28 32 Ⅱ 中国の省エネルギー・環境政策の動向...

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平成 27 年度国際エネルギー使用合理化等対策事業 (日中省エネルギー等・環境ビジネス推進事業) 報 告 書 平成 28 年 3 月 経済産業省 資源エネルギー庁 (委託先:一般財団法人日中経済協会)

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平成 27年度国際エネルギー使用合理化等対策事業

(日中省エネルギー等・環境ビジネス推進事業)

報 告 書

平成 28年 3月

経済産業省 資源エネルギー庁

(委託先:一般財団法人日中経済協会)

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平成 27年度国際エネルギー使用合理化等対策事業

(日中省エネルギー等・環境ビジネス推進事業)

目 次

Ⅰ 事業の目的と報告の趣旨 ........................................................................................... 1

Ⅱ 中国の省エネルギー・環境政策の動向 ........................................................................ 2

Ⅲ 第 9回日中省エネルギー・環境総合フォーラム ............................................................ 9

Ⅳ 本年度のフォーラム以外の活動とこれを通じて得られた情報・意見・提案 ....................... 23

1 サマリー ...................................................................................................................... 23

2 山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区 ................................................................ 24

3 山東省水ビジネス企業訪日団 ................................................................................. 34

4 ECOTECH 上海 2015 ................................................................................................ 37

5 中国節能低炭素博覧会 .............................................................................................. 39

6 ENEX(第 40回地球環境とエネルギーの調和展)、

インターアクア(第7回国際水ソリューション展) ............................................................ 42

7 省エネ・環境技術の中国における普及に関する議論.................................................... 44

Ⅴ 省エネルギー等・環境技術及び機器の中国における普及のために必要な政策上の課題 48

1 本年度の取組の成果と問題点 .................................................................................... 48

2 省エネルギー・環境技術の中国における普及のために必要な政策上の課題 ............... 50

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Ⅰ 事業の目的と報告の趣旨

我が国の成長戦略やエネルギー戦略上、世界の成長エンジンとして経済成長著しいアジ

ア市場はその要諦であるが、このアジア地域が持続的な経済成長を遂げるには、健全な経

済発展に加えて、安定的なエネルギーの確保及び地球温暖化を含む環境問題の解決が不可

欠である。中でも、平成22年に我が国を抜いて世界第2位のGDPを達成した中国は、

アジア経済成長の原動力であり、かつ膨大なエネルギー需要、環境問題が内在する国とし

て、我が国の戦略上最重点地域の一つとして位置付けられる。中国における省エネルギー

や再生可能エネルギーやその他エネルギー(以下「省エネルギー等」という。)の促進、

環境技術の普及は、アジア域内の持続的な成長を助け、ひいては我が国の経済成長、安定

的なエネルギーの確保にも資するものである。

我が国は、省エネルギー等・環境分野において一日の長があり、我が国の優れた省エネ

ルギー等・環境技術及び機器の中国における普及は、中国やアジア域内のエネルギーセキ

ュリティや環境問題の解決につながるのみならず、我が国のビジネス海外展開やエネルギ

ーセキュリティ確保の視点からも非常に重要である。

我が国が有するこれら省エネルギー等・環境技術及び機器を加速的に中国に普及させる

ためには、民間によるビジネスベースの取組のみでは不十分であり、官民が、適切な役割

分担の下一体となって取り組んでいくことが必要となる。本事業では、個々の企業では解

決し難い障害や問題の解決に向けて、中国中央及び地方政府・関係機関等と連携・交流を

図り、省エネルギー等・環境分野における我が国民間企業・関係団体等の中国進出に向け

た環境整備を実施した。

具体的には、第9回日中省エネルギー・環境総合フォーラムを東京にて開催し、また、

省エネルギー等・環境技術及び機器の中国における普及に関する議論を行うため、日中省

エネルギー・環境ビジネス推進協議会の会議を開催するとともに、協力案件発掘・形成に

資するため、官民ミッションの派遣・受入等を行った。これらの活動を通じて、省エネル

ギー等・環境技術及び機器の中国における普及のために必要な政策上の課題を抽出し、報

告書にとりまとめた。

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Ⅱ 中国の省エネルギー・環境政策の動向

1.2015年の省エネルギー・主要汚染物質排出削減状況

平成28(2016)年3月 5日、中国政府は、第12期全国人民代表大会第4回会議を開催

し、李克強国務院総理が政府活動報告を行った。本報告における2015年度の活動回顧の

なかで冒頭、「構造調整の進展」の一例として、GDP当たりのエネルギー消費原単位が

5.6%減少したことを強調した。これは、「ここ数年で最大の減少幅と」胸を張った昨年

(4.8%)をも上回る数値である。また、省エネルギー・環境対策を強化して各般の拘束

性目標を超過達成したこと、温室効果ガス削減(省エネ)に向けた自主行動計画を公表し

て地球温暖化対応をめぐる国際交渉にも積極的に参画することを表明した。このように、

かつての「途上国として発展の権利」を強調する姿勢から、近年は国際社会において各国

との連携も明示しつつ、積極的に省エネルギー・環境対策へ取り組む姿勢を示しており、

省エネルギー・環境対策市場拡大に向けた追い風となりつつある。

また、全人代における国家発展改革委員会からの「2015年度国民経済・社会発展計画

の実施情況と2016年度国民経済・社会発展計画案についての報告」では、省エネルギ

ー・排出削減が「第12次五ヵ年計画」の目標値をすべて超過達成したことを報告してい

る(以下の「第12次五ヵ年計画の省エネ・排出削減目標・実績」参照)。

(出所)第12次五ヵ年計画(綱要・節能減排・工業節能)、各年度計画執行状況報告(全人代)、環境保

護部「全国主要汚染物総量減排状況考核結果」2011年度(12/09/07発表)、2012年度(13/08/29発表)、工

業・信息化部「工業節能与総合利用工作要点」各年度版、第12期全国人民代表大会第3回会議におけ

る「政府活動報告」、「2014年度(および2015年度)国民経済・社会発展計画の執行状況と2015年度国

民経済・社会発展計画案についての報告」より作成。

目標値 達成値 目標値 達成値

2. 01 3. 60 3. 70 3. 90以上 4. 80 3. 10以上 5. 60 16. 00 18. 20

5. 70増 5. 00 4. 36 4. 00 6. 20 3. 10以上 6. 00 17. 00 20. 00

COD 2. 04 3. 05 2. 93 2. 00 2. 47 2. 00 3. 10 8. 00 12. 90

アンモニア性窒素 1. 52 2. 62 3. 14 2. 00 2. 90 2. 00 3. 60 10. 00 13. 00

SO2 2. 21 4. 52 3. 48 2. 00 3. 40 3. 00 5. 80 8. 00 18. 00

NOx 5. 74 2. 77 4. 72 5. 00 6. 70 5. 00 10. 90 10. 00 18. 60

8. 90 8. 00 8. 00 7. 00 7. 00 5. 60 3. 90 30. 00 35. 00

(数値はいずれも前年比削減率)

12・5期間

の累計

第12次五ヵ年計画の省エネ・排出削減目標・実績

2014年 12・5期間

の目標値

工業付加価値1万元あたり水使用量

2011年

達成値

2012年

達成値

2013年

達成値指標の名称

主要汚染物質

排出総量

GDP単位当たりエネルギー消費量

GDP単位当たり二酸化炭素排出量

2015年

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一方で、中国経済の減速傾向の中で安定成長の確保が地方政府の最優先課題となりつつあ

る中、地方政府の省エネルギーへの取り組みへの優先度が低くなる傾向も生まれている。さら

に、石炭、石油など世界的なエネルギー市場価格の低下傾向は、企業による省エネルギーの

自主的な取り組みの熱意を減退させ、政府による政策措置の効果に影響を与えかねない情況

も懸念されている。2015年 5月、国家発展改革委員会の張勇副主任は、このような状況を「足

休め、一息入れ」と表現し、危機感を表明し、財政部、環境保護部、国土資源部など関係部門と

ともに『2014~2015省エネルギー・排出削減・低炭素行動計画』の徹底に力を入れるよう指示し

た。

環境規制の強化、法執行の徹底は、環境対策面では有効に働いている。石炭火力発電分野

を例に挙げれば、2015年 12月、中国政府は国務院常務会議で 2020年までに全ての石炭火

力発電所で「超低レベル排出」【超低排放】のガイドラインをクリアする環境対策を徹底するよう

決定した。これは主要汚染物質濃度を煤塵10mg/m3, SO2 35mg/m3, NOx 50mg/m3 以下とす

るもので、国家発展改革委員会、環境保護部等により『石炭火力省エネ排出削減レベルアップ・

改造行動計画(2014~2020年)』で規定されている。東部地区の 11省・市で新規に設置する発

電設備で一律適用し、さらに既設・運転中の設備でも 300MW以上の設備や、条件のある

300MW未満の設備にも期間中の達成を求めるものである。また、長江デルタ、珠江デルタの

省(江蘇、浙江、広東等)では独自の地方基準により、煤塵の規制値をさらに低い 5mg/m3とし

ている。業界団体の中国電力事業聯合会も各社の取り組みを促す中、華能電力集団は 2015

年末段階で 4600万 kw分が超低排出発電設備(うち 2069万 kwが改造分)であり、2020年に

は西部地区を含め、全体の 94%にあたる 10420万 kwの超低排出改造を達成するとしてい

る。上記『行動計画』に基づき策定された『作業プラン(工作方案)』では、期間中全国では 3.4

億 kwの更新改造を実施、同時に 2000万 kwの不適合設備を淘汰するとしている。これらの動

きは日本企業の技術・設備の市場拡大の可能性を広げるものであるが、13-5計画の推進の中

で、スピード感のある対応も必要とされよう。

一方で、エネルギー価格の低下は企業の省エネルギーの取り組みのインセンティブの喪失

をもたらしかねない。特に中小規模の地方企業、民営企業では、自主的に行ってきた省エネル

ギー対策や継続的な取り組みを一時休止、あるいは停止する可能性がある。このような状況下

で、山東省が提起した「工業緑動力行動計画」は注目に値する。工業信息化部の地方組織であ

る経済・情報化委員会が中心となり、工業セクター、情報セクターの省エネルギー推進をおこな

う同委員会の部門である節能辦公室(省エネルギー辦公室)とともに、工業用石炭ボイラーを主

たる対象とし、その環境対策を徹底し、排出指標を向上させることで、結果的に省エネ推進を確

保させようというものである。

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2016年 2月末、その山東省の淄博市で、所管副省長、省政府(経済・情報化委員会、環境保

護庁、煤炭局等)各部門のトップ出席のもと、山東省「工業緑動力計画」推進現場会議が開催さ

れ、淄博市における「緑動力」のレベルアップのプロジェクト手法が大気汚染対策と産業の構造

転換、高度化の面で山東省全域に普及させるモデルとして高評価を得た。全ての石炭燃焼設

備に例外を設けずに省エネ・排出削減の総合対策を施し、燃料の石炭についてもクリーンタイ

プのブリケット(型煤)や蘭炭と呼ばれる半成コークスへの転換を進めるモデル事業を行った。

2015年 10月に市内2地区で実施したところ、2016年 1月には PM2.5の平均濃度が前年同

月比で 15%前後改善したのに対し、対策を行わなかった地域では改善幅は最大 5%、地域に

よっては悪化の結果が得られた。1月のAQI指数は全省 17都市中第 11位に改善、万年最下

位から脱却するなど、明らかな効果が確認されたとのことである。

淄博では後述のように、日中大気汚染対策協力モデル区の合意のもと、我が国企業の技術・

設備等の普及にむけた対話、マッチングを行っており、山東省政府からも大きな期待を寄せら

れているところであり、淄博市の自主的取り組みの推進と相俟って、成果につなげていくことが

求められている。

2.2016年の省エネルギー・主要汚染物質排出削減に向けた政策

2011年からスタートした「第12次五ヵ年計画」は2015年で終了し、新たに策定された

「第 13次五か年計画」では、これまでのGDP単位当たりエネルギー消費量、COD、ア

ンモニア性窒素、二酸化硫黄、窒素酸化物などの諸指標とともに、大気質と地表水質の改

善が新たな目標に加わった。

先に示した「第12次五ヵ年計画」目標・実績と対比した以下の表によれば、より厳し

い目標が設置されたことがわかり、ここに日中省エネルギー・環境協力の余地を見出すこ

とができる。

年平均伸び率〔累計〕

- - 〔23〕 拘束性- - 〔15〕 拘束性12 15 〔3〕 拘束性- - 〔18〕 拘束性

森林被覆率(%) 21.66 23.04 〔1.38〕森林貯蓄量(億立方m) 151 165 〔14〕地区レベル以上の都市の大気優良日数比率(%) 76.7 >80 -地区レベル以上のPM2.5基準未達成都市の濃度低減率(%) - - 〔18〕水質基準Ⅲ類よりも良好である比率(%) 66 >70 -水質基準Ⅴ類よりも劣悪である比率(%) 9.7 <5 -COD 76.7 〔10〕アンモニア性窒素 - 〔10〕二酸化硫黄 66 〔15〕窒素酸化物 9.7 〔15〕

(注)先の表には2015年の実績値が明記しいるが、ここでは13・5計画(草案)の原文通りとしている。

水使用GDP原単位削減率(%)

第13次五ヵ年計画の主要指標(省エネ・排出削減部分の抜粋)

GDP単位当たりエネルギー消費量(%)非化石エネルギーの一次エネルギー消費比率(%)GDP単位当たり二酸化炭素排出量(%)

拘束性

拘束性

拘束性

拘束性主要汚染物質排出総量減少(%)

地表水質

大気質

森林発展

指 標 2015年 2020年 分類

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こうした状況の下、政府活動報告ならびに国民経済社会発展計画では、2016年の省エ

ネ・排出削減における主要目標と重点施策として、以下を打ち出している。

●2016年の主要経済・社会指標

(1)エネルギー消費GDP原単位削減:3.4%以上

(2)二酸化炭素排出GDP原単位削減:3.9%以上

(3)主要汚染物質排出量の継続的削減

(削減率COD2%、アンモニア性窒素2%、SO23%、NOX3%)

●2016年の重点施策(環境対策の強化、グリーン発展の新たな進展促進)

(1)大気汚染スモッグ対策、水質汚濁対策の強化。

・重点地域のPM2.5濃度の継続的低下。

・石炭燃焼汚染物質排出削減、自動車排ガス削減に注力。

・天然ガス供給拡大、風力、太陽光、バイオマス等の発展支援。

・自動車用ガソリン国5(=ユーロ5)基準の全面普及。

・黄標車(基準不適合の車両)・老朽車380万台淘汰。

(2)省エネルギー・環境産業の大々的発展。

・ESCO、汚染処理の第三者委託の広範な展開。

2016年 1月 1日、史上最も厳しいと言われる改正『中華人民共和国大気汚染防治法』

が施行された。環境大気状態を規制・管理の中心とし、基準の徹底と期限付きの基準クリ

ア計画を規定するほか、主たる汚染源にも詳細に規定している。また石炭燃焼、自動車、

船舶、VOC等の汚染源への規制を強化し、重点対策地域における汚染対策、防止を各レベ

ルの政府が共同して行う「連動メカニズム」を徹底するよう求めている。

この動きの中で、各地方政府でも改正法に呼応した『大気汚染防治条例』の制定、施行

が相次いでいる。3月末までに河北省、西寧市(青海省)、海南省が条例公布したほか、

山東省(大気汚染防治計画2期行動計画(2016-2017))、湖南省(パブリックコメント段

階)、晋城市(山西省、行動計画)、黒龍江省(2016-18 行動方案)、無錫市(年度計画)

などが相次いでアクションを起こしている。

今後、各地方で次々と新措置の法制化が進められていくことは確実であり、この中で我

が国としても地方政府や企業との対話を強化しつつ、市場開拓を図っていくことが重要で

あろう。

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3.気候変動対応の自主的貢献目標

2015年の中国の省エネルギー・環境市場動向として特に注視されるものは、6月に中国

政府が気候変動枠組条約(UNFCCC)に約束草案(INDC)を提出したことである。これ

に先立つ5月初め、国家発展改革委員会の張勇副主任は「省エネルギー・排出削減事業は

気候変動対策と密接に関連付けて推進しなければならない」と発言しており、中国政府の

自主的貢献への意思を表明している。

約束草案は第13次五カ年計画期間(2020年まで)のはるか先の2030年における目標

値を示しており、下記の表のように、2030年の単位GDP当たりCO2排出を2005年比で

60~65%引き下げるとしている。

この目標は、13次五か年計画とも密接にリンクしていることを読み取ることができ

る。その省エネ目標は、

・生産方式、生活方式のグリーン化、低炭素水準の向上

・エネルギー資源開発利用効率の大幅な向上、エネルギーと水資源消費、建設用地、炭

素排出総量を有効的に抑制

・主要汚染物質の排出量の大幅な削減

・主体工能区の配置を加速、緑色発展、エコ文明建設を目指す

・生態安全保護措置の基本形成

などを骨格としているほか、政府活動報告などでもESCOなど、これまで中国になかな

か浸透しづらかったビジネスが言及されるようになるなど、省エネビジネスの本格的到来

を予感させる。

2015年 11月 29日、パリのCOP21の開幕の前日に東京で開催された第9回日中省エネル

ギー・環境総合フォーラムにおいて、中国側を代表して来日した国家発展改革委員会・張勇副

主任は、改めて約束草案の内容に言及しつつ、パリ協定の全面的、有効かつ持続的な実施の

2014年 2020年目標 2030年目標

二酸化炭素の削減ピーク値二酸化炭素の排出は

2030年頃にピーク値に到達

2005年比単位GDPにおける二酸化炭素の排出削減 33.80% 40%-45% 60%-65%

非化石エネルギー消費の一次エネルギーに占める割合 11.20% 15% 20%

2005年比森林面積の増加 2160万ha 4000万ha

2005年比森林蓄積総量の増加 21.88億㎥ 13億㎥ 45億㎥

気候変動対応の自主的貢献目標

出典:「第9回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」の省エネ分科会における国家発展改革委員会能源研究所・戴彦徳副所長の講演資料などから作成

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ために日本を含めた各国との協力、協調を進めたいとの考えを示すとともに、フォーラムの協力

プラットフォームとしての成果を評価し、今後の協力強化に新たな期待感を表明した。

4.中国省エネルギーの重点政策

一方、省エネルギーに関する主な政策は、国家発展改革委員会が2015年 12月、省エネ

分野で重点的に普及を促進する技術リスト(国家重点節能低碳技術推広目録:2015年節

能部分)を発表している。これは、「中国省エネ法〔2007年中国主席令〕」、「国務院

『12・5』省エネ排出削減総合業務方案に関する通知〔国発[2011]26号〕」、「国務院省エネ

ルギー・環境保護産業の発展加速についての意見〔国発[2013]30号〕」などの主要な省エ

ネ政策を着実に実行することを目的とし、石炭、電力、鉄鋼、非鉄、石油・石油化学、化

学工業、建材、機械、軽工業、繊維、建設、交通、通信の 13業種に及ぶ合計266項目が

盛り込んだもので、「国家重点省エネ・CO2削減技術推進目録」の2015年版(省エネ部

分)として公布されたものと位置づけられる。省エネ技術の進歩と省エネ加速を目指し、

エネルギー多消費型企業に対して省エネ先進技術や設備の採用を促している。エネルギー

の節約・効率的利用を呼びかけることで、資源・環境問題を緩和させる狙いを読み取るこ

とができる。

5.省エネルギー・環境対策市場の動向と課題

より具体的な省エネルギー・環境ビジネスの動向として、ここでは工場の省エネルギー

について、市場の発展状況、課題、方向性などを考察する。

国家工業信息化部中国電子信息産業発展研究院が発表した『2016年中国工業節能源排

発展形勢』によれば、「工業分野のエネルギー消費は、経済成長のゆるやかな減速に伴

い、減少傾向にある」のが現状認識である。2015年1~10月の全国一定規模以上の工業

付加価値あたりエネルギー消費は前年同期比8%減少し、年度目標の4%減少を超過達成

している。工業のグリーン発展を推進し、低炭素・排出削減を加速するため、再生可能エ

ネルギーや、低炭素型化石燃料による発電を優先することを骨子とする「全国炭素排出権

取引体系」が2017年より、鉄鋼、電力、化工、建材、製紙、非鉄金属など重点工業セク

ターで実施される予定である。これらの達成に向け、官民連携(PPP)プロジェクトの推

進も昨今注目されつつある。

こうした現状に対して課題も多い。まず、工場などの生産現場では、個々の省エネ技術

に偏り、総合的な解決に向けた意識の欠如が指摘されている。産業セクター間での連携も

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不足しており、なお一層の効率化も求められている。現在、重点プロジェクトや重点産業

に特化した省エネが推進されており、上流・下流企業間での連携が不足、省エネの効果が

抑制されている。こうしたソフト面での諸課題でも、日本企業による協力の可能性が見受

けられる。

今後の方向性として有望なのは、西部地域の工業転換を加速、西部地区の工業構造、産

業構造の高度化、スマートグリッドの発展、風力・水力発電など再生可能エネルギーの利

用拡大などが挙げられる。また、省エネ目標と達成度を査定するため、各省・各産業セク

ターの省エネ目標管理、データ・モニタリングシステムの改善なども協力の余地は大き

い。

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Ⅲ 第9回日中省エネルギー・環境総合フォーラム

1 開催概要

(1)時期 2015年11月28日(土)~29日(日)

(2)場所 東京 ザ・プリンスパークタワー東京

(3)主催 日本側:経済産業省・日中経済協会

中国側:国家発展改革委員会・商務部・中国駐日大使館

(4)参加者数 約750名(日本側約470名、中国側約270名)

(5)日程

11月28日(土)

【協力プロジェクト文書調印式】

立会い 吉川徹志 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課長

王静波 国家発展和改革委員会 環資司協調処処長

11月29日(日)

【全体会議】

開会挨拶・基調講演

高木陽介 経済産業副大臣

張 勇 国家発展改革委員会副主任

高 燕 商務部副部長

宗岡正二 日中経済協会会長

程 永華 中国駐日本国大使

調印案件フォローアップ (日下部聡 資源エネルギー庁長官)

日中企業による協力プロジェクト紹介

彭 寿 中国建材国際工程集団有限公司董事長

小久保憲一 株式会社日立製作所執行役常務・中国総代表

協力プロジェクト文書交換式(26件)

林 幹雄 経済産業大臣挨拶

丸川珠代 環境大臣挨拶

閉会 (岡本 巖 日中経済協会理事長/総合司会)

【分科会】

・エネルギー多消費企業の省エネルギー対策

・スマートシティ(城市緑色管理)

・次世代自動車

・循環経済

・石炭火力発電

・日中長期貿易(水処理・汚泥処理、自動車リサイクル)

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【特設展示コーナー】日本企業15社が自社の技術・ソリューションの概要や中国での

実績例をパネルで紹介、中国側は大連市が幹部を派遣して新たな都市づくりの構想

(中日韓循環経済モデル都市)をPR。

【対中省エネルギー・環境ビジネスの成功事例】第6回以降の協力案件で成功につな

がった事例から 5 件を選定し、プロジェクトの成功につながった要因等を「調印プ

ロジェクトの成果の一例」冊子にまとめて配布。

中国側の分科会参加者は11月30日~12月2日、分科会毎に日本各地の関係施設・企業

を視察。中国側代表として参加した張勇副主任一行は、東京都中央防波堤埋立処分場、豊

田市(スマートシティ)、京都府(地球温暖化対策)等を訪れ交流したほか、関西経済界と

の対話や、先導的取組を行っている日本企業の現場視察を行った。

全体会議の発言概要、分科会のプレゼンテーション資料は、フォーラム終了後、日中経

済協会ウェブサイト(下記URL)に掲示し、ダウンロードが可能である。このほか、本フ

ォーラムの報告書(リーフレット)を作成した。

第 9回日中省エネルギー・環境総合フォーラム ウェブ広報サイト

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

▼全体会議

http://www.jc-web.or.jp/jcbase/publics/index/140/

▼分科会

http://www.jc-web.or.jp/jcbase/publics/index/143/&anchor_link=page143#page143

▼報告書(リーフレット)

http://www.jc-web.or.jp/jcbase/publics/index/122/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

2 発言と討議のポイント

2-1 全体会議

今回のフォーラムの全体会議における主な発言は以下のとおりである。(発言概要は資

料1参照)

(1)林幹雄経済産業大臣

日本の技術・ノウハウは中国の資源節約型グリーン発展に資する。中国は今後、サービ

ス産業や一般家庭を含め幅広くエネルギー利用の最適化のため、IoT 等新技術を活かした

きめ細かな対策が重要。また、日中が協力して取り組むべき課題として、環境保護等に資

する物品の貿易自由化、環境分野での国際規格の共同提案などの協力を進めたい。

(2)高木陽介経済産業副大臣

都市化が急速に進む中国に特に重要なのは都市におけるエネルギー需給構造の変革。地

域エネルギーを最大限活用し、系統の安定化に寄与するスマートコミュニティの分野で協

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力を積極的に進めたい。

(3)丸川珠代環境大臣

日中は 20 年以上環境協力を実施。日中韓三カ国環境大臣会合を通じ、中国と一層の連

携・協力を推進したい。COP21では中国とも緊密に連携しながら、各国と粘り強く対話し、

最終的に合意を得るべく貢献したい。

(4)張勇国家発展改革委員会副主任

省エネルギー・環境協力を新しい段階に進めるため、①省エネ・再生可能エネルギーワ

ーキンググループによる政策対話強化や大気汚染等地域性環境問題への共同対応、②モデ

ルプロジェクト協力の深化、③高付加価値技術で第三国市場を開拓、④省エネ研修等人材

交流強化。フォーラムを引き続き活用し省エネルギー・環境等分野の実務協力を深化した

い。

(5)高燕商務部副部長

04 年以降、日本の電力・水利・環境等分野における対中投資は日本の対中投資累計の

0.2%、1.2億ドルにとどまった。政策対話強化により中国は IPR保護強化、日本には技術

供与緩和に期待。両国企業は互いに信頼と忍耐でさらにビジネスを推進。関係機関は本フ

ォーラムはじめ交流・マッチングサポートを強化し、両国の貿易投資のグリーン化を向上。

第三国市場も視野に入れる。

(6)宗岡正二日中経済協会会長

日本企業の技術・設備の導入が進まない問題について、初期導入コストのみの比較でな

く、導入効果の大きさ、技術・設備の信頼性、性能の長期安定性、管理・メンテナンスの

しやすさなどライフサイクルコストでの評価を期待。この方向の定着が中国の環境産業の

技術力向上のはずみにもなる。

(7)程永華中国駐日大使

中国の設備製造優位性と日本の先進技術を結合し、発展途上国に安くて品質の良い省エ

ネルギー・環境製品を提供し、世界の省エネルギー・環境レベルを向上させたい。中日関

係は徐々に改善しているがまだ勢いが弱い。両国は歴史を鑑とし未来に向かう精神により

弛まない努力が必要。

(8)日下部聡資源エネルギー庁長官(調印案件フォローアップ)

第 8 回フォーラムまでに調印された 259 件のうち 4 割が当初目標を達成。省エネルギ

ー・環境対策は経済性だけでは図れない社会的メリットも多く、政府間でも制度構築や人

材育成等協力を進める。双方が適切なパートナーと互いの強みを融合させ競争力を高める

ことが長期的成功の秘訣。

(9)小久保憲一株式会社日立製作所執行役常務・中国総代表

国家発展改革委員会の支援のもと、省エネルギー・環境保護技術交流会を開催しながら、

雲南(ボイラー補機用高圧モーター設備のインバータシステム)、寧波(中小企業向け省エ

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ネ診断)、大連(地域エネルギーマネジメント)等の事業を実施。日立の技術・経験と中国

パートナーの実績を掛け合わせ良い成果をあげたい。

(10)彭寿中国建材国際工程集団有限公司董事長

世界最大の建材メーカーで、日本企業ともセメント工場向け省エネ設備の研究開発、ト

ルコの排熱発電市場開拓、ガラスの省エネルギー・環境サービス推進で提携。今後、技術

革新の交流プラットホーム設立や、省エネルギー・環境ファンドの有効利用、第三国市場

の共同開拓を期待。

2-2 各分科会のポイントと課題、今後の方向性

6つのテーマについて分科会を開催した。(発言概要は資料1参照)

分科会ごとに日中双方の関係者を取り巻く状況や課題、当面の目標等が大きく異なる。

ここでは、主に各分科会の事前の連絡調整から当日の開催、その後の地方視察まで全般の

運営にあたった事務局の観点から、双方の期待や評価、交流の姿勢の特徴や課題、反省点、

今後の進め方についてのアイディアなどを整理した。

なお、会議時間が非常にタイトで、参加者間の交流に十分な時間が取れなかったことが

実施にあたっての共通の課題としてあげられており、今後の改善が必要である。

(1)エネルギー多消費企業の省エネルギー対策

テーマ:日本企業の工場向けの省エネ手法や技術に関するプレゼンテーションを通じて

中国の重点エネルギー使用分野のさらなる省エネ化の取組を促進する

①双方の関心事項

(政策面)

・第13次五カ年計画の省エネ目標と政策 「万社企業省エネ低炭素行動」16000社+

グリーン発展(節約、4権の分配制度構築)を中心に実施。

(技術面)

・日本のヒートポンプ、インバーター技術を紹介、質問が多かった。趙懐勇処長からも、

この2つに中国側のニーズが高く、マッチングしたいとの意向表明。

・EMS 管理方法と人材育成 具体的にテーマを決めて交流したい。(趙処長)

・日本の補助金制度と罰則を知りたい。(中国企業、政府)

→特に、「厳しい罰則がないのに、なぜ企業はその目標を守るのか」について質問が

集中。視察の際、工場長より、たとえば年1%減を達成した場合としなかった場合の工

場が受ける影響、また役所が頻繁に立ち入り調査をすること、工場長の意識が大事であ

ることなどの具体的な説明がなされ、省エネ意識の重要性について中国側企業の認識向

上に役立った。

②課題

日本側は、知財権(模倣問題)、企業が省エネ関連法令を遵守しないこと、中国側か

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らは、日本の製品価格が高いことが問題として上げられた。

③今後の方向性

中国側は、どうすれば法令や基準を企業が守るのかという制度面と、日本の技術に関

心が高く、日中共にマッチングを重視したいとの意向。ニーズはあるはずなのに、期待

されているほどマッチングができていないという認識で一致。また省エネセンターより

ESCO について、中国側の方針が不明のため日本側として対応が採りにくいとの意見

があった。

全体として、日中双方、工場省エネはテーマとして重要であり、さらに技術・マッチ

ングに力を入れていくべきとの認識であった。

(2)スマートシティ(城市緑色管理)

テーマ:都市の発展と省エネ等の対策を両立させていくための認識の共有

①双方の関心事項

日本側は、日本で4ヵ所を中心に進められたスマートコミュニティの実証結果+実装

段階に入りつつある技術・システムを紹介、エリアエネルギーマネジメント関連技術・

システムの中国展開を期待。

中国側の関心事項は、第13次五カ年計画の五大理念にグリーン発展が取り入れられ

たことを受け、資源・資金を浪費する都市建設を反省、効率的な街づくりを学びたいと

いう点で、日本のコンパクトシティへの関心が高まった。

②課題

日本側からはこれまで日中双方のコンセプトやニーズがかみあっていないとの問題

提起がなされてきたが、13 次五カ年計画での方向性が示されたことに期待も感じてお

り、各地で特色ある展開が期待できるが、すべてについて自社の技術がマッチし得るか

否か調べるためには時間やコストが相当かかり、難度が高いとも感じている。

③今後の方向性

中国では建設部の主導でスマートシティの実証展開が進んでおり、各地の個別ニーズ

に基づくマッチングが重要となってきている。今回、プレゼンや視察を行った日本の4

つの自治体のケースは中国に有用との認識が得られた(地方視察の団長の呂文斌副司長

は、「けいはんな」学研都市等関西での展開を実際に見て、日本のスマートシティに関

する技術・システム等のイノベーションの実態に感銘を受けた模様であり、地方からの

参加者も高く評価)。

分野としてはエリアEMS(FEMS,BEMS,HEMSを包含)にフォーカスし、日中を

どう結びつけるか、その仕組みを検討していくことが今後の方向性の一つと考えられる。

スマートシティという言葉にこだわらず、その中で FEMS などにも場所に応じてター

ゲットを変えながら日本の強みを紹介し、実証、普及につなげることが現実的との手ご

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たえが感じられた。

(3)次世代自動車

テーマ:日中の次世代・新エネルギー自動車の振興政策や関連インフラ施設整備状況、

企業および関連機構の研究・開発、普及と将来計画について

①双方の関心事項

中国側(国家発改委):分科会を通じて企業の直接交流(特に技術面)を深めたい。地方

政府の政策(補助金、インフラ整備)について情報交換を希望。

日本側:次世代自動車普及に係る規格の統一

評価が高かった内容

・電気自動車はじめ次世代自動車についての日中共同研究の発表。日本側参加者より今後、

充電社会インフラ整備に加え、バッテリーや自動運転もテーマにしてはとの提案も出た。

・中国側は、日本企業の発表・視察で、研究成果・方向性など技術に重点が置かれた内容

に高い評価と関心。

②課題

・中国側は日本側の最新の情報、トレンドやデータに対する関心が高い一方、日本側には

慎重な姿勢ゆえに情報提供に限界があり、中国側からはせっかくの機会に期待ほどの収穫

が得られなかったと失望感を滲ませる参加者もいた。

・中国側に自社の規格を取り入れてほしい等の要望は、分科会では提起されず、もっぱら

視察先で個別にされていた。ビジネスに関わることは当然ながら全体ではできない話も多

い。

・中国側、とくに国家発展改革委員会など政府関係者からは、内容的にもっと突っ込んだ

交流を、時間をかけて行いたいとの要望があった。

③今後の方向性

・今回、共同研究発表は、双方の関心が高い割には時間が少なかった。次回はこれを中心

により時間を掛けて発表、議論を行うことを検討すべき。

・政策面の交流は必要。たとえば、急速充電の規格統一(中国は国内も不統一。BYDなど

は自社の規格でやっている)や、電気自動車普及の補助金については日本の自動車も対象

にするなど。

・日本の先進的分野としては、自動運転、バッテリーなどのリサイクル。バッテリー回収

は中国では今後大きな問題になる。日本の先進技術を伝えることのできる分野になりうる。

(4)循環経済分科会

テーマ:日中両国政府から、循環型社会建設に向けた法的整備と当面の政策的課題を、

日中双方の地方自治体、学術研究部門、企業から具体的な取組事例・成果・課題を報告

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①双方の関心事項

大きく異なる日中の状況 相違点が明確で日本の取り組みに高い関心

経緯 制度 リサイクル従事企業

最初は排出ごみの減量化から

取り組みを開始し、その後3R

政策により廃棄物の有効利用

を展開

基本法(循環型社会形

成推進基本法→3R促

進法=資源有効利用

促進法)と、個別ごみ

に対応する個別法で

階層的にまんべんな

く法体系を構築

ごみの減量化と再生再利

用について環境問題を念

頭に置いて事業展開

最初から排出ごみを資源とし

て捉える傾向が強く、産業界

では有用な資源の回収には熱

心だったが、資源化されない

ごみは後回しに。生活ごみで

も自動車、家電、電池などの有

価資源の回収のみ産業化

2007 年に再生資源回

収利用弁法、2009 年

に循環経済促進法。た

だし、社会と業界を縦

横に網羅する法体系

が未整備

経営効率重視。売れるも

のは回収に積極的、売れ

ない物をお金をかけてま

で回収・再利用する考え

はない。全国の回収総量

の約半分が屑鉄という特

徴もこれを物語る

・中国側の期待と評価

政策・制度をどのように整備するかが国家発改委の最重要関心事項。そのため日本の、

網羅的に整備されている政策・制度・取り組みに対する関心は高い。中国には捨てるル

ール、規制自体がなく、住民意識も低い。分科会プレゼン・視察内容ともに中国側から

不満はなかった。

②課題

・日本企業の抱える問題点

日本のリサイクル企業が中国で事業展開するのは困難が多い。リサイクルは通常、回

収+再利用で事業化するが、外資企業が回収を直接行うことが難しいため、中国企業(地

元の国有企業が多い)から原料を買い取らなくてはならず採算に合わないこと、量の安

定確保も難点。中国企業は回収はするが再利用の技術がなく、技術だけほしい、という

ケースも多々あるが、日本企業としては技術だけでは採算が取れないとの判断。

③今後の方向性

・循環経済は分科会として有望

中国側は政府・企業とも日本の補助金制度についても強い関心を示した。日本では制

度的にリサイクル企業の立地段階での補助金はあるが、運営に対する補助金はない。た

だし、回収のルールや環境規制がしっかりしなければ、いくら補助金をつけても環境保

全のための循環再利用は進まない。そのため、国家発改委もまず政策・制度の整備が最

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重要と位置付け、日本の政策・制度を取り入れたいと明言しており、分科会がその推進

に寄与することは日本企業の中国市場での展開にも有益と考えられる。

(5)石炭火力発電

テーマ:日中両国における石炭火力発電分野の環境総合対策の現状と課題、関連技術の

最新研究開発動向や日本企業の中国展開等について

①双方の関心事項

・大気汚染対策 日中双方関心が高い。共通の問題意識はコストとインセンティブ。

・高効率発電 IGCC(石炭ガス化複合発電)、USC(超超臨界発電)は、中国も追い上

げており、すでに第三国ではコンペティター状態。日中合弁企業の設立もされており、

情報的には既知の事項となりつつある。

・先進技術 IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)の蓄電池部分は日本が優位性を持

ち,中国側の関心も高いが、開発中であり、今後の協力方向は検討を要する。

・その他 CCT ガス化、液化についてはコストの問題か、今回は活発な議論はなかっ

た。

・日本側は、政府・メーカーとも大気汚染対策技術の中国への普及を重点に置いた。電

力企業はむしろ中国の技術開発の動向についての情報収集が主眼。

中国側は、政府・企業とも、石炭火力発電所の改造は絶対必要で、日本の対策には高

い評価。

②課題

日本の強みである、古い発電所を効率を下げずに環境対策を行いながら維持する技術

は、中国側はコストの問題があり、日本の経験をそのまま中国に導入することは難しい

との意見。日本側はこれを供与してもビジネスとするのは難しいとの意見(援助として

はすでに実施済み)。

なお、日本は汚染対策の運営ノウハウなど中国になんらかの技術を供与するには日本

の電力企業の協力が必要であるのに対し、中国の電力企業は集団内にエンジニアリング

会社があって一体化しているという、両国で体制が異なる状態である。

・所管部門についての留意点

本分科会の双方の主管部門が、日本側は石炭中心であるのに対し、中国側は国家能源

局電力司、中国電力企業聯合会といった発電自体を管轄する部門であった。国家能源局

煤炭司は今回参加せず(同司の所管は鉱山の安全や石炭価格)。さらに、今回の内容で

最も関心がかみあった大気汚染対策は国家発改委環境資源司の所管でもある。

③今後の方向性

石炭火力に係る大気汚染対策は、さらに交流を深めるポイントとなると考えられる。

質疑応答では、、石炭火力発電所の水処理・再利用について参入したいが、国有企業

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の調達資格がないとの意見の提起が出され、制度的課題として検討が必要ではないかと

思われる。

(6)日中長期貿易(水処理・汚泥処理、自動車リサイクル)

中国側主催者の商務部が担当する唯一の分科会。日中両国の長期貿易協議委員会の省エ

ネ等技術交流促進部会(日本側事務局は日中経済協会、中国側事務局は商務部対外貿易司

に設置)の定期交流の形を採っている。

テーマ:自動車リサイクル、汚水汚泥処理

①双方の関心事項と課題

第 1部 自動車リサイクル

中国は自動車普及が廃車の段階に来ており、廃車の量が飛躍的に拡大しているが、流

通サイクル(回収・解体)ができておらず、また、再利用できないくらいまで車を使い

尽くす習慣もあり、日本のリサイクル業が成り立っている環境と相当異なる。

(中国側)日本のリサイクル業に対する関心は高い。

・政府 制度の整備 中国では解体現場でも環境等への配慮がされず、汚染を発生させ

ている状況を変えたい。今回来日した商務部市場体系建設司関係者は、日本の法律制度

所管部門とのより詳細な交流を希望した。規制改革(エンジン等人の生命に係る五大部

品の再利用も許可する)の方向という情報は以前からあるが、従事する企業の意識・技

術の向上と一体の問題でもあり、なかなか具体化しないというのが現状である。

・企業 市場の拡大は必至。海外の技術ノウハウをいれたい、完成車メーカーや異業種

も業界参入志向。

(日本側)リサイクル企業は消極的。

・日本企業としては、技術等は確立しており、いつでも海外展開は可能。しかし、中国

では展開するベース自体がない。

・リサイクルは、①現地で回収・解体して再利用、②海外の中古部品を輸入の2つの形

態があるが五大部品は再販不可という法律があり、これらの再生利用が得意な日本の強

みが活かせない(たいていはくず鉄として販売)。再生・中古部品の輸入を厳しく制限

する貿易制度や、再利用できないくらいまで使う意識の存在が障害となっている。

採算以前の問題として、需要はあるが規制等非常に煩雑で、すでに何社か展開を試み

たが、成功したケースはないのが現状。一方で、日本企業はアフリカや東南アジアへの

中古部品輸出は盛んに行っている。中国は条件が整わない限り市場とならず、情報収集

のみという意識が支配的になっている。

・留意点

中国側主宰者である商務部対外貿易司は自動車リサイクルについては管轄外。

第 2部 汚水汚泥処理

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今回は水処理全般と汚泥処理というテーマ自体が広く、時間の関係もあり、双方のプ

レゼン発表で終わった感があるが、分野自体には双方関心が高く、さらにテーマを絞り

込めばかみあった交流になると思われた。

②今後の方向性

今後、自動車リサイクルについては継続するには日中双方の関心がかみ合うよう、切

り口を工夫する必要がある。また、一度に二つの異なる分野を実施すると、半分は関心

がないことになり、一本化することも検討したい。

また、商務部対外貿易司は入札制度を所管し、分野ごとに企業を組織する仕組みがあ

り、企業のとりまとめは比較的容易とのことであった。日本企業は、中国の入札制度が

わかりにくいなどの課題も抱えており、商務部対外貿易司との間で、この分野を取りあ

げて交流する等も検討したい。

3 今回の協力プロジェクト 26件の傾向

第9回フォーラムでは、26件の協力プロジェクトの文書交換が披露された。一部の案件

については、前日に文書の調印を実施した。(26件の概要は資料1参照)

(1)分野別

26 件のうち省エネ分野は 14 件、環境分野は 12 件であった。内容は、省エネ分野は工

場省エネ、民生・運輸省エネ、発電関連、環境分野は大気汚染対策、水処理、リサイクル・

循環経済、汚泥処理・ごみ処理、土壌修復等であった。

省エネ分野では、ガラス工場の省電力事業、グリーン製造等、民生・運輸省エネはスマ

ートシティや燃料電池、発電は石炭火力のクリーン利用や天然ガス転換に関するものであ

った。

環境分野では、大気汚染対策は、ダイオキシンの測定、VOC対策、電気集塵機など。水

処理は、工業排水の測定技術、難分解性物質無害化、汚泥の高速炭化など日本が強みを持

つ分野であった。リサイクルは、建築廃棄物や取り壊しで発生する廃液の回収再利用など、

中国が技術を求めている分野での案件が多く含まれている。

(2)協力形態別

26件中、共同調査・研究・開発10件、技術提供5件、技術交流3件、投資1件実証事

業1件で、枠組みの締結は6件となった。

よりビジネスに近いという観点で見ると、投資は四川省での天然ガス分散型エネルギー

プロジェクト、技術提供はガラス炉の省電力、飲料水のプラント導入、建設廃棄物リサイ

クル、有機溶剤再生利用、下水汚泥高速炭化装置、実証事業は電気集塵機といった内容で

あった。

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なお、枠組みの締結が依然一定数を占めるのは、日中関係が改善に転じたとはいえ、不

安定さを残す状態においては、協力関係を確立・強化し、その枠組みのもとでプロジェク

トを実施することが案件形成に必要であり、これをフォーラムという場でオーソライズす

るということが日中双方の安心につながっているということができる。

(3)地域別

中国側パートナーの地域で見ると、多い順に、北京 7、江蘇 6、河北・山東・四川各 2、

湖北1、遼寧1で、全国的な団体等地域を特定しないものが 6件であった。

首都であり、国有企業の本社や大学が集中する北京に次いで多かったのが江蘇である。

ここは国内総生産2位で経済力があり、考え方も比較的開放的で日本企業も多く日本との

交流が日常化していることも背景として考えられる。分野的にはリサイクル、水処理、大

気、省エネで偏りはなかった。そのほか、河北・山東は大気対策、四川は天然ガスの案件

であった。

4 これまでの協力案件に対するフォローアップ調査

第 1回~8回の調印案件 259 件について、2015 年 9月、進捗状況や課題、要望等を尋

ねるアンケート調査を実施した。(フォローアップ調査結果は資料1に掲載)

4-1 結果概要

全案件259件中、目標達成の案件は100件(うち、次の段階に進んでいる案件は 15件)

と全案件の4割。一方、途中で頓挫した案件は79件。

協力形態別では、回数を重ねるごとに事業化に近い案件が増加していることが分かる。

具体的には、フォーラムの初期では専門家派遣や交流会の開催といった能力構築を主眼と

した技術交流が大きな割合を占めていたが、回を重ねるごとに、技術の移転等のビジネス

を主体とした技術提供が大きな割合を占めるようになっている。また共同開発・研究も着

実に増加している。ビジネスを見据えて市場適合性を確認する実証事業は、第 5回(2010

年)以降一定数で推移している。これら研究開発、実証などの案件は、結果を踏まえて具

体的な事業へ繋がることが期待されるため、継続的なフォローを行う必要がある。

一方、合弁会社の設立など直接投資案件は目立った増加はなく、省エネルギー・環境分

野における有効なビジネスモデルの確立やビジネス習慣への習熟など、製造技術よりも市

場環境への適応が課題である可能性が考えられる。

頓挫の理由として、商業条件の理由を挙げたものが 56件と大半を占めた。特に、ビジネ

スモデルが双方で合意に達しないといったものが多く見られる一方、コストが中国市場に

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適さないといったものや、市況が悪化してビジネスに繋がらなかったといった市場環境の

変化を要因とするものも存在した。日中関係に影響を受けたとするものが6件、政策・制

度によるものが2件あった。政策・制度上の理由として、許可取得に係るものが挙げられ

た。

制度的な課題としては、回答数の内、中国の制度(法律、基準)がトップの 30件。その

内訳として、法整備がなされていない(適用が不確定)との回答が多く、許認可・入札の

複雑さが次に挙げられる。外資投資の規制が問題との回答もあった。

なお、「日中関係の影響が非常にある」、「ある」と回答した割合は約3割であり、昨年よ

りも約2割低下している。平成26年11月の日中首脳会談が実現したことを契機に、日中

関係は良好な傾向にあることが担当者の実感にも顕著に表れていると考えられる。

4-2 両国政府への要望

アンケートに提起された両国政府への要望は以下の通り。

1.中国政府に対して

・法令順守、法整備、基準の制定(例;省エネルギー・環境設備設置の法令、VOCオン

ラインモニタリング測定の国家標準の制定など)

