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2016年度入試の 傾向と学習アドバイス 分析:城南予備校 177

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Page 1: 2016年度入試の 傾向と学習アドバイス - TAMAGAWA · 単語・熟語帳のセンター試験レベルま でを繰り返し、このレベルの問題を確実に正解できるようになろう。

2016年度入試の傾向と学習アドバイス

分析:城南予備校

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全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス

<学習アドバイス>◎60 分で 37 問、全てマーク式。昨年度と比較すると、類義語・文法の問題がそれぞれ 2 問ずつ減っ

た一方、読解問題が 2 問増え、全体としては2問減少した。シンプルな良問が多く、バランス良く解けば余裕をもって取り組める問題量である。

◎語彙・文法系の問題は基本レベルの知識を問う問題が多く、読解系の問題も標準的な語彙レベルの読みやすい良質な英文である。

【Ⅰ】類義語選択問題 このような形式の問題は以下のように考えると良いだろう。 ① 熟語帳などで“同意表現”とされるものが選択肢中にあればそれを選ぶ。   [例]⑷ make use of ≒ utilize「利用・活用する」 ②①が無ければ、“最も意味が近いもの”を選ぶ。   [例]⑶ express「(意見などを)述べる」→ voice「声に出す、表明する」 今年度の「全学統一入学試験」の問題は、大部分が①に該当するものであり、長文読解においても欠かすことのできない重要な単語・熟語ばかりある。単語・熟語帳のセンター試験レベルまでを繰り返し、このレベルの問題を確実に正解できるようになろう。

【Ⅱ】文法・語彙問題 ⒃は直後の waswritten という動詞から Frankenstein は作品を示していると判断し、主格の関係代名詞 which を選ぶ。非制限用法なので that は使えない。 上記以外は全て標準的なレベルの問題であり、確実に正解したい。⑾ have物p.p.「物を…してもらう、物を…される」は幾度となく出題されている表現なので必ず覚えておこう。

【Ⅲ】整序問題 今年度の「全学統一試験」の問題は、⒄ taketurnsVing「交代で~する」⒆ outofplace「場違いの」等、語順がはっきりした表現・文法を問う問題が多く非常に解きやすい。 �(You)couldhavestayedatmine(forfree).は if~にあたる部分が省略された仮定法過去完了の文であるが、[S]You →[V]couldhavestayed と順に考えていけば仮定法の文であることに気付けなくても並べ替え可能。

【Ⅳ】会話問題 大部分は会話の内容を問う問題なので、“会話文型の内容一致問題”と考えて良い。正解の根拠は探しやすいが、選択肢の判断が難しいものが一部あった。 �①は I(couldn’t)agreemuchmore! と couldn’t があれば「まったくもって同感だ」という意味になるが、couldn’t がないために不適当。 �本文で述べられている car は「(列車の)車両」という意味。

【Ⅴ】長文問題 「選挙権年齢の引き下げに関する様々な意見」という非常にタイムリーな内容。【Ⅳ】同様に、標準レベルの問題が大半であるが、選択肢の判断が難しいものが一部あった。

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 �該当箇所は 2 パラ第 1 文の thefirstin70years「70 年間の中で最初」が単語通りの意味であるが、普通は「70 年ぶりの」と意訳する。従って、③「過去に少なくとも 1 回起きた」が適当。 �①か④に絞ることはできるだろう。政治の現状に関する話なので、today’spolitics と書いてある④を選ぶ。

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <文学部・農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベ ラルアーツ学部・観光学部>

<学習アドバイス>◎ 60 分で 37 問、全てマーク式。シンプルな良問が多く、バランス良く解けば余裕をもって取り

組める問題量である。◎【Ⅳ】(会話問題)の出題形式の若干の違いを除けば「全学統一入学試験」と問題構成はほぼ同

じで、レベルもほぼ変わらない。読みづらい部分があっても、落ち着いて選択肢を吟味すれば正解できる問題が多い。

【Ⅰ】類義語選択問題 概要については、「全学統一入学試験【Ⅰ】(P178)の解説」を参照して欲しい。“同意表現”とされるものを選ぶ問題が多く、非常に解きやすい。 ⑴ meeting「対戦」を知らなくても、AfterlosingtoEnglandintheirlastfour(   ),JapanbeatthemintheWomen’sWorldCupsemifinalinCanada.と下線部が空所になっている問題と仮定して解けば、③ matches が正解だと判断可能。

【Ⅱ】文法・語彙問題 ⒂ to theextentSV「S が V する程度まで」という表現を知っていれば、to と extent のつながりに気付くことができ、④が正解だと判断可能。 ⒃mighthavecausedから仮定法過去完了の文だと気付けるかどうか。③ otherwise「さもなければ、もしそうでなければ」を選ぶ。 上記以外は標準的なレベルの問題である。

【Ⅲ】整序問題 整序問題は、①文法・熟語などの知識を問うタイプ([例]⒄ whenitcomestoVing)、②節・句を意識して並べ替えるタイプ([例]⒆ onethingwecanbeproudof)、③その両者を組み合わせて考えるタイプ、のどれかにおおよそ分類でき、①<②<③の順に難しくなり正解率が下がる傾向にある。 ①は文法問題集等で学習を行っていれば十分に対応できるものなので、まずはこのレベルからしっかり点を取れるように日々の学習に励もう。また、②のタイプの問題に関しては、<整序作文と長文読解に関すアドバイス(P183)>を参照して欲しい。 � makeittothefinal「決勝戦まで勝ち進む」という表現がこの問題の並べ替えの軸。makeit とtothefinalを組み合わせればこの表現を推測することはできるが、やや難しい。 上記以外は標準的なレベルの問題である。

