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27回長崎県糖尿病治療研究会 症例検討会

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Page 1: 第27回長崎県糖尿病治療研究会 - nim.co.jp · 2型糖尿病、バセドウ病。 既往歴:61歳時にバセドウ病と診断。アルコール:ビール 2~3本、焼酎4合。

第27回長崎県糖尿病治療研究会

症例検討会

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それでは症例1。

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症例1. 57歳、女性。家庭教師。2型糖尿病、脂質異常症、脂肪肝。

家族歴:糖尿病(-) 既往歴:最大体重 65kg(32歳時)

現病歴:20年前の健診で尿糖陽性。平成23年3月、特定健診に来院。HbA1c 10.6%、随時血糖 426mg/dlにて糖尿病と診断された。ケトン体(-)。別の日のFPG 282mg/dl、IRI 6.97μU/ml、GAD抗体(-)にて、アマリール1mg 1x、メトホルミン 500mg 2xを開始。4月下旬に眼科受診し、糖尿病網膜症(福田分類A1)を指摘された。

内服開始2週間後よりメトホルミンを750mgへ増量し、セイブル150mg 3xを追加。さらに1週間後よりアマリールを3mgへ増量している。5月7日の血糖 168mg/dl、HbA1c 9.3%。

現症:身長 151.4 cm、体重 56.8 kg(BMI 25.0 kg/m2)

【質問】

1. 今後の治療法は、どうしたらよいでしょうか?

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症例1のまとめ

57歳、女性 20年前より尿糖陽性

初診時にHbA1c 10.6%、血糖 426mg/dl

BMI 25.0と肥満あり

GAD抗体陰性、HOMA-R 4.4、HOMA-β 12.9%

現在は、アマリール3mg、メトホルミン750mg、

セイブル150mgでHbA1c 9.3%まで改善

糖尿病単純網膜症(+)

【質問】 今後の治療方針は?

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BMI ≧ 22 BMI < 22

HbA1c

6.5-10%

FPG <140 FPG ≧140

SU 少量から

A1c < 6.5 A1c≧ 6.5

SU 1錠

OK +

DPP4

糖尿病非専門医の為の簡単フローチャート(経口血糖降下薬)

BG& TZD

A1c < 6.5 A1c≧ 6.5

OK

BG&TZD

FPG <140 FPG ≧140

+SU 少量から

+ DPP4

+ DPP4

+ グリニド aGI

SU 1錠 アマリール3mg ダオニール2.5mg グリミクロン40mg

グリニド aGI DPP4

A1c < 6.5 A1c≧ 6.5

SU 少量から

OK

A1c < 6.5 A1c≧6.5

OK +

DPP4 SU 1錠

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次は症例2です。

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症例2.65歳、女性。2型糖尿病、バセドウ病。

既往歴:61歳時にバセドウ病と診断。アルコール:ビール 2~3本、焼酎4合。

現病歴:平成19年、バセドウ病の診断時、血糖 182mg/dl、HbA1c 6.4%

を指摘され、食事療法開始するも6ヵ月でドロップアウト。体重 50.8kg。

平成23年3月の健診にて血糖 406mg/dl、HbA1c 12.4%で糖尿病と診断され、4月12日来院時、口渇、多尿、体重減少あり。

現症:身長159.6 cm、体重 43.0 kg(BMI 16.9kg/m2)、

糖尿病網膜症(-)、糖尿病神経障害(+)

初診時データ:尿ケトン(+)、FPG 245mg/dl、HbA1c 13.7%、空腹時IRI

2.64μU/ml、空腹時CPR 1.3ng/ml、GAD抗体(-)、甲状腺ホルモン正常。

【質問】 1. インスリン分泌能低下による2型糖尿病と考えるが、インスリン分泌の指

標としては何が最適でしょうか? 2. すぐ入院にてインスリン加療すべきでしょうか?入院を拒否された場合、

どのような外来加療がよいでしょうか?

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症例2のまとめ

65歳、女性

2型糖尿病、バセドウ病(寛解期)

BMI 16.9と痩せ(+)

高血糖症状あり

尿ケトン(+)、FPG 245mg/dl、HbA1c 13.7%、

GAD抗体(ー)、空腹時CPR 1.3ng/ml

【質問】

インスリン分泌能の最適な指標

入院でインスリン治療すべきか

外来治療の場合の治療方針

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内因性インスリン分泌能を知る検査

1)グルカゴン負荷試験

早朝空腹時、グルカゴン1mg静注後の血中CPR測定

前値と負荷後5分値の差(ΔCPR)で判定

0.7~1.0以下 :インスリン療法

1.0 ~ 2.0 :経口血糖降下薬

2.0以上 :食事・運動療法

2)CPI: C-peptide Index

(空腹時CPR÷空腹時血糖)x 100

CPI < 0.8 :インスリン療法

CPI > 1.2 :経口血糖降下薬

3)HOMA-β

(空腹時インスリン x 360)÷(空腹時血糖-63)

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症例2のインスリン分泌・抵抗性の評価

空腹時血糖 245mg/dl

空腹時IRI 2.64μU/ml

空腹時CPR 1.3ng/ml

HOMA-R

= 245x2.64÷405= 1.6

HOMA-β

= (2.64x360)÷(245-63)

