2.製品アセスメントの概要...-2-その後、h3~h7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8...

22
-1- 2.製品アセスメントの概要 (1)製品アセスメントの経緯、必要性及び考え方 1)製品アセスメント検討の経緯 クリーン・ジャパン・センターにおける報告書等の中で 「製品アセスメント」という 用語が最初に見受けられるのは 「再生資源の需給動向に関する調査報告書 (平成2年 3月 日自振補助)において 「厚生省では、廃棄物の適正処理という観点から、昭和6 2年に製品アセスメントのガイドラインを策定している 」という記述がある。 当時、厚生省が策定しているのは 「事業者による製品等の廃棄物処理困難性自己評価 のためのガイドライン」である。当ガイドラインは、当時の廃棄物処理法第3条の事業者 の責務に関する規定(事業者は、~物の製造、加工、販売等に際してその製造、加工、販 売等に係る製品、容器等が廃棄物となった場合において、その適正処理が困難となること のないようにしなければならない (いわゆる適正処理困難物 )に基づいて定められた ものである。その中では 「製品アセスメント」という言葉は使用していないが、上記報 告書の記述は、製品の製造等の段階から廃棄された段階のことに配慮するという概念を含 んでいることから、これを「製品アセスメント」と呼んでいるものと考えられる。 その後、平成2年12月にクリーン・ジャパン・センターが製品アセスメントをテーマ にした研究会(講演会)を開催している記述がある(平成3年度 相談事例集 。当時の クリーン・ジャパン・センターが 「製品アセスメント及び再資源化技術に関する調査研 究」と題した発表を行っているが、その中で、製品アセスメントの定義として、狭義には 処理処分が容易になるようにするもの、再資源化が容易になるようにするもの等が考えら れ、広義には資源保全や地球環境保全に配慮したもの等が考えられるとしている。 また、平成3年度予算に 「製品・製法アセスメント実施のための指導書の作成」が新 規に予算化されており 「製造事業者が、製品等を廃棄物の減量化、再資源化の観点から 評価し見直すためのアセスメント手法を開発する 」としている。 これは、平成3年に施行されたリサイクル法に基づく「第1種指定製品 (使用後に容 易にリサイクルできるよう構造や材質等を工夫すべき製品;自動車、テレビ等家電)の考 え方を普及・促進するための事業として実施されることになったものと考えられる。 一方、民間では、上記の平成2年12月の研究会において、IBMから 「製品の環境 影響評価プログラム」という、発表が行われ、製品アセスメントという言葉ではないもの )。 の 製品のアセスメントを行うという考え方が示されている 平成2年4月に別途発表済 さらに、平成3年7月には (財)家電製品協会に、製品アセスメント委員会が設置さ れ、同年10月に家電製品アセスメントマニュアルが公表されている。また、同時に松下 電器が製品アセスメント規定を定めており、その後家電各社が実施している (H3年度 製品・製法アセスメント実施のための指導書作成事業)

Upload: others

Post on 09-Jul-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 1 -

2.製品アセスメントの概要

(1)製品アセスメントの経緯、必要性及び考え方

1)製品アセスメント検討の経緯

クリーン・ジャパン・センターにおける報告書等の中で 「製品アセスメント」という、

用語が最初に見受けられるのは 「再生資源の需給動向に関する調査報告書 (平成2年、 」

3月 日自振補助)において 「厚生省では、廃棄物の適正処理という観点から、昭和6、

2年に製品アセスメントのガイドラインを策定している 」という記述がある。。

当時、厚生省が策定しているのは 「事業者による製品等の廃棄物処理困難性自己評価、

のためのガイドライン」である。当ガイドラインは、当時の廃棄物処理法第3条の事業者

の責務に関する規定(事業者は、~物の製造、加工、販売等に際してその製造、加工、販

売等に係る製品、容器等が廃棄物となった場合において、その適正処理が困難となること

のないようにしなければならない (いわゆる適正処理困難物 )に基づいて定められた。 )

ものである。その中では 「製品アセスメント」という言葉は使用していないが、上記報、

告書の記述は、製品の製造等の段階から廃棄された段階のことに配慮するという概念を含

んでいることから、これを「製品アセスメント」と呼んでいるものと考えられる。

その後、平成2年12月にクリーン・ジャパン・センターが製品アセスメントをテーマ

にした研究会(講演会)を開催している記述がある(平成3年度 相談事例集 。当時の)

クリーン・ジャパン・センターが 「製品アセスメント及び再資源化技術に関する調査研、

究」と題した発表を行っているが、その中で、製品アセスメントの定義として、狭義には

処理処分が容易になるようにするもの、再資源化が容易になるようにするもの等が考えら

れ、広義には資源保全や地球環境保全に配慮したもの等が考えられるとしている。

また、平成3年度予算に 「製品・製法アセスメント実施のための指導書の作成」が新、

規に予算化されており 「製造事業者が、製品等を廃棄物の減量化、再資源化の観点から、

評価し見直すためのアセスメント手法を開発する 」としている。。

これは、平成3年に施行されたリサイクル法に基づく「第1種指定製品 (使用後に容」

易にリサイクルできるよう構造や材質等を工夫すべき製品;自動車、テレビ等家電)の考

え方を普及・促進するための事業として実施されることになったものと考えられる。

一方、民間では、上記の平成2年12月の研究会において、IBMから 「製品の環境、

影響評価プログラム」という、発表が行われ、製品アセスメントという言葉ではないもの

、 ( )。の 製品のアセスメントを行うという考え方が示されている 平成2年4月に別途発表済

さらに、平成3年7月には (財)家電製品協会に、製品アセスメント委員会が設置さ、

れ、同年10月に家電製品アセスメントマニュアルが公表されている。また、同時に松下

電器が製品アセスメント規定を定めており、その後家電各社が実施している (H3年度。

製品・製法アセスメント実施のための指導書作成事業)

