としては、中国では規制のために Google とか GitHub などの欧米系のサービスがほとん

どアクセスできないこと! 米国にいた時と同じ環境でスムーズに開発できないのはちょっとイ

ライラしますね。

Q: どのような内容のスタートアップが多いですか?

David: かなり多様で、ソフトウェア系だけではなくて、ハードウェア系のスタートアップも多いですよ。

Q: アクセラレーターというと投資家とのコネクション作りが一つの機能ですが、実際に外国人チームに投

資する投資家もいますか?

David: 外国人が中国で事業をする場合、中国国内で信頼のできる中国人パートナーと共同で法人を設立

するか、WOFE(外資独資企業)を作るかなど色々と考慮しなければならない複雑な点がありま

すが、そのようなことをちゃんと理解した投資家とつながることができます。

Q: アクセラレータープログラムが終了した後はどうする予定ですか?

David: 中国と米国を行き来しながら事業を展開していく予定です。シリコンバレーの最新のテクノロジ

ーを中国の巨大市場に適用することで、大きな事業機会を掴んでいきたいです。実際、シリコン

バレーで学んできたリアルタイムテクノロジーの多くは WeChat プラットフォームに上手く適用

できており親和性を感じています。

Q: シリコンバレーではいつバブルが弾けるかと話題になっていますが、上海のスタートアップ業界はどん

な様子ですか?

David: うーん、まあバブルが弾けるとかそういう話は過去数年にわたり言われてきていることだし、中

国が本格的にバブルが弾けたら米国よりももっと大きな影響になるとみんなわかっているけど、

起業家はとにかく目の前のことに専念するしかないから、心配していてもしょうがないね。

----------------

David さんのインタビューを通して、中国では外国人の起業家やメンター人材のエコシステムも広がり

をみせていることがわかった。日本でも今後、起業エコシステムをより一層盛り上げていくには、日本人

だけではなく外国人起業家を支援する仕組みを作り、それと同時に外国人の起業サポーター(投資家、メ

ンターなど)の層も厚くしていく必要があると感じた。

【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.3」より転載(一部修正)】

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I-14

先日、シリコンバレーにあるスタンフォード大学で、フィリピンのスタートアップ業界の現状について

のパネルディスカッションが開催された。近年注目される東南アジアのスタートアップ業界の中でも、毎

年 5%以上の経済成長を示し、1 億人以上の人口(世界で 3 番目に英語を話す人口が多いとされる)を誇

るフィリピンは注目を集めつつある。

現時点ではフィリピンのスタートアップ業界は先進国に比べると、まだまだ草創期といえるものの、フ

ィリピン政府は、「2020 年までに 500 社のスタートアップが総計 2 億米ドルの資金調達をして、企業価

値が合計で 20 億米ドルに達する」という非常に具体的な目標を掲げた政策ロードマップを発表するなど

積極的な動きをみせている。

スタンフォード大学のイベントでパネリストの一人だった Christopher Peralta 氏にインタビューを行

い、フィリピンのスタートアップ業界の現状と展望について話を聞いた。

Manila Valley 代表の Christopher Peralta 氏

Christopher 氏は、オーストラリア出身のフィリピン人で、Nokia の東南アジアの事業開発等に携わっ

たのち、シリコンバレーに移住をして、現在シリコンバレーとフィリピンをつなぐ起業支援活動を行って

いる。Manila Valley という新たなアクセラレーターの立ち上げに奮闘している。Christopher 氏曰く、フ

ィリピンのスタートアップのエコシステムに圧倒的に足りていないものは、リスクマネーとビジネスを立

ち上げるための知見や支援システムであるという。現在、フィリピンには 200~300 社のスタートアップ

があるとされるものの、フィリピン本拠のベンチャーキャピタルの数は KICKSTART など数えるほど。多

くのスタートアップがシンガポールなど他国のベンチャーキャピタルに資金を求めなければならない状況

が続いており、フィリピン国内での資金源の創出がエコシステム確立のためには重要だと考えている。

フィリピンのスタートアップ・エコシステム

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I-15

フィリピンのスタートアップコミュニティ(Manila Valley 提供)

上記の図からもわかるように、フィリピンにもアクセラレーターやインキュベーターが新しく立ち上が

ってきていることは事実だ。Manila Valley はその中でも、シリコンバレーとのコネクションを差別化ポイ

ントとしている。先述の通りフィリピンは世界でも有数の英語大国であることからも、グローバル市場と

関わりの深い産業が多く出現している。特に、今後のフィリピン発スタートアップでグローバルに展開で

きる可能性を秘めた業界として以下を挙げている。

●アウトソーシングビジネス:世界有数の英語大国であることからも、かねてからアウトソーシングビ

ジネスは非常に活発であったが、今後スタートアップによりさらなるイノベーションが起こることが

期待されている。今後の一つのトレンドは先進国向けの遠隔医療。

●ゲーム:フィリピンはゲーム大国と言われており、3,000 万人がゲームを楽しみ、そのうち 40%が課

金を厭わないという。フィリピン発のゲーム会社はそのまま海外に進出できる基盤を備えている。

●フィンテック:国外で勤労するフィリピン労働者は現在 240 万人とも言われており、その多くが母国

に送金を行っている。海外送金の分野でイノベーションを起こすフィンテックスタートアップの出現

を期待。

●IoT:フィリピンは携帯保有率が人口の 113%とも言われており、通信業界が発達している。今世界

中で注目されている IoT の分野でも試験的マーケットとしてリードしていく素地を持っている。

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I-16

このようなグローバル経済と連携した分野のフィリピン発スタートアップをシリコンバレーと繋げるこ

とで成長を後押しすることが Christopher 氏の狙いである。現在は、シリコンバレーとマニラを行き来し

ながら、フィリピンで優秀な起業家を発掘し、シード資金を提供し支援体制を整えてから、実際にシリコ

ンバレーに招待して、シリコンバレーのエコシステムを活用しながらグローバルな事業開発への支援を行

っている。現在はまだ立ち上がったばかりのため、選りすぐりの数社の支援に専念しているが、将来的に

はよりオープンなアクセラレータープログラムを企画・運営したいと考えているとのこと。

Christopher 氏は、フィリピン発スタートアップが日本の企業や投資家と連携する機会は多いとみてお

り、今後積極的な連携を目指している。

【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.4」より転載(一部修正)】

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I-17

2. 米国のベンチャー投資動向

次に、米国のベンチャー投資の動向について、NVCA の公表データをもとに詳しく解説する。

NVCA YEARBOOK 2016 によれば、2015 年時点におけるベンチャーキャピタル(VC)の数は 798社、ファンド数は 1,224 本であった。同レポートによれば、10 億ドル以上を運用する大型 VC は

全体の 4.5%(36 社)である一方、2,500 万ドル以下の運用に留まっている VC は 330 社であり、

全体の 41%を占める。 VC の所在地はカリフォルニア州に集中しており、2015 年末時点で VC 全体の運用額の 55%

を運用している(2014 年は 54%)。

図表 2-4 米国における VC 社数とファンド本数の推移 1995 2005 2014 2015

既存 VC 425 1,009 803 798

既存ファンド 688 1,764 1,206 1,224

(1) 2015 年のベンチャー投資の状況

① VC 投資金額・件数

2015 年の投資金額は総額 590.7 億ドルであった。この金額は 2000 年以降最高額であり、NVCA

の記録上においても 2 番目に多い金額である。しかし、投資件数は 4,380 件(3,709 社)であり、

前年の 4,442 件よりもやや減少している。NVCA による 2016 年 1 月 15 日付公表の四半期レポー

トによれば、2015 年のメガディール(1 億ドル以上の投資案件)は 74 件であり、2014 年の 50件と比べると 24 件増えている。したがって、2015 年における投資金額の増加の一因として、メ

ガディールの増加による影響が考えられる。

図表 2-5 VC 投資金額および投資先数の推移

299.1

276.6303.0

508.4 590.7

4,050 3,9914,295

4,442 4,380

3,383 3,3723,568

3,7283,709

1,359 1,335 1,437 1,441 1,444

0

700

1,400

2,100

2,800

3,500

4,200

4,900

0

100

200

300

400

500

600

700

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(件 / 社)(億ドル)

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

投資金額 投資件数 投資先社数 新規資金調達社数

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I-18

② 業種別内訳

2015 年の VC 投資金額 590.7 億ドルを業種別にみると、もっとも高いシェアを誇っているのは

約 4 割を占める「ソフトウェア」であり、ここ数年はトップを維持し続けている。次いで「バイ

オテクノロジー」が 1 割超、「消費財/サービス」「メディア/娯楽」がそれぞれ約 1 割弱の順とな

っている。 投資件数については、投資金額のランキングと変わらず、トップは「ソフトウェア」が 4 割程

度を占め、次いで「バイオテクノロジー」が 1 割超となっている。

図表 2-6 2015 年業種別投資金額

*その他:小売/流通 1.7%、ヘルスケア 1.4%、半導体 1.3%、コンピュータ/周辺機器 1.2%、通信 1.2%、

事業用製品/サービス 1.0%、エレクトロニクス 0.7%、ネットワーク/機器 0.5%、その他 0.1%

図表 2-7 2015 年業種別投資件数

*その他:ヘルスケア 1.8%、半導体 1.8%、エレクトロニクス 1.5%、コンピュータ/周辺機器 1.3%、小売/流通 1.3%、

通信 1.2%、事業用製品/サービス 1.1%、ネットワーク/機器 0.7%、その他 0.6%

ソフトウェア39.8%

バイオテクノロジー12.9%

消費財/サービス8.2%

メディア/娯楽8.0%

ITサービス6.5%

金融5.4%

工業/エネルギー5.4%

医療機器4.7%

その他*9.2%

総投資金額

590.7億ドル

ソフトウェア40.4%

バイオテクノロジー10.8%

メディア/娯楽9.6%

ITサービス7.7%

医療機器7.0%

工業/エネルギー5.9%

消費財/サービス5.5%

金融1.9%

その他*11.3%

総投資件数

4,380件

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I-19

③ ステージ別内訳

2015 年の投資金額をステージ別でみると、「エクスパンション」がもっとも多く、全体の 37.5%

を占めている。次に「アーリー」33.8%、「レーター」27.0%と続いており、「シード」は全体の

2%にも満たない。 一方、2015 年の投資件数をみると、「アーリー」が全体の 50.7%を占めており、「シード」と

合わせると 55%に及ぶ。過去 5 年間において、1 件当たりの投資金額は小規模ながら、数多くの

若いベンチャー企業に投資する傾向がうかがえる。 投資金額および投資件数全体に対して各ステージが占める割合の傾向は、前年から大きな変化

はみられない。

図表 2-8 ステージ別投資金額の推移

図表 2-9 ステージ別投資件数の推移

11.2 8.5 10.3 8.3 10.0 91.1 85.3 104.4 161.4 199.699.3 95.9 99.2

214.5221.7

97.5 86.9 89.1

124.3159.4

0

100

200

300

400

500

600

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(億ドル)

シード アーリー エクスパンション レーター

(276.6)

(493.1

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)( )の数値は全ステージの合計金額

(299.1) (303.0)

(508.5)

(590.7)

27.0%

37.5%

33.8%

1.7%

436 304 243 207 186

1,669 1,826 2,203 2,206 2,219

1,025 1,0071,034 1,162 1,146

920 854815 867 829

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(件)

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

シード アーリー エクスパンション レーター

( )の数値は全ステージの合計件数

(4,050) (3,991)(4,295) (4,442) (4,380)

18.9%

26.2%

50.7%

4.2%

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I-20

④ 地域別内訳

2015 年の VC 投資について投資先企業の所在地別に焦点を絞ると、2015 年の全米 VC 総投資

金額 590.7 億ドルのうち、トップ 5 州で総投資金額の 81.6%、総投資件数の 67.2%を占めている。

カリフォルニア州所在の企業への投資金額は 338.7 億ドル(1,498 社に対し 1,779 件)であり、ト

ップ 5 の総額の 7 割、全体でも 6 割近くを占めている。特にシリコンバレー地区だけで 274.2 億

ドルに及んでおり、米国における VC 総投資金額の 46%を占めている。

図表 2-10 2015 年 VC 投資金額トップ 5 州

州 社数 件数総投資件数

に対する比率投資金額

(億ドル)総投資金額

に対する比率カリフォルニア 1,498 1,779 40.6% 338.7 57.3%

(内シリコンバレー) (1,007) (23.0%) (274.2) (46.4%)ニューヨーク 405 463 10.6% 62.5 10.6%マサチューセッツ 350 424 9.7% 56.8 9.6%ワシントン 100 116 2.6% 12.1 2.0%テキサス 133 163 3.7% 11.7 2.0%

トップ5合計 2,486 2,945 67.2% 481.8 81.6%全米合計 3,709 4,380 100.0% 590.7 100.0%

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

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I-21

⑤ CVC の進出

近年、CVC(Corporate Venture Capital)によるベンチャー投資が非常に活発化しており、全米

のベンチャー投資に占める割合は増加の一途をたどっている。2015 年の CVC 投資金額は総投資

金額の 13.1%、総投資件数の 21.2%を占めており、投資金額は 2001 年以降でもっとも多い額と

なっている。

本章における CVC の定義(NVCA YEARBOOK より)

「事業会社による直接投資(CVC 部門を通さない投資)」については、以下に該当する場合、CVC 投資に含める。

a) 研究開発や市場開拓の外注ではなく、投資収益の獲得を主な目的としていることが明確である投資

b) 適格投資ラウンド※に該当しうる投資案件への共同投資

c) 適格投資ラウンド以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満たすべき基準を満たして

いる投資(バイアウトや現物出資ではなく現金出資、など)

※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への投資

図表 2-11 CVC によるベンチャー投資金額・件数

図表 2-12 CVC によるベンチャー投資金額・件数の推移(1995 年~2015 年)

(単位:億ドル)2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

VC投資金額合計 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7内CVC投資金額 23.1 22.6 32.2 57.6 77.1

CVC比率 7.7% 8.2% 10.6% 11.3% 13.1%

(単位:件)2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

VC投資件数合計 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380内CVC投資件数 611 631 741 809 930

CVC比率 15.1% 15.8% 17.3% 18.2% 21.2%(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

0

300

600

900

1200

1500

1800

2100

2400

0

20

40

60

80

100

120

140

160(件)(億ドル)

CVC関与投資金額 CVC関与投資件数

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I-22

(2) 2015 年のファンド組成状況

① コミットメント金額・本数

2015 年の米国内の VC ファンドへの新規コミットメントは、236 本のファンドに対し 282.2 億

ドルであり、2014 年の 272 本 311 億ドルからやや減少した。2015 年上半期におけるコミットメ

ント金額は 2014 年の上半期と同じペースを保っていたが、2015 年下半期に勢いが落ち着いたこ

とが要因とされる。

図表 2-13 VC ファンドに対する新規コミットメント金額と本数の推移

190.8 199.1 177.5

311.0282.2

192218 209

272

236

0

40

80

120

160

200

240

280

0

50

100

150

200

250

300

350

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(本)(億ドル)

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)コミットメント金額 ファンド本数

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I-23

② 地域別内訳

2015 年の新規コミットメント金額をファンドの本拠地別にみると、カリフォルニア州が 139

億ドル(102 本)でトップであり、全体の 49.3%と半数近くを占めている。しかし、2014 年の

62%からは約 13 ポイント減少している。カリフォルニア州に次ぐのは、66.7 億ドル(31 本)の

ニューヨーク州である。ニューヨーク州は全体の 23.6%を占めており、前年の 13%から 2 倍近

く伸びている。ニューヨーク州は過去 3 年間ベンチャー投資が着実に増加している。新規の VC

が立ち上がったり、州外の既存 VC がニューヨーク拠点を設けたりしており、ベンチャーエコシ

ステムにおけるニューヨーク州の存在感が増してきているとの報告がある。ノースカロライナ州

については、州の年金基金が North Carolina Innovation Fund に多額の投資を行ったことが影響し、

2015 年はトップ 5 に滑り込んだ。

図表 2-14 2015 年新規コミットメント金額トップ 5 州

(3) 2015 年の Exit 状況

① 概況

2015 年における VC から出資を受けた企業の IPO 社数は、2014 年の 117 社から 77 社へと約

34%減少し、金額は 155.1 億ドルから 93.8 億ドルへと約 40%も減少している。また、VC から出

資を受けた企業の 2015 年の M&A 社数は、2014 年の 472 社から 360 社へと約 24%減少した。2015年の M&A 総額は、取引額が報告された 87 社について約 170 億ドルであったが、2014 年の約 480億ドルと比較すると 1/3 近くにまで落ち込んでいる。

図表 2-15 米国における VC から出資を受けた企業の IPO および M&A の社数・金額の推移

139.0億ドル

49.3%66.7億ドル

23.6%

28.2億ドル

10.0%

11.7億ドル

4.2%

4.9億ドル

1.7% 31.6億ドル

11.2% カリフォルニア州

ニューヨーク州

マサチューセッツ州

ワシントン州

ノースカロライナ州

その他

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

274.4

40.4 23.3 20.2

98.1

49.1

70.7117.4

7.7 19.8

80.7 104.4

213.5

110.7155.1 93.8

800.0

251.2

119.182.4

234.3197.2

242.2

307.5

149.3 123.6

177.3242.0 226.9

169.1

481.4

169.5

238

37 2426

81 5967

90

7 1367 50 48

81 117 77

379 385 364324

403447

482 488

417

350

525492 477

386

472

360

0

70

140

210

280

350

420

490

560

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(社数)(億ドル)

IPO時の調達金額 M&A時の取引額 IPO社数 M&A社数(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

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I-24

② IPO 社数・調達額

業種別に IPO 社数のトップ 3 をみると、2015 年のトップは「バイオテクノロジー」が全 77 社

中 41 社と、2014 年に引き続き半数以上を占めている。2 番手は 2014 年と 2015 年で入れ替わっ

ており、「医療機器」が前年より社数を伸ばしている。一方、「ソフトウェア」は前年の 20 社か

ら 9 社に減っており、IPO 時の調達額も大きく減少している。 トップ 3 について、1 社当たりの IPO 時の調達額で比較すると、3 番手の「ソフトウェア」が

約 1.7 億ドルとなっており、社数は減ったものの 1 社当たりの調達額は前年と同程度となってい

る。IPO 社数トップの「バイオテクノロジー」の 1 社当たりの調達額は 1 億ドルに届いておらず、

前年と同様に、IPO した企業の多くは小・中規模企業であったことがうかがえる。

図表 2-16 VC から出資を受けた業種別 IPO 社数・調達額の前年比較

2014年 2015年

業 種 社数 調達額(百万ドル)

1社当たり調達額

(百万ドル)

業 種 社数 調達額(百万ドル)

1社当たり調達額

(百万ドル)

バイオテクノロジー 66 5,356 81.2 バイオテクノロジー 41 4,001 97.6ソフトウェア 20 3,451 172.6 医療機器 12 892 74.3医療機器 9 586 65.1 ソフトウェア 9 1,507 167.4メディア/娯楽 6 730 121.7 ITサービス 3 440 146.7ITサービス 4 428 107.0 半導体 2 866 433.0金融 3 1,302 434.0 工業/エネルギー 2 396 198.0消費財/サービス 2 2,538 1,269.0 コンピュータ/周辺機器 1 489 489.0小売/流通 2 487 243.5 小売/流通 1 307 307.0ネットワーク/機器 2 279 139.5 ヘルスケア 1 180 180.0ヘルスケア 2 272 136.0 消費財/サービス 1 121 121.0工業/エネルギー 1 83 83.0 通信 1 65 65.0事業用製品/サービス 0 0 - その他 1 50 50.0コンピュータ/周辺機器 0 0 - メディア/娯楽 1 40 40.0エレクトロニクス 0 0 - ネットワーク/機器 1 25 25.0その他 0 0 - 事業用製品/サービス 0 0 -半導体 0 0 - エレクトロニクス 0 0 -通信 0 0 - 金融 0 0 -合計 117 15,512 132.6 合計 77 9,379 121.8

(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

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I-25

③ M&A 社数・取引額

業種別に 2015 年の M&A 社数のトップ 3 をみると、「ソフトウェア」が 2014 年に引き続き首

位を維持しており、2 番手の「IT サービス」とは社数、取引額ともに 5 倍以上の差をつけている。

しかしながら、「ソフトウェア」の社数は M&A が好調だった 2014 年と比較して約 11%減に留

まっているが、取引額については約 73%減と大幅に減少しており、2013 年並に戻っている。「ソ

フトウェア」の 1 社当たりの取引額をみると、2014 年は 1 億ドルを超えていたが、2015 年は 4,000

万ドルにも達していないことから、小粒の M&A が多かったことがうかがえる。 2 番手、3 番手は 2014 年と順位は入れ替わっているが、メンバーは変わらず「IT サービス」「メ

ディア/娯楽」がトップ 3 入りを果たしている。どちらの業種も前年と比較して社数は減少して

いるが、取引額をみると「メディア/娯楽」については 2 割程度増えており、1 社当たりの取引

額は前年の 2 倍となっている。

図表 2-17 VC から出資を受けた業種別 M&A 社数・取引額の前年比較

2014年 2015年

業 種 社数 取引額(百万ドル)

1社当たり取引額

(百万ドル)

業 種 社数 取引額(百万ドル)

1社当たり取引額

(百万ドル)

ソフトウェア 203 24,937 122.8 ソフトウェア 181 6,805 37.6メディア/娯楽 59 1,960 33.2 ITサービス 34 1,114 32.8ITサービス 55 2,112 38.4 メディア/娯楽 30 2,388 79.6バイオテクノロジー 36 6,086 169.1 バイオテクノロジー 24 2,834 118.1工業/エネルギー 29 766 26.4 医療機器 24 2,234 93.1医療機器 19 2,670 140.5 工業/エネルギー 13 121 9.3通信 15 1,665 111.0 ヘルスケア 9 462 51.3半導体 14 787 56.2 半導体 9 462 51.3消費財/サービス 10 3,270 327.0 消費財/サービス 8 25 3.1事業用製品/サービス 8 4 0.5 事業用製品/サービス 7 0 0.0小売/流通 7 1,726 246.6 エレクトロニクス 4 182 45.5コンピュータ/周辺機器 5 1,881 376.2 金融 4 72 18.0ネットワーク/機器 5 159 31.8 コンピュータ/周辺機器 4 16 4.0エレクトロニクス 4 1 0.3 通信 4 0 0.0金融 2 117 58.5 小売/流通 3 80 26.7ヘルスケア 1 0 0.0 その他 1 87 87.0その他 0 0 - ネットワーク/機器 1 65 65.0

合計 472 48,140 102.0 合計 360 16,947 47.1(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)

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I-26

④ 米国における IPO と M&A の社数の推移

米国における VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数について、1985 年から 2015 年

までの推移を NVCA の公表データをもとに下記に示す。IPO と M&A の割合は、2000 年の IT バ

ブル崩壊を境に大きく入れ替わっていることがわかる。

図表 2-18 VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数割合の推移

※M&A には「trade sale(マイノリティ投資を含む)」「secondary sale」が含まれる

この M&A の長期的な興隆については、主に以下の要因が挙げられる※。 ・2000 年の IT バブル崩壊によって株式市場が低迷したこと

・2002 年 7 月に制定されたサーベンス・オクスリー(SOX)法によって、ベンチャー企業が

IPO するために必要な費用負担が上昇したこと ・他社との市場競争が高まったことにより、ベンチャー企業にとって、ある程度の段階で買収

され短期間で企業規模を拡大させる必要性が高まったこと

※参考

岩井浩一「JOBS 法の成立と米国 IPO 市場の今後の動向」野村資本市場クォータリー 2012 年秋号

小野正人 Working Paper「米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスと構造変化」2010 年 11 月

http://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-WorkingP2010-02.pdf

秦信行 「ベンチャーコミュニティを巡って「IPO 再考」連載第 47 回」THE INDEPENDENTS 2012 年 10 月号

http://ovl.jp/article/item000400

CNET JAPAN「IPO よりも M&A が選ばれる米国の事情--GCA Savvian の Todd Carter 氏」インタビュー2013 年 10 月 1 日

http://japan.cnet.com/interview/35037888/

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(出所:NVCA YEARBOOK 2015 & 2016、VEC作成)

IPO

M&A

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I-27

(4) 2016 年上半期のベンチャー投資の状況

① VC 投資金額・件数

本項「2016 年上半期のベンチャー投資の状況」における 2015 年データは、NVCA のウェブサ

イトで公表されている 2016 年 7 月時点の公表データに基づいている。したがって、(1)~(3)で引用した「NVCA YEARBOOK 2016」のデータとは異なる場合がある。

2016 年上半期の VC 投資状況は、2015 年上半期と比較すると投資金額、投資件数ともに減少

している。

図表 2-19 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)

② 業種別内訳

2016 年上半期の VC 投資内訳を業種別でみると、2015 年に引き続き、「ソフトウェア」の投資

金額および件数が圧倒的に多く、次いで「バイオテクノロジー」の順となっている。「ソフトウ

ェア」企業への投資は、2015 年上半期よりも投資件数では 2 割近く減っているものの、投資金

額は 130.1 億ドルから 138.9 億ドルへとやや増加している。投資金額の増加の要因として、第 1、第 2 四半期ともにメガディール(投資金額が 1 億ドル以上の案件)の半数以上が「ソフトウェア」

企業であったことが挙げられる。

図表 2-20 業種別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)

2016上半期 下半期 2015年合計 上半期

投資金額(億ドル) 310.2 288.3 598.5 279.8投資件数(件) 2,318 2,217 4,535 1,972( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)

2015

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

ソフトウェア 958 130.1 858 106.9 1,816 237.0 775 138.9バイオテクノロジー 259 38.7 225 38.0 484 76.7 224 36.4ITサービス 170 17.1 167 21.5 337 38.6 151 17.1メディア/娯楽 213 28.4 227 24.5 440 52.9 212 16.2金融 49 12.1 45 21.1 94 33.2 51 14.1工業/エネルギー 140 18.6 133 13.8 273 32.4 105 11.4医療機器 159 13.2 168 15.1 327 28.3 119 10.6コンピュータ/周辺機器 29 2.3 31 5.0 60 7.3 25 10.0消費財/サービス 129 32.0 122 16.6 251 48.6 110 7.9ヘルスケア 31 2.7 44 5.8 75 8.5 40 3.5半導体 37 2.6 46 4.6 83 7.2 31 2.8通信 38 5.3 21 1.9 59 7.3 29 2.8エレクトロニクス/器具 38 2.4 31 1.7 69 4.1 27 2.5小売/流通 23 1.8 37 8.5 60 10.3 33 1.9事業用製品/サービス 19 0.9 37 1.6 56 2.6 28 1.9ネットワーク/機器 14 1.3 14 1.5 28 2.9 10 1.7その他 12 0.4 11 0.2 23 0.6 2 0.1

合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8

( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)

業種

2015 2016上半期 下半期 2015年合計 上半期

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I-28

③ ステージ別内訳

2016 年上半期の投資状況をステージ別にみると、投資件数では、2015 年の上/下半期に続き、

「アーリー」がもっとも多くの割合を占めている。また、投資金額では「エクスパンション」が

5 割近くを占めている。2016 年の上半期を 2015 年の上半期と比較すると、「シード」のみ件数、

金額ともに増加していることがわかる。

図表 2-21 ステージ別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)

④ 地域別内訳

VC 投資金額の地域トップ 5 について、2016 年上半期と 2015 年の上半期を比較すると、2016年上半期の「シリコンバレー」への投資は約 20 億ドル減少しており、件数も 136 件少なくなっ

ている。「シリコンバレー」以外の地域をみると、唯一「南東部」が前年同期と比べて投資金額

が 9.9 億ドルから 14.6 億ドルへと約 32%増加しているが、件数は約 25%減少している。この金

額の増加は、前述の通り(I-23 ページ参照)、ノースカロライナ州のイノベーションファンドへ

の資金投入が影響しており、単発的な増加と言える。

図表 2-22 VC 投資金額トップ 5 の地域(2015 年上半期~2016 年上半期)

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

シード 78 3.0 126 7.4 204 10.3 112 11.0アーリー 1,156 95.8 1,141 107.1 2,297 202.8 877 85.6エクスパンション 628 126.5 548 97.0 1,176 223.6 585 125.2レーター 456 84.9 402 76.9 858 161.8 398 58.0

年間合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8

( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)

ステージ

2015 2016上半期 下半期 2015年合計 上半期

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

件数投資金額

(億ドル)件数

投資金額(億ドル)

シリコンバレー 734 151.5 659 127.4 1,393 278.9 598 131.0ニューヨーク都市圏 261 38.2 262 35.4 523 73.7 260 31.4ロサンゼルス/オレンジ郡 170 30.5 164 21.0 334 51.5 144 27.4ニューイングランド 259 28.8 242 33.2 501 62.0 221 26.3南東部 147 9.9 135 13.3 282 23.2 110 14.6

全地域合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8

( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)

地域 上半期

2015 2016上半期 下半期 2015年合計

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I-29

KPMG と CB Insights が 2016 年 1 月 19 日にリリースした「Venture Pulse Q4 2015」レポートによ

ると、米国におけるベンチャー投資は 2015 年全体で 724 億ドルを記録し、これはドットコムバブル最盛

期の 2000 年の投資額(1,060 億ドル)に続く歴代 2 位の記録となった。2014 年に比べて 26%の成長

率であった。しかし、投資案件数でみると、2014 年の 5,240 件から 4,672 件へと 11%の減少をみせて

いる。これは特に年の前半においてユニコーン企業と呼ばれる、未上場だが企業価値が 10 億ドルを超える

スタートアップの資金調達合戦によって 1 案件ごとの投資額が大きかったことを示唆している。

さらに資金調達の動きを四半期でみると、変調ぶりが際立ってくる。2015 年の Q4 には Q3 から 60

億ドルも投資額が減っており、30%以上の減少率をみせている。投資案件数も 22%減少しており、これ

は 2011 年の Q4 以来ぶりの最低水準となっている。

米国ベンチャー投資の変調

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I-30

また、投資ラウンドごとにトレンドをみると、Q4 ではシードラウンドへの投資比率が 3 期連続で減少

している。Q4 の全体の投資額が前期に比べて 30%減少したことを考えると、シードスタートアップへの

投資資金は 40%以上減少したことになる。つまり、新たなアイデアへの投資に急ブレーキがかかってきて

いる。

これらの市場の変調の背景には、スタートアップ企業の IPO 成績が芳しくないことに反応して「観光客」

投資家(投資信託、ヘッジファンド)が一斉に資金を引き上げようとする動きをみせていること、企業評

価額は高いものの赤字を垂れ流して自転車操業しているユニコーン企業が多数浮き彫りになってきたこと

や、「ダウンラウンド(前回のラウンドよりも評価額が下がること)」が増えてきていることなどによって、

投資家マインドが一気に冷え込み始めてきている状況がある。また、2015 年 12 月の米国の利上げによっ

て、このような状況はさらに加速されてきているようだ。

KPMG Enterprise Innovative Startups Network の Co-Leader である Brian Hughes 氏は、以下の通

り警告する。

「2015 年の Q3 までは、収入>支出のスタートアップと同様に、収入<支出のスタートアップにも潤沢

な資金が流れ込んでいた。でも今我々は分岐点に来ている。2016 年は利益等のビジネスの基礎としての

財務状況がまた本当に重要になってくるだろう。ネガティブの粗利で、毎月の純資金支出額が過剰である

にも関わらず、過大な評価がされているスタートアップは最も影響を受けるだろう」(一部意訳)

今後の市場の調整が、ソフトランディングとなるか、ハードランディングとなるか、まだ予断を許さな

い状況にある。

【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.14」より転載(一部修正)】

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I-31

2012 年に米国で成立した JOBS Act (Jumpstart Our Business Startups Act: ジョブズ法)はベン

チャー企業が資金調達を行いやすくするための一連の規制緩和法案であるが、その中でも目玉の一つであ

った「株式型」クラウドファンディングが 2016 年 5 月 16 日についに解禁された。

これまでクラウドファンディングと言えば、Kickstarter や Indiegogo などのポータルサイトで「寄付

型」や「購入型」のクラウドファンディングキャンペーンは活発に行われてきたが、金融取引が絡む「株

式型」のクラウドファンディングは SEC(米国証券取引委員会)が詳細規則を策定し施行するまでは不可

能だった。今回の施行により、適格投資家に当てはまらない個人の投資家(Non-accredited investors)

もベンチャー企業に株式投資をすることが可能となり、ベンチャー企業の資金調達の可能性が飛躍的に広

がることとなった。

JOBS Act が成立してから、株式型クラウドファンディングについては約 4 年間の月日をかけて規則策

定が行われてきたが、その道のりは決して平坦ではなかった。個人投資家が対象である本件については投

資家保護をミッションとする SEC はことさら慎重にならなければならなかったのだ。

今回施行された規則には以下のルールが含まれる。

●株式型クラウドファンディングで資金調達するベンチャー企業は 12 ヶ月の間で 100 万ドル以下の資

金を調達できる。

●株式型クラウドファンディングの公募には SEC から許可を得たオンラインポータルまたは仲介業者

を使わなければならない。

●公募するベンチャー企業は米国本拠の法人でなければならない。

●特定の財務情報を開示しなければならない。調達額によっては、財務諸表は会計士の監査を受けなけ

ればならない。

●定められた報告義務に従う必要がある。

●適格投資家と非適格投資家から投資を受けることができる。投資家は収入または純資産によって投資

できる金額が制限される。(例えば、年収または純資産が 10 万ドル未満の投資家は、年収か純資産の

うち低い方の 5%までしか投資は出来ない、など)

この規則には不満の声も聞かれる。登録や報告義務が煩雑でコストがかかるにもかかわらず、最大調達

額が 100 万ドルとは少なすぎるという点がそのひとつである。コストは会社組織がどれだけ複雑かなど調

達額にもよるが、Bloomberg の記事では、例えば、100 万ドルを調達しようとしているウィスキー製造ベ

ンチャーは、4 万ドル~5 万ドルのコストがかかると想定されるほか、10 万ドルを調達しようとしている

ハワイのコーヒープランテーション会社は 1,000 ドル~2 万ドルの間のコストがかかるという例を挙げて

いる。

株式型クラウドファンディングの幕開け

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I-32

Wall Street Journal(WSJ)によると、 2016 年 5 月 16 日午後の時点で自主規制機関である金融取引

業規制機構(FINRA)は 9 社のポータルを承認したとのこと。さらに 10 社の仲介業者が当局に参加する

計画を示しているとのこと。二大ポータルサイトのひとつである Kickstarter は今のところ株式クラウドフ

ァンディングの機能を追加する予定はないとのことだが、そのライバルサイトである Indiegogo は予定を

している。

また、施行初日の 2016 年 5 月 16 日午後 6 時までに 17 社のベンチャー企業が資金調達に必要な登録手

続きを完了したと WSJ は伝えている。生分解性歯ブラシのメーカーや高級宿泊施設運営会社、グルメ志向

のドーナツ販売など様々な業態の企業が名を連ねているそうだ。17 社という数は、当初想定されていた数

よりは幾分控えめな数だったようだが、今後より公に認知されていくにつれて登録数も増大していくこと

が期待される。

今回の米国での株式クラウドファンディング解禁の動きは、今後日本や諸外国でのルール策定に大きな

影響を与えることが想定される。世界中でベンチャーバブル崩壊が間近かと警鐘が鳴らされる中、今回の

動きがどのようにベンチャー業界の資金調達事情に影響を与えていくか、引き続きウォッチしていきたい。

【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.16」より転載(一部修正)】

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I-33

シリコンバレーのスタートアップ事情を描写したドラマシリーズ『シリコンバレー』が話題となってい

る。米国では 2014 年から第 1 シーズンの放映が始まり、2016 年には第 3 シーズンに突入した。その間、

エミー賞を受賞するなど、作品としても評価されている。日本でも 2016 年 3 月から Hulu で第 1 シーズ

ンの放映が開始しており、話題になっている。

ドラマは起業の聖地シリコンバレーを舞台に、データ圧縮技術を武器にスタートアップを立ち上げた 5

人の若者たちの奮闘ぶりを、時にコミカルに、時にシリアスに描いている。

(Source: HBO)

Hooli という(いかにも Google を連想させるような)シリコンバレーの巨大 IT 企業に勤務する、一見

うだつの上がらないテック・オタク的風貌のリチャードが主人公。リチャードは Hooli で働く傍ら、イン

キュベーターを自称するアーリックの家でエンジニア仲間と共同生活を送りながら音楽関連サービスを開

発する秘密プロジェクトに勤しんでいた。ある日、Hooli の同僚に何気なくそのシステムを見せたところ、

このシステムの基盤となるデータ圧縮技術がとんでもなく革新的であることが露見し、Hooli の CEO の耳

に伝わる。それにより Hooli から 1000 万ドルの技術買収の話を持ちかけられるが、この技術はもっと大

きなインパクトを世界にもたらすと確信したリチャードは、投資家からの 20 万ドルで 5%の株式持ち分と

いうオファーを受け入れ、自分の会社「パイド・パイパー」を立ち上げることを決意した。

しかし、経営のケの字も分からずにはじめた技術屋リチャード。会社を登記しなければならないという

基礎的なことも分からずに投資家からもらった小切手を銀行口座に預金しようとしてしまうほどのドジぶ

り。その後、Hooli を辞めてビジネス面の支援をしてくれることになったジャレッドも加わり、5 人で七転

び八起きのスタートアップの茨の道を邁進する・・・というのが、あらすじだ。

人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情

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I-34

(Source: HBO)

なぜこのドラマが米国で大人気かというと、まずは、シリコンバレーのテックベンチャーと彼らを取り

巻く環境が精密に描かれていること。第 3 シーズンでは、Twitter 社の元 CEO である Costolo 氏を監修ア

ドバイザーに迎え入れ、シリコンバレーのインサイダー中のインサイダーの実体験と視点を取り入れてい

るほどだ。そして、一歩引いた客観的な視点からシリコンバレーの内情を風刺しているコメディ性も受け

ている。

例えば、

●スタートアップのピッチでよく耳にする”Making the world a better place”という理想主義的な言葉

が失笑を買っているところ

●ミレニアル世代の理想主義的な若手エンジニアと、「グレイヘア系」ビジネスエクゼクティブの間のす

れ違いと亀裂

●スタートアップが注目を浴びれば浴びるほど訴訟が舞い込んでくる、アメリカの訴訟社会の様子

●ベンチャーで大儲けした起業家や投資家の桁違いの散財ぶり、でもその一方で成功しても依然として

Socially awkward(社交下手)なエンジニア・ギークたち

などなど。

エピソードの中には、近い将来のバブルの崩壊の可能性を示唆するような台詞もみられ、現実社会とリ

ンクして話題を呼んでいる。ドラマのクリエイターもインタビューの中で、「実際に撮影されてから編集を

経て放映されるまでに、3~4 ヶ月かかるから、その間にバブルが弾けてました、なんてことにならないこ

とを祈るばかりだよ!」と苦笑している。さてさて今後のドラマの展開が楽しみである。

【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.17」より転載(一部修正)】

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I-35

近年、イスラエルにおけるスタートアップの盛り上がりが注目を浴びている。もともとイスラエルは強

い軍事産業に支えられた優秀なテクノロジー人材の宝庫として、その技術開発力は認知されてはいたもの

の、2013 年の Google によるイスラエル発の Waze(地図ナビゲーションアプリのスタートアップ)の買

収なども後押しして、ここ数年でシリコンバレーにおける「イスラエル発スタートアップ」の存在感が一

段と増してきている。

シリコンバレーのイスラエル起業家を支援する NPO 組織である IEFF(Israeli Executives & Founders

Forum)のサイトによると、現在シリコンバレーを拠点にするイスラエルのスタートアップは128社(2016

年 9 月時点)もあるという。イスラエルの人口は 800 万人強にすぎないことを考えると、その数は他国と

比べても圧倒的に多いと思われる。さすが人口当たりのスタートアップの数が世界一多い国と言われるだ

けある。

Figure1: シリコンバレーのイスラエル系スタートアップ(Source: IEFF)

同様にシリコンバレーを目指す諸外国からの起業家は年々増えているが、特にイスラエル発のスタート

アップは注目・実績ともに一歩先を行っている印象がある。その秘密を探りに、シリコンバレーを拠点に、

イスラエル起業家チームを支援するイスラエル系シードステージファンドとして活動している UpWest

Labs を訪ね、インタビューを行った。ここ数年で日本や中国やドイツなども、自国の起業家をシリコンバ

シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情

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I-36

レーで支援する官民含めた活動は盛んになってはいるものの、いまひとつ成果が出ていないと聞くことも

多い。イスラエル系の UpWest Labs は具体的にどのような活動をしているのだろうか?

