新潟県における寺社の分布と地域区分repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/32564/rcr047...県の寺院分布に関する竹村の研究3...

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13 *駒澤大学文学部地理学教室 . はじめに 筆者は前稿 1で,都道府県別・宗グループ別檀家数のデータをもとに日本の地域分類図を作り,そ こからさらに日本の仏教地域区分図を作成した。本稿は,このような宗教地域区分を都道府県レベルで 行なおうという試みである。 都道府県レベルの寺社分布については,たとえば北海道の神社分布に関する永幡の研究 2や神奈川 県の寺院分布に関する竹村の研究 3があるが,地域区分的なことまで行なっているのは松井 4である。 松井は,『新潟県宗教法人名簿』(昭和 61 年版) 5を主な資料として,新潟県の宗教分布を分析している。 すなわち,仏教系の宗教法人(寺院)を 7 つの宗派に分け,112 市町村における各宗派の構成比をもと にワード法クラスター分析を行ない,市町村を A 1 D 2 7 類型に類型化している。また,神社につ いても,神社本庁に属する神道系宗教法人のうち諏訪社・神明社など 9 つの系統の神社に関して同様の 分析をし, AG 7 類型を得ている。そして,天理教教会と布教所の市町村別人口比の結果も合わせて, 新潟県に 7 類型の宗教空間を設定し, 9 つの区画に区分している。 松井の研究は,仏教・神道・天理教を総合して新潟県を宗教面で地域区分しようという意欲的な試み である。しかしながら, 3 宗教の地域分類を統合して最終的に地域区分するプロセスが不明であるとこ 駒澤地理 No.47 pp.1333, 2011 Komazawa Journal of Geography 新潟県における寺社の分布と地域区分 Distribution of Buddhist Temples and Shinto Shrines in Niigata Prefecture and the Division of the Region 都道府県レベルの宗教地域区分については,新潟県を対象とした松井(1993)の研究があるが,地域区 分のプロセスが不明であるという問題点がある。本稿は松井(1993)を再検討し,新潟県の寺社分布か ら,あらためて仏教・神道それぞれの地域区分図を作成することを目的とする。最初に,「地域分類」と 「地域区分」の概念的違いや「地域区分」の方法について筆者の見解を述べる。次に,仏教に関して,宗 派別の寺院分布を概観した後,寺院数最多の宗派によって112の市町村を分類する。そして,地域分類図 から地域区分図を作成し,新潟県を 9 つの区域に分割する。神道についても同様に,神社数最多の神社名 称によって市町村を分類し,新潟県を10の区域に分けた地域区分図を提示する。最後に,寺院による区分 と神社による区分との統合の意義に言及する。 キーワード:宗教分布,寺院,神社,新潟県,地域区分 Keywords: distribution of religion, Buddhist temple, Shinto shrine, Niigata Prefecture, division of the region ODA Masayasu 小田匡保*

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Page 1: 新潟県における寺社の分布と地域区分repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/32564/rcr047...県の寺院分布に関する竹村の研究3 )があるが,地域区分的なことまで行なっているのは松井4

13― ―

*駒澤大学文学部地理学教室

. はじめに

筆者は前稿 1)で,都道府県別・宗グループ別檀家数のデータをもとに日本の地域分類図を作り,そ

こからさらに日本の仏教地域区分図を作成した。本稿は,このような宗教地域区分を都道府県レベルで

行なおうという試みである。

都道府県レベルの寺社分布については,たとえば北海道の神社分布に関する永幡の研究 2)や神奈川

県の寺院分布に関する竹村の研究 3)があるが,地域区分的なことまで行なっているのは松井 4)である。

松井は,『新潟県宗教法人名簿』(昭和 61年版)5)を主な資料として,新潟県の宗教分布を分析している。

すなわち,仏教系の宗教法人(寺院)を 7つの宗派に分け,112市町村における各宗派の構成比をもと

にワード法クラスター分析を行ない,市町村を A 1~D 2の 7類型に類型化している。また,神社につ

いても,神社本庁に属する神道系宗教法人のうち諏訪社・神明社など 9つの系統の神社に関して同様の

分析をし,A~Gの 7類型を得ている。そして,天理教教会と布教所の市町村別人口比の結果も合わせて,

新潟県に 7類型の宗教空間を設定し, 9つの区画に区分している。

松井の研究は,仏教・神道・天理教を総合して新潟県を宗教面で地域区分しようという意欲的な試み

である。しかしながら, 3宗教の地域分類を統合して最終的に地域区分するプロセスが不明であるとこ

駒澤地理 No.47 pp.13~33, 2011Komazawa Journal of Geography

新潟県における寺社の分布と地域区分

Distribution of Buddhist Temples and Shinto Shrines in Niigata Prefecture and the Division of the Region

都道府県レベルの宗教地域区分については,新潟県を対象とした松井(1993)の研究があるが,地域区

分のプロセスが不明であるという問題点がある。本稿は松井(1993)を再検討し,新潟県の寺社分布か

ら,あらためて仏教・神道それぞれの地域区分図を作成することを目的とする。最初に,「地域分類」と

「地域区分」の概念的違いや「地域区分」の方法について筆者の見解を述べる。次に,仏教に関して,宗

派別の寺院分布を概観した後,寺院数最多の宗派によって112の市町村を分類する。そして,地域分類図

から地域区分図を作成し,新潟県を 9つの区域に分割する。神道についても同様に,神社数最多の神社名

称によって市町村を分類し,新潟県を10の区域に分けた地域区分図を提示する。最後に,寺院による区分

と神社による区分との統合の意義に言及する。

キーワード:宗教分布,寺院,神社,新潟県,地域区分

Keywords: distribution of religion, Buddhist temple, Shinto shrine, Niigata Prefecture, division of the region

ODA Masayasu

小田匡保*

Page 2: 新潟県における寺社の分布と地域区分repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/32564/rcr047...県の寺院分布に関する竹村の研究3 )があるが,地域区分的なことまで行なっているのは松井4