【Ⅳ】会話問題 �問題文を見ると、WhatdoesJames thinkcompaniesshoulddo? となっている。つまり、本文中の abeercompany の例から推測できる一般論を答えとせねばならない。「廃棄物を利用してシイタケを栽培する」という例が本文にあるので、① usewastetomakenewproduct を選ぶ。

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【Ⅴ】長文問題 � haveyet toV「まだ~していない」を知っていれば良いが、仮に分からなくても finding itdifficulttobalance…からその意味を推測することは可能。

 今年度の英語問題の特徴の一つであるが、正解にたどり着くための誘導・ヒントをうまく利用すれば、その問題の全てが理解できていなくても問題には正解できるものが多い。もちろん文法・語彙力・英文の読み方などの知識を蓄える日々の学習が重要であることは言うまでもないが、試験問題を解くときには、持っている知識を最大限利用して、諦めずに最後まで考え抜いてほしい。

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <文学部・農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベ ラルアーツ学部・観光学部>

<学習アドバイス>◎60 分で 37 問、全てマーク式。昨年度とは異なり、長めの整序問題が他の日程と同形式の短い

整序問題へと変わった。◎【Ⅰ】・【Ⅱ】にやや難しい問題があるが、他の日程含めて英語全体の難易度はほぼ同じと考え

て良い。

【Ⅰ】類義語選択問題 概要については、「全学統一入学試験【Ⅰ】(P178)の解説」を参照して欲しい。 ⑷ havebeenaround「存在し続けている」を知らないと正解の判断ができないため、やや難しい。 ⑸ reach「…に連絡する」が分かれば良いが、消去法で判断可能。

【Ⅱ】文法・語彙問題 ⑽ soworried…thattheywearsunglasses. に気付けるかどうか。注意力が必要。 ⑿ calculated(過去形)と時制を一致させるため、was を選択する。 ⒀「フランスと同じくらいの大きさだが、人口が 200 万しかいないので…」という意味を作るために、but を含む②を選ぶ。 ⒁ getholdof名詞「…を見つける」を知らないと正解の判断が難しい。 上記以外は標準的なレベルの問題である。

【Ⅲ】整序問題 ⒄ just を置く場所に悩むかもしれない。as thoughSV ~「まるで~ように」全体を修飾しているので、asthough の前に置く。 � much は文末の warmer を強調する語句なので、warmer の前に置く。 上記以外は標準的なレベルの問題であるが、⒄ asthoughSV、⒅ aslongasSV、⒆ thelasttimeSV、⒇ unlessSV などの接続詞表現を含む問題が多く出題されている。これらの英文の構造に関わる整序問題は、節や句に関する文法の理解が必須である。長文の読み方にも関わる部分なので、最後にある<整序作文と長文読解に関すアドバイス(P183)>を参照して欲しい。

【Ⅳ】会話問題  � ② に have improvedemployees’Englishability、 本 文 に aim to improveemployees’Englishcommunicationability とあるが、haveimproved(現在完了形)と aimtoV「~することを目標にする」では意味が違う。同じような単語が含まれているので誤って選んだ受験生は多いと予想できるが、選択肢を落ち着いて吟味して正解したい。 他は、根拠がはっきりしていて解答判断も容易な標準的レベルの問題である。

【Ⅴ】長文問題 � 4 パラグラフは、前半が freshwater で、後半が wastedisposal に関する話になっていて、その境目が Moreover「その上」で示されている。the rootof theproblemwith“factory farms”が本問で

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問われている内容なので、少なくとも Moreover 以降の内容を選ばねばならないと分かる。

<整序作文と長文読解に関するアドバイス> 「整序作文が苦手なのだがどうすれば良いか」、「長文が読めないのだがどうすれば良いか」、これらは多くの受験生が抱える悩みであるが、実はこの 2 つは非常に根深い関係にある。 「書く」ことは文字を通じて情報をアウトプットすることであり、「読む」ことは文字を通じて情報をインプットすることである。つまりこれらの行為は表裏一体であり、「読む」練習を正しく行えば、それが「書く」土台となるのだ。 もう少し具体的にアドバイスをすると、整序作文等の「書く」問題を得意にしたければ、節や句に関する文法(不定詞・動名詞・分詞・接続詞・関係詞など)を意識して長文を正しく「読む」訓練をしてみよう。もし時間があるならば、読解の知識が体系的にまとまったテキストや参考書をまずは一冊仕上げておくとなお良い。ある程度「読める」ようになった状態で整序作文に取り組めば、その理解度の違いがきっと分かるはずだ。

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全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》  昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。今年度は漢字

の読み書きの問題に加えて、抜き出し問題が記述式の問題として出題された。その他は、全てマーク式の問題であった。

《出題内容》  例年同様、大問 2 題とも現代文の評論が出題された。問題数も第一問 6 題、第二問 5 題と変

わらなかった。第一問は、岩田靖夫『極限の事態と人間の生の意味』からの出題で、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの自然観をとりあげ、自然物と人工物の対比や目的論の考察から現代人の生き方に反省を加えるという内容であった。第二問は、三井秀樹『美のジャポニズム』からの出題で、欧米人が日本の芸術品に憧れた「ジャポニズム」は日本の芸術と生活の近さや、その自然主義からくる「非定形」性であると論じたものであった。第一問の抽象的な哲学の議論には苦労したかもしれない。それに対して、第二問の比較文化・日本文化論は比較的読み取りやすかった。