Page 2: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 2 -

その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8

年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した 「製品アセスメントとリサイクル設、

計事例」においては、製品アセスメントの概念は極めて大きく 「製品生産者が生産を行、

う前に、当該製品の生産・流通・使用・廃棄・再資源化/処理処分の各段階における安全

や資源・環境への影響を調査、予測及び評価し、必要に応じて製品設計や生産方法等の変

更を行って影響の軽減化を図る 。ことと定義されている。」

以上のことから、製品アセスメントという概念は、当初 「製品が廃棄される際に、そ、

の処理が困難にならないよう、また、減量化、再資源化が促進されるよう、製造事業者等

が製品の設計段階等において事前に評価を行うこと」という考え方が、廃棄物処理法の適

正処理困難物やリサイクル法に基づく第1種指定製品等により「製品アセスメント」とい

う形で制度化、普及していくこととなったと考えられる。

一方で、製造事業者等には、広く環境等に配慮して製品の設計や製造を行うことが求め

られ、従来、土地開発等の大規模事業において制度化されていた環境影響アセスメントに

、 、 、おける 事業を環境側面から事前に評価するという考え方が アナロジー的に製品の設計

生産等にも反映されるようになっていった。

このような状況の中で、事業者は、製品の設計、生産に当たって、それまでのように単

に製品の市場性を中心とした観点からの配慮以外に、環境や省エネルギー性等の要素につ

いて配慮することが必要であるとの考え方が広がってきた。

以上のような経緯から、製造事業者が実際に実施することを前提とした製品アセスメン

トは、上記のようなニーズを踏まえ、その基本的な概念として、広く製品の生産~処理処

、 、 、 、分までの段階について 安全 資源 環境といった多くの要素に配慮することが求められ

、 、 、 、前出のような定義がなされるとともに 実質的には 製品等を廃棄物の適正処理 減量化

再資源化の観点から評価し見直するものとして発展してきたと考えられる。

2)製品アセスメントの必要性

ところで、そのような「製品アセスメント」に密接に関係するものとして、平成12年

に循環型社会形成推進基本法等6本の循環型社会関連法が制定・改正され(図2-1 、)

本年は、循環型社会元年として始まろうとしている。その背景としては、以下のような理

由が考えられる。

ひとつの大きな理由は、環境問題のグローバル化に起因するものである。 年代以1980降、環境問題は従来の水や大気の汚染といった地域的なものから、オゾン層破壊、地球温

暖化といった地球的規模のものへ拡大していった。そのような状況の中で、 年6月1992「 」( 「 」)にブラジルのリオデジャネイロにおいて 環境と開発に関する国連会議 別名 地球サミット

が開催された。この会議は、 年にスウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境1972会議以来、 年ぶりに国連の場で環境問題が本格的に協議される機会であったが 「持続20 、

Page 3: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 3 -

図2-1 循環型社会の形成の推進のための法体系

Page 4: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 4 -

可能な開発」がキーワードとされた。これは、環境が経済社会発展の基盤であり、環境を

保全しつつ開発を進めることが、持続的な発展につながるとの認識に基づき 「将来の必、

要性を満たす能力を損なうことなく、現在の必要性を満足させていく」という考え方であ

る。そのために、途上国においては、貧困、人口増加、環境破壊の悪循環を断ち切るため

の開発を進めることとし、一方、先進国では途上国のそうした取り組みを支援するととも

に、自国においては、大量の使い捨て、エネルギー消費社会を持続可能なものに転換して

いくことが求められることとなった。

また、これと同じ時期に他の先進国(ドイツ、フランス等)では、包装材を用いる製造

業者と流通業者にその回収を義務づける等、廃棄物の減量化、発生抑制、再生利用促進等

の取り組みが進められた。これは、いわゆる拡大生産者責任(EPR)という考え方に基

づくものである。

このような世界の流れの中で、我が国でも持続可能な発展のための循環型社会の体制づ

くりが求められるようになったのである。

もう一つの大きな理由として、近年、我が国において廃棄物の問題が、その量と質の観

点から非常に深刻化していることがあげられる。

廃棄物の量の観点からの問題は、廃棄物の埋立地が逼迫するという、非常に直接的な問

題である。最終処分場の残余年数は平成8年度末の段階で一般廃棄物が 年、産業廃棄8.8物は 年となっている。最終処分場の残余容量は年々減少傾向にあり、特に近年、周辺3.1住民の反対等により、新たに埋立地を建設することが困難になっている。従って、既設の

埋立地をできるだけ延命化することが必要であり、廃棄物の減量化が求められている。

他方、廃棄物の質の観点からの問題として、廃棄物の焼却に伴い発生するダイオキシン

類がある。特に、平成9~ 年にかけて問題となった、埼玉県所沢市での産業廃棄物焼10却施設の集中に対する不安や大阪府能勢町でのごみ焼却施設周辺での土壌汚染は、大きな

社会不安を引き起こした。このため、平成 年7月には「ダイオキシン類対策特別措置11法」が制定され、廃棄物焼却施設、焼却灰等について規制が強化された。

、 、 「 」また これと前後して 平成 年2月には政府内に ダイオキシン対策関係閣僚会議11が設置され、総理大臣を筆頭に政府をあげてダイオキシン対策に取り組むこととされた。

その中で、関係する各省庁が廃棄物の排出抑制、リサイクルのための具体的な措置を検討

することを決めるとともに、同年9月には 「廃棄物の減量化の目標量」が決定された。、

具体的には、例えば廃棄物の最終処分量を平成 年度までに半分に減らそうというもの22である(図2-2 。そして、この目標を達成するために、減量化を進めるための法制度)

の円滑な施行、新たな方策の検討を行っていくこととされた。

以上のように国の内外において循環型社会構築の必要性が高まってきたことが、今回の

新たな法制度整備の大幅な進展につながったものと考えられる。

こうした状況を踏まえ、今後の製品アセスメントはどのような考え方に基づいて進める

べきか、検討する必要がある。

Page 5: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 5 -

図2-2 廃棄物の減量化の目標量

25

65

10

12

64

24

0%

50%

100%

 5,300万t H8(実績)

5,000万tH22

一般廃棄物

14

44

42

7

45

48

0%

50%

100%

 4.26億t  H8(実績)

4.8億t  H22

産業廃棄物

リサイクル

減量化(焼却等)

最終処分

Page 6: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 6 -

3)製品アセスメントの考え方

そこで、循環型社会の基本的な枠組みを示している循環型社会形成推進基本法をみてみ

る。同法においては、まず、循環資源(廃棄物等のうち有用なもの)をできる限り循環利

用することを求めた上、その循環的な利用及び処分の基本原則として、発生抑制(リデュ

ース 、再使用(リユース 、再生利用(リサイクル 、熱回収(サーマルリサイクル 、適正処分の) ) ) )

