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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 令和元年度新エネルギー等の保安規制高度化事業 (プラント IT 化促進に向けた調査) 報告書 科学・安全事業本部 リスクマネジメントグループ デジタル・イノベーション本部 テクノロジー戦略グループ 経済産業省 産業保安グループ 高圧ガス保安室 御中 令和2年3月19日

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.

令和元年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(プラント IT 化促進に向けた調査)

報告書

科学・安全事業本部 リスクマネジメントグループデジタル・イノベーション本部 テクノロジー戦略グループ

経済産業省 産業保安グループ 高圧ガス保安室 御中

令和2年3月19日

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 1

目次

1. 本調査の位置づけ 2

2. 会議体の組成 5

2.1 協議会の開催 6

2.2 会議体の設計 7

2.3 分科会の構成 8

2.4 会議体における議論テーマイメージ 9

2.5 ロードマップの策定 10

2.6 規制・ルールの整備 11

2.7 最新技術の共有 12

3. プラントIT化に向けた調査 13

3.1 ロードマップ案の策定 15

3.2 規制・ルールの整備 19

3.3 最新技術の共有 23

4. 防爆機器の認証についての調査 34

4.1 調査背景 35

4.2 調査実施事項 36

4.3 調査成果 37

4.4 今後の課題 41

5. 総括 42

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1.本調査の位置づけ

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本調査の位置づけ

◼ 本事業は、「IoT・ビッグデータ・AI の活用によりヒトを補完しながら、安全性を維持・向上していく産業保安のスマート化(特に IT 化)を加速させること」及び「保安に係る手続き等の見直しによる業務効率化を図ること」目的としている。

◼ 産業保安のスマート化については、平成27年度以来、新技術の活用促進や規制の見直しに係る取組が進められており、スーパー認定事業所制度の創設や各種技術実証の実施、会議体の組成による情報共有・機運醸成などの成果があがっている。

◼ 一方で、新技術の本格的な実装・普及には至っておらず、プラントが抱える高経年化・人材不足による保安力低下の危機に瀕している現在、さらなる加速が必要である。

◼ スマート化のさらなる加速という観点では、現状の取組には下図に示すような課題があると考えられる。本事業は、会議体の組成や関連調査事項などを通して、加速のための変革を促進する役割を担う。

<「産業保安のスマート化」の加速の姿(イメージ)>

現状 加速した姿(例)

旗振り役

サービス創出の視点

課題解決のスタンス

プレイヤー

本事業を通した変革の促進

• 会議体組成• 技術ロードマップ• 規制改革ニーズ• 手続き効率化

・・・

官主導Connected Industries

重点分野としての予算に基づく活動

民主導ビジネスとしての

生き残りをかけた活動

エンジ・ベンダ起点ユーザ側は待ちの姿勢

データホルダ起点立場を問わずデータ活用

技術的・制度的判断新サービスが「技術的に使えるか」

「規制上使えるか」

経営判断・ルール形成新サービスを「どう使うか」「規制をどう変えるか」

固定的なプレイヤー構造所有とO&Mの一致が前提

オープンなプレイヤー構造サービスの細分化所有とO&Mの分離

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仕様項目と報告書構成の関係

仕様項目 報告書における記載項目 ページ

(1) 会議の開催 2.会議体の組成 p.5~p.12

(2-1) プラントIT化に向けた調査

i) ロードマップ案の策定 3.1 ロードマップ案の策定 p.15~p.18

ii) 規制・ルールの整備 3.2 規制・ルールの整備 p.19~p.22

iii) 最新技術の共有 3.3 最新技術の共有 p.23~p.33

(2-2) 防爆機器の認証についての調査 4.防爆機器の認証についての調査 p.34~p.41

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2.会議体の組成

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2.1 会議体の開催

⚫ プラントのIT化を加速させるために、業界の主要企業が集まる会議の開催について検討した。

⚫ 今年度中の実施を想定していたが、会議体の建て付けを高圧ガス分野に限らず、電力・ガス等も含めた分野横断での保安高度化の協議会とすることに変更。そのため、実施時期を来年度として再調整することとなった。

⚫ 建て付けを変更した会議体「スマート保安官民協議会」の概要を以下に示す。

出所)第16回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 高圧ガス小委員会 資料3「(2)スマート保安の推進」

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2.2 会議体の構成

⚫ 会議の下部組織として「ロードマップの策定」「規制・ルールの整備」「最新技術の共有」等ができる分科会を設置することを検討した。

⚫ 分野横断の「スマート保安官民協議会」を置き、その構成員は業界団体会長クラスとなった。このため、分野別の「部会」をその下位に置き、上記テーマを含む内容を実務者レベルで検討することとなった。

⚫ 「スマート保安官民協議会」及び分野別の部会の位置付けを以下に示す。

出所)第16回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 高圧ガス小委員会 資料3「(2)スマート保安の推進」

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2.3 会議体の設計

⚫ 会議の開催に当たっては、メンバー、出席者のレベル感等を考慮し、今後も続く仕組みとすること(将来的には業界が主体となり運営するような仕組みとすること)を含めて設計を検討した。

⚫ 分野横断の「スマート保安官民協議会」を想定し、以下のたたき台を作成した。

⚫ 設立趣旨:設立が求められる社会的背景や設立の必要性、ねらい等を整理

⚫ 設置要綱:会議体の基本的な事項(名称、目的、活動内容、構成員、会議体の構成、会長等の選任等)を整理

⚫ 第一回資料イメージ:協議会での議論・共有事項等を整理

⚫ 第一回開催までのタスク・スケジュール等

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2.4 会議体における議論テーマイメージ

⚫ 高圧ガス保安分野を念頭に、 会議体において「ロードマップの策定」「規制・ルールの整備」「最新技術の共有」をテーマとして議論する想定で、それぞれのテーマについて調査・検討を行った。

親会

規制・ルールの整備(2.6、3.2に記載)

最新技術の共有(2.7、3.3に記載)

• IoT/AI等の新技術の実証・導入・・・

• 技術革新に対応した規制・制度の見直し• スマート保安促進のための仕組みづくり・支援・・・

想定される検討事項イメージ部会

ロードマップの策定(2.5、3.1に記載)

• スマート保安の重要性と取組の方向性の共有・・・

高圧ガス保安部会

・・・

想定テーマ

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2.5 ロードマップの策定

⚫ 高圧ガス保安分野でのロードマップを会議体で議論することを念頭に、ロードマップの第一案を策定した。

⚫ 調査の詳細は3章(3.1)に示す。

プラントの技術ロードマップ案

現在 20XX年

タブレットでの情報閲覧・記録

センサー・画像データの取得

作業記録の完全電子化

ドローンによる高所・危険領域点検

AIにより問題発生前に予兆検知しO&M業務に反映

AIによる故障予測を点検計画に反映

ドローン巡回による監視データ自動取得

異常発生時などの自動制御 プラント運転の全自動化

時間

教育・技術伝承

現場作業効率化

異常・予兆検知

遠隔操作

目的・カテゴリ

自動化

情報の電子化

プロセスデータ・画像認識によるAI異常検知

プラント運転状況の可視化

ウェアラブル上で異常をAIで自動検知

点検作業ロボットの遠隔操作

デジタルツイン(DT)の活用

ウェアラブルと5Gを活用した作業支援

DBとセキュリティ体制の構築 データベースのプラント間共有・活用

プラント運転の遠隔操作

点検作業の全自動化

運転パラメータ自動最適化

インシデント事例を用いた自然言語処理による原因対策の提示

ソフトセンサーの開発

xRを用いた遠隔指導

故障予測を用いたRBM・CBM

予兆検知による稼働率向上

プラントの統括管理

オペレーションの完全自動化

DBの構築・共有

将来像

メンテナンスの完全自動化

運転・点検の遠隔操作

知識データベースの活用

情報の可視化と閲覧

異常検知による事故の未然防止

点検作業の効率化

技術開発のロードマップ

情報の電子化と取得

20XX年

5Gによるリアルタイム連携

複数プラントを一括して運転監視

知識データベースの構築

既に導入を進めている

実証・研究開発等を実施している

長期的な観点から実現に向けて取組

を行う

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2.6 規制・ルールの整備

⚫ 高圧ガス保安分野における規制・ルールの整備を会議体で議論することを念頭に、調査を行った。

⚫ 調査の詳細は3章(3.2)に示す。

出所)第2回産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会資料https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/002.html