  個別の設問は、漢字の書き取りや読みに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・趣旨判定などヴァリエーションに富んでいるが、概ね標準的な問題になっている。特筆すべき変化として、第一問で語句の抜き出し問題が 1 問記述式問題として出題されたことがあげられる。

《出題レベル》  文章の内容の抽象度は、第一問は昨年度と同じくかなり高かったが、第二問はやや読みやす

くなった。設問は、標準レベルであるが、例年通り一つ一つの選択肢の正誤を全て判断させる問題が多く、これに加えて課題文もかなりの長文なので、時間配分に気をつけて取り組む必要がある。選択肢自体は素直なものが多いので、正確に速く読み進める力が求められる。

<学習アドバイス>◎漢字力の強化  毎年、難度の高い漢字の読み書き問題が 10 問前後出題されるので、しっかりとした対策が必

要であろう。

◎二項対立を意識して読む  上述したように、毎年かなりの長文が出題されており、文章の抽象度も高い。 したがって、

論理的な文章の構造を意識し、二項対立(対比関係)などを整理しながら読む力が必要になってくるだろう。そのため、文章の論理構造を詳しく解説した中・上位レベルの問題集に取り組むといった対策を行うことが望まれる。

◎教養力強化  新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題

の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い教養力をつけておくことが望ましい。

国 語

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <文学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》

 昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。設問のほとんどがマーク式であり、昨年度出題された記述式の説明問題は出題されず、抜き出し問題が 1 問だけになった。

《出題内容》 大問 2 題とも現代文の評論である。第一問は、小坂井敏晶『増補 民族という虚構』からの出題で、人間が他の動物に対して自由度が高いのは文化や社会制度によってその行動に制限を加えているからであり、そのために根源的な意味での「支配」は安定した社会秩序を維持するために不可欠なものであるという内容を論じたものであった。第二問は、岡田暁生『音楽の聴き方』からの出題で、音楽家たちの使用する言語が常に身体感覚にかかわるものであり、そのような特定の身体感覚を呼び覚ますことばを「わざ言語」として考察したものであった。個別の設問は、漢字の読みと書き取りに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・空欄補充・趣旨判定・抜きだし問題などヴァリエーションに富んでいる。そして、前述したように、記述式の説明問題は出題されず、抜き出し問題も 1 問に減った。

《出題レベル》 第一問は文章の抽象度が高く、論の進め方も決して平易ではなかったので、文意をとるのに苦労したかもしれない。 しかし、設問に関しては選択式がほとんどでおおむね標準レベルだったと言える。第二問は文章・設問ともに昨年度より易しくなった。したがって、第一問をどう攻略するかが課題であったと言えよう。

<学習アドバイス>◎漢字力の強化

 今年度は、第一問に書き取り、第二問に読みと分散して出されていたが、例年通りかなりのレベルの漢字が 10 問出題された。これも決して侮れないので、漢字の対策もしっかりと行う必要があるだろう。

◎スピードアップ 年通り比較的長い文章が出題され、しかも第一問はかなり抽象度の高い難解な文章であった。したがって、やはり論理的な文章を速く正確に読む力が求められる。早めにセンター試験レベル問題などを使ってトレーニングしておくことが望ましい。

◎教養力強化 新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い教養力をつけておくことが求められる。

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <文学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》

 昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。漢字の読み書きと 2 問の抜き出し問題のみが記述式で、あとは全てマーク式の問題であった。

《出題内容》 大問 2 題とも現代文の評論であったが、第一問と第二問ともに 2 問ずつ問題が増えており、かつ、第一問の課題文がかなり長いものになっていた。第一問は、宇野重規『民主主義のつくり方』からの出題で、カナダの政治理論家チャールズ・テイラーの「緩衝材で覆われた自己」と「孔だらけの自己」という概念の対比から近代政治思想の人間観を論じたものであった。第二問は、前田雅之『古典的思考』からの出題で、「戦後」を「建前としての民主主義」と「実態としての利便性とマニュアル化」の分裂状況として捉え、特にその「利便性とマニュアル化」の問題点について考察したものであった。 個別の設問は、漢字の読みや書き取りに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・内容一致といった従来の出題形式に加え、抜き出し問題や本文のキーワードに関する説明の正誤判定が新しく出題されていた。

《出題レベル》 課題文は、特に第一問のものは例年に比べて非常に分量があり、かつ抽象度も高いものであった。第二問も、長さは例年並ながら、内容はなかなか高度なものであったので、受験生はかなり苦戦したかもしれない。設問も一つ一つの選択肢の正誤を全て判断させる問題が多く、また、前述した本文のキーワードに関する説明の正誤判定が新しく出題されたので、昨年度に比べ明らかに難化したと言えるだろう。

<学習アドバイス>◎漢字・語彙力の強化

 毎年、難度の高い漢字の読み書き問題が 10 問前後出題されるので、しっかりとした対策が必要であろう。

◎論理構造を読み取る訓練 上述したように、昨年度に比べて課題文が長文化し、かつキーワードの対比関係を読み取らせる問題が新たに出題されていた。 したがって、論理的な文章の構造を意識し、対比関係を整理しながら読む力が必要になってくるだろう。 そのため、文章の論理構造を詳しく解説した中・上位レベルの問題集に取り組むといった対策を行うことが望まれる。

