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商品技術解説 102 富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010 700 Digital Color Press 700 Digital Color Press 700 Digital Color Press は新開発の EA-Eco トナー を採用し、Print On Demand 向けであるが、オフィス 複合機と同等の機械サイズで、フルカラー毎分 71 枚 (64~176g/m 2 、A4 ヨコ片面出力時)という高い生 産性を達成した商品である。通常のオフィスカラー複 合機には無い表裏レジストレーション調整機能、はが きサイズから 330×488mm までの用紙サイズ自動両 面機能、300 g/m 2 用紙まので厚紙走行、紙種に合わせ たカール補正や転写レベル調整機能など、用紙適応性 を向上させた。本解説では、700 Digital Color Press の位置づけと仕様、EA-Ecoトナーの特徴、用紙搬送や レジストレーション技術などについて述べる。 Abstract 執筆者 西海 秀文(Hidefumi Nishigai) *1 増子 和久(Masuko Kazuhisa) *2 風間 敏之(Toshiyuki Kazama) *4 鈴木 千秋 (Chiaki Suzuki) *3 大門 克己(Katsumi Daimon) *3 二宮 正伸(Masanobu Ninomiya) *3 大泉 政浩(Masahiro Oizumi) *1 *1 商品開発本部第 2 商品開発部 (Product DevelopmentⅡ,Product Development Group) *2 デバイス開発本部マーキングプラットフォーム開発部 (Marking Platform Development, Device Development Group) *3 画像形成材料開発本部化成品開発部 (Chemicals Technology Development Dept. Marking Materials Technology Group) *4 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部 (Imaging Platform Development, Device Development) The 700 Digital Color Press uses the newly developed EA-Eco toner and provides high productivity of 71 PPM in full-color simplex mode (64 to 176 g/m 2 , A4 LEF). This machine is mainly intended for the Print On Demand market but is similar in size to multifunction machines for the general office market. Unlike office color multifunction products, the 700 Digital Color Press offers several functions to improve media capability such as front-to-back registration adjustment, auto duplex for media ranging from postcard size to 330 × 488 mm, feeding paper weighing up to 300 g/m 2 , curl correction for various types of media, and transfer level adjustment. This paper describes the market positioning and specifications of the 700 Digital Color Press, the characteristics of EA-Eco toner, and the technology used for media feed and registration.

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商品技術解説

102 富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010

700 Digital Color Press 700 Digital Color Press

要 旨 700 Digital Color Press は新開発のEA-Ecoトナー

を採用し、Print On Demand向けであるが、オフィス複合機と同等の機械サイズで、フルカラー毎分 71 枚(64~176g/m2、A4 ヨコ片面出力時)という高い生産性を達成した商品である。通常のオフィスカラー複合機には無い表裏レジストレーション調整機能、はがきサイズから 330×488mm までの用紙サイズ自動両面機能、300 g/m2用紙まので厚紙走行、紙種に合わせたカール補正や転写レベル調整機能など、用紙適応性を向上させた。本解説では、700 Digital Color Pressの位置づけと仕様、EA-Ecoトナーの特徴、用紙搬送やレジストレーション技術などについて述べる。

Abstract 執筆者 西海 秀文(Hidefumi Nishigai)*1 増子 和久(Masuko Kazuhisa)*2 風間 敏之(Toshiyuki Kazama)*4 鈴木 千秋 (Chiaki Suzuki) *3 大門 克己(Katsumi Daimon)*3

二宮 正伸(Masanobu Ninomiya)*3 大泉 政浩(Masahiro Oizumi)*1 *1 商品開発本部第 2商品開発部 (Product DevelopmentⅡ,Product Development Group)

*2 デバイス開発本部マーキングプラットフォーム開発部 (Marking Platform Development, Device Development Group)

*3 画像形成材料開発本部化成品開発部 (Chemicals Technology Development Dept. Marking Materials Technology Group)

*4 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部 (Imaging Platform Development, Device Development)

The 700 Digital Color Press uses the newly developed EA-Eco toner and provides high productivity of 71 PPM in full-color simplex mode (64 to 176 g/m2, A4 LEF). This machine is mainly intended for the Print On Demand market but is similar in size to multifunction machines for the general office market. Unlike office color multifunction products, the 700 Digital Color Press offers several functions to improve media capability such as front-to-back registration adjustment, auto duplex for media ranging from postcard size to 330 × 488 mm, feeding paper weighing up to 300 g/m2, curl correction for various types of media, and transfer level adjustment. This paper describes the market positioning and specifications of the 700 Digital Color Press, the characteristics of EA-Eco toner, and the technology used for media feed and registration.

