リウマチ治療のup to date - ntt-east.co.jp...ntt 東日本札幌病院健康セミナー 2018...
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NTT東日本札幌病院健康セミナー
2018年12月15日NTT東日本札幌病院リウマチ膠原病内科
笠原英樹
リウマチ治療のUp to Date
本日のお話
• 関節リウマチという病気について(症状・原因)
• どんな検査をして診断するのか?
• 治療薬
• 注意すべき薬の副作用
• 年齢や合併症に合わせた注意点
関節リウマチってどんな病気?
リウマチってどういう病気?
• 「リウマ」=ギリシャ語で「流れる」
• ヒポクラテスが、紀元前400年頃に、
「脳から悪い液体が流れ出て、関節や筋肉を経て、
体中に移っていく病気」=「リウマティスモ」と呼んだのが、
「リウマチ」の起源。
「リウマチ」
=関節や筋肉が痛くなる病気の
総称
膠原病ってどんな病気?いえ領域名
膠原病関節リウマチ全身性エリテマトーデス強皮症皮膚筋炎・多発性筋炎シェーグレン症候群混合性結合組織病
:
EUイギリスフランスドイツイタリアスペインポルトガル
消化器疾患胃潰瘍大腸ポリープ膵炎
:
ASEANフィリピンタイインドネシア
関節リウマチ(RA)とは
概念 免疫の異常により関節滑膜に炎症を起こし、関節の腫れや痛みを引き起こす病気です。進行すれば軟骨・骨を侵し、関節組織の破壊や変形が起こります。また、高率に肺にも炎症を起こし、間質性肺炎などを合併することがあります。
疫学 人口の約0.5%(70万人)男女比は1:3~5好発年齢は30~50歳
RA患者の関節の経時的変化
Patient age: 50 yrs. Patient age: 66 yrs. Patient age: 45 yrs.
罹病期間1.5年 罹病期間12.5年 罹病期間21年
関節リウマチの症状
朝の安静時に手が握りにくい
第2,3関節手関節
左右の多関節に痛み、腫れ、熱感がある
足趾足関節
最初に痛くなった関節
0
10
20
30
40
50
60
手指 膝 肘 股
(リウマチ白書2015年より)
(%)
RAの関節炎の特徴左右両側の関節に起きる
関節の腫れを伴う(=滑膜炎)
関節リウマチと診断された年齢
(リウマチ白書2015年より)
0
5
10
15
20
25
30
0〜9歳
10〜19歳
20〜29歳
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70〜79歳
80歳以上
(%)
0
5
10
15
20
25
30
35
90歳以上
20〜29歳
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70〜79歳
80〜89歳
年齢・性別
(%) 当院関節リウマチ患者 485名
女性77.7%
男性22.3%
関節リウマチの発症に関係する要因
免疫異常*
リウマチ因子、抗CCP抗体
環境因子
喫煙、歯周病、シリカ
腸内細菌,ウィルス感染
遺伝的背景
HLA-DR4、PADI4女性ホルモン
滑膜炎(RA発症)
歯周病
喫煙
腸内細菌
*RA発症の5〜7年も前から免疫異常は存在
喫煙と関節リウマチ
• RAの発症率を上げる– 男性では、過去の喫煙 2.6倍、現在の喫煙 3.8倍– Shared epitopesを1つ持つ人が喫煙 vs 非喫煙 7.5倍– Shared epitopesを1つ持つ人が喫煙 vs 非喫煙 15.7倍– 家族歴のあるRAの発症年齢は、喫煙40歳 vs 非喫煙 46歳
• 喫煙者は、RFや抗CCP抗体の陽性率や力価が高い。
• RAの関節炎症状を悪くさせる
• 肺気腫や気腫合併肺線維症、間質性肺炎などの肺病変の合併が多くなり、肺炎のリスク、癌のリスク、心筋梗塞のリスクが上昇し、予後が悪くなる
性別による特徴
女性77.7%
男性22.3%
0.00%
20.00%
40.00%
60.00%
80.00%
女性
男性
P<0.001
P<0.001
当院関節リウマチ患者 485名
