粉末指数付けの原理と用語...

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粉末指数付けの原理と用語 ・ソフトウェアCONOGRAPHの方法 サマーチャレンジ2014 825日) 高エネルギー加速器研究機構 富安亮子 [email protected]

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粉末指数付けの原理と用語・ソフトウェアCONOGRAPHの方法

サマーチャレンジ2014 (8月25日)

高エネルギー加速器研究機構 富安亮子

[email protected]

CONTENTS

2

粉末指数付けの原理

1. 解析のソフトウェアを立ち上げて、実行ボタンを押すところまでやってみる。

• 結晶学のエッセンスを理解

• 実験結果の解析(限られた時間の中で正しい結果を導きだす)

目標

近道

2. ソフトウェアマニュアルを読む。

3. 実行ボタンを押したとき、中で何が起こっているかを知る。

4. さらに、中でどうやって計算しているかを知る。

CONOGRAPH GUIの探し方

3

http://research.kek.jp/people/rtomi/ConographGUI/web_page.html

「Conograph GUI」 で検索

Conograph GUIのページ

CUI

ソースコード

「粉末指数付け」 「powder indexing」

その他のKeywords

粉末指数付けの概略

4

粉末回折パターン

ピーク位置(横軸の座標)を取得

ピークサーチ

回折

格子定数: a, b, c, α, β, γ

a c

b

γ α

β Rietveld 法

未知構造解析

結晶構造

粉末指数付け

粉末指数付けフローチャート

5

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

画面に表示

ピークサーチ

6

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

xi: ピーク位置

di: ピークの半値幅

--

xi

di

hi=I(xi)-b(xi)

ピークのパラメータ

hi: ピーク高さ

バックグラウンド曲線

Conographのピークサーチ

ピーク高さを基準としたピークサーチ

(xi,b(xi))

(xi,I(xi))

hi > c×Err[I(xi)]

c: 3—10程度の数字(入力値)

Err[I(xi)]: 観測値 I(xi) の誤差 (入力値)

or hi > c

ピーク位置(2Θ , TOF)を 値に変換

7

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

q

λ

⇐とりあえず0を入力

⇐装置ごとに決まる値

⇐装置ごとに決まる値

変換に用いるパラメータ

1. ピークサーチ実行ボタンを押す2. 上記のパラメータを変更3. 粉末指数付けの実行ボタンを押す

粉末指数付けの基本的な流れ

ピーク位置(2Θ , TOF)を 値に変換

8

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

TOF = c0 + c1d + c2d2 + ….

q2 2sin

2 2d

(角度分散法)

(飛行時間法)

2. 得られたd-spacingの値に対応する、d*値, q値を算出。

1. 入力された波長λ, Δ2θから、各ピークの2θに対応するd-spacingの値を算出。

変換の手順(角度分散法の場合):

* 1d d

2 2* 1/q d d

d*値

q値

2 22sin2

d

注) Q=2πd* も Q値と呼ばれる。

ピーク位置(2Θ , TOF)を 値に変換

9

q

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

ピークのミラー指数を [hkl]とする。

2

2

2

11

cos coscos coscos cos

da ab ac h

h k l ab b bc kac bc c l

2

2

2

1cos cos

* 1 cos coscos cos

a ab ac hd d h k l ab b bc k

ac bc c l

2

2 2

2

1cos cos

* cos coscos cos

a ab ac hq d h k l ab b bc k

ac bc c l

求める格子定数: a, b, c, α, β, γ

格子定数とd値、d*値、q値の関係

AUTOINDEXING (格子定数のリストの生成)

10

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

各ピークに対応するq値 qi が得られたとする。

2

2

2

1cos cos

cos coscos cos

i

i i i i i

i

a ab ac hq h k l ab b bc k

ac bc c l

2

2

2

11 12 13

12 22 23

13 23 33

1cos cos

cos coscos cos

s s s a ab acs s s ab b bcs s s ac bc c

とおくと

11 22 33 12 13 232 2 2 2 2 2i i i i i i i i i iq h s k s l s h k s h l s k l s

1 1 11 1 22 1 33 1 1 12 1 1 13 1 1 232 2 2 2 2 2q h s k s l s h k s h l s k l s

11 22 33 12 13 232 2 2 2 2 2n n n n n n n n n nq h s k s l s h k s h l s k l s

連立

方程式

左辺のq値は観測値 右辺のパラメータは全て未知

⇑ こう書くとあまり出来そうに見えない。

AUTOINDEXING (格子定数のリストの生成)

11

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

各ミラー指数 [hikili] (i=1,…,n) に対応するピークのq値qi が得られたとする。

2

2

2

1cos cos

cos coscos cos

i

i i i i i

i

a ab ac hq h k l ab b bc k

ac bc c l

2

2

2

11 12 13

12 22 23

13 23 33

1cos cos

cos coscos cos

s s s a ab acs s s ab b bcs s s ac bc c

とおくと

11 22 33 12 13 232 2 2 2 2 2i i i i i i i i i iq h s k s l s h k s h l s k l s

1 1 11 1 22 1 33 1 1 12 1 1 13 1 1 232 2 2 2 2 2q h s k s l s h k s h l s k l s

11 22 33 12 13 232 2 2 2 2 2n n n n n n n n n nq h s k s l s h k s h l s k l s

連立

方程式

左辺のq値は観測値 右辺のパラメータは全て未知変数

⇑ こう書くとあまり出来そうに見えない。

AUTOINDEXING (格子定数のリストの生成)

12

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

AUTOINDEXINGの手順(共通)

1 1 11 1 22 1 33 1 1 12 1 1 13 1 1 23

11 22 33 12 13 23

2 2 2 2 2 2

2 2 2 2 2 2mm

i

m m m m m m m mi

q h s k s l s h k s h l s k l s

q h s k s l s h k s h l s k l s

・q1, …, qnのうち用いる

qi1, …, qim を選択

・hikiliを全て選択

sij を求める

格子定数のリスト

毎回保存

選択し直して再計算

Conographの特徴

粉末指数付けの数学上の問題を解決。特に、他のソフトより以下に強く、速い。

消滅則 低角(2θが小さい)ピークが観測範囲に含まれない ゼロ点シフトが大き目

CONOGRAPHのAUTOINDEXINGアルゴリズム概要(1/2)

13

1.

