水稲玄米の粒厚と外観品質が...

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博士論文 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響 平成25年3月 突 裕

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博士論文

水稲玄米の粒厚と外観品質が

米飯の食味に及ぼす影響

平成25年3月

石 突 裕 樹

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i

目次

緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第1章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

―2009 年と 2010 年の比較―

第 1 節 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第 2 節 材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

1. 供試品種と栽培方法

2. 試験区の設定

3. 収量調査

4. 粒厚選別

5. 外観品質

6. 玄米比重

7. 炊飯米食味試験

第 3 節 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

1. 気温,出穂期及び収穫期

2. 収量と収量構成要素

3. 玄米粒厚別重量比率

4. 玄米外観品質

5. 玄米比重

6. 炊飯米食味評価

第 4 節 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

第 5 節 摘要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

第2章 遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の粒厚と外観品質が

米飯の食味と理化学的特性に及ぼす影響

第 1 節 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

第 2 節 材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

1. 粒厚別玄米の調製

2. 白未熟混入割合別玄米の調整

3. 食味官能試験及び理化学特性

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ii

第 3 節 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

1. 食味官能試験

2. 理化学的特性

3. 食味関連形質と玄米外観品質との関係

第 4 節 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

第 5 節 摘要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

第 3 章 粒厚選別と光選別による水稲玄米の外観品質の向上

第 1 節 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43

第 2 節 材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43

1. 供試試料

2. 粒厚選別の方法

3. 粒厚選別歩留りの試算

4. 粒厚選別外観品質の試算

5. 光選別歩留りの試算

6. 光選別外観品質の試算

第 3 節 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

1. 玄米外観品質

2. 歩留り

第 4 節 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

第 5 節 摘要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

結言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

図表一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62

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緒言

近年,米をめぐる情勢は年々厳しさを増している.米の消費量の減少,消費

者の嗜好が美味しい米を求める傾向にあり,高品質米とそうでない米との価値

に差が大きくつくようになり,価格差は拡大する傾向にある.また,良食味米

をめぐる競争は以前にも増して激化しつつある.

一方,栽培する側からみると大気中の二酸化炭素や温室効果ガス濃度が急増

して気温の上昇が問題化してきており(IPCC 2007),作物生産への影響も懸念

されている.米生産に与える影響評価も世界の食料需給を考える上で極めて重

要であり,これまでに気温上昇が水稲栽培に及ぼす影響については研究が重ね

られて,多くの報告がある(金ら 1996, 大江ら 2007, 2008, 平 1998, 森田ら

2004, 森田 2008, 若松ら 2006).

水稲登熟期間の高温により,玄米一粒重・登熟歩合の低下が助長され,収量

を減少させることが報告されている(金ら 1996).また登熟期の高温は乳白米

等の白未熟粒を発生させ玄米外観品質を低下させること(大江ら 2007, 2008,

平 1998, 森田 2008, 若松ら 2007),登熟期の日照不足も玄米発育を抑制して

白未熟粒の発生を助長し(今野ら 1991, 黒田ら 1996, 松江ら 1992, 斎藤

1987, 若松ら 2006),食味を大きく低下させることになる(松江ら 1992, 若松

ら 2006).今後,高温がイネの生産にどのような影響を及ぼすかを詳しく解明

し,高温障害を軽減する技術的対策を検討していく必要がある.

米の生産は自然的条件に左右されることが多く,その産物は形状や大きさ,

品質にばらつきが大きいことが一般的である。そこで検査制度が生まれ,それ

が品質を決める一つの要素になり,産物の価格に影響するようになってきた.

そのため農家や米加工施設においては米の厚みによる選別(粒厚選別)が行わ

れ,米の品質を揃えて高付加価値化して出荷している.

一般に流通する米は,粒厚選別機で 1.80~1.90 ㎜の縦目ふるいを用い,未熟

粒や死米を除去して整粒割合,すなわち米の品質を高めることが行われている.

また,米の外観品質は農産物検査規格により品位区分がなされている.近年で

は検査の補助機として,穀粒一粒ずつ品質を判定できる穀粒判別器が実用化さ

れて,この装置を用いた検査が行われるようになってきた.さらに,粒厚選別

するときに用いられる粒厚選別機の篩目の設定は慣行や経験にたよっている場

合が多く,篩目の設定値と米の品質との関係について不明な点が多い状況にあ

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る.

本研究では,西日本の主力品種である日本晴,ヒノヒカリの 2 品種を用い,

高温と遮光処理を施した玄米を粒厚選別機で選別し,穀粒判別器,炊飯食味計,

を使って評価し,更に食味官能評価と理化学特性試験を行い,水稲玄米の粒厚

と外観品質が米飯の食味に及ぼす影響を評価した.まず第 1 章では遮光と高温

処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響を検討した.第 2 章

においては,遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の粒厚と外観品質が米飯の

食味と理化学的特性に及ぼす影響を検討した.第 3 章では,ポストハーベスト

技術として,粒厚選別と光選別による水稲玄米の外観品質の向上を試算により

検討した.

それら水稲玄米が粒厚によって選別されるときの篩目の決定,穀粒判別器で

外観品質を検査した時のデータ等を検討することで米の品質が推定でき,玄米

のデータから米飯の食味が推定できれば,米を商品として流通させる場での価

値判断と商品管理の資料にもなり,同時に取引する上での米の等級や価格を決

める資料にもなりうる。

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第 1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

―2009 年と 2010 年の比較―

第 1 節 はじめに

2010 年夏季の高温により,水稲の玄米品質や千粒重が低下する登熟障害が発

生し,一等米比率が大きく低下して大きな問題となった(農林水産省 2011).

地球温暖化の進行(IPCC 2007)にともない被害面積が拡大し障害も激しくな

ることが懸念される.これまで,高温が水稲栽培に及ぼす影響については多く

の報告がある(金ら 1996, 大江ら 2007, 2008, 平 1998, 森田ら 2004, 森田

2008, 若松ら 2006, 2007).水稲登熟期間の高温により,玄米千粒重・登熟歩

合の低下が助長され,収量を減少させること(金ら 1996),登熟期の高温は乳

白米等の白未熟粒を発生させ玄米外観品質を低下させること(大江ら 2007,

2008, 平 1998, 森田 2008, 若松ら 2007)が報告されている.また,登熟期の

日照不足も玄米発育を抑制して白未熟粒の発生を助長し(今野ら 1991, 黒田・

松本 1996, 松江ら 1992, 斎藤 1987, 若松ら 2006),食味を大きく低下させる

ことになる(松江ら 1992, 若松ら 2006).

高温や日照不足による収穫量の減少に加えて,玄米の外観品質が低下すると,

出荷時検査等級の格下げに伴い売渡価格が低下して,米農家収入の著しい減収

をもたらすことになる.農家や米加工施設においては米の厚みによる選別(粒

厚選別)が行われる.一般に流通する米は,粒厚選別機で 1.80~1.90 mm の縦

目篩を通過させて,未熟粒や死米を除去して整粒割合が高く維持される.現在,

粒厚選別機の篩目の設定は慣行や経験にたよっている場合が多く,篩目の設定

値と米の品質との関係について不明な点が多い.

そこで本研究では,2009,2010 年の 2 ヵ年に西日本の代表的品種である日本

晴,ヒノヒカリを用いて圃場栽培を行い,高温と遮光処理が収量と粒厚別分布,

玄米の外観品質,炊飯食味計による食味値に及ぼす影響を調査した.

第 2 節 材料と方法

1.供試品種と栽培方法

2009 年と 2010 年に岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターの水

田と水田内に設置したビニールハウス(側面自動開閉装置装着)で水稲栽培を

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行った.試験には日本晴とヒノヒカリの 2 品種を用い,慣行に従いポット育苗

した成苗を,2009 年は 6 月 11 日に,2010 年は 6 月 14 日に,野外区について

は栽植密度 17.2 株/㎡で,機械移植(1 株 3 本植)を行った.ビニールハウス内

では栽植密度 18.5 株/㎡(条間 30cm,株間 18cm)で手植え移植した.施肥は

基肥のみとし,緩効性肥料 LP 複合 140E-80(N-P2O5-K2O 各 14%)を各成分

で 10 a 当り 8 kg 施用した.

2.試験区の設定

試験区は日本晴,ヒノヒカリの各品種につき,対照区(慣行栽培,3.8×17.3 m,

65.7 m2) ,遮光区(出穂期以降黒色寒冷紗(遮光率 50%)全面被覆,3.8×17.3

m,65.7 m2),高温区(ビニールハウス 2.1×15.0 m,31.5 m2,側面自動開閉

装置を移植から出穂期まで開放,8 月 20 日以降日中 36 ℃で開放し,夜間 25 ℃

で閉鎖するよう制御)の 3 試験区を設けた.高温区,対照区については,Thermo

Recorder おんどとり(ティアンドデイ社製, TR-71S)を用いて気温を測定した

(第 1 図).

第 1 図 試験区の写真.

3.収量調査

各試験区につき収穫適期の水稲 60 株(20 株,3 反復)を地際から刈り取り,

2 週間以上雨除け条件下で乾燥させた後,脱穀・籾摺りして収量と収量構成要素

を調査した.調査項目は,全重・総玄米重・精玄米重,収量構成要素として穂

数・一穂籾数・総籾数・登熟歩合・精玄米千粒重等を調査した.

調査手順は,全重→穂数→脱穀→総籾数→籾摺り→総玄米重→縦目篩選→精玄

米重→精玄米千粒重の順で行った.また,登熟歩合は総籾の中から均分器を用

いて約 30 g を 3 反復抽出し,縦目篩選により 1.8 mm 以上の粒厚をもつ玄米を

精玄米として総籾数に占める精玄米数の割合として求めた.また,精玄米千粒

重は水分計(ライスタ J,ケツト科学研究所製)で求めた水分含有率を 15%に

換算して求めた.

対照区 遮光区 高温区

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4.粒厚選別

供試玄米を約 3 ㎏ずつテスト粒厚選別機(TWS,サタケ製)(第 2 図)にて,

1.7~2.2 mm 網を 0.1 mm 刻みにて使用し,7 条件(<1.7 mm,1.7 mm 以上

1.8 mm 未満(以下 1.7~1.8 mm と略,他の条件も同様), 1.8~1.9 mm, 1.9~

2.0 mm, 2.0~2.1 mm, 2.1~2.2 mm, ≧2.2 mm )の粒厚別供試玄米とした.

また,約 200 g を 3 反復抽出し,同条件で選別計量を行って粒厚別重量比率を

調査した.

本体 選別網

第 2 図 サタケ製テスト粒厚選別機 TWS.

5.外観品質

2009 年および 2010 年の供試玄米および粒厚別供試玄米を約 20 g,3 反復

抽出し,穀粒判別器(RGQI20A,サタケ製)(第 3 図)を使って,整粒,乳白

粒,基白粒,腹白粒,青未熟粒,その他未熟粒,死米,胴割粒,その他の 9 分

類に選別した.本研究で使用した穀粒判別器は,装置のサンプル投入口に米粒

を投入後測定開始し,米粒 1000 粒を約 40 秒で測定する.米粒は,回転する搬

送円板の孔に 1 粒ずつ入り込み搬送され,センサ部通過後,選別され受け箱に

排出される.搬送円盤は底面に透明な板を貼付したもので,米粒と本体との摩

擦が無く,米粒の姿勢が安定した状態でセンサ部へ搬送される.画像は,表,

裏,側面に配した CCD カラーラインセンサで,米粒 1 粒を3方向から捉え取得

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している.光源の発光ダイオード(以下 LED)は,センサ部の上部及び下部に

装備しており,各センサで 2 類のカラー画像(反射光画像と透過光画像)を取

得する.また,下部 LED には片側のみ赤色 LED が装着されており,赤色の透

過を読み取ることにより胴割れの特徴的な画像を取得する.米粒 1 粒につき,

18 種類のモノクロ画像をそれぞれ約 2000 分割し取得している.得られた画像

を,画像処理により色及び形状情報とする.これらの情報を数値化し,判別ア

ルゴリズムのパラメータとして使用している.定量化しやすい判別は,特徴量

抽出 2 進木解析法を用い,定性的で非線形性を有する判別は自己組織化特徴マ

ップ及び,マハラノビス距離等を用い定量化を行っている.自己組織化特徴マ

ップは,教師なし学習アルゴリズムであり,似た入力同士を自動判定し,ネッ

トワーク上の近くに配置する,人間の感性を定量化するのに有効な手段である.

これらの組み合わせにより,人間の感性に近いコンパクトなアルゴリズムを構

築しており,農産物検査における各外観品質項目に分類する.穀粒判別器重量

換算 1 粒重(第 1 表)を用い,その重量換算割合をもって外観品質とした(整

粒以外を未熟・被害粒とした).本判別器は検査補助機として一般財団法人全国

瑞穂食糧検査協会より型式認定を受けている.なお,本判別器では背白粒と基

白粒の判別の困難性から,背白粒の多くは基白粒に類別される.本研究では,

乳白粒,基白粒(背白粒を含む),腹白粒を合わせて,白未熟粒と総称する.

本体 内部構造

第 3 図 サタケ製穀粒判別器 RGQI20A.

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第 1 表 穀粒判別器重量換算 1 粒重.

分類 i の重量換算割合 = N W /∑ N W

Ni:分類 i の粒数

分類名 穀粒判別器分類名 1粒重(mg)

整粒 (W1) 整粒 21.87

(W2) 活青米 21.87

(W3) 薄茶米 21.87

(W4) 軽胴割粒 21.87

乳白粒 (W5) 乳白粒 18.49

基白粒 (W6) 基部未熟粒 19.09

腹白粒 (W7) 腹背白未熟粒 18.66

青未熟粒 (W8) 青未熟粒 19.00

その他未熟粒 (W9) その他未熟粒 17.86

死米 (W10) 青死米 12.78

(W11) 白死米 15.30

胴割粒 (W12) 胴割粒 21.44

その他 (W13) 砕粒 13.85

(W14) 発芽粒 20.57

(W15) 芽くされ 19.03

(W16) 茶米 20.00

(W17) 斑点粒 17.89

(W18) 虫害粒 17.27

(W19) 病害粒 20.00

(W20) 奇形粒 17.94

(W21) その他被害粒 17.46

(W22) 全面着色粒 20.00

(W23) 部分着色粒 17.88

(W24) 赤米 20.00

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6.玄米比重

玄米の充実度を示す指標として,比重を比重測定キット(AD1653,エー・ア

ンド・デイ社製)で測定した.固体の比重を液体の浮力を利用して測定する溶

媒には通常蒸留水が用いられるが,泡の付着が認められたため,本研究ではメ

タノールを用いた.

7.炊飯米食味試験

供試玄米及び粒厚別供試玄米を水分含有率 14.5%に調湿し,歩留り 90%を目

標に搗精し供試精米とした.ステンレス缶で供試精米 30 g を洗米し,水量を重

量比 1.35 倍になるように調整し,浸漬開始から 30 分後に電気蒸し器(クッキ

ングスチーマー,エイコー製)で 30 分炊飯した.10 分間蒸らした後ほぐしを

行い,20 分冷却し,蒸らし完了から 2 時間後に炊飯米食味評価に供試した.炊

飯食味計(STA1B,サタケ製)(第 4 図)で炊飯米を測定し,外観,硬さ,粘り,

バランス度,食味値を調査した.炊飯食味計では 8 g を 3 反復抽出し,各裏表 2

回測定を行った.