順に、実施することを求めている。また、これらの対策の実施に当たっては、環境保全上

の支障がないように適正に行われることを求めている。

さらに、拡大生産者責任として、製造事業者等に対し、製品の耐久性の向上、設計の工

夫、材質や成分の表示を行うこと等を求め、さらに、適切な役割分担のもとで、循環資源

となった製品等の引き取り、循環利用等を行うことを求めている。

一方、改正されたリサイクル法(資源の有効利用の促進に関する法律)においても、新

( )たに使用済製品の発生を抑制する設計・製造を求める製品を指定する 特定省資源化製品

こととした他、従来のリサイクルに配慮した設計製造を求める製品(旧第1種指定製品)

にリユースへの配慮も求めることとした(指定再利用促進製品 。さらに、使用済製品の)

自主回収・再資源化を求める制度を創設している(指定再資源化製品 。)

以上のようなことから、循環型社会の形成に向けて、製造事業者に求められている「製

品アセスメント」は3R(リデュース、リユース、リサイクル 、適正処理処分を促進す)

るためのものであり、同時に環境保全性等に配慮したものであることが求められている。

そこで、本マニュアルにおいては、製品アセスメントの具体的な項目として、まず、リ

デュース、リユース、リサイクル(マテリアル、サーマル 、適正処理・処分の順に検討)

を行い、併せて環境保全性、省エネルギー性、安全性の観点から、負荷が増加していない

かどうか、さらに、一層の改善が可能かどうかを検討することとした。

Page 7: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 7 -

(2)製品アセスメントの効果

製品アセスメント実施の必要性については、( )に述べたとおりである。これまで既に1多くの業界、製造事業者等によって、先進的に取り組みが始められているが、まだ、進ん

でいない分野、事業者も存在する。その大きな理由は必要性は理解できても、実際に環境

、 、 ( )に配慮した製品作りを実施しようとした場合に 相当な手間 費用 いわゆる環境コスト

等がかかることが想定されるため、また、製品アセスメントを実施することにより事業者

にどのようなメリットがあるのかよくわからないためであると考えられる。

しかしながら、製品アセスメントの実施例を見ると環境への配慮を進めることにより、

利益の増加等に多くの波及効果があることが明らかになっている。それは、製造コストの

削減から売り上げ増への期待、会社の体制の強化まで幅広いものとなっている。もちろん

初めてこの課題に対応しようとした場合には (全ての新しい事業がそうであるように)、

若干の手間(費用)が必要になる。このため、その開始には、意志決定者(社長等)の決

断が大きなポイントとなる(この点については次章参照 。。)

以下に、製品アセスメントの実施によって得られる効果(メリット)を記述する。

1)製品アセスメント実施による社会、利用者のメリット

製品アセスメントの目的は、製品を製造する前に評価し、廃棄物の減量化等による環境

保全を図ることである。従って、社会や利用者に対する効果として以下のようなものがあ

げられる。

(ア)循環型社会形成の促進(廃棄物の減量化効果)

既に必要性の中で触れたように、廃棄物の最終処分場の不足、ダイオキシン類対策等の

ため廃棄物の減量化を進め、循環型社会の形成推進を図ることが強く求められている。製

品アセスメントは製品製造事業者の立場からその促進を図る有力な手段である。これは、

EPR(拡大生産者責任)に基づく製造事業者の責務を果たすことにもつながるものであ

る。

(イ)環境保全にかかる効果

製品アセスメントを実施することにより、製品中の有害物質の使用量の削減等、環境保

全の観点から望ましい成果を得ることができる。これまでの環境保全の方策は、最終的に

環境に排出される段階(いわゆるエンド・オブ・パイプ)で検討されることがほとんどで

あった。製品についていえば、廃棄される段階での適正処理・処分だけで対応しようとす

る考え方である。製品アセスメントは、製品の設計・製造段階から予め3R等を含めた環

境保全への配慮を行おうというものであり、より効率的な環境保全が可能になると考えら

れる。

(ウ)省資源・省エネルギーにかかる効果

製品アセスメントには、省資源化の検討、省エネルギー化の検討に関する項目が含まれ

ており、これらを促進する効果がある。省資源化については、本マニュアルにおいて主た

る検討事項である3R(リデュース、リユース、リサイクル)を促進することが、そのま

ま省資源化を進めることにつながる。また、省エネルギー化の検討においては、特に、使

用段階でのエネルギー使用効率の向上を図ることにより、利用者にとっても日常の消費電

力の削減につながるというメリットがある。

Page 8: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 8 -

2)製造事業者(製品アセスメント実施者)におけるメリット

以下に示すように、製品アセスメントがその実施者(製造事業者)に与えるメリットに

、 、 、 。は コストの削減効果 製品の価値増加効果 会社の事業体制の強化等多くのものがある

(ア)コストの削減効果

①製造段階におけるコスト削減

最も大きな効果が期待されるのは、製造段階におけるコストの削減である。製品アセス

メントでは、例えばリデュース(発生抑制)の観点から材料の軽量化、部品の小型化を図

ることとされている。これにより材料等の減量化が図られ、その費用も削減されることに

なる。

<参考事例>省資源化事例1;自動車バンパーの材料変更、新素材の開発

(事例集P○○)

また、リユース、リサイクルのため製品解体の容易性を高めることが求められるが、通

常、解体が容易になるということは組立にも反映されることから、そのコストの削減が期

待される。

( )<参考事例>マテリアルリサイクル事例 ;複写機の分解・分別の工程数を半減 事例集P○○19さらに、部品リユースを実施し、新製品に部品を再利用することになれば、部品費の大

幅な削減につながると共に、その在庫の圧縮が可能になり、より効率的な生産が可能にな

る。

また、適正処理等への配慮から、製品に含まれる有害物質の削減を図ることは、製造工

程において、それに対する環境保全上の措置等を不要とすることから、そのコストを削減

することが可能である。その際、製造工程から排出される産業廃棄物の処理コストも低減

する事が可能である

<参考事例>環境保全事例1;テレビからの有害物質使用量削減 (事例集P○○)

以上のように、製品アセスメントを実施することは様々な点からその製造コストの削減

に寄与することになる。

②輸送、販売段階におけるコスト削減

製品アセスメントにより、製品が軽量化、小型化すれば、その輸送、保管等の物流費を

削減することが可能になる(販売店においても保管費の圧縮が可能であり、これは売り上

げの増加につながる 。これは、その包装材、梱包材についても同様で、その簡素化、。)