◎教養力強化 新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い教養力をつけておくことが望ましい。

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全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス

< 2016 年度入試の傾向> 【1】【2】がマークシート、【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランスよく出題されている点は変化していません。 【1】は基本事項が問われています。特に⑴⑵⑶⑹では計算ミスをしやすいので注意しつつ、どの問題も確実に得点することが大切です。 【2】は【1】よりもやや程度の高い事項に関する問題となっています。特に⑵⑶⑸⑹は典型的な問題ではあるものの、苦手としている受験生が多い問題ですので、出来・不出来の差が現れたでしょう。難しいと感じてもすべてを捨ててしまうのではなく、部分的にでも解ける箇所を探し、そこを確実に解くことで少しでも得点をすることが大切です。 【3】は積分法の面積に関する問題で、交点の座標が整数値でないため、積分計算の過程で工夫をすることが必要です。【1】【2】と比べてやや難易度の高い出題になっていますので、難しく感じた受験生もいたでしょう。しかし、難しく感じた場合でもすべてを諦めるのではなく、少しでも部分点をとろうとすることが大切です。また、記述式ですから、自分の立式の根拠、使用した定理、計算過程などをきちんと記述し、採点者に伝わるように意識することも大切です。 全体として昨年度と同程度の難易度・分量の出題となっています。

<学習アドバイス> どの分野もバランスよく出題しようという意図がはっきりと読み取れるセットが続いています。 まず、教科書で定義や公式を確認することから始めましょう。次に、教科書の例題や練習問題を繰り返し解いて、全分野の理解を確実なものにすることが必要です。加えて、教科書傍用問題集の標準レベルの問題がスラスラ解けるように練習しておけば試験本番でも高得点が望めるでしょう。ただし、時間に対して問題量がやや多いこと、穴埋めの問題では部分点が無いので計算ミスが命取りとなることを考えると、スピードと正確さは磨いておく必要があります。特に、「三角関数の計算」「指数・対数の計算」「場合の数・確率の計算」「微分法・積分法の計算」「数列の和・漸化式」は頻出で、確実に得点すべき問題であることが多いです。素早く・正確に計算できるよう練習しておくとよいでしょう。また、今年度は「三角関数」、「積分法」でやや高度な問題が出題されています。入試向けの標準的な問題集や本学の過去問で十分に練習しておきましょう。

数 学

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>

< 2016 年度入試の傾向> 【1】【2】がマークシート、【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランスよく出題されている点は変化していません。 【1】【2】は小問集合で、全体的には基本的な問題が出題されていますので、確実に得点することが大切です。ただし、計算力・深い理解を要する問題も存在します。難しいと感じる問題については、すべてを捨ててしまうのではなく、埋められる部分を探して少しでも得点することを心掛けましょう。特に【1】⑸⑺、【2】⑵⑶は苦戦した受験生が多いと思われます。 【3】は、昨年度に比べて難易度は下がったものの、農学部、工学部とも解き切るには計算力、洞察力が必要な問題です。ただし、すべてを諦めるのではなく、解ける部分は確実に解いて部分点はとることが大切です。ここ数年、【3】ではやや難易度の高い問題が出題されています。 全体として、高得点を取るには確かな実力が必要で、充実した内容となっています。

<学習アドバイス> 出題傾向などは全学統一入学試験とほぼ同様です。教科書の章末問題や標準的な問題集で十分に練習しておきましょう。また、【3】は記述式の問題ですから、採点者に伝わる答案を書くことを普段から心掛けるようにしましょう。 過去問は良問が多く、良質の問題集といえます。本冊子をよく活用するとよいでしょう。

学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部>

< 2016 年度入試の傾向> 【1】【2】がマークシート、【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランスよく出題されている点は変化していません。 【1】【2】は小問集合です。全体的に基本的な問題が出題されていますので、確実に得点することが大切です。ミスのないように注意しましょう。ただし、深い理解を要する問題もあります。【2】⑶⑸は苦戦した受験生が多いと思われます。難しいと感じた場合にも、すべてを捨ててしまうのではなく、埋めることの出来る部分を探して少しでも得点しようとすることが大切です。 【3】は昨年度と比較して、難易度はやや下がったものの、農学部、工学部ともに解き切るには計算力、洞察力が必要な問題となっています。途中までであっても解答を記述して、部分点はとろうとすることが大切です。 全体として、高得点を取るには確かな実力が必要で、充実した内容となっています。

<学習アドバイス> 出題傾向などは全学統一入学試験とほぼ同様です。教科書の章末問題や標準的な問題集で十分に練習しておきましょう。また、【3】は記述式の問題ですから、採点者に伝わる答案を書くことを普段から心掛けるようにしましょう。 過去問は良問が多く、良質の問題集といえます。本冊子をよく活用するとよいでしょう。

数 学

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全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス

< 2016 年度入試の傾向> 出題は大問 3 題で解答総数は 52 題。このうち、計算を要する設問は 5 題であった。また、解答形式はすべて選択式である。

 【Ⅰ】は理論化学、無機化学を中心とする知識問題が多く出題される。2016 年度の出題内容は以下の通り。  1.原子やイオンの電子配置   2.混合物の分離法  3.共有結合の極性  4.原子量の定義、分子量と式量の区別  5.化学結合の種類  6.酸と塩基の定義 「混合物の分離法」や「原子量の定義」、「分子量と式量の区別」に関する問題は、受験生にとってはやりにくいものである。基本的な用語の定義はしっかりと身に付けておく必要がある。

 【Ⅱ】は理論化学および無機化学の分野から、計算問題を中心に出題される。2016 年度の出題内容は以下の通り。  1.金属陽イオンの分析  2.蒸気圧降下と沸点上昇(沸点上昇度から溶質の分子量を計算する問題を含む)  3.酸化還元反応における酸化数の変化  4.硝酸の性質と製法  5.水溶液の pH の計算  6.混合気体に関する計算問題 各分野の基本知識を問う良問が多いので、問題集の標準レベルの問題を十分に練習しておくことが重要である。また、基本的な計算問題がよく出題されるので、「中和滴定」、「酸化還元滴定」、

「電気分解」、「熱化学」、「気体の法則」に関する典型的な計算問題を、速く正確に解ける実力を身に付けておく必要がある。

 【Ⅲ】は有機化学からの出題である。2016 年度の出題内容は以下の通り。  1.化合物の構造と反応に関する問題(ヨードホルム反応、銀鏡反応、塩化鉄(Ⅲ)水溶液に

よる呈色反応、金属ナトリウムとの反応)  2.高分子化合物に関する知識問題 有機化合物の官能基の特徴的な反応を問う問題はよく出題される。ヨードホルム反応などの典型的な反応に関する知識を、しっかり身に付けておく必要がある。

<学習アドバイス> 大学入試の化学の問題を解くにあたって最も重要なことは、思考力の土台となるしっかりとした基礎知識を確実に身に付けることである。具体的には各分野で次のような項目をしっかり学習しておく必要がある。

≪理論化学分野≫ ① 基本用語に関する知識を正確に理解しておくこと。例えば、「原子の相対質量と原子量の定

義」、「分子量と式量の識別」、「元素と原子の識別」、「単体と化合物の識別」。 2016 年度は「原子量の定義」の関する問題と「分子量と式量の識別」に関する問題が出題

された。

化 学

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 ② 「化学結合」、「分子の形と極性」に関する知識。新課程の教科書では、「化学結合」、「分子の極性」の関する知識が重要視されている。

 ③ 化学の基本法則に関する知識。特に「定比例の法則と倍数比例の法則」、「気体反応の法則」、「アボガドロの法則」。この分野は、知識不足になりやすいので注意したい。

 ④ 溶液の濃度計算。 モル濃度から質量パーセント濃度に変換する問題。特に密度を利用した濃度の計算は間違え

やすいので、十分な演習が必要である。 ⑤ 逆滴定、二段滴定に関する計算問題。

2015 年度、2016 年度は滴定計算が出題されていないが、典型問題は十分に練習しておく必要がある。

 ⑥ 電気化学に関する問題。 電池に関する問題として、2015 年度に鉛蓄電池に関する計算問題がされた。次年度は水素

-酸素型燃料電池のしくみと計算問題は十分に練習しておく必要がある。また、水溶液の電気分解に関する問題もしっかり練習しておきたい。

 ⑦ ヘスの法則を利用した熱化学方程式に関する問題。 2015 年度、2016 年度は、この分野からの出題がなかったが、熱化学の問題は出題率が高い。

特に、中反応の実験から中和熱や溶解熱を求める問題は頻出であり、注意したい。 ⑧ 溶液の性質に関する問題。 2016 年度は蒸気圧降下と沸点上昇に関する計算問題が出題された。この分野では、「浸透圧」

に関する知識問題と計算問題を十分に練習しておきたい。 ⑨ 質量作用の法則を利用した化学平衡の関する計算問題。 新課程の教科書では、電離平衡に関する内容が重視されている。このことを考えると、酢酸

水溶液やアンモニア水溶液の pH を、電離定数から計算する問題をしっかりおく必要がある。

≪無機化学分野≫ 出題頻度の高い元素は次の通りである。   非金属元素…ハロゲン元素、窒素、硫黄、ケイ素   金属元素…アルミニウム、銅、鉄、カルシウム また、「ソルベー法」、「ハーバー・ボッシュ法」、「オストワルト法」、「接触法」、「アルミニウムの製錬」、「銅の製錬」、「鉄の製錬」など無機化学工業に関する出題も頻度が高く、しっかり学習しておきたい。 2016年度は金属陽イオンの分析が出題された。次年度は「気体の発生方法と典型的な気体の性質」に関する知識を身に付けておきたい。

≪有機化学分野≫ 化合物の構造決定問題は出題率が低いが、基本的な有機化合物の合成法と性質はしっかり押さえておく必要がある。次に示す内容についてしっかり対策を講じておくこと。 ① エチレン(エテン)やアセチレン(エチン)、プロペンを出発原料とした有機化合物の合成法。 ② フェノールやサリチル酸、ニトロベンゼンを出発原料とする化合物の合成法と性質。 ③ 「C4H8 の分子式をもつ化合物」、「C4H10O の分子式をもつ化合物」、「C5H12O の分子式をもつ

