経路の繋がりに基づく街路空間の構成と歩行者の印象評価に ......はs.kostof...

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第1章 序論 1.1 研究の背景と目的 街路環境は、 道そのものの形態だけでなく、 周囲の建築、 行き 交う車やそこで見られる人々の活動など、 多様な要素によって形成 されており、 人は多くの事象をそこから感じ取っている。 我々が街路 空間を歩く時、 それは各シーンの断片的な経験としてではなく、 そ れらの集合体として、 つまり一連のシークエンシャルな経験として知 覚される。 そのため、 同じ大通りに至るのでも、 例えば小さな路地 を抜けてそこに至るのと、 見通しの良い大通りを通ってそこに至るの では、 受ける印象が異なるように、 我々は前後の経験や、 それらと の関係によって環境を知覚していると言える。 そして道を歩く時の緊 張感や高揚感は、 その場の環境だけでなく、 過去の経験に基づく この多様な「変化」 によってもたらされるのではないかと考えた。 ますます多様化・ 複雑化する現代社会において、 より良い都市空 間を形成するためには、 個々の要素のデザインに留まらず、 要素ど うしや全体との関係性を考慮してデザインすることが求められている。 そのため本研究では、 街路空間の構成要素の地理的情報を数 理的に分析するだけでなく、 その環境評価をシークエンシャルなも のとして捉え、 それらが歩行者にどのように知覚され、 経路選択に 影響を与えているのかを明らかにする。 景観を点や線ではなく、 エ リア一体の面として捉えてその構造を読み解くことで、 より良い街路 空間をデザインするヒントを抽出することを目的としている。 1.2 研究の対象と方法 本研究では具体的に京都市街地の性質の異なる 2つのエリアを 対象として分析を行う。 まず、 対象エリアの街路空間の構成につい ての把握を行う。 しかし、 歩行者が街路空間を歩いて経路を選択 するという行為はそのような静的で、 客観的なものではなく、 動的 で主観的な評価を伴うものである。 そこで、 多くの被験者に自由に 経路を選択しながら歩いて街路空間の印象を評価をしてもらう「経 路選択歩行実験」 による検証・ 分析を行う。 1.3 既往研究と本研究の位置付け まず街路空間の構成に関する客観的記述に関する研究にとして は S.Kostof による街路の形状に関する分類や分析を行った研究 1) や、 J.Massengale や V.Dover による街路空間を平面、 断面的に 捉えた分析・ 研究などが挙げられる 2) 。 また、 国内では、 街並みを ミクロな物理的要素に分解し記号として記述することで、 様相の構 成要素を明示的にとらえようとした門内の研究 3) がある。 次にシークエンスに基づく歩行空間の研究としては、 東京・ 表参 道の街路空間の分節や、 キャンパス内経路における圧迫感の増減 について調べた大野らの認知研究 4)5) がある。 また、 船越らは歩行 実験を通して、 街路の空間構成要素の分類し、 参道空間の空間 把握に関する研究 6) を行っている。 D.Appleyard らは車のドライバー が運転中に注目した要素を記述させ、 多くのドライバーが共通して 記述したものを取り出す研究 7) を行っている。 さらに街路の記述方法という点では、 北は経路歩行実験により、 歩行者の主観的な事象から都市の「様相」 という概念を数理的に 分析した 10) 。 また藤原も同じく歩行実験により嵐山の地域資源の解 読をした研究を行っている。 本論は、 街路空間の構成要素について客観的な評価だけでな く、 繋がりの観点から見たその構成が歩行者の動的で主観的な印 象に与える影響についての分析を行う。 これらの多角的な視点に基 づき、 我々が街路空間においてどのような事象の影響を受けて経路 経路の繋がりに基づく街路空間の構成と歩行者の印象評価に関する研究 ―京都市街地における経路選択歩行実験を通して― A study on composition of streets and pedestrian's impression based on connection of routes -A case study of walkthrough experiments of route seletction in Kyoto urban area- 建築学専攻 建築環境計画学講座 三浦研究室 村田裕介 選択を行っているのかということについて、 経路の繋がりに着目する ことで解明していく。 以上の分析により、 そこで活動する人間に豊か な経験をもたらす街路空間をデザインするための要素を抽出する。 第2章 街路空間の評価に関する概念の整理 2.1 人間-環境系における多層性と階層性 門内は、 人間が環境を知覚するときその環境の重層性について、 人間-環境系という視点から、 多様な環境の概念は、 ①自然環境、 ②社会・ 文化環境、 ③構築環境、 ④情報環境の 4つに分類するこ とができ、 「人間はいくつものレベルの環境に重層的に包まれてい る。 12) 」 と述べている。 街路空間の環境もこれに当てはまる。 さらに人間-環境系において考慮すべき重要な特性の1つがミク ロな環境からマクロな環境に至る階層性であり、 階層間にダイナミッ クな相互作用があるという点である。 建築と、 街路、 都市の関係な どはその典型といえる。 2.2 環境評価について 環境評価に関して、 多層的な環境とそこで行動している人間を 互いに影響を及ぼしあう分けることのできない構成単位として考え、 その関係を探ることを目的とした環境心理学の概念を導入する。 E.H.Zudeらは景観評価には①専門家パラダイム、 ②心理物理的パ ラダイム、 ③認知的パラダイム、 ④経験パラダイムの 4つがあるとし ている。 街路空間における歩行者の環境評価は、 「環境の中から 情報を選択し、 過去の経験や目的を踏まえて情報を処理し、 意味 を見出す過程 13) 」 とする認知的パラダイムに該当する。 そしてそれ に伴う結果として経路が選択される。 2.3 ネットワークを用いた都市の分析 都市における対象の関係性を定量的に評価し、 その構造的な特 性を明らかにするものとして、 Bill Hillerによって提唱された Space Syntax理論がある。 しかし、 この分析手法はグリッド状の都市や長 い直線に沿って発達した都市に対して有効な手法であり、 異なる 文化圏や形態の都市に対しては不適である。 これに対し、 N.Napongは、 「ネットワークパターンモデル」 という グリッド状の都市だけでなく曲線状の街路にも適用できる詳細な分 析モデルを提唱している。 その手法の特徴として、従来の「軸性図」 と異なり、 交差点(ノード) と街路セグメント(エッジ) といったより局 所的な街路要素を用いている、 という点がある。 2.4 環境評価における動的モデルの構築 以上の概念を総合的に捉え、 本論ではまず、 街路を分岐点(ノー ド) と街路セグメント(エッジ) とに分割し、 街路環境の捉え方につ いてノードを対象とした Fig.1のような動的モデルを作成した。 ノード V の印象 I は、 その周囲の環境によってのみ決まるものではなく、 過去に通った経路の経験 I k=1,2,…,n -1 や、 次の経路選択に おける目的の総体として決定される。 さらに環境とは、 歩行者の主 観的な視点から見た隣接する分岐点の環境や奥への見えなども含 むものとしている。 本論では、 これらの総体として得られる印象 I 分岐点 V のポテンシャルと表現する。 Vn Vn-2 Vn-1 Vn I n I n-2 I n-1 I n 経験 環境 目的 環境 Fig.1 認知的パラダイムによる動的モデル

