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1 7無線機器 無線通信における電波 アンテナと共振回路、電波の形式と記号 AM送信機、AM受信機 水晶発振器、PLL発振器C級増幅回路 スパーヘテロダイン、周波数変換器、AM復調器、AGC SSB送信機、SSB受信機 FM送信機、FM受信機 プレエンファシス、FM変調器、周波数逓倍器 リミッタミューティングデエンファシス FMステレオ 送信機の性能、受信機の性能 占有周波数帯幅スプリアス放射、アンテナ電力 感度、選択度、忠実度 第1回授業の復習(変調) 変調された信号(a) 変調された信号(b) それぞれ何変調された信号ですか?

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Page 1: 7回無線機器tb-lab.com/class/comm/7week/lecture7.pdf1 第7回無線機器 • 無線通信における電波 –アンテナと共振回路、電波の形式と記号 • AM送信機、AM受信機

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第7回 無線機器• 無線通信における電波

– アンテナと共振回路、電波の形式と記号

• AM送信機、AM受信機

– 水晶発振器、PLL発振器、C級増幅回路

– スパーヘテロダイン、周波数変換器、AM復調器、AGC

• SSB送信機、SSB受信機

• FM送信機、FM受信機

– プレエンファシス、FM変調器、周波数逓倍器

– リミッタ、ミューティング、デエンファシス

• FMステレオ

• 送信機の性能、受信機の性能

– 占有周波数帯幅、スプリアス放射、アンテナ電力

– 感度、選択度、忠実度

第1回授業の復習(変調)

変調された信号(a) 変調された信号(b)

それぞれ何変調された信号ですか?

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無線通信における電波(P.143)

アンテナと共振回路

アンテナは、Q値(共振の鋭さ)が大きい特定の高周波数で効率よく電波が放射されます

Qが大きい ⇒ 帯域が狭いんだ

無線通信における電波

信号波と電波の周波数

信号波は、信号のもつ周波数が低く、帯域が広いので、アンテナから電波として放射されません。

電波として放射するには、高い周波数の搬送波で、信号波を変調し、アンテナに供給する必要があります。(AMラジオ、TV信号など)

注)左図はアナログテレビの周波数です

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無線通信における電波の形式

電波の形式

電波法によって、下記の3つの分類の記号3文字で表現されます(1)搬送波の変調の方式(2)変調する信号の性質(3)伝送情報の形式(メディア情報の種類)

例えば、AMラジオは(1)両側波帯の振幅変調、(2)アナログモノラル、(3)音響の放送なので、A3Eと表現されます

地デジ放送は(1)その他のもの、ディジタル2チャンネル以上、(3)データ、音声、画像等組み合わせなので、X7Wと表現されます

問1へ

AM送信機(P.146)A B C

D E

F

搬送波発振器:搬送波を発生させる発振器緩衝増幅器:発振器に後段からの電流・電圧によって影響がないようにする励振増幅器:搬送波の大きさを変調に必要な大きさまで増幅する終段電力増幅器:送信機の出力まで増幅する信号増幅器:AM変調に必要な大きさまで信号を増幅するAM変調器:直流電圧に信号波を重量する

A B C D E F

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搬送波発振器水晶発振器 周波数逓倍器

下記は13mm角

水晶の圧電特性を利用して安定した周波数を取り出す

周波数は安定しているが、高い周波数の製作は困難なので

水晶発振器を利用して、高調波を作り出し(トランジスタ増幅回路の高調波を利用)、共振回路で目的の周波数を取り出す回路を周波数逓倍器といいます。ただし、水晶発振器の整数倍しか

作り出せません周波数逓倍回路例

水晶発振器

2,3,5の部分がLC共振回路になっていますね

PLL発振器

PLL発振器

PLL(Phase-Locked Loop)近年、飛躍的に進化した発振器AM、FM、テレビの同期信号、計測機器(スペクトラムアナライザ)などに利用

位相比較器で fR=f0 のとき出力 fc が得られているとする。1. VCO出力が希望する fc より低くなると f0 も小さくなる

↓2. 位相比較器 入力 fRとf0の位相パルスの差(幅)が増える

↓3. 低域フィルタ LPF を利用して、パルスの差を直流電圧に変換(=制御電圧)

↓4. この直流電圧は、位相パルスの幅に比例するので、増大する

↓5. 増大した電圧入力でVCOの出力周波数は上がり、fR=f0 に戻る

動作原理

VCOは電圧の大小で周波数を変化させる

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VCOとは

可変容量ダイオードを利用:加わる電圧によって容量が変化し、共振周波数が変わり、出力信号の周波数が変わるわけです

電圧制御発振器(Voltage-controlled oscillator、VCO)