他分野における規制・ルール検討例(遠隔監視・制御)

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2.7 最新技術の共有

⚫ 高圧ガス保安分野における最新技術について会議体で議論することを念頭に、調査を行った。

⚫ 調査の詳細は3章(3.3)に示す。

施設・設備(施工)

メンテナンス(点検)

プラントオペレーション(保守)

シーン 要素技術/サービス

知識データベースの活用

ウェアラブル/AR・VRによる作業アシスト

センサーデータ/ソフトセンサー

セキュリティ強固な

データベースの構築

安全行動サポート

目視点検のデジタル化

異常検知・故障予兆検知

ドローン・5G等を活用した遠隔監視・遠隔操作

プラント運転完全自動化

ロボットによる完全自動点検

自動設計・調達・施工

デジタルツイン・仮想化

タブレット等による状態常時可視化/情報共有

データ取得・蓄積(情報の電子化)

データの可視化・活用(教育・技術伝承・業務効率化)

データの処理・高度化(異常予兆検知・遠隔操作・自動化)

●画像による劣化判別●肉厚の摩耗予測

●動的な危険エリアへの侵入検知

●作業の工程指示アシスト●物体認識による情報可視化●音声対話による作業アシスト

●ドローンによる高所の劣化判別

●音声による文字入力

●インシデント発生時の情報提示●日報の自動要約

●シミュレーション上でのパラメータ最適化

●巡回経路の最適化

●自動運転パラメータの最適化

●導入事例あり●実証段階

●AIを活用したソフトセンサーの開発

技術マップ(スマート化技術全体を整理+AI技術をマッピング)

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3.プラントIT化に向けた調査

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インタビュー実績

⚫ プラントIT化に向けた調査 にあたり、以下の先にインタビューを行った。

年月日 インタビュー対象 分類

2020/1/8 A社 ITベンダー

2020/1/10 B社 石油化学

2020/1/15 C社 通信ベンダー

2020/1/21 D協会 IT系業界団体

2020/1/24 E社 計装ベンダー

2020/2/4 F社 コンサルタント

2020/2/6 G社 ITベンダー

2020/2/14 H社 ITベンダー

2020/2/17 I研究所 有識者

2020/2/20 J社 ITベンダー

2020/2/20 K社 ITベンダー

2020/2/26 L社 計装ベンダー

2020/3/3 M研究所 有識者

2020/3/4 N大学 有識者

2020/3/5 O社 エンジニアリング

2020/3/9 P社 ITベンダー

2020/3/10 Q社 エンジニアリング

2020/3/11 R社 ITベンダー

2020/3/18 S社 石油化学

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3.1 ロードマップ案の策定 実施概要

⚫ 世の中の動きや業界の動向を見据え、ロードマップ案を策定。

⚫ 解決すべき課題を想定した上で、プラントIT化の目指すべき全体像を描く。個別の要素技術や具体的サービス案の羅列による検討にとどまらず、プラントにおける重要課題への着目と、それらの効果的な解決に焦点を当てた整理を行う。

⚫ 人工知能やその他周辺技術の最新動向を調査した上で、技術的難易度や導入可能時期を判断する。

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3.1 ロードマップ案の策定 プラントDX化の将来像

⚫ 現場技能とDX技術の融合による新たな日本のプラント保安管理の姿を実現し、産業保安力・効率性を一層向上する。

⚫ 現場の熟練技能をAI化を通して伝承、現場作業のデジタル化を強力に推進し、安全で効率的・魅力的な職場環境を目指す。

プラントの統括管理 運転・点検の完全自動化

AI

DBの構築・共有

情報の可視化と閲覧

情報の電子化と取得

運転・点検の遠隔操作

中央制御室

xRを用いた遠隔指導 故障予測を用いたRBM・CBM

予兆検知による稼働率向上

異常検知による事故の未然防止点検作業の効率化

知識データベースの活用

プラントDX化

AI

AI

✓ プラント運転・点検の完全自動化

✓ 異常発生時などの自動制御

✓ 運転パラメータ自動最適化

✓ 複数プラントを一括して運転監視

✓ プラント運転の遠隔操作✓ 点検作業ロボットの遠隔操作

✓ 知識データベースの構築✓ インシデント事例を用いた自然言

語処理による原因対策の提示

✓ ウェアラブルと5Gを活用した作業支援

✓ ドローンによる高所・危険領域点検

✓ 点検ロボット巡回による監視データ自動取得

✓ AIによる故障予測を点検計画に反映

✓ ウェアラブル上で異常を自動検知✓ 画像・プロセスデータによるAI異常検知

✓ 問題発生前に予兆検知しO&M業務に反映

✓ プラント運転状況の可視化✓ タブレットでの情報閲覧・記録✓ デジタルツイン(DT)の活用

✓ センサー・画像・テキストデータの取得

✓ ソフトセンサーの開発✓ 5Gによるリアルタイム連携

✓ DBとセキュリティ体制の構築✓ 作業記録の完全電子化✓ データベースのプラント間共

有・活用

AI

情報の電子化 教育・技術伝承 遠隔操作 自動化

異常・予兆検知現場作業効率化

点検の効率化・自動化現場業務のスマート化 運転の効率化・自動化 組織のDX化

プラントデータ・プラットフォーム / デジタル・ツイン

✓ 異常・予兆検知による稼働率向上と事故防止

✓ 無人での運転監視・自動運転の実現

✓ 作業効率化・省力化✓ ヒューマンエラーの防止✓ 暗黙知の蓄積・見える

化と、技術伝承の実現

✓ 作業員の安全確保✓ 見逃し・判断ミスの防止✓ 自動運転による点検

✓ 状況のリアルタイム把握による意思決定迅速化

✓ RBM・CBMの実現✓ 組織内外の情報連携

の電子化

✓ データの一元管理と相互アクセスによる管理体制

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3.1 ロードマップ案の策定 将来像実現のための要素技術

目的・カテゴリ 将来像 要素技術開発 概要

自動化オペレーションの完全自動化

プラント運転の完全自動化 プラントの運転が完全自動化され、無人のプラントで生産が行われる状態を実現する

異常発生時などの自動制御 異常発生時に原因と対策を特定し、安全を担保した状態でパラメータを自動制御して定常状態に戻す

運転パラメータ自動最適化 原料の組成割合や冷却装置周辺の外気温などの変化に合わせて、運転パラメータの組合せを最適化する

メンテナンスの完全自動化 点検作業の全自動化 プラントの点検作業が、データの取得から診断まで自動化され、現場での点検準備に関わる作業が不要になり、効率化が実現

遠隔操作

プラントの統括管理 複数プラントを一括して運転監視 複数プラント間のデータを集約し、統括管理施設での一括管理を実現することで、管理体制の効率化が実現

運転・点検の遠隔操作プラント運転の遠隔操作 プラント運転を遠隔で操作することで、海外も含めた現場からの報告遅延が影響しない効率的な運営が可能に

点検作業ロボットの遠隔操作 点検ロボットを遠隔操作することで点検を効率化、また5Gによる高精細映像のリアルタイム共有による遠隔操作高度化の実現

異常・予兆検知

予兆検知による稼働率向上 問題発生前に予兆検知しO&M業務に反映 予兆の検知結果をメンテナンス計画に動的に反映し、O&M計画高度化による効率的なナレッジマネジメントを実現

