公益社団法人 日本山岳会 栃木支部(特別業補助金...
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公益社団法人 日本山岳会 栃木支部(特別事業補助金事業)
ユース栃木「読図とナビゲーション」講習会・勉強会 記録
主 催 : (公益社団法人)日本山岳会 栃木支部 ユース栃木
後 援 : (一般財団法人)栃木県青年会館 / 栃木県山岳・スポーツクライミング連盟
期 日 : 平成31年(2019年) 1月19日(土)~20日(日)
会 場 : 受付・講義会場(19日):コンセーレ(栃木県青年会館)
栃木県宇都宮市駒生1-1-6 ☎ 028-624-1417
実技演習(20日):古賀志山(栃木県宇都宮市)周辺
参加費用: 講習会(19日机上講習のみ)1,500円(会場経費・講習会資料等)
勉強会(19日机上講習・20日実技演習)2,500円(会場経費・勉強会資料・保険代等)
講 師 : 主任講師 村越 真 氏
(静岡大学教授,国立登山研修所専門調査委員,日本オリエンテーリング協会副会長)
講師アシスタント 美谷島 孝 氏,古市 秀明 氏
参加者 : 講習会 51名(主な参加者所属団体:日本山岳会(栃木支部 1名,群馬支部 4名),
宇都宮白峰会 2名,矢板岳友会 1名,CHCハイキングクラブ 1名,宇都宮山岳会 1名,
ラリグラス 1名,宇都宮ハイキングクラブ 3名,山紫会(シルバー大学 34期トレッキング部
OB) 5名,古賀志山大好きな山の仲間の小さなグループ 1名,)
勉強会 21名(主な参加者所属団体:日本山岳会(栃木支部 8名,他 1名),宇都宮白峰会
1名,矢板岳友会 1名,那須山岳会 1名,CHCハイキングクラブ 1名,宇都宮ハイキング
クラブ 5名)
今年度のユース栃木主催「読図とナビゲーション講習会・勉強会」は、前年度の日本山岳会会員と
県山岳連盟所属団体員を対象とした「雪崩勉強会」とは変えて、未組織登山愛好者/初心者を含めた
一般を対象とした机上「講習会」と、ある程度の「読図とナビゲーション」のスキルを持つ人を対象
に机上講習と実技演習をセットで2日間行う「勉強会」の2つのコースを企画し参加者を募集した。
1日のみの「講習会」は新聞に開催案内を出したこともあり、60~70才代の一般登山愛好者(初
心者)を中心に集まり、(道迷いを防ぐ)「読図とナビゲーション」への関心の高さがうかがわれた。
また知識と技術のスキルアップを目的とした「勉強会」には、県山岳・SC連盟や県勤労者山岳連盟
の指導者クラスの人も参加した。
開催案内 ⇒ http://jac.or.jp/tcg/post-6.html
開催報告 ⇒ http://jac.or.jp/tcg/2019/01/post-105.html
実施概要 :
■ 1月19日(土):講習会・勉強会(机上講習) 宇都宮市 コンセーレ
12:00~ 受付 / 12:45~ 13:00 開講式
13:00~ 16:30 机上講習(座学,コンパスの使い方実習),講習会終了
道迷い遭難が増えている(年間1,200人程度)。道迷い要因で毎年2・30人程度亡くなっている。
道迷いと転倒を防げれば、日本での遭難は減らすことができる。
何のための読図なのか理解した上で、読図とナビゲーションに必要な知識・技術を学ぶ。
目標:地図から地形が分かる/大事な地図記号が分かる/ナビゲーションでの地図の使い方が分かる。
~ 17:00 勉強会実技演習(20日)ガイダンス
↑実技演習(20日) ↑机上講習(19日)
勉強会参加者(20日)
■ 1月20日(日):勉強会(実技演習) 宇都宮市 古賀志山
7:45 ~ 宇都宮市森林公園駐車場集合・開講
8:00 ~ 13:00 実技演習 / ~ 13:30 閉講式・現地解散
実技演習の流れ:前半は全員一緒になって歩き、現在位置
(配布地図に示されたチェックポイント)確認とその根拠を
理解する。後半は大きく3班に分かれ、その中で参加者同士