炊飯食味計の測定は,供試市販米を 8±0.1 g を計量して,ステンレス製のリ

ングに特製の圧縮器とジグを使用して詰め,装置にセットし,その時の反射光

量(540 nm,970 nm の 2 波長)及び透過光量(540 nm,640 nm の 2 波長)

の強度をフォトセンサで検知し電圧変換したものをパソコンで記録し,あらか

じめ組み込まれている検量線にあてはめ結果を算出する.検量線は,食味官能

評価による評価の判明した試料を用い,重回帰分析により作成されている.

本体 光学部構造

第 4 図 サタケ炊飯食味計 STA1B.

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第 3 節 結果

1.気温,出穂期及び収穫期

2009年と2010年の平均気温(岡山市)と日射量(岡山大学内)の推移を第5

図に示した.2009年は梅雨明けが特定できず,7月下旬と8月上旬に降雨が多く

日射量は少なくなったが,これ以降晴天が続き気温・日射量ともに平年並みに

推移した(9月下旬は平年に比べ平均気温が2.1 ℃高くなった).2010年は2009

年に比べ7月下旬と8月上旬の日射量が多く,平均気温は8月下旬で3.5 ℃,9月

上旬で3.8 ℃,9月中旬で4.6 ℃高く推移した.試験圃場の対照区の日平均気温

は,両年とも岡山市アメダスデータと同様な推移がみられたが(第6図),高温

区ではビニールハウス側面の開閉を開始した8月下旬以降,対照区に比べて日平

均気温が高くなり,2009年では,8月下旬1.4 ℃,9月上旬 2.9 ℃,中旬 3.7 ℃,

下旬3.3 ℃高くなり,2010年では,8月下旬2.7 ℃,9月上旬2.9 ℃,中旬4.3 ℃,

下旬5.0 ℃高くなった.2009年にはビニールハウス側面の開閉を開始するまで

の気温は対照区と高温区で相違は小さかったが,2010年には生育前半から対照

区に比べ高温区の平均気温が0.8~1.5 ℃高く推移した.この原因は明らかでは

ないが,側面開閉装置の開閉幅が影響した可能性が考えられる.

2009年の出穂期は各試験区とも日本晴で8月21日,ヒノヒカリで8月28日,収

穫期は日本晴で10月6日,ヒノヒカリで10月13日であり,収穫期は遮光区で3日

遅れ,高温区で2日早まった.同様に2010年の出穂期は日本晴で8月18日,ヒノ

ヒカリで8月25日と2009年に比べ3日早まり,収穫期は日本晴で10月3日,ヒノ

ヒカリで10月9日であり,2009年と同様に収穫期は遮光区で3日遅れ,高温区で

2日早まった.

2.収量と収量構成要素

2009年遮光区の精玄米収量は対照区に比べ日本晴で 24%,ヒノヒカリで 16%

低くなり,これには主として総籾数と登熟歩合の数値の低さが関係していた(第

2 表).高温区の収量は対照区に比べ日本晴で 21%,ヒノヒカリで 10%低くな

り,遮光区に比べ低下程度は小さくなった.これには登熟歩合と千粒重の低下

に加えて,日本晴では総籾数の低下も影響していた.

2010 年対照区の収量は 2009 年に比べて日本晴で 15%,ヒノヒカリで 12%

低くなった(第 2 表).両品種ともに収量は対照区>高温区=遮光区の順に高く

なった.遮光区の収量は日本晴,ヒノヒカリともに 32%低くなり,これには 2009

年と同様に登熟歩合と千粒重に加えて一穂籾数の低下が関係していた.高温区

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の収量は日本晴で 33%,ヒノヒカリで 30%低くなり,これは穂数の低下による

総籾数の低下と千粒重の低下が関係していた.穂数決定後に処理を開始してい

るため,穂数が高温処理により低下した原因は明確ではないが,前述したよう

に 2010 年は対照区に比べ高温区の平均気温が移植直後から約 1℃高く推移した

ことが関係すると考えられる.

3.玄米粒厚別重量比率

玄米の粒厚別重量比率をみると(第 7 図),2009 年対照区に比べ 2010 年対照

区では両品種ともに粒厚がより大きい側に分布しており,その傾向は日本晴に

比べヒノヒカリで顕著であった.2009 年対照区は日本晴に比べヒノヒカリで

1.9 mm 未満の粒厚の小さい割合が若干高くなった.両品種ともに遮光区では

1.7 mm 以下から 1.9 mm の割合が顕著に増加し,より粒厚が小さくなる傾向に

あった.高温区では 1.8~2.0 mm の割合が減少し,>2.0 mm の割合が増加す

る傾向がみられた.粒厚分布は高温区>対照区>遮光区の順により厚い粒厚に

分布する傾向がみられた.

2010 年の対照区では,2009 年に比べ日本晴では 1.9~2.1 mm の割合が高く,

ヒノヒカリでは 2.0~2.2 mm の割合が高くなり,2009 年に比べ粒厚がより大き

くなる傾向がみられ,その傾向はヒノヒカリで顕著であった.遮光区では両品

種ともに<1.7 mm から 1.9~2.0 mm の割合が顕著に増加して,粒厚がより小

さくなる傾向を示した.高温区では日本晴は<1.7 mm から 1.9~2.0 mm の割

合,ヒノヒカリは<1.7 mm から 2.0~2.1 mm の割合が増加して,2009 年とは

異なり,遮光区ほどではないものの,粒厚が小さくなる傾向にあった.粒厚分

布は対照区>高温区>遮光区の順により厚い粒厚に分布する傾向がみられた.

4.玄米外観品質

2009年の整粒割合は日本晴対照区が79%,ヒノヒカリ対照区が68%となり,

日本晴に比べヒノヒカリでは整粒の割合が小さく,対照区>遮光区>高温区の

順に整粒割合が大きかった(第8図).特に高温区で乳白粒,基白粒,腹白粒,

その他未熟粒が多く発生した.

2010年の整粒割合は日本晴の対照区が22%,ヒノヒカリの対照区が14%とな

り,2009年に比べ両品種全処理区とも大幅に減少し,玄米の外観品質は等外規

格相当となった.特に乳白粒,基白粒,腹白粒,その他未熟粒の割合が顕著に

増加した.ヒノヒカリでは基白粒の増加が顕著で,対照区では40%に達した.

第9図に2009年と2010年の粒厚別玄米外観品質を示した.図中の≧1.8は

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11

1.8 mm以上の精玄米を示している.2009年は,両品種ともに粒厚が小さくなる

ほど整粒割合が低下して,特に2.0 mm以上では胴割粒,それ以下では乳白粒,

基白粒,腹白粒,その他未熟粒,死米の割合が大きくなった.

対照区をみると,日本晴では1.8 mm以下で死米の割合が高く,ヒノヒカリで

は1.7~1.9 mmで乳白粒,その他未熟粒の割合が高くなった.これらの傾向は遮

光区で顕著となり日本晴では1.8 mm以下で死米の割合が大きくなり,ヒノヒカ

リでは1.7~1.9 mmで乳白粒,その他未熟粒の割合が高くなった.高温区では

1.8 mm以上で乳白粒,基白粒,腹白粒,その他未熟粒の割合が増加し,対照区

に比べ高い粒厚でも未熟粒の割合の増加程度が大きく,その程度はヒノヒカリ

で著しかった.

2010 年は 2009 年と比較すると,基白粒は粒厚が大きくなるほど割合が高く

なり,1.9 mm 以下の粒厚で死米の割合が顕著に増加した.日本晴の整粒割合は

2.0~2.1 mm の粒厚で高く,粒厚が 2.0 mm 以下では小さくなるほど,2.1 mm

以上では大きくなるほど被害粒が増加した.ヒノヒカリでは,全処理区とも粒

厚が小さくなるにつれて乳白粒が増加し,遮光区,高温区で多く発生した.

5.玄米比重

2010 年に粒厚別に玄米比重を測定したところ(第 10 図),玄米比重は粒厚

が 2.0 mm 以上になるとほぼ一定となり,それ以下粒厚が小さくなるほど比重

は低下する傾向にあった.また各区ともヒノヒカリに比べ日本晴で,区間では

対照区>遮光区>高温区の順に高い傾向にあった.

また玄米比重は粒厚により異なったことから,粒厚 1.9~2.0 mm の玄米で外

観品質別の玄米比重を比較してみると(第 3 表),無選別の玄米では両品種と

もに対照区と遮光区の相違は小さかったが,これらに比べ高温区の玄米比重が

0.007 小さく,外観品質別に選別した場合平均で整粒(1.416)>白未熟粒(1.406)

>白死米(1.382)の順に大きくなった.

6.炊飯米食味評価

炊飯食味計での評価(第 4 表)では,食味値は両年ともに日本晴に比べてヒ

ノヒカリで高く,対照区に比べて高温区,遮光区では,外観が劣り,硬さが高

く,粘りが低く,バランス度が低く,食味値が低くなり,その傾向はヒノヒカ

リに比べて日本晴で顕著となった.

炊飯食味計による粒厚別の食味値をみると(第 11 図),2009 年の対照区は

1.8 mm 以上になるとほぼ一定となったが,それ以下になると急速に低下して,

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12

その低下程度は遮光区,高温区で,またヒノヒカリに比べ日本晴で大きくなっ

た.2010 年は粒厚が小さいほど食味値は直線的に低下する傾向にあり,その程

度は対照区に比べ高温区,遮光区で大きかった.

0

5

10

15

20

25

30

0

5

10

15

20

25

30

35

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

6月 7月 8月 9月 10月

日射

量(M

J m

-2)

2009年日射量 2010年日射量

2009年平均気温 2010年平均気温

平均

気温

(℃)

第 5 図 2009 年・2010 年における平均気温と日射量の推移.

気温は岡山市アメダスデータ,日射量は岡山大学内測定値.

第 6 図 対照区と高温区の平均気温の推移.

矢印は 2009 年(実線),2010 年(破線)の日本晴( )

とヒノヒカリ( )の出穂期と収穫期を示す.

15

20

25

30

35

6月中旬

6月下

7月上旬

7月中旬

7月下旬

8月上旬

8月中旬

8月下旬

9月上旬

9月中旬

9月下旬

10月

上旬

10月

中旬

気温

(℃

対照区野外(2009年) 高温区(2009年)

対照区野外(2010年) 高温区(2010年)

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13

第2表

量と

構成

要素

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14

0% 20% 40% 60% 80% 100%

高温区

遮光区

対照区

高温区

遮光区

対照区

2009年

<1.7

1.7~1.8

1.8~1.9

1.9~2.0

2.0~2.1

2.1~2.2

≧2.2

日本晴

ヒノヒカリ

0% 20% 40% 60% 80% 100%

高温区

遮光区

対照区

高温区

遮光区

対照区

2010年

日本晴

ヒノヒカリ

粒厚別重量割合 (%)

第 7 図 玄米の粒厚別重量割合.

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15

0%

20%

40%

60%

80%

100%

対照区 遮光区 高温区 対照区 遮光区 高温区

日本晴 ヒノヒカリ

2009年

その他

胴割粒

死米

その他未熟

青未熟

腹白未熟

基部未熟

乳白粒

整粒

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

0%

20%

40%

60%

80%

100%

対照区 遮光区 高温区 対照区 遮光区 高温区

日本晴 ヒノヒカリ

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

2010年

第 8 図 玄米の外観品質.

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16

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

対照区 遮光区 高温区

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

(%)

2009年 日本晴

粒厚(mm)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7

~1.

8

1.8

~1.

9

1.9

~2.

0

2.0

~2.

1

2.1

~2.

2

≧2.

2

≧1.

8

対照区 遮光区 高温区

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

(%)

粒厚(mm)

2010年 日本晴

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

対照区 遮光区 高温区

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

(%)

粒厚(mm)

2010年ヒノヒカリ

0 整粒 乳白粒 基白粒 腹白粒 青未熟粒 その他未熟粒 死米 胴割粒 その他

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

<1.

7

1.7~

1.8

1.8~

1.9

1.9~

2.0

2.0~

2.1

2.1~

2.2

≧2.

2

≧1.

8

対照区 遮光区 高温区

整粒

/未

熟・被

害粒

割合

(%)

2009年 ヒノヒカリ

粒厚(mm)

第 9 図 粒厚別玄米外観品質.

≧1.8 は 1.8 mm 以上の精玄米について測定.

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17

1.34

1.36

1.38

1.40

1.42

1.44

<1.7 1.7~1.8 1.8~1.9 1.9~2.0 2.0~2.1 2.1~2.2 ≧2.2

比重

粒厚 (mm)

日本晴対照区 日本晴遮光区 日本晴高温区

ヒノヒカリ対照区 ヒノヒカリ遮光区 ヒノヒカリ高温区

 品 種 処理区

日本晴 対照区 1.425 (0.001) 1.421 (0.009) 1.406 (0.004) 1.379 (0.001)

遮光区 1.424 (0.001) 1.418 (0.001) 1.401 (0.001) 1.386 (0.004)

高温区 1.418 (0.005) 1.417 (0.002) 1.408 (0.001) 1.385 (0.001)

ヒノヒカリ 対照区 1.420 (0.002) 1.412 (0.001) 1.407 (0.009) 1.381 (0.001)

遮光区 1.420 (0.002) 1.416 (0.001) 1.409 (0.008) 1.381 (0.004)

高温区 1.413 (0.003) 1.411 (0.002) 1.402 (0.003) 1.385 (0.008)

比重は粒厚1.9~2.0 mmの玄米について測定した.

数値は反復測定の平均値(標準偏差).

無選別 整粒 白未熟粒 白死米

第 10 図 粒厚別玄米比重(2010 年).

各マークは反復測定の平均±SE.

第 3 表 外観品質別の玄米比重(2010 年).

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18

第4表

飯食

味計

によ

る食

味評

価.

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19

20 30 40 50 60 70 80 90

日本晴対照区 日本晴遮光区 日本晴高温区

ヒノヒカリ対照区 ヒノヒカリ遮光区 ヒノヒカリ高温区

第11図 玄米粒厚別の食味値.

20

30

40

50

60

70

80

90

<1.7 1.7-1.8 1.8-1.9 1.9-2.0 2.0-2.1 2.1-2.2 2.2<

食味

値(炊

飯食

味計

粒厚 (mm)

2009年

20

30

40

50

60

70

80

90

<1.7 1.7-1.8 1.8-1.9 1.9-2.0 2.0-2.1 2.1-2.2 2.2<

食味

値(炊

飯食

味計

粒厚 (mm)

2010年

各マークは反復測定の平均±SE.第 11 図 玄米粒厚別の食味値.

各マークは反復測定の平均±SE.

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20

第 4 節 考察

粒厚と品質との関係が明らかになれば,粒厚選別機を用いて積極的な品質管

理を行える可能性がある. そこで本章では,2009 年と 2010 年に日本晴とヒノ

ヒカリの 2 品種を用い,対照区,遮光区,高温区を設けて水稲栽培を行い,遮

光及び高温処理が玄米の粒厚と外観品質,炊飯米の食味に及ぼす影響を調査し

た.