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700 Digital Color Press

富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010 103

1. はじめに

富士ゼロックスは、成長が期待されるPrint On Demand(以下 POD)市場に対して、電子写真方式の技術を搭載した本格的なカラーオンデマンド機である DocuColor4040 を 1996 年にdrupa(国際総合印刷機材展)で発表した。以後、4年毎に行なわれる drupa で、2000 年にDocuColor60、2004 年に iGen3 と発表してきた。この12年間でPOD市場は確実に成長し続け、システム価格が1500万円を超える高額な商品が各社から発売され、この市場をけん引してきた。これら高額なモデルは各社のフラッグシップ的な位置づけもあり、電子写真で最高速カラーを実現する最先端の技術を搭載したもので占められてきた。 近年、このPOD市場が着実に成長し成熟するにつれ、高生産性と高画質を追求する高性能機を求める声とは別に、「専門業者に依頼せず手軽に印刷物を内製化したい。」あるいは「専門的な知識を必要とせずPOD市場に参入したい。」など、コストに重点を置いた普及機へのニーズが徐々に高まってきた。drupa2008 で発表した 700 Digital Color Press(図 1)は、このニーズに応えるべく機能と操作性、コストをバランスさせることを目指して開発した。 本解説では700 Digital Color Pressの概要と、それを実現した EA-Eco トナーや関連技術について記述する。

2. 本商品の狙いと製品概要

POD市場向けの製品では、オフセット印刷並みの画質が求められる一方で、画質は実用レベルで、低コストで使いやすい製品を求める声が大きくなってきた。実際に、オフィス向けの複合機を POD 代わりに使用されるお客様も増加傾向にあり、オフィス機にPOD市場で要求される用紙サイズや表裏レジ合わせ、厚紙走行などを望むお客様の声が増えてきた。そこで 700 Digital Color Pressは、従来のフラグシップ的なPOD製品とは異なる位置づけで、オフィス複合機をベースに「手軽なカラーPOD機」として開発した。図 2は、本体に、A3サイズ2100 枚2段の給紙容量のある大容量給紙装置(商品名:大容量給紙装置CS-D1)と、中綴じや三つ折り機能を搭載したフィニッシャー(商品名:フィニッシャーD4)を取り付けた構成である。また図 3に透視模式図を、表 1に主な仕様を示す。

図 1. 国際総合印刷機材展にて

Digital Color Press at drupa2008.

図 2. 700 Digital Color press.700 Digital Color press.

図 3. 透視模式図

Inside view.

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700 Digital Color Press

104 富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010

2.1 設置性 日本国内ではマンションの一室を利用したデザイン事務所などに POD 機を設置したいという要求がある一方で、本体内蔵の用紙トレイにA3 サイズより大きいサイズをセットしたいという要求も強い。700 Digital Color Pressでは本体用紙トレイに 330×488mm 用紙までセット可能とし、システム最小構成(本体+オフセットキャッチトレイ、手差しトレイを引き出した状態)の機械は狭いオフィスにも設置しやすい 1800mm以下、奥行きは搬入しやすい800mm 以下とした。機械サイズを小さくすることは用紙搬送路を自由に設計できないなど、厚紙走行性能や用紙レジストレーション性能に悪影響があるが、700 Digital Color Pressでは用紙シュートや各ロールの搬送力などの最適化シミュレーションを行ない、「手軽なカラーPOD機」として許容できる性能と機械サイズを実現した。 電源も設置性で重要な要素であり、多くの一般家庭やマンションなどに引き込まれている、単相三線式 AC 200 V15A の電源を利用可能で、毎分71枚の高い生産性を実現した。 2.2 用紙適用性能 本体内蔵の用紙トレイは3段で、各トレイ普通紙で 570 枚収容可能とし、手差しトレイは250枚収容可能としている。なお、手差しトレイから郵便はがきサイズ(100×148mm)が送り出し可能である。さらに、エアアシストによる用紙さばき能力を向上させた大容量給紙装置