33.6%
80.0%
喫煙と肺病変の合併率
ACPA陰性
ACPA陽性
0%
10%
20%
30%
40%
50%
喫煙歴なし喫煙歴あり
12.2%
41.7%
22.8%
17.5% 女性
男性
0%
10%
20%
30%
40%
50%
23.9%
50.0%
14.3%
21.5%
当院関節リウマチ患者 485名男性喫煙歴あり 80.0%女性喫煙歴あり 33.6%
ピエール・オーギュスト・ルノワール
1876年 ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場
1888年 47歳頃 関節リウマチを発症晩年のルノワール
歯周病と関節リウマチ
Porphyromonas gingivalis・歯周病の病原菌の1つ・PAD活性を持ち、シトルリン化蛋白生成に関与する可能性あり
・高い耐酸性あり、飲み込まれた後腸内に届きやすく、腸内細菌叢の構成を変化させる。
・腸内細菌叢の変化により、Th17優勢となり、炎症性サイトカインのIL-17の産生を亢進させることで、関節リウマチの病勢を悪化させる。
IL-17産生亢進
・関節リウマチの患者には歯周病が多い(喫煙はRAと歯周病の共通のリスク)・歯周病を治すと関節炎も改善する・RAを発症していない健常人1万人の調査で、1.7%で、抗CCP抗体が陽性であり、抗CCP抗体の有無や力価は、歯周病のある人で高かった。
抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体とは?
(SPring-8 Information/Vol.11 No.5 SEPTEMBER 2006より)
シトルリン化
抗CCP抗体
PAD4の遺伝子多型がRAの発症に関係
非自己と認識されるように変化する
RA患者の70%で陽性となり他の病気ではほとんど陽性にならない。(但し、結核患者で34%陽性)
関節炎発症の数年前から陽性になる
抗CCP抗体陽性のみでは発症しない
抗CCP抗体陽性のRAは関節破壊が進みやすいç
リウマトイド因子(RF)とは?
変性したIgGのFc
Fc
リウマトイド因子
RA患者の70%で陽性となり他の病気でも陽性になる。
関節炎発症の数年前から陽性になる
RF陽性のRAは関節破壊が進みやすい
(Arthritis Rheum 50,380-386,2004)
関節炎症状の出現前から抗CCP抗体は陽性となっている RA発症
関節リウマチの病態
MMP3
軟骨
骨
IL-6,IL-8,GM-CSF
破骨細胞
RANK
RANKLTNF-α、IL-1、IL-6
骨
軟骨
自己抗体 形質細胞
炎症性サイトカインTNF-α、IL-6など
ヘルパーT細胞(司令官)抗原提示細胞(伝令係)
B細胞
軟骨細胞 滑膜線維芽細胞 骨
破骨細胞
TNF-α、INF-γ、IL-2IL-6
MMP3
TNF-α、IL-1、IL-6IL-6
RANKLRANK
RANKL
軟骨破壊関節裂隙狭小化
関節の腫れ、疼痛関節の炎症
骨吸収骨破壊
破骨細胞を活性化
破骨細胞を活性化
軟骨を壊す
抗CCP抗体RF
MHC TCR
CD80/86 CD28
マクロファージ
サイトカインとは
サイトカインとは、免疫細胞(リンパ球やマクロファージなど)が産生する物質で、その作用により隣の細胞に情報を伝える役割がある。つまり、細胞同士の言語と言えるものです。
関節リウマチで重要な役割を果たすサイトカインは、IL-1,IL-6,TNF-α、GM-CSFなどがあります。
戦闘準備!目標は・・
IL-6
TNF-α TNF-α
IL-6
言語
サイトカインと全身への影響
肝臓
脂肪細胞
筋肉
血管
脳
骨
TNF-α,IL-6
IL-6
TNF-α,RANKLDkk-1
TNF-α,IL-1
TNF-αIL-6, IL-1
TNF-α, IL-6免疫複合体
動脈硬化
骨粗鬆症インスリン抵抗性
CRP,SAA上昇
抑鬱状態発熱
アミロイドーシス
心筋梗塞
糖尿病の悪化骨折
炎症性サイトカインのはたらき
CRP↑ 白血球↑
関節リウマチの診断はどのようにして行われるのか?