異常検知による事故の未然防止ウェアラブル上で異常を自動検知

ウェアラブル端末上で画像解析により異常を検知し、また原因と対策を提示することで、作業員が情報を基にした即時対応を行えるようになる。

画像・プロセスデータによるAI異常検知 石油化学プラントの運転状態を自動的に解析し、故障の前兆である状態変化や異常発生をリアルタイムに検知

現場作業効率化

故障予測を用いたRBM・CBMの実現 AIによる故障予測を点検計画に反映 設備の故障予測を点検計画に動的に反映させることで、メンテナンスのRBM・CBMを実現する

点検作業の効率化ドローンによる高所・危険領域点検 高所や危険エリアなど、作業員の確認が困難な場所における点検作業をドローンを活用して代替する

ドローン巡回による監視データ自動取得 巡回ロボット・ドローンの自動走行により、点検データの自動取得を行う

教育・技術伝承

xRを用いた遠隔指導 ウェアラブルと5Gを活用した作業支援 装着者目線カメラからの画像で遠隔からの指示や、映像・会話・音声入力での作業記録などをクラウドサーバを介して共有

知識データベースの活用

インシデント事例を用いた自然言語処理による原因対策の提示

大量のメンテナンス記録を活用し、設備の長時間停止に繋がる潜在的な要因の発見、生産性の高い設備づくりへの反映に活用

知識データベースの構築 施工記録文書に対するAIを用いた自然言語処理によりノウハウを抽出、ナレッジ化して業務に活用する

情報の電子化

情報の可視化と閲覧プラント運転状況の可視化 プラントの運転状況を可視化して作業員が確認できるようにすることで、運転監視の効率化と認識の相違によるミスを防止

タブレットでの情報閲覧・記録 タブレットでの情報閲覧と作業記録により、素早い情報共有と報告プロセスの効率化、および情報の電子化の徹底を実現

情報の取得と電子化

デジタルツイン(DT)の活用 設備・運転・保全等情報やシミュレーション結果を、直感的に理解し易い3Dプラントモデル(バーチャルプラント)に統合

5Gによるリアルタイム連携 5Gを活用した無線制御による設備間連携と遠隔作業、また高精細映像のリアルタイム共有による遠隔作業支援の実現

センサー・画像・テキストデータの取得 作業員に寄って行われるデータ取得作業を自動化・電子化することで、作業ミスを防止し、情報取得の徹底が可能になる

ソフトセンサーの開発 実際の分析計を用いることなく、統計計算モデルによって既存の計器の状態からリアルタイムに微量成分濃度を推定する

DBの構築・共有

データベースのプラント間共有・活用 プラント間で共通のデータベースを構築し、リソースの共有やナレッジの相互活用を実現する

作業記録の完全電子化 作業記録をフォーマット化・電子化することで、情報の検索性と利便性が向上し、高度な活用や分析を可能にする

DBとセキュリティ体制の構築 実験データ電子化システム、試薬管理の自動化システムや生体認証等による最新のセキュリティシステムを導入した工場建設

⚫ 目的別の将来像実現のために、どのような要素技術が必要となるかを、事例調査から整理した。

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3.1 ロードマップ案の策定 プラントの技術ロードマップ案

プラントの技術ロードマップ案

現在 20XX年

タブレットでの情報閲覧・記録

センサー・画像データの取得

作業記録の完全電子化

ドローンによる高所・危険領域点検

AIにより問題発生前に予兆検知しO&M業務に反映

AIによる故障予測を点検計画に反映

ドローン巡回による監視データ自動取得

異常発生時などの自動制御 プラント運転の全自動化

時間

教育・技術伝承

現場作業効率化

異常・予兆検知

遠隔操作

目的・カテゴリ

自動化

情報の電子化

プロセスデータ・画像認識によるAI異常検知

プラント運転状況の可視化

ウェアラブル上で異常をAIで自動検知

点検作業ロボットの遠隔操作

デジタルツイン(DT)の活用

ウェアラブルと5Gを活用した作業支援

DBとセキュリティ体制の構築 データベースのプラント間共有・活用

プラント運転の遠隔操作

点検作業の全自動化

運転パラメータ自動最適化

インシデント事例を用いた自然言語処理による原因対策の提示

ソフトセンサーの開発

xRを用いた遠隔指導

故障予測を用いたRBM・CBM

予兆検知による稼働率向上

プラントの統括管理

オペレーションの完全自動化

DBの構築・共有

将来像

メンテナンスの完全自動化

運転・点検の遠隔操作

知識データベースの活用

情報の可視化と閲覧

異常検知による事故の未然防止

点検作業の効率化

技術開発のロードマップ

情報の電子化と取得

20XX年

5Gによるリアルタイム連携

複数プラントを一括して運転監視

知識データベースの構築

既に導入を進めている

実証・研究開発等を実施している

長期的な観点から実現に向けて取組

を行う

⚫ 目的/将来像に対する要素技術を、時系列で整理した。

⚫ 「既に導入を進めている段階」、「実証・研究開発段階」、「長期的に取り組む構想段階」の3要素に分けて取組の現状を確認し、今後の検討会にてアップデートしていく。

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 19

3.2 規制・ルールの整備 実施概要

⚫ 高圧ガス保安法や石油コンビナート等災害防止法、他省庁令等、重複が生じている手続き等について、事業者のニーズも踏まえながら調査した。

① 既存の規制改革要望の精査

② 他分野における規制改革の検討状況

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3.2 規制・ルールの整備 ①既存の規制改革要望の精査

⚫ 過去の事業において収集した規制改革要望について、「デジタル技術の活用を制約している規制の課題」か、「デジタル技術によって解決できる規制の課題」かを精査し、スマート保安との関連性を検討した。

既存の規制改革要望の精査

過去の事業で収集 本年度事業で精査

※個別の詳細な内容は非公開

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3.2 規制・ルールの整備 ②他分野における規制改革の検討状況

出所:第2回産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会資料https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/002.html

⚫ 他分野における規制改革の検討状況として、電力安全分野における遠隔監視・制御の導入の取組みを確認した。

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3.2 規制・ルールの整備 ②他分野における規制改革の検討状況

⚫ 他分野における規制改革の検討状況として、海事分野における認証機関のDXの取組みを確認した。

出所)日本海事協会 海事業界の デジタルトランスフォーメーション に向けてhttps://www.classnk.or.jp/hp/pdf/reseach/seminar/2019/4-2_dmd2019.pdf

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3.3 最新技術の共有 実施概要

⚫ プラントのIT化に向けた事業者の最新動向を調査する。

⚫ 過去業務等を通じて把握している過去のプラントIT化の事例に基づき、技術軸と目的軸を設定する。過去の事例及び直近3~5年の事例をそれらの軸にプロットすることにより、最新の技術トレンドを可視化し、今後数年間の技術トレンドを予測する手がかりとする。