14― ―

ろに問題がある。また,そもそも 3宗教の地域分類を統合する意義があるのかも,あらためて考えてみ

る必要があろう。仏教・神道・天理教それぞれで地域区分した結果を提示するほうが,よりシンプルで

分かりやすいとも言える。

以上のような予察のもと,本稿では,松井の行なった研究を参考に,新潟県の寺社分布から仏教・神

道それぞれの地域区分図を作成することを目的とする。

. 分析の方法

1. 資料

まず資料については,松井の研究の検証という意味では,松井の使用した昭和 61年版『新潟県宗教

法人名簿』を再検討すべきであるが,所蔵機関が限られ閲覧に手間を要するため,国立国会図書館で閲

覧可能であった昭和 51年版 6)を利用する。昭和 51年と 61年の間には,宗教界に大きな変動はなく,

また新潟県内では市町村合併もなかったので,分析結果が大きく異なることはないと考えられる。

2. 地域分類と地域区分

次に,松井の議論を振り返りながら,筆者の考える「地域分類」と「地域区分」について述べておきたい。

松井は,仏教の分布について,各市町村における 7宗派の構成比を属性とするワード法クラスター分

析を行ない,112市町村を A 1~D 2の 7類型に類型化している。すなわち,A 1は真宗系卓越,A 2は

真宗系中心,B 1は各宗派バランス型,B 2は天台宗系卓越 +臨済宗系 7),Cは真言宗系卓越,D 1は

曹洞宗中心,D 2は曹洞宗卓越,であるという。そして,この結果を地図化して「仏教宗派を指標とす

る等質地域区分」とタイトルをつけ,本文の節にも同じ見出しをつけている(144・145頁)。また,神

社に関しても同様にワード法クラスター分析を行ない,A(諏訪社卓越 +神明社),B(諏訪社卓越 +

八幡社),C(各神社均衡),D(神明社卓越 +諏訪社),E(十二社・地域神卓越),F(山神社系卓越),

G(白山社・熊野社卓越)という 7類型を地図化している。その図と本文の節は「神社を指標とする等

質地域区分」と題されている(147・148頁)。

しかし,松井が行なったのは「地域分類」とその地図化であり,「地域区分」とは言えないと筆者は

判断する。筆者の考える「地域分類」とは,ある基準によって単位地域(市町村)を機械的に類型化す

ること(類型化したもの)であり,それに対して「地域区分」とは,「地域分類」をもとに,区分地域

のスケールや数,単位地域の空間的連続性も考慮して,全体地域(県)に新たに区分線を引くこと(引

いたもの)である。筆者の前稿では,この点を意識して,機械的な地域分類を地図化したものを「地域

分類図」とし 8),そこから「地域区分図」を作成した。

「地域分類図」からあらためて「地域区分図」を作成する理由は,前稿の表現を引用すれば,「属性の

異なる都道府県が混在すると,かえって日本全体としての地方差を即座に把握しにくくなる」(55頁)

からである。言い換えれば,地域差を地図上で直感的に把握できるようにするために「地域区分図」は

必要なのであり,機械的な地域分類を地図化した「地域分類図」では不充分である。もっとも,これは「地

域分類図」そのものが不適切ということではなく,瞬時の理解を必要としない用途であれば,意味のあ

る地図であろう(たとえば地形分類図や地質図がある)。

松井論文の最後(150頁)に提示される第 8図(新潟県の宗教空間)では,仏教宗派・神社の分布に

天理教の分布も加味して,新潟県に 7類型の宗教空間を設定し,それによって新潟県を 9つの区画に区

分している(区画数が類型数より 2つ多いのは, 2つの区画に分かれている類型が 2つあるため)。具

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体的には,A.真宗・諏訪社卓越空間,B.曹洞宗・神明社卓越空間,C1.曹洞宗・山岳・地域神卓越空

間(新宗教受容),C2.曹洞宗・山岳・地域神卓越空間,D.真言宗・白山・熊野社卓越空間(新宗教受

容),E.多宗派・神社混合空間,F.修験宗・臨済宗卓越空間である。これは地域区分を行なったように

見えるが,その手順がまったく記されていない。中には異なる 2つの区画に分割されている市町村もあ

るが,その基準は不明である。

地域区分をする際にまず考えねばならないのは,区分地域(区域,区画)のスケールである。筆者

の前稿では,「 1つの都道府県だけで,空間的に独立した 1区画を作らないようにした」(55頁)ため,

周辺から孤立した類型になった東京都,鳥取県,四国 3県の場合,周辺の県と合わせて再計算し最多宗

グループを確認したうえ,それらの区画に含めた。ただし,島として独立し面積も大きい北海道と,仏

教色の希薄な沖縄県だけは別扱いとした。本稿のような 1都道府県内の地域区分においては,同様に,

1 つの市区町村だけで,空間的に独立した 1区画を作らないようにすることが考えられる。ただし,

都道府県の場合と違って,市区町村間においては,面積や人口の格差が大きい(特に平成の大合併後は,

合併によって巨大化したところと合併しなかったところとの差が拡大している)。人口の多い市や面積

の広い行政区域がそこだけ隣接市区町村と性格が異なっていた場合,その市や行政区域だけで 1区画を

構成させることも可能性としてはありうる。

次に考えねばならないのは,区分地域の数である。筆者の前稿ではこの点に言及しなかったが,結果

的には日本を 7つの区画に区分した。一般論として,区画の数が多くなればなるほど,厳密にはなるが,

地図としての明瞭さは失われる。単位地域(本稿では市町村)の数や,指標とするデータの集中・散在

の度合いにもよるが,わざわざ「地域区分」をする以上,識別のしやすさを念頭において,区画の数が

多くなりすぎないよう心がけるべきであると考える。

さらに,区分地域それぞれに名称を付すことも,理解を容易にするうえでは重要であろう。筆者の前

稿では,「北海道浄土系地域」のように,地名と特性をセットにして名前をつけた。コーンベルトや綿

花地帯といった表現では位置が把握できないし,同じ類型が複数の区画に分かれてしまう場合の問題も

出てくる。本稿でも,前稿の方法を踏襲して,地名と特性を組み合わせたネーミングを行ないたい。

3. 地域分類の指標

上述のように松井は,クラスター分析によって新潟県内の市町村を類型化し,地図化している。松井

論文の地域分類図をもとにして地域区分を行なうことも可能であろうが,新たに区分線を引く際に,何

をもって市町村の類型変更をするかの資料がない。また,クラスター分析の特性として,同質な市町村

をまとめることはできるが,それぞれの類型の性格を一言で表現しにくい(言い換えれば,分かりにくい)

