アルコール・エーテル・エポキシドの反応tnagata/education/ochem1r/2019/ochem...ch3chch3...
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アルコール・エーテル・エポキシドの反応
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アルコールの命名法
C OH
CH3CHCH3OH
2-2-propanol
isopropyl alcohol
C OHCH3
CH3CH3
2- -2-2-methyl-2-propanol
t-butyl alcohol
※「イソプロパノール」「t-ブタノール」は誤り(理由:「イソプロパン」「t-ブタン」という炭化水素は存在しないため)
CH3CH2OH
ethanol
ethyl alcohol
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エーテルの命名法
CH3CH2OCH2CH3
diethyl ether
OCH3
methyl phenyl ether
methoxybenzene
CH3C
H3CH3C
O CH3
tt-butyl methyl ether
2- -2-2-methoxy-2-methylpropane
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アルコールの置換反応・脱離反応
・OH 基の脱離能は低い・プロトン化による活性化
・スルホン酸エステルへの変換・ハロゲン化アルキルへの変換
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アルコールの OH の脱離能は低い
CH3CH2OHCl–
DMSO(SN2)
C OHCH3
CH3CH3
CH3COHO
(SN1)
OH基を「脱離能の高い別の置換基」に変える必要がある
OH‒:強塩基性 → 脱離能が低い
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アルコールを反応させるための3つの方法
・酸で OH をプロトン化して「H2O」に変える
・OH基をスルホン酸エステルに変える
・PBr3 または SOCl2 を使ってOH基をハロゲンに変える
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方法1:酸で OH 基をプロトン化する
CH3CH2 OH–OH
H+CH3CH2 OH
H
H2O
※ この条件では、弱い求核剤のみ使用可能
CH2 OH2CH3–CN
–CNH+
HCN
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一級アルコールとハロゲン化水素の反応:SN2
C OHH
CH3H
(SN2)H–Cl
– Cl–C OH
CH3H
H
HCl–
– H2OC ClH
CH3H
※ ハロゲン化物イオンは求核性低い → SN2 反応は遅い。通常は加熱が必要
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二級・三級アルコールとハロゲン化水素の反応:SN1
C OHH
CH3CH3
(SN1)H–Cl
– Cl–C OH
CH3CH3
H
HCH
CH3CH3
– H2O Cl–C ClH
CH3CH3
C OHCH3
CH3CH3
(SN1)H–Cl
– Cl–C OCH3
CH3CH3
H
HCCH3
CH3CH3
– H2O Cl–C ClCH3
CH3CH3
※ なぜ二級なのに SN1? → 脱離基の脱離能が高いため 求核剤の求核性が低いため
※ 三級アルコールの酸性条件での SN1 は室温でも進行する
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【練習問題】(1) 1-オクタノールを HBr と加熱すると 1-ブロモオクタンが得られる。反応機構を巻き矢印で書きなさい。(2) 1-オクタノールと NaBr を加熱しても反応は起こらない。理由を説明しなさい。
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酸触媒によるアルコールの SN2 反応
CH3CH2 OHH–OSO3H
CH3CH2 OH
H+ –OSO3H
CH3CH2 OH CH3CH2 O CH2CH3+ H2O
H
CH3CH2 O CH2CH3H CH3CH2 OH
SN2
酸触媒が再生
CH3CH2 O CH2CH3 CH3CH2 OH
H+
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酸触媒によるアルコールの E2 反応
CH3CH2 OHH–OSO3H CH2 O
H
HCH2H
+ –OSO3H
CH3CH2 OH CH2 CH2
CH3CH2 OH
H+
+ H2O
酸触媒が再生
E2
※ 温度が高いと E2, 低いと SN2 が優先する
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【練習問題】1,4-ブタンジオールを酸触媒で分子内脱水して、環状のエーテル化合物を得た。巻き矢印で反応機構を示しなさい。
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方法2:OH 基をスルホン酸エステルに変える
CH3CH2 OH + SClO
OCH3 +
N p-
p-toluenesulfonyl chloride pyridine
CH3CH2 O SO
OCH3 +
NCl– +
Hp-ethyl p-toluenesulfonate
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スルホン酸エステルは良い脱離基
(SN2)
共役酸の pKa ‒2.8 15.7‒1.7
O SO
OCH3 OHO
H
H
(弱い塩基=良い脱離基)
(強い塩基=悪い脱離基)
CH3CH2 O SO
