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総合科学の基礎C
哲学思想の基礎
2019/07/05
デカルトの与えた衝撃
10ケタの学生番号を記入
10ケタの学生番号を鉛筆でマーク
名前 今日の日付 哲学
マークシートの記入要領
ここに注意!
小テストなどに使います。
全体的な構成(予定)
はじめに
1)哲学とは何か
存在論
2)存在の何が問題か
3)イデア論
4)カテゴリー論
5)質料形相論
神学
6)キリスト教と哲学
7)アリストテレスの神学
8)トマス・アクィナスの神学
9)神と人との逆転
認識論
10)デカルトの心身二元論
11)マルブランシュの解決
12)バークリの解決
13)感情の大逆転
おわりに
14)知識の体系
15)全体のまとめ
前回の要点:デカルト思想の概略
• 心身二元論 – 「心」と「身体・物体」は別の実体(substance)
• アリストテレスのウーシアー(substance)の二義性(個物/エイドス・プシューケー)を焼き直し。
– 「心」と「プシューケー」の違い • アリストテレスのプシューケー:栄養摂取・成長、感覚・運動、知性(知性のみ、身体から分離可能)。
• デカルトの「心:mens/esprit」:知性のみ。プシューケーのその他の部分は「身体」に。
–物体と物質 • アリストテレスの「個物」=エイドス(形=本質)+ヒューレー(素材)。
• デカルトの「物質:materia」=ヒューレーのみ(形は付帯性)
–今回:心身二元論が引き起こした問題
学生のコメント
ネット情報でなく、デカルトを読もう
• 「デカルトの登場する時代には、自然科学が徐々に台頭しはじめてきました。キリスト教の権威は弱まり「神がこの世界を創造した」という前提はキリスト教を信仰している地域でしか通用しないローカルな前提であることが知られてきたのです。つまり、みんなが信じてきた学問の前提が崩壊しつつある時代だったのです。」とか。
– 歴史的事実として誤りです。
– ちゃんとした学術論文を参照する人も増えています。
– デカルトやカントなどの一次文献(とりあえず翻訳でOK)を読めば、さらにステップアップです。
微妙に誤解が。
• 「デカルトは、神の名を「私はある」だとした。」
• 「アリストテレスは、「絶対確実なものは何もない」と言った。」
• 「デカルトは、神を人間が作ったフィクションだとした。」
• 「デカルトは、物の種類は人間が分類するのだとした。」 – 神の名は旧約聖書に書いてある。デカルトの「私はある」はそれを思わせる表現。
– 「神と人との逆転」は、デカルト以降の展開。
– 神がフィクションになったり、種類は分類だということになるのは、18世紀の経験主義哲学において。
やっぱり「神などいない」という前提の人が多いようなので…
出典:本川裕「社会実情データ図録」https://honkawa2.sakura.ne.jp/9520.html
ついでに。
• 私のところの学生が、アメリカの学者が来たときに、「おまえのレリジャス・バックグラウンドはなんだ」と聞かれて、よせばいいのに「私は無神論者です」と答えたのです。私はあとで注意したのです。無神論者というのは、ひたすらに神様を求めて、求めて、求めていって、とうとう私には神はいないんだという結論に達した極めて宗教的な人が無神論者なのだと。おまえのは何も考えていない、無関心論だと。
加藤尚武編『医療と貢献心』(芙蓉書房出版、2011年、75ページ)より、奈良康明氏の発言。
知性のありか
• 私が疑問に思ったのは、知性自体はどこにあるのか ということである。知性が身体から離れた存在なのであれば、知性は一体どこに存在し、どうして身体にくっついているのだろうか。…私は知性を神の世界と身体のある世界の中間にある物 とする。
–従来の「神はどこにいるのか」という問題の変換バージョンですね。
– 「中間」というのは、空間を前提とした概念です。
–デカルト以降、「空間・時間」といった枠組みも、人間の心が与えるものとされるようになる(典型的にはカント)。
今日の新たな話
心身二元論が引き起こした問題
• 動物は機械なのか?
• 心と身体が別の実体なら、どうして相互作用できるのか?
–心が思うと、身体が動くのはなぜか?
–身体が損傷すると、心が痛いのはなぜか?
–心は、どうして世界について知ることができるのか?
–物体同士はどうして法則的に作用するのか?
–どうして心が理解した法則通りに物体同士が運動するのか?
• マルブランシュの解決:論理的に説明できないこれらの関係をつなぐものが「神」である。
マルブランシュの世界観
今日の小テスト
問1
• 次の文の中で正しいのはどれか。
① デカルトは、神の名を「私はある」だとした。
② アリストテレスは、「絶対確実なものは何もない」と言った。
③ デカルト以降、経験主義哲学では、物の種類は人間が分類するのだとした。
④ デカルトが登場した時代、「神が世界を創造した」という前提はキリスト教を信仰している地域でしか通用しないことが知られてきた。
問2
• 次の文の中で正しいのはどれか。
① 旧約聖書には、神の名として「私は存在するものだ」と記されている。
② デカルトは、神は人間が作り出したフィクションだと主張した。
③ アリストテレスは、「ウーシアー」は個物であって、形ではないと主張した。
④ デカルトは、アリストテレスの言うsubstance(ウーシアー)には「心」という意味と、「物」という二つの意味があると主張した。
問3
• 次の文の中で正しいのはどれか。
①アメリカでは60%の人が「神は存在する」と考えている。
②日本では、「神が存在する」「存在しない」「わからない」と答えた人がほぼ同率である。
③ベトナムでは95%の人が「神は存在する」と回答した。
④奈良康明氏の見解では、多くの日本人は無神論者である。
問4
• 次の文の中で正しいのはどれか。
①デカルトは、動物も人間ほどではないが考える力があると考えた。
②ガッサンディは、動物は心を持たない機械だと考えた。
③マルブランシュは、動物は心を持たない機械だと考えた。
④デカルトは、尻尾を振って駆け寄ってきた雌犬をキックした。
問5
• 心身二元論の何が問題となったか。
①心と身体・物体がどうして相互作用できるのか。
②神はどうしてわざわざ心と身体を別に創造したのか。
③自由意志が身体からどうして生じるのか。
④心はどこにあるのか。
今日もマナバで授業コメント。