という問題がある。たとえば,仏教宗派の B 1類型を松井は「各宗派バランス型」と表記するが,これ

に所属する市町村の平均は,真宗系 37%,曹洞宗 32.9%,真言宗系 13.7%,日蓮宗系 13.1%で,「各宗

派バランス型」でイメージされるものとは異なるであろう。

本稿では,筆者の前稿でも採用したように,寺院数が最多の宗派によって市町村を分類し,地域分類

図を作成するという方法をとりたい。これは,結果的には,松井論文の第 2図(仏教宗派の分布)で各

市町村における寺院数の構成比が 70%以上,50%以上の宗派を地図化しているのと類似の作業をする

ことになる(ただし,松井論文では,寺院数が 50%以上の宗派がない市町村は空白の区画にされている)。

神社の場合も,神社数が最多の神社名称によって市町村を分類することにする。

なお,市町村名・郡名は昭和 51年当時の範域と呼称を使用し,「旧」という冠称は省略する。現在の

市町村名・郡名を指す場合は,その旨を付記することにする。

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41.5%

27.4%

16.3%

6.3%

2.7%

1.2% 2.3% 2.4%

図1 宗派別寺院数の割合

図2 真宗系寺院の分布 図3 曹洞宗寺院の分布

図4 真言宗系寺院の分布 図5 修験宗寺院の分布

16― ―

. 寺院の分布

1. 宗派別寺院数と寺院分布

まず,仏教寺院から検討する。新潟県内の寺院数(仏教

系宗教法人数)は,昭和51年 3月31日現在の『新潟県宗教

法人名簿』によれば 2999である 9)。宗派別の内訳は,図

1 のように,真宗系 1245(41.5%),曹洞宗 821(27.4%),

真言宗系 489(16.3%)の 3宗派が多く,以下,日蓮宗系

189,浄土宗 81,修験宗(現在は本山修験宗)35,その他

68,単立 71となっている 10)。日本全体における構成比と

比べて,真宗系と曹洞宗の割合が高いことは,松井が指摘

しているとおりである。

次に,宗派別に寺院の分布状況を見てみたい。宗派別・

市町村別寺院数の集計結果は表 1のとおりである 11)。最多

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表1 新潟県の宗派別・市町村別寺院数(昭和51年3月31日現在)

市町村 真宗系  % 曹洞宗  % 真言宗系 % 日蓮宗系 % その他 単立 合計 備考

新潟市 104 57.8 30 16.7 17 9.4 17 9.4 10 2 180

長岡市 117 68.4 27 15.8 16 9.4 6 3.5 4 1 171

上越市 172 66.4 37 14.3 10 3.9 11 4.2 15 14 259

三条市 19 30.2 17 27.0 10 15.9 15 23.8 2 0 63

柏崎市 33 22.0 44 29.3 40 26.7 18 12.0 15 0 150

新発田市 12 12.6 57 60.0 14 14.7 7 7.4 4 1 95

新津市 13 37.1 14 40.0 3 8.6 5 14.3 0 0 35

小千谷市 11 22.9 18 37.5 14 29.2 1 2.1 4 0 48

加茂市 8 25.8 13 41.9 8 25.8 1 3.2 1 0 31

十日町市 2 8.0 13 52.0 0 0.0 0 0.0 10 0 25

見附市 18 42.9 14 33.3 6 14.3 2 4.8 2 0 42

村上市 10 17.9 24 42.9 10 17.9 5 8.9 6 1 56

燕市 21 80.8 2 7.7 2 7.7 0 0.0 1 0 26

栃尾市 2 9.1 11 50.0 7 31.8 2 9.1 0 0 22

糸魚川市 36 65.5 11 20.0 4 7.3 1 1.8 2 1 55

新井市 57 93.4 2 3.3 1 1.6 0 0.0 1 0 61

五泉市 2 4.7 28 65.1 8 18.6 2 4.7 3 0 43

両津市 5 8.2 11 18.0 29 47.5 2 3.3 4 10 61

白根市 22 64.7 9 26.5 1 2.9 2 5.9 0 0 34

豊栄市 29 76.3 9 23.7 0 0.0 0 0.0 0 0 38

北蒲原郡 17 14.2 77 64.2 19 15.8 3 2.5 4 0 120

安田町 2 14.3 11 78.6 1 7.1 0 0.0 0 0 14

京ヶ瀬村 1 25.0 2 50.0 0 0.0 0 0.0 1 0 4

水原町 3 15.8 12 63.2 1 5.3 1 5.3 2 0 19

笹神村 3 16.7 15 83.3 0 0.0 0 0.0 0 0 18

豊浦町 1 14.3 6 85.7 0 0.0 0 0.0 0 0 7

聖籠村 4 40.0 4 40.0 1 10.0 1 10.0 0 0 10

加治川村 0 0.0 8 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0 8

紫雲寺町 2 28.6 3 42.9 0 0.0 1 14.3 1 0 7

中条町 1 4.2 8 33.3 15 62.5 0 0.0 0 0 24

黒川村 0 0.0 8 88.9 1 11.1 0 0.0 0 0 9

中蒲原郡 20 25.6 33 42.3 15 19.2 8 10.3 2 0 78

小須戸町 5 41.7 4 33.3 1 8.3 2 16.7 0 0 12

村松町 4 10.3 19 48.7 12 30.8 3 7.7 1 0 39

横越村 5 35.7 6 42.9 1 7.1 2 14.3 0 0 14

亀田町 6 46.2 4 30.8 1 7.7 1 7.7 1 0 13

西蒲原郡 114 67.9 24 14.3 19 11.3 8 4.8 2 1 168

岩室村 9 60.0 5 33.3 1 6.7 0 0.0 0 0 15

弥彦村 5 45.5 5 45.5 1 9.1 0 0.0 0 0 11

17― ―

の真宗系寺院は,図 2のように,新潟市・長岡市を中心とする地域と,上越市を中心とする地域に集中

していることが明瞭である。第 2 位の曹洞宗(図 3)は全県的な広がりを見せるが,県北部にやや多

めである。第 3位の真言宗系(図 4)も全県に広がっているが,佐渡と柏崎市から北魚沼郡にかけての

相対的多さが目につく。なお,県内の順位は第 6位だが,後の地域区分で登場するため,修験宗(図 5)