プログラム終了後の現地資金調達成功率は 7 割

UpWest Labsは 2012 年に創業された、イスラエル出身の起業家を支援するシードステージファンドで、

これまで 60 社以上のスタートアップを支援してきた。現在は年間 6~8 社のスタートアップを厳選してシ

ード資金を投資する一方で、シリコンバレーにて 4 ヶ月のプログラムを提供し、現地での資金調達及び事

業展開を支援している。

Figure2: UpWest Labs のウェブサイト

参加チームに対しては、UpWest がビザや宿泊先をアレンジし、米国到着後すぐにプログラムに専念で

きる環境を整える。プログラムでは、米国にマーケットエントリーするためのプロダクト・マーケットフ

ィットのリサーチから始まり、現地潜在顧客との接触、ビジネスモデルの開発、投資家へのピッチ、現地

でのチームビルディングなどを UpWest やメンターからの支援をうけながら起業家が取り組む。UpWest

によると、このような一連の作業は、色々と試した結果、最低 4 ヶ月は必要だという結論に達したという。

実際に、プログラムを修了したチームの 7 割が現地での資金調達を得たという実績があり、外国人起業チ

ームとしては、その成功率は非常に高いと言える。

いかにしてそのような高い成功率が可能となるのか? UpWest のディレクターとの会話を通して以下

のヒントを得た。

(1)参加スタートアップの厳選

参加チームを厳選するときのクライテリアは 3 つ。1)イスラエル出身の起業家であること、2)事業の

メインのターゲット市場が米国であること、3)プログラム修了後も、米国に腰を落ち着かせて事業展開す

ると決心していること。イスラエルの中で優れたスタートアップであったとしても、米国で一から事業を

立ち上げるという決心をしていないチームは選ばないという。日本では、起業コンテストで上位入賞した

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I-37

チームがその「ご褒美」としてシリコンバレーに短期間滞在したり、「シリコンバレーの空気を吸って現地

の雰囲気を味わうため」にシリコンバレーツアーが提供されることが多いが、そのような「観光客的な」

チームは対象外だという。もっとも、そのような条件に当てはまる優秀なスタートアップがそもそも数多

く存在するという層の厚さが前提となっているというのもあるが、UpWest 自身も自らの投資資金を投じ

ているわけで、次につながる案件でなければ先行きが難しくなるというビジネス原理も働いている。補助

金事業とは違うのだ。

(2)チームビルディングの大切さ

参加する起業チームは最低二人から構成されている必要があり、ビジネス担当の CEO と、技術責任者の

CTO がいる必要がある。日本の起業チームでは CEO が CTO を兼任しているケースや役割が曖昧なケース

が多いが、UpWest の参加チームには誰がビジネス担当で、誰が技術担当かをまずははっきりしてもらう

という。またシリコンバレーに来てからは、特にビジネス側の追加チームメンバーとしてはできるだけ現

地のアメリカ人をリクルートすることを推奨している。

また、米国で資金調達するためにも米国に法人を設立し、それを本社とする(米国の投資家は外国本社

のスタートアップにはお金を出したがらないため)。一方、イスラエルには技術開発センターを支社として

置くケースが多い。それはシリコンバレーのエンジニア人材の競争が熾烈で、Google や Apple などの資

金が潤沢な巨大テック企業に対してスタートアップが人材競争をするのは不利である反面、イスラエルで

は優秀な技術人材がより低い給料で雇える環境にあるためである。このように、シリコンバレーではビジ

ネス機能を、イスラエルには技術開発機能をと、切り分けて運営するケースが圧倒的に多いという。

(3)米国流コミュニケーション術の叩き込み

起業チームは英語を問題なく使いこなせる人がほとんどではあるものの、米国での経験が少ない人にと

っては、現地での英語の微妙なニュアンスを理解していないことが多い。そのため、”Talk English”と”Talk

American”は違う、ということを分かってもらい、現地企業とのミーティングでどのような会話があった

かを議論し、どのように意図を理解すべきか、どのように対応すべきかなど、かなり踏み込んでアドバイ

スを行うという。単に技術が良いだけではだめで、いかに現地の慣習に則ったビジネスをできるか、を重

視している。

(4)シリコンバレーの現地コミュニティとのつながり

UpWest が主催するイベントや、紹介するメンターやネットワークについては、シリコンバレーの現地

コミュニティとのつながりを意識的に重視している。日本関連の組織の同様の活動では、どうしても現地

の日本人や日本に特別に興味を持っている現地人たちの間での狭いコミュニティ(言わば「シリコンバレ

ーの中の日本村」)とのつながりに限定されがちだが、UpWest ではイベント等への参加者の 8 割はイスラ

エルとは直接関係のない現地人となっており、いかに現地の本流層に食い込めるかを重視している。その

ような層に興味を持ってもらうには、いかに成功実績を作れるかが重要だという。単に、イスラエルは素

晴らしい技術を持っている! と宣伝するだけでは興味を持ってもらえない。やはりこれまでの成功例や

実績があってこそ。そのため、これまで築き上げてきたトラックレコードが、さらに多くの現地人を引き

つけるという好循環を生み出しているという。

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I-38

(5)大きく成功するなら米国かヨーロッパへ

イスラエルは人口が 800 万人強という小さい国であることからも、国内市場は限られているため、起業

家として大きく成功するなら、米国かヨーロッパへ行くしかないという考えがそもそも当たり前になって

いる。中途半端に国内市場が大きい日本では、まずやりやすい日本で始めて、軌道に乗ったら海外へとい

う考えのスタートアップが多い。野心家であるイスラエルの起業家からしてみると、イスラエル市場は、

プロトタイプを検証するためのテスト市場にすぎない。そのため、米国に来てから、米国でのプロダクト・

マーケットフィットの分析を再度行い、大幅に調整をせざるを得ないことも多々あるが、それは当然のこ

とと捉えられている。

上記の通り、シリコンバレーでイスラエル系のスタートアップが躍進している理由について、その背景

をほんの一面だが垣間見ることができた。イスラエルの動きは、シリコンバレーへの進出を考えている日

本のスタートアップや、その支援を行う組織に対しても幾つか重要な示唆を与えてくれることだろう。

【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.18」より転載(一部修正)】

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I-39

3. 欧州のベンチャー投資動向 Invest Europe(旧名 EVCA:European Private Equity and Venture Capital Association)が公表して

いる欧州におけるプライベート・エクイティの 2015 年の活動に関するレポート『2015 European Private Equity Activity』では、大きく分けて以下の 2 つの切り口によってデータが取りまとめら

れている。本項では、各図表の下にいずれの視点によるデータであるかを「(注)」で示す。

① 欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む) ② 欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外 VC 等からの投資を含む)

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity)

なお、Invest Europe の調査対象国は以下の 26 カ国およびその他中央・東ヨーロッパ(旧ユー

ゴスラビアおよびスロバキア)である。

Invest Europe 調査対象国 オーストリア ドイツ ポーランド

バルト三国

(エストニア、ラトビア、リトアニア)

ギリシャ ポルトガル

ハンガリー ルーマニア

ベルギー アイルランド スペイン

ブルガリア イタリア スウェーデン

チェコ ルクセンブルク スイス

デンマーク オランダ ウクライナ

フィンランド ノルウェー 英国

フランス その他中央・東ヨーロッパ(旧ユーゴスラビアおよびスロバキアから成る)

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I-40

(1) 欧州のプライベート・エクイティ投資の状況

欧州のプライベート・エクイティ投資において、その投資金額は「バイアウト投資」の占める

割合が圧倒的に大きく、2011 年~2015 年の 5 年間でみると、いずれの年も他形態の投資の 5 倍

以上である。「バイアウト投資」以外では、事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資を目

的とした「グロース投資」、次いで「VC 投資」の順となっている。 プライベート・エクイティ投資全体で投資金額をみると、2012 年以降は「バイアウト投資」

をはじめ、「グロース投資」「VC 投資」も年々伸びている。

投資先社数については「VC 投資」がもっとも多く、他形態の投資と比較して、1 社当たりの

投資規模は非常に小粒であることがわかる。一方、投資金額では他と大差をつけている「バイア

ウト投資」の投資先社数は「グロース投資」に次ぐ 3 番目であり、1 社当たりの金額が大きいこ

とを示している。

図表 2-23 投資形態別の投資金額の推移

(注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)

(注 2)「グロース投資」…事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資

次ページ以降は、欧州における「VC 投資」を中心に解説していくが、「VC 投資」のデータを

読み取る際に注意すべき点がある。Invest Europe では、比較的成熟したベンチャー企業への投資

については「グロース投資」としてデータを取りまとめているため、「グロース投資」のデータ

の中には、VC から出資を受けた企業についても一定割合で含まれている。そのため、「VC 投資」

のデータについては、実際の数字よりも小さく出ている可能性がある。

39.5 33.9 34.3 36.1 39.9

358.8

287.1297.3 317.6

365.3

52.4 41.4 36.7 54.6 60.8

19.7 14.6 12.9 10.3 8.1

3,186 3,132 3,206 3,408

3,006

894904 857 968 954

958 1,090 1,145 1,2941,130

185 186 168 146 1280

900

1,800

2,700

3,600

0

100

200

300

400

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(社数)(億ユーロ)

VC(金額) バイアウト(金額) グロース(金額) その他(金額)

VC(社数) バイアウト(社数) グロース(社数) その他(社数)

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-41

(2) 2015 年のベンチャー投資の状況

① VC 投資金額・社数

2015 年のベンチャー投資は、3,006 社に対して総額 39.9 億ユーロであった。過去 5 年間でみる

と、2011 年の 39.5 億ユーロから一旦減少した投資金額は、2012 年以降緩やかに上昇している一

方で、投資件数はほぼ横ばいである。

図表 2-24 VC 投資金額および投資先社数の推移

(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)

39.533.9 34.3 36.1 39.9

3,186 3,132 3,2063,408 3,006

0

700

1,400

2,100

2,800

3,500

0

10

20

30

40

50

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(社)(億ユーロ)

投資金額 社数

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-42

② VC 投資の業種別内訳

欧州内のベンチャー企業に対する 2015 年のベンチャー投資金額 38.1 億ユーロ(欧州内のベン

チャー企業に対する投資)の内訳を業種別にみると、「ライフサイエンス」(33.9%)、「コンピュ

ータ・コンシューマエレクトロニクス」(19.9%)、「通信」(18.6%)のトップ 3 で全体の約 7 割

以上を占めている。一方、投資先社数は、投資金額のトップ 3 とメンバーは変わりないが、トッ

プは「コンピュータ・コンシューマエレクトロニクス」(25.6%)、次いで「ライフサイエンス」

(22.4%)、「通信」(15.5%)となっている。

図表 2-25 業種別投資金額内訳

*その他…工業サービス 1.9%、化学 1.2%、運輸 1.1%、その他 0.4%、農業 0.2%、不動産 0.2%、建設 0.04%

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む)

図表 2-26 業種別投資先社数内訳

*その他…化学 1.8%、金融 1.4%、その他 1.0%、運輸 1.0%、農業 0.7%、不動産 0.3%、建設 0.2%

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む)

ライフサイエンス

33.9%

コンピュータ・コン

シューマエレクトロ

ニクス19.9%

通信

18.6%

消費財・小売

7.0%

消費者サービス

5.8%

エネルギー・環境

3.6%

工業製品

3.3%

金融

2.8%

その他*5.1%

総VC投資金額

38.1億ユーロ

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

コンピュータ・コン

シューマエレクトロ

ニクス25.6%

ライフサイエンス

22.4%

通信

15.5%

工業製品

9.7%

消費財・小売

6.9%

エネルギー・環境

5.8%

工業サービス

4.1%

消費者サービス

3.7%

その他*6.3%

総VC投資先社数

2,836社

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-43

③ VC 投資のステージ別内訳

Invest Europe では、ステージを以下の 3 つに区分している。VEC の年次報告におけるステー

ジ区分との比較を下記に示す。

Invest Europe VEC 1 シード 1 シード 2 スタートアップ 2 アーリー

3 レーター 3 エクスパンション 4 レーター

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity)

2015 年のベンチャー投資の総額 39.9 億ユーロをステージ別でみると、「スタートアップ」と「レ

ーター」を合わせて全体の 96.7%を占めており、「シード」は全体の 3.3%に留まっている。いず

れのステージにおいても過去 5 年間で投資金額の大きな変化はみられない。

図表 2-27 ステージ別投資金額の推移

(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)

1.7 1.2 1.2 1.0 1.3

20.0 18.7 17.9 19.0 20.8

17.814.0 15.2 16.0

17.8

0

10

20

30

40

50

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(億ユーロ)

シード スタートアップ レーター

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

(39.5) (33.9) (34.3) (36.1)

(39.9)

( )の数値は全ステージの合計金額

44.6%

52.1%

3.3%

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I-44

次に、2015 年のステージ別投資先社数をみると、「スタートアップ」が 6 割以上を占めており、

「シード」と合わせると 8 割近くに及ぶ。過去 5 年間でみても、欧州では若いベンチャー企業に

数多く投資していることがわかる。

図表 2-28 ステージ別投資先社数の推移

(注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)

(注 2)合計社数とステージの内訳社数の合計は一致しない e.g. 1 つの企業が同年に別ステージで計 2 回出資を受けた場合、各ステージで 1 社ずつカウントし、

合計社数では 1 社とカウント

(注 3)構成比は内訳合計を 100 として算出

428 367 422 478 440

1,792 1,922 1,875 2,038 1,906

1,013 898 950926

715

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(億ユーロ)

シード スタートアップ レーター

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

(3,186) (3,132) (3,206)(3,408)

(3,006)

( )の数値は全ステージの合計社数

23.3%

62.3%

14.4%

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I-45

(3) 欧州内 VC ファンドによる 2015 年の資金調達状況

① VC ファンド資金調達額・本数

2015 年の欧州内の VC ファンドによる資金調達額は、98 本のファンドで 53.3 億ユーロであっ

た。2014 年と比較すると、ファンド本数は 24%減少しているが、調達額は約 8%増えている。 過去 5 年間でみると、2012 年にいったん落ち込んだ調達額は、2013 年以降は年々増加してお

り、2015 年には過去 5 年間で最高額に達している。一方、ファンド本数は 2011 年の 152 本から

2015 年の 98 本へとほぼ右肩下がりに減少している。したがって、1 ファンド当たりの調達額は

ここ数年で増加しつつあることがうかがえる。

図表 2-29 VC ファンドの資金調達額および本数の推移

(注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象

(注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む

51.938.8

46.1 49.5 53.3

152

117 113 129

98

0

30

60

90

120

150

180

0

10

20

30

40

50

60

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(本)(億ユーロ)

資金調達額 ファンド本数

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-46

次に、ファンドの資金調達額および本数の推移を重点ステージ別に比較する。総調達額のもっ

とも多くの割合を占める「アーリー特化型」ファンドの 2015 年の調達額は、過去 5 年間で最高

額の 27.1 億ユーロに達している。また、全体に占める割合は小さい「レーター特化型」も前年

対比 3 倍の 8.7 億ユーロと 2011 年に次ぐ調達額となっている。一方、「バランス型」の調達金額

は、2013 年をピークに減少傾向にある。 ファンド本数でみると、過去 5 年間で 2015 年の調達額が最高額となった「アーリー特化型」

の本数は 2014年と比べて約 3割減少しており、過去 5年間でみてももっとも少なくなっている。

また、「レーター特化型」および「バランス型」も、2011 年から緩やかながら右下がりの傾向を

示している。

図表 2-30 VC ファンドの重点ステージ別資金調達額および本数の推移

(注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象

(注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む

19.8 21.9 17.1 23.9 27.1

9.9 2.23.4

2.9

8.7

22.2

14.6 25.522.6

17.5

74

60

58

80

57

20

11 9 106

58

46 4639

35

0

15

30

45

60

75

90

0

10

20

30

40

50

60

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(億ユーロ)

アーリー特化型(金額) レーター特化型(金額) バランス型(金額)

アーリー特化型(本数) レーター特化型(本数) バランス型(本数)

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-47

② VC ファンドの出資者

2015 年に新規に組成された VC ファンド 98 本の出資者内訳を金額比率で比較すると、もっと

も高い割合を占めているのは、「不明」を除き、「政府系機関」(20.6%)である。二番手は「事

業法人」であるが、「政府系機関」の半分以下の金額に留まっている。

図表 2-31 VC ファンドの出資者内訳(金額比率)

(注)欧州内に運営基盤のある VC ファンドの出資者(欧州外からの調達を含む)

政府系機関

20.6%

事業法人

9.5%

ファンドオブファンズ

7.8%

その他資金管理会社

7.0%

財団・基金

5.7%

個人・親族

4.9%

年金基金

4.7%

ファミリーオフィス

2.9%

保険会社

1.8%

銀行

0.8%

資本市場

0.2%

教育機関

0.05%

不明

34.1%

出資総額

53.3億ユーロ

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

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I-48

(4) 2015 年の Exit 状況

① VC 投資案件の Exit 戦略別社数

2011 年から 2015 年までの 5 年間について、VC 投資案件の Exit を回収方法別にみると、「売却

(M&A を含む)」および「償却」が主な Exit ルートとなっている。特に、2015 年は「売却(M&Aを含む)」の割合が過去 5 年間でもっとも高く、全体の約 4 分の 1 を占めている。Exit 件数の推

移については、ほぼ変化はみられず、毎年 1,000 社程度を維持している。

図表 2-32 VC 投資案件の Exit 戦略別社数の推移

(注 1)欧州内の企業に対する投資の Exit 社数(欧州外 PE 会社[VC 含む]による Exit を含む)

(注 2)合計社数と Exit ルートの内訳社数の合計は一致しない e.g. 2 つの異なるファンドが 1 つの企業について、別の方法で株式を手放す場合、各 Exit ルートで 1 社ずつカウントし、

合計社数では 1 社とカウント

212 164 215 221 248

7147

77 84 77

233252

278 269 243

290243

202 191 203

60103

79 81 8660

63 46 65 5813 52 14 13 35

97 78 93 90 7031 31 26 21 12

0

200

400

600

800

1000

1200

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(社)

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)

その他による回収

経営陣への売却

金融機関への売却

他のPE会社への売却

資本的なローンの返済

匿名組合の返済

償却

株式公開

売却(M&Aを含む)

(1,030)(1,012) (1,008) (1,012) (1,005)

( )の数値は全Exitルートの合計社数

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I-49

(5) 2015 年のベンチャー投資の状況(国別)

2015 年の投資状況を PE/VC 会社が所在する国別にみると、投資金額についてはイギリス、フ

ランス、ドイツの順で多く、それ以外の国は 2 億ユーロ以下に留まっている。欧州の総投資金額

34.9 億ユーロ(欧州内の投資家による欧州内のベンチャー企業に対する投資金額合計)のうち、

イギリス、フランス、ドイツの 3 カ国で 6 割以上を占めている。 投資先件数をみると、投資金額では 3 番手のドイツがもっとも多くのベンチャー企業に投資し

ている。ドイツの投資先社数 817 社は、金額トップのイギリスの 3 倍以上であり、少額投資が多

いことがうかがえる。

図表 2-33 PE/VC 会社の所在国別 VC 投資金額および投資先社数(2015 年)

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資

8.0

7.06.7

2.01.9

1.4 1.3 1.0 0.9 0.8 0.7 0.7 0.6 0.4 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.10.04 0.04 0.01 0.01

241

367

817

220

85

335

78

173

82 66 10852 47 28 37

62 9256 64

24

3 11 2 1 0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0(社数)(億ユーロ)

投資金額 投資先社数

(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)※ギリシャは投資金額、投資先社数ともに“0”

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I-50

英国貿易投資総省(UKTI)主催の”Innovation is Great”と題するイベントに参加する機会を得た。こ

の”Great”は”Great Britain”の”Great”と掛けており、シリコンバレーの後塵を拝する英国が、ベンチャー

振興において巻き返しを図るキャンペーンとして、英国の優れた投資環境や起業家に対する充実した支援

を説明するイベントであった。

シリコンバレーに比較して歴史が浅いので、まだまだ米国には追い付いていないが、欧州やアジアの VC

投資額はシリコンバレー以上に伸びているが、なかでも英国は、英語を母国語とし、ヨーロッパのゲート

ウェイとなり、文化的にも日米間よりも日英間の方が近いので、日本のベンチャーが国際展開を考えたと

きに有力な候補となるという。最後の点は米東部のマサチューセッツ州知事が来日した際、西海岸よりも

東部の方が文化的に日本に近いですよと言っていたのを思い出させた。

さらに、英国では法人税の基本税率が 20%と世界的にも低く、パテントボックス税制(特許から生じた

利益に対する法人税を 10%まで引き下げる制度)により法人税をさらに引き下げ、大幅な研究開発税額控

除制度もあると説明された。また、初期の構想段階から商品化に至るまでのプロセスのあらゆる段階を支

援する政府助成も提供されるという。

このように至れり尽くせりとも思える種々の支援策があるが、日本と英国との間の大きな違いを挙げる

とすれば、担当官が役人であるか、起業家や投資家経験者であるかではないだろうか。日本においてもビ

ジネスプランコンテストの審査員やメンター、さらには審議会の委員には起業家や投資家経験者を就任さ

せるようにしてはいるが、政策立案者やそれを実施する立場の担当官そのものにそうした経験者を中途採

用する例はない。これは新卒一括採用で、特に官僚の場合には公務員試験を通らないと採用されないとい

う、極めて労働流動性が限定的な日本の労働市場に由来するとも言える。最近でこそ官民交流が盛んにな

ってきてはいるが、それも民の方は銀行や大企業からの出向者に限られている。尖った発想の起業家や投

資家の役割にまだまだ期待することができるのではないだろうか。国によっては大臣や大使が起業家や投

資家の経験者であることもあるようである。

また、教育面では、ロンドンの Royal College of Art の Innovation Design Engineering において、自

ら課題を設定し、それを解決するためのもの(例えば、折り畳み式車椅子とか電気を通すインク)の開発

まで実現させているということであり、印象深かった。デザインと工学の融合教育である。そこの先生に

伺ったところ、日本でこのような教育をやろうとすれば、まず教える教員の養成からやらなければならな

いとのことであった。

欧州の中でもフィンランドの”Slush”や、オーストリアの”Pioneers Festival”をはじめ、ベンチャーを振

興させようといういくつかの動きがある。英国の巻き返しが功を奏するか否か、今後の展開が期待される。

英国の巻き返し

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-51

オーストリアの首都、ウィーンのホーフブルク宮殿で 2011 年以来毎年 5 月に開催されているベンチャ

ーの祭典が”Pioneers Festival”である。最初は数十人の規模であったものが、今では宮殿の入場上限の

2,500 人にまで参加者が増えているという。

2016 年 3 月には日経新聞との共催で初めて東京において”Pioneers Asia”が開催され、世界各地から千

人を超える起業家、投資家等が参加した。このイベントはアジア各地において、今後も継続して開催され

ると聞いている。オーストリア政府からは Harald Mahrer 科学・研究・経済担当国務大臣が応援に駆け付

けていたが、彼自身も起業家やエンジェル投資家の経験を持っているということで、日本では考えられな

い環境を羨ましく思えた。同国では Global Incubator Network(GIN)の構築を進めており、その披露も

兼ねての来日と伺った。

フィンランドの”Slush”は、ヘルシンキでのイベントには15,000人以上が参加するという規模であるが、

同国の大企業、ノキアからスピンアウトした起業家が中心という感じで、IT やゲームが大勢を占めている

との印象であった。Pioneers Festival は、ホームページを見てもいたるところに”tech startups”という表

現が出てくるように、IT に限らず、ロボティクスあり、バイオ技術あり、FinTech ありと、幅広い分野、

しかも日本にも優位性があると思われる分野をもカバーしているとの印象を受けた。

惜しむらくはなぜオーストリアかというところが、今ひとつ腑に落ちないということであった。ヨーロ

ッパのゲートウェイ、ウィーンから数時間であらゆるヨーロッパの都市に飛んで行けると言っても、それ

はロンドンでもブリュッセルでもヘルシンキでも同じ条件であろう。しかし、東欧とのつながりという点

ではオーストリアに地の利があるのではないかと思い当たった。地図で見てもウィーンは西ヨーロッパに

属するものの、東に突き出た位置にあり、現に東欧諸国とのつながりはどこの国よりも密接ということで

ある。東欧へのビジネス展開を考えるとき、また、未知の東欧の起業家を探そうというときにオーストリ

アの優位性が出てくるのではないだろうか?

米国に追いつけ、英国やドイツやイスラエルやフィンランドに負けるなというベンチャーの戦いに、ま

たひとつオーストリアが参戦してきている。

オーストリアの参戦

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-52

2016 年 3 月初めにタイのバンコクを訪問する機会を得たので、現地の日系 VC のキャピタリストに会

ってみた。当時東京は 10 度前後の寒さであったが、飛行機で 7 時間南に飛ぶといきなり 35 度となり、春

というより真夏の気候であった。帰国後すぐ、バンコクの水上バスで不適切な燃料の取扱いによる爆発騒

ぎがあり負傷者も出たとの報道に接し、チャオプラヤ川の水上バスで向こう岸に片道 3 バーツで渡ってい

た身としては背筋が寒くなった。

さて、バンコクにおいてもここ 3~4 年でようやくベンチャーの動きが出てきて、VC というビジネス

も認知され始めたが、まだまだ一般に理解されるというところまでは行っていないようである。2012 年と

2015 年で比較すると、出資を受けたベンチャーは 3 社から 59 社に増え、VC ファンド数は 3 本から 13

本に、ファンドレイズ額は 700 万ドルから 7,900 万ドルと 10 倍になったとの数字がある。出資先の業種

については電子商取引が中心で、米日のビジネスモデルの模倣という感じのものが多いとのことであった。

さらに、アジアで活躍する別の VC の話を聞くと、大雑把に言って模倣とオリジナルは 8 対 2 と言っ

ていた。オリジナルの中には、ASEAN 某国において、薬局が医者の処方箋通りの薬を出してくれているか

どうかをチェックする IT システムがあることであった。なるほど日本では考えらないシチュエーションが

あれば、独自のビジネスが成立するのであろう。

バンコクをはじめとした東南アジアではようやくベンチャーに目が向けられ、これから春を迎えよう

としている。日系の VC や、米国の VC でも 500 スタートアップスのように既に現地に拠点を構えるとこ

ろが出てきている。我が国としても東南アジアの元気を日本経済の成長に取り込むべしとは以前から言わ

れてきているところであるが、ベンチャーの世界においても同じになってきているのではないだろうか。

バンコクの春

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-53

「昨日発表された統計によれば、2015 年度(2015 年 4 月~2016 年 3 月)のインドの経済成長率は

7.6%で、世界経済が鈍化している中でインドは成長を続けている。」

これは 2016 年 6 月初め、一般財団法人インド経済研究所の招きで来日された Arun Jaitley インド財務

大臣の講演冒頭の力強いことばである。モディ政権が誕生して 2 年。農業国家にとって重要なファクター

となるモンスーンの良し悪しによる経済への影響もあるが、数々の改革の成果という側面も大きい。目下

財務大臣として最大の課題は新しい間接税である GST(Goods & Service Tax)の導入ということだ。現

在インドでは州により間接税率が異なるとか、課税の重複(tax on tax)があるとか、不合理な税制とな

っており、これを改正するための憲法改正案が既に下院を通過しているが、ねじれで野党勢力が優勢な上

院を通過させることができるかどうかに世界の注目が集まっている。インドでビジネスを展開しようとす

る外国企業にとっても、これが成立してインド全体が共通市場になるかどうかは大きな問題である。

2016 年 5 月下旬に訪印した際には Bandaru Dattatreya インド労働雇用大臣のスピーチを聞くことが

できた。

「雇用環境を良くするために、現在 43 本の労働関係法があり複雑となっているので、その改正を検討し

ている。」

こちらも前向きな改革に意欲的であった。43 本の多くは独立前からそのまま引き継いでおり、ことばの

定義も法律によって異なったり、ライセンスも州ごとに取得しなければならない等、州境を越えたビジネ

ス展開には障害となっている。また、現在生産労働人口の 92%が informal worker で、農業を中心に、労

働契約もなく、社会保障も受けられないまま働かされており、これを formal worker に転換していくこと

が、インドの近代化にとって重要な課題となっている。

ライバルの中国は長く続いた一人っ子政策(最近子供はふたりまで許容すると変わったようであるが)

のために人口構造は下がすぼんだ釣鐘型となり、これから急速な高齢化社会を迎えるのに対し、インドは

きれいなピラミッド型となっており、今後 10 年~20 年は人口ボーナスの恩恵を受けられると言われてい

る。これには、娘ではなく息子に看取られないと天国に行けないという宗教的な感情もあり、男子が産ま

れるまで子供が増えるということもあると聞いた。

もうひとつの課題はカースト制度であろう。名前を見ればどのカーストか分かると言われ、上司が自分

より下のカーストの人だと労働意欲が失せるので人事には注意しなければならないということも聞いたこ

とがある。これについてはカーストによる差別を禁止する法律ができ、是正に向けて動いているというこ

とであるが、永年にわたり染みついた根の深い問題であろう。

熱きインド

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-54

日系企業にも、一旦撤退したものの良いパートナーを見つけ再進出を果たしたところもあり、本社の苦

戦を尻目に、うまく行けば年率 10%の成長も夢ではないと言っていた。インドの未来は熱く、今はその産

みの苦しみといったところであろうか。

シリコンバレーにおけるインド人起業家の活躍は、その強固なネットワークとともにつとに有名である

が、インド政府としては彼らにシリコンバレーではなく、インド国内で起業してもらいたいところであろ

う。そのためにも古い殻を破る大胆な改革を進め、起業家が望むような近代的なビジネス環境を作ること

が重要となっている。

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I-55

日独産業協会 30 周年記念シンポジウムに出席するため、2016 年 6 月久しぶりにベルリンを訪れた。

久しぶりも久しぶり、最初に訪れたのは 33 年前の 1983 年である。パリ第 2 大学留学中に友人と連れ

立ってフランスの誇る名車「ルノー5(サンク)」で西ベルリンまで旅行した。当時西ベルリンは東独の中

の離れ小島であり、車で行くには東独の中の決められた高速道路しか通ってはいけなかった。西ベルリン

では地下鉄路線が一部東に出っ張ったところがあり、その駅は東西分断以後 20 年以上も誰も入れておらず、

埃だらけであったが、電車はそのような駅を無言で通過していった。というのが当時の記憶である。チャ

ーリーポイントで何とか東から西に渡ろうとした人々の苦心の跡も写真で見た。二重底にした車のトラン

クに隠れたり、車の下にしがみついたり、しかし、多くは失敗に終わったようである。

2 回目の訪問は、JETRO ストックホルム事務所長時代で、1991 年である。スウェーデンに赴任した半

年後の 1989 年 11 月 9 日の朝、所長室にスウェーデン人アシスタントが、ベルリンの壁が崩壊したと告

げに来た。その前からハンガリーの西側国境に人々が大挙して押し寄せ、国境線が破られるとのニュース

があったので、ベルリンでも何か起きるかもしれないと噂されていた。西ベルリンに押し入った東の人々

が最初に買ったのはバナナだったという報道は今でも覚えている。ベルリンの壁の破壊には性能の優れた

日本製の建造物解体機も使われたと聞いた。

そして今回の訪問。街の雰囲気は当時と比べて全体的に明るいという印象だった。夜にはカジノのネオ

ンサインが明るく人々を誘っていた。ちょうどサッカーのヨーロッパ選手権の最中で、スポーツバーの広

告が目立ったし、雑貨屋の店先に液晶テレビを置いて、道行く人々がサッカー観戦ができるようなサービ

スもしていた。100 均ならぬ1ユーロ均の店も目に付いた。

会員数 1,250 社を数える日独産業協会では、これまでの各業界の部会に加えてベンチャー支援を始める

ということで、30 周年記念シンポジウムのテーマに「起業家精神と成長-日独のベンチャー企業とエコシ

ステム」を選んだ。投資家の観点、起業家の観点及び日独協力の可能性について日独の専門家や起業家に

よるパネルディスカッションを行った。日本人起業家の中には日独間のベンチャーの橋渡しをしたり、

Japan Town Berlin プロジェクトを計画したり、日本酒の紹介をしたり、多士済々であった。今日、欧州

各都市でベンチャー促進のイベントが行われ、都市間競争状態となっているが、その中にあって、「日独」

を軸にしたベンチャー推進のプラットフォーム構築という一石を投じたシンポジウムであった。さらに同

協会では恒常的なスタートアップワーキンググループを設立させるということであり、今後の活躍が期待

される。それにしてもこんなに日本語のうまいドイツ人がたくさんいるとは驚きであった。日本に留学し

たり、日本企業で働いた経験があったり、配偶者が日本人であったり、さまざまであるが、正に日独の架

け橋となるにふさわしい人たちの集まりである。

明るいベルリン

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-56

データ集:国際編

年間 VC 投資の国際比較

(注 1)欧州のデータは「件数」ではなく「社数」ベース

(注 2)日本は年度ベース(4 月~翌年 3 月)

年間 VC 投資の国際比較(円換算)

(注 1)1 ドル=121.0 円、1 ユーロ=134.3 円、1 人民元=19.4 円換算(各年の金額を 2015 年[暦年]平均為替レートで換算)

(注 2)欧州のデータは「件数」ではなく「社数」ベース

(注 3)日本は年度ベース(4 月~翌年 3 月)

年間 VC ファンド組成の国際比較

(注)日本は年度ベース(4 月~翌年 3 月)

年間 VC ファンド組成の国際比較(円換算)

(注 1)1 ドル=121.0 円、1 ユーロ=134.3 円、1 人民元=19.4 円換算(各年の金額を 2015 年[暦年]平均為替レートで換算)

(注 2)日本は年度ベース(4 月~翌年 3 月)

件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額

米国(億ドル) 4,050 299.1 3,991 276.6 4,295 303.0 4,442 508.4 4,380 590.7

欧州(億ユーロ) 3,186 39.5 3,132 33.9 3,206 34.3 3,408 36.1 3,006 39.9

中国(億人民元) 1,505 821 1,071 460 1,148 401 1,917 1,038 3,445 1,293

日本(億円) 1,017 1,240 824 1,026 1,000 1,818 969 1,171 1,162 1,302

地域(金額単位)2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(金額:億円)

件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額

米国 4,050 36,191 3,991 33,469 4,295 36,663 4,442 61,516 4,380 71,475

欧州 3,186 5,305 3,132 4,553 3,206 4,606 3,408 4,848 3,006 5,359

中国 1,505 15,927 1,071 8,924 1,148 7,779 1,917 20,137 3,445 25,084

日本 1,017 1,240 824 1,026 1,000 1,818 969 1,171 1,162 1,302

地域2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

本数 金額 本数 金額 本数 金額 本数 金額 本数 金額

米国(億ドル) 192 190.8 218 199.1 209 177.5 272 311.0 236 282.2

欧州(億ユーロ) 152 51.7 117 38.6 113 46.1 129 49.5 98 53.3

中国(億人民元) 382 1,780 252 586 199 420 258 1,170 597 1,996

日本(億円) 31 1,197 26 1,036 35 921 39 911 51 1,932

地域(金額単位)2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

(金額:億円)

本数 金額 本数 金額 本数 金額 本数 金額 本数 金額

米国 192 23,087 218 24,091 209 21,478 272 37,631 236 34,146

欧州 152 6,943 117 5,184 113 6,191 129 6,648 98 7,158

中国 382 34,532 252 11,368 199 8,148 258 22,698 597 38,722

日本 31 1,197 26 1,036 35 921 39 911 51 1,932

2015年地域

2011年 2012年 2013年 2014年

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I-57

データ集:米国編

投資金額、投資件数、投資先社数、新規資金調達社数の推移

業種別投資金額および構成比(2014 年、2015 年)

(金額:億ドル)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年投資金額 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7

投資件数 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380

投資先社数 3,383 3,372 3,568 3,728 3,709

新規資金調達社数 1,359 1,335 1,437 1,441 1,444

2014年 2015年業 種 金額

(百万ドル)構成比 業 種 金額

(百万ドル)構成比

ソフトウェア 21,879 43.0% ソフトウェア 23,498 39.8%

バイオテクノロジー 6,344 12.5% バイオテクノロジー 7,603 12.9%

メディア/娯楽 4,742 9.3% 消費財/サービス 4,827 8.2%

ITサービス 3,085 6.1% メディア/娯楽 4,749 8.0%

消費財/サービス 3,073 6.0% ITサービス 3,863 6.5%

医療機器 2,734 5.4% 金融 3,179 5.4%

工業/エネルギー 2,353 4.6% 工業/エネルギー 3,177 5.4%

コンピュータ/周辺機器 1,458 2.9% 医療機器 2,748 4.7%

金融 1,076 2.1% 小売/流通 1,023 1.7%

小売/流通 768 1.5% ヘルスケア 844 1.4%

半導体 765 1.5% 半導体 739 1.3%

エレクトロニクス 709 1.4% コンピュータ/周辺機器 738 1.2%

事業用製品/サービス 676 1.3% 通信 712 1.2%

ネットワーク/機器 503 1.0% 事業用製品/サービス 613 1.0%

ヘルスケア 359 0.7% エレクトロニクス 392 0.7%

通信 290 0.6% ネットワーク/機器 293 0.5%

その他 30 0.1% その他 68 0.1%

不明 - - 不明 1 0.0%

合計 50,843 100% 合計 59,066 100%

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I-58

業種別投資件数および構成比(2014 年、2015 年)

ステージ別投資金額の推移

ステージ別投資件数の推移

2014年 2015年業 種 件数 構成比 業 種 件数 構成比

ソフトウェア 1,855 42.4% ソフトウェア 1,768 40.4%

バイオテクノロジー 482 10.9% バイオテクノロジー 474 10.8%

メディア/娯楽 481 11.0% メディア/娯楽 420 9.6%

ITサービス 332 7.6% ITサービス 336 7.7%

医療機器 324 7.4% 医療機器 306 7.0%

工業/エネルギー 242 5.5% 工業/エネルギー 258 5.9%

消費財/サービス 220 5.0% 消費財/サービス 242 5.5%

半導体 94 2.1% 金融 82 1.9%

金融 64 1.5% ヘルスケア 78 1.8%

小売/流通 62 1.4% 半導体 78 1.8%

コンピュータ/周辺機器 56 1.3% エレクトロニクス 64 1.5%

エレクトロニクス 53 1.2% コンピュータ/周辺機器 59 1.3%

ヘルスケア 51 1.1% 小売/流通 55 1.3%

事業用製品/サービス 50 1.1% 通信 51 1.2%

通信 40 0.9% 事業用製品/サービス 50 1.1%

ネットワーク/機器 28 0.6% ネットワーク/機器 31 0.7%

その他 8 0.2% その他 27 0.6%

不明 - - 不明 1 0.0%

合計 4,442 100% 合計 4,380 100%

(単位:億ドル)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年シード 11.2 8.5 10.3 8.3 10

アーリー 91.1 85.3 104.4 161.4 199.6

エクスパンション 99.3 95.9 99.2 214.5 221.7

レーター 97.5 86.9 89.1 124.3 159.4

合計 (299.1) (276.6) (303.0) (508.5) (590.7)

(単位:件)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年シード 436 304 243 207 186

アーリー 1,669 1,826 2,203 2,206 2,219

エクスパンション 1,025 1,007 1,034 1,162 1,146

レーター 920 854 815 867 829

合計 (4,050) (3,991) (4,295) (4,442) (4,380)

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I-59

VC 投資および CVC 投資の金額の推移

VC 投資および CVC 投資の件数の推移

VC ファンドに対する新規コミットメント金額および本数の推移

新規コミットメント金額トップ 5 州(2015 年)

VC から出資を受けた企業の IPO および M&A の社数・金額の推移

(金額:億ドル)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年コミットメント金額 190.1 199.1 177.5 311.0 282.2

ファンド本数 192 218 209 272 236

州ファンド数

(本)

コミットメント金額

(億ドル)

1ファンド当たり(百万ドル)

カリフォルニア州 102 139.0 136.3

ニューヨーク州 31 66.7 215.0

マサチューセッツ州 18 28.2 156.8

ワシントン州 11 11.7 106.8

ノースカロライナ州 4 4.9 122.8

小 計 166 250.6 151.0

その他 70 31.6 45.1

合 計 236 282.2 119.6

(金額:億ドル)

2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年IPO時の調達金額 274.4 40.4 23.3 20.2 98.1 49.1 70.7 117.4

IPO社数 238 37 24 26 81 59 67 90

M&A時の取引額 800.0 251.2 119.1 82.4 234.3 197.2 242.2 307.5

M&A社数 379 385 364 324 403 447 482 488

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年IPO時の調達金額 7.7 19.8 80.7 104.4 213.5 110.7 155.1 93.8

IPO社数 7 13 67 50 48 81 117 77

M&A時の取引額 149.3 123.6 177.3 242.0 226.9 169.1 481.4 169.5

M&A社数 417 350 525 492 477 386 472 360

(単位:億ドル)

1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年VC投資金額 80.2 112.9 150.7 215.6 549.1 1,050.0 409.4 222.0 196.8 228.5 232.5

CVC関与投資金額 4.4 7.8 9.2 18.0 78.9 147.9 45.8 18.3 12.8 14.9 14.7

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC投資金額 278.7 321.0 304.4 203.3 235.3 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7

CVC関与投資金額 25.8 26.8 27.0 13.4 18.3 23.1 22.6 32.2 57.6 77.1

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC投資件数 3,896 4,233 4,206 3,170 3,677 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380

CVC関与投資件数 814 847 902 406 489 611 631 741 809 930

(単位:件)

1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年VC投資件数 1,897 2,635 3,232 3,744 5,605 8,041 4,596 3,217 3,037 3,236 3,302

CVC関与投資件数 139 234 323 500 1,225 1,936 956 544 431 538 557

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I-60

データ集:欧州編

投資種類別投資金額の推移

(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)

投資種類別投資社数の推移

(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)

2015 年業種別投資金額および構成比

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外 VC 等からの投資を含む)

(単位:億ユーロ)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC(金額) 39.5 33.9 34.3 36.1 39.9バイアウト(金額 358.8 287.1 297.3 317.6 365.3グロース(金額) 52.4 41.4 36.7 54.6 60.8その他(金額) 19.7 14.6 12.9 10.3 8.1

(単位:社 )

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC(社数) 3,186 3,132 3,206 3,408 3,006バイアウト(社数 894 904 857 968 954

グロース(社数) 958 1,090 1,145 1,294 1,130

その他(社数) 185 186 168 146 128

(単位:百万ユーロ)

業 種 金額 構成比ライフサイエンス 1,288.8 33.9%

コンピュータ・コンシューマエレクトロニクス 758.2 19.9%

通信 709.6 18.6%

消費財・小売 266.4 7.0%

消費者サービス 220.9 5.8%

エネルギー・環境 138.5 3.6%

工業製品 125.2 3.3%

金融 105.3 2.8%

工業サービス 72.3 1.9%

化学 46.6 1.2%

運輸 42.4 1.1%

その他 14.7 0.4%

農業 7.5 0.2%

不動産 7.0 0.2%

建設 1.7 0.04%

投資金額合計 3,805.1 100%

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I-61

2015 年業種別投資社数および構成比

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外VC等からの投資を含む)

ステージ別投資金額の推移

(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)

ステージ別投資社数の推移

(注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)

(注 2)合計社数とステージの内訳社数の合計は一致しない e.g. 1 つの企業が同年に別ステージで計 2 回出資を受けた場合、各ステージで 1 社ずつカウントし、

合計社数では 1 社とカウント

(単位:社)

業 種 社数 構成比コンピュータ・コンシューマエレクトロニクス 725 25.6%

ライフサイエンス 635 22.4%

通信 441 15.5%

工業製品 275 9.7%

消費財・小売 196 6.9%

エネルギー・環境 166 5.8%

工業サービス 115 4.1%

消費者サービス 104 3.7%

化学 51 1.8%

金融 39 1.4%

その他 28 1.0%

運輸 27 1.0%

農業 19 0.7%

不動産 8 0.3%

建設 7 0.2%

社数合計 2,836 100%

(単位:億ユーロ)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年シード 1.7 1.2 1.2 1.0 1.3

スタートアップ 20.0 18.7 17.9 19.0 20.8

レーター 17.8 14.0 15.2 16.0 17.8

合計 (39.5) (33.9) (34.3) (36.1) (39.9)

(単位:社)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年シード 428 367 422 478 440

スタートアップ 1,792 1,922 1,875 2,038 1,906

レーター 1,013 898 950 926 715

合計 (3,186) (3,132) (3,206) (3,408) (3,006)

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I-62

ファンドの投資形態別資金調達額および本数の推移

(注)欧州内に運営基盤があるファンドが対象

VC ファンドの重点ステージ別資金調達額および本数の推移

(注)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象

VC ファンドの出資者内訳

(注)欧州内に運営基盤のある VC ファンドの出資者(欧州外からの調達を含む)

(単位:億ユーロ)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC 51.9 38.8 46.1 49.5 53.3バイアウト 269.2 167.3 454.4 362.6 335.7グロース 44.3 5.4 10.6 27.9 28.8その他 50.5 34.3 32.8 39.8 58.0

(単位:本)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年VC 152 117 113 129 98バイアウト 81 73 84 93 90

グロース 32 18 19 31 38

その他 72 58 50 71 48

(単位:億ユーロ)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年アーリー特化型 19.8 21.9 17.1 23.9 27.1

レーター特化型 9.9 2.2 3.4 2.9 8.7

バランス型(金 22.2 14.6 25.5 22.6 17.5

合計 (51.9) (38.8) (46.1) (49.5) (53.3)

(単位:本)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年アーリー特化型 74 60 58 80 57

レーター特化型 20 11 9 10 6

バランス型(本 58 46 46 39 35

合計 (152) (117) (113) (129) (98)

(単位:百万ユーロ)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年教育機関 8.1 0.3 10.8 100.7 2.5

銀行 403.3 143.9 125.0 138.1 42.6

資本市場 178.8 45.9 28.6 88.7 12.2

事業法人 635.4 522.2 322.5 1126.3 503.8

財団・基金 26.8 30.3 336.3 148.5 302.0

ファミリーオフィス 141.8 227.5 216.0 183.7 153.4

ファンドオブファンズ 460.2 307.2 407.4 314.0 415.1

政府系機関 1494.1 1270.7 1468.9 1213.8 1097.7

保険会社 109.5 229.9 129.9 91.2 95.0

その他資金管理会社 49.3 159.4 69.2 61.3 373.7

年金基金 338.6 160.8 371.7 489.9 252.9

個人・親族 621.4 266.0 746.3 250.1 259.9

政府系ファンド 13.1 14.4 70.0 14.1 0.0

不明 694.2 485.4 305.8 726.4 1819.8

合計 5174.5 3863.8 4608.3 4946.7 5330.5

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I-63

VC 投資案件の Exit 戦略別金額の推移

(注)欧州内の企業に対する投資の Exit 金額(欧州外 PE 会社[VC 含む]による Exit を含む)

VC 投資案件の Exit 戦略別社数の推移

(注 1)欧州内の企業に対する投資の Exit 社数(欧州外 PE 会社[VC 含む]による Exit を含む)

(注 2)合計社数と Exit ルートの内訳社数の合計は一致しない e.g. 2 つの異なるファンドが 1 つの企業について、別の方法で株式を手放す場合、各 Exit ルートで 1 社ずつカウントし、

合計社数では 1 社とカウント

(単位:百万円)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年売却(M&Aを含む) 1132.0 669.5 1145.1 839.4 1039.4

株式公開 328.2 89.3 302.1 195.6 231.1

償却 324.3 502.4 353.0 335.3 295.5

匿名組合の払戻し 52.9 41.5 40.5 31.9 34.0

本体融資の払戻し 38.5 38.2 52.4 59.4 54.9

他のPE会社への売却 262.9 246.4 144.2 206.7 200.9

金融機関への売却 75.9 96.3 23.9 74.0 97.6

経営陣への売却 101.4 86.4 130.3 108.2 91.7

その他による回収 50.0 81.3 18.9 22.3 15.3

合計 2366.1 1851.3 2210.3 1873.0 2060.3

(単位:社数)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年売却(M&Aを含む) 212 164 215 221 248

株式公開 71 47 77 84 77

償却 233 252 278 269 243

匿名組合の払戻し 290 243 202 191 203

本体融資の払戻し 60 103 79 81 86

他のPE会社への売却 60 63 46 65 58

金融機関への売却 13 52 14 13 35

経営陣への売却 97 78 93 90 70

その他による回収 31 31 26 21 12

合計 (1,030) (1,012) (1,008) (1,012) (1,005)

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I-64

PE/VC 会社の所在国別投資金額の推移(ベンチャー投資)

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資

(単位:億ユーロ)