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  • 第 1章 序論1.1 研究の背景と目的

    街路環境は、 道そのものの形態だけでなく、 周囲の建築、 行き

    交う車やそこで見られる人々の活動など、 多様な要素によって形成

    されており、 人は多くの事象をそこから感じ取っている。 我々が街路

    空間を歩く時、 それは各シーンの断片的な経験としてではなく、 そ

    れらの集合体として、 つまり一連のシークエンシャルな経験として知

    覚される。 そのため、 同じ大通りに至るのでも、 例えば小さな路地

    を抜けてそこに至るのと、 見通しの良い大通りを通ってそこに至るの

    では、 受ける印象が異なるように、 我々は前後の経験や、 それらと

    の関係によって環境を知覚していると言える。 そして道を歩く時の緊

    張感や高揚感は、 その場の環境だけでなく、 過去の経験に基づく

    この多様な「変化」 によってもたらされるのではないかと考えた。

    ますます多様化・ 複雑化する現代社会において、 より良い都市空

    間を形成するためには、 個々の要素のデザインに留まらず、 要素ど

    うしや全体との関係性を考慮してデザインすることが求められている。

    そのため本研究では、 街路空間の構成要素の地理的情報を数

    理的に分析するだけでなく、 その環境評価をシークエンシャルなも

    のとして捉え、 それらが歩行者にどのように知覚され、 経路選択に

    影響を与えているのかを明らかにする。 景観を点や線ではなく、 エ

    リア一体の面として捉えてその構造を読み解くことで、 より良い街路

    空間をデザインするヒントを抽出することを目的としている。

    1.2 研究の対象と方法本研究では具体的に京都市街地の性質の異なる 2つのエリアを

    対象として分析を行う。 まず、 対象エリアの街路空間の構成につい

    ての把握を行う。 しかし、 歩行者が街路空間を歩いて経路を選択

    するという行為はそのような静的で、 客観的なものではなく、 動的

    で主観的な評価を伴うものである。 そこで、 多くの被験者に自由に

    経路を選択しながら歩いて街路空間の印象を評価をしてもらう「経

    路選択歩行実験」 による検証・ 分析を行う。

    1.3 既往研究と本研究の位置付けまず街路空間の構成に関する客観的記述に関する研究にとして

    は S.Kostof による街路の形状に関する分類や分析を行った研究 1)