検査
• 採血検査(RF,抗CCP抗体など)
• 画像検査(手足レントゲン写真、関節エコー、
関節MRI検査、CT検査)
• 合併症検査– 感染症;HBV、HCV、結核(T-SPOT)、βDグルカンetc– 肺病変;間質性肺炎、肺気腫、気管支拡張症
– 悪性腫瘍;
– 骨粗鬆症;
– 糖尿病;
– 腎機能評価;MTXの使用量調整
血液検査検査名 正常値 特徴 上昇する疾患
リウマトイド因子(RF)
15Iu/ml> 変性したヒト免疫グロブリン(IgG)に対する自己抗体。関節リウマチ患者の約70%で陽性になる。数値が高いほど重症の傾向あり。
関節リウマチ、シェーグレン症候群、SLE、血管炎、肝炎、健常人にも数%の方で陽性例あり
抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)
4.5U/ml> RFに比べ発症早期から陽性になる。将来関節リウマチを発症するリスクになる高値では関節破壊が進みやすい。
関節リウマチ、(SLE)結核
赤沈(ESR)
女性 20mm/h>男性 10mm/h>
試験管の中で1時間に赤血球が沈下する速度により炎症反応をみる検査です。
感染症、貧血、関節リウマチなど炎症をきたす様々な疾患
CRP 0.1mg/dL> 体内に炎症や組織破壊があるときに上昇します。IL-6の上昇が肝臓へ働きCRPが産生されます。
感染症や関節リウマチなど炎症を来す様々な疾患
マトリックスメタロプロテアーゼ -3 (MMP-3)
女性 59.4>男性 121>ng/ml
滑膜細胞から分泌される蛋白分解酵素で、軟骨などを溶かし、骨破壊の進みやすさと関連する。
関節リウマチなど滑膜に炎症を来す疾患ステロイドで上昇
炎症反応
ACR/EULAR 関節リウマチ分類基準 2010
1つ以上の腫脹関節腫脹または圧痛のある関節数
大関節1か所 0
大関節の2~10か所 1
小関節の1~3か所 2
小関節の4~10か所 3
最低1つの小関節を含む11か所以上 5
血清反応
RF、抗CCP抗体の両方が陰性 0
RF、抗CCP抗体のいずれかが低値陽性 2
RF、抗CCP抗体のいずれかが高値陽性 3
罹病期間
6週未満 0
6週以上 1
炎症反応
CRP、ESRの両方が正常 0
CRP、もしくはESRのいずれかが異常高値 1
関節炎の原因となる他疾患除外
【小関節】:MCP, PIP,1stIP,2-5 MTP,手首【大関節】:肩、肘、膝、股、足首OAとの鑑別のため、DIP、1stCMC、1stMTPは除外する。最低1つの小関節を含む11関節以上には
顎関節、肩鎖関節、胸鎖関節など含めることができる。【血清反応】低値陽性:正常上限から正常上限の3倍高値陽性:正常上限の3倍以上【罹病期間】
評価時に腫脹、圧痛関節のうち、患者申告する罹病期間。【炎症反応】陽性基準は施設毎の正常値を超える場合
新分類基準での検討
6点以上でRAと分類
鑑別難易度
鑑別診断
高
1.ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)2.全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、
混合性結合組織病、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症)3.リウマチ性多発筋痛症4.乾癬性関節炎
中
1.変形性関節症2.関節周囲の疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)3.結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など)4.血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎)5.全身性結合組織病(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑)6.その他のリウマチ性疾患(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)7.その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症)