国名 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

オーストリア 0.2 0.2 0.3 0.2 0.3

バルト三国 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2

ベルギー 1.0 1.2 1.0 1.2 0.6

ブルガリア 0.0 0.0 0.02 0.01 0.01

チェコ 0.1 0.0 0.0 0.1 0.0

デンマーク 1.2 1.0 1.2 1.0 1.3

フィンランド 0.7 0.8 1.0 1.0 1.0

フランス 6.7 6.5 7.5 7.2 7.0

ドイツ 6.8 5.1 5.5 5.5 6.7

ギリシャ 0.09 0.0 0.01 0.0 0.0

ハンガリー 0.3 0.7 0.2 0.3 0.2

アイルランド 0.4 0.7 0.7 0.6 0.7

イタリア 0.5 0.7 0.4 0.3 0.3

ルクセンブルク 0.4 0.4 0.3 0.3 0.4

オランダ 1.6 1.4 1.5 1.8 2.0

ノルウェー 1.2 1.1 0.8 0.9 0.8

その他中央・東ヨーロッパ 0.1 0.0 0.1 0.1 0.1

ポーランド 0.2 0.1 0.2 0.2 0.3

ポルトガル 0.1 0.1 0.3 0.4 0.7

ルーマニア 0.0 0.0 0.04 0.02 0.01

スペイン 1.2 0.9 0.8 0.7 0.9

スウェーデン 2.2 1.9 2.2 1.9 1.4

スイス 2.2 1.0 2.0 1.6 1.9

ウクライナ 0.0 0.0 0.01 0.02 0.04

イギリス 7.4 5.9 5.0 6.9 8.0

合計 34.8 30.0 31.1 32.5 34.9

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I-65

PE/VC 会社の所在国別投資先社数の推移(ベンチャー投資)

(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資

(単位:社)

国名 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

オーストリア 68 86 86 87 92

バルト三国 27 43 40 75 64

ベルギー 82 103 94 117 47

ブルガリア 1 2 2 3 1

チェコ 4 1 3 8 11

デンマーク 91 81 77 77 78

フィンランド 128 136 163 203 173

フランス 407 375 453 447 367

ドイツ 927 811 774 809 817

ギリシャ 4 0 1 1 0

ハンガリー 29 42 34 65 56

アイルランド 70 79 93 68 52

イタリア 44 74 60 55 37

ルクセンブルク 22 29 27 24 28

オランダ 175 180 206 236 220

ノルウェー 122 105 108 72 66

その他中央・東ヨーロッパ 7 2 7 17 24

ポーランド 25 29 62 46 62

ポルトガル 33 56 79 95 108

ルーマニア 0 0 1 4 2

スペイン 120 95 90 79 82

スウェーデン 312 371 345 388 335

スイス 108 79 101 74 85

ウクライナ 0 0 1 2 3

イギリス 359 370 362 363 241

合計 2,957 2,968 3,041 3,221 2,825

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I-66

ベンチャー争奪 欧州各国、起業イベントが花盛り

欧州各国でスタートアップ関連イベントが活発になっている。成功したベンチャー経営者が講演し、ス

タートアップが事業内容をピッチ形式などで発表する。資金を供給するベンチャーキャピタルや事業提携

先を探す大企業が参加し、エコシステム(生態系)を形成している。

2016 年 5 月の欧州はスタートアップイベントが目白押しだった。5 月前半にルクセンブルクで開かれ

た「ICT スプリング」、下旬にオーストリア・ウィーンで開かれた「パイオニアーズ・フェスティバル」、

オランダ・アムステルダムの「ネクストウェブ」、5 月末から 6 月にかけてのエストニア・タリンの「ラテ

ィテュード 59」など、あふれかえっていた。

イベントは、ヒト・モノ・カネが実際に集まるため、国や都市の「スタートアップ力」のバロメーター

とも言える。これまで、大型のイベントがなかったフランスのパリでは 2016 年 6 月、同国の大手広告代

理店とメディアが共同で、「ビバテクノロジー」というイベントを新たに立ち上げた。大企業がベンチャー

のためのブースを確保する形式だったという。

イベントの国際展開も進んでいる。パイオニアーズやフィンランド・ヘルシンキのスラッシュは日本で

アジア版を開催した。ICT スプリングはかねて、日本のスタートアップのエントリーを募集している。ビ

バテクノロジーもフランス投資庁がスタートアップを募集した。ラティテュード 59 には 2016 年、福岡

市が出展した。

米シリコンバレーに確立されたスタートアップエコシステムに負けないエコシステムを形成し、有力な

ベンチャーを生み出す戦いが勃発している。

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I-67

海外で CVC、オープンイノベーションを促進

大鵬薬品工業は 2016 年 5 月、バイオベンチャーに投資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、

タイホーベンチャーズ(カリフォルニア州)を設立した。ガンなどの腫瘍に関する研究創薬を手がけるベ

ンチャーが主な投資対象だ。当初の投資金額の規模は 5,000 万ドル。

前年にはレミジェス・ベンチャーズ(マサチューセッツ州)の創薬関連ファンドに出資しており、その

経験を踏まえて、自前のファンド設立に踏み切った。

ヤマハ発動機は 2016 年 2 月、メッシュ型通信と呼ばれる技術を開発する米ベンチャー、Veniam(カ

リフォルニア州)に 200 万ドル出資した。米大手企業のベライゾンやシスコシステムズと並んでの投資は

2015 年、米シリコンバレーに新設した、ヤマハモーター・ベンチャーズ&ラボラトリー・シリコンバレ

ーの第一弾の投資でもある。同社は研究開発とベンチャー投資を担う組織で、「ロボティクス」や「コネ

クテッド」などをキーワードに新規事業の開発に取り組んでいる。

旭化成はヘルスケア事業の強化を狙い、関連ベンチャーへの投資を増強する。そのため、米国に設けて

いる CVC の投資枠を引き上げた。これまでは素材分野が主な対象だったが、ヘルスケアも視野に入れる。

増えるアフリカに挑戦する起業家 VC も意欲

アフリカが日本のスタートアップにとって新たな挑戦の舞台になっている。ベンチャーにとって成功の

第一の秘訣は成長する市場で事業展開することと言われる。まさにアフリカが約束の地だ。

2016 年 8 月末にケニア・ナイロビで開かれた第 6 回アフリカ開発会議(TICAD6)。TICAD 開幕の基

調演説で安倍首相は、アフリカ各国の首脳を前に、アフリカスキャン(東京都品川区)を紹介した。同社

はケニアで、すでに 12 店舗の小型店舗(キオスク)を展開する。店頭での体重測定、無料健康診断、健

康食品の販売など、ヘルスケア分野に力を入れている。

デジタルグリッド(東京都台東区)はタンザニアで電力事業「WASSHA」を手がける。日中にソーラー

パネルで充電した充電池兼 LED ライトを有料で貸し出すサービスだ。料金の支払いには携帯電話を使った

モバイルペイメントの仕組みも採用している。

アフリカビジネスに挑むこうしたベンチャーを資金面で支援する動きも活発になっている。コモンズ投

信の渋沢健会長らが 2016 年春、大企業から資金を募って立ち上げた「日本アフリカ起業支援イニシアチ

ブ」は起業家に初期の活動費を提供する。ベンチャーキャピタルも意欲的だ。デジタルグリッドには東京

大学エッジキャピタルなどが出資する。AAIC コンサルティングもアフリカで活動するベンチャーに重点

的に投資している。

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I-68

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I-69

ベンチャー企業と大企業との協働

大企業においてオープンイノベーションへの関心が高まっており、具体的な取り組み事例も数

多くみられるようになった。

VEC も、2015 年 12 月発刊の「ベンチャー白書 2015」において、大企業におけるオープンイ

ノベーションを進める際の一手段と言えるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)につい

て概要と留意点を解説した。 これを受けて、2016 年 2 月から 10 月にかけて、ベンチャーキャピタル(VC)、CVC、事業

会社約 50 社を訪問し、大企業がベンチャー企業(VB)とどのように協働しようとしているか、

CVC への具体的な取り組みも含めて、ヒアリングを実施した。 なお、頂いた生の声・意見は、再構成し座談会風にまとめてみた(I-87 ページ参照)。

ヒアリングをベースにして、大企業が VB との協働をどのように進めていくかについて、次ペ

ージ以降にポイントを記してみた。

ここでは、IPO 等での Exit を目指すような、先端分野で高い技術力を誇る VB、グローバルな

成長を目指す VB、全く新しいビジネスモデルで大きな市場を創出しようと挑戦する VB 等を念

頭に置いている。

なお、「ベンチャー企業向けアンケート調査 図表 4-6」(I-109 ページ参照)にもあるように、

すべての VB が IPO を目指しているわけではない。 地方の活性化や地域の社会的課題の解決に取り組む VB も数多くある。どちらも日本の産業や

社会の活性化に向けて挑戦し、重要な役割を担っている点で全く変わりがない。

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I-70

1. ベンチャー企業と大企業との協働 ―協働をどのように進めていくか―

(1) 新興大企業と伝統的大企業…VB との向き合い方に大きな違い

大企業と VB との協働(コラボレーション)については、VB としてスタートし、急成長を遂

げて大企業となった「新興大企業」(IT 関連企業が多い)と「伝統的大企業」とでは、大きな違

いがあると言われている。 新興大企業においては、VB を、協力してイノベーションを起こす「パートナー」としてとら

え、仲間意識を持って接しているように思える。こうした企業風土もあってか、VB との協働や、

VB の買収事例も何件かみられる。例えば、DeNA は、2014 年 10 月に、iemo 注 1 とペロリ注 2

を買収した。2015 年 5 月には、自動運転技術を活用したロボットタクシー事業の実現に向け、

ZMP 注 3との合弁会社(ロボットタクシー)を設立している。

(注 1)iemo:住まいやインテリアに特化したキュレーションプラットフォーム運営

(注 2)ペロリ:女性向けファッションに特化したキュレーションプラットフォーム運営

(注 3)ZMP:ロボット、自動運転技術開発用プラットフォーム開発・販売

これに対して、伝統的大企業においては、往々にして、VB を「上から目線」で見る傾向があ

り、VB を下請業者の一つとの位置付けでとらえる向きも多いようだ。VB への投資は増えてき

たが、VB との協働や VB の買収事例もまだ少ないのが現状だ。 以下では、このような「伝統的大企業」を念頭に置いて、VB との協働を検討してみた。

(2) 伝統的大企業にも大きな変化が…VBはイノベーションを起こす有力な選択肢の一つと認識

伝統的大企業(以下、大企業と記述)にも、程度の差こそあれ、変化はみられる。 経営トップが「新技術、新素材、新ビジネスモデルへの取り組み無くして、成長はおろか、現

状維持すら難しい」との危機感を募らせ、オープンイノベーションの重要性が認識されてきた。 こうした中で、VB に対する見方が変りつつある。すなわち、VB との協働を、「イノベーショ

ンの有力な選択肢の一つ」として認識しはじめたことである。 次ページに経済産業省「平成 27 年度産業技術調査事業(我が国企業の研究開発活動及び実証・

評価研究の支援のあり方に関する調査)」では、今後の提携推進意向として「ベンチャー企業」

への期待が示されている注。この点こそ、もっとも大きな変化である。 背景には、以下の要因があると考えられる。 ①IoT、AI 等の新技術の応用範囲が急速に拡大しており、大企業といえども、自社技術だけで

は、新規事業開発に対応しきれなくなってきたこと ②破壊的技術(disruptive technology)は、VB から生まれている現実があること ③Google、Facebook、Amazon 等の元 VB が、内外の VB を積極的に買収し、急速に事業分

野を拡大していること

④電機メーカー等の例を引くまでもなく、「大企業といえども、10 年先も現在の姿で存在して

いるかは分らない」という危機感があること

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I-71

(注)大企業の外部組織との提携についての調査としては、経済産業省「平成 27 年度産業技術調査事業(我

が国企業の研究開発活動及び実証・評価研究の支援のあり方に関する調査)」(調査対象:大企業のうち直

近年度決算期の研究開発費上位 1,001 社、回答数:222 社)がある。

同調査では、提携先を「国内」「海外」に区分して、2014 年度実績(図表 3-1)と、今後の提携推進意

向(図表 3-2)を調査している。2014 年度実績「国内」をみると、提携有は、トップが「大学等」(84.2%)、

次いで「大企業」(74.3%)、「公的研究機関」(70.3%)の順で、「ベンチャー企業」は 26.6%に過ぎない。

しかし、今後の提携推進意向「国内」をみると、「大学等」(88.3%)、「大企業」(84.2%)、「公的研究機関」

(77.9%)とトップ 3 の順位は変わらないが、「ベンチャー企業」は、56.8%と 2 倍以上となっているのが

目立つ。

図表 3-1 大企業の外部組織との連携実績(2014 年度)

(出所)経済産業省「平成 27 年度産業技術調査事業」

図表 3-2 大企業の外部組織との連携推進意向

(出所)経済産業省「平成 27 年度産業技術調査事業」

74.3%

58.1%

26.6%

84.2%

34.7%

70.3%

50.5%

34.2%

8.6%

2.7%

22.1%

36.5%

67.1%

13.5%

61.3%

26.1%

44.6%

60.8%

83.8%

52.3%

3.6%

5.4%

6.3%

2.3%

4.1%

3.6%

5.0%

5.0%

7.7%

45.0%

大企業

中小企業

ベンチャー企業

大学等

政府、中央官庁

公的研究機関

技術的な学会・協会

コンサルティング会社

ベンチャーキャピタル

その他

有 無 不明国内

33.8%

22.1%

16.2%

35.6%

9.9%

18.9%

18.9%

14.0%

9.0%

2.7%

59.9%

70.7%

75.7%

59.5%

83.8%

74.8%

73.4%

78.8%

83.3%

52.7%

6.3%

7.2%

8.1%

5.0%

6.3%

6.3%

7.7%

7.2%

7.7%

44.6%

大企業

中小企業

ベンチャー企業

大学等

政府、中央官庁

公的研究機関

技術的な学会・協会

コンサルティング会社

ベンチャーキャピタル

その他

有 無 不明国外

84.2%

70.7%

56.8%

88.3%

51.4%

77.9%

62.2%

44.1%

22.1%

3.2%

10.8%

21.6%

36.0%

6.8%

42.8%

17.1%

31.1%

49.1%

68.0%

48.2%

5.0%

7.7%

7.2%

5.0%

5.9%

5.0%

6.8%

6.8%

9.9%

48.6%

大企業

中小企業

ベンチャー企業

大学等

政府、中央官庁

公的研究機関

技術的な学会・協会

コンサルティング会社

ベンチャーキャピタル

その他

有 無 不明国内

52.3%

43.7%

40.1%

55.0%

24.8%

39.6%

34.7%

27.9%15.8%

1.4%

41.0%

47.3%

51.8%

38.3%

67.1%

52.7%

57.2%

63.5%

74.8%

50.5%

6.8%

9.0%

8.1%

6.8%

8.1%

7.7%

8.1%

8.6%

9.5%

48.2%

大企業

中小企業

ベンチャー企業

大学等

政府、中央官庁

公的研究機関

技術的な学会・協会

コンサルティング会社

ベンチャーキャピタル

その他

有 無 不明国外

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I-72

(3) 協働相手の VB をどのように探すか

大企業、VB 双方から、協働する相手を探す出会いの場や、組むべき相手求める声をよく聞く。 大企業と VB をつなぐ仲介者の果たす役割は大きい。

これまで、大企業と VB を結ぶ仲介者としては、VC、金融機関、大学(産学連携)、政府・地

方公共団体並びに系列諸団体、監査法人、弁護士事務所等があったが、近年、仲介を専門とする

業者も活躍している。 最近は、組むべき相手を探す方法にも各社各様の工夫がみられるようになった。

①関心ある VB を対象とした自社主催のマッチングイベント

大規模なイベントは、VB 等参加者に発表の場を提供し、VB を、参加している大企業のみな

らず、広く他の参加者や世の中に周知させる活動として、その役割を果たしてきた。例えば、「新

事業創造支援カンファレンス&Connect!」や「TOKYO イノベーションリーダーズサミット」な

どが挙げられる。こうした大規模なイベントでは、盛んに大企業と VB の仲介活動も行っている。 最近は、大企業と VB との間で、より個別具体的にテーマを絞り込んだ仲介活動も行われるよ

うになってきた。 例えば、継続的に活動している NTT データ主催の「豊洲の港から」では、自社業務に関連す

る VB を集め、関心を示した事業部がその後事業化に向けフォローする仕組みをとっている。 メガバンク系のテーマを FinTech に絞ったコンテストや、大企業各社が主催するハッカソン注、

アイデアソン注といったイベントもこの類だ。 海外の VB を対象に開催するところも出てきた。例えば、村田製作所はイスラエルで、サムラ

イ・インキュベートと組んで、ハッカソンを既に 2 回開催している。

(注)「ハッカソン(Hackathon)」とは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語。「ア

イデアソン(Ideathon)」は、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語。いずれもある

特定のテーマについて、主として企業外の様々な専門分野のメンバーが集まり、サービスやシステムなど

の開発、ビジネスモデルの構築などを短期間で行うイベント。

②インターネットを活用したプラットフォーム形式+人脈で仲介

新規参入の仲介業者の中には、新しいビジネスモデルを構築して、参入した自分自身が VB と

いうケースも目立つ。例えば、「ものづくり系」のマッチングサービスでは、リンカーズ注 1、リ

バネス注 2、A(エイス)注 3等が挙げられる。この 3 社のサービス対象には、大企業および VB も

含まれている。各社ともインターネットを活用したプラットフォーム形式で、候補者の数、仲介

の幅を広げている。また、リンカーズ、リバネスの両社は、既存組織のリアルな人脈も同時に活

用している。

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I-73

(注 1)リンカーズ株式会社:2012 年 4 月設立 https://linkers.net/

・メーカーマッチングサービス「Linkers」運営

・コーディネーターと呼ばれる全国各地の自治体等の産業支援機関に所属する現場、現物を熟知した人

物(1,700 名以上)が、依頼者の要望にマッチした製品(企業)を提案

(注 2)株式会社リバネス:2002 年 6 月設立 https://lne.st/

・50 名を超えるスタッフ全員が修士・博士号を持つ

・大企業と連携したシードアクセラレーションプログラム「TECH PLANTER」や研究者×大企業のプラ

ットフォーム「L-RAD」など、科学技術に関連した幅広いプラットフォームを有する

(注 3)株式会社 A(エイス):2012 年 4 月設立 https://www.wemake.jp/

・ものづくりのクラウドプラットフォーム 「Wemake※」の運営

(※)メーカーが、会員(約 1 万人)と共に、短期間で新商品コンセプトや新規事業案を創出する「オープンイノ

ベーションプラットフォーム」

・メーカー担当者と会員が対等の立場で議論し、新しいものを共創

大企業とベンチャーのマッチングが花盛り

2016 年 9 月下旬、イスラエル最大のベンチャーイベント「DLD」で賑わうテルアビブ市内で、デロイ

トトーマツグループは「DLD ベンチャーピッチ@イスラエル」を開催した。ヘルスケア、IoT、サイバー

セキュリティーの 3 分野で事業を手がける現地のベンチャー企業が、日本から参加した大企業を前にプレ

ゼンした。ある電機関連企業の担当者は「イスラエルは事業に結びつきやすい魅力的な会社が多い」と興

奮しながら振り返った。

株式市場から高い投資効率を求められる大企業にとって、全ての事業を自前でゼロから育てるのではな

く、必要に応じて外部の成果を取り込む必要性は増している。外部のベンチャー企業が立ち上げた事業を

買収したり、資本・業務提携したりして取り込むオープンイノベーションは時代の流れだ。そのため、大

企業とベンチャーのマッチングビジネスが拡大している。

最大級のマッチングイベントはイノベーションリーダーズサミット(ILS)だろう。2015 年開催のイベ

ントでは、大企業とベンチャーの総商談数は 1,816 件で、半数近い 902 件で大企業が再度の面談を希望

したという。

金融庁と日本経済新聞社が 2016 年 9 月に開催したフィンテック関連イベントでも、スポンサー企業へ

の便益として、海外から参加したスタートアップ企業との面談が延べ 30 件以上セッティングされた。

オープンイノベーション支援サービスを標榜する Linkers(リンカーズ)は、ものづくりの受発注を中

心に創業以来 200 件以上のマッチング実績があるという。

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I-74

メガバンク、ベンチャー支援の主役に フィンテックがきっかけ

ここ 2~3 年、ベンチャーやスタートアップの世界で、銀行の存在感が増している。とりわけ、三菱東

京 UFJ 銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の 3 メガバンクの動きは急だ。金融とテクノロジーを融合させる

「フィンテック」を取り込むため、ベンチャーとの連携を通じたオープンイノベーションの実践が不可欠

になっているためだ。

2015 年 10 月 5 日、東京・大手町の三井住友銀行本店では「ミライハッカソン」のデモデーが開催され

た。銀行の技術仕様「API」を公開して、新しいサービスを開発する狙いだ。大学生や若手のエンジニア

など多数が応募した。ベンチャー支援プロジェクト「ミライ」の一環でもある。

同様の試みは、三菱東京 UFJ も先行して取り組んでいる。2015 年から 2 年連続で「Fintech Challenge」

を開催した。

ただ、ハッカソンでの成果はアイデア段階のものも多く、実際の事業化には時間がかかる場合も少なく

ない。そこで、三菱東京 UFJ は 2016 年、新たに、ベンチャー企業を対象に、アクセラレータープログラ

ムを実施した。8 月に開いたデモデーで優勝したゼノデータ・ラボは、AI(人工知能)を活用して上場企

業の決算発表資料のテキストを分析して投資レポートを自動作成する。グループ内のネット証券との提携

が決まっている。

みずほ銀行(みずほフィナンシャルグループ)は 2016 年 4 月、ベンチャー企業の新規取引開拓や支援

の専門部である「イノベーション企業支援部」を設置して、スピーディーな対応ができる体制とした。ま

た同行は、大企業とベンチャー企業の連携によるビジネス機会の創出を支援している。

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I-75

研究と開発の間 ―「魔の川」― をつなぐ仲介者

VB の成長過程で、開発ステージと事業化ステージの間に「死の谷」と呼ばれる大きな障害があることは

よく知られている。しかし、そのひとつ前の段階、研究ステージと開発ステージの間にも「魔の川」と呼

ばれる障害がある(下図)。期待されている大学発 VB を例にとると、この指摘は納得的だ。大学や研究機

関では、真理探究を目的に、基礎研究が行われている。近年、科学分野でノーベル賞受賞が相次いでいる

のも、基礎研究の分野であり、年月を経てグローバルに広く認められる基礎研究の重要性を改めて想起さ

せられる。

ただし、事業化という観点からみると、これらの研究ステージの技術シーズが、どれが一定期間内に開

発ステージの製品開発(試作)に進めるのかを判断する必要がある。中心的な役割を担う人に要求される

資質・能力は、両ステージでは異なる。研究側では開発側のニーズが把握しづらい状況にある。「魔の川」

を渡るには、対岸(開発側)の状況を熟知している人が必要となる。

研究と開発をつなぐ仲介者は、これまで、大学・研究機関(産学連携)くらいであった。しかし、まだ

ごく一部のようだが、民間企業の参入がみられるようになったことは、注目に値する。

この業務に携わっている大手証券会社の担当者によると、

「大学や研究機関側では、どの大企業が関心を持っているか、どの程度関心を持っているかは、現状、大

学の卒業生による繋がりといった属人的なルートはあっても、網羅的には把握しづらい。そこで、我々が、

大学、研究機関から直接話を聞いたうえで、関心がありそうな大企業を 5~10 社選び、直接訪問し、関心

の有無を確かめる。仮にそのうち 1 社でも関心を持てば、大学、研究機関側にフィードバックし、フォロ

ーする」「大企業からは、いつまでに、研究がこの段階まで進むならば、開発候補になりうるというような

条件が提示される場合もある」という。

VBの成長過程 魔の川、死の谷、ダーウィンの海

(出所) 出川通:「技術経営の考え方、MOT と開発ベンチャーの現場から」

技術シーズ

研究 魔の川

製品開発(試作)

開発 死の谷

商品開発(試作量産、ビジネ

ス・スタートアップ)

事業化 ダーウィンの海

工場生産(本格的商業化)

産業化

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I-76

(4) 大企業における具体的な変化

大企業の中にも積極的に VB との協働を進めようという動きがある。以下に具体例を述べる。

① 大企業の資本投下の急増…本体も

資金面でいえば、大企業が子会社として創設した VC 経由で内外の VB に投資するケースは増

加傾向にあり、最近では、事業会社本体が直接 VB に投資するケースも目立つ。 図表 3-3 は、2015 年度以降の大企業(メーカー)による内外 VB への投資例の一部を示した

ものであるが、大企業(メーカー)の資本投下は、戦略的投資が多く、当面のフィナンシャルリ

ターンよりも、イノベーションへの寄与を重視しているようだ。

図表 3-3 大企業(メーカー)の VB 投資例

(出所:各社 HP ならびに各種報道、VEC 作成)

国内VB投資大企業・CVC 投資先VB 業種 備考 投資時期

村田製作所 CLIP カード型デバイス「CLIP」を開発 2015/4

ゴールドウイン スパイバー 新世代バイオ素材開発(蜘蛛の糸)30億円投資慶大発VB

2015/10

日清紡ホールディングス大和ハウス工業新日本無線ブラザー工業 FLOSFIA 半導体 京大発VB 2015/10

トヨタ Preferred Networks AI10億円出資東大発VB

2015/12

三次元メディア 3Dロボットビジョンシステム 立命大発VB 2016/5ソラコム IoT 2016/7

日立製作所 エネチェンジ 電力比較サイト 2016/2セメダイン AglC プリンテッド・エレクトロニクス 東大発VB 2016/2東レエンジニアリング リバーフィールド 内視鏡ホルダーロボット 東工大発VB 2016/3

アスタリスク モバイルPOSシステムライフロボティクス ロボット

海外VB投資大企業・CVC 投資先VB 業種 備考 投資時期

任天堂 Niantic, Inc. ポケモンGO開発 2015/10

ヤマハ発動機 Veniam移動体向けWi-Fi通信サービスの提供、通信ハードウェアの販売

2016/2

TDK 2016/9SCREENホールディングス 2016/9

2016/3

2015/10

創業者CEO日本人

Zeptor Corporation

スパークスグループ未来創生ファンド(トヨタ)

オムロンベンチャーズ

ユニバーサル・サウンドデザイン

聴こえ支援機器の設計・開発・販売

リチウムイオン電池

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I-77

大企業の CVC 投資が盛んになってきたことは、日本のベンチャーエコシステムの活性化にと

って、大変望ましい状況ではあるが、反面、下記のコラムに記載したような点に十分留意するこ

とが必要、とのアドバイスが実務に通暁した専門家から寄せられている。

増加基調を続ける CVC 投資について留意すべきポイント

森・濱田松本法律事務所

パートナー弁護士 増島雅和

コーポレート・ベンチャリングの「罠」ほとんどの伝統的企業は、共通の「罠」にはまってコーポレートベンチャリングに失敗している。

ディスラプティブなものであればあるほど、既存の決裁の仕組みでは通らない 社内の別組織に案件を潰される 「自社で別の技術を開発中」 「やろうと思えば自社内でできる」 「ベンダーの与信審査にとおらない」 「体制整備が」「セキュリティが」

投資しただけで終わってしまう 社内の協力を得られない 想定したような企業と違った

投資条件と投資先管理に関するエクスパタイズがない バリュエーションの方法がわからず高値づかみする 投資条件のスタンダードが分からない カネを出した者が偉いと勘違いする(投資がイノベーションへのアクセスとの等価交換であることを

忘れてしまう)

典型的な「罠」に陥らないために「戦略に従った組織をつくること」がなによりも重要 既存の決裁システムと異なる決裁パスをつくる

コーポレート・ベンチャリングは、企業の将来を左右する重要戦略であり、将来戦略に責任を持つC職が責任者でなければならない トップはCEO、CFO、またはCSO

余計な決裁パスを一切通さない直轄方式でなければならない トップの庇護のもとに担当がトップと直接コミュニケーションし、意思決定していく

担当者には、社内各部署やそのキーマンに精通した技術のわかる社内人材が必要 社内協力の根回し 各部署が欲しい技術を集めてショッピングリストを作成

担当者には、スタートアップ投資が分かるキャピタリスト人材が必要 スタートアップ投資のエコシステムを理解していないと投資先を毀損する スタートアップコミュニティに深い人脈を持つ人材でないと経営者を見極められない スタートアップのバリュエーション、独特の投資条件や投資実務(M&Aや大企業同士の資本業務提携

とは「全く異なる」)

組織機構面、待遇面で社内にこれを作れないのであれば、ベンチャー投資子会社を創設する。

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I-78

伝統的大企業によるコーポレート・ベンチャリングについて、増島雅和弁護士から以下のコメ

ントを得た。 「スタートアップ企業はスタートアップ企業を取り巻くエコシステムの中で生存している。大

企業は、このエコシステムの中に、①VC に対する LP 投資家として関わる、②スタートアップ

企業のファイナンスラウンドのいずれかで戦略的投資家として関わる、③スタートアップ企業の

エグジット先として買収者として関わる、の 3 つがある。いずれにしても、スタートアップ個社

との付き合いと見るべきではなく、多数のスタートアップ企業が生息するエコシステムとの付き

合いとしてとらえるべきである。実際、エコシステム内部ではネットワークが発達しており、様々

な起業家の情報、スタートアップの戦略に関する情報、テクノロジーの情報はもちろん、投資家

の情報も共有されている。スタートアップ企業への投資を通じて、例えば、資金を投下したこと

を理由にスタートアップ企業が生み出した知的財産につき自己の帰属を主張したり、投資家とし

ての地位を笠に着てエクスクルーシブな関係を迫ったり、資金力を梃にスタートアップ企業の成

長を阻害する振る舞いを見せれば、その悪評はネットワーク内に共有される。目の前の案件では

それで利益を得られるかもしれないが、一度悪評が立てば、その後の投資が難しくなり、イノベ

ーションへのアクセスが絶たれることになる。」

「スタートアップ企業との協業は常にポジティブサムであるべき。可能な限りスタートアップ

の事業成長に協力することで、そのスタートアップのビジネスを何十倍、何百倍に大きくすれば、

そこから得られる伝統的大企業の利益は、目の前のスタートアップの持ち物から何かを奪ったり

彼らの可能性を制約する義務を課したりするよりも、ずっと大きなベネフィットが得られるとい

うことを常に頭において、スタートアップ企業と付き合わなければ、協業による果実にあずかる

ことは難しい。」

典型的な「罠」に陥らないために「戦略」を詰め、「戦略」に対して一気通貫となる投資管理プロセスを構築する

倒産するような企業に投資することには何の戦略的な意味もない 「戦略投資」は投資の経済条件を詰めない理由にはならない

担当組織自身の持続可能性を確保しなければならない 投資パフォーマンスを上げることは担当組織が持続するための重要な条件 数年間利益が出ない前提で社内のスクラップ・アンド・ビルドに巻き込まれない戦略が必要 コストを極限まで抑える コラボ人材は抱えず社内リソースをただで借りてくる 固定費削減のため担当者は最低人数 エクイティインセンティブの活用

声をかけられた投資案件につきアドホックに投資検討し、決裁のために「戦略」

を捻り出すというのは最悪 あらかじめ社内技術の棚卸しを行い、欲しい技術とこれを持つスタートアップを調査して

ショッピングリスト化 欲しい技術・スタートアップと関係部門をあらかじめ紐付けしておき、可能な協業の座組を検討して

あらかじめ根回ししておく 投資後はあらかじめ想定していた担当部門にスタートアップの協業による戦略実行をコミットする

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I-79

② 大企業人事担当セクションの意識の変化…大企業からの VB への出向も

人事政策面でも変化がみられる。この人事政策面の変化こそ、大企業と VB の連携を一層進め

るうえで、あるいは、大企業から VB を創出するうえで、極めて重要な動きと考える。以下に具

体的例を挙げる。

大企業から VB への出向、VB からの出向者受け入れ

森永製菓は、自社の事業開発活動の活性化を目指し、事業創造アクセラレーターのゼロワンブ

ースター(01Booster)が提供するコーポレートアクセラレータープログラム注を活用し、自社

の社員が VB と直接交流することで事業共創に取り組んでいる。更に、同プログラムの一環とし

て、01Booster が提供している、自社社員を VB に出向させる「ベンチャー留学」も取り入れて

いる。これまで 2 社の VB に各 1 名社員を出向させ、うち 1 名は 1 年間の予定で、ウガンダで

VB 業務に携わっているという。VB への出向によって、文字通り肌で VB の構成員(経営者・

従業員)の考え方や意思決定方法を学ぶことができる。また、VB では一人何役もこなすことを

迫られるので、経営そのものを広い視野に立って経験できる。この貴重な経験は、自社に戻った

後の VB との協働を進めるうえで、大いに活かせることであろう。 KDDI では、森永製菓の例とは異なるが、VB の不足する人材への支援を目的に社員を VB に

出向させたり、事業シナジーの強化を図る等の目的で、VB から出向者を受け入れたりしている。

また、某大企業でも、2016 年春よりトライアルとして、社員を 1 名 VB に出向させている。 VC の中には、資金面の支援もさることながら、VB の成長加速のためには、人材確保が重要

として、積極的に大企業人材の VB への出向の新しい仕組構築に取り組んでいるところも出てき

た。

こうした大企業・VB 間の人事交流によって、業務遂行の各局面で、互いに考え方や行動様式

の違いを実感し、その過程を経て相互理解が深まれば、イノベーションのための協働を進めるう

えで障害となりやすい要因を除けると言えよう。特に大企業の社員が、大企業とはまったく異な

る VB の企業風土、業務遂行手法を理解することは、VB との協働を進める際に大きな意味があ

るのではないか。

(注)コーポレートアクセラレータープログラム

主にシード段階の VB を支援するアクセラレーターが運営するプログラムのうち、大企業がスポンサーと

なっているプログラムを指す(最近の動きはコラム次ページ参照)。

なお、上記プログラムを含むアクセラレータープログラムについては、6 大陸 125 都市のアクセラレータ

ーが参加する Global Accelerator Network(アクセラレーターの国際団体)で基準(criteria)が提示され

ており、以下の要件(抜粋)が求められている。

・3~6 ケ月間の支援のプログラムであること

・メンタードリブン(メンター主導型)であること

・出資や経営資源の提供があること

・スタートアップ(VB)に好意的な取り組みであること

・スタートアップ(VB)向けにオフィス設備を用意していること

・プログラムの運営者自身が起業経験のある起業家であること

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I-80

大企業がベンチャーとともに事業作る コーポレートアクセラレータープログラム

ベンチャーを支援し、ともに事業を作るコーポレート・アクセラレーター・プログラムを実施する大企

業が増えている。ベンチャーを買収したり、投資したりするよりも効率的に、自社に貢献する事業を作り

上げることができるとされる。この動きが加速する背景には、経験豊富な支援会社の存在がある。

2016 年 8 月初め、東京・霞ヶ関の霞が関ビル最上階。LIXIL グループの会議室は熱気に包まれた。同

社との協業で成長しようと考えるベンチャー経営者や起業家が 100 人近く集まっていた。LIXIL は住設機

器の大手。住宅に関するイノベーションが今回、ベンチャーに課せられたテーマだ。

従来、ベンチャーやスタートアップへの支援といえば、IT(情報技術)関連企業の専売特許だった。こ

こ数年、業種は広がっている。その潮流を支える 1 社が 01Booster だ。同社はこれまで、森永や学研、キ

リンビールなど多数かつ多様な業種の企業のコーポレートアクセラレータープログラムの運営に関わって

きた。

受け入れ側大企業の人事研修などから取り組み、スタートアップに対する考え方を転換するところから

始める、きめ細かさと丁寧さが特徴だ。大企業からベンチャーへの出資や人材の出向、業務提携など多数

の実績が生まれている。

大企業とベンチャーのやりとりにネットを多用して、比較的ライト感覚のアクセラレータープログラム

を提供しているのが、creww だ。これまでに 70 社のアクセラレータープログラムを実施。協議中も含め

ると 231 件ほど大企業による採用が予定されているという(2016 年 9 月 19 日現在)。

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I-81

スピンオフする者への柔軟な対応

カーブアウト、スピンオフという大企業の社内技術の独立事業化は、大企業から VB を創出す

る有効な手法として、以前から実績も何例かあるが、スピンオフする社員の処遇についても、柔

軟に対応しようとする動きがみられる。 従来、スピンオフで独立しようとする社員は、原則退職するルールを適用されるケースが多か

ったが、オープンイノベーションへの取り組みが活発化している大企業では、出向扱いを認める

会社も増えつつあるようだ(図表 3-4)。

例えば、1994 年にスピンオフ制度を導入した富士通注も、2015 年度には、「社外で起業した

経験を持つ人材は重要」との判断をもとに、規定の範囲内で復職への道を開くように制度を変更

した。この制度の狙いは、「若手の挑戦を促すこと」にあるという。

(注)富士通のスピンオフ制度:富士通社内では「社内ベンチャー制度」と呼ばれているが、

実態はスピンオフ制度。これまでに 26 社が設立され、16 社が事業を継続中で、うち 1 社(パ

ピレス)は上場した。

今回のヒアリングでも、スピンオフを希望する社員をどのように処遇するか、出向扱いとする

か、休職扱いも考えられるか…と色々思案中とのことであった。

図表 3-4 社員/組織のスピンオフに対する具体的な支援

(出所:NEDO「オープンイノベーション白書」(2016 年 7 月発行))

8.3%

16.7%

19.0%

6.0%

10.7%

3.6%

71.4%

3.6%

自社への復帰が可能な人事制度としている

出向あるいは兼業扱いとするなど、自社との雇用関係を維持する

資本金の一部又は全部を出資

知財のライセンス付与の条件を優遇

経営等にかかるアドバイス(ハンズオン支援等)

立ち上げた会社から積極的に製品・サービス等を購入している

特にやっていない

その他

5.9%

7.9%

9.9%

2.0%

5.0%

4.0%

86.1%

2.0%

自社への復帰が可能な人事制度としている

出向あるいは兼業扱いとするなど、自社との雇用関係を維持する

資本金の一部又は全部を出資

知財のライセンス付与の条件を優遇

経営等にかかるアドバイス(ハンズオン支援等)

立ち上げた会社から積極的に製品・サービス等を購入している

特にやっていない

その他

10年前に比べて活発化している(サンプル数=84)

10年前とほとんど変わらない(サンプル数=101)

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I-82

カーブアウト、大企業の技術や人材生かす

東京・銀座のランドマークでもあるソニービルの 5 階に 2016 年 5 月、ソニーの新しい製品や技術を展

示する「Sony Innovation Lounge」がオープンした。ソニーの新規事業創出プログラム(Seed

Acceleration Program)から生まれた製品も展示し、一部は販売するコーナーも設けた。外国人の来訪も

多い。

展示されている新規事業の中には、投資ファンドの WiL(カリフォルニア州)が出資してソニーから切

り出した Qrio(東京都渋谷区)が手がけるスマートロックなどがある。社内に眠っていた技術と人材に活

躍の場を提供するカーブアウトの成功例とも言えそうだ。ほかにも、香りを持ち運べる AROMASTIC、電

子ペーパーを使った腕時計などが並ぶ。

日本材料技研(東京都中央区)は 2016 年 3 月、旭硝子と共同出資でバイオ関連ベンチャー、JMTC エ

ンザイムを設立した。旭硝子が開発した知的財産の一部を譲り受け、さらに旭硝子から技術者の出向も受

け入れる。単純に知財を買収するのに比べて、こうしたカーブアウト方式の方が成功確率は高まるとされ

る。日本材料技研は、企業や大学で開発された革新的技術をカーブアウトする事業に取り組んでいる。

日本政策金融公庫は 2016 年 5 月、タムラ製作所からカーブアウトで生まれた酸化ガリウム関連のノベ

ルクリスタルテクノロジー(埼玉県狭山市)に資本性ローンを供給した。カーブアウトベンチャーも通常

の創業期のベンチャーと同じように金融面で支援する。

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I-83

大企業人事担当セクションの意識の変化

以上の実例が示すとおり、VB への出向は、海外留学と同様に VB への「留学」でもあるため、

本人にとって貴重な経験であるのはもちろん、自社のイノベーションにとって有意義である、と

大企業人事担当セクションの意識も徐々に変化してきているようだ。 社内公募の場合、出向したい社員は、将来 VB へ転籍してしまうかもしれないが、VB との親

密な関係を維持する際に有用と考え、「転籍も歓迎」と懐深い判断をしている会社もある。

ちなみに厚生労働省によると、日本の大企業の新入社員のうち、3 年以内に転職する割合は、

平均で 2 割強に上るという(図表 3-5)。平成 26 年 3 月の新規大学卒業者のうち規模が 1 千人

以上の事業所に勤務する者は 13 万人。仮に 2 割が 3 年以内に転職する場合、その数は 2 万 6 千

人に上る。転職の理由は様々であろうが、自分が望む業務につけない、あるいは、自分が研究開

発したい事柄に取り組めない等の理由で大企業を去る人材が多いともいわれている。 それらの人材を、本人の希望を考慮しつつ、協働を進めている先端技術の事業化を目指すよう

な VB 等に出向させて、新たな挑戦の機会を与えることは、望まれることではないだろうか。

VB にとっては、必要人材の確保は、最も重要な経営課題のひとつであることから(「ベンチャ

ー企業向けアンケート調査 図表 4-12、図表 4-13、図表 4-14」I-115、I-116 ページ参照)、

大企業からの出向社員の受入は、有用な人材を確保する手段となるであろう。VB も、協働して

いる大企業に対して、積極的に人材ニーズを伝えてはどうか。

図表 3-5 新規大学卒業者の事業所規模別卒業 3 年後の離職率の推移

(出所:厚生労働省「新規学卒者の離職状況に関する資料一覧」)

26.5% 27.2% 26.6% 26.1%

22.4% 21.5% 20.5%21.7%

22.8% 22.8%

15.8%

7.5%

平成15年3月卒 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年

事業所規模:1000人以上平成25年度3月卒:就業2年後平成26年度3月卒:就業1年後

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I-84

おわりに ーイノベーション創出のために VB の担い手を増やすにはー 日本では、イノベーション創出の有力な原動力のひとつである VB の絶対数とその担い手が圧

倒的に不足している。 最近でこそ、日本でも卒業後直ちに VB に就職したり、大企業に就職後 VB に転職したりする

ケースは増えつつあるようだが、米国では、優れた学生の多くが、大学・大学院を卒業後直ちに、

VB を起こす、あるいは VB に就職すると言われている。

現在の日本では、学生の多くは、「安定」を求めて、大企業に入社しているのが実情であろう。

VB の担い手を飛躍的に増やすには、どうしたらよいか? 「ベンチャー白書 2016」の「はじめに」に記述されているように、起業のシーズを増やすに

は、以下の 2 点が不可欠である。 ①労働市場の柔軟性を高め、大企業の社員がスピンアウトして起業に挑戦する機会が増えるよ

うにすること ②課題解決型の教育システムにすること注

(注)すでにその試みはスタートしている(コラム「学び方革命」次ページ参照)

しかしながら、日本の労働市場の柔軟性が増し、かつ、教育のシステムが変わってその効果が

出て、起業する人間が増えるには相応の時間を要しよう。

その間、可能なことは何か? 本章で述べたように、大企業の社員を VB へ出向させることにより、大企業と VB が協働でき

るような人的側面の環境・条件を整備することではないだろうか。また、すでに一部でみられる

ように、VB の経験者を採用することも、大企業と VB との協働のための環境整備の側面があろ

う。

VB に出向・関与した人材(チーム)にとっても、一般論として言えることは、M&A 等で VBが大企業の一部門やグループ会社になったような場合は、VB 出向経験を大いに生かして、新規