再使用等を進めることにより、物流コストの削減を図ることが期待される。

、 ( )<参考事例>省資源化事例16;家電外箱廃止 緩衝剤廃止の取り組み 事例集P○○

③製品使用に係るコスト削減

現在、PL法の制定等に伴い、製品の使用時に関わる故障等に対する製造事業者の費用

負担の可能性が高まっている。製品アセスメントの実施により、製品の長期使用化等が図

られ、その耐久性や信頼性が高まることが期待される。これにより、そのような費用の負

担リスクを低減することが可能である。

④製品の廃棄等に係るコスト削減

Page 9: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 9 -

現在、EPRの考え方の普及に伴い、日本においても法令に基づき、既に容器包装材、

家電、パソコン等について、製造事業者がその使用済製品等の回収、再資源化を義務付け

られている。今後ともその範囲は拡大して行くものと考えられる。製品アセスメントの実

施により、例えば、よりリサイクルしやすい材料を使用するなど、製品の回収、再資源化

の効率化を図り、そのコストを削減することが可能である。

(イ)製品の価値増加効果(売り上げ増の期待)

①グリーン購入への対応

平成13年4月にいわゆるグリーン購入法が施行され、国の機関においては環境に配慮

された製品等の購入が義務付けられた。国の機関の国民総支出に占める割合は約2.2%

であり、相当な影響があると考えられる。また、このようなグリーン購入、グリーン調達

といった考え方は、現在自治体、企業等に広がりつつある。

むしろ、企業にとっては、そのようなビジネスパートナーにおける考え方の広がりの方

が影響が大きいことも考えられる (即ち、製品アセスを実施することで、実施した製品。

・部品等を購入しようとする事業者が増える (仕事が増える )。 。)

、 、 、そのような中で 製品アセスメントを実施し 環境に配慮した製品製造を進めることは

市場における優位性を高めることが可能になる。

<参考事例>グリーン購入法に基づく基本方針では、物品毎に判断の基準、配慮事項

が定められている。例えば、エアコンについて、エネルギー消費効率について具体的

な数値基準を示すと共に、オゾン層破壊物質が使用されないこと等とされている。ま

た、配慮事項として、製品の長寿命化・省資源化、素材の再生利用のための設計上の

工夫や再生プラスチック材を多く使用すること等が求められている。

また、消費者においても、消費者団体等において環境への配慮を行った製品の評価を行

うなど、環境への配慮の有無をその製品の選択の一要素とする場合が増加しているものと

考えられる。

そのような動きの中で、環境に配慮した製品の判別を容易にするため、日本のエコマー

クのように環境ラベルの考え方が世界中で進行しており、その取得のためにも、製品アセ

スメントの実施は不可欠である(環境ラベルの動向→第7章(2)参照 。)

②製品性能の向上

さらに、製品アセスメントを実施することは、その耐久性の向上、長期使用化等の検討

により、その性能の向上を図ることにつながる。それは、製品及び製造者への信頼につな

がり、ブランドイメージを高め、製品価値を高めることになる。

(ウ)会社の事業体制の強化(改善)

①企業の技術開発力、市場確保能力の強化

製品アセスメントは その企画 設計段階から始まり 製造事業全体について見直し 変、 、 、 (

革)を必要とする。従って、いわゆるISO14001(環境マネジメントシステム)と

Page 10: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 10 -

同様にPDCAサイクルに則った製品製造事業が必要になる。従って、企業の活動が大き

く活性化されることになる。これにより、企業としての技術開発力、市場確保能力等が高

まることが期待される。

②経営者、従業員の意識の向上

一方、当該企業の経営者及び従業員も、社会の一員として環境への配慮を求める雰囲気

の中で生活している。事業に製品アセスメントを取り入れることにより、環境に貢献する

事業を実施する当事者として、その意欲を高め、生産性等が向上することが期待される。

また、有害物質の削減等は、労働環境の改善にもつながることになる。

③企業イメージの向上

企業は、製品アセスメントを実施することによる製品の性能向上(環境側面を含む)及

び、そのことの適切な広報活動を実施することにより、製品、企業のイメージを高めるこ

とが可能である。

(エ)その他の効果

①国等の規制等への対応

資源有効利用促進法をはじめとするリサイクル関連法が整備され、また、行政指導等に

より製造事業者に3R等に関連し一定の責務が求められるようになってきている。これに

対応していく上で製品アセスメントの実施が有効である。さらに、業界として環境への配

慮等を行動計画として定める等の事例(行動憲章等)もあり、その場合にも製品アセスメ

ントの実施により対応することが可能である。

②国際動向への対応

ISO14000シリーズの規格化等、事業活動に環境への配慮を求めることが、国際

的な標準となりつつある。これに具体的に対応していくツールとして、製品アセスメント

が有効である。

(オ)製品アセスメントを実施しないことによるデメリット

一方、現在の社会における動向からすると、今後、製品製造に当たって環境に配慮する

ことは、当然のこととなっていく可能性が高い。そのような情勢の変化の中で、なお、製

品アセスメントを実施せず、製品製造事業を続けることは、製品の市場性の喪失など事業

活動の実施上の妨げになるおそれがある。以下に製品アセスメントを実施しないことによ

り生ずるおそれのあるデメリットを示す。

①製品の市場性の喪失、ビジネスチャンスの喪失(部品供給等 。)

