autopoiesis 2

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Autopoiesis 2 社社社社 2006/09/24 社社 社 Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc. All Rights Reserved.

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システム論の一種である、オートポイエシスに関する河本英夫氏の著書の要約。1回目は動的平衡系を紹介。

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Autopoiesis 2

社内教育  2006/09/24増谷 修

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Page 2: Autopoiesis 2

構成構成

オートポイエーシスの理解のためには前史とシステム論の理論も理解する必要がある。

1. 動的平衡系(第一世代システム)2. 自己組織化(第二世代システム)3. オートポイエーシス(第三世代システム)

今回は 2 .

オートポイエーシスの理解のためには前史とシステム論の理論も理解する必要がある。

1. 動的平衡系(第一世代システム)2. 自己組織化(第二世代システム)3. オートポイエーシス(第三世代システム)

今回は 2 .Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory,

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Page 3: Autopoiesis 2

第二世代システム第二世代システム第一世代との違いは?

•動的平衡→動的非平衡•定常的形態、関係、→秩序形成そのものが焦点•形態は:定常的な関係の維持の表現→連続的な生成プロセスが静止してみえるようなシステムの表現

典型事例•胚発芽:未分化な胚が細胞分裂を繰り返し個体へと形成される

第一世代との違いは?•動的平衡→動的非平衡•定常的形態、関係、→秩序形成そのものが焦点•形態は:定常的な関係の維持の表現→連続的な生成プロセスが静止してみえるようなシステムの表現

典型事例•胚発芽:未分化な胚が細胞分裂を繰り返し個体へと形成される

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自己組織化自己組織化

すでに身近なもの•結晶生成、河川の蛇行、植相の変遷、動物の変態

しかし第一世代システムのように整理されていない•現在なお認知システムや、批評の言説への応用が企てられている

•無機的、有機的自己組織化が架橋されていない

すでに身近なもの•結晶生成、河川の蛇行、植相の変遷、動物の変態

しかし第一世代システムのように整理されていない•現在なお認知システムや、批評の言説への応用が企てられている

•無機的、有機的自己組織化が架橋されていない

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Page 5: Autopoiesis 2

焦点は何?焦点は何? 進化論

• 個体差の蓄積が種の差異へ(ウォーレス、ダーウィン)• この理論が解明するのは多様な形態の存在でありその形成ではない

個体発生学• ほとんどの生成プロセスの古典的枠組みが備わっている

自己組織化の焦点はどこか? 「外的原因によらず、自分自身で組織化すること」と答えても無駄

組織化のプロセスの結果、つくりだされたものが「自己」であって、つくりつけの「自己」がなにか別の自己をつくるわけではないから

進化論• 個体差の蓄積が種の差異へ(ウォーレス、ダーウィン)• この理論が解明するのは多様な形態の存在でありその形成ではない

個体発生学• ほとんどの生成プロセスの古典的枠組みが備わっている

自己組織化の焦点はどこか? 「外的原因によらず、自分自身で組織化すること」と答えても無駄

組織化のプロセスの結果、つくりだされたものが「自己」であって、つくりつけの「自己」がなにか別の自己をつくるわけではないから

自己組織化という口当たりのよい言葉は無理をすればほとんどの現象の記述に適用することができる

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前成説と後成説前成説と後成説

発生胚から秩序だった形態をもつ個体が形成されることの説明

前成説• 生成プロセスで形成されるものは、出発点で微妙な形で備わっている(原基的構造)

後成説• 未分化で一様な質料が生成プロセスにおいて徐々に秩序だった形態へ形成される

発生学のもっとも大枠での理論分類で、それぞれ信じがたいほどのバージョンが存在する

発生胚から秩序だった形態をもつ個体が形成されることの説明

前成説• 生成プロセスで形成されるものは、出発点で微妙な形で備わっている(原基的構造)

後成説• 未分化で一様な質料が生成プロセスにおいて徐々に秩序だった形態へ形成される

発生学のもっとも大枠での理論分類で、それぞれ信じがたいほどのバージョンが存在する

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前成説前成説 秩序だった形態のそれぞれの機関の由来を連続的にたどっていけるはずである(ハラー)• システムの生成コードが同じであることを主張• 個体の形態(入れ子説)、部分の空間的位置価(ハラー)、胚種(ボネ)、情報(現代遺伝学)をコードにしている