本研究で遮光処理を行った玄米は,対照区に比べ粒厚の薄い側により多く分

布するようになり(第7図),1.9 mm以下では未熟粒や特に死米の割合が著しく

増加して,外観品質は著しく低下した(第8,9図).2009年の粒厚別玄米外観品

質では,粒厚が小さくなる程整粒の割合が低下して,特に2.0 mm以上では胴割

粒,それ以下では白未熟粒,その他未熟粒,死米の割合が大きくなった.これ

らは遮光処理が行われた結果,群落光合成による同化産物の供給が低下して,

米粒の肥大が抑制された結果と考えられる.粒厚別の玄米外観品質は,2.0 mm

以下で粒厚の小さいほど乳白粒の割合が大きくなること(若松ら 2007),

1.8 mm以下の玄米では乳白および米粒の充実不良により未熟粒の割合が高く

なり,検査等級が著しく劣ること( Matue ら 2001),低温寡照年には

1.8-1.9 mmの玄米割合が高まり,死米・未熟粒割合が増加すること(黒田・松

本 1996)が認められている.本研究においても,日本晴・ヒノヒカリともに対

照区では1.9 mm未満になると白未熟粒の割合が急速に増加して,玄米外観品質

は著しく低下した(第9図).

高温処理が玄米の粒形に及ぼす影響についてみると,森田ら(2004)は日中

の高温処理(平均気温28.0 ℃)により粒長・粒幅が短く,粒厚が大きくなるこ

とを認めている.高温年の2010年対照区(登熟期平均気温30.4 ℃)の粒厚別分

布は,両品種ともに2009年対照区(平均気温25.7℃)に比べより厚い側に多く

分布するようになった(第7図).2009年における高温区(平均気温28.4 ℃)の

玄米は対照区に比べ粒厚の厚い側により多く分布するようになった.2010年は

2009年とは異なり,高温区(平均気温32.3 ℃)の玄米は対照区に比べ粒厚がや

や薄い側に,多く分布するようになったが,遮光区に比べるとその程度は小さ

かった.このように年次によって高温に対する粒厚分布の反応は異なったが,

2010年対照区の平均気温(30.4 ℃)は2009年高温区(28.4 ℃)よりも高く,

2010年高温区(32.3 ℃)が極端な高温であった点を考えると,日中高温条件で

登熟すると,粒厚が厚くなる傾向にあると考えられる.高温により粒厚が厚く

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21

なるにも関わらず千粒重が低下する要因を玄米比重から解析したところ,粒厚

1.9~2.0 mmの玄米の比重は,整粒>白未熟粒>白死米の順に大きく,無選別で

は対照区,遮光区に比べ高温区で低下することが認められた(第3表).すなわ

ち,高温条件下で減収する要因として,未熟粒の増加による玄米比重の低下が

関係していることが分かった.しかし,玄米比重の低下は0.5%程度であり,千

粒重の低下には玄米の溝部分の深さの増加や,粒長・粒幅の低下による,玄米

体積の減少が関係する可能性もある(Moritaら 2005).

粒厚別外観品質で,2009年と2010年で大きく異なったことは,対照区におい

て粒厚が大きくなるほど,基白粒の割合が高まった点であり,その傾向は日本

晴に比べヒノヒカリで顕著であった(第8図).さらに,この傾向は遮光処理や

高温処理によって,両品種ともに軽減されていることは注目される.若松ら

(2009)によると背白粒は粒の充実が登熟初期に偏って進行し,粒の背側の充

実期である登熟後期にデンプンの蓄積が阻害される場合に生じ,粒重は完全粒

と同等であるとしている(若松ら 2007).基白粒は背白粒よりもより登熟後期

における胚乳基部のデンプン蓄積が高温により阻害されたものと考えられ(森

田 2008),本試験でより強勢な粒厚の大きい玄米で基白粒が多く発生したこと

も,同化産物の競合の少ない登熟初期に高温で粒重増加が加速して基部充実期

には高温に加えて弱勢な玄米との同化産物の競合によると推定された.さらに,

強勢な玄米は穂の先端に近い一次枝梗着生穎花に多く,群落上層に位置するこ

とから,穂の表面温度は弱勢な穎花に比べ高くなるため,基白粒の発生が助長

されたものと考えられる(若松ら 2009).同氏らは,高温処理による基白粒の

発生は,遮光処理により軽減することを認めており,本試験においても2010年

には対照区に比べ遮光区で基白粒の発生は減少した(第8図).高温区でも軽減

されたことは,高温年にさらに高温処理をしたため,光合成の低下・呼吸の昂

進により遮光区と同様にソース能が低下したためと推察される.

炊飯食味計で調査した食味は日本晴に比べヒノヒカリで,食味値・外観・硬

さ・粘り・バランスでやや優り,高温区,遮光区ともに対照区に比べ劣る傾向

がみられたが,その程度はヒノヒカリに比べ日本晴で著しかった(第4表).す

なわち,日照不足や高温条件では両品種ともに玄米外観品質の低下が著しいも

のの(第8図),食味の低下程度はヒノヒカリで小さいことが判った.両品種と

もに粒厚が1.8 mm以下に低下すると顕著に食味が低下したことから,1.8 mm

または1.85 mm目での粒厚選別は検査等級,食味を高める上で有効な篩目であ

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22

ると推察された.対照区に比べ遮光区,高温区になるほど1.8 mm以下の食味値

の低下が著しく,その程度は日本晴に比べヒノヒカリで小さかったことから(第

11図),ヒノヒカリの食味の安定性には粒厚の低下に伴う食味の低下程度が小さ

いことが関係すると推察された.

2009年,2010年の収量は,両品種ともに対照区>高温区≧遮光区の順となり,

遮光区では登熟歩合の低下,高温区では登熟歩合と千粒重の低下がみられた.

2010年岡山市8~9月の平均気温は28.4 ℃と2009年26.0 ℃に比べ2.4 ℃高く,

日射量は2009年の16.2 MJ d-1に比べ7%高くなった(第5図).収量は気温が平

年並みであった2009年に比べ,高温年であった2010年に日本晴で15%,ヒノヒ

カリで12%の減収がみられ,日射量が多いにもかかわらず減収したことは,こ

れまで多くの報告(金ら 1996,Pengら 2004, Oh-eら 2007)と一致する.若

松ら(2006)によると,登熟期の60%遮光処理により,収量は約40%減収する

が,これは登熟歩合の30%前後の低下が大きく,千粒重の低下は5%程度で顕著

ではない.高温条件下で減収が起こる場合は,不稔率に起因する登熟歩合の低

下のみではなく,千粒重の顕著な低下も認められる(金ら 1996,Oh-eら 2007).

外観品質においては,2010年は両品種,全処理区ともに2009年の玄米に比べ

て整粒割合が小さく,この年の玄米は整粒割合が規格外相当となり,白未熟粒,

その他未熟粒,死米が多く発生し,特に高温による白未熟粒(ヒノヒカリでは

基白粒)の発生が顕著となった(第8図).2009年は遮光処理により白未熟粒が,

高温処理によりその他未熟粒が増加して,整粒割合は対照区の78~68%から,

遮光区で67~64%,高温区で58~54%に低下した.高温は登熟前半では乳白粒

割合,登熟後半では背白粒・基白粒割合が大きくなり,外観品質が著しく低下

すること(Tashiro and Wardlaw 1991, 森田 2006,大江ら 2007, 若松ら 2007)

が認められている.また,穂揃い期以降の遮光は心白粒,腹白粒の発生を増加

させること(今野ら 1991,斎藤 1987),背白・基白粒が減少させるが乳白粒

が増加すること(小谷ら 2006,若松ら 2006)が報告されており,本研究でも

同様の結果となった(第8図).

炊飯米の食味値と食味関連形質との相関関係を検討してみた(第5表).両品

種・年次とも食味値は粒厚,外観,粘り,バランス度,整粒割合と正の相関関

係(P<0.01),硬さ,死米割合,その他被害粒割合と負の相関関係(P<0.01)

が認められた.粒厚が大きく,外観が良く,粘りが強く,バランスが良く,整

粒割合の高いほど,食味値が高いこと,炊飯米が硬く,死米が多く,その他被

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23

害粒の多いほど食味値が低いことを意味している.

2ヵ年で傾向が異なったのは,白未熟粒割合と胴割粒割合であった.食味値と

白未熟粒割合は,2009年は負の(P<0.001),2010年は正の(P<0.01)相関関

係となった.2009年は白未熟粒の多いほど食味値が低下したのに対して,2010

年は逆に上昇したことになる.この原因として,白未熟粒(特に基白粒)が粒

厚の大きい玄米で多発したこと(第9図)が関係すると考えられる.すなわち,

粒厚が大きいほど食味値は高くなり(第11図),基白粒が増加しても食味値に及

ぼす影響は小さかったと考えられる.今後,基白粒の発生と食味官能評価との

関係について検討を行う必要性があるが,2010年における基白粒の発生が食味

に及ぼす影響は小さかったと推察できる.また,胴割粒割合については,2009

年はやや多く発生し,その発生が特に粒厚の大きい玄米で多かったこと(デー

タ省略)から2009年は正の相関関係(P<0.05)となり,発生が少なかった2010

年には有意な関係はみられなかったものと推定された.

以上より,粒厚が小さくなるほど,穀粒判別器による整粒割合の低下(第9図),

炊飯食味計による食味値低下が明らかになったが,この程度は対照区よりも遮

光区,さらに高温区でより顕著となった(第11図).すなわち,遮光や高温によ

り粒厚が小さくなるほど食味値が低下することは,白未熟粒及び死米の割合が

より大きくなることに起因するものと推察された.また,2010年のように顕著

な高温年には基白粒が粒厚の厚い玄米で多発するものの,基白粒の多発が食味

値に及ぼす影響は小さいものと考えられた.さらに粒厚選別機を用いて,篩目

を調節することにより,玄米外観品質すなわち検査等級,ならびに食味を向上

させ,積極的な品質管理を行うことの可能性が示唆された.

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24

第 5 表 食味値と食味関連形質との相関係数.

粒厚 0.773 *** 0.724 *** 0.890 *** 0.749 ***

外観 0.985 *** 0.990 *** 0.983 *** 0.970 ***

硬さ -0.980 *** -0.971 *** -0.951 *** -0.894 ***

粘り 0.989 *** 0.976 *** 0.983 *** 0.955 ***

バランス度 0.999 *** 0.999 *** 0.999 *** 0.999 ***

整粒割合 0.908 *** 0.722 *** 0.543 ** 0.595 **

青未熟粒割合 -0.397 -0.385 -0.298 -0.298

白未熟粒割合 -0.727 *** -0.704 *** 0.629 ** 0.670 ***

その他未熟粒割合 0.020 0.222 0.269 0.146

死米割合 -0.861 *** -0.974 *** -0.659 *** -0.634 **

胴割粒割合 0.676 *** 0.442 * 0.105 0.319

その他被害粒割合 -0.720 *** -0.910 *** -0.581 ** -0.584 **

 *, **, *** はそれぞれ5, 1, 0.1%水準で有意.

項目2009年食味値 2010年食味値

日本晴 ヒノヒカリ 日本晴 ヒノヒカリ

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25

第 5 節 摘要

日本晴とヒノヒカリを供試し,岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学セ

ンターの水田で対照区,遮光区,高温区を設けて,2009 年と 2010 年(夏季高

温年)に栽培を行った.高温処理は水田内に側面自動開閉装置を装着したビニ

ールハウス内で栽培を行い,出穂期以降ハウス内の気温が 36 ℃以上で開放,

25 ℃以下で閉鎖するように制御し,遮光処理は出穂期以降黒色寒冷紗(遮光率

50%)で群落上層を被覆した.2009 年,2010 年の収量は対照区に比べ,それ

ぞれ高温区で登熟歩合と千粒重の低下により 10~21%,30~33%,遮光区で登

熟歩合の低下により 16~24%,32%の減収が認められた.2009 年に比べ高温

であった 2010 年は千粒重が低下したにもかかわらず,粒厚はより厚い側に分布

する傾向がみられた.対照区に比べ,高温区では 2009 年は粒厚がより厚い側に

分布したが,2010 年は逆にやや薄い側に分布する傾向を示し,遮光区では両年

ともに粒厚がより薄い側に分布する傾向がみられた.高温は玄米の肥大成長を

促進し,遮光は抑制すると考えられた.両品種ともに粒厚が薄くなるほど整粒

割合が低下し,白未熟粒割合が高まった.2010 年には,粒厚が厚くなるほど基

白粒割合が特異的に高くなった.炊飯食味計による食味値は日本晴に比べヒノ

ヒカリで高く,粒厚が薄いほど食味値は低下する傾向を示し,その程度は日本

晴に比べヒノヒカリで小さくなった.遮光区,高温区ともに食味値が対照区に

比べ低下したが,その程度は日本晴で著しかった.食味値と白未熟粒割合との

間には 2009 年には正の,2010 年には負の有意な相関関係が認められ,これに

は食味値の高い粒厚の厚い玄米で基白粒が増加したことに起因すると考えられ,

2010 年にみられた基白粒の発生が食味に及ぼす影響は小さいと推察された.粒

厚選別機の篩目を調節することにより,整粒割合,食味を調節できる可能性が

示された.

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26

第 2 章 遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の粒厚と外観品質が

米飯の食味と理化学特性に及ぼす影響

第 1 節 はじめに

これまで,登熟期の高温は白未熟粒の発生により玄米外観品質が低下し(平

1998, Oh-e ら 2007, 大江ら 2007, 2008, 若松ら 2007, 2009, 森田 2008, 石

突ら 2013),食味官能試験による総合評価も低下することが報告されている(大

江ら 2007, 若松ら 2007).また,若松ら(2007)は背白米の発生は食味低下

の主因ではないと報告している.登熟期の日照不足も玄米発育を抑制して白未

熟粒の発生を助長し(小谷ら 2006, 今野ら 1991, 黒田・松本 1996, 松江ら

1992, 斎藤 1987, 若松ら 2006, 2009),食味を大きく低下させることになる

(松江ら 1992, 和田ら 2002, 若松ら 2006).

第 1 章において,気温が平年並みであった 2009 年と夏季が高温であった 2010

年に,日本晴,ヒノヒカリを用いて圃場栽培を行い,高温と遮光処理が収量と

玄米の粒厚分布,外観品質,炊飯食味計による食味値に及ぼす影響を調査した.

その結果,登熟期の高温により玄米の粒厚はより厚い側に,逆に遮光ではより

薄い側に分布するようになり,両処理ともに粒厚が 1.9 mm 以下においては,

小さいほど乳白粒・腹白粒の割合が増加して,外観品質並びに食味値が著しく

低下することが明らかになった.また,2010 年には基白粒が粒厚の大きい玄米

で多発生したが,食味に及ぼす影響は小さいと考えられた.第 1 章における食

味評価は,炊飯食味計により推定を行ったが,食味官能試験並びに理化学的特

性による評価を通じて,検証を行う必要がある.

地球温暖化に伴い気象変動が大きくなってきており(IPCC 2007),高温や日

照不足等が作物の生育収量,品質そして食味に及ぼす影響を詳しく解明し,障

害を軽減する技術的対策を検討していく必要がある.栽培管理による技術的対

策として,耐性品種の育成以外に遅植えや適正な穂肥施用,深水栽培等(森田

2011)が指摘されているが,ポストハーベスト技術として玄米を粒厚選別機や

色彩選別機により選別・調製することにより,一部の玄米の整粒割合を向上さ

せることも可能である.現在,粒厚選別機の篩目の設定は慣行や経験にたよっ

ている場合が多く,篩目の設定値と米の品質・食味との関係を明らかにする必

要がある.

そこで本章では,第 1 章で 2009 年に水稲品種日本晴とヒノヒカリを供試して

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27

遮光・高温処理,並びに無処理で栽培を行い粒厚選別,外観品質評価を行った

玄米を供試し,粒厚と外観品質が食味官能評価と理化学的特性に及ぼす影響を

調査した.