低
1.感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など)2.全身性結合組織病(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など)3.悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群)4.その他の疾患(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など)
早期関節リウマチ鑑別診断リスト 日本リウマチ学会HPより
関節エコー検査
関節エコー検査
滑膜肥厚
正常
骨びらん
関節炎
関節エコー検査
関節包
靱帯
カラードップラー法(血流シグナル)
関節エコー検査
関節(滑膜)の腫れや火事が強い
将来の関節破壊のリスクが高い=
関節炎=関節の火事
症例1:68 歳 女性 MT
【血液データ6月】
ESR 70 mm/hCRP 3.15 mg/dlRF 670 IU/ml
圧痛関節 4(7) 大3小4腫脹関節 2 (5) VAS 75 mm DAS28 4ESR 5.54
【経過】平成22年からレイノー症状があり、前医受診し、RF250、抗CCP抗体>300以上のため、4月に当科紹介となった。初診時に関節症状は認めなかったため、ACR/EULAR2010 RA分類基準を満たさなかった。関節エコーでも活動性関節炎を認めずユベラ内服となった。
平成24年6月に入り、多発関節痛が出現した。
3
(1)
1
3
ACR/EULAR 2010
RA分類基準7点
RAと分類可能
【6月関節所見】
圧痛
腫脹
5月と6月 左手関節エコーの比較
MP PIP
手
5月MP PIP
6月
手
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
左MPⅡ
左MPⅣ
6月 左足趾関節エコー
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅰ
Ⅲ
Ⅳ
【診断】 超早期RA(発症数週)【治療】 MTX導入
病気の評価
• 関節リウマチの活動性の評価の指標
–採血 ;CRP、赤沈(ESR)、MMP3、RF– DAS,CDAI,SDAI;総合的疾患活動性の指標
(関節炎や炎症反応、痛みの程度)– HAQ ;身体能力の低下の度合い
–関節エコー ;滑膜の肥厚や血流信号の程度
–レントゲン ;骨破壊の程度
治療目標は、何を目指せばいいのか?
関節リウマチ患者の治療の目標
寛解 低疾患活動性DAS28(ESR)<2.6 (3.2)SDAI ≦3.3 ≦11CDAI ≦2.8 ≦10Boolean寛解圧痛関節数≦1,腫脹関節数≦1CRP≦1mg/dl、患者全般評価≦1/10cm
糖尿病患者の治療目標HbA1c<6.5% (7.0% )
(高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会作成)
痛みからの解放と日常生活の維持フレイルや将来の骨破壊を予防する薬剤の副作用や感染症のリスクを回避する
網膜症や腎症、動脈硬化性疾患などの合併症を予防し、予後を改善する低血糖発作による危険を回避する
RAでも年齢に合わせた治療目標の設定が必要。
T2T Recommendationの治療アルゴリズム
低疾患活動性低疾患活動性
の維持