説明できないこと• トカゲの尻尾切:尻尾は胚種から連続的に形成されてきたはずだが、再生するところをみると、頭部にも尻尾の胚種が残っているとしなければならない

昆虫の変態など劇的な変化 同一のコードによって行われる場合は 自己組織化とは呼ばない

秩序だった形態のそれぞれの機関の由来を連続的にたどっていけるはずである(ハラー)• システムの生成コードが同じであることを主張• 個体の形態(入れ子説)、部分の空間的位置価(ハラー)、胚種(ボネ)、情報(現代遺伝学)をコードにしている

説明できないこと• トカゲの尻尾切:尻尾は胚種から連続的に形成されてきたはずだが、再生するところをみると、頭部にも尻尾の胚種が残っているとしなければならない

昆虫の変態など劇的な変化 同一のコードによって行われる場合は 自己組織化とは呼ばない

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後成説後成説

生成の過程でそのつどコードを形成する

ダントの物語文的に分類• 複雑化の物語(オーケン、スペンサー)• 反復の物語(ヘッケル)•個別化の物語(フォン・ベーア)

生成の過程でそのつどコードを形成する

ダントの物語文的に分類• 複雑化の物語(オーケン、スペンサー)• 反復の物語(ヘッケル)•個別化の物語(フォン・ベーア)

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複雑化の物語複雑化の物語

システムは最初ゼロから始まり、決まった順序で器官をつけたしていき複雑さを増していく• 「進化」の基準として(スペンサー)

しかし、病気、死後の各部位の部分的変質は複雑性の増大だが、進化というのには価値感情にそぐわない• 「カオスより秩序」への移行する「定限的移行」のモードを導入

• このモードこそ、自己組織化

システムは最初ゼロから始まり、決まった順序で器官をつけたしていき複雑さを増していく• 「進化」の基準として(スペンサー)

