省エネルギー推進の方法...36...

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35 第3章 省エネルギー推進の方法

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Page 1: 省エネルギー推進の方法...36 本章では省エネルギーを推進するための具体的な方策および支援制度を整理し、本県の 特徴に合った省エネルギーの手法をとりまとめる。

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第3章 省エネルギー推進の方法

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本章では省エネルギーを推進するための具体的な方策および支援制度を整理し、本県の

特徴に合った省エネルギーの手法をとりまとめる。

1.省エネルギー推進の手法~省エネの対象と基本メニュー~

(1)産業部門

①主な省エネルギー推進の手法

第一種特定事業者のうち一般的な製造業工場の中長期的計画の作成のための指針による

と、省エネルギー推進の手法は大別して

1. 燃焼設備

2. 熱利用設備

3. 廃熱回収設備

4. コージェネレーション設備

5. 電気使用設備

6. 空気調節設備

7. 照明設備

8. 余剰蒸気の活用等

9. 未利用エネルギーの活用

などに分けられる(表 3-1-1参照)。これらに加え、

1. 「山口ゼロエミッションプラン」等に示す廃プラスチックのマテリアルリサイクルやサ

ーマルリサイクルなどの「山口ゼロエミッション」の推進による省資源・省エネルギー

2. 省エネルギー監視システム、BEMS(Building Energy Management System)などの自動管

理による省エネルギー

3. 燃料電池などの新規技術の積極的導入による省エネルギー

4. CGO(Chief Green Officer)などの環境管理責任者の設置、省エネルギー目標の設定、省

エネルギー教育などを通じた省エネルギー行動の周知・徹底

などが挙げられる。

また、実際に省エネルギーを進めるに当っては、

1. 一般管理事項

2. 空調・冷凍設備

3. ポンプ・ファン、コンプレッサー、コージェネレーション等

4. ボイラー・工業炉、蒸気系統、熱交換器、廃熱・廃水等

5. 受変電設備、電動機、照明、電気加熱設備

ごとに省エネルギー対策が可能であるか点検を行い、各産業ごとの特性、現状の省エネル

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ギー対策、費用対効果等を考慮して省エネルギーを進めることが求められる。

表 3-1-1 産業部門省エネルギー手法概要

NO. 省エネルギー手法 詳細

空気比の改善

熱効率の向上

通風装置

燃焼管理

1 燃焼設備対策

その他・ボイラー及びボイラー関連機器

効率的な熱回収

蒸気利用設備の乾き度改善

炉壁面の放射率向上

熱伝達率の向上

熱交換器の改善

直接加熱

多重効用缶

蒸留塔

加熱設備での熱の複合利用

加熱制御方法の改善

加熱工程の短縮・省略化

工業炉の断熱向上

加熱設備の断熱向上

開口部の縮小・密閉装置

熱媒体輸送管の合理化

被加熱材の予備処理

蓄熱装置

2 熱利用設備対策

真空蒸気媒体による加熱

断熱

蓄熱装置

3 廃熱回収設備対策

被加熱物の排熱有効利用

コージェネレーション設備 4 コージェネレーション設備対策

抽気タービン・背圧タービンの改造

高効率モータ

回転数制御装置

力率改善

計測管理装置

5 電気使用設備対策

電気加熱設備

6 空気調和設備対策 空気調和設備

高効率照明器具 7 照明設備対策

自動制御装置

8 余剰蒸気の活用等 余剰蒸気の活用等

9 未利用エネルギーの活用 未利用エネルギーの活用

出典:財団法人省エネルギーセンター『中長期計画作成指針』

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②省エネルギー事例

先進的な事例

1. 三菱電機㈱冷熱システム製作所:廃熱の有効複合利用

2. ㈱東海理化:燃料電池導入による省エネルギー

3. アサヒビール株式会社 四国工場: バイオガスを燃料とする燃料電池及びメタン

ボイラーと、蒸気を熱源とするNH3吸収式冷凍機の導入による電力削減

4. アイシン・エィ・ダブリュ株式会社:「トータルエネルギー管理システム」の構築によ

る省エネ活動の活性化

意識改革、全般的取組み事例

1. 出光興産㈱ 千葉製油所:省集団によるスチーム削減活動

2. ダイキン工業㈱ 滋賀製作所:肌で感じられる省エネルギー活動

3. 三菱電機㈱ 静岡製作所:全員参加による知恵と工夫のエネルギ-ロス削減

4. ㈱デンソー 西尾製作所:節約から節減に踏み込んだ少エネ活動

③本県の特徴をふまえた主な手法

本県の産業部門エネルギー消費構造の特徴は C重油・石炭などの CO2排出原単位の比較的

高いエネルギーの使用割合が高く、産業では鉄鋼業、窯業・土石製品製造業、化学工業、

石油製品製造業の構成比が高くなっている。

よって、廃棄物のリサイクルなど「山口ゼロエミッション」の推進、C重油・石炭からの

燃料転換、熱利用設備の更新による熱利用効率の向上、コージェネレーションシステムの

導入による熱電併給の推進、電気設備の適性規模化、動力系設備の適正化(台数、出力)な

どが主な省エネルギー手法として挙げられる。

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(2)民生業務部門

①主な省エネルギー推進の手法

ビル(民生業務部門)向け省エネルギーガイドラインによると、建物/設備自体の省エネル

ギー、運用による省エネルギーなどが主な省エネルギーの手法であり、大別して

1. 無駄の排除による省エネルギー

2. 快適さを損なわない程度の節減による省エネルギー

3. 自然エネルギーの積極的利用による省エネルギー

4. 建物、設備内のエネルギーロスの抑制による省エネルギー

5. 機器・設備の効率向上による省エネルギー

6. 廃熱回収による省エネルギー

7. エネルギー供給会社との需要調整契約による省エネルギー

などがある(表 3-1-2参照)。

これらを効果的に進める手法としては、次のものがあげられる。

1. ESCO事業による省エネルギー機器導入コストの費用負担の軽減

2. トップランナー機器の積極的な導入

3. 消費エネルギー管理システムの導入による消費エネルギーのモニタリング

4. エネルギー管理体制の整備および省エネルギー行動の実践の推進+省エネルギー成果

(削減費用)の協力者への還元

②省エネルギー事例

先進的な事例

1. 住金マネジメント人材開発センター(ESCO 事業):高効率照明器具の交換、変圧器の台

数の適正化、断熱フィルムの張付、EMSの導入など

2. 東京都庁舎(運転管理):事務室照明の一斉消灯、空調温度の適正化など

3. 成田全日空ホテル(省エネルギー機器導入):空調機へのインバーター導入、冷温水ポ

ンプへのインバーター導入、熱交換器の清掃など

4. 横浜市大学病院(給水):トイレの自動水栓化、温度設定の適正化など

5. シェラトンホテル札幌(コージェネレーション):天然ガス利用 415kW 発電ガスタービ

ン 3機導入

6. 三鷹市役所本庁舎(地球温暖化防止対策地域推進モデル事業):高効率照明器具への交

換、エアコンのインバーター化、EMSの導入

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表 3-1-2 民生業務部門省エネルギー手法概要

省エネルギー手法 詳細

局所排気の設置

自然エネルギーの利用

空調換気設備の改修

熱源システムの改修

空調ゾーニングを見直し細分化 空調方式の変更

全空気方式から水―空気方式への変更

非空調室の空調停止 空調運転の制限

局所空調(空調作業域の集約)