事業開発分野等で、活躍する機会が増えよう。また、将来、その人材が大企業を離れて VB で働

く場合は、やはり VB 出向経験が大いに生きてこよう。 いずれにしても、日本に、「リスクテイクの経験を積んだ経営のプロ予備軍」が飛躍的に増え

ることは、VB にとっても日本の産業界にとっても大いに望ましいことではないだろうか。

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I-85

「学び方改革」というタイトルにしようかとも思ったが、日本の常識的な高校教育からみればもうこれ

は革命だと思う。もちろん「教え方革命」でもあるので 2017 年以降は是非教育者の授業参観も期待した

い。

2016 年 8 月 2~4 日に一般社団法人カピオンエデュケーションズ主催で和歌山で開催された GTE2016

(Global Technology Entrepreneur 2016)に参加しての熱い印象である。

「革命」と表現する第一の理由は、シリコンバレーの高校で教えるジャストン・グラス先生(元々は公

認会計士)の出色の教師としての資質である。早口の英語で機関銃のようにことばの弾が飛んでくるのに

生徒たちは圧倒されとおしだ。ちなみに今回米国のほぼ中央部に位置するカンザス州の高校から女子生徒2

人が参加したので聞いてみると、アメリカ人の自分たちでさえ早すぎて戸惑ったので、日本人生徒がつい

ていけるのか心配だったとのこと。サポーターとして参加してくれた帰国子女の日本人大学院生が所々日

本語に通訳してくれたのは生徒にとっては有り難かったと思われる。教師としての資質といえば、22 人の

生徒(日本人 17 人、米国人 2 人、パキスタン人 2 人、ベトナム人 1 人)を把握する能力は凄い。2 日目

の朝、生徒たちに名札を伏せさせ、ひとりひとりのファーストネームの記憶を披露したが、外国人の名前

であるにもかかわらず、8 割方は当たっていた。のみならず、最終日に修了証を手渡しする際、各生徒の

個性や頑張った点をひとりひとり丁寧に指摘してみせた。そして何よりも教えることへの情熱が感じられ

た。

第二には、徹底して生徒たちに考えさせることだ。初日に近くに座っている生徒同士 4~5 人でチームを

作らせ、以後そのチーム単位でビジネスプランを考えさせ、講義とチームディスカッションを交互に実施

していくのだが、ディスカッションタイムにはそれぞれのチームに的確なアドバイスを与えていく。実は

初日に放射能廃棄物処理を何とかしたいというアイデアを出した生徒がいたが、先生は難しいから止めと

けとは言わず、どういうことを考えなければならないかをアドバイスし、あとはチームでのディスカッシ

ョンに委ねていた。結果そのチームは夜中まで議論して別のプランに変更したようだ。見ず知らずの生徒

が集まったチームであるにも関わらず、正味二日ですぐに打ち解けて、熱心な議論が展開されていたが、

目は真剣そのものだった。チームリーダーとなった生徒が自分のアイデアが採用されず、チームがバラバ

ラになりかけると、リーダーたる者 servant leader として、自ら率先して事に当たるべしとアドバイスが

飛んでくる。生徒の考えるビジネスごとに問題点や考えるべき点を次々に指摘していく。この辺りは高校

がシリコンバレーにあり、ベンチャーの情報の真っただ中にいるのと、自分の生徒もインド系の 2 世、3

世の起業家の子弟が多いという環境からくるのかも知れない。

学び方革命

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-86

第三には、ゲームの多用である。スマホのゲームではなく、自ら体を使うゲームである。一番面白かっ

たのは、サプライチェーン・マネジメントのところで、教室の隅から隅、対角線上に置かれたバケツにキ

ャンデーを投げ入れるゲームで、入れば 5 点もらえるというもの。しかし投げる者は膝を床につけなけれ

ばならず、どうしても途中に中継する者を置く必要がある。ひとり置くごとに 1 点が引かれる。そしてチ

ームごとに点数を競わせる。生徒たちは中継者を何人、どこに配置するかを戦略的に考え、真剣に取り組

み、キャンデーがゴールに入るたびに大歓声が挙がっていた。そのときはなぜこんなゲームをやらせるの

か分からなくても、後で振り返れば体で覚えているのでその含意が分かるのではなかろうか。このような

ゲームはオリジナルかどうか先生に聞いてみると、オリジナルのものもあるし、同僚からアイデアをもら

ったものもあるということであった。

第四に、このようにワイワイ楽しくやりながら、実は SWOT 分析や Lean Start-Up Business Model

Canvas やバランスシートといった起業に不可欠の知識が散りばめられていることである。財務諸表につい

ては日本の高校生にはまるで初めてで、かつ、授業の最後の方で時間が押せ押せの中での説明であったた

め、消化不良の感は否めなかったが、次回以降は日数を増やしてでも説明した方がいいだろうと思った。

その他、チームディスカッション時にはポップな音楽を流したり、雰囲気作りのうまさはとにかく脱帽

であった。

日本では学習指導要領があって、教師が自由に教えるのは難しいと指摘すると、米国でも公立と私立で

は異なり、自分の学校は私立なので自由がきくとのことであった。

報道によれば日本でも学指導要領を改定しようという動きがあり、アクティブ・ラーニング(討論型授

業)を導入しようということである。是非関係者には 2017 年以降の GTE の授業参観に来てもらいところ

である。シリコンバレーに出向かなくても、日本で本場の教育を目の当たりにできるこのプログラムは稀

有の存在である。アクティブ・ラーニングを実践するには教師の側も相当の訓練を積まないとできないだ

ろう。

最後に、未来の教育について持論を記せば、今後社会生活にロボットや AI が進出してくるにつけ、我々

の持つべきスキルセットはガラッと変わるはずである。それを見越した教育に変えておかないと、将来悲

惨なミスマッチが起きるのではないかと危惧する。暗記してひとつしかない正解を当てるという教育は必

要なくなり、調べ方さえ覚えておけば、興味がわいたときに自分で調べることができる。それより、身の

回りの課題を自分で見つけ、そのソリューションをチームで激論を戦わせながらビジネスプランとして組

み立てる訓練こそ、人間がなすにふさわしい能力であり、それこそ日本にベンチャーを根付かせ、経済成

長や雇用創造を実現する源泉となるのではなかろうか。

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I-87

2. 仮想座談会

VEC は、2016 年 2 月から 10 月上旬にかけて、VC、CVC、事業会社(主に新規事業開発担当

部署)計約 50 社を訪問し、大企業におけるオープンイノベーションへの取り組みの現状等につ

いて、ヒアリングを行った。その生の声をもとに、座談会風に再構成し、まとめてみた。なお、

X、Y、Z は特定の 3 名による発言ではない。発言内容はすべて個人の意見である。

X さん:VC 関係者 Y さん:CVC 関係者 Z さん:事業会社新規事業開発関係者

大企業の取り組み姿勢と最近の動き

大企業は変わったか …「新興大企業」と「伝統的大企業」は区別すべき

Z さん 大企業を一括りで見るべきではな

いと思う。VB としてスタートして大企業に

なった「新興大企業」(IT 系が多い)と、「伝

統的大企業」とは、区分して議論をした方

が良い。もちろん伝統的大企業の中にも、

大胆な構造改革に取り組んでいるところが

あるので、ここも一括りで見るべきではな

いが…。

Y さん Z さんの意見に賛成だ。新興大企業

の株主の多くは、新興大企業に対して「成

長・拡大」を期待している。新業務、新領

域に果敢にチャレンジして、更に成長して

いくことを求めている。これに対して、伝

統的大企業に対しては、「成長・安定」を求

める株主が多いのではないか。持続的な成

長と安定配当を期待している。伝統的大企

業の場合、社長は数年で交代する。経営者

である以上、当然中長期的な視点、ビジョ

ンを持っているが、四半期毎の業績開示が

あり、在任期間も考え合わせると、ともす

ると目の前の業績に目が行きがちになる。

失敗は許されないというプレッシャーも働

くかもしれない。組織風土としても、総じ

て減点主義的な考え方が強いように思う。2

回失敗したらダメとか…(笑い)。

X さん お二人がおっしゃったことは、良

くわかる。われわれ VC が大企業に VB 案件

を紹介する場合、新興大企業の場合は、最

初から役員クラスが出てこられるケースも

多い。これに対して伝統的大企業の場合は、

最初は担当課長というケースが多い。した

がって、案件へのその後の対応スピードに

も大きな違いが出てくる。そもそも組織風

土自体に違いがあると言えばそれまでだが。

伝統的大企業にも変化が

X さん 伝統的な大企業の意識が変わった

かという点では、私は、「明らかに変わりつ

つある」と思っている。多くの経営者が、「既

存事業や既存技術の改良だけでは、今後の

成長は期待できない」という危機意識を強

く持ち始めている。

Z さん 間違いなく、新技術、新素材等への

渇望が強まっている。ただ、伝統的大企業

は、優良な既存顧客を数多く持っており、

当然のことながら、まず既存顧客への対応

を第一に考える。危機が目に見える段階に

まで達しないと、舵を思い切って切れない

という側面はあるだろう。

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I-88

Xさん 自動車メーカーは今、VBも含めて、

外部の新技術の取り込みに注力している。

背景には、環境問題(燃料)への対応と自

動運転技術の進展がある。新技術の取り込

み無くして今後の成長は無いという危機感

とともに、新技術の取り込みが次の成長に

つながるチャンスととらえていると思う。

Y さん 全ての伝統的大企業とは言わない

が、その中のいくつかは、VB に関心を向け

始めている。「他社がやっているからうちも

…」という横並び意識も働いているだろう

が、競争相手の外国の大企業が既に VB と協

業体制を敷いていることも影響しているの

ではないか。

伝統的大企業と VB との間にある壁

Z さん 伝統的大企業というと、例えば、旧

財閥系の重厚長大型メーカーや国策的な出

自の会社がイメージされる。ソニー、ホン

ダ、パナソニックなども、もとを辿れば VB

ではあるが、若い人からみれば、今や伝統

的大企業に分類されるだろう。前者と後者

では、多少色合いは違うような気はするが、

どちらも日本を代表する大企業で、かっち

りとした組織が出来上がっている。こうし

た大企業からみれば、VB は異端者と思われ

るだろう。VB は、「失敗を恐れず、失敗を

重ね、失敗から学ぶ」「まだ世にないものを

造り出そうとチャレンジする…0→1 にチャ

レンジ」そして「スピード、スピード、ス

ピード」だ。「失敗を避ける」「計画に基づ

き整斉と実行する…1→10→100 の改善に注

力」「関係部署と協議し、いくつかの階層を

経て決裁する」という大企業の行動様式は、

VB からすれば、なかなか理解しがたいと思

う。ただ、VB 自身も、管理面の弱さや相互

牽制の不足は自覚しており、大企業の力を

借りたいと思っているが、あからさまに不

足している点を指摘されると、感情的に反

発することもある。この意識のずれが、大

企業と VB の間にある壁だと思う。この意識

のずれを調整、克服していくことが、壁を

取り払うことにつながると思う。

Y さん 某 CVC の人が、「業務の 6 割は社

内調整にとられている」とぼやいていた。

組織風土や担当者のパーソナリティーにも

よるが、VB と接触した経験が無い人が VB

と接すると、最初は、面食らい、違和感が

先に立つようだ。そんな人達が多い職場だ

と、確かに社内調整に時間を取られるだろ

う。要は、互いに欠点をあげつらうのでは

なく(欠点を挙げだしたらきりがない)、お

互い足りないものを補完するという姿勢で

臨むことが大切だ。VB は決して下請けでは

ない。あくまでもパートナーだ。そういう

点では、私や Z さんは、大企業と VB をつ

なぐ役割を担っているといえるかもしれな

い。理想を言えば、大企業と VB の両方で働

いた経験がある人がその役割を担うのがよ

いが、残念ながらそういう人材はまだ少な

い。次善の策として、起業経験者が我々と

自動運転車開発をめぐる最近の動き(例)

2015/12AI開発日本VB「PreferredNetworks」に出資

2016/1米国(シリコンバレー)にAI研究所(TRI)設立

2016/10TRI、自動運転技術開発の米VB「NAUTO」に出資、提携

日産 2016/9ルノー・日産、仏ソフトウエア会社Sylpheo買収

ホンダ 2016/7 ソフトバンクとAI分野で共同研究開始

DeNA 2015/5ロボットVB「ZMP」との合弁会社「ロボットタクシー」設立

(各社HPならびに各種報道、VEC調べ)

自動車メーカー

トヨタ

異業種からの参入

海外では、Google、apple等も参入

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I-89

チームを組み、VB との橋渡し役を務めてい

くのも一つの対応かもしれない。

壁を取り払おうという新たな動き …大企業から VB へ出向

Z さん 壁を取り払おうという試みは、ぽつ

ぽつみられるようになった。例えば、社員

を VB に出向させる動きがある。コーポレー

トアクセラレータープログラムを採用し、

その一環として社員を VB に出向させるケ

ースや、VB で不足する人材を出向させるケ

ースとか、目的は異なるようだが、こうし

た動きは広がりつつある。

Xさん コーポレートアクセラレーターの

ゼロワンブースターに訊くと、「自分たちの

目的は、大企業が VB とともに実際に新事業

を創り出すことであり、自分たちは大企業

に化学変化を引き起こす“触媒”の役割だ。

メンバーは皆、大企業勤務と起業経験があ

るので、大企業の社員、VB の社員の両者の

気持ちが分かるのも強み」と言っていた。

また「どの大企業にも数は少なくても、変

革したいという思いの社員がいる。たとえ

全社員の 5%であったとしても、その人達を

見つけ出し、社内と社外の架け橋(カタリ

スト)になってもらうということだ。それ

が、役員クラスやそれに近いポストの人で

あれば、変革は加速する」とも語っていた。

Yさん 大企業の中には、将来の経営者の

育成、選抜を狙って、VB に社員を出向させ

ているところもあると聞いた。

カーブアウト、スピンオフなどの動き

Z さん カーブアウト(企業が事業の一部を

切り出し、第三者の投資や経営参画を受け

入れて立ち上げる VB 設立方法)の事例とし

ては、これまでも、ブラザー工業からカー

ブアウトして設立されたエクシング(1992

年設立、業務用カラオケ事業等を展開、現

在はブラザー工業の子会社)等無いわけで

はない。ただ、総じて研究開発部門は、自

社で研究開発した技術については、外部に

出したがらない傾向にある。その技術がす

ぐには実用化できないと判断しても、せっ

かく今まで開発してきたから…とか、いつ

かは花開くときもあるから…ということが

理由だ。

X さん 最近の大企業が他社と組んでジョ

イントベンチャーを設立する事例としては、

ソニーの新規事業創出プログラムを経て設

立されたキュリオ(Qrio)注が挙げられよう。

Qrio Smart Lock に採用されている技術は、

ソニーが自社で開発しており、無線セキュ

ア技術、公開鍵認証技術に強みがある。WiL注から、その技術を応用できそうな領域の一

つとして、スマートロック事業での協業を

打診されたことがきっかけとなり Qrio が設

立された。現在、Qrio には、ソニーから、

管理部門や営業部門に社員が数名出向して、

業務に携わっているという。

(注)Qrio は、スマートロック(スマートフォ

ンで部屋の鍵を開閉するシステム)の開発・製

造・販売及びその運営サービスを業とする会社。

2014 年 12 月、WiL(日本人が経営する米国に拠

点を置く VC)が 60%、ソニーが 40%出資し設

立。

Y さん ソニーといえば、セーフィー(Safie)

という監視カメラシステムを販売している

VB がある。Safie は、もともとソニーの研究

所に勤務していた社員が、他社を経て、自

分達で開発した技術をもとに立ち上げた会

社で、広義に考えれば、ソニーからスピン

オフして設立された VB と言えるかもしれ

ない。Safie には、ソニーの子会社であるソ

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I-90

ニーネットワークコミュニケーションズが

出資している。Safie も Qrio も、新製品の発

売にあたっては、クラウドファンディング

を利用して商品告知と資金調達を行った。

新しい試みは色々なところで繰り広げられ

ていると感じている。

Z さん スピンオフ VB(企業内で眠ってい

る技術等の活用を目指し、親元企業との関

係継続の上で、分離・独立して設立された

VB)を支援している大企業は何社かある。

例えば、富士通で「社内 VB」と呼んでいる

のは、「社内発 VB」のことだ。仕組みとし

ては、市場規模が小さい、既存業務とのシ

ナジー効果が疑問等の理由で、会社として

は事業立ち上げを見送ったが、社員がどう

してもその事業化を図りたいという場合に、

「社内 VB」として、会社が一定の支援をす

るという制度と聞いている。基準や制限は

いろいろあるようだが、これまでは、独立

しようとする社員は退職するルールであっ

たが、最近は規定の範囲内で復職への道を

開くルールに変更したそうだ。スピンオフ

する社員は、当然自らがある程度の金額を

出資し、富士通も、VB に一部出資し支援す

るという。出資以外にも、例えば、富士通

が保有する知財の優遇利用など、ケース・

バイ・ケースでのサポートを行っていると

いう。

社内ベンチャー制度

Z さん パナソニックは、「スピンアップ」

という名称の「社内ベンチャー制度」を設

けている。どちらかというと、社員の「モ

ラールアップ」を目指しているようではあ

るが、MBO 等で Exit した会社も 3 社ほどあ

るという。ソフトバンクでも、「ソフトバン

クイノベンチャー」という「社内新規事業

提案制度」を設けていて、社員自らが事業

提案を行い、事業化を目指すという取組み

を行っている。ソフトバンクでは、提案が

審査を通過した場合、社員自らが既存業務

を行いながら事業化検討を行い、事業化が

決定した場合は事業推進に参画できると聞

いている。また「社内ベンチャー」と言っ

ても、外部の人が共同提案者として参画す

ることも認めているという。ソフトバンク

には「ソフトバンクイノベンチャー」とは

別に、「ソフトバンクイノベーションプログ

ラム」という社外 VB を対象とした制度があ

る。ソフトバンクが関心ある分野を示し、

それに対して、国内外の VB が応募し、競い

合うという制度だ。このように、取り組み

内容は各社各様だが、新しいビジネスの種

を探し、新しいビジネスへのチャレンジを

促しているという点では共通している。

オープンイノベーションの一手段としてのCVC

LP 出資、CVC 設立、本体直接投資 目的を明確に

Xさん VB 投資が初めてという大企業に

は、まずLP出資から入ることを勧めている。

できれば複数社のファンドに出資して、そ

の比較をするのが良いと。VC の立場として

は(笑い)。

Yさん LP 出資をするか、CVC を作ってフ

カーブアウト事例VB

(事業内容)母体事業会社 備考

エクシング(業務用カラオケ)

ブラザー工業 1992年設立現在はブラザー工業が99.9%出資

QDレーザ(量子ドットレーザ)

富士通 2006年設立

スピンオフ事例パピレス(電子書籍) 富士通 1995年設立

2010年ジャスダック上場セーフィー(スマートロック)

ソニー 2014年設立ソニーネットワークコミュニケーションズ出資

(各社HPならびに各種報道、VEC調べ)

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I-91

ァンドを組成するか、あるいは直接投資を

するかは、結論から言うと、何を狙うかに

よる。パターンはいろいろあり、どれが正

解とは言えない。

Z さん R&D のネタ探し(新技術の情報収

集)が目的であれば、どのファンドを選ぶ

かの問題はあるが、LP 出資は有効な手段だ

と思う。ただし、これは、CVC を設立した

某社から聞いた話だが、「最初は LP 出資を

して、業務提携先や M&A 候補先を探したが、

LP 出資では(情報は入ってくるが、投資の

可否を決められないとの理由で)ぴったり

の VB を見つけ出すのは難しかった。そこで、

CVC 設立を」という話になった。

Y さん これも某大企業の人から聞いた話

だが、「日本でどんなに名前の通った大企業

でも、米国のトップクラスの VC が運営する

ファンドに LP 出資しても、これぞという情

報がなかなか得られない」という。そこで、

その某大企業は「セカンドクラスの米国 VC

を選んで LP 出資している」とのことだ。

VC 投資とは何かを理解する

大企業は見えるものに投資、VC はまだ見えないものに投資

X さん CVC 設立と簡単に言うが、「VC 投

資とは何か」をまずよく理解することが必

要だ。

①特にシード、アーリー案件では、成功す

るのは一握りの VB だ。10 社に 9 社は思

うようには成長しない。VC は成功した 1社で失敗した 9 社分をカバーして、利益

を出す。

②ファンドは基本 10 年間で一区切りとなる。

当初 3~4 年は財務的にも赤字計上となる。

③VC ファンドは、イノベーションというま

だ有形化していないものを扱う。何が出

てくるかわからない。

大手事業会社は見えるものしかジャッジし

ないし、ジャッジできない。これに対して

VB はイノベーティブなものを追及するが、

イノベーティブなものはすぐには使えない。

これらの点を経営陣が、本当に理解してい

ないと、数社失敗したから、あるいは赤字

だからもうやめようとなる。

VC 投資経験者は? 投資先をどう見つける?

X さん また、大企業といえども、「実際に

VC 投資を経験した人がいるか」という問題

がある。外部から経験者を招聘するか、招

聘しないまでも、アドバイザーは必要だ。

ある人曰く「自前主義からの脱却を唱え、

CVC を作ったが、自前で CVC を運営してい

る」と…(一同笑い)。

Y さん 投資先をどのように見つけるかも

よく考えておく必要がある。投資先 1 社を

決めるには、おそらく 10 社と接触する必要

がある。体力、コストも相応にかかる。ま

た有力な VB に投資しようとすれば、ファン

ドの規模も相応の規模が必要となろう。

二人組合方式のファンドで、大企業と VC が分業 …ファンドマネジメントは VC に

X さん そういう意味では、KDDI-グローバ

ル・ブレインに代表される二人組合方式の

ファンド運営は良い方法だと思う。ファン

ドマネジメントのノウハウがない KDDI は、

同業務をグローバル・ブレインに委託する

ことで、事業の付加価値を高めることに専

念できる。他方、グローバル・ブレインは、

協業支援に加えてフィナンシャルリターン

を高めることに集中する。両社は、良い補

完関係を構築していると聞いている。ただ

し、この方式の場合、VC は単に投資するだ

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I-92

けではなく、投資後も営業、人事、経理関

係にタッチするケースが多く、VC 側にとっ

ては、非常に労力がかかるため、採算管理

等の工夫が必要という面もあるようだ。

Y さん これまで大企業は、自社で子会社化

して研究開発し、成功したら取り込むとい

う方法をとってきた。連結決算が中心とな

った現在、このやり方はできない状態にな

っている。リスクマネジメントの面からみ

ても、二人組合のファンドにすれば、子会

社を持っている感覚でやれて、リスクもヘ

ッジできるという意味でも、かなり良い方

法だと思う。決して会社を買い取るわけで

はなく、万一上手く行かない場合は、現金

分配と言う形でファンドに納めることがで

きる。もちろん取得比率によっては連結対

象になる場合はあるが。

X さん 連結対象(持分法適用の関係会社)

にしたくないということから、ファンドも

含めて取得比率を 15%以内にしたいという

考えはあると思う。上場企業はどうしても

そうなる。

Z さん 新興大企業の CVC 活動は、戦略的

投資とフィナンシャル投資が渾然一体とな

っており、M&A も含めて、親会社のビジネ

スモデルの一つになっている感がある。こ

れに対して、伝統的大企業で CVC 活動を推

進するには、私見ではあるが、乗り越える

べき課題が多いように思う。

CVC 運営のポイント

X さん 大企業の CVC 運営のポイントとし

ては、①トップの姿勢がぶれないこと。で

きれば、次の次の社長まで申し送りをし、

CVC の担当部署を途中で変えない。②自社

内でのキーパーソンを把握し、コンタクト

する。コンタクトする相手を間違えると、

進む話もとん挫する。③スピードとガバナ

ンスのバランスをどうとるか。④核となる

社員を相応の時間をかけて育成する(ベン

チャーキャピタリストは、投資から Exit ま

でを経験して一人前になるという。また業

界内で人脈を築くには、相応の時間が必要)。

⑤毎年継続的に投資を行うことも大切だと

思う。

Y さん CVC をやることは良いが、景気が

傾いたときに、他の事業に示しがつかない。

「いくらコストを削減しました」と言って

いる横で、「○億円損しました」という仕事

を継続することは非常に難しい。実際 CVC

に携わっているものとしては、戦略的な目

的で CVC 活動を行うにせよ、継続的に CVC

活動を行うのであれば、フィナンシャルリ

ターンは必須だ。

Z さん VB との取引では、VB への投資決

定や投資後の様々な局面でスピードを要求

される場合が多い。大企業の場合は、権限

移譲がどこまでなされているかにもよるが、

一定の手続きを踏む必要がある。海外で

CVC に携わっていた人から聞いた話だが、

海外で、規定通りの手順で行っていては、

とても商売にならないということで、意思

決定のスピードアップを図るべく、本社と

掛け合って、国内とは異なる手順を認めて

もらったという。ある程度柔軟な対応も必

要ということであろう。

二人組合方式のファンド例(事業会社とVCの分業)事業会社 VC(運営者) 備考

KDDI グローバル・ブレイン 2016年2月設立運用総額100億円

三井不動産 グローバル・ブレイン 2016年2月設立運用総額50億円

ニコン SBIインベストメント 2016年7月設立運用総額100億円(予想)

ウィルグループ フューチャーベンチャーキャピタル 2015年6月設立総額3億円

(各社HPよりVEC作成)

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I-93

Y さん 先ほど、CVC をやるには、フィナ

ンシャルリターンは必須だと言ったが、や

や逆説的だけれども、フィナンシャルな果

実をあまり求めすぎてはいけない。目的は

戦略的投資であり、新事業の開拓に結び付

いたり、既存業務とのシナジーが高まった

りしたとすれば、それは当初の目的を果た

したことになる。赤字は困るが、そんなに

利益が出るものではありませんと、CVC を

始める時に経営陣に言うべきだろう。

X さん 毎年継続的に投資を行うことが大

切と言ったが、むしろブームではないとき

に投資することが重要。とは言え、サラリ

ーマン組織でこれができるかとなると…(笑

い)。

CVC や新規事業開発部署の管轄はどこ? 考えられる 4 つのパターン

Z さん CVC や我々のような新規事業開発

部署をどの部門の管轄に置くかという点に

ついては色々な意見がある。もっとも多い

ケースは、社長直轄あるいは経営企画部門

管轄だと思う。この場合、メリットとして

は、中長期的な観点も含めて投資決定でき

ることが挙げられよう。デメリットとして

は、組織風土にもよるが、「どうぞ本部でや

ってください」と言って、事業部や研究開

発部門が距離を置きがちになることか。運

用上難しいのは、VB との対応をどの時点で

事業部管轄に移すかという点だ。事業化が

見えていない段階で VB を事業部に移管し

ようとすると、事業部には利益予算があり、

「はい、わかりました」と言わない。移管

する事業部に VB との取引経験がある人が

いればまだしも、そうでない場合は、事業

部管轄に移した途端、VB との関係が悪化す

るケースがある。そこで当社では、事業化

が見込めるまで、所管を事業部に移さない

で、我々(新規業務開発部門)が担当して

いる。これはこれで、結構大変だが…(笑

い)。

Y さん 第二のケースとしては、事業部の管

轄下にあり、案件検討の段階から事業部が

入り込むような形をとるところもある。メ

リットとしては、色々な面で事業部の協力

を得られることが挙げられる。デメリット

としては、案件採り上げにあたり、事業化

が近いステージの案件を選択しがちという

点であろう。第三のケースとしては、現状

あまり多くないようだが、研究開発部門の

管轄になる場合がある。VB 投資を研究開発

の外部化と捉えれば、筋が通った選択だろ

う。ただし、研究開発部門には自社の研究

開発力への自負があり、総じて自前主義が

強い。VB とフラットな対応ができるかが鍵

となろう。第四のケースとしては、財務部

所管も考えられるが、例えばフィナンシャ

ルリターンのみを追求するような場合とか

…。ただ、財務部所管というケースは少な

いと思う。

目立つ大企業本体からの VB への大型投資

X さん 最近目立つのが、大企業自ら VB に

対して大型投資を行う動きだ。例えば、2015

年 10 月に「合成クモ糸繊維」の創出に成功

した慶應義塾大学発 VB スパイバーが、総額

約 96 億円の第三者割当増資を発表したが、

うち 30 億円はゴールドウインが出資(その

他引受先は非公開)と発表されている。ま

た、2016 年 3 月にメルカリが約 84 億円の調

達を行ったが、最大の出資者は、三井物産

と言われている。

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I-94

Y さん ファンドの組成をみても、2015 年

11 月に、スパークス・グループが「未来創

生ファンド」を設立、トヨタ自動車、三井

住友銀行が同ファンド出資者として参画(3

社による総出資額は約 135 億円)、最終的に

は総額 500 億円規模のファンドを目指すと

公表した(投資対象が VB だけとは限らない

かもしれないが)。2016 年 1 月には、楽天が

国内の VB を投資対象とする運用資産額 100

億円の「Rakuten Ventures Japan Fund」を立ち

上げたとの発表があった。

Z さん 目が離せない動きだと思う。当社も

忙しくなるかな…(笑い)。

2015年度 事業会社のVB投資(例)

投資家 投資先VB投資額

(億円)時期

ゴールドウイン スパイバー 30 2015/10

アルペン ロコンド 10 2015/5トヨタ Preferred Networks 10 2015/12サイバーエージェント クラウドワークス 5 2015/6メルカリ BASE 4.5 2016/1

ログリー 3 2015/6ゴールドスポットメディア

1 2015/10

寺田倉庫 サマリー 2 2016/3

NECソリューションイノベータ ウフル 1 2015/12

ドリームインキュベータ Wrap Media(米国) 4.5 2016/3

ヤマハ発動機 Veniam(米国) 2.3 2016/2

(各社HPならびに各種報道、VEC調べ)

VOYAGE GROUP

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I-95

スマートニュースやメルカリ、大型調達

日本で起業し海外で成功し、時価総額も大きなベンチャー「ユニコーン」との期待を集めるメルカリ(東

京都港区)とスマートニュース(東京都渋谷区)は、未上場段階での大型の資金調達を続けている。

個人間の中古品売買を仲介するフリマアプリで先行するメルカリは 2016 年 3 月、三井物産や日本政策

投資銀行、三井住友トラスト・インベストメントが運営するファンドなどから第三者割当増資で総額約 84

億円の資金調達を実施したことを発表した。1ラウンドの調達金額としては、ここ数年では2014年のgumi

の 50 億円を超える最大規模だ。累計の調達金額は合計 126 億円になるという。時価総額は、ユニコーン

の目安とされる「10 億ドルを超える」と関係者はいう。アプリのダウンロード数は日米合計で 4,000 万

を超え、内数として米国でも 1,000 万を超えた。

ニュースキュレーションのスマートニュースは 2016 年 7 月、日本政策投資銀行などから 38 億円を調

達した。累計の調達額は 91 億円に達する。アプリのダウンロード数は日本と海外を合わせて 1,800 万超

になるという。資金使途はマーケティングや開発をさらに加速するためだ。

大型の資金調達には成功したものの、若干の懸念を表明する業界関係者もいる。両社とも、米国の VC

からの調達に動いた節があるものの、結局成功には至らなかった模様だ。近く予想される IPO 時点および

その後の株価推移にも影がさすことになるかもしれない。

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I-96

VR にゲーム各社のファンドが集中

2016 年 9 月に開かれた東京ゲームショウで来場者の注目を集めたのは、仮想現実感(VR)を使ったゲ

ームだった。会場では頭にかぶるタイプのディスプレーを装着し、銃や刀の役割をするコントローラーを

手にするユーザーが虚空に立ち向かう姿がそこここで見受けられた。

グリーや gumi、コロプラなど、モバイルゲームで一世を風靡した上場ベンチャーが次の鉱脈として期

待しているのも VR だ。各社は関連分野に投資するベンチャーキャピタルファンドを設定するとともに、

イベントやアクセラレーションプログラムを運営している。ゲームショウでも、投資先が目立った。

グリーは 2016 年 4 月、1,200 万ドルで VR ファンドを米国で立ち上げた。出資者の中には、コロプラ

が 2015 年 12 月に設立した 5,000 万ドルの VR ファンドも名を連ねる。2016 年 5 月には研究者や業界

各社で構成する VR コンソーシアムと共同で、日本最大級のイベント「VR サミット」を開催した。

gumi は 2016 年 2 月、米 VR FUND に出資するとともに同ファンドを運営する GP である VR FUND

PARTNERS に共同事業者として参画した。一方、Tokyo VR Startups という会社を設立し、VR 分野のス

タートアップのためのアクセラレータープログラムも開始、囲い込みにいそしんでいる。

日本の VR ベンチャーの中で、多額の資金を集めているのはゲームショウでも大きめのブース展示をし

ていた FOVE。視線追跡機能を盛り込んだ VR ヘッドマウントディスプレーを開発する同社は 2016 年 3

月、シリーズ A として 1,100 万ドルをコロプラやホンハイ、サムスンなどのベンチャーキャピタルから調

達した。

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I-97

有力ベンチャーキャピタル、農水産業に焦点

有力ベンチャーキャピタルや事業会社が次の投資テーマの一つに掲げているのが、農業だ。IT(情報技

術)の活用がいまだ十分に浸透しておらず、関連するベンチャーにとってはある意味でブルーオーシャン

が広がっている。一方、野菜や果物など生産物はグローバルな競争力があり、生産手法を海外に輸出する

ことも可能で、成長の余地は大きく、魅力的だ。

NTT ドコモベンチャーズは 2016 年 6 月、ベジタリア(東京都渋谷区)の第三者割当増資を引き受けた。

出資額は非公表。同社はセンサーや人工知能(AI)を使って収穫量の増大や品質向上に結びつけるサービ

スを展開する。社長は 1990 年代末の起業ブーム「ビットバレー」の中心人物の一人だった小池聡氏で、

農業が起業の大きな舞台になったことを印象付ける。株主には東京大学エッジキャピタルも名を連ねる。

2016 年 6 月には楽天も、農業ベンチャーのテレファーム(愛媛県松山市)に出資した。野菜の栽培を

オンラインゲームの感覚で楽しめるサービスを運営している。小田急電鉄グループは 2016 年 2 月、トマ

トなどの生産技術で強みを持つ銀座農園(東京都中央区)に出資した。環太平洋経済連携協定(TPP)を

きっかけに、大企業の関心も高まっている。

先行する形で 2016 年に東証マザーズ市場に新規株式上場した農業総合研究所の株価が、公開価格

(1,050 円)や初値(1,870 円)を大きく上回る水準(4,645 円=9 月 30 日)で推移していることも、

農業ベンチャーへの投資に際して、安心材料になっている。

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I-98

大学系 VC が本格始動

大学と密接な関係を持ち、大学発ベンチャーを中心に投資するベンチャーキャピタル(VC)が増えてい

る。大学版の CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とも言える。

2016 年春、東京大学系の新 VC である東京大学協創プラットフォーム開発(株)が東大構内の会議室で

開いた事業説明会には 40 社近い VC が集まった。同社は、VC に LP 出資して、シード・アーリーステー

ジのベンチャーのハンズオン支援を任せるとともに、成長の加速等のために追加資金が必要となるミドル

以降のベンチャーには直接投資も行う戦略も採用している。

文部科学省は 1,000 億円のベンチャー投資資金を 4 つの国立大学に配分し、各大学は VC を設立した。

東大は最も多い 400 億円強を運用するため、外部の VC も活用する方が得策だと判断したようだ。

先行して活動を開始している大阪大学、京都大学、東北大学はすでに、投資も開始している。

こうした動きが呼び水となって、他大学でもファンド設立の動きが進んでいる。九州大学系の QB キャ

ピタル、名古屋大学や岐阜大学、三重大学など中部地域の 5 大学が共同で取り組むファンドは日本ベンチ

ャーキャピタルが運営を担う。私立大学では、東京理科大学が 2016 年 2 月に 40 億円、慶応義塾大学は 7

月に 45 億円のファンドを設立した。それぞれ、1号案件として、人事系サービスのビズリーチ、人工知

能のカラフル・ボードに投資するなど、本格的に活動を開始している。

ただ、大学系ファンドが増えるほどは、有望な大学発ベンチャーの数は十分ではない。投資先探しで競

合する場面も目立ち始めている。ファンドの充実を機に、再びベンチャー設立の機運が高まることが期待

される。

米国の大学では、大学発ベンチャーの成功が株式売却益などの形で、研究資金の増加に結びつき、研究

成果の事業化とベンチャー育成、成功の分配のサイクルができあがっているとされる。仕組みや主体はさ

まざまだが、大学に金銭的なリターンをどれだけ多くもたらすことができるかが問われている。

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I-99

大学発ベンチャー、世界へ飛躍

2016 年 10 月に開いた世界有数の自動車展示会「パリモーターショー」で、京都大学発ベンチャーの

GLM(京都市)は、新型電気自動車「GLM G4」をお披露目した。同社は産業用ロボット大手の安川電機

と資本業務提携しており、新型車には共同開発したモーターを搭載している。大学発ベンチャーも世界の

舞台に飛躍する例が出始めた格好だ。

東大発の宇宙ベンチャー、アクセルスペース(東京都千代田区)は 2022 年までに、世界中を毎日観測

する体制を整備する。超小型人工衛星 50 個を宇宙空間に配置する計画で、自社だけでなく、世界の衛星

保有企業と連携する。

東大発ベンチャーのセンスプラウト(東京都港区)は土壌をモニタリングするセンサーネットワークを

手がける。世界の農業の現場では水不足が問題になっている。同社のシステムを使うと、農業生産に必要

十分な水量をコントロールできる。プリンターで印刷できる低コストのセンサーなので手軽に利用できる。

最近、インドでの実証実験も始めた。

経済産業省の調査によると、大学発ベンチャーの業績は改善傾向にある。2016 年 4 月に発表した調査

によると、単年度黒字の企業は 55.6%だった。前年度調査に比べて 12.5 ポイント増えた。業績改善とと

もに視点高く、海外を目指す環境になっている。

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I-100

シェアリングエコノミー協会が発足 政府とも連動

2016 年 1 月、シェアリングエコノミー協会が発足した。共同代表理事には、ガイアックスの上田祐司

社長と、スペースマーケットの重松大輔社長が就任した。ガイアックスは新規事業で、行き先と目的が同

じドライバーをマッチングして相乗りを実現する「notteco」などを手がける。スペースマーケットは会

議室だけでなく、野球場や映画館、お寺などユニークな場所を貸し出す。

主婦が少額の支払いでお互いに助け合う AsMama や「知識・スキル・経験」を気軽に売り買いできるオ

ンラインマーケットのココナラ、空き時間に近所同士で手伝うサービスを手がけるエニタイムズなどが理

事に名を連ねる。大企業も巻き込み、半年ほどで会員は 100 社を超えた。

ガイアックスはまた、シェアリングエコノミー関連事業に特化したシード・アーリー向けファンドも設

立している。

タクシー配車サービスの米ウーバーや民泊仲介のエアービーアンドビーなどが世界的に事業を拡大して

いる。政界や官界もこうした動きに注目している。内閣官房が設置したシェアリングエコノミー検討会に、

協会は代表理事 2 人を送り込んだ。協会のネットワーキングイベントには、自民党 IT 戦略特命委員長の

平井卓也氏も参加した。2016 年 11 月に協会が開く大型イベントは経済産業省が後援する。

個別のベンチャー企業が独自に動いても、短期間にこうした成果を挙げることは難しかった。協会を作

る動きはさまざまな業界に広がっている。

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I-101

“FinSum Symposium”(FinTech サミットシンポジウム)と銘打った国際的金融専門家が集うシンポジ

ウムが金融庁と日本経済新聞の共催で開催された。規制官庁であった金融庁が自らブロックチェーンを中

心とした新しい技術やシステムへの挑戦を訴えたところにこのシンポジウムの斬新さが垣間見られた。

冒頭、麻生副総理・財務大臣・金融担当大臣が「金融庁は金融処分庁から金融育成庁に変わらなければ

ならない。」と宣言し、FinTech 推進の必要性を語るとともに、人々が不信感を抱かないように説明する努

力を専門家が果たさなければならないと注意を促した。

FinTech 先進国と称されるイギリスやルクセンブルクのみならず、インドネシアやシンガポールといっ

たアジア諸国における当局の FinTech に対する積極姿勢にはいささか驚かされた。規制当局としては調和

の取れた対応が必要であり、他の官庁との連携も必要で、フォーラムを開催したりして意識改革を進めて

いるというのだ。シンガポールは小国であるだけに FinTech の実験場としての機能を果たすのに最適との

指摘もあった。ブロックチェーン技術により、これまで口座も持てなかった人々(アジア・アフリカ諸国

の貧しい人々や難民)にスマホで簡単に金融取引ができるようになるという金融包摂という利点が説明さ

れた。お金を介在させていた価値交換が、物々交換ならぬデジタル・デジタル交換になっていくのではな

いかという指摘もあった。

FinTech やブロックチェーンの礼賛ばかりではなく、慎重論もあった。ビットコインのような商業化が

先に進んでしまったが、分散型台帳システムでどこまでできるのか。2016 年 6 月に、ハッカーがコード

の脆弱性をついて多額の資金流出をさせたという The DAO 事件が起きたところであるが、セキュリティ

やプライバシー保護は大丈夫かといった研究も欠かせないということだ。また、ブロックチェーン技術の

現状は、1990 年代にまだ動画のやりとりもできなかったインターネットの初期の状況に似ており、もっと

成熟した安定的基盤が必要だとの指摘もあった。そのためには ISO のような標準化が必要となるが、それ

にはまだ 3~4 年かかるとの見方もあった。日本にはシリコンバレーの FinTech ベンチャーのような大き

な会社が出現していないにもかかわらず騒がれているのは、既存銀行の不安の表れではないかとの指摘も

あった。金融危機時に入れ替えた古いシステムを維持する投資をするのがせいぜいで、アメリカのような

変化のための投資ができていないというのである。

今回のシンポジウムには我が国の 3 メガバンクをはじめ、主要な銀行や保険会社も参加し、それぞれの

FinTechに対する積極的な取り組みを披露したところであるが、既存の銀行業については、銀行は cash rich

よりも、実は data rich であることが重要で、規制もあってこれまで顧客情報を活用して来なかったが、

これを Big Data として活用していくべきであるという指摘が新鮮であった。保険については InsureTech

ということばができているようであるが、IoT の時代には事故を起こせばセンサーの働きにより、保険会

社に電話することもなく事故内容が正確に伝わるようになるということだ。一般に保険会社は銀行より動

きが遅いとの指摘もあった。ベンチャー企業とのコラボレーションにはスピード感が必要という指摘は製

FinTech への挑戦

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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I-102

造業においても言われていることである。

我が国においても金融庁が先頭に立ち、官民間の建設的対話を踏まえ、適切な規制の下に、利用者保護、

不正防止、システムの安定性を基礎として FinTech により金融の新しい時代を切り開いていくこととなる

のではないか。そんな夢物語に現実味を感じさせてくれたシンポジウムであった。

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I-103

ベンチャー企業向けアンケート調査

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I-104

1. 2016 年調査概要

VEC では 2015 年に続き、Web 調査にてベンチャー企業(VB)に対して「ベンチャー企業の

経営環境等に関するアンケート調査(2016 年)」を実施した。調査概要は以下の通りである。な

お、調査対象は 2015 年までは設立 5 年以内の企業としていたが、2016 年は設立 10 年以内とし

た。

調 査 概 要

対象企業 設立 10 年以内のベンチャー企業 調査期間 2016 年 6 月 8 日~7 月 7 日 調査方法 Web アンケート方式 対象企業数 3,273 社 回答企業数 404 社

回収率 12.3% 有効回答企業数 399 社※

有効回答率 12.2%

※回答企業のうち、2005 年以前設立を除外

回答企業のうち、設立以降にベンチャーキャピタル(VC)による出資を受けている VB と、

出資を受けていない VB の内訳は以下の通りである。

VC 出資の有無による有効回答企業数内訳

社数

VC 出資あり 141 社 VC 出資なし 258 社

計 399 社

「VC 出資あり」と「VC 出資なし」の社数に大きく差があることに留意してほしい。各集計

における有効回答社数については、図表中に記載した。

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I-105

2. 回答企業のプロフィール

(1) 業種

VC 出資の有無に関係なく、「コンピュータ及び関連機器、IT サービス」が 4 割程度ともっと

も多く、次に「ソフトウェア」が続いている。この 2 業種で全体の半数程度を占めている。「バ

イオ、製薬」については、「VC 出資あり」では 6.4%、「VC 出資なし」では 1.9%と若干の差が

みられるが、それ以外の業種については、ほぼ同程度の割合である。

図表 4-1 調査回答企業の業種分布

38.8

34.8

37.3

17.1

12.1

15.3

4.7

5.7

5.0

8.1

9.2

8.5

2.3

3.5

2.8

5.8

7.8

6.5

8.9

8.5

8.8

8.1

8.5

8.3

1.9

6.4

3.5

4.3

3.5

4.0

VC出資なし

VC出資あり

全体

コンピュータ及び関連機器、ITサービス ソフトウェアバイオ、製薬 メディア、娯楽、小売、消費財ロボット関連 医療機器、ヘルスケアサービス金融、不動産、法人向けサービス 工業、エネルギー、その他産業通信・ネットワーキング及び関連機器 半導体、電気一般

(399)

(141)

(258)

単位:% ()内は有効回答社数

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I-106

(2) ステージ

VEC の調査では、VB のステージを以下の通りに定義している。

ステージの分布について、「VC 出資あり」と「VC 出資なし」で比較すると、「アーリー」で

8.3 ポイントの差はあるものの、全体の分布として大きな違いはみられない。「アーリー」と「エ

クスパンション」が約 4 割と同程度を占めており、「シード」は 2 割程度、「レーター」は全体の

5%程度である。ステージの内訳については、過去の調査データにおいても同様の傾向が示され

ており、本調査のデータ特性の 1 つと言える。 なお、本年の調査対象は設立 10 年以内の VB であり、昨年(設立 5 年以内)よりは調査範囲

を拡大している。そのため、「レーター」の割合は昨年(全体:1.5%)よりは多くなっている。

依然として割合は多いとは言えないが、設立から上場までの期間は平均で 20 年掛かるという調

査結果※もあり、設立 10 年以内で IPO 直前である「レーター」まで成長する VB は少ないもの

と考えられる。 ※『2014 年に新規上場した企業(IPO 企業)の事業内容、設立から上場までの期間』PwC あら

た有限責任監査法人

(http://www.pwc.com/jp/ja/assurance/research-insights/accounting-case-study/com-001.html)

図表 4-2 調査回答企業のステージ分布

13.6

19.9

15.8

43.8

35.5

40.9

38.4

39.0

38.6

4.3

5.7

4.8

VC出資なし

VC出資あり

全体

シード アーリー エクスパンション レーター

単位:% ()内は有効回答社数

(399)

(141)

(258)

ステージ 定義

シード 商業的事業がまだ完全に立ち上がっておらず、研究および製品開発を継続している企業

アーリー 製品開発および初期のマーケティング、製造および販売活動に向けた企業

エクスパンション 生産および出荷を始めており、その在庫または販売量が増加しつつある企業

レーター 持続的なキャッシュフローがあり、IPO 直前の企業等

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I-107

(3) ステージ×従業員数

ステージ別に従業員数(役員、派遣・パートタイム等の非正規雇用を含む)をみると、VC 出

資の有無にかかわらず、「シード」段階にある企業の 7 割程度は「1 人から 5 人」規模である。

ステージが進むにつれて従業員数は増えており、「エクスパンション」および「レーター」では

「101 人から 300 人」規模の企業も存在している。 VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」の企業は「VC 出資なし」よりも組織規模が

大きく、特に「レーター」では従業員 5 人以下の組織はない。しかし、「VC 出資あり」の VB

といえども「エクスパンション」の 61.8%が 20 人以下の組織であることから、従業員数でいえ

ば小規模の企業が多い。なお、サンプル数が少ないものの「VC 出資なし」の「レーター」は、

36.4%が 5 人以下の組織となっており、「VC 出資あり」と比較すると規模の違いが顕著になって

いる。

図表 4-3 調査回答企業の従業員数分布

69.8

46.6

23.4

21.1

14.3

22.7

22.1

11.1

18.4

28.6

10.5

4.8

11.7

20.1

21.1

0.6

4.5

26.3

1.3

21.1

シード

アーリー

エクスパンション

レーター

1人から5人 6人から10人 11人から20人 21人から50人 51人から100人 101人から300人

(63)

(163)

(154)

(19)

()内は有効回答社数

全体

64.3

26.0

14.5

21.4

36.0

16.4

7.1

18.0

30.9

7.1

18.0

29.1

12.5

2.0

7.3

50.0

1.8

37.5

シード

アーリー

エクスパンション

レーター

1人から5人 6人から10人 11人から20人 21人から50人 51人から100人 101人から300人

(28)

(50)

(55)

(8)

()内は有効回答社数

VC出資あり

74.3

55.8

28.3

36.4

8.6

16.8

25.3

14.3

18.6

27.3

18.2

2.9

8.8

15.2

27.3

3.0

9.1

1.0

9.1

シード

アーリー

エクスパンション

レーター

1人から5人 6人から10人 11人から20人 21人から50人 51人から100人 101人から300人

(35)

(113)

(99)

(11)

()内は有効回答社数

VC出資なし

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I-108

3. 事業展開の状況

(1) 海外展開の状況

既に海外展開(販売・調達)をしている企業は、回答企業全体の 31.6%であり、そのうち海外

拠点がある企業は 10.8%であった。

VC 出資の有無で比較した場合、すでに海外展開をしている割合は「VC 出資あり」の方が「VC出資なし」に比べやや多い。海外拠点がある企業は、「VC 出資あり」の方が「VC 出資なし」と

比べると約 1.6 倍多い。「VC 出資なし」企業の 3 割近くは海外展開の実績・予定はないと回答し

ている。

図表 4-4 海外展開の状況

既に海外展開をしている企業の展開先の地域は、VC 出資の有無にかかわらず、アジアがもっ

とも多く、「中国」「東南アジア」「その他アジア」を合わせたアジア全体で約 5 割に達している。

なかでも「東南アジア」の割合は展開先全体の 4 分の 1 を占める。近年、ベンチャー投資の市場

として中国を含むアジアが注目されており、ベンチャー企業のアジア全体への進出は今後も伸び

ていく可能性がある。 VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」の VB の方が「VC 出資なし」よりも欧州へ

展開している割合がやや多い。

図表 4-5 海外展開している国と地域

31.6%

36.9%

28.7%

43.6%

44.7%

43.0%

24.8%

18.4%

28.3%

全体

VC出資あり

VC出資なし

すでに海外展開をしている 今後、海外展開をする計画がある 海外展開の実績・予定はない

(399)

(141)

(258)

海外拠点あり:10.8

海外拠点あり:14.2

海外拠点あり:8.9

()内は有効回答社数

15.9

16.5

15.5

24.8

24.7

24.8

7.5

7.1

7.8

13.1

16.5

10.9

16.4

16.5

16.3

2.8

2.4

3.1

1.9

1.2

2.3

17.8

15.3

19.4

全体

VC出資あり

VC出資なし

中国 東南アジア

その他アジア・オセアニア 欧州

北米 中南米

中東・アフリカ 特に国を限定していない(Webサービス含む)

(214)

(85)

(129)

単位:% ()内は有効回答社数

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I-109

(2) 今後の事業計画

回答企業全体でみると、IPO(株式公開)の方向で考えている企業は、具体的に手続きを進め

ている企業を含めて 6 割近くを占めている。一方で、M&A を検討している企業は 1 割程度に留

まっている。欧米と比べ、日本における M&A の数は非常に少ない状況にあるが、本調査結果か

らも日本における M&A は IPO に比べ、事業計画上の優先順位が非常に低いことが明らかとなっ

た。 今後の事業計画について、VC 出資の有無で比較すると、「VC 出資あり」では、IPO の方向で

考えている企業の割合が 76.5%と 8 割近くに達しており、そのうち 2 割程度の企業は具体的な手

続きを開始している。VC から出資を受けている企業の多くは、IPO を視野に入れていることが

うかがえる。 一方、「VC 出資なし」では、IPO の方向で考えている企業が半数にも届いていない。また、4

割以上の企業が IPO も M&A も考えておらず、VC から出資を受けている企業との大きな違いと

して表れている。

図表 4-6 今後の事業計画

2.3

19.1

8.3

39.1

57.4

45.6

45.0

9.2

32.3

0.4

0.7

0.5

1.6

1.0

0.8

0.5

10.9

13.5

11.8

VC出資なし

VC出資あり

全体

IPOにむけて具体的に手続きを進めている

IPOの方向で考えているが、具体的な手続きは開始していない

IPO及びM&Aは考えていない(Exitの予定はない)

すでにIPO(株式公開)している

すでに他社にM&A(事業売却)している

解散、清算等を検討している

他社にM&Aの方向で考えている

(399)

(141)

(258)

単位:% ()内は有効回答社数

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I-110

起業するなら、米国? 日本?

