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環境経済論/環境経済学環境経済論/環境経済学1環境経済学の基本理念 1環境経済学の価値基準 立命館大学経済学部 第1章 環境経済学の基本理念 環境経済論/環境経済学本章の概要 環境と経済の間にはトレードオフの関係があることを理 解したうえで 環境経済学は それらが人間社会に与え 解したうえで環境経済学はそれらが人間社会に与え る便益の総和を最大化するように環境と経済のバランス をとることを求める学問であることを学ぶ 2 第1章 環境経済学の基本理念 環境経済論/環境経済学1. はじめに 1. はじめに 3 1. はじめに 第1章 環境経済学の基本理念 環境経済論/環境経済学担当者 寺脇 担当者 寺脇 講義時間 火曜210:4012:10 講義場所 C203 個人のホムペ個人のホ ムペ http://www.taku-t.com/ ルアドレス ルアドレス [email protected] [email protected] テキスト 使用しない(レジュメを中心に進める) レジュメはWebCTよりダウンロード可能。 参考文献はこのレジュメの最後を参照。 4 参考文献はこのレジュメの最後を参照。 1. はじめに

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Page 1: 環境経済論 環境経済学Ⅱ 本章の概要ttt20009/classes/1011/envecon_1.pdf · 本章の概要 環境と経済の間にはトレードオフの関係があることを理

環境経済論/環境経済学Ⅱ環境経済論/環境経済学Ⅱ

第1章 環境経済学の基本理念

第1部 環境経済学の価値基準

立命館大学経済学部

寺 脇 拓

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

本章の概要

環境と経済の間にはトレードオフの関係があることを理

解したうえで 環境経済学は それらが人間社会に与え解したうえで、環境経済学は、それらが人間社会に与える便益の総和を最大化するように環境と経済のバランスをとることを求める学問であることを学ぶ

2

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

1. はじめに1. はじめに

31. はじめに

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

• 担当者 寺脇 拓• 担当者 寺脇 拓

• 講義時間 火曜2限 10:40~12:10

• 講義場所 C203

• 個人のホームページ個人のホ ムペ ジ

http://www.taku-t.com/

メ ルアドレス• メールアドレス

[email protected]

[email protected]

• テキスト 使用しない(レジュメを中心に進める)

レジュメはWebCTよりダウンロード可能。

参考文献はこのレジュメの最後を参照。

4

参考文献はこのレジュメの最後を参照。

1. はじめに

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

• オフィスアワー 火曜 12:30~13:30• オフィスアワー 火曜 12:30~13:30

• 研究室の場所 アクロスウイング5F 515号室

• 研究室の℡番号 077-561-4974 (内線 7415)

• 評価方法 筆記試験(100点)と出席点(10点)評価方法 筆記試験(100点)と出席点(10点)

講義中に行う練習問題の解答用紙を提出すれば、その回数に応じて試験の点数にボーナスが加算される。

51. はじめに

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

2. 環境と経済の関係2. 環境と経済の関係

62.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

2 1 生態系と環境2.1 生態系と環境• 生態系(ecosystem)( y )

ある地域の生物の群衆とその背景となる無機的環境をひとまとめにし、物質循環・エネルギー流などに注目して機能系として捉えたもの(広辞苑)捉えたもの(広辞苑)。the plants and living creatures in a particular area considered in relation to their physical environment (OXFORD現代英英辞典)(OXFORD現代英英辞典).

> 自然界のシステムそのものを指す絶対的な概念。

環境(the environment)• 環境(the environment)人間または生物を取り巻き、それと相互作用を及ぼしあうものとして見た外界(広辞苑)。として見た外界(広辞苑)。the natural world in which people, animals and plants live (OXFORD現代英英辞典).