設定湿温度の変更 外気温度によって設定値を変更

取り入れ外気量の低減 予冷・予熱時の外気取り入れ停止

曜日、季節によって起動、停止時刻のスケジュールを調整する

予冷・余熱時間は外気との温度差によって調整する

装置の起動・停止時刻の

調整と予冷・予熱運転時

間の短縮 冷房開始後と終了前の1時間、外気取り入れ量を減らす

送風量の低減 機械室、駐車場等換気用給・排気量の調整

高効率熱源機器へのリプレース

エネルギー源やヒートソース・ヒートシンクの変更

熱源設備の改修

熱源装置運転制御方式の改修

搬送システムの改修 変流量方式への改修(VAV、VWV等)

動力設備の運転管理 エレベータ、エスカレータの運転間引き

力率改善制御システムの導入 電気設備の改修

デマンド制御システムの導入

過剰照明の防止 照明設備の改修

高効率器具への交換

照明設備の管理 非使用室照明の消灯

照明の効率的使用 同一水準照度を要求される業務は、接近、グループ化する

部屋の使い方 同一用途、または機能的に密接に関係する室は、同一階あるい

は近接階に配置する

一斉休日による設備の効率的利用 業務の集約化

残業場所の集約化と残業時間の規制

使用者のワークスタイルに

応じた指揮

夏期は薄着、冬期は厚着及び個人差に応じた着衣の調節

換気通風の改善 建築に関わる改修

外壁部熱遮断の強化

夜間等のブラインドの操作 冷房時に日射がある場合は、ブラインド類を閉じる

扉の開閉 階段室は常時閉鎖する

その他 居住者に対し省エネルギーに協力するようPRを行う。ビルの始

業時、就業時に省エネアナウンスするもの一策

資料:資源エネルギー庁「エネルギー2001」、財団法人省エネルギーセンター『ビルの省エネチェックリスト』

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③本県の特徴をふまえた主な手法

本県の民生業務部門の特徴は規模がやや小さく、建物の断熱率が低く、床面積当りのエ

ネルギー消費原単位が高いことである。

よって、外部熱遮断の強化、冷房・暖房効率の向上、照明設備の最適化(機器数、照度)、

業務の集約化などが主な省エネルギー手法として挙げられる。

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(3)民生家庭部門

①主な省エネルギー推進の手法

家庭(民生家庭部門)向け省エネガイドラインによると、省エネルギー行動、省エネルギ

ー機器の導入が主な省エネルギー手法であり、大別すると、

1.食における省エネルギー行動

・ 地産・地消の促進

・ 旬の食物の購入促進

・ 購入・保存・調理・後処理・廃棄における配慮の促進

2.電化製品・給湯器などの使用法による省エネルギー

3.省エネルギー型/エネルギー消費管理型電化製品・給湯器などの利用による省エネル

ギー

4.省エネナビによるエネルギー消費量把握・省エネルギー

5.省エネラベリング制度による省エネルギー型家電の購入促進

6.省エネルギーチェックシートによる省エネルギー行動の確認・推進 となる。

さらにこれらに加え、

1. 屋上・外壁の緑化により室内温度変化を抑制しエアコン・暖房機器の使用を抑制

2.ガス・地熱・大気熱ヒートポンプの利用による省エネルギー

3.断熱・気密性の高い素材、設計による熱効率の向上

4.ローカルサマータイムの導入による省エネルギー

5.地域・環境 NPOとの協働による環境・省エネルギー教育の推進

などが挙げられる。

民生家庭部門の省エネルギーの推進は進んでおらず、手法の整理に加え、推進のための仕

組みづくりが必要となる。

こうした省エネルギー推進の仕組みの事例としては、次のようなものがある。

1.家庭版 ISOの実施(水俣市)

2.家電小売店と自治体の間で省エネルギー家電製品の販売促進協定を締結する

3.融資・補助金制度の充実と融資・補助金取得の手助けをする制度・機関の設立

4.自治体・有名企業による積極的な省エネルギーの推進とその効果の宣伝(特に費用面)

②省エネルギー事例

省エネルギー事例としては、次のような、省エネナビの利用による意識、生活スタイル、

使用電力量の変化などの例が挙げられる。

1.意識・行動:「電化製品は使わないときはプラグを抜いている」などの省エネ行動を取

る割合が増加し、省エネ積極派が 3ヶ月で 1.7倍に増加

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2.生活スタイル:「省エネについて話し合う」、「早く寝る」などの省エネを意識した生活

スタイルに変更した家庭が 59%に達した

3.使用電力量:モニターの使用電力量は対前年比で年平均 13%削減、設定目標達成率は

78%となった

表 3-1-3 民生家庭部門省エネルギー手法概要 省エネルギー手法 概要

食における省エネルギー行動

○地産・地消の促進

○旬の食物の購入促進

○購入・保存・調理・後処理・廃棄

1. 地場で生産された食物を率先して買う

2. 旬の食物を優先的に買う

3. 購入:必要なものだけ買う

4. 保存:冷蔵庫の奥には入れない

5. 調理:まとめて加熱するなど効率的な調理

6. 後処理:まとめて洗浄、お湯も適温で

7. 廃棄:食べ残しを無くし、食材を有効利用

電化製品・給湯器などの使用法による

省エネルギー

1. 冷蔵庫:無駄な開閉、詰込み過ぎに注意

2. エアコン:適温で利用、カーテンなどで熱を遮断

3. 照明器具:こまめに消灯、インバーター式を利用

省エネルギー型/エネルギー消費管

理型電化製品・給湯器などの利用に

よる省エネルギー

1. 蛍光灯の利用で年間5000円分の省エネルギー

2. インバーター型のエアコンでは電気代が2/3以下に

3. 年々、家電の省エネルギー効率は向上

省エネナビによるエネルギー消費把

握・省エネルギー

1. 現在使っているエネルギー量を料金で表示

2. モニター調査では20%の省エネが可能

省エネラベリング制度による省エネル

ギー型家電の購入促進

1. 共通表示により省エネルギー性能が容易に比較可能

2. ラベルの表示により一目でどの製品が省エネルギー

に優れるか容易に判別

省エネルギーチェックシートによる省

エネルギー行動の確認・推進

1. 家庭や地域の省エネルギー行動を進める指針

2. 日々の行動の積み重ねで省エネルギーが可能な項

出典:財団法人省エネルギーセンター『家庭の省エネ大辞典』

③本県の特徴を踏まえた主な手法

本県の民生家庭部門の特徴は世帯当りのエネルギー消費量が全国と比較すると低いこと

が挙げられる。

一方で増加率は高く、年々全国規模に接近しつつある。エネルギー種別では灯油と電力

の伸びが大きい。また、人口構成では高齢者の比率が高くなっている。

よって、エネルギー効率が高い機器の使用促進、省エネラベリング制度による省エネル

ギー型家電の購入促進、改修、新築時の高気密・高断熱施工等の促進など県民が意識せず

に省エネルギーを進められる手法に加え、省エネルギー行動の確認・推進のための環境作

り、省エネナビによる家庭でのエネルギー消費管理行動の広がりなど県民が積極的に省エ

ネルギーに関わることができる手法が主な省エネルギー手法として挙げられる。

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(4)運輸部門

①主な省エネルギー推進の手法

運輸部門の省エネルギー手法は、自動車単体の燃費の向上と公共機関の利用促進が主な

手法であり、大別すると

1.自動車燃費の改善強化

2.クリーンエネルギー自動車の普及促進

3.個別輸送機器のエネルギー消費改善

4.物流の効率化

5.公共交通機関の利用促進

6.交通渋滞の緩和

7.テレワーク(遠隔地勤務)の推進

8.ライフスタイルの改革/啓蒙活動の推進

などが挙げられる(表 3-1-4参照)。

②省エネルギー事例

先進的な事例

1.日本政府:公用車(7千台)の全車低公害車への切り替え(2005年度末までに)