⚫ プラントのIT化に関する国内・海外の直近3~5年間の事例を調査し、用いられている技術を分類し、トレンドを分析する。

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3.3 最新技術の共有 事例調査結果

⚫ 文献/インターネットの公開情報を基に、事例調査を実施した。

⚫ 各事例に対して、解決すべき「事業者のニーズと課題」、導入する技術やサービスに関する「デジタル技術の種類と普及までの課題」、そして「目指すべき姿」を整理した。

目的 No 目指すべき姿

機能要件 現状の対応 課題 概要 現状 実装までの課題 (普及に向けた)対策 将来像

1 マニュアル/OJT 熟練者による実施座学での理解の限界

暗黙知の形式知化

施工記録文書に対するAIを用いた自然言

語処理によりノウハウを抽出、重要度に着目

したスコアリングによってナレッジ化

・実証レベルでの活用実績あり・知識データの蓄積

・適切なノウハウの抽出、整理の実現

・ノウハウ記録フォーマットの標準化

・オープンデータ化による予測技術の開発

促進

・専門家知識の形式知化

・プロセスの効率化

2 マニュアル/OJT資料・講義による教育

現場での直接指示

座学での理解の限界

現場での作業負担

装着者目線カメラからの画像で遠隔からの

指示、映像・会話・音声入力での作業記録

などをクラウドサーバを介して共有する

・実用段階

・防爆対応コスト

・操作性(バッテリー、携帯性、通信、作

業を邪魔しない、双方向性)

・高品質な端末の開発、コストの低下

・5Gの普及

・業界でのサービス標準化

・情報のリアルタイム連携と可視化

・教育研修の高度化

・遠隔操作の実現

3 経験に基づく判断技術者の経験・知見に

より判断

技術者の経験に依存

データの活用が不十分

大量のメンテナンス記録を活用し、設備の長

時間停止に繋がる潜在的な要因の発見、

生産性の高い設備づくりへの反映に活用。

・実証レベルでの活用実績あり・要因特定の精度

・業務への組み込み、UI/UXの設計

・メンテナンス記録フォーマットの標準化

・業界内での事例の共有

・インシデント発生時の対策案提示

・音声による情報確認、コントロール

4 目視確認現場/作業画面に張り

付いて運転状況を確認

人手不足・心理負担

データの不足

セキュリティ

実験データ電子化システム、試薬管理の自

動化システムや生体認証等による最新のセ

キュリティシステムを導入した工場建設。

・建設に着手・工場の設備、データの標準化

・生体認証の精度

・セキュリティコストの低減

・業界での設備・データの標準化

・運転データの可視化

・リアルタイムでの情報の確認

・最新のセキュリティの確保

5 経験に基づく判断 熟練者による実施データの不足

分析の時間・コスト

実際の分析計を用いることなく、統計計算モ

デルによって既存の計器の状態からリアルタイ

ムに微量成分濃度を推定する。

・複数プラントで実運用

・ソフトセンサーの精度

・測定したい対象を観測できるソフトセン

サーの開発

・高精度なソフトセンサーの開発

・実証による効果検証・プラントの運転状況を正確に把握

6 目視検査 熟練者が直接目視人手不足

コスト

現場にある各種のアナログ計器に画像解析

無線モジュールを取り付け、画像解析により

数値化しデータを伝送・共有する。

・実証レベルでの活用実績あり

・防爆対応コスト

・無線が制限される区域での使用

・特殊なメーターの読み取り精度

・無線活用の帯域制限の緩和 ・法定点検の高度化、自動化

7 目視確認本人・周辺の作業員に

よる相互判断

注意散漫による誤判断

新人の認識不足

機械学習を用いて、条件によって立ち入り禁

止エリアが変化する特殊な工場内を含め

て、AIが正しく危険エリアを認識する。

・2019年より全社展開予定・認識精度

・フェイルセーフ

・監督業務のAI代替を許容するルール制

定・法定点検の高度化、自動化

8 目視確認現場/作業画面に張り

付いて運転状況を確認

心理的負担

作業・確認ミス

技術者の生産性

異常・予兆検知

石油化学プラントの運転状態を自動的に解

析し、故障の前兆である状態変化や異常

発生をリアルタイムに検知

・2018年10月より実運用を開始・異常検知の精度

・実運用プロセスの設計

・サービス開発人材の確保

・オープンデータ化による予測技術の開発

促進

・問題発生前に故障の予兆を検知

・異常/予兆検知をO&M業務に反映

・人為的なミスを未然防止

9 経験に基づく判断 熟練者による実施

技術者の経験に依存

データの活用が不十分

コスト

需要予測

工場内で必要分の蒸気だけを供給し、余計

な燃料消費・消費エネルギー量を抑制し、

燃料、電力、給水にかかるコストを削減

・モデルの構築と評価を実施・予測精度

・フェイルセーフ

・サービス開発人材の確保

・オープンデータ化による予測技術の開発

促進

・受給予測に基づく供給量コントロール

10 経験に基づく判断 熟練者による実施作業者の経験に基づく

計画立案

スケジューリング・経

路最適化

需要の変化、各種制約をインプットにして生

産計画を立案する

・効果検証を実施

・2019年1月より実運用を開始

・最適化精度

・条件の網羅性

・サービス開発人材の確保

・効果検証

・プラントでの製造工程スケジューリング

・配送経路の最適化

11 経験に基づく判断 現場で作業員が巡回人手不足

コスト

手狭なプラント内の複数フロア自律巡回走

行、搭載センサーを使ったデータ取得、ステー

ションでの充電などの連続自動運転。

・実証レベルでの活用実績あり

・防爆対応コスト

・制御管理

・セキュリティ

・開発コストの削減

・巡回ロボットを前提としたプラント設計

・業界標準のセキュリティルール

・巡回による確認・法定点検の自動化

12 目視検査足場を組んで人が直接

目視

人手不足

労働災害

コスト

高所や危険エリアなど、作業員の確認が困

難な場所における点検作業をドローンを活

用して代替する。

・実証レベルでの活用実績あり

・今後の実装に向けて所内評価検証プロ

セス中

・機体の性能

・費用対効果が見えず、実装に至らない

・防爆規制により設備に近づいて鮮明な

画像をとることができない

・研究開発・実証

・法定の目視検査にドローンを許容

・防爆規制の更なる合理化による飛行範

囲の拡大

・法定点検の高度化、自動化

・頻度向上による保安力の維持・向上

・点検コスト削減

13 経験に基づく判断 熟練者による実施 人手不足・経験不足

5Gを活用した無線制御による遠隔作業、ま

た5Gによる高精細映像のリアルタイム共有

による遠隔作業支援の実現。

・実証レベルでの活用実績あり

・5Gによる無線接続の安定性

・遠隔での十分な操作性の実現

・通信量、データ量増大に伴うコスト増

・研究開発・実証

・無線活用の帯域制限の緩和

・他の機器への影響の確認

・保守点検業務を少数精鋭で実施

・デジタルツインを現場でリアルタイム参照

14 目視確認 熟練者による実施定性的な情報に基づく

意思決定

設備・運転・保全等情報やシミュレーション

結果を、直感的に理解し易い3Dプラントモ

デル(バーチャルプラント)に統合する

・設備・運転・保全等管理への活用の効

果測定

・費用対効果の評価

・モデルの構築コスト

・現実の設備の変化を仮想空間モデルに

どう反映させるか

・構築コストの低下

・デジタルツイン構築のノウハウ蓄積

・運転業務のルール緩和

・製造ラインの設計改善における効率的な

効果検証の実現

自動化 15 経験に基づく判断 熟練者による実施

技術者の経験に依存

データの活用が不十分

コスト

AI運転パラメータ最適

原料の組成割合や冷却装置周辺の外気

温などの変化に合わせて、運転パラメータの

組合せを最適化する。

・実証レベルでの活用実績あり

・最適化精度

・フェイルセーフ

・リアルタイム性

・サービス開発人材の確保

・運転業務のルール緩和(監視ルールの

変更、自動化の容認)

