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目目目目 次次次次

班名班名班名班名 視視視視 察察察察 内内内内 容容容容 頁頁頁頁

1班

視察項目及び視察先概要

1)エスフォルタアリーナ八王子(PFI) 【東京都八王子市】

2)中小企業の支援体制について 【東京都八王子市】

3)ごみの減量対策について 【北海道苫小牧市】

4)福祉トイレカー事業について 【北海道苫小牧市】

5)資生館小学校の取組みについて 【北海道札幌市】

6)議会改革の取組みについて

(主に議会だよりやホームページ) 【北海道石狩市】

意見交換会報告書

10

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14

17

2班

視察項目及び視察先概要

1)おおた高齢者見守りネットワーク(みまーも)について

【東京都大田区】

(みまーもステーション)

2)農福連携について 【岡山県岡山市】

(特定非営利活動法人杜の家(株式会社おおもり農園))

3)空き家再生及び活用について 【広島県尾道市】

(特定非営利活動法人尾道空き家再生プロジェクト)

4)オープンデータの活用ついて 【福島県会津若松市】

5)議会改革について 【福島県会津若松市】

意見交換会報告書

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班名班名班名班名 視視視視 察察察察 内内内内 容容容容 頁頁頁頁

3班

視察項目及び視察先概要

1)中小企業支援川崎モデルについて 【神奈川県川崎市】

2)観光渋滞対策について 【神奈川県鎌倉市】

3)ごみ減量推進市民活動支援について 【愛知県安城市】

4)空き家対策について 【東京都葛飾区】

5)児童相談所について 【神奈川県横須賀市】

6)エンディングプラン・サポート事業について

【神奈川県横須賀市】

意見交換会報告書

41

43

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50

54

57

61

66

4班

視察項目及び視察先概要

1)長期滞在(ちょっと暮らし)北海道第1位のまち釧路について

【北海道釧路市】

2)生活保護自立支援プログラムについて 【北海道釧路市】

3)市民活動プラザ六中について 【滋賀県近江八幡市】

意見交換会報告書

73

74

77

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82

5班

視察項目及び視察先概要

1)NPO法人と行政の協働について 【岡山県岡山市】

(特定非営利活動法人岡山NPOセンター)

(ESD・市民協働推進センター)

2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて

山間地域の地域おこしについて 【岡山県美作市】

(一般社団法人上山集落)

(特定非営利活動法人みんなの集落研究所)

3)行財政改革について 【山梨県南アルプス市】

4)マイ保健師事業について

子育て世代包括支援センターについて 【山梨県甲府市】

意見交換会報告書

87

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95

98

102

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行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会 行政行政行政行政視察視察視察視察結果結果結果結果報告書報告書報告書報告書

平成30年8月31日

報 告 者 第1班

参 加 者

瀬高 哲雄(班長) 亀井 崇幸(副班長) 山越 梯一

筒井 巌 田村 耕作 佐藤 和之

生井 一郎 和田 公伸 齋藤 文明

三好 國章 伊澤 正男

◆◆◆◆視察視察視察視察項目項目項目項目

実施年月日 平成30年7月3日(火) ~ 7月6日(金)

視 察 目 的

1 エスフォルタアリーナ八王子(PFI) 東京都八王子市

2 中小企業の支援体制について

3 ごみの減量対策について 北海道苫小牧市

4 福祉トイレカー事業について

5 資生館小学校の取組みについて 北海道札幌市

6 議会改革の取組みについて (主に議会だよりやホームページ) 北海道石狩市

視 察 先

概 要

東京都

八王子市

*人 口:552,115人 *面 積:186.38K㎡

*特 徴:多摩地域の交通の要衝で、市内に21の大学等があ

り、約10万人の学生が学ぶ学園都市。事業所数・従業者数と

も都内1位で先端技術産業や研究所なども立地する。2015年

4月に中核市に指定。産業振興に注力するほか、中心市街地

活性化やMICE誘致戦略を進めている。

北海道

苫小牧市

*人 口:172,623人 *面 積:561.57K㎡

*特 徴:1963年に世界初の内陸掘込港湾である苫小牧港が

築かれ、臨海工業地帯を形成。紙・パルプ、石油精製、自動

車部品などの産業が集積する。新千歳空港や高速道路ICに

も近く交通の便が良い。産学官が一体となった水素エネルギ

ーを活用した地域づくりを進めている。

北海道

札幌市

*人 口:1,936,173人 *面 積:1,121.26K㎡

*特 徴:道庁所在地で北海道の政治・経済・分化の中心。

1922年の市制施行後、近隣町村との合併・編入により市域を

拡大し、1972年に政令指定都市に移行。「誰もが安心して暮ら

し生涯現役として輝き続ける街」「世界都市としての魅力と

活力を創造し続ける街」を未来の姿として施策に取り組む。

北海道

石狩市

*人 口:58,634人 *面 積:722.42K㎡

*特 徴:札幌市に隣接し、1960年代以降、札幌市のベッド

タウンとして人口が増加。石狩湾新港建設で流通関連施設な

どの企業集積が進み、札幌圏の北の玄関口となった。世界と

結ばれる外貿定期コンテナ航路が就航し、LNGや再生可能

エネルギーのほか、LNG火力発電所の建設が進むなど、今

後も発展が期待される。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

エスフォルタアリーナ八王子(PFI) 【八王子市】

視察先担当課 スポーツ管理課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

八王子市の既存のスポーツ施設は、利用率が非常に高いものの、「見る」「見せる」

環境の整った施設が不足しており、大きい大会の開催や利用内容に制限があった。そ

れらの課題を改善するため、平成21年の新体育館の整備基本方針・基本計画のもと、

「みる」「みせる」に重点を置いた大会等の会場としての役割と、市民の「する」スポ

ーツを支えていく地域体育館として、また防災拠点の役割も担う施設として整備する

こととなった。一方で、多額の整備費用がかかる計画であったことから、公共施設マ

ネジメントの考え方で検証し、PFIを導入することとなった。

当市においても、今後の公共施設の整備や維持管理において必要と思われることか

ら、八王子市の取組みを調査研究した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

施設はメインアリーナ(2,000席)、サブアリーナ(700席)の観客席を有し

ており、同時に2つの大会やイベントを開催でき、大会規模に応じた会場を貸し出す

事ができる。また観客席の機能を充実させたことで全国大会やプロスポーツ大会等を

誘致できる施設となり、これまでの主な大会やイベントとしては、バトミントンや卓

球、ハンドボール、音楽、大相撲など、幅広い大会やイベントの会場に選ばれ集客し

ている。また昨年度は、人気のボルタリング大会が開催され大いに盛り上がったとの

ことである。

利用状況は、平成26年10月にオープンし、26年度は209,570人、27

年度は585,470人、28年度は516,884人と平均約50万人が利用して

いる。市内の既存体育館2館を含めると、今までの2倍以上に利用者が増えているこ

とから、施設を整備した効果は非常に大きい。

総事業費は、15年間の維持管理運営費や光熱水費の見込額も含めて約120億円

(用地取得費は別途43億円)とのこと。また、運営はSPC(本事業を行うために

設立した特別目的会社)を採用し、事業者である八王子ゆめおりサポート(株)が、

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市と年間約4億円の指定管理料で15年間の契約を結び、利用料収入(約1~2億)

と併せて、管理運営を行っている。

課題としては大規模大会やイベント開催時に駐車場が不足していることから施設

内のフットサル場を駐車場利用することや近隣の店舗の協力を得て対応している。

またオリンピック・パラリンピック事前キャンプの誘致を推進しているが未だ決まっ

ておらず難題な模様であった。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

八王子市は既存体育館施設の大規模改修時期を迎え、厳しい財政状況にありながら、

体育館は今後も必要性の高い施設であると判断し、PFIを導入して整備した。一時

的に大きな負担を負うことなく分割して支払うことができ、かつ専門スタッフを配置

したフィットネスジムやトレーニングジムの開設で利用者の増加をはかるなど、民間

事業者の創意工夫を活用した多くのメリットが伺えた。

当市でも、公共施設マネジメント計画、同実行計画を策定し進めているが、一方で

地域の必要性の高い既存施設や、観光とスポーツをあわせたスポーツツーリズムを考

えたとき、観光地に適した新たなスポーツ施設の検討も必要と思われる。

2年後に迎える東京オリンピックや、その後の大きな各種大会に向け、是非とも八

王子市のように先進的な、先を見据えた計画や行動を推し進めることを強く望む。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

中小企業の支援体制について 【八王子市】

視察先担当課 企業支援課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

東京都西部の中心都市である八王子市は、都心部のベッドタウンとして開発が進み、

昭和40年以降に人口が急増。自然豊かな住環境に住宅地が広がり、自然環境と道路

交通・鉄道に恵まれ、更には学園都市として市域に21の大学・高等専門学校がある

など、その立地条件を活かしたまちづくりを進めてきた。

そのような中で市長肝いりの産業振興策が打ち出され、八王子市の商工業が新たな

発展を見せている。当市でも、これまでにも中小企業振興施策が計画されているが、

更に発展させるべく先進地である八王子市を調査研究した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

八王子市の産業の歴史は、江戸時代までの宿場町としての発展から、戦後~バブル

期は駅周辺に有名百貨店が立ち並び、それらを中心に飲食・小売・オフィスの集積が

進んだ。しかし、現在ではそれらの百貨店が撤退する一方で、郊外にショッピングセ

ンターが数多く出店している。そこで、中心市街地活性化基本計画を策定して事業を

進め、新たな賑わいを創出した。また製造業においては地方や海外移転が進み、事業

所数、出荷額が減少傾向であるが、事業用地を確保しやすい関係で医療・福祉の産業

が増加傾向にある。

市の産業振興策は、当時の市長の肝いりとして、平成12年の組織改正の際に産業

政策課を設置、平成13年にサイバーシルクロード八王子を設立、平成15年に産業

振興マスタープランを策定するなどして進められてきた。

その中で中小企業支援の関わりとしては、サイバーシルクロード八王子と八王子先

端技術センターの2つの産業支援機関がある。

①サイバーシルクロード八王子

・平成13年に設立し、財源は主に市の補助金

・商工会議所の職員を専従で4名配置(平成21年まで市職員を派遣していた)

・主な事業は各種シンポジウム、人材育成、創業支援、業種横断連携

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・各種事業者交流等

・特徴としては市と商工会議所、地域金融機関の3者連携

②先端技術センター

・平成17年に開発交流プラザ設置

・民間企業の技術者OB2名を任期付職員として採用し、技術相談員として配置

・年間300件前後の相談対応と最新の技術動向に関するセミナーを開催

※その他、市と関係機関で年2回の連絡会議を開催し連携強化をはかっている。

課題としては、①新たな分野への進出や新たなマーケットの開拓、②社会経済の変

化への対応意識の啓発や公的支援制度の周知、③中小企業経営者の高齢化による事業

継承問題への対応、等を挙げている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

当市でも、様々な中小企業振興策を講じているが、今後の人口減少や経済のグロー

バル化など、社会情勢の変化に伴って大きく揺れ動くものと思われる。八王子市のよ

うに市の肝いりのもと、重点施策として関係機関と一層の連携を進め、サイバーシル

クロード八王子のような仕組みが構築できることを望む。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

ごみの減量対策について 【北海道苫小牧市】

視察先担当課 ゼロごみ推進課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

近年の地球温暖化問題や石油などの天然資源枯渇の懸念、また世界各地での大規模

な自然破壊などの環境問題の発生により、地球環境の悪化が世界的規模で課題となっ

ていることから、日光市では、未来の子供たちが安心して暮らせるためのかけがえの

ない地球環境を守り、限りある資源を次世代に引き継ぐために、持続可能な循環型社

会の形成をより一層推進していくための協議や施策が行われている。

その一環として、平成30年4月から「指定ごみ袋制による家庭ごみ有料化」が導

入されており、同年4月から6月の可燃ごみと資源ごみの排出量の推移を前年同期と

比べると、可燃ごみは平均11.5%減量、資源ごみは9.5%増加となっているこ

とから、ごみの有料化における一定の結果は出ていると思われる。

これを受けて、ごみの減量化対策に力を入れている先進的な自治体として、日光市

の姉妹都市でもある苫小牧市の取組みを調査研究した。

1.リサイクル率が北海道主要10都市中1位の30.8%

苫小牧市は「ゼロごみの街」として、まちぐるみでごみの減量化やリサイクルの

推進を行っており、リサイクル率が3年連続で道内1位。また平成17年度の9.

9%から平成28年の30.8%に至るまで、道内で唯一前年度よりもリサイクル

率が増加しているという結果を出している。

2.家庭可燃ごみが8年で36%減量

苫小牧市では、平成26年度から家庭ごみの有料化やごみの減量運動が導入され

たことにより、平成24年までは平均70万トン前後で推移していた一般廃棄物の

排出量が、平成25年では66万トン、平成26年度以降は平均58万トン前後に

減量され、「有料化以前に比べて17%の減量」を実現している。

また、「家庭可燃ごみ」に関しては、資料中最も多い平成21年度の排出量と、最

も少ない平成29年度の排出量を比較すると、「36%の減量」という驚異的な結

果も出している。

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3.事業系ごみの減量化が課題

全体的な概況としては、平成26年を境にして「家庭不燃ごみの減量」「家庭資源

ごみの増量(リサイクル率の増加)」がみられるが、「事業系ごみ一般」の変化はあ

まりない。このことから、今後は「事業系ごみ一般」の減量化が最大の課題となっ

ている。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

平成26年度から開始された「ごみの有料化」以降、平成29年度まで一般廃棄物

の排出量は毎年横ばい傾向にある。

そこで苫小牧市は、ごみの減量化・再生利用等について各種有識者等で構成された

「苫小牧市廃棄物減量等推進審議会」を設置し、「苫小牧市資源リサイクル団体連絡

協議会」や「苫小牧上質古紙リサイクル推進会議」の設立、また「集団回収団体の登

録制度(報奨金の助成)」を通じて、苫小牧市の郵便番号である「〒053」から得た

「ゼロごみの街」をキャッチフレーズに、更なるごみの減量化に取り組んでいる。

1.個別的施策

(1)ごみの収集方法について

家庭ごみは、ごみステーション収集(可燃、不燃、資源)、事前申し込みによる

戸別収集(大型、剪定枝)、事前申請による戸別収集である「ふれあい収集」の3

方式がある。また、公共施設等にリサイクルの回収拠点を設置し、古着や古紙類、

廃食油、電子機器類、蛍光管のリサイクルの推進を行っている。

(2)食品ロスの削減について

市内で行われる各種イベント(年30回程度)において、「食品保存方法」「冷

蔵庫整理整頓方法」「生ごみ3きり運動(使いきり食べきり水きり)」などの食品

ロス削減運動事業を行っている。

①530の日(ごみゼロの日)イベント

5月30日を「ごみゼロの日」として、ごみの減量や地球環境への意識啓発

を目的としたイベントを大型ショッピングセンターで開催している。

②フードドライブイベント

食品ロス削減の取組みから、戸棚等に忘れ去られて保管されたままになってい

る「もったいない食品」を、各コミュニティーセンターにおいて、フードバン

ク等に届ける運動に参加する事業を進めている。

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③「2510(にこトマ)運動」

市内の飲食店に対して、まずは乾杯後に25(にこ)分間は料理を楽しもう!

そして、お開きの10(トマ)分間はもう一度料理を楽しもう!という、料理

を楽しみ、食べ残しを減らす啓発運動をしている。

(3)生ごみの処理について

生ごみの排出量を削減する方法として、「生ごみ堆肥化容器購入助成制度」や

「電動生ごみ処理機貸出制度」を導入し、「生ごみの資源化」を目指している。

(4)資源化促進事業について

①「リサイクルプラザ苫小牧」の市民開放

家庭で不要となった家具や自転車の修理後のリユースや「リユース文庫」など、

市民に対するリサイクル意識の啓発拠点となっている。

②苫小牧市エコストア認定制度

市と市民と事業者の三者が一体となり、レジ袋削減やリサイクル商品の販売等

を積極的に行っている事業者に対し、市が認定する制度がある。

③ごみの減量等に対する意識の啓発

各種団体との懇談会や出前講座等を通じて、ごみ減量の啓発に努めるとともに、

小中学生用に副読本を作成し、次世代への環境教育を行っている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

1.ごみ処理手数料と減量効果

苫小牧市の視察後に、東洋大学の山谷修作教授の資料を参考に、全国の自治体の

ごみ減量化問題について、調査・分析をしてみた。

その結果、北海道や東京などで、ごみ袋手数料(40リットルごみ袋)の水準が

高い80円という自治体では、有料化以降のごみの減量効果が高く、全国平均的な

40円の自治体では、ごみの減量効果はさほど高くないという結果が出ている。

日光市では、平成25年9月の「ごみの減量化等検討委員会」設立当時、ごみ排

出量原単位が栃木県内最多量(最下位)であったということから、ごみの減量化・

資源化や負担の公平性などを目的に、全国平均的な40円という水準での「家庭ご

みの有料化」が導入された。

その結果、ごみの有料化開始の平成30年4月以降、家庭可燃ごみは、前年度同

期比較では減少していることから、一定の効果はあるといえる。

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2.今後の課題

ごみの減量化対策に先進的な苫小牧市でも、平成26年の有料化開始以降4年間

の推移を見ても横ばい傾向が続いていることから、日光市においても今後は同様の

傾向が見られると推察される。

このようなことから、更なる家庭ごみの減量化として、現在も行われている以下

の施策(活動)を「継続すること」が最も重要と考える。

(1)ごみの処理方法など市民への周知と啓発活動

(2)不法投棄対策とごみステーションの環境美化対策

(3)ごみ処理手数料の使途の公開

(4)補助金交付や報奨金制度

(5)小中学生を対象にした次世代への環境教育の実施

3.事業系ごみについて

日光市では、家庭ごみの有料化に伴って、事業系可燃ごみは現行の3倍、不燃ご

みは1.5倍になったが、資源ごみはリサイクルを促進させるため無料になった。

平成30年7月時点では、事業系ごみの減量についての資料はないが、苫小牧市を

参考にすれば、今後の可燃ごみ等のごみの総減量化を実現する上で、もっとも重要

なのが事業系ごみの減量化にある。

しかし、オフィスが少なく、観光が主たる産業の日光市においては「観光ごみ」

の問題があり、苫小牧市とは少し違った角度で考える必要がある。

観光ごみの減量対策としては、

(1)観光客が食べ残しをしない(残すほど提供しない)啓発活動

(2)観光客が持ち込んだごみの持ち帰り運動(観光地由来のごみは難しい)

(3)出来るだけごみ箱を撤去する(ポイ捨ての増加/観光サービスに反する)

(4)事業系生ごみを堆肥にする(処理施設建設に高額な費用がかかる)

が考えられるが、実際には観光で「来ていただくお客様」に対して、このよう

な施策を行うことは現実的ではない。今回の視察では、主に「家庭ごみの減量」

について重点を置いたことから、「観光ごみ」の問題については、今後の課題とし

て調査研究を深めたい。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

福祉トイレカー事業について 【北海道苫小牧市】

視察先担当課 障がい福祉課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることから、全国

の自治体では、バリアフリーやユニバーサルデザインの普及について、様々な議論

や取り組みが行われている。日光市の姉妹都市である苫小牧市では、自治体として

整備するのは全国で初めてとなる「トイレカー」を導入したことから、先進的な自

治体として調査研究を行った。

1.導入の背景

苫小牧市では、長年障がい者団体から、各種イベント等で利用できる障がい者用

多目的トイレの不足を指摘されており、トイレの設置や増設の要望を受けていた。

しかし、各種イベントは開催される場所がそれぞれに異なることや、トイレ設置の

場所の確保や予算増額の対応など、多くの課題があった。

そこで市は、「トイレを建設する」という固定観念を捨て、今までにない視点か

ら、さまざまな場所や場面で使用できる機能を備え、しかもバリアフリーの推進を

図ることが可能な福祉トイレカー(愛称「とまれっと」)を導入した。

2.トイレカーの概要

苫小牧市の公用車として導入し、障がい者を中心とした車いす使用者の社会参加

の促進を主な目的として、主に市内で実施されるイベントに出動している。

このトイレカーの特徴として、普通免許で運転できる小型貨物自動車のトラック

を改装していること、車いす使用者の利便性を考慮して耐荷重性能300キログラ

ムの電動リフトを搭載していること、トイレ内に広いスペースを確保していること

がある。また、最大の特徴は「水を使用しないバイオトイレ」を搭載していること

である。バイオトイレは通常の仮設トイレとは異なり、1日100人の使用にも対

応でき、汲取処理が不要なうえ水を使用しないことから、設置場所・場面を選ばず

凍結リスクが低い。さらに、さまざまな場面での運用を可能にするため、折り畳み

式ベッド、エアコン、発電機、蓄電池、ソーラーパネルを装備している。

3.期待される効果

市や町内会主催等の各種イベントでの利用に加え、特に電力や水道の使えない災

害時の使用にも期待されている。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

1.事業の成果

「とまれっと」が導入されたのは平成28年12月26日で、すでに28年度に

4件282名(車いす2名)、29年度に34件1892名(車いす35名)の出動

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11

利用実績がある。

市では、出動依頼について、必ず「出動要項と出動に関する手引き」を一読し、

「福祉トイレカーの趣旨を理解」してから、「出動依頼申込書」を提出することとし

ている。つまり、単に「簡易トイレの設置費用を削減する目的のため」だけには出

動させられないということである。

2.今後の課題

「とまれっと」は、全国の自治体では初の導入ということもあり、市民からの認

知度は高く、各種イベントにはたくさんの出動要請があり、さらなる増台の期待も

あるという。しかし、「とまれっと」の導入価格は1台約1860万円と高額であ

り、年間の維持費用は車両管理者である清掃会社との契約で、「年間40回以内の

出動で600万円」と高額なことから、さらなる増台は難しいとのこと。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