第 2 節 材料と方法

1.粒厚別玄米の調製

第 1 章において,2009 年に日本晴とヒノヒカリの 2 品種を供試して栽培を行

い,対照区,遮光区(出穂期以降黒色寒冷紗(遮光率 50%)全面被覆),高温

区(ビニールハウス 2.1×15.0m,31.5m2,側面自動開閉装置を移植(6 月 11

日)から穂揃い期まで開放,8 月 20 日以降日中 36 ℃で開放し,夜間 25 ℃で

閉鎖するよう制御)の 3 試験区を設けた.出穂期は各試験区とも日本晴で 8 月

21 日,ヒノヒカリで 8 月 28 日,収穫期は日本晴で 10 月 6 日,ヒノヒカリで

10 月 13 日であり,収穫期は遮光区で 3 日遅れ,高温区で 2 日早まった.

収穫した各試験区の玄米をテスト粒厚選別機(TWS,サタケ製)により,1.7

~2.2 mm 網を 0.1 mm 刻みで使用し,各 200 g を粒厚別供試玄米とした.

2.白未熟粒の混入割合別玄米の調製

各区の粒厚 1.9 mm 以上の精玄米を穀粒判別器(RGQI20A,サタケ製)にて,

整粒と白未熟粒(乳白粒,基部未熟粒,腹・背白未熟粒を足したもの)に選別

し,整粒と白未熟粒を混合(整粒割合 100,75,50,25,0%)し,各 200 g

を白未熟粒混入割合別供試玄米とした.

3.食味官能試験及び理化学特性

白未熟粒混入割合別供試玄米及び粒厚別供試玄米を水分含有率14~15%に調

湿し,トーヨーテスター精米機(MC-90A,東洋精米機製作所製)で搗精歩留

90~91%に搗精した.食味官能試験は福岡県農業試験場において実施し,試験

方法は松江ら(2003)に準拠して,パネル構成員16名で実施した.基準米は,

粒厚別供試玄米においては,各品種および試験区別の玄米粒厚1.8 mm以上のも

のとし,白未熟粒混入割合別供試玄米においては,各品種および試験区別の整

粒混合割合75%のものとした.基準米と比較して総合評価,外観および味を-3

(かなり不良)~+3(かなり良),粘りを-3(かなり弱い)~+3(かなり強

い),硬さを-3(かなり柔らかい)~+3(かなり硬い)の7段階で評価した.

精米中のタンパク質含有率は全窒素をケルダール法で測定し,タンパク質換

算係数5.95を乗じて求めた.アミロース含有率はオートアナライザーⅡ型(テ

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28

クニコン社製),アミログラム特性はラピッドビスコアナライザー(Newport

Scientific社製)を用いて糊化特性を測定し,デンプンが糊化して粘度が上がっ

たピークを最高粘度とし,デンプン粒が破裂して粘度が下がった下限値と最高

粘度との差をブレークダウンとして評価した.テクスチャー特性はテクスチュ

ロメーター(GTX-2,全研社製)を用いて測定した.本装置は,プランジャー

(棒状ピストン)により繰り返し米飯をつぶす(圧縮する時)の力を,硬さH kgf

とし,引き上げる時の力を,粘り-H kgfとし,引き離すのに必要な仕事量を付

着性A3とし,硬さ/粘り比をH/-H,硬さ/付着性比をH/A3としてそれぞ

れ評価した.

第 3 節 結果

1.食味官能試験

粒厚別の食味官能試験結果を総合評価について第6表に,外観・味・粘り・硬

さについて第12図に示した.基準米は,各品種および試験区別の玄米粒厚

1.8 mm以上のものとした.日本晴をみると,総合評価では対照区で粒厚が薄く

なるほど低下し,1.9 mm未満で顕著に低下した.高温区においては2.0 mm未

満,遮光区においては1.9 mm未満で急速に低下した.外観,味,粘りにおいて

もほぼ同様の傾向が確認されたが,硬さには明確な傾向はみられなかった.ヒ

ノヒカリも日本晴とほぼ同様の傾向を示したが,粒厚が薄くなるのに伴う各食

味評価項目の低下程度が日本晴に比べ小さく,各区とも粒厚1.8~1.9 mmではヒ

ノヒカリが高い値を維持した.

白未熟粒混入割合別の食味官能試験結果(総合評価)と混入した白未熟粒の

乳白粒・基白粒(背白粒を含む)・腹白粒の形態別割合を第7表に,外観・味・

粘り・硬さについて第13図に示した.基準米は,各品種および試験区別の整粒

割合75%のものとした.総合評価,外観,味,粘り,硬さともに,基準米に比

べ整粒割合100%で向上し,75%より低下(白未熟粒の割合が増加)するほど,

各評価項目とも低下する傾向が認められた.総合評価は整粒割合100%で,日本

晴の高温区,遮光区,ヒノヒカリの対照区,高温区が大きく低下し,整粒割合

50~25%では両品種全処理区で大きく低下した.

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29

第6表 玄米粒厚別食味官能試験(総合評価).

日本晴 対照区 - - -2.09d -0.45c 0.55a

遮光区 -2.50e -0.75c 0.42b 0.83a -

高温区 - - -2.55c -1.45b 0.18a 0.45a -

ヒノヒカリ 対照区 - -2.67c -1.75b 0.00a 0.17a 0.17a -

遮光区 -2.50c -0.67b 0.33a 0.33a 0.33a 0.25a -

高温区 - -2.27d -1.45c -1.09c 0.27b 0.09b 0.82a

各区とも≧1.8mmの玄米を基準米とし,パネル構成員16名で実施した.

-は玄米量が炊飯試験の基準量以下となり欠測.

区間(各行)で同一文字を伴う平均値間に5%水準で有意差なし(LSD法).

-0.09bc 0.18ab

-2.00de 0.50ab

総合評価

品種 栽培条件玄米粒厚 (mm)

1.6~1.7 1.7~1.8 1.8~1.9 1.9~2.0 2.0~2.1 2.1~2.2 ≧2.2

第7表 白未熟粒混入割合別食味官能試験(総合評価).

0 乳白 基白 腹白

日本晴 対照区 0.31a -0.15b -1.00c -1.38c 33 32 35

遮光区 1.00a -0.08b -1.15c -1.38c 59 21 20

高温区 0.85a -0.15b -0.69c -0.69c 55 21 24

ヒノヒカリ 対照区 0.42a 0.00b -0.50c -0.83c 49 25 26

遮光区 0.08a -0.17b -0.83b -1.25c 62 23 15

高温区 0.85a -0.08b -1.15c -1.46c 51 31 18

各区とも整粒割合75%を基準米(0)として,パネル構成員16名で実施した.

区間(各行)で同一文字を伴う数値には, 5%水準で有意差なし(LSD法).

品種 処理区

総合評価 混入した白未熟粒の形態別割合(%)整粒割合 (%)

100 50 25

第 6 表 玄米粒厚別食味官能試験(総合評価).

第 7 表 白未熟粒混入割合別食味官能試験(総合評価).

Page 33: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

30

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

-3

-2

-1

0

1

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

粒厚(㎜)

● ■ ▲

日本晴 外観

日本晴 味

日本晴 粘り

日本晴 硬さ

ヒノヒカリ 外観

ヒノヒカリ 味

ヒノヒカリ 粘り

ヒノヒカリ 硬さ

第 12 図 玄米粒厚別食味官能試験.

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

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31

第 13 図 白未熟粒混入による整粒割合別の食味官能試験.

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).○は基準米=0 を示す.

マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

日本晴 外観 ヒノヒカリ 外観

ヒノヒカリ 味

日本晴 粘り ヒノヒカリ 粘り

日本晴 硬さ

-2

-1

0

1

2

100 75 50 25 0整粒割合(%)

● ■ ▲

日本晴 味

ヒノヒカリ 硬さ

Page 35: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

32

2.理化学特性

粒厚別試験におけるタンパク質含有率は,両品種いずれの粒厚においても高

温区>遮光区>対照区の順に高かった(第14図),また,粒厚別にみると,粒厚

が薄くなるほどタンパク質含有率は高くなり,その程度は特に高温区で著しか

った.白未熟混入割合別にみると,いずれの整粒割合(白未熟粒割合)におい

ても,高温区>遮光区>対照区の順に高くなった.対照区ではいずれの混入割

合においてもタンパク質含有率の変化は小さかったが,遮光区と高温区では整

粒100%に比べ白未熟粒100%(整粒0%)の方が高い値を示した.

6

7

8

9

10

11

12

13

14

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

タン

パク

質含

有率

(%)

粒厚(㎜)

日本晴

6

7

8

9

10

11

12

13

14

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

タン

パク

質含

有率

(%)

粒厚(㎜)

ヒノヒカリ

6

7

8

9

10

11

12

13

14

100 75 50 25 0

タン

パク

質含

有率

(%)

整粒割合(%)

日本晴

6

7

8

9

10

11

12

13

14

100 75 50 25 0

タン

パク

質含

有率

(%)

整粒割合(%)

ヒノヒカリ

第14図 粒厚別・整粒割合別白米のタンパク質含有率.対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

第 14 図 粒厚別・整粒割合別白米のタンパク質含有率.

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

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33

アミロース含有率は(第 15 図),粒厚別にみると両品種全処理区ともに粒厚

が薄くなるほど低くなる傾向がみられ,その低下程度は区間でほぼ等しかった

が,いずれの粒厚においても対照区と遮光区に比べ,高温区では 2~5%低く推

移した.白未熟混入割合別にみると,両品種全処理区ともに整粒 100%に比べ

白未熟粒 100%(整粒 0%)で低くなり,その差は日本晴対照区で 0.6%,遮光

区 2.1%,高温区 2.5%,ヒノヒカリ対照区で 1.3%,遮光区 2.4%,高温区 2.5%

低くなった.いずれの整粒割合においても対照区と遮光区でほぼ同様の値であ

ったのに対し,高温区では 2~4%程度低く推移した.

8

10

12

14

16

18

20

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

アミ

ロー

ス含

有率

(%)

粒厚 (㎜)

日本晴

8

10

12

14

16

18

20

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

アミ

ロー

ス含

有率

(%)

粒厚 (㎜)

ヒノヒカリ

8

10

12

14

16

18

20

100 75 50 25 0

アミ

ロー

ス含

有率

(%)

整粒割合(%)

日本晴

8

10

12

14

16

18

20

100 75 50 25 0

アミ

ロー

ス含

有率

(%)

整粒割合(%)

ヒノヒカリ

第15図 粒厚別・整粒割合別白米のアミロース含有率.対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

第 15 図 粒厚別・整粒割合別白米のアミロース含有率.

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間の±LSD(P<0.05).

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34

アミログラム特性を比較すると,最高粘度(第 16 図),ブレークダウン(第 17

図)ともに,粒厚が薄いほど低下する傾向を示し,その程度は高温区で著しか

った.また,白未熟粒が多いほど,最高粘度,ブレークダウンともに低下する

傾向にあったが,いずれの整粒割合においても対照区に比べ遮光区,高温区で

若干小さい値を示した.

150

175

200

225

250

275

300

325

350

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

最高

粘度

(R.V

.U)

粒厚 (㎜)

日本晴

● ■ ▲

150

175

200

225

250

275

300

325

350

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

最高

粘度

(R.V

.U)

粒厚 (㎜)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

150

175

200

225

250

275

300

325

350

100 75 50 25 0

最高

粘度

(R.V

.U)

整粒割合(%)

日本晴

● ■ ▲

150

175

200

225

250

275

300

325

350

100 75 50 25 0

最高

粘度

(R.V

.U)

整粒割合(%)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

第16図 粒厚別・整粒割合別白米の最高粘度(アミログラム特性).対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

第 16 図 粒厚別・整粒割合別白米の最高粘度(アミログラム特性).

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

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35

テクスチャー特性としての硬さ/粘り比(H/-H)はヒノヒカリに比べ日本晴

で大きく(第 18 図),粒厚が 2.0 mm 未満では高温区>遮光区>対照区の順に

高くなる傾向にあったが,整粒割合(白未熟粒混入割合)とは明確な関係は認

められなかった.硬さ/付着性比(H/A3)は(第 19 図),ヒノヒカリに比べ日

本晴で大きく,粒厚の薄いほど高温区では高くなる傾向にあったが,対照区,

遮光区では一定の傾向はみられなかった.また,整粒割合(白未熟粒混入割合)

と H/A3 も明確な関連は認められなかった.

50

75

100

125

150

175

200

225

250

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

ブレ

ーク

ダウ

ン(R.V

.U)

粒厚 (㎜)

日本晴

● ■ ▲

50

75

100

125

150

175

200

225

250

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

ブレ

ーク

ダウ

ン(R.V

.U)

粒厚 (㎜)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

50

75

100

125

150

175

200

225

250

100 75 50 25 0

ブレ

ーク

ダウ

ン(R.V

.U)

整粒割合(%)

日本晴

● ■ ▲

50

75

100

125

150

175

200

225

250

100 75 50 25 0

ブレ

ーク

ダウ

ン(R.V

.U)

整粒割合(%)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

第17図 粒厚別・整粒割合別白米のブレークダウン(アミログラム特性).対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

第 17 図 粒厚別・整粒割合別白米のブレークダウン(アミログラム特性).

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

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36

0

20

40

60

80

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

H/-H

粒厚(㎜)

日本晴

● ■ ▲

0

20

40

60

80

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

H/-H

粒厚(㎜)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

0

20

40

60

80

100 75 50 25 0

H/-H

整粒割合(%)

日本晴

● ■ ▲

0

20

40

60

80

100 75 50 25 0

H/-H

整粒割合(%)

ヒノヒカリ

● ■ ▲

第18図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/粘り比(H/-H).対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

第 18 図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/粘り比(H/-H).

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).

マークの縦棒は各区粒厚ランク間・整粒割合間の±LSD(P<0.05).

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37

3.食味関連形質と玄米外観品質との関係

粒厚別試験と白未熟粒混入試験における,日本晴とヒノヒカリの食味関連形

質間の相関係数を第8表に示した.いずれの総合評価も外観,味,粘り,アミロ

0

50

100

150

200

250

300

350

400

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

H/A

3

粒厚(㎜)

日本晴

■LSD(0.05)=70

▲LSD(0.05)=86

● ns

0

20

40

60

80

100

120

140

≧1.8

~1.7

1.7

~1.8

1.8

~1.9

1.9

~2.0

2.0

~2.1

2.1

~2.2

2.2

H/A

3粒厚(㎜)

ヒノヒカリ● ns

■ ns▲ ns

0

50

100

150

200

250

300

350

400

100 75 50 25 0

H/A

3

整粒割合(%)

日本晴●LSD(0.05)=46

▲ ns

■ ns

0

20

40

60

80

100

120

140

100 75 50 25 0

H/A

3

整粒割合(%)

ヒノヒカリ● ns■ ns

▲ ns

第19図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/付着性比(H/A3).対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの数字は各区粒厚ランク間・整粒割合間のLSD(P<0.05),nsは有意差なしを示す.

第 19 図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/付着性比(H/A3).

対照区(●),遮光区(■),高温区(▲).マークの数字は各区粒厚

ランク間・整粒割合間の LSD(P<0.05),ns は有意差なしを示す.