1 3 2 4

1 ? 2 4

2 ? 1 3

3 3

2

2

q q q q

q q q q

q q q q

2q 4q?q

1q1q 3q?q

2q

Two Ito equations

2.3q 4q

2q

1q

2q 5q4q

1q

3q 4q2q

1q5q

CONOGRAPHのAUTOINDEXINGアルゴリズム概要(2/2)

14

3.

a c

b

γ α

β

ブラベー格子手順:

ブラベー格子決定 (観測誤差を考慮)

15

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

1を決定⇒2を決定

2. Crystal system (rhombohedralを除く)

1. Centering (+ rhombohedral)の決定

単純 or 底心 or 体心 or 面心 or rhombohedral

triclinic, monoclinic, orthogonal, tetragonal, hexagonal, cubic⇒14種類のブラベー格子決定を決定

ピーク位置の誤差得られた格子定数

の誤差

波及

FIGURE OF MERIT (FOM)による格子定数のソート

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2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

De Wolff FOM によるソートが最も強力。

全てのFOMに共通する特徴

• De Wolff FOM• Wu FOM• Reversed FOM

• Symmetic FOM

値が大きいほど、正解である可能性が高い。 特に、10を超えると正解である可能性が高い。 しかし、正しい解が一番大きな値を取るとは限らない。

De Wolff FOMが見落としやすい良い解を拾うように定義。

De Wolff と Reversedの中間

同じブラベー格子の格子定数なら強力

FIGURE OF MERIT (FOM)による格子定数のソート

17

2θTOF q値}変換

Autoindexing

ピークサーチ

ブラベー格子決定

ソートされたリスト

出力

格子定数候補のリスト

FOMによるソート

正解を探すときのお勧めの方法

• De Wolff FOM• Wu FOM• Reversed FOM• Symmetic FOM

14個のブラベー格子における最上位の解の de Wolff FOMの値を比較する。(解が一つも表示されてないブラベー格子は除いてよい)。

このとき、De Wolff FOMが比較的大きく、ブラベー格子

の対称性が高いものは優先的にチェックする。

注) Monoclinic (B), Orthorhombic (C)はde Wolff FOMが

大きくなりやすい。この格子定数が最上位に来たときは他の解もチェックする。

代表的な解析の注意点

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ほぼ同じ結晶格子でも、微細な誤差が原因で、全く異なる格子定数になることがある。これは、以下の選択が誤差の影響で違ってしまったことが原因。

(i) ブラベー格子の選択

(ii) 格子基底の選択(Niggli reduction)

しかし、誤差の範囲を超えて異なる結晶格子が、全く同じピーク位置を持つことも稀に起きる。

粉末指数付けの解の一意性

以下のケースはde Wolff FOMの値が小さくなりやすい。

結果として格子定数のソート結果が不安定になる。

ゼロ点シフトが大きい

不純物ピークがある

消滅則

⇒ FOMが最大となる解だけではなく、他のFOM値が比較的良い格子定数もチェックしてみる。

CUBIC (F) と同じピーク位置を持つ格子定数

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以下の3つの格子定数は、異なる結晶格子に対応しているが、幾何学上の偶然 (geometrical ambiguity) の結果、 全く同じピーク位置を持つ。

問1) Conograph上で上記の格子定数が、全く同じピーク位置を持つことを確認してみよう。

ヒント: 単位胞の体積を比較。

問2) 3つの格子定数が(誤差の範囲を超えて)実際に異なると言えるのはなぜか?

手順: Siliconのサンプルを開く→「格子定数精密化」から、ブラベー格子と格子定数を入力→ミラー指数付け → 精密化して保存

CUBIC(P), CUBIC(I)と同じピーク位置を持つ格子定数

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Ex) Cubic (P)

Ex) Cubic (I)

RHOMBOHERDAL, HEXAGONALと同じピーク位置を持つ

格子定数

21

Ex) Hexagonal

Ex) Rhombohedral

非常によく似たピーク位置を持つ格子定数の見つけ方

22

対称性低い格子定数の場合にも、完全に一致するケースが、非常に稀に存在する。

Conographでは、そういうケースに該当しないことのチェックのための機能がある。

22

格子定数を選択

⇒「一意性のチェック」ボタン

その他の注意するケース(DOMINANT ZONE)

23

Dominant zone が存在するときも、どれが正解かの判定が難しくなることがある。

*1a

*2a

*3a

* * *3 1 2,a a a

単位胞 粉末回折パターン

Dominant zone problem

| : [hk0]| : [hkl] with l ≠0

上記のケースでは、 の情報があまり FOMの値に効いてこない。*3a

1/d

23

DOMINANT ZONEのある例

Dominant zoneのあるケースで

粉末指数付けを実行⇒正解を選んで「解の一意性のチェック」

低角のピーク位置が一致する格子定数がだくさん存在することが分かる。

Sample 4 of SDPDRR-2

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