神経・筋肉の人為的制御法...
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神経・筋肉の人為的制御法(オプトジェネティクス)
光を用いた(人為的な)神経・筋肉の制御
今日の内容
1.オプトジェネティクスの原理2.オプトジェネティクスで
用いられるタンパク質3.今後の改善点
1.オプトジェネティクスの原理
光感受性のタンパク質を遺伝子組換え技術を利用して細胞や生体に導入し、生命現象を光で制御
「他の神経細胞から情報を受け取り、他の神経細胞や筋細胞に情報を伝えること
1:他の神経細胞から放出された「伝達物質」が樹状突起上の「イオンチャネル型受容体」に結合
2:神経細胞内にNa+イオンが流入し「脱分極」が起きる。
3:「脱分極」が「閾値」を超えるとで「活動電位」が発生
4:「活動電位」が軸索末端まで伝わり、伝達物質を放出
神経細胞の機能は
この機能は以下の4つのステップによって遂行される
樹状突起(dendrite)
細胞体(soma)
軸索(axon)
骨格筋
グルタミン酸等の刺激
グルタミン酸
グルタミン酸受容体(陽イオンチャネル)
Na+
細胞内外の電位差は小さくなる(脱分極)
樹状突起(dendrite)
細胞体(soma)
軸索(axon)
骨格筋
軸索上に電位依存性Na+チャネルが高密度に存在膜電位が「閾値」を超えると一斉に開く。
電位依存性Na+チャネル:膜電位の脱分極を感知して開くNa+チャネル
Na+
「脱分極」が「閾値」を超えると「活動電位」が発生
樹状突起(dendrite)
細胞体(soma)
軸索(axon)
骨格筋
活動電位 (action potential)
「活動電位」が軸索末端まで伝わり、伝達物質(アセチルコリン)を放出
活動電位の発生を制御→神経機能を制御
人為的に膜電位を脱分極させ、閾値を超えさせる↓
活動電位発生
人為的に脱分極を抑制し、閾値を超えさせない↓
活動電位の発生を抑制
筋細胞でも活動電位の発生を制御→機能制御
2.オプトジェネティクスで用いられるタンパク質
Channelrhodopsin-2 (ChR2)
・微生物(クラミドモナス)のもつチャネル
・光により開く陽イオンチャネル
・~470nm 青色光で活性化
Chlamydomonasreinhardtii
Nagel et al., PNAS(2003)
Blue light Na+
グルタミン酸
グルタミン酸受容体(陽イオンチャネル)
Na+Na+
Blue light
Boyden et.al, Nature neurosci (2005)
Halorhodopsin
・光により駆動される塩素イオンポンプ
・~580nm の黄色光で塩素イオンを細胞内に取り込む
Natronomaspharaonis
(Halobacteria )
Yellow lightCl‐
グルタミン酸
グルタミン酸受容体(陽イオンチャネル)
Na+ Na+
Yellow light
Cl‐
Cl‐が細胞内に取り込まれればグルタミン酸受容体などから陽イオンが流入しても閾値は超えない
動物の行動を光で制御
C.elegance
ハロロドプシンとチャネルロドプシンを運動神経あるいは筋肉に発現
Zhang et.al, Nature (2007)
オレキシン(ヒポクレチン)神経細胞を光で制御
オレキシンとは
-興奮性の神経伝達物質
-視床下部外側野の神経細胞から放出
-オレキシンNeuronは覚醒時に活性化・睡眠時に不活性化
哺乳類(マウス)にも応用
オレキシンNeuronの光制御
Adamantidis et.al, Nature(2007)
Adamantidis et.al, Nature(2007)
オレキシンNeuronの光制御
3.今後の改善点
微生物のタンパク質は細胞表面に輸送されにくい
効率的に細胞表面に輸送するため、現在も開発が続いている。
カラスムギ由来のフォトトロピンの一部LOV2ドメインの応用
LOV2ドメインは青色光を受容すると構造が変化
光を照射したときのみ一部のアミノ酸配列が露出↓
光照射したときのみ特定のターゲットに結合する人工タンパク質の開発が行われている
まとめ
オプトジェネティックスとは光感受性のタンパク質を遺伝子組換え技術を利用して細胞や生体に導入し、生命現象を光で制御
チャネルロドプシンを用いた人為的な活動電位の発生やハロロドプシンを用いた活動電位の抑制がおこなわれている。
哺乳類でも睡眠をある程度制御できる
現在も細胞表面への輸送効率の改善や新しい光制御タンパク質の開発が続いている。