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38

ース含有率,最高粘度,ブレークダウン,粒厚,整粒割合と正の,タンパク質

含有率,白未熟粒割合と負の相関関係(P<0.001)がみられた.総合評価とテク

スチャー特性の関係を検討すると,日本晴で総合評価とH/-H,H/A3との間に負

の相関関係(P<0.05),ヒノヒカリでH/A3との間に負の相関関係(P<0.01)が

みられた.粒厚についても総合評価と同様な項目と相関関係(P<0.001)がみら

れ,粒厚が厚いほど整粒割合が高く(白未熟粒割合が低く),タンパク質含有率

が低く,アミロース含有率は高まるものの,アミログラム特性に優れ,食味に

優ることがわかった.白未熟粒割合と総合評価,外観,味,粘り,アミロース,

最高粘度,ブレークダウンと負の,タンパク質と正の相関関係(P<0.001)がみ

られ,白未熟粒が増えるとタンパク質含有率が高まり,アミロース含有率が低

下しても,アミログラム特性は低下して,食味が劣ることがわかった.また,

日本晴で硬さと5%水準,ヒノヒカリで10%水準と有意性は低いが負の相関関係

がみられ,白未熟粒が増えると柔らかくなる傾向が認められた.

第8表 食味関連形質間の相関係数.

総合 - 0.842 *** - 0.813 *** - -0.931 *** - -0.916 ***

外観 0.989 *** 0.848 *** 0.988 *** 0.762 *** 0.983 *** -0.913 *** 0.944 *** -0.882 ***

味 0.978 *** 0.819 *** 0.995 *** 0.807 *** 0.966 *** -0.950 *** 0.963 *** -0.843 ***

粘り 0.972 *** 0.744 ** 0.975 *** 0.843 *** 0.947 *** -0.904 *** 0.891 *** -0.908 ***

硬さ -0.041 0.314 -0.027 -0.076 0.572 * -0.542 * 0.283 -0.507

タンパク質(%) -0.840 *** -0.751 *** -0.620 ** -0.745 *** -0.855 *** 0.833 *** -0.865 *** 0.749 **

アミロース(%) 0.952 *** 0.861 *** 0.638 ** 0.676 *** 0.819 *** -0.857 *** 0.892 *** -0.913 ***

H/-H -0.583 * -0.580 ** -0.326 -0.204 -0.285 0.191 0.021 -0.072

H/A3 -0.489 * -0.337 -0.589 ** -0.431 0.007 -0.085 -0.346 0.173

最高粘度 0.960 *** 0.869 *** 0.895 *** 0.842 *** 0.969 *** -0.935 *** 0.922 *** -0.901 ***

ブレークダウン 0.878 *** 0.890 *** 0.857 *** 0.787 *** 0.874 *** -0.820 *** 0.845 *** -0.870 ***

粒厚 0.842 *** - 0.813 *** - - - - -

整粒割合 0.861 *** 0.880 *** 0.809 *** 0.911 *** 0.931 *** -1.000 *** 0.916 *** -1.000 ***

白未熟粒割合 -0.781 *** -0.718 *** -0.763 *** -0.778 *** -0.931 *** - -0.916 *** -

乳白粒割合 -0.765 *** -0.773 *** -0.791 *** -0.824 *** -0.841 *** 0.927 *** -0.915 *** 0.983 ***

基白粒割合 -0.537 ** -0.203 -0.078 0.057 -0.906 *** 0.940 *** -0.927 *** 0.975 ***

腹白粒割合 -0.443 -0.192 -0.626 ** -0.436 * -0.873 *** 0.923 *** -0.768 *** 0.924 ***

 *, **, *** はそれぞれ5, 1, 0.1%水準で有意.

各項目の数値は基準米に対する増減量として相関を求めた.

項目

粒厚別試験 白未熟混入試験

日本晴 ヒノヒカリ 日本晴 ヒノヒカリ

総合 粒厚 総合 粒厚 総合 白未熟割合 総合 白未熟割合

第 8 表 食味関連形質間の相関係数.

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39

第 4 節 考察

2009年に日本晴とヒノヒカリを供試して高温・遮光処理を行った玄米を用い

て,粒厚別,並びに整粒と白未熟粒を混入した割合別に,食味官能試験を行い,

理化学的特性を調査した.それらの結果をもとに,日照不足や高温の年に米飯

の食味の低下をもたらす要因について考察を行う.

粒厚別の食味官能試験の結果,粒厚が薄くなるほど食味が低下して,これに

はタンパク質含有率の上昇,アミロース含有率,最高粘度,ブレークダウンの

低下が関係していた(第6,8表).黒田・松本(1996)も粒厚が薄くなるほどタ

ンパク質含有率が高まり,アミロース含有率は低下するが,アミログラム特性

は変化しないことを認めている.Matueら(2001)はコシヒカリ,日本晴,ヒ

ノヒカリの3品種を用いて,粒厚別の食味官能試験を行い,本研究と同様に

1.9 mm以下に粒厚が薄くなるほど食味が著しく低下し,タンパク質含有率,ア

ミロース含有率,最高粘度,H/-Hと密接に関係することを報告している.本研

究では日本晴のみで総合評価とH/-Hとの間に密接な負の相関関係(P<0.01)が

みられ,日本晴の総合評価がH/-Hと高い標準偏回帰係数を有するとしたMatue

ら(2001)の結果を支持している.前述したように,総合評価とタンパク質含

有率との間には負の,アミロース含有率とは正の有意な(P<0.001)相関関係が

認められたが,これまでアミロース含有率と総合評価の間には負の直線関係が

認められており(稲津 1988),粒厚が薄くなるのに伴う食味低下にはタンパク

質含有率の影響が相対的に大きく,アミロース含有率の影響は小さくなると,

Matueら(2001)は述べている.

本研究における,粒厚とタンパク質含有率との関係をみると,いずれの粒厚

においても高温区>遮光区>対照区の順に大きかった(第14図).この原因は明

らかではないが,高温条件ではタンパク質の蓄積が急速に起こり,デンプンの

蓄積が劣る粒重すなわち粒厚の薄い玄米では含有率の上昇が大きく,遮光条件

ではタンパク質の蓄積は対照区と相違ないが,遮光によりデンプンの蓄積が劣

るため,いずれの粒厚においても1%程度上昇したと推察できる.粗玄米千粒重

とタンパク質含有率との間には負の(松江・尾形 1999b),アミロース含有率と

は負の(Matsueら 1994, 松江・尾形 1999a)相関関係が認められており,米

粒の充実が不良であるとアミロース含有率は減少し,タンパク質含有率は増加

したものと推察された(和田ら 2002).

これまで,粒厚の薄い玄米の食味が低下する要因を,理化学的特性から検討

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40

を行ってきたが,第1章において遮光・高温処理により粒厚が1.9 mm以下薄い

ほど乳白粒・腹白粒の割合が増加して,外観品質が著しく低下することが認め

られた.そこで,白未熟粒の混入が食味に及ぼす影響を評価するため,各区の

玄米を穀粒判別器により整粒と白未熟粒に選別,混合し,食味官能試験と理化

学的特性の調査を行った.

その結果,両品種,各区とも整粒100%から白未熟粒100%になるに従って,

総合評価・外観・味・粘りが直線的に低下した(第7表,第13図).すなわち,

白未熟粒の発生は,米飯の外観,味,粘りを低下させ,やや軟らかくなること

がわかった(第8表).両品種ともに白未熟粒割合とタンパク質含有率とは正の,

アミロース含有率・最高粘度・ブレークダウンとは負の相関関係にあり(第8表),

白未熟粒はタンパク質含有率が高く,アミロース含有率が低く,アミログラム

特性も劣ると推察された.

しかし,混入割合とタンパク質含有率との関係をみると,整粒100%に比べ白

未熟粒100%のタンパク質含有率は対照区では大きく変化しなかった(第14図).

すなわち,対照区のタンパク質含有率は整粒100%と白未熟粒100%で大差ない

のに,白未熟粒100%の食味は有意に低下していることになる(第7表).また,

整粒100%に比べ白未熟粒100%のアミロース含有率はやや低い傾向にあった

(第15図).タンパク質含有率が同様な白米では,アミロース含有率の低下は食

味を向上させると考えられたが(稲津 1988),本研究の場合食味の向上効果は

認められなかった(第7表).したがって,通常条件下で栽培された水稲玄米に

おける白未熟粒の食味の低下は,タンパク質含有率やアミロース含有率ではな

く,これら以外の要因,例えば胚乳デンプンの構造変化(梅本 2009)などを通

じて,アミログラム特性を低下させた可能性も考えられる.今後検討を行う必

要がある.

大江ら(2007)は2005年に栽培した日本晴の整粒と乳白粒を選別し,食味と

理化学的特性を調査した結果,整粒に比べ乳白粒の食味が有意に劣ったが,タ

ンパク質含有率は0.2%の上昇(有意差なし),アミロース含有率は1.5%の低下,

最高粘度・ブレークダウンは低下,H/-Hは上昇したことを報告している.通常

登熟条件下の乳白粒は整粒と同等のタンパク質含有率であることは,本研究の

結果と一致する.

若松ら(2007)は背白・基白粒が多発した2003年5月中旬移植(鹿児島県)

のヒノヒカリで,米粒判別器により選別した整粒と乳白粒の混入割合を変えて

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41

食味試験,タンパク質含有率を調査した結果,乳白粒が多いほどタンパク質含

有率が高まり,総合評価が低下したことを報告している.また,2004年5月中旬

移植のヒノヒカリから選抜した乳白粒は完全粒に比べ千粒重が3.9 g小さく,タ

ンパク質含有率は0.48%高いことを認めている(若松ら 2007).同様に,若松

ら(2004)は早期栽培コシヒカリの未熟粒はタンパク質含有率が整粒に比べて

高く,食味に影響することを報告している.本研究においても,ヒノヒカリ高

温区の白未熟粒は整粒に比べタンパク質含有率が1.58%高く,タンパク質含有

率の上昇が食味低下の主な要因と考えられる.前述したように,本研究におけ

る対照区の白未熟粒のタンパク質含有率の上昇は小さかったことから,一概に

白未熟粒の食味低下の原因がタンパク質含有率の上昇であると結論することは

できない.

第1章において,岡山県で2010年に栽培した水稲玄米に基白粒(穀粒判別器で

は背白粒も含む)が多発して,粒厚が大きいほど基白粒の割合が高くなり,白

未熟粒の割合が高いほど炊飯食味計による食味値が高くなったことから,基白

粒の発生が食味に及ぼす影響は小さいと推察した.若松ら(2007)も同様に,

鹿児島県早期栽培ヒノヒカリでは背白・基白粒が60~90%の割合で,特に粒厚

の大きい粒に多発するため,タンパク質含有率は完全粒と同等で,食味も普通

期栽培のヒノヒカリとほぼ同等であることを報告している.したがって,2010

年に多発した背白粒・基白粒の発生が食味に及ぼす影響は小さいと考えられる

が,高温条件で増加する乳白粒の割合を考慮して,高温登熟米の食味を評価す

る必要がある.今後,基白粒の発生機構,食味に及ぼす影響を詳細に検討する

必要がある.

以上より,粒厚が薄くなるほど,白未熟粒の割合が増加し,白米タンパク質

含有率の上昇とともに食味が低下すること,日照不足や高温の年には白未熟粒

のタンパク質含有率が高まり,米飯の食味を低下させることが明らかになった.

また,粒厚選別機を用いて,篩目を調節することにより,玄米外観品質すなわ

ち検査等級を向上させるとともに,色彩選別機などを用いて乳白粒や白死米を

除去することにより,食味を向上させることができる可能性が示唆された.

第 5 節 摘要

日本晴とヒノヒカリを供試し,2009 年に岡山大学農学部附属山陽圏フィール

ド科学センターの水田で栽培した対照区,遮光区,高温区の玄米を粒厚別に選

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別して食味官能試験(基準米は各区粒厚 1.8 mm 以上の精玄米)を行った.総

合評価は対照区で粒厚が薄くなるほど低下し,1.9 mm 以下で顕著な低下がみら

れ,高温区では 2.0 mm 以下,遮光区では 1.9 mm 以下で急速に低下した.外

観,味,粘りにおいてもほぼ同様の傾向が確認されたが,硬さには明確な傾向

はみられなかった.ヒノヒカリも日本晴とほぼ同様の傾向を示したが,粒厚が

小さくなるのに伴う各食味評価項目の低下程度が日本晴に比べ小さかった.各

区の粒厚 1.9 mm 以上の玄米について,穀粒判別器により整粒と白未熟粒を選

別し,整粒と白未熟粒を混合(整粒割合 100,75,50,25,0%)して,基準米

を整粒割合 75%の玄米として食味官能試験を行った.整粒割合が低下(白未熟

粒割合が増加)するほど,総合評価,外観,味,粘り,硬さが低下する傾向が

認められた.食味関連形質間の相関関係を検討したところ,粒厚は総合評価,

外観,味,粘り,アミロース含有率,最高粘度,ブレークダウン,整粒割合と

正の,タンパク質含有率と負の相関関係(P<0.001)がみられた.粒厚が厚いほ

ど整粒割合が高く(白未熟粒割合が低く),タンパク質含有率が低く,アミロー

ス含有率は高まるものの,アミログラム特性に優れ,食味に優ることがわかっ

た.白未熟粒割合と総合評価,外観,味,粘り,アミロース,最高粘度,ブレ

ークダウンと負の,タンパク質と正の相関関係(P<0.001)がみられ,白未熟粒

が増えるとタンパク質含有率が高まり,アミロース含有率が低下しても,アミ

ログラム特性は低下して,食味が劣ることがわかった.また,硬さとの間にも

負の相関関係(P<0.05,0.1)がみられ,白未熟粒が増えると柔らかくなる傾向

が認められた.対照区の玄米は整粒と白未熟粒のタンパク質含有率の相違は小

さかったことから,通常栽培で発生する白未熟粒の食味低下にはタンパク質や

アミロース以外の要因が関係していると推定された.

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第 3 章 粒厚選別と光選別による水稲玄米の外観品質向上の可能性検証

第 1 節 はじめに

第 1 章,第 2 章では,遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食

味に及ぼす影響と,遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の粒厚と外観品質が

米飯の食味と理化学的特性に及ぼす影響を検討した.高温や日照不足による収

穫量の減少に加えて,玄米の外観品質が低下すると,出荷時検査等級の格下げ

に伴い売渡価格が低下して,米農家収入の著しい減収をもたらすことになる.

農家や米加工施設においては玄米の厚みによる粒厚選別(機械選別)が行われ

ているが,近年ではこれに加え光選別を活用することにより,玄米外観品質を

向上させ高付加価値化して出荷することが始まっている.しかしながら,現在,

粒厚選別機の篩目の設定等は慣行や経験に頼っている場合が多く,篩目の設定

値と米の外観品質及び歩留りとの関係については不明な点が多く,関連する研

究論文も極めて少ない状況にある.

本章では,第1章で 2009 年に検討を行った,日本晴とヒノヒカリの 2 品種を

遮光と高温処理条件下で栽培した玄米を供試して,粒厚選別(一段選別,二段

選別)と光選別を組み合わせた選別法を基本に想定し,穀粒判別器による判定

画像から得られたデータで試算することにより,玄米の外観品質向上と歩留り

向上の可能性について検討を加えた.

第 2 節 材料と方法

1.供試試料

第 1 章での,2009 年に日本晴とヒノヒカリの 2 品種を用いた栽培試験におけ

る,対照区(慣行栽培,野外),遮光区(出穂期以降黒色寒冷紗で全面被覆,遮

光率 50%),高温区(ビニールハウス,側面自動開閉装置を移植(6 月 11 日)

から穂揃い期まで開放, 8 月 20 日以降日中 36 ℃で開放,夜間 25 ℃で閉鎖す

るよう制御)の 3 試験区から収穫した玄米を供試した.出穂期は各試験区とも

日本晴で 8 月 21 日,ヒノヒカリで 8 月 28 日,収穫期は日本晴で 10 月 6 日,

ヒノヒカリで 10 月 13 日であり,収穫期は遮光区で 3 日遅れ,高温区で 2 日早

まった.