化合物」、「C7H8O の分子式をもつ芳香族化合物」などの出題率が高い化合物の構造と性質。 ④ 油脂。 ⑤ 合成高分子とタンパク質。 旧課程では選択分野となっていたこの分野は、新課程では必修となっている。今後、この分

野の出題率が高まると予想される。糖類の分野も含めて、基礎知識を充実させておくことが必要である。

 2015 年度、2014 年度に続いた油脂に関する問題は、2016 年度は出題されなかった。 また、2016 年度は「高分子化合物」に関する知識問題が出題された。次年度は、糖類やアミノ酸、タンパク質に関する基本知識を問う問題が出題される可能性が高い。この分野をしっかり学習しておこう。

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <農学部・工学部>

< 2016 年度入試の傾向> 出題形式は大問 3 題で、すべて選択式。このうち 5 題が計算問題であった。計算問題のうち、【Ⅱ】4 の二段滴定(ウィンクラ-法)に関する問題と、【Ⅱ】5 の気体反応と飽和蒸気圧に関する問題は、難易度の高いものであった。

 【Ⅰ】では、「イオン化エネルギーなどの元素の性質」、「単体と化合物などの物質の分類」、原子の構造などに関連する基本知識を問う問題が多く出題される傾向がある。また、物質を構成する成分元素の確認実験に関する知識をチェックしておく必要がある。 2016 年度は、「化学の基礎法則(質量保存の法則など)」の内容と発見者の名前を問う問題が出題された。受験生にとってはやりにくい問題であった。 新課程の教科書では「化学結合」、「分子の極性」、「結晶格子」に関する内容が重視されているため、次年度以降もこの分野は出題率が高いと予想される。

 【Ⅱ】は「理論化学」や「無機化学」の単元から、計算問題が多く出題される。2014 年度は「実在気体と理想気体」、「弱酸の電離平衡」、「塩化銀の溶解度積」が出題され、2015 年度は「反応速度」、

「浸透圧」、「飽和蒸気圧」が出題された。また、2016 年度は「塩化ナトリウムのイオン結晶」、「二段滴定(ウインクラー法)」、「飽和蒸気圧が関係する気体反応」が出題された。計算問題のレベルが徐々に高くなっているため、「気体の化学平衡」、「水溶液中の化学平衡」、「溶液の性質」、「中和滴定」の分野の計算練習を十分に積んでおく必要がある。 2016 年度は、無機化学分野から「金属陽イオンの沈殿生成反応に関する知識」が出題された。新学習指導要領の下における教科書で、「化学と人間生活」と呼ばれる内容が新設された。2015 年度で出題された「酸化チタン(Ⅳ)の光触媒作用」、「光ファイバーとして利用される二酸化ケイ素」、

「ガラス」などの、身の回りにある化学物質に関する知識を整理しておく必要があるだろう。

 【Ⅲ】は有機化学分野からの出題である。脂肪族および芳香族の典型的な化合物の性質や基本反応を問う問題がよく出題されてきたが、2016 年度は「油脂に関する基礎知識」と「ギ酸と酢酸に関する基礎知識」が出題された。 次年度以降、「糖類」や「アミノ酸・タンパク質」の基礎知識を問う問題が出題されると考えられる。この分野の基礎知識をしっかり固めておく必要がある。

<学習アドバイス> 次年度は新学習指導要領のもとにおける3回目の入試となる。この2年間の出題内容を踏まえて、重要単元をまとめると次のようになる。

≪理論化学分野≫ ① 硫黄、炭素、酸素、リンの同素体に関する知識。 ② 原子やイオンの電子配置、同位体に関する知識。

化 学

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 ③周期表と元素の性質(イオン化エネルギー、電気陰性度、元素の陽性と陰性、電子親和力、原子半径とイオン半径)に関する知識。

 ④ 溶液の濃度計算問題。 特に溶液の密度を利用した濃度計算は、受験生が苦手とするものであり、十分に練習してお

く必要がある。 ⑤ 化学結合の分類、分子の形と極性に関する知識。 新課程の教科書では、この単元の記述が充実している。今後、この単元の出題率は増加する

と考えられるため、しっかりと学習しておくこと。 ⑥ 逆滴定によるアンモニアや二酸化炭素の定量問題。 ⑦ 酸化還元滴定による過酸化水素水などの濃度決定問題。 ⑧ 飽和蒸気圧が関係する気体反応の計算問題。 ⑨ 熱化学に関する計算問題。 比熱を用いて、中和反応の実験から中和熱を求める問題は頻出である。 ⑩電池に関する問題。 水素-酸素型燃料電池の知識問題と計算問題は十分に練習しておく必要がある。 ⑪水溶液の電気分解に関する計算問題。  移動した電子の物質量に比べて、陰極で反応する銅(Ⅱ)イオンや銀イオンの物質量が不足

しているなど、工夫された入試問題がよく出題されることに注意したい。 ⑫気体の溶解度(ヘンリーの法則)に関する計算問題。 ⑬化学平衡に関する計算問題。 弱酸の弱塩基の電離平衡、緩衝溶液、溶解度積は出題率が増加すると考えられる。

 どの単元においても、時間をかけて難問を解決するという勉強ではなく、標準的な問題を短時間で解く力を身に付けるための勉強が必要である。 2015 年度、2016 年度と理論化学分野の計算問題は、その量も増加し、レベルも高くなっている。過去の入試問題を十分に演習しておく必要がある。