しかし、病気、死後の各部位の部分的変質は複雑性の増大だが、進化というのには価値感情にそぐわない• 「カオスより秩序」への移行する「定限的移行」のモードを導入

• このモードこそ、自己組織化

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反復の物語反復の物語

システムの個体発生を下等な生物から高等な生物への移行に対応付ける

個体発生は漸次的系統発生の短期間の反復•この物語では病気は一時的に過去の段階へ

退行したという解釈になる

システムの個体発生を下等な生物から高等な生物への移行に対応付ける

個体発生は漸次的系統発生の短期間の反復•この物語では病気は一時的に過去の段階へ

退行したという解釈になる

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個別化の物語個別化の物語

発生は個別化の進行•動物共通→種に特有→個体に特有• 可能態から現実態への度合いが転化していく

自己組織化の生成プロセスはこの物語を手本にしている

生成プロセスをこの枠内で語る場合、観察者からの物語コードの導入が不可欠になる•第一世代システムと違うところ

発生は個別化の進行•動物共通→種に特有→個体に特有• 可能態から現実態への度合いが転化していく

自己組織化の生成プロセスはこの物語を手本にしている

生成プロセスをこの枠内で語る場合、観察者からの物語コードの導入が不可欠になる•第一世代システムと違うところ

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結晶化と相転移結晶化と相転移

動的非平衡システムのもっともわかりやすい事例• 溶液中の分子が偶然の外的要因によって特定の配置をとり、結晶の析出が開始される

•生成し増大し続ける結晶は溶液の濃度に応じて凹凸を生じ、様々な形態になる

動的非平衡システムのもっともわかりやすい事例• 溶液中の分子が偶然の外的要因によって特定の配置をとり、結晶の析出が開始される

•生成し増大し続ける結晶は溶液の濃度に応じて凹凸を生じ、様々な形態になる

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システム的にいうとシステム的にいうと

1. 初源の偶然性:生成プロセスは偶然開始される2. カスケードの非可塑性:生成プロセスが進行するか消えるかのどちらかに発散する

3. 相転移:システム全体の状態が一挙に変化する4. 生成プロセスの反復的進行:生成プロセスが継続する

5. 自己の境界の変動:環境との相互作用をつうじて6. システムの開放性:環境との間で物質代謝、エネ

ルギー代謝などをおこなう→自己組織システムの基本概念

1. 初源の偶然性:生成プロセスは偶然開始される2. カスケードの非可塑性:生成プロセスが進行するか消えるかのどちらかに発散する

3. 相転移:システム全体の状態が一挙に変化する4. 生成プロセスの反復的進行:生成プロセスが継続する

5. 自己の境界の変動:環境との相互作用をつうじて6. システムの開放性:環境との間で物質代謝、エネ

ルギー代謝などをおこなう→自己組織システムの基本概念

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協働現象協働現象

分子など要素がボトムアップ的に自己組織化すること•「シナジェスティックス」(ハーケン)

ベロウソスーザボチンスキー反応• 数種類の化合物を攪拌し、均一な混合液をつくると時間とともに赤青赤青と周期的に変化する

分子など要素がボトムアップ的に自己組織化すること•「シナジェスティックス」(ハーケン)

ベロウソスーザボチンスキー反応• 数種類の化合物を攪拌し、均一な混合液をつくると時間とともに赤青赤青と周期的に変化する

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エントロピーエントロピー

自己組織的な現象ではエントロピーの増大という原則に反する現象が生じているようにみえる• →閉鎖系でなく開放系だから• →負のエントロピーを外部から取り込んで自己維持する(ローレンツやシュレディンガー)

開放系で自動的な創造性が生じるなら、閉鎖系でも同じではないか?• →閉鎖系でも内部のいたるところに秩序の創造の

可能性がひそんでいる• →プリゴジンの言う「ゆらぎ」

自己組織的な現象ではエントロピーの増大という原則に反する現象が生じているようにみえる• →閉鎖系でなく開放系だから• →負のエントロピーを外部から取り込んで自己維持する(ローレンツやシュレディンガー)

開放系で自動的な創造性が生じるなら、閉鎖系でも同じではないか?• →閉鎖系でも内部のいたるところに秩序の創造の

可能性がひそんでいる• →プリゴジンの言う「ゆらぎ」

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無秩序から秩序へ無秩序から秩序へ

エントロピー増大は、マクロな現象• 各分子の動きで、一様に拡散する確率的頻度が一番高いということにすぎない

• 低い確率で、この動きと逆行する分子もある平衡状態から十分離れれば、逆行するような持続的な秩序化の現象の可能性がある•「ゆらぎをつうじての秩序形成」

ただし、自己組織化にはまだ何段階もの機構が必要である

エントロピー増大は、マクロな現象• 各分子の動きで、一様に拡散する確率的頻度が一番高いということにすぎない

• 低い確率で、この動きと逆行する分子もある平衡状態から十分離れれば、逆行するような持続的な秩序化の現象の可能性がある•「ゆらぎをつうじての秩序形成」

ただし、自己組織化にはまだ何段階もの機構が必要である

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開放性開放性

非平衡状態を保つには閉鎖系ではなく、つねにエネルギーの流れにさらされていなければならない

• 散逸構造(ブリコジン):熱の対流のように、エネルギーが外部から与えられている場合は存在し、熱平衡になると消えてしまう構造

アイゲンの生命の条件:1. 平衡から遠く離れた開放系→非平衡の開放性2. 自己増殖→システムの境界の変化3. 突然変異→システム内の未決定要因

非平衡状態を保つには閉鎖系ではなく、つねにエネルギーの流れにさらされていなければならない

• 散逸構造(ブリコジン):熱の対流のように、エネルギーが外部から与えられている場合は存在し、熱平衡になると消えてしまう構造

アイゲンの生命の条件:1. 平衡から遠く離れた開放系→非平衡の開放性2. 自己増殖→システムの境界の変化3. 突然変異→システム内の未決定要因

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システムの境界システムの境界

システムの境界はどのように設定されるのか• 境界が動かないシステム:第一世代でかたがつく• 変動する境界がそのつど決まることでシステムそのものが成立するもの→免疫システムなど

免疫:自己の境界を定める• 他者から移植された皮膚に対する拒否反応など• 予め確固とした自己を定めるようなものは何も無い

環境との相互作用を通じて境界が設定され、初めてシステムの自己が規定される。

システムの境界はどのように設定されるのか• 境界が動かないシステム:第一世代でかたがつく• 変動する境界がそのつど決まることでシステムそのものが成立するもの→免疫システムなど