・プラントの生産効率を最大限に向上

5G

設備管理や運転状況の把握を適切に行うこと

法定点検や自主点検の実施状況を管理するこ

デジタルツイン・仮想化

プラントの生産効率を高めること

プラントの制御システム・機器についてプロセス異

常の有無を監視すること

AI

業務効率化

プラントの用役の効率を高めること

工場内の配送・生産計画を効率的に行うこと

法定点検やその他の状況確認のために巡回す

ること巡回ロボット

高所の外面にひびわれ・腐食等がないことを確

認すること(通常時・緊急時)ドローン

保守作業を実施すること

自然言語処理

監視

運転状況をリアルタイムに把握すること

センサー

数値

プラントの運転状況を正確に把握すること

異常・予兆検知

外面にひびわれ・腐食等がないことを確認するこ

画像

作業員の危険エリアへの侵入を防止すること

事業者のニーズと課題 デジタル技術の種類と普及までの課題

法令/技術基準、業務改善ニーズ

(事業者がやらないといけない/やりたいこ

と)

課題に対応する新技術/

(要素技術・サービス)

知識継承・教育

ベテランの退職に伴う、知識継承を実現すること 知識データベース

技術者・作業員を教育すること ウェアラブル・xR

インシデント発生時に、原因と対策を検討するこ

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3.3 最新技術の共有 活用シーン/要素技術・サービスと、導入状況の整理

⚫ 個別事例を、シーン、要素技術・サービスごとにマッピング、進捗に応じて「導入事例あり」「実証段階」の導入状況とともに整理した。

⚫ 導入まで到達している事例がある一方で、実証段階で終了しているプロジェクトが多数存在しており、これらのボトルネックを明らかにすることが導入促進のために重要であると推察される。

施設・設備(施工)

メンテナンス(点検)

プラントオペレーション(保守)

シーン 要素技術・サービス

知識データベースの活用

ウェアラブル/AR・VRによる作業アシスト

センサーデータ/ソフトセンサー

セキュリティ強固な

データベースの構築

安全行動サポート

目視点検のデジタル化

異常検知・故障予兆検知

ドローン・5G等を活用した遠隔監視・遠隔操作

プラント運転完全自動化

ロボットによる完全自動点検

自動設計・調達・施工

デジタルツイン・仮想化

タブレット等による状態常時可視化/情報共有

データ取得・蓄積(情報の電子化)

データの可視化・活用(教育・技術伝承・業務効率化)

データの処理・高度化(異常予兆検知・遠隔操作・自動化)

●画像による劣化判別●肉厚の摩耗予測

●動的な危険エリアへの侵入検知

●作業の工程指示アシスト●物体認識による情報可視化●音声対話による作業アシスト

●ドローンによる高所の劣化判別

●音声による文字入力

●インシデント発生時の情報提示●日報の自動要約

●シミュレーション上でのパラメータ最適化

●巡回経路の最適化

●自動運転パラメータの最適化

●導入事例あり●実証段階

●AIを活用したソフトセンサーの開発

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3.3 最新技術の共有 AIを活用したプラント保安の最新技術活用事例の課題整理

⚫ プラント保安の、特にAIを活用した最新技術の活用事例に焦点を絞り、深堀り分析を実施した。

⚫ ヒアリングからAI導入の事例とその課題を整理した。

⚫ AI導入の課題は、責任の所在や費用対効果算出が困難等の「事業面」、説明可能性や安全性の担保に関わる「システム面」、そしてAI自体の信頼性に関わる「AIモデル面」に大きく分類できる。

分類 課題の種類 内容 プラントに特有

事業面 責任の所在 AIが間違えた場合の責任の所在が明らかになっていない △

経済性 AI導入が利益につながらない

AI導入によるコストの削減効果が試算できない ○

AIへの理解 AIが原理的に100%の精度は実現できないという点の理解が進んでいない(主にプラント事業者側) △

システム面 継続性 システムの環境が変化した場合、AIモデルを更新する必要がある

AIモデルの更新のために継続的にデータを収集する必要がある

説明性 AIの判断を参考にして作業員が対応を取る際に、AIの判断がブラックボックスで対応に移せない ○

安全性 「(現時点の技術では)AIが人間の代替はできない」という前提のもとにシステム構築をする必要がある △

AIは原理的に100%の精度は実現できない。AIが間違えた場合のシステム的・物理的なフェイルセーフ機構が必要になる

現行の保安基準が人間が実施する前提となっている ○

AIモデル面 データ品質 不正データの混入(意図的、無意識的)

タグ付け時のデータに対する知識不足

データ更新の履歴がメンテされていない

データ不足に起因する網羅性実現の難しさ

環境適合性 学習データの範囲のみでなく、ある程度の拡張性を持つ必要がある

○:すでに表面化している課題△:今後表面化する課題

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(参考)安全の判断主体

認知 判断

level0

技術レベル

データ取得

データ取得+蓄積

可視化

過去データ分析

全自動化

行動

判断自動化+一部行動

予測

level1

level2

level3

level4

level5

判断自動化

(安全)判断 行動処理

処理の流れ

AI機能として安全を担保(安全機能を含むAI代替)

物理モデルとして安全を担保(安全環境下でのAI代替)

人間系として安全を担保(人を支援するAI)

保安におけるAI導入パターン(Level4で3分割)

ホワイトボックスAI

物理モデル

人間

(自動)制御

ブラックボックスAI

AIによる情報処理

物理モデル

AI

人間

AI

処理

AI導入

⚫ プラント事業におけるAI導入においては、安全の判断主体に依って、導入ハードルが大きく異なる。

⚫ 当面は安全は人が判断する前提での導入が中心になるが、部分的/長期的には危険度を判断しつつもAIによる安全判断が進むと考えられる。

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⚫ 信頼性評価ガイドラインの作成

➢ AIを活用するプラント事業者と製造するIT事業者、および監督する公的な組織が参照できる、信頼性評価のガイドラインを作成。

➢ ガイドラインによる信頼性評価を可能にすることで、事業者間・組織間での共通認識をつくることができる。

➢ 信頼性評価が適切に行える状態になることで、AIにおける信頼性の課題を克服し、導入を促進することができる。

3.3 最新技術の共有 AI導入の主要な課題と対応策

⚫ ヒアリング結果より、AI導入の主要なボトルネックとして、「費用対効果が算出困難」、「実証で十分な成果がでない」、「信頼性評価が困難」という点が挙げられる。

⚫ 導入の課題となる主要なボトルネックへの対応策として、事例集、および信頼性評価ガイドラインの作成が有効。

⚫ AI導入が進まない背景

➢ AIはプラント保安の効率・性能を高める可能性を有しているが、特に安全面について、AIの安全な活用のための指針や方法が提示されていないこともあり、PoCから本番運用に移行できていない。

