炭化水素 - 名城大学tnagata/education/ochem1r/2019/ochem...4 c4h10 ブタン butane 5 c5h12...

32
炭化水素 1

Upload: others

Post on 20-Oct-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 炭化水素

    1

  • 炭化水素

    飽和炭化水素:単結合のみから成る炭化水素「アルカン」 alkane とも呼ぶ

    H CH

    HH

    methane

    H CH

    CH

    HH

    H

    ethane

    H CH

    CH

    HC

    H

    HH

    H

    propane

    C CC

    H

    HH

    H

    H H← こういうのもある 今日の話は「環状構造」を 持たないものに限定

    炭化水素:炭素と水素のみからなる物質    (最も基本的な有機化合物)

    2

  • H CH

    CH

    HC

    H

    HC

    H

    H

    HH

    butane

    H CH

    CH

    HC

    C

    HH

    HH

    HH

    isobutane

    炭素数4

    直鎖アルカンstraight-chain alkane

    分岐アルカンbranched alkane

    構造異性体structural isomer

    3

  • 炭素数5

    H CH

    CH

    HC

    H

    HC

    H

    H

    HCH

    HH

    pentane

    H CH

    CH

    HC

    C

    HC

    HH

    HH

    HH

    H

    isopentane

    H CH

    CH

    CC

    C

    HH

    HH

    HH

    HHH

    neopentane

    炭素数6…6種類炭素数7…9種類炭素数の多い複雑な化合物を簡便に書く方法が必要!

    4

  • 簡略構造CH4 CH3CH3 CH3CH2CH3

    分岐がある場合

    くり返しがある場合

    CH3CHCH3CH3

    CH3CH(CH3)CH3

    CH3CCH3CH3

    CH3CH3C(CH3)2CH3

    CH3(CH2)2CH3CH3CH2CH2CH3CH3(CH2)3CH3CH3CH2CH2CH2CH3CH3(CH2)4CH3CH3CH2CH2CH2CH2CH3

    5

  • 骨格構造

    ・炭素原子の “C” 記号を省略する。・炭素-水素結合と、水素原子の “H” 記号を省略する。・直鎖状に炭素原子がつながっているときは、炭素原子の位置を「折れ線の角」で表記する。

    H CH

    CH

    HC

    H

    HH

    HH

    H

    H

    H

    H

    HH

    HC C C H

    H

    H

    H

    H

    HH

    H

    6

  • 骨格構造のよくある誤り

    H← 混同しない

    CC

    CC

    CCC

    CC C C

    C

    C

    ”C” の記号を書いたら、そのCに結合した水素原子は省略できない

    「炭素以外の原子」に結合した水素原子は省略できない

    CH3CCH3

    CH3OH OH O

    折れ線の末端はHではなくC

    7

  • 有機化合物の命名法

    8

  • アルカンの命名法分子の構造から一定の規則によって名称をつけるIUPAC命名法 (組織的命名法、系統的命名法)

    直鎖アルカン:炭素数によって決められた名前で呼ぶ炭素数 組成式 日本語名 英語名1 CH4 メタン methane2 C2H6 エタン ethane3 C3H8 プロパン propane4 C4H10 ブタン butane5 C5H12 ペンタン pentane6 C6H14 ヘキサン hexane7 C7H16 ヘプタン heptane8 C8H18 オクタン octane9 C9H20 ノナン nonane10 C10H22 デカン decane

    9

  • 3-メチルペンタン 3-methylpentane

    分岐アルカンの命名法

    (1) 結合している炭素原子の最も長い並びを「主鎖」とする

    ←主鎖CH3CH2CHCH2CH3CH3 ←置換基(メチル基)

    (2) 主鎖に結合している「置換基」の名称と結合位置を  特定する(3) 主鎖に「位置番号」をつける (置換基の番号がなるべく小さくなるように)

    1 2 3 4 5

    (4) 「位置番号・ハイフン・置換基名・主鎖名」の順につなぐ

    10

  • 分岐アルカンの命名法(つづき)

    CH3CH2CCH2CH3CH2CH2CH3

    CH2CH2CH3 ←主鎖←置換基(エチル基が2つ)