最近、日本人の起業家が米国で起業するケースが目に付く(下図)。

米国で起業した理由は、各社様々であろうが、共通項があるとすれば、米国の起業環境を評価したので

はなかろうか。すなわち、①米国では事業の現状だけではなく、将来性が高く評価される、②ベンチャー

エコシステムが確立しており、資金面だけではなく、多様なサポートが受けられ、成長速度も加速される。

他方で、日米の起業環境を比較して、日本か、米国か最後まで迷った末、最終的に日本での起業を選択

したという話を 2 社の VB から聞いた。

理由を尋ねると、①米国で、先端分野の技術者を採用しようとすると、高額な条件を提示しなければな

らない、②東京は、狭い範囲に内外の有力企業の拠点があり、極めて効率的に営業活動ができる、ことだ

という。

時代はここまで来ている。日本のベンチャーエコシステムの更なる拡充が必要と痛感した次第。

米国で起業した創業者が日本人の VB 例

(出所:各種報道、VEC 作成)

※2016年1月~9月の間に、日本の企業が出資したVBに限る

VB 創業者 業種 出資時期 出資者 出資総額YJキャピタル

NTTドコモ・ベンチャーズ

セゾン・ベンチャーズ

コロプラ

Eight Roads Ventures Japan

グリーベンチャーズ

GMO VenturePartners

Colopl VR Fund(コロプラ)

Hon Haiベンチャーキャピタルファンド“2020”

Samsung Venture Investment

スタートトゥデイ

ニッセイ・キャピタル

TDK

SCREENホールディングス

創業者・CEO鈴木達則

2016/9Zeptor Corporation リチウムイオン電池 数億円

共同創業者矢野莉恵

2016/3Material Wrld ECサイト(ファッション) 9千米ドル10.2億円(@113.03)

共同創業者・CEO須藤憲司

2016/3FOVE 視線追跡型VR 11千米ドル12.4億円(@115.08)

共同創業者・CEO小島由香

2016/2Kaizen Platform, Inc. ユーザーインターフェース改善プラットフォーム

8千米ドル9.2億円(@115.08)

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I-111

4. 資金調達の状況

(1) 直近 1 年間の資金調達状況

直近 1 年間の資金調達元を件数比率でみると、回答企業全体では、「銀行・信用金庫・信用組

合」の割合が 29.6%ともっとも多く、次に「本人」の 19.0%が続いている。

設立から現在までに VC 出資を受けたことがある企業である「VC 出資あり」のうち、過去 1年以内に VC から出資を受けたことがある企業の件数比率は 45.4%であった。

図表 4-7 直近 1 年間の資金調達元の件数比率

直近 1 年の資金調達元の状況を金額比率でみた場合、回答企業全体では「ベンチャーキャピタ

ル」が 38.5%でトップ、2 番手は 22.5%の「民間企業」であり、この 2 つの調達元で 6 割に達し

ている。 「VC 出資あり」では 48.5%を占める「ベンチャーキャピタル」の比率がもっとも高い一方、

「VC 出資なし」では「銀行・信用金庫・信用組合」および「民間企業」の比率が高く、それぞ

れ 3~4 割を占めている。

図表 4-8 直近 1 年間の資金調達元の金額比率

19.0%

8.8%

10.0%

29.6%

16.0%

13.0%

16.0%

2.0%

16.3%

7.1%

14.9%

22.7%

45.4%

14.9%

25.5%

4.3%

20.5%

9.7%

7.4%

33.3%

12.0%

10.9%

0.8%

本人

家族・親戚・知人

個人投資家(エンジェル)

銀行・信用金庫・信用組合

ベンチャーキャピタル

公的機関

民間企業

海外投資家

全体(有効回答社数:399)

VC出資あり(有効回答社数:141)

VC出資なし(有効回答社数:258)

直近一年間(複数回答可)

1.5

1.1

3.1

0.6

0.2

2.0

6.0

3.8

14.5

13.8

9.7

29.7

38.5

48.5

9.6

10.5

6.3

22.5

18.4

38.2

7.4

7.7

6.2

全体

VC出資あり

VC出資なし

本人 家族・親戚・知人 個人投資家(エンジェル) 銀行・信用金庫・信用組合 ベンチャーキャピタル 公的機関 民間企業 海外投資家

単位:% ()内は有効回答社数

(258)

(141)

(399)

直近一年間(複数回答可)

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I-112

(2) 設立から現在までの資金調達状況

設立から現在までの資金調達元を件数比率でみると、VC 出資の有無に関係なく、大半の企業

は「本人」が自ら用意している。次に比率として多い調達元は「銀行・信用金庫・信用組合」で

あり、5 割を超えている。 VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」の企業は「個人投資家(エンジェル)」およ

び「民間企業」からの調達率が「VC 出資なし」の企業よりも、いずれも 20 ポイント程度高く、

特徴的な結果となっている。また、件数は少ないが、「海外投資家」からの調達率は「VC 出資

あり」で 13.5%、「VC 出資なし」で 3.5%と大きな差がみられる。

図表 4-9 設立から現在までの資金調達元の件数比率

87.0%

37.8%

55.4%

35.3%

31.6%

32.6%

34.8%

7.0%

92.9%

42.6%

51.1%

100.0%

39.0%

56.7%

54.6%

13.5%

83.7%

35.3%

57.8%

27.5%

19.4%

24.0%

3.5%

本人

家族・親戚・知人

銀行・信用金庫・信用組合

ベンチャーキャピタル

公的機関

個人投資家(エンジェル)

民間企業

海外投資家

全体(有効回答社数:399)VC出資あり(有効回答社数:141)VC出資なし(有効回答社数:258)

設立から現在まで(複数回答可)

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I-113

資金調達元を金額比率でみると、回答企業全体では、「ベンチャーキャピタル」による出資比

率がもっとも多く、次に「民間企業」「銀行・信用金庫・信用組合」と続いている。件数比率で

みると 87.0%と圧倒的に多い「本人」は、金額比率では 5%に満たないことから、個々の調達額

は非常に小さいことがわかる。

VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」では「ベンチャーキャピタル」が総額の約 5割を占めている。 「VC 出資なし」では「銀行・信用金庫・信用組合」が 43.2%でもっとも多く、2 番手には 22.9%

の「民間企業」が続いている。また、「本人」「家族・親戚・知人」の全体に占める調達金額は多

くはないものの、その比率は、いずれも「VC 出資あり」企業よりも 2 倍程度高い比率となって

いる。

図表 4-10 設立から現在までの資金調達元の金額比率

3.7

2.3

7.1

1.4

1.0

2.7

5.2

4.1

8.0

19.4

10.2

43.2

36.0

49.7

10.2

9.6

11.8

18.6

17.0

22.9

5.5

6.0

4.2

全体

VC出資あり

VC出資なし

本人 家族・親戚・知人 個人投資家(エンジェル) 銀行・信用金庫・信用組合 ベンチャーキャピタル 公的機関 民間企業 海外投資家

単位:% ()内は有効回答社数

(258)

(141)

(399)

設立から現在まで(複数回答可)

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I-114

(3) 今後期待する資金調達元

今後期待する資金調達元は、回答企業全体では、「ベンチャーキャピタル」「銀行・信用金庫・

信用組合等」「民間企業」との回答がそれぞれ 5 割程度と多かった。

VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」では、「ベンチャーキャピタル」が 72.0%と

もっとも高く、次に 59.4%の「民間企業」が続いている。「民間企業」への期待については、近

年の事業法人によるベンチャー投資(CVC 投資)の活発化が反映されていると推測される。 一方、「VC 出資なし」では、「銀行・信用金庫・信用組合等」に対する期待がもっとも高い。

また、「VC 出資あり」の企業と比較して、「本人」の調達力に期待する比率が 3 倍以上高い。

図表 4-11 今後期待する資金調達元

18.1%

4.5%

30.2%

47.5%

54.0%

30.4%

46.3%

22.3%

2.2%

7.0%

2.1%

22.4%

39.2%

72.0%

24.5%

59.4%

32.9%

4.2%

24.1%

5.7%

34.5%

52.1%

44.1%

33.7%

39.1%

16.5%

1.1%

本人

家族・親戚・知人

個人投資家(エンジェル)

銀行・信用金庫・信用組合等

ベンチャーキャピタル

公的機関

民間企業

海外投資家

その他

全体(有効回答社数:399)VC出資あり (有効回答社数:141)VC出資なし (有効回答社数:258)

複数回答可

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I-115

5. ベンチャー企業のニーズについて

(1) 当面の経営ニーズ

VB に対して現在あるいは近い将来の経営ニーズの中で、もっとも高いニーズ注を尋ねたとこ

ろ、VC 出資の有無でニーズの内容に大きな違いはみられず、「人材採用」「販路拡大」がそれぞ

れ 3 割程度と高い。

(注)昨年までの調査は、複数回答可としていた。

VC 出資の有無で比較すると、「その他の経営ニーズ」「特に経営ニーズはない」を除き、「VC出資あり」の企業の方が各項目において高いニーズを示しているが、唯一「人材採用」に関して

は「VC 出資なし」の企業の方が若干高い。

図表 4-12 現在あるいは近い将来の経営ニーズ

ステージ別にみると、エクスパンション、レーターと比較して、シード、アーリーでは「資金

調達」が高い。ステージが進むにつれて、「販路拡大」「人材採用」が高まり、レーターに至って

は、「人材採用」が最大のニーズとなっている。

図表 4-13 ステージ別の経営ニーズ

31.9%

19.3%

10.4%

33.2%

4.2%

1.0%

29.4%

21.7%

11.9%

34.3%

2.8%

0.0%

33.3%

18.0%

9.6%

32.6%

5.0%

1.5%

人材採用

資金調達

技術開発

販路拡大

その他の経営ニーズ

特に経営ニーズはない

全体(有効回答社数:399)VC出資あり(有効回答社数:141)VC出資なし(有効回答社数:258)

36.5%

24.2%

35.5%

57.9%

25.4%

25.5%

12.5%

11.1%

13.0%

8.6%

5.3%

22.2%

32.3%

38.8%

26.3%

3.2%

4.3%

3.3%

10.5%

1.6%

0.6%

1.3%

シード

アーリー

エクスパンション

レーター

人材採用 資金調達 技術開発 販路拡大 その他の経営ニーズ 特に経営ニーズはない

()内は有効回答社数

(19)

(163)

(63)

(154)

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I-116

(2) 人材ニーズ

回答企業全体では、もっとも採用が必要な人材は「営業・販売促進の担当者」であり、次いで

「技術開発の担当者」となっている。どちらの人材も、人材ニーズがあると回答した企業の半数

以上が必要としている。 VC 出資の有無で比較した場合、「VC 出資あり」は COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務

責任者)、CTO(最高技術責任者)等の責任者を必要としている割合が「VC 出資なし」よりも

高く、なかでも CFO の採用ニーズが「VC 出資なし」の 2 倍以上の 48.8%と非常に高い。また、

比率は小さいが、「社外役員(社外取締役・監査役)」に対するニーズも「VC 出資なし」の約 4倍に達し、大きな差がみられる。「VC 出資あり」の企業は IPO を視野に入れている割合が高く

(図表 4-6 参照)、組織体制の強化に当たり、企業ガバナンスを支える人材をより必要としてい

ることがうかがえる。

図表 4-14 人材ニーズ

3.9%

19.7%

30.7%

31.5%

55.1%

33.1%

29.1%

52.8%

16.5%

16.5%

18.1%

11.0%

4.7%

2.4%

22.0%

48.8%

36.6%

51.2%

31.7%

24.4%

43.9%

19.5%

19.5%

19.5%

22.0%

7.3%

4.7%

18.6%

22.1%

29.1%

57.0%

33.7%

31.4%

57.0%

15.1%

15.1%

17.4%

5.8%

3.5%

CEO・社長

COO

CFOまたは財務の責任者

CTOまたは技術開発の責任者

営業・販売促進の担当者

戦略・事業開発の担当者

海外展開・事業の担当者

技術開発の担当者

財務の担当者

法務の担当者

総務の担当者

社外役員(社外取締役・監査役)

その他

全体 (有効回答社数:127)VC出資あり (有効回答社数:41)VC出資なし (有効回答社数:86)

複数回答可

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I-117

6. その他の傾向

その他、アンケートから見えてきた特徴的な傾向について示す。

(1) ピボットの有無

「自社の中核的な主力事業においてピボット(既存事業や製品の方向性を抜本的に転換するこ

と)を行ったことがありますか」という質問項目に対しては、3 割以上の企業が「ピボットした

ことがある」と回答している。多くの企業がピボットを経験していることがわかった。

図表 4-15 ピボットの有無

また、「VC 出資あり」のほうが、ピボットした企業の割合が多い。この要因の一つとして、

VC の出資を機に、あるいは VC からの出資を得るためのピボットを実施している可能性が考え

られる。

図表 4-16 VC 出資の有無別のピボット状況

ピボットした

ことがある

35.6%ピボットした

ことがない

64.4%

41.1%

32.6%

58.9%

67.4%

VC出資あり

VC出資なし

ピボットしたことがある ピボットしたことがない

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I-118

(2) 何社目の起業か

「創業者にとって何社目の起業(創業者として法人を設立。資産管理会社等を除く)ですか。」

という質問項目に対しては、3 割近くが 2 社目以上の起業だと回答している。

図表 4-17 創業者にとって何社目の起業か

また、ステージとのクロス集計を行ったところ、「シード」~「エクスパンション」は割合が

変わらないが、「レーター」は 2 社目の割合が多いことがわかった。VB をレーターステージま

で成長させるには、過去に起業経験がある創業者のほうが有利だということがうかがえる。

図表 4-18 創業者にとって何社目の起業か(ステージ別集計)

1社目(初めての

起業)

72.7%

2社目

19.5%

3社目

5.5%

4社目

0.8%

5社目以上

1.5%

74.6

74.2

72.1

57.9

14.3

19.6

19.5

36.8

7.9

4.3

5.8

5.3

0.6

1.3

3.2

1.2

1.3

シード

アーリー

エクスパンション

レーター

1社目(初めての起業) 2社目 3社目 4社目 5社目以上

単位:% ()内は有効回答社数

(154)

(163)

(63)

(19)

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I-119

7. ベンチャー企業の創出・成長のための政府等の政策面に関する要望

本調査では VB に対して、政府等への政策面の要望を自由記述にて尋ねており、回答企業 399社中 89 社(記述率 22.3%)から回答があった。その結果を以下の 9 項目に分類し、項目ごとに

内容をまとめる。

項目 回答社数 回答全体に 対する比率

助成金・補助金制度等 24 27.0%

支援制度全般 14 15.7%

資金調達 9 10.1%

起業環境の整備 8 9.0%

地方 6 6.7%

人材 5 5.6%

大企業・民間企業とのマッチング 5 5.6%

海外展開 3 3.4%

その他 15 16.9%

合計 89 100%

(1) 助成金・補助金制度等

自由記述の中で最多の割合を占めたテーマの 1 つは「助成金・補助金制度等」であった。「現

状の国・自治体の制度は手続きが多すぎる」「申請方法や審査期間等々で、利用に不便さを感じ

ている」「提出する書類や、事後の報告等々、人数が少ない中でやっており、大変労力がかかる」

等、手続きに関する声が多く挙がっていた。また、「助成金の用途が限定されている」「限られた

分野の企業しか制度を利用できない」「新規事業や独自性の高い分野は審査が通りにくい」とい

った制度の対象について改善を求める意見も複数出ていた。

(2) 支援制度全般

「助成金・補助金制度等」に次いで意見の多かった「支援制度全般」については、「国の制度

が従来の産業の枠組みにとらわれ過ぎている。新たな産業に対する顧客ニーズに取り組む企業の

育成に焦点を当ててほしい」「政策は良いが、書類作成等の諸手続きが煩雑すぎる」といった意

見が出ていた。デジタル化が進む中で支援の枠組みが現状に合っていないことについて多く指摘

されていた。

(3) 資金調達

資金調達については、「代表者保証や土地や建物など既存の資産をベースとした融資スキーム

が多い」「融資時の個人の連帯保証制度などは見直すべき」「民間金融機関からの資金調達におい

て、代表取締役が連帯保証人となる仕組みがリスクテイクの足枷になっている」等、融資を受け

る際の起業家の負担に関して意見が挙げられていた。また、「起業家に対する事業計画書作成の

スキルアップの機会やアイデアへのフィードバック環境の提供を、国・地方自治体の政策へ盛り

込んでほしい」といった声もあった。

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I-120

(4) 起業環境の整備

起業環境については、「起業家個人に対するリスクを減らせる社会にしたほうが良い」「万が一

の廃業時にも起業家がすぐに再スタートアップ出来るようにしなければ、経験値を得た人材が廃

業時のリスクと共倒れになってしまう」「未来志向の規制緩和、その意思決定をフェアに行える

仕組みを軸にして、より自由な市場の土台を作ってほしい」等、起業リスクの緩和に関する意見

が多かった。その他、「創業支援施設の充実化、スタートアップ時のオフィスや設備の提供」と

いった起業準備支援に対する具体的な要望が挙がっていた。

(5) 地方

地方の VB からは、「政府直轄(省庁)事業は枠組みがかなりしっかりしているが、地方公共

団体事業は柔軟性に欠ける。窓口担当者も、そつなく書類が完成しているかに目が行きがちだ。

研究・開発の趣旨を尊重し、企図そのものを成功に導くようなコーディネートや柔軟な仕組み作

りが必須に思う」等、地方独自の取組に対して柔軟な対応を求める意見があった。また、「地方

自治体の支援は都道府県によって差がありすぎる」「都道府県単位の VB 支援に係る補助金は、

所在地によって全く異なっているため、他県の VB の方が恵まれているように感じることも少な

くない」といったように、地域によって支援の充実度に大きな差があることを指摘する声も複数

あった。

(6) 人材

人材については、「若い人材は大手企業で囲い込まれてしまう傾向にあり、行政で VB の採用

を支援する施策を検討してほしい」「政府は教育に力を入れて、人材の輩出を促すべき」等、深

刻な人材不足を指摘する声が多かった。また、「創業間もない VB 向けのバックオフィス機能の

支援がほしい」といった、人材不足を補うスポット支援に関する要望もあった。

(7) 大企業・民間企業とのマッチング

大企業を中心とした民間企業とのマッチングについては、「大企業内に『オープン・イノベー

ション室』といった専門組織・部署を設けて、そこが窓口となって、VB との対等な交渉.....

が育ま

れるようにしてほしい」「大手企業との取引口座開設で、連帯保証人を求められることが多く、

ビジネスしづらい」「大企業が、VB をパートナーとして扱う文化創出が必要」といった、大企

業との協働における障壁を指摘する意見が多かった。

(8) 海外展開

海外展開については、「国や地方自治体が積極的に、海外への展開や外国人の人材を紹介する

仕組みがほしい」「海外展開等のアドバイスを低額で受けられると良い。また、大手企業での海

外展開経験者がほしい」といった要望が挙がっていた。また、「より良い企業が今後日本で生ま

れ続けるために、英語の教育改革は急務ではないか。他国他地域と比べて基本のプロダクトは優

れていることが多いように思うが、それを示す語学力がない」といった、言語による壁を指摘す

る声もあった。

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I-121

(9) その他

上記以外にも様々な記述があり、その中には「官公庁や地方自治体にベンチャーサービスを積

極採用してほしい」といった意見があった。また、「VB が生まれるには、とにかくエコシステ

ムが大切だと思う。VB への国全体としての投資額と、成功する VB の数は、いわゆる鶏と卵の

関係にあると思うので、積極的にベンチャー投資を行ってもらいたい」といったベンチャー投資

へ期待する声もあった。

最近は、政府を筆頭に多くの関係機関が様々なベンチャー支援を積極的に実施している。例え

ば、多種多様な助成金・融資制度が各政府系金融機関や地方自治体など様々な事業体から提供さ

れる状況にある。しかし、VB 側からは、そういった支援制度の利用のしづらさを指摘する声も

あった。VB へ十分に情報が行き渡り、使いやすい形となっているのか、少なくとも一部には課

題があるとの声が存在している。今後は、相談窓口の一本化、申請書類等のデジタル化、起業時

のオフィスや設備の提供等、直接的な資金支援のみならず、サービス面での改善が望まれる。 資金調達に関する要望も多く寄せられた。本調査でも、特にシード段階では、「資金調達」を

当面の経営ニーズの第一に挙げている。最近の動きとしては、クラウドファンディングを利用し

て、広く個人から投資を募る例も一部でみられるようになった。また、埼玉りそな銀行が、2016年 4 月に「埼玉りそなインキュベーションファンド」と銘打ち、銀行が創業、第二創業期の企業

(VB とは限らないが)に対して直接投資する制度を創設(邦銀初)した。金額的には 1 社上限

1 千万円であり、2016 年 9 月に第 1 号の投資がなされたという。こうした資金調達の多様化の動

きがさらに進むことを期待したい。 VB と言うと、通常、急成長し上場を目指す企業とのイメージがある。最近は、市場を日本に

限らず、最初から世界市場を想定し、創業初期から急速な国際化を果たしていくいわゆる「ボー

ングローバル VB」も出現しつつある。しかし、他方で、かならずしも上場を目指さない、ある

いは急成長を目指さない VB もある。ちなみに、本調査でも、「IPO や M&A を考えていない」

と答えた VB は全体の 1/3 に達している。こうした VB の中には、地方の活性化や地域の社会的

課題の解決に取り組む VB も多いようだ(次ページのフューチャーベンチャーキャピタル株式会

社今庄会長コラム 参照)。「地方創生」の推進役の一つとしての活躍を期待したい。

VEC は今後も本調査を継続し、ベンチャー企業の経営環境とニーズの把握に努め、各方面に、

ベンチャー企業を取り巻く環境改善の一助となる情報を発信していきたい。

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I-122

当社が地方創生ファンドに取り組んだ経緯

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(FVC)は、「経営者の夢の実現を応援する」という創業理

念を持って 1998 年に京都で設立された独立系のベンチャーキャピタル(VC)であり、2001 年に当時の

ナスダックジャパン(現 JASDAQ)に上場している。アーリーステージを中心に、地域密着のハンズオン

型 VC として、優れた技術、革新的なビジネスモデルを持つ企業や経営者を応援してきた。

東京以外に本社を置く数少ない独立系 VC として、創業以来、東京に限らず地方のベンチャー企業を支

援する活動に力を入れており、2001 年に石川県と組成したファンドを皮切りに、自治体や地域金融機関、

中小企業基盤整備機構等の協力を得、2000 年代前半に 10 を超えるベンチャーファンドを地域で設立、運

営してきた。

この時期には FVC 以外の VC も多くの地域ファンド(いわゆる自治体ファンド含む)を組成している。

ただ、これらは地域からの IPO 企業数を増やすことを狙ったファンドであり、その後のライブドアショッ

ク、リーマンショックの影響で全国の IPO 数そのものが激減する中で、地域発 IPO の底上げは果たされな

いまま今に至っている。

こうした状況の中、FVC はこれらの活動から得た貴重な経験を生かし、世の中に貢献する仕組みとして、

大手事業会社に対する CVC(Corporate Venture Capital)機能の提供、新規事業開発コンサルティング

などに加え、いわゆる地方創生ファンドを組成している。

当社の地方創生ファンドについて

FVC は地域課題の解決を通じて地域経済の活性化を支援するファンドを地方創生ファンドと称している。

FVC が運営する地方創生ファンドはこれまでのところ、スタートアップ期の企業を支援する「創業支援

ファンド」が中心となっている。地域の創業間もないベンチャー企業にエクイティー(資本)を提供し、

事業の創造およびその発展の一助となることで、地域社会の活性化、雇用の創出につなげ、地方創生に貢

献するファンドである。

これまで全国的に取り組まれてきた地域からの IPO を増やすという動きは道半ばであるものの、近年、

政策的後押しを受けた地方創生の機運の高まりから、地域でも開業率を上げる施策を模索する動きが出て

きた。特に信用金庫や信用組合などでは、創業間もない企業や創業を考えている経営者予備軍を潜在顧客

に抱えながらも、融資の仕組みだけではニーズにこたえられず、新たな仕組みの開発が望まれてきた。

そこで当社が開発したのが、必ずしも上場を目指さない、急成長を目指さない企業に対して投資できる

仕組みであり、これを盛り込んだファンドを地域金融機関と FVC が連携することにより組成、運用し、起

「地方創生ファンド」の現状と課題について フューチャーベンチャーキャピタル株式会社

取締役会長 今庄啓二

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I-123

業家、事業者を広く支援するものである。

ここ数年で FVC が組成運営している創業支援ファンドは下表のとおりであるが、おそらくその数は日本

で最多となっている(FVC 調べ)。

FVC が運営する主な地方創生(創業支援)ファンド

ファンド名

(投資事業有限責任組合は省略) 設立時期 有限責任組合員

ファンド

総額

もりおか起業ファンド 2012/8/20 盛岡信用金庫、盛岡市、滝沢市、矢巾町、紫波町 1億円

おおさか創業ファンド 2014/9/10 大阪信用金庫 3億円

あきた創業サポートファンド 2015/10/1 秋田信用金庫、秋田市、男鹿市、潟上市、

五城目町、八郎潟町、井川町、大潟村 1億円

磐城国地域振興ファンド(いわしん

RITA パートナーズとの共同 GP) 2015/10/15

いわき信用組合、全国信用協同組合連合会 3億円

かんしん未来ファンド(恒信サービス

との共同 GP) 2015/12/1

第一勧業信用組合、全国信用協同組合連合会 3億円

京都市スタートアップ支援ファンド 2016/4/28 京都中央信用金庫、京都信用金庫、

京都リサーチパーク 2.6 億円

ふくしま夢の架け橋ファンド 2016/6/1 福島信用金庫 2億円

当社の地方創生(創業支援)ファンドの特徴

FVC の強みの一つは、これまで行ってきた地域展開による、自治体、地域金融機関、地域企業、地域起

業家や大企業とのネットワークである。また、首都圏を中心としたネット系企業だけではなく、地域経済

に根付いたものづくりやサービス、伝統工芸などへの投資実績が豊富であることも特徴の一つとなってい

る。

近年設立してきた創業支援ファンドは、信用金庫や信用組合などの地域金融機関や自治体との連携はも

ちろんのこと、全国信用協同組合連合会や日本政策金融公庫とも強く連携し、企業の発掘や経営支援、融

資との組み合わせによる資金提供などにより、投資先企業を支援する仕組みとなっていることも大きな特

徴である。ファンドから投資する資金はそれほど多くないものの、投資が資本の増強につながり、関係す

る金融機関からの融資もしやすくなることで、創業時の事業立ち上げに十分な資金を提供することができ

る。

また、必ずしも IPO を目指していない企業に投資した場合の回収確度を高めるため、各機関と連携した

経営モニタリングの仕組みを構築する他、投資には種類株式等のスキームを積極的に活用し、IPO や M&A

に依らずとも事業の達成度合いに応じて数年後に経営者や取引先等の第三者による買い取り、会社による

自己株式の取得等で回収できるようにしている。創業当初に投資することによるオーナーシップの希薄化

を防ぐために、議決権の有無による調整も行っている。

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I-124

今後の展開

地域における創業支援においては、ファンドを介したエクイティーの提供が今後さらに重要になると思

われるが、それだけで十分とは言えない。創業間もない企業は、資金以外にもヒト、モノ、情報、ネット

ワーク等あらゆるものが不足しており、それを支援者がバックアップする必要がある。とはいえ、少額で

あるがゆえに、ファンドの運営経費から賄うことは現実的に厳しく、効率よく支援できる仕組み作りが重

要となる。この点に関しては、関係する地域金融機関が単なるファンドの出資者としてのみならず、投資

運営に関わることで改善できると考えている。そうすることで、金融機関自身、企業の目利き、モニタリ

ング、経営支援等のノウハウが蓄積でき、地域における創業支援機能が拡充できるものと考える。

また、FVC では今後、これまで取り組んできた開業率を高める「創業支援ファンド」に加え、廃業率を

抑える「事業承継ファンド」、地域課題を解決する事業を生み出す「CSV(Creating Shared Value)ファ

ンド」 の「地方創生ポートフォリオパッケージ」の提供を通じて、地域の諸課題により幅広く取り組む予

定である。また、海外ネットワークの構築、起業支援メニューの充実により、これらのファンドで投資し

た事業、ビジネスモデルに丁寧なハンズオンを提供し、事業の永続化、事業の価値向上、地域経済の活性

化に貢献していきたい。

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I-125

過去 20 年で何が変わったか

本年度のベンチャー白書は、日本におけるベンチャー投資の持続的な成長を指し示している。投資額を

みても、ファンド組成額をみても、日本におけるベンチャー投資が、新たな段階に到達しようと感じる。

2015 年末から 2016 年始めにかけて、投資家の間には、これはバブルではないのか、またすぐに急降下

するのではないかと懸念する声があった。しかし少なくとも、しばらくの間は投資額、すなわち「カネ」

の側面からは、ベンチャー投資の活況は続くとみられている。

この背景にあるのは、一時的な景気変動や、政府の短期的な経済対策だけではない。インターネットの

黎明と時を同じくして登場した日本のスタートアップのコミュニティ、いわゆる「エコシステム」が、よ

うやく一定の規模と機能を備え始めたことが、この変化の源を作り出している。

筆者は、過去 3 年間にわたり、日本のスタートアップの調査を続けてきた。100 名を超えるスタートア

ップ経営者、ベンチャーキャピタリスト、ヘッドハンター、会計士、弁護士、税理士、弁理士など多様な

市場参加者のヒアリングを通じて見えてきたのは、スタートアップの創業と成長に不可欠な、「専門的経営

人材の蓄積」である。

これは、ベンチャー投資額やファンド組成額、もしくはマザーズの時価総額などの数字とは異なり、な

かなか捉えにくい変化である。しかしこの人材の蓄積という要因が、特に以下に述べるような如実な創業

環境の変化をもたらしてきた。

ファイナンスの媒介となる専門的経営人材

ベンチャー投資は、多様化している。過去には、大手数社のベンチャーキャピタルのみしか存在感をも

たず、その数社に投資を断られれば、成長の目を閉じられるという時代が続いた。しかし現在は、企業の

成長ステージごとに、多様な投資家がそれぞれ別の役割を持ってスタートアップの成長を支援している。

創業初期においては、アクセラレーターと呼ばれるような創業支援を行うプレイヤーが次々と登場して

いる。政府系の創業支援の充実も進み、企業の前段階での事業検討に当たっても、それを専門とするアド

バイザーが、未来の起業家を支援している。さらに、独立系ベンチャーキャピタルが、シード期にある有

望な事業にリスクをとって果敢に投資する。さらに成長を続けた事業には、銀行証券系のベンチャーキャ

ピタルが参画し、さらなる取引先拡大と、市場参加への準備支援を提供する。また、コーポレートベンチ

ャーキャピタルによる取引先紹介や、さらには事業買収の仲介も増えてきた。多様な資金源が、それぞれ

別々の専門性をもち、異なる成長段階にあるスタートアップの成長を互いに連携し合いながら支援するよ

うになった。

専門的経営人材の蓄積が、創業と成長を加速させつつある 慶應義塾大学総合政策学部准教授

琴坂将広

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I-126

中でも、一部の著名投資家や有力ベンチャーキャピタルは、投資の呼び水となるカタリスト(媒介)の

役割を果たしつつある。あの人が投資した、あのベンチャーキャピタルが投資したという情報は、以前か

ら投資家の間では信頼の通貨のように機能していた。これら情報がより影響力を強め、こうした事業の目

利きを行う優れた投資家や事業家が、良質な事業シーズの可能性を加速度的に引き上げている。

シリアル・エンプロイーの重要性

また、投資家の広がりと並行して、事業に実際に関わる人材のプールも着実にその規模を広げ、質を高

めつつある。特に重要なのは、事業を次々に立ち上げるシリアル・アントレプレナー(直訳では、連続起

業家)の陰に隠れ、しかしその傍らや背後で彼らに協力し支援する、シリアル・エンプロイー(直訳では、

連続従業員)の存在である。

シリアル・エンプロイーは、創業者ではない。しかし、スタートアップでの勤務経験が豊富であり、多

くの場合は事業の IPO や売却、いわゆる「exit」を体験している。スタートアップが直面する状況や、そ

れに対する対応策に熟知しており、成熟したスタートアップから、新興のスタートアップに、貴重なノウ

ハウを移転する媒体である。

事業をゼロからイチに立ち上げる人材。事業をイチからジュウに仕組み化する人材。事業をジュウから

ヒャクに組織化する人材。多様な人材が、何度かの成功と失敗を経験し、貴重な人材プールとしてスター

トアップのエコシステムに回流している。それらをチームとして取りまとめる優れた起業家は、一人で急

速な事業展開をなしえているのではなく、こうした経営人材のプールから、必要な機能を効率的に取得で

きるようになってきた。

依然として、大企業からの人材の流入は限定的であるという。そもそもの絶対数が限られていると同時

に、大企業で鍛えられるスキルと経験が、なかなかスタートアップでは役に立たないという事実がある。

しかし、大企業となりつつある老舗のスタートアップを緩衝材として、そうした人材がこのエコシステム

に参画することも増えてきた。

老舗のスタートアップが大量に採用する新卒の人材が、数年の時を経て、振興スタートアップに貴重な

労働資源を提供している。さらには、多様な働き方を許容する社会への変化が、複数のスタートアップに

週に数日程度のパートタイムで参画しながらもフリーランスであり続ける優良なエンジニアやデザイナー

の人材プールを作り上げつつある。

過去には、創業者は孤独であった。人材獲得は極めて難しく、成功するベンチャー企業は限られていた。

しかし、特にインターネットを中核として新たに形成されたこのスタートアップコミュニテイにおいては、

少しずつではあるが、創業者を支え、事業成長を加速させる、人的資源が蓄積されつつある。

人と人との交流を支える公式・非公式のコミュニティ

東京の渋谷がビットバレーと呼ばれた 1990 年代後半、今よりも閉じられた狭いコミュニティが、スタ

ートアップのつながりを可視化させていた。無論、今でも閉鎖的な側面は残る。しかし 2016 年の起業家

は、より幅広いオープンなコミュニティを通じて、人と人とのつながりに参画することができる。

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I-127

スタートアップ起業家のカンファレンスも数多く生まれてきた。 B-Dash、IVS、Tech in Asia、Slash Asia、

ICC、G1 Ventures など、多様な大規模イベントが開催され、その多くはコミュニティの外の人間であっ

ても参加が可能である。また小規模なイベントであれば、各地のコワーキングスペースでの講演会や、大

学のイベントなど、もはや無数に人との出会いの機会がある。

こうしたイベントや集まりを契機として知り合った起業家やその予備軍は、その後に少人数の勉強会を

開催したり、事業計画を練り込んだり、より密度の濃い集まりとなって情報交換を継続する。こうした情

報交換は、SNS のクローズドなコミュニティを介しても行われる。Exit に成功した企業の定款を分析する

コミュニティや、企業価値評価(バリューション)の実際の事例などの秘密情報を交換するコミュニティ

も存在する。

創業初期の段階から、投資契約の検討、訴訟対策に至るまで、こうした人的なつながりは大きく貢献し

ている。強いつながりである、友人や同僚のつながりはこれまでになく複雑に絡み合っている。そしてそ

れ以上に、弱いつながりである、知り合いの知り合いや、同僚の部下など、人づての連携をもが、現在は、

極めて有効に機能しつつある。

産業の広がりが、コミュニティの形を変えつつある

当初、パソコン上のインターネットを用いた事業を中核に成長してきたスタートアップのコミュニティ

は、今次第にその広がりを異分野に広げつつある。それは情報通信技術が、農業や漁業などの他分野へと

その応用範囲を広げつつあること、また新たな創業領域が、バイオやロボティクス、人工知能などの領域

に拡大しつつあることが背景にある。

インターネットを中核とする企業がその影響力を高めてきたのと同時に、こうして多くの事業分野にお

いて情報通信技術が必須の時代となり、これまで以上に多様なプレイヤーが、スタートアップの創業に関

わるようになりつつある。

オープンイノベーションとよばれるように、大企業もスタートアップ企業との連携を重視し始めた。事

業ノウハウの蓄積が進み、創業の初期から大規模調達を行い海外展開に乗り出す事業も少しずつ観測され

るようになってきた。

幾多の困難、停滞期を乗り越え、日本のスタートアップのコミュニティは確かな姿を作り出しつつある。

こうした変化が順調に続けば、日本経済全体に対しても活力をもたらす、大きな流れにつながるだろう。

• 付記1 本稿執筆の基礎となる著者個人の調査研究活動の一部は、JSPS 科研費(15K17131) および The

European Union’s Horizon 2020 research and innovation programme under the Marie Skłodowska-Curie

grant agreement No 645763 の助成を受けたものです。ご支援に深く感謝を申し上げます。

• 付記2 本稿は筆者がオックスフォード大学の酒向真理 (Mari Sako) 教授と共同で作成した学術論文「THE

EVOLUTION OF THE ICT START-UP ECO-SYSTEM IN JAPAN: FROM CORPORATE LOGIC TO VENTURE

LOGIC? 」での議論と発見をもとに構成しています。

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ベンチャーがこれまでの想定を超える機器やサービスを現実社会で広めようとするとき、従来の規制が

立ちはだかることがある。

最近の報道に出てくるものとしては、ドローンの飛行に関する航空法や電波法の規制、民泊に関する旅

館業法の規制がある。

2016 年 1 月、つくば市主催のロボット特区に関するフォーラムが開催された。テーマは、特区を活用

した、Segway や Winglet といった搭乗型移動支援ロボットの規制緩和である。市長も指摘するように、

重要なことは、文部科学省や経済産業省のようなベンチャー推進官庁ではなく、道路交通法を所管する警

察庁及び道路運送車両法を所管する国土交通省といった規制官庁の担当官が特区を活用した規制緩和につ

いて説明したという点である。

19 世紀のイギリスに「赤旗法」という興味ある規制があった。当時はまだ蒸気自動車の時代であったが、

規制当局としては馬車に代わるこの新たな乗り物をどのように扱ったものか相当悩んだようであり、1865

年の法律で、安全のため、蒸気自動車の時速を郊外では 6.4 キロ、都市部では 3.2 キロ以下に規制すると

ともに、赤旗を携行した保安要員を車両の前に歩かせることとした。このような厳しい規制の結果、イギ

リス自動車産業はライバルのドイツやフランスに後れを取る結果となったと言われている。もちろんその

後イギリスでも徐々に規制緩和を進めていくのであるが、時すでに遅しとなってしまった。

つくば市ではこの規制緩和を特区を活用することにより 4 年で一定の成果を上げることができたという

ことである。2011 年に「構造改革特区」として「つくばモビリティロボット実験特区」の指定を得て、実

証実験を繰り返し、規制官庁の理解を得ながら2015年には特区の規制緩和を全国展開できるようにした。

規制緩和は何段階かに分けて徐々に行われたが、最初の段階では幅員 3 メートル以上の歩道で、カラー

コーンを置いて実験場所を特定し、保安要員は別途自転車にのって監視しなければならないというもので

あった。保安要員は自転車でわざとゆっくりついて走っていたと言う。何か「赤旗法」の保安要員を思い

起こさせる図ではないか。

だんだんカラーコーンは必要なくなり、横断歩道も搭乗したまま渡れるようになり、保安要員は Segway

等の搭乗者自身が担うことでよくなり、歩道の幅員制限もなくなった。

規制当局としてはあくまでも新しいモビリティロボットが安全に、一般の通行者や車社会に違和感なく

受け入れられるかどうかを見守りながら徐々に規制を緩和していったということである。

シンガポールでは自家用車の取得に強い規制があることも手伝って、このようなモビリティロボットが

先に通勤等に利用されるようになっており、遅ればせながら公道での走行規制をこれから定めていくとい

うことであり、日本での対応はいかにも日本的というか、規制を緩和することを特区を活用して実証実験

ベンチャーと規制緩和

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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しながら決めていくというアプローチである。しかし、規制当局も新たな乗り物の意義をよく理解し、特