免疫:自己の境界を定める• 他者から移植された皮膚に対する拒否反応など• 予め確固とした自己を定めるようなものは何も無い

環境との相互作用を通じて境界が設定され、初めてシステムの自己が規定される。

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Page 19: Autopoiesis 2

免疫システム免疫システム 1種類の造血幹細胞(マクロファージ、 T 細胞、 B細胞など)

マウスの造血幹細胞• A の細胞を Bの中で成熟させると、 A でなく Bを自己と認識

• さらに、同じ細胞を Cで成熟させると、 Cを自己と認識、B,Aは非自己に

• 「自己」「非自己」の識別能力は環境に応じて著しい可塑性を示す

システムが作動する際、みずから備えるコードでなく、環境との関係によってはじめてコードが形成させる

1種類の造血幹細胞(マクロファージ、 T 細胞、 B細胞など)

マウスの造血幹細胞• A の細胞を Bの中で成熟させると、 A でなく Bを自己と認識

• さらに、同じ細胞を Cで成熟させると、 Cを自己と認識、B,Aは非自己に

• 「自己」「非自己」の識別能力は環境に応じて著しい可塑性を示す

システムが作動する際、みずから備えるコードでなく、環境との関係によってはじめてコードが形成させる

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困惑困惑

こうしたシステムには、あらかじめ備わった自己は何も無い• また、システム自体の生成プロセスに観察、

判別できるような同一の自己は存在しない•システムは環境との相互作用の結果、さま

ざまに変身しうるだけではなく、そもそも、変身しうる本体などどこにもない

「本体なき本体」「実体なき実体」「システムなきシステム」・・・

こうしたシステムには、あらかじめ備わった自己は何も無い• また、システム自体の生成プロセスに観察、

判別できるような同一の自己は存在しない•システムは環境との相互作用の結果、さま

ざまに変身しうるだけではなく、そもそも、変身しうる本体などどこにもない

「本体なき本体」「実体なき実体」「システムなきシステム」・・・

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こういった表現には気恥ずかしいようなカッコよさがある。実のところ実定的に語ろうとするため否応なしに到達した表現にすぎない

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システムの設定の仕方システムの設定の仕方

溶液内の結晶の例で1. 結晶をシステムとし、溶液を環境とすし、増大する結晶自己組織システムとする

2. 溶液内の結晶生成プロセスをシステムの構成要素とし、生成プロセスの集合をシステムとする。

• このとき結晶は生成プロセスの廃棄物 自己組織化システムとしての視点は1

溶液内の結晶の例で1. 結晶をシステムとし、溶液を環境とすし、増大する結晶自己組織システムとする

2. 溶液内の結晶生成プロセスをシステムの構成要素とし、生成プロセスの集合をシステムとする。

• このとき結晶は生成プロセスの廃棄物 自己組織化システムとしての視点は1

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視点の違い視点の違い

視点1• 結晶の境界はインプットとアウトプットの差で決まる

• 観察者はこの境界を空間内に観察することができる 視点2

• 作動はシステムの一状態ではなく、作動そのものを構成要素とする

• 結晶形成プロセス全体がシステム• 境界は空間的には定まらない• システムの維持には生成プロセスが反復的に継続しなければならない

視点1• 結晶の境界はインプットとアウトプットの差で決まる

• 観察者はこの境界を空間内に観察することができる 視点2

• 作動はシステムの一状態ではなく、作動そのものを構成要素とする

• 結晶形成プロセス全体がシステム• 境界は空間的には定まらない• システムの維持には生成プロセスが反復的に継続しなければならない

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Page 23: Autopoiesis 2

観察者観察者

視点1:境界は(おおむね空間的に)観察者によって取り出されている•結晶など単純な場合はいいが、生態システムや社会システムの場合は観察者に気を配らなければならない

視点2:システムそのものにとって境界を指定しうるよう、システムの規定を導入•→オートポイエーシス的視点• (ただし、結晶システム自体はオートポイエーシスシステムではなく自己組織システム)