体 が 念

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> 当該主体に視点があり、そこからみた周辺という相対的な概念。

2.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

図1 1 湖沼生態系

82.環境と経済の関係

図1.1 湖沼生態系出典: http://www.scienceclarified.com/Di-El/Ecosystem.html

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

環境

生態系

生態系

相互作用

人間社会

図1 2 環境と生態系

a. 生態系 b. 環境

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図1.2 環境と生態系

2.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

人森林生態

人間

人間社会態

間社会

会を取りり巻く環

海枯

環境

海洋生態系

渇性資源

系源

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図1.3 炭素循環

2.環境と経済の関係

出典:天野(1997)、Box4-1を一部加工して転載

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

■生態系と生態学■生態系と生態学

• 生態系は生物学における一つの組織レベルを示す概念。

遺伝子

有機体の基本構成要素(細胞や器官など)有機体(微生物 植物 動物など)

ミクロ

生有機体(微生物、植物、動物など)個体群(population)

• 同一種の有機体の集団

生物学がみ• 同 種の有機体の集団

群集(community)• ある地域に属する個体群の集団

みる組織レ

生態系

景観(landscape)複数 生態系 集まり

レベル

• 複数の生態系の集まり

• 生態学(ecology)

マクロ

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生物学の一つであり、生態系内/間の諸関係を分析する学問。

2.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

2 2 生態系サ ビス2.2 生態系サービス• 生態系を人間社会と相互に作用しあう環境としてみれ態系を 間社会 相 作用 あう環境 れ

ば、それは次の四つのサービスを社会にもたらすものとして捉えられる(MEA 2005)。供給 ビ1. 供給サービス(provisioning services)

食糧や水、木材、燃料など、生産に用いられる資源を供給するサービスサービス。

本講義では化石燃料などの枯渇性資源の供給も含めて考える。

2 調整サービス(regulating services)2. 調整サ ビス(regulating services)気候調整や洪水防止、水の浄化など、人間社会からの環境負荷を調整するサービス。

経済活動が生み出す残留物(residual)を同化・吸収する生態系の能力を同化能力(assimilative capacity)といい、調整サービスはこの同化能力によりもたらされる。

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は の同化能力によりもたらされる。

2.環境と経済の関係

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3. 文化的サービス(cultural services)3. 文化的サ ビス(cultural services)精神的な充足感、美的な楽しみ、教育、レクリエーション、宗教など、人間の文化的な生活を支えるサービス。

4. 基盤サービス(supporting services)上記三つのサービスを支えるものであり、物質循環、土壌形成、

次生産(植物の光合成による有機物生産)など 生命の基盤一次生産(植物の光合成による有機物生産)など、生命の基盤を形成するサービス。

• 基本的に供給サービスはその他の生態系サービスと競基本的に供給サ ビスはその他の生態系サ ビスと競合する。

> 供給サービスから得られる便益とその他の生態系サー供給 得 る便 そ 他 態系ビスから得られる便益の間にはトレードオフがある。

> 生産水準を維持したまま残留物をなくすことはできないのか?

132.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

142.環境と経済の関係

図1.4 生態系サービスと人間の幸福 出典: MEA(2005), p.4より転載

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

自然(生態系)同化能力天然資源

供給サ ビス 調整サービス

経済システム

供給サービス 調整サ ビス

便益便益

生産物 人々生産物 人々

便益

文化的サービス基盤サービス

152.環境と経済の関係

図1.5 生態系と経済システム

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

2 3 物質収支モデル2.3 物質収支モデル• 物質/エネルギー収支(materials/energy balance)均/ ( / gy )

等式

:自然環境から採取される物質、あるいはエネルギー

:生産過程で最終的に廃棄される残留物

:消費過程で最終的に廃棄される残留物

残留物(residuals)とは、生産と消費に伴って発生する残りかすのことであり 二酸化硫黄 農薬 重金属などの残留物質だすのことであり、二酸化硫黄、農薬、重金属などの残留物質だけでなく、熱、騒音、放射能などの廃エネルギーも含む。

• 熱力学の第一法則(質量保存の法則)より、長期的には、( )この均等式が成立する。

> 生産水準を維持したまま残留物をなくすことはできな

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い。

2.環境と経済の関係

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

■リサイクルで残留物をゼロにできないか?■リサイクルで残留物をゼロにできないか?

