blochの定理の証明
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周期系に対するSchrödinger方程式
@dc1394
Blochの定理の証明
ポテンシャルの周期性
完全結晶においては、原子核は、Bravais格子ベクトル{ R }のセットによって表された周期的配列で配置される。
完全結晶は無限系であり、また、これらの格子ベクトルによる並進操作に対して対称性を有している。
また特に、ポテンシャルも周期的である。
これはすべてのBravais格子ベクトルに対して成り立つ。
並進演算子を定義する
このポテンシャル中において、一粒子の運動を表すSchrödinger方程式は、原子単位系で、
となる。ここで、各格子ベクトルRに対して、位置のどんな関数f(r)にも作用するような、並進演算子を定義する(以下(3)式)。
並進演算子の性質
ここで、ハミルトニアン(とポテンシャル)が周期的であるので、
これらの演算子は並進演算子と可換である(以下(5)式)。
すなわち、
である。
並進操作の固有値
そして、並進演算子はお互いに可換である(以下(7)式)。
従って、各格子ベクトルRに対応する量子数が存在しなければならず、また、ハミルトニアンの固有関数ψ(r)を、並進操作の固有関数にもなるように選ぶことができる。
ここで、 とψ(r)のノルムは1であるはずなので、
となる。
固有値c(R)の関数形
並進ベクトルの交換関係から、固有値c(R)は以下(10)式の関係を満たさなければならない。
さらに、N回(Nは任意の整数)並進操作を施したとき、
となるはずなので、固有値の関数c(X)において、考えられる関数形は、(9)式、(10)式、(11)式から、
である。
固有値
従って、3つの複素数{ xj }に関して、3つのプリミティブ格子ベクトル{ aj }に対して固有値を定義できる(以下(13)式)。
すべての格子ベクトルRは、
と表すことができる(ここでnjは整数とする)ので、(13)式から、
となる。
固有値c(R)の最終的な形
これから、結局、
となる。ここで、
である。ここで、{ gj }は逆格子ベクトルであり、
を満たす。そして、 { xj }は一般に複素数である。
Blochの定理の一つの形
よって、
となり、これがBlochの定理の一つの形である。
ここで、関数
を考えると、この関数u(r)は、
となるので、格子の周期性を有する。
Blochの定理のもう一つの形
この関数u(r)を用いると、波動関数は、
と書ける。ここで、
であり、これがBlochの定理のもう一つの形である。
固有状態をラベルする
ここで、ハミルトニアンと並進操作の固有状態をψkvでラベルすることにする。
ここでvは、量子ベクトルkとともに、異なったハミルトニアンの固有状態をラベルする量子数であり、並進対称性と関連している。
ここで、周期関数は常にFourier級数で表現できることに注意すると、
となる。
平面波の線形結合としてψkvを表現
ここで、Gは逆格子ベクトルであり、
である。ここで、mjは整数である。
したがって、平面波の線形結合としてψkvを表現でき、
となる。
Blochの定理からの結論
無限の空間のすべての波動関数に対して、Schrödinger方程式を解くことは結局、単一の単位格子の中でSchrödinger方程式を解くことに帰着されるが、しかし一方でkに対して可能な値すべてに対して、Schrödinger方程式を解かなくてはならない。
Schrödinger方程式を解きやすいように単純化する必要があり、kの値を制限するいくつかの境界条件を波動関数に課す必要がある。