製品アセスメントを実施すること等により環境に配慮していることを主張できない製品

は、市場において評価されなくなるおそれがある。特に他の性能、価格等に大きな差がな

い場合、ユーザー(利用者)は、環境に配慮した製品を選ぶ可能性が高いと考えられる。

また、同様のことは企業ユーザーにおいても言える。部品等を企業ユーザーに供給してい

る場合に、供給先から当該部品の環境情報等を求められる場合が多くなると考えられる。

Page 11: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

- 11 -

その際に、従前から製品アセスメントを実施していなければ、適切な対応をとれない可能

性があり、ビジネスチャンスを消失するおそれがある。

②同業他社からの遅れ

製品アセスメントには、3R等推進のための事業体制の見直し等、実施に相当の時間を

必要とする項目もある。従って、早く着手し、継続的に実施することにより、その効果を

高めていくことになる。このため、製品アセスメントの実施が遅れることは、時間の経過

と共に大きな差となって、他の事業者から遅れるおそれが生ずることになる。

③環境保護団体等からの評価

製品製造事業者に環境への配慮を求める動きは、西欧等を中心に高まっており、自然保

( ) 。護団体等多くの組織 NGO 等で環境保全の面から製品を評価しようとする考えもある

中には、一定の権威をもってその結果を公表する団体もあり、何の配慮も行っていない場

合には、環境保全に無関心な製品(企業)との評価を受けるおそれがある。

④製品・企業イメージの悪化

製品アセスメント等を実施せず、環境への配慮に無関心でいた場合、前述の団体による

動き等もあり、製品、企業のイメージが悪化するおそれがある。その影響は、製品の売り

上げ、企業の人気(求人)といった直接的なものだけでなく、資金の調達等に及ぶおそれ

がある。

以上のことから、これまで製品アセスメントに取り組んでいない事業者は、早期にこれ

、 、 、に取り組む必要があり また これまで実施してきた事業者もその効果を一層高めるため

より積極的に取り組む必要のあることが明らかである。

Page 12: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

(3)製品アセスメントの対象

1)製品アセスメントの必要な製品の条件

循環型社会の構築に向けて、製品アセスメントは全ての製品で行われることが望ましいが、特に

必要性の高い製品・業種の条件を把握することが重要である。

製品毎の必要性を評価するための判断基準として、通商産業省(現経済産業省)環境立地局「循

環経済ビジョン」による廃棄物・リサイクル対策の必要性評価のための判断基準を以下に示す。

(ア)使用済み製品の排出量

製品アセスメントの一つの目的である廃棄物量の減量化という観点から、排出量の多い製

品ほど対策の必要性が高いと考えられる。

(イ)製品に含まれる資源の有用性

資源の有効活用の観点から、製品に希少性・枯渇性の高い資源や製造時のエネルギー消費

の多い資源等が用いられている場合ほど対策の必要性が高いと考えられる。

(ウ)製品の処理困難性

環境負荷物質の放出、爆発等の危険性のある製品、あるいは一般廃棄物として排出された

場合に市町村等での処理が技術的に困難である製品については対策の必要性が高いと考えら

れる。なお、本報告書では処理困難性は以下のとおり分割して検討するものとする。

a)処理困難

製品や材料の強度、物性等により破砕等の中間処理が困難であるもの、あるいは爆発等の

危険性があるため処理が困難であるもの

b)環境負荷物質の含有

環境に負荷をもたらす物質を含んでいるため、これを外部に放出することなく適正に処理

することが困難であるもの

こうした条件にあてはまる製品は、業界として製品アセスメントガイドライン等がすでに作成さ

れ、個別の企業において実施されている事例もあり、特に、排出量の多いもの、処理困難なものに

ついては、既に産業構造審議会 廃棄物・リサイクル小委員会の品目別・業種別廃棄物処理・再資

源化ガイドライン(以下、「品目別ガイドライン」という。)においても3R等に向けた設計・製

造段階での配慮を行うこととされている場合が多い。

1

Page 13: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

2)製品アセスメントの実施状況

本調査では、製品アセスメントの実施状況等について主として製造業関係の業界団体を対象にア

ンケート・電話ヒアリング調査を実施した。このアンケート調査結果を基に、製品アセスメントの

実施状況を表2-1にまとめる。また、アンケート調査の詳細は付属書Bのとおりである。アンケ

ート・電話ヒアリングは業界団体に対して行ったが、回答の得られなかった団体等もあり、全ての

範囲を網羅することはできなかったことに留意いただきたい。

アンケート調査を行った製品は、大きく生活・事務系と産業機械・部品素系材の2つに分類でき

る。

生活系・事務系では調査を行った27業界のうち、何らかの形で環境配慮設計に取り組んでいるも

のが 13、製品アセスメントについてガイドライン作成等の具体的な方策の実施に至っているものが

10であった(環境配慮設計と製品アセスメントの回答は一部重複する)。

産業機械・部品素材系では調査を行った33業界のうち、何らかの形で環境配慮設計に取り組んで

いるものが 8、製品アセスメントについてガイドライン作成等の具体的な方策の実施に至っている

ものは1であった。

取り組みの傾向としては、生活系・事務系では取り組みが進められているが、産業機械・部品素

材系では今後の普及が必要な状況であると言える。

3)アンケートによる製品アセスメントの積極的な取り組み事例

(ア)業界としての取り組み事例

製品アセスメントにもっとも先行している業界は、家電製品である。家電製品協会は平成6年に

ガイドラインを策定して以来改定を継続しており、その内容は実際の製品における取り組み成果の

フィードバックを受けた実用性の高いものとなっている。

ガイドラインの項目としては家電製品の特徴を踏まえて、リデュース、リサイクル及び環境保全

に力をおいたものとなっている。項目としては、リデュース(製品の減量化、リサイクル材料の使

用、寿命の長期化、梱包の節約)、リユース(梱包の再使用化)、リサイクル(解体容易化、梱包

及び材料のリサイクル容易化)及び省エネルギー、効率的な使用方法の表示、有害物質の削減や環

境負荷の低減、破砕処理の容易化、定量的評価、情報開示が回答されている。

特にリサイクルについては、「リサイクルのための設計ガイドライン」(平成11年3月)では

家電製品4品目についてそれぞれ詳細な設計項目を具体的にマニュアルとして示している。例えば、

テレビでは製品の解体を容易にするための構造や表示、使用工具の望ましい基準やブラウン管のリ

サイクル容易化のための構造や素材の基準が示されている。エアコンや冷蔵庫では、解体を容易化

するための構造や工具の基準とともにフロン・冷凍機油回収を容易化するための構造について具体

的な基準が示されている。洗濯機についても、解体容易化のための構造や工具の具体的な基準が示

されている。

(イ)企業としての取り組み事例

リユースについては、例えば自動販売機メーカーが実施している。自動販売機メーカーS社では、

2

Page 14: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

表2-1 製品アセスメントへの取り組み状況業界団体の取組状況 排出量 製品特性  

区分

対象製品 団体名(製品・製造系団体)

何らかの環境配慮設計の取り組

製品アセスメントガイドラインの有

(千t/年)