ペアになって、ルートの先読み(リスク検証)/ルート維持/
現在位置確認のルーチンワークを行う。
実技演習参加者装備:冬期低山登山用個人装備一式(冷雨・降雪対応:日帰り),ツエルト,防寒具,
手袋,地形図,コンパス,筆記具,行動食など
配付資料:机上講習資料,地形図記号,実習チェックポイント地図
【講習会・勉強会 まとめ】
今回の勉強会のテーマは、「道迷いを防ぎ、安全に山を楽しむスキルを身につける」とした。
「講習会」の参加者には、読図やコンパスの使い方に慣れていない初心者が見受けられたが、講習の中で、
「何のための読図なのか」=「すなわち読んだ情報をどのように使うのか意識する」ことを学んだ。
地図読み -事前に:プランニング = 行程の確認 / リスクマネージメント
-現場で:現在位置把握 / 先読み(ルートを読み取る) / ルート維持
そのために、地形図から読み取る情報/地形から得る情報/コンパスを活用するなどに必要な知識・技術
を習得して、このルーチンをまわすことで「ナビゲーション」になると理解していただけたのではと思う。
また実技演習では、参加者に応じて自身のスキルアップや指
導的立場での指導スキルを学ぶことができ、「安全に登山と楽
しむスキル」を身につけるための一役を担うことができた。「地
図と地形の読み取り」・「現在地把握とルート維持」を常に意識
して、《間違ったならばすぐに気づく》スキルを持つことが大
切と実感している。
参加者の『地形図の読み方、コンパスの使い方、勉強になり
ました。「地形を見るにはスカイラインを見る」など、わかり
やすく教えてくださいました。これからの山登りがいっそう楽
しくなりそうです。』の言葉が、価値ある結果を表していると
思っている。
[前田 F,190228]
↑チェックポイント(配付資料)
← ペアでお互いの
理解を確認
↑演習走査コース
現在位置把握 →
(赤川ダム)
■「読図とナビゲーション」講習会・勉強会 内容
何のための読図なのか、「読図とナビゲーション」の
.目的と必要な知識・技術を理解する。また、初心者に
対する指導法を学ぶ。
◆ 講習の骨子 ・登山と道迷い遭難
・読図スキルは本当に必要か?
・基本的な地図記号と地図の約束
・プランニング
・地形を把握する
・ルート維持の情報
・現在位置の把握
・コンパスの基本の使い方
● 読図スキルは本当に必要か?
▅ 読図は「何のために必要なのか」考えてみる。
行程の確認・危険(リスク)の検証/歩けるかの判断/体力の配分,エスケープを考える。 --- 岩場,高低差,傾斜,迷いやすい,滝,水・・・ 等高線/地形が分かる,現在地が分かる。 どの方向に向かうのか知る/ルートを決める。 道から外れない,ロスタイムをなくす(間違えない)。
▅ 読図は「何処で」・「何のために」する。
⇒ 登山前に(事前に):歩けるかの判断
/行程の確認/リスク(危険)マネージメント
⇒ 登山中に(現場で):現在地把握
/先読み(どの方向に向かう?,ルートを定める)
/ルート維持(決めた進路をたどる)
▅ 地形が分かると、何の役にたつ?
・地形(目標・特徴物)と照らし合わせて、現在地が分かる。
・尾根や谷をたどることで、ルート維持ができる。
何をどうナビゲーションに役立てるか(読んだ情報をどのように使うのか)、その考えを常に持つことが大切。
● 基本的な地図記号と地図の約束 ※配付資料(地図記号)参照
▅ 登山をするために優先的に覚えたい地図記号を抽出してみる。
▅ 地図の約束事:
縮尺(1kmが地図上で何cmか)
/方位(北が上,磁北は日本では少し西に隔たる)
/等高線間隔(縮尺 1:25,000 なら10m)
▅ 記号が分かると何に使える?:
ナビゲーション(現在地把握/ルート維持)
/ルートの様子を把握/リスクが分かる・・・
● 地形を把握する
● プランニング ※地形図を見ながら
▅ プランニング:行程(距離,累積標高差など)は?/ある時期に行程を歩くとき想定されるリスクは?