• リサイクルを考慮した物質/エネルギー収支均等式

:生産過程で発生する残留物

:生産過程でリサイクルされる残留物:生産過程でリサイクルされる残留物

:消費過程でリサイクルされる残留物

• 熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)より 完• 熱力学の第二法則(エントロピ 増大の法則)より、完全なリサイクルを達成することは不可能に近い。

エントロピー(entropy)が小さいということは、その物質/エ( py) さ う 、そ 物質/ネルギーの有用性が高いことを意味する。

物質/エネルギーのエントロピーは生産活動に伴うその不可逆な変換過程で大きくなるな変換過程で大きくなる。

エントロピーが大きい物質/エネルギーをエントロピーが小さいものに変換する(すなわち再利用する)ことは、他のエネルギ を使用しない限り不可能である

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ギーを使用しない限り不可能である。

2.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

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1

3

7 27

3

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182.環境と経済の関係

図1.6 物質収支モデル 出典:フィールド(2002)、p.26より転載

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

> リサイクルによって生産水準を維持したまま残留物をな> リサイクルによって生産水準を維持したまま残留物をなくすこともできない。

> 供給サービスとその他の生態系サービスから得られる両供給サ ビスとその他の生態系サ ビスから得られる両便益の間のトレードオフは避けられない。

■生産水準を維持したまま残留物を減らすためには

1. 生産からの残留物( )を減少させる。

• 汚染防止(pollution prevention)手法汚染防止(pollution prevention)手法

経済の全部門において、生産の残留物集約度(residuals intensity of production)を引き下げる。

• 部門間シフト(sectoral shift)手法

産出1単位あたりの残留物発生量が相対的に大きな部門の産出を削減し それが相対的に小さい部門の産出を拡張するを削減し、それが相対的に小さい部門の産出を拡張する。

2. リサイクル量( )を増加させる。

192.環境と経済の関係

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3. 価値基準3. 価値基準

203.価値基準

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 1 環境倫理学の基本主張3.1 環境倫理学の基本主張• 環境倫理学の基本主張(加藤 1991)張( )

自然の生存権:人間だけではなく、生物種、生態系、景観などにも等しい生存権を認める。

世代間倫理:現代世代は将来世代の生存可能性に対して責任がある(第2章で検討する)。地球全体主義:決定の基本単位は個人ではなく地球生態系そ地球全体主義:決定の基本単位は個人ではなく地球生態系そのものである。

• 加藤(1991)において紹介されている従来の価値基準

人間優先主義:人間には他の生物よりも生存の優先権がある。

自己決定還元主義(自由主義):自己の所有はそれが身体であれ生命であれ 他者への危害を含まない限りで たとえそのれ生命であれ、他者への危害を含まない限りで、たとえその決定が愚かしいものであろうとも、対応能力(判断能力+責任能力)のある個人の自己決定にゆだねられなければならない。

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> これらの比較から本講義の価値基準を明確にする。3.価値基準

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 2 誰が意思決定を行うのか?3.2 誰が意思決定を行うのか?• 地球全体主義の代表的な主張代表 張

ガイア仮説(Gaia hypothesis):地球を自己調節能力を持ったひとつの生命体であるとみなす説(J.E.Lovelock)。

倫 自然 を生態学的土地倫理(land ethics):人間と自然との関係を生態学的に平等関係であるとする倫理(A. Leopold) 。

• 地球全体主義は どのような地球生態系が健全なの• 地球全体主義は、どのような地球生態系が健全なのか?誰がそれを決めるのか(地球の意志を誰がどうやって代弁するのか)?といった問に答えられない。

• 自由主義は、各人の存在が他の人々に認められるための必要最低限の倫理であり、社会の価値基準として現在広く認められている在広く認められている。

> 本講義では、現実的、実践的観点から、自由主義という価値基準に基づいて議論を進めることにする

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う価値基準に基づいて議論を進めることにする。

3.価値基準

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 3 自然の生存権は考慮すべきか?3.3 自然の生存権は考慮すべきか?• 自由主義を認めれば、自然の生存権は社会的意思決定自由 義を認 れ 、自然 存権 社会 意思決定

の価値基準としての意義を失う。

• 自由主義の下では、自然の生存権を認めるかどうかは、人々の自由な判断にゆだねられ、それは社会的な意思決定に反映される。

実際 1993年に発効された生物多様性条約にみられるように実際、1993年に発効された生物多様性条約にみられるように、生物、あるいは遺伝子資源という観点からは、生物多様性を可能な限り保全することの重要性が国際的に認められている。

• 本講義の価値基準

×人々の評価に関わらず、地球のために環境を保全しよう。

○人々が環境保全を求めるのであればそうしよう。

> 環境経済学の価値基準

233.価値基準

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 4 環境経済学の目的3.4 環境経済学の目的• 環境経済学(environmental economics)( )