    123

    4

    5 6 7

    ・同じ置換基が2つ以上ある場合

    4,4-ジエチルヘプタン数を表す接頭語

    (2:ジ、3:トリ、4:テトラ、5:ペンタ、6:ヘキサ、…)コンマ

    11

  • 分岐アルカンの命名法(つづき)

    ・異なる置換基が2つ以上ある場合

    CH3CH2CHCH2CHCH2CH2CH3CH3 CH2CH3

    1 2 3 4 5 6 7 8

    5-エチル-3-メチルオクタン (5-ethyl-3-methyloctane)置換基はアルファベット順に並べる

    ←主鎖←置換基(メチル基、エチル基)

    ハイフン

    12

  • アルキル基

    アルキル基=アルカンから水素原子を1つ除いたもの多くの有機化合物の部分構造となっている

    アルキル基の名称:末尾の “ane” を “yl” に置き換える(日本語名では、「ァン」を「ィル」に置き換える)

    CH4

    methane

    CH3–

    methyl

    CH3CH2–

    ethyl

    CH3CH2CH2–

    propyl

    CH3CH2CH2CH2–

    butyl

    13

  • 分岐したアルキル基

    CH3CH–CH3

    isopropyl

    CH3CHCH2–CH3

    isobutyl

    CH3CH2CH–CH3

    sec-butyl or s-butyl

    CH3C–CH3

    CH3

    tert-butyl or t-butyl

    分岐アルキル基:よく出てくるものの慣用名を記憶しておく

    第一級アルキル基 第二級アルキル基 第三級アルキル基

    14

  • 分岐の仕方による炭素原子・アルキル基の分類

    CH3CH2CH3 CH3CHCH3CH3

    CH3CCH3CH3

    CH3

    1個の炭素原子に結合している炭素原子:第一級炭素

    2・3・4個の炭素原子に結合している炭素原子: 第二級炭素・第三級炭素・第四級炭素

    15

  • 【練習問題】C6H14 のすべての構造異性体(5種類)を書き、系統的名称をつけなさい。

    16

  • 官能基官能基 化合物 接頭語 接尾語

    炭素・水素以外の原子を含むもの

    カルボン酸 カルボキシ ~酸

    炭素・水素以外の原子を含むもの

    アルデヒド ホルミル ~アール

    炭素・水素以外の原子を含むもの

    ニトリル シアノ ~ニトリル炭素・水素以外の原子を含むもの

    ケトン オキソ ~オン炭素・水素以

    外の原子を含むもの

    アルコール ヒドロキシ ~オール

    炭素・水素以外の原子を含むもの アミン アミノ ~アミン

    炭素・水素以外の原子を含むもの

    エーテル ~オキシ -

    炭素・水素以外の原子を含むもの

    ハロゲン化アルキル フルオロ・クロロ・ブロモ・ヨード -

    炭素・水素原子のみを含むもの

    アルケン - ~エン炭素・水素原子のみを含むもの

    アルキン - ~イン炭素・水素原子のみを含むもの 共役ジエン - ~ジエン

    炭素・水素原子のみを含むもの

    芳香環 - -

    CO

    OH

    CO

    H

    C N

    CO

    OH

    NH2

    O

    X

    C C

    C C

    C CC C

    17

  • 官能基を持つ化合物の命名法

    (2) 主要な官能基を含む、炭素原子の最も長い並びを「主鎖」とする。

    (4) 主鎖の名称に接尾語をつける。

    (5) 主要官能基以外の置換基を主鎖名の前に置く。 (分岐アルカンの置換基と同じ)

    (1) 「主要な官能基」を1つ決める。 この官能基は「接尾語」、その他の官能基は「接頭語」を使って表す。

    CH3CHCH2CH2OHCl

    ↓主鎖(ブタン)

    ←置換基(クロロ)

    ←主要な官能基(ヒドロキシ基)1234

    ブタン+オール(1の位置)=「1-ブタノール」

    「3-クロロ-1-ブタノール」

    (3) 主要な官能基の番号がなるべく小さくなるように番号をつける。

    18

  • 【練習問題】次の化合物に系統的名称をつけなさい。

    CH3CHCHCH3Cl

    OH

    O

    OHNH2

    OHOH

    19

  • 有機化合物の分子間相互作用

    20

  • 熱エネルギー

    液体 気体

    有機化合物における分子間相互作用有機化合物の物理的性質(ex. 融点、沸点、溶解度 ...)=分子間相互作用によって支配される

    多くの有機反応は溶液状態で行うため、これらの物理的性質は重要!