➢ プラント保安にAIを導入する際の課題に対する考え方が整理されていない。

➢ 導入側(プラント事業者)と開発側(AIベンダ)との間でAIの品質に関する共通の評価基準がない。

⚫ 主要なボトルネック

➢ AIの費用対効果を適切に見積もることができない。

➢ 実証で十分な成果がでない。

➢ AIの信頼性を評価することが困難。

対応策背景整理とボトルネックの特定

⚫ 事例集の作成

➢ AI導入に関するヒアリングを行い、その中で特に成果を上げたプロジェクトを整理してまとめた「AI活用事例集」を作成。

➢ 成果のみではなく、プロジェクトの特徴を複数の観点/軸で整理することで、導入における成功のポイントを紹介する。

➢ 事例集を参考にすることで、事業面に関わる課題を解決し、効率的にAI導入を進めることができることを期待。

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事例集の構成イメージ 事例集で行う整理のイメージ

⚫ AI導入に関するヒアリングを行い、その中で特に成果を上げたプロジェクトを整理してまとめた「AI活用事例集」を作成することが有益と考えられる。

⚫ 成果のみではなく、プロジェクトの特徴を複数の観点/軸で整理することで、導入における成功のポイントを紹介する。

⚫ 事例集を参考にすることで、事業面に関わる課題を解決し、効率的にAI導入を進めることができることを期待。

3.3 最新技術の共有 AI導入の課題への対応策(1)事例集の作成 ~構成イメージ~

1. 概要

◼ プラントにおけるAI導入の動向・課題(事業面/システム面/AIモデル面の課題)

◼ 本事例集の位置付け(「事業面」の課題に対応、ガイドラインとの相補関係)

◼ 本事例集におけるAI導入のパターン

2. AI導入の効果

◼ オペレーションにおける効果

◼ 収益性向上

◼ 安全性向上

◼ メンテナンスにおける効果

◼ 効率化

◼ 信頼性向上

3. AI導入の決め手

◼ (各社のAI導入の意思決定に至ったプロセスをヒアリングに基づいて整理。「事業面」の課題の乗り越え方をパターン化)

4. AI導入個別事例

◼ (各社の事例をヒアリングに基づいて整理。実証段階/実装段階)

5Gデジタルツイン

異常検知

ドローン・ロボット

xR・ウェアラブル

センサー・画像

人間物理モデル

ホワイトボックス

AI

ブラックボックス

AI

データの不足

信頼性経済合理性

技術的難易度

法令対応

プラント運転自動化

点検の効率化・自動化

CBM・RBMの実現

プラント遠隔操作

技術継承

要素技術

安全の判断主体

導入における課題

活用目的・目指す姿

高所・危険エリアでのドローンによる点検作業代替実施主体〇〇

▼概要説明高所や危険エリアなど、作業員の確認が困難な場所における点検作業をドローンを活用して代替する。取得した画像から、異常検知により、高所の外面にひびわれ・腐食等がないことを確認する。(通常時・緊急時)

導入の効果見込み

• 目視点検に要していた年XXX人・時間を○%削減• 高所作業による労災の発生可能性のゼロ化

AI導入個別事例の構成

◼ 事例概要

◼ 要素技術

◼ 安全の判断主体

(AIが担う安全上の機能)

◼ 導入における課題

(課題解決プロセス/AI導

入の決め手)

◼ 活用目的・目指す姿

◼ 導入の効果見込み

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3.3 最新技術の共有 AI導入の課題への対応策(1)事例集の作成~費用対効果の算出~

⚫ AI技術の導入効果が期待される先として、大きく「製品の生産」、「事故の更なる防止」 、「検査(点検)」の3つを検討する。

⚫ 費用対効果の試算においては、特に 「製品の生産」、「検査(点検)」に注目。

◼ 法定、及び定期自主「検査(点検)」での導入◼ 目視検査の代替・支援

◼ (ドローンでの画像取得(足場設置の削減・時間短縮))◼ 腐食、損傷、変形、汚れ及びその他の異常がある画像の抽出(時間短縮)◼ 保温材下腐食(Corrosion Under Insulation:CUI)発生個所の推定◼ …

◼ 肉厚測定の代替・支援◼ 肉厚の推定◼ …

◼ 「製品の生産」での導入

◼ 立上げ時等での制御の最適値・最適手順の導出◼ 機器の不調・故障等の予兆検知◼ 操作・設定等のヒューマンエラー検知◼ …

◼ 「事故の更なる防止」での導入

◼ 機器の不調・故障等の予兆検知◼ 操作・設定等のヒューマンエラー検知◼ …

⚫ 「製品の生産」と重複した技術導入で実現可能と考えられる。

⚫ 「重大事故の防止」、「保険料の削減(保険会社との協力が不可欠)」等が効果として考えられるが、現時点で定量的な評価は困難と考えらえる。

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3.3 最新技術の共有 AI導入の課題への対応策(1)事例集の作成~費用対効果の算出~

⚫ 「製品の生産」に係るAI導入の効果試算枠組みの案を以下に示す。

⚫ AI導入前、導入後それぞれで効果の指標を算出し、その結果を比較することでAI導入効果を試算する。

試算例1 試算例2 試算例3

AIの役割 立上げ時等での制御の最適値・最適手順の導出

機器の不調・故障等の予兆検知 操作・設定等のヒューマンエラー検知

AI導入の利点・期待される効果

製造開始時の、温度上昇調整の時間短縮

計画外停止によるダウンタイムの削減 原因究明等によるダウンタイムの削減

効果の指標 製造品の生産額 製造品の生産額 製造品の生産額

指標の算出(現状)青:AI導入により変化する量

製造時間=プラント運営時間ー調整時間

生産額=製造時間×製造品単価

製造時間=プラント運営時間ー(計画外停止数×復旧時間/回)

生産額=製造時間×製造品単価

製造時間=プラント運営時間ー(ヒューマンエラー数×復旧時間/回)

生産額=製造時間×製造品単価

指標の算出(将来)青:AI導入により変化する量

製造時間=プラント運営時間ー(計画外停止数×復旧時間/回)ー(計画停止数×対処時間/回)

生産額=製造時間×製造品単価

特にプラントの実態を考慮し設定する量青:AI導入により変化する量

プラント運営時間、製造品単価調整時間

プラント運営時、製造品単価計画外停止数復旧時間/回、対処時間/回

プラント運営時、製造品単価ヒューマンエラー数復旧時間/回

備考 • AI利用の場合の安全性担保の考え方の整理が別途必要。➢利用方法とその安全性の整理(PID制御変数の算出として利用、フィードフォワード制御として利用、等)

➢フィードバック機構、インターロック機構との組み合わせ方の整理

• AI導入の場合、計画外停止数は運転中での軽微な修繕・調整等で減少の余地ありと想定。

• 復旧時間>対処時間とし、計画停止数は増加と想定。

• 定修後や立上げ時といった「初めて・変更・久しぶり」の作業などにおける人的ミスに対して検討。

• AI導入の場合、復旧時間はほぼ0と想定。

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3.3 最新技術の共有 AI導入の課題への対応策(1)事例集の作成~費用対効果の算出~

⚫ 「検査(点検)」に係るAI導入の効果試算枠組みの案を以下に示す。

⚫ AI導入前、導入後それぞれで効果の指標を算出し、その結果を比較することでAI導入効果を試算する。

試算例1 試算例2 試算例3

AIの役割 腐食、損傷、変形、汚れ及びその他の異常がある画像の抽出

保温材下腐食(Corrosion Under Insulation:CUI)発生個所の推定

肉厚の推定(ソフトセンサー)

AI導入の利点・期待される効果

現場・画像の目視確認数の削減 測定個所・範囲の削減(最小限の測定個所選定)