を取り上げておくと,修験宗は南魚沼郡に集中しており,西隣する中魚沼郡と十日町市を含めた範域に

すべての寺院が位置している。

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分水町 13 56.5 3 13.0 5 21.7 1 4.3 0 1 23

吉田町 19 67.9 4 14.3 2 7.1 3 10.7 0 0 28

巻町 23 60.5 5 13.2 5 13.2 4 10.5 1 0 38

西川町 8 80.0 1 10.0 1 10.0 0 0.0 0 0 10

黒埼町 7 63.6 0 0.0 3 27.3 0 0.0 1 0 11

味方村 9 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 9

潟東村 7 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 7

月潟村 7 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 7

中之口村 7 77.8 1 11.1 1 11.1 0 0.0 0 0 9

南蒲原郡 27 45.8 19 32.2 8 13.6 2 3.4 2 1 59

田上町 1 9.1 9 81.8 0 0.0 0 0.0 0 1 11

下田村 0 0.0 6 42.9 6 42.9 0 0.0 2 0 14

栄村 10 71.4 4 28.6 0 0.0 0 0.0 0 0 14

中之島村 16 80.0 0 0.0 2 10.0 2 10.0 0 0 20

東蒲原郡 0 0.0 15 33.3 23 51.1 1 2.2 6 0 45

津川町 0 0.0 2 18.2 7 63.6 1 9.1 1 0 11

鹿瀬町 0 0.0 5 62.5 3 37.5 0 0.0 0 0 8

上川村 0 0.0 2 15.4 7 53.8 0 0.0 4 0 13

三川村 0 0.0 6 46.2 6 46.2 0 0.0 1 0 13

三島郡 66 44.0 27 18.0 27 18.0 24 16.0 4 2 150

越路町 8 40.0 10 50.0 2 10.0 0 0.0 0 0 20

三島町 10 58.8 1 5.9 4 23.5 1 5.9 1 0 17

与板町 16 84.2 2 10.5 0 0.0 1 5.3 0 0 19

和島村 8 33.3 2 8.3 1 4.2 13 54.2 0 0 24

出雲崎町 10 25.0 7 17.5 14 35.0 5 12.5 2 2 40

寺泊町 14 46.7 5 16.7 6 20.0 4 13.3 1 0 30

古志郡 2 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 2

山古志村 2 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 2

北魚沼郡 3 6.5 19 41.3 19 41.3 0 0.0 5 0 46

川口町 0 0.0 2 25.0 5 62.5 0 0.0 1 0 8

堀之内町 1 9.1 3 27.3 5 45.5 0 0.0 2 0 11

小出町 0 0.0 7 58.3 5 41.7 0 0.0 0 0 12

湯之谷村 0 0.0 1 20.0 3 60.0 0 0.0 1 0 5

広神村 2 28.6 3 42.9 1 14.3 0 0.0 1 0 7

守門村 0 0.0 2 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0 2

入広瀬村 0 0.0 1 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0 1

南魚沼郡 3 3.0 23 23.2 25 25.3 3 3.0 43 2 99

湯沢町 0 0.0 1 12.5 0 0.0 1 12.5 4 2 8 修験宗2,臨済宗系2

塩沢町 1 2.8 7 19.4 5 13.9 1 2.8 22 0 36 修験宗 11

六日町 2 5.3 9 23.7 14 36.8 0 0.0 13 0 38

大和町 0 0.0 6 35.3 6 35.3 1 5.9 4 0 17

中魚沼郡 5 16.1 17 54.8 0 0.0 1 3.2 8 0 31

川西町 2 18.2 6 54.5 0 0.0 1 9.1 2 0 11

津南町 3 18.8 8 50.0 0 0.0 0 0.0 5 0 16

中里村 0 0.0 3 75.0 0 0.0 0 0.0 1 0 4

刈羽郡 17 29.3 11 19.0 24 41.4 3 5.2 3 0 58

高柳町 0 0.0 1 50.0 0 0.0 0 0.0 1 0 2 浄土宗1

小国町 1 8.3 6 50.0 4 33.3 0 0.0 1 0 12

刈羽村 5 38.5 1 7.7 5 38.5 2 15.4 0 0 13

西山町 11 35.5 3 9.7 15 48.4 1 3.2 1 0 31

東頸城郡 42 66.7 18 28.6 1 1.6 0 0.0 0 2 63

18― ―

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安塚町 14 93.3 1 6.7 0 0.0 0 0.0 0 0 15