区の活用という有効な手段を使い、4 年でその規制緩和を全国展開することができたのはこれから新たな

機器やサービスを展開していこうとするベンチャーにとっては朗報といえるかも知れない。

もっとも、誰でも公道で Segway 等を乗りこなせるかというとまだそこまではいっておらず、現状では

あくまで自治体が中心となって地方運輸局の許可を取った実証実験だけが認められており、また、つくば

市での実験で怪我等の事故がなかったことが前提であり、さらなる規制緩和はこれからの全国展開の実験

結果次第となろう。

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I-130

2016 年 4 月 20~22 日に幕張メッセで開催された(一社)日本能率協会主催の「国際ドローン展」に

足を運んでみた。会場にはドローンメーカーのブースのみならず、警備保障会社のドローンを活用した防

犯システムのブースもあり、来場者で賑わっていた。実際にドローンを飛行させるデモンストレーション

コーナーもあり、「ブーン」というドローン独特の飛行音で雰囲気を盛り上げていた。

ドローンの弱点として風雨の影響と物資運搬手段とする場合の積載量の限界を考えていたが、最近のド

ローンは全天候型で、かつ、最大積載量 30 キロという大型機も登場し、空撮のみならず、水面に着水して

水中撮影もできるものまであった。AI を活用すれば悪天候の中でも自ら判断して最適な飛行方法を見つけ

ることができるという研究もなされている。ドローンメーカーからの相談を受け、ソリューションを提供

するコンサルタント業務をこなす企業も既に出現しているということだ。

ドローンは単に空中を飛ぶだけのものではなくなり、いかに産業用やインフラ点検用、災害調査用等と

して実社会に活用していくかという段階に入ってきている。

ちょうど 1 年前、総理官邸の屋上に黒塗りのドローンが不時着して世間を騒がせたが、そういうことの

ないようにいかに規制をかけるのかも大きな課題である。会場では特別講演の中に国土交通省と総務省の

担当課長による航空法及び電波法関係のドローン規制についての説明があった。特に前者については椅子

が足らずに大勢の立ち見参加者が出るほどの関心の深さがあった。

それぞれの規制の詳細は各省のホームページに譲るが、共通して感じられたのは、①リスクに応じた規

制のかけ方を工夫すること(法律による許認可かガイドラインか業界の自主規制か等)、②関係省庁、メー

カー、利用者等、幅広い構成員から成る官民協議会を立ち上げ、単に規制するだけではなく、新産業の創

出や国民生活の質の向上という観点に配慮した進め方をしていること、③国際的なルールとの協調性を図

っていることである。

考えてみればこのような取り組み方法は、経済産業省が長年我が国の産業を育成していく際に実施して

きたやり方である。国土交通省や総務省といった規制官庁がこのような方法論を取り始めたことは評価に

値する。実は同じようなことが労働行政にも言える。数年前に職業安定局の派遣・有期労働対策部の中に

民間人材サービス推進室が設けられたのである。これも規制一辺倒からいかに民間の人材サービス産業を

育成していくかという全く新しい政策観点を取り入れたものである。もちろんこうした取り組みが成功す

るかどうかは何年か後に検証してみるしかないが、とにかく政策立案の方向性に変化がみられることに対

しては評価したい。

規制の国際協調も重要である。これからのベンチャーは国内市場だけを狙うのではなく最初からグロー

バル市場に打って出る born global という観点が必要であるとは最近日本のベンチャー関係の学者から出

ている掛け声である。その際に国によって規制が異なるようでは困るのである。

ドローン規制

ベンチャーエンタープライズセンター

理事長 市川隆治

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総理官邸の事件からわずか 1 年で関係省庁の取組がここまで進んできたのは大いに評価していいのでは

ないだろうか。大地震に際して寸断された道路を尻目にドローンが必要物資を集積所から避難所に届ける

ことができる日ももうすぐだ。

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I-132

ベンチャー創出は教育から

2016 年 3 月、東京大学が初めて実施した推薦入試で、高校時代からアプリを開発し、ベンチャーを経

営していた学生が合格した。これまでも中学や高校のころから起業する学生はいたが、在籍する学校から

は必ずしも歓迎されない場合もあったが、今回の推薦合格で、“お墨付き”を得た格好。起業家教育の追い風

になりそうだ。

アプリ開発を通じた起業家教育に取り組むのはライフイズテック(東京都港区)。中高生を対象にワーク

ショップやコンテストを運営している。サイバーエージェントとのジョイントベンチャーでは小学生向け

も手がける。このほど、電通や伊藤忠商事系のベンチャーキャピタルおよびサッカーの本田圭佑選手のフ

ァンドから資金調達し、教育 SNS の開発に取り組む。

日本政策金融公庫や日本取引所グループなど公的機関も起業家の裾野拡大のため、高校生向けの出前授

業やコンテスト、起業体験プログラムを運営している。

起業家を生み出すことで知られているフィンランドやイスラエル。その秘訣は若い時期からの起業家教

育にあるとされる。フィンランドでは 20 年ほど前から注力している小学校段階のビジネス教育が今日の

起業家の層の厚さを生み出している。イスラエルではサービス開発に不可欠なプログラミングを小学生の

頃から教え込む。起業家教育には長期視点での取り組みが必要だ。

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I-133

ベンチャー企業、地方へ 地方での起業、促進の動きも

2016 年 10 月 3 日、岡山県西粟倉村や宮城県気仙沼市、同県石巻市、徳島県上勝町など全国の 8 市町

村がタッグを組む「ローカルベンチャー推進協議会」が9月の設立後初となるセミナーを開催した。300

人を超える聴講者が集まり、将来の地方での起業を視野に熱心に講義に聞き入っていた。

同協議会の事務局は、若い世代の起業支援で実績のある NPO 法人 ETIC.が務める。この日のセミナーに

とどまらず、事業計画の作成方法など起業に必要な知識を専門家が教えるほか、先輩起業家が経験談を語

る講座などを開催する予定だ。

宮崎県日南市は東京都などからのベンチャー呼び込みに熱心だ。30 代の若手市長がベンチャー勤務経験

者を「マーケティング専門官」に起用。ベンチャーの気持ちに寄り添い、誘致のための制度や施設を拡充

している。

地方のスタートアップ支援では、創業特区の福岡市やドローン特区の千葉市や仙台市があるが、さらに

多様な支援策が増え、選択肢が広がる。

自治体からの取り組みの一方、ベンチャー側も地方との連携に関心を寄せている。2015 年発足した「熱

意ある地方創生ベンチャー連合」には、33 社・団体が参加している。2016 年 2 月には三重県やスタート

アップ都市推進協議会とともに、「MIE 地方創生ベンチャーサミット 2016」を開催した。

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I-134

ベンチャー倒産、水面下で休眠も相次ぐ

写真共有サービス「Snapeee(スナッピー)」を手がけていたマインドパレット(東京都港区)が 2016

年 5 月下旬、債務整理を弁護士に一任した。事実上の倒産で、同社ホームページには当時、「Snapeee は

2016 年 5 月 31 日(火)をもちましてサービスを終了させていただくこととなりました。急な告知となり

ましたこと、またサービス終了に伴いご不便をお掛けすることを心よりお詫び申し上げます。」と掲載され

た。

スナッピーは 2011 年にサービスを開始。グリーや講談社のほか、グローバル・ブレインなど有力なベ

ンチャーキャピタルから資金調達して先行投資を続けていた。アジア各国の女性を中心に人気を博し、

1,100 万超のダウンロードを達成した。

しかし、写真共有では米インスタグラムが大きなシェアを獲得し、規模の面で見劣りする状況に陥った。

マネタイズも決してうまくいったとは言えなかった。2011 年 9 月期は 1,192 万円の赤字、2014 年 9 月

期は 1 億 7,427 万円の赤字と、先行きの見通しは不透明感を増した。その結果、追加の資金調達も困難と

なり、今回の事態になった。

ベンチャー企業は、借入金がない場合も多く、業績不振でも倒産という形にはなりづらい。大幅な人員

削減や大胆な事業転換で、実態としては一旦、“倒産”しているようなケースは増えているとみる向きも少な

くない。

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I-135

付録

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1. 政府・関連団体のベンチャー支援

2013 年に公表された、政府の「日本再興戦略」(成長戦略)の目玉の一つがベンチャー支援で

あった。2015 年の改定時には、戦略のカギとなる施策として「ベンチャー創造の好循環」の確

立が打ち出された。

●「ベンチャー創造の好循環」の確立

ベンチャー企業による新産業の創出に向け、特に、グローバルに通用するベンチャー企業の育成が不

可欠。国内マーケットからグローバルマーケットにチャレンジする、あるいは海外で起業し海外から国

内マーケットや国内プレーヤーに変革をもたらすグローバルベンチャー企業が発生するメカニズム(グ

ローバル・ベンチャーエコシステム)を構築する。

そして 2016 年 4 月には、2020 年を一つの目標とし、我が国が目指すべきベンチャー・エコシ

ステムの絵姿として、「ベンチャー・チャレンジ 2020」において以下の柱がとりまとめられた。 ・地域と世界を直結する。 目線を常に世界において、世界で通用するベンチャーの輩出につなげるとともに、世

界に先駆けて顕在化する我が国地域の課題をイノベーションにつながるビジネスニー

ズとして世界につなげていく。 ・大学・研究機関・大企業等の潜在力を最大限発揮する。 既存プレーヤーからヒト・モノ・カネ等の積極的な投資を実現し、民間による自律的

なイノベーションエコシステムを構築する。 あわせて、これらの実現に向けて、世界のベンチャー・エコシステムとの連携体制の構築や「攻

め」の地方案件の発掘、政府関係省庁による関係施策の一体的な実施等が政策対応の方向性とし

て位置づけられた。

詳細についてはパンフレット参照:「ベンチャー・チャレンジ 2020」(2016 年 4 月日本経済再生本部決定) http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2016/seicho_senryaku/venture_challenge2020.pdf

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さらに、同年 6 月発表の「日本再興戦略 2016 ―第 4 次産業革命に向けて―」においてもこ

の取組の推進等が位置付けられ、新たな成果目標として「ベンチャー企業への VC 投資額の対名

目 GDP 比を 2022 年までに倍増とすることを目指す」ことが定められた。

「日本再興戦略 2016 ―第 4 次産業革命に向けて―」における記載事項(抜粋)

・世界のベンチャー・エコシステムとの国際連携体制の構築

「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」(※)の質の向上・拡充

・「攻め」の地方案件の発掘

地方への案件発掘キャラバン、「地方版 IoT 推進ラボ」等の実施

・地域の有望ベンチャー企業の発掘から世界市場の挑戦まで一気通貫で支援する体制構築

関連省庁が一体となったより効果的な支援策を議論する政府関係機関コンソーシアムの設置

政策実施に民間のセンスやネットワークを取り入れるための民間専門家から構成される

アドバイザリーボードの設置

・民間による自律的なイノベーションエコシステムの構築支援

大学による、組織を挙げた産学連携体制の構築及び知財マネジメントの徹底

今後は、日本再興戦略 2016 に位置づけられたこれらの方針を着実に実行し、自然発生的にベ

ンチャーが生まれ育っていく好循環を構築、持続していく必要がある。 ※シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト

2015 年 4 月、安倍首相がシリコンバレーを訪問し、スタンフォード大学で開催されたシンポ

ジウムの冒頭スピーチにおいて、「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を発表した。

プロジェクトの実施状況は以下のとおり。

シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト

プロジェクト内容 これまでの成果(2016 年 7 月現在)

企業の

架け橋

ロボット、バイオ、医療等の中小・中堅企業・

ベンチャー企業を派遣

(5 年で 200 社程度を派遣予定)

米国のイノベーション先端地域に中小・中

堅・ベンチャー企業を派遣し、現地企業との

交流等を実施

人材の

架け橋

大企業内の新事業担当者や起業家等を派遣 〔I-145 ページ「グローバル起業家等育成プログラム」参

照〕

国内プログラムを経て選抜された 20 名をシ

リコンバレーに派遣し、マインドセットやス

キルを体得するとともに現地の投資家や起業

家とのネットワークを形成

機会の

架け橋

東京とシリコンバレー双方でビジネスマッチ

ングイベントやシンポジウムを開催

アジア最大級のビジネスマッチングイベント

や、日米の VC の交流イベント等を実施

2016 年も本プロジェクトは継続され拡充のための検討が進んでおり、2016 年 7 月現在は、今

年度のプロジェクトの第一弾として、人材の架け橋である「グローバル起業家等育成プログラム」

が開始されている。

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I-138

ここ 1 年、経済産業省を中心としてベンチャー支援策が公表されている。経済産業省は下記に

挙げる総合的対策を打ち出すとともに、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人日本

貿易振興機構、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、国立研究開発法人産業

技術総合研究所、および独立行政法人情報処理推進機構でもベンチャー支援の事業を行っている。

また、経済産業省所管以外の省庁でもベンチャー支援策を打ち出している。以下に、各省庁お

よび関連団体の取り組みについて記す。

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I-139

政府・関連団体のベンチャー支援一覧

運営元 実施内容

経済産業省

関連

経済産業政策局 新規産業室

ベンチャー有識者会議

産業競争力会議でのベンチャー政策の提案

ベンチャー創造協議会

ベンチャー・大企業連携イベント

グローバル起業家等育成プログラム

中堅・中小企業等イノベーション創出支援プログラム

エンジェル税制

企業のベンチャー投資促進税制

大学・大学院起業家教育推進ネットワーク

中小企業庁 創業スクール

官公需法の一部改正

独立行政法人

中小企業基盤整備機構

ベンチャーへの成長資金供給

Japan Venture Awards

インキュベーション施設の提供

「ベンチャー投資ナビ」サイトの運営

創業・新事業支援施設「BusiNest」の運営

新ビジネス創発拠点「TIP*S」の運営

独立行政法人

日本貿易振興機構(JETRO)

日本発知財活用ビジネス化支援事業

「ジェトロ・イノベーション・プログラム」

GITEX 2016 Global Startup Movement ジャパン・パビリオン

中小企業等外国出願支援事業

国立研究開発法人

新エネルギー・産業技術総合

開発機構(NEDO)

新エネルギーベンチャー技術革新事業

研究開発型ベンチャー支援事業

課題解決型福祉用具実用化開発支援事業

戦略的基盤技術高度化支援事業(プロジェクト委託型)

中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業

追加実証・用途開拓研究支援事業~サンプルづくり支援事業~

オープンイノベーション協議会

国立研究開発法人

産業技術総合研究所(AIST)

スタートアップ開発戦略タスクフォース

カーブアウト事業

ベンチャー技術移転促進措置

産総研の設備・特許等の現物出資

独立行政法人

情報処理推進機構(IPA) 未踏会議

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I-140

(出所:VEC 作成)

主に 2015 年度~2016 年度に実施された、ベンチャー支援を中心的な狙いとする項目を掲載し

た(先駆的な支援策については、従来から継続して実施されている項目についても掲載)。

運営元 実施内容

内閣府 地方創生推進室

国家戦略特区(起業・開業関連の取組)

「雇用労働相談センター」の設置

「東京開業ワンストップセンター」の設置

総務省

関連

情報通信国際戦略局 独創的な人向け特別枠「異能 vation」プログラム

ICT イノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge!)

国立研究開発法人

情報通信研究機構(NICT)

起業家甲子園

起業家万博

文部科学省

関連

科学技術・学術政策局 グローバルアントレプレナー育成促進事業 (EDGE プログラム)

高等教育局 官民イノベーションプログラム

国立研究開発法人

科学技術振興機構(JST)

大学発新産業創出プログラム(START)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)

大学発ベンチャー表彰~Award for Academic Startups~

厚生労働省 政策統括官付労働政策担当

参事官室

生涯現役起業支援助成金

医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会

農林水産省 食料産業局 6次産業化・新産業創出促進事業(事業化可能性調査)

政府系

金融機関

株式会社日本政策金融公庫

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

新株予約権付融資制度

高校生ビジネスプラン・グランプリ

株式会社日本政策投資銀行 DBJ 女性新ビジネスプランコンペティション

官民ファンド

株式会社産業革新機構 ベンチャーへの成長資金供給

株式会社地域経済活性化支援機構 地域経済の活性化に資するベンチャー等への成長資金供給

および経営支援

株式会社海外需要開拓支援機構

(クールジャパン機構) 海外需要開拓に関するベンチャー等への成長資金供給

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I-141

経済産業省

経済産業省 経済産業政策局 新規産業室では、ベンチャー支援のために、ベンチャー有識者

会議のとりまとめや「日本再興戦略」で示された成果目標の達成に向けたベンチャー政策の企

画・立案・実施、ベンチャー創造協議会設立、ベンチャー支援人材のネットワーク構築、起業応

援の税制の整備、などの取り組みを実施している。

①ベンチャー有識者会議

2013 年 12 月~2014 年 3 月の間、ベンチャー企業の創出を促進するため有識者会議を 3 回開催

し、ベンチャー支援の課題とその対応策の検討を行い、2014 年 4 月にとりまとめ資料を公表し

た。 【開催】 第 1 回:2013 年 12 月 4 日

第 2 回:2014 年 1 月 27 日

第 3 回 :2014 年 3 月 31 日

とりまとめ公表:2014 年 4 月 14 日

ベンチャー有識者会議のとりまとめ

(出所:経済産業省「ベンチャー有識者会議とりまとめ」)

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I-142

【有識者メンバー】

伊佐山 元:WiL 代表 (元 DCM パートナー)

冨山 和彦:㈱経営共創基盤 代表取締役

孫 泰蔵:MOVIDA JAPAN(株) 代表取締役

南場 智子:㈱ディー・エヌ・エー 取締役 ファウンダー

長谷川 博和:早稲田大学ビジネススクール 教授

堀 義人:グロービス経営大学院 学長

御立 尚資:ボストンコンサルティンググループ日本代表

矢島 里佳:㈱和える 代表取締役

②産業競争力会議でのベンチャー政策の提案(2013 年度~2014 年度)

ベンチャー有識者会議のとりまとめを受けて、成長戦略の企画および立案並びに総合調整を担

う司令塔となる日本経済再生本部の下に開かれた第 3 回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同

会議において、茂木経済産業大臣は下表タイトルの資料を説明した。この会議において、ベンチ

ャー政策については経済産業大臣の下で、成長戦略の改訂に向けた検討を進めることとなった。

経済産業省「ベンチャー創造の好循環の実現に向けて」の提示項目

項目 説明内容

1.日本経済全体での

ベンチャー創造

(1) ベンチャー創造協議会の創設

(2) 出口戦略としての M&A 促進

(3) ガバナンス強化等によるスピンオフ、カーブアウトの促進

(4) 官民ファンド・クラウドファンディングによるベンチャー投資の加速

2.大胆な制度改革

(1) 政府調達におけるベンチャー活用の推進

(2) ベンチャーへの思い切った税制措置等

(3) 公的・準公的資金の運用等見直し

(4) 国家プロジェクトによるベンチャー支援

3.人材:

挑戦するベンチャー

を支える意識改革・

起業家支援

(1) 初等教育からの起業家教育

(2) 大学・大学院における実践的起業家教育

(3) ベンチャー支援人材 10 倍増

(4) ベンチャー表彰制度による意識改革

(5) ダイバーシティを活かす起業家支援 (出所:「ベンチャー創造の好循環の実現に向けて」-2014 年 4 月 16 日、茂木経済産業大臣提出資料-

日本経済再生本部「第 3 回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」にて説明)

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I-143

③ベンチャー創造協議会設立

2014 年 4 月に①の「ベンチャー有識者会議とりまとめ」に記された「我が国ではベンチャー

が数多く起業し、成長する環境が整っていない」という課題を解決するべく、社会全体で新しい

挑戦をする、という大きな視点の下、大企業・中堅企業とベンチャー企業の連携等を促進し、日

本での「ベンチャー創造の好循環」を生み出すための取り組みとして、2014 年 9 月に開かれた

ベンチャー創造協議会設立カンファレンスにおいて、小渕経済産業大臣が「ベンチャー創造協議

会」の設立を宣言した。 大手企業、ベンチャー企業、VC、弁護士・会計士・税理士等のベンチャー支援機関、金融機

関、大学、政府関係機関等に対して広く参加を募り、マッチングイベント、人材育成プログラム

の情報共有の場の提供を行う等により社会全体でのベンチャー創造の大きな運動を起こすこと

を目指している。

2015 年から、毎年1回、ベンチャー創造協議会主催で「日本ベンチャー大賞」表彰式が開催

され、安倍首相から日本ベンチャー大賞受賞者に対して内閣総理大臣賞の授与が行われた。

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I-144

④ベンチャー・大企業連携イベント

2015 年~2016 年のベンチャー支援事業として、経済産業省主催・後援で以下のイベントが開

催された。

経済産業省ベンチャー支援イベント

イベント 開催日 会場 備考 第 1 回日本ベンチャー大賞表彰式 2015 年 1 月 ホテル

ニューオータニ 全国から寄せられた 153 件の応募の中から、内閣総理大臣賞(日本ベンチャー大賞)1 件、経済産業大臣賞 2 件、審査委員会特別賞 2 件を選出。

新事業創造支援カンファレンス& Connect!

ベンチャー創造協議会、経済産業省、JNB、NBC 主催。政策研究大学院大学、(一社)Japan Innovation Network 共催。「オープンイノベーション」「新規事業創造」をテーマとしたイベント。

第 3 回 TOKYO イノベーション リーダーズサミット

2015 年 10 月 虎ノ門ヒルズ TOKYO イノベーションリーダーズサミット実行委員会主催・経済産業省後援。大企業112社と次世代ベンチャー企業488社が一堂に会する事業提携イベント。

日米 VC カンファレンス MOMENT2015

2015 年 10 月 スタンフォード大学

シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクトの一環として、米国スタンフォード大学にて開催。シリコンバレーの VC と日本を代表する VC やベンチャー関係者など幅広い参加者が集い、ベンチャーの未来を語るカンファレンス。

第 2 回日本ベンチャー大賞表彰式 2016 年 2 月 首相官邸 全国から寄せられた 87 件の応募の中から、内閣総理大臣賞(日本ベンチャー大賞)1件、経済産業大臣賞 2 件、審査委員会特別賞 3 件を選出。

新事業創造支援カンファレンス& Connect!

ホテル ニューオータニ

ベンチャー創造協議会、経済産業省、JNB、NBC 主 催 。( 一 社 ) Japan Innovation Network 共催。「オープンイノベーション」「新規事業創造」をテーマとしたイベント。

日米 VC カンファレンス MOMENT2016

2016 年 9 月 虎ノ門ヒルズ シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクトの一環として、東京にて開催。シリコンバレーのVCと日本を代表するVCやベンチャー関係者など幅広い参加者が集い、ベンチャーの未来を語るカンファレンス。

第4回 TOKYO イノベーション リーダーズサミット

2016 年 10 月 虎ノ門ヒルズ TOKYO イノベーションリーダーズサミット実行委員会主催・経済産業省後援。大企業150社と次世代ベンチャー企業600社が一堂に会する事業提携イベント。

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I-145

⑤グローバル起業家等育成プログラム(2016 年度当初予算事業)

グローバル市場への進出や社会課題の解決といった目線の高い新事業を創出する起業家や、大

企業等で新事業開拓を担う社内起業家の育成を図る。

グローバル起業家等育成プログラムの公募

項目 内容 事業目的 ・シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクトの一環として、グローバル市場への進出や社会

課題の解決といった目線の高い新事業を創出する起業家や、大企業等で新事業開拓を担う社内起業家に対し、イノベーションを起こすために有効なメソッドとマインドセットを体得させ、次世代のイノベーションを担うコア人材を育成する。

事業概要 ・審査を通過した 126 名に全7回の国内プログラムを受講してもらい、特に優秀な 20 名をシリコンバレーに派遣する。

・国内プログラムでは、経験が豊富な実務家が講師・メンターとして参加。事業や組織の改革を通じて、イノベーションを起こすのに必要なスキル・ノウハウを体得。

・シリコンバレープログラムでは、自らが立案・策定した事業計画を、シリコンバレーのメンターや起業家にプレゼン。対話を通じて、国内で得たスキルをリアルな場で実践し、イノベーターとしてのマインドセットを体得。

参加者公募期間 2016 年 4 月 27 日~2016 年 5 月 31 日 担当部署 経済産業省 経済産業政策局 新規産業室

⑥中堅・中小企業等イノベーション創出支援プログラム(2016 年度当初予算事業)

高い技術力を持つ中小・中堅・ベンチャー企業等をイノベーション先端地域である米国シリコ

ンバレー等に派遣し、グローバル展開の知見とネットワークを獲得し、新しい事業展開を推進す

る機会の創出を図る。

中堅・中小企業等イノベーション創出支援プログラムの公募

項目 内容 事業目的 ・シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクトの一環として、高い技術力を持つ中小・中堅・

ベンチャー企業等をイノベーション先端地域である米国シリコンバレー等に派遣し、現地のベンチャー関係者等からのアドバイスや意見交換などによって、派遣された企業経営者等が自身の事業をグローバルの視点から磨くとともに、グローバル展開の知見とネットワークを獲得し、新しい事業展開を推進する機会の創出を図る。

事業概要 ・グローバル展開を視野に入れ、米国シリコンバレー等のネットワークにより事業をスケールさせる大きなビジョンを有する企業など 60 社程度を選定。

・派遣企業の事業展開の推進に寄与すると考えられる知見、ノウハウ等について、シリコンバレー等への派遣前後において効果的な研修プログラム等を実施。

・選定した 60 社程度の中小・中堅・ベンチャー企業等を、1週間から2週間程度、米国シリコンバレー等に派遣。米国シリコンバレー等のベンチャー支援機関等からのアドバイスや意見交換などを実施するとともに、現地企業とのネットワーキングや商談の機会を提供。

参加者公募期間 2016 年度内 担当部署 経済産業省 経済産業政策局 新規産業室

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I-146

⑦エンジェル税制

一定の要件を満たすベンチャー企業に対してエンジェル投資をする投資家を税制優遇。 優遇 A: 株式投資額の所得控除による減税

(設立 3 年未満の企業) 優遇 B: 株式投資額の株式譲渡益からの控除による減税

(設立 10 年未満の企業) 株式の売却損が出た場合、他の株式譲渡益と通算(3 年繰り越し可能)

※一定の要件を満たす会社の新規発行株式を取得した場合が対象 優遇 A は控除上限(所得金額の 40%または 1000 万円)あり。優遇 B は上限なし。 エンジェル税制の利用が必ずしも当初の期待どおりには広く浸透していないことを受けて、経

済産業省ではエンジェル税制に関するホームページの改定や、「エンジェル税制要件判定シート」

を作成するなど、利用促進を図っている。 また、第五次地方分権一括法の施行に伴い、平成 28 年 4 月 1 日よりエンジェル税制の申請・

相談窓口が都道府県に変更された。窓口が都道府県庁となることで、申請者・相談者の利便性の

向上が期待されるとともに、都道府県が実施する創業・ベンチャー支援策、中小企業施策と併せ

て実施することにより、地域の実情に即した支援策の提供が期待される。

⑧企業のベンチャー投資促進税制

ハンズオン支援能力のある認定 VC ファンドを通じてベンチャー企業に資金供給を行う企業

に税制上の優遇を行う。ベンチャー投資資金の 8 割を損失準備金として損金計上を認める。 経済産業省はこれまでにベンチャーファンドの産業競争力強化法に基づく「特定新事業開拓投

資事業計画」を 6 件認定した(詳細は経済産業省ホームページ参照)。

⑨大学・大学院起業家教育推進ネットワーク

日本の起業家教育の質を向上させるため、大学・大学院の教員や実務家とともに「大学・大学

院起業家教育推進ネットワーク」を組織し、教授法や教材の情報共有、大学・大学院と産業界と

の連携を推進している。その一環として、起業家教育実施校による全国規模のビジネスプランコ

ンテスト「University Venture Grand Prix」を開催している。

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I-147

中小企業庁

①創業スクール

中小企業庁では、現状 4.9%の開業率を米国・英国レベルの 10%台に向上するため、全国各地

の実施機関において、創業希望者の基本的知識の習得からビジネスプランの策定までを支援する

「創業スクール」事業を、2014 年度から実施している。2016 年度も引き続き実施しており、全

国で 136 コースを開講する予定である。

(出所:中小企業庁)

創業スクール 2015 年度実績

項目 内容

概要

地域において新たに創業を予定している人、第二創業を予定している人等を対象に、経営、マーケティング、会計、税務等のカリキュラムを用意し、創業時に必要となる知識・ノウハウの習得や、ビジネスプランの作成支援を実施することで、創業に向けたサポートを行う。

開講場所/コース数 開講場所:全国 190 校 開講コース数:全 256 コース

受講者数 3,050 名 受講料

ベーシックコース/女性起業家コース 10,800 円(税込) 第二創業コース 5,400 円(税込)

運営 地域の教育機関や商工会議所などに委託して運営 2015 年度地域創業促進支援事業管理事務局(株式会社パソナ内)

担当部署 中小企業庁 経営支援部 創業・新事業促進課

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I-148

②官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)

中小企業庁では、2015 年通常国会において「官公需についての中小企業者の受注の確保に関

する法律(官公需法)」を改正し、新たに創業 10 年未満の中小企業者を新規中小企業者と定義し、

受注機会拡大のため各種施策を実施している。

官公需法における「新規中小企業者」に関する内容

項目 内容

法律の趣旨 経済の好循環を全国に波及させるため、創業間もない中小企業の官公需の受注促進を図る

主な概要

創業から 10 年に満たない中小企業者(新規中小企業者)の受注機会の拡大を図るため、 ・新規中小企業者への配慮を法定 ・新規中小企業者向け契約目標の設定や受注機会増大のための措置等を盛り込んだ「国

等の契約の基本方針」を策定 ・各省各庁の長等がそれぞれの実態に応じて、新規中小企業者等との契約に関する「契

約の方針」を策定 ・各省各庁の長等に対して新規中小企業者との契約実績の経済産業大臣への通知を義務

付け、経済産業大臣はその内容を公表 新 規 中 小 企業 者 向 け 契約目標・実績

<目標>官公需総額に占める割合を、2014 年度(推計 1%)と比べ、3 年間で倍増とするよう努める。

<実績>2015 年度実績 契約金 1,190 億円、契約比率 1.67% 担当部署 中小企業庁 事業環境部 取引課

(出所:中小企業庁)

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I-149

独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では、2010 年 7 月にファンド出資事業の

見直しを行い、「起業支援ファンド」「中小企業成長支援ファンド」「中小企業再生ファンド」

の 3 事業に再編している。

このうちベンチャー企業への投資に関するものは、「起業支援ファンド」と「成長支援ファン

ド」であり、個々のファンド総額の 50%(絶対金額では 60 億円)を上限に LP 出資している。 中小機構は継続的にファンドに LP出資することで、呼び水機能としての役割を果たしている。

中小機構の起業・成長支援ファンド

1.ファンド組成:中小機構はLP としてファンド総額の 1/2以内を出資 2.投資対象:主に創業または成長初期の段階にある中小企業者、および新たな成長・発展を目指す中小企業者 3.支援方法:株式や新株予約権付社債の取得等による資金提供

中小機構ファンド出資の推移

(出所:中小機構資料)

(注1)中小企業再生ファンド及び産業復興機構を除く (注2)中小機構出資契約時の金額を記載(四捨五入) (注3)中小企業成長支援ファンドはバイアウトファンドへの出資も含む

【出資ファンド総額】 (百万円)

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度2016年度6月末時点

3,000 3,270 935 4,750 9,184 4,54058,855 42,492 61,289 75,866 66,003 3,80061,855 45,762 62,224 80,616 75,186 8,340

【機構出資約束金額】 (百万円)

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度2016年度6月末時点

1,400 1,500 450 2,000 3,350 1,50021,000 14,400 26,440 24,150 22,190 1,50022,400 15,900 26,890 26,150 25,540 3,000

中小企業成長支援ファンド

種 別

起業支援ファンド

合 計

種 別

合 計

起業支援ファンド

中小企業成長支援ファンド

(出所:中小機構資料)

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I-150

中小機構ファンド出資額の推移

(注 1)中小企業再生ファンド及び産業復興機構を除く (注2)中小機構出資契約時の金額 (注3)中小企業成長支援ファンドはバイアウトファンドへの出資も含む

中小機構出資ファンド組成総額と中小機構出資額

(注 1)中小企業再生ファンド及び産業復興機構を除く (注2)中小機構出資契約時の金額 (注3)中小企業成長支援ファンドはバイアウトファンドへの出資も含む

210.0

144.0

264.4 241.5 221.9

15.0

14.0

15.0

4.520.0

33.5

15.0

(224.0)

(159.0)

(268.9)(261.5) (255.4)

(30.0)

0

50

100

150

200

250

300

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年6月末時点

(億円)

起業支援ファンド 中小企業成長支援ファンド

(出所:中小機構資料、VEC作成)

618.6

457.6

622.2

806.2 751.9

83.4

224.0 159.0268.9 261.5 255.4

30.0

36% 35%

43%

32%34% 36%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

0

200

400

600

800

1000

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年6月末時点

(億円)

中小機構が出資しているファンドの組成総額 中小機構出資額 出資比率(中小機構コミット率)

(出所:中小機構資料、VEC作成)

中小企業成長支援ファンド 起業支援ファンド

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I-151

中小機構出資ファンド一覧(2014 年度~)

(出所:中小機構資料)

(注)中小企業再生ファンドを除く

機構加入年度

ファンド名 ファンド種類 機構加入月 ファンド運営者

AT-Ⅰファンド投資事業有限責任組合 起業支援 2014年5月 グリーベンチャーズ㈱/天野雄介/堤達生

Global Catalyst Partners Japan投資事業有限責任組合 成長支援 2014年8月グローバル・カタリスト・ベンチャー・マネジメント・ジャパン・エルエルシー

アイ・シグマ事業支援ファンド2号投資事業有限責任組合 成長支援 2014年8月 アイ・シグマ・パートナーズ㈱

アント・ブリッジ4号A投資事業有限責任組合 成長支援 2014年8月 アント・キャピタル・パートナーズ㈱

B Dash Fund 2号投資事業有限責任組合 成長支援 2014年12月 B Dash Ventures㈱/渡邊洋行

NMC三号投資事業有限責任組合 成長支援 2014年12月 NMCスリー合同会社

gumi ventures2号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年1月 ㈱gumi ventures/新生企業投資㈱

大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合 成長支援 2015年2月 DCIパートナーズ㈱

MCPメザニン3投資事業有限責任組合 成長支援 2015年3月 MCPM3株式会社

いばらき新産業創出ファンド投資事業有限責任組合 成長支援 2015年3月 ㈱常陽産業研究所/REVICキャピタル㈱

ファストトラックイニシアティブ2号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年3月 ㈱ファストトラックイニシアティブ

Draper Nexus Technology Partners 2号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年4月 Draper Nexus Venture Partners II, LLC

ハック大阪投資事業有限責任組合 成長支援 2015年5月 ハックベンチャーズ㈱

K&Pパートナーズ1号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年6月 K&Pパートナーズ㈱

KKTH2投資事業有限責任組合 成長支援 2015年6月 ㈱トライハード・インベストメンツ

おおいた中小企業成長ファンド投資事業有限責任組合 成長支援 2015年7月 大分ベンチャーキャピタル㈱

テクノロジーベンチャーズ4号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年7月 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ㈱

ニュー・パラダイム・ファンド1号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年7月 フロネシス・パートナーズ㈱

オプトベンチャーズ1号投資事業有限責任組合 成長支援 2015年8月 ㈱オプトベンチャーズ

ウィズ・ヘルスケア日本2.0投資事業有限責任組合 成長支援 2015年9月 ㈱ウィズ・パートナーズ

QB第一号投資事業有限責任組合 起業支援 2015年9月 QBパートナーズ有限責任事業組合

Beyond Next Ventures 1号投資事業有限責任組合 起業支援 2015年11月Beyond Next Ventures 1号有限責任事業組合/Beyond Next Ventures㈱

MICイノベーション4号投資事業有限責任組合 成長支援 2016年1月 モバイル・インターネットキャピタル㈱

Samurai Incubate Fund 5号投資事業有限責任組合 起業支援 2016年2月 ㈱サムライインキュベート/榊原健太郎

グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合 成長支援 2016年3月 グロービス5号ファンド有限責任事業組合

アーキタイプベンチャーファンド投資事業有限責任組合 起業支援 2016年3月 アーキタイプベンチャーズ㈱

地方創生新潟1号投資事業有限責任組合 成長支援 2016年5月 新潟ベンチャーキャピタル㈱

GMO VenturePartners 4投資事業有限責任組合 起業支援 2016年5月 GMO VenturePartners㈱

Sosei RMF1投資事業有限責任組合 成長支援 2016年6月 そーせいコーポレートベンチャーキャピタル㈱

2016年度(2016/4-2016/6末)

2014年度(2014/4-2015/3)

2015年度(2015/4-2016/3)

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I-152

中小機構は、先の「成長資金供給」(I-149 ページ)で触れたファンド出資以外に、ベンチャー

企業の表彰、インキュベーション施設の提供、VC/VB の情報提供といった広範な支援事業を行

っている。また、2014 年度からは新ビジネス創発拠点「TIP*S」の運営や創業・新事業支援施設

「BusiNest」の運営など新たな支援策を開始している。

中小機構のベンチャー支援活動

項 目 内 容 担当部署

表彰制度 ・Japan Venture Awards を開催 ベンチャー企業の経営者を称える表彰制度(年1回、2016 年で 16 回目)

(http://j-venture.smrj.go.jp/outline/index.html) 経営支援部

創業・ ベンチャー支援課 インキュベー

ション施設 ・ビジネス・インキュベータ一覧 (http://www.smrj.go.jp/incubation/054808.html)

VC/VB の 情報提供

・「ベンチャー投資ナビ」サイトの運営 (https://vdb.smrj.go.jp/viis/REF_BP001_SCR002.action)

ファンド事業部 ファンド事業企画課

創業・新事業

支援施設

・創業・新事業支援施設「BusiNest」の運営 中小企業大学校東京校内においてオフィススペースや各種セミナー等

を提供 (http://businest.smrj.go.jp/)

中小企業大学校 東京校

新ビジネス

創発拠点

・新たなビジネス創発支援の場となる交流・活動拠点「TIP*S」の運営 様々なイベントやワークショップ、セミナーを通じて学びの場を提供

(http://tips.smrj.go.jp/)

人材支援グループ 人材支援企画課

(出所:中小機構資料)

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I-153

独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)

独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)では、産業財産権を有する中小・中堅・ベンチャー

企業の知財を活用したライセンス契約等、海外展開のためのビジネスモデル構築を支援する。

日本発知財活用ビジネス化支援事業「ジェトロ・イノベーション・プログラム」の概要

(以下はすべて 2016 年度の実施例) 項目 内容

対象業種・企業 産業財産権(特許、実用新案、意匠)を保有もしくは出願し、イノベーティブな技術・製品・ビジネスモデルを有する、中堅・中小・ベンチャー企業(選考有り)

無料プログラム(一例)

●国内セミナー(年間随時開催予定) ●シリコンバレー流ビジネス・ディベロップメント研修

①「Boot Camp」 【2016 年 6 月 1 日~4 日(第 1 期)、6 日~9 日(第 2 期)】

ビジネスモデル構築、KPI 策定、マーケティングに関するセミナーとピッチトレーニング、メンタリングなどのプログラムからなる、全編英語による 4 日間集中研修。シリコンバレーのアクセラレーターUSMAC から講師を招いた。

②「コミュニケーション研修」 【2016 年 7 月 26 日~27 日(第 1 期)、7 月 28 日~29 日(第 2 期)】

コミュニケーション、顧客アプローチやプレゼン手法をテーマにした 2 日間集中研修。 また、研修会期にあわせて、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)から知財プロデューサーを招き、技術流出の防止策、知財活用に関する講義を開催。

●個別メンタリング 参加企業に最適な専属メンターを選出し、一貫したメンタリングを行う。

有料プログラム (一例)

●「TechCrunch / Disrupt SF」 【2016 年 9 月 12 日~14 日】 スタートアップの登竜門として全世界から注目を集めるサンフランシスコのイベントに出展

●「TechMatch」(JETRO 主催型) 【2016 年 9 月 15 日~16 日】 アクセラレーターUSMAC と提携してシリコンバレーで開催する JETRO 独自のマッチングイベントに参加

その他の地域 ●2016 年度下半期にはシンガポールとイスラエルでもイベントやメンタリングを実施 応募期間 シリコンバレー・プログラム募集締切 2016 年 5 月 25 日

2016 年度はシンガポール、イスラエル・プログラムの募集も行う(2016 年 7 月時点)。 2015 年度成果 ●2015 年度は、本プログラムをシリコンバレー、シンガポールにて実施。

●本プログラムを利用して、4 社がシリコンバレーに進出を果たし、2 社は現在シンガポール で調査活動を実施中。

担当部署 知的財産・イノベーション部 イノベーション促進課 (出所:「ジェトロ・イノベーション・プログラム」サイト http://www.jetro.go.jp/services/innovation/)

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I-154

ドバイで開催される、情報通信技術展示会「36th GITEX TECHNOLOGY WEEK(GITEX)」ス

タートアップ向けエリアにジャパン・パビリオンを設置し、中小・中堅・ベンチャー企業の中東

や北アフリカ、南アジア、TPP 諸国への海外展開を支援する。

「GITEX 2016 Global Startup Movement ジャパン・パビリオン」概要

(以下はすべて 2016 年度の実施例)

項目 内容 対象業種・企業 ICT 技術関連商品・サービスを提供する、中小・中堅・ベンチャー企業 サービス内容・費用

「GITEX 2016 Global Startup Movement ジャパン・パビリオン」 【2016 年 10 月 16 日~20 日】 中東・南アジア・北アフリカ最大級の情報通信展示会「GITEX」のスタートアップ向けエリアに出展。創業 5 年以内の企業は同エリアで開催される、ピッチイベントに出場可能。また、会期中に中東地域のベンチャーキャピタル・アクセラレーターとの交流会にも参加 出展料 5 万円

応募期間 募集締切 2016 年 7 月 15 日 担当部署 知的財産・イノベーション部 イノベーション促進課

(出所:「GITEX 2016 Global Startup Movement ジャパン・パビリオン」サイト

https://www.jetro.go.jp/events/iib/52d075c568187100.html)

中小企業等の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業

等に対して、基礎となる出願(特許、実用新案、意匠、商標)と同内容の外国出願にかかる費用

の半額を助成する。

中小企業等外国出願支援事業の概要

(以下はすべて 2016 年度の実施例)

項目 内容 対象業種・企業 基礎となる日本出願(特許、実用新案、意匠、商標)等と同内容を外国特許庁へ出願する

予定の中小企業やベンチャー企業、もしくは個人事業者等 サービス内容・費用

応募時に既に日本国特許庁に対して行った出願と同内容の出願を、本事業採択後、2016 年12 月までに外国特許庁に行う場合、外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費等の、外国出願に係る経費(助成対象経費)の一部を助成する。 補助率:助成対象経費の2分の1(千円未満の端数は切り捨て) 上限額:1企業に対する上限額 300 万円 案件ごとの上限額:特許 150 万円 実用新案・意匠・商標 60 万円 冒認対策商標※30 万円 ※冒認対策商標:第三者による抜け駆け出願(冒認出願)の対策を目的とした商標出願

応募期間 募集締切 2016 年 6 月 30 日 担当部署 知的財産・イノベーション部 知的財産課 外国出願デスク

(出所:ジェトロ外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)

http://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html)

