第1章 簿記の基礎 第3章 第4章 - jusnet...付録 vii (百万円未満四捨五入) 科目...

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目次 i 第1章 簿記の基礎 第1節 簿記とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①-1 第2節 財務諸表での報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①-2 第2章 財務諸表の基礎 第1節 貸借対照表と資産・負債・純資産(資本) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-1 第2節 損益計算書と収益・費用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-7 第3節 貸借対照表と損益計算書の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-10 第3章 財務諸表作成の基礎 第1節 財務諸表作成の基本的な流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③-1 第2節 勘定への記入方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③-6 第4章 簿記の一巡の基礎(仕訳・転記・試算表及び帳簿) 第1節 仕訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-1 第2節 転記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-2 第3節 試算表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-7 第4節 帳簿の仕組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-13 第5章 取引と会計処理 第1節 期中取引及び会計処理の勉強法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-1 第2節 期中取引及び会計処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-2 第3節 繰越利益剰余金(純資産)と収益・費用の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-13 第6章 その他の債権・債務 第1節 貸付金・借入金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-1 第2節 未収金・未払金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-6 第3節 立替金・預り金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-9 第4節 仮払金・仮受金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-13 第7章 商品売買 第1節 三分割法(三分法) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-1 第2節 付随費用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-3 第3節 前払金・前受金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-7 第4節 返品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-9 第5節 約束手形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-12 第6節 受取商品券 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-15 第7節 クレジット売掛金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-16 第8節 電子記録債権・電子記録債務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-18 第9節 仕入帳と売上帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-20

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目次

i

第1章 簿記の基礎

第1節 簿記とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①-1

第2節 財務諸表での報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①-2

第2章 財務諸表の基礎

第1節 貸借対照表と資産・負債・純資産(資本) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-1

第2節 損益計算書と収益・費用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-7

第3節 貸借対照表と損益計算書の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ②-10

第3章 財務諸表作成の基礎

第1節 財務諸表作成の基本的な流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③-1

第2節 勘定への記入方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③-6

第4章 簿記の一巡の基礎(仕訳・転記・試算表及び帳簿)

第1節 仕訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-1

第2節 転記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-2

第3節 試算表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-7

第4節 帳簿の仕組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④-13

第5章 取引と会計処理

第1節 期中取引及び会計処理の勉強法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-1

第2節 期中取引及び会計処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-2

第3節 繰越利益剰余金(純資産)と収益・費用の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤-13

第6章 その他の債権・債務

第1節 貸付金・借入金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-1

第2節 未収金・未払金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-6

第3節 立替金・預り金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-9

第4節 仮払金・仮受金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑥-13

第7章 商品売買

第1節 三分割法(三分法) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-1

第2節 付随費用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-3

第3節 前払金・前受金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-7

第4節 返品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-9

第5節 約束手形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-12

第6節 受取商品券 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-15

第7節 クレジット売掛金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-16

第8節 電子記録債権・電子記録債務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-18

第9節 仕入帳と売上帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-20

目次

ii

第 10節 売掛金元帳と買掛金元帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-22

第 11節 人名勘定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-28

第 12節 受取手形記入帳・支払手形記入帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-30

第 13節 商品有高帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⑦-33

第 14節 分記法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦-45

第8章 現金預金

第1節 現金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑧-1

第2節 普通預金・当座預金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑧-7

第3節 小口現金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑧-12

第9章 その他の期中取引

第1節 有形固定資産 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑨-1

第2節 不動産の賃借 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑨-3

第3節 手形貸付金・手形借入金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑨-5

第4節 租税公課 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑨-8

第10章 期中取引におけるその他の諸論点

第1節 訂正仕訳の取扱い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑩-1

第2節 補助簿と取引の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑩-3

第11章 決算手続Ⅰ

第1節 決算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑪-1

第2節 有形固定資産の減価償却 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑪-3

第3節 売上原価の算定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑪-15

第4節 貸倒引当金の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑪-27

第5節 費用・収益の前払い・前受けと未収・未払いの計上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑪-39