浦川原村 11 68.8 4 25.0 1 6.3 0 0.0 0 0 16

松代町 0 0.0 5 83.3 0 0.0 0 0.0 0 1 6

松之山町 2 28.6 4 57.1 0 0.0 0 0.0 0 1 7

大島村 8 66.7 4 33.3 0 0.0 0 0.0 0 0 12

牧村 7 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 7

中頸城郡 172 77.5 29 13.1 10 4.5 6 2.7 3 2 222

柿崎町 28 65.1 7 16.3 3 7.0 3 7.0 2 0 43

大潟町 13 81.3 2 12.5 1 6.3 0 0.0 0 0 16

頸城村 27 87.1 2 6.5 0 0.0 2 6.5 0 0 31

吉川町 34 79.1 3 7.0 5 11.6 1 2.3 0 0 43

妙高高原町 3 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0 3

中郷村 4 80.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 1 5

妙高村 10 90.9 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 1 11

板倉町 18 72.0 7 28.0 0 0.0 0 0.0 0 0 25

清里村 10 58.8 6 35.3 1 5.9 0 0.0 0 0 17

三和村 25 89.3 2 7.1 0 0.0 0 0.0 1 0 28

西頸城郡 33 54.1 24 39.3 4 6.6 0 0.0 0 0 61

名立町 7 38.9 11 61.1 0 0.0 0 0.0 0 0 18

能生町 19 59.4 10 31.3 3 9.4 0 0.0 0 0 32

青海町 7 63.6 3 27.3 1 9.1 0 0.0 0 0 11

岩船郡 0 0.0 60 74.1 13 16.0 5 6.2 3 0 81

関川村 0 0.0 7 70.0 2 20.0 0 0.0 1 0 10

荒川町 0 0.0 4 50.0 1 12.5 2 25.0 1 0 8

神林村 0 0.0 15 68.2 7 31.8 0 0.0 0 0 22

朝日村 0 0.0 18 78.3 3 13.0 2 8.7 0 0 23

山北町 0 0.0 15 88.2 0 0.0 1 5.9 1 0 17

粟島浦村 0 0.0 1 100.0 0 0.0 0 0.0 0 0 1

佐渡郡 31 14.0 34 15.4 82 37.1 28 12.7 15 31 221

相川町 10 18.2 4 7.3 19 34.5 12 21.8 6 4 55

佐和田町 10 30.3 7 21.2 7 21.2 3 9.1 2 4 33

金井町 3 10.7 7 25.0 9 32.1 2 7.1 0 7 28

新穂村 4 17.4 1 4.3 4 17.4 1 4.3 1 12 23

畑野町 1 3.6 3 10.7 15 53.6 5 17.9 1 3 28

真野町 0 0.0 2 13.3 5 33.3 4 26.7 3 1 15

小木町 1 9.1 1 9.1 6 54.5 1 9.1 2 0 11

羽茂町 0 0.0 5 38.5 8 61.5 0 0.0 0 0 13

赤泊村 2 13.3 4 26.7 9 60.0 0 0.0 0 0 15

合計 1245 41.5 821 27.4 489 16.3 189 6.3 184 71 2999

・太字は,市町村内で最多の数値・斜体は,第1位の宗派が複数ある場合に,当該市町村の類型とした宗派の数値・下線は,地域区分の調整によって,第1位以外の宗派を当該市町村の類型としたものの数値

19― ―

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図6 寺院数最多宗派による地域分類

(最多宗派が複数ある町村を表示)

図7 寺院数最多宗派による地域分類

20― ―

2. 寺院数最多宗派による地域分類と地域区分

表 1によって,各市町村における寺院数最多の宗派を特定し,それによって市町村を分類した結果を

地図化したものが図 6である。真宗系は 45の市町村で,曹洞宗は 39の市町村で,真言宗系は 17の市

町村で最多であるが,三島郡和島村では日蓮宗系が,南魚沼郡塩沢町では修験宗が第 1位である。また,

9つの町村については寺院数最多の宗派が 2つある。

そこで,次のような措置をして,第 1 位の宗派が複数ある町村を類型化した。まず, 7年後の昭和

58年発行の『新潟県寺院名鑑』12)で同様に寺院数をカウントし,寺院数最多宗派が 1つに決まる場合は,

その宗派とした。これによって,北蒲原郡聖籠村は曹洞宗( 6寺院),東蒲原郡三川村は真言宗系( 8寺院),

南魚沼郡大和町は曹洞宗( 6寺院),刈羽郡高柳町は曹洞宗( 2寺院),刈羽郡刈羽村は真言宗系( 7寺院)

とした。次に,『新潟県寺院名鑑』で「単立」とされる寺院のうち,どの宗派の系統か記されているも

のをプラスして最多宗派が 1つに決まる場合は,その宗派とした(これで第一の手順と逆の結果が出る

ことはない)。これによって,西蒲原郡弥彦村は真宗系(5+1寺院),南魚沼郡湯沢町は修験宗(2+1寺院),

佐渡郡新穂村は真言宗系(4+5寺院)とした。最後に,『新潟県寺院名鑑』において由緒などの説明がなく,

名簿に名前のみが掲載されている寺院(全部で 537か寺ある)は,活動が不活発と判断し,この数を差

し引いた。これにより,南蒲原郡下田村は曹洞宗( 6寺院,真言宗系は 6-1寺院)とした。以上の分

類結果を地図化したものが図 7である。

図 7の地域分類図をもとに,さらに地域区分を行なった結果が図 8で,それに区域名称を付したもの

が図 9である。細かくなるが,手続きを以下に記しておく。

分かりやすい佐渡から検討する。佐渡の中では佐和田町のみ真宗系寺院が最多であり,他の市町村は

すべて真言宗系区域である。佐渡(=佐渡郡)全体で合計しても真言宗系が最多となるので,佐和田

町も第 2位の真言宗系区域にして,全体を「佐渡 真言宗系区域」という 1区画にまとめることができる。

次に,上越の頸城地方は,孤立した曹洞宗区域である名立町を周辺の真宗系区域と一体化させ,糸魚

川市・上越市・新井市・西頸城郡・中頸城郡と東頸城郡西部で 1つの区画を設定できる。「上越・頸城

真宗系区域」と言える。この区画の東縁は,現在の上越市と柏崎市・十日町市との境界線とも一致して

いる。現行の行政地域名を使うなら,「上越・糸魚川・妙高 真宗系区域」である。

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図9 寺院数最多宗派による地域区分

(区域名称)