    や、 J.Massengale や V.Dover による街路空間を平面、 断面的に

    捉えた分析・ 研究などが挙げられる 2)。 また、 国内では、 街並みを

    ミクロな物理的要素に分解し記号として記述することで、 様相の構

    成要素を明示的にとらえようとした門内の研究 3)がある。

    次にシークエンスに基づく歩行空間の研究としては、 東京・ 表参

    道の街路空間の分節や、 キャンパス内経路における圧迫感の増減

    について調べた大野らの認知研究 4)5)がある。 また、 船越らは歩行

    実験を通して、 街路の空間構成要素の分類し、 参道空間の空間

    把握に関する研究 6)を行っている。 D.Appleyard らは車のドライバー

    が運転中に注目した要素を記述させ、 多くのドライバーが共通して

    記述したものを取り出す研究 7)を行っている。

    さらに街路の記述方法という点では、 北は経路歩行実験により、

    歩行者の主観的な事象から都市の「様相」 という概念を数理的に

    分析した 10)。 また藤原も同じく歩行実験により嵐山の地域資源の解

    読をした研究を行っている。

    本論は、 街路空間の構成要素について客観的な評価だけでな

    く、 繋がりの観点から見たその構成が歩行者の動的で主観的な印

    象に与える影響についての分析を行う。 これらの多角的な視点に基

    づき、 我々が街路空間においてどのような事象の影響を受けて経路

    経路の繋がりに基づく街路空間の構成と歩行者の印象評価に関する研究―京都市街地における経路選択歩行実験を通して―

    A study on composition of streets and pedestrian's impression based on connection of routes-A case study of walkthrough experiments of route seletction in Kyoto urban area-

    建築学専攻 建築環境計画学講座 三浦研究室 村田裕介

    選択を行っているのかということについて、 経路の繋がりに着目する

    ことで解明していく。 以上の分析により、 そこで活動する人間に豊か

    な経験をもたらす街路空間をデザインするための要素を抽出する。

    第 2章 街路空間の評価に関する概念の整理2.1 人間-環境系における多層性と階層性

    門内は、人間が環境を知覚するときその環境の重層性について、

    人間-環境系という視点から、 多様な環境の概念は、 ①自然環境、

    ②社会・ 文化環境、 ③構築環境、 ④情報環境の 4つに分類するこ

    とができ、 「人間はいくつものレベルの環境に重層的に包まれてい

    る。 12)」 と述べている。 街路空間の環境もこれに当てはまる。

    さらに人間-環境系において考慮すべき重要な特性の1つがミク

    ロな環境からマクロな環境に至る階層性であり、 階層間にダイナミッ

    クな相互作用があるという点である。 建築と、 街路、 都市の関係な

    どはその典型といえる。

    2.2 環境評価について環境評価に関して、 多層的な環境とそこで行動している人間を

    互いに影響を及ぼしあう分けることのできない構成単位として考え、

    その関係を探ることを目的とした環境心理学の概念を導入する。

    E.H.Zudeらは景観評価には①専門家パラダイム、 ②心理物理的パ

    ラダイム、 ③認知的パラダイム、 ④経験パラダイムの 4つがあるとし

    ている。 街路空間における歩行者の環境評価は、 「環境の中から

    情報を選択し、 過去の経験や目的を踏まえて情報を処理し、 意味

    を見出す過程 13)」 とする認知的パラダイムに該当する。 そしてそれ

    に伴う結果として経路が選択される。

    2.3 ネットワークを用いた都市の分析都市における対象の関係性を定量的に評価し、 その構造的な特

    性を明らかにするものとして、 Bill Hillerによって提唱された Space

    Syntax理論がある。 しかし、 この分析手法はグリッド状の都市や長

    い直線に沿って発達した都市に対して有効な手法であり、 異なる

    文化圏や形態の都市に対しては不適である。

    これに対し、 N.Napongは、 「ネットワークパターンモデル」 という

    グリッド状の都市だけでなく曲線状の街路にも適用できる詳細な分

    析モデルを提唱している。 その手法の特徴として、従来の「軸性図」

    と異なり、 交差点(ノード) と街路セグメント(エッジ) といったより局

    所的な街路要素を用いている、 という点がある。

    2.4 環境評価における動的モデルの構築以上の概念を総合的に捉え、 本論ではまず、 街路を分岐点(ノー

    ド) と街路セグメント(エッジ) とに分割し、 街路環境の捉え方につ

    いてノードを対象とした Fig.1のような動的モデルを作成した。 ノード

    Vnの印象 Inは、 その周囲の環境によってのみ決まるものではなく、過去に通った経路の経験 Ik(k=1,2,…,n-1)や、 次の経路選択における目的の総体として決定される。 さらに環境とは、 歩行者の主