第12章 決算手続Ⅱ

第1節 決算整理後の手続き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-1

第2節 決算整理後残高試算表の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-2

第3節 勘定の締め切り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-3

第4節 財務諸表の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-8

第5節 簿記の一巡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-13

第6節 月次決算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑫-19

第13章 決算手続Ⅲ

第1節 現金過不足の整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑬-1

第2節 貯蔵品の整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑬-7

第3節 当座借越 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑬-9

目次

iii

第4節 精算表の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑬-12

第14章 株式会社会計

第1節 株式の発行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑭-1

第2節 剰余金の配当 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑭-2

第3節 法人税等・消費税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑭-5

第15章 伝票会計

第1節 伝票会計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑮-1

第2節 一部現金取引 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑮-3

第3節 総勘定元帳への転記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑮-6

第16章 試算表の作成問題

第1節 試算表の作成問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑯-1

目次

iv

【MEMO】

付録

v

連結損益計算書

(百万円未満四捨五入)

科目 当期 前期 増減

百万円 百万円 百万円

売上高 17,294,760 15,501,553 1,793,207

商品・製品売上高 16,578,033 14,793,973 1,784,060

金融収益 716,727 707,580 9,147

売上原価並びに

販売費及び一般管理費 15,627,870 14,229,907 1,397,963

売上原価 13,506,337 11,914,245 1,592,092

金融費用 364,177 423,885 △ 59,708

販売費及び一般管理費 1,757,356 1,891,777 △ 134,421

営業利益 1,666,890 1,271,646 395,244

その他の収益(費用) 219,198 7,841 211,357

受取利息及び受取配当金 55,629 52,661 2,968

支払利息 (20,706) (30,467) 9,761

為替差益<純額> 38,187 35,585 2,602

持分法による投資損益 120,295 52,835 67,460

その他<純額> 25,793 (102,773) 128,566

税金等調整前当期純利益 1,886,088 1,279,487 606,601

法人税等 681,304 517,014 164,290

当期純利益 1,204,784 762,473 442,311

非支配株主に帰属する当期純利益 42,686 11,531 31,155

親会社株主に帰属する当期純利益 1,162,098 750,942 411,156

- 連結 11 -

付録

vi

連結貸借対照表

(百万円未満四捨五入)

科目 当期 前期 増減

百万円 百万円 百万円

(資産の部)

流動資産 8,391,292 8,237,085 154,207

現金及び現金同等物 1,729,776 1,592,028 137,748

定期預金 68,473 55,406 13,067

有価証券 448,457 605,483 △ 157,026

受取手形及び売掛金

(貸倒引当金控除後) 1,531,651 1,475,797 55,854

金融債権<純額> 2,622,939 2,505,140 117,799

未収入金 396,788 513,952 △117,164

たな卸資産 1,083,326 1,025,838 57,488

前払費用及びその他 509,882 463,441 46,441

有形固定資産 5,354,647 5,203,879 150,768

土地 1,135,665 1,064,125 71,540

建物 2,801,993 2,521,208 280,785

機械装置 7,693,616 7,089,592 604,024

車両 1,493,780 1,601,060 △ 107,280

建設仮勘定 237,195 211,584 25,611

減価償却累計額 (8,007,602) (7,283,690) △ 723,912

長期金融債権<純額> 3,228,973 2,569,808 659,165

投資及びその他の資産 5,065,316 4,142,202 923,114

投資有価証券 2,241,971 1,652,110 589,861

関連会社株式 1,370,171 1,279,645 90,526

従業員に対する貸付金 35,857 21,270 14,587

繰延税金資産 457,161 385,148 72,013

その他 960,156 804,029 156,127

資産合計 22,040,228 20,152,974 1,887,254

- 連結 12 -

付録

vii

(百万円未満四捨五入)

科目 当期 前期 増減

百万円 百万円 百万円

(負債の部)

流動負債 7,597,991 7,053,936 544,055

短期借入金 2,189,024 1,855,648 333,376

1年以内に返済予定の長期借入金 1,125,195 1,263,017 △ 137,822

支払手形及び買掛金 1,709,344 1,531,552 177,792

未払金 665,624 618,748 46,876

未払費用 1,133,281 1,063,496 69,785

未払法人税等 252,555 300,718 △ 48,163

その他 522,968 420,757 102,211

固定負債 5,817,377 5,662,572 154,805

長期借入金 4,247,266 4,137,528 109,738

退職給付引当金 725,569 1,052,687 △ 327,118

繰延税金負債 778,561 371,004 407,557

その他 65,981 101,353 △ 35,372

負債計 13,415,368 12,716,508 698,860

非支配株主持分(少数株主持分) 446,293 315,466 130,827

(純資産(資本)の部)