図8 寺院数最多宗派による地域区分

21― ―

もう 1つの真宗系寺院集中地区である新潟市・長岡市周辺も,北の新潟市から南の山古志村まで一続

きの範域となっている。これを「新潟・長岡 真宗系区域」とする。新潟県内で唯一,日蓮宗系寺院が

最多の和島村は,第 2位の真宗系の区域とし,東側の「新潟・長岡 真宗系区域」と一体化させる。

南魚沼郡南部の塩沢町と湯沢町は修験宗寺院が最多である。この 2町で「南魚沼 修験宗区域」を形

成させる。

北魚沼郡南部の川口町,堀之内町,湯之谷村と南魚沼郡の六日町は真言宗系寺院が最多で,これらに

はさまれた北魚沼郡小出町は真言宗系寺院が第 2位,南魚沼郡大和町は曹洞宗と真言宗系が同数で,先

ほど『新潟県寺院名鑑』を使って曹洞宗区域にしたところである。これら 6町村を合計して計算しても,

真言宗系寺院が 4割以上で最多となるので,この範域で「魚沼 真言宗系区域」を設定できよう。

東蒲原郡 4町村のうち,鹿瀬町を除く 3町村も真言宗系寺院が最多である。この範域を「東蒲原 真

言宗系区域」とする。

出雲崎町,西山町,刈羽村の 3町村も真言宗系寺院が最も多い。上記の「東蒲原 真言宗系区域」に

比べて面積が狭いので,ここだけで 1区画を設定するか判断に迷うが,寺院数は同区域より多いことに

鑑み,「出雲崎・西山 真言宗系区域」を設定する。

残る市町村はほとんど曹洞宗である。唯一真言宗系の中条町は,周辺町村の宗派に合わせ,第 2位の

宗派でもある曹洞宗の区域に含めるものとする。曹洞宗は県北から中魚沼郡まで広い範囲にまたがって

いるが,県北の岩船郡から北魚沼郡広神村までを「中越・下越 曹洞宗区域」,柏崎市・小千谷市から南

を「柏崎・小千谷 曹洞宗区域」とする。

以上のようにして,寺院数最多宗派により,新潟県を 9つの区域に地域区分することができる。上記

の調整数を集計しておくと,寺院数最多の宗派が複数ある 9 つの町村は,真宗系にしたものが 1,曹

洞宗にしたものが 4,真言宗系にしたものが 3,修験宗にしたものが 1である。また,地域区分の作業

の中で,孤立しているために第 1位以外の宗派に変更したものは 6町村あり,真宗系→真言宗系が 1,

曹洞宗→真宗系が 1,曹洞宗→真言宗系が 2(うち 1町は,第 1位が複数あって曹洞宗としたものの再

調整),真言宗系→曹洞宗が 1,日蓮宗系→真宗系が 1である。この結果,最終的な 112市町村の類型

の内訳は,真宗系 47市町村,曹洞宗 41,真言宗系 22,修験宗 2 となる。当初の地域分類図にあった

日蓮宗は, 1町だけ孤立していたために,地域区分図では見えなくなった。

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18.8%

15.8%

8.0%

7.6%

49.7%

図10 名称別神社数の割合

22― ―

図 8,図 9の地域区分図を,松井論文の第 8図(新潟県の宗教空間)と比較してみたい。松井は 7つ

の類型を設定しているが,上述のように,神社と新宗教(天理教)の地域的差異も加味しているため,

寺院宗派だけに限れば,真宗,曹洞宗,真言宗,修験宗・臨済宗それぞれの卓越空間と多宗派混合空間

との合わせて 5類型である。そして,真宗卓越空間と曹洞宗卓越空間はそれぞれ 2つの区画に分かれて

いるので,新潟県は 7つの区画に区分されている。本稿の真宗系区域,曹洞宗区域,修験宗区域は,だ

いたいの範囲が,松井論文の真宗卓越空間,曹洞宗卓越空間,修験宗・臨済宗卓越空間と一致している。

ただし,真言宗系区域は,佐渡は,松井論文の真言宗卓越空間と合致するものの,越後側は,多宗派混

合空間に近い。また,本稿の東蒲原真言宗系区域は,松井論文の曹洞宗卓越空間に含まれている。全体

としては,本稿は松井論文より,真言宗系区域の広がりが強調されていると言えよう。

なお,ここまでは市町村単位の集計結果に基づいて地図化を行なってきたが,手続きを簡単にするた

めに,市郡単位で集計することも考えられる。試しにこれを地図化してみると,断片的に分布するケー

スは少なくなるが,真宗系の分布範囲が誇張された。また,昭和 51年版『新潟県宗教法人名簿』のデー

タを,現行の行政区域で計算し直して地図化することも考えられる。その結果は,平成の大合併で拡大

した長岡市や三条市の全域が真宗系区域になり,旧市町村単位で地図化したものに比べて,やはり真宗

系区域が誇張された。以上のことから,平成の大合併以前の小さい旧市町村単位で分類・区分するほう

が,やはり適切な結果が得られるように思われる。

. 神社の分布

1. 名称別神社数と神社分布

次に本章では,神道の神社の分布について検討する。松井論文によれば,昭和61年 3月現在の神社本

庁所属神社は 4852社(神道系全宗教法人の 97.3%)というが,昭和 51年版では 4862社(神道系全宗

教法人 4994の 97.4% 13))で,ほとんど同数である。

松井は,「神社本庁系宗教法人数を,特に数の多い 9つの系統に分類し,その構成比」(146頁)を円

グラフに表している。その結果は,諏訪社が 924社(28.1%),神明社が 763社(23.2%),十二社 14)が

387社(11.8%),以下,八幡社 11.6%,白山社 6.1%,稲荷社 5.5%,熊野社 4.6%,山神社系 3.5%,地

域神社系 15)5.6%である。冷静にこの分類を見れば気がつくことだが,この分類には「その他」がない。

すなわち,松井は,すべての神社を「 9つの系統に分類」しているのではなく,すべての神社から 9

つの系統を取り出している。上記の構成比は,松井が第 4図(円グラフ)の注記で書いているように,

9種類の神社の合計を全体とする構成比である。「この 9つ

の系統に新潟県の全神社の 67.8%が含まれている」(151頁)