を二種類用意し、POD市場で要求される様々なコート紙に対応している。大容量給紙装置C1-DS は普通紙 2100 枚収容2段の構成で、郵便はがきサイズの送り出しも可能とした。 本体の走行印字可能な用紙は非コート用紙で64~300 g/m2、コート用紙で 106~300 g/m2

の質量用紙まで可能とした。自動両面の最小サイズは、日本国内で要求の多い郵便はがきサイズから可能とし、質量 220 g/m2用紙まで可能とした。様々な種類の用紙に現場で対応できるように、用紙への転写電流レベル調整と用紙カール補正調整等をユーザー自身が調整できる仕組みを搭載した。 2.3 操作性 700 Digital Color Press ではオフィス機と共通の大型操作パネル、操作画面表示や手順(ユーザーインターフェース)、用紙補給や消耗品の交換作業、用紙ジャムクリア操作などの操作性全てをオフィス向け複合機と共通化し、オフィス機と違和感なく操作できるように考慮した。また、大型操作パネルは車椅子から作業ができるように配置した。 2.4 高画質技術 700 Digital Color Press では、新開発のEA-Eco(Emulsion Aggregation ‒ エコ)トナーを採用した。画像露光装置 ROS(Raster Output Scanner) に は 、 カ ラ ー 複 合 機ApeosPort C 6550 以来、実績のある面発光型

288 kgMachine weight

W1714 ×D777 ×H1372 mm (with catch-tray & MSI) Machine size

1563kW maximum / 200V or 208-240V Power consumption

256 shades of gray, 16.7 million colors Continues tone level

300 g/m2Maximum paper weight

2400 × 2400 dpiResolution

71 page per minute simplex (Paper: A4 size 64-176 g/m2)

Print speed

SpecificationsItems

Warm up time 150 sec maximum

Maximum paper size 330 mm × 488 mm

表 1. 主な仕様 Key specifications.

2

2

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700 Digital Color Press

富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010 105

半導体レーザー VCSEL ( Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を採用し 2,400dpiを活かす HQ デジタルスクリーン MACS(Micro Accurate Control Screen)技術を採用した。また、同様に色ずれ補正に使用されてきた、画素位置制御技術 IReCT( Image Registration Control Technology)機能を拡張した画像形状補正性能を強化、加えて、接触型イメージセンサー(CIS)を用いた用紙位置補正により、表裏見当合わせを行なっている。

3. 主要技術

3.1 EA-Eco トナー EA-Eco トナーは EA1、EA-HGに継ぐ、富士ゼロックスでは第二世代の EAトナー1)、2)である。第一世代の EA1、EA-HG との違いは、主要構成材料である樹脂をスチレンーアクリル系からポリエステル系に変更した点である。EA-Eco トナーも、EAトナーの特徴である粒径制御、狭粒度分布制御、形状制御、機能分離制御の広い設計自由度は第一世代の EA トナーを踏襲しており、小粒径、狭粒度分布制御により、高画質、低トナー消費量を達成し、母粒子のポテト形状と外添処理により、クリーニング性等のゼロシステム信頼性向上を得ている。また、樹脂、ワックス、添加剤のミクロ分散構造制御とコア・シェルによる機能分離制御により、低温定着性とトナー貯蔵保管性の両立、帯電色間差の払拭、高信頼性を得ている。以下にトナー設計とその性能についてもう少し詳細に説明する。 3.1.1 EA-Eco トナーの設計 3) 一般的に低温定着化のためには、トナー樹脂のガラス転移点や軟化点を下げる方法が考えられるが、これではブロッキング温度やホットオフセット発生温度が低下し、低温定着性能との両立が困難である。そこで我々は、新開発のシャープメルトポリエステルを用い、トナーの温度に対する粘度変化を、従来トナーから大きく変える設計とした(図 4)。 トナーのさらなる低温定着化は、電力削減のみならず、同じ電力でのプリント高速化(生産性向上)が可能であり、印刷市場への本格展開