1、日光市への導入について

このトイレカーを開発したのは、神奈川県海老名市にある警備会社であり、自社

の社員である交通誘導員に対する「トイレ不足」を解消する目的で、平成20年に

開発したものだった。この車は、公道を走行するための内閣府の大変厳しい基準を

クリアしている車両であり、この警備会社はトイレカー以外にもさまざまな用途の

車両を製作している。

日光市においても、市内各所でさまざまなイベントが行われており、障がい者用

のトイレの設置の重要性は高いと思われる。しかし、高額なトイレカー導入の費用

と年間の維持費用を考慮すると、災害時に出動できることを加えても、日光市での

導入は難しいと思われる。

2、バイオトイレの導入は検討の価値あり

しかし、「トイレカー」の導入は難しいとしても、多くの自然環境を有する国立公

園がある日光市では、環境面や凍結対策から公衆トイレに対して「バイオトイレ」

の導入を考慮する必要はあると考える。

「とまれっと」に搭載されているバイオトイレは、北海道旭川市にある会社が技

術を開発し、現在では環境規制が厳しい南極基地や、世界遺産富士登山道にある山

小屋などに導入されている。また、この会社はバイオトイレの技術を応用し、生ご

みを有機肥料に変える処理施設も製造しており、ごみの減量対策としても期待でき

るものである。

今回の視察は、新たにバイオトイレの視察・考察を続けたいと思うものであった。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

資生館小学校の取組みについて 【札幌市】

視察先担当課 札幌都心部子ども関連複合施設

運営協議会事務局 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

日光市では、平成28年に「小中学校適正配置に向けた基本的な考え」が示され、

今後10年間で小学校の統廃合が進むものと思われる。学校はこれまで、地域の拠点

施設とされてきた経緯から、地域から学校がなくなることへの不安感や抵抗感は相当

に大きいものと想像できる。

一方で少子高齢化の現状を考えると、公民館や保育園など、複数の機能を併せ持っ

た複合施設としての学校というあり方も、検討の 1項目と思われる。

そんな中、10年以上も前に、小学校と放課後児童クラブ、保育園、子育て支援セ

ンターの機能を併せ持つ子ども関連の複合施設を設置した札幌市の取組みは、日光市

の今後の参考になるのではとの思いから、札幌市立資生館小学校を調査研究した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

札幌市立資生館小学校は、基本的に「札幌都心部子ども関連複合施設」の4つの施

設の内のひとつとして、小学校教育現場として位置づけられている。政令指定都市の

札幌市といえどもドーナツ化現象を主因とした児童減少傾向には抗えず、近隣4小学

校が統合される形で平成16年4月1日に開校となった。

施設構造は鉄筋コンクリート造、地上5階地下1階、延べ床面積13,672平方

メートルであり、校庭は天然芝で都市部の景観に和らぎを与えている。また、免震構

造を目視で確認することもでき、建物の強度と安全性を感じることができる。

教室は、廊下との間仕切りがないオープンスペースで、教育現場が活き活きとして

いる様子を見ることもできた。当該施設が地域の核として与えた影響で一番良かった

点について、担当からは「統合された各小学校の地域間交流が活発に進んだこと」と

の回答があった。4校統合までの3年間の苦労と、総工費440億円の投資効果がも

たらした成果が如実に表れたものと思えてならない。

一方で、その他の施設の案内も受けたが、鉄筋コンクリート造で音が響き、かつ複

合施設であることから生じるのか、雑多な音が共鳴しているようであり若干の違和感

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を覚えた。また、複合施設であるがゆえなのか、施設内の移動がまるで迷路のように

入り組んでおり、子供達も慣れるまで時間がかかり、苦労するのではないかというこ

とが心配になった。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

日光市も、平成28年からの10年間で取り組むものとして、複数の地域における

小中学校の適正配置に向けた具体的な検討段階に入っている。日光市と規模は違うが、

「地域間交流が活発に進んだ」という札幌市の成果にならい、教育を基盤とした地域

間交流の振興策を考慮しつつ、学校施設の改修や建替えなどの投資効果を十分に検討

しながら取り組むべきと考える。

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◆視察結果◆視察結果◆視察結果◆視察結果(個別票)(個別票)(個別票)(個別票)

個別

項目

議会改革の取組みについて(主に議会だよりやホームページ) 【石狩市】

視察先担当課 石狩市議会事務局 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

市民に開かれた議会を目指す日光市として、議会が発行する冊子や市議会のホーム

ページは、できるだけ読みやすくわかりやすい必要がある。日光市議会としても、一

般質問者の顔写真公開や2次元コード導入によるオンデマンド動画の配信など市民

ニーズに対応した情報の公開に努めてきた。

石狩市では、議会だよりの編集方針や配布方法、印刷製本などの合理的な取組み

やホームページの先駆的な取組みを行っている。

また、日光市ではペーパーレス化や市民への情報公開を目指したタブレットの導入

を決定し、今年度の実施に向けて協議中であることから、すでにパソコンの導入によ

るペーパーレス化で大きな成果を上げている石狩市議会の取組みを調査研究した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

「石狩市議会だより」を製作するにあたって、1.写真撮影、2.質問・答弁原稿

の作成、3.レイアウト、4.配布等を業者に委託し経費の節約や作成スピードの短

縮に成果を上げてきた。石狩市の広報と抱き合わせによる業者発注で、1部46円か

ら26円にまで単価を圧縮することができた。契約内容は、3年間契約でプロポーザ

ルにより業者を決定した。作成期間も、従来の方法より30日間短縮することができ

た。配布方法も、従来からの自治会への協力依頼から、フリーペーパー業者へ業務を

委託することによって経費を圧縮することができた。

また、2013年12月に日本で最初に手話言語条例を制定した石狩市ということ

もあり、2014年の市ホームページリニューアルに伴い、議会ホームページの映像

配信を手話通訳付きにしている。

パソコンの導入によるペーパーレス化については、石狩市が使用していた5年落ち

のリース期間終了後のノートパソコンを安価で買い上げることによって、初期費用が

あまりかからないICT化を図った。Wi-Fi環境を持たない石狩市役所では、ネ

ット接続をしないペーパーレス化に特化したパソコンを導入した。ネット接続をしな

いためUSBメモリによるデータのやり取りでデジタルディバイドの解消を図った。

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●パソコン導入によりペーパーレス化した書類

【行政書類】

①議案書、付随する書類

②予算書、決算書、と付随する書類

③例月出納検査報告書、監査報告書

【議会書類】

①意見書案等議員発議議案、委員長報告(特別委員会、各常任委員会)冊子

②議会会議録(冊子)

●パソコン導入費用

・パソコン35台(事務局、予備を含む)※修理しない 175,000円

・コンセント等の電源改修(議場、2委員会室、全員協議会室) 486,000円

・USBメモリ(各議員2個) 66,000円

合計 727,000円

●ペーパーレス化による削減経費(本会議)

・印刷・製本に係る人件費 982,000円

・消耗品(主に紙) 404,500円

合計 1,387,300円

※平成29年9月から委員会でもペーパーレス化

約600,000円(人件費40万円、消耗品20万円)の削減

●今後の課題について

「石狩市議会だより」について、従来カラーだった表・裏表紙を1色刷りにしたた

め、ビジュアル的に市民がどう考えるか。また、記事の内容がほぼ業者委託なので議

員のコミットが少ないことなどが考えられる。

議会ホームページについては非常にわかりやすく、議長交際費や政務活動費なども

詳しく掲載しており情報は充実しているが、リアルタイムでの動画配信がないのが残

念に思う。

ペーパーレス化については、非常に割り切ったデジタル端末の使い方で、ペーパー

レス化の経済効果を簡単に実現していることは素晴らしいが、逆にネット接続をしな

いため機能の一部しか使用しておらず、ICT化への移行の過渡期的なシステム構築

だと考える。

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ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

今回は、議会改革の中の「議会だより」やホームページ運営について、また、ペー

パーレス化に伴うパソコン導入について視察したが、共に経費の縮減が根本にあった。

「議会だより」作成・配布における業者委託は、確かに従来の手法とは異なり、少

ない経費でこれまで同様の効果を上げている。しかしながら、作成までを業者に委託

することの是非は、市民の判断を仰ぎたいと考える。

議会ホームページについては、日光市のホームページがリアルタイム動画配信や2

次元コードの活用など先進的な部分もあるが、ユーザー目線から見ると石狩市の議会

ホームページの方が使いやすく詳細であり、最も素晴らしいことは手話通訳が付いて

いることである。実現可能であれば早急に日光市においても導入を図りたい。

ペーパーレス化等ICTの導入については、石狩市議会の手法がペーパーレスに特

化した試みだったため、日光市議会の目指すICT化とは一線を画し、その方向性が

違っていた。だが、ペーパーレスによる経費削減は効果が大きいと思われ、日光市議

会が決定したデジタル端末の導入に向けて大いに参考としたい。

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平成30年(2018年)12月3日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第1班

班 長 瀬 高 哲 雄

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第1班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成30年9月20日(木) 午後2時~午後3時

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)PFIによるスポーツ施設整備について

視察先:東京都八王子市

視察事項:エスフォルタアリーナ八王子(PFI)

4.出 席 者 班員10名

教育委員会事務局スポーツ振興課(振興係)職員

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5.結 果

1)意見概要

《スポーツ振興課》

・建築後30年40年が経過した施設が非常に多く、施設の現状維持すらで

きていない状況にあり、施設の統廃合が基本になってくると思う。

・客席のある体育館は市内のどこにもなく、大きな大会が誘致できないので、

個人的には総合体育館はあるべきと思っている。

・杉並木マラソンのように一部連携ができている事業もあるが、スポーツ

ツーリズムに関して、観光部局とスポーツ部局で定期的な情報交換等が出

来ておらず、今後の課題だと思う。

・施設改修が済んだ時点で、その施設の利用料金の見直しは必要だと考える。

《委員》

・アリーナ内の看板は年間の広告収入があり、日光市でもそれなりに稼げる

のではないか。

・合宿や大会を誘致するには、誘致できるような施設の存在が前提になって

しまう。

・鹿沼市は県と協力して建てた。市単独では難しいので県との協力を。

・執行部側のスポーツツーリズムの所管がはっきりしない。

・受益者負担は当然で、施設使用料の改訂もある程度は必要。

・それなりの施設になれば、その施設だけ料金が上がっても理解を得られる

と思う。

・施設利用について、直前キャンセルでも無料にしているから気楽に申し込

める、その結果、施設利用率が下がっているのでは。しっかりした計画で

申し込んでもらうためにも、キャンセルした場合はそれなりの料金をとる

べきではないか。

・使う人がいない施設を無料開放することで地域の人が集まり、その地域に

にぎわいが生まれるなら、使用料収入がなくてもそれなりの効果はある。

行政はそういった方法も考えるべき。

・施設の有効利用を考えたとき、市内の野球場を、市内の高齢者チームに無

料開放することで、グラウンド整備など施設のメンテナンスで期待できる

面もあり、検討すべきと思う。

2)感想・所見

競合する民間施設がない日光市において、PFIによるスポーツ施設整備は

難しい面があると思われるが、県をまきこんだ形での施設整備など、実現に向

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けたあらゆる可能性の追求を継続しなければならない。また施設改修の時期を

とらえた利用料金の改定や、担当課による市スポーツ施設の充実に向けた対応

など、ハードとソフト両面で環境整備の必要性を再認識した。

スポーツツーリズムや市民のスポーツに対する意識向上を鑑みると、当市に

おける総合型スポーツ施設の設置は必要であり、今後も引き続き調査研究を行

っていく。

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行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会 行政行政行政行政視察視察視察視察結果結果結果結果報告書報告書報告書報告書

平成30年10月1日

報 告 者 第2班

参 加 者 班長 粉川昭一 副班長 荒川礼子 小久保光雄

◆◆◆◆視察視察視察視察項目項目項目項目

実施年月日 第1回:平成30年7月 3日(火) ~ 7月 5日(木)

第2回:平成30年7月23日(月) ~ 7月24日(火)

視 察 目 的

第1

1 おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)に

ついて 東京都大田区

(みまーもステーション)

2 農福連携について 岡山県岡山市

(特定非営利活動法人杜の家)

3 空き家再生及び活用について 広島県尾道市

(特定非営利活動法人尾道空き家再生プロジェクト)

第2

1 オープンデータの活用について

福島県会津若松市

2 議会改革について

視 察 先

概 要

東京都

大田区

*人 口:691,853人 *面 積:60.75k㎡

*特 徴:羽田空港を擁し23区では最大の面積。京浜工業地

帯の一角を形成。一方で、北西部は比較的緑の多い住宅地で

あり、多彩な顔を持ち「東京の縮図」といわれる。臨海部で

の都市機能施設の整備が進む。

岡山県

岡山市

*人 口:697,148人 *面 積:789.95k㎡

*特 徴:温暖な気候と多様な自然環境に恵まれる中四国地

方の第2の都市。水資源に恵まれた岡山平野に位置する。広域

高速交通の結節点という地の利、恵まれた住環境・福祉・医

療・教育分野での都市機能の集積などを活かしたまちづくり

が進展。

広島県

尾道市

*人 口:140,405人 *面 積:285.11k㎡

*特 徴:県東南部にあり、多くの文人墨客が足跡を刻み、

優れた芸術・文化を育むとともに、映画のロケ地としても有

名。瀬戸内のほぼ中央に位置し、広域拠点としての機能が高

まり、「瀬戸内の十字路」として発展が大いに期待される。

福島県 会津若松市

*人 口:120,836人 *面 積:382.97k㎡

*特 徴:白虎隊や戊辰戦争に象徴される鶴ヶ城や飯盛山な

ど名所・旧跡が残り、多くの観光客が訪れる。酒・漆器等の

地場産業、IC関連先端産業が集積する工業都市でもある。

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◆視察結果◆視察結果◆視察結果◆視察結果(個別票)(個別票)(個別票)(個別票)

個別

項目

おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)について 【東京都大田区】

視察先担当課 みま~もステーション 添付資料 有 ・ ○無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

厚生労働省の調査によれば、団塊の世代が 75 歳以上になる 2025 年には、65 歳以

上の高齢者が3人に1人、75 歳以上が5人に1人となり、このままの推移で少子高齢

化が進むと、医療・介護等費の増大により今のままの社会保障制度では回らなくなる、

いわゆる 2025 年問題が起きてしまう。

また、多くの人が介護や医療が必要になった場合でも、住み慣れた地域で安心して

自分らしい生活を送りたいと願っている。

こうした現状を受け、介護・医療・住まい・生活支援・介護予防が一体的に提供さ

れる「地域包括ケアシステム」の構築が求められている。当市においても様々な取り

組みがなされているが、支援にたどり着きサービスを受けられる人がいる一方で、サ

ービス自体を知らない人が多く存在し、将来に対し不安を抱えるなど、理想と現実の

乖離を感じてしまうのも事実であり、実際に地域の中にこうしたシステムを構築する

ことの難しさを実感している。そこで、独自の方法で先進的な取り組みを構築された、

「おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)」を視察調査した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

【経緯】

平成 20 年4月 「大田北高齢者見守りネットワークをつくる会」発足

(12 名の福祉専門職と地元の老舗百貨店社員3名で)

平成 20 年5月 「地域づくりセミナー」開始

平成 21 年4月 「みま~もレストラン」オープン

平成 21 年6月 「地域づくりセミナー」で“SOS みま~もキーホルダー”提案

平成 21 年8月 “SOS みま~もキーホルダー”登録開始

平成 21 年 12 月 名称を「おおた高齢者見守りネットワーク」へ変更

平成 22 年1月 「みま~も六郷」発足

平成 23 年4月 “みま~もステーション“”みま~もサポーター“スタート

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荒井宿第一児童公園のふれあいパーク活動に登録

平成 24 年4月 “大田区高齢者見守りキーホルダー”登録開始

「みま~も六郷」から「みま~も鎌田」へ変更

平成 24 年8月 アキナイ山王亭 オープン

平成 26 年6月 荒井宿第一児童公園をリニューアルオープン

平成 26 年8月 “まちづくりが元気だ!おおた”登録事業スタート

平成 27 年3月 「みま~もぐんま」発足

平成 27 年6月 “元気かあさんのミマモリ食堂”開始

平成 28 年4月 「みま~も岸和田」発足

平成 29 年4月 「みま~も・かごしま」発足

平成 29 年5月 「みま~もすえよし」発足

平成 29 年7月 「みま~も大和」発足

平成 30 年4月 「おおた見守りネットワーク」10周年

【取り組み3つの柱】

①地域作りセミナー

地域住民が、地域の医療・福祉の専門家や警察・消防などの機関から、地域全体

での見守りの重要性や「気づき」の視点について学ぶことを目的とし、現在 130 名

が継続して参加している。(70 歳 80 歳代が7割)

②高齢者見守りキーホルダー

65 歳以上のすべての方が対象で、登録するとその方の登録番号と管轄の地域包括

支援センターの電話番号が書かれたキーホルダーがもらえる。何かあった時にキー

ホルダーを見つけた人が包括に連絡すると、登録番号でその方の情報がわかるので

「65 歳以上に配る安心のお守り」と評判になり多くの方が登録している。元気なう

ちから地域包括支援センターの存在を知ってもらい、つながってもらうために、年

に一度、誕生日に包括支援センターに行き更新をする仕組みになっている。更にす

べての方が対象なので、差別意識が持たれないという利点もある。

③みま~もステーション

地元商店街の協力を得て空き店舗を活用し、住民と専門職が日常的に繋がれる場

所を構築している。そこでは、「みま~もサポーター」と呼ばれる「応援団」の住民

が、講座に参加したり講師をしたりと楽しみながら交流を深めていた。サポーター

には登録料をもらい、講師やサポートをすると地元商店街で使える商品券がもらえ、

空洞化しつつあった地元商店街の活性化にもつながる仕組みになっている。

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ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

10 年前、大田区の 21カ所の地域包括支援センターでは、ひと月約1万件の相談(1

包括あたり約 500件)があり、窓口にたどり着いた人たちへの対応だけで忙しく、職

員一人ひとりの個別対応だけではカバーしきれず限界があると感じていたそうだ。

また、どこででも抱えている課題として、知り合いや近所の方から連絡を受け、支

援が必要な方の所に訪問しても、見ず知らずの包括の職員にドアを開けてくれないこ

とも多かったとのことであった。

実際には SOS を上げられない、サービスにたどり着けない人がたくさんいる事実

があり、「住み慣れた地域で暮らし続けたい」という高齢者の想いに応えるためには、

地域のネットワークを作り、点を面的に支える取り組みが必要であると、当時、地域

包括支援センター長であった澤登氏が、「気づきのネットワーク」を手探りで構築し

ていったのが「おおた高齢者見守りネットワークみま~も」の始まりだった。

高齢者を取り巻く環境は多様化している。そこで重要なのは、地域住民と地域で働

く医療・保険・福祉専門職がつながり合い高齢者を支え合うまちづくりを進めること

だと、補助金にも頼らず委託でもなく、自力で地域のネットワークを構築された。

また、外出先で救急搬送された高齢者の身元が分からず困った経験など、セミナー

のうち合わせの中から地域の見守りシステムとして「高齢者見守りキーホルダー」が

考案された。

当初、地域包括支援センターのうち 15 カ所から断られ、6カ所で始まった取り組

みであったが、区民の反響がすごく、大田区全体の取り組みに発展した。今では区民

全体で 16万人いる 65 歳以上の高齢者のうち4万人、4人に1人が登録し、そのうち

9割は元気な高齢者とのことである。また、東京都で 13 自治体、全国で 50 を超える

自治体に広まっている。

大事なことは、形だけの見守りシステムではなく、本当に元気な頃から地域包括支

援センターや専門職、そして地域とつながる仕組みづくりが必要であり、「見守りと

はつながることである」との澤登氏の言葉が心に刺さった。

実際に、地域の中で地元の企業や商店街も協賛することでつながり、高齢者自身が

楽しく、自らも貢献でき、専門職や包括とお互いがいい形でつながっている仕組みが

うまく構築されていることに大変感銘を受けた。

当市においても、地域包括ケアシステムの構築にはこうした地域に即したつながる

仕掛けを考えていくことが必要であると痛切に感じ、そのきっかけづくりとして「高

齢者見守りキーホルダー」の取り組みは一つの方法としてやる価値があると感じた。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