2.粒厚選別の方法

収穫した各試験区の玄米約 3 kg をテスト粒厚選別機(TWS,サタケ製)によ

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り,1.7~2.2 mm 篩を用い 0.1 mm 刻みで篩別,粒厚別重量比率を調査した.

また,篩別後の玄米約 20gを,穀粒判別器(RGQI20A,サタケ製)を用い,第

1章と同様に,整粒,乳白粒,基白粒(背白粒を含む),腹白粒,青未熟粒,そ

の他未熟粒,死米,胴割粒,その他の 9 分類に仕分け,重量換算係数(第 1 表)

を用い換算した重量比率(3反復の平均値)で外観品質評価を行った.

3.粒厚選別歩留りの試算

供試玄米を篩 1.7~2.2 mm の範囲で 0.1 mm 刻みで篩別した粒厚別重量割合

(第 7 図)を一段選別の場合は想定篩目以上の粒厚別重量比率を加算し,二段

選別の場合は想定篩目の間の粒厚別重量比率を加算して,粒厚別歩留りとした.

篩の区分は 10 段階とし,全粒,1.7 mm 以上(≧1.7 mm と略,以下同様),≧

1.8 mm,≧1.9 mm,≧2.0 mm,≧2.1 mm,≧2.2 mm,2段選別では 1.8 mm

以上 1.9 mm 未満(1.8~1.9 mm と略,以下同様),1.8~2.0 mm,1.8~2.1 mm)

について算出した.

4.粒厚選別外観品質の試算

粒厚選別外観品質の試算には,粒厚選別重量割合(第 7 図)と粒厚別玄米外

観品質(第 9 図)の重量換算割合を用いた.

粒厚別玄米外観品質の各項目の重量換算割合と粒厚別重量比率を乗じたもの

を想定網間で加算し,粒厚選別重量比率で除したものを,粒厚選別外観品質と

し,9 分類(整粒,乳白粒,基白粒(背白粒を含む),腹白粒,青未熟粒,その

他未熟粒,死米,胴割粒,その他)の重量換算割合を,歩留りと同様に篩の区

分 10 段階で算出した.

5.光選別歩留りの試算

光選別機は従来,カメムシなどの被害を受けた着色粒を除去するために用い

られるが,本研究では整粒割合を向上することを目的とし,光選別機で白未熟

粒及び死米を除去した場合について検討した.

光選別歩留まり算出のための除去条件は,①白未熟粒のなかでも容易に取り

除くことができる乳白粒と死米を完全除去する,②白未熟粒の中で基白粒と腹

白粒は除去しないものとし,③光選別機の不良品中の良品混入率をゼロとして

粒厚選別歩留りと粒厚選別外観品質の値を用いて試算した.

また,粒厚選別外観品質の値を基に,乳白粒と死米の重量換算混入割合を減

じたものを粒厚選別後光選別歩留りとし,この値を粒厚選別歩留りに乗じたも

のを粒厚選別+光選別による歩留りとし,他と同様に篩の区分 10 段階で算出し

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た.

6.光選別外観品質の試算

光選別外観品質の試算には,粒厚選別外観品質と粒厚選別後光選別歩留りを

用いた.

粒厚選別外観品質の乳白粒及び死米を除く 7 項目(整粒,基白粒(背白粒含

む),腹白粒,青未熟粒,その他未熟粒,胴割粒,その他)について,各重量換

算混入割合を粒厚選別後光選別歩留りで除し,乳白粒及び死米をゼロとしたも

のを,粒厚選別+光選別外観品質とし,他と同様に篩の区分 10 段階で算出した.

ここで、乳白粒及び死米をゼロとしたのは,後述のように,これらは光選別機

で容易に除去できることによる.

第 3 節 結果

1.玄米外観品質

試算を行った篩目別の粒厚選別による歩留りと外観品質を第 9 表,同じく整

粒割合を第 20 図に,また粒厚選別+光選別による歩留りと外観品質を第 10 表,

同じく整粒割合を第 21 図にそれぞれ示した.

一般的な 1.80 mm の縦目篩を用いた場合の整粒割合は,第 9 表から日本晴で

は対照区 78%,遮光区 76%,高温区 59%となり,ヒノヒカリでは対照区 76%,

遮光区 64%,高温区 54%となり,日本晴に比べヒノヒカリが低く,対照区>遮

光区>高温区の順であった.特に高温区で白未熟粒,その他未熟粒が多く発生

した.白未熟粒の発生は高温区>遮光区>対照区の順に大きかった.一方,光

選別を組み合わせた,粒厚選別 1.80 mm+光選別による整粒割合の増加は,第

10 表と第 9 表の差から分かるように,凡そ日本晴では対照区 1%,遮光区 5%,

高温区 4%,ヒノヒカリでは対照区 1%,遮光区 3%,高温区 4%となり,対照区

と比較して遮光区及び高温区で光選別の効果が大きくなった.

粒厚選別でみると,第 9 表,第 20 図にみるように,大きな篩目で篩別するほ

どその他未熟粒の低下に伴い整粒割合が高くなったが,2.2 mm 以上の極端に広

い篩目の場合,乳白粒の増加と胴割粒の増加により整粒割合が低下する傾向に

あった.1.8 mm の篩目を用いた場合は,2.0 mm の篩目を用いた場合に比べ整

粒割合の増加は,凡そ日本晴では対照区 6%,遮光区 9%,高温区 7%,ヒノヒ

カリでは対照区 7%,遮光区 18%,高温区 10%となり,日本晴に比べヒノヒカ

リで大きく,遮光区>高温区>対照区の順となった.また,二段選別を想定し

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下網の篩目を 1.8 mm とし,上網の篩目を 1.9 mm,2.0 mm,2.1 mm に変化さ

せたところ,上網の篩目が大きいほど整粒割合に増加がみられた.

第 9 表 篩目別の粒厚選別による歩留りと外観品質.

腹白 青 その他未熟粒 未熟粒 未熟粒

(mm) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%)

日 本 晴 対照区 全粒 100.0 76.1 2.2 2.3 1.6 0.2 8.0 0.5 4.7 4.5≧1.7 98.6 77.1 1.9 2.2 1.6 0.2 8.0 0.3 4.7 3.9≧1.8 96.7 78.3 1.5 2.2 1.5 0.2 7.7 0.1 4.8 3.7≧1.9 87.9 81.2 1.0 1.8 1.1 0.1 6.2 0.0 5.1 3.4≧2.0 48.8 84.1 0.7 1.3 0.9 0.0 4.4 0.0 5.7 2.9≧2.1 3.5 84.2 0.9 1.6 1.1 0.0 2.5 0.0 6.8 3.0≧2.2 0.1 70.0 3.7 2.6 4.6 0.0 5.2 0.1 8.7 5.21.8~1.9 8.8 49.4 6.8 5.7 4.8 0.9 22.6 1.2 2.1 6.51.8~2.0 48.0 72.5 2.4 3.1 2.0 0.3 11.1 0.3 3.9 4.41.8~2.1 93.3 78.1 1.5 2.2 1.5 0.2 7.9 0.1 4.8 3.7

遮光区 全粒 100.0 70.3 6.4 2.3 2.2 2.6 7.2 4.2 1.1 3.7≧1.7 95.2 73.8 5.7 2.4 2.2 2.6 7.5 1.6 1.2 3.0≧1.8 92.0 76.1 4.8 2.3 2.1 2.3 7.4 0.8 1.2 2.8≧1.9 82.4 80.1 3.5 2.0 1.8 1.7 6.3 0.4 1.3 2.7≧2.0 45.9 85.2 2.3 1.2 1.1 1.2 4.4 0.2 1.5 2.8≧2.1 3.8 86.0 2.1 1.3 1.4 0.6 3.5 0.2 2.0 2.9≧2.2 0.2 85.5 3.0 1.6 0.7 0.0 2.4 0.0 3.5 3.21.8~1.9 9.6 41.9 15.4 4.7 4.8 7.7 17.2 4.4 0.2 3.71.8~2.0 46.2 67.1 7.2 3.4 3.2 3.4 10.4 1.4 0.9 2.81.8~2.1 88.2 75.7 4.9 2.4 2.2 2.4 7.6 0.9 1.2 2.8

高温区 全粒 100.0 57.3 6.8 2.7 3.7 2.1 20.9 1.5 1.0 3.9≧1.7 98.5 58.2 6.6 2.7 3.7 2.2 21.2 1.1 1.0 3.3≧1.8 97.1 59.0 6.2 2.7 3.7 2.1 21.4 0.7 1.0 3.1≧1.9 91.1 61.2 5.5 2.7 3.6 1.7 20.9 0.4 1.0 2.8≧2.0 62.6 66.0 4.7 2.5 3.7 1.2 18.1 0.2 1.1 2.6≧2.1 7.5 68.4 6.3 2.6 3.4 0.4 14.5 0.1 1.4 2.9≧2.2 0.3 62.8 11.0 3.1 5.7 0.1 12.4 0.2 1.6 3.11.8~1.9 6.0 24.8 16.7 3.9 4.7 7.5 28.0 6.5 0.5 7.51.8~2.0 34.5 46.2 9.0 3.2 3.8 3.8 27.3 1.8 0.8 4.11.8~2.1 89.6 58.2 6.2 2.8 3.7 2.2 22.0 0.8 1.0 3.1

ヒノヒカリ 対照区 全粒 100.0 72.9 2.8 1.7 1.2 0.7 13.0 0.6 5.2 2.0≧1.7 98.2 74.1 2.3 1.7 1.1 0.7 13.0 0.2 5.3 1.6≧1.8 95.4 75.9 1.7 1.7 1.0 0.5 12.2 0.1 5.4 1.5≧1.9 84.3 79.9 1.3 1.5 0.7 0.3 8.9 0.1 6.0 1.3≧2.0 50.8 82.7 1.1 1.2 0.6 0.0 5.4 0.0 7.8 1.2≧2.1 7.6 82.2 1.5 1.6 0.8 0.1 4.5 0.0 8.0 1.4≧2.2 0.5 78.6 2.3 1.2 2.0 0.0 6.3 0.0 7.0 2.51.8~1.9 11.1 46.1 4.9 3.0 2.8 2.3 36.8 0.4 1.2 2.51.8~2.0 44.7 68.3 2.4 2.2 1.4 1.1 19.8 0.2 2.8 1.81.8~2.1 87.9 75.4 1.7 1.7 1.0 0.6 12.8 0.1 5.2 1.5

遮光区 全粒 100.0 57.6 6.0 2.1 1.7 2.5 23.1 2.5 1.8 2.6≧1.7 94.6 60.8 4.6 2.2 1.6 2.3 23.8 0.7 1.9 2.0≧1.8 89.0 64.3 3.4 2.1 1.4 1.9 22.7 0.4 2.0 1.8≧1.9 71.5 72.1 2.1 1.8 1.0 1.0 18.0 0.2 2.4 1.4≧2.0 33.2 82.3 1.5 1.3 0.6 0.4 9.6 0.1 2.8 1.3≧2.1 3.0 82.5 2.5 1.3 1.3 0.5 6.5 0.1 3.7 1.7≧2.2 0.1 79.9 4.2 2.0 1.5 0.4 6.5 0.0 2.9 2.71.8~1.9 17.5 32.4 8.5 3.1 3.2 5.5 42.1 1.1 0.7 3.41.8~2.0 55.8 53.5 4.5 2.5 1.9 2.8 30.6 0.6 1.6 2.21.8~2.1 86.0 63.6 3.4 2.1 1.4 2.0 23.3 0.4 2.0 1.8

高温区 全粒 100.0 50.4 8.4 5.6 3.5 1.7 24.8 1.5 0.8 3.3≧1.7 96.4 52.2 7.6 5.7 3.6 1.6 25.5 0.7 0.9 2.2≧1.8 93.0 53.8 6.7 5.8 3.5 1.4 25.6 0.4 0.9 1.9≧1.9 83.7 57.9 5.5 5.8 3.2 0.9 24.1 0.2 1.0 1.5≧2.0 59.6 63.5 4.9 5.6 3.1 0.6 19.6 0.1 1.3 1.3≧2.1 14.0 68.8 5.5 5.2 3.3 0.3 13.9 0.0 1.8 1.2≧2.2 1.4 69.0 7.8 5.5 5.0 0.2 8.7 0.0 2.1 1.81.8~1.9 9.3 17.3 17.6 6.4 5.8 6.1 38.9 2.2 0.1 5.41.8~2.0 33.4 36.6 10.0 6.1 4.1 2.8 36.1 0.9 0.3 3.01.8~2.1 79.0 51.2 6.9 5.9 3.5 1.6 27.6 0.5 0.7 2.0

品種 試験区 粒厚 歩留り 整粒 乳白粒 死米 胴割粒 その他基白粒

第 9 表 篩目別の粒厚選別による歩留りと外観品質.

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第 10 表 粒厚選別+光選別による歩留りと外観品質.

光選別 腹白 青 その他歩留り 未熟粒 未熟粒 未熟粒

(mm) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%)

日 本 晴 対照区 全粒 97.3 97.3 78.2 0.0 2.3 1.7 0.2 8.2 0.0 4.8 4.6≧1.7 96.4 97.8 78.8 0.0 2.3 1.6 0.2 8.2 0.0 4.9 4.0≧1.8 95.1 98.3 79.7 0.0 2.2 1.5 0.2 7.8 0.0 4.9 3.7≧1.9 87.0 99.0 82.1 0.0 1.8 1.1 0.1 6.3 0.0 5.2 3.4≧2.0 48.4 99.3 84.7 0.0 1.3 0.9 0.0 4.4 0.0 5.8 2.9≧2.1 3.5 99.1 85.0 0.0 1.6 1.1 0.0 2.5 0.0 6.8 3.0≧2.2 0.1 96.2 72.7 0.0 2.7 4.8 0.0 5.4 0.0 9.0 5.41.8~1.9 8.1 92.1 53.7 0.0 6.2 5.2 0.9 24.6 0.0 2.3 7.01.8~2.0 46.7 97.3 74.5 0.0 3.2 2.1 0.3 11.4 0.0 4.0 4.51.8~2.1 91.7 98.3 79.5 0.0 2.2 1.5 0.2 8.0 0.0 4.8 3.7

遮光区 全粒 89.3 89.3 78.7 0.0 2.6 2.4 2.9 8.1 0.0 1.2 4.2≧1.7 88.2 92.7 79.7 0.0 2.6 2.4 2.8 8.1 0.0 1.3 3.2≧1.8 86.9 94.4 80.7 0.0 2.5 2.3 2.4 7.9 0.0 1.3 3.0≧1.9 79.1 96.0 83.4 0.0 2.1 1.9 1.7 6.6 0.0 1.4 2.9≧2.0 44.7 97.5 87.4 0.0 1.2 1.1 1.2 4.6 0.0 1.6 2.9≧2.1 3.7 97.7 88.1 0.0 1.3 1.4 0.6 3.6 0.0 2.0 3.0≧2.2 0.2 97.0 88.2 0.0 1.7 0.7 0.0 2.5 0.0 3.6 3.31.8~1.9 7.7 80.1 52.2 0.0 5.9 6.0 9.6 21.4 0.0 0.3 4.61.8~2.0 42.2 91.3 73.5 0.0 3.8 3.5 3.7 11.4 0.0 0.9 3.11.8~2.1 83.1 94.2 80.3 0.0 2.5 2.3 2.5 8.1 0.0 1.2 3.0