が期待できる。しかしながら、電子写真プリントシステムの印刷市場への本格展開には画質、 特に印刷画像相当の画像グロス再現性が必要であった。 画像グロスに関して、印刷画像の場合、インクによる着色層は用紙表面に沿って薄く形成されている。このような画像構造では、着色層の表面や内部での光散乱が小さく、用紙のグロスに対応した画像グロスを示す。一方、電子写真システムの場合、着色層は用紙表面にトナーが溶融堆積した状態で形成され、嵩高い。よって、トナー層の溶融むらや表面状態(平滑性等)により、トナー層固有の光散乱が生じ、用紙グロスに対する画像グロス依存性が小さくなる。特にオイルレス定着トナーの場合、ホットオフセット特性や用紙と定着部材との剥離性を確保するため、溶融時のトナー粘度が高目に設計されており、結果的に高光沢紙に画像を形成しても、用紙のグロスに対して画像のグロスが低く、沈んだ画像になってしまっていた。 この課題に対して、新開発のシャープメルトポリエステルの特性を活かし、トナーの粘度を低くすることで平滑なトナー着色層を形成し、トナー層固有の光散乱を低減することで、画像グロスの用紙のグロス追従性を向上させた。さらにホットオフセット特性や剥離性の確保のため、ワックス融点/粘度の最適化を実施し、従来にない低温定着特性と実用レベルのホットオフセット特性の両立を実現した。 製法に関しては、従来の乳化重合凝集法の基本プロセスを用い、EA-Eco トナーを作製している。具体的にはポリエステル樹脂を乳化し、着色剤、ワックス等の微粒子を水系中で凝集剤

最低定着温度

ホットオフセット発生ホットオフセット発生温度(定着器汚染の開始温度)

粘度

温度

従来樹脂トナー

紙の定着に必要な粘度の上限

定着器を汚さない粘度の下限

低 高

ブロッキングブロッキング温度(トナーが固まってしまう温度)

シャープメルト材料トナーシャープメルト材料トナー

最低定着温度

ホットオフセット発生ホットオフセット発生温度(定着器汚染の開始温度)

粘度

温度

従来樹脂トナー

紙の定着に必要な粘度の上限

定着器を汚さない粘度の下限

低 高

ブロッキングブロッキング温度(トナーが固まってしまう温度)

シャープメルト材料トナーシャープメルト材料トナーシャープメルト材料トナーシャープメルト材料トナー

図 4. トナーの温度に対する粘度変化

Toner Rheology

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700 Digital Color Press

106 富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010

の添加により、凝集、成長、シェル化、合一化させるものである。製法の概略を図 5に示す。 EA-Eco の場合は、材料設計と EA 製法の改良により、シャープメルトポリエステルをトナー中に最適配置させることで、ブロッキングやホットオフセットを防止しつつ、低温定着機能発現可能なトナー構造にした(図 6)。 3.1.2 EA-Eco トナーの性能 3) 図 7には EA-Eco トナーとともに、オイルレストナーの最低定着温度を示した。新開発の「シャープメルトポリエステル」の採用により、従来タイプのトナーより低温域でトナーの溶融粘度が低下する。従来のトナーより約 20℃定着温度を下げることができている。 また EA-Eco トナーは、従来トナーよりも溶融粘度を大きく低下させる設計となっており、より高いグロスの画像が形成できる。一方、樹脂を含めたトナー粘弾性設計最適化で、オイルレストナーでありながら用紙グロスに近い画像グロス再現性を達成している(図 8)。

低温定着化設計によりトナー溶融に必要なエネルギーを少なく出来るため、同じ消費電力量下ではプリントの生産性向上が可能である。700 Digital Color Press において EA-Eco トナーと従来トナーの生産性を用紙別に比較した(図 9)。坪量 100gsm 以下の非コート紙の生産性は約 42%、坪量 105 から 175gsmまでの非コート紙の生産性は約 184%の向上が可能となった。更に、従来では定着が困難であった坪量 300gsmの厚紙の定着も可能にした。

●:EA-Eco トナー●:弊社従来トナー

(EA 製法)

目標グロス線

(低)← 用紙グロス →(高)

(高)←

画像グロス

→(低)

図 8. 用紙グロスと画像グロスの追従性

Image Gloss and Paper Gloss

図 9. トナー差による生産性比較

Productivity and Basis Weight

0

20

40

60

80

64~104 105~176 177~280 281~300

104%

UP

42%

UP

184%

UP

■EA-Eco ■弊社従来トナー

(EA 製法)

非コート紙 坪量(gsm)

生産性(ppm

図 7. トナーの種類と定着温度

Toner Fusing Temperature

20℃低下

(高)←定着温度→(低)

EA-Eco 弊社従来トナー

(EA製法)