2.東京都世田谷区:ディーゼル車(55台)の低公害車への切り替え(2003年度末までに)

3.東京都港区: 区営の天然ガススタンドを開設し、清掃車を含む区有車のすべてを低公

害の天然ガス車に切り替え(2005年度末までに)

4.北海道:公用車(3千台中の 2千台)の低公害車への切り替え(2005年度末までに)

5.物流効率化:トヨタ自動車やホンダ、マツダなど大手自動車メーカー11 社による共同

輸送

6.物流効率化:拠点集約、IT活用(CRM、SCM)、共同輸送、輸送ルート削減など

7.長野県松本市:パーク・アンド・ライドによるマイカー通勤者らの公共交通機関の利

用促進

8.東京都都営バス:車体全面に広告を描いたラッピングバスによる公共交通機関や低公

害車の利用促進を訴える広告の掲載

9.岐阜市:バスと路面電車に GPS(全地球測位システム)受信機などを搭載し、運行合理化

と公共交通機関の利用を促進

10.広島県広島市:朝夕の郊外から市内への直行バスの運行による交通渋滞緩和

11.富士見工業団地工業会: 天然ガス車の共同運行。工場で働く従業員の送迎用で、経費

を減らすとともに環境への負荷も軽減。

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表 3-1-4 運輸部門省エネルギー手法概要

省エネルギー手法 概要

自動車燃費の改善強化

各自動車の省エネルギー目標は1995年度比で燃費を

1. 乗用自動車(ガソリン)23%向上(2010年度)

2. 乗用自動車(ディーゼル)15%向上(2005年度)

3. 貨物自動車(ガソリン)13%向上(2010年度)

4. 貨物自動車(ディーゼル)7%向上(2005年度)

クリーンエネルギー自動車の

普及促進

1. 2005年度には新長期規制(排ガス規制)が実施

2. 2010年度で低公害車1000万台、燃料電池車5万台の

政府目標

個別輸送器機のエネルギー

消費改善

1. 鉄道、船舶、航空機のエネルギー効率を向上させるための技術開発、高効率器機の導入に対する財政投融資

物流の効率化

1. 空港、港湾への連絡道路の整備

2. 鉄道輸送の促進

3. 港湾整備による国際コンテナ貨物の陸上輸送距離の削減4. トラック積載効率の向上

5. 車両の大型化

6. 大型車両の通行可能な道路ネットワークの整備

公共交通機関の利用促進 1. 鉄道整備による自動車輸送の鉄道への移行

2. バスなどの利用促進

資料:国土交通省資料等を参考に作成

③本県の特徴を踏まえた主な手法

本県の運輸部門の特徴は世帯当りの自動車保有台数が全国より高く、県民の移動手段に

自家用車が占める割合が高いことが挙げられる。

したがって、クリーンエネルギー・低燃費自動車への買い替え促進のほか、バスの共同

運用が可能な構造を有する地域・地区における公共・共通交通機関の利用促進などが主な

省エネルギー手法として挙げられる。

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(5)廃棄物部門

①主な省エネルギー推進の手法 廃棄物部門の省エネルギー手法は、廃棄物の燃焼エネルギーの直接利用(熱利用)、燃

焼エネルギーをタービンの回転エネルギーに変換し、さらに電気エネルギー(電力)に

変換する転換利用(発電利用)、燃えるごみを集めて、乾燥・固形化させ、廃棄物固形燃

料(RDF)を作る廃棄物燃料製造(燃料化利用)が主な手法である。また、廃棄物は発生元に

より一般廃棄物、産業廃棄物に分かれ、まとめると以下のようになる。

表 3-1-5 廃棄物部門省エネルギー手法概要

熱利用 発電利用 燃料化利用

一般廃棄物

熱の所内利用を含めると

近年建設されたほとんど

の焼却施設に導入されて

いる。

廃棄物発電も行い、さら

に廃熱利用を行っている

事例が増えつつある。

1998年度実績では総出力

78.6万kW、総発電量41.6

億kWhとなった。

産業廃棄物

排出量は一般廃棄物の約8倍程度となり(1998年度排

出量は一般廃棄物:約5,160万トン、産業廃棄物:約4

億800万トン)、賦存量は多く、焼却処理は排出量の

約70%を占める。近年、エネルギー利用が進み、1998

年度実績では総出力14.7万kW、総発電量5.4億kWhと

なったが、一般廃棄物と比較するとエネルギーとし

ての利用は遅れている。

技術的には不純物の選別

除去がRDFの製造に必要で

あり、経済的には1トンの

生ゴミを処理するために

灯油65リットルが必要で

(三重県企業庁の試算)コ

スト高になり、環境的には

生石灰の投入により焼却

灰が増加するなど問題が

多く、普及していない。

資料:NEF、厚生労働省資料等を参考に作成

更に最近では、ガス化利用および燃料電池のエネルギー源など様々な利用形態が実用

化されている。今後、最終処分場問題、未利用資源としての廃棄物の有効利用の観点か

らもエネルギーとしての利用が大きく進むと期待される分野である。

②省エネルギー事例 先進的な事例としては

1. サッポロビール千葉工場:嫌気性廃水処理から発生するバイオガス(メタン)を利用し、生成した水素を燃料電池で利用し、工場全体のエネルギーの約 4%削減を見込む。

2. 神戸・ポートアイランド:環境省の地球温暖化対策実施検証事業として、生ごみメタン発酵と燃料電池の組合せによる「生ごみバイオガス化燃料電池発電施設」が設置され、

平成 13年 9月より、実証実験が行われている。生ごみメタン発酵プラントと燃料電池を

組み合わせたシステムであり、神戸市内のホテルからの生ごみを回収してメタン発酵さ

せ、発生するバイオガスを燃料電池に導入し、発電する仕組みとなっている。

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3. ガス化溶融炉:従来型の焼却炉は燃焼温度が低く、ダイオキシン類の発生が問題となった。そこで高温で燃焼し、ダイオキシン類の発生が抑えられる新しい焼却炉、ガス化溶

融炉が開発され、実用化され始めた。ガス化溶融炉は廃棄物のエネルギーを有効に利用

し、焼却灰を溶融して高効率発電を行うことが出来る。基本的な仕組みは方式によって

若干異なるが、300~600℃程度のガス化炉で廃棄物をガス化し、次いで 1200℃以上の溶

融炉で溶融灰(スラグ)と金属類を取り出す。ボイラーでは熱利用だけでなく発電も行い、

システム全体で従来と比較して高いエネルギー効率を実現している。

③本県の特徴をふまえた主な手法

本県の一般廃棄物焼却量は高い伸びを示しており(1990 年度から 1999 年度の間に一般

廃棄物生薬量は約 21%増加)、近年の傾向から今後も増加が見込まれる。このため、排出

抑制、再資源化を前提に 2001 年度に策定した「山口ゼロエミッションプラン」と連携、

整合性を図りながら、「山口県ごみ処理広域化計画」に基づき、焼却施設の広域化を図り、

高効率廃棄物エネルギー利用可能施設の普及を進めていくことが主な省エネルギー手法

として挙げられる。

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(6)行政部門

①主な省エネルギー推進の手法

行政部門の省エネルギー手法は庁舎などの自治体自身の省エネルギーは民生業務部門

に準拠し、公的な立場として地域の省エネルギーを進める場合には企業・家庭への省エ

ネルギー関連情報の提供、補助金・融資による資金援助などが手法となる。主なものを

挙げると 1. 省エネルギーの方法、手段などに関する情報の提供 2. 省エネルギーを進めるための支援措置などに関する情報の提供 3. 省エネルギーをテーマとした環境学習の充実や省エネルギーセンターの省エネモデル校事業の活用などによる学習・啓発活動