高温区 全粒 91.6 91.6 62.6 0.0 3.0 4.0 2.3 22.9 0.0 1.1 4.2≧1.7 90.9 92.3 63.0 0.0 3.0 4.0 2.3 23.0 0.0 1.1 3.6≧1.8 90.4 93.0 63.4 0.0 3.0 4.0 2.3 23.0 0.0 1.1 3.4≧1.9 85.7 94.1 65.1 0.0 2.8 3.9 1.9 22.3 0.0 1.1 3.0≧2.0 59.6 95.1 69.4 0.0 2.6 3.9 1.2 19.1 0.0 1.2 2.7≧2.1 7.1 93.6 73.0 0.0 2.7 3.6 0.4 15.5 0.0 1.5 3.1≧2.2 0.3 88.8 70.8 0.0 3.5 6.4 0.1 14.0 0.0 1.8 3.51.8~1.9 4.6 76.8 32.3 0.0 5.0 6.1 9.7 36.5 0.0 0.6 9.81.8~2.0 30.8 89.2 51.8 0.0 3.6 4.2 4.3 30.6 0.0 0.9 4.61.8~2.1 83.3 93.0 62.6 0.0 3.0 4.0 2.4 23.6 0.0 1.0 3.4

ヒノヒカリ 対照区 全粒 96.6 96.6 75.4 0.0 1.8 1.2 0.7 13.4 0.0 5.4 2.1≧1.7 95.8 97.5 76.0 0.0 1.7 1.2 0.7 13.3 0.0 5.4 1.7≧1.8 93.7 98.2 77.3 0.0 1.7 1.0 0.5 12.4 0.0 5.5 1.5≧1.9 83.2 98.7 81.0 0.0 1.5 0.7 0.3 9.1 0.0 6.1 1.4≧2.0 50.2 99.0 83.6 0.0 1.2 0.6 0.0 5.5 0.0 7.9 1.2≧2.1 7.4 98.5 83.4 0.0 1.6 0.8 0.1 4.6 0.0 8.1 1.4≧2.2 0.5 97.7 80.5 0.0 1.2 2.1 0.0 6.5 0.0 7.2 2.61.8~1.9 10.5 94.7 48.6 0.0 3.2 3.0 2.5 38.8 0.0 1.3 2.61.8~2.0 43.5 97.3 70.2 0.0 2.2 1.4 1.1 20.4 0.0 2.9 1.81.8~2.1 86.3 98.2 76.8 0.0 1.7 1.0 0.6 13.1 0.0 5.3 1.5

遮光区 全粒 91.5 91.5 63.0 0.0 2.3 1.8 2.7 25.3 0.0 2.0 2.9≧1.7 89.6 94.7 64.2 0.0 2.3 1.7 2.5 25.2 0.0 2.0 2.1≧1.8 85.7 96.2 66.8 0.0 2.1 1.4 2.0 23.6 0.0 2.1 1.9≧1.9 69.9 97.7 73.8 0.0 1.8 1.0 1.1 18.4 0.0 2.4 1.5≧2.0 32.6 98.3 83.7 0.0 1.3 0.6 0.4 9.7 0.0 2.9 1.3≧2.1 2.9 97.4 84.7 0.0 1.3 1.3 0.5 6.6 0.0 3.8 1.7≧2.2 0.1 95.8 83.4 0.0 2.1 1.5 0.4 6.8 0.0 3.1 2.81.8~1.9 15.8 90.4 35.9 0.0 3.4 3.5 6.1 46.6 0.0 0.7 3.71.8~2.0 53.0 95.0 56.4 0.0 2.6 2.0 3.0 32.2 0.0 1.6 2.31.8~2.1 82.8 96.2 66.2 0.0 2.2 1.5 2.1 24.2 0.0 2.0 1.9

高温区 全粒 90.1 90.1 56.0 0.0 6.2 3.9 1.8 27.5 0.0 0.9 3.7≧1.7 88.4 91.7 56.9 0.0 6.3 3.9 1.8 27.8 0.0 1.0 2.4≧1.8 86.4 92.9 58.0 0.0 6.3 3.7 1.5 27.5 0.0 1.0 2.0≧1.9 79.0 94.3 61.4 0.0 6.1 3.4 0.9 25.5 0.0 1.1 1.6≧2.0 56.7 95.0 66.8 0.0 5.9 3.2 0.7 20.7 0.0 1.3 1.3≧2.1 13.2 94.5 72.8 0.0 5.5 3.5 0.3 14.7 0.0 1.9 1.3≧2.2 1.3 92.2 74.8 0.0 6.0 5.4 0.2 9.4 0.0 2.3 1.91.8~1.9 7.5 80.1 21.6 0.0 8.0 7.2 7.7 48.6 0.0 0.1 6.71.8~2.0 29.8 89.1 41.1 0.0 6.9 4.6 3.2 40.6 0.0 0.3 3.41.8~2.1 73.2 92.6 55.3 0.0 6.4 3.8 1.8 29.8 0.0 0.8 2.2

品種 試験区 粒厚 歩留り 整粒 乳白粒 死米 胴割粒 その他基白粒

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48

第 20 図 篩目別の粒厚選別による整粒割合.

第 21 図 粒厚選別+光選別による整粒割合.

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

整粒

割合

(%)

日本晴

対照区

遮光区

高温区

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量

割合

(%)

ヒノヒカリ 対照区

遮光区

高温区

粒厚(mm)

1等

2等

3等

規格外

1等

2等

3等

規格外

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

整粒

割合

(%)

日本晴

対照区

遮光区

高温区

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量割

合(

%)

ヒノヒカリ 対照区

遮光区

高温区

粒厚(mm)

1等

2等

3等

規格外

1等

2等

3等

規格外

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49

2.歩留り

試算を行った篩目別の粒厚選別による歩留りを第 22 図に示した.一般的な

1.80 mm の縦目篩を用いた場合の歩留りは,凡そ日本晴で対照区 97%,遮光区

92%,高温区 97%,ヒノヒカリで対照区 95%,遮光区 89%,高温区 93%となり,

日本晴に比べヒノヒカリで低く,特に粒厚の薄い割合が高い遮光区で 90%を下

回った.大きな目幅で篩別するほど歩留りは低くなり,1.8 mm の目幅を用いた

場合は,2.0 mm の目幅を用いた場合に比べ歩留りの低下が,凡そ日本晴で対照

区 48%,遮光区 46%,高温区 35%,ヒノヒカリで対照区 45%,遮光区 56%,

高温区 33%となり,≧2.0 mm 以上に多く分布する高温区では低下が小さくな

った.二段選別を想定した目幅 1.8~1.9 mm,1.8~2.0 mm,1.8~2.1 mm で

は,上網の目幅が大きいほど歩留りの上昇がみられた.厚い粒厚の割合が高い

高温区では,歩留りは上網 1.9 mm から 2.0 mm への上昇が小さく,2.0 mm か

ら 2.1 mm への上昇が大きくなった.

試算を行った粒厚選別後光選別による歩留りを第 23 図,粒厚選別+光選別に

よる歩留りを第 24 図に示した.1.80 mm の標準縦目篩を用いた場合の光選別歩

留りは,日本晴では対照区 98%,遮光区 94%,高温区 93%,ヒノヒカリでは対

照区 98%,遮光区 96%,高温区 93%となり,乳白粒及び死米の混入率の低い対

照区で歩留りは高くなった.粒厚別にみると,1.7 mm から 2.0 mm までは粒厚

が薄いほど乳白粒が多く混入しているため,歩留りの上昇がみられた.

≧1.8 mm の粒厚選別+光選別による歩留りを粒厚選別のみと比較すると,日本

晴では対照区 2%,遮光区 5%,高温区 7%,ヒノヒカリでは対照区 2%,遮光区

3%,高温区 7%の低下がみられた.

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50

第 22 図 篩目別の粒厚選別による歩留り.

第 23 図 粒厚選別後光選別による歩留り.

第 24 図 粒厚選別+光選別による歩留り.

20 

40 

60 

80 

100 全

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量割

合(

%)

日本晴

対照区

遮光区

高温区

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量

割合

(%)

ヒノヒカリ

対照区

遮光区

高温区

粒厚(mm)

70 

80 

90 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量

割合

(%)

日本晴

対照区

遮光区

高温区

70 

80 

90 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

後光

選別

歩留

り(

%)

ヒノヒカリ

対照区

遮光区

高温区

粒厚(mm)

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量割

合(

%)

日本晴

対照区

遮光区

高温区

20 

40 

60 

80 

100 

全粒

≧1.

7

≧1.

8

≧1.

9

≧2.

0

≧2.

1

≧2.

2

1.8~

1.9

1.8~

2.0

1.8~

2.1

粒厚

選別

重量

割合

(%)

ヒノヒカリ

対照区

遮光区

高温区

粒厚(mm)

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51

第 4 節 考察

前章までにおいて,粒厚が薄くなるほど,白未熟粒の割合が増加して食味が

低下すること.日照不足や高温の年には白未熟粒のタンパク質含有率が高まり,

米飯の食味を低下させることが明らかになった.また,粒厚選別では目幅調節

により玄米外観品質の向上,光選別機では乳白粒や死米の除去により,食味を

向上させる可能性が認められた.

そこで,本章では,日照不足や高温の年における収穫玄米の品質向上が粒厚

選別機や光選別による調製法によって可能かどうかについて試算により検討し

た.

粒厚別重量割合においては,遮光区では対照区に比べて玄米の肥大が劣り,

粒厚が薄くなる傾向がみられたのに対して,高温区では逆に粒厚が厚くなった

(第 7 図).そのため,1.80 mm の標準縦目篩を用いた場合の歩留りは遮光区で

低く,標準より大きな目幅を用いた場合の歩留りの低下は高温区でとくに低く

なった(第 10 表,第 22 図).外観品質をみると,大きな目幅で篩別するほどそ

の他未熟粒の低減に伴い整粒割合が高くなり,その上昇の程度は日本晴に比べ

ヒノヒカリで大きく,遮光区>高温区>対照区の順となった(第 20 図).光選

別機を乳白粒及び死米を選別し整粒割合を高めるために使用する効果は,白未

熟粒の多い遮光区や高温区で,また粒厚の薄い場合に高くなった.この傾向は,

従来食味に劣る北海道産米「きらら 397」,「ほしのゆめ」を良食味米化するた

めに篩の目幅を広げていたのを,光選別機と組み合わせて目幅を元に戻して未

熟粒を除去し,良食味化と同時に歩留り向上した検証結果(竹倉ら 2002,川村

2003)と軌を一にしている.

さらに,試算結果から具体例で検証すると以下のようになる(第 25 図,第

26 図).対照区では,両品種とも 1.80 mm で粒厚選別した段階で検査等級は「一

等」(整粒割合 70%≦),光選別機での整粒割合の向上も 1~2%程度であるので

光選別せずに,そのまま出荷するのが妥当となる.しかし,整粒割合 80%以上

の高品質米として付加価値を高めようとする場合には,篩目 2.0 mm≦を使えば

歩留りが 50%程度となるので半量は高品質米選別ができる.これは二段選別 1.8

~2.0 mm を行い出口で仕分けすれば一工程で実現できることを示唆している.

二段選別 1.8~2.1 mm の結果は「一等」で高い歩留りが試算されており傾向が

符合している.二段選別 1.8~2.0 mm を行った玄米では歩留りが約 45%となる.

整粒割合は日本晴 70%となり,日本晴では約 68%と若干「一等」に届かないが,

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52

光選別機を用いることにより「一等」に向上させることも可能である.遮光区

では,日本晴については 1.8 mm≦で整粒割合 76%,「一等」であるので,その

まま出荷するのが妥当と考えられるが,2.0 mm≦を高品質米として整粒割合

85%,歩留りを 45%程度確保して,1.8~2.0 mm を「二等」(整粒割合 60~70%)

とするか,さらに光選別を行い「一等」とすることも可能と考えられる.ヒノ

ヒカリについては 1.8 mm≦で「二等」となるため,歩留りを約 10%減少させ,

1.9 mm≦で「一等」とするか,2.0 mm≦を高品質米として歩留り約 30%を確

保し,1.8~2.0 mm を「三等」(整粒割合 45~60%)とすることが考えられる.

高温区では,1.8 mm≦で両品種とも「三等」となり,網目を 0.1~0.2 mm 大き

な目幅を用い「二等」として出荷するか,日本晴においては 2.0 mm≦を「二等」

として歩留り約 60%を確保し,1.8~2.0 mm を「三等」として歩留り約 35%と

することが考えられる.

以上より,ポストハーベスト技術としてあらかじめ粒厚別の外観品質及び重

量割合を把握することにより,篩目調節や光選別機での白未熟粒等の除去によ

り整粒割合を調整できることが検証できた.積極的な外観品質向上の一例とし

て,粒厚選別を 2.0 mm と 1.8 mm の 2 段選別とし,2.0 mm≦を高品質に仕上

げて出荷し,1.8~2.0 mm を商品価値の高い状態に仕上げ,等級の整粒割合閾

値に若干届かない試料は光選別機を補助的に使用することで等級の格上げを狙

うことが挙げられる.

最後に売払い価格について考えてみる.等級間の価格差は,品種,産地,年

産等によって開きがあるが,60 kg 当たり「一等」と「二等」の格差が 600~1,500

円,「二等」と「三等」の格差が 1,000~1,200 円である.等級格上げによる収

入増を図るには,等級間の価格差などを勘案し予め入荷ロット毎に合った選別

法を選択しておく必要がある.それには粒厚別外観品質,歩留りを穀粒判別器

を活用して事前に品質情報を把握することが有効になる.換言すれば,穀粒判

別器を用いれば日照不足年や高温年等の異常気象年においても,臨機応変に選

別調製法を選択して生産者の収入増と消費者への高品質米の供給が可能になる

と考察される.

また,二段選別に関しては,一段選別のみでは光選別機への供給量が多くな

り大型光選別機が必要になる.二段選別では供給量を下げることができるので,

近年低価格化に成功した小型光選別機での対応が可能になり,ひいては初期投

資低減も期待される.

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53

以上により,穀粒判別器を用いた,粒厚選別と光選別を組み合わせた玄米選

別技術の導入により,生産者の収入増加と消費者への高品質米の供給が可能と

なると結論された.

第 5 節 摘要

日本晴とヒノヒカリを供試し,2009 年に岡山大学農学部附属山陽圏フィール

ド科学センターの水田で栽培した対照区,遮光区,高温区の玄米を粒厚別

(0.1 mm 刻み)に選別して,それぞれの重量計測及び穀粒判別器で計測した.

穀粒判別器は,農産物検査における整粒割合や,一粒毎の形状を測定できる。

粒厚選別(一段選別,二段選別)と光選別を組み合わせた選別法を基本に想定

し,玄米の粒厚別の,重量割合と外観品質をもとに試算することにより,玄米

の外観品質向上と歩留りの向上の可能性について検討を加えた.遮光区では粒

厚が薄くなるため,一般的な 1.80 mm の標準縦目篩を用いた場合の歩留りは低

くなり,高温区では粒厚が厚くなるため,標準より大きな篩目を用いた場合の

歩留りの低下は抑えられた.外観品質は,大きな篩目で篩別するほど,その他

未熟粒の低減に伴い整粒割合が高くなり,その上昇の程度は日本晴に比べヒノ

ヒカリで大きく,遮光区>高温区>対照区の順となった.光選別機で乳白粒及

び死米を選別し整粒割合を高めるために使用する効果は,白未熟粒の多い遮光

区や高温区で,また粒厚の薄い場合で高くなった.試算結果から具体例で検証

すると,一般的な篩目と厚い篩目で粒厚選別を二段選別とし,厚い篩目上を高

品質に仕上げて出荷し,二段目の篩目上を商品価値の高い状態に仕上げ,光選

別機を補助的にしようすることが挙げられた.等級格上げによる収入増を図る

には,等級間の価格差を勘案し,入荷ロット毎の粒厚別外観品質及び重量比率

を把握することが有効になる.すなわち,穀粒判別器を用いれば日照不足年や

高温年等の異常気象年においても,臨機応変に選別調製法を選択して生産者の

収入増と消費者への高品質米の供給が可能になると考察された.