農福連携について 【岡山県岡山市】

視察先担当課 特定非営利活動法人杜の家

(株式会社おおもり農園) 添付資料 有 ・ ○無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

障害者の就労の場の確保や工賃の向上は大きな課題となっており、様々な取り組み

がなされている。また、農業の分野では担い手や労働力の不足が大きな問題となって

おり、農業分野と福祉分野の双方が連携することによって、お互いの課題解決が図ら

れる「農福連携」の取り組みが注目され、全国的にその取り組みが広がっている。

視察に臨むにあたり、日光市の現状を福祉部門に確認したところ、栃木県では本年

度から農福連携に向けて動き出したところで、日光市でもこれからの取り組みであり、

現状での課題は、福祉部門が主体となるためには農業事業者との接点が無く、今後農

林課等との連携が必要とのことであった。

視察先の株式会社おおもり農園は、平成 14 年に代表者がサラリーマンを辞め市街

地にて就農、平成 19 年に認定農業者に認定され、都市型農業として平成 26 年に株式

会社おおもり農園を設立した。

特定非営利活動法人「杜の家」(以下杜の家)は、平成 19 年に代表の妻が中国農政

局のシンポジウムに参加した際に障がい者就労に興味を持ったことがきっかけで、平

成 20 年より障害者福祉事業所から施設外就労を受け入れるようになり、平成 22 年

には障がい者を自ら雇用するため「杜の家」を設立、翌年に就労継続支援 A型事業所

「杜の家ファーム」を開設し、障がい者の雇用を始めた。

主な生産物は苺と葉野菜で、スーパーや飲食店に直接納入しているほか、自社配送

も行っている。従業員数は 23 名(パート含む)で、A型就労部門職員 4 名、利用者

18 名である。平均勤務時間は 5.31時間、時給は 781円~1050円で平均 798円であ

る。勤務体系は 8時~17時(8時間)・9時~14時(4時間)・9時~15時と 11時~

17時(5時間)で、自身での通勤となるが、市街地にある農地なので交通手段に恵ま

れている。

また、杜の家のその他の活動としては、フードバンク事業や放課後児童デイサービ

ス(利用者 10 名)、就労継続支援 B型として総菜屋の展開、高齢による離農苺施設の

受け入れなどを行っている。

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ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

全国の農業就業人口の平均年齢は 66.7 歳(平成 29 年農林水産省調べ)であり、小

規模農家や後継者のいない高齢農家の離農、市街地農地の宅地化、里山の放置、高い

税金による農地維持の難しさ、高齢化による耕作放棄地の増加、農業で生計を立てら

れる新規農業者の不足などが進んでいる。

これらの解消のために、地域の障がい者を含めた若い人材の確保と農業技術伝承が

重要となる。

杜の家では、高齢者による離農者の農地を保全し、若い農業者の育成のために、青

年後継者や独立経営を目指す若者の受け入れなどを行っている。

農作業は一部単純作業もあるが、全般的に体力が必要で高齢になると作業が難しく

なることから、専業農家への支援として、杜の家利用者(以下、利用者)を施設外就

労という形で派遣し農作業のサポートを行った。利用者を農業者に受け入れてもらう

ことで、幅広い作物のノウハウを利用者と杜の家職員が取得し、さらに農業者への理

解と今後の圃場拡大のきっかけとなった。

また、一般就労に結びつかない利用者でも支援があればしっかりと働くことができ

ることから、農園の中核となる人材を育成するために、イチゴの栽培管理→収穫→パ

ック詰めまでのすべての作業と手順の指導を行い、利用者を農業者として育てようと

したが、農業以外の一般就労へ移行する利用者がいるため、結果としてイチゴ作業の

できる利用者が少なかった。

その対応策として、イチゴ栽培の熟練を必要とした作業を細分化し、作業の標準化

を図り、個人のみでできる仕事や音声対応の機械の導入、視覚で入る指示や隣の方の

声掛けなど、利用者の個性に合わせた作業や指示により、適材適所に努める工夫がな

された。

就労継続支援 A 型事業の制度を逆手に取ったトラブルは一部社会問題となってい

るが、杜の家でも就労支援金目当ての一定期間での転職などがあり、作業を覚えたと

ころで退職となったケースがあったそうだが、助成金に関係なく一般就労から戻る方

は暖かく再雇用しているそうだ。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

午前 10時から午後 2時過ぎまでの視察で、座学での説明と離れたところにあるビ

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ニールハウスでのイチゴと野菜栽培の作業の様子を見せて頂いた。

障がい者の雇用となると、福祉分野からになってしまいがちだが、農業分野の理解

が必要であり、そのためには行政が農業者への啓発を行うことが重要だと伺った。

そして、施設でしっかりと職業訓練を行い、作業に取り組むことが必要であり、助

成金をうまく活用することが有効とのことであった。

「日光市で農福連携を導入するためには?」と尋ねたところ、「担当部署の縦割り

を崩し、まずは農業分野からです。」との回答であった。

また、若手就農者が自ら経営し、施設外就労を目指すことがポイントであり、その

ためには法人化が必要とのことであった。

日光市では農福連携の取り組みはこれからのようであるが、岡山市と同じく就農者

の高齢化、担い手や労働力の不足は喫緊の課題である。また、障がい者の雇用支援が

まだまだ進んでおらず、就労継続支援 A 型事業所もこれからの大きな課題となって

おり、農業分野との連携は推進すべきと考える。

農福連携には農業者側の理解が重要であり、農業分野も福祉分野も双方にメリット

がある「Win-Win」の関係が、農福連携を推進するキーワードとのことである。

日光市の今後の取り組みに期待したい。

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28

◆視察結果◆視察結果◆視察結果◆視察結果(個別票)(個別票)(個別票)(個別票)

個別

項目

空き家再生及び活用について 【広島県尾道市】

視察先担当課 特定非営利活動法人

尾道空き家再生プロジェクト 添付資料 有 ・ ○無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

全国的な人口減少に伴い、各地での空き家の増加に伴う様々な課題が注目をされて

いる。

日光市においても、その対策として平成 30 年 3 月に日光市空家等対策計画を策定

し取り組みが始まっているが、今後の大きな課題となっている。

尾道市では、全国的にも先進的な空き家再生の地域として注目されており、視察前

に当市所管への聞き取りで得た行政主体の取り組みの課題を踏まえ、視察に臨んだ。

尾道駅を降り、徒歩で山側の坂道を登りながら「特定非営利活動法人尾道空き家再

生プロジェクト」(以下、尾道空き家再生 P)の事務所を目指し進むと、狭い路地と坂

道、独特の雰囲気のある街並みが続き、目的の事務所に到着した。

事務所内は子どものころに住んでいたような室内で、昭和の雰囲気が漂っている。

テーブルを覗くと井戸にアクリルの蓋がしてあり、照明をつけると井戸の底の水が

見える。この事務所も空き家を再生した建物で、元洋品店を一年かけて再生し、子づ

れママの井戸端サロンなどとしても利用されている。

尾道空き家再生 P は、代表理事の豊田雅子氏が平成 19 年、後に国の登録文化財に

指定された通称「尾道ガウディハウス」を取得し、再生の取り組みを始め、同年に任

意団体尾道空き家再生 P を立ち上げ、翌年に法人格を取得した。大阪の大学卒業後、

旅行会社の添乗員などでヨーロッパに行き、日本のような全国画一的な街並みではな

いヨーロッパの街並みが好きになり、路地や坂道など出身地尾道のまちなみの味に魅

せられましたが、市全体で約 7千件、市街地 3 キロ圏内で約 500件の空き家があり、

管理されていない空き家がもったいないという考えが浮かび、故郷尾道の空き家に興

味を持ったそうだ。

空き家を調べようにも、不動産会社では車も入れないようなマイナス評価の空き家

は取り扱っておらず、平成 7 年から市で取り組んでいる空き家バンクでは、エクセル

形式にデータが並んでいるだけで写真もない実用性のないものだったことから、豊田

氏自ら地権者や自治会長に聞き、空き家になった原因や権利関係などを調査した。

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尾道空き家再生 P は市街地の3キロ圏内のみの活動で、そこは高齢者が多く、車も

入れない路地があり、不動産会社はコストが掛かるため手を出さない地域である。

新たに人が住まない高齢者の多い地域であり、コミュニティの崩壊が危惧されるた

め、若い世代に住んでもらってコミュニティを維持できるように、5つの空き家再生

プロジェクトを考えた。

「空き家×建築」

古い港町から、時代と共に変化し昔の面影は失われつつあるが、車の入らない斜面

地や路地裏は時代に取り残されたように古い街並みが残り、変化の多い地形に合わせ

て作られた不安定な家や、眺望重視の絶景の家、増築を重ねた変形の家、木造3階建

ての家など、個性的な生活感あふれる尾道らしい家、尾道建築の面白さや失われつつ

ある職人技などを伝えたい。

「空き家×環境」

地球環境を考えれば古い家に住み続けることはエコであり、不要な家財道具のリユ

ース・リサイクルなどの廃材や古道具の再利用によってエコ活動に貢献し、レトロな

尾道らしい街並みを残し、もう二度と建物が新築できない斜面地の更地などは、畑づ

くりや公園など緑化運動に努める。

「空き家×コミュニティ」

市街地の多くの空き家は、少子高齢化、地方都市の過疎化、中心市街地の空洞化の

象徴となりつつあり、古い建物や景観を守っても、そこに人がいないと魅力的なまち

とは言えない。次世代が住まなくなった空き家の里親探しや、新しい移住者への暮ら

しのアドバイス、空き家・空地を使った世代間の交流、イベントの企画など、新しい

コミュニティづくりを手伝う。

「空き家×観光」

尾道には年間 670万人の観光客が訪れるので交流人口は多いが、長期滞在者は少な

く、1泊 2日程度ではディープなまち尾道を知ることはできない。何度も来訪しても

らうか長期滞在して欲しいために、空き家を使った短期貸家を尾道暮らしを体験した

い方や長期滞在したい方に安く提供していく。また、住めるようにするには難しい空

き家は、趣味のお店や工房など、そぞろ歩きや路地裏探検をもっと面白くしていける

モノに再生していく。

「空き家×アート」

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尾道は多くの文人や芸術家に愛されてきた町で、これからも尾道から世界へ発信し

てくれるアーティストを育てていけるよう、空き家を美術や文学を学ぶ若者たちの寮

やアトリエ、ギャラリーセミナーハウスなどに活用していければと考えている。また、

芸術家の滞在制作を浸透させるべく、長期滞在可能な場と制作・発表の場として空き

家を活用し続け、アートの仕掛けによって尾道のまちを輝かせたい。

この5つがあれば、どれか関心を持ってもらえるのではと考えたそうである。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

尾道空き家再生 P は、市と連携した空き家バンクが当初 56件から登録 160件以上

になり、今までに約 100件が成約となった。また、会員が約 200 人、移住者の子ども

が 15 人生まれ、地域のコミュニティの継続に貢献をしている。

市では空き家バンクの運営や移住定住の財政支援などに取り組んでいるが、土日が

休みという事や、担当者が定期的に移動するなどの課題がある。

また、移住したいけど仕事がない、滞在者が少ない、商店街の担い手不足などの課

題を考え、商店街での空き店舗を「アナゴのネドコ」というゲストハウスに改装し、

登録文化財に指定されていた元旅館を市の補助やクラウドファンディングを活用し

「みはらし亭」としてゲストハウスに改装した。これにより滞在客の受け皿や、雇用

の創出となった。

空き家の活用に当たっては、自己資金の少ない若者向けに、DIY の支援や現地での

チャリティ蚤の市の開催、土嚢の会では、坂の町の空き家の不用品の運び出しや再生

資材の搬入、引っ越しなど少人数では厳しい作業を若い労働力で一気に解決して、斜

面地再生の一端を担っています。

また、斜面地では空き家の問題だけでなく、もう二度と建物が新築できなになった

空き地も多く、まずは草むしりやゴミ拾いをしたあと、「尾道空き地再生ピクニック」

として、ピクニックを楽しみながら空地の活用方法を考え、手作り公園や菜園、もぎ

取り果樹園、花畑などに再生している。その他にも多くのイベントや他団体との連携、

定期的な情報の発信、移住者への尾道での暮らしのアドバイス事業など、きめ細かく

取り組んでいる。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

まずは代表理事の豊田雅子さんの尾道に対する熱意を感じた。また、人が人を呼び

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関わる人達も多く、多彩であり、豊田さんの熱意にたくさんの尾道を愛する人が集ま

って、大きな力となり尾道のまちづくりに繋がっている。

空き家という個人の財産を、公が中心となり事業を行う限界が見える中、NPO 法

人という民間が主体となって、自由に多種多様の人々を巻き込み、多彩な事業展開を

されていることを聞くと、日光市においては、行政と市民の連携が空き家対策には必

要だと感じた。

空き家情報の提供だけではなく、活用の方法や改修までをフォローし、5 つの空き

家再生プロジェクトにあるように、多くのアプローチをすることは必要であり、市街

地の3㎞圏内のみの取り組みの様に、市内全域を画一的に取り組むのではなく、それ

ぞれの地域性を考えた活用を提案しながら、それぞれの地域を思う市民と共に事業に

取り組むことが必要ではないかと感じた。

空き家対策は全国的に大きな課題であり、先進地として注目されている尾道市でも

市全体では7千件を超える空き家がある。ますます進む人口減少と世帯数の減少を迎

えた現状を考えると、日光市においても早急の対策が求められていると思う。

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◆視察結果◆視察結果◆視察結果◆視察結果(個別票)(個別票)(個別票)(個別票)

個別

項目

オープンデータの活用について 【福島県会津若松市】

視察先担当課 会津若松市情報政策課 添付資料 有 ・ ○無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

近年、スマートフォンやタブレット端末など、SNS の普及等を背景に、多種多様な

情報を相互に連動させて新たな価値を生み出すことが期待される中、国では行政の活

性化や信頼性の向上、住民参加・官民協同の推進、経済の活性化・行政の効率化に繋

がることを期待し、公共データの活用促進、「オープンデータ」の推進を図っている。

政府によると「オープンデータ」とは「機会判読に適したデータ形式で、二次利用が

可能な利用ルールで公開されたデータ」であり「人手を多くかけずにデータの二次利

用を可能とするもの」とされている。

当市においては、まだ、推進されておらず、地方自治体で取り組む目的や効果など、

先進的な取り組みをされている会津若松市にて視察調査を行った。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

会津若松市では、平成 24 年に全国で福井県鯖江市に次ぎ2番目に「オープンデー

タ」の取り組みを開始した。そのきっかけは、同市には日本初のコンピューターサイ

エンス専門大学である「会津大学」を中心として、ICT に関連した産業や施策が発展

してきたという背景はあるが、たまたま来庁していた地域 SNS 研究会事務局の庄司

昌彦氏から「オープンデータ」の話を聞き、「面白い」と思い取り組み始めたそうだ。

また、少子高齢化や人口減少などによる地域力の低下や、税収入減による持続的な

行政サービスへの懸念・市民ニーズの複雑化や多様化など、従来の行政がサービス提

供者となる「ピラミッド型」から、市民や民間もサービス提供者としてお互いに支え

合う「ネットワーク型」社会への構造変化があった。そうした中、「オープンデータ」

には官民が協働した新たな地方自治を実現し地域課題を解決していく可能性がある

とのことであった。

では、何から取り組めば良いか?

現在公開している統計データなどに「クリエイティブ・コモンズ」で利用条件を明

確にし、誰でも使っていいようにライセンスをつけるだけとのことだそうだ。

予算化の必要がなく1時間もあればできるとのことであり、とりあえずやってみる

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33

ことが大切だとのことであった。

市の取り組みとしては、1.小さく始める・まずはやってみる、2.職員自ら活動

に参加する、3.来る者拒まず との3つの姿勢で、出来る所から行政保有データを

積極的に公開し、アプリ開発や行政課題について考える材料を提供したり、学生のデ

ータ分析授業へ市の保有データを匿名化し提供するなど、認知や促進のために市主催

による「オープンデータコンテスト」を開催した。

地域の取り組みでは、地域のIT企業・団体・行政の有志や学生などが中心となっ

て形成する市民コミュティがしっかり根付いており、「オープンカフェ」を定期的に

開催している。

また、会津大学では開発技術を学べる講義の開講や、大学発ベンチャー企業などの

人材を中心に、地域の草の根的な活動から人材育成がさかんに行われており、シビッ

クテック(自治体、市民、企業などが一緒に知恵を出し合い、プログラミングなどの

テクノロジーを活用して問題を解決する活動)の担い手が生まれている。

様々な主体が積極的に動き、「課題のインプット」「アウトプット」「アウトプットの

活用・評価」というサイクルが形成されており、市はそれらのプロセスに参画し支援

する形が出来ている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

当初、専門的で難しい話になるのではとかなり構えて調査に臨んだが、実際には全

く違っていた。たしかに、専門の大学や、IT技術者などが多く、恵まれた環境はあ

るものの、担当者いわく「真に重要なことは、アプリを開発することではなく、デー

タ(入口)として、地域に興味を持ってもらったり、まちづくりに参画してもらうと

いうこと」とのことで、そうした視点で取り組まれていることに驚いた。それらの「結

果」としてアプリや分析が生まれるとのことであった。

会津大学は全国から多くの学生が集まるが、卒業生の8割は県外に転出してしまっ

ていた。「オープンデータ」はそうした大学生や若手の IT技術者などの若い世代が活

躍、貢献できる分野の創出になるとのことであった。

また、地域やまちづくりへの関心を持ってもらうことで、若い世代に住み続けても

らうきかっけになるとの思いがあり、実際、説明してくれた担当者は、他県から転入

し会津大学を卒業した若者であった。当市においても、若い世代を含め、当市へ関心

を持ってもらう一つの手段として、また、様々な可能性を広げる意味でも「オープン

データ」への取り組みをまず開始することが重要ではないか。

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◆視察結果◆視察結果◆視察結果◆視察結果(個別票)(個別票)(個別票)(個別票)

個別

項目

議会改革について 【福島県会津若松市】

視察先担当課 会津若松市議会 添付資料 有 ・ ○無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

会津若松市は、平成 16 年に北会津村、平成 18 年に河東町と合併し、議会では在任

特定を適用したため 61 名の議員数となった。

議員数が多くなったことと共に、異なる3つの議会が一つになった事により、多く

の混乱やトラブルが生じ、議会運営や議員の在り方などを検討する必要が生じた。

そのため、政治倫理条例の制定が図られ議論が重ねられたが、総論賛成、各論反対

を理由に否決となった。平成 19 年に議員 30 人による新しい市議会での議長選挙に、

立候補した3候補者ともマニフェストに政治倫理条例への取り組みを掲げ、同時に議

会改革についての取り組みも一体として認識された。

平成 19 年7月に議会制度検討委員会の設置が決定され、9月には市民委員を選考

し、先に議会基本条例の検討が始まり、平成 20 年2月からは、議員政治倫理条例の

検討が始まった。

両条例案の素案を4月にパブリックコメントの実施を行い、5月には市民との意見

交換会を 20 地区対象に3日間、5箇所で開催し、135 人の参加で、80 の意見が聴収

された。

その後、市民から寄せられた意見の整理と素案修正を行い、平成 20 年6月の定例

会にて採決がされた。

議会基本条例は、市民参加と議員間討議、政策形成が特徴であり、市民参加では「市

民との意見交換会」の実施、議会での活動原則としての議員間討議が規定され、議会

の監視機能、政策立案機能、市民参加を向上させて、議会の団体としての意思決定機

能を向上させ、市政貢献への政策形成を図ることが記載されている。

政策形成のためのツールの1つとしての「市民との意見交換会」は、①地区別意見

交換会と、②分野別意見交換会とがあり、地区別では、市政行政区 20 地区を基準単

位として概ね小学校区に対応した 15 地区で年2回開催、「議会報告機能」と「市政・

議会運営に関する意見交換機能」の2機能、分野別では、行政分野別に、議会内の政

策立案等の必要性や各種団体等の要請により開催、希望団体等は議長に申し込む事と

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なっている。班構成は議員6人で班を作り、一つの班が3地区を担当し、会派や党派