4. 省エネルギーで効果をあげた事業所や家庭の表彰 5. 省エネルギーに向けた計画立案、行動マニュアル作成などに関する支援 6. 家庭や事務所に対する省エネルギー診断サービスの提供 7. 省エネルギーを実施する事業所や家庭に対する資金面の支援

などとなる(表 3-1-6参照)。

②省エネルギー事例 主な事例としては、

1. ウェブサイト(ホームページ)を通じての各種情報提供。事例としては NEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構(http://www.nedo.go.jp/)、財団法人省エネルギーセンター(http://www.eccj.or.jp/)、各地方経済産業局、各地方自治体など

2. 広報誌、パンフレットを通じての各種情報提供。事例としては地方自治体が発行している広報誌、財団法人省エネルギーセンターが配布している「家庭の省エネ大辞典」、「食

の省エネブック」、「省エネ性能カタログ」、「省エネ大賞」、「省エネラベリング制度のご

案内」、「省エネ教室報告書」、「省エネ行動が起きたはずんだ広がった」など 3. 地域新・省エネルギービジョンの策定による啓発活動。本県を含む約 450自治体が新・省エネルギービジョンを策定あるいは策定中。ビジョンは地域における新エネルギー導

入、省エネルギー推進の指針となる。また、概要版は住民に向けて自治体がエネルギー

分野にどのような理念・見通しを持っているかを分かりやすく伝える役割を担っている。 4. イベントによる体験、普及啓発。事例としては新エネルギー教室(四国経済産業局エネルギー対策課)、新エネルギーフォーラム(各地方経済産業局、NEF:財団法人新エネルギー財団など)、エネルギーシンポジウム(NEDO、地方自治体)、クリーンエネルギー自動車試乗会・施設見学会(NEDO、NEF、地方自治体)など

5. 自治体自らの取組みによる広報宣伝。2001年 4月に施行されたグリーン購入法や京都議定書の批准を前提に自治体自身による省エネルギー推進が政府から期待されている。施

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設建替え計画への省エネルギービジョンの反映、ESCO 事業の活用等、地域の特性を考慮した新・省エネルギーの導入・促進を行う。更にその内容を広く住民に告知し、自治

体が地域の新・省エネルギーを率先して進めていく姿勢を打ち出し、波及効果を狙う。

表 3-1-6 行政部門省エネルギー手法概要

手法 具体的行動

省エネルギーの方法、手段

などに関する情報の提供

広報誌、パンフレットの配布およびウェブサイト等の情報源の所在の告

知による情報伝達経路の確立。省エネルギーへの関心を高め、各主体の

省エネルギー行動を促進。

省エネルギーを進めるた

めの支援措置などに関す

る情報の提供

行政窓口での働きかけ、広報誌、パンフレットの配布、ウェブサイト等

の情報源の所在の告知による情報伝達経路の確立および支援措置の利用

誘導。融資の相談など行政への接触・相談を基点として省エネルギー支

援措置の告知・利用を促進。

省エネルギーをテーマと

した環境学習の充実など

による啓発活動

小学校での新・省エネルギー施設見学会、エネルギー教室、総合的な学

習の時間の利用、省エネルギー教育推進モデル校事業の活用。子供のこ

ろからの環境学習により、環境意識の高い市民を養成。更に子供を通じ

ての家庭部門での省エネルギーの広がりを期待。

省エネルギーで効果をあ

げた事業所や家庭の表彰

財団法人省エネルギーセンターが実施している各種の省エネコンクール

への参加、環境・エネルギー家計簿による優秀家庭の表彰。経済的なメ

リット以外の部分で省エネルギー行動の動機付けを行う。

省エネルギーに向けた計

画立案、行動マニュアル作

成などに関する支援

ESCO事業の紹介、NEDOが実施しているアドバイザリー事業の紹介。省エ

ネルギー推進の具体化に筋道をつけ、側面的に支援。

家庭や事務所に対する省

エネルギー診断サービス

の提供

財団法人省エネルギーセンターが実施している省エネルギー診断、環

境・エネルギー家計簿によるエネルギー使用量の把握。各エネルギー消

費主体にエネルギー消費と言う大きな問題を個人・企業のミクロな問題

である認識を持ってもらう。

省エネルギーを実施する

事業所や家庭に対する資

金面の支援

NEDO、NEF、経済産業省などの官庁・特殊法人を通じた補助金の利用、地

方自治体独自の補助金・融資枠の創設、設備導入等に対する税の軽減措

置。経済的な恩恵・補助は直接的な省エネルギーの推進力となる。更に

省エネルギー市場の拡大にもつながり、直接的・間接的効果が期待でき

る。

②本県の特徴を踏まえた主な手法

本県の自治体では省エネルギーに向けたビジョン・計画の策定が進んでおらず、低公

害車の導入や ESCO事業の利用も積極的な自治体がある反面、消極的な自治体もある。ま

た、事業者や家庭の省エネルギーを推進するには手法・情報の提供や啓発活動が重要で

あるという認識を持っている。よって、自治体自身の意識を高めるために、積極的に地

域新・省エネルギービジョンの策定などの NEDO、国の支援制度を利用するとともに、自

治体が企業・家庭を指導する際のマニュアル・指針の作成を行うことなどが主な省エネ

ルギー手法として挙げられる。

Page 16: 省エネルギー推進の方法...36 本章では省エネルギーを推進するための具体的な方策および支援制度を整理し、本県の 特徴に合った省エネルギーの手法をとりまとめる。

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2.省エネルギーに向けた取組み

(1)産業部門

①経団連環境自主行動計画

産業部門の主な取組みとしては経団連環境自主行動計画が挙げられる(表 3-2-1参照)。

同計画は経団連が 1997 年に策定し、現在 48 業種が参加、温暖化問題に積極的に取組ん

でいる。経団連として「2010 年度に産業部門及びエネルギー転換部門からの CO2排出量を

1990 年度レベル以下に抑制するよう努力する」という統一目標を掲げている。経団連では

対策を実施しない場合の 2010年度の排出量は、90年度比 11%増加すると試算している。

2000年度時点での取組みを評価する第 4回フォローアップによると、参加した 36業種か

らの 2000年度の CO2排出量は、4億 86百万 t-CO2となり、1999年度比で 1.1%増加、1990

年度比で 1.2%増加した。

経団連にて CO2排出量増減についての要因分析を行ったところ、業界努力による CO2削減

割合は昨年度より進んだ(99年度:-2.1%、00年度:-4.1%)ものの、景気動向による生産

拡大等の影響による CO2増加割合が上昇(99 年度:+4.2%、00 年度:+7.5%)した結果と

して 1.2%増となった。また、2000年度のエネルギー使用量が 90年度比で 5.7%増加して

いるのに対し、CO2排出量の伸びは 1.2%に留まっており、産業部門の CO2削減対策が進展し

ている事が示唆された。各業種・企業とも、CO2排出量の削減対策に努めているが、景気が

好転し生産量が伸びたことによる排出増がこれを上回ったものと考えられる。

表 3-2-1 県内主要産業関連・経団連環境自主行動計画概要

業種 主体業

界団体

2010年度の 1990年度比の省

エネルギー目標

温暖化対策 備考

鉄鋼 日本鉄

鋼連盟

・ エネルギー消費量:約 10%

・ 廃プラスチック、未利用エネ

ルギーの活用。(約 3%相当

減)