・補助金、補助政策などの適用

・許認可の時間短縮、手続の簡素化

・積極的な日本技術の導入

2.日本政府に対して

・日本の省エネルギー・環境対策の強みが中国でより認知・採用されるために、さらな

る官民の共同取組みが必要。

・情報提供、ベンチャー企業などへの支援策

3.両国政府に対して

・資金、政策支援

4-3 「調印プロジェクトの成果の一例」

今回のフォーラムでは、最近、成功裏にビジネスに繋げておられるいくつかの調印プロ

ジェクトについて、成功に至った要因等について聞き取り調査を実施し、事例として適切

であり、企業の同意を得られた5件について冊子にして配布した。(全文は資料1に掲載)

(第6回)佛山市向け汚泥乾燥プロジェクト、 日本側:月島機械株式会社、中国側:

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上海市向け汚泥乾燥・焼却プロジェクト 北京機電院高技術股份有限公司

(第8回)カーバイド炉からの溶融カーバイド

の流し出し技術(RTM:Remote Tapping

Manipulator)の中国への技術協力及び技術許

諾の契約締結

日本側:電気化学工業株式会社、中国

側:中化国際株式有限公司

(第8回)深圳達実智能株式有限公司及び三菱

UFJ リース株式会社による省エネルギー事業

を行う合弁会社設立

日本側:三菱UFJリース株式会社、

中国側:深圳達実智能株式有限公司

(第8回)水質分析の簡易化とデータ収集シス

テムの評価

日本側:オプテックス株式会社、株式

会社共立理化学研究所、中国側:北京

市城市排水監測総站有限公司

(第8回)中国市場においての下水汚泥乾燥シ

ステムに関する技術指導製造販売契約

日本側:株式会社大川原製作所、中国

側:中節能博実(湖北)環境工程技術

有限公司

成功に繋がった要因としては主に次の点が挙げられる。

①適切な技術や知識を有するパートナーの確保

②技術内容及び同技術による効果の的確な理解

③パートナーとの密な情報交換

④中国調達も含めたコスト競争力の強化

すなわち、先進的な技術・ソリューションの品質・信頼性や、中長期的な視点における

コストを含めたトータルなメリットを、いかに中国側に理解されるかがビジネスに繋げる

ひとつの成功の鍵といえる。そのためには、双方の密なコミュニケーションが不可欠であ

り、信頼できるパートナー関係の構築が重要である。また、単に技術力が高いというだけ

ではなく、市場においてコスト面を含めた総合力での競争力を高める努力を行っていると

いうことも成功には必要な取り組みだと言える。

5 総括:今後に向けて

(1)「日中両国のWin-Win協力のハイライト」(2011年、李克強副総理)と位置づけら

れている本フォーラムは、2013年の停滞のあと、2014年末、2015年秋と続けて開催が実

現した。

両国の閣僚クラスが共にフォーラムに出席するのは 2012年8月の第7回以来3年4ヵ

月ぶり。解振華副主任の後を継いで環境、資源や気候変動対応を所管する閣僚クラスの張

副主任の来日により、ハイレベルの交流が今後活発化することが期待される。

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(2)今回、ハイレベルから発信された主なメッセージとしては、日本側が中国との積極

協力推進を望む分野としてエネルギーマネジメント(EMS)技術をとりあげ、中国側は政

府対話強化、実務協力重視により、日本の技術と中国の設備製造優位性を組み合わせた第

三国市場開拓、さらに省エネ環境ファンドやグリーンファイナンスの利用など金融を組み

合わせる視点が出されたことがあげられる。

分科会では、EMS、大気汚染対策、次世代自動車、循環経済、水処理等の分野で双方の

関心が高く、プロジェクト形成の可能性が高いことが確認できた。

同時に、一連の意見交換を通して、日本の省エネ・環境技術・設備の中国での普及の問

題点も明らかになっており、とりわけ、各種マッチングのチャンスを作り、企業間で技術

交流・商談を深めても、最終的には「日本の技術設備は高い」ことが障害で採用されない

ケースが多い、という実態が重視された。

そこで、今回はじめて、省エネ・環境設備導入に際して総合的なライフサイクルコスト

での評価が解決策になるという問題提起が日本側よりなされ、フォーラム終了後も中国政

府との間で、意見交換を継続している。

(3)第9回フォーラム終了後、中国側主催者である国家発展改革委員会資源節約環境保

護司と事務局を務める宏観経済研究院対外経済合作辦公室より、第 10 回を迎える次回フ

ォーラムの開催・運営について以下の提案があった。

・実務重視:中国政府としては実務、効果を重視。開催方法の刷新も必要。フォーラム自

体は年1回の開催だが、この枠組みの下、テーマを絞った小規模のシンポジウムを開催し、

その総括としてフォーラムを行うという案もある。テーマ設定が重要。企業にとって実り

のある実務的な協力が必要。

・基金創設の検討:協力事業推進のための基金創設の検討。金融機関同士の協力が欠かせ

ない。

・地方都市を選定し、省エネルギー・環境モデル都市としてプロジェクトを形成。

具体的には、①企業のニーズ、シーズの分析、②技術説明会の開催、③協力企業・都市

の発掘、④都市サイドから対日協力プロジェクトの提出、⑤日本企業を視察、⑥それぞれ

の強みに応じて推進などの活動が考えられるとのことであった。

2016年は中国で第 10回を迎えることとなる。折りしも 2020年の「小康社会」実現に

向けた第 13 次五カ年計画のスタートの年であり、中国の持続可能な発展実現の鍵となる

問題解決、

特に省エネルギー・環境分野での日本の知見、技術が中国でその効果を発揮できるよう、

フォーラムをさらに活用することが求められている。

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Ⅳ 本年度のフォーラム以外の活動と

これを通じて得られた情報・意見・提案

1.サマリー

フォーラムに向けた協力プロジェクト形成のため、「山東・淄博日中大気汚染対策協力モ

デル区」(山東省政府・淄博市政府との枠組みを活用した日本の省エネ・大気汚染技術の導

入)、「山東省水処理企業訪日団」(山東省の有力水ビジネス企業受入れによる日本の水処理

技術採用のためのマッチング)、「ECOTECH 上海 2015」、「中国節能低炭素博覧会」、

「ENEX、INTERAQUA」(省エネルギー・環境の展示博覧会への出展を通じたマッチン

グ実施)を行った。

これら活動に参加した企業は累計で日本企業 78 社(日本での省エネ環境展示での対応

企業を含めれば170社)、中国企業102 社である。

日本企業 中国企業

4/25 淄博市臨淄区とのマッチング交流会 4 4

7/7 淄博市劉東軍副市長・企業訪日団マッチング交流 20 9

5/13,15 山東省水ビジネス企業訪日団マッチング交流 43 14

6/10-12 ECOTECH上海2015出展マッチング交流 6 25

11/18-19 中国節能低炭素博覧会出展マッチング交流 5 50

小計 78 102

1/27-29 ENEX(第40回地球環境とエネルギーの調和展)、

インターアクア(第7回国際水ソリューション展)

92 ―

合計 170

(参加した延べ企業数。自治体、支援機関は含まない)

このうち、淄博大気汚染対策モデル区活動では 4件のプロジェクトが商談中または普及

進捗段階にあり、12件がマッチング段階、7件が新たにマッチングを予定している。

また、省エネルギー・環境ビジネス関連企業・団体からなる日中省エネルギー・環境ビ

ジネス推進協議会の会議を開催し、フォーラム実施に向けた意見交換を行った。これに先

立ち、日中省エネ・環境ビジネスに関するアンケート調査も実施した。

これらの活動の概要と得られた情報・意見・提案等は次項のとおりである。

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2.山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区

2-1 目的と経緯

「山東淄博(しはく)日中大気汚染対策モデル区」は、日本の知見・技術導入により中

国の大気汚染改善をめざす「日中大気汚染改善協力ネットワーク」の活動に山東省が呼応

し、同省 17 市のうち、重工業都市で汚染の深刻な淄博市をモデル区とすることを提案。

2014 年 9 月に同市と日中経済協会が覚書を結び、第 8 回日中省エネルギー・環境総合フ

ォーラムの協力案件とした。相互に事務局を設置して専門家・企業を組織するなど体制を

整え、連携しながら、淄博市ならびに山東省の大気汚染改善に資するプロジェクト形成と

普及のための交流を進めている。

2-2 活動内容

本年度の主な活動としては、淄博市・山東省からの関係者来日によるビジネスマッチン

グ(臨淄区、劉東軍副市長一行)、郭樹清・山東省長来日時のハイレベルでの推進に向けた

確認、(一財)省エネルギーセンターと中国・国家節能中心の省エネ人材研修事業の淄博で

の開催実現と第9回フォーラムでの協力案件形成、日本側事務局出張による現地協議・調

査、および個別技術受注実現のための市当局との連絡調整(石炭火力発電向け脱硫脱硝除

塵一貫システム、電気集塵機、燃料添加剤、VOCs処理技術等)を行った。

山東省、淄博市関係者との連絡調整を通じて得られた情報や、活動の進捗状況について

は随時、日本側専門家チーム、日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)、

大気ネットワーク、日中経済協会会員企業等に配信した。主な活動は以下の通りである。

(※2-2-1淄博市臨淄区とのマッチング交流会と2-2-4山東省郭樹清省長との「山東―日本

ハイレベル経済交流会」での推進活動は、本委託事業の対象ではないがモデル区に関連す

る活動であるので、参考として掲載)

2-2-1 淄博市臨淄区とのマッチング交流会※

(1)時期・場所 2015年 4月 24日・東京

(2)訪日メンバー(区政府4名、企業4社)

畢栄青 臨淄区人民政府区長

盧華棟 臨淄区副区長

羅 建 臨淄区政府辦公室主任

田鋼昌 臨淄区環保分局斉魯石化環保分局局長

崔課賢 淄博諾奥化工有限公司董事長兼総経理(斉魯石化の下請けから独立)

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劉文静 藍帆医療股分有限公司董事長(PVC手袋の生産で世界一)

孫 静 淄博英科医療制品有限公司董事(プラスチック再生手袋生産)

劉效華 山東美陵環境科技(淄博)有限公司董事長(脱硫・脱硝・除塵等設備製造)

楊 菁 通訳(元淄博市外事辦公室)

(3)内容

臨淄区政府・企業の友好都市訪問(周南市)で訪日した機会を利用し、日本側専門家チ

ーム(石炭エネルギーセンター、省エネルギーセンター、JX、石油エネルギー技術センタ

ー、北九州市)、企業(三井物産、ポスティ(日本ゴム工業会)、みずほ銀行)の出席を得

て、日本の知見の紹介と、ビジネスマッチングを行う交流会を実施。

(4)効果等

臨淄区は面積668㎢、人口約60万人、工業生産額450億米ドル。化工、鉄鋼、プラス

チックが主な産業。区長より、大気汚染対策、下水処理に重点的に取組んでいる。特に、

SINOPEC 斉魯石化の所在地で、化学工場だけで 688 社あり、区工業生産の 6 割を占め

る。またVOC対策が必要な企業が300社あるが、特に吸着技術については、基本的な設

備はあるが、運用がうまくいかず所期の効果が得られていない。今後はきめ細かい対策が

必要であり、臨淄区を1つのモデル区として汚染対策で実績を示せれば、波及効果が大き

い。今回の交流で得た情報も含め、日本の技術導入に期待したいと意欲を示した。

2-2-3 淄博市訪日団(団長:劉東軍副市長)受入

(1)時期 2015年7月 6~10日

(2)訪日メンバー(市政府5名、企業9社)

劉東軍 淄博市人民政府副市長(環境担当、モデル区推進指導小組担当副市長)

武継剛 淄博市経済情報化委員会市省エネ監察支隊支隊長

王建忠 淄博市人民政府外事辦公室副主任

毛相楠 淄博市環境保護局副科長

王 瑩 淄博市商務局通訳

郭尚剛 淄博環益環保検測有限公司総経理

于海生 山東英科医療用品股分有限公司副総経理

王正收 山東匯豊石化集団有限公司副総経理

張 軍 山東省薬用玻璃股分有限公司副総経理

王龍科 瑞陽制薬有限公司事業部経理

徐百明 山東福隆玻璃科技有限公司総経理

孫永霞 淄博盈順節能技術有限公司董事長

王 欣 桓台県唐山熱電有限公司総経理

張延東 山東天璨環保科技有限公司副総工程師

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(3)内容

新たに本モデル区の担当となった劉東軍副市長と、環境保護局長、省エネ辦公室責任者

等市政府関係者、大気汚染対策の必要な企業9社の訪日団を受入れ。

7月 7日午前、専門家チームとの協議では、淄博市より同市の大気汚染対策行動計画、

省エネニーズについて紹介、今後のモデル区実施計画について意見交換を行った。午後は

企業マッチング交流会を開催し、日本企業20社 37名が参加。8日~9日に羽田鉄工団地

において日本の工業団地の環境対策を、JX 日鉱日石川崎製造所と名古屋の塗装企業 2 社

においてVOC対策に焦点を絞った企業視察を行った。

なお、受入れに先立ち、淄博市の大気汚染防止資金についての情報、中日大気汚染防治

総合示範区建設専門会議議決事項、淄博市大気汚染防治行動計画意見徴求稿などの情報が

得られた。(淄博市大気汚染防治行動計画意見徴求稿は資料 1参照)

(4)結果、効果等

①専門家チームとの協議

専門家チーム構成メンバーの各々の機能を新しい担当副市長や指導小組メンバーに

認識させることができた。双方の直面する課題として技術と価格のバランスをどうとる

か、これをどう乗り越えるかについて協力が必要という認識で一致。

②マッチング交流会

VOC対策、PM2.5解析、脱硝、排ガス処理等の分野で、日本企業の技術が評価され、

日中双方でさかんな意見交換が行われた。今後各社はさらなる技術交流を進める意向で、

協会は必要に応じ密接な支援実施。

③関連施設視察

・羽田鉄工団地では、時間の関係で工業団地形成と公害対策の歴史について概要を紹介

したが、中国側からは実際の政策措置や問題点・解決策についてより具体的詳細な紹介

を求められた。

・JX川崎製造所の炭化水素吸着分離装置に関心。

・名古屋の塗装企業 2 社視察(塗装ブースのミスト除去、電着装置からの脱臭・除塵)。

アルカリ電解水を使う横浜のベンチャー企業の技術。匯豊石化など数社が強い関心。環

保局毛科長から本技術を斡旋したエンジニアリング企業に、この技術について淄博で専

門のセミナーを開くよう要請があった。

④アンケート実施と集計結果

マッチング交流会に参加した政府・企業にアンケートを実施、中国側 、日本側 か

ら回答を得た。今後引き続きコンタクトを取りたい企業として、中国側が日本企業 12

社に、日本側は中国企業7社に関心を示した。

日中双方からの意見・要望は以下のとおり。

◆日本企業の意見・要望

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・中国の制度上の問題

工場のエネルギー原単位削減や省エネ活動に対する政府(中央・地方)からの助成金

制度について知りたい。

ガラス窯からの燃焼排ガス中の SOX、NOX、煤塵の規制値の今後の厳格化の見通

しを知りたい(いつ頃、どの様な数値になるのか)。

淄博市のPM2.5など汚染物質に対する政策、対策を理解したい。

・ビジネス上の問題

価格柔軟性(中国に合った価格設定にする)。

PM2.5の生成要因・成分を連続的に監視するシステムが重要

民間企業だけでは対応できず、国、自治体、公的機関の推進が必要、知的財産権、

環境ビジネスでの人脈形成、中国側パートナー(メーカーなど)を探している、など。

◆中国側からの意見・要望

日本製品の価格柔軟性が問題。コストのコントロールが難しい。

日本企業側の決断スピードが遅い。

設備の適合性が難しい。

協力方式の差異を感じる。

日本企業は中国の知的財産権保護に懐疑的。

今回視察した企業は規模が小さいが、中国の実情に適合するかどうか不安。

言語の問題がある。

技術移転が難しい。

◆中国側の日本の省エネルギー・環境技術に対するニーズ

VOC 対策、排ガス検測技術、汚染物質の検測設備、化工異臭処理技術、PM2.5 源

の解析設備、濾過式金属回収除塵技術、ハイエンド石灰製品、ごみ焼却発電、汚水処

理、水処理、中水利用、膜製品の供給。

2-2-4 山東省郭樹清省長との「山東―日本ハイレベル経済交流会」での推進活動※

(1)時期 2015年9月 25日

(2)内容

郭樹清省長が、習近平国家主席訪米に随行しての帰途、日本に立ち寄ることとなり、こ

の機会を捉えて山東省政府と日中経済協会が共催で 9 月 25 日、東京にて「山東―日本ハ

イレベル経済交流会」を開催した。山東省からは、省発改委、商務庁、金融工作委員会、

経済情報化委員会のほか、煙台市、青島市、日照市の市長・副市長、ならびに山東省の大

手企業が参加。日本側は宗岡正二日中経済協会会長はじめ、鉄鋼、ガラス、自動車、建機、

商社、銀行、証券、損保等経済界を代表する各社トップが参加した。

テーマは、双方向投資や金融情勢が中心であったが、省政府は事前に淄博市政府に本モ

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デル区の活動の現状と見通しについて報告を求めており、郭樹清省長はじめ省政府幹部が

本モデル区について改めて認識する機会となった。

郭省長は、「環境・省エネ領域での合作の継続的な深化」として、「ここ数年来、双方は

環境・省エネを重点として、大きな成果のある交流と協力を展開してきた。特に去年、日

中経済協会とわが省が共同で推進した淄博の大気汚染防止モデル地区プロジェクトが正式

に調印され、実際的な協力が全面的に推進されている。今後双方が淄博モデル事業を基礎

とし、環境・省エネと新エネルギーでの協力を主な内容とし、重点産業と重点企業がイニ

シアティブを取って、モデル事業の成功経験と技術を山東全省、ないしは全国にまで押し

広めることを提案したい」と述べた。

また、日本側からは旭硝子の石村和彦会長が本モデル区を取り上げ、「特に環境について

は日中合作の意義がある分野であると考えている。中国においては大気汚染の解決が喫緊

の課題であり、日中経協と山東省で、淄博市をモデルとした大気汚染改善プログラムを推

進しているが、メーカーである当社もこの交流に参加している。日本の製造業は、長年環

境問題に取り組んでおり、成長と環境への配慮を両立させる技術を蓄積している。例えば、

当社は硝子製造における脱硝技術や省エネ診断等の大気汚染対策技術を有する。このよう

な、技術力のある日本企業が応用力とスピードのある中国企業と組むことにより、中国の

環境問題解決に大いに貢献できると考える。中国でも環境保全に関する法整備が進んでい

ると聞くが、中国企業がより一層環境整備に取り組むよう、法整備や公共サポート等、省

としてできることを引き続き強化される事が肝要と考える。結果として、環境分野におい

ても日本企業と中国企業の連携や建設的な投資が進み、山東省をモデルとして、中国全体

の環境問題が改善されますことを強く期待する」と述べ、郭樹清省長に山東省政府として

法整備・公共サポートを強化するよう要請した。

2-2-5 省エネルギーセンターと国家節能中心の中国人材育成事業の淄博での実施と、

第 9回フォーラムでの協力案件文書交換に向けた働きかけ

(1)時期 2015年 10月 22日(木)、23日(金)

(2)内容

(一財)省エネルギーセンターが、国家節能中心に協力して実施してきた「中国人材育

成事業専門家派遣事業」は、日中関係の悪化により中断していたが、外交関係の好転に伴

い、日中経済協会から支援を行い2015年2月の四川での実施が実現、2015年度から再開

することとなった。省エネルギーセンターは本モデル区の日本側専門家チームの一員であ

る。日中経済協会としては、資源エネルギー庁、省エネセンター、国家節能中心、淄博市

に対し、本活動の淄博での実施を働きかけ、第二次専門家派遣事業として 10 月に実現し

た。

淄博市は、荘鳴常務副市長(工業・省エネ担当)、劉東軍副市長(環境担当)が開講式・

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研修活動に出席。日中経協は生田章一専務理事を派遣して研修会での総括スピーチを行う

ともに、淄博市モデル区指導小組との間で、協力案件の進捗状況と課題等について確認し、

第9回フォーラムの協力案件形成に向けて意見交換を行った。

①省エネ人材研修セミナー(10月22日)

開講式

講 演 日本の省エネルギーの推進政策(省エネルギーセンター)

企業のエネルギー管理と省エネ診断(省エネルギーセンター)

工業ボイラ(小型貫流ボイラ)と省エネルギー環境保護技術(三浦工業)

日本の省エネ診断技術(グンゼエンジニアリング)

省エネルギーセミナーには、淄博市の企業 200 人が出席し、日本の省エネルギー技

術、それを通じた環境対策の経験について一層の理解を深めた。

②淄博市日中大気汚染対策協力モデル区推進指導工作小組との協議

淄博市環境保護局于照春局長をヘッドに、商務局、経済信息化委員会が出席。日本企

業との商談中の案件の進捗状況を一つ一つ確認し、今後の進め方について意見交換を行

った(電気集塵機、下水処理、脱硝触媒、ガラス炉総合対策、燃料添加剤等)。価格が

ネックになって進まない案件もあり、環境保護局より目先の安さでなく、長期的な視点

で選定するようアドバイスをしている、とのことであった。

さらに于局長からは、新たに次のような技術等についての協力要望が行われた。

・コークス炉の漏れの管理技術

・低温脱硝管理技術

・中小型ボイラー超低排出技術(排煙ダスト10mg/㎥未満、SO2 50mg/㎥未満、窒

素酸化物 100mg/㎥未満)

・吹付け産業での揮発性有機物の管理技術

・水・汚泥管理技術、集約型汚水処理施設、高性能汚水処理充填剤

また、淄博市には海外専門家の招聘制度があり、1年の内少なくとも2カ月淄博市に

滞在することが条件。10月 30 日までに人事局に、専門家名簿を提出する必要がある。

費用は基本的に淄博市が負担。分野は汚水処理とVOC対策。至急人選について検討し

てほしいとの要請があった。(帰国後、日本企業に打診するとともに、環保局より手続

き資料を取り寄せたところ、市内の政府・団体・企業が主体となって招へいする形式に

なっていることが判明。この点について再度市に確認し調整が必要)

③今回の協議により、第9回フォーラムにて以下の協力合意書が協力プロジェクトの一つ

となった。

「乾式電気集塵機における協業基本合意」

日本側:古河産機システムズ株式会社、富士電機(中国)有限公司

中国側:中鋁山東工程技術有限公司

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アルミ焙焼炉排ガス処理プロセスにおいて、一般的な乾式電気集塵機より集塵効率が

著しく高く、排出口煤塵濃度が 10mg/m3N以下でありながら、従来の製品と同等レベ

ルの圧力損失を実現したメタルメッシュ式乾式電気集塵機2基を導入する共同実証試

験を実施するとともに、その後の協業関係形成について合意する。

2-2-6 省政府・市政府とのモデル区推進のための現地協議

(1)時期 2016年3月 1日、2日

(2)内容

山東省淄博市・済南市に事務局が出張し、淄博市政府、山東省政府と現状と課題、今後

の進め方・対応について検討した。また、フォーラムの中国側主催者である国家発展改革

委員会の直属機関で事務局を担当するマクロ経済研究院・対外経済合作辦公室に今回の協

議への参加を要請し実現した。

淄博市・山東省とも大気汚染対策行動計画の実施・進展の中で、日中によるモデル事業

の案件形成・進捗に危機感あり。同時に推進態勢の再確認、関係者間での情報と認識共有

を行うとともに、国家発改委対外経済合作辦公室の参画も得つつ、淄博側のニーズと日本

側のシーズの精度の高いマッチングを行うことを確認。年内に想定されている第 10 回日

中省エネルギー・環境総合フォーラムも念頭に置きながら、今後スピード感を持って対話・

活動を行うことを確認した。

(中国側出席者名簿、山東省環境保護庁提供の省エネルギー・環境ニーズリスト、中国側

発言概要は資料1参照)

(3)市モデル区指導小組、省政府環境保護庁・外事辦公室との協議結果

1.日中経協より、技術・設備導入の際にライフサイクルコストの視点からの総合的評

価を行うべきこと、政府による補助支援策や淄博市の規制・対策状況の情報提供、プロジ

ェクトマッチングの方式改善(重点地域・分野の絞り込み)、既稼働中の日本の設備のある

企業を拠点とした普及・横展開活動等について提案。

2.山東省・淄博市とも、本事業が3年目に入る一方、最終的な成約・導入・運転を経

て効果確認に至った成功事例がまだなく、期待に比べて進捗が遅れていることへの危機感

表明あり。

一方、淄博市では市長をトップに、担当副市長と関係7機関(環境保護局、発展改革委

員会、財政局、経済信息化委員会、商務局、科学技術局、外事辦公室)によるプロジェク

ト推進指導小組が結成されているが、市のトップや主要部局の人事異動、所管変更が相次

いだことから、協会より現在の体制を確認。

組長は周連華市長(徐景顔市長は聊城市書記に転出)、副組長が李燦玉副市長(劉東軍副

市長から交代)と于照春環保局長の二人。実務主管は劉雲龍・環境保護局副局長から呉国

棟副局長に主担当を交替。事務局は商務局・環境保護局の合同体制を改め、環境保護局に

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一本化。ただ従来どおり商務局は参画し、小組の全体的な機能は不変。市の大気汚染行動

計画は 2015年末に山東省環保規劃設計院が落札、モデル区の内容も含め、13次五カ年計

画と整合性を取って中長期計画を作成中との説明があった。

山東省政府(環境保護庁、外事僑務辦公室)からは、本事業への支援表明と提案が示さ

れ、淄博市側のより主体的な行動を慫慂。また、関係者においては、淄博市を大気汚染対

策の実効あるモデルとしつつ、山東省内での普及に力を入れ、ひいては全国への普及につ

なげていく考え方が共有された。

3.淄博市より、日本の技術・設備と国産の同等品の価格差が大きく、導入の支障とな

っていることや、大気汚染対策は待ったなしで、企業にとっては極めて短期間で技術の選

定・導入・運転を実現させなければならない状況にある一方で、日本企業との交渉には時

間と手間がかかり、更に納期等の条件が中国側の求めているものに追いつかないなどの問

題で成約に至らない等、具体的な問題提起があった。一方、山東省環境保護庁トップから

は、導入側の中国企業の意識も大きく変化しており、効果が高く安定している技術・設備

であれば価格差は導入の障害にはならないこと、中国側でも知的財産権保護に更に務めつ

つ、淄博側のニーズにマッチする日本の技術、優位性のある解決手段を掘り起こし、「精准

対接」(精度の高いマッチング)を行っていきたいとの指摘があった。

4.共通認識

(1)精度の高いマッチングの実施

2016年、2017年で省エネ・環保改造をする淄博市の「緑動力」計画に対応可能な日本の

シーズ発掘とマッチング実施。(「緑動力」は石炭燃焼の超低排出(特に工業ボイラー)が

核心。後で資料を提供)。さらに、淄博には1000社近い化学会社があり、500カ所近い保

管拠点があるが、いずれも VOC の漏出による異臭対策が急務となっている。この淄博市

最大の課題に重点的に取り組む。

(2)ライフサイクルコストの視点を導入した総合評価の考え方について共同検討 テー

マとして省・市および国家発改委マクロ経済研究院外経辧と検討(緑色金融とも関連)

(3)1〜2の重点案件をサポート・推進

現在進行中の商談案件を推進すると同時に、すでに交流の基礎がありプロジェクトに

代表性・モデル性のあるものを選定し、リソースを集中して重点的に推進することに市、

省が同意

(4)横展開推進活動のモデル的実施

匯豊石化発電所で稼働が開始した川崎同方のヒートポンプについて、今後専門家が効果

を検証し、ここを拠点に横展開を進める活動をモデル的に実施

(5)省市連動メカニズムの強化

山東省政府側としては省トップの理解のもとに立ち上げた山東省・淄博市の「聯動メカ

ニズム」における淄博市の主体的・積極的な行動を期待し、慫慂。問題があればこのルー

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トで提起し、積極的に省の支援を取り付ける。また、山東省側として国家発改委対外経済

合作辦公室の本事業への参画を歓迎。

2-2-7 個別案件についての連絡調整

(1)岡本理事長書簡に対する周連華市長の回答(4月25日)

入札・選定の段階にあった2件のプロジェクト(石炭火力発電所の排気対策、石炭ボイ

ラーの集塵対策)について、日中経済協会岡本理事長名で淄博市周連華市長あてに検討を

要請する書簡を3月に発信、その回答が4月 25日にあった。

内容は以下のとおり。

・中国側の企業はおしなべて日本側の技術効果が非常によいと認識しており、日本側の技

術設備を選びたいとの意思を持っているが、何より見積もり金額が高いことが、成約を阻

害する主たる原因になっている。中国国内の同種製品に近い優遇価格で提供してもらえれ

ば、双方の商談推進に有利となる。日中経済協会には調整に尽力いただくよう希望。上記

2 つのプロジェクトの進展について、当市関連部門は積極的に後押しする立場から、多く

の支援・助力を行っており、2015年に1ないし2ヵ所の大気汚染対策モデルプロジェクト

実現を目指している。

・われわれは、モデル区建設を通じて、大気汚染を効果的に防止し、当市の大気環境を根

本的に改善することを期待している。次の段階では、双方がより一層相互交流を強化し、

分野別に実力があり、代表性のある企業を選択し、企業間の商談合作を増進し、モデルプ

ロジェクトを形成し、モデル区の建設を推進したい。同時に、協会には、日本側の技術設

備の価格面で当市に対し一定の優遇を提供いただくとともに、当市の関係者の研修・交流・

学習において便宜をいただけるようお願いしたい。

(2)北京事務所の淄博出張(5月 22日)

商談中の案件についての淄博市企業との交流に同行、示範区指導小組に支援を要請する

とともに、他案件についても状況を確認した。

(3)個別協力プロジェクトの状況

3月現在での状況は以下のとおり。

①商談中または普及進捗段階にあるもの 4 件(電気集塵機、燃料添加剤、脱硝コンサ

ルティング、ヒートポンプ)

②中国側に進捗の確認が必要なもの 12件(塗装VOC対策、省エネ診断、小型高効率

ボイラー、汚水処理、計測技術、製油所の VOC 対策、脱硝技術、炉の省エネ技術、重金

属処理技術等)

③モデルプロジェクトとして重点的にサポートが期待されるもの 1 件(石炭火力発電

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所の排気対策)

④日本企業より新たにマッチングを要請されているもの 7件(VOC対策、家庭用ヒー

トポンプ、エアコン省エネ技術、下水処理場省エネ運転管理、大気汚染測定、ごみ混焼、

土壌重金属汚染処理技術等)

2-2-8 淄博市の大気汚染防止資金についての情報

2015 年 1 月の李樹民副市長を団長とする淄博市・山東省合同訪日団受入れの際、大気

汚染対策資金(補助金)について言及があり、その詳細について問い合わせたところ、4月

3日付で文書にて回答があった。内容は以下のとおり。

・日本側から問い合わせのあった大気汚染防治資金について確認したところ、2014年の淄

博市大気汚染防治資金は、市と区の財政投入を合わせて1.5億元であり、2015年の同資金

の財政投入額はさらに拡大する。

・淄博市の大気汚染防治財政資金は基本的に「以奨代補」の形式で支給する。対象となる

範囲は、国と省の大気汚染防治計画の中の工事プロジェクトが主であるが、省外事弁公室、

省環境保護庁と調整した結果、省としては今後、中日大気汚染防治総合示範区建設プロジ

ェクトについても特別に支持することとなった。

・補助金は、通常、工事プロジェクトが建設稼働後、所期の効果があった時点で企業に支

給される。特殊な状況においては、一部工事プロジェクト建設着工後に企業に支給する。

・工事プロジェクトの具体的な補助金額については、プロジェクト申請を通じて、省が各

方面の専門家を組織し、評価審査を行って確定する。通常は補助金額はプロジェクト総投

資額の30%を超えない。

2-3 総括:今後の方向性

以下の活動を重点に、第10回フォーラムでの案件形成をめざす。

1.日本側は、当面、以下2分野で重点的に日本のソリューションの掘り下げを行い、マ

ッチングに繋げる。

(1)工業用ボイラーのクリーン燃焼実現に関係する技術(緑動力プロジェクト)

(2)化学工業(含薬品保管)のプロセスから出る異臭対策(VOC対策)

2.重点案件の練り上げ

技術採用におけるライフサイクルコストでの評価の浸透に向けた働きかけと、グリーン

ファイナンス等資金的支援の可能性の検討も含め、国家発改委、山東省政府、淄博市政府

と連携して1~2件の案件形成にリソースを集中

3.日本の技術導入による効果の宣伝・普及

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3.山東省水ビジネス企業訪日団

3-1 目的と経緯

(1)山東省の水資源状況と問題点

山東省の一人当たり水資源量は322立方メートルで、中国平均の1/6、世界平均の1/25

と言われ、水不足が経済の持続可能な成長のボトルネックである。そのため同省は全省・

各市・各県の用水量・用水効率・汚染抑制目標を一元的に定め、主に節水(節約と再利用)

による達成を目指している。

(2)今回の活動

日中経済協会は山東省と省エネルギー・環境分野での協力覚書を交わしており、同省は

日本の技術導入により水の有効利用(節水型、循環型の水利用)を実現し、更に水環境の

質的改善をめざしたいとの意向がある。今回、山東省政府の環境保護庁・住宅都市農村建

設庁の両庁が合同で、主要都市の上下水道や工業廃水処理、海水淡水化事業会社の経営者・

技術者を組織、日本の水処理企業とのマッチング交流会と関連施設の見学を実施。

(3)所期の効果

省エネルギー・環境の技術・機器の普及には国有企業や公共機関がビジネスの相手とな

ることが多いが、2012年の両国関係悪化以降は日本企業のこうした企業・機関との接触が

難しくなっていた。今回、省都市建設設計院院長、省都済南市、青島市、威海市、臨沂市、

済寧市の水務事業会社の経営者との直接交流の機会が実現し、日本企業が山東省の公共イ

ンフラに参入する契機とする。

3-2 活動内容

(1)期間 2015年5月 12日(火)~15日(金)

(2)訪日メンバー(政府3名、企業14社 16名)

団長 李宝林 山東省環保技術服務中心 主任

副団長 陳 峰 山東省城建設計院 執行院長

副団長 李雪岩 山東省外事弁公室 アジア処副処長

(社会資本整備分団)

秘書長 周紅霞 山東省市政工程協会 主任

劉 軍 済南水務集団有限公司 副総経理

宋 鵬 青島水務集団有限公司海湾中水有限公司 総経理

楊興涛 青島水務集団有限公司百発海水淡化公司 運営部経理

徐承峰 威海水利建设投资有限責任公司 董事長

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姚 波 威海水務投資有限責任公司 総経理

李春和 威海市水務集団有限公司 副総経理

崔宝軍 臨沂首創博瑞水務有限公司 総経理

陳伝運 済寧中山公用水務有限公司 運営総監

(環境保護分団)

秘書長 魏隆基 生態潔環保科技股份有限公司 董事長

申曰斌 生態潔環保科技股份有限公司 研発部経理

王金軍 東営華新環保技術有限公司 総経理

呂才科 山東大禹水処理有限公司 董事長

郭建軍 山東国環産業投資有限公司 副総経理

王暁東 山東利源海達環境工程有限公司 副董事長

欒明先 青島市金旭環境工程有限公司 総経理

(3)マッチング交流会 13日:大阪19社 26名、15日:東京24社 31名

下水処理、工業排水処理、廃棄物処理、土壌修復、海水淡水化等の分野で、我が国企業

の技術の優位性(節水、循環、省エネ、高基準)が評価され、中国側から個別に技術交流

の意向が示された。今後各社はさらなる技術交流を進める意向で、協会は必要に応じ密接

な支援実施。

(4)関連施設視察

大阪 海老江下水処理場・大阪市下水道科学館・大阪市環境局東淀工場

東京 中央鍍金共同組合・東京PCB処理事業所・花見川終末処理場(千葉)

日本の事業運営管理、省エネルギー・環境意識の高さ、技術の優位性・安定性を深く認

識、高い評価。特に最新設備/施設でなくとも適切な維持管理と運転管理、更に不断の改修

と向上が重要である点について印象付けることができた。

(5)結果

来日した中国企業 9 社に対し、日本企業 43 社がマッチングを実施。今回の交流を通じ

て、4社程度が実際のビジネスに向けた交流を開始、他数社がパートナー候補のてごたえ。

中国側企業からは、今回の交流企業以外の日本企業との引き合わせを希望する依頼も出た。

日本側は、中国でのパートナー探し・人脈形成や情報収集に難しさを感じている企業が

多く、日本でのこうした効率的なマッチングの場の設置を評価する意見が多かった。

中国側は、日本製品の技術や細部の管理の優位性に対する高い評価と同時に、コストの

高さとアフターサービスについての不安などの指摘が目立った。

3-3 日本の省エネルギー・環境技術・機器の中国市場における普及の問題点として挙げられ

たもの

(1)日本企業から

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知名度・製品認知度の向上、コスト削減の必要、個々の技術は優秀だが総合的な指導・

競争を支えるトータルの技術・経験の不足、地方政府へのアクセスルートの不足や営業/技

術PR体制の強化、PPP事業に関わる法整備(地方政府の財政状態の不透明さ、投資回収

保証関連法制、料金制度の未整備が新規投資判断の障害要因の一つ)、中国側企業の契約履

行問題、中国側企業の財務状況等信用情報の開示不足、人脈作りの困難、パートナー探し

の適切なアドバイス、ビジネスのスピード感の不足、地域・顧客拡大の機会確保、優良案

件への参画機会への渇望 中国での規格化(建設業界規格 JC ひいては国家規格GBへの

働きかけ)

(2)中国側政府・機関・企業

日中関係の政治的、心理的影響、双方企業間の信頼関係の不足(日本企業側の決断の遅

れの主要因)、中小企業との交流不足、政府の支援不足、価格柔軟性、アフターサービス体

(3)中国側の省エネニーズ

ごみ処理の新技術(熱回収)、「海綿都市」(都市型洪水防止のためのインフラ整備)建設、

水道事業の漏水コントロール、上下水道管網の補修における新技術、下水処理場(既存施

設の排出基準引き上げ対応のための改造を含む)の省エネ技術、循環水の高濃縮倍率での

運営技術

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4.ECOTECH上海 2015出展

4-1 目的と経緯

(1)経緯

日本企業の省エネルギー・環境技術の中国企業への認知向上のために、専門的で一定規

模の展示会は有効。上海では AQUATECH が最大規模の水処理展として 8 年目を迎えた

が、今年から大気・固形廃棄物をメインとする ECOTECH を同時開催することとなり、

主催者(上海荷瑞会展有限公司、CHC EXPO)より優遇条件での出展要請があったため、

この機会を活用することとした。(面積 2 万平方米、出展社見込:450 社、来場者見込:

45,000人)

(2)今回の活動

日中経済協会のブース(36平方米)に7企業がパネル展示。

(メーカー6社、コンベンション会社1社)

(3)目指す効果

①パネル展示企業の中国市場の開拓・理解増進、製品・技術の認知度向上。

②省エネルギー・環境フォーラム・技術一覧の紹介。

4-2 内容

(1)6月 10日~12日 出展

メーカー6社延べ約30名がそれぞれブースにて製品・技術を紹介、日中経協はこれを支

援するとともに、省エネルギー・環境フォーラムや各種活動、日本の関連事情等について

紹介。

展示内容は、消化ガスボイラと高効率天然ガスボイラ(三浦工業)、塗装ブース汚泥処理

システム・エコカバー(グンゼエンジニアリング)、水質の簡易検査試薬(オプテックス)、

重金属汚染対策資材(アムロン)、水を利用した空気清浄(集塵・除菌・消臭)(オルガノ)、

汚泥搬送コンベヤ・ベルトプレス脱水機の濾布送り駆動用減速機(ツバキモトチエイン)、

日本の省エネ・水展示会の紹介(ICSコンベンション)。

(2)結果

①応対数

3日間で延べ約500名(6社+日中経協合計、重複を含む)、うち今後連絡をとりビジネ

スにつながることが期待されるもの25件程度。

②メーカー6社が成果として以下を指摘

・多数の企業と効率的に面談を行うことができた。

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・製品の需要を実感。

・中国市場向けの製品開発に役立った。

・ビジネスにつながりそうなものが数件あり。

・既存取引先だが新規具体案件情報を入手できた。

・従来取引のなかった企業と情報交換ができた。

・消化ガス業者との情報交換ができた。

③メーカー6社すべてが次回も同じような機会があれば参加したいと表明

4-3 日本の省エネルギー・環境技術・機器の中国市場における普及の問題点として挙げられ

たもの

・中国市場の信用度の低さ、資金回収リスクが大きいこと。

・日本の製品が中国ローカルメーカーと比べ高いと、顧客は受け止めており、品質の良

さをどう理解させるか。

・価格競争に転じやすいので高い利益を確保するためには競争メーカーより先にユーザ

ーに接触することが重要。潜在顧客情報の取得。

・製品知名度が低いので、宣伝・露出機会を増やす必要あり。既存製品とは異なる新

製品の販路構築。

・中国のニーズにあったシステム仕様設定、販売チャネル構築、各種法規制対応(ど

ういう環境法規や基準があるのか把握の必要性を感じている)。

・重金属汚染では、案件ごとに対策や評価の方法についてそれぞれ案が出され、ユ

ーザーや関連部門がそれぞれ認可している状態で、日本のような統一ルールがな

いこと。

・中国の業界で採用されるための日中共同開発の必要性。

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5.中国節能低炭素博覧会

5-1 目的と経緯

(1)経緯

当協会は、これまで日本の省エネルギー・環境技術の中国における活用・普及を目指し、

中国政府・企業と交流活動を行ってきているが、今回、中国・国家節能中心の要請を受け、

同中心が主催する本博覧会に協力・出展することとなった。今次博覧会は、「グリーン生産、

グリーン生活」をテーマに開催され、展示面積2万平米に欧米、アジアほか世界36の国と

地域からの出展(300 社以上)と参加者を迎えて開催された。最新省エネ・低炭素技術設

備・製品・サービス分野における各国のトップ企業が、技術部品からシステムソリューシ

ョンの成功事例までが展示された。今回当協会では、協力機関として優遇条件でブースを

利用することが出来た。

併せて、11月末に開催される「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」で来日予定の

国家発展改革委員会張勇副主任他がメインフォーラムへ出席されたこともあり、同フォー

ラムへも参加した。

(2)今回の活動

日中経済協会のブース(54平方米)に協会及びメーカー5社がパネルを展示。

メインフォーラムへの参加。

(3)目指す効果

①パネル展示企業の中国市場の開拓・理解増進、製品・技術の認知度向上。

②省エネルギー・環境フォーラム・技術一覧の紹介。

③メインフォーラム参加を通じた関連情報の収集。

5-2 内容

(1)11月 18日メインフォーラム

(講演概要は資料1参照)

全国人民代表大会常務委員会顧秀蓮副委員長挨拶、国家発展改革委員会張勇副主任によ

る基調講演、工業信息化部節能・総合利用司高雲虎司長、国家機関事務管理局公共機構節

能管理司張世良司長、中国節能環保集団公司王小康董事長による挨拶、財政部財政科学研

究所蘇明副所長「第13次 5ヵ年計画における省エネルギー排出削減財税政策」、国家発展

改革委員会資源節約環境保護司呂文斌副司長「生態文明建設関連政策読解と関連業務部署」、

国家発展改革委員会能源研究所戴彦徳副所長「第 13 次 5 ヵ年計画生態文明建設と省エネ

ルギー排出削減メカニズムイノベーション」ほか。

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(2)11月 18~19日 出展

メーカー5社延べ約 300名がそれぞれ日中経済協会ブースにて製品・技術を紹介。当協

会はこれを支援するとともに、省エネルギー・環境フォーラムや各種活動、日本の関連事

情等について紹介。

展示内容は、建築物用高効率省エネ蓄熱材CALGRIP(JSR)、ESCO-EMC合同エネルギー

管理-、塗料沈殿物処理システム(グンゼエンジニアリング)、多ボイラーコントロールシ

ステム、蒸気ボイラー(三浦工業)、エネルギー総合解決システム(三菱重工業)、都市熱

供給システム(同方川崎)、組織概要と省エネルギー・環境保護分野での日中協力体制、山

東・淄博日中大気汚染対策モデル区(日中経済協会)

5-3 成果

(1)応対数

3日間で延べ約300名(5社+日中経協合計、重複を含む)、うち今後のビジネスを含め

連絡をとることが出来るところは50件程度。

(2)メーカー5社が成果として以下を指摘

・不特定多数を対象として、自社をPRするとともに、自社製品の価値について広く紹

介することが出来た。

・自社省エネ事業をPRすると共に、中国の客先が日本の技術を認めてくれたことを確認

することが出来た。

・代理店や余熱資源のある企業情報について収集することが出来た。

(3)メーカー5社すべてが内容にもよるが、機会があれば是非参加したいと表明

(4)中国側要人の館内巡回視察において当協会ブースを見学

・18日のメインフォーラムの前に中国側要人の展示会場内の視察が行われたが、その際、

国家節能中心の計らいにより、中国気候変動化事務・解振華特別代表他に協会ブースに立

ち寄っていただいた。月末開催予定であった日中省エネルギー・環境総合フォーラムにつ

いて言及するとともに、当協会・出展企業について簡単に紹介することが出来た(写真末

尾)。

5-4 日本の省エネルギー・環境技術・機器の中国市場における普及の問題点として挙げられ

たもの

(1)中国では省エネルギー・環境方面において多くの規制が設けられている中、自社で

は窒素酸化物(NOX)規制に関連して、低NOX技術を開発し PM2.5削減に向け努力している

ところである。他方、部品等の輸入に際しては、関税もあり、コストが高くなるが、反面、

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中国のローカルメーカーの製品は安価であり、競合した場合には利益を出しにくい状況に

ある。但し、中国メーカーによっては、規制をクリアできていない製品を安く販売してい

るという違法なケースもある。

(2)価格。中国住宅事情についての情報不足(価格以外でどのようなところを追求して

いくべきか、よく理解できていない)。また、どのようにパートナーを探していくべきか有

効な手立ても見つかっていない。

(3)日本の設備や商品は、中国製と比べ価格が高く、多くの中国企業では日本製を受入

れられないという状況がある。こうした状況から日本製を普及させることは容易でなく、

品質の良い商品や省エネ技術を普及していこうとすること自体が大きな課題と感じている。

(4)中国市場においては、メーカーの決定に際し、往々にして人脈や価格が優先され、

性能や省エネレベルが二の次になってしまう傾向があり、営業展開が難しい。

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6. ENEX(第 40回地球環境とエネルギーの調和展)、インターアクア

(第7回国際水ソリューション展)