≪無機化学分野≫ 2016 年度は「無機化合物と人間生活」からの出題は見られなかったが、この分野の知識を整理しておく必要がある。また次のような元素に関する知識も出題頻度が高い。    非金属元素…ハロゲン元素、窒素、硫黄、ケイ素    金属元素…アルミニウム、銅、鉄、カルシウム さらに、「ソルベー法」、「ハーバー・ボッシュ法」、「オストワルト法」、「接触法」、「アルミニウムの製錬」、「鉄の製錬」、「鉄の製錬」など無機化学工業に関する出題も頻度が高く、しっかり学習しておきたい。

≪有機化学分野≫ この分野では、簡単な化合物を出発原料とした、重要な化合物の合成方法を理解しておく必要がある。次のような反応経路が重要である。 ① エチレン⇒エタノール⇒アセトアルデヒド⇒酢酸⇒酢酸カルシウム⇒アセトン ② エチレン⇒ 1、2 -ジクロロエタン⇒塩化ビニル⇒ポリ塩化ビニル ③ エチレン⇒アセトアルデヒド(ヘキスト・ワッカー法) ④ アセチレン⇒酢酸ビニル⇒ポリ酢酸ビニル⇒ポリビニルアルコール⇒ビニロン ⑤ アセチレン⇒ベンゼン⇒ニトロベンゼン⇒アニリン⇒塩化ベンゼンジアゾニウム

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   ⇒カップリング反応⇒アゾ化合物 ⑥ プロペン⇒クメン⇒フェノール、アセトン ⑦ フェノール⇒ナトリウムフェノキシド⇒サリチル酸ナトリウム⇒サリチル酸   ⇒アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル ⑧ プロペン⇒アセトン(ヘキスト・ワッカー法)

 また、次のような官能基の検出反応もしっかり整理しておく必要がある。 ① 臭素水の脱色 ② 炭素間二重結合のオゾン分解 ③ アルコール性ヒドロキシ基の酸化反応 ④ ヨードホルム反応 ⑤ 銀鏡反応・フェーリング液の還元反応  ⑥ 塩化鉄(Ⅲ)水溶液によるフェノール性ヒドロキシ基の検出反応 ⑦ ビウレット反応 ⑧ キサントプロテイン反応

 新学習指導要領では、合成高分子化合物、糖類、アミノ酸、タンパク質が必修分野になっている。この分野の基本知識をしっかりと身に付けておく必要がある。

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全学統一入学試験・学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <農学部・工学部>

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》 全学統一入学試験、学部別入学試験ともにマークセンス方式。2014 年度から一部に記述式の問題が登場し、2015 年度・2016 年度も出題された。記述問題の解答欄がマークシートの裏面に用意されており、そこに解答を記入する。試験時間は 60 分、大問数は 4 問であった。

《出題内容》 出題範囲は「生物基礎・生物」。出題範囲全体から幅広く出題されている。2016 年度は、全学統一入学試験・学部別入学試験ともに「遺伝子」・「生殖と発生」・「植物の環境応答」に関する大問が出題されたが、小問ごとに見てみると、多岐の分野にわたる知識が必要となる問題が多く、全体としては、ある特定の分野がよく出題されるといった傾向は見られない。

《出題レベル》 高等学校教科書の章末問題レベルとほぼ同レベルであり、コツコツと真面目に勉強してきた受験生が高得点を取れる出題。ただし、基本的な知識を問う問題とは言っても、正しく理解できているかどうかが問われるものが多く、表面的な丸暗記だけでは答えられない問題が大半である。また、毎年出題されている計算問題には、一部に複雑な計算が含まれている場合があり、あらかじめ計算する訓練を積んでおかないと、本番の試験において処理に時間がかかってしまうことになるだろう。その他、一部の教科書には記載が無いような、やや細かい知識を問う問題が出題されることもあるが、これらに関する出題数は少なく、合否に影響を与えることは無いだろう。「確実に得点しなければならない問題」を確実に解答できれば、十分に合格ラインまで届くであろう。

<学習アドバイス> まずは、高等学校教科書に記載されている重要語句を理解することが大切である。また、教科書傍用問題集などで問題を解く訓練を積んでおくことも大切である。複雑な計算問題も、問題集を利用して、解く訓練を繰り返しておけば本番でも手早く処理できるだろう。その他、記述式問題の対策として、生物学用語を正しく書く訓練もしっかりと行っておきたい。やや難しめの漢字を含むような用語も出題されたことがあるので、漢字の書き取りは正確に行って欲しい。さらに、教科書の「参考」・「研究」・「探究活動」などとしてまとめられている部分にも目を通しておくとより良い。最終的には傍用問題集や過去問題集などで 9 割程度の得点が取れるようになることを目指すと良いだろう。

生 物

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全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》 大問 3 題。例年、全学統一入学試験(前期)では、マークセンス方式が採用されている。

《出題内容》 力学・電磁気学・波動・熱力学からの出題である。幅広く学習した受験生を入学させたいという意図が感じられる。

【Ⅰ】力学の総合問題(運動方程式・運動量[はねかえり係数]・エネルギー)【Ⅱ】コンデンサー回路【Ⅲ】1.波のグラフ、2.気体の状態変化(定圧変化)