寛 解 寛解の維持
1~3ヶ月ごとに総合的疾患活動性指標を
用いて評価する
3~6ヶ月ごとに疾患活動性を
評価する
活動性RA
代替的な治療目標
主要な治療目標
症状悪化の場合は治療方針を見直す
症状悪化の場合は治療方針を見直す
疾患活動性に応じて治療方針を決定する
疾患活動性に応じて治療方針を決定する
(Ann Rheum Dis 2010;69:631-637より引用しT2T Japan Steering Committeeが日本語版作成)
RA治療における目標
臨床的寛解;関節の痛みや腫れがない状態を維持すること
構造的寛解; 関節破壊の進行を防止
機能的寛解;QOLの改善
社会的寛解;
働き続けることができる
生命予後の改善
治療について
RAの治療薬の歴史
1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020
1964年乾癬治療
1960年後半RA治療へ
メトトレキサートMTX 1988年
FDA承認1999年本邦承認
2011年MTX16mg承認
ステロイド薬1949年
1951年(本邦)
ペニシラミン1960年注射金剤
1929年
ブシラミン1989年
サラゾスルファピリジン1996年
レフルノミド2003年
タクロリムス2005年
インフリキシマブ1999年(2003年)エタネルセプト
1998年(2005年)
アダリムマブ(2008年)トシリズマブ(2008年)オレンシア(2010年)ゴリムマブ(2011年)
セルトリズマブ/ペゴル(2013年)
トファシチニブ2013年
バリシチニブ2017年
イグラチモド2012年
治療薬
• 抗リウマチ薬(DMARD)–従来の合成DMARD(csDMARD)• 免疫調整剤(サラゾスルファピリジンなど)
• 免疫抑制薬(MTX,レフルノミド,タクロリムスなど)
–生物学的製剤(bDMARD)–特異的分子を標的としたtsDMARD(JAK阻害薬)
• ステロイド剤
• 消炎鎮痛薬(NSAID)
EULARリコメンデーション(2016年改訂)
EULARリコメンデーション(2016年改訂)
EULARリコメンデーション(2016年改訂)
治療薬
• 抗リウマチ薬(DMARD)–従来の合成DMARD(csDMARD)• 免疫調整剤(サラゾスルファピリジンなど)
• 免疫抑制薬(MTX,レフルノミド,タクロリムスなど)
–生物学的製剤(bDMARD)–特異的分子を標的としたtsDMARD(JAK阻害薬)
• ステロイド剤
• 消炎鎮痛薬(NSAID)
メトトレキサート(MTX)
<内服方法>
週1~2回 内服1週間で4~16㎎を1~3回に分割し、
1日目から2日目にかけて、12時間おきに内服します。*内服を忘れたときには、その薬は服用せずに飛ばして、決められた時間に次の回の薬を内服してください。絶対に2回分を一度に内服しないでください。
※副作用の予防として、リウマトレックスを最後に内服したあと、フォリアミン(葉酸)を24~48時間後に内服します(週1回内服)。
メトトレキサート(MTX)
<副作用>
肝機能障害、骨髄抑制、口内炎、倦怠感、腎機能障害、嘔気、間質性肺炎、感染症、光線過敏症、リンパ増殖性疾患、催奇形性など
<妊娠・授乳>
使用中は男女とも避妊が必要、
計画妊娠の妊娠1-3ヶ月前にMTX中止が推奨(EULAR2016年)投与終了後少なくとも1月経周期は避妊(添付文書)乳汁移行あり、授乳中は禁忌
<腎機能低下時>減量必要(eGFR<30ml/minでは原則禁)
0
5
10
15
20
25
30
35
90歳以上
20〜29歳
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70〜79歳
80〜89歳
年齢・性別
(%)当院関節リウマチ患者 485名
32%が75歳以上の高齢者
高齢RA患者の腎機能