トナーA

トナーB

トナーC

トナーD

図 5. EA-Eco 生産プロセス

EA-Eco Production process

顔料

Wax

凝集/成長

シェル形成 洗浄/乾燥

シャープメルトポリエステル

ノーマルメルトポリエステ

ノーマルメルトPESLTX

シャープメルトPESLTX

乳化

乳化

合一

外添

顔料

Wax

凝集/成長

シェル形成 洗浄/乾燥

シャープメルトポリエステル

ノーマルメルトポリエステ

ノーマルメルトPESLTX

シャープメルトPESLTX

乳化

乳化

合一

外添

図 6. EA-Eco トナーの構成

EA-EcoToner Structure

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富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010 107

EA-Ecoトナーと市販トナー、そしてこれまで弊社製品でもっとも環境負荷の少ない従来 EAトナーの定着時の使用電力比(光沢モード)を、CO2 排出量比に換算して比較した(図 10)。EA-Ecoトナーはこれまでのトナーと比較し、40~60%の消費電力を削減でき、世界的課題であるCO2削減に対して、大きな貢献が期待できる。 3.2 現像システム 現像システムは高画質を維持するため、従来から採用している 2成分トリクル現像方式を採用し、トナーカートリッジよりキャリアを少量供給する事により、劣化現像剤を自動的に排出し、帯電性と安定性を確保している。 新規 EA-Eco トナー現像剤採用による現像剤の搬送力低下を改善する為、従来スリーブから高精度かつ低コストである表面形状の新規スリーブを開発した。長期間に渡り搬送力が安定した現像装置を実現した。 なお、トナー供給を機械前面側に設け、廃トナー回収を機械背面側に設ける事により、廃トナー回収の一元回収を可能にし、装置小型化を達成すると共にメンテナンス性を向上させている。 3.3 表裏見当補正技術 700 Digital Color Press では、高精度な表裏見当あわせを実現するため、用紙搬送制御による用紙位置のばらつき補正や画素位置制御による画像形状の補正技術を搭載している。両面印刷では、表面を印刷後に用紙を反転して裏面を印刷するため、定着工程での用紙伸縮に起因して、表裏の画像倍率に差が生じる。また、用紙搬送路も長くなるため、用紙搬送のタイミング

や搬送姿勢の変動が起きやすく、転写時に用紙位置のばらつきが発生しやすい。これらの見当誤差は、従来高級機種でのみ補正を行なっていたが、昨今需要が伸びている普及価格帯の POD機においても、顧客ニーズを満たすために必須な補正技術となりつつある。以下これらの技術の概要を述べる。 3.3.1 用紙搬送系 トレイからの給紙遅れや用紙搬送路湾曲部での搬送ばらつきなどにより、画像との合流ポイントである 2次転写部への用紙到達タイミングがばらつき、リードレジの誤差となる。そこで700 Digital Color Pres では、画像の先端に追従する仮想の画像先端信号を作り、用紙制御の基準信号とした。用紙搬送状態において、実際の用紙の先端を検出する信号と、仮想画像先端信号の差分を検出し、用紙速度を制御することで用紙と画像の同期を取っている。また、画像先端信号では、転写ベルトの伸縮による露光から 2次転写までの距離の変化をセンサーにより検出し、先端レジ補正を行なっている。 次にサイドレジストレーション補正について述べる。トレイから給紙される用紙のサイド位置ずれを補正するため、2 次転写手前のレジ部にて用紙のサイドシフト制御を行なっている。 用紙搬送はセンターレジ基準であり、用紙サイズに応じて用紙進行方向と直角な方向の用紙端部の位置は異なる。多様な用紙サイズに対応するため、小型の接触型イメージセンサー(CIS)を用紙搬送路内に設け、用紙端部を検出してサイドシフト制御に補正をかけるサイドシフト機構を設けた。また短い用紙搬送路の中で用紙サイドシフトを実現するため、用紙に無理な力がかからないように、サイドシフト機構の上流のロールには、用紙ニップを解除する機構や、横方向にスライド可能な用紙搬送ロールを配置した。用紙搬送のスキューを補正する技術としては、停止したロールのニップに用紙先端を突き当てる方式を採用している。700 Digital Color Pres では、固定シュート部でのループ形成による推進力を向上させたレイアウトを新たに設計し、補正能力を向上させている。また、用紙搬送スキューの機差を吸収するため、