自由主義を基本とする厚生経済学(welfare economics)の応用分野として位置付けられる。

経済システムの中で得られる便益と環境から得られる便益をあわせた社会全体の厚生の最大化を目指す→効率性の追求

> 社会を構成する少なくとも一人の人の効用を引き下げること> 社会を構成する少なくとも 人の人の効用を引き下げることなしに、他の人の効用を増加させることができないとき、その社会状態は効率的(efficient)であるという。

> 社会厚生が最大化されるとき その状態は効率的である> 社会厚生が最大化されるとき、その状態は効率的である。

得られた利益を公平に分配する→公平性への配慮

243.価値基準

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

方の便益を少なくするこ両者の便益を共に増加させることが可能(非効率)。

一方の便益を少なくすることなしに他方の便益を増加させることが不可能(効率的)。

Bさんの

Aさんの

Bさんの

Aさんのの

便益

の便益

の便益

の便益

a. 便益の総和が最大化されている状態

b. 便益の総和が最大化されていない状態

253.価値基準

図1.7 総便益の最大化と効率性

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 5 効率性を達成するための条件3.5 効率性を達成するための条件• 環境と経済双方から得られる便益の総和を最大化する。

:生態系の供給サービスから得られる便益。:生態系の供給サ ビスから得られる便益。

:他の生態系サービスから得られる便益。

:当該サービスの供給に必要な資源量。

:天然資源の総量。

• 最大化のための一階の条件

供給サービスの限界便益(経済活動の限界便益)がその他の生( )態系サービスの限界便益(環境を保全することの限界便益、あるいは環境を費消することの限界費用)と等しくならなければならない。

263.価値基準

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

3 6 生態経済学3.6 生態経済学• 生態経済学(ecological economics)1)( g )

地球全体主義を基本とする。

健全で持続的な生態系を維持することを第一の目的とし、そ社会 幸福を考の上で人間社会の幸福を考える。

> 人間社会の外界としての環境ではなく、生態系というシステムそのものに焦点を当てる。ムそのものに焦点を当てる。

エコロジー経済学とも訳される。

> どのような生態系が「健全で持続可能」なのか、そし> どのような生態系が 健全で持続可能」なのか、そしてそれを誰がどのように決めるのかという疑問に明確に答えることができない。