= 5.2%

CPI

= 1.3÷245x100= 0.53

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C-peptide index

空腹時CPR

空腹時血糖値

CPIの治療法選択への利用

CPI < 0.8 インスリン治療が必要

CPI 0.8~1.2 インスリンまたは経口血糖降下薬

CPI > 1.2 経口血糖降下薬でコントロール可能

CPI = x 100

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症例2の今後の治療方針

1.生活習慣の見直し(特に飲酒について)

2.入院の上、インスリン治療

3.入院を拒否した場合、

少量SU薬+DPP4阻害薬

少量SU薬+持効型インスリン(BOT療法)

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症例2の経過

インスリン抵抗性、インスリン分泌の経過 HOMA-R 1.6 → 1.3

HOMA-β 5.2 → 37.2

CPI 0.53→ 1.6

毎日の受診を約束し、

1)禁酒、2)1400kcal食事療法、3)30分歩行

4)アマリール 1mg 1x

2ヵ月で、HbA1c 13.7→10.2→7.2%と改善

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引き続き症例3です。

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症例3. 85歳、女性。2型糖尿病、高血圧

現病歴:平成11年より糖尿病、高血圧で通院、通所リハビリを利用している。平成15年よりオイグルコン5mg 1x、アクトス 15mg 1xを内服。平成16年より認知症が進行し、血糖コントロールが悪化したため、オイグルコン10mg、アクトス 30mgに増量。HbA1cは6.7%まで改善し、オイグルコン5mgに減量。平成18年に全身浮腫が強くなりアクトスを中止。その後もアクトスの効果はあるが浮腫のため使用しにくく、平成21年6月よりオイグルコン5mg+レベミル4単位(通所リハビリの週4日)のBOTを開始。レベミルを16単位まで増量するもHbA1c 10.7%となったため、アクトス7.5→15mg

を再開し、オイグルコンをアマリール2mgへ変更したところHbA1c 6.7%に改善した。現在は心丌全のためアクトスを中止している(HbA1c 9.5%)。

現症:身長147.0cm、体重 73.0kg(BMI 33.8 kg/m2)

検査所見:BUN 24.5mg/dl、Cr 1.10mg/dl、

FPG 167mg/dl、F-IRI 13.9μU/ml、F-CPR 2.5ng/ml

【質問】 今後の治療はどのようにしたらよいでしょうか?

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症例3のまとめ

85歳、女性

2型糖尿病、高血圧、認知症

BMI 33.8と肥満あり

アクトス15mgで浮腫(心不全)が出現

週4回のBOT(レベミル)ではコントロール困難

HOMA-R=5.7、HOMA-β=48.1、CPI=1.5

【質問】

今後の治療方針について

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アクトスと浮腫

通常量の投与により10%に末梢性浮腫が出現し、

インスリン注射との併用により15~20%に増加

浮腫の出現は用量依存性であるため少量投与法も

浮腫対策のひとつとなる

腎集合管におけるPPARgを活性化し、ENaCの発現

亢進を介してNa再吸収を亢進させる

利尿薬の中ではENaC阻害薬であるスピロノラクトン(アル

ダクトン)が有効である

Selective PPARγ Modulator (SPPARM)の開発

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症例3の今後の治療方針

1.心丌全に注意しながらアクトス7.5mg(あ

るいは1/4量)を隔日で内服

(NT-proBNPをモニターする)

2.アマリールに加えDPP4阻害薬を併用

3.メトホルミンの併用を検討

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最後は症例4です。

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症例4. 35歳、男性。尿糖陽性

既往歴、家族歴:特記事項なし

現病歴:会社の健診で尿糖(3+)を指摘され来院。血液検査にて、血糖

90mg/dl(食後3時間)、HbA1c 4.7%であった。

現症:身長170.0cm、体重 53.9kg(BMI 18.6 kg/m2)

75gOGTTの結果:

【質問】

1. インスリン分泌遅延がありますが、薬物治療は必要でしょうか?

2. このような症例では75gOGTTはルーチン検査とすべきでしょうか?

前 30分 60分 120分

PG(mg/dL) 84 139 128 92

IRI(μU/mL) 5.2 21.5 29.6 28.2

尿糖 陰性 ND ND ND

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症例4の75gOGTTの解釈

耐糖能は、正常型

Insulinogenic Index=0.30↓(初期インスリン分泌低下)

HOMA-R=1.07

HOMA-β=89.1%

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症例4の方針

1.耐糖能は正常型であるため薬物療法は丌要

2.腎性尿糖の鑑別のため、75gOGTT採血時に同時

に尿糖を測定 → 初期インスリン分泌低下にともなう食後高血糖で尿糖が検出

された可能性はないか?

→ 腎性尿糖でない場合、将来的にはインスリン抵抗性の増大により高血糖をきたす可能性もあるため、生活指導が必要

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今回、症例をお寄せいただいた先生方

(50音順)

ありがとうございました。

症例をお寄せいただいたことがない先生方は、

次回是非お願いいたします。

馬場医院 馬場是明先生 深堀内科医院 深堀茂樹先生 本田内科クリニック 本田孝也先生 わたべクリニック 渡部誠一郎先生