(少

)←

CO

2排出

量比

→(多

)(弊

社内

比較

 電

力換

算)

市販トナー(平均)

弊社従来トナー(EA製法)

EA-Eco

20%

40%

図 10. CO2排出量削減効果(定着時)

CO2 Emission Ratio

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108 富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010

レジ部の傾きを調整して 2次転写への用紙進入方向を調整できる機構を設けた。図 11 にこれらの構成を示す。

3.3.2 画素位置制御 従来の POD 機において画像形状の補正は、機械的または電気的な補正方法を組み合わせで行なっているが、小型機や普及機では、スペースやコストの課題があり、そのまま従来の方法を採用することはできない。700 Digital Color Pres では、高精細な露光が可能な VCSEL ROS2)の採用と、もともと色ずれ補正のために開発された画像処理をベースとする IReCT 技術の機能を拡張して、画像形状の補正に応用することにより、物理的な可動部を必要としない安価で高精度な補正ができるようになった。また、機械的な補正においてページ 1枚毎に補正を行なうためには、ページ間に機械的な静定時間が必要となり生産性を犠牲にするというデメリットがあったが、拡張された IReCTでは、RIPされた画像に対して画像処理を行ない、リアルタイムに1枚毎の処理を行なうため、生産性を落とすことなくプリント出力が可能となっている。 700 Digital Color Pres では、画像の伸縮や矯正にこの技術を採用している。XY 方向それぞれ位置と倍率、直角度、斜行度の 6項目のレジ設定を、ユーザーインターフェースから表裏独立に設定可能で、図 12 に示すように、さまざまな用紙の表裏合わせを、わかりやすい設定画面で効率的に調整できるようにした。

3.4 定着とディカーラー部 定着部には熱伝導効率の高いフリーベルトニップ定着方式 2)を採用している。3本の加熱ランプによる定着ローラーの温度分布均一化などの従来技術に EA-Eco トナーにあわせた制御を追加し、EA-Eco トナーとの相乗効果により、省電力でありながら、カラー、モノクロともに71枚/分という生産性を実現した。 図 13 に示すように、定着部直後にツインデカーラーを配置することで、用紙への熱や圧力によるダメージを定着機直後に補正することを可能とした。これにより、両面搬送路や排出トレイへは常にカール補正後の用紙が流れるため、安定した用紙走行が可能になり、64~300g/m2 の幅広い用紙質量での安定した高速用紙走行と高い用紙汎用性を実現した。カール量は用紙特性に合わせてユーザーインターフェースから設定可能である(図 14)。

図 11. ペーパ-レジストレイション

paper registration.

図 12. レジストレイション調整

Registration adjustment.

図 13. 定着とツインディカーラー

Fusing and Twin decurler

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700 Digital Color Press

富士ゼロックス テクニカルレポート No.19 2010 109

4. おわりに

以上述べたように、700 Digital Color PressはEA-Ecoトナーとその特性を活かす技術に、POD市場に合わせた性能と仕様を追加したことで、POD普及機へのニーズに対応することができた。 電子写真の画質は印刷と比較すればまだまだ発展途上である。一方で電子写真はオフィス向けで培われた「誰もが簡単に操作することが出来る」という強みもある。普及機クラスの PODカラー機でも、さらに画質や用紙適応性能、その安定性を向上できれば、用途も増えるはずである。電子写真の発展でイノベーションを起こし、世の中に貢献できる事を信じて、今後も努力したい。

5. 参考文献

1) 竹内学、多田達也、他: “ケミカルトナー”日本画像学会編 東京電機大学出版 2008

2) 福原政明:高速カラー複合機ApeosPort C 6550、日本画像学会誌 45、148-153(2006)

3) 二宮正伸、大門克己:EA-Eco トナーの開発、2008 年度『ビジネス機器関連技術調査報告書』

筆者紹介

西海 秀文 商品開発本部第 2商品開発部に所属 増子 和久 デバイス開発本部マーキングプラットフォーム開発部に所属 風間 敏之 デバイス開発本部イメージングプラットフォーム開発部に所属 鈴木 千秋 画像形成材料開発本部化成品開発部に所属 大門 克己 画像形成材料開発本部化成品開発部に所属 二宮 正伸 画像形成材料開発本部化成品開発部に所属 大泉 政浩 商品開発本部第 2商品開発部に所属

図 14. ディカーラー調整

Decurler adjustment.