    観的な視点から見た隣接する分岐点の環境や奥への見えなども含

    むものとしている。 本論では、 これらの総体として得られる印象 Inを分岐点 Vnのポテンシャルと表現する。

    Vn Vn-2 Vn-1 VnI n I n-2 I n-1 I n

    経験 環境目的環境

    Fig.1 認知的パラダイムによる動的モデル

  • 第 3章 グラフ理論に基づく街路構成要素の分析3.1 分析対象の概要と選定理由

    京都市街地の性質の異なる2つのエリアを対象に分析を行う

    (Fig.2)。 1つ目は川端四条から清水寺を結ぶエリア(以下、 エリア

    Ⅰとする)、 2つ目は川端から烏丸御池を結ぶエリア(以下、 エリア

    Ⅱとする) である。 両者は同程度の面積、 距離であるものの、 前

    者は複雑で多様な街路構造を持ち、 勾配も大きいが、 後者はグリッ

    ド状の街路構造を持ち、 平坦であるといった性質の違いが見られ

    る。

    3.2 グラフ理論に基づく街路空間のネットワーク記述街路空間において歩行者が感じる印象や経路選択は、 道どうし

    の繋がりや相互の関係にも大きく起因すると考えられる。 そこでグ

    ラフ理論に基づき歩行空間を対象とした街路をノードとエッジによる

    ネットワークとして捉えることにより、 それらを明らかにしていく。 作

    成した各エリアのネットワーク図を示す。

    3.3 中心性に基づく街路空間の分析街路の繋がりを評価するにあたって中心性という指標を導入する。

    中心性とはネットワークにおける各ノードの重要性を評価したり、 比

    較したりするのに有効な指標である 14)。 交通の観点から、 街路がど

    のように組み合わされ、 その結果どのノードが理論上が重要である

    のか、 どこに人が集中し、 分散しやすいのかという傾向の把握を試

    みる。

    3.3.1 次数中心性次数中心性とは、 各ノードに接続しているエッジ数である。 その

    ため街路空間においては各分岐点に入る道の本数を表す。 つまり、

    十字路は次数 4、 丁字路やY字路などは次数 3、 直角に折れ曲が

    る角は次数が 2の交点として分類することができる。

    エリアごとにネットワーク図を作成し、その配列を比較した(Fig.4)。

    エリアⅠは各次数のノードがそれぞれ均等に分布しており、 多様な

    次数を持った街路が集まってできるクラスターがいくつか形成され

    ている。 一方で、 エリアⅡは東西で次数が 3のノードと 4のノードが

    はっきりと分かれており、 エリア内を横断的に移動した際の変化が

    乏しいことが読み取れる。

    また、 Simpsonの提唱する多様性尺度に基づき、 エリアⅠ、 Ⅱの

    次数の構成の多様性を比較したところ、 それぞれ 0.565と 0.496で

    あった。 したがってエリアⅠの方が次数の観点から見るとより多様な

    街路構成であるということがわかる。

    3.3.2 媒介中心性媒介中心性とは、 ある頂点が他の頂点間の最短経路上に位置

    する程度を示すものである。 値が大きいほど、 グラフの中で理論上

    よく通られ得るハブとなるノードである。

    エリアⅠでは大通りで高い値を示すノードがある。 それらのノード

    の周辺に中ぐらいのものや、 値の小さなノードが集まっていくつかの

    クラスターを形成しており、 隣り合うノード間での値の変化が大きい。

    東大路通り沿いや、 清水寺付近や五条通沿い、 建仁寺の西側など

    にクラスターが確認できる。 一方、 エリアⅡではエリアの東側の新京

    極や寺町を除き、 値が規則的な配列をしており、 歩行者がノード間

    を移動する際隣り合うノードでの変化に乏しいことがわかる。

    第 4章 経路選択歩行実験歩行者は分岐点においてどのような事象を認知し、 どのような因

    子によって経路を選択しているのか。 街路の構成要素とそこから歩

    行者が受ける印象との関係を把握するために経路選択歩行実験を

    行った。

    4.1 予備実験実験内容を検討するためにまず 3人の被験者を対象に、 11月上

    旬に予備実験を行った。 京阪祇園四条駅をスタートとし、 エリアⅠ

    は清水寺、 エリアⅡについては烏丸御池の交差点をゴールとして、

    スタートとゴールの間を自由に経路を選択しながら往復してもらっ

    た。 手順を以下に示す。

    1) 被験者に実験内容や方法に関する説明を行う。2) 歩行中、 分岐点に差し当たるごとに、 各分岐点において

    以下の項目についての記述と、 それぞれについて「快-不快」 を5段階で評価をする。

    2-1.直前に通った道の歩きやすさ 2-2.分岐点に至った時の印象 2-3.選んだ経路の印象、 理由 2-4.選ばなかった経路の印象、 理由 2-5.その他備考3) 選んだ経路、 選ばなかった経路の写真を撮影する。4) その他歩行中に感じた印象があれば記述・写真撮影を行う。5) 各エリアの往復が終了した際に被験者から聞き取りを行う。