というが,ある系統の神社が何%と表示された場合,通常は

神社全体に占める割合を思い浮かべるであろう。これら 9つ

の系統の神社が全体として何らかのまとまりがあるなら,そ

の中での構成比を求めることにも意義があろうが,そのよう

なまとまりがあるとは思えない。

そこで,本稿では,主要な 4種類の神社名称 16)が全神社

に占める割合を図 10に提示しておく。具体的な数字は,諏

訪社 17)が 916.3社(18.8%),神明社 18)が 766.2社(15.8%),

十二社 19)が 391.3社(8.0%),八幡社 20)が 370.8社(7.6%)

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表2 新潟県の名称別・市町村別神社数(昭和51年3月31日現在)

市町村 諏訪社  % 神明社  % 十二社  % 八幡社 % その他  % 合計 備考

新潟市 57.2 28.0 55.5 27.2 0.5 0.2 8.0 3.9 82.8 40.6 204.0

長岡市 56.0 25.5 40.0 18.2 7.0 3.2 15.0 6.8 102.0 46.4 220.0

上越市 64.3 26.7 33.5 13.9 15.0 6.2 21.5 8.9 106.7 44.3 241.0

三条市 20.0 29.4 5.0 7.4 0.0 0.0 7.0 10.3 36.0 52.9 68.0

柏崎市 22.0 13.8 14.0 8.8 10.0 6.3 10.5 6.6 102.5 64.5 159.0

新発田市 5.5 3.6 72.0 47.4 0.0 0.0 8.0 5.3 66.5 43.8 152.0

新津市 14.0 23.0 23.0 37.7 1.0 1.6 7.0 11.5 16.0 26.2 61.0

小千谷市 6.0 6.9 7.0 8.0 14.0 16.1 5.0 5.7 55.0 63.2 87.0

加茂市 14.0 31.1 3.0 6.7 3.0 6.7 1.5 3.3 23.5 52.2 45.0

十日町市 14.0 12.3 4.0 3.5 52.0 45.6 9.0 7.9 35.0 30.7 114.0

見附市 22.0 36.7 11.0 18.3 0.0 0.0 3.0 5.0 24.0 40.0 60.0

村上市 1.0 2.0 3.0 5.9 3.5 6.9 1.0 2.0 42.5 83.3 51.0 山神社系7

燕市 8.5 19.8 2.5 5.8 0.0 0.0 11.0 25.6 21.0 48.8 43.0

栃尾市 18.0 29.5 1.0 1.6 2.0 3.3 1.0 1.6 39.0 63.9 61.0

糸魚川市 16.0 14.5 8.5 7.7 6.5 5.9 4.0 3.6 75.0 68.2 110.0

新井市 20.0 27.4 6.0 8.2 5.0 6.8 15.0 20.5 27.0 37.0 73.0

五泉市 8.0 16.3 7.0 14.3 1.5 3.1 6.0 12.2 26.5 54.1 49.0

両津市 6.0 9.4 0.0 0.0 0.0 0.0 4.0 6.3 54.0 84.4 64.0 熊野社7

白根市 40.0 54.8 19.0 26.0 0.0 0.0 4.0 5.5 10.0 13.7 73.0

豊栄市 4.0 5.5 31.0 42.5 2.0 2.7 8.0 11.0 28.0 38.4 73.0

北蒲原郡 55.5 15.2 118.2 32.5 7.0 1.9 22.3 6.1 161.0 44.2 364.0

安田町 3.5 18.4 8.0 42.1 0.0 0.0 3.0 15.8 4.5 23.7 19.0

京ヶ瀬村 23.0 69.7 6.0 18.2 2.0 6.1 1.0 3.0 1.0 3.0 33.0

水原町 5.0 10.2 9.5 19.4 2.0 4.1 4.0 8.2 28.5 58.2 49.0

笹神村 9.0 12.7 27.0 38.0 3.0 4.2 5.0 7.0 27.0 38.0 71.0

豊浦町 1.0 3.3 12.0 40.0 0.0 0.0 0.0 0.0 17.0 56.7 30.0

聖籠村 1.0 4.0 17.8 71.3 0.0 0.0 1.0 4.0 5.2 20.7 25.0

加治川村 3.0 10.3 9.0 31.0 0.0 0.0 3.0 10.3 14.0 48.3 29.0

紫雲寺町 2.0 16.7 6.0 50.0 0.0 0.0 1.0 8.3 3.0 25.0 12.0

中条町 7.0 10.1 14.3 20.8 0.0 0.0 4.3 6.3 43.3 62.8 69.0

黒川村 1.0 3.7 8.5 31.5 0.0 0.0 0.0 0.0 17.5 64.8 27.0

中蒲原郡 24.0 23.1 21.5 20.7 7.0 6.7 12.0 11.5 39.5 38.0 104.0

小須戸町 7.0 41.2 5.0 29.4 0.0 0.0 3.0 17.6 2.0 11.8 17.0

村松町 6.0 10.9 10.5 19.1 7.0 12.7 5.0 9.1 26.5 48.2 55.0

横越村 3.0 21.4 1.0 7.1 0.0 0.0 3.0 21.4 7.0 50.0 14.0

亀田町 8.0 44.4 5.0 27.8 0.0 0.0 1.0 5.6 4.0 22.2 18.0

西蒲原郡 92.5 31.8 65.0 22.3 8.3 2.9 25.5 8.8 99.7 34.2 291.0

岩室村 13.5 33.8 9.0 22.5 2.0 5.0 2.0 5.0 13.5 33.8 40.0

弥彦村 4.0 18.2 9.0 40.9 2.0 9.1 0.0 0.0 7.0 31.8 22.0

分水町 12.0 37.5 1.0 3.1 1.0 3.1 5.0 15.6 13.0 40.6 32.0

吉田町 10.0 27.8 8.0 22.2 1.0 2.8 3.5 9.7 13.5 37.5 36.0

巻町 18.5 31.4 12.0 20.3 2.0 3.4 6.5 11.0 20.0 33.9 59.0

西川町 7.0 25.0 7.0 25.0 0.0 0.0 2.0 7.1 12.0 42.9 28.0

黒埼町 5.0 41.7 2.0 16.7 0.0 0.0 3.0 25.0 2.0 16.7 12.0

味方村 3.0 37.5 1.0 12.5 0.0 0.0 0.0 0.0 4.0 50.0 8.0

潟東村 9.0 37.5 9.0 37.5 0.0 0.0 0.0 0.0 6.0 25.0 24.0

月潟村 5.0 50.0 2.0 20.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.0 30.0 10.0