G1
G2
G3a
G3b
G4
G5
eGFR(ml/min)
≧90
60≦,<90
45≦,<60
30≦,<45
15≦,<30
<15
G15.2%
G244.4%
G3a31.6%
G3b15.4%
G42.6%
G5 0.9% 腎不全への投薬慎重投与サラゾスルファピリジンイグラチモドタクロリムスレフルノミドミゾリビンアクタリットトファシチニブ
禁忌メトトレキサート(MTX)ブシラミンD-ペニシラミンオーラノフィン金チオリンゴ酸ナトリウム
N=117
腎機能別のMTX使用量
MTXを使用してる人 83.3% 63.5% 59.4% 33.3% 0% 0%
(mg/週)
RAの治療に関連するリスク因子は高齢者ほど増加する
20 30 40 50 60 70 80 90歳
腎不全妊娠・授乳
HBV既感染 50%
結核既感染
悪性腫瘍合併
糖尿病合併
骨粗鬆症合併
PCPリスク
フレイル
MTX減量
HBVDNAモニタリング
INH予防投与
TNF阻害薬制限JAK阻害薬制限
BP製剤注意
ST合剤予防投与
リハビリ早期導入
認知症 服薬管理
感染症予防合併症予防
必要な対策
薬剤変更
タクロリムス(TAC)
<内服方法>:1日1回 1-3mg(高齢者は減量)
<副作用>
高血圧、腎機能障害、高血糖(口渇、倦怠感など)、肝機能障害、腹痛、下痢、便秘、嘔気、手の震え、ほてりなど
<併用禁忌>シクロスポリン、ボセンタン、K保持性利尿薬
<併用注意>CAM,EM,アゾール系抗真菌薬、Ca拮抗薬、グレープフルーツ、テラビック、アミオダロンで濃度上昇
REF,抗てんかん薬,セイヨウオトギリソウで血中濃度低下
<妊娠・授乳>継続可
イグラチモド(IGT)
<内服方法>
1回25mg 1日1回から開始し、4週以降に2回へ増量
<副作用>
肝機能障害、骨髄抑制、消化性潰瘍、咳(間質性肺炎)、腎障害、紅斑、光線過敏症、催奇形性など
<併用禁忌>ワーファリン
<妊娠・授乳>禁忌
サラゾスルファピリジン(SSZ)
<内服方法>
1回1錠 1日 2回
<副作用>
骨髄抑制、発疹、光線過敏症、嘔気、腹痛、肝障害、顔面紅潮、薬剤過敏性症候群(DIHS)など※皮膚、爪、汗や尿などの体液が黄色~黄赤色に着色したり、コンタクトレンズが黄色に着色することがある。
<併用禁忌>なし
<妊娠・授乳>妊娠中有用性投与、授乳は児に血性下痢*SASP継続中の患者からのPCP発生は少なく、PCPの発症抑制効果も期待可。
治療薬
• 抗リウマチ薬(DMARD)–従来の合成DMARD(csDMARD)• 免疫調整剤(サラゾスルファピリジンなど)
• 免疫抑制薬(MTX,レフルノミド,タクロリムスなど)
–生物学的製剤(bDMARD)–特異的分子を標的としたtsDMARD(JAK阻害薬)
• ステロイド剤
• 消炎鎮痛薬(NSAID)
ヘルパーT細胞(司令官)抗原提示細胞(伝令係)
B細胞
軟骨細胞 滑膜線維芽細胞 骨
破骨細胞
TNF-α、INF-γ、IL-2IL-6
MMP3
TNF-α、IL-1、IL-6IL-6
RANKLRANK
RANKL
軟骨破壊関節裂隙狭小化
関節の腫れ、疼痛関節の炎症
骨吸収骨破壊
破骨細胞を活性化
破骨細胞を活性化
軟骨を壊す
自己抗体RF
MHC TCR
CD80/86
CD28
オレンシア
レミケードヒュミラシンポニーシムジアエンブレル
アクテムラ
マクロファージ
生物製剤の作用機序
CTLA-4-Ig
日本で使用されている生物製剤 (2018年12月現在)
一般名 エタネルセプト
ETNアダムマブ
ADAゴリムマブ
GLMセルトリズマブペゴール
CZP
インフリキシマブ
IFXトシリズマブ
TCZサリルマブ
SRMアバタセプト
ABT
商品名 エンブレル ヒュミラ シンポニー シムジア レミケード アクテムラ ケブザラ オレンシア
作用 TNFα阻害剤 IL-6阻害 CD80/86