OCH3 + –OCH3 CH3CH2 OCH3 O S
O
OCH3+
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スルホン酸エステルを経由する SN2:立体化学
省略記号「Ts」を使って書く (Ts = p-トルエンスルホニル基)
(S)(S)
OH(S)(S)
OTs
–OCH3 (R)(R)
OCH3
TsCl
Ts = SO
OCH3
(S)(S)
OH
SClO
OCH3
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(S)(S)
OSO
OCH3
–OCH3 (R)(R)
OCH3
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方法3:PBr3, SOCl2 で OH 基をハロゲンに変える
CH3CH2 OH PBr3+ CH3CH2 Br + HO PBr2
CH3CH2 OH + CH3CH2 Cl +SO
Cl Cl+ S
O
ON+
NH
+ Cl–
三臭化リン
塩化チオニル ピリジン
Br Cl OH共役酸の pKa ‒9 15.7‒7
(弱い塩基=良い脱離基)
(強い塩基=悪い脱離基)
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ハロゲン化アルキルを経由する SN2:立体化学
(S)(S)
OH(R)(R)
Br
PBr3 –OCH3 (S)(S)
OCH3
(S)(S)
OH(R)(R)
Cl
SOCl2–OCH3 (S)(S)
OCH3
TsCl を使った場合の立体化学と見比べること
(SN2) (SN2)
(SN2) (SN2)
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アルコールの活性化法:まとめ
活性化法 反応式 脱離基 SN2生成物の立体配置
プロトン化 -
スルホン酸エステル 反転
PBr3による臭素化 保持
SOCl2による塩素化 保持
R–OHH+
R–OH2
R–OHTsCl
R–OTs
R–OHPBr3 R–Br
H2O
TsO–
Br–
Cl–R–ClR–OH
SOCl2
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A BOH CN CN
【練習問題】左のアルコールから化合物 A, B を合成する方法を提案しなさい。
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エーテルの置換反応・脱離反応
・OR 基の脱離能は低い・プロトン化による活性化
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エーテルの求核置換反応と脱離反応
CH3CH2OCH3Cl–
DMSO(SN2)
C OCH3CH3
CH3CH3
CH3COHO
(SN1)
RO基を「脱離能の高い別の置換基」に変える必要があるRO‒:強塩基性 → 脱離能が低い
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エーテルの活性化:プロトン化
CH3CH2OCH2CH3 + H+ OCH2CH3H
CH3CH2
CH3CH2OH
エーテルとハロゲン化水素の反応
CH3CH2OCH2CH3 + H Br OCH2CH3H
CH3CH2 + Br–
CH3CH2 Br
+ HOCH2CH3
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三級アルキルエーテルと酸の反応
C OCH2CH3CH3
CH3CH3
H
+ –OSO3H
CH3 CCH3
CH3
+ HOCH2CH3
CH3 CCH2
CH3
HOCH2CH3
H
CH3 CCH2
CH3+ HOCH2CH3
H
C OCH2CH3CH3
CH3CH3
H–OSO3H
E1
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O+ H–Cl
【練習問題】テトラヒドロフランを塩酸と加熱すると、高沸点の物質が生成した。反応機構を巻き矢印で示しなさい。
??
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エポキシドの置換反応
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反応座標
エネルギー
エポキシドエポキシド=酸素を含む三員環エーテル
角ひずみがあるためエネルギーが高い=反応性高い
エポキシド
普通のエーテル
エポキシドの方が活性化エネルギーが小さい
C CO
HH
HH
OO
2 , 2 - 2
ethylene oxide cyclohexene oxide 2,3-epoxy-2-methylbutane
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エポキシドの反応(酸性条件)
H2C CH2O H+
H2C CH2OH
Br–H2CHO
CH2Br
良い脱離基になる
H2C CH2O H+
H2C CH2OH
H2CHO
CH2OH
H2O
H
H2CHO
CH2OH
– H+
エチレンオキシド+HBr
エチレンオキシド+水+酸触媒
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エポキシドの反応(塩基性条件)
エチレンオキシド+NaOCH3
最初から入れてはダメ!(CH3O‒ をつぶしてしまう)
H2C CH2O –OCH3 H2C
OCH2OCH3
H+ H2CHO
CH2OCH3
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【練習問題】1-ブチンにナトリウムアミド NaNH2 を加え、続いてエチレンオキシドを加えた。十分に反応させた後、薄い塩酸を加え、エーテル抽出で有機物のみを取り出した。生成物は何か。
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