    有機化合物の分子間相互作用双極子相互作用水素結合Londonの分散力

    21

  • 双極子相互作用 (dipole interaction)

    CH3 CH2 CH3

    CH3 CO

    H

    分子量 44.10, 沸点 ‒42.3℃

    分子量 44.05, 沸点 20.2℃δ+δ–

    CH3 CO

    Hδ+δ–

    CH3CO

    Hδ+

    δ–

    分極した共有結合が持つ正負の電荷による相互作用=双極子相互作用※ 極性化合物同士の場合のみ働く

    22

  • 水素結合 (hydrogen bond)

    CH3 CH2 O H

    CH3 CO

    H 分子量 44.05, 沸点 20.2℃

    分子量 46.07, 沸点 78.4℃

    強く正に分極した水素原子と、ローンペアとの間の部分的な共有結合=水素結合

    O H O

    O–H

    δ+ δ–

    23

  • 水素結合の供与体と受容体

    O H

    N HF H

    O O O

    N N NF F

    hydrogen bond donor hydrogen bond acceptor

    ※ 水素結合は「N, O, F を含む化合物」で特に強い

    強く正に分極した水素原子 ローンペア

    24

  • 【練習問題】次の分子の組は水素結合を作るか。

    (1) CH3CN と CH3OH(2) CH3CN 同士(3) CH3OH 同士(4) 水と酢酸エチル CH3 C

    O

    O CH2CH3(5) 酢酸エチル同士(6) ヘキサンと CH3OH(7) ヘキサンと CH3CN(8) ヘキサン同士(9) 酢酸と CH3OH(10) 酢酸同士

    25

  • 【練習問題】(1) CH3CN と酢酸エチルが水素結合を作らないのはなぜか。(2) ヘキサンと水が水素結合を作らないのはなぜか。

    CH3 CO

    O CH2CH3酢酸エチル

    26

  • Londonの分散力 (London dispersion force)CH3 CH2 CH3 分子量 44.10, 沸点 ‒42.3℃, 融点 ‒188℃非極性物質も、温度を下げると液体・固体になる→何らかの分子間相互作用がある

    2つの原子

    (ある瞬間)引力

    (別の瞬間)引力

    時間平均すると

    分極は残らないが引力は残る

    運動する電子/原子核ペア同士の引力による原子間相互作用=London の分散力

    ・どんな原子間でも働く・原子同士がごく近い場合のみ有意な大きさ・分子間の接触面積が大きいほど大きくなる

    27

  • 3つの分子間相互作用(まとめ)

    Londonの分散力

    双極子相互作用

    水素結合

    非極性分子 極性分子ローンペアと

    正に分極した水素原子

    van der Waals 相互作用

    相互作用の強さ:水素結合>双極子相互作用>London分散力

    28

  • 溶解度と分子間相互作用

    29

  • 溶解度と分子間相互作用

    Aの周り: Aのみ Sの周り: Sのみ Aの周り: SのみSの周り: AとS

    「溶解する」とはどういう現象か?

    溶質 溶媒 溶液

    30

  • 溶解度と分子間相互作用

    A

    S

    混合前 混合後S‒S, A‒A相互作用 ≈ A‒S相互作用例:A = 極性物質, S = 水

    A-A

    S-S

    A-S

    S-S

    A-S+

    A

    S

    混合前 混合後S‒S, A‒A相互作用 > A‒S相互作用例:A = 非極性物質, S = 水

    A-A

    S-S

    A-S

    S-S

    A-S+

    溶解する場合 溶解しない場合

    相互作用エネルギーが小さくなる→混ざると損!→溶解しない

    相互作用エネルギーはあまり変わらない→溶解する

    31

  • 【練習問題】安息香酸がヘキサンに溶けない理由を述べなさい。

    32