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I-155

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のベンチャー支援事業とし

ては、以下を実施している。 1. 新エネルギーベンチャー技術革新事業 2. 研究開発型ベンチャー支援事業

3. 課題解決型福祉用具実用化開発支援事業 4. 戦略的基盤技術高度化支援事業(プロジェクト委託型) 5. 中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業 6. 追加実証・用途開拓研究支援事業~サンプルづくり支援事業~

①新エネルギーベンチャー技術革新事業

本事業は、中小・ベンチャー企業が保有している再生可能エネルギー分野等の潜在的技術シー

ズについて、技術や事業化の面での優位性や独自性の観点から選抜・育成し、事業化を見据えた

技術開発支援を行った。2016 年度の公募では、応募が 76 件あり 19 件を採択した。 項目 内容

事業目的 再生可能エネルギー分野の重要性に着目し、中小企業等(ベンチャーを含む)が保有している潜在的技術シーズを基にした技術開発を、公募により実施する。

フェーズ <フェーズ A> フィージビリティ・スタディ

<フェーズ B> 基盤研究

<フェーズ C> 実用化研究開発

<フェーズD> 大規模実証研究開発

事業期間 1 年間以内 1 年間以内 1 年間程度 1~2年間程度 契約形態 1 テーマ当たり

1,000 万円以内 1 テーマ当たり 5,000 万円以内

1 テーマ当たり 5,000 万円以内

1 テーマ当たり 7,500万円以上3億円以内

委託:NEDO 負担率100%

委託:NEDO 負担率100%

助成:NEDO 負担率3 分の 2

定額補助

公募期間 2016 年 3 月 11 日~5 月 11 日 担当部署 イノベーション推進部 プラットフォームグループ

(出所:NEDO)

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I-156

②研究開発型ベンチャー支援事業

②-1:SUI による事業化可能性調査等の実施

事業化支援人材(カタライザー)のハンズオン指導のもと、将来のメガベンチャーを目指す起

業家候補(スタートアップイノベーター:SUI)支援の公募を行った。2015 年度は 81 件の応募

があり、10 件を採択した。 なお本事業では、2014 年度採択分については、1 億円以上の外部資金調達を達成することを卒

業要件としている。2015 年 9 月には㈱Photosynth が大手ベンチャーキャピタル等から総額 4.5 億

円の資金調達を実現するなど、2016 年 7 月時点で 7 事業者が本要件を満たし、卒業している。

項目 内容 支援概要 ・具体的な技術シーズを活用した事業構想を有する起業家候補を公募

・研究開発型ベンチャーを立ち上げ、将来のメガベンチャーとなるための活動を実施 支援内容 【2015 年度】

① NEDO が委嘱する事業化支援人材(カタライザー)がハンズオンで行う各種起業活動支援

② SUI が「事業化可能性調査」として実施する活動に、原則 1 チーム当たり上限 3,500万円/年(労務費込み)を 1 年間支援

③ 外部技術シーズとのマッチングを支援 ④ 投資者および提携先とのマッチングを支援 ⑤ NEDO 本部(川崎)に SUI が利用可能なコワーキングスペースを用意

事業期間 【2015 年度】2016 年 4 月初旬から 2017 年 2 月 28 日まで 公募期間 【2015 年度】2015 年 9 月 18 日~10 月 21 日 担当部署 イノベーション推進部 スタートアップグループ

(出所:NEDO)

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I-157

②-2:シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援

2015 年度より、研究開発型ベンチャーを支援する国内外のベンチャーキャピタルやシード・

アクセラレーター等(以下、「VC 等」という。)を NEDO が認定し、その VC 等が出資するシー

ド期の研究開発型ベンチャーの事業化(実用化開発、企業化可能性調査等)を助成する事業を開

始した。まずは VC 等の認定を行い(認定件数 18 件)、その後助成事業者であるシード期の研究

開発型ベンチャー(STS(Seed-stage Technology-based Startups))の公募を実施した。2015 年度は

19 件を採択・交付、2016 年度は 5 件を採択している。

項目 内容 事業目的 STS が必要とする研究開発および事業化に必要な資金、並びに活動を、VC 等と NEDO

が協調して支援することにより、将来のメガベンチャーとなる STS を創出・育成するとともに、グローバルなネットワークを持つ VC 等の日本での活動を活性化し、エコシステムを強化することを目的とする。

助成対象事業 ・具体的技術シーズがあって、研究開発要素があることが想定され、かつ、競争力強化のためのイノベーションを創出しうる事業であること。

・具体的な技術シーズを活用した事業構想を持ち、認定 VC がその事業構想に係るチェックを行った上で、交付申請書における助成金申請額(助成対象経費の 85%以内)の15/85 以上の出資を受けることが予定されていることが必要。

・申請時において、業として出資を行う者から1億円以上の出資を得ていないことが必要。 助成率 85%以内 助成金額 2 年間で 7,000 万円まで 事業期間 【2015 年度第 1 回公募】2015 年 10 月下旬から 2017 年 2 月 28 日まで

【2015 年度第 2 回公募】交付決定日から 2017 年 2 月 28 日まで 【2016 年度第 1 回公募】交付決定日から 2017 年 9 月 30 日まで 【2016 年度第 2 回公募】交付決定日から 2017 年 10 月 31 日まで

公募期間 【2015 年度第 1 回公募】2015 年 7 月 9 日~2015 年 8 月 31 日 【2015 年度第 2 回公募】2015 年 11 月 16 日~2016 年 1 月 29 日 【2016 年度第 1 回公募】2016 年 4 月 15 日~2016 年 5 月 27 日 【2016 年度第 2 回公募】2016 年 7 月 11 日~2016 年 8 月 26 日

担当部署 イノベーション推進部 スタートアップグループ (出所:NEDO)

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I-158

②-3:Technology Commercialization Program(TCP)

研究開発型ベンチャーの起業を志す、国内の大学・企業の研究者等を対象に、ビジネスプラン

作成のための研修と、作成したビジネスプランを投資家等の前で発表するピッチイベントの機会

を提供する事業を実施。 項目 内容

事業目的 大学等の研究成果の事業化を促進するとともに、起業家の育成と大学発ベンチャーの発掘を行うこと。

事業内容 ビジネスプラン作成のための研修と、ベンチャーキャピタリストや元起業家などのメンターからの個別指導を行う。また、選抜者には、それらを経て作成したビジネスプランを投資家等の前で発表するピッチイベントの機会を、国内外において提供する。

助成率 研修事業であり、助成金等の金銭的支援はなし。 助成金額 事業期間 2014 年 7 月下旬から 2017 年 3 月 31 日まで 公募期間 【2015 年度】2015 年 7 月 1 日~8 月 28 日

【2016 年度】2016 年 6 月 1 日~8 月 26 日 担当部署 イノベーション推進部 スタートアップグループ

(出所:NEDO Open Innovation Platform)

③課題解決型福祉用具実用化開発支援事業

課題解決型福祉用具実用化開発支援事業については、1993 年に制定された、福祉用具の研究

開発及び普及の促進に関する法律(平成五年五月六日法律第三十八号)に基づき実施しており、

これまで 20 年以上継続して実施されている事業である。2016 年度は 38 件の応募があり、3 件を

採択した。

項目 内容 事業目的 福祉用具の開発を行う企業等に対し助成金を交付することにより、福祉用具の実用化開

発を推進し、高齢者、心身障害者及び介護者の QOL を向上することを目的とする。 助成対象事業 1.研究開発の対象となる機器が「福祉用具」であること、全く同一の機能、形態の製

品が存在しないという新規性、技術開発要素を有していること。 2.その事業が、利用者ニーズに適合し、研究開発要素を有する等、助成金交付の目的

に適合するものであること。 3.その福祉用具の実用化開発により、介護支援、自立支援、社会参加支援、身体代替

機能の向上等具体的な効用が期待され、かつ一定規模の市場が見込まれ、更にユーザーからみて経済性に優れているものであること。

4.その事業が、他の補助金、助成金の交付を受けていないこと。 助成率 3 分の 2 以内(ただし、いわゆるみなし大企業については助成率 2 分の 1) 助成金額 年間 2000 万円以内(3 年間で最大 6000 万円) 事業期間 最大3年間 公募期間 2016 年 4 月 8 日~2016 年 5 月 30 日 担当部署 イノベーション推進部 プラットフォームグループ

(出所:NEDO)

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I-159

④戦略的基盤技術高度化支援事業(プロジェクト委託型)

この事業は、NEDO が中小企業庁から委託を受けて、2015 年度において「革新的ものづくり

産業創出連携促進事業(プロジェクト委託型)」として実施し、93 件の応募があり、5 件を採択

した。なお、2016 年度より事業名称を変更し実施している。

項目 内容 事業目的 国(中小企業庁)が実施する「戦略的基盤技術高度化・連携支援事業~戦略的基盤技術

高度化支援事業~」(いわゆる「サポイン事業」)のうち、中小企業者等が橋渡し研究機関の能力を活用して行う実用化につながる可能性の高い、国が指定するテーマに沿った研究開発・試作品開発を支援する。

委託対象事業 委託対象事業としては、次の要件を満たすことが必要。 1.中小ものづくり高度化法の認定を受けた「特定研究開発等計画」を基本とした研究

開発・試作品開発であること 2.国が指定するテーマの何れかに沿った研究開発であり、公共性に資する可能性が高

い等、政策課題の解決に向けた研究開発・試作品開発であること 3.NEDO の確認を受けた「橋渡し研究機関」が、中小企業者等の共同研究等の相手先

として参画すること 契約形態 委託:NEDO 負担率 100% 委託額 年間 1 億円以内(下限は 1,000 万円) 事業期間 2 年度または 3 年度 公募期間 2016 年 5 月 2 日~2016 年 6 月 30 日 担当部署 イノベーション推進部 プラットフォームグループ

(出所:NEDO)

⑤中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業

中堅・中小・ベンチャー企業と、NEDO が認定した橋渡し研究機関が共同で行う実用化開発

を支援する公募を行った。2016 年度は、92 件の応募があり、23 件を採択した。

項目 内容 事業目的 中堅・中小・ベンチャー企業が、橋渡し研究機関から技術シーズの移転を受けてビジ

ネスにつなげることや、中小企業等が保有する技術を橋渡し研究機関の能力を活用して迅速かつ着実に実用化することを通じて、自社の技術力向上や生産方法等の革新等を実現することを支援する。加えて、上述のような取り組みを NEDO が助成することで、橋渡し研究機関が積極的にその機能強化に取り組むことを促進する。

助成対象事業 以下のいずれかに該当する中小企業等及び組合等が、「橋渡し研究機関」との共同研究により実施する新規性・革新性の高い実用化開発 1.中小企業基本法で定める中小企業者 2.売上高 1,000 億円未満又は従業員 1,000 人未満の企業 3.上記 2.の売上高基準及び従業員基準を満たす組合等

契約形態 助成:NEDO 負担率 3 分の 2 助成額 事業期間の総額が 1 億円以内(下限は 1,500 万円) 事業期間 2016 年 7 月 13 日~2017 年 12 月 28 日 公募期間 2016 年 3 月 22 日~2016 年 5 月 10 日 担当部署 イノベーション推進部 プラットフォームグループ

(出所:NEDO)

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I-160

⑥追加実証・用途開拓研究支援事業~サンプルづくり支援事業~ サンプル製作費用等を支援するため「追加実証・用途開拓研究支援事業」の公募を行った。2016

年度は、44 件の応募があり、13 件を採択した。

項目 内容 事業目的 技術の実用化に向けては、ユーザーのニーズを詳細に把握し、これを踏まえた的確な

研究開発の実施が極めて重要であるが、ユーザーサイドでの採用見通しが不確実である状況等のもとで、サンプルを製作し、ユーザーに提供することは、多くの企業において極めて困難である状況に鑑み、サンプル製作からユーザーによる評価、その結果のフィードバックまでの一連の追加実証・用途開拓研究を支援する。

助成対象事業 以下のいずれかに該当する中小企業等及び組合等が有する優れた先端技術シーズや有望な未利用技術を活用した実用化開発に係る追加実証・用途開拓研究 1.中小企業基本法で定める中小企業者 2.売上高 1,000 億円未満又は従業員 1,000 人未満の企業 3.上記 2.の売上高基準及び従業員基準を満たす組合等

契約形態 助成:NEDO 負担率 3 分の 2 助成額 事業期間の総額が 1,000 万円以内(下限は 300 万円) 事業期間 2016 年 4 月 18 日~2017 年 3 月 18 日 公募期間 2016 年 1 月 20 日~2016 年 2 月 19 日 担当部署 イノベーション推進部 プラットフォームグループ

(出所:NEDO)

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I-161

オープンイノベーション協議会 上記の事業に加え、NEDO では、我が国産業のイノベーションの創出および競争力の強化に

寄与することを目的としてオープンイノベーション協議会を設立し、オープンイノベーションに

関する各種調査研究やイベントを実施している。

項目 内容 目的・概要 民間事業者の「オープンイノベーション」の取り組みを推進し、我が国産業のイノベ

ーションの創出および競争力の強化に寄与することを目的として 2015 年 2 月 12 日に設立。会長の野路 國夫 氏(株式会社小松製作所 取締役会長)を含む、16 名の幹事(民間事業者)を置き、NEDO が事務局を務める。

活動内容 1. 会員間におけるオープンイノベーションの推進事例の共有 ①大規模セミナー・イベントの開催 ②テーマ別ワークショップの開催(テーマ:産学連携、社内マネジメント、

コーディネーター育成等) ③ビジネス案件創出を目指すイベント(NEDO ピッチ)の開催

2. 海外のオープンイノベーション動向の把握 3. 我が国全体への啓発・普及活動 4. オープンイノベーション白書の作成 5. 重要分野におけるオープンイノベーションの推進に関する検討 6. 大学・研究機関等との交流の促進 7. その他協議会の目的の達成に資する活動

会員数 541(2016 年 8 月 1 日時点) 会員構成 民間企業(本会員)、企業以外の法人および幹事会が承認した個人(賛助会員) 会費 無料 募集方法 下記 HP より入会届をダウンロードし事務局へ送付(随時受付) 詳細ページ https://www.joic.jp/index.htm 担当部署 イノベーション推進部 総括グループ

(出所:NEDO)

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I-162

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)

国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST:産総研)では、従来から先端的な研究成果を

スピーディーに社会に出していくため、ベンチャー企業の創出・支援に取り組んでいる。2002年より創出・支援の制度を構築し、現在はベンチャー開発・技術移転センターがそのプラットフ

ォームとして、「スタートアップ開発戦略タスクフォース」の実施並びに「ベンチャー技術移転

促進措置」および「出資業務」の運用を行っている。

ベンチャー開発・技術移転センターの業務概要

項目 内容 スタートアップ開発戦略タスクフォース 主に産総研で生まれた技術シーズを対象に、研究者とビジ

ネス人材が協力してベンチャー創業を目指す事業化プロジェクト

カーブアウト事業 企業の技術シーズと人材を受け入れて、タスクフォースでベンチャー企業の創出を目指すプロジェクト

ベンチャー技術移転促進措置 産総研技術移転ベンチャーへの知財権の一部譲渡、独占実施権の付与、施設・設備使用料の割引、専門家相談の機会提供など

産総研の設備・特許等を産総研技術移転ベンチャー等に現物出資 産総研技術移転ベンチャーをウェブサイト「TECH Meets BUSINESS」で広く紹介 https://unit.aist.go.jp/ictes/tmb/

(出所:産業技術総合研究所)

ベンチャー開発・技術移転センターは、各技術シーズの特徴や性格に合った事業化の推進を目

的に、(1)既存企業への知的財産等のライセンシングによる技術移転と(2)技術移転ベンチャ

ー等の創業による事業化の 2 つの事業化方法を一元的に扱う組織として、「ベンチャー開発部」

と「知的財産部 技術移転室」とが一体化し、2015 年 4 月に発足した。 ベンチャー開発・技術移転センターでは、そのベンチャー創出・支援活動の成果を報告すると

ともに創業したベンチャー企業と大手企業などとの交流を図るイベントとして、「産総研発ベン

チャーTODAY-TECH Meets BUSINESS-」(2016 年より改称*)を 2005 年より開催している

(https://unit.aist.go.jp/ictes/ci/tf/tf-review.html)。

*2005~2011 年までは「タスクフォース成果報告会」、2012~2014 年までは「ベンチャー開発成果報告会」として

開催。

また、ベンチャー開発・技術移転センターでは、ベンチャー企業の事業活動を支援するため、

金融機関や事業会社、ビジネスインキュベーション機関等とのネットワーク「AIST スタートア

ップスクラブ」を構築し、外部の支援制度や研究開発資金公募の情報提供、企業との協業・連携

の機会提供等を行っている。

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I-163

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、一般社団法人未踏と連携し、未踏 IT 人材の産業界

等でのさらなる活躍に向け、未踏 IT 人材や IT の先進活用を行う企業がプレゼンテーション等を

行い、交流する未踏会議 2016(「未踏会議(シンポジウム)」、「未踏ナイト(交流イベント)」)

を 2016 年 3 月 10 日(木)〔未踏の日〕に開催した。また新しい試みとして、未踏 IT 人材とベン

チャー企業等とのビジネスマッチングを並行して実施した。

「未踏会議 2016」開催概要

項目 内容 目的 産業界等における未踏 IT 人材の活用が促進され、更なる活躍のフィールドが広がることを

狙いとして開催 定員 150 名 開催場所 恵比寿アクトスクエア 開催日 2016 年 3 月 10 日 担当部署 IT 人材育成本部 イノベーション人材センター

(出所:独立行政法人情報処理推進機構「未踏会議 2016 開催案内」)

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I-164

内閣府

1. 国家戦略特区による規制改革

国家戦略特区については、2013 年 12 月に成立した国家戦略特区法に基づき、2015 年度末ま

での 2 年間を集中取組期間とし、いわゆる岩盤規制全般について突破口を開いてきた。 これまでに、2 度に渡る特区法改正等により実現した規制改革事項は、全国的措置等を含め

50 を超えており、都市計画の迅速化、いわゆる民泊(宿泊可能な住居)の解禁、医学部の新

設、地域限定保育士制度の創設、雇用条件の明確化(雇用労働相談センターの設置)、公立学

校の民間開放、農業委員会の事務分担の見直し、企業による農地取得の特例など、永年にわた

り実現できなかった規制改革を実現してきた。 また、2014 年 5 月、2015 年 8 月、2016 年 1 月と 3 次にわたり指定してきた 10 区域(東京

圏、関西圏、新潟市、養父市、福岡市・北九州市、沖縄県、仙北市、仙台市、愛知県、広島県・

今治市)において、合計 175 もの事業が、それぞれ 50 回、22 回開催した区域会議及び特区諮

問会議を通じて総理により認定され、目に見える形で迅速に進展している。 こうした集中取組期間における取組の成果を受け、「日本再興戦略 2016」(2016 年 6 月 2 日

閣議決定)においては、2017 年度末までを「集中改革強化期間」として、重点 6 分野(※)

を含む、残された「岩盤規制」改革や、事業実現のための「窓口(ゲートウェイ)」機能の強

化に取り組むことを国家戦略特区の「新たな目標」として設定することにより、民間の能力が

十分に発揮できる、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備し、経済成長につなげることと

している。

<重点 6 分野>

・幅広い分野における「外国人材」の受入れ促進

・公共施設等運営権方式の活用等による「インバウンド」の推進

・幅広い分野における「シェアリングエコノミー」の推進

・幅広い分野における事業主体間の「イコールフッティング」の実現

・特にグローバル・新規企業等における「多様な働き方」の推進

・地方創生に寄与する「第一次産業」や「観光」分野等の改革

2. 国家戦略特区における起業・開業関連の取組

(1) 各特区の政策課題

各特区の目標・政策課題や実施すべき事業に関する基本的な事項を定めている「国家戦略特

区特別区域方針」(2014 年 5 月 1 日内閣総理大臣決定、2015 年 8 月 28 日、2016 年 1 月 29 日

一部変更)においては、以下のとおり政策課題を掲げている(色付け箇所は起業・開業関連事

項)

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I-165

各特区の政策課題

区域 政策課題 Ⅰ.東京圏

(東京都、神奈川県、千葉県千葉市、 成田市)

(1)グローバルな企業・人材・資金等の受入れ促進

(2)女性の活用促進も含めた、多様な働き方の確保

(3)起業等イノベーションの促進、創薬等のハブの形成

(4)外国人居住者向けを含め、ビジネスを支える生活環境の整備

(5)オリンピック・パラリンピックを視野に入れた国際都市にふさわしい都市・交通機能の強化

Ⅱ.関西圏

(大阪府、兵庫県、 京都府)

(1)高度医療の提供に資する医療機関、研究機関、メーカー等の集積及び連携強化

(2)先端的な医薬品、医療機器等の研究開発に関する阻害要因の撤廃、シーズの円滑な事業化・海外展開

(3)チャレンジングな人材の集まる都市環境、雇用環境等の整備

Ⅲ.新潟県新潟市 (1)農地の集積・集約、企業参入の拡大等による経営基盤の強化

(2)6 次産業化及び付加価値の高い食品開発

(3)新たな技術を活用した革新的農業の展開

(4)農産物及び食品の輸出促進

(5)農業ベンチャーの創業支援

Ⅳ.兵庫県養父市 (1)耕作放棄地等の生産農地への再生

(2)6 次産業化による付加価値の高い新たな農産物・食品の開発

(3)農業と観光・歴史文化の一体的な展開による地域振興

Ⅴ.福岡県福岡市・

北九州市

(1)起業等のスタートアップに対する支援による開業率の向上

(2)MICE の誘致等を通じたイノベーションの推進及び新たなビジネス等の創出

(3)高年齢者の活躍や介護サービスの充実による人口減少・高齢化社会への対応

Ⅵ.沖縄県 (1)外国人観光客等が旅行しやすい環境の整備

(2)地域の強みを活かした観光ビジネスモデルの振興

(3)国際的環境の整ったイノベーション拠点の整備

Ⅶ.秋田県仙北市 (1)国有林野の民間開放による有効活用

(2)臨床修練制度を活用した国際交流の促進

(3)耕作放棄地等の生産農地への再生

(4)国内外観光客の誘客と観光拠点の開発

(5)地域の安全対策及び第一次産業への無人自動飛行の活用

Ⅷ.宮城県仙台市 (1)女性、若者、シニアなどを重視した意欲ある起業家の輩出

(2)株式会社や NPO 法人などの起業手続きの迅速化

(3)起業家・ベンチャー企業の経営の安定化・雇用の拡大

(4)保育士確保、待機児童解消等による女性の社会参加の拡大

(5)被災対応・産業復興のための次世代移動体システムの実証促進

Ⅸ.愛知県 (1)公立学校における多様な教育の提供による産業人材の育成

(2)農業の所得向上と成長分野への転換

(3)先進医療の拡大

(4)外国人も含めた最適な雇用環境を整備

(5)成長産業・先端技術の中枢拠点の形成

Ⅹ.広島県・

愛媛県今治市

(1)創業人材を含めた高度外国人材の集積の推進

(2)雇用ルールの明確化によるグローバル企業・新規企業への支援

(3)地場製造業や新たなホスピタリティ・サービス産業の活性化

(4)スポーツ・教育面における国際交流拠点の整備

(5)観光分野における先進的な「自治体間連携モデル」の推進

(出所:「国家戦略特別区域及び区域方針」(2014 年 5 月 1 日内閣総理大臣決定 2015 年 8 月 28 日、2016 年 1 月

29 日一部改正))

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I-166

(2) 起業・開業関連の具体的な取組

① 「雇用労働相談センター」の設置

国家戦略特区においては、新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、我が国の雇用ルー

ルを的確に理解し、予見可能性を高めることにより、紛争を生じることなく事業展開すること

が容易となるよう、裁判例の分析・類型化を行った「雇用指針」を活用し、弁護士等が無料で

助言等を行う「雇用労働相談センター」を設置している。

2014 年秋以降これまでに、福岡市、関西圏、東京圏、新潟市、愛知県、仙台市、広島県(2016年秋予定)の全国 7 か所に開設している。

② 「東京開業ワンストップセンター」の設置

東京圏では、国と東京都が共同で運営する「東京開業ワンストップセンター」を 2015 年 4月に開設し、外資系企業や国内ベンチャー企業等の開業の促進を図っている。開業にあたって

の行政手続きの縦割りによる煩雑さを軽減すべく、登記、税務、年金・社会保険、在留資格認

定証明書等の法人設立に係る窓口を集約化し、各部門のブースには、関係省庁及び東京都が相

談員を派遣し、申請文書等の作成支援・受付等を行っている。また、多言語による通訳や翻訳

サービスについても、提供している。 定款認証については、従来、原則公証役場において行うこととされていたが、国家戦略特区

の特例として、2015 年 10 月より公証役場外である同センターにおいても認証を行うことが可

能となった。2015 年度末までの利用実績は、①利用者数 830 名、②利用件数 1,741 件(うち、

登記 400 件、税務 346 件、健康保険 272 件等)、③申請件数 51 件(定款 22 件、入国管理 16件、都税 11 件等)となっている。

<取組事例:福岡市 雇用労働相談センター>

開設日:2014 年 11 月 29 日

(2015 年度末までの相談件数:1,274 件 / 1 日平均 3 件以上)

場 所:TSUTAYA BOOK STORE TENJIN 3 階(福岡市中央区中泉 1-20-17)

「スタートアップしたい人」と「スタートアップを応援したい人」の交流の場として、

福岡市がオープンした「スタートアップカフェ」に併設する場所に設置

特 徴:・TSUTAYA 内に設置され、カフェ片手に気軽に立ち寄ることができる。

・「雇用労働相談センター」の「雇用」と「スタートアップカフェ」の「創業」の相乗効果。

・予約不要・無料で常駐の弁護士から雇用に関する相談・助言を受けられる。

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I-167

(出所:東京開業ワンストップセンターHP をもとに作成)

さらに、日本再興戦略 2016 においては、起業・開業を更に促進するための同センターの強化

策を打ち出し、取組の強化を図っているところである。

<東京開業ワンストップセンター (2015 年 4 月 1 日開設)>

●フロア図(JETRO 本部 7 階(アーク森ビル))

※同一フロア内に「ビジネスコンシェルジュ東京」の窓口や「東京圏雇用労働相談センター」の窓口も設置し、

ビジネスマッチングや雇用相談等のサービスをワンストップ化。

●取り扱う行政手続き

区分 取扱業務

定款認証 公証人による法人設立に係る定款認証

法人設立登記 会社設立登記申請(オンライン手続の支援を含む)

税務(国税) 1.法人設立届出書

2.青色申告の承認申請書

3.給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

税務(都税) 1.法人設立届出書

2.申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認申請書

入国管理 法人設立に係る「経営・管理」 及び 「企業内転勤」 の在留資格認定証明書交付

申請書(同時申請の家族に係る申請書を含む)

雇用保険 1.雇用保険適用事業所設置届

2.雇用保険被保険者資格取得届

労働保険 1.労働保険関係成立届

2.労働保険概算保険料申告書

3.適用事業報告

4.就業規則届

5.時間外労働・休日労働に関する協定書

健康保険

厚生年金保険

1.新規適用届

2.被保険者資格取得届

3.健康保険被扶養者(異動)届・国民年金 3 号被保険者資格取得届

4.ローマ字氏名届

(出所:内閣府)

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I-168

さらに、日本再興戦略 2016 においては、起業・開業を更に促進するための同センターの強化

策を打ち出し、取組の強化を図っているところである。

「日本再興戦略 2016」(2016 年 6 月 2 日閣議決定)(抜粋)

第 2 具体的施策

Ⅱ 生産性革命を実現する規制・制度改革

3.国家戦略特区による大胆な規制改革

(2)新たに講ずべき具体的施策

ⅲ)更なる規制改革事項の追加等

(世界と戦える国際都市の形成、国際イノベーション拠点の整備) ②東京開業ワンストップセンターの抜本的強化

・2015 年 4 月より開設している「東京開業ワンストップセンター」における起業・開業に必要な各種申

請等の受付について、外国人を含めた起業・開業を更に促進するため、登記、税務、年金等の 6 事務に

ついて電子申請を行うことができる支援体制等を整備するとともに、現在、入国管理等の一部の事務に

ついて実施している窓口における申請の受付等について、すべての事務に範囲を拡大する等、同センタ

ーの利便性の抜本的な向上を図る。

・また、開業に伴う外国人材の入国手続きの円滑化を図る観点から、同センターにおける申請可能な在留

資格の対象について、「経営・管理」「企業内転勤」に加え、「技術・人文知識・国際業務」を追加する。

さらに、在留資格について、法人開設後に同センターにて申請できる期限を、現状の 6 か月以内から延

長する。

・さらに、同センターの利用率向上を図るため、政府の中小・ベンチャー企業への支援策とも密接に連携

するとともに、独立行政法人日本貿易振興機構等の創業相談窓口等におけるセンターの積極的な紹介や、

国内外の創業希望者や外国企業等に対する PR を強化する。

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I-169

③ その他の取組

国家戦略特区においては、上記のほか、NPO 法人の設立手続きの迅速化や官民の垣根を超

えた人材移動の柔軟化等についても特例を活用することが可能となっており、各特区において、

起業・開業による経済の活性化を図っている。 また、一定の企業(小規模企業、農業・医療等の中小企業)については、エンジェル税制に

係る営業キャッシュフローの赤字要件の緩和等、課税の特例措置も講じている。

国家戦略特区における起業・開業関係の特例

事項 概要 活用自治体

官民の垣根を超えた

人材移動の柔軟化

スタートアップ企業における優秀な人材確保のため、国

の行政機関の職員がスタートアップ企業で働き、一定期間

内に再び国の職員になった場合の退職手当の算定につい

て前後の期間を通算。

福岡市

広島県

人材流動化支援施設

の設置

国、自治体、大企業に勤務する人材をスタートアップ企

業で働きやすくするため、人材流動化支援施設を設置し、

労働市場の流動性向上、スタートアップ企業における優秀

な人材の確保に資する援助を行う。

福岡市

広島県

NPO法人の設立

手続きの迅速化

ソーシャルビジネスの重要な担い手でもある特定非営

利活動法人の設立を促進するため、その設立認証手続にお

ける申請書類の縦覧期間(現行 2 か月)を大幅に短縮。

仙台市

養父市(主体は兵庫県)

兵庫県、神戸市

福岡市、北九州市

愛知県、名古屋市

千葉市

仙北市

創業人材等の多様な

外国人の受入れ促進

創業人材について、地方自治体による事業計画の審査等

を要件に、「経営・管理」の在留資格の基準(当初から「2

人以上の常勤職員の雇用」又は「最低限(500 万円)の

投資額」等)を緩和。

東京都

福岡市

広島県、今治市

(出所:内閣府)

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I-170

総務省

総務省では、ICT 分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能

性がある奇想天外で野心的な ICT 技術課題に挑戦する人材を支援している。また、ICT 分野にお

いて、革新的な技術シーズやアイデアの事業化を目指すベンチャー企業等およびそれを支援する

VC 等も支援している。

独創的な人向け特別枠「異能 vation」プログラム

項目 内容 意図 日々新しい技術や発想が誕生している世界的に予想のつかないICT分野において、破壊的な地

球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性があり、奇想天外で野心的な技術課題に挑戦する人を支援。ゴールへの道筋が明確になる価値ある失敗に挑戦することを恐れない雰囲気の醸成。

募集の対象者 ・課題の発案者であり、その課題を実現するために自立して技術開発を推進する者であること。 ・技術開発の全期間を通じ、課題の実現に向け、責任をもち遂行することができること。

採択予定数 10件程度 支援期間 1年間 支援する研究費 300万円(上限) 担当部署 情報通信国際戦略局 技術政策課

(応募参考:異能 vation ウェブサイト(http://www.inno.go.jp/))

ICT イノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge!)

項目 内容 意図 ICT分野において、革新的な技術シーズやアイデアを用いた新事業の創出を目指すベンチャー

企業等に対して、VC等の民間の事業化ノウハウ等の活用による事業育成支援と研究開発支援を一体的に推進する。

募集の対象者 【革新的な技術シーズやアイデアの事業化を目指すベンチャー企業等(研究開発機関)】 ・中小企業基本法に規定する中小企業 ・学校教育法に規定する大学等の公益法人 等 【研究開発機関を支援するVC等(事業化支援機関)】 ・中小企業投資育成株式会社法に規定する中小企業投資育成株式会社 ・投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定する投資事業有限責任組合 等

採択予定数 3~5件程度 支援期間 1年間 支援する研究費 研究開発機関:1億円※(上限)<間接経費(30%以内)含む>

補助率 中小企業 3分の2、大学等 10分の10 事業化支援機関:1千万円※(上限)<一般管理費含む> 補助率 3分の2 ※平成28年度の新規採択予定件数は2~4件を想定。1件あたりの補助金交付額(平均)は、

研究開発機関が5千万円程度、事業化支援機関が500万円程度として算出。 担当部署 情報通信国際戦略局 技術政策課調査係

(出所:総務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictR-D/ichallenge/))

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I-171

国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は「ICT メンタープラットフォーム」※を組織し、

ICT ベンチャー創造支援のため、総務省との共催により、学生向けに「起業家甲子園」、若手起

業家向けに「起業家万博」を実施している。

2016 年度は、2017 年 3 月 7 日(火)に「起業家甲子園」、2017 年 3 月 8 日(水)に「起業家

万博」を開催する。

※「ICT メンタープラットフォーム」

ICT 分野の事業化を阻むとされる「3 つ(事業、資金、人材)のクレバス」を埋めるため、

ICT 業界等で活躍する方々を「国立研究開発法人情報通信研究機構 ICT メンタープラット

フォーム メンター」として組織化し、その「メンター」と「地域」、「若い人材」をつなぐ

プラットフォームである。

「起業家甲子園」概要

項目 内容 事業概要

全国から選抜された高専学生、大学生および、大学院生等の若者が、ICT を用いて自ら開発した商品・サービスをメンターとともに更に磨きをかけ、アントレプレナーシップ魂を込めたプレゼンテーションにより競い合うビジネスコンテストである。2015 年度は 11 チームが出場した。

開催日 2016 年 3 月 8 日 主催 国立研究開発法人情報通信研究機構 参加者 教職員、学生等 約 160 名

(出所:「情報通信ベンチャー支援センター」ホームページ)

「起業家万博」概要

項目 内容 事業概要

「起業家万博」は、ICT を用いて豊かな世の中を目指そうと取り組む全国各地の ICTベンチャーが、工夫を凝らした新規事業(商品・サービス)を発表し、事業提携・資金調達・販路拡大・人材確保などのビジネスマッチングにチャレンジするイベントである。2015 年度は 8 社が発表した。

開催日 2016 年 3 月 9 日 主催 国立研究開発法人情報通信研究機構

参加者 大手企業、都内 ICT 系企業、投資会社、地域支援団体関係者等 約 170 名 (出所:「情報通信ベンチャー支援センター」ホームページ)

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I-172

文部科学省

文部科学省のベンチャー支援施策として、グローバルアントレプレナー育成促進事業 (EDGEプログラム)、官民イノベーションプログラムを行っている。

●グローバルアントレプレナー育成促進事業 (EDGE プログラム)

研究開発成果を基にした起業・イノベーション創出に挑戦する人材を育成し、イノベーション

が次々と創出される環境(イノベーション・エコシステム)を構築するため、文部科学省では、

2014 年度から「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGE プログラム)」を実施してい

る。この事業では、ベンチャーキャピタル等の民間企業や海外機関と連携して、専門性を持った

大学院生や若手研究者を対象に世界でも先進的な起業家・イノベーション人材育成を行う大学を

支援している。2014 年度は事業を実施する 13 の大学の採択を行い、各大学での事業が開始され

た。

グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGE プログラム)採択機関

プログラムの名称 機関名 東京大学グローバルイノベーション人材育成促進事業 東京大学 起業実践プログラムによるイノベーションリーダーの育成 東京農工大学 チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラム 東京工業大学 医・工・デザイン連携グローバルアントレプレナー育成プログラム(iKODEプログラム)の開発・実施

滋賀医科大学

GTEP(グローバル・テクノロジー・アントレプレナーシップ・ プログラム)

京都大学

「世界適塾」魁 -World Tekijuku Groundbreakers- 大阪大学 「モノのインターネット」分野でのグローバルアントレプレナー育成プログラム~Global Entrepreneurs in Internet Of Things(GEIOT)

奈良先端科学技術大学院大学

ひろしまアントレプレナーシッププログラム 広島大学 九州大学グローバルイノベーション人材育成エコシステム形成事業 九州大学 地域産学官連携型持続的イノベーション・エコシステム拠点: 科学技術駆動型イノベーション創出プレイヤー養成プログラム

大阪府立大学

グローバルイノベーション人材育成連携プログラム 慶應義塾大学 WASEDA-EDGE 人材育成プログラム ~共創館イノベーション・エコシステムの構築~

早稲田大学

イノベーション・アーキテクト養成プログラム 立命館大学 (出所:文部科学省科学技術・学術政策局)

各大学での事業に加え、共通基盤事業としてシンポジウム型イベントの開催(2014 年度に 2回、2015 年度に 2 回)、イノベーションデザインコンテスト「エッジコンペ」の開催(2014 年度

に 1 回、2015 年度に 1 回)、イノベーション教育の教職員向けプログラムの提供、Facebook・WEB サイトの運用等を行っており、2016 年度も引き続き取り組んでいく。

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I-173

●官民イノベーションプログラム(実用化に向けた官民共同の研究開発の推進)

2013 年 1 月、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」が閣議決定され、2012 年度補正予算が

2013 年 1 月 28 日に国会に提出され可決された。

「産業競争力強化法」が、2014 年 4 月から施行され、国立大学法人等が一定の要件を満たし

た VC への出資を行うことが可能となった。

官民イノベーションプログラムによる国立大学法人に対する 1000 億円出資

2012 年度補正予算において、高い研究力および共同研究実績を有する 4 つの国立大学に対して 1,000億円を出資 ・大学別出資額(計 1,000 億円) ①東京大学 417 億円、②京都大学 292 億円、③大阪大学 166 億円、④東北大学 125 億円

大学 金額 認定・認可の申請とその状況 ①東京大学 417 億円 ○2016 年 1 月 14 日に東京大学協創プラットフォーム開発株式会社設立。

②京都大学 292 億円 ○2014 年 12 月 22 日に京都大学イノベーションキャピタル株式会社設立。 ○2016 年 1 月 4 日に 1 号投資事業有限責任組合設立(大学から組合への出

資額:150 億円)。 ③大阪大学 166 億円 ○2014 年 12 月 22 日に大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社設立。

○2015 年 8 月 21 日に 1 号投資事業有限責任組合設立(大学から組合への出資額:100 億円)。

○同年 9 月 30 日にマイクロ波化学株式会社に対して 3.0 億円を出資。 ○同年 11 月 11 日にジェイテック株式会社に対して 1.4 億円を出資。 ○同年 11 月 11 日にマトリクソーム株式会社に対して 1.5 億円を出資。

④東北大学 125 億円 ○2015 年 2 月 23 日に東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社設立。 ○同年 9 月 3 日に 1 号投資事業有限責任組合設立(大学から組合への出資

額:70 億円)。 ○同年10月16日に東北大学マグネットインスティテュート株式会社に対し

て 3.4 億円を出資。 (出所:文部科学省資料)

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I-174

(出所:国立大学出資事業シンポジウム資料)

国立大学法人による出資制度の概要

国立大学法人等

出資先のチェック、大学発ベンチャー等との連携

大学発ベンチャー等

事業活動において研究成果を活用

ファンド(投資事業有限責任組合)

認定特定研究成果活用支援事業者

新事業立ち上げのプロフェッショナル等

①認定(経産省と共管)

出資

②認可

経営上の助言、資金供給等の支援

共同研究その他の連携

研究成果の活用促進を通じた新しい社会的価値の創出!