① 力学  ⑴~⑷は、「運動方程式」から加速度を求めさせた上で「等加速度運動の公式」を使わせるよ

うな誘導になっている。⑴は易しいが、この問題を落としてしまうと⑵~⑷を得点できなくなってしまうので注意したい。⑸以降の設問は、前半と同様の現象をエネルギーに注目させて、かつ(はねかえり係数以外は)文字を使わせる誘導となっている。試験時間 60 分を 3 で割って大問Ⅰの解答時間を 20 分と考えた場合、制限時間内に誘導の意図を理解し、⑺の数値計算を正確にできた受験生は、物理の学力に自信を持って良いだろう。

② 電磁気  コンデンサー回路の典型問題。4 個のコンデンサー個々の物理量ではなく、合成容量に注目

させ、4 個の合計量として求めさせている。コンデンサーの基本関係式(Q=CV)、合成容量の公式、静電エネルギーの公式といった基本的な知識を組み合わせて解いていけば良い。今年度はコンデンサー回路であったが、抵抗回路も頻出の内容である。オームの法則、合成抵抗の公式、消費電力の公式、ホイートストンブリッジの条件などは、必ずチェックしておこう。

③ 波動  波のグラフを使った基本的な問題。多くの教科書、参考書、問題集で紹介されている内容で

あり、正答率は高かったと思われる。ただし、⑸の変位の変化は、三角関数のグラフの理解が必要なため、戸惑った受験生が多かったかもしれない。

④ 熱力学  気体の状態変化に関する問題である。定圧変化の典型問題で、状態方程式、定圧変化におけ

る気体のする仕事(W=P∆V=nR∆T)の公式を覚えていれば、容易に解答できる。失点してはいけない 1 問と言える。

 出題されているものの多くは、基礎~標準レベルの問題である。ただし,思考力を要する問題が用意されている場合もある。それらの問題を、いかに時間をかけずに処理できるかが Point である。

<学習アドバイス> 教科書の例題や章末問題のレベルを繰り返し演習するとともに、教科書の物理法則を理解し、公式の暗記だけではなく、公式を導く過程も勉強しておくこと。グラフを読み取る問題やグラフを描かせる問題が出題される場合もあるので注意が必要。日頃から答えを導くだけではなく、基本的な物理現象を図やグラフにまとめる練習もしておこう。数値問題は電卓などを使用せず、自分の手を動かして計算をしないと、計算力・計算スピードは上がらないので注意すること。

物 理

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学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス <工学部>

< 2016 年度入試の傾向>《出題形式》 大問3題。例年、学部別入学試験では、記述方式が採用されている。

《出題内容》 力学・電磁気学・熱力学からの出題。

【Ⅰ】非等速円運動【Ⅱ】電磁誘導(導体棒が磁場を切ることによって生じる誘導起電力)【Ⅲ】気体の状態変化(断熱変化)

① 力学 入試頻出の「非等速円運動」であるが、「円環にリングを通す」という実験設定が、教科書などでよく見かける問題とは異なっている。(1)(2)の解答は共に mg であるが、これが(5)との比較になっていることに気付いた受験生は、物理の学力に自信を持って良い。(7)では、普通は「ボールが面から離れる条件」のような質問のされ方が多いが、本問では「初めて A からB にはたらく力の大きさが 0 になった。」という表現になっており、設問に工夫が見られる。「公式丸暗記」や「典型問題の解法を覚えているだけ」の受験生ではなく、「物理現象の本質を見抜ける」受験生を獲得したいという意図が感じられる。

② 電磁気学 入試頻出の「電磁誘導」である。上記①の力学とは異なり、典型的な実験設定なので、教科書や参考書などで類題を経験したことがある受験生も多かったであろう。真面目に受験勉強に取り組んできた生徒にとっては、設問の誘導がツボにはまり、容易に解答できたと思われる。この問題レベル(=教科書章末問題レベル)の演習が合格にとって重要である。

③ 熱力学 気体の状態方程式(ボイル・シャルルの法則)とポアソンの式を適用する、断熱変化(断熱圧縮)に関する問題。与えられた数値が煩雑に見え一瞬戸惑うかもしれないが、気体定数:R= 8.3[J/(mol・K)]と上手に約分できるように工夫されており、受験生への配慮が感じられる。一方、ポアソンの式は文中に与えられているものの、その使い方を経験したことがないと難しく感じるかもしれない。(オ)では語句を埋める問題が出題されている。この問題自体は難度の高いものではないが、年度によっては「描図」、「10 ~ 20 文字程度の論述問題」が出題されることもあり、特徴の 1 つと言って良い。「言葉の意味」や「なぜそのような物理現象が起きるのか」といったことを、グラフや自分の言葉で表現する力が求められている。

 出題されているものの多くは、基礎~標準レベルの問題である。ただし、思考力を要する問題が用意されている場合があり、それらを、いかに時間をかけずに処理できるかが Point である。

物 理

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<学習アドバイス> 教科書の例題や章末問題のレベルを繰り返し演習するとともに、教科書の物理法則を理解し、公式の暗記だけではなく、公式を導く過程も勉強しておく必要がある。【Ⅲ】で出題されたような語句を埋める問題だけではなく、「描図」、「10 ~ 20 文字程度の論述問題」にも対応できる学力を身に付けたい。 日頃から答えを導くだけではなく、基本的な物理現象を図やグラフにまとめる練習もしておこう。また、煩雑な数値計算を要求される場合もある。数値問題は電卓などを使用せず、自分の手を動かして計算をしないと、計算力・計算スピードは上がらないので注意すること。

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