・ 鋼材の利用面での省エネ

ルギーを可能とする高級鋼

材の供給。(社会全体として

同じく約 4%相当減)

・ 国際技術協力による省エネ

貢献。

・ 既存省エネ技術の普及

拡大、革新的技術の実機

化、普及促進。

・ 国、自治体等との協力に

よる廃プラの製鉄所での

利用、未利用エネルギー

への地域への活用。

・ 高機能鋼材の開発、普及

拡大。

・ 共同実施活動等による省

エネ施策への協力。

・ LCA に関する取

り組みの推進

・ 物流対策を通じ

ての環境保全

・ オフィスにおける

省エネルギー・省

資源

・ 製鉄所、周辺地

域の緑化

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業種 主体業

界団体

2010年度の 1990年度比の省

エネルギー目標

温暖化対策 備考

石油 石油連

・ 製油所は補正エネルギー

原単位を 10%削減。

・ 陸上輸送、海上輸送とも

に、燃料使用量を 9%削減。

・ コージェネレーションの普及

により石油消費量を 100 万

kl/年削減。

・ さらに年率 1%削減の可能

性を検討する。

・低温廃熱からの熱回収。

・低圧スチームの有効利

用。

・高性能触媒の開発。

・微生物による脱硫技術の

開発。

・ローリーの大型化、配送

の合理化により1車あたり

積載量を増加。

・船型の大型化と積付率の

アップ。

・総輸送量の削減、総輸送

距離の短縮。

・石油連盟は自主

行動計画の進捗

状況を把握すると

ともに、石油業界

を取り巻く環境の

変化に応じて計

画を改訂してい

く。

化学 日本化

学工業

協会

・エネルギー原単位を 10%削

減。

・化学産業が保有する諸技

術を活用し、省エネルギ

ー型、環境調和型のプロ

セス技術の開発に努め

る。

・当計画は暫定的

なものであり、今

後見直し、改善に

努める。

・作成は、日化協

傘下 80団体が協

力。

石 灰

石 鉱

石灰石

鉱業協

・住環境における緑化(植

樹等)を推進しCO2吸収の

促進を図る。

・石灰藻による CO2固定化

について可能性を検討

し、実験を推進する。

・採掘跡地の緑化は採掘

事業と並行して実施し、長

期間荒れ地を放置せず、

緑化面積の拡大並びに緑

化密度の向上に努める。

・採掘跡地対策、

緑化、山容の保

全、採掘工程で

の環境 ・保安対

策。

・緑化技術の研究

開発の促進。

・環境保全等に関

する広報活動、

等に努める。

資料:経団連発表資料

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(2)民生業務部門

①使用機器・建造物の省エネルギー化

民生業務部門はエネルギー消費主体が分散し、消費源を特定しにくい反面、全体として

は巨大なエネルギー消費部門となっている。よって、これまでに取られてきた個々のエネ

ルギー消費主体に対する対策としては、大規模な事業所を産業部門の対策と同様のエネル

ギー管理指定工場に指定して対応するとともに、主に使用機器や建造物の省エネルギーを

進めることに主眼が置かれてきた。

具体的には省エネルギー法に基づく建築物における省エネルギー基準の明確化、建築資

材の断熱性に関する情報の公開、省エネルギーが不充分な建築物の所有者に対する指示及

び公表、電子計算機、磁気ディスク装置などの業務部門関係特定機器に関する省エネルギ

ー目標値の設定およびエネルギー消費効率の公表などがなされてきた。

(3)民生家庭部門

①使用機器・住宅の省エネルギー化

民生家庭部門は民生業務部門以上にエネルギー消費主体が分散し、大規模なエネルギー

消費主体はほとんど存在しない。また、産業・民生業務部門と異なり、省エネルギーに対

する意識=コスト意識が強くは働かないため、個人のライフスタイルの影響が大きく反映

される。そのため、個々の主体に対して省エネルギーを働きかけるのは難しく、消費者団

体や NPO など自治体以外で精力的に行動する主体が長期間にわたって活動する以外にはほ

とんど効果を挙げることは出来ない。よって、使用機器・住宅の省エネルギー化を図るこ

とが民生家庭部門での主な省エネルギーの取組みとなってきた。

具体的には、民生用電化製品の省エネルギー化の推進、住宅における省エネルギー基準

の明確化、普及・啓蒙活動の推進などがなされてきた。

また、省エネナビに代表される家庭でのエネルギーマネジメント関連の対策も近年取ら

れてきており、将来的には電化製品と省エネナビが連動した、インテリジェンス型エネル

ギーマネジメントシステムが普及し、民生家庭部門での省エネルギーを大きく進める可能

性がある。

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(4)運輸部門

①燃費規制の強化

運輸部門は省エネルギー要因として、鉄道・船舶輸送等へのモーダルシフトの推進によ

る輸送能力の増強、自動車燃費の改善、物流・輸送効率化が挙げられ、エネルギー消費増

加要因として自動車燃費の悪化、自動車保有台数の増加、宅配便等の輸送サービスの多様

化・個別分散化が挙げられる。この内、鉄道・船舶輸送や宅配便等の部分は個々の主体が

つかみやすいので対策が講じやすいが、自動車関連になるとエネルギー消費主体が分散化

し、民生部門と同じ状態になる。したがって、運輸部門の取組みは産業部門的対応に加え、

民生部門的にも取組む必要がある。

具体的にはトップランナー方式で段階的に燃費基準を引き上げて全体の燃費基準を底上

げする、低燃費・低排出ガス車、クリーンエネルギー自動車の重量税、自動車取得税を低

くするなどがなされてきた。

(5)廃棄物部門

① 廃棄物のエネルギーとしての位置付け

廃棄物の処理については、発生・排出抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リ

サイクル)、エネルギー利用(サーマルリサイクル)の優先順位で取組みが行われているが、

エネルギー利用の観点からは、環境負荷の抑制、地域特性、経済性などを考慮しながら最

適な利用形態を構築していく必要がある。

廃棄物の資源・エネルギーとしての利用については、当初は焼却熱を利用した廃熱利用

が主流であったが、現在では廃棄物発電、ガス化利用、発生ガスの燃料電池での利用など、

多様な利用形態が考案・実用化されている。

また、廃棄物処理計画や山口ゼロエミッションプランと密接な連携を図りながら、省エ

ネルギーに向けた取組みが行われつつある。

今後は、廃棄物利用における LCA、LCCO2などの総合的評価に基づいて、廃棄物行政とエ

ネルギー行政の連携を図りながら、地域特性に即した最適な利用形態を選択するためのメ

ニューの整備、情報提供などが必要となる。

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3.省エネルギーを推進するための支援制度

(1)産業部門

①支援措置

主な支援措置としては

1.エネルギーの使用の合理化に関する法律等に基づく支援

2.日本政策投資銀行による低利融資

3.エネルギー需給構造改革投資促進税制

4.先進的省エネルギー設備を導入する事業者に対する支援

5.先導的省エネルギー技術導入アドバイザリー事業

などが挙げられる(詳細は参考資料3を参照)。

また、本県特有の支援措置として『地球にやさしい環境づくり融資事業』がある。本事

業は県内事業場を有し、原則として現事業を 6 ヶ月以上行っているなど融資条件を満たし

た融資対象に対し環境保護を目的とした施設・器機を整備するための資金を融資する制度

である。

②表彰

省エネルギーセンターの省エネルギー優秀事例表彰を始めとした各種の表彰制度があり、

各企業が積極的に省エネルギー技術・取組みをアピールしている。

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(2)民生業務部門