    予備実験の結果の考察から、 設問の順番を直観的にこたえられ

    るものから提示した方が、 より正確な印象評価が得られること、 設

    問項目が多く、 被験者の記述に後半疲労がうかがえること、 「選ん

    だ経路」、 「選ばなかった経路」 という問いかけは、 それぞれ印象

    評価にポジティブと、 ネガティブな先入観を与えてしまうこと、 印象

    評価は 5段階では正確にとらえられないことなどが明らかになった。

    これらの結果に基づき、 実験内容の再構築を行った。

    Fig.2 対象エリアの概形と位置関係

    Fig.3 各エリアのネットワーク図 (左:エリアⅠ、右:エリアⅡ )

    Fig.5 エリア別媒介中心性 (左:エリアⅠ、右:エリアⅡ )

    Fig.4 エリア別次数中心性 (左:エリアⅠ、右:エリアⅡ )

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    616 617

    618 619 621 622 623 624 625 626 627628

    640 641 642 643 644645 646647 648

    649650

    651652

    653654

    655656

    657

    659

    660 661 662 663 664 665 666667 668 669 670 671 672

    673 674 675 676 677 678 679 680

    681

    682

    683

    684

    685

    686

    687

    688689690691692693694695696697

    698

    699

    700

    701

    702

    703

    704

    188

    181182186

    190189187

    191

    179

    123373

    183344185

    184178

    377

    138141

    125

    139

    378

    144142140

    124

    145161

    9290

    351

    9193 345

    94

    89

    9695 97

    5269

    80

    532756

    7967

    400

    51

    39

    336 68

    78

    165

    156

    28

    315314

    321325328355

    366148357356

    367

    358149147 150

    86

    132120121

    133131

    399398 134

    174173

    175177

    176

    172

    168151

    169

    359360

    167166164215200 201

    202

    165217

    204205

    171203

    207220

    170

    152156

    154155

    153365

    212198197 199

    301322

    311310

    309302317389

    380349

    379296286

    297

    195

    341

    332324323

    327329

    320

    334330

    333313

    407319

    194

    300

    316

    388318

    192162

    384

    383 406

    307303 287

    382

    27281 261

    263 273262

    269264

    268 270

    265

    267 274

    280 289

    275278279

    277

    340

    387386

    385

    163

    312

    288

    283

    405

    295284 299

    290

    285

    294381

    298

    260259

    258

    5755

    256252257

    126

    266

    143

    337

    34898

    146

    54248

    255

    253251

    117

    361

    116114

    127112

    128

    362

    2122

    24339

    58

    6376 48476677

    2

    12

    40 29

    4

    9

    23

    10

    342368

    7374

    1035975

    353

    6546

    45

    4243

    6461

    4462

    100

    10671

    110

    99

    113

    109108

    111 130129

    403363

    397364

    396119

    102

    19

    82

    18

    101

    85

    8483

    118395

    313

    3425

    14

    2633

    30

    3735

    49

    36 38

    33550

    401

    88

    338

    87

    122402136

    158157

    135374

    376

    159

    375137160

    704

    513

    501

    537

    703

    702

    502 503

    515514

    674

    538

    568565701 569564 567566 570561 571

    595 597592 593 596594

    608 610

    618

    700 591588

    619699

    504 505 507675 506673 676

    624 625621 622 623 626 627

    542

    519

    527

    516

    541

    520 521

    543

    528

    531

    533 532

    546544 545

    677

    679

    509508 511510 512

    678

    680

    681

    536526524523522 535

    615612

    640

    645

    647

    641

    628

    646

    642

    648

    557

    552551

    553

    549548

    547

    558

    613609 617

    611 685614

    616 686

    577579

    580581

    578

    575

    556

    559

    573

    574

    583582

    584 585

    598 599

    572

    560

    550 682

    684

    683

    696 694 693 692 691 690 689698 695 687

    650 643649

    655

    644651 653

    654

    672

    652

    670

    659

    669

    657 656

    671 688663 664662 665 667666 668660 661697

    5525825757

    259260

    279

    380

    379296286

    278

    349297

    56

    34580

    97

    125

    28

    53

    142285

    270

    267

    272

    284

    269

    277

    268

    295

    98

    337266

    265

    126348

    143

    81

    283294

    25154 273252 274255

    262263

    256

    261

    264

    158152

    134399

    365

    136 135

    153157

    170

    181

    122121133

    402338401

    129362363128

    137

    130396397

    403364

    132

    156

    154

    131

    120

    398

    155

    11885

    368119

    117103395

    388

    318319

    407

    320324

    332 309 307322389 317

    323

    314

    333313194

    312

    315316

    162

    146

    386340163

    298299

    387

    192385

    405302

    288

    300

    303 289301

    406

    287

    382

    334

    341327 310329

    145

    173172

    174

    176

    175177

    205

    191

    171203204 207

    3519586 87 94

    96

    7374

    58

    59

    342

    64

    24

    6265

    6175

    5047 4946 4851 39

    27 15

    335

    16

    38

    3726 14

    336

    929190898893

    40052

    7867 68 69

    76

    6663

    7977

    123

    141140373138

    124

    139144

    23 29 331325

    1230

    35 3644 4540 4334

    42

    358

    147148357149150

    99 111100

    109110

    113

    355356

    187377

    188

    161

    378

    189190

    375376

    167

    201202

    198367366

    164200165166

    199

    178374

    160159179

    10

    19

    82 83

    21

    101

    127361

    151

    360

    168169359

    114

    22

    116

    339

    102

    112

    84353

    185184

    182183186

    344

    545538 542 546541 531 544537 547543

    522

    527

    535526524

    548

    523 536

    549528

    501

    505 506

    502

    504

    503

    507

    513 515 519514 516 520 521

    508 510 511509 512

    666660 667665663662 664661 668

    622621619618 624623 625

    588 595593 594591 596592 597

    564 568567 571570561 565 569566

    627

    640

    610

    611

    612

    645

    626

    608

    647

    649

    617

    550

    577

    560

    575

    580

    646

    653 643644

    641

    650

    648

    642

    655654

    552

    553

    558

    573

    574

    583

    659

    671

    656652

    672669

    657

    670

    572

    598

    609

    551

    557

    582

    584

    651

    579

    559

    578

    556

    581

    616

    628

    615

    614

    613

    599

    585

  • 4.2 本実験予備実験を基に予備実験の方法に修正を加え、 2016年の 11月

    下旬から 12月の上旬にかけて京都大学、 同大学院の学生を中心

    に被験者を募り、 本実験を行った。 実験概要を Tab.1に示す通り

    である。 また、 手順を以下に示す。

    Tab.1 本実験概要行程 距離(往復)所要時間 日時 被験者

    エリアⅠ四条川端交差点南東角        ~清水寺仁王門 3.6km 約2.5時間

    2016年11月25日(金),26日(土)、12月1日(木),2日(金),4日(日),8日(木)

    32人

    エリアⅡ四条河原町交差点北西角   ~烏丸御池交差点南東角 3.6km 約2.5時間

    2016年11月25日(金),26日(土),12/1(木),2(金),4(日),7(水),10(土),11(日)

    34人

    1) 被験者に実験内容やアプリの利用方法に関する説明を行う。

    2) スタート地点と目的地間を自由に経路を選択しながら歩いてもらう。 歩行中、 道の分岐点に差し当った際に、 各分岐点において以下の項目について回答する(質問 A)。

       2-1.進行方向の各街路の写真撮影   2-2.各街路の印象評価(7段階: 好ましい~好ましくない)   2-3.各街路の印象記述3) 分岐点以外に歩行中に印象を受けたことがあれば上記の