6-1 経緯と目的

(1)目的

日本企業の潜在的対中省エネルギー・環境ニーズ発掘のため、従来より東京でのインタ

ーアクア(国際水ソリューション展)に出展してきたが、今年は同時開催の ENEX(地球環

境とエネルギーの調和展)にも出展、省エネ・水処理分野でこれまで接触のなかった企業

や企業の部門に対しても中国の状況を紹介、マッチングにつなげる。

(2)目指す効果

中国の水ビジネス市場をはじめ省エネルギー・環境ビジネスに関する情報をとりまとめ

配布資料として作成することで、中国ビジネスに関心はあるが、どのようにアクセスして

よいか分からないなどの支障を抱えた企業に様々な情報を直に提供する。

①日中経済協会、「日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)」の役割PR

②「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」のPR・認知度向上

③ 日中双方のビジネス事情を直接関心のある企業に紹介、周知

6-2 活動内容

(1)日程 2016年1月 27日(水)~29日(金)

(2)内容

中国の省エネ・水処理市場の状況を取りまとめた「中国の省エネ・水資源と市場 2016年

版」を作成・配布したほか、「日本企業の省エネルギー・環境関連設備・技術一覧」を配布。

さらに「日中経済協会」、「日中省エネルギー環境総合フォーラム」、「日中省エネルギー・

環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)」、「し博モデル区」、「黄石協議会」「スマートシティ」

の取組をパネル展示し、来訪者に対して、対中省エネルギー・環境ビジネスにおける交流

経験に基づいたアドバイスや、日中省エネルギー・環境総合フォーラムの役割と活用方法

の紹介、JC-BASE参加勧誘などを積極的に行った。

6-3 結果

中国の省エネ・水処理市場と、協会のサポート活動を紹介する資料 300部を用意、230部

を配布。直接対応した人数は合計97名(一部重複)、うち半数以上が今後の情報・交流を

希望。

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◆直接対応数97名(重複を除き92社、93名)

内訳 分野別

省エネルギ

ー・環境全般

省エネ 省エネ・水処

水処理 大気・水処理 大気

25 29 4 31 2 1

内訳 業態別

メーカー コンサル・

商社

支援機関 自治体 メディア 研究者 中国企業 その他

49 14 7 6 2 5 8 1

課題としては、JC-BASEとも日中経協とも日頃接触のない企業にできるかぎりサポート

をするため、何の目的を持ったブースなのか明確にわかるように看板や資料のデザインを

工夫する等。

なお、中国国際貿易促進委員会日本代表処より、大連事務所が関心を示し、次回は出展

したいとの初歩的意向があった。

6-4 日本の省エネルギー・環境技術・機器の中国市場における普及の問題点として挙げられ

たもの

省エネ・水処理・大気汚染等分野に偏らず、あまりうまくいっていない、特に良いパー

トナーが見つからない、という問題をかかえた企業が多かった。

・中国展開をしたいが、同業者も多く、難しい。水処理全体でなく、そのうち一部しかで

きないので、全体に組み込んでもらうような形が取れないか。(電機メーカー)

・どうすれば関心のある中国側ユーザーと接触できるか、やみくもにやっても非効率。(環

境触媒メーカー)

・大気汚染、VOC対策を中国で展開中だが、中国企業との契約がまとまらない。(環境保全

装置メーカー)

・金メッキリサイクル・スラッジ処理の事業展開を試みたが、パートナー企業が見つから

ず、契約が成立しない(商社)

一方、現在製品開発中で中国市場に合わせるため情報がほしいという、これから展

開を考えている企業も目立った。製品的には、省エネシステム・災害用浄水器、電子産業

の水処理、エコキュート・ヒートポンプ、省エネ効果の高いペアガラス、エコ照明、包装

関連省エネ、EMS製品、エネルギー最適化システム、水処理剤・バグフィルター、紫外線処

理装置、排水用接触材、海水淡水化、水質計測器等。

水処理分野では、中国が進めている「海綿都市」に対する関心も高かった。日系企業(大

連)で、吹付塗装の環境規制が経営に影響している、という指摘もあった。

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7.省エネ・環境技術の中国における普及に関する議論

7-1 日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会の活用

2006年5月、東京で「第1回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が開催され、日

中間のエネルギー・環境分野における協力の重要性を双方で再確認するとともに、個別企

業のビジネス展開の拡大が不可欠であるとの認識が形成された。その認識の下、同年 12月

21日、日中経済協会会員企業はじめ広く経済界の賛同・支援を得て、対中省エネルギ

ー・環境ビジネスの促進のため「日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会」を設立。

事務局は一般財団法人日中経済協会内に置き、わが国の省エネルギー・環境分野における

企業、団体等約350社(2016年1月現在)が会員となっている。

本協議会は、日本の産業界の意見交換、ニーズの集約、中国側からの情報収集、情報共

有化を主たる活動として、「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」に係る情報交換・意

見集約・参加協力、更に、省エネルギー・環境ビジネスに係る障害問題の克服及び重点プ

ロジェクト等の推進を図るための事業を展開している。

7-2 幹事会実務担当者・連絡会メンバー会議の開催

第 9回フォーラム実施後に、本会合を開催し、省エネ・環境技術の中国における普及に

関する議論を行った。これに先立ち、「省エネルギー・環境分野の対中ビジネスに関するア

ンケート」を実施した。会議では、これまでのフォーラムの回顧とアンケート集計・分析

結果を紹介し、今後のフォーラムの方向性について要望・意見を聞いた。

(1)日時 2016年2月 26日(金)

(2)出席者 幹事12社・団体13名、連絡会6団体7名、オブザーバー5団体 5名、経済

産業省4名、事務局

(3)主な意見・提案

総じて、中国との省エネルギー・環境ビジネスには可能性があり、フォーラム活用への

期待度は高く、続けるべきだとの意向が確認できた。課題としては、日本側の強み、優位

性のある技術の発掘の不足、中小企業をどうサポートするか、適切な中国側パートナーを

どう見つけるか、などであった。また、交流時間の短さについても指摘があった。取り上

げてほしいテーマとしては、排出権取引があげられた。

①企業

・金融機関 金融協力面で環境対策推進を検討/今年取り上げてほしいテーマは排出

権取引。来年から全国展開、進出企業への影響を懸念。

・商社 フォーラムをマッチングの機会として活用/中国では省エネルギー・環境の概

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念希薄。宣伝が非常に重要。/中国の環境への取り組みが真剣になりこれからがチャン

ス。フォーラムを活用したい。規制の民間への徹底難しいが言い続けることが重要。

・メーカー 技術はあり中国からの引き合いも多いが、実際にニーズに合うのか理解し

きれない。いいパートナーを見つけるかに尽きる。/技術はあるが、マッチングは難し

い。即実るわけではないが地道に続けていくことが重要。

②団体

・ESCO 中国での事業展開に至っていない。保証期間が長いことがリスク。

・照明 日本から中国へのビジネスができていない。照明だけではいろいろなニーズを

カバーしきれないので、協議会の枠組みの活動に乗りたい。中小メーカーへのサポート

を期待。

・省エネ 日本側のシーズの発掘に力を入れたい。

・情報通信 IOTソリューションによる省エネでフォーラムを活用したい。

・電機 中国の技術レベル上がり、競争相手になっている。中堅以下企業のリスクヘッ

ジに政府の支援期待。

・自動車 フォーラムはネットワーキングの良い機会。情報の早い段階の共有を期待。

・石炭 日本企業のシーズを一層発掘し、石炭多消費型産業について成功事例をつくり

あげたい。

・金融 フォーラム準備段階で問題点を洗い出すことがあれば情報共有期待。年間を通

じた活動の宣伝もするべき。

・エネルギー 中国における日本企業活躍には政治的雰囲気と人的ネットワークの形

成による情報取得が重要。交流時間を拡大すべき。

7-3 「省エネルギー・環境分野の対中ビジネスに関するアンケート」実施

7-3-1 概要

(1)実施期間:2016年 1月 27日発信、2月 17日締切

(2)対象:日中経済協会会員、JC-BASE会員、第 9回日中省エネルギー・環境総合フォ

ーラム参加者など1097アドレス(567社)へ回答依頼

(3)回答:75社・83名

(4)回答企業の業種内訳

メーカー24、エンジニアリング18、団体14、その他19(サービス、商社、エネルギー、

コンサル、金融)

7-3-2 結果サマリー

(結果全文は資料1参照)

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(1)第9回フォーラムに対する評価

対中ビジネスに役立った面としては主に情報収集、人脈形成。商談につながったものも

6 件あった。フォーラムのプログラムについては、基調講演、日中企業による協力プロジ

ェクト紹介に対し有意義との回答が多かった。

分科会については、ビジネスマッチングや、質疑応答、フリーディスカッションの時間

を増やしてほしいという要望が多数を占めた。

今後取り扱ってほしい分科会テーマは次のとおり。

環境関連 ・大気汚染 7 人(VOC 対策 2 人、アンモニア分解、自動車の大気汚

染、燃費低減、CO2排出低減 2人(ハード・ソフト面))

・水処理 4人(地下水修復など)

・土壌汚染処理 4人

・リサイクル 2人(循環経済)

・ごみ処理

省エネ関連 ・省エネ建材、住宅設備

石炭関連 ・石炭火力技術 3人(石炭利用技術、天然ガス普及促進政策など)

・石炭化学バイオ(石炭利用技術とバイオ技術の融合で、CO2 を原料と

する産業の育成等)

自動車 ・電気自動車

・IoT,ITC,自動運転関連の自動車安全技術

・自動車産業向け部品サプライチェーン

その他 ・「中国製造2025」や「政府間の日中環境協力提携下の民間協力のあり

かた」

(2)省エネ及び環境分野の対中国ビジネスについて

市場としては、有望・可能性はあるとの回答が多数であった。中国市場に技術・サービ

スを展開するにあたり、中国政府が導入すべき政策については、法律順守の徹底が、省エ

ネルギー・環境基準強化を上回った。

中国市場展開が有望または可能性がある省エネルギー・環境技術・サービスは資料1 の

とおり。

(3)中国における省エネルギー・環境ビジネス展開に関する課題について

①法令順守、法整備、基準

・知的財産権 模倣・偽物の横行。基礎研究開発意欲の低さ

・基準や法律は整備されているが、強制力・監視力が低い、守られない。

・法規制・認証・基準のわかりにくさ、全国で統一されていない。

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・公益訴訟制度が機能していない、国・省・市で解釈・運用が異なる。

・環境保護企業が玉石混合で混在。対策導入後の運用効果を企業評価・年度検査に導

入すべき

・環境対応技術を有する企業をトップランナーとして認定し、その管理レベルを全体

の指標とするような仕組みが望ましい。

②補助金、支援制度

・事後申請が困難。

・設備補助のみならず、省エネ達成度合いに応じて補助金額が上下するような柔軟性

のある補助金制度も拡充してほしい。

・規定通り、期限通りの補助金支払い。

・補助金制度の内訳の不明確、財政予算の不明確など。

③入札制度、許認可手続き

・入札公示期間が短いケースが多い。入札保証金が高額化している。入札制度の公開

度、透明度の向上が必要。

・認証取得費用が高額、許認可手続きが複雑

・入札は国内優先の場合がある。

・価格重視ではなく、実績、品質、環境影響、ランニングコストも含んでトータルコ

スト評価を重視すべき。

・必要な資格が地方や案件ごとによって異なり、対応に苦慮。

・SPC 設立、資金投入・税務等に係るルールの明確化。

④情報入手

・基本的に人間関係がないと無理。誰に製品をアピールしたらいいのか、どうやって

情報を入手すればいいのか分からない。

・情報収集のみを目的として日本企業の技術・設備情報や委託試験を求めるケースが

まだ多い

・正確な情報はほとんど入手できない、情報開示に限界

・担当者によって認識が食い違う、客先担当者の見解が頻繁に変わる。

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Ⅴ 省エネルギー等・環境技術及び機器の 中国における普及のために必要な政策上の課題

5-1 本年度の取組の成果と問題点

5-1-1 成果と意義

日中省エネルギー・環境総合フォーラムは 2006 年の第 1 回から数えて 10 年目、途中

2013年に日中関係の不調から開催に至らず1年ずれたが、2015年は順調に第9回を開催

することができた。この間、本フォーラムをめざし調印また披露された協力案件は285件

に達し、第8回フォーラムまでの259件についてのフォローアップでは、約100件、4割

が初期の目標を達成している。

代表的な成功事例としては、川崎重工業と安徽海螺セメントのセメント熱回収設備合弁

生産、日立製作所の雲南省におけるボイラー補機用高圧モーターのインバータ―システム

普及や、今回のフォーラム全体会議で成果の一例として紹介した汚泥乾燥をはじめとする

5件のプロジェクトなどがあげられる(20ページ参照)。

本フォーラムは、日中政府間で定例開催が合意された省エネルギー・環境分野でのハイ

レベルの交流の場として、両国政府・企業の間で高い認知度を得ており、これを目指して、

また活用してプロジェクトを形成しようという、企業のビジネス戦略の一部ともなってい

る。

また、さらに広範な企業の省エネルギー・環境ビジネスに寄与するため、本事業では、

年間を通じて、大気汚染改善のためのモデル区協力、省エネや環境関連展示博覧会への出

展などを通じたマッチング支援を実施し、多数の企業が参加した。

次回フォーラムに向けたアンケート(46ページ参照)からも明らかなように、中国の省

エネルギー・環境市場を有望または可能性ありと見る企業は 7割を超えており、中国市場

をめざしてこれから進出を検討中の日本企業も少なくなく、より深くシーズを掘り起し、

新たなプロジェクト形成につなげることが求められている。

5-1-2 主な問題点

一方で、日本企業の省エネ等・環境技術・設備の対中ビジネスは、まだ関係者の期待の

ような順調な展開は見せていない。フォーラムをコアとしつつ、政策対話、パートナーと

のマッチングを経て案件形成、さらに関係者のサポートと導入上の課題解決、調達環境支

援などを行い、導入を実現し、さらにその効果を実証しつつ、中国国内での横展開・普及に

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弾みをつけていく、というシナリオが日中双方関係者がイメージし、共有する期待すべき

方向である。06年の第1回フォーラム以来、両国関係の曲折の影響を受けながら、基本的

な対話スキームとして維持されてきたことは多とすべきところだが、インフラや大掛かり

な新規投資、改造を伴い、またその性質上国有セクターが調達者になることも多い省エネ・

環境分野であるからこそ、両国関係の雰囲気の影響がビジネスにも影響する形となってい

ることは否定できない。

中央政府、地方政府による大気環境規制強化、企業への対策措置は実施に移されている

ところであるが、これまでの双方の交流、案件マッチングの結果が量的、質的な成果とし

て、十分な成果を挙げていない面もあり、迅速な導入・運転実現を見るにはまだ多くの解決

すべき課題が存在している。対策の必要性、緊急性は明確であり、企業側も政府側もそれ

を認めていても、それがビジネスベースでの合意、成約に繋がっていないケースが多い。

その原因、なぜ日本の省エネルギー・環境技術が中国に採用されないのかについて、Ⅲ

で報告したフォーラムをはじめとする各種活動を通じて得られた情報・要望等を総合する

と、日中双方の意見はほぼ以下の点に集約できる。

日本の省エネルギー・環境技術の中国市場での展開の問題点の集約

制度面 ビジネス面

日本企業 法令・基準の未整備、またはあって

も順守されない。地域によって法

令等の解釈が異なる。入札や補助

金等の制度がわかりにくい、国内

企業が優先される。中国の規格が

国際規格と異なる。相手が国有企

業の場合、調達資格を要求される。

許認可等の費用が高額。地方政府

へのアクセスルートが不足。料金

制度の未整備で収益性が見込めな

い。政府の資金的支援

(カタログで基準達成しているにし

ても)安いだけの設備との価格競争を

強いられる。購買部門と施設運営部門

が異なり、初期導入コストだけで判断

されて採用に至らない。適切なパート

ナー発掘の難しさ。知財権(模倣問

題)。契約履行、資金回収リスクなど信

用性の問題。技術の理解度が低い。し

っかりしたモニタリング技術が不足

中国企業 政府の資金的支援 日本製品は価格が高すぎる。過剰品

質。商談に時間がかかりすぎる(意思

決定、納期等)。中国のニーズに適合す

る技術・設備仕様でない。知財権関連

で厳しい条項を強いられる。アフター

サービス体制に不安

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このうち、特に、日本の技術・設備の価格が高いために採用されない、という問題は、

これまでは確かに、環境意識の高い日本という特殊な市場で開発・運用され、過剰ともい

える仕様により、中国に適合する現地化を怠った結果というビジネス上の側面もあった。

しかし最近では、日本企業も努力を重ね、日本の技術+中国での設備製造という双方の優

位性を組み合わせ、中国の現地事情を考慮した仕様、価格で提示することが一般的になっ

てきている。それでも、依然として価格競争で敗退するというケースが少なくない最大の

理由は、後述するように、中国ではライフサイクルコストでの評価がされないことにあり、

これは単にビジネス上の問題だけでなく、国有企業の購買システムや、入札制度における

評価等、制度面の問題が深く関係している。大気汚染改善をはじめ、省エネルギー・環境

対策は第13次五カ年計画、すなわち2020年の基本的達成をめざして政策・予算が組まれ

ているため、早急にこの問題を解決しなければ、日本の省エネルギー・環境技術が一定の

影響力を以て中国市場に展開することは難しい。

同時に日中双方共通の意見として、日中関係の影響を懸念する声は少なくなく、特に中

国企業から日中関係が政治的・心理的に採用不採用に影響するとの指摘には留意が必要で

ある。

5-2 省エネルギー・環境技術の中国における普及のために必要な政策上の課題

基本的方向性

具体的提案

中国の省エネルギー・環境規制強化による市場創出の機会を逃がさない

きめ細かい政策支援とターゲットを絞ったマッチング支援

1.省エネルギー・環境技術採用におけるライフサイクルコストでの評価確

立に向けた中国政府への働きかけ

2.資金的な支援についての検討

3.「枠組み」を活用したプロジェクト形成に対する支援

4.制度情報共有のための政策支援

5.ターゲットを絞ったマッチング実現のための支援

6.基準・規格制定への関与

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5-2-1 基本的方向性:中国の省エネルギー・環境規制強化による市場創出の機会を

逃がさない

第13次五カ年計画は五大理念の一つとして「緑色発展」を掲げ、「小康社会を全面的に

建設する上での勝敗を決する段階」、「市場原理の重視」(政府の干渉を減らす)、「イノベー

ションによる発展」を核心としつつ、「2017 年に全国炭素排出権取引システムを構築」、

「大気汚染、水質汚染、土壌汚染への対策については、省レベル以下の環境保全機構の監

測監察・法執行の垂直管理制度を実施」(初の言及)、「環境行政の不作為への監督を省政府

から下位行政単位にトップダウンで行う」(環境法執行に関する地方政府の責任を改めて

明確に)、「環境行政のガバナンスを強化し、環境の質的向上をコアに、最も厳しい環境保

護制度を実行し、大気、水、土壌汚染防止・対策行動計画を突っ込んで実施し、省レベル

以下の環境保護機関モニタリング・監査・法律執行垂直管理制度を実行」などが強調され

た。

これに遡る昨2015年は、改正環境保護法の施行初年であり、また改正大気汚染防止法、

水汚染防止行動計画のスタートの年でもある。深刻な大気汚染、水環境汚染に直面し、中

国政府の省エネルギー・環境政策がいよいよ本腰を入れて実施されるに至り、国内の企業・

社会の認識や行動にも漸く変化が見え始めた。

日中省エネルギー・環境総合フォーラムは 06 年から日本の有する省エネルギー・環境

技術や設備等のビジネスベースの対中移転促進に取り組んできたが、途中両国関係の曲折

の影響等もあり、対話と交流を維持しつつも、本格的、全面的なビジネスのブレイクスル

ーを見るには至らず、その点では対中省エネルギー・環境ビジネスはむしろこれからが本

番と言える。中国政府の政策目標では、特に大気汚染対策は 2020 年までには終了するこ

とが求められており、第13次5カ年計画スタートの今年2016年、2017年には新規導入

や改造など、対策が集中することが予想される。このことは大きな市場が創出されるまた

とない機会であり、政策支援に際しては、この好機を逃さないことが重要である。

5-2-2 具体的提案:きめ細かい政策支援とターゲットを絞ったマッチング支援

日本の技術・設備に対する適切な評価の獲得、資金面での支援の模索、「枠組み」利用に

よるモデルプロジェクト形成と普及強化など、よりきめ細かい政策支援と、ターゲットを

絞ったマッチングの実現が政策課題である。

(1)省エネルギー・環境技術採用におけるライフサイクルコストでの評価確立に向けた

中国政府への働きかけ

〈フォーラムでの問題提起〉

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第9回フォーラム全体会議において、宗岡日中経済協会会長は次のように述べた。

『中国の第13次5ヵ年計画では、法規制と監督・実施の厳格化や、政府など監督管理部

門の責任の明確化など、政策と執行面での強化が図られる。問題の緊急性と重要性の認識

に裏付けられた、真剣な対応が求められている今日、問題の効果的・永続的解決に資する

高い技術の選択と導入が必要となる。日本の産業界は、こうした面で中国のニーズに貢献

できるさまざまな技術を保有しており、多くの場合中国のパートナーと合作して現地生産

を行おうとしている。しかし、日本企業、日系企業の提案する技術や設備は、初期コスト

が割高であるとの理由からなかなか採用されない。すなわち、「性能が高く、長持ちするが、

価格が高い」という日本製品と、「無駄なものをそぎ落とし、必要最低限の性能、長持ちす

るか否か不明、他方、価格は安い」という現地製品との選択の問題である。

この問題解決の一つの方向は、初期導入コストのみを比較するのではなく、導入効果の

大きさ、技術・設備の信頼性、性能の長期安定性、更に管理・メンテナンスのしやすさな

ど、運用期間を通じた当該設備のパフォーマンスを考慮したライフサイクルコストを適正

に評価することにある。一例を挙げると、大型排ガス処理プラントの調達部門と運営部門

とがばらばらではなく連携して、総合的なライフサイクルコストを評価すること。こうし

た方向が定着することにより、日系企業だけでなく、中国の環境産業の技術力の向上にも

弾みがつく。』

これは、これまでの日本企業からの問題提起を集約したものである。

〈「過剰品質」以前の問題〉

日本の技術・設備の価格が現地の相場と大きく乖離していることの理由として、最低限

求められている品質、スペックを遙かに上回る「過剰品質」となっているという指摘は以

前からあり、中国の現地事情に適合した製品・システムの開発、コストダウン検討など日

本企業が努力すべき点は少なからずある。その点は認めたうえで、過剰品質云々を問う以

前の、基本的な問題が存在するのも事実である。すなわち、中国市場では、カタログ数値

上では問題がなくても、実際上は「粗悪品質,性能未達設計」の製品がまだ現実的に横行

しており、こうした技術・製品と、日本の技術・製品が導入時のコストのみで比較される

こと自体が日本の技術の普及の大きな障害となっている。

例えば、ここ2年ほど各発電企業は脱硫脱硝設備導入に力を入れているが、その割に大

気汚染が改善されない元凶として、2015年、国内のエンジニアリング企業関係者より、初

期コスト低減のため勝手な設計変更を行った設備メーカー(導入技術の要諦を十分消化し

ていない)とそれを強いたユーザー側、更には結果として問題(目詰まり)がおきたGGH

を、省エネにならないという理由も付け加えて撤去する提案をした「専門家」の存在を批

判、反響を呼んだ。1日本企業が営業を通じて中国国内のユーザーにヒアリングした結果も

1 中国スモッグの元凶分析と問題提起(火力発電所GGH撤去/不採用による低温高湿度

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これを裏付けている。

〈初期投資のみの比較で採用する背景〉

原因は、一つには、導入設備の検討、決定権を有する初期投資決定部門と、導入後実際

に設備を運転・運用する部門の間に有機的な連携がなく、運用段階で課題が発覚しても、

それが導入部門にフィードバックされないため、常に同じような失敗が繰り返される結果

となる事がある。初期投資決定部門は運転・運用については知見、経験はなく、また実際

の結果についても何ら責任を負わされることはない。ただ初期投資を抑えサプライヤー、

設備を決定することに特化している。カタログ、設計値上の数値が市場の錬磨に耐えて、

運転開始後もその通りに発揮されるなら問題はないが、現実はこの部分が極めて怪しい場

合がある。何故そうなったかというと、一説には急速な規制強化でこれまで重い腰を上げ

なかった企業側が一斉に対策に走り、需要が急増、それを逃すまいと技術的に問題のある

サプライヤーが林立し、売り手市場の様相を呈したため、との見方もある。

ユーザー側にも、導入部門が投資費を抑えるため、単品買いで安く買うことを優先し、

長期的な安定稼働やメンテナンスのしやすさを考慮しない、考慮するにも運転部門からの

情報フィードバックが得られていないため、検討要素にはなりえない。実際の運転、運用

において、ごく初期段階では問題なく、検収をパスし、補助金も獲得したとしても、数年

の間に性能の劣化、運転の不安定など基準未達の問題が露呈しても、企業の内部で処理さ

れ、外には知らされることのないまま、運転を続けたり、また稼動させないなどの問題が

発生する。

この問題は単に導入企業における導入部門、運転部門間の情報乖離、決定メカニズムの

問題に留まらず、後から露呈した問題をきちんと処置、対策をとることがないまま、結果

的に放置されることがこれまで許容されてきたという意味で大きな課題である。企業側の

不作為、行政側の監視の不十分もあろうが、既に改造・導入は完了してしまっているので、

再度問題化することは、企業の経済的問題のみならず、これを予見できずに結果的に許容

してしまった行政側の責任も問われることから、現実的にはうやむやにされてしまうこと

が多かったのではないだろうか。

〈日本企業の主張〉

日本企業からは、初期投資だけでなく、中長期的な安定稼働の保証までを含んだライフ

サイクルコストで見れば、日本の技術・設備は決して中国国内製品価格と比較して高くな

い、との主張がなされている。

〈中国側の反応〉

排気原因説)

(原文)

http://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MjM5ODEzNzg3NQ==&mid=208630586&idx=1&sn

=5cf8d52acfcf2bf8895fd12211b197b8&scene=2&srcid=12065sNGt5cigZ5ghXasQvN5#

wechat_redirect

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淄博日中大気汚染対策モデル区推進のための現地出張でも、ライフサイクルコストでの

評価について提案をしたところ、市レベルでは、企業に強制はできないとか、企業自体そ

れほど先のことまで考える余裕がない、などの反応があった一方で、山東省環境保護庁ト

ップよりは、導入側の中国企業の意識も大きく変化しており、効果が高く安定している技

術・設備であれば、価格差は導入の障害とはならない、すでに価格は最大の問題ではない、

という発言があった。

さらに、環境保護部黄潤秋副部長は、内外の閣僚・企業トップの恒例の経済交流の場と

なっている「中国発展高層論壇」(主催:中国国務院発展研究中心、2016 年は 3 月 19 日

~21 日、北京で開催)での環境の分科会で、「成長と環境の両立のブレークスルーは先進

技術」と述べたが、「先進技術の導入に際し初期投資コストだけの比較では採用に至らない、

運転・補修等含めたライフサイクルコストでの評価が大事ではないか」との質問に対し、

「まったくその通りで、そういう方向を目指す」との回答であった(質問者:岡本巌日中

経済協会理事長)。

前述の火力発電所の例では、発電企業がもう一度予算取りをして新たな改善投資をせざ

るを得ない、などのケースも出ており、認識は徐々にではあるが変化が期待できる。

〈政策的課題〉

ライフサイクルコストによる評価は、中国においても持続可能な成長という観点からい

ずれは普及していくと考えられるが、当面の省エネ・環境市場を目標とすれば、企業の努

力だけに頼っていては難しく、ライフサイクルコストで評価したほうが中国企業にとって

有利となる政策の形成など制度面での後押しが必要である。たとえば、

①入札制度では、価格点と技術点が評価の対象になるが、五カ年計画対象プロジェクト等

においては、このうち技術点の比率を高める。

②国有企業の調達案件については、購買部門と運用部門が協調して調達するよう制度を改

善する。

③補助金(「以奨代補」=対策の効果が確認できたものに奨励金を支給する制度で現在の中

国の補助金の主流)において、設置当初の効果だけでなく、数年後の効果も検証し、効果

がでていなければ補助金を返還させる。

などを、丁寧に中国側に説明し、こうした点について日本での経験も紹介しながら、中

国の実情に合った制度設計の支援をすることが必要である。

質の高い、日本ならではのインフラ輸出実現のためにも、フォーラムなど政府主導によ

り、中国中央・地方政府との交流を実施し、ライフサイクルコストの重要性、意義、持続

可能な成長への貢献を繰り返して強調していくことが不可欠と言える。

(2)資金的な支援についての検討

省エネルギー・環境技術設備の導入は、短期的には企業収益に直結しない場合も多く、

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特に業績不振の企業にとっては導入資金の確保が高いハードルとなり、更に継続的運転の

インセンティブは低い。一方、日本企業の側にも、例えば中小企業のなかには中国での実

証費用はおろか渡航費用も捻出できないなどの理由から、技術はあっても対中ビジネスに

乗り出せない企業も多い。資金的な支援の要請は、日中双方の企業から毎年出される定番

の懸案となっている。ビジネスである以上、そうした負担は第一義的に企業が負うもので

あるが、両国政府間で工夫できる余地はないだろうか。

中国では、最近環境対策、設備導入を支援するための民間基金設立を模索する動きが出

てきている。フォーラム後に、中国側主催者である国家発展改革委員会の下部組織で、フ

ォーラムの実務を担当しているマクロ(宏観)経済研究院・対外経済合作辦公室から、以

下の提案があった。

①省エネルギー・環境協力事業推進のために導入側にせよ、供給側にせよ、資金面で困難

が生じているのは中日双方企業とも同じ。そこで協力事業推進のための基金創設も考えて

いきたい。辦公室が発改委の委託を受けて進めている省エネルギー・環境協力の中に、中

国側とイスラエルで合意した基金2などの成功事例がある。4~5項目に重点分野を絞って

から基金創設について相談したらどうか。双方が調達した資金等を共同管理し、共通の事

業、省エネルギー・環境対策の技術・設備の導入など、重点事業に利用する。外国側は基

金の運営管理と技術提供を担当。中国側は資金提供。イスラエル基金のノウハウ、手法を

参考情報として提供しても構わない。

②良いプロジェクトシーズ、省エネルギー・環境技術・ソリューションがあれば、それを

地方都市に紹介し、重点事業として推進できる。地方都市からすれば、例えば「中日省エ

ネモデル都市」といった国からの指定が得られれば特別の資金を獲得できることになる。

3東莞市では1億元を投入してイスラエルから技術導入を行った。今後の協力では金融機関

同士の協力が欠かせない。

2月末の日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)の会議でも、複数の

大手金融機関担当者より、フォーラムに省エネルギー・環境プロジェクトを支援するため

の金融機関としての協力のあり方や手法を議論・検討する場があっても良いとの意見があ

2 2015年、中国、イスラエル両国首相の合意により創設された「中国・イスラエル経済

技術合作メカニズム」を指す。中国側は国家発展改革委員会、商務部が、イスラエル側は

国家経済委員会が担当し、聯合指導委員会の下に事務局と 5つの分野別WG(省エネル

ギー・環境、ハイテク、農業、エネルギーと再生可能エネルギー、融資)を設置。

http://www.sdpc.gov.cn/gzdt/201512/t20151207_761560.html

イスラエル側 http://cihitec.org/ci/index.php 3 東莞の「中国・イスラエル産業園」は第1期2016年完成、2001年に設置された『松

山湖高新技術開発区』内に建設。両国政府のイニシアティブで、広東省、東莞市とともに

共同推進。イスラエルの得意な水処理技術に特化。

http://huanbao.bjx.com.cn/news/20151203/687819.shtml

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り、国際協力銀行JBICの担当者からも、今後の中国側との対話交流情報を適時に共有し、

同行としての対応検討材料としたいとの発言があった。

また、本フォーラムの調印案件の一つである基金事業で、その出資により企業を育成し、

上場企業に株式を売却して回収したという成功例が最近確認された。4また、リースの活用

や、条件によっては国際協力銀行資金の活用なども検討すべきである。

中国側の意図する基金についてはまだ情報が足りないこともあり、まず、両国政府主導

により、これをテーマとするワーキンググループなど意見交換の場を設けることを提案す

る。

(3)「枠組み」を活用したプロジェクト形成

枠組みとは、山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区(以下、「淄博モデル区」)など、

中国の地方政府や機関と日本側との間で大枠の覚書を結び、それを傘として、プロジェク

ト形成を推進するものを指す。ここでは本事業の一環として実施している淄博モデル区に

ついて、以下の取り組みを提案する。山東省は当面の大気汚染対策を 2020 年までに完了

することとしており、特に 2016、17 年は対策の集中する年であり、具体的プロジェクト

の実施が期待される。

①モデルプロジェクトへのリソース集中

淄博市の大気汚染対策のニーズにマッチし、技術の先進性があり、ある程度の規模で導

入の効果が見込め、モデル案件として普及させる意義と、今後山東省内外での横展開の可

能性がある案件を日中双方で検討し、1件か2件程度をモデルプロジェクトとして選定し、

推進する。

これを通じて、優遇策の実際の適用、規制の実態(どのくらい地元企業が切迫した状態

におかれているのか、規制は有効に働いているのかは日本企業が知りたい情報)等の情報

収集、共有も行う。

②国有企業へのアクセス

山東省は国有企業が多く、SINOPEC斉魯石化(中国石化斉魯石油化工有限公司)はじ

め、中央直属の国有企業(所謂「央企」)はエネルギー消費、排出レベルも大きく、対策技

術も比較的進んでいるとはいえ、なお多くの解決課題があり、日本企業の貢献可能性は大

きい。モデル事業としても全国への波及効果は大きいはずである。

ただ地方所在の国有企業では、実際の発注の権限は北京の集団本部・総公司が握ってい

るというケースは少なくない。淄博モデル区で実際に導入商談中の山東アルミも、中国ア

4 日本アジア投資による日亜基金を含む海外ファンドによる基金はいずれも国家発展改革

委員会のベンチャー支援基金が協調融資を実施。日亜基金はクリーン・エネルギーや省エ

ネルギー・環境始め多分野を対象。北京暁清環保集団(水処理)は昨年米国ナスダックへ

の上場を果たす。(中国山水)

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ルミの地方子会社であり、総公司本部の決裁待ちの段階である。また、中央直属の国有企

業がために、地方政府のコントロール、指導が直接及びにくいため、地方政府との協力・対

話枠組みが十分に機能しない。

さらに、国有企業は導入技術の中国国内市場における実績など、入札資格を厳格に定め

ており、本来は粗悪品を排除するためのものだが、日本企業やその合弁企業で国内での実

施実績が無かったり不足したりするため入札要件を満たせず、競争参加の壁となることも

ある。結果的にはこれが良い技術、新しい技術の導入の妨げになっている面も否定できな

い。

日中省エネルギー・環境総合フォーラムの合意・調印案件は、双方の企業から報告され

た案件を、日中両国政府が最終的に確認、承認してリストに掲載している。その多くが、

ビジネスマッチングを経て特定技術、設備について今後交渉しようという中間合意である。

MOU がフォーラムの場で認知されることで、最終合意までのプロセスを円滑迅速に進め

たいとの期待があるからである。

ただ現状は、それだけでは例えば国有企業本部の重点案件として認知されるわけではな

い。中国においては、国家発展改革委員会、商務部の主催するフォーラムでの認定モデル

案件として、その意義と重要性が共有され、また必要に応じて国、地方政府の政策上の支

援と督励により、中央国有企業本部における決定プロセスに積極的な働きかけとなり、日

本側にとって受注への突破口を開くような道を、関係者とともに検討する必要がある。

③省エネ診断:中国側実施事業に日本企業が参加できるよう申し入れ

省エネ診断は、中国国内では実施企業に対する不信感もあるとのことで依然普及してい

ない。日本の確実で安心な診断事業を体験してもらうため、淄博市省エネ辦公室(淄博市

経済信息化委員会所属)が実施する省エネ診断事業に日本の ESCO 企業の参加検討を要

請する。

これが実現し効果が判明すれば、他地域への横展開支援を中国政府に提案する。

④導入済みの日本の技術設備の効果の検証と横展開の後押し

一例を挙げると、川崎重工業の中国企業(清華同方)との合弁会社、同方川崎の製造す

るヒートポンプが、2015年冬季より淄博市の民営石油精製企業、匯豊石化有限公司(恒台

県)で稼働開始、順調に運転して効果をあげている。同社では既に導入済みの3基に加え、

新たにスケールアップした2基の導入も前向きに検討している。こうした効果・取り組み

を省政府・市政府と共に検証し、市内・省内の企業に紹介し、横展開につなげる拠点とす

ることが有効である。

これが実現し効果が判明すれば、他地域への横展開支援を中国政府に提案する。

(4)制度情報獲得のための政策支援

入札制度、許認可制度等についてわかりにくい、情報がとれない、地方によって異なる、

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といった問題は本事業でも日本企業から毎回提起されている課題である。これに対し、中

国側はウエブサイトに公開している、との対応であるが、実際にそれだけでは解決されて

いない。日本企業にもさらに踏み込んで具体的な問題の所在を確認しつつ、政府として外

国企業の技術導入を所管する商務部との間で、必要に応じ分野ごとに日本企業が直接質問

できる場をフォーラムに先立って設けるなどの検討を行う。

(5)ターゲットを絞ったマッチング実現のための政策支援

中国側より対策が必要な企業の情報(ニーズ)が出されるが、それに合致する日本側の

技術・設備(シーズ)の発掘が課題となっている。これまでは、ニーズ情報をこれまでフ

ォーラム等に参加した企業を中心に広く公開し、応募してくる日本企業とのマッチング交

流を中心に行ってきたが、必ずしも合致するとは限らず、また、中国企業からも、その技

術・設備が該当分野においてどういう位置づけになるのかがわからないなどの意見がでて

いる。より多くのシーズを発掘し、それを体系化して中国側に紹介することによって初め

て精度の高いマッチングが可能となる。そのため、ある程度分野を絞った上で、こうした

技術を持つ企業の洗い出し、専門家による体系化などを行う活動が必要である。

また、中国側でも、省エネルギー・環境部門がその事業体を通じて、技術マッチング活

動を盛んに行っている。地元の省エネルギー・環境政策に基づいた分野について、必要な

技術を募集し、応募した企業の中から、専門家チームにより鑑定を行い、選別した上で、

省・市の関係企業とマッチングさせる活動で、技術のユーザー企業は数百社単位で、マッ

チングの成功率も高いが、有料であり、高額な費用が必要とされる。このような活動との

協力も重要である。

(6)基準・規格制定への関与

本年度の事業を通じて、中国の基準・規格制定への要請があった以下2件について、

中国政府への申し入れを行う。

・電気自動車の急速充電の規格統一

・VOCオンラインモニタリング測定の国家基準の制定

次回のフォーラム開催については、中国側より、実務重視、形式の刷新が提案されてい

る。フォーラム開催準備段階で、小規模なワークショップなど、上述の重点課題解決のた

めの活動を実施するなど、これまで双方で培った日中省エネルギー・環境総合フォーラム

という官民のハイレベル+実務レベル交流の恒常的プラットホームを、日本の省エネルギ

ー等・環境技術・機器の中国での普及の課題解決により一層活用することが求められる。

(以上)

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平成 27年度国際エネルギー使用合理化等対策事業

(日中省エネルギー等・環境ビジネス推進事業)

資料1

目次

1.第 9回日中省エネルギー・環境総合フォーラム ............................................................... 1

(1)全体会議概要 ....................................................................................................................2

(2)分科会概要 ........................................................................................................................8

(3)調印プロジェクト 26件の概要 .............................................................................................24

(4)フォローアップ調査結果 ......................................................................................................31

(5)調印プロジェクトの成果の一例 ...........................................................................................39

2.山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区 .................................................................... 47

(1)淄博市大気汚染防治行動計画意見徴求稿 .........................................................................47

(2)山東省政府・淄博市政府とのモデル区推進のための現地協議 ...........................................71

①中国側出席者名簿

②山東省省エネニーズ

③発言記録

3.中国節能低炭素博覧会 ................................................................................................. 80

(1)メインフォーラム講演概要 ...................................................................................................80

平成 28年 3月

経済産業省 資源エネルギー庁

(委託先:一般財団法人日中経済協会)

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1

1.第 9 回日中省エネルギー・環境総合フォーラム

開催日:2015 年 11 月 28 日(土)~29 日(日)

会場:東京 ザ・プリンスパークタワー東京

参加者数:約 750 名(日本側約 470 名、中国側約 270 名)

日程:

① 11 月 28 日(土)

協力プロジェクト文書調印式

立会い 吉川徹志 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課長

王静波 国家発展和改革委員会 環資司協調処処長

② 11 月 29 日(日)

【全体会議】 10:00~12:30

開会挨拶・基調講演

高木陽介 経済産業副大臣

張 勇 国家発展改革委員会副主任

高 燕 商務部副部長

宗岡正二 日中経済協会会長

程 永華 中国駐日本国大使

調印案件フォローアップ (日下部聡 資源エネルギー庁長官)

日中企業による協力プロジェクト紹介

彭 寿 中国建材国際工程集団有限公司董事長

小久保憲一 株式会社日立製作所執行役常務・中国総代表

協力プロジェクト文書交換式

林 幹雄 経済産業大臣挨拶

丸川珠代 環境大臣挨拶

閉会 (岡本 巖 日中経済協会理事長/総合司会)

【分科会】 13:30(14:00)~18:30

エネルギー多消費企業の省エネルギー対策

スマートシティ

次世代自動車

循環経済

石炭火力発電

日中長期貿易

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2

(1)全体会議概要

経済産業省、日中経済協会、中国・国家発展改革委員会、商務部、中国駐日本国大使館

との共催で、2015 年 11 月 29 日、東京にて「第 9 回日中省エネルギー・環境総合フォーラ

ム」を開催した。日本側は、林幹雄経済産業大臣、丸川珠代環境大臣、高木陽介経済産業

副大臣、宗岡正二日中経済協会会長、中国側は、張勇国家発展改革委員会副主任、高燕商

務部副部長、程永華中国駐日本国大使が出席、両国政府・企業・団体・専門家等、官民関

係者合わせて約 750 名(日本側約 470 名、中国側約 270 名)が参加、合意に至った 26 の

省エネ・環境分野の協力プロジェクトの文書交換が行われた。

また、特設展示コーナーには日本企業 15 社が自社の技術・ソリューションの概要や中

国での実績例をパネルで紹介、中国側は大連市が幹部を派遣して新たな都市づくりの構想

(中日韓循環経済モデル都市)を PR した。

また、対中省エネ環境ビジネスの成功事例として、今回は第 6 回以降の協力案件から 5

つのプロジェクトを選び、プロジェクトの内容と成功につながった要因等を「調印プロジ

ェクトの成果の一例」冊子にまとめて配布した。

分科会は、エネルギー多消費企業の省エネルギー対策、スマートシティ、次世代自動

車、 循環経済、石炭火力発電、日中長期貿易(水処理・汚泥処理、自動車リサイクル)