MTX併用 併用・単独 原則併用 併用・単独 併用・単独 必須 原則不要 原則不要 原則不要
投与経路 皮下注射 点滴
1-2時間
点滴1時間
/皮下注射
皮下注 点滴30分/皮下注射
投与間隔 週1or2回自己注射
○
2週に1回自己注射
○
4週に1回自己注射○
2週に1回自己注射○
初回投与後2,6週後、
以後8週毎
4週に1回/1-2週に1回(皮下
注)
2週に1回(皮下注)
初回後投与後2,4週後
以後4週毎
/週1回(皮下注)
特徴 長期安定
感染少ない
妊娠中使用例多い
MTX併用ないと効果不十分
胎盤通過ほぼなし
即効性
Bio Freeの可能性
MTX非認容例に単独で有効
長期安定
感染症少ない
長期安定
リコンビナント蛋白とヒトIgG-Fcの融合蛋白
キメラ型抗体 ヒト化抗体ヒト型抗体ヒト型抗体
PEGFab断片をPEG化 ヒト型抗体
リコンビナント蛋白とヒトIgG-Fcの融合蛋白
TNF-α阻害薬
【エタネルセプト(ETN)】 【セルトリズマブペゴール(CZP)】 【インフリキシマブ(IFX)】
【アダリムマブ(ADA)】 【ゴリムマブ(GLM)】
TNFα阻害薬での注意点
• うっ血性心不全 WHO III 度以上は禁忌
• 癌合併・治療中は禁忌
• 結核発症リスクに注意
• 癌の新規発症については、あまりリスクは高くない
• 抗体製剤(IFX,ADA,GLM)は、深い寛解後中止が可能な場合もある
• Fcを持たないETNとCZPは胎盤移行性が少なく妊娠中にも使用継続可能である
IL-6受容体拮抗薬
【サリルマブ(SRM)】【トシリズマブ(TCZ)】
IL-6阻害薬投与中の注意点
• 感染症発症時 発熱やCRP上昇がないため、症状が軽く見える(白血球数の上昇あり)
• 憩室炎から穿孔のリスク
• 第XIII因子欠乏、術後創傷治癒遅延や術後 出血のリスクあり、術前に第XIII因子活性を確認
• 癌の既往やリンパ増殖性疾患にも選択肢の一つ
• MTX非併用でも効果あり
T細胞共刺激阻害薬
【アバタセプト(ABT)】
ABT投与中の患者さんの注意点
• 感染症リスクは生物製剤の中で最も少ない
• ACPA陽性やANA陽性など自己抗体陽性例の方が効果が出やすい
• TNF阻害薬やIL-6R阻害薬の無効例にも効果が期待できる
• MTX非併用でも一定の効果あり
IORAコホートにみる治療薬の変化
当院の生物製剤使用率
全RA429人
Bioあり134人
(31.2%)
non Bio
ETN17.2%
IFX12.7%
ABTdiv18.6%
ABTsc12.7%
TCZ16.4%
CZP15.7% GLM
3.7%
ADA3.0%
ETN42.9%
CZP21.4%
TCZ21.4%
ABT14.3%
高齢RA117人
non Bio
14人(12%)
抗TNFα阻害薬 ;ETN;エタネルセプト、IFX;インフリキシマブ、ADA;アダリムマブ、GLM;ゴリムマブ、CZP;セルトリズマブペゴール
抗IL-6R阻害薬 ;TCZ;トシリズマブ、SRM;サリルマブT細胞共刺激阻害薬 ;ABT;アバタセプト
生物製剤の市販後調査における感染症の発症
レミケード
IFXエンブレル
ETNヒュミラ
ADAアクテムラ
TCZオレンシア
ABT症例数 5000 13894 7740 7901 7413
副作用発現例数 1401 3714 1857 3001 885
同発現率 28.0% 26.7% 24.0% 38.0% 11.9%
重篤な副作用発現例数
308 636 348 589 162
同発現率 6.2% 4.6% 4.5% 7.5% 2.2%
細菌性肺炎 108(2.2%) 174(1.3%) 104(1.3%) 118(1.5%) 32(0.4%)
間質性肺炎 25(0.5%) 81(0.6%) 53(0.7%) 35(0.4%) 16(0.2%)