    項目について同様に回答する(質問 B)。4) 各エリアについて②、 ③の内容に回答してもらい、 それ

    ぞれ歩行終了後に被験者から聞き取りを行う。尚、 歩行中の印象評価や記述は ESRIジャパンが提供する

    Survay123というスマートフォンで利用できる GISアプリを用いた。

    4.3 実験から得られたデータの整理歩行後の聞き取りでは、 通った経路と、 その際の歩行経験につ

    いて地図に記入してもらった。 後日その内容を Illustratorで整理し、

    被験者ごとに経路マップを作成した。 また歩行中に回答してもらった

    内容については、 位置情報と写真をもとに、 Excelで分岐点や被験

    者の情報ごとに分類し、 整理を行った。 結果の一部を Fig.7に示す。

    4.4 記述内容の傾向実験から得られた内容のうち、 印象記述の内容から被験者の環

    境把握に関する全体の傾向を見る。 Fig.8のノードの大きさは、 そ

    の単語の出現回数を、 また、 エッジの太さは結ばれた 2つの単語

    が一つの記述のうちに同時に

    発せられた共起回数を表してい

    る。 その結果、 人通りの多さや、

    それに伴う歩きやすさ、 また視

    覚による要素の知覚、 「京都」、

    「雰囲気」、 「景観」 のような、

    文化・ 土地の固有性の関連が

    見られた。 この結果を基に 5章

    でさらに、 歩行者の印象評価と

    経路選択について細かく分析し

    ていく。

    第 5章 印象評価に基づく経路選択因子の解読5.1 記述内容の分類、整理

    各分岐点において歩行者が知覚している情報の特徴を明らかに

    するため、 まずは記述内容を単語に分解し分類・ 整理を行った。

    その内訳を見ると、知覚される対象としては「街路形状」 や「建物」

    をはじめとする構築物、 さらに「人」 が、 また評価の軸としては「好

    み」 や「驚き」、 「量」 などが多くみられた。 それに加えてエリアⅠで

    は「風情」 が、 エリアⅡでは「活気」 に関する記述が多くみられた。

    さらに、 記述の多かった要素を主成分分析し、 新たな統合指標

    を抽出した結果、 歩行者によって評価される対象として、 形として

    あらわれるような「形態」 とあらわれない「様態」 とに分けられた。 こ

    の2つを経路選択因子としてさらに分析を進める。

    5.2 形態に関する経路選択因子の解読街路空間において歩行者はどの情報を知覚・ 判断し、 経路選択

    を行っているのか、 またそれがどこで知覚されるのかを明らかにする

    ために、 まず形態カテゴリーについて、 要素毎にその頻度や分布

    を見る。 ここで、 街路形状は「見通し(抜け /突き当たり /曲線)」 や

    「幅員(広さ /狭さ)」、 「勾配(平坦 /坂)」 など、 その属性に応じて

    さらに細かく分類している。 それに「構築物(建物 /その他構築物 /

    素材)」 を加えた 10要素を「形態」 のカテゴリーとした。 また、 経路

    選択因子を解読するため、 選択された経路に関する記述のみを抽

    出し、 分析を行った。 特に特徴が大きく表れた要素を以下に示す。

    抜け(見通し)

    「見通し」 に関する記述は、 勾配との関係が深く、 また道に沿っ

    て連続して分布していることが特徴として挙げられる。 坂の上りまた

    は下り始めや曲がり角のような環境の変化が大きい点で強く認識さ

    れていることが読み取れる(Fig.10)。 またエリアⅡはグリッド状で直

    線的な街路構造であるにもかかわらず、 「抜け」 に関する記述はエ

    リアⅠの方が多かった。 これは、 エリアⅡでは他の経路と形態の変

    化が少なく、 隣接するノードと同じ印象を与えているためであると考

    えられる。 一方で、 エリアⅠは 3章で述べたように隣接する分岐点

    Fig.6 実験の様子