を超えたメンバーで構成され、2年に1度班体制を変える。また、5月と 11 月は必

ず地区別で行い、地区別、分野別ともにテーマは自治会や団体で事前に話し合っても

らい決定する。

ツールの2つ目としての「広報広聴委員会」は、政策形成サイクルのステージのう

ち、政策研究の段階で重要な位置づけとなっており、広報誌の編集と意見交換会の企

画立案が2本柱となっている。

ツールの3つ目としての「政策討論会」は、政策形成サイクルのステージのうち、

政策研究に係る問題分析及び政策立案の2つの段階で主要な機能を果たし、定義とし

ては課題等への共通認識・合意形成による政策形成であり、「全体会」+「4 分科会」

+「議会制度検討委員会」で構成されている。

分科会は4つの常任委員会毎に所属する議員で構成され、議会制度検討委員会では

会派から選出された議員の他に、公募による市民2名以内で構成される。また、論点

整理の中では議員間討議も導入され、議論による争点の発見・整理が行われる。

会津若松市議会では、議員間の自由闊達な討論を「議員間討議」と位置付け、本会

議及び委員会で実施しており、委員会における議員間討議は「委員間討議」としてい

る。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

議会報告会を実施している議会では「市民参加」が大きな課題となっている。会津

若松市議会の意見交換会では、市民から陳情を受ける場ではなく、議員が議会報告を

する場でもなく、市政に関する課題や意見について双方で語り合う場となっている。

また、市民の意見を執行部に繋ぐことを目的としておらず、議員が市民の声に耳を

傾けて終わりというものでもない。

意見交換会で出された意見や要望は、広報広聴委員会に集められ、整理検討がされ

て抽出された課題が、議員による政策討論会の分科会や全体会などのテーマとなり、

議員間で協議を重ねた上で、本会議や委員会における執行部との協議になり、政策立

案や政策提言に繋がるため、参加した市民から出された意見や要望が目に見える形で

政策に反映される。

また、5月と 11 月に必ず実施する地区別意見交換会の際に出された課題や要望は、

政策討論会を経た後に開催される予算決算審査時に反映されるので、市民に見える形

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で政策に反映されるようになっている。

更に意見交換会では、参加者を増やすために、テーマと開催の日時をポイントとし

て捉えており、参加しやすく市民の関心あるテーマとなる様に取り組まれている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

会津若松市議会における議会改革と、現在日光市で進めている議会改革では、その

完成度は別として、個別事項に大きな違いは見られないように思える。

例えば、「議会基本条例」「政治倫理条例」の制定、市民との意見交換会の実施、正

副議長選挙の際の所信表明の実施など、現に日光市議会でも既に取り入れている事も

多い。

前述したように、個別の事項の完成度に違いがあることはもちろんだが、一番の相

違点は、会津若松市議会の取り組みは、基本理念をしっかりと定めたうえで、その基

本理念を実現するために実施する個別の事項が、全て体系化されている点にあると感

じた。

特に、「政策サイクル」と呼んでいる市民意見を政策立案・提言や予算に結び付けて

いく取り組みを積極的に行うなど、意見交換会における市民からの意見をスタート地

点とする、政策形成サイクルに、今後日光市議会が進めるべき議会改革のヒントがあ

るように感じた。

なお、視察資料は会津若松市議会よりダウンロードできる。

https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2012092500014/files/h29shisa

tusiryou.pdf

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平成30年(2018年)11月22日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第2班

班 長 粉 川 昭 一

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第2班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成30年9月27日(木)午前10時00分

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)農福連携について

視察先:岡山県岡山市 特定非営利活動法人 杜の家

視察事項:農福連携について

4.出 席 者 班員 3名

産業環境部農林課(農政係)担当職員

健康福祉部社会福祉課(障がい福祉係)担当職員

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5.結 果

1)意見概要

《農林課から》

・障がい者が農業に携わる場合、ハウス栽培で地面が平らな園芸や天候に左

右されない水耕栽培などが働きやすい環境かと思う。以前はシクラメンの

栽培に障がい者を雇用していたところもあったが、雇用する余力がなくな

った。現在は雇用しているところはない。

・農業者が障がい者を雇用する条件の環境整備が難しいことから、県では

「ユニバーサル農業支援事業」として、農業者が障がい者を雇用しやすい

よう、現場環境の整備費として助成金が出る制度があるが、定額 20 万円

で1回のみである。

・A 型事業所の開設と同時に進めれば助成などがつくのかもしれないが、農

業者が A 型事業所をやるとなったら、事務手続きを行う若い世代が必要で

ある。

・若い世代の農業者は経営が安定しておらず、農業後継者支援事業で支援し

ている現状であり、A 型事業所の開設までは広げられない。

・イチゴの箱作りなどを福祉施設に依頼している農家もあり、それなりに障

がい者との関わりはある。

・園芸農家の人手は足りていない。季節労働が多く、1年を通した仕事では

ないのでノウハウが定着しない。年間を通した仕事であれば人材が定着す

る。

・施設外就労の申し込みは、栃木セルプセンターが窓口であり、市などを経

由して農業者から作業の申し出をすると、登録してある障がい者就労施設

とマッチングしてくれる。そこでは申し出があった作業を障がい者に実際

1 時間程度体験してもらい、お互い納得したなら作業の発注が成立するこ

とになる。

《社会福祉課から》

・農業の担い手不足からの障がい者雇用という発想だと、障がい者の就労は

ハードルが高い。なぜなら障がいに合わせた機械の導入、障がいの特性に

合わせた作業が必要だから。農業者側が障がい者に合せてもらわなければ

ならない。

・施設外就労や福祉事業所への発注の時期は波がある。冬の発注は非常に落

ち込むが、秋は発注が増えて農家の収穫時期と重なる。農業者からの発注

に対応したいが対応しきれない。お互いのニーズがマッチングする時期等

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の調整が必要。

・福祉側は国や県の農福連携推進事業や農福連携マルシェ開催支援事業の

2本柱の支援がある。

・県では、農福お互いの理解を推進しようと 29 年度は農福連携マルシェが

宇都宮で開催された。30 年度は 9 月 30 日に障がい者スポーツ大会と同じ

会場で農福マルシェが栃木市で同時に開催された。

・障がい者は単純作業や専門作業が得意だと思っている方が多いが、障がい

者それぞれの個性や障がいの特性がある。

・障がい福祉としては、農業に特化するのではなく市全体として障がい者へ

の理解を深めることで、当然農業も、と考えている。農福連携はその一環

である。

《委員から》

・視察先では、当初から障がい者の作業に適している葉物などを選ぶなど、

農業の基盤づくりと障がい者の受け入れは同時進行だったそうだ。最初は

農業で起業しようと始めたが、農福連携を目指してからは、福祉側の助成

や支援をうまく活用していたようだ。

・経営する側が農福の連携をまず「知る」ことが大切。配慮すれば障がい者

も農業の担い手不足の解消につながる、発想の転換が必要だ。

・新規で農業を始めるタイミングで福祉側と同時進行で考えた方がうまく

いくと視察先では言っていた。

・視察先では福祉のノウハウを持ち障がい者に理解のある職員を雇用して

事業を進めていった。現在は施設内就労から施設外就労に結び付けていく

ことを進めているところ。

・岡山市は A 型事業所が非常に多い。日光市も A 型が増えていくことが農

福連携のカギなのではないか。

・農福お互いが WinWin の関係となることが最大のポイントだ。農業者に

とっては労働力の確保が課題ということで、これを解決する手立てとして

農福連携に関心をもってもらいたいと。障がい者側は就労の場ということ

で関心を持つと。そのための福祉関係の制度が多いことからその助成金を

活用した方がいい。

・就農して経営の安定を図りつつ、さらに福祉側の助成に関する事務の手続

きをすることに費やすエネルギーが不足することが課題と思う。

・農家の障がい者に対する理解はどこまで進んでいるのか。障がい者の個性

や特性により区分や程度があるということの理解がないのかも。農福連携

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に限らず、観光もしかりで、日光市全体として障がい者への理解を深めな

ければならない。

・農家側が何に困っているか、福祉側はこんなことができると、お互いの情

報交換、協議する場が必要。

2)感想・所見

視察に先立ち、社会福祉課の担当者に日光市の現状を伺ったところ、農福

連携はこれからの取り組みであり、現状では農業者との接点が無く、今後は

農林課との連携が必要になるとのことであった。

また、農業分野では担い手不足や高齢化、労働力の不足などが全国的な課

題となっており、日光市においても喫緊の課題として解決策が求められて

いるため、課題解決の一つとして「農福連携」の推進は積極的に農業分野に

受け入れられるのではとの印象を持っていた。

意見交換の中で福祉側としては、県での取り組みは始まっているが、障が

い者への理解が進まないことが現状の課題として示され、障がい者の雇用

に当たっては障がい者に関する知識が必要だと聞いた。

また、農業分野の立場としては、今の農業経営を取り巻く環境が厳しく、

過去には障がい者を雇用していた農業者も今では雇用する余力がなくなっ

ていると聞き、県の補助制度もあるが十分ではないようだ。

視察先では、補助制度の活用や障がい者の特性に合わせた作業の工夫、農

業法人と同時に NPO 法人として携わり、福祉と農業の両分野を一体として

取り組んでいることが、両分野の溝をなくし強い連携で障がい者の雇用に

取り組むことができている。

日光市での「農福連携」を推進するために、まずは行政の福祉部門と農業

部門の連携が重要であり、農業分野の障がい者雇用における課題である農

業者に対する障がい者雇用の理解を深める取り組みを行い、障がい者との

交流を実現することが必要だと考える。特に障がい者雇用はボランティア

的な捉え方ではなく、労働力として捉えることを理解頂くことが必要であ

る。また、雇用に当たっての支援制度の充実も必要であり、NPO 法人化で

きない農業事業者などへは、ジョブコーチの派遣が必要だと感じた。

意見交換会での印象は、福祉担当は農業分野へのアプローチの手立てに苦

労している様子が伺え、農業担当は農業者側の立場を強く持っている印象

があり、まずは担当者間の相互理解と共通認識を持つことが大切なのでは

と感じた。推進する行政が一体となって取り組むことが、日光市における

「農福連携」の推進のカギを握るのではないかと感じた。

Page 44: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

41

行政調査特別委員会行政視察結果報告書行政調査特別委員会行政視察結果報告書行政調査特別委員会行政視察結果報告書行政調査特別委員会行政視察結果報告書

平成30年10月31日

報 告 者 第3班

参 加 者 班長:福田道夫 副班長:福田悦子

◆視察項目◆視察項目◆視察項目◆視察項目

実施年月日 第1回:平成30年 8月20日(月)~21日(火)

第2回: 10月22日(月)~23日(火)

視 察 目 的

第1

1.中小企業支援川崎モデルについて 神奈川県川崎市

2.観光渋滞対策について 神奈川県鎌倉市

3.ごみ減量推進市民活動支援について 愛知県安城市

第2

4.空き家対策について 東京都葛飾区

5.児童相談所について

神奈川県横須賀市 6.エンディングプラン・サポート事業に

ついて

視 察 先

概 要

神奈川県

川崎市

*人 口:1,475,213 人 *面 積:144.35k ㎡

*特 徴:県の北東部に位置し、北は多摩川をはさんで東京

都に、南は横浜市に隣接している。地域特性から、臨海部・

内陸部・丘陵部に区分できる。臨海部は重化学工業、内陸部

は商業機能や事業所、丘陵部は住宅地である。交通の利便性

が高く、人口増加傾向にある。

神奈川県

鎌倉市

*人 口:173,019 人 *面 積:39.67k ㎡

*特 徴:県の南東部に、三浦半島のつけ根に位置し、南は

相模湾に面し、横浜、藤沢、逗子の 3 市に接する。気候温暖、

自然と歴史的遺産を抱える古都であり、閑静な住宅都市であ

る。

1950 年代には、首都圏への人口集中の影響を受け、都市化

が進行し、住宅都市として成長した。

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42

愛知県

安城市

*人 口:184,140 人 *面 積:86.05 k ㎡。

*特 徴: 市内には、田園風景が多く見られ、明治用水の豊

かな水に恵まれ、かつては「日本のデンマーク」と言われた。

安城産業文化公園「デンパーク」はその歴史をもとに自然と

親しみ、花のある暮らしを提案していくところとして開園し

た。

今でも、稲作、観葉植物、果樹など栽培し、中でも「いち

じく」は有数の産地である。工業では、自動車関連企業が多

い。

東京都

葛飾区

*人 口:442,913 人 *面 積:34.80 k ㎡。

*特 徴:東京都の北東端に位置し、23 区中 7 番目の広さ

で、東に江戸川、西に荒川、中央の中川などの大河川に囲ま

れている。戦後の混乱期が終わると、都市化・市街化が急速

に進行した。産業は、中・小製造工業が中心であり、技術力

が評価されている。映画「男はつらいよ」が舞台となった「柴

又」、「こち亀」の舞台となった「亀有」などがある。

神奈川県

横須賀市

*人 口:406,586 人 *面 積:100.82 k ㎡。

*特 徴: 県東部に位置している。江戸末期黒船の来航によ

り鎖国の扉を開き、近代工場・横須賀製鉄所を築いた。平成

13 年 4 月県内初の中核市に移行。今後も三浦半島の中核都市

として発展し、国際性豊かな感性あふれる文化都市「国際海

の手文化都市」を目指している。

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43

◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

中小企業支援川崎モデルについて 【神奈川県川崎市】

視察先担当課 川崎市経済労働局

イノベーション推進室 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

川崎市の中小企業は繁栄のピークが過ぎ、その中でも従業員が 1 人から 3 人までの

小規模企業は 4,500 社~5,000 社から半分以下に減少した。

「いくら中小企業への支援制度を打ち出しても企業には届いていない」、「メール・

広報など情報媒体はあるが、インターネットを活用しない社長もいる」などの現状か

ら、市の中小企業支援の情報が届いていないことに視点をおき、まずは企業訪問を始

め公的支援策の紹介等を伝える活動に取り組み始めた。

市の窓口で待つのではなく、呼ばれなくても出かけて行く一種の「御用聞き」とな

り、中小企業を出張キャラバン隊(市・県・国・民間の専門性を持ったメンバーで構

成)として訪問、顔の見えるネットワークを作り上げることに力を入れている。

さらに、中小企業のニーズをもとに、大企業等が保有する開放しても良い特許を中

小企業に紹介する等の「知的財産交流事業」が、実際に効果的に行われている現状を

調査研究した。

【主な取り組み】

①企業訪問(出張キャラバン隊)

川崎市では、平成 16 年からまずは国・県などの制度を知らせる企業訪問を開始。

足しげく現場訪問を行い、中小企業の伴走者として情報を提供し、とことん応援す

る体制を構築している。

また、市内若手金融マンが中小企業を訪問することで行政の知らない企業の実態

を把握しているという、地元金融機関と中小企業の関係性に着目し、市も金融機関

の職員と一緒に企業を訪問する新しい取り組みを開始。

さらに、金融機関の支店に市職員が出向き制度の勉強会を開催した結果、金融機

関は中小企業への経営サポートができ、顧客へのサービス向上につなげている。

②知的財産戦略推進プログラム(対象期間は、2021 年までの 4 年間)

(1)基本方針

ⅰ)知的創造サイクル(製造・保護・活用)の推進

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ⅱ)知的財産を尊重する風土の醸成

ⅲ)川崎モデルの知的財産交流の推進

(2)知的財産交流事業

地域産業の活性化をめざし、大企業・研究機関が保有する開放特許等の知的

財産を中小企業に紹介し、中小企業の製造開発や技術力の高度化などを支援す

るために行う事業。

ⅰ)事業概要

ア.大企業の知的財産を中小企業へ移転するスキームは全国初

イ.開放特許とは、他社へのライセンス可能な特許等の知的財産

ウ.国内特許 162万件のうち、約半数の 83万件が未利用

エ.「自社製品を持ちたい」「新規事業に取り組みたい」前向きな企業に最適

な事業

オ.中小企業が比較的安価な対価により、不足する技術を速やか・低リスク

に導入可能

カ.自治体・支援機関、金融機関等がコーディネート

ⅱ)事業の特徴

ア.出会いの形は少人数で「顔」の見える関係を重視

・不特定多数(オープン)型

・任意団体(クローズ)型

・個別(1対 1)

※マッチング会を 68回開催、延べ約 2千社の中小企業が参加

ⅲ)金融機関との連携

ア.金融機関の職員が出向き、中小企業支援のノウハウ・金融機関ならでは

の企業ネットワークで相互協力

ⅳ)行政が中小企業と大企業の間をきめ細かにコーディネート

ア.場の提供にとどまらず、交渉、契約、製品開発、資金獲得、商品化に至

るまで一貫した支援。合言葉が「ライセンスはゴールではなくスター

ト!」

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

①企業訪問

押しかけ、お節介の伴走型の企業訪問は、年間 500回。

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まずは、情報を知らせる企業訪問から始まったが、その会社の自慢話が出ると「川

崎物づくり認定制度」につなぐなど、職員が足しげく現場に通うことで、中小企業

との密な連携が図られ、良好な関係が構築され、さらに、知的財産マッチングなど

につなぐなど、次へのステップに進むことが出来ている。

②知的財産交流事業

「自社製品を持ちたい」「新規事業に取り組みたい」など、新製品開発に

前向きな企業に対し伴走型の支援で、大手企業の特許マッチング成果は 30件。

大手企業と中小企業との出会いの場が創出され、中小企業に大手企業を紹

介する場も出て来た。

また、川崎になくても、この事業で出来た自治体ネットワークを活用し、

自治体間のマッチングで市と大手企業との連携も良好となり、好循環が生ま

れている。

課題は製品の販路の拡大であるが、市内 7 店舗あるイトーヨーカ堂と連携

しイベントスペースでの販売など、新しい取り組みを始めている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

「川崎モデル」は一貫して「現場主義」に基づくものであることが良く理解できた。

いかに地元の企業を知るか、いかに現場に出るかで大企業と中小企業との知的財産

マッチングが生まれた。

大企業に中小企業を紹介してきたが、逆に中小企業に大企業を紹介する場もあり、

また、川崎市になくても自治体マッチングで市と大企業の連携も良くなるなど、好循

環となっている。

現在、「川崎モデル」という言葉は、足しげく現場を訪問し、中小企業の伴奏者とし

ての視点を持ち、中小企業と大企業、大学、金融機関などとの連携機会を作る取り組

みとして認知され、「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」という本まで出版されてい

る。

川崎市はモノづくりの都市として発展してきたが、バブル崩壊後、製造のメインが

中国をはじめとするアジアに移ってしまい、「自分たちの川崎市を何とかしなければ」

との市民の思いに応え、市役所内に「ものづくり機能空洞化対策研究会」を立ち上げ

たことがこの川崎市の取り組みが成功に至るまでの経緯の中で大きな働きをして来

た。

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週1回の会議は、朝7時から開催とのこと。川崎の現状と将来を見据えての検討が、

この中で語られ、実行に移されてきたのである。

現在、「川崎モデル」として全国から注目される裏には、中小企業を地道に訪問する

取り組みの中で、中小企業の声に対し真摯に耳を傾け、それを大きなネットワークに

まで拡大させてきた努力が秘められている。

視察の余談ではあるが、川崎市にはチョークの製造メーカーで、全 80 名の社員の

うち、7 割を超える 60 名が知的障がい者である日本理化学工業という会社がある。し

かも、そのうち半数近くが「重度」に該当している。この会社は、58年前から知的障

害者の雇用を続ける一方で、学校で使うチョーク市場の国内シェア 50%以上を誇り、

「福祉」としてではなく「主戦力」として障がい者たちが働いている

この間、メディアにも数多く取り上げられ、担当課長は、「川崎市が誇れる企業で

す」と、胸を張って紹介する姿が印象に残った。

自分たちの実践している「川崎モデル」が、平成 27年に特許庁の事業に指定され、

現在 22 の自治体とのネットワークも生まれて情報を交換するなど、先進的な取り組

みを積極的に推し進める職員の姿勢は学ぶこと大であった。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

観光渋滞対策について 【神奈川県川崎市】

視察先担当課 共創計画部 交通政策課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察視察視察視察要旨要旨要旨要旨

鎌倉市は、歴史的遺産が豊富に所在する国際観光都市であり、多くの観光客が訪れ

ている。そして、休日を中心に市民生活にも影響する交通渋滞が発生しており、地域

を活用した交通渋滞対策に取り組んでいることから、観光地における交通渋滞対策を

視察した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

1.観光交通渋滞対策

①観光客の状況

平成 25 年以降は、毎年 2,000万人を超える状況である。面積(平方キロメート

ル)当たりの観光入込客数は、55万人以上(日光市は、面積当たり 7,411 人)と

なり、他の観光地と比較しても高い数値となっている。

2020 年の東京オリンピック・パラリンピックでは、隣接する藤沢市江ノ島が、

セーリング会場になっていることから、今後インバウンドも含めて、より多くの

来訪者が見込まれる。

②交通渋滞の課題

鎌倉市の観光拠点である鎌倉地域では、休日を中心に著しい交通渋滞が発生し、

市民の日常生活において移動の自由が阻害され、生活環境が悪化している。また、

公共交通の利便性の低下や緊急車両の通行にも支障をきたしている。

特に、鶴岡八幡宮、鎌倉大仏等の観光地周辺の幹線道路で、交通渋滞が発生し

ている。

2.これまでの取り組み

①鎌倉地域地区交通計画

【地区交通計画の取り組みの 3 つの基本】

1)市民全体で取り組む(市民主体で市民と行政が協働する)

2)現在ある交通施設を基本として取り組む

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3)実験で効果と課題を確認しながら計画の具体化に取り組む