Page 57: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

54

第 25 図 日本晴調製検討図

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≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 78.3% 81.2% 84.1% 84.2%

上段整粒(光選) 79.7% 82.1% 84.7% 85.0%

下段整粒 49.4% 72.5% 78.1%

下段整粒(光選) 53.7% 74.5% 79.5%

上段歩留 96.7% 87.9% 48.8% 3.5%

上段歩留(光選) 95.1% 87.0% 48.4% 3.5%

下段歩留 8.8% 48.0% 93.3%

下段歩留(光選) 8.1% 46.7% 91.7%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

日本晴対照区

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40%

60%

80%

100%

≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 76.1% 80.1% 85.2% 86.0%

上段整粒(光選) 80.7% 83.4% 87.4% 88.1%

下段整粒 41.9% 67.1% 75.7%

下段整粒(光選) 52.2% 73.5% 80.3%

上段歩留 92.0% 82.4% 45.9% 3.8%

上段歩留(光選) 86.9% 79.1% 44.7% 3.7%

下段歩留 9.6% 46.2% 88.2%

下段歩留(光選) 7.7% 42.2% 83.1%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

日本晴遮光区

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20%

40%

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80%

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20%

40%

60%

80%

100%

≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 59.0% 61.2% 66.0% 68.4%

上段整粒(光選) 63.4% 65.1% 69.4% 73.0%

下段整粒 24.8% 46.2% 58.2%

下段整粒(光選) 32.3% 51.8% 62.6%

上段歩留 97.1% 91.1% 62.6% 7.5%

上段歩留(光選) 90.4% 85.7% 59.6% 7.1%

下段歩留 6.0% 34.5% 89.6%

下段歩留(光選) 4.6% 30.8% 83.3%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

日本晴高温区

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55

第 26 図 ヒノヒカリ調製検討図

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60%

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0%

20%

40%

60%

80%

100%

≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 75.9% 79.9% 82.7% 82.2%

上段整粒(光選) 77.3% 81.0% 83.6% 83.4%

下段整粒 46.1% 68.3% 75.4%

下段整粒(光選) 48.6% 70.2% 76.8%

上段歩留 95.4% 84.3% 50.8% 7.6%

上段歩留(光選) 93.7% 83.2% 50.2% 7.4%

下段歩留 11.1% 44.7% 87.9%

下段歩留(光選) 10.5% 43.5% 86.3%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

ヒノヒカリ対照区

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 64.3% 72.1% 82.3% 82.5%

上段整粒(光選) 66.8% 73.8% 83.7% 84.7%

下段整粒 32.4% 53.5% 63.6%

下段整粒(光選) 35.9% 56.4% 66.2%

上段歩留 89.0% 71.5% 33.2% 3.0%

上段歩留(光選) 85.7% 69.9% 32.6% 2.9%

下段歩留 17.5% 55.8% 86.0%

下段歩留(光選) 15.8% 53.0% 82.8%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

ヒノヒカリ遮光区

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

≧1.8 mm ≧1.9 mm ≧2.0 mm ≧2.1 mm

上段整粒 53.8% 57.9% 63.5% 68.8%

上段整粒(光選) 58.0% 61.4% 66.8% 72.8%

下段整粒 17.3% 36.6% 51.2%

下段整粒(光選) 21.6% 41.1% 55.3%

上段歩留 93.0% 83.7% 59.6% 14.0%

上段歩留(光選) 86.4% 79.0% 56.7% 13.2%

下段歩留 9.3% 33.4% 79.0%

下段歩留(光選) 7.5% 29.8% 73.2%

歩留

り(

%)

整粒

割合

(%)

ヒノヒカリ高温区

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56

結言

近年,地球温暖化が言われるようになっており,平均気温の上昇と共に夏季

高温の異常ともとれる気温の上昇など,作物に対して悪影響を及ぼす気象が観

測されている.また,大気中の二酸化炭素や温室効果ガス濃度が急増して気温

の上昇が問題化してきており作物生産への影響も懸念されている.

日本人の主食である米生産に夏季高温が与える影響も米の品質を考える上で

極めて重要であり,これを検討することは大切なことである.これまでに気温

上昇が水稲栽培におよぼす影響については多くの研究があり,水稲登熟期間の

高温により,玄米一粒重・登熟歩合の低下が助長され,収量を減少させること,

また登熟期の高温は乳白米等の白未熟粒を発生させ玄米外観品質を低下させる

こと,登熟期の日照不足も玄米発育を抑制して白未熟粒の発生を助長すること

などは結果として食味を大きく低下させることになる.高温がイネの生産にど

のような影響を及ぼすかを詳しく解明し,高温障害を軽減する技術的対策を検

討していく必要があった.

これまでに,農家や米加工施設においては米の厚みによる選別(粒厚選別)

が行われ,米を高付加価値化して出荷している.一般に流通する米は,粒厚選

別機で 1.80~1.90 ㎜の縦目ふるいを通過させて,未熟粒や死米を除去して整粒

割合,すなわち米の品質を高めることが行われている.同時に,米の外観品質

は農産物検査規格により品位区分がなされている.近年では検査の補助機とし

て,穀粒判別器が用いられるようになった.しかし,粒厚選別機の篩目の設定

は慣行や経験にたよっている場合が多く,篩目の設定値と米の品質との関係に

ついて不明な点が多い状況にあった.

そこで,高温と遮光処理を施した玄米を粒厚選別機で選別し,穀粒判別器,

炊飯食味計を使って評価し,更に食味官能評価と理化学特性試験を行い,水稲

玄米の粒厚と外観品質が米飯の食味に及ぼす影響を検討した.

第 1 章では遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす

影響を検討した.第 2 章においては,遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の

粒厚と外観品質が米飯の食味と理化学的特性に及ぼす影響を検討した.第 3 章

では,ポストハーベスト技術として,粒厚選別と光選別による水稲玄米の外観

品質の向上を試算により検討した.

その結果として,水稲登熟期の高温では登熟歩合と千粒重が低下した.また

Page 60: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

57

遮光することによって登熟歩合が低下し減収が認められた.一方,2009 年に比

べ高温であった 2010 年は千粒重が低下したにもかかわらず,粒厚はより厚い側

に分布する傾向がみられた.そして,対照区に比べ,高温処理した場合に 2009

年は粒厚がより厚い側に分布したが,2010 年は逆にやや薄い側に分布する傾向

を示し,遮光した場合では両年ともに粒厚がより薄い側に分布する傾向がみら

れ,高温は玄米の肥大成長を促進し,遮光は抑制すると考えられた.両品種と

もに粒厚が薄くなるほど整粒割合が低下し,白未熟粒割合が高まった.

2010 年には,粒厚が厚くなるほど基白粒割合が特異的に高くなった.炊飯食

味計による食味値は日本晴に比べヒノヒカリで高く,粒厚が薄いほど食味値は

低下する傾向を示し,その程度は日本晴に比べヒノヒカリで小さくなった.食

味値と白未熟粒割合との間には 2009 年には正の,2010 年には負の有意な相関

関係が認められ,これには食味値の高い粒厚の厚い玄米で基白粒が増加したこ

とに起因すると考えられ,2010 年にみられた基白粒の発生が食味に及ぼす影響

は小さいと推察された.粒厚選別機の篩目を調節することにより,整粒割合,

食味を調節できる可能性が示された.

日本晴とヒノヒカリを供試し,遮光処理したもの,高温処理したものおよび

それら処理をしなかったものの玄米を粒厚別に選別して食味官能試験(基準米

は各区粒厚 1.8 mm 以上の精玄米)を行った.

総合評価は対照区で粒厚が薄くなるほど低下し,1.9 mm 以下で顕著な低下が

みられ,高温処理したものは 2.0 mm 以下,遮光処理したものは 1.9 mm 以下

で総合評価は大きく低下した.外観,味,粘りにおいてもほぼ同様の傾向が確

認されたが,硬さには明確な傾向はみられなかった.ヒノヒカリも日本晴とほ

ぼ同様の傾向を示したが,粒厚が薄くなるのに伴う各食味評価項目の低下程度

が日本晴に比べ小さかった.

食味関連形質間の相関関係を検討したところ,粒厚は総合評価,外観,味,

粘り,アミロース含有率,最高粘度,ブレークダウン,整粒割合と正の,タン

パク質含有率と負の相関関係(P<0.001)がみられた.粒厚が厚いほど整粒割合

が高く(白未熟粒割合が低く),タンパク質含有率が低く,アミロース含有率は

高まるものの,アミログラム特性に優れ,食味に優ることがわかった.白未熟

粒割合と総合評価,外観,味,粘り,アミロース,最高粘度,ブレークダウン

と負の,タンパク質と正の相関関係(P<0.001)がみられ,白未熟粒が増えると

タンパク質含有率が高まり,アミロース含有率が低下しても,アミログラム特

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58

性は低下して,食味が劣ることがわかった.また,硬さとの間にも負の相関関

係(P<0.05,0.1)がみられ,白未熟粒が増えると柔らかくなる傾向が認められ

た.対照区の玄米は整粒と白未熟粒のタンパク質含有率の相違は小さかったこ

とから,通常栽培で発生する白未熟粒の食味低下にはタンパク質やアミロース

以外の要因が関係していると推定された.

高温処理したもの,遮光処理したものおよびしなかったものに分けて,それ

らの玄米を粒厚別(0.1 mm 刻み)に選別して,それぞれの重量計測及び穀粒判

別器で計測した.そして,玄米の粒厚別の,重量割合と外観品質をもとに試算

することにより,玄米の外観品質向上と歩留りの向上の可能性について検討を

加えた.

遮光処理したものでは粒厚が薄くなるため,一般的な 1.80 mm の標準縦目篩

を用いた場合の歩留りは低くなり,高温処理したものでは粒厚が厚くなるため,

標準より大きな目幅を用いた場合の歩留りの低下は低くなった.

外観品質は,大きな目幅で篩別するほど,その他未熟粒の低減に伴い整粒割

合が高くなる.光選別機で乳白粒及び死米を選別し整粒割合を高めるために使

用する効果は,白未熟粒の多い遮光処理したものや高温処理したもので,粒厚

の薄い場合で高くなった.試算結果から具体例で検証すると,一般的な篩目と

粒厚の厚い篩目で粒厚選別を二段階選別し,粒厚の厚い篩目上のものを高品質

に仕上げて,二段目の篩目上の米を商品価値の高い状態に仕上げ,高品質米と

し,光選別機を補助的に使用することが適当と考えられた.等級格上げによる

収入増を図るには,等級間の価格差を勘案し,入荷ロット毎の粒厚別に外観品

質及び重量比率を把握し高品質に仕上げることが有効になる.すなわち,穀粒

判別器を用いれば日照不足年や高温年等の異常気象年においても,臨機応変に

選別調製法を選択して生産者の収入増と消費者への高品質米の供給が可能にな

ると考察された.

これらのことにより粒厚選別機を使い,穀粒判別器で外観品質を検査するこ

とによって米飯の食味が良い米を調製加工の段階で差別化できる可能性が示さ

れたと考える。

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62

図表一覧

第 1 章

第 1 図 試験区の写真.

第 2 図 サタケ製テスト粒厚選別機 TWS.

第 3 図 サタケ製穀粒判別器 RGQI20A.

第 4 図 サタケ炊飯食味計 STA1B.

第 5 図 2009 年・2010 年における平均気温と日射量の推移.

第 6 図 対照区と高温区の平均気温の推移.

第 7 図 玄米の粒厚別重量割合.

第 8 図 玄米の外観品質.

第 9 図 粒厚別玄米外観品質.

第 10 図 粒厚別玄米比重(2010 年).

第 11 図 玄米粒厚別の食味値.

第 1 表 穀粒判別器重量換算 1 粒重.

第 2 表 収量と構成要素.

第 3 表 外観品質別の玄米比重(2010 年).

第 4 表 炊飯食味計による食味評価.

第 5 表 食味値と食味関連形質との相関係数.

第 2 章

第 12 図 玄米粒厚別食味官能試験.

第 13 図 白未熟粒混入による整粒割合別の食味官能試験.

第 14 図 粒厚別・整粒割合別白米のタンパク質含有率.

第 15 図 粒厚別・整粒割合別白米のアミロース含有率.

第 16 図 粒厚別・整粒割合別白米の最高粘度(アミログラム特性).

第 17 図 粒厚別・整粒割合別白米のブレークダウン(アミログラム特性).

第 18 図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/粘り比(H/-H).

第 19 図 粒厚別・整粒割合別白米の硬さ/付着性比(H/A3).

第 6 表 玄米粒厚別食味官能試験(総合評価).

第 7 表 白未熟粒混入割合別食味官能試験(総合評価).

第 8 表 食味関連形質間の相関係数.

Page 66: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

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第 3 章

第 20 図 篩目別の粒厚選別による整粒割合.

第 21 図 粒厚選別+光選別による整粒割合.

第 22 図 篩目別の粒厚選別による歩留り.

第 23 図 粒厚選別後光選別による歩留り.

第 24 図 粒厚選別+光選別による歩留り.

第 25 図 日本晴調製検討図

第 26 図 ヒノヒカリ調製検討図

第 9 表 篩目別の粒厚選別による歩留りと外観品質.

第 10 表 粒厚選別+光選別による歩留りと外観品質.

Page 67: 水稲玄米の粒厚と外観品質が 米飯の食味に及ぼす影響ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/50900/...3 第1 章 遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響

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謝辞

本研究の正指導教授として論文の作成全般にわたって御懇篤なるご指導を賜

った岡山大学環境生命科学研究科齊藤邦行教授に衷心より感謝の意を表します.

本研究の遂行並びに本論文のまとめに際し,ご指導と論文のご校閲を賜りまし

た同研究科の門田充司教授ならびに津田誠教授に深甚なる謝意を表します.諸

先生方には,本論文の推敲に際し,深奥なる学術知識に基づき,ご助言とご指

導を賜りましたこと,重ねて御礼申し上げる次第です.

本研究は私が勤務する株式会社サタケで担当して参りました穀物品質分析シ

ステムの研究の一環であり,本研究の機会を与えてくださいました株式会社サ

タケ代表佐竹利子博士ならびに同社副社長福森武博士,取締役松島秀昭博士に

厚く御礼申し上げます.

また,本研究の機会を与えてくださり,ご助言・ご助力・叱咤激励を賜りま

した岡山大学名誉教授毛利建太郎博士に厚く御礼申し上げます.本論文のまと

めにあたり,御指導いただきました株式会社サタケの技術顧問佐々木泰弘博士,

研究の遂行にご助言いただきました総合技術開発室三上隆司博士,ならびに河

野元信博士,研究の支援をいただきました選別・計測・計量グループグループ長

原正純氏,越智龍彦氏,内田和也氏に心から感謝いたします.

最後に本論文の取りまとめにあたり,ご協力いただいた関係者各位に深い謝

意を表します.