    Fig.10「抜け」に関する選択経路の記述分布(エリアⅠ)

    Fig.7 実験から得られたデータ

    Fig.8 印象記述の共起回数

    写真撮影

    回答データ

    印象評価 ・記述

    経路マップ

    実験後の聞き取り

    Fig.9 項目別記述内容の出現頻度(上:エリアⅠ、下:エリアⅡ)

    : 自然環境 :構築環境

    :色

    :社会・文化環境 :感情 :様態

    :身体感覚 :物理的尺度 :方向性 :歩きやすさ

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    エリアⅠ記述回数

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600エリアⅡ記述回数

    ① ② ③ ④ ⑤ ⑥  ⑦ ⑧ ⑨

    ① ② ③ ④ ⑤⑥  ⑦ ⑧  ⑨ ⑩

    ① ② ③ ④ ⑤ ⑥  ⑦ ⑧ ⑨ ⑩

  • どうしでの要素の変化が大きく、 特に前の分岐点と比較して視線が

    大きく変化する点で「抜け」 に関する記述が多くみられた。

    広さ(幅員)

    エリアⅠにおいて広さに関する記述は、 道幅の広い大通り沿い

    ではなく、 大通りに隣接した細い道で多く知覚・ 記述されていた。

    また、 エリアⅡの 617のノードでは河原町通からより道幅の狭い歩

    行者天国の蛸薬師通に差し当った際に広く感じたという記述が多く

    みられた。 従って物理的な道の広さよりも、 歩行空間の広さによっ

    て、 それが知覚されているということが考えられる(Fig.11)。

    「広さ」 が経路の選択因子として

    あらわれているノードでは概ね狭く

    見通しの悪い道から開放的な大通

    りに出ることによる安心感や、 歩き

    やすさに関する記述との関連が深

    く、 そのような変化として知覚され

    る傾向にあった。

    5.3 様態に関する経路選択因子の解読次に様態のカテゴリーについても、 同様に印象記述の要素毎に

    その頻度や分布を見る。 このカテゴリーには「活気(賑わい /落ち着

    き)」、 「統一感(統一 /雑然)」、 「雰囲気(風情・ 文化土地性 /街

    並み /京都)」 が該当する。 以下に特徴的な要素について示す。

    賑わい(活気)

    エリアⅠにおいて「賑わい」 は①四条通周辺や、 ②松原通沿い

    の清水の観光エリアへの入り口や二年坂、 産寧坂といった環境の変

    化する点で大きな値が確認できる(Fig.12)。 ①については、 通り沿

    いではなく、 四条通の両端や、 復路において花見小路通りから突き

    当たる点で大きな値が見られることから、 活気のあるエリアの入り口

    での変化として、 歩行者に印象付けられていることが読み取れる。

    また、 エリアⅡを見ると、 Ⅰの

    ように変化点としての分布よりも、

    通りに沿って連続して分布してお

    り、 途中で曲がるよりも、 同一の

    経路に沿って進む傾向にあること

    や、 また往路か復路かによって印象が異なることが確認された。

    5.4 歩行者の印象評価に基づく経路選択の傾向次に理論上の通られやすさにあたる媒介中心性と、 実際に通ら

    れた頻度を示す記述回数の分布を比較することにより、 被験者が

    街路の環境から経路選択の影響を受けた程度を考察する(Fig.14)。

    それを見ると、 エリアⅡの方がその分布に相関が見られた。 そのた

    めエリアⅡは街路の形態や様態に対する環境の変化が小さく、 その

    ため被験者が受ける印象が比較的弱いことが予想される。

    そこで本実験の 2-2の質問項目により得られた街路の「好ましさ」

    に関する印象評価を基に、 歩行者がそれぞれの街路をどう評価して

    いるのかについて考察する。 印象評価のスコア(-3~ +3の 7段階)