の 6 つを開催。中国側の分科会参加者は、11 月 30 日~12 月 2 日にかけて、分科会毎に日

本各地の関係施設・企業を視察した。

張勇副主任一行は滞在中、東京都中央防波堤埋立処分場、豊田市(スマートシティ)、

京都府(地球温暖化対策)等を訪れ交流したほか、関西経済界との対話や、先導的取組を

行っている日本企業の現場見学を行って帰国した。

「日中両国の Win-Win 協力のハイライト」(2011 年、李克強副総理)と位置づけられて

いる本フォーラムは、2013 年の停滞のあと、2014 年末、2015 年秋と続けて開催が実現し

ており、2016 年は中国で第 10 回を迎えることとなる。折りしも 2020 年の「小康社会」実

現に向けた第 13 次五カ年規劃のスタートの年であり、中国の持続可能な発展実現の鍵と

なる問題解決、特に省エネ・環境分野での日本の知見、技術が中国でその効果を発揮でき

るよう、フォーラムの役割を果たして行くことが求められている。

両国の閣僚クラスが共にフォーラムに出席するのは 2012 年 8 月の第 7 回以来 3 年 4 ヵ

月ぶり。解振華副主任の後を継いで環境、資源や気候変動対応を所管する閣僚クラスの張

副主任の来日により、ハイレベルの交流が今後活発化することが期待される。

全体会議での各講演者の発言要旨は次のとおり。

○開会挨拶

高木陽介 経済産業副大臣

日中は世界第1位及び第5位のエネルギー消費国。温室効果ガスの排出量は日中両国で

世界全体の4分の1を占める。これらの事実は、日中両国が、世界的な課題であるエネル

ギー・環境問題の解決に大きな責任を有していることを示している。日中両国は、世界の

エネルギー・環境問題の解決に向けて、互いの知見を共有し、協力関係を深化させること

が期待されている。

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3

我が国の新しいエネルギーミックスにおいては、2030年時点で、更なる省エネルギー対

策を導入した結果として、原油換算で5000万キロリットルを超える省エネ量を見込む。

COP21に向けて我が国が提出した温室効果ガス削減目標の達成に向けても、エネルギー効

率の改善が中心的な役割を果たすこことされている。

都市化が急速に進んでいる中国において、今後、特に重要なのは、「都市におけるエネ

ルギー需給構造の変革」である。我が国では、地域単位でエネルギーを賢く使う「スマー

トコミュニティ」の構築を進めている。例えば、再生可能エネルギーやコージェネレーシ

ョンなど地域で作られたエネルギーをエネルギー管理システムを活用して地域で消費する

ことを促進している。また、消費者が持つ蓄電池などの設備や省エネの取組を組み込み、

地域エネルギーを最大限活用すると同時に、系統の安定化に寄与する仕組みを作る取組を

進めている。今後、中国との間で、この分野での協力を積極的に進めたい。

張勇 国家発展改革委員会副主任

省エネ・環境保護は中国の基本国策。中国共産党第 18 期五中全会では、「創新・協調・

緑色・開放・共有」の発展理念により今後 5 年間の中国の経済社会の青写真を描いた。省

エネ・環境は中日経済協力の一大ハイライトであり、先般も双方は戦略的互恵関係を引き

続き推進し、省エネ・環境等分野の実務交流に協力することで合意した。省エネ・環境協

力を新しい段階に進めるため以下 4 つを提案する。

(1) 双方向、多方向のメカニズムを引き続き発揮。中日省エネ・再生可能エネルギー

ワーキングチームによる政策対話の強化。大気汚染等の地域的な環境問題への共同対応。

大連、曹妃甸等中日韓経済モデル基地建設推進。

(2)モデルプロジェクト協力を不断に深化。

(3)省エネ・環境技術交流を着実に強化。先端的・高価値技術で第三国市場を開拓。

(4)日本での省エネ研修など人材交流を引き続き強化。政策・技術の相互交流を実施。

双方は引き続き本フォーラムというプラットホームを活用し、両国の省エネ・環境等分

野の実務協力を深化し、中日間のグリーン発展を共に開拓するために新たな貢献をしてい

こう。

○基調講演

高燕 商務部副部長

商務部はグリーン流通や省エネ・環境産業の振興のため、中古製品や資源回収・リサイク

ルに関わる制度・基準の制定、回収・分別・再流通の三位一体の体系構築、グリーン小売

店・市場・レストラン・物流による省エネ推進、グリーン理念を流通全過程徹底するなど

の施策を講じている。

中日長期貿易協議委員会省エネ・環境保護技術合作分会の協力メカニズムのもと、過

去 18 案件の組成に貢献、今回も汚泥炭化案件が調印された。

13 次五カ年計画期間、環境保全のための投資規模は 17 兆元を見込む。本分野は投資額

が大きく、収益が出るまでに時間がかかる。商務部統計では、2004 年以降、日本の電力、

水利、環境等の分野における対中投資は日本の対中投資累計の 0.2%、1 億 2000 万ドルに

留まる。そこで以下を提案したい。

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4

(1) 両国政策対話の強化。制度設計の推進と障害の除去。中国は知的財産保護の強

化、日本には技術供与の緩和を期待。

(2) 両国企業が確信と忍耐でビジネス推進し、日本の技術と環境理念の中国への移転

実現を期待。

(3)関係機関・団体によるサポート強化。

(4)柔軟かつ多様な発想で両国の貿易・投資交流のグリーン化の向上。

宗岡正二 日中経済協会会長

2011 年、当時の李克強副総理は本フォーラムを日中 Win-Win 協力のハイライトである

と高く評価された。今年、日中経済協会合同訪中代表団との北京での会見の際は、総理は

経済構造改革、経済発展パターンの転換により次期五カ年計画で 6.5%以上の成長を持続、

その中で省エネ・環境対策にさらに力を入れると紹介された。

日本は中国のニーズに貢献できる技術を保有しており、多くの場合中国のパートナーと

合作して現地生産を行おうとしているが、日本企業の提案する技術や設備は、初期コスト

が割高であるとの理由から、なかなか採用されない。「性能が高く、長持ちするが、価格

が高い」という日本製品と、「無駄なものをそぎ落とし、必要最低限の性能、長持ちする

か否か不明、他方、価格は安い」という現地製品との選択の問題である。

解決の一つの方向は、初期導入コストのみの比較でなく、導入効果の大きさ、技術・設

備の信頼性、性能の長期安定性、さらに管理・メンテナンスのしやすさなど、ライフサイ

クルコストを適正に評価することにある。こうした方向が定着することにより、中国の環

境産業の技術力の向上にも弾みがつくものと考える。

程永華 中国駐日本大使

中国駐日本国特命全権大使として 3 度目の出席となる。フォーラムは、すでに両国産業

界が認める省エネ・環境分野の重要な実務協力プラットホームとなった。中日両国は省エ

ネ・環境分野で利害関係者であり建設的な協力パートナーである。13 次五カ年計画でもグ

リーン発展は 5 大理念の一つとなっている。

日本企業が中国に投資し、中国の環境・新エネルギー産業、低炭素都市建設、生態シス

テム保護等の分野で協力することを歓迎する。同時に中国企業が日本で同様の分野で投資

することを積極的に支持する。両国が協力の成果を分かち合い、中国の設備製造優位性と

日本の先進技術を結合し、発展途上国に安くて品質の良い省エネ・環境製品を提供し、世

界の省エネ・環境レベルを向上することを期待したい。

中日関係はここ数年の困難を経過して、今、徐々に改善の方向にあるが、その勢いはい

まだ弱い。双方は引き続き中日間における 4 つの政治文書、昨年合意した 4 つの原則に基

づき、「歴史を鑑とし、未来に向かう」精神によって、弛まない努力を持続しなければな

らない。両国産官学各界がこのプラットホームを活用してさらなる成果を形成することを

期待する。

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○調印案件フォローアップ

(1)調印案件の傾向と進捗

第 1 ~ 8 回累計 259 件には、日本企業・団体延べ 341 社、中国企業・団体延べ 293

社が参加。分野別では約半数が省エネ、約 4 割が環境、残りが再生可能エネルギー。4 割

にあたる約 100 件が当初の目標を達成。傾向として、当初の関係構築を目的としたものか

ら、日本の先端技術の供与や実証事業、合弁会社設立等事業化により近い内容が増加。

(2)課題と対応策

目標達成に至らなかった事業の主な理由は、市場環境の変化に起因するもの。省エ

ネ・環境対策は、経済性だけでは図れない社会的メリットも多く、政府間でも引き続き制

度の構築や人材育成等の協力を進めたい。

(3)成功事例から見える未来への道筋

過去の成功事例から、双方が適切なパートナーと互いの強みを融合させ、競争力を高

める努力を重ねていくことが長期的に成功する秘訣と確信。。

○日中企業による協力プロジェクト紹介

彭寿 中国建材国際工程集団有限公司董事長

中国建材集団は世界最大の建材メーカーである。世界のセメントの 10 分の 1、石膏ボー

ドの 3 分の 1、ガラス生産の半分を供給している。

年 1 億トンの廃棄物を原料として活用し、工場での脱硫・脱硝・集塵改造を加速し、す

べてのガラス・セメント生産ラインで廃熱発電を設置してエネルギー消費量を 3 分の 1 削

減、CO2 排出量 995 万トンを削減した。

日本とは、新日鉄エンジニアリングや三菱重工業等と協力し、第 3 回・5 回フォーラム

でも BIPV(Building-Integrated Photovoltaics)技術研究開発、セメント工場向け省エネ設備の

研究開発で調印した。日本からの設備・技術導入と共同出資の段階を経て、三菱商事とト

ルコの廃熱発電市場の開拓に成功、ガラス分野では旭硝子と組んで省エネ環境サービスを

推進、新興国市場参入をめざしている。

中国企業代表として 3 つ提案したい。

①省エネ・環境の科学技術創新に係る交流プラットホーム設立

②中日省エネ・環境ファンドの有効利用

③第三国向け市場を共同で開拓

小久保憲一 株式会社日立製作所執行役常務・中国総代表

日立は中国において会社数 182 社、従業員 5 万人、売上高年約 1 兆 2,000 億日本円で活

動している。

06 年、社内に中国省エネ・環境事業化推進プロジェクトチームを設置、07 年から国家

発展改革委員会の支援のもと、3 回にわたり「省エネ・環境保護技術交流会」を開催し

た。

この連携の下、第 2 回フォーラムでは「雲南省における鉄鋼・化学工業の電機システム

の省エネルギー」としてボイラー補機用高圧モータ設備のインバータシステムを昆明鋼鉄

集団に納入、その後同省化学メーカーにも展開した。第 3 回フォーラムでは、中小企業対

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6

外合作協調中心・寧波市と中小企業向け省エネ・環境保全協力の協議書に調印、省エネ診

断を実施した。

第 5 回フォーラムでは、遼寧省大連市発展改革委員会と資源循環・低炭素経済分野での

協業について調印。第 6 回フォーラムでは大連生態科技創新城管委会・大連科技発展有限

公司とのスマートシティ・地域エネルギーマネジメント、第 7 回フォーラムでは実証実験

について調印、CEMS(Community Energy Management System)を導入、は一部地域を対象に

「エネルギーの見える化」を実現した。

今回は電力需要側管理システム(DSM)案件、グリーン製造と『IoT+製造業サービス

転換』、VOC 対策関連プロジェクトを調印した。日立の技術、経験と中国パートナーの実

績を掛け合わせ良い成果をあげたい。

○大臣挨拶

林幹雄 経済産業大臣

我が国の技術やノウハウは中国が重視する資源節約型の「グリーン発展」に資する。本

フォーラムは、日中の政府・産業界の互恵的協力関係構築のプラットホームとして、重要

な役割を果たしてきた。

中国はサービス業や消費のウェイトがより高い「中高速成長」の経済への転換が図られ

ている。今後は、サービス産業や一般家庭を含め幅広くエネルギー利用の最適化を図るた

め、IoT 等新技術を活かす、きめ細かな対策が重要である。

日中が協力して取り組むべき課題は多い。環境保護及び気候変動対策に資する物品の貿

易自由化では、対象品目が幅広いものとなる形で早期合意が成立するよう両国が協力する

ことが重要だ。日中韓経済貿易大臣会合の合意に基づき、環境分野での国際標準化機構へ

の国際規格の共同提案などの協力を進めたい。

COP21 ではイノベーションも大きな課題の一つ。我が国は、世界の産学官のリーダーが

集まって気候変動問題解決のためのイノベーションのあり方を議論する国際会議

ICEF(Innovation for Cool Earth Forum)を主宰。さらに来年春までに「エネルギー・環境イノ

ベーション戦略」を策定し、抜本的な排出削減効果が見込まれる革新的技術の特定とその

実用化加速に向けて資金や人材を集中投下する方向性を示す予定である。本フォーラムも

活用しつつ、中国とも連携・協力を進めていきたい。

丸川珠代 環境大臣

環境問題は国境を超えた重要な課題である。日本と中国は、日中友好環境保全センター

の設立や日中韓三カ国環境大臣会合など、20 年以上環境協力を実施してきた。国家発展改

革委員会とは「日中協力低炭素発展高級研修」を開催し、大気汚染問題では「日中都市間

連携協力」を昨年より推進している。また中国農村部の水質汚染処理改善に向けたモデル

事業や共同研究、中国とも連携した東アジア地域の海洋ごみ対策なども実施している。来

年の日中韓三カ国環境大臣会合は我が国で開催するが、この大臣会合を通じて、中国と一

層の連携・協力を推進したい。

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COP21 では「全ての国が参加する公平で実効的な国際枠組み」の採択と、この枠組みを

将来にわたり実効性のあるものとすることの 2 点を重視。中国とも緊密に連携しながら、

各国と粘り強く対話し、最終的に合意を得るべく貢献したい。

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(2)分科会概要

①エネルギー多消費企業の省エネルギー対策(重点用能单位节能政策)分科会

工場の省エネ手法、技術における日中間のビジネス協力に向けて

エネルギー多消費企業の省エネルギー対策分科会は、日中両国政府関係者、業界団体及

び省エネ環境関連企業など、約 100 名が参加し、日中双方の省エネ対策における交流の場

として開催された。

中国では、1997 年に省エネルギー法が制定され、第 12 次 5 カ年計画(「12・5」)におい

ても省エネ政策が重要政策として位置づけられている。このうち、特に重点エネルギー使

用分野においては、一定のエネルギー効率向上が見られるものの、生産現場である工場等

では、省エネ手法、技術面での情報不足や資金調達力等の障壁から、適切な投資判断に至

らないケースがあると考えられる。このため、本分科会では、日本企業の工場向けの優れ

た省エネ手法や技術に関するプレゼンテーション等を通じて、中国における重点エネルギ

ー使用分野の更なる省エネ化に向けた取組促進を目的に開催した。

こうした背景のもと、今次分科会では、共同議長(モデレーター)を、日本側は資源エ

ネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部省エネルギー対策課の辻本課長、中国側は国家

発展改革委員会環境資源節約利用司節能処の趙処長が務め、日中の重点エネルギー使用組

織に対する省エネ政策、及びエネルギー多消費工場における効果的な省エネルギー対策、

日中企業の省エネ技術・対策等について、政府、業界団体、企業それぞれから紹介し、意

見交換を行った。

辻本課長からは「2011 年 3 月の東日本大震災以降、日本のエネルギー状況は大きく変化

し、徹底した省エネが課題となった。中国においては、省エネが第 13 次 5 カ年計画

(「13・5」)の 5 つの柱の 1 つとなっている。今後も中国と連携し、省エネに取り組みた

い。」と述べられた。

趙処長からは、「12・5」以来、中国は万社企業省エネ低炭素行動を経済・社会発展の拘

束性指標に指定し、毎年審査を通じて成果をあげている。2006 年から 2014 年までの万社

企業(1 万 6 千社のエネルギー多消費企業)のエネルギー使用が累計 29.9%削減された。

しかし、中国におけるエネルギー使用効率の水準はまだ低く、単位 GDP あたりエネルギ

ー消費は世界水準の 1.7 倍、日本の 3 倍、アメリカの 2.1 倍で、エネルギー使用効率の更

なる向上の可能性が充分にある。「13・5」では、グリーン発展の推進が打ち出され、その

重点の一つがエネルギー資源の節約となっている。エネルギー消費強度・総量の双方をコ

ントロールし、万社企業を引き続き拘束的指標とし、省エネを国家発展戦略の一つと位置

付け、全国民省エネ行動計画を実施する。中国は、技術、モデル、産業において、新しい

チャンスに恵まれている。日中協力の発展を期待している」と述べた。

国家発展改革委員会能源研究所の戴副所長からは、「13・5」における省エネ目標と政策

についての紹介があった。要旨は下記の通り。

【「12・5」における省エネ目標達成状況と課題】

「12・5」における省エネ目標と達成状況を紹介。

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●目標

・ 単位 GDP あたりのエネルギー消費を 16%削減

・ 単位 GDP あたりの二酸化炭素排出を 17%削減

・ 主要汚染物質の排出総量を 8%~10%削減

・ 化学酸素量、二酸化硫黄の排出を 8%削減

・ アンモニア窒素、窒素化合物を 10%削減

・ 森林面積を 6 億㎥に拡大、森林覆蓋率を 21.66%に引き上げる。

・ 非化石燃料の一次エネルギーに占める割合を 11.4%に引き上げる

●達成状況

・ エネルギー消費を 16%削減、6.7 億トン標準炭を削減

・ 2015 年の 1~3 四半期の単位 GDP あたりエネルギー消費を 5.7%削減

その他目標についても期間中の達成が見込まれる一方、中国が直面する当面の課題とし

て、調和がとれず、持続可能な発展が実現できていないと指摘しており、具体的には、①

発展方式が粗放的で、イノベーション力が弱い。一部の産業に過剰生産が見られ、効率が

低下し、事故が多発する可能性がある、②都市間で発展の不均衡が生じており、資源の逼

迫、生態環境悪化を根本的に改善できない、③基本公共サービス供給の不足、収入格差の

拡大、高齢化の加速、貧困対策などへの対応、④人民社会文明の素質向上、法治の強化が

必要、⑤指導者の思想、マナー、能力水準の向上が挙げられる。

【「13・5」における中国の省エネ目標・政策】

「13・5」期間中の省エネ目標については表1を参照。

「13・5」期間中の省エネ政策は、①拘束性指標管理の強化、総量と強度の双方をコン

トロール(全国民省エネ行動計画の実施、省エネ基準の引き上げ、エネルギー効率トップ

ランナー制度の展開)、②エネルギー使用権(企業が 1 年間に使用できるエネルギー(電

力、ガスなど)総量を取り決めた権利)、水権、汚染排出権、炭素排出権(「四権」)によ

る分配制度を構築、③有償使用、予算管理、投融資メカニズム、育成・発展の「四権」取

引市場の設立、④エネルギー管理と節水管理の合同推進である。

続いて、中国節能協会中国計量科学研究院の房副院長は、中国におけるエネルギー多消

費部門の省エネの政策について、万社企業省エネ低炭素行動を基本政策としながら、工業

企業、港湾・運送、ホテル、学校、商業企業、道路運送の 6 分野をエネルギー多消費分野

と指定し、省エネ目標を打ち出すことを紹介。「13・5」では、エネルギー使用権のイニシ

ャル分配制度を構築し、有償使用、予算管理、投融資メカニズムを創新し、取引市場の育

成と発展を目指すと述べた。

日本側からは、(一財)省エネルギーセンター国際協力本部の牛尾参与より、日本の工

場における省エネ対策・技術について説明があり、省エネでは技術革新が重要だとの発言

があった。

続いて、日本企業を代表して、(株)前川製作所商品化実行センターの深野氏から、省エ

ネルギー技術(ヒートポンプ)導入の取組について、(株)日立産機システム海外営業部海外グ

ループの宮崎部長代理からは、日本企業の省エネ技術(インバーター技術)導入の取組に

ついて、旭硝子(株)技術本部エンジニアリングセンター事業推進統括の岩倉グループリー

ダーから、中国ガラス業界における省エネ、環境改善についての紹介があった。

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これに対し、中国側は、中国華能集団公司安全監督・生産部趙主任から、火力発電ユニ

ットの自社省エネ技術について、中国建材国際工程集団有限公司姚副総工程師から、省エ

ネ排出削減における経験交流について、杭州哲達科技股分有限公司麻副総裁から、エネル

ギー多消費企業に向けたスマート空圧システム技術についての紹介があった。

質疑応答では、日本の EMS(エネルギーマネージメントシステム)における取組や、補助

金など政府からの支援政策、省エネ目標を達成できなかった場合の措置(罰則)などの質

問が提起され、限られた時間の中で、活発な意見交換となった。

地方視察では、(株)マルハニチロ宇都宮工場のノンフロン冷凍機、コマツ小山工場の省

エネ取組を視察し、北海道では省電力改善の取組を紹介した北海道ワイン(株)、(株)北海道

熱供給公社の天然ガスコジェネ・熱供給システムを使用した札幌駅南口を視察した。各視

察先での意見交換では、熱心な質問が中国側から寄せられ、大変活発な交流が行われた。

中国は、「13・5」期間中における省エネ目標達成のために、エネルギー使用権、水権、

汚染排出権、炭素排出権の「四権」による分配制度を構築し、市場メカニズムを活用しな

がら省エネを推進する方針である。新たな国家戦略の中、中国はさらに市場開放、技術イ

ノベーション、国際協力・交流を強化していくなか、日本企業との交流・協力の広がりが

期待できる。

一方、コスト競争力、知財権保護などの課題が、日本企業の対中ビジネス推進の妨げと

なっていることも事実である。課題を取り除くためには、双方の政府や業界団体等の支援

を得ながら、マッチングで日中のニーズを結び付け、ビジネスに繋がるプロジェクトの発

掘が必要となる。

省エネの推進には、技術革新が不可欠だが、同時に企業のトップマネージメント(経営

者、指導者)が省エネに参加することも重要である。中国では、省エネ技術力だけでな

く、エネルギー管理方式の改善も求められている。

今次分科会を通じ、省エネ先進国である日本の技術力や経験は、中国でも強いニーズが

あると再確認でき、双方協力の可能性はまだ十分にあることが感じられた。

②スマートシティ(城市绿色管理)分科会

日本では、特に 2011 年以降、地域単位でエネルギーを賢く使う「スマートシティ」或い

は「スマートコミュニティ」の取組みが進みつつある。一方、中国での「スマートシティ

(智慧城市)」は、14 年 3 月に発表された「国家新型都市化規劃」においては都市化と情

報化の融合を目指す在り方として描かれ、環境に配慮する都市の在り方は「グリーンシテ

ィ(緑色城市)」と表現されていたが、「13・5」計画の建議では「緑色発展」という理念

が打ち出され、今回の「スマートシティ」分科会に整合する中国側の分科会名は、あえて

「城市緑色管理」という表現が選ばれた。本分科会の中国側議長である王静波国家発展改

革委員会資源節約環境保護司総合協調指導処長は、分科会の開幕挨拶で「城市緑色管理」

という分科会名には「新型都市化の推進」と「経済発展方式の転換推進」を結合させる意

味が込められていると説明している。

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「13・5」計画期の中国の都市化において、日本のスマートシティと軌を一にする「エ

ネルギーの効率化」がフォーカスされようとしており、本分科会に期待される方向は、都

市の発展と環境問題の解決及び省エネルギーを両立させていくための認識が共有され、議

論が深まることである、との紹介が日本側議長である戸邊千広資源エネルギー庁省エネル

ギー・新エネルギー部政策課社会システム推進室長からなされた。

過去の日中スマートシティ(スマートコミュニティ)ビジネス交流の試みのなかで

は、日中双方のコンセプトやニーズが噛合っていないという問題提起が度々なされてきた

が、本分科会直後の複数の参加者によれば、ようやくその問題を乗り越える機運が感じら

れる。そこでここでは、日中双方の代表発言のエッセンスと考えられるファクツをテーマ

別に取り纏め、参考に供する(発言者等の情報はアジェンダを参照されたい)。

◆日本の次世代エネルギー・社会システム実証事業成果例

中国側参加者からは、視察先となった「けいはんな」等を含め、日本での実証成果を日

本側関係者から中国で直接説明・発信してもらう機会を設けたいという声が寄せられてい

る。

(1)北九州市スマートコミュニティの挑戦

北九州市では「スマートコミュニティ創造事業(26 事業、120 億円)」(経済産業省「次

世代エネルギー・社会システム実証事業。10 年度~14 年度の 5 年間実施。北九州市、横

浜市の他、けいはんな、豊田市が実施)を 77 企業・団体参加により推進。各戸に双方向

通信が可能なスマートメータを設置。電力使用データが 30 分に 1 回 CEMS(地域節電所)

に送られる。CEMS は刻々と変わる需要に合わせて供給を計画し、需要と供給を最適化で

きる。また、スマートメータの双方向通信機能を使ってダイナミックプライシングを実

施。これにより、初年度と 2 年目で家庭部門では約 20%のピークカットという成果が確認

された。

(2)横浜スマートシティプロジェクトの取組と今後の展開

横浜市は、気候変動と都市のヒートアイランド現象が重なり合った結果、過去 100 年間

で気温が 2.7 度上昇し、様々な対策を講じてもゲリラ豪雨による浸水被害が発生してい

る。20 年までは人口増加が予想され、電力エネルギーを如何に効率的に使用していくかが

課題。

実証事業には横浜市と 34 企業が参加、4200 家庭に HEMS を導入、FEMS、BEMS を組

み合わせ CEMS と連携。HEMS では、ピークアワーの電力価格をどのように高くすると一

般家庭の電力消費がどの程度落ちるか、如何にインセンティブを与えることで省エネルギ

ーがはかれるか等、BEMS では、契約電力が 500kW以上の大規模ビルと中小もあわせ複

数のビルを統合して管理する統合型 BEMS を介して、デマンドレスポンスが電力のピーク

カットにどの程度効くか、更にネガワット取引の入札方式でどの程度の省エネがなされる

のかなどの実験が行われ、いずれも有意な効果が認められた。例えば統合型 BEMS のデマ

ンドレスポンスは、13 年ではピークで約 23%の電力カットが可能となった。

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◆中国都市化の選択と先行的な取組み

コンパクトシティ化に向け、省エネルギー、エネルギー・マネジメントシステムにフォ

ーカスし、日本とのコラボレーションへの認識が把握できる。

(1)グリーン低炭素都市建設――中国都市小城鎮改革発展中心の視点

中国では、急速な都市化により、不動産過剰によるゴーストタウン化、土地利用効率の

低下、粗放型の都市発展パターン、資源浪費等、様々な問題が浮上。これらに対する必要

な取組みとして、都市の再生・改造、スマートシティ開発、グリーン・低炭素都市建設等

がある。

13・5 計画期には、大規模な土地・不動産開発は終わりを告げ、グリーン低炭素都市、

コンパクトシティ開発に転換する必要がある。それに伴い、サービス産業、グリーンな産

業(農業、交通、エネルギー)を発展させる必要もある。(来日前から聞いている)「柏の

葉」等の日本の経験は非常に有効であり、特に省エネルギー分野においては日本のスマー

トシティが最も優れている。持続可能な発展に向け、建築省エネ、TOD による公共交通機

関と都市の一体的整備、GDP 成長志向からグリーン GDP 評価への転換を重視したい。

(2)浙江湖洲市生態文明先行モデル区建設の取組と成果

湖洲市は、中国初の「生態文明先行モデル区」地級市で、15 年 11 月には国連の「ミレ

ニアム開発目標・金賞」を受賞した中国唯一の都市となった。

実践のなかでの重点は、①グリーン発展理念の都市計画への融合、②快適な居住と四治

(水、大気、鉱山、汚染の対策)、③グリーン交通、④建築のグリーン化・省エネルギー

を中心とするイノベーション(省級グリーン建築基準の全面達成、国家級基準の部分達

成)、⑤緑色管理の堅持とメカニズムのイノベーション(全国に先駆け、06 年からグリー

ン GDP 評価展開)にある。

(3)都市スマートエネルギー細分化管理――中国智慧能源産業技術創新戦略連盟の視点

エネルギーのスマート化とは、既に紹介された日本の経験からも分かるように、エネル

ギーの生産、貯蔵、輸送、使用状況を通信技術によりリアルタイムでモニタリング・分析

し、それらのビッグデータを基礎にして、最適な高効率のエネルギー生産・利用に至るエ

ネルギー・情報マネジメントシステムである。現在中国の多くの都市でも、エネルギーマ

ネジメントは行われているものの、ビッグデータの有効な発掘・分析には至らず、多くの

エネルギー企業の手には届けられてはいない。エネルギースマート化管理システムによ

り、経済・環境効果の把握が可能となり、設備メーカー、オペレーター、コンサルタン

ト、エネルギーサービス企業も連動することになる。

◆日本のスマートシティ構築の先進事例「柏の葉」

中国側発言者から、グリーン・低炭素コンパクトシティ開発とそれに伴うサービス産

業、グリーン産業の包摂的発展への転換の先進モデルとして言及された「柏の葉」。その

コンセプトや推進体制の重点が日本企業参画者からあらためて紹介された。

(1)日本のデベロッパーの経験から

東日本大震災以降は、蓄電、電力融通等エネルギーインフラと通信インフラの強化のハ

ード面と、タウンリスクマネジメントや事業継続、生活継続、スマートサービスなどソフ

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ト面の取組みを備えた「低炭素+地域エネルギー×安心・安全×スマートサービス」を融

合する持続可能なスマートシティ構築が期待されている。

緑、光、風、土、水など自然を建築に活かしつつ、CO2削減と費用対効果の高い省エネ

技術・システムを利用し、化石燃料に頼らないエネルギー使用モデル実現の先進事例が三

井不動産の「柏の葉・ゲートスクエア」。CO240%削減を実現している。更に省エネに協

力したユーザーにエコポイントを配布し、街のコミュニティ活動などに使える仕組みを導

入し、システムが継続的に発展する仕組みの構築に努めている。

(2)日本のシステムインテグレーターの経験から

スマートシティ構築のための体制は前半と後半では異なる。前半はデベロッパーを中心

に、行政、プランナー、大学研究機関、投資家・金融機関等、後半は、建設会社、設備ベ

ンダー、エンジニアリング会社等、様々なステークホルダーが関係する。これらを纏める

のがシステムインテグレーターの役割であり、デベロッパーとシステムインテグレーター

が計画の初期段階から連携して各ステークホルダーと共に取り組むことが重要。「柏の

葉」では、三井不動産を中心に民間企業 20 社以上が集まり、メンバーで議論して「環境

共生、健康長寿、新産業創造」をコンセプトとし、日立は「環境共生」のエリア・エネル

ギー管理ソリューションを提供した。

◆グリーンシティ、スマートシティとファイナンス

スマートシティを含め中国では金融スキームのイノベーションを重視している。ESCO

によるスマートシティ支援もその一つ。

(1)中国の緑色信貸によるグリーンシティ発展支援

中国のグリーンファイナンス政策フレームワークシステムの一つは「グリーンファイナ

ンスガイドライン」(12 年策定)。①金融プロセス、製品、サービスでグリーン・低炭素・

循環経済の発展をサポートすること、②顧客とプロジェクトのエネルギー浪費と汚染を厳

格に予防すること、③金融機関自身のカーボンフットプリントを管理することが重点であ

る。この確実な実行のツールとして「エネルギー効率ファイナンスガイドライン」(15 年

に中国銀行業監督管理委員会と国家発展改革委員会が共同で発表)とグリーンファイナン

ス統計制度(13 年制定)があり、これらによりグリーンファイナンス比率が 13 年の 5%

から 15 年前半には 10%に向上した。

(2)スマートシティ構築に資するファイナンス手法としてのESCO事業

第 8 回フォーラムで交わした合弁設立合意書は、協議を重ねた結果、15 年 8 月、ESCO

合弁会社「融智能源環保(深圳)有限公司(DMC エネルギーマネジメントサービス〔深

圳〕)設立に至った。

中国では、新規のビルや工場の建設にも、ESCO 事業活用によるスマートなユーティリ

ティ導入が推奨されている。ESCO は技術と金融の融合事業であり、その活用メリットは

①初期投資負担が不要、②省エネ対策負担軽減、③エネルギー管理のアウトソーシング、

④省エネ関連規制への対応が可能ということになる。

スマートシティ計画推進には、工場やビル等の地域のエネルギー消費企業の積極的参加

が重要であるが、そのためには企業側で①技術面(エネルギー消費の把握、見える化、省

エネ化計画立案、設備・システム選定、運用管理の仕組み構築等)、②金融面(資金調

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達、投資回収、事業採算等)の課題をクリアしなければならない。技術と金融の融合事業

である ESCO はこれら課題を解決するための有効な手段である。

③次世代自動車(新能源汽车及基础设施的协同发展)分科会

「中国製造 2025」では自動車産業が重要な戦略的地位を占める

次世代自動車分科会は、日本側 70 名(経済産業省、自動車メーカー、関連研究所・団

体ほか)、中国側 45 名(国家発展改革委員会、新エネ自動車メーカー、電力企業、関連団

体ほか)と、約 120 名の規模で開催された。

日中の次世代・新エネルギー自動車の振興政策や関連インフラ施設整備状況、企業及び

関連機構の研究・開発、普及と将来計画を巡り、各々5 名がプレゼンテーションを行っ

た。

冒頭、吉田健一郎 経済産業省製造産業局自動車課電池・次世代技術・ITS推進室長

より日本の次世代自動車振興施策について、また呉衛 国家発展改革委員会産業協調司機

械装備処調研員並びに武震 国家能源局電力司幹部から中国の新エネルギー自動車政策

や、その普及状況について紹介があった。

続いて、第 8 回フォーラムの調印案件でもある「日中新エネルギー自動車及び充電イン

フラに関する共同研究」の実施状況に関し、中間報告として、木戸彰彦日本自動車研究所

FC・EV 研究部研究主幹、王成中国汽車技術研究中心北京工作部副主任それぞれからイン

フラ施設の整備状況等について発表が行われた。

企業からのプレゼンテーションは、日産自動車、北汽集団の EV・HEV の取り組み状

況、トヨタ自動車による EV 車の実証実験の紹介、中国汽車技術研究中心から中国におけ

る新エネ車の産業・技術の発展状況、マツダ自動車より最新ディーゼルエンジン技術を踏

まえた、従来型エンジン車の将来展望について各種プレゼンテーションを行うとともに、

中国汽車工業協会から「中国製造 2025」に基づいた省エネ・新エネ自動車産業の発展ロー

ドマップについて紹介があった。

着々と進む日中の次世代自動車の産業振興・関連インフラ整備

日本における次世代自動車マーケットシェアは既に 24%を占め(2014 年時点)、2030 年

には 50~70%まで引き上げる目標を掲げているが、消費者調査では価格、走行距離、充電

施設の不足などが購入時の障害となっている。これに対して政府側が補助金制度を創設

し、2014 年に 100 億円、2015 年に 200 億円に倍増した。インフラ施設の建設や蓄電池の

研究開発に対しても政府の補助が持続的に行われている。2020 年までの目標としてにリチ

ウム蓄電池のエネルギー密度を 250Wh/kg、走行距離を 250~350km に引き上げ、2030 年

までに新型蓄電池容量 500Wh/kg、走行距離 500km 達成を目指すとの紹介が吉田室長より

あった。

一方、中国側は呉衛調研員から中国の EV 車普及へ向けた政策支援や最新データの紹介

を交えて以下のとおり説明した。

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中国は 2015 年 10 月時点で新エネ車普及事業 39 都市 18 万台以上を販売。2014 年末まで

に充電ステーション 778 ヵ所、充電パイル 3.1 万台を設置したとの最新データの紹介を交

え、中国市場の EV 車発展の潜在力をアピールした。

電力規劃設計総院の武震博士は国家能源局の立場から現状と発展目標、今後の重点、保

障及び措置を中心に紹介した。とりわけ 2020 年までの目標として、充電ステーション 1.2

万ヶ所、分散型充電パイルを 480 万台設置し、EV 車 500 万台規模のニーズを満たすべく

努力すると述べた。

「日中新エネルギー自動車及び充電インフラに関する共同研究」の中間報告では、木戸彰

彦日本自動車研究所 FC・EV 研究部研究主幹と、王成中国汽車技術研究中心北京工作部副

主任が、それぞれ報告を行った。調印後、1 年間の成果として中国側は、国家発展改革委

員会、国家能源局、中国電力企業連合会、中国汽車技術研究中心、天津市発展改革委員会

と、日本側は、CHAdeMO 協議会、各自動車メーカー、次世代自動車振興センター、電動

車両電力供給システム協議会など、双方が数回にわたる交流会、技術視察などを通じて相

互に理解を深めることができたとの報告があった。

具体的成果が現れ始めた日中企業による次世代自動車の取り組み

日本の各自動車メーカーの独自研究開発状況についても、それぞれプレゼンテーション

を行った。

電気自動車の普及に向けた日産自動車の取り込みでは、矢島 EV・HEV 技術開発本部ア

ライアンス・グローバル・ダイレクターから代表車種である LEAF を中心に紹介があっ

た。技術革新やバッテリー容量拡大により、充電 1 回あたりの走行距離が 280km(2015 年

モデル)となった。日中間の共同研究を通じ、中国の充電器認証制度制定に対する積極的

協力を展開するとともに、エネルギーマネジメント観点から、LEAF to Home(非常時電

源、ピークシフトと太陽光発電の自家消費)の提案や4R ビジネス

(Reuse→Refabricate→Resell→Recycle)に積極的に取り組んでいるとの紹介があった。

トヨタ自動車は山本 ITS 企画部長よりスマートモビリティ社会の構築を目指し、都市交

通システム Ha:mo(Harmonious Mobility Network)の仕組みと各地域の実証状況の紹介

があった。目下、東京都(都心と湾岸地区約 30 カ所)、豊田市(市内 46 カ所)、及びフラ

ンスのグルノーブル(市内 27 カ所)で計 200 台のミニ EV 車(COMS と i-ROAD)が稼働

中である。

マツダ自動車の人見執行役員より「内燃機関の将来展望」について、ガソリンやディー

ゼルエンジンの技術革新により、CO2排出量の改善推移の説明があった。同社の研究で

は、エンジンの熱効率改善を通じ、燃焼時の各種エネルギー損耗を抑制することで 25%の

燃費低減を実現し、CO2排出量を電気自動車と同レベルにすることが可能だとのビジョン

を示した。

中国の自動車メーカーからは、北汽集団による、新エネルギー自動車に関する取込み状

況の紹介があった。

北汽集団はドイツ・シーメンス、韓国・SK グループ、米国の新興 EV メーカーAtieva ら

との協力を通じて EV 完成車や電池、モーター、電気制御等の重要部品の生産技術を入手

している。2015 年 10 月時点で公共交通 1.15 万台、自家用車 1.38 万台、計 2.53 万台の販

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売実績があり、中国国内トップである。充電インフラにおいても 1.5 万台以上のパイルが

設置済みだという。

中国汽車工業協会の何鵬技術部主任からは「中国製造 2025」における、自動車産業発展

のロードマップの紹介があり、インテリジェントカーやコネクテッドカーを含めた省エ

ネ・新エネ車の発展ビジョンを示した。新エネ車は、2020~2025 年に乗用車の燃費を

4L/100km、2025 年~2030 年に 3.2L/100km まで低減させ、PHEV、EV、FCEV の市場と規

模、また完成車の技術レベルや重要部品の国産化など明確な目標が示された。

視察活動他について

分科会終了後、トヨタ自動車、日産自動車を訪問した。

トヨタ自動車 MEGA WEB では、水素燃料電池車「MIRAI」をはじめ、PHEV、FCEV を

試乗したほか、実証中の都市交通システム「i road」のデモ走行、また、都内イワタニ水素

ステーション芝公園を視察した。

同社は「環境チャレンジ 2050」という目標のもと、次世代自動車の研究開発の重点を示

しつつ、中国側との協力に意欲を示した。

また、日産自動車への視察は、追浜工場のアセンブリラインを始め、日産先進技術開発

センターまでに案内された。

日産は、EV 車の代表格である「LEAF」を取り上げながら、これまでの取り組みを紹介

した後、現在研究開発中の新型動力電池及び自動運転システムの開発状況を中心に説明さ

れた。環境対策については、中古電池「4R(前出参考)システム」を実験所でデモの状況

を見せた。

この他、企業交流の拡大を図るため、(株)日本電動化研究所の和田憲一郎社長を招い

て、日中双方の自動車産業に直面する課題などについて意見交換が行われた。

④循環経済(资源循环利用体制构建及推进措施)分科会

日中の資源循環社会建設への成果と課題

循環経済分科会は 14 時から「さくら」の間で開催され、日本側が最終的に 38 名、中国

側 34 名、計 72 名の参加を得た。

本分科会では、日中両国政府から、循環型社会建設に向けた法的整備と当面の政策的課

題が紹介されたほか、日中双方の地方自治体、学術研究部門、民間企業から具体的な取組

事例・成果・課題が報告された。

開会挨拶において深瀬聡之経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課長は、「本分科

会は日中双方の循環経済の構築を巡る問題について相互認識を深めることを目的とし、先

進的な相互協力の取組み事例を紹介いただく。今回初めて学術研究セッションを設けたこ

とは意義がある。中国が「新常態」へ向かうなか、循環経済への転換は非常に重要で、当

該分野の制度、政策、経験、技術の交流が深まることを期待する」と述べた。

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陸冬森国家発展改革委員会資源節約環境保護司循環処長は、「日本側との多重的な交流

で、より多くのビジネスチャンスを見い出し、将来的には中国市場のみならず、第三国市

場での相互協力を推進したい。全体会議で高木経産副大臣が述べたように、今後は旧来の

理念の交流から実務ベースの交流へとシフトする必要がある」と述べた。

◆中国における循環型経済の現状と課題

中国における循環型経済の概念の導入は 2005 年で、その後、制度面の整備と産業化の

育成を行ってきた。2009 年の「循環型経済促進法」は、循環型経済を「回収物の減量化、

再利用、資源化の総称」と定義した。日本では廃棄物規制及び適正処理の次の段階として

3R 政策が推進されたが、中国では当初より回収資源の産業的再利用が政策の軸に据えられ

てきた。鉄鋼・電力・建築・農業等の重点産業での回収資源再生システムの形成、「都市

鉱山」建設と「静脈型産業」育成の結果、2014 年の中国の回収資源価値は 6,400 億人民元

(約 12 兆円)に達する。

回収再生の軸としての固形廃棄物事業の現状は、○重点産業、工業団地、生活廃棄物の

循環モデル事業が形成中。○インターネットと融合した回収事業の発展が顕著で、新しい

回収モデルが次々と成立。○2014 年の回収(2.45 億トン、6,400 億元)のうち、数量、金

額とも約半分がくず鉄で、電気製品、自動車の回収は毎年 10%の成長だが、金額的にはま

だ各々70~80 億元程度。○タイヤ、非鉄等の個別の廃棄物の発生源が一部の特定の地域に

集中。○一部の大手を除けば、小規模回収業者が多く、統合再編と技術の向上が不可欠、

等である。

さらに、解決すべき制度面の課題も報告の中で提起された。

(1)中国では環境保護の法整備は進んだが、資源再利用の法整備が相対的に遅れ、よ

り詳細な総合法及び業種・産業に対応する個別法の整備が急務である。

(2)廃棄物回収を規定する法律が 2007 年の「再生資源回収利用弁法」のみで、再生

資源の生産利用を促進する法体系が未整備である。生産、販売、消費段階の責任分担もあ

いまいで、生産者拡大責任制が徹底していない。

(3)産業廃棄物発生源の地域性に合わせ、省レベルでの法令整備と政策の整合性も必

要となる。

(4)初期資源と廃棄物排出のコストが相対的に安いため、循環型資源利用のコスト的

メリットが小さく、利用が進まない。その解決手法として、有効な補助金制度に強い関心

がある。

(5)技術的に未解決の分野や産業技術の普及が不十分な地域への、技術的イノベーシ

ョンと普及が喫緊の課題であり、その一つとして日本からの技術導入に期待する。

◆循環型経済発展への政策的措置

中国では、「13・5」期間中に経済の「新常態」に移行する。しかし年平均約 7%という

中高度成長下で、従来型の発展方式の慣性力は引き続き資源消費や環境汚染を激化させう

る。循環経済への転換は中国の社会・経済発展のための不可欠な要素である、との報告が

あった。

このため、循環型経済発展は 2016 年から始まる「十三・五」の重要課題として位置付

けられ、さらに最近の 5 中全会では、「グリーンで低炭素の循環型発展の産業的システム

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作り」が国策として明記された。その政策大綱として、「循環型経済発展の牽引計画(2016-

2020)」が準備中で、その内容は、重点産業・工業地区の循環型改造、資源の循環率向上、

地域社会の循環性向上、固形廃棄物の総合利用率向上等である。また、生産者拡大責任制

の着実な実施と、企業地域レベルでの循環経済評価システムの構築も重要である。

政策的指導だけでなく、工業農業各方面で財政的な動員も行う。再生原料、再造製品に

は制度的に財政税制補助を行い、優遇していくことが重要である。

その中で中国が日本に学ぶべきことは多い。日本では縦方向、横方向に分野をまたがる

総合的な法制度や政策が実施されており、これは中国でも是非取り入れたい。また、日本

は廃棄物排出規制による環境汚染防止に重点を置き、中国は廃棄物の無害化と資源化再利

用に重点を置くが、相互補完で良い協力モデルを形成したいとの発言があった。

◆その他セッションの報告

分科会の地方自治体セッションでは、北九州市が中国、韓国の諸都市と共同展開する環

黄海循環経済圏を紹介し、大連市は日韓両国と展開する新型工業団地である中日韓循環経

済モデル地区を紹介した。

学術研究セッションでは、神戸大学からは、アジアにおける生産者拡大責任制(EPR-

Asia)展開の説明があった。一方、上海同済大学からは従来型の資源消費型産業から資源

循環の生態型産業への構造転換と国際協力の重要性が提起された。

企業セッションでは、東邦亜鉛が大連国家生態工業モデル地区での電炉からの亜鉛回収

事業を、リーテムが天津経済技術開発区での資源循環型協力事業の説明を行った。一方、

中国の民間企業で、家電など電子系廃棄物の大手の格林美(GEM)社は、電池、家電、自

動車等の付加価値の高い固形廃棄物の回収で中部南部を中心に事業網を拡げ、当社が 2003

年に打ち出した「資源は有限、リサイクルは無限」というキャッチフレーズは中国で広く

浸透している。

なお、分科会開始前のパネル展示の場で、中国側が強く関心を持っていたのは土壌汚染

中の六価クロムの無害化技術であった。

深瀬課長はまとめで、○日中双方から最新の取組みを聞けて、非常に有意義であった、

こういった政府、自治体、学術、企業の重層的な取組みが中国の循環経済化の推進に一層

の貢献をなすと思う。○資源という観点が非常に重要で、中長期的には資源は次第に厳し

くなり、資源生産性という観点が必要不可欠になる。○こうした直接の情報交換の場は非

常に有意義である、来年以後も引き続きこうした会合を期待したいと述べた。

陸処長は、○循環経済への双方の交流が理念の交流にとどまらず、政策、技術、設備等

多様な分野で商業モデルの構築や事業の実施等具体的な交流が深まっていると感じた。○

企業の資源利用に対する評価システムの構築、金融面での支援も必要だ。○このフォーラ

ムというプラットフォームを通じ、より多くの日本企業が中国へ進出することを期待する

と述べた。

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◆地方視察での成果

フォーラム終了後の地方視察では、札幌市リサイクル団地のペットボトルの回収再生に

よるシート製造を視察した。また、リサイクル団地の資料館では廃油や建築廃材の回収再

利用に強い関心が示されていた。

このほか、自動車や家電製品の回収再生を行うマテック社を訪問。中国側は、廃自動車

から回収した中古部品の販売事業を高く評価していた。

⑤石炭火力発電(洁净煤技术和煤炭火力发电)分科会

石炭火力発電所の省エネ環境技術における日中間のビジネス協力に向けて

石炭火力発電分科会は、日中両国政府関係者、業界団体及び電力企業や省エネ環境関連

設備メーカーが約 90 名参加し、今回もフォーラム分科会の一つとして開催された。

開催背景として、日本政府は、本年 7 月、2030 年のエネルギーミックスを策定した。そ

の中で、石炭は、安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源の燃料として再評

価されている。

また、中国においても、2016 年から「13・5」計画の開始にあたり、エネルギー源とし

ての石炭の重要性は引き続き高い一方で、深刻な大気汚染源の 1 つである石炭のエネルギ

ー源としての比率を少しずつ下げていく努力と共に、更なる有効利用や高効率かつ環境に

配慮したクリーン・コール・テクノロジー及び発生する大気汚染物質抑制対策のための環

境設備への関心は高いのが現状である。

こうした背景のもと、今次分科会では、共同議長(モデレーター)を、日本側は経済産

業省資源エネルギー庁長官官房総合政策課の塚田裕之企画官、中国側は、国家能源局電力

司・韓水司長の名代として、国家能源局電力規劃センター副主任・電力規劃設計総院の謝

秋野院長が務め、日中両国における石炭火力発電分野の環境総合対策の現状と課題、関連

技術の最新研究開発動向や日本企業の中国展開等について政府、業界団体、企業から紹介

をし、意見交換を行った。

塚田企画官からは「双方の官民協力により、戦略的互恵関係を構築が重要」との挨拶に

対し、謝院長は「日中双方で石炭火力発電のクリーン化に取り組むことは非常に重要。更

なる協力強化を期待する」と述べられた。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)環境部の在間信之統括研究員からは日

本のクリーン・コール・テクノロジーや実証実験の現状を踏まえ、日本における石炭火力

発電分野の技術研究開発と国際協力の現状、今後の技術展開について、説明があった。

続いて、国家能源局電力司を代表して、国家能源局電力規劃センター・電力規劃設計総

院の高陽高級工程師からは、「13・5」計画に向けた石炭火力発電分野の高効率化発展状況

について紹介された。要旨は下記の通り。

【中国のエネルギー概況と石炭火力発電に関する政策と今後の動向】

世界最大のエネルギー消費国である中国では、石炭はエネルギー消費の約 66%を占め

る。目下、この比率を下げるべく、再生可能エネルギー等の技術開発と利用促進を掲げて

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いる。2020 年までにエネルギー構造のうち、石炭の割合を 62%に削減する見込みであ

る。

また、火力発電ユニット数世界一である中国では、石炭消費比率のうち、石炭火力発電

が 50.6%を占めることから、石炭消費量と大気汚染物質の抑制という観点から、石炭火力

発電分野における石炭の有効利用技術と環境対策が非常に重要であることがわかる。

2014 年から開始されている「2020 年エネルギー発電戦略の行動計画」では、全体方針

として「資源節約・クリーン化・安全」の目標に向かって、現在、石炭火力発電技術の研

究開発等を強力に推進し、2020 年までに、高効率化、石炭液化・ガス化プロジェクトの安

定実施等を達成することを目指している。

【技術研究開発の方向性と今後】

① 発電効率の向上

例えば、既存火力発電ユニットの発電効率向上、コジェネレーションシステム等の併

設、燃料電池等を活用した省エネ発電の実施等

② 新技術の研究開発(超々臨界発電、IGCC、IGFC、CCS 等)