視点1:境界は(おおむね空間的に)観察者によって取り出されている•結晶など単純な場合はいいが、生態システムや社会システムの場合は観察者に気を配らなければならない

視点2:システムそのものにとって境界を指定しうるよう、システムの規定を導入•→オートポイエーシス的視点• (ただし、結晶システム自体はオートポイエーシスシステムではなく自己組織システム)

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Page 24: Autopoiesis 2

産出産出

シェリングの有機構成自己自身へと回帰するように産出が反

復されることが産出の自己維持• 反復を意味する“ポテンツ”がそのまま次元を支持する名称になる

産物の中にはそれ自体産出的であるものが存在し、産出性が再産出される•より高次のポテンツをなす• 階層分化を表現している

シェリングの有機構成自己自身へと回帰するように産出が反

復されることが産出の自己維持• 反復を意味する“ポテンツ”がそのまま次元を支持する名称になる

産物の中にはそれ自体産出的であるものが存在し、産出性が再産出される•より高次のポテンツをなす• 階層分化を表現している

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Page 25: Autopoiesis 2

階層生成階層生成

唯一継承しうるのはシェリングのポテンツ論 3つのタイプ1. 要素の相互作用で複合体が生成される2. 生成プロセスが継続的生成プロセスを引き起こす

3. 生成プロセスの産物がみずからを産出する触媒となって生成するプロセスを持続させる

従来の階層生成は1

唯一継承しうるのはシェリングのポテンツ論 3つのタイプ1. 要素の相互作用で複合体が生成される2. 生成プロセスが継続的生成プロセスを引き起こす

3. 生成プロセスの産物がみずからを産出する触媒となって生成するプロセスを持続させる

従来の階層生成は1

正直なところ階層生成の機構はいまだ主観的に議論されていない。そのため一から手作りで組み立てていかなければならない。

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階層生成第一の型階層生成第一の型

要素ー複合体関係化合物の合成はすべてこれ 階層形成を特徴つけるのはエネルギーの安定度のようなもの• ひとつの階層が要素の加算的総和とはまったく別水準であることしかいっていない

•異質な相互作用は扱わない

要素ー複合体関係化合物の合成はすべてこれ 階層形成を特徴つけるのはエネルギーの安定度のようなもの• ひとつの階層が要素の加算的総和とはまったく別水準であることしかいっていない

•異質な相互作用は扱わない

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Page 27: Autopoiesis 2

階層生成第二の型階層生成第二の型

円環形成による階層形成 ベロウソスーザボチンスキー反応など

• 80ほどの反応式からなる。•自働的、反復的 •一般に「生きている」と直観される最小限の特徴

円環が一つの階層をなす「生命の飛躍」はほとんど不要になる

円環形成による階層形成 ベロウソスーザボチンスキー反応など

• 80ほどの反応式からなる。•自働的、反復的 •一般に「生きている」と直観される最小限の特徴

円環が一つの階層をなす「生命の飛躍」はほとんど不要になる

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Page 28: Autopoiesis 2

円環の形成により円環の形成により

階層が生じ、システムにとってはじめて内、外の区分が生じる

自己組織システムが不断に作動している。円環の内が自己

生成プロセス、物質のなかに、円環に資するもの、抑制するもの、無関心なものに区別される

閉鎖システムでない関係ネットワークと構成要素が同時成立する

階層が生じ、システムにとってはじめて内、外の区分が生じる

自己組織システムが不断に作動している。円環の内が自己

生成プロセス、物質のなかに、円環に資するもの、抑制するもの、無関心なものに区別される

閉鎖システムでない関係ネットワークと構成要素が同時成立する

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Page 29: Autopoiesis 2

階層生成第三の型階層生成第三の型

自己触媒システム~ハイパーサイクル生成プロセスの産物がみずからを産出する生成プロセスの調整因子となる•自己の機能が二重化する• Ex.心地よい眠りにより見た心地よい夢が

ますます心地よい眠りを加速させる X→I Iは無秩序状態 X から生成する:偶然

自己触媒システム~ハイパーサイクル生成プロセスの産物がみずからを産出する生成プロセスの調整因子となる•自己の機能が二重化する• Ex.心地よい眠りにより見た心地よい夢が