    の内訳をエリアごとに算出すると、 エリアⅡは +1~ -1と回答している

    ものが全体の 8割を占めており、 いずれもエリアⅠより多くの割合を

    占めていた。 一方で、 -3、 -2、 2、 3といった値の高い評価はエリ

    アⅠよりも少ない。 このことから、 総じてエリアⅠの方がその良し悪し

    に関わらず、 街路環境がより強い印象を歩行者に与えており、 逆に

    エリアⅡは比較的歩行者が受ける印象は弱いということが読み取れ

    る。 これは街路の形態や様態に対する環境の変化が小さいというこ

    とが理由として考えられる。 その結果、 景観などの因子よりも、 目的

    地に向けての方向を意識して歩く傾向が強くなる。 その結果エリア

    Ⅱの方が媒介中心性と実際の記述回数の相関が強くなったというこ

    とが推測された。

    第 6章 結論と今後の課題本 研 究 で は 、 ネ ッ ト ワ ー ク を 用 い た 街 路 構 造 の 分 析

    と、 経路選択歩行実験を通して、 歩行者が街路空間から何

    を経路選択因子として読み取っているのかを把握することを試みた。

    その結果、 街路構造から読み取れる要素の分布と歩行者が実際に

    感じる印象には相違する点が見られた。 このように街路空間におけ

    る歩行者の印象とは、 部分的な物理的環境によってのみ決まるの

    ではなく、 周辺街路との繋がりや、 それに伴う変化、 過去の体験

    や、 目的によっても決定されることが確認できた。 これらの結果は

    街路空間のデザインだけでなく、 より快適な街づくり、 また建築計

    画にも応用できるものであり、 歩行者の豊かな経験をデザインする

    手掛かりを掴むことができた。

    1) Kostof,S. :TheCityShaped:UrbanPatternsandMeaningsThroughHistory,Bulfinch,1993.

    2) Massengale,J.&Dover,V. :StreetDesign :TheSecrettoGreatCitiesandTowns,Wiley,2013.

    3) 門内輝行:街並みの景観に関する記号学的研究,東京大学学位論文,1997.

    4) 箭内亮一 ,長谷川諭 ,小林美紀 ,大野隆三:環境視情報の計測に基づく街路空間の分節化に関する研究:その 1実空間実験:日本建築学会大会学術講演梗概集 .E-1,Vol.1998pp.941-942,1998.

    5) 大野隆三・辻川理枝子・稲上誠:屋外空間での移動に伴い変化する感覚の連続的評定法:環境視情報の記述法とその応用に関する研究 ( その 2),日本建築学会計画系論文集,No.570pp.65-69,2003.

    6) 船越徹ら:参道空間の研究(その 1~その 15),日本建築学会大会学術講演梗概集,1977 ~ 1989.

    7) Appleyard,D. ,Lynch,K.&Mayer,J. :TheViewFromtheRoad ,TheMITPress,1964

    8) Anderson,S:onSTREETS,TheMITPress,19789) Thiel,P:People,Path,andPurposed:10) 北雄介:経路歩行実験による都市の様相の記述と分析 ,日本建築学会大

    会学術講演梗概集 .E-1,Vol.2008pp.957-96211) 藤原真名美:テクスト性に基づく地域資源の発見と創造に関する研究―

    京都・嵐山のエリアデザインに向けて―,京都大学.201312) 門内輝行:人間-環境系のデザインの展望―21世紀のデザインビジョン

    ,新建築,78 巻 1号 ,pp.94-97,200313) 羽生和紀:環境心理学 人間と環境の調和のために,サイエンス社,

    2008,pp.44-4714) 鈴木努:R で学ぶデータサイエンス 8 ネットワーク分析 , 共立出

    版 ,2009,pp.41-72

    ①②

    媒介中心性

    記述回数

    媒介中心性

    記述回数

    Fig.12「賑わい」に関する選択経路の記述分布(エリアⅠ)

    Fig.14媒介中心性と記述回数の関係(左:エリアⅠ、右:エリアⅡ)

    (横軸が記述回数、縦軸が媒介中心性の値を示す)

    Fig.11「広さ」が知覚されたノード

    Fig.13「賑わいの分布」(エリアⅡ)