VCOの回路例入力電圧が高くなると

出力信号の周波数は高くなります

線形の部分を利用します

分周器とは分周器(分周回路)

Q0:CLK周期の2倍Q1:CLK周期の4倍Q2:CLK周期の8倍となっていることが分かります

入力信号の周波数をfk とするとQ0端子 ⇒ fk/2、Q1端子 ⇒ fk/4、Q2端子 ⇒ fk/8、・・・となります

信号の周波数を1/nにできる回路を分周回路といいます

論理回路での構成例

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増幅器

緩衝増幅器

励振増幅器

終段電力増幅器

後段の増幅器の電圧・電流の変動が発振器に影響しないようにするための増幅器(出力インピーダンスを低くします)

終段電力増幅器に必要な大きさに増幅するための増幅器一般に、C級増幅器を利用するので、同調回路(共振回路)で整形します(波形は歪みますが、電力使用効率が高いのでC級が利用され、歪は

同調回路でなんとかするわけです)

アンテナからの放射を行うために、さらに大きな増幅を行うのが目的です。やはり電力効率が良いC級増幅器が利用されます。

増幅器電子回路、覚えてますか? トランジスタのA級、B級、C級増幅

C級増幅

A級増幅 B級増幅

A級 ⇒ バイアスが必要で、信号が0でも電力消費大B級 ⇒ アイドリング電流のため電力消費中C級 ⇒ バイアスが負なので、電力消費小(高効率)

よって、高出力の送信機にはC級増幅が用いられるわけです

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AM変調器

AM変調器信号増幅器で増幅された信号波の大きさに従って、搬送波の振幅を変えます

左図は、コレクタ側に信号波を入れているコレクタ変調回路で、AM変調回路に良く利用されます。ベース変調回路、エミッタ変調回路もありますが、線形性の面で劣ります。

問2~問7へ

AM受信機(P.151)

高周波増幅器アンテナからの受信信号は微弱なためまず高周波のまま増幅します。

周波数変換器

高周波のままでの信号増幅は困難なため、中間周波数(IF)と呼ばれる低い周波数に変換します(詳細は後述)

中間周波数増幅器

中間周波数での信号波を増幅するとともに、共振回路を用いて、不要な周波数をカットしています。

共振回路がいくつもあります

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AM受信機

AM復調器AM復調器はAM波から信号を取り出す部分で、検波器ともいわれます。

信号増幅器信号波を増幅する部分で、信号波を増幅するため、歪の少ない増幅器を用います。すなわち、A級増幅やB級プッシュプル増幅などを利用します。送信機とは異なり、大電力を扱わないため、効率はあまり気になりません。

AM受信機の周波数変換器

周波数変換器増幅を容易にするための中間周波数(IF)と呼ばれる周波数に変換し、受信機の性能を安定させます

混合器トランジスタなどの非線形素子で構成するので、信号の線形成分と非線形成分が発生する

線形成分 ⇒ 𝑓𝐿𝑂 、 𝑓𝑐非線形成分 ⇒ 𝑓𝐿𝑂 + 𝑓𝑐 、 𝑓𝐿𝑂 − 𝑓𝑐

局部発振器搬送波周波数より少し高い周波数(𝑓𝑐 + 𝑓𝐼𝐹)を混合器の周波数に利用します

非線形成分 ⇒ sin𝜔𝐿𝑂 × sin𝜔𝑐 ⇒ 𝜔𝐿𝑂 ± 𝜔𝑐

帯域フィルタ𝑓𝐿𝑂−𝑓𝑐 = 𝑓𝐼𝐹 成分を取り出すフィルタにします

𝑓𝑐がどのような周波数でも𝑓𝐼𝐹 とできるので、回路構成が統一できます⇒ AM放送では455kHz

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AM受信機のAM復調器AM復調器AM波から信号を取り出す部分(検波器ともいわれます)

ダイオード検波器ダイオードによりAM波を半分にし(②)、その包絡線(③)を取り出して復調を行います

自動利得調整(AGC)出力が一定となるように増幅度を自動的に調整します

コンデンサC14で③の直流分をカット

右図で、AM波の信号が強いと復調器の直流電圧成分が低くなり、Trのバイアスが減るため、自動的に増幅度が下がります

利用技術1

利用技術2

シングルスーパーヘテロダイン

ダブルスーパーヘテロダイン

トリプルスーパーヘテロダイン

最もよく使われている方式

ヘテロダイン方式は、受信機で周波数変換を行う方式ですが、周波数変換を2回行う方式をダブルスーパーヘテロダイン、3回行う方式をトリプルスーパーヘテロダインといいます。