環境負荷

処理困難

危険性

有用資源

備  考

輸送機器 自動車 (社)日本自動車工業会 ○ ○ 5,523 ● ● 法改正に伴うガイドラインの改訂作業中オートバイ ○ ○ ● ●タイヤ (社)日本自動車タイヤ協会 * 1,008 *タイヤリサイクル協会によるリサイクル推進建設機械 日本建設機械工業会 ○ ○ 800 ● ● リサイクル促進評価ガイドライン

自転車 自転車 (社)自転車産業振興協会 ○ 100

家電製品 テレビ (財)家電製品協会 ○ ○ 198 ● (社)日本電機工業会:委員会の設置冷蔵庫 ○ ○ 221 ● ● ● [重電~家電等電機全般の団体]洗濯機 ○ ○ 98 ● ●エアコン ○ ○ 137 ● ● ●乾燥機 ○ ○ 10 今後品目別ガイドラインに追加の模様電子レンジ ○ ○ 12 〃電気こたつ ○ ○ 44オーディオ機器 ○ ○ 90VTR ○ ○ 31オフィス家具 (社)日本オフィス家具協会 △ ○ 現在新規マニュアルの作成を推進中

家具 スプリングマットレス 全日本ベッド工業会 21 ●生活用品 家具 (社)全国家具工業連合会 1,027

カーペット 日本カーペット工業組合 △ △ 258布団 全日本寝具寝装品協会 △ △ 60 一部のメーカーがリサイクルなどを実施

電池 乾電池 (社)電池工業会 ◯ ◯ ● ●小型二次電池等 ◯ ◯ 1 ● ●自動車等用鉛蓄電池 ◯ ◯ ● ● ●ニカド電池使用製品 ◯ ◯ ● ●

加圧容器 カセットボンベ (社)日本ガス石油機器工業会 18 ●エアゾール缶 (社)日本エアゾール協会 △ △ 48 ●消火器 日本消火器工業会 △ △ ● ● リユースリサイクル化の推進

ぱちんこ遊技機等パチンコ台 日本遊技機工業組合 ○ ○ 68

PC及び デスクトップPC (社)日本電子工業振興協会 ○ ○ 18 ● H13以降効果を公表周辺機器 ノート型PC ○ ○ 3 ●

プリンタ等周辺機器 ○ ○ 23 ● プリンタ等ワープロ ● ワープロは対象としては考えていない

複写機 オフィス用複写機 (社)日本事務機械工業会 ○ ○ 48 ●

ガス・石油機器 ガステーブル (社)日本ガス石油機器工業会 ○ ○ 65 ガイドラインについては現在改訂中。ガスストーブ ○ ○ 1ガスファンヒーター 3湯沸器 ○ ○ 32風呂釜 ○ ○ 41石油ストーブ ○ ○ 20 ●石油ファンヒーター 35 ●

電線 日本電線工業会 ※ 420 ● ※火災時の有害ガス対策としてのノンハロ規格化

建設資材 繊維板・パーティクルボード 日本繊維板工業会 △ △ 1,480石こうボード (社)石膏ボード工業会 △ △ 5,513窯業系サイディング 日本窯業外装材協会 △ △ (社)日本建材産業協会軽量気泡コンクリートパネル ALC協会 △ △ (社)日本建材産業協会グラスウール ガラス繊維協会 △ △ (社)日本建材産業協会ロックウール ロックウール工業会 △ △ (社)日本建材産業協会かわら 全国陶器瓦工業組合連合会 △ △プラスチック建材(塩ビ製品 硬質ビニール板工業会 △ △ リサイクル促進表示金属屋根 (社)日本金属屋根協会 △ △ リサイクルしやすい製品の可能性について検討アルミサッシ 日本サッシ協会 △ △ 642 ● 〃金属サイディング 日本金属サイディング工業会 △ △ 〃畳 全日本畳組合連合会 △ △

浴室・キッチン 浴槽・浴室ユニット キッチン・バス工業会 ○ ○ ●システムキッチン ○ ○

通信機器 ファックス  通信機械工業会 △ 基準ては検討中。(FAX分野は本年度実行予定)携帯電話・PHS ○ △ 0 ● ●

照明器具 蛍光管 (社)日本電球工業会 ○ 70 ● H4.7作成:ランプ及び安定器製品アセスメントマニュアル照明器具 (社)日本照明機具工業会 ○ 環境対策委員会を設けている。

自動販売機 自動販売機  日本自動販売機工業会 ○ ○ 140 ● ● インバース関連を経済産業省と実施中レンズ付きフィルム ※ ※ ※取り組みはあるが団体なし時計 (社)日本時計協会 △ △ 13年度にガイドラインの検討に入る。文具 文具(筆記具) (社)全日本文具協会 ○ △ 9 グリーン購入に関して、委員会を設置

スポーツ用品 ゴルフクラブ (社)日本ゴルフ用品協会 7(社)日本スポーツ用品工業協  

福祉用具 介護用ベッド (社)日本健康福祉用具工業会 ○ ○ 事業者に係る判断基準

マットレス ○ ○ ライフサイクルガイドライン車椅子 ○ ○

その他 琺瑯製品 日本琺瑯工業会

産業機械等 電子計測器 日本電子計測機器工業会 △(調査したもの)家庭・工業用ミシン (社)日本縫製機械工業会 ○ △ ガイドラインはH13.3に作成予定

分電盤等 日本配線器具工業会配電盤 (社)日本配電盤工業会包装機械 (社)日本包装機械工業会 ○産業ロボット (社)日本ロボット工業会食品機械 (社)日本食品機械工業会半導体製造装置 (社)日本半導体製造装置協会木工機械 (社)全国木工機械工業会印刷機 (社)日本印刷産業機械工業会各種工作機械 (社)日本工作機械工業会 ○各種産業機械 (社)日本産業機械工業会 ○自動車工具 (社)日本自動車機械機具工業

