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LAMMPSを用いたゴム物性の分子動力学シミュレーション

東洋ゴム工業株式会社日野 理

第1回「京」における材料系ワークショップ〜LAMMPSを中心として〜2016年2月19日

2

発表内容

なぜLAMMPSか? 分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ 分子動力学による“ゴム物性試験法” 応力-歪み特性 膨潤特性 粘弾性特性

今後の予定

3

なぜLAMMPSか?

世の中には多くの優れた分子動力学ソルバーが存在する

4

なぜLAMMPSか?

できれば無償の方がよい

5

なぜLAMMPSか?

ゴムの力学物性シミュレーションを行いやすいか?

6

なぜLAMMPSか?

LAMMPSの利点

シンプルなコーディング 計算速度もOK 種々のシミュレーション/ポテンシャル GCMC、DPD、SLLOD、PERI、EAM、TERSOFF

細かな物性値のOn the Fly計算機能 xxx/atom、compute group

7

なぜLAMMPSか?

LAMMPSの難点

マニュアルが難解 チュートリアルがない⇒ 使えるようになるための修練が必要

8

なぜLAMMPSか? 分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ 分子動力学による“ゴム物性試験法” 応力-歪み特性 膨潤特性 粘弾性特性

今後の予定

9

分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ

構造モデルの作成相互作用パラメータの

決定構造の安定化

十分に長い時間発展計算

エネルギー関数の計算と出力

長時間平均による物性値の計算

物質の微視的構造と分子間相互作用の決定

計算機性能、計算手法

分子動力学計算の手順

10

分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ

構造モデルの作成相互作用パラメータの

決定構造の安定化

十分に長い時間発展計算

エネルギー関数の計算と出力

長時間平均による物性値の計算

原理的な困難

頑張り次第、ex.京コンピュータ使用など

分子動力学計算の手順

11

分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ

頑張り次第で行けそうなもの(紫部分が解決できるもの)

半導体(CPU、DRAM)

金属(チタン合金)

生体分子(ヘモグロビン)

水(低分子液体)

気体

12

分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ

原理的に困難なもの(構造も相互作用も決定が困難)“高分子材料”と総称されるものに共通する問題

末端変性SBR使用AAAタイヤナノエナジーシリーズhttp://www.toyorubber.co.jp/

ドラッグデリバリーシステム高耐熱ポリイミドを使用

有機伝導ポリマー超薄膜太陽電池

機体の50%以上が炭素繊維材料

13

分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ

我々が考える一つのアプローチ

材料の微視的構造を原子レベルでモデル化しない 組成(ポリマー、フィラー、配合物)の特徴は取り入れる ゴムの物性試験値を定量的に再現する

暫定的だが実用的である 分子モデル作成の過程でゴムの物理的・化学的性質について深く考察しなければならない

粗視化法による定量的な現象論モデルの構築し、物理量を分子動力学シミュレーションにより算出する

14

なぜLAMMPSか? 分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ 分子動力学による“ゴム物性試験法” 応力-歪み特性 膨潤特性 粘弾性特性

今後の予定

15

分子動力学による“ゴム物性試験法”

ゴムの物性試験値を定量的に再現するモデルの作成⇒ そもそもゴム物性を分子動力学で計算できなければならない

応力-歪み特性

変形対する応力の計算

膨潤特性溶媒の化学ポテンシャル計算に基づく膨潤度決定

粘弾性特性

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

1.E-04

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

1.E+01

1.E+02

1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00 1.E+01tanδ

弾性率

周波数/(1/τ )

G' G'' tanδ

グリーン・久保公式に基づく粘弾性計算

16

応力-歪み特性

ゴムという材料を最もよく特徴づける物性

種々の用途に応じて伸び率や柔らかさ(硬さ)を制御することがゴム材料開発の基本

17

応力-歪み特性

ゴムの歪みに関する仮定 歪みによる体積変化がない 応力歪みの関係は方向によらない(等方性)

1 2

2 2 2

1 1 2 3

2 2 2 2 2 2

2 1 2 2 3 3 1

2 2 2

3 1 2 3

,

1

W W I I

I

I

I

歪みエネルギー密度

歪み不変量(二つの自由度)

体積変化がないので1になる

主歪み

18

応力-歪み特性

2 2 2 2 2

1 1 1 2 1 3

1 2

2 2 2 2 2

2 2 1 2 2 3

1 2

2 2 2 2 2

3 3 1 3 2 3

1 2

2

2

2

W W

I I

W W

I I

W W

I I

分子動力学シミュレーションにより計算できる

歪みエネルギー密度関数の歪み不変量微分と主応力(真応力)の関係

19

応力-歪み特性

歪みエネルギー密度の歪み不変量による微分

2 2 2 2

1 2 1 2 3 1 3 1 1 2 2 3

21 1 2

2 2 2

1 1 2 3 3 1 1 2 2 3

22 1 2

2

2 3

3

2 3

I I IW

I I I

IW

I I I

モデルを変形させ(歪みを与え)ながら、分子動力学シミュレーションを行い、これらの値を計算する

20

応力-歪み特性

純せん断

21

応力-歪み特性

一軸伸長

22

応力-歪み特性

均等二軸引張

23

応力-歪み特性

0.0E+0

5.0E-3

1.0E-2

1.5E-2

2.0E-2

2.5E-2

3.0E-2

3.5E-2

1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5

Ogden(純せん断)MD(純せん断)