> しかしこの学問が強く主張する持続可能性の基準(世代間衡平の問題)をどう考えるかは、環境経済学の中でも重要な課題である→第2章で検討

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重要な課題である→第2章で検討。

3.価値基準

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

4. 受講にあたって4. 受講にあたって

284.受講にあたって

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

4 1 講義内容4.1 講義内容• 環境と経済の関係を理解し、それらのバランスをどう環境 経済 関係を 解 、それ ラ を う

とることが社会的に望ましいのかを考える。

第1部 環境経済学の価値基準• 第1部:環境経済学の価値基準

環境問題はどのような価値基準に基づいて議論されるべきか。

第2部 環境問題の発生メカニズム• 第2部:環境問題の発生メカニズム

環境問題はなぜ発生するのか。

第3部 環境問題の解決に向けた政策手段• 第3部:環境問題の解決に向けた政策手段

環境問題を解決するためにどのような手段を講ずるべきか。

第4部 環境価値の評価手法• 第4部:環境価値の評価手法

環境の被害額や環境がもたらす便益をどのように計測するか。

294.受講にあたって

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

4 2 講義において必要な知識4.2 講義において必要な知識• ミクロ経済学

必要な知識は講義の中で全て説明するつもりですが、やや丁寧さに欠けるかもしれません。

• 簡単な微分

例:次の を について微分せよ。

概念としての積分は出てきますが、数学的に計算してもらうことはありません。ことはありません。

条件付き最大化問題も出てきますが、試験という意味では結果の含意を理解するだけで十分です。

304.受講にあたって

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

4 3 講義計画(予定)4.3 講義計画(予定)1. 環境経済学の基本理念[key words: 生態系、物質収支、熱力学の第一/第二法則、自由主義]2. 持続可能性の公準[key words: 弱/強持続性、ハートウィック・ルール、環境クズネッツ曲線]3. 外部性による市場の失敗(1)[key words: 支払意志額、パレート効率性、消費者/生産者余剰] 4 外部性による市場の失敗(2)[key words: 外部費用 私的費用 社会的費用 市場の失敗] 4. 外部性による市場の失敗(2)[key words: 外部費用、私的費用、社会的費用、市場の失敗] 5. 公共財とフリーライダー問題[key words: 競合性、排除性、公共財、私的財、フリーライド]6. 共有資源の管理問題[key words: オープンアクセス、コモンズの悲劇、再生可能資源] 7. 直接規制と経済的手段(1)[key words: 直接規制、ピグー税、ボーモル・オーツ税]8. 直接規制と経済的手段(2)[key words: 静学的効率性、動学的効率性、ポリシーミックス]9 直接交渉による問題解決[key words: コースの定理 取引費用 所有権 公平性] 9. 直接交渉による問題解決[key words: コ スの定理、取引費用、所有権、公平性] 10. 排出量取引[key words: 排出量取引、グランド・ファーザー]11. 環境評価の基礎理論(1)[key words: 支払意志額、受取意志額、利用価値、非利用価値]

環境評価の基礎理論(2)[ ]12. 環境評価の基礎理論(2)[key words: 期待効用理論、オプション価格、状態依存モデル]13. 顕示選好法[key words: ヘドニック法、付け値関数、トラベルコスト法、弱補完性]14. 表明選考法[key words: CVM、辞書式選好、スコープテスト、統計的生命の価値]

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[ ]15. 新しい評価手法[key words: コンジョイント分析、オークション実験]

4.受講にあたって

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

4 4 本講義の主要参考文献4.4 本講義の主要参考文献■和書

天野明弘(1997)『環境との共生をめざす総合政策・入門』有斐閣。

浩 奈 俊介 『 境経済学を 』有斐栗山浩一・馬奈木俊介(2008)『環境経済学をつかむ』有斐閣。

R.K.ターナー・D.ピアス・I.ベイトマン著、大沼あゆみ訳(2001)『環境経済学入門』東洋経済新報社。(2001)『環境経済学入門』東洋経済新報社。

B.C.フィールド著、秋田次郎・猪瀬秀博・藤井秀昭訳(2002)『環境経済学入門』日本評論社。

諸富徹・浅野耕太・森晶寿(2008)『環境経済学講義』日本評論社。

C D コルスタッド著、細江守紀・藤田敏之監訳(2001)『環境C.D.コルスタッド著、細江守紀 藤田敏之監訳(2001)『環境経済学入門』有斐閣。

細田衛士・横山彰(2007)『環境経済学』有斐閣。

324.受講にあたって

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第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

■洋書■洋書

Turner, R. K., D. Pearce, and I. Bateman (1994), Environmental Economics: An Elementary Introduction, Harvester WheatsheafHarvester Wheatsheaf.Hanley, N., J. F. Shogren, and B. White (2001), Introduction to Environmental Economics, Oxford Univ. Press.Tietenberg, T. (2005), Environmental and Natural Resource Economics 7th ed Addison-Wesley Educ Resource Economics 7th ed., Addison Wesley Educ. Pub.Field, B. C. and M. K. Field (2006), Environmental Economics: An Introducton 4th ed McGraw Hill/IrwinEconomics: An Introducton 4th ed., McGraw-Hill/Irwin.Kolstad, C. D.(1999), Environmental Economics, Oxford Univ. Press.Perman, R., Y.Ma, J.Mcgilvray, and M.Common (2003), Natural Resource and Environmental Economics 3rd ed., Addison Wesley.

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ed., Addison Wesley.

4.受講にあたって

第1章 環境経済学の基本理念環境経済論/環境経済学Ⅱ

■ 注

1. 生態経済学については、例えばデイリー(2005)を参照。

■ 引用文献

天野明弘(1997)『環境との共生をめざす総合政策・入門』有斐閣アルマ。

H E デイリ 著 新田功 藏本忍 大森正之訳(2005)『持続H.E.デイリー著、新田功・藏本忍・大森正之訳(2005)『持続可能な発展の経済学』みすず書房。

B.C.フィールド著、秋田次郎・猪瀬秀博・藤井秀昭訳(2002)『環境経済学入門』日本評論社『環境経済学入門』日本評論社。

加藤尚武(1991)『環境倫理学のすすめ』丸善ライブラリー。

Millennium Ecosystem Assessment(2005) Ecosystems Millennium Ecosystem Assessment(2005), Ecosystems and Human Well-being: Opportunities and Challenges for Business and Industry, World Resources Institute.World Commission on Environment and Development World Commission on Environment and Development (1987), Our Common Future, Oxford University Press.

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