続いて、日本企業を代表して、三菱日立パワーシステムズ・浙江菲達菱立高性能烟気浄

化系統工程有限公司の豊原正隆副総経理より、火力発電設備における排煙処理技術

(AQCS、脱硝/水銀除去技術)について、大崎クールジェン(株)の相曽健司代表取締役副

社長より、大崎クールジェン酸素吹 IGCC 実証プロジェクトの概要と進捗状況について、

新日鐵住金エンジニアリング(株)エネルギー・クリーンコール事業推進部の水野正孝ジェ

ネラルマネージャーより、CCT(CDQ や石炭ガス化技術)の海外展開についてについて、

業界団体を代表して、石炭エネルギーセンター(JCOAL)の塚本修理事長より、CCT の日

中間ビジネスベースの協力についてご紹介があった。

これに対し、中国側は、中国電力企業聯合会の魏昭峰常務副理事長より、中国電力工業

発展の現状と石炭需給への影響について、国家能源局電力規劃センター・電力規劃設計総

院の董博高級工程師より、中国の石炭火力発電クリーン発展の研究について、中国企業を

代表して、華能集団科技環保部の趙毅主任より、温室効果ガス排出削減と CCT の推進につ

いて、中国神華能源集団国華電力分公司節能環保部の胡殿儒業務経理から、国華電力の石

炭火力クリーン発電の実践について紹介があった。

質疑応答では、限られた時間の中で、日中双方の発表内容に焦点を当てた質問が相次

ぎ、活発な意見交換となった。中国側の総括として、魏副理事長からも「日本側は、IGCC

や石炭ガス化技術等の研究開発では中国より先進的。日中双方が協力できる分野は多く、

更に交流促進ができれば」と期待が寄せられた。

なお、地方視察では、徳島県にある電源開発(株)橘湾火力発電所、福岡県にある九州大

学次世代燃料電池産学連携研究センター・水素エネルギー国際研究センターを訪問し、分

科会での講演内容を踏まえた現場視察を行った。各所での意見交換では、発電所の環境設

備の運転状況やコスト、燃料電池の研究開発動向について、時間が不足するほど熱心な質

問が中国側から寄せられた。

当フォーラムも 9 回目を迎え、内容も成熟度を増しており、また、日中両国の技術レベ

ルが、一部の分野では肉薄し、第三国の国際競争入札にてコンペティター関係となってい

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る。一方で、日本企業に優位性のある高効率発電技術や環境対策設備、経験に基づいた運

転ノウハウ等については、コスト競争力、知財権保護などの課題はあるが、中国側の関心

が高いことからビジネスベースでの協力が見込めると感じた。

日中関係の改善が見られる中、日中両国における産官学での意見交換・技術交流を更に

促進しながら、個別企業間のビジネスベースでのプロジェクトをどのように醸成していく

か。同時に、両国政府や業界団体等の支援を得ながら、様々な課題を克服する対話メカニ

ズムを多層的に構築し、技術交流等を日中共同で行うことを通じて、世界に向けて石炭の

高効率利用と日本企業の先進的な環境対策設備の普及が可能になるのではないだろうか。

⑥日中長期貿易(中日长期贸易)分科会

自動車リサイクルや汚水汚泥処理分野における日中間のビジネス協力に向けて

日中両国の長期貿易協議委員会の省エネ等技術交流促進部会(日本側事務局は日中経済

協会、中国側事務局は商務部対外貿易司に設置)は、省エネ・環境ビジネス支援・促進の

場として、2006 年(第 1 回フォーラム)以来、分科会の形で毎回定期交流を行っている。

第 9 回目となる今回は、日本側 71 人、中国側 37 人の計 108 人が参加した。

今次分科会は、従来より当分科会で議論されてきた「自動車リサイクル(第 1 部)」と

「汚水汚泥処理(第 2 部)」の 2 テーマ構成で実施した。

冒頭、日本側代表の省エネ等技術交流促進部会の村山部会長は、「中高速成長が中国経

済の「新常態」として全面的な改革深化を図っており、日本を含めた世界の企業は、それ

を踏まえた戦略が求められている。商務部と意見交換を図りつつ、時代のニーズを踏まえ

た協力モデルを考えたい。」と述べ、中国側代表の商務部対外貿易司の周恵商務参事官

は、「本分科会をプラットフォームに、これまで 18 の協力プロジェクトが合意され、着実

に成果を挙げてきている。今後も更なる協力案件の形成に期待」と述べた。

中古車市場の規範化と自動車リサイクル(第1部)

経済産業省製造産業局自動課自動車リサイクル室の保坂室長は、日本で 2005 年に成立

した自動車リサイクル法を中心に政府の取り組みを紹介した。

商務部肖処長は、中国の使用済自動車の回収・解体業界の発展状況について紹介した。

使用済自動車の回収・解体産業は、中国で省エネルギー、環境保護、グリーン発展、循環

経済を促進する上で重要な切り口となっている。中国政府は関連政策・基準を相次いで公

布し、老朽車の淘汰に注力し、使用済自動車の回収・解体業界の整備に努めている。長年

の高度成長に伴い、中国の自動車市場は保有台数・販売台数ともに増加し、2014 年の全国

の使用済自動車の回収量は 206.6 万台(前年比 43.9%増)と急激に成長している。しかし

ながら、業界全体の技術レベルは低く、地域差が著しい等の問題も残る。政府は 2015 年

に改定した「外商投資産業指導目録」に使用済自動車の回収・解体業を織り込み、先進的

な外国の経験・技術の導入に積極姿勢を見せている。

中国汽車技術研究中心黎部長は、自動車リサイクル業界の視点から見た課題等について

紹介した。中国の使用済自動車の回収・解体業界はここ数年急速成長を遂げているが、時

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代や環境に見合った政策法規が不備である点、業界構造の問題、次世代車両への対応等、

多くの課題を抱えている。健全で持続可能な成長を遂げていく為には、①政府が関連の政

策法規及び基準の改善や、安全・環境保護面で規範化と管理を行うこと。また、合理的な

税制を施行し、公平な競争環境を作ること。②資源統合と最適化による再編を行い、経営

の集約化を促進すること。③生産者責任制度を実行し、上流~下流企業の協力を促進する

ことなどが求められる。

日本側企業からは、「使用済自動車の回収・解体」、「中古車市場」、「リサイクル部品の

流通プラットフォーム」のそれぞれの角度からプレゼンが実施され、静脈産業を包括する

充実した内容となった。

啓愛社榛葉常務執行役員は、全国に展開している 8 つのリサイクル工場と業務フローを

紹介した。そのほか、「エアバック回収・処理ネットワーク」、「市場交換バンパー回収」、

「エンジンクラッシング」の工程について説明を行い、「今後も自動車の解体精度とリサ

イクル率を高めていきたい」と述べた。

トヨタ自動車平山室長は、日本の中古車マーケットの概要、同社の日本での中古車ビジ

ネスの取り組みを紹介した。

ブロードリーフ羽生執行役員からは、同社のリサイクル部品流通プラットフォームと中

国事業について紹介があった。

整備工場、部品商、中古車販売事業者、リサイクル工場、オートリース会社等の自動車

アフターマーケット業界に様々な IT ソリューションを提供しており、2012 年に中国に現

地法人を設立している。中国においても様々な IT ソリューションを提供し、自動車リサイ

クル部品流通プラットフォーム事業を通じ、同業界発展に貢献したいと述べた。

汚水汚泥処理(第2部)

北控水務集団杭世珺執行董事は、「13・5」計画を睨み、都市の汚水処理場のグレードア

ップ改造の要点を説明した。

【計画の方向性】

1.汚水処理場の建設

①建設の重点を西部地区へシフトする。

②県級、地級市、小都市では汚水処理場の新設を主とし、36 箇所の重点都市では改造を主

とする。

③都市と農村の発展はアンバランス。今後は人口が集中し環境に敏感な小都市が新興市場

となる。

2.汚水汚泥処理処置

30~50 万人以上の都市では、汚泥の安定化、無害化処理を実現し、徐々に資源化も実現

していく。

3.都市の悪臭廃水の浄化を促進する。

4.エネルギー消費と温室ガスの排出を削減する。

【グレードアップ改造の原則】

1.優先的に運行管理の改善を検討する。

2.出来る限り、既存の施設や設備を利用する。

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3.新たなエネルギー消費の増加を制御する。

4.十分に信頼できる水質データを取得する。

中節能博実(湖北)銭鳴総経理は、第 4 回フォーラム以来、5 度目の発表となる。銭総

経理は、中国の汚泥処理の現状と日中間の企業協力について紹介した。中国では 2014 年

末時点で 3717 箇所の汚水処理場が稼動しており、処理規模 1.57 億トン超、汚泥量は急増

している。2015 年には全国の脱水汚泥量は約 4,000 万トン、市場規模 170 億元、年平均増

加率 20%超だが、安定化処理施設は「12・5」計画の目標未達である。同社は巴工業や大

川原製作所、JFE エンジニアリングを含め、海外企業との協力等を通じ、更に中国汚泥処

理産業を発展させると述べた。

日本側は、ウォーターエージェンシー、大川原製作所、日東電工の三社がプレゼンを行

った。

ウォーターエージェンシー岡野谷常務執行役員から、同社の水質自動制御システムの開

発経緯につき説明があった後、湛研究開発部長から技術的説明を行った。同社の水質自動

制御システムは、20 箇所近くの導入実績がある。

大川原製作所童琳氏は、汚泥資源化技術に不可欠な乾燥技術及び焼却技術について紹介

した。同社は茶葉の乾燥技術にはじまり、長年にわたる技術・ノウハウの蓄積を通じ、汚

泥の堆肥・乾燥・焼却・炭化・バイオマス燃料等の利用を提案しており、2012 年には中節

能博実(湖北)に汚泥乾燥の技術指導・製造販売契約を締結している。中国ビジネスで

は、技術のみならず、良きビジネスパートナー選びの重要性を強調した。

最後に日東電工からは、高柳執行役員によるグループ全体概要の紹介に続き、同社池窪

課長から、水処理膜事業の説明があった。同社は 1973 年から水処理膜事業に着手し、RO

膜を中心に各種膜製品製造しており、2002 年には上海で生産開始し、2006 年には世界最

高レベルの脱塩率を誇る RO 膜エレメント「PROC10」を、2009 年に省エネ型超低圧 RO

膜エレメント「PROC20」を販売開始し、水問題や環境保護への意識が高まる中国で、需

要が大きく伸び続けている。

分科会後、中国側メンバーは、自動車リサイクル組、汚水汚泥処理チーム分かれ、地方

を視察した。自動車リサイクル組は、会宝産業(株)、トヨタメトロジック(株)、(株)CRS 埼

玉を訪問した。汚水汚泥処理チームは、珠洲市浄化センター、東京都森ケ崎水再生センタ

ー、東京都南部スラッジプラントを訪問し、積極的な交流を図った。

今後の協力案件の形成に期待して

今回の日中長期貿易分科会は、前年度と同様に経済産業省、商務部から最新の制度紹介

があり、各企業からは日中間の協力プロジェクトの紹介を含めつつ、具体的技術・設備に

ついてプレゼンを行うなど、ビジネス実態に根ざした交流となった。時代や環境のニーズ

を踏まえつつ今後の交流のあり方を検討し、本分科会での交流がビジネス醸成の契機とな

るよう努めていきたい。

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(3)調印プロジェクト 26件の概要

今回のフォーラムでは、新規 26 件の日中間の協力プロジェクトについて合意文書の交

換が行われ、過去を含めた本フォーラムで合意した協力プロジェクトは累計 285 件に達し

た。

フォーラム前日の 11 月 28 には、協力プロジェクト調印式が行われ、10 件のプロジェク

トが、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課の吉川徹志課長、国家発展

和改革委員会資源節約環境保護司総合協調指導処王静波処長の立会いの下で実施された。

吉川課長は「調印される協力プロジェクトの内容は、IoT を活用した省エネや、廃棄物

リサイクル分野に関する協力など、先端技術分野も含め、中国の現状に則した日中間の協

力が多く進められている。また、これまで締結された協力プロジェクトを発展させて今回

新たに協力プロジェクトを調印している案件もある。これは、本フォーラムを通じた日中

協力が進展している証と考える。プロジェクトの目標が達成されるよう日中双方で推進し

ていきたい」との冒頭挨拶があった。

王処長からは「フォーラムにおける省エネ・環境分野のプロジェクト調印は、中日双方

の実務的な協力に不可欠であり、同時に本フォーラムの成果の表れの1つである。過去 8

回フォーラムにおいて調印された 259 件のプロジェクトの多くは、その後も大きな成果を

あげているが課題に直面している事例もある。中国は経済産業省と共に、プロジェクトの

進捗をフォローし、課題のあるプロジェクトに対しては、日中共に解決向けて取り組みた

い」との意思が表明された。

第 9 回日中省エネルギー・環境総合フォーラムにおける省エネルギー・環境分野におけ

る日中間の協力プロジェクト

(1)中国建設廃棄物リサイクル率の向上に寄与する資源再生化技術の導入

日本側:上海住友商事有限公司、住友商事(中国)有限公司

中国側:江蘇武進緑和環保建材科技有限公司、常州市武進緑色建築産業集聚示範区委員会

中国では年々増加する建設廃棄物の埋め立て処分量および不法投棄量の問題を背景に、

高度な建設廃棄物の再資源化技術の導入需要が高まっている。常州市政府が建設廃棄物リ

サイクル事業のモデル企業に指定している江蘇武進緑和環保建材科技有限公司と、上海住

友商事有限公司は、日本の建設廃棄物の再資源化技術及びシステムの導入に向けた取組に

関する協力合意書を締結する。

(2)表面処理業における簡易計測センサーを活用した効率的排水管理システム

日本側:オプテックス株式会社、株式会社共立理化学研究所

中国側:常州大学

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重金属等の有害物質が含まれる表面処理業の排水による汚染が深刻な問題となってい

る。現在、水質測定には高額な分析装置が必要であり、また、現地での測定が困難な状態

であるため、現地で測定可能となる水質測定試薬、簡易計測センサー及びデータ管理サー

ビスを活用した効率的排水管理システムについて、表面処理分野で専門性を有する常州大

学と協力し、同システムの評価を実施するとともに、中国市場向けのサービスを構築す

る。

(3)スマートシティ分野における共同研究等フレームワーク協力プロジェクト

日本側:日本テピア株式会社、NPO アジア建設技術交流促進会

中国側:中城智慧(北京)城市規劃設計研究院

本協力プロジェクトでは三者間で次の活動を実施する。a.スマートシティ、都市・社会

の統制・管理、建物の安全制御、省エネ・環境配慮型建物及び関連テーマに関する研究を

行い、関連論文と出版物を発行する。b.国際的なベンチマーク研究、比較研究を行い、ス

マートシティに関する理論体系と実践活動の事例を構築する。c.実践ベースのトレーニン

グプログラムとエキスパートワークショップを開催し、ナレッジ移転と交流のためのプラ

ットフォームを整備する。

(4)山東省蓬莱市雨山における「仙境雨泉水素水」の環境配慮型一貫生産プラントの導

入及び水ビジネス関連工場の建設に関する覚書

日本側:AMEC株式会社

中国側:蓬莱国立生物科技有限公司

山東省蓬莱市の南端に位置する雨山は森林に囲まれ、水質基準の高い純天然ミネラル水

を豊富に有している。同水源を活用し、安全で安心な健康に良い「仙境雨泉水素水」の製

造・販売に向けた日本の技術に基づく環境配慮型一貫生産プラントを導入するとともに、

工業用造成予定地2万坪に水ビジネス関連工場を建設する。

(5)ダイオキシン類科楽世®生物検定法迅速分析の能力構築協力

日本側:株式会社日吉

中国側:北京雪廸龍科技股份有限公司

急速な経済成長に伴いダイオキシンの問題が深刻となっている中国において、長年にわ

たり生物検定法の経験と実績を有する日吉は、北京雪廸龍科技股份に対し、迅速、安価、

正確なダイオキシン生物検定測定法の能力構築協力を実施することにより、中国のダイオ

キシン汚染対策に寄与するとともに、同分野におけるビジネス展開を図る。

(6)株式会社日立製作所、日立(中国)有限公司と蘇州太谷電力股份有限公司との電力需

要側管理システム(DSM)及び関連システムの構築に関するモデル事業の推進に関する協

力覚書

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26

日本側:株式会社日立製作所、日立(中国)有限公司

中国側:蘇州太谷電力股份有限公司

国家発展改革委員会及び蘇州市人民政府と日立の覚書に基づき、蘇州市他で電力需要家

側管理システムの運用実績を有する太谷電力と EMS 技術を有する日立とのパートナーシ

ップを構築し、更なる技術交流により、電力需要側管理システムとエネルギーマネジメン

トシステムを活用したモデル事業の推進を行う。

(7)中国電子商会及び株式会社日立製作所、日立(中国)有限公司のグリーン製造に関す

るモデル事業の展開に関する協力覚書

日本側:株式会社日立製作所、日立(中国)有限公司

中国側:中国電子商会

「中国製造 2025」の戦略目標の一つである「グリーン製造」に関し、グリーン製造に係

るモデル事業の創出を目指し、技術交流、モデル事業の実施・展開、人材育成等の活動を

共同で推進する。実施にあたっては、双方から成るワーキンググループを組成し、定期的

に進捗会議を実施する。

(8)VOC 対策に関する協力協定書

日本側:株式会社日立製作所インフラシステム社、日立(中国)有限公司

中国側:河北先河正源環境治理技術有限公司

大気汚染対策として厳しくなる VOC 排出規制値の遵守と排出企業側の負担を軽減する

省エネ・高効率な VOC 処理設備の中国市場展開に向けて、先河正源正源環境治理技術と

日立は共同で新たな協業事業の検討及び評価を実施する。

(9)“IOT+製造業サービス転換”技術創新に関する連携合意書

日本側:株式会社日立製作所研究開発グループ、日立(中国)研究開発有限公司、日立

(中国)有限公司

中国側:中国電子商会

日立製作所及び中国工業情報化部が締結した「中国製造 2025」分野における基本合意に

基づき、日立と中国電子商会は、「IOT+製造業のサービス化転換」をテーマとして、

IOT、ビッグデータ解析、シミュレーション、スマートサプライチェーン等の先端的な技

術の研究開発と活用による、スマート製造、グリーン製造分野の共同技術イノベーション

の推進に関する協力意向書を締結する。

(10)日本の省エネ・環境技術の中国市場普及に向けた協力プラットフォーム事業

日本側:日中環境協力支援センター有限会社

中国側:中日企業連誼会、曹妃甸工業区日中韓循環経済モデル地区管理

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27

日中環境協力支援センター、中日韓経済発展協会、中日企業連誼会及び曹妃甸工業区日

中韓循環経済モデル地区の連携により、日本の省エネ・環境技術の中国市場での普及を支

援する。具体的には、座談会・技術交流会等を実施し、有力企業とのマッチングを行う。

中国側が中国企業の信用保証、事務・製造・展示などの拠点を提供し、日本側が技術・業

務コンサルを行う。

(11)日中土壌浄化技術プラットフォーム及び化学物質管理コンサルティング事業

日本側:日中環境協力支援センター有限会社

中国側:北京正智遠東化工信息諮詢有限公司

日本企業が有する汚染土壌調査・汚染土壌浄化・土壌リスク評価等の技術を中国市場で

普及するためのプラットフォームを構築する。また、日本企業が中国で化学品・化粧品・

食品関係の事業を実施するにあたり、必要な法定試験、認証、登記・許可証手続きの支援

を行う。

(12)中国城市・小城鎮改革発展中心と日中経済協会との「スマートシティ等協力推

進」に関する覚書

日本側:一般財団法人日中経済協会

中国側:中国城市・小城鎮改革発展中心

スマートシティを中心とする新型都市化分野において、日中両国の経済界の協力構築に

向けた支援のため、交流機会を提供し、実務協力を促進する。

(13)日本国関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進フォーラムと中華人民共和国

遼寧省環境保護産業協会との環境と省エネ分野におけるビジネス交流促進のための覚書調

日本側:関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進フォーラム

中国側:遼寧省環境保護産業協会

アジアでのビジネス展開を指向する企業・団体で構成されるフォーラムである関西・ア

ジア 環境・省エネビジネス交流推進フォーラムと、遼寧省環境保護庁傘下で環境保護産

業を代表する法人である遼寧省環境保護産業協会は、2011 年より実施しているビジネス交

流を更に強化するため、新たに覚書を締結する。

(14)日本国省エネルギーセンター及び中国国家省エネルギーセンター間の協力覚書の

有効期間延長に関する合意書

日本側:一般財団法人省エネルギーセンター

中国側:国家節能中心

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省エネ政策の実施促進や両国の省エネ事業の発展を推進するため、柔軟かつ包括的な協

力フレームワークを基盤として、既存の成果や経験を活かして、中国における省エネ法の

改正に関する協力、中国各地の地方政府関係者に向けた省エネ制度及び技術に関する人材

育成事業、日中両国における省エネ比較研究を実施する。

(15)固体高分子形燃料電池の物質輸送メカニズム検討

日本側:株式会社東芝

中国側:清華大学

水素と空気との電気化学反応を利用した究極のクリーン発電機である固体高分子形燃料

電池は、コンパクトで発電効率が高く、排出物が水のみと環境に優しく、家庭定置用や自

動車用電源として実用化されている。本プロジェクトでは、燃料電池内部における水素、

水などの物質輸送メカニズムを分析し、燃料電池の発電特性の向上を図る。

(16)OHラジカル電極水処理技術の開発

日本側:株式会社東芝

中国側:清華大学

水環境汚染の原因物質の一つである化学物質などの難分解性物質の無害化に向けて、電

気分解で効率良く生成した過酸化水素と供給したオゾンとの反応で、強い酸化力を有する

OHラジカルを生成し、水処理を行うシステムを開発する。同システムの普及により、中

国の水環境保全に寄与することを目指す。

(17)省エネルギーと環境保護に関する共同研究

日本側:日本エヌ・ユー・エス株式会社

中国側:中節能咨詢有限公司

日揮グループと中国節能グループの協業体制を元に、双方のコンサル部門における協業

を推進するため、中国における省エネや環境保全分野の新規事業の創出を目的として、日

本の法規制の推移、中国の法規制の現状を調査し、各法規制に対応できる機器をリストア

ップし、中国における導入可能性について検討を行う。同検討結果を踏まえて、新規事業

を仮定し、その事業を推進するための体制についての共同研究を行う。共同研究では、新

規事業実施に関して障害となる規制や不明点を整理するとともに、その解決策も調査す

る。

(18)中国ガラス業界における省電力事業の実施

日本側:旭硝子(中国)投資有限公司

中国側:中国建材国際工程集団有限公司

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世界有数のガラスメーカーである旭硝子と中国建材グループ傘下の中国 NO1 のガラスプ

ラント・エンジニアリング会社である中国建材国際工程集団(CTIEC)は提携し、中国の

ガラスメーカー向けに電力・蒸気などのユーティリティー省エネルギー事業を実施する。

また、中国政府「一帯一路」戦略に従い、省エネ技術・サービスのグローバル展開を視野

に入れる。

(19)中国石炭火力発電所の環境改善及び効率向上に関する協議書

日本側:一般財団法人石炭エネルギーセンター

中国側:中国電力企業聯合会

中国電力企業聯合会と石炭エネルギーセンターは、石炭火力発電所の省エネ・環境改善

のための実効性のある日中企業間のビジネス協力の実現を目指し協力する。

(20)中国四川省宜賓市南渓区西部創業園分散型エネルギープロジェクト

日本側:丸紅株式会社

中国側:四川能投分布式能源有限公司

中国政府が推進する天然ガス分散型電源の方針の下、四川省宜賓市南渓区西部創業園に

おいて、天然ガスを使用してガスタービンで発電する際の排熱を利用して、蒸気、冷熱を

製造する天然ガス分散型システムの構築と運営を共同で実施し、中国の省エネルギー・環

境保護分野における天然ガス分散型電源の導入に関する協力を更に展開する。

(21)江蘇省沛県龍固産業園の低品位炭利用プロジェクトにおける効率向上及び環境対

策に係る協力

日本側:一般社団法人エネルギー・環境グローバルコンソーシアム

中国側:江蘇省沛県龍固産業園区委員会、江蘇天裕能源化学集団有限公司

江蘇省徐州市沛県龍固産業園における低品位炭利用プロジェクトの実施において、省エ

ネ対策及び環境対策に関する日本の技術の普及に向けて、現地視察も含め実施し、中規模

都市徐州市の低品位炭(高硫黄炭)活用の具体化に向けた検討を行う。

(22)ガス関連インフラの包括的協業の検討

日本側:丸紅株式会社

中国側:四川省能源投資集団有限責任公司

中国政府による省エネや CO2排出削減の目標達成に向けた石炭消費の抑制、クリーン

エネルギーの代替利用等のさまざまな取組を踏まえ、四川省能源投資集団と丸紅は、中国

におけるクリーンエネルギーの利用を促進するため、天然ガスバリューチェーン(輸送、

貯蔵、液化、CNG 等)の構築について共同で検討を行い、同分野での包括的協力を目指

す。

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(23)有機溶剤再生利用工場建設における合意書

日本側:豊田化学工業株式会社、株式会社 MIKI

中国側:江蘇省高郵市湖西新区経済発展局

近年、環境汚染を低減することに加えて企業のコスト負担を低減させる技術として注目

されている廃材再生利用技術に関し、豊田化学工業と MIKI は、江蘇省高郵市において、

豊田化学工業のリサイクルシステム技術を利用し、建物の取り壊しで発生する廃液を蒸留

して不純物を除去し有機溶剤を再利用可能とする工場を建設する。

(24)連続高速炭化装置に関する技術援助契約

日本側:巴工業株式会社

中国側:中節能博実(湖北)環境工程技術有限公司

連続高速炭化装置の研究、開発、製造、販売及び保守について日本国内で長年の経験を

有する巴工業は、中国の下水処理プロセスのエンジニアリングについて様々な経験を有し

ている中節能博実(湖北)環境工程技術と共同で、汚泥の減容化に最適な炭化装置の中国

の下水処理施設への展開推進を図る。

(25)乾式電気集塵機における協業基本合意

日本側:古河産機システムズ株式会社、富士電機(中国)有限公司

中国側:中鋁山東工程技術有限公司

アルミ焙焼炉排ガス処理プロセスにおいて、一般的な乾式電気集塵機より集塵効率が著

しく高く、排出口煤塵濃度が 10mg/m3N 以下でありながら、従来の製品と同等レベルの圧

力損失を実現したメタルメッシュ式乾式電気集塵機2基を導入する共同実証試験を実施す

るとともに、その後の協業関係形成について合意する。

(26)日中経済協会と中国国家発展改革委員会宏観経済研究院対外経済合作辦公室との

グリーン発展分野の経済・技術実務協力強化に関する覚書

日本側:一般財団法人日中経済協会

中国側:中国国家発展改革委員会宏観経済研究院

グリーン、循環経済の発展に資する都市化等、双方が認める分野での技術、人材交流等

の日中協力を強化するため、中国国家発展改革委員会宏観経済研究院対外経済合作辦公室

と日中経済協会は、各々の優位性の相互補完・互恵共存の原則に基づき、両国の政府、都

市、企業、機構等に裨益する、実効性のあるプラットフォームを構築し、協力プロジェク

トを発掘し育成する。

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(4)フォローアップ調査結果

2015 年 9 月調査

第 1 回案件

(5件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学

中国側

政府機関 2 1

団体

企業 2

大学・研究機関

第 2 回案件

(10件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学

中国側

政府機関 1 3

団体 3

企業 3

大学・研究機関

第 3 回案件

(19件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研

究機関

中国側

政府機関 2 3

団体 2 1

企業 11

大学・研究機関

第 4 回案件

(42件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研

究機関

中国側

政府機関 8 9

団体 6

企業 1 1 17

大学・研究機関

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第 5 回案件

(44件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研究

機関

中国側

政府機関 2 7

団体 2

企業 28

大学・研究機関 1 4

第 6 回案件

(51件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研究

機関

中国側

政府機関 3 6 8

団体 2

企業 4 21

大学・研究機関 1 6

第 7 回案件

(47件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研究

機関

中国側

政府機関 1 13

団体 2 1

企業 22

大学・研究機関 8

第 8 回案件

(41 件)

日本側

政府機関 団体 企業 大学・研

究機関

中国側

政府機関 4 6

団体 4 1

企業 17

大学・研究機関 1 8

企業間の案件数は、第 1 回が 2 件、第 2 回が 3 件、第 3 回が 11 件、第 4 回が 17 件、第

5 回は 28 件、第 6 回は 21 件、第 7 回は 22 件、第 8 回は 17 件と、第 5 回以降は 20 件前後

の横ばいで推移している。企業間の調印案件は、累計 122 件【全案件 259 件の約 50%】と

なっている。

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第 8 回では団体と政府機関、団体同士の案件数が増加傾向にあり(政府機関との調印案

件のうち、3 件が日中経済協会)、日立製作所と蘭州市・東莞市、日本アジア投資と常州市

武進区緑色建築産業集積モデル区など、中国の地方政府(モデル区も含む)が積極的に協

力事業に取り組んでいる。

日本企業と中国の大学・研究機関などの案件は第 7 回と同じ 8 件である。更に、日本企

業と中国の都市や開発区とその都市の有力企業との間での調印や、日本企業と大学・研究

機関との調印数が堅調である。多次・多層的な省エネ環境協力が進展している。{例;安

井建築設計事務所、パシフィックコンサルタンツ、三機工業と中国科学院上海高等研究院

(第 8 回案件)、オプテックス、共立理化学研究所-北京市城市排水観測総站有限公司(第

8 回案件)}

第 8 回では、日本の団体と中国政府(地方政府)や団体との調印案件が増加した。これ

は、第 7 回以降、フォーラムの開催が 2 年半中断したため、日中協力関係の確認や、ビジ

ネスの加速化のための省エネ・環境ビジネス支援・促進のための体制を再構築する必要を

日中双方が確認したものと思われる。今後、これらの合意に基づき、個々の企業間での協

力案件形成が加速化されることが期待される。

2.案件プロジェクトの地域別分類(地域が特定できないもの、多数あるものは除く)

※地域別 案件数

東部 135

中部 25

西部 20

東北部 34

合計 214

省市別

北京 44 安徽 10 重慶 5 遼寧 28

天津 20 山西 4 雲南 5 内蒙古 2

江蘇 18 河南 4 陝西 3 吉林 1

広東 13 湖北 5 青海 1 黒龍江 3

上海 11 江西 2 甘粛 2

浙江 12 新疆 1

山東 9 貴州 2

河北 6 四川 1

福建 2 合計 214

案件のサイトを地域別に分析すると、日本企業の進出が多い東部に集中する傾向がある

のが特徴で、開催回を重ねるごとに、中西部の案件も増えるなど、中国全土に拡大しつつ

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ある。東北部では遼寧省が突出しているが、大連市など沿海の先進都市の貢献によるもの

である。第 8 回では特定の地域に限定せず、横断的な協力を予定している案件が第 7 回よ

りも増加している。

3.調印案件の分野・属性分類

(1)分野

第 1 回から第 8 回までの調印案件全 259 件を分野別に分析すると、約半分が省エネルギ

ー関連、7%が再生可能エネルギー関連、40%が環境関連であり、省エネルギーと環境分

野の協力がバランス良く実施されていることが分かる。省エネルギー分野では工場省エ

ネ、民生省エネ関連といったエネルギーを多く消費する分野の協力が多く、中国政府が特

にエネルギー多消費産業の省エネルギー対策を推進していることが、同分野の取組に反映

されているものと考えられる。

工場省

エネ

16.6%

民生省

エネ

12.7%

発電所

省エネ

6.2%

その他

省エネ

15.1%

再エネ

6.9%

大気

4.6%

12.4%

泥・

ごみ

6.9%

土壌

1.9%

リサイ

クル

9.3%

温暖化

5.4%

ファン

1.9%

259案件の分類

工場省

エネ

15.6% 民生省エ

13.8%

発電所省

エネ

6.4%

その他省

エネ

15.1%

再エネ

6.4%

大気

3.2%

13.8%

汚泥・

ごみ

7.3%

土壌

0.5%

リサイク

9.6%

温暖化

6.0%

ファンド

2.3%

第1~7回案件の分類

工場省エ

15.9%

民生省エ

18.2%

発電所省

エネ

4.5%

その他省

エネ

13.6%

再エネ

9.1%

大気

6.8%

10.2%

汚泥・ご

5.7%

土壌

4.5%

リサイ

クル

6.8%

温暖化

3.4%

ファンド

1.1%

第7,8回案件の分類

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再生可能エネルギー、新エネルギー分野については回を重ねるにつれて着実な増加傾向

が見られる。

環境分野では水処理分野が最多、汚泥分野(下水汚泥処理・処置)を含めると、広義の

水環境対策の取組が多く実施されていると言える。土壌汚染の対策も近年協力が高まりつ

つある。資源リサイクルは中国循環経済志向の中、着実に増えている。大気汚染対策分野

は PM2.5 の社会問題顕在化による日本企業の技術への関心の高まりから近年は案件数が増

えている。

(2)属性

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

ファンド

投資

製品販売

合弁設立

実証事業

技術提供

共同調査・研究・開発

技術交流

枠組み

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調印案件をタイプ(属性)別に経年で案件数の推移を分析すると、回数を重ねるごとに事

業化に近い協力が増加していることが分かる。

具体的には、フォーラムの初期では専門家派遣や交流会の開催といった能力構築を主眼

とした技術交流が大きな割合を占めていたが、回を重ねるごとに、技術の移転等のビジネ

スを主体とした技術提供が大きな割合を占めるようになっている。また共同開発・研究も

着実に増加している。ビジネスを見据えて市場適合性を確認する実証事業は、第 5 回

(2010 年)以降一定数で推移している。これら研究開発、実証などの案件は、結果を踏ま

えて具体的な事業へ繋がることが期待されるため、継続的なフォローを行う必要がある。

枠組み22%

技術交流11%

共同調査・研

究・開発18%

技術提供18%

実証事業15%

合弁設立10%

製品販売3%

投資2%

ファンド1%

第1回~6回

枠組み21%

技術交流2%

共同調査・研

究・開発27%

技術提供24%

実証事業15%

合弁設立6%

製品販売3%

投資1%

ファンド1%

第7,8回

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一方、合弁会社の設立など直接投資案件は目立った増加はなく、省エネ・環境分野にお

ける有効なビジネスモデルの確立やビジネス習慣への習熟など、製造技術よりも市場環境

への適応が課題である可能性が考えられる。

4.フォローアップアンケート結果・分析

(1)回答率

全案件数 259

今回フォロ

ー必要と判

断した案件

158 今回フォロー

不要と判断し

た案件

101

全案件 259 件中、目標達成の案件は 100 件(うち、次の段階に進んでいる案件は 15

件)と全案件の 4 割。一方、途中で頓挫した案件は 79 件。

(2)頓挫の理由

頓挫の理由として、商業条件の理由を挙げたものが 56 件と大半を占めている。特に、

ビジネスモデルが双方で合意に達しないといったものが多く見られる一方、コストが中国

市場に適さないといったものや、市況が悪化してビジネスに繋がらなかったといった市場

環境の変化を要因とするものも存在した。日中関係に影響を受けたとするものが 6 件、政

策・制度によるものが 2 件あった。政策・制度上の理由として、許可取得に係るものが挙

げられた。

(3)法律・制度・基準等の問題

中国の制度(法

律、基準

中国の行政

制度

中国の入札

制度

知的財産権 その他 問題ない

30 18 14 8 18 58

注:回答数(120 件)中、複数回答を含む

回答数の内、中国の制度(法律、基準)がトップの 30 件。その内訳として、法整備がな

されていない(適用が不確定)との回答が多く、許認可・入札の複雑さが次に挙げられ

る。外資投資の規制が問題との回答もあった。

(4)日中関係がビジネスに影響しているか

ない それほど

ない

ある 非常にある どちらともい

えない

未回答・フォ

ロー不要

31 43 35 10 9 135

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「日中関係の影響が非常にある」、「ある」と回答した割合は約 3 割であり、昨年よりも約

2 割低下している。昨年 11 月の日中首脳会談が実現したことを契機に、日中関係は良好の

傾向に推移していることが背景にあり、担当者の実感にもそれが顕著に表れていると考え

られる。

(5)両国政府に対する要望(まとめ)

中国政府に対して

・法令順守、法整備、基準の制定

(例;省エネ環境設備設置の法令、VOC オンラインモニタリング測定の国家標準の制定な

ど)

・補助金、補助政策などの適用

・許認可の時間短縮、手続の簡素化

・積極的な日本技術の導入

日本政府に対して

・日本の省エネ・環境対策の強みが中国でより認知・採用されるために、さらなる官民の

共同取組みが必要。

・情報提供、ベンチャー企業などへの支援策

両国政府に対して

・資金、政策支援

ない12% それほど

ない16%

ある13%

非常にあ

る4%

どちらとも

いえない4%

未回答・

フォロー

不要51%

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(5)調印プロジェクトの成果の一例

日中省エネルギー・環境総合フォーラムでは、2006 年からこれまで 8 回開催してきてお

り、計 259 件の省エネルギー・環境分野における日中協力プロジェクトの調印文書が交換

された。

今回、近年、成功裏にビジネスに繋げておられるいくつかの調印プロジェクトについ

て、成功に至った要因等についてヒアリング調査を実施した。

ヒアリング結果から成功に繋がった要因としては主に次の点が挙げられる。

① 適切な技術や知識を有するパートナーの確保

② 技術内容及び同技術による効果の的確な理解

③ パートナーとの密な情報交換

④ 中国調達も含めたコスト競争力の強化

このように、先進的な技術・ソリューションの品質・信頼性や、中長期的な視点におけ

るコストを含めたトータルなメリットを、いかに中国側に理解されるかがビジネスに繋げ

るひとつの成功の鍵といえる。そのためには、双方の密なコミュニケーションが不可欠で

あり、信頼できるパートナー関係の構築が重要です。また、単に技術力が高いというだけ

ではなく、市場においてコスト面を含めた総合力での競争力を高める努力を行っていると

いうことも成功には必要な取り組みだと言える。

ここで紹介したプロジェクトは、いずれも日中双方が協力し、先に述べた努力を尽くさ

れたことにより、成功を収めている。まずは、適切なパートナーを獲得するためにも、本

フォーラムなど、日中双方の多くの関係者が一堂に会する機会を活用いただきたい。

これらの事例が、新たな日中協力プロジェクトの形成と、今後の皆様のビジネス活動の

一助となれば、幸甚である。

≪プロジェクト一覧≫

●第 6 回 No.3 佛山市向け汚泥乾燥プロジェクト

●第 6 回 No.8 上海市向け汚泥乾燥・焼却プロジェクト

日本側:月島機械株式会社

中国側:北京機電院高技術股份有限公司

●第 8 回 No.2 カーバイド炉からの溶融カーバイドの流し出し技術(RTM:Remote

Tapping Manipulator)の中国への技術協力及び技術許諾の契約締結

日本側:電気化学工業株式会社

中国側:中化国際株式有限公司

●第 8 回 No.6 深圳達実智能株式有限公司及び三菱 UFJ リース株式会社による省エネル

ギー事業を行う合弁会社設立に関する覚書

日本側:三菱 UFJ リース株式会社

中国側:深圳達実智能株式有限公司

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●第 8 回 No.34 水質分析の簡易化とデータ収集システムの評価

日本側:オプテックス株式会社、株式会社共立理化学研究所

中国側:北京市城市排水監測総站有限公司

●第 8 回 No.37 中国市場における下水汚泥乾燥システムに関する技術指導製造販売契約

日本側:株式会社大川原製作所

中国側:中節能博実(湖北)環境工程技術有限公司

■プロジェクト名

第 6 回 No.3 佛山市向け汚泥乾燥プロジェクト

第 6 回 No.8 上海市向け汚泥乾燥・焼却プロジェクト

◆調印企業・団体

日本側:月島機械株式会社(以下、TSK と略す)

中国側:北京機電院高技術股份有限公司(以下、BMEI と略す)

◆プロジェクト概要

○佛山市向け乾燥プロジェクト

佛山市緑電再生能源有限公司が実施する佛山市内の下水処理場で排出される汚泥の乾

燥・焼却処理

場建設に係る事業を共同で獲得する。

○上海市竹園処理場向け汚泥乾燥・焼却プロジェクト

上海市竹園下水処理場で排出される汚泥の乾燥・焼却処理場を共同で獲得することを目

的とする

◆プロジェクトの現状・成果

佛山市、上海市の両プロジェクトとも、TSK と BMEI が共同で応札し、成功裏に落札し

た。検収運転も終了し、現在順調に稼動。特に、上海市向けプロジェクト(竹園下水処理

場。世界銀行融資案件。)については、乾燥・焼却プロセスとして中国最大規模であり、

現在、見学者が相次いでいる。

◆過去直面した主な課題・問題点

入札に勝てるコストとプロセス品質・信頼性の両立

◆成功の要因

・TSK の乾燥・焼却に関する実績・技術ノウハウと、BMEI の総合エンジニアリング力

とプラントをまとめあげる力の融合

・技術人材の交流

・中国製造の積極的採用

・政府発注プロジェクトのため資金面での問題が発生しなかったこと

◆今後の目標・見通し

中国では汚泥処理は喫緊の課題であり、その深刻さは東部沿岸の都市部だけでなく、地

方の中核都市、中小都市へも広がっている。また、第 13 次 5 カ年計画においても、下水

処理、汚泥処理整備が掲げられており、上記の実績を踏まえ、更なるプロジェクト獲得を

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推進していく。従来の埋立て処理では、場所の確保、においの発生など衛生面で問題があ

ったが、当該プロジェクトを通し無害化処理され、大幅な減容だけでなく、資源利用が可

能となった。

佛山市向け汚泥乾燥プロジェクト 上海市向け汚泥乾燥・焼却プロジェクト

■プロジェクト名

第 8 回 No.2 カーバイド炉からの溶融カーバイドの流し出し技術(RTM:Remote

Tapping Manipulator)の中国への技術協力及び技術許諾の契約締結

◆調印企業・団体

日本側:電気化学工業株式会社

中国側:中化国際株式有限公司

◆プロジェクト概要

電気化学工業と中化国際は、カーバイド製造、塩ビ樹脂製造の環境、省エネおよび保

安・安全対策につながるカーバイド関連技術を中国に普及するため、電気化学工業が保有

する「カーバイド炉からの高温の溶融カーバイドを遠隔操作で流し出すための技術(RTM:

Remote Tapping Manipulator)」について、技術協力および技術許諾の契約を中化国際と締結

し、中化国際はカーバイドメーカーと契約することにより、技術移転、普及する事業を行

う。

◆プロジェクトの現状・成果の確認

RTM 技術の利用許諾を締結した中化国際株式有限公司を通じて、カーバイドメーカー1

社への RTM 設置が完了し、カーバイド炉 4 炉にて順調に稼働中。

◆過去直面した主な課題・問題点

本 RTM の導入により、火傷の危険性があり且つ重筋作業である炉前のタッピングの作

業環境が改善し、安全化、省力化、省エネルギー化が可能となるが、長期的に見てこれら

の効果が設備導入コストを遥かに凌駕することを、中国のカーバイドメーカーに理解し、

実感してもらうことが大きな課題であった。

◆成功の要因

電気化学工業の安全に対する姿勢、本技術開発の経緯を丁寧且つ詳細に説明し、実際に

現場を見学してもらうと共に、カーバイド製造に関する総合的な技術交流を行ったことに

より、RTM 導入のメリットに関する十分な理解が得られ、契約に成功した。

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また、中国での人件費高騰、作業環境の安全化が必須となりつつある社会的情勢も追い

風となった。

中化国際の関連企業である中化日本有限公司のコミュニケーション面での存在も大きか

った。

◆今後の目標・見通し

中国のカーバイド生産量は 25 百万トン/年以上(2014)と日本の約 100 倍あり、その

殆どが人力でタッピング作業を行っているため、大きな潜在市場が見込まれる。現在、2

社目以降での導入検討が進行中であり、将来的には、30 炉以上への設置を目指している。

今後、中国のカーバイド業界に、保安技術、環境技術、省力化、省エネルギー分野にて継

続的に貢献する。

RTM 導入前 RTM

■プロジェクト名

第 8 回 No.6 深圳達実智能株式有限公司及び三菱 UFJ リース株式会社による省エ

ネルギー事業を行う合弁会社設立に関する覚書

◆調印企業・団体

日本側:三菱 UFJ リース株式会社

中国側:深圳達実智能株式有限公司

◆プロジェクト概要

日中の大手 ESCO 事業者である三菱 UFJ リースと深圳達実智能株式有限公司は、両社を

メイン出資者として合弁 ESCO 会社の設立を検討し協議する。主に日系製造業工場および

商業施設に対し ESCO サービスを提供し、省エネルギー、コストダウン、二酸化炭素排出

量削減に貢献することを目指す。

◆プロジェクトの現状・成果の確認

2015 年 3 月に、三菱 UFJ リース株式会社、深圳達実智能股份有限公司、チャイリースグ

ループ(台湾系ノンバンク大手)の 3 社で合弁契約書を締結し、8 月、融智節能環保(深

圳)有限公司(日本名:DMC エネルギーマネジメントサービス(深圳))を設立。現在、

中国企業 1 社と ESCO 契約を締結し、年内さらに 5~6 件の契約確定を予定。株主 3 社の

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バックアップのもと、主に華南エリアに所在の日系製造業の顧客を対象に、営業活動を拡

大している。

◆過去直面した主な課題・問題点

合弁会社設立に係る協議を開始した数年前は日中関係が微妙な時期であったため、周囲

の状況を見極めつつ、事業計画を策定した。

◆成功の要因

・深圳達実智能が有する中国 ESCO 事業および中央・広東省・深圳市各政府の省エネ政策

に関する知見と、三菱 UFJ リースの持つ金融ノウハウを組み合わせ、顧客のニーズに合致

する的確な ESCO プランを組成したこと。

・日中双方の自国での ESCO 実績に基づく斯業における信頼性をもとに、協議を重ねるこ

とでパートナー間の相互理解が進み、信頼関係を深めることができたことが、新会社設立

に至る最大の原動力であった。

◆今後の目標・見通し

まずは新会社およびパートナーの深圳達実のお膝元である広東省を中心とした華南エリ

アで、深圳達実の保有する高度な空調省エネ技術をベースに三菱 UFJ リースの企業ネット

ワークから日本の省エネ技術を付加し、顧客の多様なニーズに対応する。

また、将来的には、上海を中心とする華東エリア、また日系企業のみならず多国籍企業

および中国企業へも展開を目指す。

エネルギー監視管理システム

■プロジェクト名

第 8 回 No.34 水質分析の簡易化とデータ収集システムの評価

◆調印企業・団体

日本側:オプテックス株式会社、株式会社共立理化学研究所

中国側:北京市城市排水監測総站有限公司

◆プロジェクト概要

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北京市下水処理場の管理運営を効率よく行うため、現場で水質分析を簡易に行いデータ