0.0E+0

1.0E-2

2.0E-2

3.0E-2

4.0E-2

5.0E-2

6.0E-2

7.0E-2

8.0E-2

9.0E-2

1.0E-1

1 2 3 4 5 6 7 8

Ogden(一軸伸長)

MD(一軸伸長)

0.0E+0

2.0E-3

4.0E-3

6.0E-3

8.0E-3

1.0E-2

1.2E-2

1.4E-2

1.6E-2

1.8E-2

1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9

Ogden(均等二軸)MD(均等二軸)

MD計算の結果得られた応力と歪みの関係をOgdenモデルによりフィッティングした図 ⇒ 実際の試験結果から超弾性モデルを作成するのと同様

24

膨潤特性

膨潤試験=ゴムの架橋密度(有効分子鎖密度)を評価するための標準的試験

ゴム中の分子鎖と溶媒の化学的相互作用によって膨潤度が決まる

25

膨潤特性

溶媒分子が架橋ゴムに溶けてゴムが膨張

架橋点

ポリマー

溶媒分子

平衡膨潤の条件

, , 0T T T 純溶媒 溶媒 溶媒

φ:ゴムの体積分率T :温度

26

膨潤特性

高分子溶液中の溶媒化学ポテンシャルを計算しFlory-Huggins公式にしたがって、純溶媒化学ポテンシャルとFlory-Huggisnパラメータを決定

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

溶媒化学ポテンシャル/ε

膨潤度

高分子溶液中の溶媒化学ポテンシャルの計算値

純溶媒化学ポテンシャル

Flory-Huggins理論による化学ポテンシャル

21ln 1 1 ln

A

N

kTP

混合混合 純溶媒

純溶媒

高分子溶液体積/高分子体積

熱力学積分法により高分子溶液中の溶媒化学ポテンシャルを算出

27

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1 2 3 4 5 6 7 8

化学ポテンシャル

膨潤度

膨潤ゴム中の溶媒化学ポテンシャルの計算値

高分子溶液計算で決定した純溶媒化学ポテンシャル

Flory-Rehner理論による化学ポテンシャル

膨潤特性

膨潤ゴム中の溶媒化学ポテンシャルを計算しFlory-Rehner公式にしたがって有効分子鎖数と平衡膨潤度を決定する

高分子溶液体積/高分子体積

熱力学積分法により膨潤ゴム中の溶媒化学ポテンシャルを算出

Flory-Hugginsパラメータは高分子溶液計算で得られたものを使用

13.535841

V

V 平衡膨潤

ドライ

2

1 3

ln 1 1 ln

2

a

V

Va

ドライ有効

ドライ

28

粘弾性特性

ゴムの変形に対する応力応答は時間遅れ(=エネルギー損失)を伴う=“粘” 弾性

タイヤでは、使用しているゴム材料の粘弾性が転がり抵抗(=燃費性能)とブレーキ性能に直結することが分かっている

タイヤ用ゴム材料で極めて重視される物性

29

粘弾性特性

グリーン久保公式による応力緩和計算 1960年代から知られていたが、MD計算への適用は困難だった

0

B

B

1 1lim

3

: : : : :

応力緩和, ボルツマン定数, 体積, 積分範囲, 圧力テンソル

L

ij ijL

i j

VG t P P t d

k T L

G k V L P

長時間部分の応力緩和がノイズに埋まる⇒転がり抵抗に対応

30

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07

応力緩和

時間/τ

粘弾性特性

Likhtman(Macromolecules 2007, 40, 6748-6757)によるMulti-tau相関法の適用により長時間相関関数の精密な計算が可能

長時間部分の応力緩和の振る舞いが劇的に改善

31

粘弾性特性

応力緩和をラプラス変換表示し、これを片側フーリエ変換して粘弾性(複素弾性率)を算出する

0 0

2 2

0 2 2

2 2

exp ln

ln1

ln1

tan

tG t G G t G H d

G G H d

G H d

G

G

貯蔵

損失

損失

貯蔵

32

粘弾性特性

応力緩和をラプラス変換表示し、これを片側フーリエ変換して粘弾性(複素弾性率)を算出する

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

1.E-03

1.E-02

1.E-01

1.E+00

1.E+01

1.E+02

1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00 1.E+01

tanδ

弾性率

周波数/(1/τ )

G'

G''

tanδ 複素弾性率の広範囲にわたる周波数分散

線形粘弾性

33

なぜLAMMPSか? 分子動力学によるゴム材料の力学物性へのアプローチ 分子動力学による“ゴム物性試験法” 応力-歪み特性 膨潤特性 粘弾性特性

今後の予定

34

今後の予定

実際の架橋ゴムのモデリングを開始

フィラー充填ゴムの物性試験およびモデリング法の考察

分子動力学シミュレーションのゴムの摩擦・摩耗特性への応用

ご清聴ありがとうございました

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