Page 15: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

試験的に一部の製品についてはあるがリユース(回収部品の再使用)、リデュース(アップグレー

ド設計、長寿命化設計)を含めた環境配慮設計を行っており、その他には、リサイクル(解体性、

材料のリサイクル容易化)、省エネルギー、環境保全、適正な処理方法の表示、定量的評価等が回

答されている。

リサイクル、リデュースについては、例えば衛生・住宅機器メーカーI社では、リデュース(製

品の減量化、リサイクル材料の使用、長寿命化、アップグレード設計、梱包の節約、リサイクル

(解体容易化、材料・梱包のリサイクル容易化)が設計項目として回答されている。このほか、同

社からの回答では、使用時の省エネルギー・省資源、効率的な使用方法の表示、有害物質の削減や

環境負荷の低減、適切な処理方法の表示、定量的評価、情報開示、環境ラベルといった取り組みが

製品全体で行われている。

また、ガス石油機器メーカーのN社でも、リデュース(製品の減量化、リサイクル材料の使用、

寿命の長期化、梱包の節約)、リサイクル(解体容易化、エネルギー回収容易化、材料・梱包のリ

サイクル容易化)及び省エネルギー化、効率的な使用方法の表示、有害物質の削減や環境負荷の低

減、適切な処理方法の表示、環境ラベルといった取り組みが製品全体で行われている。

3

Page 16: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

4)今後の製品アセスメント実施の必要性について

ア)生活・事務系

アンケート結果より、生活・事務系の製品では、10 の業界団体で既に取り組みが進められている。

今後、これらの業界団体では製品アセスメントガイドラインの改定や具体的な設計マニュアルの作

成等内部の充実を図るとともに、会員各企業への指導助言等による普及定着が望まれるところであ

る。

特に、業界団体が製品アセスメントガイドラインを作成したにも関わらず、実際の取り組みに至っ

ていない会員企業については、第2章に示したようなデメリットの発生のおそれがあり、早急な対

応が必要である。

また、製品アセスメントガイドラインを作成済みの生活・事務系の業界団体においても、その後

の会員企業の実行状況やガイドラインの有効性を確認しないまま放任しているような状態では社会

的責任を果たしているとは言えず、業界全体にデメリットが生ずる可能性がある。今後ともフォロ

ーアップ調査等によるフィードバック、社会情勢に応じたガイドラインの修正・改等訂を随時行っ

ていくことが必要である。

イ)産業機械・部品材料系

アンケート結果より、産業機械・部品材料系の業界団体における製品アセスメントの取り組みは

3%であり、これからの普及が必要な状況にある。

しかし、これらの製品分野でも、製品アセスメントの必要性は高まりつつあると考えられる。即ち、

産業機械メーカー、部品・材料メーカーのいずれにおいても、取り引き先の生活・事務系メーカー

等が製品アセスメントに取り組んでいるような場合、調達条件として自社の内容と整合した製品ア

セスメントの実施や詳細な情報開示が求められてくるものと考えられる。

従って、産業機械・部品材料系の分野においても、今後製品アセスメントへの取り組みを進めて

いく必要がある。また、製品アセスメントの主な課題であるリユース・リサイクル・適正処理は、

製品・部品・材料の製造から数カ月~十数年先に発生する問題であることから、できるだけ早く取

り組みを開始することが将来の社会的責任を果たす上で重要である。

以上より、生活・事務系の分野においては、製品アセスメントを実施していない業界・企業は早

急な取り組みが必要である。また、産業機械・部品材料系の分野においても、早い段階での取り組

みがその有効性を高める上で重要である。

また、製品アセスメント実施対象としたい製品は以下の通りである。

①目標等を勘案して効果を挙げられる可能性が高い製品

②実施後に結果を対外的に活用していくことを想定し、現在又は将来において会社の基幹となりう

るような製品

③相当程度複雑な構造を有するなど、改善の可能性が高い製品

④購入部品や材料の点数が少なく、評価作業が比較的容易である製品

4

Page 17: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

(4)製品アセスメントに関連する手法等の概要

製品製造における環境配慮に関連して、製品アセスメントの他にも DfE、エコデザイン、

LCA 等、様々な単語が用いられる。ここでは、主要なものについてその概念を簡単にまと

めることとする。

1)DfE(Design for Environment)

「環境配慮設計」、「環境適合設計」と訳されることが多い。

製品の設計にあたって、環境への影響を配慮することという意味で使われているよう

である。しかし、製品自体の設計のみではなく、体制まで含めた意味で用いられるケー

スもあるようである。

(ア)製品規格に環境側面を導入するための指針 JIS Q0064(ISO Guide 64:1997)

指針中、「環境改善の戦略及び方法」の一つとして、DfE(環境適合設計)があげられてい

る。

(イ)C ガイド 109 付属書 C「電気電子機器産業向けの環境適合設計(DfE)原則の指針

1995」

このガイド自体は電気・電子機器産業向けではあるが、DfE 原則を示した文書である。

この指針では、DfE の原則として

・分解・リサイクル性を考慮した設計(結合、塗装等)

・材料リサイクルを考慮した設計

・メンテナンス適合設計

・公害防止

を挙げている。

(ウ)米国環境保護庁(US EPA) Design for Environment Program

http://www.epa.org/oppintr/dfe

DfE をビジネス一般における意志決定に環境配慮を取り入れるためのアプローチと定

義している。”Design for Environment Program”として産業界と協同したプロジェクト

の実施や企業への情報の提供等を行っている。

2)エコデザイン(Ecodesign)

環境に配慮した製品設計ということで DfE とほぼ同じ意味で使われているケース、工

業製品一般ではなく建物や内装など建築関連に特化して使われるケース、環境配慮製品

に取り組むシステムまで含めた意味で使われるケースがあるようである。

Df E、エコデザインとも確固とした定義は無いようであるが、エコデザインが DfE を

包含する、製品製造における姿勢、あるいはシステムとして用いられるケースが多いよ

うに見受けられる。

1

Page 18: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

(ア)UNEP, Rathenau Institute, Delft University of Technology,

Ecodesign -- A promising approach to sustainable production and

consumption ,1997,UNEP

UNEP、Rathenau Institute、デルフト工科大学(Delft University of Technology)

共同によるエコデザインのマニュアル。この中では「エコデザイン」の戦略とし

・環境負荷の低い材料の選定

・材料使用量の削減

・製造技術の改善

・流通システムの改善

・使用中の環境負荷の削減

・長寿命化

・製品使用後の最適処理システム化

があげられている。マニュアル全体の主眼はエコデザインを実現するための組

織・体制のあり方、プロジェクトの進め方等にあるようである。

(イ)エコデザイン宣言(エコデザイン’99 国際会議、山本良一 起草)