②交通渋滞の解消に向けた取り組み

1)公共交通への転換方策

=パークアンドライド、シャトルバス、バス専用レーンなど

2)乗り継ぎの利便化策=鎌倉フリー環境手形、乗り合いタクシー

3)歩行者・居住環境の向上策=歩行者尊重道路、ゾーンシステム

4)円滑な交通制御=江ノ電踏切と連動した信号処理

3.取組み事例

①パークアンドライド

鎌倉地域周辺の所定駐車場に駐車し、江ノ電やシャトルバスなどの公共交通機

関に乗り換えて目的地に向かう。協賛店での料金の割引やサービスが受けられる。

平成 13 年から実施、現在海水浴場の駐車場(七里ガ浜、由比ガ浜、江の島、稲村

ガ崎)や有料駐車場(定数 800台)を使用している。

平成 29年度利用台数は、1 万 1,400台。利用者の増加をめざし、今後新規駐車

場での実施や利便性の向上に向けて取り組む。

②鎌倉フリー環境手形

鎌倉地域内の主要観光地をカバーする 5路線のバスと江ノ電の鎌倉駅~長谷駅

間を 1 日乗降が自由になる切符で、協賛店や神社等で割引が受けられる。(平成

13 年から実施。)

大人 570円、小人 290円。平成 28 年度の利用者は、2 万 5,900人である。

③(仮称)鎌倉ロードプライシングの検討

市では、渋滞の解消に向けた取り組みを行っているが、抜本的な渋滞解消には

至っていない状況である。このため平成 24 年度に鎌倉市交通計画検討委員会を

立ち上げ、渋滞解消に効果があると見込まれる「(仮称)鎌倉ロードプライシング」

の平成 31 年度本格実施をめざし、課題の整理に取り組んできた。

さらに平成 27 年度には、課金システムや法的な課題の解決に向けて検討を進

めている。

※ロードプライシングとは・・道路の使用に対してでなく、地域への流入に対

して課金する仕組み。

4.ICT・AIを活用した観光渋滞対策

国土交通省のモデル事業として、観光地周辺で広域的に発生する渋滞解消をめ

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ざし、ICT・AIの革新的な技術を活用して、警察や観光部局と連携しながら、

エリア観光渋滞対策の実験・実装を推進・支援する。

①ICT

ETC2.0、高度化光ビーコン、AIカメラ等で人や車の動きを収集。AIの分

析・予測結果に基づき人や車の流れを最適化する。

②AI

過去の渋滞発生履歴をAIが学習・分析。交通の変化をAIが判断し渋滞発生

を予測する。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

鎌倉市は、交通渋滞の解消のため、土日祝日に鎌倉地域に入る自動車・二輪車に通

行料金を課金するロードプライシングの本格実施を検討している。このシステムは、

観光客と住民の区別や、課金方法の選択などの課題がある。

また、国土交通省と連携し、ICT・AIを活用した渋滞対策の計画もあるが、行

政と地域が連携・協力し合って問題を解決することが求められている。

日光市では、現在実行している交通渋滞対策を充実させ、地域にあった対策の検討

が必要である。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

ごみ減量推進市民活動支援について 【愛知県 安城市】

視察先担当課 環境部 ごみゼロ推進課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

日光市は、平成 30 年 4月からごみの排出抑制や再利用の推進のため「家庭ごみの

有料化」を実施した。安城市では、ごみ袋代に処理費用の一部を上乗せせず、指定ご

み袋を導入するなど、ごみの有料化でない取り組みを実施し、ごみの減量に成功して

いるため視察した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

1.ごみの量と人口動態の関係

安城市の人口は、平成元年は 14万人だったが、年々増加し、平成 29 年には 18

万 8,000 人を超えた。しかしごみの量は人口以上に大きく増加しており、平成元

年度は 3万トンだったものが、平成 18 年度には約 2倍の 5万 5,000 トンとなり、

現在は横ばい状態である。

2.ごみ減量に取り組む

平成 19 年度に減量目標を明確にし、平成 17 年度実績に対し、平成 22 年度末

までに「ごみ減量 20パーセント」に取り組むことを決めた。このことは、市長の

マニフェストの中でも最も重要な政策として掲げられた。

※市民一人あたり 20%減量とは

家庭系ごみ:資源を除く可燃ごみ・不燃ごみ・粗大ごみの合計

平成 17 年度:590グラム/日 ⇒ 平成 22 年度 470グラム/日

120グラム減

平成 29 年度のごみ処理費が約 26億円(一人あたり1万 4,000円/年)であり、

小学校1校を新設できる分の税金が使われることを市民に周知した。

3.ごみ減量へのアプローチ

①市民行動宣言

宣言 1 食べ物は残さず食べます

宣言 2 買い物にはマイバックを使います

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宣言 3 雑紙もきちんと分別します

②まちかど講座

ごみ減量・分別をテーマに開催し、町内会、集合住宅自治会、市民グループが

参加

③子どもを対象にした取り組み

幼児には、ごみ減量について「環境戦隊サルビアン」を公演。

市内小学4年生(21 校)は、環境学習として「ごみとわたし」(ごみゼロ推進

課作成教材)で「ごみ資源のゆくえ」の学習と施設見学を実施

④ごみの分け方・出し方

市内全戸にガイドブックとごみステーションの収集日を記載したカレンダーを

配布

⑤Eメールで情報発信

ごみに関する相談窓口の設置

⑥無関心層への働きかけ

無関心な市民に気づいてもらうため、指定ごみ袋の大きさを 45 リットルから

35リットルに変更

⑦レジ袋有料化

市内、スーパーなどと協定を結びレジ袋の有料化を実施。マイバック利用を促

⑧乾燥生ごみ資源化促進事業報償金

処理機で出来た乾燥生ごみをごみにしないよう、野菜市を開催している市民団

体の協力を得て、乾燥生ごみ 1 キログラムを 100円分の新鮮野菜と交換する取り

組みを開始

4.ごみ減量のPR

①大手スーパーや駅前で宣伝

市長を先頭に職員、議員が街頭やスーパー等の店頭で「ごみ減量」のPR活動

を実施

②着ぐるみ宣伝

③アンケート実施

④商店街でも呼びかけ

商店街連盟の呼びかけで 235 店舗が登録し、店頭シール(ごみ減量推進店)を

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配布し啓発

⑤市民から市民へごみ減量を呼びかけ

「やればできる!ごみ減量 20パーセント推進市民活動支援プログラム」施行

5.ごみ処理の有料化は実施せず、減量目標を達成!

①20パーセントの減量目標を達成

市民の協力により、ごみ処理の有料化を実施することなく、平成 22 年度末に

は 21.4パーセントと目標を超える減量を実現。市民の環境意識のレベルの高さの

表れである。

②使える粗大ごみはリユース

ごみを減らすために、再利用の啓発を実施。処理施設に持ち込まれた使えそう

な家具類やおもちゃなど、修理や掃除をして毎月第 2日曜日に入札販売や即売を

する取り組みを行う。

6.支援制度の充実

①生ごみ処理機器購入補助制度

購入金額の 1/2を市が補助

バイオ式生ごみ処理機:補助限度額 30,000円

乾燥式生ごみ処理機:補助限度額 30,000円

減量容器:補助限度額 5,000円

②乾燥生ごみ交換制度

乾燥生ごみ 1キログラムで

・100円分の野菜

・トイレットペーパー と交換できる

・雑紙回収袋

清掃事業所では、乾燥生ごみ 1キログラムでごみ袋 10枚と交換できる

7.地域クリーン推進員制度

地域住民が主体となった地域環境美化体制の整備

①ごみ収集体制

ごみステーション方式(管理は町内会が主体)

②ごみステーション数

約 2,900カ所

③地域クリーン推進委員リーダーの設置

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53

一町内会に 1名

④地域クリーン推進員の設置

100世帯あたり 1名程度

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

安城市は、ごみの有料化をすることなく、可燃ごみの量を平成 17 年度の 5万 5,000

トンから平成 22 年までに 20パーセント削減する目標を立て実現し、さらに 30パー

セント削減へ取り組んでいる。

日光市も市民と力を合わせて、「汗をかいて汗をかいて汗をかいて汗をかいて」ごみ減量施策の推進に取り組んでい

くことが必要であると感じた視察だった。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

空き家対策について 【東京都葛飾区】

視察先担当課 住環境整備課 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

葛飾区は、平成 28 年 5 月 26 日に完全施行された「空家等対策の推進に関する特

別措置法」(以下、空家特措法という。)に基づき、平成 28 年 3月、全国初の行政代

執行を実施した。行政代執行の準備から実施までの詳細な内容を視察した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

1.行政代執行の概要

①空き家の状況

長期間適正に管理されることなく放置されているため、老朽化が進み倒壊の危

険性がある。敷地内にごみ等が散乱したまま放置されており、最近は不法投棄が

行われ廃棄物が増えている。

②これまでの経過

平成 27 年 5月 空き家の現場を確認

6月 立ち入り調査の実施を建物所有者に通知

7月 特定空家等に認定

9月 助言又は指導の実施

11月 勧告を実施

12月 命令に係る事前の通知を送付

平成 28 年 1月 命令を送付、命令標識を空き家外壁に設置

2月 戒告を実施。

3月 代執行令書の送付→行政代執行開始

→行政代執行完了

6月 建物所有者に納付命令書送付

8月 建物所有者に督促状の送付

10月 収税対策課と協議し、

行政代執行に要した費用の回収対応を引き継ぐ

空家特措法に基づく

もの

行政代執行法に基づ

くもの

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平成 29 年 2月 行政代執行に要した費用(185万円)の納入を確認

※特定空家等とは

1)そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態

2)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

3)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態

2.行政代執行の決め手

建築物の老朽化が進行し、倒壊の危険性が切迫していたこと、近くに公共交通

機機関や公園があるため、不特定多数の方々に危険が及ぶ可能性が高い立地条件

だったこと、建物所有者が土地所有者との交渉決裂を理由に解体に対して消極的

であったことから、行政の関与が必要と判断した。

3.所有者との調整・考え方

平成 18 年に近隣住民から改善要望があり、建物・土地所有者双方の意見を聞

き、区が中立の立場で話し合いの場を設定するなど解決を試みたが、一向に双方

の意見がまとまらず、解決に至らなかった。

①建物所有者との会話等について

空家特措法完全施行後から行政代執行実施まで→8回

行政代執行に要した費用の回収まで→7回

②行政代執行の実施について

建物所有者から、「建物が危険なことは認識しているが、解体する気力がない」

との回答があり、その後、空家特措法に基づき、助言又は指導、勧告、命令の措

置を講じても、改善に応じないため、行政代執行に至った。

4.行政代執行の事前準備

①議会対応について

各会派から選出された議員も所属する空家等対策協議会において各議員から合

意を得ていたため、反対する議員はいなかった。

※空家等対策協議会とは、空家特措法における特定空家等の「勧告」以降の協

議、報告を行う。

②マスコミ対策について

実施 2日前にプレスリリースし公表した。行政代執行法に基づく戒告実施時に

は市広報課と情報交換を行っていた。(13 社、43名が当日現地に来た)

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③警察への依頼

公務執行妨害に備え、行政代執行当日、警察官が従事した。所管の警察署へは、

告時から空家等対策協議会にて情報提供を行い、直前に打ち合わせも行った。

④周辺住民への周知

行政代執行命令書送付日にポスティングによる周知を実施した。

5.行政代執行の費用回収

建物解体にかかる費用、185万円は予算流用措置で対応した。(アスベスト分析、

除却工事)その後、平成 29 年 2月に行政代執行費用の回収を確認した。なお、建

物所有者は他にも動産を所有しており、所管課は解体費用の納入はできると判断

していた。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

全国初の行政代執行を実施した担当職員は、行政代執行後の課題として、「1年以

内の短期間に、確認から行政代執行まで行ったため、行政の所管課がかかりっきりに

なってしまった。余裕をもって空き家対策の全体を把握できなかった。」と話してい

た。

日光市には、空き家やホテルの廃屋など沢山ある。今後、空き家が増えていった場

合、市民の住環境を守るために何が必要か考えさせられる視察だった。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

児童相談所について 【神奈川県横須賀市】

視察先担当課 子ども育成部 児童相談所 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察視察視察視察要旨要旨要旨要旨

栃木県では、3カ所の児童相談所を設置しており、日光市はその一つである中央児

童相談所(宇都宮市野沢町)の管轄となっている。

横須賀市は、中核市へ移行後、国への要望等を経て「児童相談所」を設置し、子ど

もの虐待防止の取り組みを推進している。関係職員 72 名と一時保護所スタッフが、

子ども達とどう向き合い、どのように取り組んでいるのか、その現場を視察した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

1.児童相談所開設の経緯

①中核市への移行と権限付与の要望

平成 13 年 中核市へ移行

平成 15 年 総務大臣と中核市市長の懇談会で、児童相談所の設置権限拡大を要望

②虐待を受けている子どもの支援体制

平成 12 年 子ども虐待防止事業の取り組み開始

平成 14 年 子ども虐待予防相談センター設置

平成 16 年 改正児童福祉法成立=中核市で設置可能になる

市長が県知事に児童相談所開設協議依頼

平成 17 年 こども育成部設置、児相準備室設置(24名体制)

平成 18 年 横須賀市児童相談所開設 県から 3名派遣

(子ども虐待予防相談センター設置廃止)

平成 20 年 「はぐくみかん」開設 運営開始

(児童相談所・一時保護所が併設)

2.児童相談所設置のメリット

①一貫した支援体制

虐待の相談から公的保護、その後のフォローまでの過程をすべて市で自己完結

できる

②他部課との連携強化

母子保健部門や障害福祉部門との情報連携、行動連携が可能

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58

③効果的な支援の実現

子どもに関する専門機関として、関係機関との連携やネットワーク対応による

在宅支援が可能。

④その他の具体例

・新規ケースの初動調査における情報収集の迅速化

・来所相談サイクルの短縮

1回/3週間 ⇒ 1回/2週間程度

3.児童相談所設置の管轄区域

①管轄区域=横須賀市行政区域全域

②設置数=1カ所(参考:人口 40万 6千人 平成 27 年 1月現在)

※国の指針では、人口 50 万人に最低 1 カ所程度必要であり、地域の実情に合わ

せて設置することが適当とされている。

4.児童相談所の職員体制(合計 72名)

・所長

・副所長

・支援係1~3係(係長、児童福祉司、非常勤職員等)

・相談係(係長、児童相談員)

・心理・家族支援係(係長、児童心理司、非常勤職員等)

・総務係(係長、一般事務、非常勤職員等)

・一時保護所(係長、児童指導員、非常勤職員等)

5.児童相談所の移転と機能強化

平成 18 年 4月 開所

平成 20 年 4月 移転 一時保護所を併設した「はぐくみかん」を開所

①児童相談所・一時保護所の主な施設

・児童相談所

心理室、箱庭療法室、家族療法室、遊戯療法室、観察室

※児童相談所とは、児童虐待、非行、里親など18歳未満の児童を対象に、児童

及びその家庭、保護者等の相談等に応じる施設

・一時保護所

児童居室、緊急入所対応室、プレイルーム、静養室、親子訓練室 収容定員 25

人 職員 29 人(内非常勤 10名)と臨時職員 40名(主に大学生)

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59

※一時保護所とは、児童相談所に付設し、親の虐待や放任、家出などの保護が

必要な児童を緊急に家庭から一時的に保護する施設

(原則の保護期間は2か月以内)

6.設置経費と運営費

①はぐくみかん整備費(平成 18・19 年度 2カ年事業)

建設事業費:約 25億円(委託料 8,610万円、工事請負費 24億 9,100万円)

②児童相談所運営費

・歳入:5億 5,000万円(国・県補助金)

・歳出:約 14億 9,000万円(社会福祉総務費、児童措置費、児童相談費)

7.相談件数

平成 29 年度の相談件数

種別 新規受理 再開受理 計 前年比較

養 護 431

(415)

215

(196)

646

(611)

△29

(△24)

保 健 0 0 0 △1

障 害 127 356 483 △44

非 行 7 5 12 △20

育 成 33 21 54 △2

その他 2 1 3 1

合 計 600 598 1,198 △95

(△24)

※( )は虐待に分類された件数

虐待に分類された件数と内訳

内 容 平成 29 年度 平成 28 年度 増 減

身体的虐待 119(19.5%) 113(17.8%) 6

ネグレスト 165(27.0%) 203(32.0%) △38

心理的虐待 323(52.8%) 319(50.2%) 4

性的虐待 4(0.7%) 0(0.0%) 4

合 計 611(100%) 635(100%) △24

※出典:横須賀市児童相談所資料より

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60

8.今後の役割と課題

①役割

1)虐待の予防・早期発見のために

・適切な調査と迅速な実態把握

・専門的な知識・技術のさらなる向上

2)子どもの福祉のために

・医学的、心理学的な判定に基づく適切な支援

・児童相談所一丸となった取り組みの強化

・関係機関との連携強化

※キーワードは、「子どもの健やかな成長と自立」である

②課題

1)児童相談所職員のスキルアップ

2)一時保護所担当職員のスキルアップ

3)児童福祉司等の資格職員の確保と配置

4)措置児童の受け皿としての基盤整備

ⅢⅢⅢⅢ 視察の所見視察の所見視察の所見視察の所見

児童相談所の一時保護所は、親との関係が築けずに、非行や親の放任・虐待を受け

てしまう子どもを守る施設である。

近年、身体的虐待や心理的虐待が増加している。横須賀市では平成 28 年 12月に児

童相談所で、児童の母親が「子どもを返せ」と警備員を刺す事件が発生したとの説明

があった。職員が子ども達と正面から向き合い、保護される子供たちをいかに守り抜

くか、どう自立させるか、まさにその現場を視察することができた。

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61

◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

エンディングプラン・サポート事業 【神奈川県横須賀市】

視察先担当課 福祉部生活福祉課

自立支援担当 添付資料 有 ・ 無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

1.エンディングプラン・サポート事業

①動機

横須賀市の高齢化率は 30%で、約 12万人強の高齢者のうち、2015 年には一人

暮らしの高齢者がついに 1万人を超えた。

引き取り手のない遺骨は、全国的に 10 年で倍増し、横須賀市では 1%が無縁仏

である。

そのほとんどが住民登録のある一般市民で、なおかつ、看取られている人となっ

ている。

横須賀市では、引き取り手のない遺体は、市の費用(葬祭扶助費 20万 6,000円)

で火葬し、職員が集団無縁納骨堂に安置している。

しかし、その納骨堂が一杯になると、職員が骨と壺とを分けて、壺は産業廃棄

物として廃棄し、骨は合葬墓にまとめている。

生前の意思を聞いていないため、故人が残したお金を生かすことはできず、遺

志を生かすことができないために、何とかできないかとの思いがサポート事業を

始めた動機である。

②対象者

(1)ひとり暮らしである

(2)頼れる身寄りがない

(3)月収 18万円以下・預貯金等が 225万円以下程度

(4)本人所有の不動産がないか、

固定資産評価額の合計が 500万円以下程度の不動産

③事業概要

市は、まず窓口で相談を受け付け、葬儀や納骨・死亡届人、リビングウィル(延

命治療意思)の希望を確認し、支援プランを作成。

その際、利用者は登録された事業協力葬祭事業者から 1 社を選択し、最低費用

全 項 目 を 満 た す

高齢者等の市民が

対象

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62

で予納し、生前契約を結ぶ。(※最低費用 生活保護基準と最低納骨費=25万円)

また、契約葬儀社名やリビングウィルが一目で分かるよう記載された登録カー

ドを発行。

市の担当課と葬儀社に速やかに連絡できる仕組みとなっている。

④リスクの比較

(1)エンディングプラン・サポート事業(以下、「ES 事業」という)を実施し、

本人が予納した場合

ES 事業では、当事者が協力葬儀社に 25万円を予納して、生前契約するため、

当然、葬儀社倒産リスクがある。

葬儀社が倒産し、火葬するものがいないときは、墓地埋葬法で自治体が火葬

義務(25 万円程度)を負うことになるが、倒産しても喪失予納額が 25 万円な

ら自治体が火葬でき、事業を実施した自治体は、葬儀社の倒産リスクだけを負

うことになる。

(2)ES 事業を実施せず、本人予納もない場合

近い将来、毎年、自治体内の死亡者の 10%の火葬に要する費用のすべてを自

治体が負う可能性がある。

2.わたしの終活登録事業

①動機

現在、たとえ二人暮らしでも、妻が認知症で元気な夫が倒れたら、緊急連絡先

~イメージ図~

Page 66: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

63

が分からなくなる。近所の人が子どもの名前を知っていても、電話番号が分から

ない時代になっている。

元気なうちに終活情報を市に登録し、「倒れて入院」「徘徊して保護」などの緊

急時に生かせる事業として「わたしの終活登録事業」を全国に先駆け、H30 年度

から開始。

②事業概要

(1)登録できる項目(自由に選択、追加・変更・削除も可能)

ⅰ.本人が倒れて、身体・生命・財産の保護が必要な時、本人を保護する立場

の人が分かる情報

ⅱ.本人の没後、葬儀を行う人が分かる情報

ⅲ.第三者が墓参りをしたい時のための墓の所在地など

※具体例

・本籍・筆頭者

・緊急連絡先

・支援事業所・終活サークルなど

・医師、薬、アレルギー

・リビングウィルの保管場所

(延命治療の意思)