ニューモシスチス肺炎 22(0.44%) 25(0.18%) 26(0.34%) 14(0.18%) 10(0.13%)
結核 14(0.28%) 10(0.08%) 9(0.12%) 5(0.06%) 4(0.05%)
治療薬
• 抗リウマチ薬(DMARD)–従来の合成DMARD(csDMARD)• 免疫調整剤(サラゾスルファピリジンなど)
• 免疫抑制薬(MTX,レフルノミド,タクロリムスなど)
–生物学的製剤(bDMARD)–特異的分子を標的としたtsDMARD(JAK阻害薬)
• ステロイド剤
• 消炎鎮痛薬(NSAID)
炎症性サイトカインは、伝達経路を介して細胞内へシグナルを伝達する。
JAKシグナル伝達経路
Sykシグナル伝達経路
MAPKシグナル伝達経路
PI3Kシグナル伝達経路
NFκBシグナル伝達経路
細胞核
細胞質
細胞膜
サイトカイン
シグナル伝達により、炎症性サイトカインの産生が亢進する。
炎症性サイトカインが過剰に産生される。
新たな免疫細胞が滑膜に浸潤することにより炎症の持続と組織破壊を引き起こす。
活性化された免疫細胞
JAKJAK
RAにおけるサイトカインループとJAK Pathway
トファシチニブバリシチニブTNF-α IL-6
生物製剤
トファシチニブ<内服方法>
1回5mg 1日2回
<副作用>
感染症(敗血症、肺炎、結核、帯状疱疹)、肝機能障害、白血球減少、貧血、憩室炎穿孔、催奇形性など
<併用注意>
EM,CAM,アゾ-ル系抗真菌薬、Ca拮抗薬、グレープフルーツ、フルコナゾールで血中濃度上昇
REF、抗てんかん薬、セイヨウオトギリソウで血中濃度低下
<妊娠・授乳>禁忌
バリシチニブ
<内服方法>
1回4mg 1日1回 (2mg;eGFR<60、中止;eGFR<30)
<副作用>
感染症(敗血症、肺炎、結核、帯状疱疹)、肝機能障害、白血球減少、貧血、憩室炎穿孔、コレステロール上昇、静脈血栓症、CK上昇、筋肉痛、催奇形性、など
<併用注意>
プロベネシドで本剤の血中濃度上昇
<妊娠・授乳>禁忌
JAK阻害薬
• 帯状疱疹や各種感染症がやや多い
• 感染症、CK上昇、血球減少、肝障害などの重篤例は少ないが多彩な副作用がある
• Bio無効例にも有効
• 中止で比較的短期間で症状再燃あり
生物製剤・JAK使用中の日和見感染症
<CISA>12国立大学病院の医療データベース
方法;2010年1月から2017年4月の間、1886782名のうち、
生物製剤・JAK阻害薬を投与されたRA患者6137名について
日和見感染の発症について検討した。
結果; 発症率 発症までの期間(中央値)
帯状疱疹 158例(2.57%) 422日
ニューモシスチス肺炎 52例(0.85%) 264日
結核 27例(0.44%) 388日
感染症リスクが最も高い薬;トファシチニブ 7.4%(9/122)
MTX(-)・PSL(-);1.32%、MTX(+)・PSL(-); 1.59%、
PSL(+) ;3.07%、MTX(+)・PSL(+); 3.10%
(高林克日己 JCR2018年)
Take Home Message
・喫煙や歯周病が、関節リウマチの発症と深く関係していることが分かってきました。新たに関節リウマチを発症しないためにも、関節リウマチを改善させるためにも、歯周病の予防や喫煙しないことが重要です。
・MTXや生物製剤、JAK阻害薬など効果的な薬の登場で、関節リウマチは症状がなく(臨床的寛解)、関節破壊を起こさない(構造的寛解)治療が実現できるようになりました。
・その実現には、定期的に関節エコーやDASなどのツールを使い病気の状態を総合的に評価して、医師と患者さんが治療法を適切に見直し、より良い状態を維持することが重要です。
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