①支援措置

主な支援措置としては

1.エネルギーの使用の合理化に関する法律等に基づく支援

2.省エネルギー型機器・建材等関連製造設備整備事業

3.氷蓄熱式空調システム普及促進事業

4.既築中小建築物個別分散ガス冷房導入促進事業

5.エネルギー需給構造改革投資促進税制

6.先進的省エネルギー設備を導入する事業者に対する支援

7.先導的省エネルギー技術導入アドバイザリー事業

などが挙げられる(詳細は参考資料3を参照)。

産業部門同様、本県特有の支援措置として『地球にやさしい環境づくり融資事業』が利

用可能である。

②表彰

省エネルギーセンターの省エネ大賞を始めとした各種の表彰制度があり、各企業が積極

的に省エネルギー技術・取組みをアピールしている。

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(3)民生家庭部門

①支援措置

主な支援措置としては

1.新省エネ基準を満たす住宅に対する住宅金融公庫の割増融資制度

2.省エネナビの家庭への設置に対する補助金

3.草の根型地域省エネ活動支援事業

が挙げられ、太陽光発電などの新エネルギー関連の支援制度もある(詳細は参考資料3を参

照)。

②表彰・普及啓発

1. 『わたしの省エネ実践コンクール』、『食の省エネルギークッキングコンテスト』など省

エネルギーセンターが実施する各種の表彰制度があり、家庭での省エネルギーの取組み

をアピールしている。

2. ポスター・パンフレットの配布、シンポジウムを通じた啓蒙活動。

3. 省エネラベリング制度による省エネルギー機器の選択性の向上。

4. 省エネ共和国制度などを通じた家庭での省エネルギー活動。

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(4)運輸部門

①支援措置

主な支援措置としては

1.クリーンエネルギー自動車普及事業

2.LPガス自動車転換補助事業

3.低公害自動車普及基盤整備事業(低公害石油ガス自動車普及基盤整備事業)

4.バス利用促進等総合対策事業(交通システム対策事業)

5.最新排ガス規制適合車を早期に取得した場合の特例措置

6.低公害車、低燃費車に係る自動車取得税の特例措置

7.低公害車に係る自動車取得税の軽減措置〈地方税〉

8.低公害車の燃料等供給設備に係る特例措置

などが挙げられる(詳細は参考資料3を参照)。

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(5)自治体

①支援措置

主な支援措置としては

1.地域新エネルギー・省エネルギービジョン策定事業

2.地域省エネルギー普及促進対策事業

3.先進的省エネルギー技術導入アドバイザリー事業

4.省エネルギー地域活動支援事業

5.省資源・省エネルギー公園の整備

などが挙げられる(詳細は参考資料3を参照)。

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4.先進的取組み事例

本節においては、全国の省エネルギーに関する以下のような先進的取組み事例を紹介する。

○省エネルギー効果で改修費用を用意するESCO事業

・シェアード・セイビングス契約

・全国初の自治体におけるギャランティード・セイビングス契約

○地域熱供給事業

○高効率の改良型コンバインドサイクル発電を採用した発電所

○学校・家庭ぐるみの省エネルギー

(1)三鷹市役所(自治体:ESCO省エネ改修)

①事業・設備の状況 三鷹市は東京都の中央に位置する人口 164,476

人の自治体である。庁舎に勤務する職員数は 1,200

人で、市役所本庁舎は昭和 40年に建設されたため

建造物、設備の老朽化が進んでいた。省エネルギ

ー対象として

1.照明

2.冷却塔

3.空調用・トイレ換気用・冷温水ポンプ用動力

を対象に平成 10年度に対策を講じた。 事業名は三鷹市役所本庁舎 ESCO 改修工事(平成 10 年度 三鷹市地球温暖化防止地域

推進モデル事業(環境庁補助事業))。 ②省エネルギーへの取組み内容 三鷹市では省エネルギーを進めるに当って、ESCO 事業方式を採用した。自治体では単年度予算が前提となるので、ギャランティードセイビング方式の ESCO 事業となった。単年度の限られた予算の中で効率良く、省エネルギーを進めるために設備規模、費用対効果、

対策実施の容易さなどを基準として事業を推進した。 1.高効率照明システムの導入 対象照明機器数は 1,246。各機器の安定器をインバーター型に変更し、高効率化した。また、蛍光灯の交換も進めている。蛍光灯の交換は対象機器を一斉に行うのではなく、老朽

化して使えなくなった蛍光灯を中心に順次、交換している。

図 3-4-1 三鷹市の位置

資料:CyberMap Japan Corp. Web site地図より作成

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2.冷却塔ファンの温度制御運転導入 2基の冷却塔にサーモを取りつけ、水冷による冷却塔ファンの温度制御を行う。冷却水の戻り温度を最適化し、冷却塔ファンの不要な運転を抑制する。 3.動力インバーター制御運転の導入 動力モータの交換とインバーター制御運転を導入。機器自体の効率化を図ると同時に、

インバーター制御を行うことにより負荷に見合った運転を行うことが出来るようにする。 これらに加えてモニタリング・レポートシステムを導入し、庁舎 22箇所の電力消費量を自動的に測定・収集・集計出来るようにした。本システムにより、庁舎内のエネルギー消

費の変化がリアルタイムで把握できると共に、市役所 1 階市民ホールに、省エネルギー対

策の累積削減量を1時間ごとに更新し、表示するパソコンを設置した。

③省エネルギー対策の効果

総省エネルギー効果は 508,443MJ/年(2,100千円/年)となった(但し、冷却塔ファンを除く)。 1.高効率照明システムの導入 照明機器の効率化により、低い出力でこれまでと同程度の明るさを得られるようになっ

た。削減電力量は約 33%となり(表 3-4-1参照)、年間換算で 78,858kWhの電力使用量の削減となった。

表 3-4-1 高効率照明システムによる節電効果

節電出力(W)

対策前 対策後 削減電力量

95,233 63,803 31,430

資料:FESCOレポート

2.冷却動力インバーター制御運転の導入 動力モータの交換とインバーター制御運転により無駄な電力消費が抑制された結果、削

減電力量は約 44%となり(表 3-4-2参照)、年間換算で 9,156kWhの電力使用量の削減となった。

表 3-4-2 インバーター制御運転等による節電効果

節電出力(kW)

対策前 対策後 削減電力量

3.92 2.19 1.73

資料:FESCOレポート

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3.その他 三鷹市では通常業務に影響を及ぼさない範囲で、設備の老朽化などに話しを合わせて設

備の省エネルギーを進めるようにしている。本事例は省エネルギー効果以上に、実際に省

エネルギーを進める際のノウハウが重要であることを示唆している。 また、省エネルギーは見えないところで地道に行うものなので、職員の意識が変化しに

くいところが悩みであり、庁内誌などを通じて啓蒙活動などを行っている。特に電力は見

た目に使用している実感が沸きにくいので、目に見える形にすることが大切である。 三鷹市では施設の改修に合わせて、事業を行ったため、効果の検証が難しくなっている。

省エネルギー事業では事前の省エネルギー効果の見積もりも重要であるが、実施後の効果

の検証も重要であることから、実施後の検証体制を事前に確立しておくことが必要である。

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(2)大阪府立母子保健総合医療センター(自治体:ESCO省エネ改修) 大阪府立母子保健総合医療センターでは、地方公共団体では全国初の民間資金活用