資本金 397,050 397,050 -

資本剰余金 495,179 493,790 1,389

利益剰余金 8,326,215 7,301,795 1,024,420

その他の包括利益累計額 (204,592) (604,272) 399,680

自己株式 (835,285) (467,363) △ 367,922

純資産(資本)計 8,178,567 7,121,000 1,057,567

負債・純資産合計 22,040,228 20,152,974 1,887,254

- 連結 13 -

※ 一部,現行の会計基準とは異なる表示をしている部分があります。

第1章 簿記の基礎

- ①-1 -

1 簿記とは

「簿記」とは、企業(会社や商店)の活動(取引)を一定のルールに従って記録し、報告書を作成

するための一連の手続きのことである。なお、「簿記」は、「帳簿記録」の略語であるというのが一

般的な説である。

すなわち、簿記の最終的な目的は、企業の財産や業績についての報告書を作成することである。こ

の報告書のことを 財務ざ い む

諸表しょひょう

という。

2 簿記で学習する主な内容

簿記では大きく以下の3点を学習していくことになる。

(1) 企業が行う活動(取引)の内容

企業は様々な活動(取引)を行うが、その内容(取引のイメージや取引を行う目的)を明確にイ

メージできなければ記録や財務諸表を作成することはできない。そのため、企業の活動が具体的に

どのようなものなのかを学習する必要がある。

(2) 企業の行った活動(取引)の記録の方法

企業が行う活動(取引)は日々記録を行う。この記録は無秩序に行うわけではなく、一定のルー

ルに従って記録することが求められているため、記録方法を学習する必要がある。

(3) 報告の方法(正しい財務諸表)