シングルスーパーヘテロダインでは、影像周波数と呼ばれるノイズを拾い易いことが問題でした。この問題は、一度中間周波数を高くし、その後、本来の中間周波数に戻すことで、改善できることから、現在一般的にはダブルスーパーヘテロダイン方式が利用されています。

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ダブルスーパーヘテロダインは性能は良いが、回路部品の多さ、複雑さから、コスト面をはじめ、小型化、省電力化にあまり向きません。

一方で、携帯電話や無線LANなど小型の機器の受信で利用されているのは、中間周波数を利用せずに小型化できるダイレクト・コンバージョンと呼ばれる方式です。この方式では、局部発振器の周波数を受信周波数とほぼ同一にして、混合器(ミキサ)に加え、中間周波数を用いず可聴周波数を直接得ます。

携帯電話、無線LANなど受信方式

ダイレクト・コンバージョン方式問8~問12へ

SSB送信機、受信機(P.156)

単側波帯(SSB)は中短波帯の無線通信(放送以外)に用いられる信号で、送信機、受信機は下記のような構成になっています。

現在、漁業無線やアマチュア無線に利用されていますが、詳細は割愛します。

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FM送信機(P.157)

FM送信機は、周波数が高くなるほど信号の減衰が大きい(SN比悪化)ので、あらかじめ高域を強調しておくことをプレエンファシスといいます。実体はRC回路です。 RC回路構成

信号増幅器信号波をそのまま増幅します

FM変調器信号の大きさによって周波数を変えます

周波数逓倍器

変調器で得られた信号の周波数を整数倍します ⇒ 高周波となります

緩衝増幅器終段電力増幅器

AM送信機を同じなので説明省略

FM送信機

FM変調器

AM送信機の発振器で用いた技術・電圧制御発振器(VCO)・自動位相調整器(PLL)を用いて、安定したFM波に変換します

すでにVCO回路例は説明しましたが、右図の回路図も同様に、可変容量ダイオード(バリキャップともいう)により電圧でコンデンサ容量を変化させ、発振回路の周波数を制御します(現在VCOはIC化されたものもあります)

信号の大きさによりFM波を発生させます

問13~問15へ

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FM受信機(P.159)

リミッタ

デエンファシス

ミューティング

FM波の振幅を制限します。後段復調器の歪や雑音を抑える目的

高周波増幅器電波は微弱なので、まず、受信周波数のまま増幅します。

周波数変換中間周波数 fIF に変換します。

中間周波数増幅器中間周波数を増幅します。

送信時に強めた高周波成分を弱めて本来の信号成分に近づけます

本来の大きさの電波がないとき、信号増幅を遮断し雑音を出力しないようにします。

この機能は、スケルチともいいます。

FM受信機FM復調器

複同調型復調器

周波数弁別器とも呼びます。FM変調の周波数変化を電圧や電流の変化として取り出します。

PLL型復調器

複同調型は、回路内に異なる共振周波数を持たせ、周波数に応じて、電圧を変化させます。(下図参照)

上側の回路と下側の回路で共振周波数を変えて作ります

電圧制御発振器の出力周波数がFM波の周波数と同じになるように出力電圧を調整する回路です。(下図参照)

問13~問15へ

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FMステレオ(P.164)

FMラジオでは左チャンネル(L)と右チャンネル(R)の信号波を多重化して送信しています。

マトリクス回路原理図

平衡変調器に、L-Rの周波数と38kHzを入力すると38kHz±(L-R)の周波数となります。(混合器と同様です)

受信機側のマトリクスでは、(L+R)と(L-R)が入力となるので、(L+R)+(L-R) = 2L (L+R)-(L-R) = 2R が出力されます。

送信機の性能(P.165)

スプリアス放射

増幅器の非直線部によって生じる高調波成分と周波数逓倍器によって生じる不要な成分をスプリアスと呼びます

占有周波数帯幅

電波法により、左図のように上端5%、下端5%を除いた周波数の幅を占有周波数帯幅といいます

無線設備規則により、放送等無線業務の占有周波数帯幅の範囲が決められています。

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送信機の性能周波数安定度

搬送波の周波数は安定していなければならず、無線設備規則により、放送等無線業務の周波数許容偏差が決められています。

アンテナ電力

送信機からアンテナに供給される電力は下記の3つで表します。1.せん頭電力:左図参照2.平均電力:送信中の平均電力3.搬送波電力:無変調時の平均電力

受信機の性能

受信機の性能は、感度、選択度、忠実度、安定度などで表されます

この間1周期の電力せん頭電力

本日の講義はここまで