型のシェアードセイビングス契約による ESCO事業を実施している。その概要を以下に説明する。

①ESCO事業者の構成 以下の民間事業者 4社による事業実施となっている。

・ 株式会社 ガスアンドパワー ・ ダンダン 株式会社 ・ 株式会社 東芝 ・ 株式会社 ファーストエスコ

②具体的な省エネルギー項目

ESCO事業の省エネルギーの具体的な対象項目は以下のとおりである。

・ 空調熱源機の分割と高効率吸収冷温水機への更新 ・ 空調ファン、給排気ファンのインバーター制御化 ・ ポンプのインバーター化 ・ コージェネレーションの設置 ・ スチームドレンの中水利用 ・ トイレ節水装置の設置 ・ 蒸気ラインの断熱 ・ 蒸気ラインの統合 ・ 看護宿舎用専用温水ボイラーの設置 ・ 照明器具の高効率化

③民間資金活用型 ESCO事業の仕組み

民間資金により既存庁舎などの改修を行う。ESCO 契約期間中(15 年契約)は、省エネにより削減された光熱水費の一部で改修工事費用を償還し、残余費用が府と事業者の利

益となる。契約期間終了後は、削減された費用はそのまま府の利益となる。なお、当仕組

みが成立するためには、光熱水費の削減額が重要になる。最低限、改修費用の年額返済金

額(金利を含む)以上の削減額が保証されていることが経済的条件といえる。 つまり、民間事業者の事前診断及び省エネルギー対策案をベースに、削減費用保証基準

額(年額)を府に保証することにより、当 ESCO事業が成立する。

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(3)住金マネジメント人材開発センター(民間:ESCO省エネ改修)

①事業・設備の状況 住金マネジメント人材開発センターは平成 5 年 6 月に開所し、各種研修などに利用されている宿泊・研修施設である。利用者数は年間約 3 万人で、建物は 5 階建ての宿泊棟、研修棟、共用管理棟、技能訓練棟から構成され、延べ床面積は 10,659m2となる。住友金属工

業グループは現在で言う「ESCO 事業」の先駆者であり、現在の技術でどこまで省エネルギーが出来るか示すために、本研修センターの省エネ改修に取組んだ。省エネルギー対象

としては、

1.各種動力

2.照明・電力

3.熱利用・断熱

4.空調設備

5.需要管理

を対象に平成 11年度にかけて対策を講じた。 事業名は通商産業省・高効率エネルギー利用型建築物改修モデル事業である。 ②省エネルギーへの取組み内容 高効率エネルギー利用型建築物改修モデル事業は本研修センターが初の採用事例であり、

業務用ビルの改修において省エネルギー効果の高い材料・機器を使用した際に、どの程度

の効果が得られるのかデータを収集することを目的としている。本事業により民生部門に

おける省エネルギー対策を強化すると共に成果の普及による啓発効果も期待されている。 1. 各種動力:動力負荷の最適化・動力用電力削減 機械室に設置してある冷温水用ポンプ等をインバーター制御し、季節・時間・機器の使

用状況による変化に合わせた運転を実施。 送水配管の改修によりポンプの運転方法を改善し、稼動時に必要とする消費電力量を削

減する。 2. 照明・電力:照明機器の電圧最適化・トランス台数適正化 電圧調整器により使用状況に応じた適正な電圧制御を行い、無駄な出力をカットするこ

とにより照明用消費電力を低減。 現状の使用負荷に合わせてトランスの運用台数を適正化し、鉄損によるエネルギーロス

を軽減。 3. 熱利用・断熱:コジェネレーション設備の導入・窓ガラスの断熱 170kW出力のディーゼルエンジンにより発電し、館内照明および動力用電力として利用。廃熱を蓄熱層にて回収し、ボイラー燃料の削減を図っている。自家発電の導入により、購

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入電力量を低減させた。 日差しの強い窓に断熱遮蔽フィルムを貼り、空調用エネルギーの使用量を低減させた。 4. 空調設備:室内 CO2ガス濃度管理制御・空調負荷平準化制御 室内 CO2ガス濃度に応じて換気量を制御(CO2が 1000ppm以下では換気を抑制)し、熱交換量を極力抑えることによって、空調関係のエネルギーロスを軽減させた。 シーケンサー制御により、負荷が過大にかかる時間帯には間欠運転を行うことにより空

調負荷を平準化。負荷の平準化によりピーク電力を抑制。 5. 需要管理:デマンドコントローラー デマンドコントローラーにより設備稼動状態に沿った最大需要電力の記録・管理が可能

に。建物全体のエネルギー使用状況が把握でき、効率的な設備使用が可能になる。

③省エネルギー対策の効果

総省エネルギー効果は 3,749,036MJ/年(12,907 千円/年)となった。削減率はエネルギー

ベースでは 22.8%、金額ベースでは 41.61%となった。また、省エネルギー対策ごとの効果はコージェネレーションが最も高く、次いでデマンドコントローラー、動力用電力削減と

なった(図 3-4-2参照)。 図 3-4-2 導入対策別省エネルギー効果

図中の数字は導入効果に占める割合

資料:ビルの省エネガイドブック

12%

14%

6%

18%2%11%

5%

16%

16%

動力負荷の最適化

照明機器の電圧最適化

トランス台数適正化

コジェネレーション設備の導入

窓ガラスの断熱

室内CO2ガス濃度管理制御

空調負荷平準化制御

デマンドコントローラー

動力用電力削減

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(4)晴海アイランド地区の地域熱供給施設 晴海トリトンスクエア(住居ゾーン、賑わいゾーン、オフィスゾーンから構成)の

地域冷暖房はすべて電気エネルギーを活用することにより、省エネルギー型の地域熱

供給を実現している。また、中水、雨水利用や昼光利用という観点からも省エネルギ

ーに適した取組みになっている。 なお、晴海トリトンスクエアの地域規模は、下記のとおりである。

・地域面積:約 6.13ha ・住居ゾーン:居住人口約 5000人、戸数 1770戸 ・賑わいゾーン:商業・サービス施設、コンサートホール、ショールームなど ・オフィスゾーン:就業人口約 20000人収容できる4つのインテリジェントビル

①蓄熱式地域冷暖房施設(DHC)の採用

大規模蓄熱槽を有する全電気式 DHCの採用により、省エネルギー性、環境保全性、コミュニティー性、経済性に優れた地域熱供給施設を実現している。

1.省エネルギー性 個別施設方式と比較し、地域の共有施設とすることにより、温度成層型蓄熱槽(19060㎥)の大規模化やそれに伴う排熱回収熱源機(全熱源機容量 6110RT の約 60%分)を組み合わせることができ、エネルギー利用が集中コントロール可能なため、高効率な地

域熱供給運用が達成できる。 2.環境保全性 当施設は、燃焼設備がなく、CO2、NOxを排出しない全電気式である。また、大規模蓄熱槽を組み合わせることで、環境負荷が少なく、料金の安価な夜間電力を積極的に