・エンディングノートの保管場所

・臓器提供に関する意思表示

・葬儀・納骨・遺品整理の生前契約、献体の生前登録

・遺言書の保管場所

・お墓の所在地

・その他、自由登録事項(自分で書いておきたいこと)

(2)緊急の時(例:倒れて入院、徘徊して保護など)

ⅰ.病院・警察・消防・福祉事務所・指定者などからの問い合わせに対し、

市が緊急連絡先を回答する。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

H27 年度に開始した ES 事業は、現在 35 人が登録しプラン実施は 6名、相談件数

は 378 人。H30 年 4月開始の「わたしの終活登録事業」は、登録 50件、相談件数は

※希望者なら年齢制限なく誰でも登録可

自分の意志で項目を選ぶ

主体は個人主体は個人主体は個人主体は個人

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64

222 人となっている。

登録件数は、まだまだ少ないが市民の関心は高く、事業発表の日には、市生活福祉

課の電話が鳴り続けたとのこと。

今後の課題としては、やはり両事業の周知と定着。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

独居の高齢者は、2025 年は 700万人を超え、2035 年には高齢者世帯の 4 分の 1 の

762万人になる予測のなかで、どの自治体においても高齢者対策は喫緊の課題である。

横須賀市の「ES 事業」は、「何も新しいことをやる訳ではない。生前に本人の希望

を聞くだけ」との担当課長の話があった。現在の取り扱い件数は少ないが、本人の意

思を聞いておくことで、本人の遺志に沿うことができ、死後の尊厳も守られるとても

濃厚な事業であると思う。

自宅で孤独死し、身元がわかっていても引き取り手がなく「無縁仏」として扱われ

るケースが増えているとのこと。今後も独居高齢者の増加で、「連絡先が分からない」

「親族が遺骨を引き取らない」などのケース増加が想定される。横須賀市の先進的な

取り組みは、各地に波及するものと思う。

「わたしの終活登録事業」は、本人が元気なうちに終活関連の情報を市に登録し、万

一の場合に役立たせる制度である。超高齢化社会を迎え、「終活」もブームになってい

るが、その本人の意思が周囲に伝わり、その思いを生かすことができなくては意味が

薄れてしまう。全国に先駆けて市の登録制度を作り上げた横須賀市長は「どなたの目

にも触れられないまま終わる方も、これから当然多くなる。尊厳を考え、少しでもお

手伝いをしてあげられればと思う」と記者会見で述べている。今、生きている市民の

生活向上を示すことは当然であるが、亡くなった後の尊厳を守るための「お手伝い」

を進める体制は学ぶべきである。

また、昔は家族・親族に連絡すれば、支援してもらえたが、今は全国平均で 3.3%

の人は、もはや家族・親族には頼れなくなっている。

そこで、親族に代わるものとして、地域コミュニティ(知人・友人・後見人・支援

団体など)の連絡先も登録することができ、「わたしの終活登録」で地域コミュニティ

が強化されていくと強調していた。事業費は 7万円。しかも、情報の漏えいを予防す

るために、パソコン入力ではなく、市民から預かった書類を保管するという方法をと

っていた。

Page 68: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

65

「終活情報をきちんと伝えることが死後の尊厳を守ることにつながる」とは、この

事業を立ち上げた担当課長の言葉である。「死んだ後の尊厳」を守るために金をかけ

ずに、まさに知恵を出して、市民に寄り添った事業である。

当市においても、「やる気」になれば足を踏み出せる制度であると確信する。

Page 69: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

66

平成31年(2019年)1月15日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第3班

班 長 福 田 道 夫

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第3班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成30年10月19日(金)午前10時00分~

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)中小企業支援川崎モデルについて

視察先:神奈川県川崎市

視察事項:中小企業支援川崎モデルについて

4.出 席 者 班員2名

産業環境部商工課

(商業振興係・企業立地室・しごとづくり推進室)職員

Page 70: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

67

5.結 果

1)意見概要

《商工課》

・川崎市は小さなエリアに産業が集約していることもあり、特許の活用であ

ったり、企業訪問がしやすかったのではないか。川崎モデルを日光市でと

なると、産業の形態や観光産業が栄えているなどもありなかなか難しいと

思う。

・中小企業に寄り添うことや市から情報を積極的に提供することは必要で

ある。やり方の違いはあっても、日光市でも取り組んでいる。

・業種としてどういったものが多いのか。あまり違う業種が集まっても難

しいのではないか。

・「キャラバン隊」という形ではないが、日光でも市内金融機関を訪問し融

資制度等の周知を行うなどしている。

・知的財産コーディネータが3人配置されているが、専属でいるのか。

・工業連絡協議会に属していない企業に、昨年は訪問を行った。その際感じ

たことは、企業は国・県の補助制度などに対してアンテナが高かったかと

思う。

・日光市の産業(製造業)関係のブランドが少ない理由は完成品というより

は部品を製造している企業が多いからではないか。

《委員》

・企業訪問を積極的に行い、「とことん寄り添う」やり方をしている。

・担当課長が信用金庫を辞めて市職員となった方で、その人脈を利用し

「金融機関」「市職員」「コーディネータ(専門家)」と一緒に企業訪問

を行っている。

・人口規模・産業形態の大きさの違いもあり、なかなか比較でないと思う

が、市職員の熱意が感じられる企業訪問に感じられた。

・中小企業の社長と話し、「自慢話」が出た時には「チャンス」としてとら

え「ものづくり認定制度」へ繋げている。

・限られた人数で、全企業訪問するのはもちろん難しいと思うが、中小企業

に限らず、「現場主義」というのは福祉なども含め全ての分野にあてはま

るのではないか。

・市職員のアンテナが高く、熱意ある学習会等を行っているところは感動し

た。

Page 71: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

68

・3人配置されているが、その中には大手企業(富士通)を辞めた方もいて、

企業との「つなぎ役」となっている。

2)感想・所見

・自治体の規模や中小企業の業種も様々だが、社長から本音を引き出して、

支援の情報や仕組みを丁寧に説明することは大切である。

・中小企業は、資金繰りや働き手、後継者問題も深刻である。そうした問題

を地域のネットワーク生かして解決するために頑張ってほしい。

・川崎市の取組みが少しでも日光市でも生かされるように期待したい。

Page 72: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

69

平成31年(2019年)3月8日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第3班

班 長 福 田 道 夫

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第3班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成31年1月16日(水)午前10時00分~

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)エンディングプラン・サポート事業について

○エンディングプラン・サポート事業について

○わたしの終活登録事業について

視察先:神奈川県横須賀市

視察事項:エンディングプラン・サポート事業について

4.出 席 者 班員2名

健康福祉部社会福祉課(生活保護係)担当職員

健康福祉部高齢福祉課(地域包括支援センター)担当職員

健康福祉部健康課(健康推進係・保健指導班)担当職員

Page 73: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

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5.結 果

1)意見概要

《担当課の意見》

・身寄りのない高齢者は、ある程度身体機能が落ちる前に包括支援センター

に相談があり、どういう方向で対応していくか、亡くなった場合はどうす

るのかも見据えている。レアなケースで遺骨をどうするのかということは

あるが、横須賀市のような状況ではない。

・一人暮らしで、どうにもならないケースは見当たらない。潜在的なニー

ズはあるかもしれないが、表立って出てきていないのかと思う。

・日光市だと、繋がりのある方がまだまだいると思う。こういったケース

は生活保護の方で何名かいる。身寄りがいても引き取りを拒否するなどが

多いので、市が埋火葬を行っている。件数としては、急増していないが増

加傾向にあり、生活保護以外の日光市に来て亡くなるなど無縁の方を含め

ると、毎年10体程度身寄りのないご遺体ということで処理をしている。

・現在も身寄りのない方については、市内の業者に協力いただいて少ない予

算で葬儀をやっていただいているという状況である。

・件数が10件程度なので、少ない中で事業を始めるというより、業者に何

か働きかけてシステムを作ってもらい、利用につなげるというのはどうか

と思った。

・日光市でも、納骨堂に安置して入りきれなくなったらお墓に職員が入れる

ということを毎年秋に行っている。身元が分かっているが、お金の問題、

生前の関係等で引き取ってもらえない方が多い。身内が全くいないという

方はあまりいない。

・市では、避難行動要支援者登録事業を行っているが、それを補足する事業

にあたるのかと思う。認知症の方などは、この登録事業の対象となる可能

性があるが、元気な夫が倒れたらなどについて利用できれば、万全な体制

になるかと思う。

・終活登録事業の登録した内容の更新はどのようにされるのか。随時いろい

ろなことが変わっていくかと思う。認知機能も含め、その辺りはどんな管

理の仕方なのか。

・始めるのは簡単そうだが、年数が経過すると膨大なデータ量の管理が予想

される。紙ベースで10年も20年も管理し、内容も変更・更新していく

となると難しくなるのではないか。保管期間はどの程度か。

・情報の発信というか、生きた情報として有効にするというのは相当な時間

がかかるのではないか。

Page 74: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

71

・管理する側としては、一定のルールをもとに「更新」していかないと、正

しい情報にならないのではないか。沢山の情報があるので、どんなに年数

が経過しても有効な情報はあると思うが、情報があまりに古く状況が変わ

っているということもあるのではないか。

・少ない予算で動き出すことはできるかと思うが、他の事業とあわせて行う

などがいいかと思う。まったく新しい事業として行うと、費用対効果を考

えることになる。

・お骨もそうだが、遺留金品を処分しなければならない。処分するためには

行政の方の手続きが費用もかかるということで、そういったことの解消に

もなるかと思う。

《委員》

・身寄りがなく、葬儀や納骨をどうするかというケースはないのか。

・これからますます、親戚関係、近所の関係が希薄になってくる社会情勢の

中で、ここに行政が手を入れるという全国的にも注目されている事業であ

る。

・避難行動要支援者と一部重複するが、もっと広く、誰でも登録したい方は

どうぞとなっている。特徴的なのが、パソコンで入力すると情報漏えいが

懸念されるので、紙媒体で登録してもらい、市はあくまで記入してもらっ

たものを金庫に保管しておくだけである。

・連絡先がかわる場合もあるし、かかりつけの病院・医師、エンディングノ

ートの保管場所も変わる場合もある。自由に申し出て登録内容を変更する

ことができる。

・保管期間は死後33年とされている。お墓が知りたいなどあるため保管し

ておくとのこと。必要に応じて延長しますとのことだった。

・認知症や意識障害で本人が情報を伝えられなかったとき、警察、消防、医

療機関などが市に問い合わせれば情報提供し、お墓の所在地まで開示する

などこれは非常に役立つ事業である。是非日光市でできればと思う。

・エンディングプラン・サポート事業では、登録カードが大小あり、小さい

ものは登録者が身に着けておき、大きいものは玄関先に貼るなどする。

お墓や葬儀の情報に関しては、自分で持っているもしくは貼っておくこと

で、ご家族に知ってもらう。緊急連絡先が分からない人が倒れたり亡くな

ったりした場合には、市に連絡が入る。その人が登録されていたら開示さ

れ、有効活用できると思う。

・個人にとってもすごく有効な手段だと思う。市側としても、警察や病院か

Page 75: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

72

ら問い合わせがあったらすぐに引き出せるものもあると思う。

・終活登録制度で、臓器提供にかかわる意思表示の項目もあり、献体が増え

たとのこと。同じくエンディングプラン・サポート事業でも、大学病院へ

の献体件数が増えたとのことだった。身寄りのない独居者の献体支援への

協定が横須賀市と神奈川医科歯科大学で結ばれたなどそのような効果・影

響も出てきている。

・エンディングノートを書いておいてもそれがどの場所にあるか分からなく

なってしまったら、書いた意味がなくなってしまう。終活登録を行ってき

た本人の遺志を生かすことが終活登録事業のひとつでもある。

・亡くなった後の尊厳を大事にしている市だと感じた。葬儀業者の方も協力

してくれている。エンディングプラン・サポート事業では、市の持ち出し

は2万円程度で、後は印刷等も葬儀業者で行うなどいろいろなかたちで協

力体制ができている中での事業である。

・終活というが、そこに行政が絡んでいないというのが現状ではないか。

絡んでくれば、尊厳ある死を迎えられる。生きているときの市民福祉も大

事だが、その後まで考えてというのは目のつけどころがいい。

2)感想・所見

・エンディングプラン・サポート事業について、日光市では該当者が少ない

とのことだったが、民間の葬儀業者に身寄りのない方の火葬をどのくらい

しているのか調査する必要があると思った。

・わたしの終活登録事業については、最新の内容にするための登録内容の更

新方法、紙で管理する場合の管理方法などの課題があることが分かった。

・親戚や近所との関係が希薄になりつつある今、高齢者が一人で亡くなると

き、故人の遺志を少しでも尊重できる事業が必要と感じた。

Page 76: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

73

行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会行政調査特別委員会 行政行政行政行政視察視察視察視察結果結果結果結果報告書報告書報告書報告書

平成30年10月10日

報 告 者 第4班

参 加 者

青田 兆史(班長) 大島 浩(副班長) 斎藤 久幸

川村 寿利

◆◆◆◆視察視察視察視察項目項目項目項目

実施年月日 平成30年7月18日(水) ~ 7月20日(金)

視 察 目 的

1 長期滞在(ちょっと暮らし)北海道1位のまち

釧路について 北海道釧路市

2 生活保護自立支援プログラムについて

3 市民活動プラザ六中について 北海道帯広市

視 察 先

概 要

北海道

釧路市

*人 口:173,893人 *面 積:1,362.90K㎡

*特 徴:北は釧路湿原と阿寒摩周の2つの国立公園、南は

太平洋に囲まれ、雄大な自然に恵まれている。東北海道で最

多の人口を有し、市域は飛び地になっている。国の「観光立国

ショーケース」や「国立公園満喫プロジェクト」に選定され、

道東観光の拠点都市としてチャンスを成長に結びつけられる

よう努力している。

北海道

帯広市

*人 口:167,515人 *面 積:619.34K㎡

*特 徴:豊かな自然に囲まれた十勝平野の中心部に位置し、

日本を代表する大規模機械化畑作・酪農地帯で広大な田園風

景が広がる一方、都市部には大型商業施設や病院、公共施設

など都市機能が集まっている。市として「環境モデル都市」、

「バイオマス産業都市」の認定を受け、農業・環境・エネルギ

ーに関する取り組みを一体的に進めている。

Page 77: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

74

◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

長期滞在(ちょっと暮らし)北海道 1 位のまち釧路について 【釧路市】

視察先担当課 総合政策部 市民協働推進課 添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察視察視察視察要旨要旨要旨要旨

国立公園の釧路湿原や阿寒摩周、特別天然記念物のタンチョウ、阿寒湖のマリモな

ど雄大な自然を活かした国立公園満喫プロジェクトを展開している釧路市だが、北海

道体験移住「ちょっと暮らし」の実績として、利用者数、延べ滞在日数ともに、7年

連続道内1位を獲得している。潮の流れの影響で、7月~9月の平均気温が21.1℃

と夏でもとても涼しい気候にあり、冬も雪の降る日が少ない。

それだけでも非常に住みやすいまちといえるが、スギやヒノキが生育していないの

で、冬場の花粉ゼロのまちとしてのPRにも取り組んだ結果、人気を集めている。今

までの観光の概念である、名所、旧跡、自然の美しさ、おいしいグルメなどとは違い、

涼しさや花粉がゼロということを観光の目玉にしていることにはちょっとした驚き

があった。

今回のちょっと暮らしにおいては「涼しいくしろで避暑生活」というスローガンの

もと、ホテル、マンスリーマンション、ゲストハウスなどを滞在施設としている。こ

れらの施設には、ルールとして生活に必要なテレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ等

を常備することを決めている。

また、行政と民間が連携していて、宿泊等は民間、案内窓口やラッピングバスなど

の周知は、行政が丁寧に対応している。

◎移住・長期滞在の取り組み

【きっかけ】

① 減少し続ける人口

昭和55年の227,234人をピークに減少している。

② 問い合わせの増加「天気予報の釧路の気温は間違ってないか」

釧路の「涼しさ」は売りになるのではないか?

③ 発想の転換

・寒い⇒涼しい

・何もない⇒手つかずの自然

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75

・田舎⇒地方でありながら都市機能は十分ある

【主な取り組み】

① 大都市圏でのPR(北海道暮らしフェア、ラッピングバスなど)

② くしろ長期滞在研究会を設立

・地域体験プログラム(魚網タオル作成講座、地元の牛乳でアイスクリーム作り、

魚のさばき方講座など)

・連携事業(早朝タンチョウ飛来見学、花粉ゼロツアー、避暑ツアーなど)

③ 四季を通じてキャッチフレーズを設けている

(霧の街くしろの春。とにかく涼しい夏。まっかな秋。花粉ゼロの冬。)

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

【成果】

・滞在者数、延べ滞在日数

移住・長期滞在事業を開始した平成20年度は、17組31人、513日で

あったが、平成29年度においては、907組1,419人、21,303日

と年々増加している。

・北海道体験移住「ちょっと暮らし」実績

釧路市の平成28年度の利用者数、延べ滞在日数は、1,311人、22,1

05日となっている。2位の190人、5,333日と比べても大きな成果を

上げており、7年連続道内1位を獲得している。

・滞在者の年齢構成

60代~70代の方が全体の89%を占めている。

・滞在日数

人気のある滞在日数は、7~13日(53%)、4~6日(30%)である。

・滞在施設

ホテル利用者が85%を占めている。

【課題】

・6月~9月の夏に偏った滞在傾向である。

・滞在施設の不足。

・事業としてもう少し儲かる仕組みにしなければならない。

・行政(情報収集、事務局機能)と民間(PR、物件、旅行商品の提供)の役割分担

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の明確化。この連携なくては事業として成り立たせるのは難しい。

アンケートより:

・キッチン付のホテルの充実を望む。

・駅周辺の活気が不足している。

・自分の家とのギャップ。(やはり退屈してしまう。)

・飲食店、レストランが少ないので食事に困る。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

今年は日本各地において猛暑が社会現象になっており、釧路に視察に行けたことは

この上ないインパクトがあった。東京を出発した際には38度の猛烈な気温だったが、

釧路空港に降りてバスに乗り込んだ時は、自然のなせる業だが20度しかなかった。

釧路と日光を比べた時に、この“ちょっと暮らし”は日光にとって何らかのヒント

になることは感じ取ることができたし、日光市で実施しているSUKIDESU日光

移住促進ツアー事業の展開を考えると、日光のほうが首都圏との距離、交通網の利便

性においては断然条件がいいと思う。

また、2020年の東京オリンピックに向けて観光誘客を進めるに当たり、非常に

有意義な視察となった。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

生活保護自立支援プログラムについて 【釧路市】

視察先担当課 福祉部生活福祉事務所 添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

釧路市で行なっている自立支援プログラムは、これまでの経済的な自立を目的とし

た就労支援だけでなく、受給者個々の状況に応じたきめ細やかなものになっている。

生活保護受給者は様々な問題を抱えており、日常生活上の課題の解消や社会との繋が

りを回復し地域社会の一員として生活していくための支援などが必要になっている

ためである。

そこで、このプログラムを日光市にも取り入れることで、一人でも多くの生活保護

受給者を自立させるべきと思い、先進事例として視察した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

釧路市の自立支援プログラムは、「就労支援プログラム」「就業体験的ボランティア

プログラム」「就業体験プログラム」「日常生活意欲向上支援プログラム」「その他のプ

ログラム」の5つに分かれている。

このプログラムに参加した方からは、「これまで自分でハローワークに通っても仕

事が見つからなかったけど、このプログラムに参加して職業が見つかった。」「年齢が

高くて、仕事は見つかるはずがないと思っていたが、就労支援で仕事に就くことがで

きた。」との感想が寄せられており、平成29年度に自立支援プログラムに参加した

人数は1,293人で、そのうち522名が就労に結び付き、84名が生活保護から

脱却した。

今後の課題としては、高齢化の進行、なかなか改善しない雇用状況、税収の減少を

いかに改善するか、とのことであった。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

生活保護受給者が、日夜仕事をしている人より良い生活をしているとの声を耳にす

るが、釧路市の自立支援プログラムを視察し、そのような声を解消するためにも、日

光市においても、受給者個々の状況に応じたプログラムを策定し、実行に移すべきと

考える。

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特に、釧路市同様、母子家庭・父子家庭の方々からの生活保護申請もあると思われ