▅ ルート維持:ルートをはずしそうな場所はどこか?/どうしたらそれを防げるのか(ルート維持の必要性)
▅ 現在地の把握:確実に現在地を把握できる場所はどこか?なぜ確実に現在地を把握できるのか(根拠)?
地図読み - 事前に:プランニング=歩けるかどうか/行程の確認/リスク(危険)マネージメント
- 現場で:現在地把握/先読み(この先のルートを読み取る)/ルート(決めた進路)維持
● ルート維持の情報
● 現在位置の把握
▅ 現在位置を把握する → ルート(決めた進路)維持
① 地形との関係:・風景から得る情報
・地形図から読み取る情報
地図記号と現実の地形との
結びつき(イメージする)を心掛ける。
② ルートの方向:地形/進路に対しコンパスが示す方角
● コンパスの基本:使い方 ・なるべくすぐ出せる(使える)所に入れて持ち歩く。
・プレートコンパスの持ち方:
親指と人差し指でリングを挟み、人差し指と中指でプレートを挟む。
・赤い針が北を示す。→ 指定された方角に向かう事ができる。
→ 進路の方向に向くことができる(ルート維持)。
▅ 地図を整置する:地図とコンパスを一緒に持つ (プレートと中指の間に地図を挟む)。
→ 地図上の北とコンパスの赤い針が同じ方向を向くように持つ = 整置
→ 進みたい方向が体の正面になるように地図を持つ、そして整置
→ 体の向いている方向が進路の方向
▅ コンパスの使い方(3通り):①プレートコンパスのリングをまわしてセットする(精度)
②地図を見て方向を読み、コンパスを使ってその方向を定める
③地図を整置する
■ 実技演習
▅ 行動開始前の行程確認(プランニング):ルート先読み=想定されるリスクは?
ex. 全体的にルートを見誤りやすい/道迷いリスクがある
下りの急なところがある/滑りやすいと危険
地図上に道が無いところがある/ルート維持が求められる
▅ 現在地把握:地形の見やすい場所(情報を取りやすい場所)を探す。
現在地把握のための情報=根拠(二つ以上できるだけ多く)。
何が現在地把握に役立つ情報か/より確実にするための情報は何か・・・考えて求める。
ex. 尾根上,ピーク+思ったところをより確かにするために:方角(尾根・谷・道の方向),谷の入り具合
ここに来るまでの地形変化,廻りに似たところはあるか/ないか
▅ ルート維持 → 現在地把握 → ルート維持(先読み)の流れ
ルート維持(進むルートの地形,方向の確認)
方向を確認する方法:簡単な(手間がかからない)方法で精度が上がれば、それに超したことはない。
素早くできれば面倒でない/面倒でなければその都度やれる。
スカイラインを見て地形を読む。
地図上の方向と実際の方向を一致させる。
地図と実際の地形の対比。
地形を見逃さないように歩く。
目的地点である(着いた)事を(先読み)
確認する情報(手がかり)は何か?
ex. 目的地手前の地形(尾根)の確認,
目的地までの距離感
目的地と思う地点の少し先に行ってみる。
→ 間違いは0にはできない、
間違っているか早く確認できように。
地形図と実際の地形の違い:
岩 or 崖/急な斜面 or 緩やかな斜面 ・・・等高線が2本無いと予測が難しい。
▅ ペアで地図の読み取りの確認:言葉にすることで読み取り内容を確実にする/意識する。
[前田 F,190228]
安全登山指導者研修会資料 (2018年9月:村越)より模写 「読図とナビゲーション」の基本スタイル