収集までを自動化するシステム開発に関する評価試験を実施する。今まで水質分析は水を

実験室まで運んで試験する必要があったが、本プロジェクトでは現場で水質を迅速・簡易

測定しデータ収集するシステムの評価を行う。

◆プロジェクトの現状・成果の確認

試薬~分析器(開発中)の評価試験を北京市城市排水監測総站に依頼し、手分析との相

関性が確認された。

現在、評価結果を踏まえ、試薬~分析器~スマホ(ポータル)~データマネジメントシ

ステム(クラウド)までを一気通貫で行うサービスを開発中。試薬単体では、一部地域

(湖南省、常州 etc)で代理店による販売を開始しており、実績も出始めている。特に湖南

省は滋賀県と友好関係にあり、滋賀県が受け入れた教師の所属する中国の教育関連(中学

校や小学校)に紹介され、授業で使われ始めている。

◆過去直面した主な課題・問題点

中国で展開するには、製品に対する政府や大学等のお墨付きが必要となるが、環境分野

について公的機関とのパイプが無く、評価を取得することができなかった。

◆成功の要因

日中経済協会の紹介によりまず学会および業界に強い影響力のある汚水処理の専門家の

紹介を受け、学生による評価等のサポートによる、専門家および公的機関から適正な評価

を得たこと。また、その後、その専門家から北京市城市排水監測総站の紹介に繋がったこ

と。

サービス全体の名前を「WATER it」と命名していたが、中国語名が必要であることが判

明し、悩んでいたところ、日中経済協会の北京事務所からのアイデアで「水益特」を採用

し、現地での評判を受けていること。

◆今後の目標・見通し

サービス全体は現在開発中であり、来年度中には開始する予定。今からサービス全体の

イメージを印象付けるため、様々なイベントを行っており、10 月末の展示会 BCEIA では

メディア発表会を行う等、幅広く周知活動を実施中。専門家および公的機関から適正な評

価を得たことで、今後中国の水質分析の現場において、認知が更に進み、市場への普及が

進むことを期待。

BCEIA2015(展示ブース) 「WATER it」の試薬~分析器~スマホ(ポータル)

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■プロジェクト名

第 8 回 No.37 中国市場においての下水汚泥乾燥システムに関する技術指導製造販売契

◆調印企業・団体

日本側:株式会社 大川原製作所

中国側:中節能博実(湖北)環境工程技術有限公司

◆プロジェクト概要

株式会社大川原製作所が保有する下水汚泥処理技術の一つである乾燥技術を中節能博実

(湖北)環境工程技術有限公司に提供する契約を締結し、中国市場での汚泥乾燥装置の更

なる普及をめざす。

◆プロジェクトの現状・成果の確認

湖北省鄂州市が実施する中国初の下水汚泥炭化プロジェクトに日本の巴工業株式会社と

中節能博実(湖北)環境工程技術有限公司が共同所有する中国特許の連続高速汚泥炭化技

術、オーカワラの熱風式乾燥技術を導入した下水汚泥乾燥・炭化設備を納入し、稼働を開

始。処理量は 60t/d(脱水汚泥)で、鄂州市の主要水源である洋瀾湖の水質改善に貢献。11

月 20~22 日に武漢で汚泥処理フォーラムがあり、そこで当設備の披露を行い、好評を得

た。

◆過去直面した主な課題・問題点

・試運転で中国の下水汚泥の流動性が日本と異なることが判明し、機械の運転方法調整

で対応した。

◆成功の要因

・双方のコミュニケーションが上手く取れたことにより、大きなトラブルは発生しなか

った。技術面の交渉では、全体改善に焦点をあて、重要ポイントに絞って交渉を進めた。

・良いパートナー企業を見極める。良い技術を持つ企業を見つけ、技術の知識を持って

いるかどうかを見極めること。そのためには交流の機会を多く設け、お互いに理解を深め

ることが必要。

・鄂州市汚泥乾燥・炭化プロジェクトは、ドイツ政府の環境借款利用案件のため、資金

面でのトラブルは皆無であった。

◆今後の目標・見通し

中国の他の都市に乾燥・炭化モデルを普及する。各省・都市によって汚泥処理方法が異

なるが、大川原製作所が有する乾燥技術をさらに普及させ、中国における下水汚泥の減容

化、再利用等に貢献する。

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プロジェクト設備の外観 乾燥機

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2.山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区

(1)淄博市大気汚染防治行動計画意見徴求稿

淄博市人民政府弁公庁

淄博市 2015-2017 年大气汚染

対策行動計画配布に関する通知

(意見徴求稿)

各区・県人民政府、ハイテク新技術開発区、文昌湖区管理委員会、市政府各部門、各関連

機関、各大企業、各高等学校:

『淄博市 2015-2017 年大气汚染対策行動計画』は市政府の同意が得られ、ここに配

布します。真剣に実施してください。

淄博人民政府弁公庁

2015 年 3 月 日

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淄博市 2015-2017 年大气汚染対策行動計画

2015 年 3 月

目 次

序 文

一、抑制目標

(一)環境大気の質の改善目標

(二)主要汚染物質総量抑制目標

(三)大気環境管理目標

二、重点任務

(一)エネルギー構造の調整

1.石炭の総量規制を実施し、石炭商業使用を規範化し、クリーン利用を推進する

2.クリーンエネルギー応用を拡大し、工業の石炭燃焼から天然ガスへの転換、交通の

石油から天然ガスへの転換の積極的推進

3.省エネ・資源リサイクルを積極的に展開、循環経済を大いに発展

4.高汚染燃料の燃焼禁止区の画定

5.コジェネレーションの拡大、分散している小型石炭ボイラーの淘汰

(二)産業構造の調整

1.大気汚染物質排出の新標準の実施

2.重点産業における後れた生産能力淘汰の強化

3.工業配置の最適化

4.産業進出における環境面の参入基準の厳格化

(三)重点産業における大気汚染対策の深化

1.二酸化硫黄対策の全面的推進

(1)火力発電産業

(2)鉄鋼、石化産業

(3)その他産業

2.窒素酸化物汚染対策の全面的展開

(1)火力発電産業

(2)セメント産業

(3)その他産業

3.工業の排煙・粉塵対策の強化、顆粒物排出の大幅削減

(1)火力発電産業の煤塵対策の深化

(2)セメント産業の粉塵対策の強化

(3)鉄鋼産業の顆粒物対策の深化

(4)石炭ボイラーの煤塵対策の全面的推進

(5)その他産業の顆粒物対策の積極的推進

4.揮発性有機物汚染対策とオイルガス回収を展開、揮発性有機物対策・抑制システム

の改善

(1)揮発性有機物についての実態

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調査展開

(2)重点産業における揮発性有機物の排出抑制要求と政策体系の整備

(3)ガソリンステーション、オイルタンク、タンクローリーのオイルガス回収対策

の全面的展開

(4)典型業種における揮発性有機物対策の積極的展開

5.有毒排気汚染の抑制強化、国際公約の着実な履行

(1)有毒排気汚染の抑制

(2)大気における水銀汚染抑制活動の積極的推進

(3)オゾン層破壊物質の淘汰活動を積極的に展開

(四)塵埃の抑制強化、面源汚染管理の深化

1.都市塵埃汚染総合管理の強化

2.建設施工塵埃汚染対策の監督強化

3.道路塵埃汚染の抑制

4.貯留ヤード塵埃総合対策の推進

5.脱穀茎の焼却に対する環境監督と総合利用の強化

6.外食産業の油煙汚染対策の推進

(五)自動車汚染対策を強化し、移動発生源排出を有効に抑制

1.石油製品の品質向上の推進

2.車輌の環境管理の強化

3.高汚染自動車淘汰の加速

4.道路以外の移動発生源汚染対策の展開

5.交通の持続可能な発展の促進

(六)緑地帯建設を強化

1.都市および企業の緑地帯の建設

2.国土緑化と破壊された生態環境修復の加速

(七)区域管理メカニズムの創新

1.環境情報公開の強化

2.区域の大気環境連合法執行監督メカニズムの確立

3.重点建設プロジェクトの環境アセスメント協議メカニズムの確立

4.重点産業の環境査定制度の実施

5.環境の質に対する安全保障メカニズムの構築

(八)環境管理に対する経済奨励政策の充実

1.税制補填奨励策の整備

2.価格と金融政策の一層の推進

3.揮発性有機物など汚染排出費用徴収政策の整備

4.汚染排出許可証制度の全面的推進

5.汚染対策施設の建設・運営の特許経営の推進

(九)関連部門合同による規制体制の強化

1.統一した区域大気質モニタリングシステムの確立

2.重点汚染源の監視抑制体制の強化

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3.自動車の汚染排出抑制体制の推進

4.汚染排出統計および環境の質の管理体制の強化

三、重点プロジェクト

(一)プロジェクトの全体状況

(二)プロジェクトの要求

四、保障措置

(一)組織指導の強化

(二)査定評価の厳格化

(三)資金投入の拡大

(四)科学技術基盤の強化

(五)省エネ環境社会化サービス体系の構築

(六)環境法制執行の監督管理体系の強化

(七)宣伝教育の強化

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序 文

『大気汚染対策行動計画』(国発〈2013〉37 号)、『京津冀(北京、天津、河北)と周辺

地区における大気汚染対策行動計画の実施細則』(環発〈2013〉104 号)、『山東省 2013-

2020 年大気汚染対策計画』、『山東省 2013-2020 年大気汚染対策計画一期(2013-2015)行動

計画』(魯政発〈2013〉12 号)を着実に実行し、大気汚染総合対策を加速させ、環境大気

質の改善を維持するために、『大気汚染対策行動計画の実施状況査定方法(試行)』(国弁

発〈2014〉21 号)とわが市の実情を結び付け、本行動計画を制定した。

一、抑制目標

(一)環境大気質の改善目標

2015 年までに、大気汚染対策の初歩的効果が表れ、全市の環境大気質を 2010 年比

20%以上改善させる。二酸化硫黄、二酸化窒素、吸引可能顆粒物(以下 PM10)、細顆粒物

(以下 PM2.5)の濃度改善目標値は、それぞれ 0.100 ㎎/㎥、0.060 ㎎/㎥、0.135 ㎎/㎥、0.080

㎎/㎥で、二酸化硫黄、吸引可能顆粒物を 2010 年比それぞれ 33.8%、20.6%以上改善す

る。2017 年までに、大気質を明らかに改善し、重度汚染日を大幅に減少させ、全市環境大

気質を 2010 年に比べ、35%程度改善する。

(二)主要汚染物質総量抑制目標

2015 年までに、全市の二酸化硫黄、窒素酸化物排出量を 2010 年比それぞれ 20%、

19%減少させ、19.45 万 t と 12.71 万 t 以内に抑制する。

(三)大気環境管理目標

目標の責任査定メカニズムを整備する。確定した目標、任務、対策プロジェクトを分解

して各区・県人民政府および関連企業・団体に下ろし、年度活動計画に織り込み、実行責

任を明確にし、目標責任査定を強化する。

大気質モニタリングメカニズムを整備する。大気質情報公布制度を整備し、規範に則し

て大気質モニタリングデータを公布し、絶対大気質および汚染物質濃度の相対的改善幅の

2 つの指標による排列後に公布する。

都市環境総合取り締まりを強化する。都市建築、公共工事現場、物資運送と貯蔵を、

『山東省塵埃汚染対策管理法』、『淄博市塵埃汚染対策管理暫定規定』、『都市塵埃汚染対策

技術規範』(TJ/T393-2007)の要求に符合させる。

自動車の環境保護検査およびラベル管理制度を厳格に実施する。『山東省自動車排気汚

染対策条例』および付帯管理規定を厳格に実施し、環境保護検験機構の監督管理を強化

し、検査測定データによる質のコントロールを強化し、環境保護検験機構の規範化運営を

推進する。

重度汚染日予報メカニズムと大気質保障の緊急事前対策制度を確立する。市、区・

県、重点企業が連動・一体となった緊急呼応システムを構築し、管轄内の工業企業、施工

工事現場、自動車分布状況に則して、緊急対策を順序付け、かつ、異なる汚染レベルに応

じた緊急対応訓練を行う。

大気環境管理機関とチームの構築を強化する。市の環境部門は大気汚染対策の専門機関

を設立し、各級環境保護部門は大気汚染対策専門の職員を配置する。

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二、重点任務

(一)エネルギー構造の調整

1. 石炭の総量抑制を実施し、石炭商業利用を規範化し、クリーン利用を推進する

社会の発展水準、エネルギー消費の特徴、大気汚染の現状などの要因を考慮し、石炭消

費総量の中長期抑制目標を研究・制定する。新規石炭燃焼プロジェクトは区域石炭燃焼総

量代替制度を実施し、沂源県と高青県は 1:1 で代替するが、他の区・県は当面、1:2 の

比率で代替する。高汚染燃料燃焼禁止区を画定し、その管理規定を厳格に実行する。燃焼

禁止区外には石炭燃焼抑制区を画定し、新規石炭燃焼プロジェクトを厳格に抑制する。コ

ジェネレーション以外の新規石炭燃焼発電プロジェクトを審査承認することを禁止し、現

有の複数ユニット石炭燃焼発電設備の容量が合計 30 万 kw 以上のものは、石炭等量代替の

原則に従い、大容量石炭燃焼設備を建設することができる。全市において石炭消費総量抑

制制度を実施し、石炭消費総量抑制計画を各区・県に下達し、2014 年から石炭燃焼総量抑

制制度を実行し、毎年 100 万 t を逓減させる石炭燃焼総量削減計画を実施する。

『淄博市石炭クリーン利用監督管理方法』を制定し、全面的に石炭クリーン利用を推進

する。全市の石炭は、主に燃焼効率が高くかつ汚染集中処理が徹底される石炭燃焼発電所

で使用する。工業キルンやボイラーのクリーンエネルギー使用を奨励すし、石炭使用量が

多くかつ集中する工業園区には、大型石炭ガスステーションなど石炭クリーン使用技術を

導入し、エネルギー転換率が低い、運営コストが高い、石炭の脱硫効果が低い、安全リス

クが高いなどの不利な要因を抜本的に改善し、石炭クリーン燃焼を実現する。

2015 年末までに、高い脱硫効果と除塵設備がない石炭ボイラーと工業キルンについて

は、硫黄含有量が 0.6%を、灰分含有量が 15%を超える石炭の使用を禁止する。民生用や

その他小型石炭燃焼施設には低硫黄分、低灰分で硫黄固定剤添加の石炭を優先的に使用さ

せる。高硫黄分、高灰分の石炭採掘と使用を制限し、石炭洗選比率を高め、調合センター

建設を推進する。新設の炭鉱建設は石炭洗選施設を同時に建設しなければならない。

2016 年 6 月末時点で、各種石炭貯蔵場は計画目標を達成し、基準を満たし、規範化した

管理の下、燃焼用石炭の全硫黄含有量は 0.9%以下、灰分含有量は 20%以下に抑制する。

2017 年末までに、各種石炭貯蔵場は環境保護施設を整備し、燃焼用石炭の全硫黄含有量は

0.8%以下、灰分含有量は 16%以下に抑制する。

2.クリーンエネルギー応用を拡大し、工業の石炭燃焼から天然ガスへの転換、交通の

石油から天然ガスへの転換を積極的推進

「都市ガスを優先発展させ、積極的に工業燃料構造を調整し、適度に天然ガス発電を発

展させる」原則に基づき、天然ガスの「都市部、農村部、高速道路」への導入を加速し、

天然ガス使用の配置を最適化し、天然ガスによる分散型エネルギーを積極的に発展させ

る。省内の優遇政策と支援を積極的に活用し、市場メカニズムを導入し、天然ガス、石油

ガス供給量増加に努め、天然ガスの幹線管網建設を加速し、全市の天然ガスパイプライン

の安全運営を保障する。天然ガスインフラ建設を強化し、天然ガスボイラーの建設・運営

の付帯政策を整備し、ガス供給源を保障する。天然ガス発電所建設による石炭燃焼ユニッ

ト、生産ボイラー、キルンの代替を奨励し、石炭燃焼施設における石炭からガスへの転換

実施を奨励する。

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省エネ環境タイプの車種が選ばれるよう奨励し、交通機関における天然ガスなどクリー

ンエネルギー使用を拡大する。天然ガス自動車と新エネ自動車使用を大いに普及し、徐々

に関連インフラ設備を充実させ、積極的に電動公共バス・タクシーを普及する。ガソリン

自動車が CNG、LNG を搭載するようを奨励し、ガソリン車から LNG への更新を普及させ

る。都市と周辺地区の CNG、LNG ガスステーションを増やし、LNG ステーションの建設

配置の整備を加速する。部門の責任分担を明確にし、部門間協力を強化し、審査認可手続

きを合理的にする。2015 年までに LNG 車を 2,000 台まで増やす。さまざまな方法でガス

供給源を獲得し、付属設備の建設を加速し、ガス貯蔵タンクと LNG 生産工場の建設を合

理的に配置し、CNG マザーステーションを増やす。2015 年までに、全市の CNG と LNG

ガスステーションを 100 程度に増やし、タクシーの 90%、公共バスの 40%、民間車両の

10%が天然ガスを使用し、旅客バスの 15%、重量貨物車の 5%が LNG を使用する。

3. 省エネ・資源リサイクルを積極的に展開、循環経済を大いに発展

省エネと工業、農業、都市廃棄物のリサイクルに有利な制度体系を整理し、体制メカニ

ズム改革を深化させ、省エネ環境の潜在市場を現実の市場に転換させる。グリーン建築を

大いに発展させ、政府投資あるいは政府投資主体の機関オフィス建築、公益性建築、保障

性住宅、大型公共建築は率先してグリーン建築基準を採用する。

既存の居住建築における熱供給計量と省エネ改造の推進を加速し、新築の建築物におけ

る熱供給計量工程の監督管理を強化し、熱供給の従量制費用徴収を全面的に行い、熱供給

従量制と温度管理の一体化を実施し、熱供給エネルギー消費のオンラインモニタリングを

実行し、使用者の省エネ行動を促し、熱供給における省エネ排出削減を推進する。「熱・

電気・冷気」の 3 つの一体化供給を積極的に発展させ、太陽熱、太陽光発電の建築との一

体化、地熱ヒートポンプなどの技術の使用を積極的に発展させる。

循環経済を大いに発展させる。積極的に新興環境産業の発展を支援し、全市各種産業園

区、重点企業の循環化改造を行い、資源産出率を高める。徐々に生態工業園区を建設す

る。

4. 高汚染燃料の燃焼禁止区の画定

「高汚染燃料燃焼禁止区」画定作業を整備し、大気質の状況に基づき徐々に燃焼禁止

範囲を拡大する。2013 年末までに高汚染燃料燃焼禁止区の画定作業を終了し、「燃焼禁止

区」の面積が都市市街地面積の 80%以上に達しなければならない。「燃焼禁止区」は都市

市街地の発展に則し常に画定範囲を調整する必要がある。「燃焼禁止区」範囲内では、高

汚染燃料燃焼プロジェクトの新設、拡張、改造を禁止する。現有の高汚染燃料燃焼施設に

ついては、都市集中熱供給で使用する以外、関連機関と個人は要求に基づき解体・改造

し、天然ガスあるいはその他クリーンエネルギーに切り替えなければならない。2014 年 2

月 1 日より、「燃焼禁止区」範囲内では高汚染燃料の燃焼・経営を禁止する。

5. コジェネレーションの拡大、分散している小型石炭ボイラーの淘汰

「一区一熱源」を積極的に推進し、熱供給網と供給源インフラを強化・改善する。集中

熱供給の老朽管網改造を加速し、集中熱供給の管網輸送力を引き上げ、「熱・電気・冷

気」一体化供給を積極的に発展させる。都市と周辺における現有の石炭発電ユニットによ

る熱供給改造を加速し、最大限に蒸気を引き出して供給する。統一計画と、熱供給量によ

って発電量を決めることならびに適度な規模の原則に基づき、都市熱供給整備専用計画を

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編制し、コジェネレーションと集中熱供給を発展させる。新設の工業園区はコジェネレー

ション企業を熱供給源とし、条件を満たさない場合は、園区の計画面積に基づき集中熱供

給システムを整備する。既存の各種工業園区と工業集中地区も、コジェネレーションある

いは集中熱供給への改造を実施すべきであり、今後、工業企業を集中熱供給の範囲に入れ

ていく。都市市街地は大型発電所またはコジェネ企業と連結して、集中熱供給を実行す

る。

新設コジェネレーションプロジェクトの審査認可にあたって停止が要求される石炭燃焼

ボイラーと小型ユニットは期日までに淘汰されなければいけない。2014 年 9 月末までに、

都市中心部の張南熱供給管網の建設と管網の対象範囲の小型ボイラー代替を完了し、2015

年末までに、都市市街地の供熱管網対象範囲内で緊急対応、ピーク調整用に留保が必要な

ボイラーを除き、20 蒸気t/h 以下の石炭ボイラー・茶浴炉を淘汰する。都市と農村の接合

部と農村地区住民のクリーンエネルギーの使用を奨励し、個別の石炭燃焼炉による暖房を

徐々に淘汰し、条件が整う地区は集中熱供給を実施する。2015 年までに、全市の集中熱供

給普及率が 60%以上に達し、全ての区・県、工業園区で基本的に集中熱供給を実現する。

集中熱供給が実現できない地区では、クリーンエネルギーと再生可能エネルギーによる熱

供給を奨励し、基準に符合する高効率省エネ、環境にやさしいボイラーの使用を普及させ

る。2017 年末までに、現有の各種工業園区と工業集積地区はコジェネレーションあるいは

集中熱供給改造を実施し、分散した自家石炭燃焼ボイラーを全面的に廃止する。大型熱源

管網の対象範囲内にない場合は、各工業園区に 1 か所のみ石炭燃焼熱源を残すこととす

る。

(二)産業構造の調整

1. 大気汚染物質排出の新基準の実施

『山東省区域性大気汚染物質総合排出標準』(DB37/2376-2013)、『火力発電所の大気汚染

物質排出標準』(GB13223-2011)、『山東省固定源大気顆粒物綜合排出標準』(DB37/1996-

2011)など一連の新基準を実施し、市民が最も基本的な大気環境の質を享受できることを目

標に、時期に分けて徐々に厳しくし、最終的には高汚染業種の排出特権を撤廃し、排出基

準と環境の質のリンクを実現する。

指導と強制という基準の役割発揮により、企業が主体的に原料構造と製品構造を調整

し、技術革新を強化し、後れた生産技術と設備を淘汰するよう導く。基準の実施を通じ、

企業が汚染対策を促進し、基準が要求する相応の段階に達すれば、都市市街地内や主な人

口密集地区周辺の石油化学、鉄鋼、火力発電、セメント、危険廃棄物取扱い・処理などの

重度汚染企業を移転させ、産業空間配置を更に適切にする。

2. 重点産業における後れた生産能力淘汰の強化

国の産業政策を厳格に執行し、鉄鋼、建材、製紙、捺染、鋳造、耐火材料などの業種に

おける後れた生産能力淘汰を加速する。期日通りに後れた生産能力淘汰任務を完成し、年

度の淘汰計画を明確にし、細分化して各区・県に下達し徹底する。法律に基づき、鉄鋼、

セメント、アルミ電解、板ガラスなどの生産過剰産業の規定違反建設プロジェクトを整頓

し、生産能力の過剰が深刻な業種の規定違反建設プロジェクトを真剣に清算する。

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2014 年末までに鉄鋼、セメント、アルミ電解、板ガラスなど重点産業における「12

次五カ年計画」の後れた生産能力淘汰任務を完了する。『山東省人民政府による山東省鉄

鋼産業の後れた生産能力の淘汰・圧縮実施案の公布に関する通知』(魯政発[2012]37 号)の

要求に則し、わが市の鉄鋼生産能力淘汰任務を完成させる。

大型電力網対象範囲内の容量が単機容量 10 万 kw 以下の通常石炭火力発電ユニットおよ

び設計寿命が尽きた単機容量 20 万 kw 以下の通常石炭火力発電ユニットを徐々に淘汰す

る。単機容量 5 万 kw 以下の通常小型火力発電ユニットおよび発電を主目的とする石油ボ

イラーと発電ユニット(5 万 kw 以下)を淘汰する。石炭火力発電所の「上大圧小(小型発

電所を廃止、大型発電所を拡大)」政策を推進し、張店区、淄川区の電力企業の代替再編

を加速し、都市計画と環境管理規範に符合しない小型火力発電ユニットを停止・淘汰す

る。

国、省の産業政策およびわが市の都市計画と環境管理規範に符合しない全ての建築陶

器、レンガ、耐火材料、鋳造企業、焼結機、セメント攪拌ステーションなどを淘汰する。

揮発性有機物排出類業種の後れた生産能力を淘汰する。2015 年に、都市中心市街地と

開発区内の 200 万 t/年以下の常減圧装置を淘汰し、廃棄ゴムとプラスチックの旧式精錬技

術を淘汰する。自動車修理など修理業の屋外吹付作業を取り締まり、溶剤回収措置のない

ドライクリーニング設備を淘汰する。有害物質含有量、揮発性有機物質含有量が 200g/ℓ

を超える内装用塗料、700g/ℓを超える溶剤型木製家具塗料の生産、販売、使用を禁止す

る。300t/年以下の従来型インク生産装置を淘汰し、ベンゼン類を含む溶剤型インク生産を

取り締まる。揮発性有機物の収集、回収/浄化措置のないすべての塗料、接着剤、インクな

どの生産装置を淘汰する。その他の、揮発性有機物質汚染が深刻で、かつ削減・抑制に経

済的な実行性が欠けるプロセスや製品を淘汰する。

3. 工業配置の最適化

「環境保護第一審査認可権」と「一票否決権」を真摯に履行し、環境アセスメント、

「三同時(投資プロジェクトの実施と同時に, 環境汚染対策施設を計画,建設,操業す

ること)」、総量確認などの制度を全面的に徹底し、園区の集中建設にまだ進出していない

もの、園区の付属環境インフラが未整備のもの、サイト選定が関連要求を満たさないも

の、移転を要請されてまだ移転案を未制定のもの、リスク対策と市民による参与が不完全

なものなど 8 種のプロジェクトについては、一律に、審査認可しない。

「産業を園区に集中させ、土地は規模経営に集中させ、人口は城鎮と社区(コミュニテ

ィ)に集中させるよう導く」の全体要求に基づき、産業の特色を一層突出させ、産業の進

出・退出メカニズムを整備・確立し、工業プロジェクトの園区集中を指導・推進し、特色

ある産業群と産業チェーンを構築し、配置がバラバラで汚染が拡散する問題を着実に解決

する。中心市街地の東部化学工業区の移転・改造、南部地区の総合再編、大外環沿線区域

内の配置調整を突出して行い、重点汚染企業の移転・改造タイムテーブルを明確にし、汚

染が深刻なアクリル繊維工場、プロピレン繊維工場、山東アルミ公司、金晶科技等の企業

の移転・改造を徐々に実施し、産業空間配置を更に適正にする。

4. 産業進出における環境面の参入基準の厳格化

今後は、鉄鋼、セメント、アルミ電解、板ガラス、コークス製造、カーバイド、合金鉄

などの新規生産プロジェクトは審査認可しない。火力発電、鉄鋼、石油化学、セメント、

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非鉄、化学工業などおよび石炭ボイラーの新規プロジェクトについては、大気汚染物質の

特別排出制限値を執行しなければならない。「上大圧小」とコジェネレーション以外の石

炭火力発電所の新築、改築、拡大を禁止する。鉄鋼、セメント、石油化学、化学工業、非

鉄等業種における重度汚染プロジェクトを厳格に制限する。都市市街地、工業園区では、

20 蒸気 t/h 以下の石炭燃焼、重油、残渣油ボイラーおよび直接バイオマスを燃焼するボイ

ラーの新設を禁止し、その他地区では、10 蒸気 t/h 以下の石炭燃焼、重油、残渣油ボイラ

ーおよび直接バイオマスを燃焼するボイラーの新設を禁止する。

環境容量管理制度を厳格に実施し、新たな大気汚染物質排出の建設プロジェクトを厳し

く審査する。汚染物質排出総量を環境アセスメントの前提条件とし、総量と環境容量によ

りプロジェクトを定める。二酸化硫黄、窒素酸化物、工業ばい煙、揮発性有機物質を排出

する新設プロジェクトは、国と省の区域汚染物質排出代替の要求に基づき、生産増加・汚

染削減を確保する。本行動計画の公布日以降は、二酸化硫黄、窒素酸化物排出総量の汚染

源として代替されるものは、2012 年末までの環境統計または汚染源センサスリスト中にな

ければならず、かつ、その現状の排出総量が現行の環境統計システムに入っていなければ

ならない。そうでなければ、代替される指標は有効な代替量とは見なさない。

環境アセスメントを通っていない投資プロジェクトについては、関連部門は審査認可、

査定、着工承認をしてはならず、生産許可証、安全生産許可証、汚染排出許可証を発行し

てはならない。金融機関はいかなる形式の新規信用供与もしてはならず、関連部門は水、

電気を供給してはならない。石油化学産業における新設の 1,000 万 t/年以下の常減圧、150

万 t/年以下の触媒熱分解、100 万 t/年以下の連続還元(芳香族化合物抽出を含む)、150 万 t/

年以下の水素熱分解生産装置などの制限類プロジェクトを規制する。

新設石油化学プロジェクトは、原油加工損失率を 4‰以内に抑制する必要があり、対応

する有機排気処理設備を設置しなければならない。新築、改築、拡張プロジェクトにおけ

る揮発性有機物排出工場の有機廃ガスの収集率は 90%以上とし、廃ガス回収/浄化装置を

設置する。オイルタンク、ガソリンステーションの新設とタンクローリーの新規配備に際

しては、同時にオイルガス回収装置を取り付けなければならない。新規自動車製造・塗装

プロジェクトは、水性塗料など低揮発性有機物含有塗料の使用量が全体の 80%を下回って

はならない。小型乗用車の単位当たり塗装面積の揮発性有機物排出量は 35g/㎡を上回っ

てはならない。電子、家具等業種の新規塗装プロジェクトでは水性塗料など低揮発性有機

物含有塗料の使用量が全体の 50%を下回ってはならない。建築では内外壁塗装は全て水性

塗料を使用するべきである。新規包装印刷プロジェクトはエコラベルのあるインクを使用

しなければならない。

(三)重点産業における大気汚染対策の深化

1. 二酸化硫黄処理の全面的推進

(1)火力発電産業の二酸化硫黄対策

2014 年 3 月末までに、全市の全ての石炭火力発電ユニットは脱硫設備を設置し、対応す

る段階の大気汚染物質排出基準の要求達成を確保し、基準を満たさない脱硫設備は生産停

止ないし生産を制限しグレードアップ改造を行う。排気脱硫設備は規定に基づきガスのバ

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イパスを廃止する。脱硫設備の監督管理を強化し、総合脱硫効率が設計要求に達し、か

つ、総量規制指標の要求を満たすことを確保する。

企業の自家石炭火力発電所と中小型コジェネ石炭燃焼企業を全面的に整理し、2017 年末

までに、設備容量合計が 30 万 kw 以上のものについては、石炭等量原則に基づき、高パラ

メーター・大容量石炭燃焼ユニットに改造する。2017 年までに、石炭燃焼ユニットの新た

な脱硫指標引き上げ改造を完了させる。

(2)鉄鋼、石化産業の二酸化硫黄対策

鉄鋼、石油化学など非発電業種の排ガス二酸化硫黄対策を強化し、全ての焼結機とペレ

ット生産ユニットに脱硫設備を設置する。石油精錬産業の触媒熱分解装置に排ガス脱硫設

備を設置し、硫黄回収装置は排ガス水素添加還元設備を設置し、硫黄回収率は 99.8%以上

を満たし、排ガス中における各種汚染物質の排気濃度は、対応する段階の大気汚染物質排

出基準要求を満たさなければならない。

(3)その他産業の二酸化硫黄対策

現有のコークス炉の脱硫設備建設推進を加速し、コークス炉の石炭ガス脱硫を実施し、

硫化水素除去効率を 95%以上にする。外気に放出する廃ガス汚染物質濃度が基準を満たさ

ないコークス炉については、2014 年 3 月末までに対策改造を行い、汚染物質の基準達成で

の排出を確保する。非鉄金属精錬産業での生産プロセス設備の更新・改造を加速し、精錬

排ガス中の硫黄回収利用率を引き上げ、二酸化硫黄含有量が 3.5%を上回る排ガスについ

ては酸製造あるいは他の方法で回収利用し、低濃度排ガスと排出基準を超過する酸製造の

排ガスについては脱硫処理を行う。大中型石炭燃焼ボイラーの排ガス処理を強化し、20 蒸

気 t/h 以上の規模については全て脱硫を行い、総合脱硫効率を 70%以上にする。陶磁器、

ガラス、レンガ、耐火材料など建材産業における二酸化硫黄抑制を積極的に推進し、排気

ガス中における各種汚染物質の排気濃度が対応する段階の大気汚染物質排出基準要求を満

たすことを確保する。

2. 窒素酸化物汚染対策の全面的展開

(1)火力発電産業の窒素酸化物対策

火力発電産業における窒素化合物抑制を大いに推進し、石炭燃焼ユニットの低窒素燃焼

技術改造および炉外脱硝設備の建設を加速する。単機容量が 20 万 kw 以上、稼動年数が 20

年以内の現有石炭燃焼ユニットは全て排ガス脱硝設備を設置し、外部に放出する排気汚染

物質濃度が、対応する段階の大気汚染物質排出基準要求を満たすことを確保する。既に建

設した脱硝設備の監督管理を強化し、脱硝設備の高効率・安定稼働を確保する。2015 年、

全市の全ての石炭燃焼ユニットに脱硝設備を設置する。

(2)セメント産業の窒素酸化物対策

セメント産業における窒素酸化物対策を強化し、新型乾式セメントキルンについては

低窒素燃焼技術改造を行い、炉外脱硝設備を付設し、外部放出排気汚染物質濃度が、対応

する段階の大気汚染物排出基準要求を満たすことを確保する。

(3)その他産業の窒素酸化物対策

石炭燃焼工業ボイラー、焼結機などの排ガス脱硝モデル事業を積極的に展開し、焼結

機単体面積が 180 ㎡以上の鉄鋼企業を選定して、排ガス脱硝モデルプロジェクト建設の展

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開を奨励する。石炭燃焼ボイラーの低窒素燃焼技術改造と脱硝モデルプロジェクトを推進

する。

3. 工業のばい煙・粉塵対策を強化し、顆粒物排出を大幅に削減する

(1)火力発電産業のばい煙・粉塵対策の深化

石炭燃焼ユニットは必ず高効率除塵設備を設置し、対応する段階の大気汚染物質排出基

準要求を満たすことを確保し、煙塵排出濃度が安定して基準を満たさない石炭燃焼ユニッ

トは、至急、高効率除塵改造を行わなければならない。

(2)セメント産業の粉塵対策の強化

セメントキルンおよびキルン・ミル一体型の除塵設備はバグ式、電気バグフィルター複

合等の高効率除塵器に改造する。セメント企業の粉砕機、ミル、包装機、乾燥機、乾燥ミ

ル機、石炭ミル機、冷却機、セメントサイロ、その他通風設備は高効率除塵設備を設置

し、対応する段階の大気汚染物排出基準要求を満たすことを確保する。セメント工場とミ

ルステーションの顆粒物排出総合対策を強化し、セメント業の顆粒物無措置の排出抑制に

有効な措置を採用する。セメントのバラ品生産を推進し、袋状生産を制限・削減する。全

ての原材料、製品は密封貯蔵、運送され、積卸時は塵の飛散を対策する有効な措置を取

る。顆粒物排出濃度が安定的に基準に満たさない場合は、直ちに高効率除塵改造を施す。

(3)鉄鋼産業の顆粒物対策の深化

現有鉄鋼企業における塵の発生段階で、煙塵が安定的に排出基準を達成しない場合は、

直ちに高効率除塵の技術改造を施し、対応する段階の大気汚染物排出基準要求達成を確保

する。コークス製造段階では、グラウンドステーションに高効率除塵システムを配備し、

コークス乾式消火設備(CDQ)を設置し、製錬鉄の鉄出し口、スキンマー、鉄の排水溝など

に密閉集塵蓋を設置し、バグフィルター式高効率除塵機を配置する。

(4)石炭ボイラーの煤塵対策の全面的推進

石炭ボイラーの煙塵が安定的に排出基準を満たさない場合は、直ちに高効率除塵技術改

造を施し、対応する段階の大気汚染物排出基準要求達成を確保する。沸騰炉(fluidized bed

combustion boiler)と粉炭ボイラーは必ず高効率除塵設備を設置する。天然ガスなど石炭燃

焼を代替するクリーンエネルギーを積極的に採用し、バイオマス成型燃料を使用する際

は、関連技術規範を満たさなければならず、専用燃焼設備を使用する。

(5)その他業種における顆粒物対策を積極的に促進

工業キルンのクリーンエネルギー使用を積極的に普及し、陶磁器・ガラス等の工業キルン

においては石炭代替として天然ガス・石炭ガス等を採用し、粘土製レンガ生産は内部燃焼

技術の応用を普及させる。工業キルンの除塵活動を強化し、高効率除塵設備を備え、地方

基準の相応する段階における大気汚染物質排出基準達成を確保する。

4.揮発性有機物汚染対策とオイルガス回収を展開、揮発性有機物対策・抑制システム

の改善

(1)揮発性有機物に対する実態調査の展開

国及び省の要求に基づき、石油化学・有機化学工業・合成材料・化学薬品の原薬製造・

プラスチック製品の製造・設備製造及び塗装・通信設備用コンピューター及びその他電子

ディバイス製造・包装印刷など重点業種を対象に、揮発性有機物排出の実態調査を実施

し、重点業種排出リストを作成する。これにより揮発性有機物の排出業種及び地域分布を

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明確にし、重点排出源を突き止め、揮発性有機物排出の重点的監督が必要な企業名簿を制

定する。大気環境における揮発性有機物に対する調査的モニタリングを徐々に展開し、大

気環境における揮発性有機物の濃度レベル・季節的変化・地域分布の特徴を把握する。

(2)重点産業における揮発性有機物の排出抑制要求と政策体系の整備

国及び省政府の要求に基づき、以下を実施する。1)関連業界における揮発性有機物排

出の基準、クリーン生産評価指標体系及び環境エンジニアリングの技術規範を厳格に執

行、2)環境大気及び固定汚染源揮発性有機物の測定方法及び基準・モニタリング技術規

範及びモニタリング機器の基準を厳格に執行、3)揮発性有機物による面源汚染の抑制を

強化し、塗料・印刷用インク・接着剤・建築板材・家具・ドライクリーニングなど有機溶

剤含有製品のエコラベル製品認証基準を厳格に執行、4)国の有機溶剤含有製品の販売及

び使用に関する参入制度及び有機溶剤の使用申告制度を確実に徹底。地域の大気汚染物質

排出基準における重点業種の揮発性有機物質排出規制値を増加する。5)揮発性有機物質

汚染の典型的企業が集中する工業園区において、揮発性有機物汚染に対する総合対策テス

ト活動を展開し、揮発性有機物に対するモニタリングと改善技術の研究開発強化を展開

し、有効な管理監督体制を確立する。

(3)ガソリンスタンド、オイルタンク、タンクローリーの石油ガス回収対策を全面的

に展開

2014 年 3 月末までにガソリンスタンド・オイルタンク・タンクローリーの石油ガス回収

対策を全面的に完了する。新設のガソリンスタンド・オイルタンク・タンクローリーは附

属する石油ガス回収施設を同時並行で建設する。石油ガス回収の社会化・専門化・市場化

運営を積極的に推し進める。

(4)典型業種における揮発性有機物対策の積極的展開

石油化学工業における揮発性有機物の排出を大幅に削減する。石油化学企業は、LDAR

(漏出検出及び修理)技術を全面的に実施し、生産・輸送・貯蔵過程における揮発性有機

物の漏出に対するモニタリングと監督管理を強化し、漏出率が基準を上回る設備は改造し

なければならない。貯蔵・輸送段階における呼吸損失を厳格にコントロールし、原材料・

中間製品・製品の貯蔵施設はすべて高密封性のあるロスフローティング・ルーフ・タンク

を採用するか、上部に石油ガス回収装置を据え付ける。これによって原油加工の損失率を

6‰以内に抑える。石油精錬及び石油化工生産プロセスで排出する有機排ガスは回収再利

用し、回収再利用が(完全には)できない場合は、ボイラー・生産加熱炉・焼却炉・トー

チ等によって焼却を行うか、吸収・吸着・冷凍圧縮など非焼却方式で処理する。排水収集

系統では、液面と空気との間を隔離する措置を採用し、曝気槽や附ローテーションタンク

などは蓋で密封して排ガスを収集・浄化処理し、悪臭のある気体の排出を厳しく規制す

る。回収装置と有機排ガス対策施設に対する監督管理を強化し、揮発性有機物の排出の安

定基準達成を確保し、相応の緊急対応施設を備える。石油化学企業は、廃ガスの集中排出

についてはオンライン連続モニタリングシステムを設置するほか、企業の境界では揮発性

有機物の環境モニタリング装置を設置する。2015 年末までに、石油化学企業は LDAR(漏

出検出及び修理)技術を全面的に普及させ、有機廃ガスの総合対策を完了させる。

有機化学工業その他業界における揮発性有機物対策を促進する。有機化学(有機化学原

材料・合成材料・日用化学工業・塗料・印刷用インク・接着剤・染料・化学溶剤・試薬生

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産などを含む)・医薬化学・プラスチック製品の企業の設備装置の水準を向上させ、放

出・溢出・垂れ落ち・漏出を厳しく抑制する。原料・中間製品・製品はいずれも密閉して

貯蔵する。実質蒸気圧 2.8 キロパスカル・容積 100 立米を上回る有機液体の貯蔵は高密封

性のフローティング・ルーフ・タンクを使用するか密閉の排ガスシステムを設置して浄化

処理を行う。揮発性有機物を排出する生産工程は密閉空間または設備の中で実施し、発生

する揮発性有機物含有排ガスは浄化処理を行い、かつ浄化効率は 90%以上とし、相応の緊

急対応処置施設を整備する。悪臭による汚染対策を講じる。有毒または悪臭の伴う揮発性

有機物を排出する有機化学工業企業のオンライン連続的モニタリングシステムの構築を

徐々に展開し、環境保護主管部門と接続する。

表面塗装プロセスにおける揮発性有機物の排出抑制を強化する。自動車製造及びメンテ

ナンス・電子部品・家庭用電気・家具製造・プラント製造・電線ケーブル等業界における

表面塗装プロセスで発生する揮発性有機物による汚染抑制を積極的に抑制する。水性・ハ

イソリッド塗料・粉末・UV 光硬化塗料など低揮発性有機物含有塗料の使用比率を全面的

に高め、自動車製造業は 50%以上、家具製造業は 30%以上、電子製品・電器製品製造業

は 50%以上を達成する。自動車産業において先進的塗装プロセス技術使用を普及し、吹き

付けプロセス及び設備の最適化を図り、小型乗用車の単位当たり塗装面積の揮発性有機物

の排出量を 40g/平米以下に抑える。溶剤型塗料を使用する表面塗装工程は必ず密閉環境で

作業するものとし、かつ有機排ガス回収システムを備え、高効率回収浄化装置を設置し、

有機排ガスの浄化率 90%以上を確保し、臭気による汚染を厳しく抑制する。

溶剤使用プロセスにおける揮発性有機物対策を展開する。包装印刷業では環境保護の要

求を満たすインクを使用し、乾燥現場では活性炭等の吸着設備を設置し、有機溶剤を回収

し、現場の排ガスを浄化処理し、浄化効率は 90%以上を達成する。紡織捺染・革製品加

工・靴製造・合成板製造・日用化学などの業界では低毒素・低揮発性溶剤の使用を積極的

に推奨し、食品加工業は必ず低揮発性溶剤の使用し、靴製造業で使う接着剤は国が公布し

た「靴及びカバン類における接着剤」という強制的基準の要件に合致しなければならない

と同時に、揮発性有機物の収集及び浄化処理を展開する。

2017 年末までに、全市における有機化学工業・製薬・表面塗装・プラスチック製品・包

装印刷等重点業種のすべての企業において揮発性有機物の総合対策を完了させる。

5.有毒排ガスによる汚染の抑制を強化し、国際条約を確実に履行する。

(1)有毒排ガスによる汚染の抑制を展開

国及び省が公布した有毒空気汚染物優先管理名簿に基づき、有毒排気ガスを排出する企

業に対する環境監督管理を推進し、重点排出企業に対して強制的クリーン生産審査を実施

する。国及び省の要請に基づき、重点地域における鉛・水銀・カドミウム・ベンゾピレ

ン・ダイオキシンなどの有毒空気汚染物に対して調査モニタリングを行う。有毒空気汚染

物に関する排出基準及び予防改善技術規範を厳格に執行する。有毒空気汚染物排出の抑制

状況を環境アセスメント審査認可の重要な要素とし、抑制措置及び緊急時の対策を明確に

する。

(2)大気における水銀汚染の抑制を積極に推進する

水銀排出の協同抑制を積極的に推進する。国及び省の要求に基づき、非鉄金属業種にお

ける煤煙の水銀除去技術のモデル事業を実施し、石炭燃焼・非鉄金属・セメント・廃棄物

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焼却・鉄鋼・石油天然ガス工業などの重点業種における大気中水銀の排出リストを作成

し、抑制対策案を研究・策定する。セメント生産と廃棄物焼却等業種における水銀排出抑

制技術の開発を奨励する。

(3)オゾン層破壊物質の淘汰活動を積極的に展開する

オゾン層破壊物質の生産・使用・輸出入審査・監督管理制度を厳格に執行する。「モン

トリオール議定書」に基づき、HCFCs・医療用 CFCs 含有スプレー・ブロモメタンなど規

制目標が設定された物質の淘汰活動を完了させ、HCFCs・CMS 含有物質の生産能力の過剰

な増加を厳しく抑制し、関連業界における代替品及び代替技術の開発及び応用を強化し、

地方及び関連業界の条約履行能力を強化する。

(四)塵埃対策、面源汚染の管理を強化する

1.都市部における塵埃による汚染への総合管理を強化する

環境保護・公安・住宅建設・交通・都市秩序維持・国土などの部門で構成する塵埃汚染

総合対策弁公室を立ち上げ、塵埃抑制を都市環境総合整備の重要な要素とし、監督管理を

強化する。「山東省塵埃汚染対策管理弁法」、「淄博市塵埃汚染対策管理暫定規定」などの

各項目における塵埃汚染抑制に関する規定を厳格に実行する。2015 年までに、都市市街地

の塵埃の降下強度を 2010 年比 15%以上引き下げ、2017 年末までに 30%以上引き下げる。

2.工事現場における塵埃汚染対策の強化

工事現場における塵埃汚染対策のための取り締まり検査を強化する。塵埃汚染対策措置

を環境アセスメントの重要な要素とし、審査認可を厳格に行う。塵埃汚染をもたらす可能

性があり、且つ環境アセス審査認可文書を取得していない建設プロジェクトについては、

審査部門はその着工を許可してはならず、建設業者は着工してはならない。工事施工図の

設計段階で、臨時用地・土採取場・土廃棄場の排水及び防護措置に対する設計を明確にし

なければならない。工事の入札応札段階で、入札募集文書の作業量リストの中で塵埃対策

費用を単独に計上し、施工時の塵埃汚染の抑制状況を建設業者の信用管理システムに組み

入れ、入札応札の重要な根拠とする。新規の建設現場は、建設開始前にビデオ監視システ

ムを設置し、工事現場における重要な工程及び重要な部分に対して細分化した管理を行

う。

工事現場では塵埃汚染対策工程監督管理を実施する。全ての建設工事施工現場は必ず全

面密閉式にし、囲いを設置し、開放的施工を厳禁する。工事現場の道路・作業エリア・生

活エリアは必ず地面の強化を行う。工事現場内には洗車施設と排水・泥水沈殿設備を設置

し、輸送車両は洗浄してから工事現場を出ることとし、出入口の通路及び道路両側の清潔

を保つ。施工過程で発生する資材堆積場はカバーで覆い、散水や飛散対策剤の吹きつけ、

その他の防塵対策を講じる。施工過程で発生する建築ごみ・残渣土は適時に運び出し、適

時に運搬ができないものは、工事現場内で臨時に密閉堆積場を設けて保管する。2013 年末

までに、中心市街地における工事現場の残土及び粉状物資資材の運搬はすべて密閉式運搬

を採用し、かつ GPS 装置を導入する。建築面積が 5 万平米以上の工事現場は、主な塵埃発

生場所においてビデオ監視システムを設置し、施工の全行程監視を実施し、監視データは

一か月以上保管する。2015 年末までに全市における市街地の工事現場の 80%以上がグリ

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ーン工事基準を達成し、100%洗浄・カバー等の防塵措置を採用する。建設現場における