るので、一日も早い自立を促すためにも、日光市独自の自立支援プログラムを策定し、

一人でも多くの生活保護受給者の自立を促せるような体制を構築すべきである。その

ことが生活保護受給者の意識改革につながるものと考える。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

市民活動プラザ六中について 【帯広市】

視察先担当課 保健福祉部障害福祉課

市民活動プラザ六中ソフト推進室 添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

【経緯】【経緯】【経緯】【経緯】

帯広市では、少子高齢化の影響で特に生徒数が減少している、帯広市東地区の第

六中学校が閉校となり、直線距離で700m にある第三中学校に統合された。

統廃合が決まった平成21年から庁内で、プロジェクト会議やワーキング会議とし

て庁内横断的な会議を2年間にわたり行った結果、福祉的な活用を中心とする複合的

な施設として用途転換することが決定された。

平成22年7月~8月に地域説明会を3回開催し、同年10月に予算が議決され

平成23年度に解体・改修工事を行い、平成24年4月「市民活動プラザ六中」の

名称で複合型福祉施設として供用開始した。

また、廃校跡地の利用についてはグランドの一部を民間に売却し、分譲住宅地と

していた。

【【【【概要】】】】

障害があっても、年齢を重ねても、住み慣れた地域で生きがいや役割を持ちなが

ら、豊かに暮らせる地域社会を目指し、障害のある人、高齢者、地域住民、福祉事

業者、ボランティアグループ、行政等が一つ屋根の下で様々な活動が行える、新し

いかたちの福祉空間施設である。

【具体的な活動】【具体的な活動】【具体的な活動】【具体的な活動】

・地域のニーズに応える仕組みをつくる(65歳以上の世帯に訪問調査)

軽運動や健康維持・増進と木工・手芸・畑等の整備ができるスペースづくり

・地域の困りごとを障がい者の就労支援事業でカバーしていく

市の指定ごみ袋の製造等

・多くの人が通う仕掛けをする

喫茶・食堂、割り箸・ペットボトル等の回収、畑仕事、花壇管理、移動販売車等

・障がい者事業所を多く入れない(単なる障がい者福祉施設にしないため)

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【【【【施設の管理運営とソフト事業施設の管理運営とソフト事業施設の管理運営とソフト事業施設の管理運営とソフト事業】】】】

・施設の管理運営についてはコンソーシアムを設置し、入居団体による連絡協議会

の設置や館の管理業務、そして運営経費の管理等を行い、運営経費の一部300

万円を市が助成している。

・ソフト事業としてはソフト事業推進室を設置し、事業の企画運営や地域の支え合

い体制づくり、共生型社会形成と地域コミュニティの向上、障がい者理解促進・

啓発活動等によるノーマライゼーション促進等の事業を行い、事業補助費とし

て市は500万円を補助している。また、避難所としての機能や災害対応備蓄品

の保管庫を備えている。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の評価と課題事業の評価と課題事業の評価と課題事業の評価と課題

(1)(1)(1)(1)事業者事業者事業者事業者側側側側

・事業所と地域の距離が近づいた

・仕事や環境が安定した

・利用者が明るくなった

・色々な人とかかわりが持てるようになった

・困っている人を助ける側になれた

・地域の人が優しくなった

(2)地域住民側(2)地域住民側(2)地域住民側(2)地域住民側

・出かける場所、居場所ができた

・困りごとを相談し頼める事ができた

・活動や活躍ができる場所ができた

・気軽にボランティア活動に参加できる

・買い物や食事ができる場所ができた

(3)(3)(3)(3)行政行政行政行政側側側側

・市民の財産を有効活用できた

・地域コミュニティを推進できた

・住民が主体的に福祉活動に参加するようになった

・ノーマライゼーションを自然なかたちで推進できた

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・障害のある人への理解や関心が高まった

・先進事例として多くの人が帯広市を訪れてくれる

このように良い点が多く、現状で大きな課題はないようであった。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

この「市民活動プラザ六中」の利用者数は、平成24年度の開設時は4万800人、

平成26年度から平成28年度までが毎年約6万1,000人、そして平成29年度

は若干下がり5万9,000人となったが、6万人前後で推移している。

このように大勢の市民に利用されている理由は、開設に当たって十分な庁内各種検

討会議の実施や丁寧な地域説明会の開催、高齢者世帯への訪問調査などを実施し、エ

レベーターや多目的トイレの設置などでバリアフリー化を行ったからであり、地域ニ

ーズに応えた施設であると同時に、多くの自治体で問題になっている廃校跡地利用を

成功させた事例である。

日光市における小中学校の適正配置については、平成28年度からの10年間を目

安として現在、各種協議・検討を進めているところであり、日光市に相応しい廃校跡

地利用の方向性について十分な検討が必要であるが、「市民活動プラザ六中」のプロ

セスが参考になるのでは、と感じた。

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平成31年(2019年)1月10日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第4班

班 長 青 田 兆 史

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第4班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成30年10月3日(水)午後1時30~

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)移住・長期滞在事業について

視察先:北海道釧路市

視察事項:長期滞在(ちょっと暮らし)北海道1位のまち

釧路について

4.出 席 者 班員4名

地方創生推進課(地方創生推進係)職員

観光交流課(観光交流推進係)職員

観光振興課(誘客推進係)職員

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5.結 果

1)意見概要

《地方創生推進課》

・避暑地の気温という点で言うと、釧路と奥日光は同じくらいである。

長期滞在を目指すとなっているが、釧路は東京から遠いので、しばらく居

てもらったほうがよいイメージだが、日光は東京から約1時間30分で来

られるので、週末に来てもらうとかリピーターも狙えると思う。

移住のセミナーを行ったところ、奥日光の自然が好きで、日光に移住し

たいという方が非常多い。日光の場合は、リピーターをふやして、それか

ら長期滞在でもよいと思った。

・この事業自体が採算に至っていない。移住にはハードル高く、なかなかつ

ながっていない印象がある。日光市と釧路市は、似ているところも多いが、

違うところもあり、導入するに当たっては、そのまま真似するわけにはい

かない。

《観光交流課》

・奥日光は、るるぶトラベルの避暑地5年連続1位を獲得している。7月~

8月の平均気温が低いために選定されており、その点は釧路と似ている。

何度か日光に観光で来てもらい、日光の魅力を感じてもらった上で、そ

の先に長期滞在事業の施策を実施していくことが有効であると思う。

・日光は、安近短のイメージがあり、気軽に旅行に来るという意見がある。

首都圏から来る方は、長期滞在というより、1泊2日など観光として来

ている現状にある。

お金を落としてもらうためには、長期滞在で宿泊を1泊2日から2泊3

日にしていく必要がある。

釧路は、ビジネスホテル・ウイークリーマンションが何件かあるが、鬼

怒川や日光はそういう施設があまりない。

温泉宿やホテルが多い中で、日光市も売りにするならば夏の涼しさにな

ると思うが、夏休みは温泉だとファミリー層が多くホテル等の稼働率10

0%になっているところがあるので、仕組みづくりが難しい。

《観光振興課》

・観光を原点に、延長線上に長期滞在その先に移住があると思う。7年連続

道内1位となっているが、北海道全体で移住・長期滞在の取り組みを行っ

ているのか知りたい。

・長期滞在のターゲットを国内またはインバウンド向けなのか、どのように

捉えているのか非常に気になった。また、資料に書かれているラッピング

Page 87: ≪日光市議会 行政調査特別委員会≫行政 ... · 2)上山集落みんなのモビリティプロジェクトについて 山間地域の地域おこしについて

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バスを行政が丁寧に対応しているとなっているが、どこに対して働きかけ

ているのか気になった。花粉ゼロで誘客をするというインパクトがあるが、

花粉ゼロのツアーは何を行うツアーなのか教えてほしい。

《委員》

・釧路は長期滞在からハードルはあるが、移住をしてもらう取り組みを行っ

ている。日光はモデル住宅に住んでもらい移住をしてもらう仕組みだと思

う。

釧路の市街地は奥日光と比べると利便性がよい。しかし、日光は東京か

らのアクセスのアドバンテージは釧路よりもある。そのため、日帰り客を

つくりやすいという反面もある。

日光市に移住・定住してもらうには、近さがハードルにもなっている。

釧路の滞在者の年代は60代~70代が多く、仕事をリタイアして時間

的・金銭的に余裕のある方が来ているという特徴がある。

国内向けか、インバウンド向けかは聞けなかった。

ラッピングバスは大都市圏のPRのため北海道フェアなどで走らせて

いる。

・春先に花粉が出ると思うが、北海道は花粉がないため、それに先駆けて冬

にアピールするツアーを行っている。

・移住・長期滞在の取り組みは、道内93市町村で行っている。函館市では、

移住者を応援するための移住サポーターを設置し、観光客に対して相談・

紹介をしている。

釧路市は、くしろ長期滞在ビジネス研究会を設立し、長期滞在者や移住

者のために市が事務局となり、市内のホテル・不動産会社・タクシー・観

光団体と連携し、平成21年6月から取り組んでいる。それと長期滞在し

ている間に小遣い稼ぎをするため、様々な業種・年齢の方が事務所の代わ

りに活用できるコワーギングスペースを提供して、働きながら滞在するこ

とも行っていた。

・中禅寺は、泊まるところがないのがネックだという話を聞く。中禅寺は、

空き家も多いと思うので、空き家を利用するなどの観光行政のPRを民間

と連携しながらを行わなければならないと思う。

2)感想・所見

〇当市は魅力度ランキング(市町村)11位、るるぶトラベルの避暑地5年

連続1位と人気や魅力が多くある。特に7~8月の奥日光は、大変涼しく、

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過ごしやすさを売りに旅館・ホテル等に協力を求め、長期滞在ができるよ

うに進めてはどうかと思った。

〇観光を原点にその延長線上に長期滞在があるとの意見があり、2020年

東京オリンピック・パラリンピックに向けて、海外からの観光客も多く訪

れることが予想されることから、世界的に魅力を発信できるチャンスだと

思った。

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行政調査特別委員会行政行政調査特別委員会行政行政調査特別委員会行政行政調査特別委員会行政視察視察視察視察結果結果結果結果報告書報告書報告書報告書

平成31年2月20日

報 告 者 第5班

参 加 者 班長 阿部和子 副班長 齊藤正三 山越一治

◆◆◆◆視察視察視察視察項目項目項目項目

実施年月日 第1回:平成30年 7月 4日(水) ~ 7月 6日(金)

第2回: 10月25日(木) ~ 10月26日(金)

視 察 目 的

第1

1.NPO法人と行政の協働について

岡山県岡山市 (特定非営利活動法人

岡山NPOセンター)

(ESD・市民協働推進

センター)

2.上山集楽みんなのモビリティプロジェクト

について

山間地域の地域おこしについて

岡山県美作市 (一般社団法人上山集楽)

(特定非営利活動法人

みんなの集落研究所」

第2

1.行財政改革について 山梨県

南アルプス市

2.マイ保健師事業について

子育て世代包括支援センターについて 山梨県甲府市

視 察 先

概 要

岡山県

岡山市

*人 口:719,474人 *面 積:789.95K㎡

*特 徴:温暖な気候と多様な自然環境に恵まれる中国

地方第2の都市。水資源に恵まれた岡山平野に位置する。

江戸期には池田藩城下町として繁栄。「未来へ躍動する

桃太郎のまち岡山」を都市づくりの基本目標として掲げ、

活力があふれ、市民が愛着と誇りを持ち、未来へ躍動す

る都市の実現を目指している。また、2016年度に形成し

た岡山連携中枢都市圏の中心都市として、「つながり、

創造する。躍動 岡山都市圏」をキャッチフレーズに、活

力と魅力あふれる圏域づくりを推進している。

岡山県

美作市

*人 口:27,977人 *面 積:429.29K㎡

*特 徴:岡山県の北東部に位置。奈良時代には美作国

が置かれるなど古くから開かれ、江戸期には出雲街道や

因幡街道の宿場町として発展。剣聖・宮本武蔵の生誕の

地といわれる。観光地の知名度、豊かな自然環境を最大

限に生かし、農林業や商工業との連携、京阪神や周辺市

町村との交流など、「もてなしの心」にあふれたグリー

ンツーリズムを展開し、県内外から訪れたくなるオンリ

ーワンのまちを目指している。

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視 察 先

概 要

山梨県

南アルプス市

*人 口:70,828人 *面 積:264.14K㎡

*特 徴:全国唯一のカタカナ市名。甲府盆地の西部、

日本で2番目に高い北岳に代表される南アルプス連峰の

すそ野に位置。2014年6月に南アルプスが登録されたユネ

スコエコパークの理念は「自然と人間社会の共生」であ

り、市民憲章の理念とも共通していることから、アルプ

スの山々や里山、果樹畑など魅力ある地域資源を活かし

た自然と共生したまちづくりを展開している。ぶどう、

桃など甲州の代表的な8種の果物の総称である「甲州八珍

果」の実るフルーツ王国としても知られている。

山梨県

甲府市

*人 口:193,125人 *面 積:212.47K㎡

*特 徴:甲府盆地の中央を南北に縦断し、市域の3分の

2を山岳森林が占め、自然に恵まれる。1519年に武田氏が

館を築き、城下町を設けたのがまちの始まり。甲州ぶど

う、ワイン、水晶のほか、宝石・貴金属加工が世界的に

有名。まちづくりでは、2019年のこうふ開府500年、2021

年の信玄公生誕500年、2027年のリニア開通と、未来を見

据えたシティプロモーションを行っている。「子育ち・

子育て」を支え、「稼ぐ・稼げる」を促す施策に加え、

「健康づくり」「国際交流」「歴史物語」にも重点を置

いた施策を推進している。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

NPO法人と行政の協働について 【岡山県岡山市】

視察先担当課

特定非営利活動法人 岡山NPOセンター

ESD・市民協働推進センター

添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

NPOと市との協働で、公共政策を共に担ってきた日光市。その歴史は20年に渡

る。しかしその意義がNPOと市それぞれ新たな世代に受け継がれているのか。市の

委託事業ありきで、NPOの独自性が十分に発揮されていないのではないか等協働に

対して、様々な課題が見られると感じるようになった。

NPOと市との協働に対して双方にどのような意義があるのか、それをどのように

共有するのか、子どもの貧困など新たな課題にどう協働できるのかといった課題に対

し、岡山市では市民・NPOの提案により、市役所の中にESD・市民協働推進セン

ターを設置し、協働を進め成果を上げている。センター運営は特定非営利活動法人岡

山NPOセンターが受託している。

ESD・市民協働推進センターの活動における、NPOと行政の協働の意義、実践、

課題について調査を行った。

【事業実施の背景】【事業実施の背景】【事業実施の背景】【事業実施の背景】

岡山市は平成24年4月にNPO法人の認証・認定の所轄庁になったことを契機と

して本格的にNPOとの協働推進施策の検討を始め、「岡山市・NPO協働推進協議

会」を発足した。協議会は市の公募に応じたNPO関係者によって構成され、全員が

無報酬にも関わらず、約4年間で「市民協働フォーラム」の企画・運営、市民協働推

進事業の提案制度の検討、協働のまちづくり条例の改正案の作成や普及など、様々な

取り組みを展開した。

そして、協議会が岡山市長に提出した提案書の中に「協働推進のコーディネートお

よび相談センターの設置」があり、提案を受けた岡山市と特定非営利活動法人岡山N

POセンターが経費を半分ずつ負担しあって事業化したのが、前述の「ESD・市民

活動支援センター」である。センターは協議会と岡山市(担当課)が知恵を絞り、汗

を流し、長い期間と大きな期待をかけて実現した事業である。

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【事業の概要】【事業の概要】【事業の概要】【事業の概要】

ESD・市民協働推進センターは平成26年6月に開設された。

岡山市役所内に設置された市の各部署と多様な主体との協働をつなぎ支える官民

協働運営の機関であり、協働事業等の伴走支援や横断的なネットワーク等に取り組ん

でいる。

市役所内の各部署での協働を加速するために市役所内にあることにこだわって設

置された。運営を特定非営利活動法人岡山NPOセンターに委託している。

ESD・市民協働推進センターは、岡山市「協働のまちづくり条例」の第8条に規

定された「多様な主体をつなぎ、協働を推進するためのコーディネート機関」である。

同じく条例に規定された人材育成、情報共有および交流機会の創出、社会課題解決の

ための取り組みの推進などを担っていた。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

【事業の成果】【事業の成果】【事業の成果】【事業の成果】

かなりの成果が出ている。センター職員が毎年各課を回り市民との協働が出来ない

かヒアリングを行っている。センターが市役所内にある事ですぐに職員と話せる環境

にあり利便性が高い。

中間支援団体として質の高い法人に委託したことにより、NPOの力不足を補って、

志を貫徹できる組織つくりを提案できている。NPOの提案力は高いが実務面で追い

ついていない部分を様々な手段でフォローして、政策にまでブラッシュアップさせて

いる。そのため市もNPOからの提案を受け入れやすくなっている。

特徴的な事業として以下の3点があげられる。

・市民協働推進モデル事業

岡山市にある社会課題の解決を官民協働の手法ですすめるため、協働によって

より効果的に課題解決がすすむ事業を公募し、補助金を交付する。岡山市との協働

で実施するものであるが、実施後は市の一般施策となったり、あるいは団体の公益

事業として自立していったりと、新たな公共事業を生み出していくためのモデル

となる事業である。平成26年度に開始。

・市民協働推進ニーズ調査事業

岡山市とNPO等の市民団体との協働で、社会課題を解決するための協働事業

を提案することを前提に、岡山市と協働して解決を図りたい課題の「深刻さ」、「解

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91

決の必要性」、「緊急性」、「協働事業により解決が図れる可能性」などについて、具

体的に現状を把握し、分析する事業。平成27年度に開始。

・市民協働及びNPO支援に関するマニフェスト公開質問状

岡山NOPセンターで、岡山市長選挙(2017年9月17日(日)告示)にあ

たり、立候補予定者2氏(2017年9月15日時点で山陽新聞紙面にて確認をで

きた方)に対し、市民協働及びNPO支援に対する考えを伺うための公開質問「市

民協働及びNPO支援に関するマニフェスト公開質問状」の送付を実施。

【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】

役員の交代やスタッフの質の低下など深刻な問題を抱えている団体が増えている。

そのような団体には手を打てていないのが現状である。協働の施策の提案は一部の職

員に頼っている現状で、提案力のある職員の育成が急務。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

市とNPOとの協働の意義はもっと広範囲にわたり、市民の抱えている課題解決に

必須だと痛感した。

全体の奉仕者であるがゆえにゼネラリストにならざるを得ない行政に対し、NPO

は民間団体として特定テーマのスペシャリストとしての専門性をもち得る。また、行

政は住民(実際は議会)全体の過半数の賛成がなければ動き出せないのに対し、NP

Oは自らの気づきと責任で先駆的・開拓的に課題解決に取り組むことができる。

このようにNPOには「新たな公共」の主体として、行政の限界を超える潜在的な

力を持っているといえる。さらに、NPOは市民参画の主体であり、市民の自治能力

を高め、民主的な社会を実現する核となりうる点で、企業にはない特性を持っている。

したがって、行政との協働事業を行うにあたっては、このNPOの専門性・特性をみ

がき、市民の「自治力」が発揮される、より高いレベルの公共活動を実現するよう努

めることが必要である。

問題は協働の意義を深く理解しつなげる特定非営利活動法人岡山NPOセンター

のような中間支援団体が果たしている役割の評価を誰がするのか、新たな課題が見え

てきた。

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◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)◆視察結果(個別票)

個別

項目

上山集楽みんなのモビリティプロジェクトについて

山間地域の地域おこしについて 【岡山県美作市】

視察先担当課

一般社団法人上山集楽

特定非営利活動法人

みんなの集落研究所

添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

住民160人という小さな集落(美作市上山)において、棚田再生を目指し活動す

る中で、過疎の山村に魅力を感じた人達が移り住み、地元の人達と一緒に地域の歴史

や伝統文化を引き継いでいる。そんな上山集楽の「楽しいから集まる」移住者と地元

の人々が織りなす生活の営みを調査研究した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

○棚田再生

上山集落には、かつて8300枚の棚田が広がり、1,000人もの人々が生活を

営んでいたが、過疎化・高齢化により、千年の歴史を誇る棚田群は続々と耕作放棄地

へと姿を変えていった。そこに2007年頃から棚田の再生を志す若者たちが集まっ

てきた。当初は地元の人達に受け入れられなかったが、棚田の水路の整備など地道な

活動を何年も続けているうちに信頼を得ることとなった。棚田再生に向けた作業はひ

たすら草刈り、竹の伐採などばかりだったが、2011年には NPO 法人「英田上山

棚田団」を立ち上げ本格的な米作りが始まり、25年ぶりに、美しい棚田の姿が戻っ

てきた。(日本未来遺産となる)

○移住者

棚田の再生を通し移住者が集まり始めたころに、美作市が棚田の再生活動で地域お

こし協力隊の募集を継続して行ったことで、協力隊の定住に繋がり、地域の活性化、

資源を生かした商品づくり、ブランドの立ち上げが進んだ。さらに2015年には地

元の住民と英田上山棚田団のメンバーが協力しあい集落全体を法人化し、「一般社団

法人上山集楽」が設立された。

農薬などを極力使わず、またはぜ干しによる米づくりを行うほか、酒造りやニンニ

ク等野菜作りも行っている。冬場は林業に勤しみ、間伐した木を薪にしてストーブに

利用する。狩猟で獲れた食材は調理され、ジビエ料理として山からの恵みを堪能して

いる。これらの活動を発信することで移住者が増え、今では160人の集落のうち移

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住者が約40人(うち協力隊新規4人、協力隊 OB4人)を占めている。