利用(夜間熱負荷の 70%)することが可能となった。 3.コミュニティー性 畜熱槽(コミュニティータンク)は、空調用の冷温水を蓄えるだけでなく、火災時の

消火用水や災害時の生活用水として使うこのも可能なコンセプトとしている。 4.経済性 冷熱量を夜間に移行し、熱源のための設備の最小化を実現している。また、安価な夜

間電力の大幅な採用と受入施設に熱交換器を設置することで、冷温水の搬送動力も削減

可能となっている。

②具体的な熱供給施設 熱供給施設を構築するために必要な諸設備一覧を下表に示す。

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単位 能力及び台数

ヒーティングタワーヒートポンプ 冷却 RT 加熱 GJ/h

1,445 12,659

2台

熱回収型ヒートポンプ 冷却 RT 加熱 GJ/h

430 6,811

2台

ターボ冷凍機

冷却 RT

1,180 2台

熱源設備

冷熱合計 温熱合計

冷却 RT 加熱 GJ/h

6,110 40

冷水槽 ㎥ 4,700 2槽 温水槽 ㎥ 260 1槽 冷温水槽 ㎥ 4,700 2槽

蓄熱機

蓄熱槽合計 ㎥ 19,060 5槽

資料:東京電力㈱資料

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(5)東京電力 横浜火力発電所(エネルギー転換:高効率利用)

①事業・設備の状況 東京電力㈱横浜火力発電所は 1962年から発電を開始した原油・重油を燃料とする火力発

電所であった。その後、設備増強を重ね、1998 年には ACC(改良型コンバインドサイクル)

発電方式の設備を建設した。燃料も LNG に転換され、クリーンで高効率な発電所として運

転されている。 ②省エネルギーへの取組み内容 ACC(改良型コンバインドサイクル)発電はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせ、そ

れぞれの利点を生かした発電方式であるコンバインドサイクル方式を改良し、熱効率を向

上させた最新型の発電方式である。ACCでは普通のコンバインドサイクルと比較してガスタ

ービン入口のガス燃焼温度を高めることにより高出力化・熱効率の向上を図っている。

③省エネルギー対策の効果

熱効率は 49%となり、現在の発電部門の平均熱効率の 40%を上回っている。平均熱効率と

比較すると、原油換算で約 73 万 kl の削減となる。燃料は硫黄分を含まない LNG を用いて

いるためばいじん等の排出が無く、環境的にも優れた効果を挙げている。

資料:東京電力㈱資料

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(6)川崎市川崎区立 新町小学校(自治体・家庭:省エネルギー行動)

①事業・小学校の状況 川崎市川崎区立 新町小学校は生徒数 364 人(2001 年 4 月現在)、1 学年当り 2 学級の都

市部では中小規模の小学校である。前校長の宮田 進 氏の発案により小学校での省エネル

ギー教育を進めるための様々な試みがなされており、全国の注目を集めている。新町小学

校の取組みの成果は形になっているものだけでも省エネナビ・省エネ共和国などが挙げら

れる。 ②省エネルギーへの取組み内容 前校長の宮田 進 氏が1997年に開かれた京都会議を契機に、小学校で取組める省エネル

ギー活動を模索し、児童・教職員・地域・家庭を巻き込んだ様々な取組みがなされてきた。

1.省エネナビ

電力使用量は表現がkWhとわかりにくく、どれぐらい使っているか視覚的には掴めないの

で、児童に電力使用量をわかりやすく伝えるためにはどのようにすればよいかという観点

から作り出されたのが省エネナビである。小学校、PTA、省エネルギーセンターが協力し、

金額表記にするなどの改良を重ねた結果、現在のような小型で使い勝手の良いものとなっ

た。

省エネナビは省エネルギー教育や家庭でのエネルギーマネジメントの道具として活躍し

ており、民生家庭部門の省エネルギー対策の一つとして効果を挙げている。

2.省エネ共和国

省エネ共和国は新町小学校の取組みに影響された省エネルギーセンターが始めた表彰・

認定制度で、地球温暖化防止のためにエネルギーを考え、省エネルギー・環境・リサイク

ル等を推進する地域活動を、それぞれの特性に合わせたプランに基づいて、実践をめざす

人々の集合体が対象となる。

新町小学校も1998年10月に建国しており、目標は新町小学校の電気料金10%削減目標と

なっている。

3.出来ることから取組む非強制的省エネルギー行

従来、省エネルギー活動は無駄なエネルギーを

使う行動や非協力的な人物を非難や指導するなど

して、強制・半強制的に省エネルギー行動を強要

する傾向があったが、新町小学校では意識化・態

図 3-4-3 消灯確認スイッチ

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度化に力点を置き、児童の自発的な取組みにまかせるようにした。また、悪い取組みを叱

るのではなく、良い取組みを率先して誉めるようにすることによって、児童の行動を萎縮

させずに良い方向に持っていくようにした。

4.地域・家庭への広がり

小学校内だけの取組みではおのずと限界があるので、

児童の家庭や地域を取りこんでいく取組みも行った。

具体的には PTAでの呼びかけや児童を通しての家庭で

の省エネルギー行動、家庭への省エネナビの設置、省

エネ集会の開催、省エネ法被、省エネうちわなどの貸

し出しによる省エネ PRなどが挙げられる。

③省エネルギー対策の効果

1998年から様々な取組みをしてきた結果、現在では先生とこどもたちが一緒になって省

エネルギーに取組んでいる。 電力消費に関しては省エネナビを設置し、電気料金が目で確

認できるので、小学生にも理解しやすい環境となっている。

学校での、省エネ行動と連携するためPTAに協力を依頼し、児童の家庭33世帯に表示器を

設置している。 今後は学校を中心とした地域ぐるみの省エネ行動を川崎市全域へ広めるこ

とを目指しており、川崎市役所を中心として市内全域で小中高校での省エネルギー活動を

進める機運が出てきている。

新町小学校では省エネ共和国建国時に掲げた、年間電気料金10%削減の目標をこれまで

毎年達成してきており、様々な取組みが有効に働いていることを示唆している。

図 3-4-4 省エネ法被

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(7)省エネルギー教育推進モデル校事業

省エネルギー型のライフスタイルの浸透・定着が国民各層に求められ、特に小中学校の

児童・生徒など、将来を担う若い世代が省エネルギーについて学び実践する能力を養う機

会の提供は、極めて効果的であるため、(財)省エネルギーセンターによって「省エネルギ

ー教育推進モデル校事業」が実施されている。

①事業の目的

小中学生による省エネルギーの理解・実践のための「総合的な学習の時間」などでの学

習及び家庭や地域での実践が、創意工夫に富み多様性のあるものとなるよう支援すること

を目的としている。

②事業の概要

◆対象:全国の小中学校(平成13年度に133校指定)

◆モデル校指定期間:平成13年度から平成15年度の3年間

③モデル校の活動内容

◆各モデル校の特性に応じた「総合的な学習の時間」などでの省エネルギー学習の実施

◆地域社会との連携

モデル校内のみにとどまらず、家庭・地域と連携した省エネルギー活動を実践する

ためのリーダー的な役割を発揮

◆省エネルギー学習の実施状況の公表

◆学習事例発表会への参加

④モデル校への省エネルギーセンターからの支援内容

◆省エネナビ(エネルギー消費計測器)の提供

◆省エネルギー学習のための教材・人材等の提供

◆事例発表会の開催(地区発表会、全国発表会)

◆情報提供・交換の場の設定

ホームページ「省エネ教育ひろば」を核とした情報交換の実施

⑤山口県のモデル校

山口県においては、平成13年度に豊北町立粟野小学校がモデル校に指定され、省エネ

ルギー教育を進めている。