グリーン施工を推進し、都市建設プロジェクトの施工現場は全て密閉し囲いを設置する。

ビデオ監視システムを設置し、施工完了後は、適時に整理整頓及び緑化を行う。下水道を

清掃する際に発生するごみは即座に運搬しなければならない。

3.道路における塵埃汚染の抑制

都市部道路の機械化清掃を積極的に推進し、機械化清掃率を向上させる。2015 年まで

に、市街地の主な車道の機械化清掃率を 90%以上に引き上げる。都市部道路の洗浄清掃の

頻度を増やし、道路の塵埃堆積の負荷を確実に軽減する。道路の開削面積を縮小させ、路

面の露出時間を短縮する。道路開削は区分して封鎖し、破損した路面を適時に修復する。

道路両側の緑化を強化し、地面の露出を減少する。残土の運搬車両の監督管理を許可し、

資質管理と申告制度を実施し、重点地域・重点区間の残土輸送車両に対して全面的にモニ

タリングする。

4.堆積場における塵埃の総合管理を強化する

石炭・土・砂・資材それぞれの堆積場に対する監督管理を強化する。大規模石炭堆積場

や資材堆積場は密閉倉庫と搬送装置を設け、野外堆積の場合はカバーを設置するか、若し

くは自動散水装置を設ける。発電所などの大型石炭堆積場・資材堆積場にはビデオ監視シ

ステムを設置し、かつ都市塵埃ビデオ監視プラットフォームと接続する。長期間堆積する

廃棄物については、緑化・舗装・硬化・定期的な飛散対策剤・安定剤の産婦などの措置を

採用する。粉炭やスラグ・鉱滓の総合利用を積極的に推進し、堆積量を削減する。

5.藁茎の野焼に対する環境監督管理及び総合利用を強化する

藁茎の野焼に対する監督管理を強化し、農作物の茎・都市清掃ごみ・公園ごみ・建築廃

材などの規定違反の野外焼却を厳禁し、重点区域における藁茎野焼及び点火監視情報の公

布活動を更に強化する。農地における藁茎類の総合利用率を向上させ、藁茎類の肥料化・

飼料化・エネルギー化・原料化の総合利用措置を全面的に推進し、藁茎類総合利用実施案

を策定実施し、藁茎類総合利用モデル事業を設け、藁茎類の資源化利用を促進する。2015

年までに、全市における藁茎類のエネルギー化利用率は約 13%、全市の藁茎総合利用率は

93%以上を目指す。

6.飲食業における油煙汚染対策を推進する

新規の飲食サービス提供する場の建設に対する環境保護審査を厳しくし、市街地におい

て油煙を排出する可能性のある飲食店を新たに建設する際は、法律に基づく環境保護審査

の手続きを履行し、油煙を発生しうるプロセスには相応の浄化装置を設置するかまたは油

煙汚染対策措置を明確にし、「飲食業油煙排出基準」の要求を満たす。都市ガス・天然ガ

ス・電気などクリーンエネルギーの使用を推奨する。飲食店の所在地では高効率の油煙の

浄化装置を設置し、市街地エリアにおける飲食業の油煙の浄化装置の設置率は 100%を達

成する。油煙の浄化装置を設置しない露天 BBQ 業者に対する環境監督管理を強化する。

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(五)自動車汚染対策を強化し、移動発生源からの排出を有効に抑制する

1. 石油製品の品質向上の推進

自動車のガソリンの品質向上を強力に推進する。自動車ガソリンの低硫黄化を加速す

る。2013 年末までに、国Ⅳガソリン(硫黄含有量 50ppm未満)を全面的に供給し、2014

年末までに国Ⅳディーゼル油を全面的に供給する。2017 年末までに、国Ⅴ自動車用ガソリ

ン・ディーゼル油を全面的に供給する。石油製品の品質の監督検査を強化し、違法生産や

国・地方基準に満たない自動車用石油製品の販売を厳しく取り締まる。精製企業の石油製

品品質管理制度を確立し、石油製品の品質を全面的に保障する。都市部のガソリンステー

ションで販売するガソリンは必ず自動車用ガソリン、ディーゼルの基準を満たす。尿素注

入ステーションを積極的に着実に建設し、2015 年末までに尿素注入網を完成し、ディーゼ

ル車の SCR 装置の正常運転を確保する。

2. 車輌の環境管理の強化

『山東省自動車排気汚染対策条例』および付属管理規定を厳格に徹底し、環境検査ラベ

ルの未取得車については、公安機関の交通管理部門は自動車安全技術検査合格ラベルを交

付せず、交通運輸行政主管部門は営業自動車の定期審査合格手続を受理しない。自動車の

環境検査ラベルは自動車交通事故責任強制保険(交通険)、安全検査マークと同時にフロ

ントガラスの右側に貼らなければならない。2015 年末までに、自動車環境ラベルの交付率

は 85%以上を達成する。2017 年末までには、全ての自動車環境検査は安全検査と同時に

行い、安全検査合格の前提条件とする。環境保護検査機関による監督を強化し、検査デー

タの質の管理を強化し、環境検査機関の規範化運営を推進する。2013 年末までに、中心市

街地における「黄標車」の通行を禁止、2014 年には、「黄標車」の省道の通行を禁止す

る。検査データの質の管理、検査技術監督を強化し、検査データの整合性、信頼性、比較

可能性を高め、環境検査機関の規範化運営を推進する。自動車の大気汚染物質後処理装置

の設置を奨励し、排ガス抑制水準を高める。

3. 高汚染自動車淘汰の加速

『自動車強制廃棄標準規定』を厳格に執行し、営業車両の強制廃棄の有効な管理と監視

抑制を強化する。2013 年 10 月末までに、年内強制廃棄すべき車両の情報登録を完了し、

年末までに廃棄の事前告知を行う。期日までに廃棄されなかった車両の所有者は、新車登

録等の関連手続きを受理しない。2014 年上半期と 2015 年上半期は、それぞれ当年度内に

強制廃棄する車両の情報登録を完了し、廃棄のタイムスケジュールごとに淘汰の順序を整

理した。都市公共バス、タクシー、旅客輸送バス、運送車(低速車を含む)の集中対策と

更新・淘汰を大いに推進し、車両の「冒黒煙(黒煙を排出する)」現象を根絶する。「冒黒

煙」車両の通報を奨励し、通報された車両については、期限までに改造させる。改造が完

了するまでは道路で運転してはならない。大中型客貨輸送車両を重点に、高汚染自動車を

淘汰し、2015 年末までに、「黄標車」、老朽車 7 万余台を淘汰する。

4. 道路以外の移動発生源対策の展開

道路以外の移動発生源排出の調査を実施し、建設機械、汽車・自動車、農業機械、工作

機械、飛行機など道路以外の移動発生源の汚染状況を把握し、管理台帳を設ける。2013 年

は、国家第Ⅲ段階道路以外移動機械排出標準および国家第Ⅰ段階船舶用エンジン排出標準

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を実施する。建設機械の環境対策を積極的に展開し、道路以外の移動発生源の大気汚染物

質の後処理装置設置を推進する。

5. 交通の持続可能発展の促進

都市公共交通システムと都市間軌道交通システムを大いに発展させる。都市交通発展に

おいては公共交通優先戦略を実施し、市民の歩行、自転車の通行条件を改善し、グリーン

通行方式の選択を奨励する。都市道路網構造建設を強化・最適化し、オフピーク通勤や、

駐車料金調整などの手段を通じて、自動車通行効率を引き上げる。都市のスマート交通管

理と省エネ運転技術を普及する。都市自動車保有量(主に通行量)調整政策の研究を展開

し、特大型あるいは大型都市自動車保有総量の調整を模索する。

(六)緑化帯を大いに建設

1. 都市および企業の緑化帯の建設

工業企業と工業園区周辺、都市の異なる機能区の間に、緑化帯を科学的に計画し大いに

建設する。緑化、園林と景観建設の生態機能向上に努力する。都市緑陰行動を実施し、都

市公園の緑化において多種の樹木を植え付け、緑陰を増やし、防風抑塵と大気汚染物質浄

化能力を高める。2015 年末までに、市街地の緑化被覆率、緑地率をそれぞれ 45%、38%

に引き上げる。新規プロジェクトについては、環境敏感区との間に、十分な規模の緑化帯

すなわち「グリーン防壁」を建設するよう技術規定を制定し、新規プロジェクトと環境敏

感区の間の緑化帯建設措置を建設プロジェクト環境アセスメントにおける重要な要素と

し、環境アセスの審査要求とする。

2. 国土緑化と破壊された生態環境修復の加速

荒山の緑化を加速する。現有の山地森林資源の改造・グレードアップを適切に行う。生

態修復を施し、鉱山の植生回復を強化し、各種鉱区対策を強化し、回復条件を備えたすで

に生産停止・閉鎖した鉱山やその他採掘によって植生が破壊された区域を、すべて植生回

復範囲に指定する。現在、生産活動を行っている鉱山については、採掘を続けながら修復

を施し、生態鉱山の建設に努める。新規採掘場は修復と対策措置を同時並行で行い、各種

廃棄鉱区の対策を強化する。廃棄鉱山には基本的な対策あるいは生態修復を施し、生態植

生と景観が回復し、粉塵を抑制する。水土流失、鉱区の地盤沈下、山体の破損、湿地と海

岸帯での生態破壊区域の対策・修復を強化し、区域の自然生態機能を回復させる。奨励政

策を革新し、荒山・浜、廃棄鉱山、都市建設で発生した空地等の利用率を高め、緑化スペ

ースの拡大に努力する。都市建設改造、建設プロジェクトの付帯緑化用地指標を徹底し、

一回の提供で統一して徴用し、同時並行で建設することを目指す。

(七)区域管理メカニズムの革新

1. 環境情報公開の強化

都市環境大気の質の情報を適時に公布し、新規プロジェクトは環境アセスメントの状況

を公示し市民の意見を広く求め、重度汚染業種の企業や有毒排ガス排出に関わる企業につ

いては環境情報の強制公開制度を確立する。重点企業は汚染物質排出状況、対策施設の運

営状況などの環境情報を公開し、定期的に大気汚染物質排出のモニタリング結果を公表

し、社会の監督を受けなければならない。

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2. 区域の大気環境連合取り締まり監督メカニズムの確立

区域における環境取り締まりの監督管理を強化する。国・省管轄の重点企業および各行

政境界等の区域において連合取り締まり検査を行い、違法な汚染排出と「土小企業」(重

度汚染で後れた生産方法の小企業)の復活を集中的に取り締まる。期限内対策でも排出要

求を満たさない重度汚染企業は断固として操業停止する。工業プロジェクト移転の環境監

督を強化し、移転プロジェクトは国・省市の新規プロジェクトに対する環境保護要求を厳

格に適用する。

3. 重点建設プロジェクトの環境アセスメント協議メカニズムの確立

区域の環境大気質に重大な影響を与える電力・熱生産、石油化学、鉄鋼、セメント、非

鉄、化学工業などの廃ガス排出プロジェクトについては、区域計画環境アセスメントや、

区域重点産業発展計画環境アセス、区域環境大気質の現状の気候変動影響評価、気象災害

リスク評価を根拠とし、区域の大気質に対する影響を総合的に評価する。評価結果は対外

公表し、プロジェクトの影響が及ぶ範囲の市民と関連都市環境部門の意見を求める。

4. 重点産業の環境査定制度の実施

国の要求に基づき、火力発電、鉄鋼、非鉄、セメント、石油化学、化学工業などの汚染

物質排出量が大きい産業では、環境査定制度を実施する。査定で発見された環境保護違反

企業と、査定を申請していない、査定に合格していない、虚偽行為を行った企業について

は、法に基づき処理・処罰する。環境保護部門は企業の環境査定状況を公告し、企業の信

用、製品生産、輸出入査定の重要な根拠とする。

5. 環境の質に対する安全保障体系の構築

重度汚染気象予報警報メカニズムと大気質保障緊急対応制度を確立する。極端に悪い気

象条件、特にスモッグの予報警報活動を強化し、汚染過程の傾向分析と研究・判断を適切

に行い、環境大気質のモニタリングを強化し、予報警報を適時に発表し、市民が自己防衛

できるよう導く。省・市・区県、重点企業による一体的緊急対応システムを構築し、保障

任務を細分化し、2013 年 9 月までに、重度汚染気象応急対策を編制し対外公表し、省の環

境保護庁に届け出る。2014 年末までに、都市重度汚染気象観測予報警報システムの建設を

完成する。重度汚染天気の日は、適時に緊急措置を発動する。重度汚染大気の緊急対応処

置の順序を整備し、管轄区内の工業企業、工事現場、自動車の情報管理システムを確立す

る。汚染レベル別に企業の生産制限、工事停止、自動車交通制限案を決め、定期的に訓練

を行い、重度汚染気象発生時に適時に発動する。極端なスモッグ気象に対する緊急対応の

人工気象技術の実験・研究を行い、空気を浄化し、スモッグ気象の影響を軽減させ、持続

的重度汚染大気質が引き起こす可能性のある環境公共安全事件の発生を予防する。

(八)環境管理に対する経済奨励政策の充実

1. 税制補填奨励策の整備

老朽生産能力の淘汰するための財政支援を拡大する。火力発電、鉄鋼、セメントなどの

遅れた生産能力および、小型ボイラー、揮発性有機物排出業種の遅れた技術の淘汰の進捗

を加速し、奨励条件に符合するプロジェクトについては積極的に支援を供与する。大気汚

染対策技術のモデルプロジェクトへの支援を拡大する。老朽自動車の廃棄・更新への補助

政策を実施し、経済的奨励策により高汚染自動車淘汰の奨励政策を採択する。脱穀後の藁

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茎等の総合利用に対する税収優遇策を真剣に徹底する。政府のグリーン購買を推進し、強

制購買と優先購買制度を整備し、省エネ環境製品の比重を徐々に高める。

2. 価格と金融政策の一層の推進

脱硫電気料金政策を全面的に実施する。ピーク料金制、逓増制、賞罰制、季節制などに

よる電気料金の差別化措置を整備し、現有発電ユニットで新技術、新設備を採用して除塵

設備の改造を行うものについては価格政策の支援を供与し、火力発電所の排ガス脱硝費用

上乗せ政策を積極的に徹底する。環境、金融、証券などの情報共有システムを確立し、企

業の環境情報を銀行融資や上場資金調達の重要な根拠とする。エネルギー消耗が多く、汚

染が深刻な産業に対しては、金融機関は厳格な貸付基準を適用し、国の産業政策規定や環

境要求を満たさない企業とプロジェクトに対しては、いかなる形の信用供与も厳禁する。

環境違反の情報は人民銀行の企業信用調査システムに格納し、銀行監督部門間の環境情報

共有を強化し、企業の信用等級評定、貸付、証券融資と連動させる。環境リスクが高い企

業に対する環境汚染強制責任保険の実験的運用を展開する。

3. 揮発性有機物など汚染排出費用徴収政策の整備

国の要求に基づき、揮発性有機物排出汚染費用の徴収を展開し、塵埃排出費用徴収政策

を研究制定する。逓増制費用徴収制度を模索する。

4. 汚染排出許可証制度の全面的推進

大気汚染排出許可制度を全面的に推進する。二酸化硫黄、窒素酸化物、工業粉塵、揮発

性有機物を排出する重点企業は、2014 年末までに環境保護部門に対し排出許可証を申請

し、総量規制、排出費用徴収、環境取り締まりの重要な根拠とする。排出許可証を取得し

ていない企業は、汚染物質を排出してはならない。汚染排出取引の実験を継続的に推進

し、電力、鉄鋼、石油化学、建材、非鉄など重点産業に対し、主要大気汚染物質排出指標

の有償使用と取引制度を模索・確立する。

5. 汚染対策施設の建設・運営の特許経営の推進

火力発電所の脱硫施設の特許経営制度を整備し、脱硝、除塵、揮発性有機物処理などに

おける処理施設の社会化運営を展開し、施設の建設の質と運営効果を高める。環境施設の

運営資質許可制度を実行し、環境施設の専門化、社会化運営サービスを推進する。大気汚

染対策および自動車検査の市場参入メカニズムを整備し、市場行動を規範化し、企業に公

平な市場競争環境を提供する。

(九)関連部門合同による規制体制の強化

1. 統一の区域大気質モニタリング体系の確立

区域の環境大気質モニタリング体系の確立を強化する。「十二・五計画」の国家空気観

測網設置案の要求に基づき、都市大気質モニタリングスポットの建設を徐々に展開し、同

時に都市市街地以外の地域や輸送道路上に一定数量の区域モニタリングスポットを平均的

に敷設する。都市モニタリングスポットは細顆粒物、オゾン、一酸化炭素、透明度等の観

測能力を備え、全指標の観測を展開する。風速、風向、気温、気圧、湿度、降水量などの

気象要素の観測能力を増強する。2015 年末までに、区域の大気質モニタリング体系の建設

を完了する。大気環境のスーパーステーション建設を強化する。移動発生源による路側環

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境への影響を観測する。データの質の管理を全面的に強化し、モニタリング技術管理とデ

ータ審査を強化する。

2. 重点汚染源の監視抑制体制の強化

国・省管轄の重点汚染源における二酸化硫黄、窒素酸化物、顆粒物のオンラインモニタ

リング機能を全面的に強化する。2014 年末までに、全ての重点汚染源にオンラインモニタ

リング装置を取り付け、環境保護部門と連動する。揮発性有機物、水銀のオンラインモニ

タリングを積極的に推進する。モニタリング部門による揮発性有機物、水銀のモニタリン

グ能力建設を強化する。市レベルの大気汚染源モニタリング能力建設をさらに強化し、既

存のネットワーク設備を基礎に、省・市・区県三レベルの自動モニタリング体系を整備

し、大気汚染源データの収集処理、分析評価・応用能力を高める。重点汚染源の自動モニ

タリング体系データの有効性の審査を全面的に推進し、自動モニタリング設備の運行状況

とそのデータ有効性水準を企業の環境保護信用等級に組み入れる。

3. 自動車の汚染排出抑制体制の推進

自動車汚染の監視抑制機関の標準化建設を加速する。2014 年までに、市レベルの自動車

汚染監視抑制機関の建設を完了する。自動車の汚染監視抑制能力を高め、新車、現在使用

している車両の環境情報共有を促進し、自動車のリモートモニタリング活動を全面的に展

開し、監視抑制水準を引き上げる。2014 年までに、自動車のリモートモニタリングの実験

を完了し、使用中の自動車のリモートモニタリング監視管理を実施する。

4. 汚染排出統計と環境の質管理能力建設の強化

国の要求に基づき、揮発性有機物と移動排出源からの排出を環境統計システムに組み入

れ、実態調査を行う。道路以外の移動排出源排出状況を調査し、道路以外の移動排出源排

出の係数と動態を把握する。顆粒物の分散排出調査の研究を行う。微細顆粒物汚染が深刻

な都市は発生源解析作業を行い、市民の健康に有害で大気質の改善に影響する区域的に特

徴ある汚染物質に対し、定期的に大気質調査性モニタリングを行う。環境の質に基づく区

域の大気環境管理プラットフォームを建設し、尺度が多く解析率が高いインベントリを編

制し、越境汚染物質の排出源の識別、生成原因の分析、抑制案の定量化評価の総合能力を

引き上げる。

三、重点プロジェクト

(一)プロジェクト全体状況

「十二・五計画」期間中の重点プロジェクトは以下 17 項目に分類される。

①工業廃ガス対策(二酸化硫黄汚染対策、窒素酸化物汚染対策、工業顆粒物対策、重点

業種の揮発性有機物汚染)、②粉塵総合対策、③オイルガス回収対策、④「黄標車」と老

朽車淘汰、⑤モニタリング(区域大気質観測網構築、企業汚染排出オンラインモニタリン

グ)、⑥揮発性廃ガスモニタリング施設建設、⑦自動車リモートモニタリングプラットフ

ォーム構築、⑧電力産業「上大圧小」、⑨新設の熱供給、熱源管網および老朽熱供給網の

改造、⑩グリーン建築、⑪既存建築の省エネ改造、⑫再生可能エネルギー応用、⑬後れた

生産能力の淘汰、⑭天然ガス応用改造、⑮造林・都市緑化、⑯洗選炭、⑰石炭・水スラリ

ーなど。

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(二)プロジェクト要求

国の重点区域の大気汚染対策「十二・五」計画に含まれる重要プロジェクトは、国の計

画の要求に基づき期限通りに完了し、その他プロジェクトは『山東省 2013-2020 年大気汚

染対策計画一期(2013-2015)行動計画』の要求に基づき期限通りに完了する。

四、保障措置

(一)組織指導の強化

エコ淄博建設指導小組は、大気汚染区域の連合対策・抑制措置を統一・協調して指導

し、各区・県も関連措置を講じる。各区・県人民政府は管轄区内の大気質に責任を負い、

大気環境管理機関とチーム設置を強化する。各区・県は大気汚染対策活動の専門職員を配

置し、「政府主導、城郷共同、部門連携、区域ごとに責任分担」の活動体制を確立する。

各区・県政府および関連部門は、区域大気汚染対策活動を高度に重視し、目標を明確に

し、措置を整備し、把握し徹底し、政府が総責任を負い、各関連部門が作業を分担する活

動態勢を形成する。

(二)審査評価の厳格化

各区・県、関連部門は本行動計画要求に基づき、項目ごとに任務を細分化し、各自の職

責内における大気汚染対策措置を適切に行い、厳格に目標責任制度を実行する。各区・県

政府は環境保護、発展改革、経済情報化、城郷住宅建設、公安、交通運輸、農業、林業な

ど部門から大気質管理の統一・協調機関を設立し、各汚染対策措置の実施状況を定期的に

調整・検査する。各区・県政府は毎年、行動計画の進展状況と完成状況を評価、審査し、

検査、評価、審査結果は、指導の総合審査・評価および関連企業責任者の業績評価の重要

な根拠とする。市政府は毎年、関連部門を組織して計画と行動計画の執行状況について評

価、審査し、検査、評価、審査結果は、指導幹部の総合審査・評価および関連企業責任者

の業績評価の重要な根拠とする。

(三)資金投入の拡大

政府、企業、社会の多次元投資メカニズムを確立し、融資ルートを拡大する。汚染対策

資金は、主に企業自体が調達し、政府資金は、長期計画と行動計画に組み入れた汚染対策

プロジェクトに優先的に投入する。各レベルの財政は、モニタリングや監督管理の能力建

設と取り締まりのための経費を予算に組み込んで保障とし、かつ、大気汚染対策専用資金

を設立し、長期計画と行動計画に組み入れた汚染対策プロジェクトを重点的に支援し、

「奨励によって補助に代える」などの方式を採用する。期限までに完了した大気汚染対策

任務や、環境大気質を改善した先進都市を奨励し、期限までに完了しなかったプロジェク

トについては、メディアを通じて公表し当該企業或いはグループのプロジェクト批准を制

限する。政府主導で社会参加型の投融資ルートを確立し、金融機関の大気汚染対策プロジ

ェクトに対する信用供与を奨励・指導する。二酸化硫黄排出指標の有償取得と汚染排出権

取引の実験を積極的に展開し、市場メカニズムによる資源配置作用を十分に活用し、総量

規制と汚染排出権取引を通じて、最小の対策コストで最も良い排出削減効果を目指す。

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(四)科学技術基盤の強化

企業を主体とし、市場が誘導し、政府、企業、大学、研究機関、金融部門などが共同参

与する環境保護科技・産業革新の連盟を確立する。大気酸化の過程、発生源寄与、区域性

汚染影響要因、カーボン排出、捕集、転換、封じ込めなどの研究を強化し、大気汚染対策

における科学技術基盤を強化する。構造調整、汚染対策、循環利用、環境管理などの分野

から着手し、大気汚染対策の環境問題のボトルネックを解析・突破し、淄博の実情に適し

た一連の重要共通技術を攻略する。クリーン生産、高効率除塵、細顆粒物抑制、多汚染物

質の協同抑制、クリーン石炭燃焼、海洋による二酸化炭素吸収、モノのインターネットに

よるモニタリングなどの先進技術を転化・応用する。一連の汚染対策、循環利用モデルプ

ロジェクトを実施する。関連科技計画(専門プロジェクト)において、区域大気汚染対策

科技研究・開発および、国外の先進・実用技術の導入・吸収に対する支援を拡大する。大

気汚染総合対策における重大科技専門プロジェクトの推進を加速し、光化学スモッグ、煙

霧、細顆粒物、有毒有害ガスの汚染メカニズムと抑制対策研究を展開する。実験区での技

術向上の持続的発展を可能とする科学技術プロジェクトを起動し、区域汚染総合対策技術

モデル区を確立する。大気複合汚染抑制対策システムおよび、アンモニアによる大気環境

影響を研究する。工業細顆粒物抑制技術、工業揮発性有機物汚染対策技術、燃焼工業ボイ

ラーの高効率脱硫・脱硝・除塵技術、セメント産業の脱硝技術、石炭発電所の水銀除去技

術、クリーン石炭燃焼技術、重点業種の多汚染物質協同抑制技術の研究を強化する。自動

車汚染物質モニタリングとモノのインターネット技術の研究開発・モデル事業を強化す

る。実用技術を積極的に推進し、重点汚染源処理の先進的成果実用化を重点的に支援す

る。クリーンエネルギーおよび代替可能エネルギーの研究開発を強化する。

(五)省エネ環境社会化サービス体系の確立

体制メカニズムの改革を深化し、環境監督を強化する。大気環境保護対策の政策要求を

有効に省エネ環境の市場ニーズに転換する。グリーン産業国際博覧会の役割を充分に発揮

させ、需給マッチングの公共サービスプラットホーム建設を強化する。省エネ、工業、農

業、都市廃棄物循環利用の促進に有利な制度体系を整理し、環境サービス産業を大いに発

展させ、「エネルギー合同管理」、「環境合同管理」、BOT(建設―経営―引き渡し)、TOT

(引き渡し経営権)、BT(建設―引き渡し)、TO(引き渡し―経営)など省エネ・環境施

設の社会化投資と運営管理の新モデルを推進する。

(六)環境取り締まりの監督管理体系の強化

大気汚染対策部門の連合取り締まりメカニズムを確立し、環境取り締まりの監督を強化

する。日常監察と専門監察、専門監督と社会監督を融合し、上下連動、部門連携による取

り締まりを展開する。看板を掲げて監督し、定期的に通報、認可制限、面談など総合措置

をとり、重点区域と産業の突出した環境問題を処理する。環境保護専門行動を深く行い、

市民の関心が高いホットな問題、難しい問題を着に解決する。

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(七)宣伝、教育の強化

大気汚染対策の市民対策の水準を高め、党委政府主導で全社会参加型の、良好に相互連

携する大気汚染対策の枠組みを構築する。環境の宣伝教育活動を広く展開し、生態文明宣

伝を強化する。世界環境デー、アースデーなど重大環境記念日を宣伝のプラットフォーム

として活用し、大気環境保護知識を普及し、市民の環境意識を全面的に高める。生態倫理

道徳を大いに提唱し、生態文明教育を市民教育体系と小中学校教育課程や幹部育成訓練の

重要な要素として組みこみ、企業、城郷・社区など市民に生態文明教育と科学普及を宣伝

し、全市民の生態文明意識を高める。基層党組織、労働組合、共青団、婦女児童工作委員

会、学校、その他社会団体の役割を充分に発揮し、大気汚染対策活動に対する各界の関

心、支持、参与を引き出す。省エネ・省資源、生態環境保護の産業構造と発展方式を推進

し、全社会に文明、節約、グリーン環境生産・消費方式と生活習慣を提唱し、市民がる環

境保護活動に参与する能力を絶えず増強する。大気環境保護におけるメディアの役割を充

分に発揮させ、区域大気汚染連合対策連合抑制の重要性、緊迫性と、政策措置とその成果

を積極的に宣伝する。大気汚染対策の良い例・悪い例の典型的報道を展開し、世論の監督

を強化し、大気環境質改善のために良い雰囲気をつくる。政府環境情報公開制度を実行

し、企業が自ら情報公開するよう促し、政務ウェイボ―など新たなメディアルートを確立

し、環境質状況と評価審査結果を適時に社会に公布し、市民の環境情報を知る権利、議事

権、監督権を擁護する。部門と市民の良好な連携システムを構築し、環境陳情と取り締ま

りの連動システムを整備し、環境陳情プラットフォームとホットラインをスムースにし、

民意に耳を傾け、適時にホットな問題、難しい問題を解決し、市民による監督を自発的に

受ける。

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(2)山東省政府・淄博市政府とのモデル区推進のための現地協議

①中国側出席者名簿

淄博市モデル区小組との会議 出席者名簿

日時:2016年 3月 1日 9:00~12:00

出席者:

淄博市環境保護局 局長 于照春

淄博市環境保護局 副局長 呉国棟

淄博市節能監測中心主任 監察支隊副支隊長 劉勝本

淄博市発展改革委員会 副調研員 于道琪

淄博市科学技術局 秘書 呉叶娟

淄博市商務局 市貿促会副会長 孫建博

国家発展改革委員会 宏観経済研究院 対外経済合作辧公室 亜非一部 主管 喬良

山東省環境保護庁 科技国際合作処 副処長 範斐朗

山東省外事辧公室 亜洲処 処長 馬軍

山東省外事辧公室 亜洲処 崔璐

淄博市外事僑務辧公室 副主任 王建忠

淄博市企業との面談 出席者名簿

日時:2016 年 3 月 1 日 14:00~15:30

出席者:

<企業>

山東アルミ工程技術有限公司 張茂軍 工程師

山東依廠物流有限公司

派力迪環保工程有限公司 経理 蘇穎

派力迪環保工程有限公司 王娜娜

<市政府>

淄博市環境保護局 副局長 呉国棟

淄博市環境保護局 科長 殷現偉

国家発展改革委員会 宏観経済研究院 対外経済合作辧公室 亜非一部 主管 喬良

山東省環境保護庁 科技国際合作処 副処長 範斐朗

山東省外事辧公室 亜洲処 処長 馬軍

山東省外事辧公室 亜洲処 崔璐

淄博市外事僑務辧公室 副主任 王建忠

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張波山東省環保庁庁長との会見 出席者名簿

日時:2016 年 3 月 2 日 14:00~14:30

出席者:

山東省環境保護庁 庁長 張波

山東省外事辧公室 副主任 李栄

国家発展改革委員会 宏観経済研究院 対外経済合作辧公室主任 牟雄兵

山東省環境保護庁 科技国際合作処 副処長 範斐朗

淄博市環境保護局 副局長 呉国棟

淄博日中大気汚染対策モデル区推進座談会 出席者名簿

日時:2016 年 3 月 2 日(水)15:30〜18:00

出席者:

山東省環境保護庁 副庁長 謝峰

山東省外事辧公室 副主任 李栄

国家発展改革委員会 宏観経済研究院 対外経済合作辧公室主任 牟雄兵

国家発展改革委員会 宏観経済研究院 対外経済合作辧公室 亜非一部 主管 喬良

山東省環境保護庁 大气処処長 肖紅

山東省環境保護庁 科技国際合作処 副処長 範斐朗

山東省環保技術服務中心主任 王青

淄博市環境保護局 副局長 呉国棟

山東省外事辧公室 亜洲処 崔璐

淄博市外事僑務辧公室 副主任 王建忠

山東省環境保護庁 科技国際合作処 主任科員 郭瑩

山東省環境計画院 主任 彭岩波

②山東省省エネニーズ

2016 年 3 月 2 日 山東省環境保護庁科技・国際合作処提供

1.投資合作分野

(1)大気汚染対策

目標:2020 年までに、環境空気主要指標年平均濃度 2010 年比 50%改善

①石炭燃焼発電所・ボイラーの全面的超低排出改造

②新エネルギーの開発によるエネルギー消費、CO2 排出の低減

③都市粉塵・道路埃舞い上げ汚染問題の解決

④都市緑色公共交通システム建設

⑤揮発性有機物、悪臭等工業異臭汚染対策

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(2)水質汚染対策

目標:2020 年に省管轄の重点河川が基本的に水環境機能区画の要求を達成、重要飲用水源

地の水質安全が効果的に保障され、全省の地下水の質の検査地の水質ランクが安定し、近

海の水質が安定改善

①再生水循環利用システムの構築と退化した湿地の修復・保護強化

②化工企業集積区の地下水汚染防止

③河川・湖沼の底泥汚染対策の実証拠点の拡大

④メタン発酵による悪臭発生と、市街地の汚水直接排出問題の解決

⑤重点河口海湾の海岸帯湿地、海洋生態システム保護・修復の強化

⑥都市集中式飲用水水源の保護強化

(3)農村と土壌環境保護

目標:2020 年までに小康社会とエコ山東にふさわしい農業農村生態環境実現のため、土壌

汚染対策システム確立を順次模索

①農村飲用水安全保障

②農村面源汚染防止と農村環境総合整備の秩序ある推進

③農村家畜家禽養殖等の有機廃棄物総合利用の推進

④農村地区の工業汚染を厳しく規制

⑤植物による土壌汚染防止

⑥都市の汚染土地の再開発利用

2.技術・設備分野

(1)水環境機能区の総合規制達成関連

①水処理システムの適正化・第三者による対策技術。目下、排水処理施設のエネルギー

消費は高止まりし、環境保護産業は同時にエネルギー高消費産業となっている。専門の対

策任務を専門の第三者企業に任せ、施設の運営の質を保証させる。

②農業面源汚染対策技術。山東省の農業面源総合整備は当面の緊急実施が必要な活動と

なっている。

(2)区域性大気汚染環境質改善関連

①大気汚染物質の超低排出技術。湿式静電除塵技術は大気顆粒物質の排出を 5 ミリグラ

ム/立方メートル以下にすることができるが、建設コストが高く、エネルギー消費が高い

問題があり、この技術の適正化・グレードアップが必要である。

②クリーンコール利用技術。大気環境質の持続的明確な改善は、工業企業の汚染排出改

造だけでは実現できない。分散して使用される石炭のクリーン利用をさらに重要視しなけ

ればならない。そのため、クリーンコール利用技術を導入する。

③その他技術。たとえば、固形廃棄物、土壌修復、重金属汚染防止、河川ヘドロ無害化

処置、工場跡地面源修復、地下水汚染防止、環境の質のモニタリング技術。

(翻訳)日中経済協会

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③発言記録

(出張報告)山東・淄博日中大気汚染対策協力モデル区推進のための現地協議

中国側発言記録(速報/概要)

2016 年 3 月 2 日(水)山東省淄博市・済南市

Ⅰ.淄博市環保局との総括会議での確認事項

1 指導小組の現行体制

正式な名簿・体制表は早急に出す。組長は周蓮華市長、副組長は李燦玉副市長(劉東軍

副市長から担当変更)と于照春環保局長(変更無し)の二人。実務責任者は環境保護局の

劉雲龍副局長から呉国棟副局長に交替(所管分野変更のため)。事務局は環保局に一本

化。ただ、商務局の参与など全体的な機能は不変。

2 全体計画(7 月に日本側に提出した「市大気汚染防治行動計画」のは「意見徴求

稿」)

市の大気汚染防治行動計画は、予算がやっとついて 2015 年末に公開入札、山東省環保

規劃設計院が落札した。日中モデル区単独の計画は作っていないが、全体の行動計画の中

で、13 次五カ年計画に基づいて触れることになろう。中長期目標を設定する。

3 日中協力プラットフォームの設立について。2014 年当初、淄博側から提起した「日

中環境産業園区」構想については、当初誘致場所も想定していたが、進展がなければ他の

目的に使われる。具体的に日本からの進出・拠点設置などニーズが出てくれば用地確保は

問題ない。

4 マッチングは VOC などテーマを専門化し、企業を精選して実施したい。

5 可能性のあるプロジェクトの支援

「緑動力」※、13 次五カ年計画もモデル区のプロジェクトになる。淄博市が山東派力迪

環保工程有限公司と共同で準備中のインターネットの省エネ環保情報サイト「第二環保

網」に、この大気モデル区の情報も掲載したい。ただし、対策の期限が非常に切迫してお

り、日本側の従来のスピード感では間に合わないのではないかと懸念している。是非中国

の現場の速度感を共有し、対応して欲しい。

6 2016 年の活動

汚染問題の解決は資金+技術。特に技術。テーマは絞り込む。「緑動力」※の重点であ

る石炭燃焼の超低排出や、VOC は取り上げて間違いのない分野。

これまで日本企業が単独で来る場合でもそれぞれ対応してきたが、効率が悪い面もあ

る。

滙豊石化公司が導入している川崎同方のヒートポンプは今期順調に運転中で、データも

着実に集積している。熱供給期間が終わる 3 月末を待って評価を行い、日本の技術の導入

成功例として周知・広報したい。「緑動力」の資料・プロジェクトリストは提供する。

1、2(個)のプロジェクトを厳選し、リソースを集中して重点的に育成することに賛

同。

重点支援プロジェクトは、すでにお互いに交渉があっていろいろ話をしており、プロジ

ェクト自体に代表性があり、価値があることが必要。年内にプロジェクトを形成するのな

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ら、今から更地で始めるのでは間に合わない。候補となりうる日本の企業のリストを出し

てほしい。

家庭用ヒートポンプ、VOC 処理(塗装業向け VOC 回収技術など)、省エネ診断について

状況を紹介し、データを提供。市内企業によく紹介してくれるよう依頼したのに対し、承

諾。

7 ライフサイクルでのコスト評価を企業に取り入れてもらうため、例えばそうしたほ

うが企業にとって得になる制度づくり(企業の格付けアップや融資条件の優遇等緑色金融

を含む)などを双方で検討すべきと日本側から提起。ただ一定の時間がかかる運転結果を

どう導入前の企業判断に生かせるのか、検証手段や時間の問題、更に政府として企業の判

断に強制介入はできない等、現実的には多くの問題有り。

※「緑動力」山東省が推進する「工業緑動力推進計画」にあわせ、淄博市は「緑動力グレ

ードアッププロジェクト」を提唱、重点は石炭燃焼ボイラー、建材、冶金等 18 項目 1500

プロジェクトで、大気環境の明確な改善を目指す。2016 年、17 年 2 年で完了。16 年に 8

割、17 年に 2 割達成の計画とのこと。

Ⅱ 山東省環保庁張波庁長の発言

(要旨)

1 スピード感を持って精度の高いマッチングを

2 中国企業の意識が、耐久性など価格以外の要素重視に変化中

・モデル区は、プロジェクトによる推進を目指している。第 10 回日中省エネルギー・環

境総合フォーラム(以下「フォーラム」と略)に向けて具体的な成果を上げたい。

・山東省環保庁としては、大気汚染対策を突出した位置に置いている。市場は大きく、問

題も多い。日本の技術は有用。実務的協力を強化し、結果を出さなければならない。庁と

してこの事業を支援する。

・積極的に進んでいるが、今の状態は理想的ではない。まずは信念をもち、双方の優位性

を補完し合う切り口を見つけなければならない。合作の結果がないということは想像でき

ない。

・緑色博覧会(山東省主催の省エネ環境博覧会、隔年開催)への参加も歓迎する。中国側

のニーズに基づき、日本側で何ができるかを明確にしてさらにマッチングを進めたい。そ

のために情報交換を進め、いろいろな層・面でマッチングを実務的に進めなければならな

い。

・価格が高いには高いなりの理由がある。耐久性があるなど。中国も観念が変化してい

る。価格の要素はすでに最大の問題ではなくなっている。(価格だけで評価しないよう

に)企業を誘導していかなければならない。

・日本側には、日本の優位性がどこにあるかをよく見いだしてほしい。中国の市場はいろ

いろなプレーヤーが活動し競争が激しい(国内外ともに)。もちろん合法的な権利は守ら

れる。知財権の監督管理も強化している。知財権保護は、まず技術に優位性があり、保護

するに値する技術なのかどうかが前提。

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・交流を強化し、「精准対接」(精度の高いマッチング)を行う。現在は潜在している市場

ニーズも探さなければならない。その上で、我々も服務(サービス)を強化する。政策内

であれば補助も受けられる。

・山東の特徴は地方保護をしないこと。競争が公平であって初めて技術が根付く。

・多くのことを同時に進行させる。情報を協会にどんどん提供する。日本側もその優位性

のある企業・技術の情報を科技処に提供してほしい。情報の往来をする中で、潜在的な需

要・シーズも発掘される。

・山東は全国で最も汚染がひどい省だが、淄博は特に深刻で、モデル的な作用が期待でき

る。しかし、対策の進度も非常に速い。このスピードに乗り遅れると間に合わない。例え

ば山東省の河川流域汚染対策の進捗状況は、海外の人々が思っても見なかったほど速く進

んでいる。山東の水質はすでに 1985 年よりも明らかに良くなった。自分は、大気汚染も

2020 年までには明らかに改善すると考えている。つまり、2010 年比 50%改善できるとい

うことだ。

・緑博覧会は 03 年に始めた。2 年 1 回だったが、現在は「1 ヵ月に 1 回」のペースで日常

的に絞り込んだ分野でマッチングを行っている。参加者は少人数で、20 社ほどのときもあ

る。効果は良い。

・日中は文化的に異なる。理念上の障害もあるが、辛抱強く克服して行かなければならな

い。(以上)

Ⅲ 淄博日中大気汚染対策モデル区推進座談会 参加者発言要旨

1 日中経済協会(中島部長)

今回の出張目的、日本側の現状認識と提案について紹介

2 淄博市環保局(呉国棟副局長)

(1)2014 年にモデル区となった。担当副市長が 4 人交替するなど担当者の調整が続い

たが、取り組みの機能自体は変わっていない。全体計画については山東省環保規劃設計院

が落札し、編成中。中長期目標を確定し、13 次五カ年計画と結合させる。

(2)個別プロジェクトの進展状況(省略)

(3)今後の活動 ①交流・意思疎通メカニズムを確立する。情報の共有を強化。例え

ば第二環保網にモデル区のコンテンツを入れる等。②技術指導の強化 科技院などの専門

家に支援をあおぎ、判断力を強化したい。③引き続き活動に注力する。

3 国家発改委宏観経済研究院対外経済弁公室(牟雄平主任)

大気対策はフォーラムでも活動重点であり、本モデル区については発改委も関心高い。

今回参加した目的は、

(1)状況の理解 来る前に環資司・外事司とも情報共有し、支援の可能性などの話を

してきた。日中経協とは 04 年から交流開始、最も核心的なプラットフォームと認識。淄

博モデル区のプロジェクト推進にはイスラエル、米国、韓国との外経弁の経験が活かせ

る。先進国との合作は理念の転換が必要。価格問題もあるが、どこまでが政府、どこまで

が企業なのかをよく検討すべき(すべて市場化、企業任せにすることはできない)。

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(2)国家発改委—日立製作所の協力例の紹介 07 年調印、これに基づき雲南省で電機シ

ステムの余熱余圧利用技術を 2 社と契約、価格は GE や国内より高かったが、省・国発改

委の支持で契約。省エネ 27%減を検証、一度に 100 台が売れた。

つまり、国の関連部門の政策を十分理解することが大事。この事業はまだ中央の機関に

おいては知名度が限定的。フォーラムの力を利用すべきだ。さらに多くの日本企業を巻き

込むにはもっと効果的な努力が必要。

(3)価格問題 フォーラムには輸出入銀行や関連基金など金融機関も動員している。

イスラエル、インド、韓国等とはそうした力も活用し企業の過度の資金圧力の解決を支援

につなげている。

(4)協会とは実務的協力ということで交流しているが、それはまさに国家発改委が求

めていること。「精准交流」は望むところ。協会とは日常的交流メカニズムもできてお

り、積極的に本事業に協力したい。

4 省環保庁科技・国際合作処(範斐朗副処長)

山東省の大気・水処理のニーズの方向を紹介。

大気は 2020 年に 2010 年比 50%改善を目指し、石炭火力発電、新エネルギー、都市の粉

塵、公共交通機関、VOC・悪臭対策など。

水処理は再生水、湿地整備、化工企業の地下水汚染、ヘドロ、河川生態保全、都市農村

飲料水など。

5 省環保庁大気処(肖紅処長)

大気汚染対策は 13 次五カ年計画の重点。燃焼・工業がメイン。自動車排ガスが主の北

京、上海とは異なる。「緑動力」というキーワードで、省エネ+環保を組み合わせて対策

を講じることになった。特に石炭燃焼の超低排出を目指す。発電機とボイラーを対象にし

ているところが特徴。

山東省の工業汚染は、火力発電、重化学などの伝統的な汚染の負荷が多いのが特徴で、

これが 13 次五カ年計画の重点。国外の技術が必要なものとしては、コークス工場の脱硫

脱硝、建材(ガラスなど。小企業も多い)もある。対策を採り設備が稼働したが、運転し

ているのに基準未達成という状況も多い。

そもそも汚染を出さない、汚染源抑制も大事。

ライフサイクルでの評価という話があったが、低価格で落札し、運転中に安定した基準

達成ができない問題,実際の運営部門と、設備購入部門が異なり、一方は安く買って、一

方は運転で非常に苦労する、あげくにメンテナンスで非常に金がかかるという問題は存在

する。鉄鋼の生産ラインなど、全体を考えたソリューションが必要。鉄は工場面積も広

く、排出源が多く点在。こういう場合の管理方法も知りたい。

粉塵は国土部門が主管。日本の工事現場は非常にきれいだが、コストも大きく、それが

全体のコストのかなりの部分と聞く。もっと安く良い方法があれば知りたい。船舶の汚染

排出も問題、交通部にも技術の情報等提供してはどうか。山東省は還渤海地域等船舶から

の排出量が大きい。燃料添加剤などについては、4 月 1 日から国五排出標準が適用される

のでチャンスかもしれない。

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6 省環保技術服務中心(王青主任)