政府

官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議

○ 産業競争力強化法において、国立大学法人等が一定の要件を満たしたベンチャー支援会社等への出資を可能とする制度改正を措置(2014年4月1日施行) 。

文部科学省

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I-175

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)では、未来社会を創成する科学技術イノベーショ

ンの実現のため、研究開発の戦略の立案、戦略的な基礎研究や産学連携による実用化の推進、そ

して、科学技術情報インフラ構築や次世代イノベーション人材の育成などを実施している。研究

成果のベンチャー企業を通じた社会還元も重要な取り組みのひとつであり、ベンチャー支援事業

として「大学発新産業創出プログラム(START)」「出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)」「大学発ベンチャー表彰」を実施している。

●大学発新産業創出プログラム(START)

本事業では、大学発ベンチャー創出を支援するため、事業プロモーターとして認定されたベン

チャーキャピタル等の事業化ノウハウをもった人材が、大学のもつポテンシャルの高い技術シー

ズについて、大学と連携して事業化構想を策定し、ベンチャー創出を目指している。2016 年 6月までに 19 社の START 発ベンチャーが生まれた。

※START は 2012 年度に文部科学省により創設。2015 年度から JST に移管。

●出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)

本事業は、JST の研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対し、出資や人的・技術的

援助を行う。JST がベンチャー企業の株主になることで民間の資金が集まってくる「呼び水効果」

を狙っている。2016 年 6 月までに 8 件の出資を実行した。

項目 内容 出資対象

以下の 2 点を満たすものが対象。 1. JST の研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業 2. 新たに設立する、または設立から概ね 5 年以内の企業

出資の内容 1. 出資できる財産: 金銭および JST が保有する知的財産・研究設備

2. 出資件数:年間 2~5 件程度 3. 出資の上限:[出資比率]原則として総議決権の 1/2 [出資金額]累計額で 1 社あたり 5 億円

担当部署 科学技術振興機構 産学共同開発部 起業支援室 (出所:JST ホームページ(http://www.jst.go.jp/entre/outline.html))

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I-176

●大学発ベンチャー表彰 ~Award for Academic Startups~

本表彰は、大学等における研究開発成果を活用して起業した大学発ベンチャーのうち、今後の

活躍が期待される優れたベンチャーと、特にその成長に寄与した大学や企業等を表彰するもので

ある。JST と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共催で、2014年度に設立された。

2016 年度は、8 月に東京ビッグサイトで「大学発ベンチャー表彰 2016 ~Award for Academic Startups~」表彰式を開催した。

2016 年度 開催概要

項目 内容 目的 大学等における研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みや、

大学や企業からの大学発ベンチャーへの支援等の促進 対象

大学発ベンチャー(定義は以下 1~4) 1. 大学等※の特許を活用して起業したベンチャー企業 2. 特許以外の大学等の研究成果を活用して起業したベンチャー企業 3. 大学等の教職員・学生等による人材移転型ベンチャー企業 4. 大学等が支援した出資・経営支援型ベンチャー企業 あわせて、特にその成長に寄与した機関、企業を表彰。 ※大学等

国公私立大学、高等専門学校、国立試験研究機関、公立試験研究機関、 国立研究開発法人、公益法人等の非営利法人

応募期間 2016年5月9日~6月20日 表彰日・会場 2016年8月25日・東京ビッグサイト 担当部署 科学技術振興機構 産学共同開発部 起業支援室

新エネルギー・産業技術総合開発機構 イノベーション推進部 (出所:JST ホームページ(http://www.jst.go.jp/aas/))

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I-177

厚生労働省

厚生労働省では、ベンチャー支援を通じた産業育成及び雇用の創出のため、例えば以下の取組

を実施している。

生涯現役起業支援助成金

少子・高齢化が進展する中、持続的な成長を実現させていくためには、年齢に関わりなく働く

ことができる生涯現役社会の実現を推進する必要があるが、そのためには、既存の企業による雇

用の拡大だけでなく、起業によって中高年齢者の雇用機会を創出していくことも重要である。

このため、中高年齢者が起業する際に必要となる、募集・採用や教育訓練の経費の一部を助成

することにより、中高年齢者の起業と雇用機会の創出を図る。

医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会

2015 年 12 月 25 日より、厚生労働大臣の私的懇談会として「医療のイノベーションを担うベ

ンチャー企業の振興に関する懇談会」を開催し、医療系ベンチャーを育成するための課題や取組

について議論をしていただき、2016 年 7 月 29 日に報告書を公表したものである。

報告書においては、医療系ベンチャーの育成に当たって、以下のようなパラダイムシフトが重

要であると指摘している。

①「規制から育成へ」

※ 法令の規制を企業に厳格に遵守させるという対応から、ベンチャーの特性と可能性を理解

し、支援し、育成する方向に転換する。

②「慎重からスピードへ」

※ 何事にも慎重を期するような姿勢だけでは育とうという芽を摘んでしまうので、スピード

感と柔軟性を持った取組に転換する。

③「マクロからミクロへ」

※ 大企業とベンチャーを同様に扱うのではなく、ベンチャーが、個々の個性を発揮できるよ

うに、きめ細かい施策を展開する。

そのうえで、医療系ベンチャー企業の振興方策について、「3 つの柱」として ① 「エコシステムを醸成する制度づくり」 ② 「エコシステムを構成する人材の育成と交流の場づくり」

③ 「『オール厚労省』でのベンチャー支援体制の構築」 が挙げられている。

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I-178

農林水産省

農林水産省では、農山漁村 6 次産業化対策事業として「農山漁村の 6 次産業化」に資する施策

を一体的かつ総合的に推進している。 下記の事業は、必ずしもベンチャー企業を対象とした補助事業ではないが、これまで多くのベ

ンチャー企業が農林漁業者と連携して事業化を目指した取り組みをしている。

6次産業化・新産業創出促進事業(事業化可能性調査)

対策事業の一つとして、農林漁業者と異業種の事業者との連携により市場ニーズに即した新商

品や新たなサービスを創出するため、6 次産業化・新産業創出促進事業(事業化可能性調査)を

行った。 2015 年度は、12 の民間事業者等に対して支援を行った。事業概要は以下のとおり。

項目 内容

事業概要 農林漁業者と異業種の事業者間の連携により、市場ニーズに即した新商品や新たなサービ

スを創出するための事業化可能性調査の実施を支援。

対象 民間団体等

補助率 定額(上限 500 万円)

公募期間 (2015 年度)1 次公募 2015 年 2 月 25 日~3 月 6 日、2 次公募 4 月 10 日~4 月 30 日

(2016 年度)2016 年 2 月9日~2月26 日

担当部署 農林水産省食料産業局知的財産課

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I-179

株式会社 日本政策金融公庫

株式会社日本政策金融公庫では、「資本性ローン」や「新株予約権付融資」などを活用したベ

ンチャー企業を含む新規事業者への資金供給や、高校生へのベンチャー教育を目的とした「高校

生ビジネスプラン・グランプリ」などを行っている。

●「資本性ローン」

新規事業へ挑戦する事業者の財務体質の強化を図るため、資本性の資金を無担保・無保証で融

資する制度として、2008 年 4 月に「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」がスタートし

た(小規模事業者向けは 2013 年 3 月スタート)。融資金額は 4,000 万円(小規模事業者向け)ま

たは 3 億円(中小企業向け)を上限に、融資期間は 5 年 1 ヵ月以上 15 年以内(小規模事業者向

け)、5 年 1 ヵ月・7 年・10 年・15 年(中小企業向け)となっており、返済方法は期限一括返済

である。2015 年度の資本性ローンの融資実績は、小規模事業者向けで 147 社(35 億円)、中小企

業向けで 294 社(248 億円)、合計で 441 社(283 億円)となっている。

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

2011 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度

創業/ 新事業型

社数(社) 142 246 664 369 441 金額(億円) 44 134 514 227 283

(出所:日本政策金融公庫ディスクロージャー誌)

●「新株予約権付融資」

新株予約権付融資は、貸付と同時に日本政策金融公庫が新株予約権を取得することで、高い成

長性が見込まれる新事業に取り組みながら、株式公開を目指す中小企業者に対して、事業に必要

な資金を無担保で融資する制度である。融資金額は 1 億 2,000 万円を上限に、融資期間は 7 年以内

となっている。2015 年度の新株予約権付融資の融資実績は、30 社(7.4 億円)となっている。

新株予約権付融資制度

2011 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度

社数(社) 14 16 18 18 30 金額(億円) 5.8 5.2 3.4 2.7 7.4

(出所:日本政策金融公庫ディスクロージャー誌等)

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I-180

●「高校生ビジネスプラン・グランプリ」(2013 年度スタート)

日本政策金融公庫では、創業者向け融資を行ってきた経験・ノウハウを「起業教育」の現場に

還元し、若者の創業マインドの向上を図ることを目指し、2013 年度より全国の高校からビジネ

スプランを募集する「創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」を開催している。

2015 年度は 264 校から 2,333 件のエントリーがあった。 また、募集期間中には、日本政策金融公庫の創業支援担当職員が、希望する高校向けに「出張

授業」を実施し、ビジネスプラン作成をサポートしている。2015 年度は 183 校(396 回)実施、

約 6,300 人が受講した。

高校生ビジネスプラン・グランプリ 第3回開催実績

項目 内容 応募対象 全国の高校の生徒からなるグループまたは個人 各種サポート 希望する高校向けに「出張授業」を実施し、ビジネスプラン作成をサポート スケジュール 2015 年 7 月~10 月中旬 応募受付

2015 年 12 月 ファイナリスト発表 2016 年 1 月 最終審査会

エントリー件数 エントリー数 2,333 件(応募高校数 264 校) 出張授業 183 校(396 回)実施、約 6,300 人が受講 応募者への フィードバック

全ビジネスプランに対し、評価点や今後の課題などのフィードバックコメントを返却

表彰 グランプリ、準グランプリ、審査員特別賞、優秀賞、学校賞、 高校生ビジネスプラン・ベスト 100

(出所:日本政策金融公庫ホームページ(https://www.jfc.go.jp/n/grandprix/))

第4回募集ポスター

「創造力、無限大∞高校生ビジネスプラン・グランプリ」

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I-181

株式会社 日本政策投資銀行

株式会社日本政策投資銀行(DBJ)では、2011 年 11 月に「女性起業サポートセンター」を立

ち上げ、新たなビジネスを志しその成長を探る女性起業家に対し、資金・起業ノウハウ、ビジネ

スマッチング等の総合的なサポートに取り組んでいる。過去 5 回のビジネスコンペティションで

は累計 1,851 件の応募があり、女性起業家の裾野を広げている。

DBJ 女性新ビジネスプランコンペティション

2012 年から年に 1 回、女性起業家を対象とした「DBJ 女性新ビジネスプランコンペティショ

ン」を開催し、受賞者には最大で 1,000 万円の事業奨励金を支給している。 受賞者には奨励金のほかコンペティション終了後 1 年間、事後支援、事業計画のブラッシュア

ップ、起業・経営ノウハウのサポート、企業とのビジネスマッチング等、計画実現へ向けたサポ

ートを行っている。第 5 回コンペティションでは、国内外から 318 件の応募があった。

第 5 回 DBJ 女性新ビジネスプランコンペティション概要

項目 内容 応募対象 創業期にある女性経営者による事業 応募期間 2015 年 12 月 15 日~2016 年 2 月 26 日 応募総数 318 件 受賞者発表 2016 年 6 月 21 日 事業奨励金 大賞

優秀賞 地域みらい賞 事業奨励賞

最大 最大 最大 最大

1,000 万円 500 万円 500 万円 100 万円

担当部署 企業金融第 6 部 女性起業サポートセンター (出所:日本政策投資銀行(http://www.dbj.jp/service/advisory/wec/))

活動実績(抜粋)

女性起業サポートセンター設立以来、様々な活動を実施している。

【定期開催(シリーズ化)】

・DBJ-WEC&WWN 共同開催セミナー

「女性起業家のためのビジネス実践講座~経営を学ぶシリーズ」(2013 年 11 月~) ・DBJ-WEC&日本弁護士連合会共同開催セミナー 「女性起業家のためのリーガル実践講座」(2014 年 9 月~)

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I-182

【その他活動実績(地域との連携)】

項目 内容 2012 年 7 月 「経済産業大臣と女性経営者との懇談会」出席 2012 年 8 月 DBJ-WEC セミナー「女性起業家は語る-先輩起業家に聴く」開催 2012 年 9 月 DBJ-WEC セミナー「資本政策の考え方」「創業期の資金調達」開催 2012 年 10 月 「人材戦略講演会 in 広島」共催(中国経済産業局) 2013 年 5 月 首相官邸「第 6 回若者・女性活躍推進フォーラム」出席 2013 年 5 月 ADFIAP Awards「Corporate Social Responsibility」受賞 2013 年 7 月 「経営支援セミナーin 仙台」共催(東北経済産業局) 2013 年 7 月 「ビジネスプランコンテスト オープニングイベント」講演(京都リサーチパーク(株)) 2013 年 9 月 「ビジネスプランの活かし方」講演((公財)横浜企業経営支援財団) 2013 年 10 月 「平等とイノベーション、女性イノベーターと起業家達」講演(スウェーデン大使館) 2013 年 11 月 「九州女性起業・創業サミット」共催(九州経済産業局 他) 2013 年 11 月 「仙台産業政策デザインフォーラム」出席(仙台市) 2013 年 11 月 「人材戦略講演会 in 広島」共催(中国経済産業局 他) 2013 年 12 月 「女性起業家セミナー(松山)」共催(四国経済産業局 他) 2014 年 3 月 首相官邸「輝く女性応援会議」出席 2014 年 4 月 内閣府「女性の起業ビジネスコンテストチーム第 1 回会合」出席 2014 年 12 月 「起業家の登竜門 ビジネスプランコンペティション応募であなたの事業を磨こう」

共催(静岡県中部地区 SOHO 推進協議会 他) 2014 年 12 月 「いわて女性起業支援セミナー ~輝く女性のために~」

共催(岩手県、復興庁、東北経済産業局 他) 2015 年 3 月 「少子高齢社会における女性起業家の役割」パネルディスカッション出演(関西ベンチ

ャー学会) 2015 年 3 月 「九州創業促進フォーラム」共催(九州経済産業局 他) 2015 年 11 月 「起業家の登竜門 ビジネスプランコンペティション応募であなたの事業を磨こう」

共催(静岡県中部地区 SOHO 推進協議会 他)

2015 年 11 月 「輝く女性起業セミナー」共催(北都銀行 他) 2015 年 12 月 「女性起業支援セミナー in 岡山」共催(中国銀行・トマト銀行)

2015 年 12 月 「ほくぎん女性起業支援セミナー」共催(北陸銀行) 2016 年 1 月 地方創生特別企画「広島女性起業支援セミナー」共催(広島県・広島市) 2016 年 2 月 地方創生支援企画「女性のための起業支援セミナー」共催(山陰合同銀行) 2016 年 2 月 「九州女性起業家支援ネットワーク構築フォーラム」後援(九州経済産業局) 2016 年 3 月 「ウーマンミーティング in Tokyo」後援(経済産業省・関東経済産業局) 2016 年 5 月 「とっとり起業女子フォーラム」後援(鳥取県 他)

(出所:日本政策投資銀行)

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I-183

株式会社 産業革新機構

株式会社産業革新機構(INCJ:産革機構)は、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特

別措置法(産業再生法)に基づき設立された投資ファンドである。

出資者

政府保証

運営期間

政府出資:2,860 億円 民間出資:140.1 億円(26 社、2 個人)

金融機関から資金調達する場合は 1 兆 8,000 億円までは政府が保証

2009 年 7 月 27 日に営業を開始し、運営期間は 15 年間

【基本理念と投資基準】

(出所:産業革新機構資料)

【投資案件に対する評価軸】 産革機構は、個別の投資案件の検討を行

う際、「投資収益性」と「事業計画の実現可

能性」を客観的に判断すると同時に、「社会

に与えるインパクト:投資インパクト」の

有無や強弱を判断軸に置いている。 「投資収益性」と「事業計画の実現可能

性」の二つの判断軸については、投資ファ

ンドの手法により評価を行っており、事

業・技術・財務・法務・人事等の様々な観

点からデューデリジェンスを行っている。 (出所:産業革新機構資料)

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I-184

「投資インパクト」については産革機構特有の判断軸であり、下図のように、その投資案件が

持っている社会へのインパクトを 1)次世代産業・新興企業の育成と蓄積、2)既存企業の革新

を通じた次世代産業の成長、の二つの視点で、現在から未来にかけて起こすべき変化の実現性を、

総合的に判断している。

【産革機構の目的 具体的な投資インパクト】

(出所:産業革新機構資料)

産革機構は、投資活動が事業の中心であった最初の 6 年間を経て、投資活動とバリューアップ

とエグジットが併存する第二ステージに移行。日本再興戦略改訂 2015 にて企業の新陳代謝の促

進が謳われているが、第二ステージにおいても、成長戦略の一翼を担う組織として、アーリース

テージ、ベンチャー企業、事業の再編・統合、海外経営資源の活用といった 4 つの事業化ステー

ジに対する投資を、引き続き実施する予定。特に、アーリーステージ、ベンチャー企業への投資

にあたっては、成長戦略にも沿って、AI(人工知能)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネッ

ト化)、ロボット、健康・医療等の分野に注目し、重点的に投資を行うこととしている。

2015 年度のアーリーステージやベンチャー企業等への投資については、新規投資 13 件(うち

1 件は VC への出資)、追加投資 4 件を決定。そのうち、健康・医療分野へは、新規投資 3 件、

追加投資 2 件であった。また、上記投資のほか、投資哲学を共有するベンチャーファンドに対し

ての戦略的 LP 投資を 3 件行っている。

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I-185

産業革新機構の 2015 年度ベンチャー投資一覧

(注 1)公開資料に基づく投資金額 (注 2)30 百万 US ドル×115.4 円(2016-1Q 平均為替で計算)

産業革新機構の 2015 年度 LP 投資一覧

(注)公開資料に基づく投資金額

産業革新機構の 2016 年度ベンチャー投資一覧(2016 年 7 月末現在)

(注 1)公開資料に基づく投資金額 (注 2)10 百万 US ドル×107.9 円(2016-2Q 平均為替で計算) (注 3)7.5 百万 US ドル×103.8 円(2016-7 月平均為替で計算)

日付(公表日)

投資先企業名投資金額(億円)(注)

国内外別

2015/4/14 EEIスマートエナジー投資事業有限責任組合 50.0 国内2016/1/4 UMI1 号投資事業有限責任組合 60.0 国内2016/2/24 テックアクセル1号投資事業有限責任組合 34.6 国内

144.6合 計

日付(公表日)

投資先企業名投資金額(億円)(注1)

国内外別 業種 ステージ 種別

2015/6/17 株式会社フローディア 6.0 国内 半導体 アーリー VC(新規)2015/7/23 ナノミストテクノロジーズ株式会社 5.0 国内 工業 エクスパンション VC(新規)2015/7/27 スマートインサイト株式会社 5.0 国内 ソフトウェア エクスパンション VC(追加)2015/8/3 株式会社イノフィス 6.5 国内 工業 アーリー VC(新規)2015/8/5 株式会社スマートドライブ 6.6 国内 ITサービス アーリー VC(新規)2015/8/6 レナセラピューティクス株式会社 6.0 国内 製薬 シード VC(新規)2015/9/11 株式会社アクアセラピューティクス 5.0 国内 製薬 アーリー VC(追加)2015/10/1 株式会社エルテス 3.0 国内 ITサービス レーター VC(新規)2015/10/28 株式会社ユニバーサルビュー 3.0 国内 医療機器 エクスパンション VC(新規)2015/12/28 株式会社Trigence Semiconductor 5.2 国内 半導体 アーリー VC(追加)2016/1/4 ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社 0.2 国内 VC - VC(新規)2016/1/19 株式会社F.TRON 9.0 国内 ITサービス エクスパンション VC(新規)2016/2/1 SOINN株式会社 2.5 国内 ITサービス アーリー VC(新規)2016/2/25 株式会社Orphan Disease Treatment Institute 3.6 国内 製薬 アーリー VC(追加)2016/3/1 ASTROSCALE PTE. LTD. (注2) 34.6 海外 その他産業 シード VC(新規)2016/3/3 株式会社インキュベーション・アライアンス 7.0 国内 工業 アーリー VC(新規)2016/3/24 ステラファーマ株式会社 35.0 国内 医療機器 アーリー VC(新規)

143.2合 計

日付(公表日)

投資先企業名投資金額(億円)(注1)

国内外別 業種 ステージ 種別

2016/4/27 株式会社日本エンブレース 4.0 国内 医療 アーリー VC(新規)2016/5/26 株式会社三次元メディア 8.0 国内 工業 エクスパンション VC(新規)2016/6/8 Mido Holdings Ltd. (注2) 10.8 海外 IT アーリー VC(追加)2016/7/19 アトナープ株式会社 (注3) 7.8 国内 工業製品 アーリー VC(新規)2016/7/25 株式会社ABEJA 5.0 国内 ITサービス アーリー VC(新規)

35.6合 計

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I-186

株式会社 地域経済活性化支援機構

株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)は、2009 年 10 月 14 日に株式会社企業再生支援

機構法に基づき成立した株式会社企業再生支援機構(ETIC)を前身とし、2013 年 3 月 18 日の法

改正により抜本的に改組・機能拡充を行い、現在に至っている。2016 年 6 月末時点の資本金は

260 億 8,480 万円(預金保険機構 255 億 8,480 万円、民間金融機関 5 億円)である。 ETIC では、有用な経営資源を有しながら、過大な債務を負っている中小企業者等の事業の再

生支援を目的とした業務を行っていたが、新しい根拠法である株式会社地域経済活性化支援機構

法に基づく REVIC では、従前の業務に加え、事業再生・地域活性化ファンドの運営会社の設立・

経営管理(特定経営管理)、金融機関等に対する専門家の派遣(特定専門家派遣)、非メイン行の

貸付債権の信託引受(特定信託引受)、事業会社に対する出融資(特定出資)についての業務を

新たに開始した。更に、2014 年 10 月 14 日の機構法の一部を改正する法律では、事業再生・地

域活性化ファンドに対する LP 出資(特定組合出資)、経営者保証の付された貸付債権などの買

取り(特定支援・特定債権買取)、特定専門家派遣先の範囲を REVIC が関与するファンドなどの

投資先事業者へ拡大する等の業務が追加された。 ベンチャーへの成長資金供給に関する業務については、REVIC のファンド運営子会社(GP:

REVIC キャピタル他)が、民間のファンド運営会社と共に組成した、地域活性化ファンドを通

じて行われる(REVIC と民間事業者とで合弁のファンド運営会社を設立する場合もある)。2016

年 6 月末時点で、設立済みのファンドは 33 本、うち再生ファンドが 3 本、地域活性化ファンド

が 30 本となっている。また、30 本の地域活性化ファンドのうち、ベンチャーを投資対象とした

ファンドが 4 本、残る 26 本については、投資対象によって観光・ヘルスケア・グロースと分類

しているが、ベンチャーへの投資が可能なファンドも多い。

REVIC の支援期間は、有限であることから、ファンドの存続期間は 6~7 年のものが大半とな

っている。 REVIC とベンチャーファンドの投資先への関与の仕方は、ガバナンスの取り方や投資先のニ

ーズに応じ異なっており、経営支援に深く関与するハンズオン型もあるが、マイノリティ出資に

よるハンズオフ型もあり、個別の事情に合わせて対応している。

REVIC のファンド運営業務

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I-187

活性化ファンド組成実績(2016 年 7 月 29 日時点) 対

象 分類 ファンド名 GP 出資約束

金額(億円) 組成 年月

観光 観光活性化マザーファンド ㈱RD 観光ソリューションズ 52 2014/4 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

ヘルスケア 地域ヘルスケア産業支援ファンド ㈱AGS コンサルティング 100 2014/9 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース 地域中核企業活性化 REVIC パートナーズ㈱ 290.5 2015/4 投資事業有限責任組合

観光 わかやま地域活性化 紀陽リース・キャピタル㈱ 10 2014/1 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

ベンチャー しがぎん成長戦略ファンド しがぎんリース・キャピタル㈱ 5 2014/4 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース 青函活性化 ㈱北洋キャピタル 2 2014/5 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース トリプルアクセル成長支援ファンド 山口キャピタル㈱ 10 2014/5 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース ぐんま医工連携活性化 ぐんぎんリース㈱ 8.6 2014/11 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

ベンチャー とっとり大学発・産学連携 ごうぎんキャピタル㈱ 10.2 2015/1 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

ベンチャー しまね大学発・産学連携 ごうぎんキャピタル㈱ 10.2 2015/1 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース NCB 九州活性化 NCB キャピタル㈱ 50 2015/1 投資事業有限責任組合

グロース 飛騨・高山さるぼぼ結ファンド ひだしんイノベーションパートナーズ㈱ 5 2015/2 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光 やまと観光活性化 ㈱AGS コンサルティング 1.5 2015/3 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

ベンチャー いばらき新産業創出 ㈱常陽産業研究所 10 2015/3 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース 八十二地域産業グロースサポート 八十二キャピタル㈱ 5 2015/3 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光 ALL 信州観光活性化 八十二キャピタル㈱ 12 2015/3 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光 しずおか観光活性化 静岡キャピタル㈱ 13 2015/3 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース 沖縄活性化 ㈱沖縄活性化ソリューションズ 20 2015/6 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光 佐賀観光活性化 ㈱佐銀キャピタル&コンサルティング 5 2015/7 投資事業有限責任組合第 1 号 REVIC キャピタル㈱

観光 ふくい観光活性化 ㈱福井キャピタル&コンサルティング 3 2015/8 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース 広域ちば地域活性化 ㈱RD 観光ソリューションズ 5 2015/9 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光 千葉・江戸優り佐原観光活性化

ちばぎんキャピタル㈱ 5 2015/9 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース

広域ちば地域活性化 ちばぎんキャピタル㈱ 5

2015/10

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱ 観光 九州観光活性化 ㈱RD 観光ソリューションズ 34 2015/10

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

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I-188

象 分類 ファンド名 GP 出資約束

金額(億円) 組成 年月

域 * 続き *

グロース

あわぎん地方創生 阿波銀コンサルティング㈱ 10

2015/10

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

観光

高知県観光活性化 ㈱四国地域経済研究所 3

2015/10

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱ グロース

SI 地域創生ファンド 池田泉州キャピタル㈱ 10

2015/12

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース

いばらき商店街活性化 ㈱常陽産業研究所 3.5

2015/12

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱ 観光

かながわ観光活性化 横浜キャピタル㈱ 10

2016/3

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

グロース

こうぎん地域協働 オーシャンリース㈱ 3

2016/4

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱ グロース 飛騨・高山さるぼぼ結ファンド 2 号 ひだしんイノベーションパートナーズ㈱ 5 2016/6

投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

復興 九州広域復興支援 ロングブラックパートナーズ㈱ 116.9 2016/7 投資事業有限責任組合 REVIC キャピタル㈱

注)REVIC が LP としてのみ関わっているファンドは含まず。

(出所:REVIC)

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I-189

株式会社 海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)

株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は、日本の魅力ある商品・サービスの

海外需要開拓に関連する支援・促進を目指し、2013 年 11 月、法律に基づき設立された官民ファ

ンドである。

「日本の魅力(クールジャパン)」を事業化し、海外需要の獲得につなげるため、「メディア・

コンテンツ」「食・サービス」「ファッション・ライフスタイル」をはじめとする様々な分野でリ

スクマネーの供給を行っている。 クールジャパン機構は「民業補完」の徹底の下、民間投資の「呼び水」としてリスクマネーを

供給し、民間部門では成し遂げ得なかった、海外需要獲得の基盤となる「プラットフォーム」(拠

点)や「サプライチェーン」(流通網)の整備等を率先して展開する。 また、魅力ある財・サービスの海外展開の出口を拡充し、地域の中小・中堅企業や創造的なク

リエイター、デザイナー等が付加価値に見合うビジネスを展開する地盤を整える。

クールジャパン機構の出資金と事業スキーム(2016 年 6 月現在)

政府出資(財投特会等)

民間出資

出資

出資

事業会社 等

民間企業 等

コンソーシアム各企業

出資出資

・・・・・

リスクマネー供給機能

出資による支援とともに、事業・経営支援等も一体的に実施

○拠点となる空間(物理的空間/

メディア空間)の整備・確保

○M&A・合弁設立等

を含めた海外需要の獲得・拡大

○潜在力ある意欲的な地域企業の海外展開

○海外展開の間接的サポート事業

○訪日外国人観光客向け地域ビジネス(インバウンド)

実施事業の例[クールジャパン機構]

416億円(現在)

【予算】

2016年度政府予算財投特会170億円政府保証330億円

107億円(現在)

※存続期間:20年以内(2013年11月設立)

出資金 523億円(資金枠(予算) 約1000億円)

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I-190

クールジャパン機構の投資案件一覧(2016 年 6 月現在)

(注 1)表中のハイライトはベンチャー関連投資

(注 2)投資金額は公表時の資料に基づく金額

(出所:クールジャパン機構)

公表日 事業者名 事業概要 投資金額 対象国

1 2014/9/25 Tokyo Otaku Mode世界に向けて日本のポップカルチャーの魅力を発信するメディア事業およびEC事業

15億円 全世界

2 2014/9/25CLK Cold Storage CompanyLimited

ベトナムにおけるコールドチェーン整備のための物流事業 7.35億円 ベトナム

3 2014/9/25 ICJ Department Storeマレーシアにおけるクールジャパン発信の拠点となる商業施設事業

9.7億円 マレーシア

4 2014/9/25 寧波阪急商業有限公司中国(寧波市)におけるジャパン・エンターテイメント型の大規模商業施設事業

110億円 中国

5 2014/10/30アニメコンソーシアムジャパン

正規版日本アニメの海外向け動画配信 10億円 全世界

6 2014/10/30 MCIPホールディングスアジア地域におけるジャパン・エンタテインメント・コンテンツの創造・発信事業

10億円 アジア

7 2014/12/8Japan Food TownDevelopment

シンガポールにおけるジャパンフードタウン事業 7億円 シンガポール

8 2014/12/8 力の源ホールディングス 世界主要都市(欧米豪)に日本食の魅力を発信する外食事業7億円(最大13億円の融資枠)

欧米豪

9 2015/2/19 SDI Media Group, Inc.ジャパン・コンテンツの海外展開を加速する映像ローカライゼーション事業

70億円 全世界

10 2015/3/4 WAKUWAKU JAPAN 海外におけるジャパン・チャンネル事業 44億円 全世界

11 2015/3/30KADOKAWA ContentsAcademy

海外におけるクリエイター人材育成スクール事業 4.5億円 全世界

12 2015/4/6GREEN TEA WORLD USA,Inc.

米国における長崎県発「日本茶カフェ」事業 2.6億円 米国

13 2015/11/12 SAS ENIS パリにおける日本各地の地域産品の欧州展開支援事業へ出資 1億円 欧州

14 2016/3/23 せとうち観光活性化ファンド 瀬戸内地域における観光産業活性化のためのファンドへ LP 出資 10億円 インバウンド

15 2016/3/25 Gulf Japan Food Fund中東向け日本の「食」・「農」輸出促進支援のためのファンドへLP出資

40百万米ドル 中東

16 2016/4/21 百戦錬磨 訪日外国人旅行者に対応した民泊仲介サービス事業へ出資 3億円 インバウンド

17 2016/6/20

Cipher Nippon InvestmentL.L.C.

中東における日本の「食」・「小売」の多店舗展開事業へ出資 3億円 中東

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「起業」をもっと身近に・簡単に!

ベンチャー育成ステージ別ベンチャー支援施策マップ

1参考

●初等中等教育における起業体験活動の普及促進 【小・中学校における起業体験推進事業】文部科学省  初等中等教育局 高校教育改革PT/TEL.03-5253-4111(内線:4728) 【高校生ビジネスプラン・グランプリ】財務省 政策金融課/TEL.03-3581-7686

●高等教育における起業家教育普及促進 (EDGE、UVGP、起業家甲子園等) 【グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGE)】文部科学省  科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課/TEL.03-6734-4023 【UVGP】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569 【起業家甲子園】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課/TEL.03-5253-5748

●創業希望者向け創業スクール開催 【地域創業促進支援事業(創業スクール)】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767

●女性起業家等支援ネットワークの構築 【女性起業家等支援ネットワーク構築事業】経済産業省 経済社会政策室/TEL.03-3501-0650

●政府系金融機関による女性向け起業セミナー、 ビジネスコンペティション(日本政策金融公庫、DBJ) 【創業セミナー、ビジネスコンペティション】財務省 政策金融課/TEL.03-3581-7686

●シリコンバレー派遣を通じたイノベーターの育成 (始動 Next Innovator) 【シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト(人材の架け橋)】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●NEDOによる研究者等向けビジネスプラン研修(TCP) 【Technology Commercialization Program(TCP)】経済産業省   )ODEN(0715-025-440.LET )省産経(8771-1053-30.LET/課進推携連学大・興振術技

●地方の研究開発ベンチャー起業家候補の育成 (NEDOによる地方キャラバンの実施) 【NEDOによるベンチャーキャラバン】経済産業省   )ODEN(0715-025-440.LET )省産経(8771-1053-30.LET/課進推携連学大・興振術技

●独創的なIT人材によるアイデアの実現を支援 (未踏、異能vation) 【未踏IT人材発掘・育成事業】経済産業省 情報処理振興課/TEL.03-3501-2646 【異能vation】総務省 情報通信国際戦略局技術政策課 /TEL.03-5840-7629(業務実施機関:(株)角川アスキー総合研究所)

起業家教育・人材育成

起業家精神の啓蒙活動●ベンチャーを称える表彰制度 (日本ベンチャー大賞、大学発ベンチャー表彰、 Japan Venture Awards、起業家甲子園・万博等) 【日本ベンチャー大賞】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569 【大学発ベンチャー表彰】 文部科学省 産業連携・地域支援課 /TEL.03-6734-4023(文科省) TEL.03-6380-9014(JST) 経済産業省 大学連携推進室 /TEL.03-3501-0075(経産省) TEL.044-520-5172(NEDO)

 【Japan Venture Awards】中小企業庁  創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767 【起業家甲子園・万博】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課/TEL.03-5253-5748

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「事業化」の資金・ノウハウ提供します! 「成長」の機会増やします!

ライフサイエンス系●バイオベンチャー等の育成支援 経済産業省 生物化学産業課/TEL.03-3501-8625 厚生労働省 医政局経済課/TEL.03-5253-1111(内線:2530)

生涯現役起業系●中高年齢者の起業について人材確保に要する費用の一部を助成 【生涯現役起業支援助成金】厚生労働省  職業安定局雇用開発企画課/TEL.03-3502-1718

本格テッキー系●NEDOによる研究開発型ベンチャーの立ち上げを目指す 起業家候補の事業化活動支援(SUIプログラム) 【起業家候補(スタートアップイノベーター)支援事業】経済産業省  技術振興・大学連携推進課/TEL.03-3501-1778(経産省) TEL.044-520-5170(NEDO)

●NEDOによる認定VCの出資を受ける研究開発型ベンチャーの 実用化開発支援(STS支援) 【研究開発型ベンチャー支援事業】経済産業省 技術振興・大学連携推進課/TEL.03-3501-1778(経産省) TEL.044-520-5170(NEDO)

●JSTによる大学研究者への民間人材のマッチングによる 大学発ベンチャー創出支援(START) 【大学発新産業創出プログラム(START)】文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 /TEL.03-6734-4023(文科省) TEL.03-5214-7054(JST)

●JSTによる研究開発型ベンチャーへの出資(SUCCESS) 【出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)】文部科学省  科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 /03-6734-4023(文科省) 03-6380-9014(JST)

●NEDOによる新エネルギー分野のベンチャーの FS・技術開発・事業化に係る一貫的支援 【新エネルギーベンチャー技術革新事業】経済産業省  新エネルギー対策課/TEL.03-3501-4031

IT系●先進的プロジェクトの創出に向けた 企業連携・資金・規制面からの集中支援(IoT推進ラボ) 【IoT推進ラボ】経済産業省 情報経済課/TEL.03-3501-0397

●VC等の支援を受けるIT系ベンチャーの事業化を補助/ モデルケース形成(I-Challenge!等) 【ICTイノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge!)】総務省  情報通信国際戦略局技術政策課/TEL.03-5253-5727

ローカルビジネス系●創業・第二創業に要する費用を補助 【地域創業促進支援事業(創業・第二創業補助金、創業支援事業者補助金)】 中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767

●創業者向けの無担保又は低利での 融資、資本性ローン(日本政策金融公庫) 【新創業融資制度】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767 【再挑戦支援資金】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767 【中小企業経営力強化資金(国民生活事業)】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767 【中小企業経営力強化資金(中小企業事業)】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767 【女性、若者/シニア起業家支援資金】経済産業省  新規産業室/TEL.03-3501-1569

●農林漁業における新産業創出・作業効率化のための 新技術導入実証・支援 【地域の競争力強化のための革新的技術体系の確立支援】農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究推進課/TEL.03-3502-7438 【6次産業化サポート事業のうち6次産業化・新産業創出促進事業】農林水産省 食料産業局 知的財産課/TEL.03-6738-6422

リスクマネー供給全般●官民ファンド、政府系金融機関による出資・ハンズオン支援 【産業革新機構】経済産業省 産業再生課/TEL.03-3501-1560 【クールジャパン機構】経済産業省 クリエイティブ産業課/TEL.03-3501-1750 【ファンド出資事業(中小機構)】中小企業庁 技術・経営革新課/TEL.03-3501-1816 【農林漁業成長産業化ファンド】農林水産省 食料産業局産業連携課/TEL.03-6744-2076 【官民イノベーションプログラム】文部科学省 高等教育局国立大学法人支援課/TEL.03-6734-3760 【地域低炭素投資促進ファンド事業】環境省  総合環境政策局 環境経済課/TEL.03-5521-8240 【地域経済活性化支援機構】内閣府 地域経済活性化支援機構担当室/TEL.03-3506-6655 【政府系金融機関による出資等】財務省 政策金融課/TEL.03-3581-7686

●政府補助金による研究開発成果の事業化推進 (SBIR制度における多段階選抜の導入、政府調達への案件紹介等) 【SBIR(中小企業技術革新制度)】中小企業庁(全府省)  技術・経営革新課/TEL.03-3501-1816 取引課/TEL.03-3501-1669

●シリコンバレーでの現地企業・VC等との 交流機会の提供(企業・機会の架け橋) 【シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト(機会の架け橋)】 経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●ベンチャー、既存企業やVCが参加する 国内マッチングイベント等の開催 (ベンチャー創造協議会、 スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク (S-NET)、オープンイノベーション協議会、 起業家万博、イノベーション・ジャパン等) 【ベンチャー創造協議会】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

 【スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)】 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局/TEL.03-6257-1778

 【オープンイノベーション協議会】経済産業省 技術振興・大学連携推進課 /TEL.03-3501-1778(経産省) TEL.044-520-5170(NEDO)

 【起業家万博】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課/TEL.03-5253-5748

 【イノベーション・ジャパン】 文部科学省 産業連携・地域支援課 /TEL.03-6734-4020(文科省) TEL.03-5214-7519(JST) 経済産業省 大学連携推進室 /TEL.03-3501-0075(経産省) TEL.044-520-5172(NEDO)

海外との連携

既存企業との連携

●政府調達におけるベンチャーを含む 新規中小企業者の契約目標の設定(官公需法等) 【官公需施策】中小企業庁 取引課/TEL.03-3501-1669

●政府が保有するデータの開放促進 (カタログサイト整備、ユースケース創出等) 【オープンデータ2.0】内閣府 情報通信技術(IT)総合戦略室/TEL.03-6910-0256

 【政府が保有するデータの開放促進(カタログサイト整備)】 総務省 行政管理局行政情報システム企画課/TEL.03-5253-6079

 【オープンデータ推進】経済産業省 情報プロジェクト室/TEL.03-3501-2964

●柔軟な規制緩和制度 (グレーゾーン解消制度、企業実証特例制度)の 活用促進 【グレーゾーン解消制度、企業実証特例制度】経済産業省  産業構造課/TEL.03-3501-1628

●安全保障分野へのベンチャーを含む 新規企業参入の機会提供 (安全保障技術研究推進制度) 【安全保障技術研究推進制度】防衛装備庁 技術戦略部 技術振興官 /TEL.03-3268-3111(代表)内線28513, 28514

●医療分野でのベンチャー参入 (革新的医療機器の承認申請コスト軽減等) 【革新的医療機器相談承認申請支援事業】厚生労働省  医薬・生活衛生局医療機器・再生医療等製品担当参事官室 /TEL.03-5253-2419

政府との連携

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支援環境整備プレーヤ別ベンチャー支援施策マップ

2参考

ネットワーク形成

大 学

既存企業

●ベンチャー、既存企業やVCが参加する 国内マッチングイベント等の開催 【ベンチャー創造協議会】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569 【スペース・ニューエコノミー創造 ネットワーク(S-NET)】内閣府 宇宙開発戦略推進事務局/TEL.03-6257-1778 【オープンイノベーション協議会】経済産業省  技術振興・大学連携推進課 /TEL.03-3501-1778(経産省) TEL.044-520-5170(NEDO) 【起業家万博】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 /TEL.03-5253-5748 【イノベーション・ジャパン】 文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 /TEL.03-6734-4020 TEL.03-5214-7519(JST) 経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進室 /TEL.03-3501-0075 TEL.044-520-5172(NEDO)

●日本の投資環境の「見える化」 (閣僚・知事等によるトップセールス、 ベンチャー・VC等のデータベース整備) 【対日投資に係るトップセールス】経済産業省  貿易振興課/TEL.03-3501-1662 【ベンチャー・VC等のデータベース整備】経済産業省  新規産業室/TEL.03-3501-1569

●地方のベンチャー支援団体の活動促進 (NICT委嘱のメンター派遣等) 【起業家甲子園・万博】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 /TEL.03-5253-5748

●産官学連携/PM主導等による 現場ニーズ起点の研究開発の推進 (ImPACT、NEDOのPM機能強化、 農林水産分野の「知」の集積と活用の場、 クリニカル・イノベーション・ネットワーク、 ジャパン・バイオデザインプログラム、 国土交通分野の新技術活用システム等) 【ImPACT】内閣府 科学技術・イノベーション担当 革新的研究開発推進プログラム室/TEL.03-6257-1339 【NEDOのPM機能強化】経済産業省 NEDO室/TEL.03-3501-1778 【「知」の集積と活用の場(新たな産学連携研究の仕組み)】 農林水産省 農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室  /TEL.03-3502-5530 【クリニカル・イノベーション・ネットワーク】厚生労働省  医政局研究開発振興課/TEL.03-3595-2430 【ジャパン・バイオデザインプログラム】文部科学省  研究振興局 ライフサイエンス課/TEL.03-6734-4106 【国土交通分野の新技術活用システム】国土交通省  技術調査課/TEL.03-5253-8125

支援人材VC・エンジェル等

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ベンチャー

●VCファンドへの投資促進(ベンチャー投資促進税制) 【ベンチャー投資促進税制】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●官民ファンド、政府系金融機関等を活用したベンチャー投資/カーブアウトの促進 【産業革新機構】経済産業省 産業再生課/TEL.03-3501-1560 【クールジャパン機構】経済産業省 クリエイティブ産業課/TEL.03-3501-1750 【農林漁業成長産業化ファンド】農林水産省 食料産業局産業連携課/TEL.03-6744-2076 【出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)】文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 /TEL.03-6734-4023(文科省) TEL.03-6380-9014(JST) 【官民イノベーションプログラム】文部科学省 高等教育局国立大学法人支援課/TEL.03-6734-3760 【地域経済活性化支援機構】内閣府 地域経済活性化支援機構担当室/TEL.03-3506-6655 【政府系金融機関を活用したベンチャー投資/カーブアウトの促進】財務省 政策金融課/TEL.03-3581-7686

既存企業のベンチャー投資促進

リスクマネー供給促進●エンジェル税制利用促進/【エンジェル税制】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●官民ファンド、政府系金融機関によるLP出資 【産業革新機構】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569 【クールジャパン機構】経済産業省 クリエイティブ産業課/TEL.03-3501-1750 【中小機構によるファンド出資】中小企業庁 技術・経営革新課/TEL.03-3501-1816 中小企業基盤整備機構ファンド事業部/TEL.03-5470-1673 【農林漁業成長産業化ファンド】農林水産省 食料産業局産業連携課/TEL.03-6744-2076 【官民イノベーションプログラム】文部科学省 高等教育局国立大学法人支援課/TEL.03-6734-3760 【地域低炭素投資促進ファンド事業】環境省 総合環境政策局 環境経済課/TEL.03-5521-8240 【地域経済活性化支援機構】内閣府 地域経済活性化支援機構担当室/TEL.03-3506-6655 【政府系金融機関によるLP出資】財務省 政策金融課/TEL.03-3581-7686

●クラウドファンディングの利用促進 内閣府 地方創生推進事務局/TEL.03-6206-6174

●大学改革(指定国立大学、卓越大学院(仮称)等) 文部科学省 高等教育局 国立大学法人支援課/TEL.03-6734-3760 大学振興課/TEL.03-6734-3336

●国立4大学によるベンチャー投資ファンドへの出資(官民イノベーションプログラム) 文部科学省 高等教育局国立大学法人支援課/TEL.03-6734-3760 経済産業省 大学連携推進室/TEL.03-3501-0075

●産学共同研究の促進(企業拠出資金と同額の補助) 【産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム】文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課/TEL.03-6734-4023(文科省) TEL.03-5214-7997(JST)

●高等教育における起業家教育普及促進(EDGE、UVGP、起業家甲子園等) 【グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGE)】文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課/TEL.03-6734-4023 【UVGP】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569 【起業家甲子園】総務省 情報流通行政局 情報流通振興課/TEL.03-5253-5748

●地域の大学発イノベーションモデルケース形成(地域イノベーション・エコシステム形成プログラム) 【地域イノベーション・エコシステム形成プログラム】文部科学省 科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課/TEL.03-6734-4196

大学のベンチャー創出機能強化

支援人材育成・獲得●事業化支援のモデルケース形成を通じた目利き人材のネットワーク構築 【新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●外国企業・VC等による国内中堅・中小企業、ベンチャー等への投資促進 【ファンド活用による中堅・中小企業のグローバルアライアンス形成支援】経済産業省 貿易振興課/TEL.03-3501-1662

●研究開発型ベンチャーを支援する国内外のVCの認定 【研究開発型ベンチャー支援事業】経済産業省 技術振興・大学連携推進課 /TEL.03-3501-1778(経産省) TEL.044-520-5170(NEDO)

●地方のベンチャー等への経営人材・経営支援人材の派遣支援 【プロフェッショナル人材事業】内閣府 地方創生推進室/TEL.03-6257-1412 【専門家継続派遣事業(中小機構)】中小企業庁 経営支援課/TEL.03-3501-1763

●産業競争力強化法に基づく創業支援事業計画の策定促進 【地域の創業支援体制整備のための産業競争力強化法に基づく創業支援事業計画の策定支援】中小企業庁 創業・新事業促進課/TEL.03-3501-1767

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国内ベンチャー育成

成長促進

人材育成

事業化支援

世界への接続人材・企業レベル別ベンチャー支援施策マップ

3参考

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シリコンバレー

ボストン

オースチン

ロサンゼルス

イスラエル

シンガポール

ロンドン

・・・

世界のベンチャー拠点

●シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト -人材の架け橋:毎年20-30 人のイントラプレナーや起業家等を シリコンバレーに派遣(始動 Next Innovator ) 【シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト(人材の架け橋)】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●研究者・技術者等をシリコンバレー等へ派遣 (NEDO/Technology Commercialization Program ) 【Technology Commercialization Program (TCP )】経済産業省 技術振興・大学連携推進課/TEL. 03-3501-1778 (経産省) TEL.044-520-5170 (NEDO )

〈アウトバウンド〉

●東京大学・東北大学・大阪大学によるスタンフォード大学と連携した 医療機器等の開発人材の育成(バイオデザインプログラム) 【ジャパン・バイオデザインプログラム】文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課 /TEL. 03-6734-4106

〈インバウンド〉

人材レベルでの連携

企業レベルでの連携

〈インバウンド〉

●シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト-企業の架け橋:5年間で200 社をシリコンバレーに派遣-機会の架け橋:東京とシリコンバレー双方で ビジネスマッチングイベントやシンポジウムを開催 【シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト(人材の架け橋)】経済産業省 新規産業室/TEL.03-3501-1569

●国内研修と海外イベント派遣(シリコンバレー、シンガポール等)によって 知財を活用したビジネスモデル構築を支援 (ジェトロ・イノベーション・プログラム) 【ジェトロ・イノベーション・プログラム】JETRO イノベーション促進課 /TEL.03-3582-5770

●ベンチャー企業のCEO をイスラエルへ派遣 【イスラエル政府によるヤング・リーダーシップ・プログラム】経済産業省 中東アフリカ課/TEL.03-3501-2283

〈アウトバウンド〉

●外国企業・VC等による国内中堅・中小企業、ベンチャー等への投資促進 【ファンド活用による中堅・中小企業のグローバルアライアンス形成支援】経済産業省 貿易振興課/TEL.03-3501-1662

●JETRO による対日投資個別案件支援 【JETRO による対日投資の促進】経済産業省 貿易振興課/TEL.03-3501-1662

●研究開発型ベンチャーを支援する海外VC の認定 【研究開発型ベンチャー支援事業】経済産業省 技術振興・大学連携推進課/TEL.03-3501-1778 (経産省) TEL.044-520-5170 (NEDO )

●東京開業ワンストップセンターの設置 東京都 政策企画局調整部/TEL.03-5388-2865 東京開業ワンストップセンター/TEL.03-3582-4934

●イスラエル企業との共同研究開発を支援 【国際研究開発事業】経済産業省 産業技術政策課・国際室  ①METI(産業技術環境局 国際室)/TEL.03-3501-6011 ②NEDO(国際部)/TEL.044-520-5190

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ベンチャー⽩書 2016 ベンチャーニュース特別版 ベンチャービジネスに関する年次報告 2016 年 11 ⽉ 2 ⽇ 第 1 版発⾏

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