宣言中で、エコデザインについて、「エコデザインは製品と生産プロセスの設計

において環境的配慮をどう取り入れるかに焦点を当てている。」、「エコデザイン

の目的は廃棄や排出の防止、製品のライフサイクルにおける環境負荷の低減だけ

ではなく、脱物質化もしくは資源生産性の向上のために、製品をサービスで置き

換えること、製品やそのコンポーネントの寿命延長を達成することも含まれる」

としている。

3)LCA

製品やサービスにおいて、そのライフサイクル全体の与える環境負荷の定量的評価の

ことを言う。定性的評価の場合には Life cycle consideration, Life cycle thinking

等の言葉が使われている。

SETAC(Society of Environmental Toxicology and Chemistry) やオランダ、ライデ

ン大学環境科学センタ(CML)等で LCA の全体的な方法論が検討されてきた。これらの成

果を踏まえ、 ISO の 14040 シリーズで LCA の原則を定めている。定量化の手法は様々

な手法が提案されており、目的に応じてユーザが選択する。また、LCA を実施するため

のソフトウェアも各種発売されている。

(ア)ISO 14040, 14041,14042,14043

ISO の 14040 シリーズで LCA の原則を定めている。この中で、LCA は

・ゴール、及び範囲の設定

・インベントリ分析

2

Page 19: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

・インパクト分析

・解釈

の 4 段階を踏むことが規定されている。

(イ)Eco-Indicator’99

ISO では LCA の基本原則等について規定しているが、具体的な方法論は複数提案され

ている。代表的なものとして、オランダの Pre Consultant による Eco- Indicator’99

の 他 、 ス ウ ェ ー デ ン Chalmers University of Technology の CPM に よ る

EPS(Environmental Priority Strategies) 、スイスのエコポイント法等がある。

(ウ)JEMAI-LCA

LCA を簡単に実施するためのソフトウェアが現在多数販売されている。日本では(社)

産業環境管理協会から JEMAI-LCA が販売されている。その他、NEC、日立等、国内メー

カー開発のソフト、海外で開発された Sima-Pro(オランダ Pre-Consultant)等、TEAM(フ

ランス EcoBilan)等がある。

4)エコ(環境)効率 / エコ・エフィシエンシー(Eco-Efficiency)

経済、環境両面での効率性を表す指標。

(ア)WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)

DeSimone, D., and Popoff,F., with WBCSD、監訳山本良一、エコエフィシエンシ

ーへの挑戦、1998(原著 1997)

WBCSD, Eco-Efficient Leadership. 1996

WBCSD, measuring eco-efficiency,2000

1992 年にエコ効率の概念を提唱。その定義を「エコ効率とは、少なくとも地球の環

境包容力に見合うまで製品・サービスのライフサイクルを通じての生態への影響、資

源利用を削減しながら、人間の要求を満たし、生活の質をもたらすことのできる製品、

サービスを競争可能な価格で提供することによって達成されるもの」としている。

その基本概念として、

・製品、サービスの物的密度の極小化

・製品、サービスのエネルギー密度の極小化

・有害物質拡散の極小化

・材料リサイクルの可能性を高める

・再生可能資源の使用を極大化する。

・製品の耐久性を向上する

・製品の利用密度を増大させる。

の 7 項目があげられた。

指標としては、

エコ効率 = 製品あるいはサービスの価値 / 環境影響

と表されるが、この式は柔軟性をもって解釈しうるものとされている。

3

Page 20: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

(イ)The International Institute for Sustainable Development

「経済的コストと環境負荷を共に低減するために、材料やエネルギーをより効率的に

用いること」と定義。

(ウ)OECD(経済協力開発機構)

1995 年のローゼンダールワークショップにおいて、持続可能な経済発展を実現する

上で重要な概念として認識。OECD ではエコ効率の改善の傾向と可能性について検討す

るために、ケーススタディを実施し、その成果の検討を行っている。

5)ファクター10 / ファクター4

世界が持続可能な発展をしていくためには、OECD 加盟国のような豊かな国では一人

あたり資源効率性を 10 倍にする、つまり財やサービスを得るために投入する資源やエ

ネルギーを約 1/10 にする必要がある、という考え方。ファクター4 は持続可能な発展

のために、現在の 1/2 の資源の利用で、財を 2 倍得られるようにする、つまり資源効率

を 4 倍に高める必要がある、という考え方。

(ア)Friedrich Schmidt -Bleek(佐々木建 訳), ファクター10,1997(原著 1994)

ドイツ、ヴッパータール研究所における研究成果を著書としてまとめ、ファクター10

を提唱している。

先進国の人口が世界全体に占める割合が 20 %であるので資源利用についても 20%、つ

まり資源全体の 1/5 であるべきであること、更に持続可能な発展のためには世界全体の

資源消費を 1/2 に抑える必要があることから、先進国は資源消費を現在の 1/10 に抑え

なくてはいけないことを主張している。

6)環境管理システム(Environmental Management System)

組織における環境保全の取り組みを管理するための、組織の体制や手続き等のあり方

について体系づけたもの。ISO14001 によって規格化されている。

(ア)ISO14001

1996 年 ISO14001 が発行され、日本でも同年 JIS 規格として制定されている。この規格

は、環境関連法の遵守や環境影響低減に向けた対策を実行していくため、Plan(計画),

Do(実行),Check(点検 ), Action(見直し)のサイクルの 構築による環境パフォーマ

ンスの継続的改善を促している。

(イ)EMAS(Eco-Management and Audit Scheme)

EU において 1993 年公布された環境管理システムの規格。実行手順として

・環境方針の策定

・環境の現状の把握

4

Page 21: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

・環境改善に向けたプログラムの実施

・組織、及び文書によるプログラムの管理

・監査

・報告書の作成

・報告書の検証

の 7 段階が規定され、それらを定期的に再実行することによる継続的な改善を促して

いる。

5

Page 22: 2.製品アセスメントの概要...-2-その後、H3~H7年度までの製品・製法アセスメント調査の成果を踏まえて、平成8 年9月にクリーン・ジャパン・センターが発行した「製品アセスメントとリサイクル設、

各用語間の関係

とりあげた用語の間の関係を体制の整備、技術、評価の 3 つの側面から考えると、図の

ように表すことができると考えられる。

組織 技術

DfE

LC A

評価

製品アセスメント

EM S

環境会計Factor10

図2-3 各用語の関係

6