○みんなの孫(真心)プロジェクト(高齢者にとっては孫みたいな若者)

棚田再生など農業に勤しむ若者が中心となり、有償で地域の皆さんの暮らしのお手

伝い事業を行っている。畑仕事1,000円、墓掃除1,500円、草刈り2,000

円(それぞれ1時間)。犬の散歩、鳥の世話、家庭教師。逆に地元高齢者の方が若者た

ちの子守をしているなど、地域の中で共生している。

○モビリティプロジェクト(NPO 法人みんなの集落研究所)

棚田の再生のため移住した多くの若者が楽しく暮らしている事に着目した一般財

団法人トヨタ・モビリティー基金が2016年から3年間助成。(上限2億2千万円)

事業内容として、

①中山間地域に住む人たちの生活をどう守り地域機能を発展させていくか。そし

て地域を支える人材の育成を柱に小型2人乗り電気自動車を貸し付け地域で活

用してもらう社会実験。観光客にも乗ってもらう。

②モビリティーを活用し、巡回看護(コミュニティーナース1名)。みんなの集落

研究所で雇用し、訪問看護、医療介護予防、相談業務に従事している。

③住民主体の無償運送、トヨタ財団からの助成金で車をリースし保険に入り、地

域住民利用者、運転手も住民それぞれ登録をしてもらい、利用者から実費分(ガ

ソリン代)だけ頂いている。岡山県内では似たような無償運送を行っている所

が10か所ほどある。子供のみを運送してほしいという要望が集落からはある

が、様々な課題があり、実現されていない。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

岡山県の小さな集落に移住者がなぜ集まるのか、過疎地のどこに魅力があるのか、

それは過疎地に住んでいる人は感じていないことを、都会の人たちが求めていたこと

にある。

過疎地の魅力、おもしろさとは、農林業の仕事を生活の軸として、自ら作り出して

ゆく楽しさ。家族と地域の人達との時間を仕事をしながら確保できる。自分の空間を

自分で作り上げていくことができる。通勤時間がないなど、都会の生活にはない営み

が過疎地域にはある。

地域活性化を押し上げているのが移住してきた若い人たち。この原動力の一つが地

域おこし協力隊の定住であり、若者パワーで村づくりを楽しんでいる。ただ楽しむだ

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けでなく、ここにずっと住むのだとの覚悟の上で地域役員・消防団員等になり、お祭

りも復活させた。移住者一人一人が全国にファンを作るために発信し、棚田を使って

の異業種交流(例えば各専門家による自動草刈り機の開発)や、棚田の再生に企業の

社会貢献活動(CSR)を活用するなど、イベント等を行っている。

中山間地域の活性化には、岡山県に本部があるNPO法人「みんなの集落研究所」

の存在が大きく寄与している。この組織はシンクタンクであり、自治体から委託され

た事業で中山間地域の問題点を見つけ出し、各地区の事例を紹介し、問題解決のため

の取り組みの支援を行っている全国でも類を見ない組織であり、現在岡山県内20自

治体の業務を受託している。

最後に日光市においても、山間地域の活性化は重要課題であり、地域おこし協力隊

の活躍を期待するが、市がどのように協力隊を活かせるか、協力隊が目的をもって活

動してもらい、そこから定住に繋げられるよう、今回の調査を参考にしていただくこ

とをお願いするところである。

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個別

項目

行財政改革について 【山梨県南アルプス市】

視察先担当課 総合政策部行政改革推進室 添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

南アルプス市は、平成15年に4町2村で合併した。平成17年度に第1次「行政

改革大綱」を策定し、事業の統一化、市民サービスの公平化等、整合性を図った。平

成22年度に第2次行政改革大綱を策定し、事務事業の見直し、定員適正化の推進、

公共施設の管理運営方法の見直し等の改革に継続して取り組んだ。平成29年度に、

平成32年度までの第3次行政改革大綱を策定した。

今後団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」では少子高齢化の進展が一

層見込まれ、社会構造の「一大転換」が必ず訪れる。

さらに南アルプス市の財政においては、合併後10年が経過する平成26年度から

普通交付税の合併算定替特例分が段階的に縮小され、平成31年度には普通交付税の

割増し交付額が平成25年度と比較し13億円減少すると見込まれるため、一層の行

財政改革を進めることが求められている。

日光市より先に合併し、内部変化等に的確に対応した行政改革大綱を策定している

ことから、その内容について調査した。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

○基本方針に基づく改革の取り組み

1、財政の健全化

①歳出構造の見直し ②歳入確保の推進 ③公営企業の健全経営

2、行政経営システムの見直し

①マネジメントシステムの強化 ②民間活力の活用 ③公共施設の見直し

④市長とのコミュニケーションの充実

3、人材育成と時代に即応した組織の見直し

①定員の適正化及び組織の見直し ②市民活動の推進

③取り組み推進のための環境整備

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○基本方針に基づく改革の各取り組み

1.財政の健全化

①歳出構造の見直しでは

・有利な市債の有効活用による、将来負担の軽減(健全化判断比率の抑制)

・基金の確保と活用

・補助金、交付金の見直し

・経費の節減、合理化の徹底

・市の規模に見合った取り組みの推進

②歳入確保の推進では、

・市税等徴収率の向上に向けた取り組みの推進

・未利用財産の売却、貸付けの推進

2.行政経営システムの見直しでは、

・限りある財源と人的資源を効果的に活用

・単なる一律削減でなく強化すべきところは確実に予算と人的資源を配分し「選択

と集中」の仕組みを構築する。

このように一項目ごとに具体的取り組みを示している。

○行政改革実施計画の取り組み

平成32年度までの、基本方針改革取り組みの達成目標を数値化し、平成32年

度の目標である実質公債費比率6.3%以下、将来負担比率27.1%以下に対し、

平成29年度ではそれぞれ4.7%、10.5%になっているため、改善の取り組

みとして、繰り上げ償還、基金積み立てを行った。今後についても見直しを行うと

している。

基金では、106億円の現在高を平成32年度で101億円以上確保、市税徴収

率、未利用地売却・貸付け、ふるさと納税等を年度ごとに数値化し、各事業の見直

しでは、改善策を各年度で示している。このように、基本方針に基づく改革取り組

みを一項目ごと、毎年度 PDCA 方式により、具体的に実施している。

○行革組織

行革を行う組織として、市長を本部長に部長クラスによる「行政改革推進本部」

が中心になり、全庁体制で取り組み、事務局として「行政改革推進室」を設置して

いる。

さらに、市民の代表、学識経験者で組織する「行政改革推進委員会」を組織し、

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助言を求めている。

また、毎年度行革の取り組みを市ホームページ等により情報公開を行っている。

○課題

平成33年度以降、基金の取り崩しも大きくなり、人件費削減にも限度があり、

いよいよ、市民に直接影響が出る補助金関係、使用料などにも手を付けなければな

らない。その時点での政治的判断を担う市長が、ここ何代か毎回選挙により変わっ

ていることが大きな問題として残っている。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

日光市においても、今後厳しさが増す収支見通しが示され、南アルプス市と同様の

持続可能な市行政経営を行わなければならず、強い日光市創りに向けた取り組みの年

次ごとの目標を立て、市民に理解を求めなければならない。

市の規模に見合った、安定的な予算規模の構築を目指さなければならない。

職員意識改革、資質の向上などの人材育成、「多様な協働の推進」等、併せてお願い

申し上げ、まとめとする。

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個別

項目

マイ保健師事業について

子育て世代包括支援センターについて 【山梨県甲府市】

視察先担当課 子ども未来総室母子保健課 添付資料 有・無

ⅠⅠⅠⅠ 視察要旨視察要旨視察要旨視察要旨

ライフスタイルや社会経済の変化の中で、子育てを専ら家族に委ねるのでは、子育

てそのものが大きな困難に直面する。家族は、今や就業・家事・ケア(子育てや介護)

に日々追われている。地域の互助・共助の力には大きなばらつきがあり、特に乳幼児

期は親の負荷が高まりやすい。母親が追いつめられわが子を手にかけてしまう事件も

後を絶たない。

その一因もあってか少子化が続き、子ども自身に与える影響や将来の少子化による

社会経済への影響が一層深刻化し、現実のものとなることを看過できない状況にある。

健全な親子・家族関係を築けるようにするためには、働き方改革と同時に、子育て

世代を身近な地域で親身に支える仕組みを整備することが急務である。

このような状況の下、平成28年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」

において、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援を実施するため、母子保健法

が改正され、市区町村に子育て世代包括支援センターを設置することが努力義務とさ

れた。そこで子育て包括支援センターをいち早く立ち上げ、その中にマイ保健師事業

を取り入れるなど先進的な事業を展開している甲府市を視察することにした。

【事業実施の背景】【事業実施の背景】【事業実施の背景】【事業実施の背景】

平成26年に総務省がまち・ひと・しごと創生を打ち出した時に、現市長の樋口 雄

一氏が、「これまでの子育ては福祉的だったが、これからは子育て政策が第一、それで

なければ甲府市は生き残っていけない、子ども最優先の政策をやって行く。」と宣言

した事が事業の大きな後押しとなった。市長が政策提言する「こうふ未来づくり重点

戦略プロジェクト」を策定し、その中の一番目に「創る力1『子ども最優先のまち』

を創る」との方針で、平成28年度に市に「子ども未来部」が創設された。

【【【【事業事業事業事業の概要】の概要】の概要】の概要】

甲府市は「子育て世代包括支援センター」を平成29年度から保健センター内に開

設し、同時にマイ保健師制度を導入した。

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・子育て世代包括支援センターは本庁舎から徒歩10分程度の保健センター内にある。

・母子保健コーディネーター(保健師)と子育て支援コーディネーター(保育士)

を配置(2名で国補助金約140万円)し、母子手帳発行とともにケアプランの

作成を行う。

○子育て世代包括支援センター○子育て世代包括支援センター○子育て世代包括支援センター○子育て世代包括支援センター

センターの機能の中の一つにマイ保健師制度がある。

●マイ保健師制度

相談しやすい体制をつくるために、すべての妊産婦等に対し、担当の保健師を配

置する制度。出生は毎年1,500人程度。各地区を担当するマイ保健師は18

名、地区のマイ保健師をエリアマネージャーが統括し、マイ保健師への助言や、支

援レベルの均衡化、評価・分析・課題等を整理。相談しに行ける方ばかりでない、

来られず問題を抱えてしまう人の支援を強化している。

・妊娠届出時に面談・名刺を配布することにより、いつでも相談できる安心感を

提供。(電話・メールも可)

・特定妊婦等への対応。(妊娠期への関わりを強化)

・不安が大きい第一子目について、マイ保健師が訪問。

・産婦健康診査等医療機関などと連携しサポート。

・妊娠届、出生連絡票、乳児全戸訪問、乳幼児健診等さまざまな機会を捉えて妊

産婦等の状況を把握。

・うつ病の早期発見のために、エジンバラ産後うつ病質問票を実施。市が雇用し

ている臨床心理士と連携し病院受診などサポート。

●日帰り型産後ケア事業

自己負担3,000円。委託経費13,000円。平成29年度利用実績41人。

●宿泊型産後ケア事業

生後4ヶ月までの方が3泊4日利用出来る。自己負担1泊6,100円。委託

経費は33,900円。健康科学大学産前産後ケアセンターママの里へ委託。平

成29年度利用実績56人。

●ママ友のつどい

引っ越されてきたお母さん、近所にお友達がいないお母さん、また友達の輪を

広げたいお母さんの交流の場を、アドバイザーのコーディネートにより提供して

いる。

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●産前産後ママケア事業(予約制)

妊娠期のママの心の相談や、母乳などの相談に応じる。

●プレママ・パパのつどい

沐浴実習、パパの妊婦体験、お産の準備などを学べる。休日夜間も開催でパパ

の参加が増えた。

●庁内での連携

・子ども相談センター「おひさま」

妊娠、出産から18歳未満の子どもに関する様々な相談、市や県の子育て支援

制度・事業・施設の情報提供、また児童虐待の通告(24時間対応)に電話や面

談で家庭児童相談員・保健師が対応。臨床心理士、保健師、社会福祉士などの専

門家が、相談を受ける。

・庁内のハローワーク

●産科・精神科医との連携

●児童養護施設との連携

子どもを7日間まで預かってくれる。

ⅡⅡⅡⅡ 事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題事業の成果・課題

【事業の【事業の【事業の【事業の成果成果成果成果】】】】

これまでも保健師がいて、地区ごとに担当をもっていた。問題のある家庭には、そ

の地区の担当の保健師が関わっていたが、そうではなくて、全ての妊産婦の情報を把

握して、様々な段階でスクリーニングのチェックを図り、市が実情を把握して、市か

らアプローチをしていこうと取り組みを変化させ、問題があってからの対応ではなく、

問題を未然に防ぐチェックをしていく取り組みにしている。

若年者の妊娠、未入籍、貧困、遅い妊娠届け、多胎、精神疾患を抱える妊婦等、困

難な状況が把握できるようになり、担当課だけでなく、庁内の綿密な連携、更に大学

との連携でサービスを作り上げ、包括的なサポート体制が取られている。

【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】【今後の展望、事業の課題】

マイ保健師の負担が大きく、もっと人員が欲しいとのことであった。

ⅢⅢⅢⅢ 視察所見視察所見視察所見視察所見

市長の子育て政策が第一の掛け声で、マイ保健師制度の創設など、妊産婦の方々に

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寄り添い、相談出来る人ばかりでない、とこちらから声をかけていく甲府市職員。申

請主義が基本の市役所の中で大きな改革である。

日光市も保健と子育て支援の両面から、多様な支援の充実に努めてきた。子育て政

策では県下で随一だと思っている。しかし、これらの支援についての情報が必ずしも

子育て家庭をはじめとした地域住民に分かりやすく伝わっておらず、結果的に利用者

側からすれば支援が一貫性を欠いているという課題がある。

甲府市のように、「『子ども最優先のまち』を創る」との方針で「子ども未来部」

が創設されたように、市民にわかりやすいメッセージが必要だと思った。

更にママ友のつどい、パパママ教室の夜間休日開催など、利用者目線での政策に大

変感心した。日光市も利用者目線でのきめ細やかな政策が求められている。

専門知識を生かしながら利用者の視点に立った妊娠・出産・子育てに関する支援の

マネジメントを行うことが期待されている。妊娠初期から子育て期において、それぞ

れの段階に対応した支援や、サービスの情報や助言が、子育て家族に伝わり理解され

るよう、現状の支援の在り方を利用者目線で再点検する必要があると感じた。

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平成31年(2019年)2月21日

行政調査特別委員長 福 田 悦 子 様

行政調査特別委員会第5班

班 長 阿 部 和 子

意見交換会の結果について

行政調査特別委員会第5班意見交換会の結果を下記のとおり報告いたします。

1.日 時 平成30年12月13日(木) 午後3時05分~4時50分

2.会 場 委員会室(市役所本庁舎4階)

3.実施内容 1)マイ保健師事業について

視 察 先:山梨県甲府市

視察事項:マイ保健師事業について

2)山間地域の地域おこしについて

視 察 先:岡山県美作市「一般社団法人上山集楽」

視察事項:山間地域の地域おこしについて

4.出 席 者 班員3名

1)健康福祉部健康課 担当職員

2)地域振興部地域振興課 担当職員

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5.結 果

1)意見概要

①マイ保健師事業について

【担当課の意見】

・日光市は地区ごとに担当保健師を配置し、胎児期から高齢期まで、ライフ

サイクルの全てを網羅した対人保健サービスを展開している。

・今年度から子育て世代包括支援センター機能を健康課に設置し、これまで

の母子保健事業に加え、母子健康手帳の交付・妊産婦健康診査・産後ケア

事業を実施している。

・妊娠届出時から面談に重点を置くことにより、対象者の状況を随時確認す

ることで、妊娠期から子育て期に応じたアドバイスや必要な情報提供がよ

りきめ細やかに行うことができるようになった。

・甲府市は年間出生数が1,500人ほど(日光市は450人程度)なため、

スケールメリットを生かしたよりきめ細かい母子保健事業が行えるので

はないか。甲府市は母子のみを対象とする保健師を配置しているが、日光

市の場合、母子のみではなく全ての年齢を担当せざるを得ない。

・母子に対する訪問指導に行った際でも同じ家庭にいる高齢者などの保健

指導も同時に行えることは、地区担当制のメリットであると思う。国から

も保健師は地域保健を担うべきで、地区担当が望ましいと言われている。

・かつて日光市でも母子担当保健師を置いていたが、出生数が少ないことも

あり、地区担当とするほうが有益と考え、現在の体制となっている。

【委員の意見】

・日光市では宿泊型産後ケアを受け入れ可能な医療機関がないようだが、甲

府市には大学病院があり、宿泊型産後ケアを受けやすい環境にある。精神

的に不安定な母親からすると、出産した病院でないところで宿泊型産後ケ

アを受けるのはハードルが高いのではないか。

・日光市の母子保健事業は充実しているが、それが対象者にうまく伝わって

いないのではないか。

・甲府市でも日光市でも行っている母子保健事業に大きな違いはない。ただ、

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保健師は母子保健以外の仕事も行っていると思うが、甲府市の保健師は業

務の重点を母子保健に置いている。出生数や人口規模などの違いによって、

行政の組織機構に違いが出てくるのだと思う。

②山間地域の地域づくりについて

【担当課の意見】

・耕作放棄地の増加が全国的な問題になっているが、その再生に成功してい

る素晴らしい事案。地域住民160人のうち1/4が移住者であることも

驚きである。OB を含めた地域おこし協力隊の4名が共通の目的を持ち、

魅力を全国に発信しながら一丸となって活動したことが成功に繋がった

のではないかと感じた。

・魅力ある地域に行政の支援が重なり、地域おこし協力隊として地域に来た

人材にも恵まれたことが重なったことも良い結果を生んだと思う。

・地域おこし協力隊を募集する前に棚田再生を目的とする NPO 法人が立ち

上がっており、協力隊を受け入れる受け皿があったことが大きいとい感じ

た。

・退任後の地域おこし協力隊が地域に根付いてもらうための道筋をつける

のも行政の仕事かと思う。

・農林業や生活支援の目的に特化した地域おこし協力隊の募集を考えてい

る。

・地域おこし協力隊が安心して仕事ができるための一助として、定住してい

る地域おこし協力隊 OB と現役協力隊のネットワークづくりに対する支援

を始めた。

【委員の意見】

・地域おこし協力隊が、退任後も働くことができる受け皿ができている。地

域おこし協力隊がカリスマ的人材だったということも大きいが、日光市に

来た協力隊が何をしたいのかをしっかり把握し、育てていくことが大切だ

と思う。

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・今は行政の中に地域おこし協力隊を入れているが、これからは地域の

NPO 団体などに協力隊を入れていくことを考えてはどうか。そうすれば退

任後も地域に根差してもらえるのではないか。

・地域おこし協力隊を地域にいきなり赴任させるのではなく、例えば3カ月

間のパッケージ的な研修をし、目的をはっきり植えつけるやり方もあると

思う。そうすれば応募者も増えるのではないか。

・上山集楽のように移住者を受け入れることができる受け皿が日光市にも

できることを願う。

・定住している協力隊 OB への支援も重要だと思う。退任後に定住している

OB がいれば、現役の協力隊も気軽に相談できるので安心できると思う。

・過疎地域は若い移住者が1人でも入ってくると活性化するので、地域おこ

し協力隊が退任後も定住できる方策の検討をお願いしたい。

2)感想・所見

①マイ保健師事業について

日光市健康課で進めている子育て世代包括支援センターは、甲府市とさほ

ど変わりはなく、熱心に取り組んでいることがわかった。違いはその熱心さ

が外部に伝わっていないことではないだろうか。殊に甲府市は市長が子育

て第一宣言をしている。また甲府市の一時受け入れ施設は、甲府市ならでは

の条件があり、日光市で実現するのは難しい。だがそこで諦めては市町村格

差が出来てしまう。そこをどうするか、それは現場の担当課の職員の方々の

職域を超えたところにあるのではという、難しい課題も見えた。今後子育て

環境の更なる整備、良さをどうプロモーションして市外に県外に発信する

のか、という課題解決に取り組んでいただきたい。

②山間地域の地域おこしについて

地域おこし協力隊と自治体と NPO の協働により、地域の再生と移住者の

増加という素晴らしい実践例を真剣に聞いていただけた。日光市では地域

おこし協力隊・自治体・NPO はそれぞれ活発に活動しているが、美作市ほ

どは協働できていないという共通認識を持つことができた。協働できれば、

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地域の人たちが抱える介護や子育て、地域交通など多くの課題を自ら解決

していける。それは過疎化が深刻な日光市にとって大きな福音となる。これ

から重要なのは、力量ある中間支援団体の存在であり、そのような中間支援

団体を誰がどのように育成するのかという課題を感じた。