測定個所の削減(最小限の測定個所選定)

効果の指標 外観検査時間(配管等) CUI測定の時間・費用 肉厚測定の時間・費用

指標の算出(現状)青:AI導入により変化する量

点検箇所数×目視時間/単位+その他の移動時間

(CUI測定の時間)測定個所数×範囲×測定時間/単位

(CUI測定の費用)測定個所数×範囲×測定費用/単位

(肉厚測定の時間)測定個所数×測定時間/1箇所

(肉厚測定の費用)測定個所数×測定費用/1箇所指標の算出

(将来)青:AI導入により変化する量

ドローン等による画像取得時間+画像枚数×確認時間/単位

特にプラントの実態を考慮し設定する量青:AI導入により変化する量

点検箇所数目視時間/単位確認時間/単位

測定時間/単位測定費用/単位

測定時間/1箇所測定費用/1箇所

備考 • 完全代替:画像枚数=異常個所数

• AI導入の際は、ドローン等の画像取得技術の利用を前提。

• 完全代替:測定個所数=0

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1. はじめに

◼ ガイドラインの目的及び制定の経緯

◼ 他のガイドラインとの関係

◼ ガイドラインにおける用語

2. プラント分野におけるAI信頼性評価(安全性評価/リスク評価/品質保証)の基本的考え方

◼ プラント分野におけるAI活用のユースケース

◼ 本ガイドラインの対象とするユースケース

◼ ユースケースにおけるAIの特徴・位置づけ(AI活用を検討する際に前提として踏まえておくべきAIの性質にも言及)

◼ 本ガイドラインの適用方法

◼ プラント分野におけるAI信頼性評価の要求事項

◼ 利用時品質: リスク回避性、有効性、(公平性)、その他

◼ 外部品質:リスク回避性、AIパフォーマンス、(公平性)、その他

◼ 内部品質:データの網羅性、その他

◼ その他の留意点

◼ 保証レベルの合意/知財の取扱い(→契約ガイド)/社内決裁プロセス・ガバナンス体制/・・・

3. プラント分野におけるAI信頼性評価の検討例

◼ 画像診断による腐食検出/運転パラメータ最適化/・・

※評価に適用可能な具体的技術等は、別ガイドを参照

ガイドラインの構成例 ガイドラインの位置づけ

本ガイドライン範囲 品質保証の観点

⚫ AIを活用するプラント事業者と製造するIT事業者、および監督する公的機関が参照できる、信頼性評価のガイドラインを作成することが有益と考えられる。

⚫ ガイドラインによる信頼性評価を可能にすることで、事業者間・組織間での共通認識をつくることができる。

⚫ 信頼性評価が適切に行える状態になることで、AIにおける信頼性の課題を克服し、導入を促進することができる。

3.3 最新技術の共有 AI導入の課題への対応策(2)信頼性評価ガイドラインの作成

開発側(AIベンダ)

導入側(プラント事業

者)

QA4AIガイドライン

システム面 AIモデル面

想定読者

適用対象

事業面

プラント保安AI活用

事例集(仮)

CustomerExpectation

SystemQuality

ProcessAgility

ModelRobustness

DataIntegrity

産総研ガイドライン

利用時品質 外部品質 内部品質

取込

取込

安全性

ガイドラインでは、事業判断に属する観点には言及しない。システム面の評価軸、特に安全性に関連する事例について、事例集への参照情報・簡易的な事例説明のみ記載する。

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4.防爆機器の認証についての調査

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4.1 調査背景

<調査事項>

◼指定外国検査機関制度(Fast Track Process)について

◼指定外国検査機関制度の日本での活用状況について調査する。

◼日本の防爆規格とIEC規格においてどのような差分があるのかについて調査する。

◼オーストラリア、ニュージーランドがIECExシステムをそのまま採用できている理由について調査する。

◼防爆型式検定業務について

◼現在は日本・TIISおよびエヌ・シー・エス、イギリス・CML、カナダ・CSA UK、オランダ・DEKRAの5社が登録型式検定機関として登録されている。そこで、本制度の活用実績について調査を行う。各申請件数、申請から合格までの期間等を調査する(その際、海外での審査内容および審査期間との違いも検証する)。

⚫ 高圧ガスや危険物を扱うプラントにおいては法令に基づいて危険区域を設定する必要があり、危険区域内で使用する電子機器は厚生労働大臣の登録を受けた機関による防爆検定に合格したものでなければならない。この防爆検定制度の国際規格であるIECExシステムについて調査を行う。

⚫ また、IECExシステムの一つにFast Track Processというものがある。Fast Track Processとは、世界各国の検定(認証・試験)の基準となる規格はIEC規格とは限らず、国ごとに規格に差異(National Differences)があるため、その場合はある要件を満たした外国の機関が発行した証明書を受け入れて、自国の規格に合わない部分についてのみ追加の試験・評価を行い、自国で有効な適合証(検定合格証)を発行するというものである。これによって、外国製品に対する検定所要時間が短縮されることが期待されることから、この仕組みをFast Track ProcessまたはFast Track Pathと呼んでいる。

⚫ 以上を背景として次に記す項目について調査を行う。

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4.2 調査実施事項

◼文献調査

◼関連法令(電気機械器具防爆構造規格、労働安全衛生法、機械等検定規則、ほか関連政省令、通達等)、指針

◼ IECEx Bulletin, IECEx 02 等

◼ インタビュー調査

年月日 インタビュー対象 分類

2019/12/25 T社 防爆機器メーカー

2020/01/16 U社 登録型式検定機関、ExCB

2020/01/21 V社 防爆機器メーカー

2020/01/30 W社 防爆機器メーカー

2020/01/31 X社 防爆機器メーカー

2020/02/03 Y社 登録型式検定機関

2020/02/04 Z社 登録型式検定機関、指定外国検査機関、ExCB

年月日 インタビュー対象 分類

2020/02/19 AA社 防爆試験認証機関、ExCB

2020/02/20 AB社 IECExの中央事務局

2020/02/20 AC社 非政府の標準化団体

2020/02/20 AD社 防爆試験認証機関、ExCB

<国内>

<国外>

⚫ 文献調査およびインタビュー調査(国内外)を実施した。

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4.3 調査成果:指定外国検査機関制度の日本での活用状況

⚫ 日本における指定外国検査機関制度とIECExシステムの意味でのFast Track Processは同じではない。前者は実機での検査をしないという意味でのExTR(IECEx Test Report)の受け入れを指定外国検査機関に絞るもの、後者は同様の意味でのExTRの受け入れをすべてのExCB(Ex Certification Body)に適用するもの。

⚫ IECExシステムの意味でのFast Track Processは日本では活用されていない。

⚫ 指定外国検査機関制度には今までは活用実績がある。ただし4つの登録型式検定機関はIECのExCBでもあり、IECEx制度が世界的に進んでいる現状を踏まえると、現在の日本における指定外国検査機関制度については課題がある。

<日本の指定外国検査機関制度の特徴>

◼型式検定を申請する際に指定外国検査機関であるExCBが発行したExTRについて、それを「当該機械等の構造が法第42条の厚生労働大臣が定める規格に適合していることを厚生労働大臣が指定する者が明らかにする書面」として取り扱うことが可能となっており、同一内容の実機による検査を実施することなく合否の判断が可能となっている。

◼上記について、実際に活用されている事例もあるが、指定外国検査機関で申請を完結させる場合と、指定外国検査機関によるExTRを国内の検査機関に出し、試験なしで国内合格証を出すという運用がなされている場合がある。