環保面でのマッチングの需要が高く、13 年から専門の技術交流会を行っている。テーマ

を選び、公開通知して企業が応募、これを専門家に技術評価してもらい、適切なものを選

び、マッチングのプラットフォームに載せる。山東省の汚染対策プロジェクトに合わせ、

発電所、ボイラー、VOC などを取り上げた。生態高層論壇、緑色博覧会も環保部とともに

実施している。今年は 11 月第 1 週に青島で開催の予定。

価格が高い問題。2015 年より新環保法施行、執行は非常に厳格。検査に合格しなければ

ならない。企業は、生存のために長期安定した運営が必須となっており低価格競争から

徐々に脱却しつつある。技術がよければ市場はあるはずと確信。

モデル区に対して当中心ができることについて。①大気は重要なので毎年発電所、ボイ

ラー向け対策の技術のマッチングを実施。ここに参加してはどうか。韓国は日常的に参加

している。②「精准対接」には支援サービスも向上が必要。まず省エネ診断を省政府のプ

ラットフォームで行い、その後を服務中心でフォローすることもできる。長期的に絶え間

なくマッチングを行う。

ライフサイクルでの評価について。当服務中心は客観的な第三者として、また政府の背

景がある機関として評価が可能。専門家を組織してきちんと評価すれば中国企業も受け入

れやすいのではないか。

中日双方が資金を持ち寄ることも必要。

成功事例を、まず一つのプロジェクトに力を集中し、当中心も支援サービスを提供し、

作り上げ、現場見学などを通じて普及させたい。

7 省外事弁公室(李栄副主任)

本モデル区は、日中経協と省との合作を基礎として、大気ネットワークの活動に呼応し

て、当時、検討した結果、最終的に淄博に決め、郭樹清省長と岡本日中経済協会理事長が

合意したもの。この仕事は淄博だけの仕事でなく、省の仕事でもある。

提案としては、

(1)省市連動メカニズムの確立 淄博市は、このモデル区をどう活用するかを学ぶべ

きだ。中央、省の政策や、日中経協という日本側の窓口をどう使うのか。淄博は市だけで

やろうとせず、積極的に省の支援を取り付けてほしい。連動メカニズムは淄博が提案し、

イニシアティブを取り、市だけで悩まず、このメカニズムにどんどん問題を提起して解決

していく。国家発展改革委員会宏観院外経弁公室にも積極的な参加を願いたい。

(2)プロジェクトの格上げ これは中国で、最初の中日大気汚染プロジェクト。唯

一、山東がやっている。国家級に格上げをし、全国のモデルにしたい。なお、山東とイス

ラエルはそれぞれ 50 万ドルずつ出して合作基金を作り、以奨代補(奨励金を以て補助金

とする)に使用。大きな金額ではないが効果をあげている。

(3)日中経済協会とは 30 年の交流関係あり。省環境庁が積極的にかかわることを期

待。

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8 省環保庁総括(謝鋒副庁長)

(1)省市連動メカニズムを設置する。環保庁、外弁、淄博、科技服務中心は必ず入

る。提案は淄博市が行う。淄博市は、こういうことを提案したら不適切ではないか、など

の余計な心配をしないこと。呉副局長の弁公室が中心となり、範副処長、肖処長、王主任

はかならずメンバーとする。財政庁も参加させる。国家発改委宏観院外経弁公室にも出席

を招請する。

国家級への格上げは、個別の実績も必要と思う。

(2)情報交流 本事業の立ち上げは良好であった。ただ、中国経済の構造調整やグレ

ードアップなどもビジネスに影響している。一方、環境規制の厳格化は着実で、環保は企

業の生命線、これをクリアしなければ存続できない。

従って、ライフサイクルでの分析は非常に重要で、単なる価格はすでに問題ではなくな

っている。自信をもち、意思疎通を強化すべき。滙豊化工での川重のヒートポンプの例は

非常に良い。是非横展開を(呉副局長、問題ないと回答)。淄博市内、緑博会、フォーラ

ムで情報をどんどん発信、交換する。日立の省エネの例もよい。なお、燃料添加剤は、山

東省には自動車用ガソリン・ディーゼルオイルの基準があるので、それをクリアしていれ

ば全省に普及可能。

(3)考え方を広く、楽観的に持つこと プロジェクトが一つできなかったからといっ

てがっかりしない。10 に 1 つ、100 に 1 つでもかまわない。良いケースを宣伝していく。

協会を通じて紹介されたものでなくてもよい。2015 年 12 月 15 日、山東で中日韓緑色金融

論壇を開催した。政府が多大な投入をしているのになぜ成果がでないのか、それは評価メ

カニズムがないからだ、という反省のもとに、基金会をつくり、専門家が評価して以奨代

補でやっていく方向になっている。リスクは当然ある。緑博会でもテーマは絞って行う

が、石炭火力の超低排出がテーマの一つになろう。

9 淄博市環保局(呉副局長)

(1)すぐに市にきちんと報告、市としての推進体制を充実させる。

(2)省市連動メカニズムなど交流体制の確立 全体計画編成の目処もついた。

(3)日本側とよりよく情報交換をする。一つ一つの活動について自分が責任を持って

目配りする。(以上)

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3.中国節能低炭素博覧会

(1)メインフォーラム講演概要

1.出席者

全国人民代表大会常務委員会顧秀蓮副委員長、国家発展改革委員会張勇副主任、中国気

候変化事務解振華特別代表、全国人民代表大会財経委員会傳志寰主任委員、中国節能環保

集団王小康董事長らが出席。

2.発言概要

(1)全国人民代表大会常務委員会顧秀蓮副委員長

(要人発言写真出典:中国報道網 http://www.chinareports.org.cn/ より。以下同じ)

・中国共産党第 18 期全国代表大会以来、中国共産党中央では生態文明建設を高度に重視

し、生態文明建設を中国の特色ある社会主義事業の五位一体全体計画の中に組み込んで

いる。今年 4 月には「生態文明建設推進加速についての意見(关于加快推进生态文明建

设的意见)」が中央より打ち出され、更に生態文明建設についての全体要求、目標、重

点任務、制度体系が明確となった。そしてその際に、新型工業化、情報化、都市化、農

業現代化の推進を基礎としつつ、初めて「緑色化」というキーワードが加わることとな

った。第 18 期五中全会では更に緑色発展を 5 大発展理念の一つとして、生態文明建設

に対する新たな更に高い要求を示すこととなった。

・今回の省エネルギー博覧会は「緑色生産、緑色生活」をテーマとし、国際・国内の先進

的な省エネルギー低炭素技術と設備を展示すると共に、省エネルギー排出削減領域にお

ける政府指導者、専門学者、業界トップを集めて、高いレベルと深さをもった対話交流

を行うものであり、中国経済社会発展方式の転換、構造調整に内在するニーズと緑色発

展の世界的な潮流に合致するものである。緑色化は生態文明建設実現のための重要な指

標であるとともに、生態文明建設推進に向けた実践方法でもある。そして発展方式、生

活方式、制度体系等方面の緑色化レベルの向上が本質的に求められている。我々は新常

態に適応し、また新常態を積極的に受入れ、緑色発展をしっかりと推進することで、自

然環境を保ちつつ持続可能な発展の道を進まねばならない。

・生態文明建設を推し進める際の 5 つの方面からの新たな要求として以下の通り。

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①発展方式緑色化の推進。現在、世界経済は深い部分での調整期を迎えており、中国も成

長速度や発展構造の転換期を迎えている。経済社会発展が非常に複雑な局面を迎えてい

る中で、緑色化は中国のみならず世界経済発展推進に向けての新たな動力であり、問題

解決の道筋である。我々としてはこうしたチャンスをしっかりとつかみ、緑色化に向け

て生産力や伝統製造業の改造を推し進め、省エネルギー環境保護産業を代表とする緑色

低炭素循環産業体系を大々的に発展させ、科学技術レベルが高く、資源消費が低く、環

境汚染が少ない産業構造と生産方式を形成し、国民経済緑色化レベルを大々的に向上さ

せていかねばならない。

②生存空間緑色化の推進。都市と農村は我々の主要な生存空間であり、同時に緑色化の主

要空間でもある。自然環境を尊重し、資源環境受容能力に基づき、空間計画体系を健全

なものとし、異なる地域の開発レベルを科学的に確定し、科学的で合理的な都市空間を

建設しなければならない。新型都市化路線を進むことを堅持し、緑色都市化を推進し、

都市化の発展を外延拡張方式から内面レベルアップへと転換させなければならない。そ

して緑色生態都市区域を建設し、自然による干渉と損害を最大限減少させるようにしな

ければならない。美しい農村を建設し、生態文明を農村にまで広く普及させ、広大な農

村住民に恵みを与えるようにしなければならない。

③生活方式緑色化の推進。緑色化の偉大なパワーは市民大衆の中にこそあり、それは生活

方式のいたるところで貫かれており、生態文明・市民大衆と最も緊密なつながりがある

最も直接的な領域である。生活方式の緑色化を実現するため、先ずは観念の転換を図る

必要がある。生態文明主流価値観を大々的に提唱し、自然を尊重し、自然に順応し、そ

して自然保護の生態文明理念を持ち、「生態共通認識」を形成することである。そして

その次に実際の行動をしっかりと行い、社会大衆における日常生活の細々とした実際の

場面でそれらを推進し、倹約節約、緑色低炭素、文明的で健康的な方向に向けて転換を

し、贅沢・浪費そして不合理な消費を戒め、より多くの人たちに緑色生活方式を尊び実

践させるようにしなければならない。そして社会全体で緑色消費に向けての自覚を促

し、広い意味での「生態共通認識」を実際の「生態行動」へと転換させていかねばなら

ない。

④制度体系の緑色化推進。緑色化には系統だった完全な生態文明制度体系の保障が必要で

ある。法治思考と法治方式が緑色化の全過程を貫くよう徹底する必要があり、健全な生

態文明関連法律法規と標準体系を打ち立てる必要がある。そして法律と制度を用いて生

態文明の加速的推進を保障するのである。緑色発展と環境保護に有利な政策措置を実施

し、緑色・循環・低炭素発展メカニズムの形成を加速するのである。強固な規制と柔軟

な誘導により、資源開発利用行為を更に規範的なものとし、資源環境受容能力を顧みな

いやり方や盲目的な発展速度を追及する近視眼的な行為を阻止し、国民経済が緑色発展

モデルへと転換するよう推し進めていくのである。

⑤国際緑色化協力の強化。緑色発展には国境はなく、一国の環境状況は世界各国に影響を

与えるものである。生態文明建設を推進し、持続可能な発展を実現するためには世界各

国の共同の努力が必要である。我々は平等、互助、協力、そして Win-Win を旨として、

緑色科学技術国際交流を強化し、緑色産業国際協力に力を尽くし、各国と資源節約、環

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境保護、気候変動対応等の領域において更に広範囲で、深い協力を展開し、共同して緑

色発展を実現しなければならない。

・全面的に節約し、エネルギー資源を効率良く利用し、根本的にエネルギー資源の開発利

用を減少させることにより、環境の汚染と破壊を減少させる必要がある。そしてより少

ない資源の使用で経済社会の持続可能な発展を支えることを実現するようにし、最終的

には良好な生態環境、持続可能な発展方式、人と自然とが調和した共生する生態社会を

形成するようにする必要がある。今回の省エネルギー博覧会と一連のフォーラムとが省

エネルギー低炭素先進技術の普及発展を推進し、省エネルギー環境保護産業発展に向け

た重要な探索とテストの場となることを期待している。また関係方面の皆さんが適宜今

回の経験を総括し、実際の効果を羅針盤として、絶えずレベルアップを深化させていく

ことを希望する。

(2)国家発展改革委員会張勇副主任

・我が国の資源環境が日に日に厳しさを増す中で、エネルギー資源の開発利用効率を向上

させなければならない。より少ないエネルギーにより経済社会のより高品質で持続可能

な発展を支えなければならない。そのためには我々は効果的な措置を講じなければなら

ず、科学技術割合がより高く、資源消費が低く、そして環境汚染が少ない産業構造をよ

り優れたものにして、緑色計画を導き、緑色製品を生産し、緑色産業を発展させてい

き、経済の緑色化と緑色産業化をより深いところで有機的に結合させ、生産方式の緑色

化への変革を実現しなければならない。倹約節約、緑色低炭素、文明的で健康的な生活

方式と消費モデルをより早いペースで実現し、緑色消費を提唱するとともに、贅沢・浪

費・過度な消費を戒め、生活方式の緑色化を促進し、庶民大衆の広範囲な持続可能な緑

色の道を推し進めていかねばならない。

・第 11 次 5 カ年計画以来、我が国は省エネルギーを一つの指標として、省エネルギーに向

けた構造調整を行い、方式転換に向けた重要な手掛かり・突破口としてきた。そして省

エネルギー環境保護産業を戦略的な新興産業の一つとして、一連の政策措置を講じ、省

エネルギー排出削減と省エネルギー環境保護産業の発展を促進してきた。2006 年から

2014 年までの間、我が国は年平均 5.6 パーセントのエネルギー消費増加率により、年平

均 9.8 パーセントの国民経済成長率を支えてきた。累計で 13.1 億トンの標準炭を節約

し、第 12 次 5 カ年計画前半 4 年の単位GDPエネルギー消費を累計で 13.4 パーセント

削減することが出来、省エネルギー環境保護産業は長足の発展を遂げたのである。2014

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年までの省エネルギー関連サービス産業は、生産高は 2650 億元、投資額 959 億元、従

事者 56.2 万人、毎年の節約能力は 2996 万トン標準炭に達した。同時に中国は世界の

エネルギー消費大国であり、2014 年の中国のエネルギー消費総量は 42.6 億トン標準炭

で、世界のエネルギー消費総量の 23 パーセントを占め、単位GDPエネルギー消費は

世界平均レベルの 2 倍程度、先進的な国や地域の実に 3 から 5 倍にもなっていることを

はっきりと認識しなければならない。省エネルギー環境保護産業全体の発展レベルは未

だ低いレベルにあり、企業を主体とする省エネルギー環境保護技術イノベーション体系

は不完全であり、技術開発に向けた投資は不足しており、技術設備国産化のレベルも低

い。また企業規模は普遍的に小さく、産業集中度も低く、主要な主幹企業がもたらす作

用も更に向上させる必要があり、市場競争力も欠乏している。一口に言って、世界の先

進レベルと比較した場合、我が国のエネルギー利用効率はまだまだ大きなレベルアップ

の余地がある。一般大衆の美しい自然に対する強烈な要求に比べて、生態環境の質はま

だまだ厳しいと言わざるを得ない。穏やかな成長、構造調整という内在的な要求に比べ

て、省エネルギー環境保護産業発展の任務はまだまだ困難と言わざるを得ない。

・第 13 次 5 カ年計画期においては、緑色発展理念をしっかりと樹立し、環境保護という

基本国策に従って、必ずや生態発展・生活富裕の生態文明発展の道を歩まねばならな

い。そして資源節約型、環境親和型社会の建設スピードを速め、中国共産党第 18 期五

中全会精神をしっかりと貫徹し、全面的なエネルギー資源節約・高効率利用に向けて以

下の仕事を行う必要がある。

①エネルギー消費総量と強度の双方コントロール型の実施。第 11 次 5 カ年計画以来推進し

てきた省エネルギー排出削減の成功経験を総括し、エネルギー消費強度を指標として、

達成状況に対する目標責任評価制度を実施する。第 12 次 5 カ年計画ではエネルギー消

費総量を管理コントロール範囲としたが、第 13 次 5 カ年計画においては指標による管

理を強化し、エネルギー消費総量と強度の双方コントロール行動を実行し、全面的で科

学的な規範、管理が厳格な総量管理と全面的な省エネルギー管理を行い、目標責任制を

打立て、合理的に実行していかねばならない。

②産業構造の調整優良化の実施。我が国の産業構造は高エネルギー消費、高排出という特

徴がある。高エネルギー消費産業、特に重化学工業のエネルギー消費は普遍的に高く、

工業用に消費されるエネルギーは社会全体の 70 パーセントを占め、中でも電力、鉄

鋼、有色金属、石化、化工、建材等の 6 大エネルギー消費産業が 50 パーセント近くを

占めているところから、産業構造の調整優良化を行い、生産方式の緑色化を実現しなけ

ればならない。その際、一つは生産能力過剰の解消をしっかりと行うことであり、中央

が要求している消化、移転、整合、淘汰ということに従い、警告的な調整コントロール

を強化し、生産能力過剰産業の新規増設を厳格に審査許可し、遅れた能力のところを淘

汰していく。そして徐々に淘汰する場合のレベルを高めていくことで、品質を世界的な

レベルに合致させ、一帯一路戦略と結合させ、優秀な産業については海外進出を奨励す

るようにする。もう一つは、サービス業と戦略的新興産業を揺るぎなく発展させ、伝統

的製造業の緑色改造とレベルアップを推し進めることである。とりわけ省エネルギー環

境保護産業を大々的に発展させ、省エネルギー環境保護産業の普及により消費需要を導

き、また省エネルギー環境保護技術能力の増強により投資の成長を導くほか、更に政策

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メカニズムの改善により潜在的な市場ニーズを広げる。こうしたことにより、省エネル

ギー環境保護関連の技術、設備、サービスのレベルを著しくレベルアップさせ、新しい

経済成長スポットの育成のスピードアップを図る。この他にエネルギー構造優良化、非

化石エネルギー割合の向上、化石エネルギークリーン高効率利用の推進を行い、清潔で

低炭素、安全、高効率の現代エネルギー体系を建設する。

③全国民省エネルギー行動計画の実施。工業、建築、交通、商業・貿易、流通、公共機構

等の重点領域の省エネルギーをしっかりと行う。電力、鉄鋼、有色金属、石化、化工、

建材、製紙等の産業における省エネルギーを重点的に推進し、ハイテク、先進技術を運

用し、伝統産業の改造やレベルアップを図る。緑色建築行動を深く行い、建築省エネル

ギー標準を不断に高めるとともに厳格に執行する。緑色低炭素を特徴とする総合標準運

輸体系の建設を加速し、公共交通を優先し、新エネルギー・省エネルギー環境保護自動

車の普及を加速する。公共機関省エネルギー改造を加速し、省エネルギー公共機関モデ

ル単位活動を展開する。重点エネルギー消費単位の省エネルギー管理制度を健全なもの

とし、企業による省エネルギー自己申請メカニズムの実行を模索し、企業が自覚して省

エネルギーに対して責任を持つようにする。そしてエネルギー資源報告メカニズム、審

査制度を健全なものにし、企業のエネルギー消費についての目標達成や効率評価を行

い、エネルギー管理体系の建設を推進し、重点エネルギー消費単位のオンラインでのエ

ネルギー消費検査測定システムの建設を推し進める。

④省エネルギー管理体系のイノベーション。政府の簡素化と権利委譲、職能転換、現代化

省エネルギー管理体系建設を引き続き推し進める。そして管理を行うための方法を備

え、根拠ある法執行を行い、管理監督には力があり、活力ある市場体系の形成を図る。

省エネルギー関連法律法規と執行メカニズムを健全なものとし、「エネルギー節約法」

をはじめとする関連法律法規に支えられた省エネルギー法律法規体系を形成する。同時

に高エネルギー消費製品エネルギー消費限度指標、エネルギー消費製品エネルギー効率

指標を中心として、関連する基礎的で管理的な指標により支えられた省エネルギー指標

体系を形成する。地区やエネルギー消費単位のエネルギー使用権の健全な分配制度、イ

ノベーション有償使用、予算管理、投融資メカニズムを実行し、エネルギー使用権取引

市場を育成発展させる。そしてエネルギー効率のトップランナー行動を展開し、省エネ

ルギー指標を不断に向上させ、エネルギーの計量・統計と検査測定警告メカニズムを打

立てる。そして省エネルギー評価審査・省エネルギー監察を強化し、法律執行能力とそ

のレベルの向上を図る。エネルギー価格形成メカニズムと税制改革を深化させ、緑色税

収体系と緑色金融体系の樹立を推進し、緑色製品普及推進体系を打立て、緑色製品優先

使用の政府による購買政策等をより健全なものとする。契約によるエネルギー管理や省

エネルギー低炭素電力等の市場化メカニズムの大々的な推進を行う。

⑤緑色生活方式の大々的な提唱と育成。資源節約を単に政府、産業部門、企業の自覚した

行動とするのみならず、全社会、庶民大衆全体の自覚した行動としなければならない。

国の資源環境状況と生産についての価値観教育を強化し、節約集約化・節約集約循環利

用のエネルギー観を樹立する。また庶民大衆の省エネルギー意識を向上させ、緑色生活

行動を広範囲に展開し、庶民全体の衣食住、行動、観光等方面における倹約節約を推進

するとともに、緑色低炭素・文明的で健康な生活方式への転換を推し進める。消費者が

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省エネルギー・新エネルギー自動車、節水型器具等省エネルギー環境保護低炭素製品を

購入するよう積極的に誘導する。全社会で緑色消費の自覚を形成し、過剰包装反対運

動、過剰消費反対運動を深く展開し、合理的な消費を提唱するとともに、贅沢浪費を戒

めそれを止めるよう、倹約節約の社会の気風形成を推進しなければならない。

・関係各方面が今次省エネルギー博覧会を通じて、実践の中で形成されたイノベーション

理念、思考方法、技術・メカニズムについて深く交流・参考とし、それらを新たな実践

の中に活用し、更なるイノベーションへとつなげていくことを希望する。また国家節能

中心等関係方面が省エネルギー博覧会と関係のフォーラムをしっかりと組織し、省エネ

ルギー排出削減についての先進的な理念や技術の普及推進のテンポを速め、良好なる社

会利益・効果を上げられるよう希望する。またこの展覧会が国内外の省エネルギー低炭

素領域における重要な影響を持つよう努力され、省エネルギー低炭素技術のイノベーシ

ョンと普及推進を加速し、省エネルギー環境保護産業発展テンポを速めるため、より大

きな貢献をされることを希望している。

(3)国家機関事務管理局公共機構節能管理司張世良司長

・省エネルギー排出削減は誰もが負っている責任であり、生態建設の任務は重く道は遠

い。我々は社会各界と一緒になり、市場メカニズムを利用し、社会資本を引き込み、省

エネルギー排出削減・緑色発展の公共メカニズムを推進し、いつも空には青空があり、

綺麗な水がずっと流れる永続的な発展の実現に向けて、為すべき貢献をしなければなら

ない。そのためには以下を実施する必要がある。

①公共建築の省エネルギー推進。新たな建設プロジェクトの計画、設計、施工、竣工検収

等の各ポイント毎の省エネルギー監督管理を強化し、建築省エネルギー標準・建設プロ

ジェクト省エネルギー評価審査制度を厳格に執行し、緑色建築標準の執行を率先して行

わなければならない。既存建築設備の省エネルギー改造を推進し、石炭燃焼ボイラーの

省エネルギー環境保護総合レベルアッププロジェクトを実施し、省エネルギー環境保護

新技術、新材料、新製品及び太陽エネルギー、浅層大地エネルギー等の再生可能エネル

ギーの応用を積極的に普及し、省エネルギーであり、土地節約、材料節約、節水の緑色

建築を建設する。

②新エネルギー自動車の応用推進。公共機関では新エネルギー自動車の利用と応用を率先

して行い、内部駐車場資源を利用し、充電施設と電動自動車専用駐車場を計画・建設す

る。市場メカニズムを利用し、社会資本を引き込み、セルフ分割リース等商業運用モデ

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ルを採用し、充電ステーションの建設に参与し、新エネルギー自動車応用サービスを提

供する。

③用水節約の徹底。最も厳格な水資源管理制度を執行し、科学的に用水指標を制定し、用

水目標管理を強化し、健全な節約集約用水メカニズムを打立て、水資源使用構造調整と

優先的配置を促進する。節水応用技術を大々的に普及し、節水器具を全面的に普及さ

せ、節水改造を積極的に行う。中水回収と雨水収集を展開し、水資源の循環利用回数を

向上させる。

④資産節約と資源循環利用の強化。事務所用建築管理を厳格化し、統一的に計画し各方面

に配慮することにより、活用を主として、事務スペースとしての需要を満足させるとい

う原則に則って新たに建設し、事務所用建築の改築・拡張を行い、附帯施設・公共サー

ビスの共同利用を実現し、資産管理を厳格に行い、資産使用効果利益を向上させる。省

エネルギー環境保護製品の強制購買制度の執行を厳格に行い、省エネルギー・節水・材

料節約等環境保護にとって有利となるようにし、また低炭素生態製品・設備の優先的な

購買と使用を行う。事務情報システムの統一的な計画・建設とクラウドコンピューティ

ング技術の応用を推し進め、インターネットプラットホームでのネットワーク化を実現

する。廃棄物・生活ゴミ、建築ゴミ等の分別収集を強化し、台所からの廃棄物の資源化

利用を推進する。緑色事務環境を作り出し、大気、水、土壌汚染予防作業に積極的に参

与し、事務区域の緑化美化をしっかりと行い、公共区域内での人文遺跡と古く有名な樹

木の保護管理を強化する。

⑤緑色生活方式の実践。緑色生活価値観を育成し、倹約節約消費理念を提唱し、緑色生活

行動を広範囲に展開し、緑色低炭素となるような方式での外出を提唱し、新エネルギー

自動車・高効率家電・節水型器具等の環境保護低炭素製品の購買と使用を奨励し、緑色

低炭素であり、文明的で健康的な生活方式を涵養する。食品浪費反対行動を深く展開

し、食糧を愛し惜しみ節約する飲食習慣を涵養する。

⑥生態文化の涵養。エネルギー資源節約と生態文明建設教育の研修を強化し、省エネルギ

ー宣伝ウイーク・全国低炭素デー・中国水ウイーク等のテーマ宣伝活動を広範囲に展開

する。生態文明法律法規・科学知識を普及し、生態文明理念を樹立し、生態道徳を涵養

し、生態文明建設任務をしっかりと行う。仕事の方式を科学技術が多く含まれる方式と

し、資源消費が少なく、環境汚染が少なくなるよう方向転換をし、生活方式を倹約節

約、緑色低炭素、文明で健康的な方向へと転換させ、公共機関の各事業を緑色、低炭

素、循環の方向に発展させる。

・今年は全面深化改革に向けてのキーポイントとなる年であるとともに、第 12 次 5 カ年

計画実施の最終年でもある。第 12 次 5 カ年計画以来、全国の各レベルの公共機関は、

「資源節約法」と「公共機関省エネルギー条例」の実施を貫徹し、エネルギー資源節約

推進業務をしっかりと行ってきた。また省エネルギー体制メカニズムを不断に改善し、

省エネルギー排出削減に向けた改造を全面的に行い、省エネルギー新技術新製品の応用

を積極的に広め、省エネルギー監督審査を強化し、省エネルギー宣伝研修を深く展開

し、明確な成果を上げることが出来た。2010 年と比較して、2014 年全国公共機関の一

人当たりのエネルギー消費は累計で 13.9 パーセント、単位建築面積当たりのエネルギー

消費は 11.04 パーセント低減することが出来た。また中央国家機関の一人当たりの電力

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使用量は 14.27 パーセント、単位建築面積当たりの電力使用量は 10.97 パーセント、一

人当たりの用水量は 17.47 パーセント、公用車ガソリン使用量は 17.98 パーセント、そ

れぞれ低減することが出来た。現在の状況から、第 12 次 5 カ年計画における公共機関

の省エネルギー排出削減目標は実現出来るものと考えている。

(4)中国節能環保集団公司王小康董事長

・現在、省エネルギー産業は中国であろうと、世界であろうと、エネルギー変革という一

つの新しい時代を迎えている。前世紀末から今世紀初めにかけて、世界的なエネルギー

変革時代を迎えており、世界のエネルギーに対する認識には深刻な変化が生じており、

中国のエネルギー構造を含めて世界のエネルギー構造は現在正に加速的に調整が進みつ

つある。これは各国の経済構造の調整やその発展に対し、また中国にとっては経済が新

常態での発展に入り、重大な影響をもたらすものである。エネルギー供給については、

エネルギー消費の 3 つの特徴がより顕著になって現れてきており、①世界的に再生可能

エネルギーを大々的に発展させていること、②世界はどこもエネルギー生産効率の向上

と汚染物質排出の低減を大々的に推進していること、③世界はどこも省エネルギー産業

の発展を大々的に推進していること、である。

・昨年 6 月、習近平総書記はエネルギー消費、エネルギー供給、エネルギー技術、エネル

ギー体制の 4 つの方面における革命と全方位で国際協力を強化することを明確に指摘し

ている。生態文明建設は第 18 期全国代表大会において重点的に提示された戦略指導思

想として、既に一連の動きが展開されている。第 18 期全国代表大会五中全会では、生

態文明建設の強化が我が国の次期戦略における 10 大重点の一つとして更に明確にされ

ている。これは我が国の生態文明建設に対する認識が新たな段階に入ったことを意味し

ており、この新たな段階は意識上の変化のみならず、今後の省エネルギー産業に対して

大きな影響を与えるものであり、省エネルギー産業が一つの大発展の新段階を迎えるよ

う推進するものである。

・世界のエネルギー変革時代の戦略思想に対応し、4 つの革命と一つの協力という指導の

下、我が国のエネルギーの現実に立脚し、世界のエネルギー変革の大きな流れと連携

し、長期的な発展に着目しつつ、我が国エネルギー戦略のために新たな動きを打ち出す

必要がある。省エネルギー産業はこのような背景の下、必ずや次の発展重点となり、自

分はこの領域で長期的に仕事をしてきた企業の従業員として、このような一つの新時代

の到来を既に深く感じている。

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・第 11 次 5 カ年計画以来、中国の石炭火力発電所における石炭消費は、2005 年の毎千ワ

ット時の 333 標準炭から、2013 年の 302 標準炭へと低減されている。また中国の主要な

高エネルギー消費工業製品はどれも単位エネルギーの比較的大幅な低減を実現している

ことが見て取れる。世界経済フォーラムとアクセンチュア社とが共同して作成した 2013

年世界工業効率エネルギー消費研究報告書において、世界の平均エネルギー消費が

50.32 パーセント、インド 39 パーセント、アメリカ 51 パーセント、日本 56 パーセン

ト、デンマーク 72 パーセントであるのに対して、中国は僅かに 36.81 パーセントであ

り、これらのデータから、中国の省エネルギー産業の発展余地が十分巨大であることが

分かる。このことから、省エネルギーに対する優先戦略は先ずは再認識を行うことであ

り、省エネルギー産業が当然形成すべき共通認識なのである。

・現在の中国経済は既にギアチェンジ期に入っており、高速成長から中高速成長へと転換

している。他方、経済総量は今後も引き続き拡大し続け、将来の数十年にもたらされる

エネルギーへの強い需要は、我々に省エネルギー強化の優先戦略を迫るものであり、省

エネルギー産業のグレードアップを図らせるものである。省エネルギー産業は戦略的新

興産業のトップに位置するものであり、ここ数年はその発展速度からも、また規模から

も他の産業とは比べものにならないほど、省エネルギー産業の発展を促進するべく、政

府と企業はそれぞれ多くの仕事をしなければならないのである。先ずしなければならな

いことは、更に一歩、省エネルギー優先戦略を地に足のついたものとし、政策、制度、

メカニズム、理念を省エネルギー優先戦略のために設計し実施する必要がある。第 13

次 5 カ年計画において、省エネルギー優先戦略を生態文明建設の重要な手掛かりとし、

省エネルギー優先戦略が社会発展の全過程、全領域を貫くようにして、省エネルギー産

業のグレードアップを図ることを提案したい。発展目標、指導思想、制度イノベーショ

ン、政策保障、審査評価、財政政策支持等方面において、系統だった按排を行い、万全

の一番高い設計を行って、更に高い標準と要求を提示し、全社会で省エネルギー優先理

念を推進する。

・中国節能環保集団公司は省エネルギー環境保護産業をメインとする唯一の中央企業であ

り、多年の努力を経て、中国の省エネルギー環境保護領域において、総合実力最強、規

模最大の科学技術型、サービス型の産業集団となり、省エネルギー環境保護領域で非常

に強い帯同力と影響力を備え、中国の省エネルギー排出削減のために重要な貢献をして

いる。

(5)財政部財政科学研究所蘇明副所長

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・中国の次の改革の目標は、二つの方面を含んでいる。第一に国家制度体系の現代化、第

二に社会主義市場経済新体制の建設である。次の財政改革は、予算管理、税制、財政体

制の 3 方面における改革である。更に我々の次の財税改革案が 2014 年 6 月 29 日に中央

政治局を通過し、現在では第 13 次 5 ヵ年計画期における財税改革案とその路線図が既

に非常に明確になっている。

・第 13 次 5 ヵ年計画期における税制改革は総合的、系統的な税制改革であり、構造的な

優良化を図るものである。「営改増」(営業税を改め増値税を徴収すること)を含め、企

業所得税、個人所得税、輸出還付税、関税等 5 つの方面での減税政策であり、資源税、

環境税、石炭税、不動産税、消費税等 5 つの方面での増税政策である。また中央と地方

の関係も次の改革の重点である。中国の予算管理改革においては、予算編成、予算執行

を一歩ずつ社会に公布するようにして社会の監督と審査を受けるようにする。現在、

我々は年度予算の編成を行っているが、次のステップとして、中期計画或いは中期予算

を編成し、年度予算と数年先の予算とを一つに結びつけ、我々の関連事業の発展が連続

性を持つようにする。

・中国は 2008 年から現在まで、国際的な経済危機に対応するため、一貫して積極的な財

政政策を実施してきている。個人的には、将来の数年にわたって中国は引き続き積極的

な財政政策を実施していかねばならず、適度な財政赤字が増加するものの、投資を適度

に増加させ、中国の経済発展を支えていかねばならないと考えている。そしてそれには

国家の次の省エネルギー環境保護事業の発展を支えるということも含まれている。

・中国は近年大量の税収政策を打ち出して、省エネルギー生態文明の推進を支えてきた

が、現在の政策は余り完備されたものではなく、今後も引き続き改革を進化させていか

ねばならない。税収による激励と懲罰を相結合し、減税改革と増税改革とを相結合し、

直接優遇と間接優遇を相結合させる。

①資源税の改革。昨年 12 月に中国では、石炭資源税、原油資源税、天然ガス資源税の

税率を高めたが、これは中国の省エネ事業にとっては大変良いことであった。次は、資

源税の改革であり、水資源にまでその範囲を広げるべきと考えている。

②環境税の徴収。国務院は既に社会に対して環境税立法初稿を公布し、社会に対して意

見を求めている。それでは環境税の政策にはどういった内容が含まれるのであろうか?

一つは費用徴収を税収に改めることであり、二つ目には標準を高めること、三つ目は改

革を通じて技術管理、汚染排出低減の企業に対して税収上の優遇を与えることである。

③石炭税も非常に重要である。省エネルギーを支持し、気候変化に対応するため、第 13

次 5 ヵ年計画の後期において、例えば 2018 年、2019 年に石炭税を打ち出すことを提議

したい。

・次期財政支援全体計画の考え方については、次の通りである。先ず、財政投入増加の新

メカニズムを樹立する必要がある。次に財政政策を通じて、全社会を動かしていく方法

を考える必要がある。3 つ目に、財政支援の方向重点を明確にする必要があり、基礎イ

ンフラの支援、研究開発の支援、遅れた産業能力淘汰の支援などである。

・省エネルギーや生態文明の予算科目を改善する必要があり、財政の支持による省エネル

ギー環境保護の長期的に有効なメカニズムを樹立し、関連する専門プロジェクト資金を

整理し、支援効果を高め、財政資金による誘導作業を発揮させる必要がある。そしてロ

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ーンの利息を財政が肩代わりする手段を大々的に運用して、産業が基金を誘導し、PP

Pを発展させていくのである。同時に緑色購買、中小企業による購買、技術イノベーシ

ョンの購買、政府による公共サービスの購買を大々的に発展させる。

・財政部と発展改革委員会とは、省エネルギー排出削減財政政策方面において、現在まで

に既に 30 もの都市をテストケースとして支援してきている。今後も引き続きテストケ

ース対象都市を増やしていき、省エネルギー、環境保護及び関連する産業のためにより

多くのより良い支援を行うこととする。

(6)国家発展改革委員会資源節約環境保護司呂文斌副司長

・生態文明の核心は人と自然との関係を正確に処理することにある。その処理の過程にお

いては、生存発展方式、主要価値観が反映する。生態文明は生態建設とは異なり、それ

は生存と発展、発展方式を誘導するものであり、またどのような価値観を推し進めるか

ということである。こうしたところから、生態文明は人々の生活や民族の未来にも大き

くかかわるものであり、今後 200 年の我々の主要奮闘目標であり、美しい中国を建設し

ていくための必然の要求でもある。現在の複雑な国際情勢の中で、特に中国国内にあっ

ては、発展についての基本的な中国ならではの事情や特徴を踏まえ、中国共産党中央は

生態文明建設を推進するための戦略的な動きを提示している。

・第 18 期全国代表大会では、生態文明建設を中国の特色ある社会主義事業の五位一体全

体計画の中に組み込んでいる。三中全会では体系が整った生態文明制度の確立が求めら

れ、四中全会では最も厳格な法律法制により生態環境の保護が求められた。そして五中

全会においては、更に緑色発展が 5 大発展理念の一つとして明確にされた。また緑色発

展を全面的な緑色小康社会建設に向けての現代化建設推進の牽引力と位置づけている。

こうした中央の精神は第 13 次 5 ヵ年計画の生態文明建設に向けての方向とその過程を

明確にしている。生態文明についての新しい理念、新しい要求、新しい任務、新しい制

度、は以下の通りである。

①新しい理念:3 つの理念があり、自然に適合し自然を保護するとともに発展していこ

うという理念である。過去は自然を畏れ、自然に依頼し、自然を征服するというもの

であったが、現在では自然を尊重し、自然に適合し、自然を保護するというものへと

変化している。これは工業化により自然破壊が進んだことを反省し、新しい自然への

認識を示すものである。2 つ目は、美しい自然を維持しつつ工業の発展をも促すとい

う理念。3 つ目は自然には自然の内在的なルールがあり、自然自体は完全なものであ

り、我々は自然と生命共同体であるという理念。自然の回復、生態の自らの秩序を保

つことにより生態体系のバランスを保つことが出来る。

②新しい要求。第 18 期全国代表大会以降に多くの新しい要求が出されており、主とし

て 3 つの方面がある。1 つ目は五味(経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、生

態文明建設)一体を図り、推進中の社会主義主流価値観との一体化を図ること。2 つ

目は 5 つの変化(緑色化、新型工業化、情報化、都市化、農業現代化)の調整統一を

図ること。3 つ目は 5 つ(基本方針、基本路線、基本動力、重要支持、仕事方式)の

堅持である。

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③新しい任務。重要任務としては、生産方式緑色化、生活方式緑色化、主流価値観提

唱、制度イノベーション、世界的事業視点からの推進。生態文明建設の重要な任務に

は 6 つの方面があり、その内容としては、空間配置優良化(生産空間・生活空間・生

態空間の 3 つの優良化)、新局面形成(都市化・農業発展・生態安全・自然境界線の

局面形成)などがある。

④新しい制度。主として 2 つあり、一つは「一加六」の概念である。中央から出された

生態文明全体計画と同計画の実行等を定めた 6 つの規程(自然資源利用、資源破壊責

任等)のことを指している。また「8 項制度」というものもあり、自然資源財産権制

度、国土空間開発保護制度、空間計画体系制度、資源総量節約制度、生態有償補償制

度、環境整備制度、環境整備保護市場制度、生態文明建設評価責任追及制度の 8 つの

制度である。

(7)国家発展改革委員会能源研究所戴彦徳副所長

・生態文明建設は中国共産党第 18 期全国代表大会で提唱されたものであり、生態文明建

設は中国の特色ある社会主義事業の五位一体全体計画の中に組み込まれている。五位一

体全体計画では中国の発展について、経済建設をその根本とし、政治建設をその保障と

し、文化建設をその魂とし、社会建設をその条件とし、生態文明建設をその基礎として

いる。新世紀に入ってからの 15 年間はむしろ数量の拡大をより強調して来たが、今後

の 15 年間では、数量拡大を重視する一方で、経済等の質を重視することとなる。そし

て経済の質を問う際の核心が生態文明建設なのである。生態文明建設と省エネルギーに

ついて語りたい。世界的に生態文明の悪化の原因はエネルギー問題である。逆に言え

ば、エネルギー問題が解決されれば、生態文明建設も基本的にその目的を達することが

出来ると言える。生態文明の概念は広範囲であり、様々な内容、解釈があるが、核心の

核心はエネルギーと言える。

・中国の過去 30 年間の経済成長は著しく、世界が認めるところである。経済成長率は平

均二桁を維持し、経済総量は 4000 億から 60 数兆へと飛躍的に成長し、国民一人一人が

この経済成長の成果を享受した。そしてこの成長はエネルギーに頼って成し遂げられた

ものであり、ここ 10 数年のエネルギー消費量は当初予想を上回るものであった。今世

紀に入ってからの 10 数年におけるエネルギー消費量は、それまでの 20 年の合計の 2 倍

よりも大きい。こうしたことから経済の高度成長にはエネルギーが必要であることが分

かる。そしてエネルギーの大量消費が深刻な生態環境問題を引き起こした。問題が深刻

なところでは、水は飲めず、空気は吸えず、食べ物でさえも食べられないものである

が、人々は仕方なくそれらを飲み、吸い、食べている。そしてデータからは現在汚染の

程度が益々悪化しつつあることが分かる。経済では新常態が出現したが、環境問題では

汚染が益々深刻になりつつある。環境問題が起きる根本はエネルギー問題であり、エネ

ルギー問題が解決されれば人々の生態文明の指標も達成されることとなる。逆に言えば

エネルギー問題が解決されなければ環境問題は引き続き悪化していくのである。そこで

改善に向けて、発展モデルの転換(中国では家電や衣服を輸出しているが、構造調整に

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より輸出量を半減出来れば排出量も大幅に削減できる)、供給モデルの転換(太陽エネ

ルギー、風力エネルギー、原子力エネルギー等)、消費モデルの転換(鉄鋼、セメン

ト、発電の各産業でエネルギー消費効率を向上出来ればどれほどの効果があるか)、生

活方式モデルの転換を行う必要がある。省エネルギーの経済発展への貢献は何か。2010

年時の単位GDPエネルギー消費量は 1980 年時のそれに比べて、74 パーセント低減し

ており、また 2000 年時との対比では 29 パーセント低減している。鉄鋼、セメント、発

電の 3 項目における単位省エネルギー効率の向上は、合計 10 億トンもの標準炭の節約

に等しく、経済に大きな貢献を果たしている。

・中国の「第 2 の夢」と言われる、2050 年時の社会経済発展レベルを現在の先進国レベル

とすることを実現するため、もし伝統的な工業発展方式によって成し遂げようとすれ

ば、エネルギー消費量は現在の数倍にも達してしまう。この点からも省エネルギーは必

要である。今後、省エネルギーのコントロール範囲目標として 50 億トン標準炭を考え

ている。生態問題のキーポイントはエネルギー問題にあり、エネルギー問題の核心はど

のようにしてエネルギー効率を大幅に向上させるかという点にある。

・第 13 次 5 カ年計画における経済発展目標としては、GDPと収入を倍増し、強国の仲

間に入ることであるが、同時に生態環境の質を全体的に大きく改善し、汚染物質の排出

を大幅に低減することにある。顧みれば第 11 次 5 カ年計画において指導者は省エネル

ギーの重要性をしっかりと認識していたが、企業を主として全国民が参画し、政府が主

導するというものであった。省エネルギーは完全に市場経済に任せていては解決出来な

い問題であるところから、第 11 次 5 カ年計画、第 12 次 5 カ年計画においては、行政

(目標設定)や法律(標準)、経済(政府補助、減免税、価格優遇)による手段を講じ

た。第 13 次 5 カ年計画での新しいやり方としては、指標双控(単位GDPエネルギー

消費指標によるコントロールと資源使用権・汚染排出権の有償使用でのコントロール)

が挙げられる。

【参考】中国節能博覧会メイン論壇 次第

1.期日 2015 年 11 月 18 日 終日

2.場所 中国国際展覧館 7 号館M1会議室(北京市朝陽区北三環東路 6 号)

3.主要内容及びアジェンダ

■午前:省エネルギー・生態文明建設ハイレベル論壇

・全国人民代表大会常務委員会顧秀蓮副委員長 挨拶

・ 国家発展改革委員会張勇副主任 講演

・ 工業信息化部節能・総合利用司高雲虎司長 講演

・ 国家機関事務管理局公共機構節能管理司張世良司長 講演

・ 中国節能環保集団公司王小康董事長 講演

・ 財政部財政科学研究所蘇明副所長 講演

「第 13 次 5 ヵ年計画における省エネルギー 排出削減財税政策」

司会 国家節能中心 賈復生主任

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■午後:第 13 次 5 ヵ年計画生態文明建設と省エネルギー排出削減メカニズムイノベーシ

ョンフォーラム

・ 国家発展改革委員会資源節約環境保護司呂文斌副司長

「生態文明建設関連政策読解と関連業務部署」

・ 国家発展改革委員会能源研究所戴彦徳副所長

「第 13 次 5 ヵ年計画生態文明建設と省エネルギー排出削減メカニズムイノベーショ

ン」

・ 中国標準化研究院資源環境分院林翎院長

「第 13 次 5 ヵ年計画生態文明と省エネルギー排出削減財政モデルの標準体系及び応

用」

・ 国家節能中心時希傑副処長

「国家節能中心の第 13 次 5 ヵ年計画省エネルギー関連課題研究成果についての紹

介」

・台湾緑色生産力基金会鄭清宗執行長

「台湾の緑色工場指標認証推進経験の共有」

休憩(10 分間)

・湖州市人民政府李世華副秘書長/市生態文明弁公室主任

「浙江省湖州市生態文明建設と省エネ排出削減の実践と探索」

・吉林市発展改革委員会沈華実副主任

「吉林省吉林市省エネルギー排出削減財政政策モデルメカニズムイノベーションの実践と

探索」

・徳陽市発展改革委員会黄代強副調査研究員

「四川省徳陽市省エネルギー排出削減財政総合モデル建設イノベーションと実践」

・梅州市発展改革局張小猛副局長

「広東省梅州市生態文明と省エネルギー排出削減財政総合モデル建設イノベーションと実

践」

・英威騰能源管理有限公司姚建国総経理

「生態文明都市エネルギーと環境管理監督プラットホーム建設と運営」

・ 前海知慧能源システム有限公司張淮中副総経理

「生態文明先行モデル区公共サービスプラットホームの建設と応用」

・江蘇双良集団販売公司趙雲副総経理

「省エネルギー、節水、環境保護システムサービス」

・海爾中央空調楊宝林企画総監

「リニアモーターとクラウドサービス省エネルギー解決案」

・浙江中控集団、浙江中易節能技術有限公司李鴻亮総経理

「区域性スマートエネルギーサービスプラットホームの建設と応用」

・遠大科技集団張暁東副総裁

「分布式エネルギーのイノベーション実践」

・北京科潤盛達供熱投資公司王石総経理

「区域燃焼ガス供熱総合解決案と省エネ排出削減の実践」