財務諸表は企業の財産や業績の状況を適切に表すものでなくてはならない。そのため、どのよう

に表せば企業の財産や業績の状況を正確に示すことができるのかを学習する必要がある。

簿記とは

1 第 節

≪ 簿記のイメージ ≫

第1章 簿記の基礎

- ①-2 -

1 財務諸表を作成し報告する目的

財務諸表を作成し報告するのはその企業自身である。企業は商店や会社のことをいうが、その内、

代表的な形態である株式会社(会社)について説明する。

株式会社(会社)とは、営利を目的として設立された組織である。会社は株主が出資を行うことで

設立され、その経営は経営者に委託する。設立後、会社は、経営者の指揮のもと、様々な活動を通じ

て利益を獲得する。最終的に、獲得された利益は株主に配当・分配される。

財務諸表は利害関係者が会社の状況を把握できるようにするために作成されるものである。作成は

経営者(会社)が行い、作成された財務諸表は会社を取り巻く様々な利害関係者に対して報告される。

≪ 株式会社のイメージ ≫

利害関係者とは企業に関心をもっている人々の総称である。財務諸表は様々な利害関係者に役

立つ情報を提供する。

株主(投資家) 会社に対して出資を行うべきかどうかの判断、持っている株式を売却す

るかどうかの判断に役立てる。

経営者 経営者は、会社の状況を今後の経営方針の立案に役立てる。

債権者(銀行) 銀行は、資金を融資する際の判断材料とする。

このうち、株主は、自分の財産を会社に出資し、当該財産の運用を会社に委託しているという

立場にある。そのため、利害関係者の中でも特に株主が会社の財産や業績に多大な関心をもって

いることになる。よって、簿記を学習する際は、基本的に、財務諸表は株主のために作成すると

考えるとよい。

≪ 利害関係者 ≫

財務諸表での報告

2 第 節

第1章 簿記の基礎

- ①-3 -

2 財務諸表が対象とする期間

企業は、継続して活動を行うため、ある一定期間の活動結果を報告するためには、期間を区切る必

要が生じる。この期間のことを「会計かいけい

期間き か ん

」という。会計期間は通常1年間である。なお、企業は

会計期間を任意に決定できる。

現在の会計期間を「当期と う き

」といい、この期間の最初を「期首き し ゅ

」、最後を「期末き ま つ

」、間を

「期中きちゅう

」という(以下の名称と区別するために「当期首とうきしゅ

」「当期中とうきちゅう

」「当期末とうきまつ

」というこ

ともある)。

また、対象とする会計期間の前の期間を「前期ぜ ん き

」といい、その最初を「前期首ぜんきしゅ

」、最後

を「前期末ぜんきまつ

」、間を「前期中ぜんきちゅう

」という。

さらに、対象とする会計期間の次の期間を「翌期よ く き

」といい、その最初を「翌期首よくきしゅ

」、最

後を「翌期末よくきまつ

」、間を「翌期中よくきちゅう

」という。なお、「翌期よ く き

」を「次期じ き

」ということもある。

日本の企業の多くは、以下のように4月1日~3月31日を会計期間としている。

また、日本の個人商店やアメリカの企業は、1月1日~12月31日を会計期間としている

ことが多い。

≪ 会計期間の概念 ≫

会計期間(当期) 翌期(次期) 前期

期首(

当期首)

期末(

当期末)

期末(

前期末)

期中(当期中) 期首(

翌期首)

会計期間(当期) 翌期(次期) 前期

×1年 3/31

×1年 4/1

×2年 3/31

×2年 4/1

第1章 簿記の基礎

- ①-4 -

3 財務諸表とは

簿記の記録を報告するための報告書を 財務ざ い む

諸表しょひょう

(Financialファイナンシャル

Statementsス テ イ ト メ ン ツ

:F/S)という。財務

諸表は、企業の財産や業績の状況を報告するものであるが、具体的には、「貸借たいしゃく

対照表たいしょうひょう

」と「損益そんえき

計算書けいさんしょ

」とに分類され、その内容は簿記の5要素(資産・負債・純資産・収益・費用)を用いて表

現される。

(1) 貸借対照表

貸借対照表(Balanceバ ラ ン ス

Sheetシ ー ト

: B/S)とは、一定時点における企業の「財政ざいせい

状態じょうたい

」を示すも

のである。ここで、財政状態とは、会社の財産の状況(資産や借金のバランス)のことである。

(2) 損益計算書

損益計算書(Profitプロフィット

andアンド

Lossロ ス

Statementステイトメント

: P/L)とは、一会計期間における企業の「経営けいえい

成績せいせき

」を示すものである。ここで、経営成績とは、企業のもうけの状況(収入や支出のバランス)のこ

とである。

< 重要ポイント!! >

構成要素(簿記の5要素)

貸借対照表・・・・・財政状態の表示 資産・負債・純資産

(B/S)

財務諸表

(F/S)

損益計算書・・・・・経営成績の表示 収益・費用

(P/L)

簿記の5要素の一つである「純資産」は「資本」ともいう。日商簿記検定3級では「資本」を

用いるが,日商簿記検定2級以上(公認会計士試験含む)では「純資産」を用いることになるため,

本テキストでは基本的に「純資産」という名称を用いている。

【 コラム~純資産と資本~ 】

第1章 簿記の基礎

- ①-5 -

< 重要ポイント!! >

日商簿記検定3級では商業簿記のみが出題される。

日商簿記検定2級以上では、商業簿記と工業簿記(原価計算)が出題される。

公認会計士試験では、商業簿記は「財務会計論」または「簿記」という名称になり、

工業簿記は「管理会計論」という名称になる。

簿記は、企業の業種によって、「商業簿記」と「工業簿記」とに分類される。

(1) 商業簿記

商業簿記とは、小売業、卸売業などで用いられる簿記である。商業簿記を用いる企業は、他

の企業(仕入先)から商品を購入し、その後、他の企業(得意先)に商品を販売することで利

益を得る業種である。

この場合、商品の購入(仕入)と商品の販売(売上)の記録がメインとなる。

(2) 工業簿記(原価計算)

工業簿記とは、製造業で用いられる簿記である。工業簿記を用いる企業は、他の企業から材

料(原料)を購入し、その後、工場で加工を行い、製品を製造し、他の企業に販売することで

利益を得る業種である。

商業簿記との違いは、製造(加工)という過程が加わり、製品を製造するためにいくらかか

ったのか(原価)を計算し、把握する必要がある点である。この原価を計算することを原価げ ん か

計算けいさん

という。

【 コラム~業種による簿記の分類~ 】