ますます心地よい眠りを加速させる X→I Iは無秩序状態 X から生成する:偶然

I

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有機体での自己触媒有機体での自己触媒

単なる科学的反応では Iが加速度的に増大するが、有機体では必要に応じて抑制する

生命:触媒を用いた遅延の機構自らの作動が自己自身へと影響しながら作動する

単なる科学的反応では Iが加速度的に増大するが、有機体では必要に応じて抑制する

生命:触媒を用いた遅延の機構自らの作動が自己自身へと影響しながら作動する

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Page 31: Autopoiesis 2

自己触媒円環の特徴自己触媒円環の特徴

システムが形成されてからのシステム階層の高まりには自己自身を何重にも変数とするような自己回帰的円環形成が成立する

同一の生成産物が生成プロセスを触媒している• →自らと同一の物質の産出を指令しているようにみえる

• →触媒は情報をもって指令しているという サイクルの境界は内的な情報により定められているようにみえる• →コード形成

システムが形成されてからのシステム階層の高まりには自己自身を何重にも変数とするような自己回帰的円環形成が成立する

同一の生成産物が生成プロセスを触媒している• →自らと同一の物質の産出を指令しているようにみえる

• →触媒は情報をもって指令しているという サイクルの境界は内的な情報により定められているようにみえる• →コード形成

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Page 32: Autopoiesis 2

自己触媒による階層生成自己触媒による階層生成あるプロセスの産物が次の生成プロセスを触

媒する場合→新たな階層 高次の組織化

• 中途に他の生成プロセスが入ることも可能• どこかが欠けても容易に修復可能

例:可処分所得と金融資産がほどほどに備わった消費プロセス• 支払いの行為の産物が次の支払いを触媒

例:一本鎖 RNAの複製機構• 上下逆のレプリカを生成• レプリカが触媒になりレプリカのレプリカがつくられる

あるプロセスの産物が次の生成プロセスを触媒する場合→新たな階層

高次の組織化• 中途に他の生成プロセスが入ることも可能• どこかが欠けても容易に修復可能

例:可処分所得と金融資産がほどほどに備わった消費プロセス• 支払いの行為の産物が次の支払いを触媒

例:一本鎖 RNAの複製機構• 上下逆のレプリカを生成• レプリカが触媒になりレプリカのレプリカがつくられる

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Page 33: Autopoiesis 2

ハイパーサイクルハイパーサイクル

さらに複雑な触媒サイクル自己複製を行うと同時にこの複製をつうじてサイクルの各段階の生成プロセスを媒介するサイクルが閉じたとき

自己複製と、上位プロセスの産物の生成を同時に行う

自己複製することが、同時に全サイクルを作動させることに参加する

さらに複雑な触媒サイクル自己複製を行うと同時にこの複製をつうじてサイクルの各段階の生成プロセスを媒介するサイクルが閉じたとき

自己複製と、上位プロセスの産物の生成を同時に行う

自己複製することが、同時に全サイクルを作動させることに参加する

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Page 34: Autopoiesis 2

ハイパーサイクルの発展ハイパーサイクルの発展

ハイパーサイクルを構成要素とする高次のハイパーサイクルを生成:多階層化

各ハイパーサイクルが同時に複数のハイパーサイクルの構成要素になる

ハイパーサイクルを構成要素とする高次のハイパーサイクルを生成:多階層化

各ハイパーサイクルが同時に複数のハイパーサイクルの構成要素になる

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Page 35: Autopoiesis 2

ハイパーサイクルでの帰結ハイパーサイクルでの帰結

自己複製的な構成要素の自己とシステム全体の自己が二重化する

ハイパーサイクルによってようやく先験的な全体性を全面的に廃棄できる

ハイパーサイクルの形成は階層分化に新たな機構をもたらす

自己複製的な構成要素の自己とシステム全体の自己が二重化する

ハイパーサイクルによってようやく先験的な全体性を全面的に廃棄できる

ハイパーサイクルの形成は階層分化に新たな機構をもたらす

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Page 36: Autopoiesis 2

まとめまとめ

第一世代システムとは違い複雑な形をしている

オートポイエーシス一歩手前

第一世代システムとは違い複雑な形をしている

オートポイエーシス一歩手前

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