◼本来のIECExシステムのFast Track Processの意図は、ExCBであればどの機関が出したExTRであっても信頼して受け入れ、試験は1回で済ませようというものであるが、日本においてはExTRの受け入れが「指定外国検査機関」に絞られている。

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4.3 調査成果:日本の防爆規格とIEC規格においてどのような差分があるのか

⚫ 日本のnational differencesについてはIECEx Bulletinに網羅的に記載がある。

⚫ 一般的な相違として特徴的なものは、例えば日本においては組み上がった防爆機器が型式検定の対象であるので、機器の構成要素である個別のコンポーネントやシステムだけに対する防爆機器としての検定(合格証取得)はできないことである。IECExシステムではExコンポーネント等についても機器認証されており、その機器を使用した製品の活用が進んでいるが、日本ではあくまで防爆機器に組み込まれた一部の部品として取り扱われ、機器全体が検定の対象となる。

⚫ なお、平成27年8月31日付けで厚生労働省より発出された基発0831第2号通達により、型式検定機関が「国際整合防爆指針2015」に基づいて試験等を行い認証書が発行された「Exコンポーネント等」を組み込んだ電気機械器具の検定申請にあたっては、当該Exコンポーネント等については当該型式検定機関が保有する試験データや図面等を有効活用することが可能となっている。

IECEx Bulletin edition 5.0 2016-07記載のnational differencesのうち該当箇所を和訳

防爆コンポーネント、防爆ケーブルグランド、又は同様のコンポーネントに対して国家証明書は発行されない。上記コンポーネントは、認証の為に電気機器に組み込まれ、電気機器の一体部品として試験・評価される。但し、認定を受けた機関(労働安全衛生法での正式名称は登録型式検定機関)は、上記コンポーネントに対する独自の証明書を発行し、その証明書と関連する試験データを上記コンポーネントが組み込まれた電気機器の試験・評価に利用することができる。認定を受けた機関が上記コンポーネントの証明書を発行する場合は、防爆機器に関する国家試験制度に基づく証明書は発行されないが、試験・評価の実施において指針に従わなければならない。

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4.3 調査成果:オーストラリア、ニュージーランドがIECExシステムをそのまま採用できている理由

⚫ オーストラリアは政府の方針としてIECExシステムを受け入れ、主導している。同国は当初から主要国としてIECExシステムの立ち上げに関与し、随時IECExシステムに関する意見を提案し認められるなど、現在でも積極的にIECExシステムの維持およびIEC規格と国内規格のharmonizeに努力している。

⚫ オーストラリアでは原則的に、IECEx認証品であれば自由に使用することができ、別途国内合格証を取得する必要はなく、また上記認証品についてIECEx番号以外の何らかの登録番号等が付与されることもない。

⚫ オーストラリア以外には、ニュージーランド、シンガポール、インド、およびイスラエルの4ヶ国でnational differencesが存在しない(各国での認証を代替するものとしてIECEx認証を使うことが法的に認められている)。

<オーストラリアの特徴>

◼ IECEx構想の設立メンバー国

◼従来からIECExに則った規格の導入を志向

◼ 1960年代からのP-003 Scheme、1990年代からのP-008 Scheme(AUS Ex Scheme)は問題なく運用されていたが、オーストラリアのIECExへの参加が決定したことで見直され、2001年にはオーストラリア・ニュージーランド共通の新認証スキームであるANZex Schemeを導入、2009年10月には既存のオーストラリア・ニュージーランド国内規格の代替としてよりIECに則った規格(AS/NZS 60069.10.1-2009、AS/NZS 60069.14-2009、AS/NZS 60069.17-2009)を発表

◼ IEC規格更新時の対応

◼委員会での検討を経て通常3ヶ月~6ヶ月後にオーストラリア国内で適用される(自動的にオーストラリア規格に反映されるわけではない)

◼防爆に関するコンサルタントが多く存在

◼プラント等における防爆機器の配置や設置に関する助言、現場での配線・ケーブルグランドの適切な取り扱いなど、インテグレーションに関するコンサルティングを実施し、事業者の自主保安を支援

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4.3 調査成果:防爆型式検定の活用実績

⚫ 登録型式検定機関が5機関となったことで選択肢が増え申請者にとって利便性が向上したという共通認識がある。料金や検定に要する期間を考慮して申請先を選択する、あるいは申請品の防爆構造に応じて申請先を変えるといったように、より柔軟に申請先を選ぶことのできる環境整備が進んでいる。

⚫ 日本国内登録型式検定機関への申請数については、特定の機関への申請数が多い。国際整合技術指針に基づく申請は海外所在の登録型式検定機関に申請する例が増加している。

⚫ 検定に要する期間は申請品の内容や、添付されている書類の質等に応じて変動する。短ければ1週間程度、平均的には3ヶ月程度である。ExTRが有効活用されると合格までの期間が短縮される場合がある。

⚫ 申請者と登録型式検定機関がともに重要視していたのは認証(合格)されるまでの期間(速さ)である。ExTRの適切な活用や、申請者と登録型式検定機関のコミュニケーションによって、使用者のニーズに応える安全な製品を素早く市場に投入することが求められている。

<国内の型式検定業務の状況>

項目 内容

検定に係る手数料 型式検定については、価格表が公開されている(おおよそ1型式あたり30万円程度)ExCBとしてIECEx認証を出す場合には、数百万円から一千万円程度、認証に必要な工数に基づいてケースバイケースで決定

検定に要する期間 検定に要する典型的な期間というものはなく、申請品の規模、部品の数などに依存してケースごとに異なる概ね1週間~3ヶ月、国内・海外(オーストラリア)での大きな差異なし

検定の申請数 特に構造規格に基づく申請について、特定の機関への申請数が多い上記以外の機関への申請は、ほぼすべて国際整合技術指針に基づくもの

その他 登録型式検定機関が5機関となったことで選択肢が増え、申請者にとって利便性が向上している

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4.4 今後の課題

⚫ 防爆機器の認証についての調査の今後の課題として以下が考えられる。

✓ 登録型式検定機関が一国内で複数存在することの有益性に関する検討

✓ 登録型式検定機関の間での規格の解釈や運用等に関する情報交換

✓ IECExをオーストラリアのように日本に導入する場合の課題の整理

✓ IECExシステムを先導しているドイツや英国などが、オーストラリア同様のシステムまで進んでいない現状の諸課題の把握(これによって、日本に導入する場合の対応が検討可能となる)

✓ 機器を使用する現場で適切な設置や管理を可能とする仕組みの検討(例えば、オーストラリアでみられたコンサルティング会社(個人を含む)の活用等)

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5.総括

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5. 総括

⚫ 本事業では、会議の開催、プラントIT化に向けた調査、防爆機器の認証についての調査を実施した。

⚫ 会議の開催では、分野横断の「スマート保安官民協議会」および分野別の部会の実施を念頭に、会議体の構成やテーマについて検討した。

⚫ プラントIT化に向けた調査では、ロードマップ策定、規制・ルール、最新技術の観点から、ヒアリング等に基づいて情報を収集・整理した。

⚫ 防爆機器の認証についての調査では、指定外国検査機関制度の日本での活用状況、日本の防爆規格とIEC規格における差分、オーストラリア・ニュージーランドがIECExシステムをそのまま採用できている理由、防爆型式検定の活用実績について調査した。

⚫ 今後は、本事業で収集・整理した情報を踏まえ、 「スマート保安官民協議会」および分野別の部会において実質的な議論を展開し、新技術の本格的な実装・普及を加速していくことが必要である。

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