中之口村 5.5 27.5 5.0 25.0 0.3 1.7 3.5 17.5 5.7 28.3 20.0

南蒲原郡 55.3 31.3 25.5 14.4 1.5 0.8 11.0 6.2 83.7 47.3 177.0

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田上町 7.0 36.8 4.0 21.1 0.0 0.0 1.0 5.3 7.0 36.8 19.0

下田村 6.5 10.5 10.0 16.1 0.0 0.0 2.5 4.0 43.0 69.4 62.0

栄村 18.3 40.7 7.5 16.7 0.0 0.0 3.0 6.7 16.2 35.9 45.0

中之島村 23.5 46.1 4.0 7.8 1.5 2.9 4.5 8.8 17.5 34.3 51.0

東蒲原郡 6.0 6.5 1.0 1.1 0.0 0.0 6.0 6.5 79.0 85.9 92.0

津川町 4.0 18.2 1.0 4.5 0.0 0.0 1.5 6.8 15.5 70.5 22.0 山神社系5

鹿瀬町 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 19.0 100.0 19.0 山神社系8

上川村 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.0 3.1 31.0 96.9 32.0 山神社系 17

三川村 2.0 10.5 0.0 0.0 0.0 0.0 3.5 18.4 13.5 71.1 19.0 山神社系2

三島郡 60.5 27.1 20.0 9.0 11.0 4.9 17.0 7.6 114.5 51.3 223.0

越路町 6.0 20.7 7.0 24.1 1.0 3.4 4.0 13.8 11.0 37.9 29.0

三島町 5.0 38.5 2.0 15.4 0.0 0.0 1.0 7.7 5.0 38.5 13.0

与板町 3.0 13.0 2.0 8.7 2.0 8.7 1.0 4.3 15.0 65.2 23.0

和島村 9.0 31.0 2.0 6.9 1.0 3.4 3.0 10.3 14.0 48.3 29.0

出雲崎町 12.5 24.0 5.0 9.6 1.0 1.9 1.5 2.9 32.0 61.5 52.0

寺泊町 25.0 32.5 2.0 2.6 6.0 7.8 6.5 8.4 37.5 48.7 77.0

古志郡 2.0 16.7 1.0 8.3 5.0 41.7 1.0 8.3 3.0 25.0 12.0

山古志村 2.0 16.7 1.0 8.3 5.0 41.7 1.0 8.3 3.0 25.0 12.0

北魚沼郡 9.0 6.0 6.0 4.0 44.5 29.9 7.0 4.7 82.5 55.4 149.0

川口町 0.0 0.0 0.0 0.0 4.0 28.6 1.0 7.1 9.0 64.3 14.0

堀之内町 1.0 2.9 0.0 0.0 16.0 47.1 2.0 5.9 15.0 44.1 34.0

小出町 4.0 20.0 4.0 20.0 1.0 5.0 1.0 5.0 10.0 50.0 20.0

湯之谷村 2.0 14.3 1.0 7.1 2.0 14.3 3.0 21.4 6.0 42.9 14.0

広神村 2.0 5.7 1.0 2.9 9.5 27.1 0.0 0.0 22.5 64.3 35.0

守門村 0.0 0.0 0.0 0.0 9.0 34.6 0.0 0.0 17.0 65.4 26.0 守門社9

入広瀬村 0.0 0.0 0.0 0.0 3.0 50.0 0.0 0.0 3.0 50.0 6.0 守門社3

南魚沼郡 16.5 9.5 31.0 17.9 24.0 13.9 11.5 6.6 90.0 52.0 173.0

湯沢町 1.0 6.3 4.0 25.0 0.0 0.0 0.0 0.0 11.0 68.8 16.0

塩沢町 4.0 8.5 9.0 19.1 8.0 17.0 1.0 2.1 25.0 53.2 47.0

六日町 8.5 12.0 11.0 15.5 8.5 12.0 9.0 12.7 34.0 47.9 71.0

大和町 3.0 7.7 7.0 17.9 7.5 19.2 1.5 3.8 20.0 51.3 39.0

中魚沼郡 13.0 8.6 9.0 6.0 65.0 43.0 7.0 4.6 57.0 37.7 151.0

川西町 3.0 7.9 5.0 13.2 13.0 34.2 2.0 5.3 15.0 39.5 38.0

津南町 7.0 10.0 1.0 1.4 29.0 41.4 3.0 4.3 30.0 42.9 70.0

中里村 3.0 7.0 3.0 7.0 23.0 53.5 2.0 4.7 12.0 27.9 43.0

刈羽郡 16.0 14.0 9.0 7.9 13.5 11.8 11.5 10.1 64.0 56.1 114.0

高柳町 2.0 9.5 2.0 9.5 2.5 11.9 0.0 0.0 14.5 69.0 21.0

小国町 3.0 8.3 2.0 5.6 8.0 22.2 3.0 8.3 20.0 55.6 36.0

刈羽村 4.0 23.5 1.0 5.9 0.0 0.0 3.5 20.6 8.5 50.0 17.0

西山町 7.0 17.5 4.0 10.0 3.0 7.5 5.0 12.5 21.0 52.5 40.0

東頸城郡 50.0 23.8 10.0 4.8 50.0 23.8 16.0 7.6 84.0 40.0 210.0

安塚町 11.0 35.5 3.0 9.7 5.0 16.1 4.0 12.9 8.0 25.8 31.0

浦川原村 7.0 18.4 3.0 7.9 3.0 7.9 2.0 5.3 23.0 60.5 38.0

松代町 6.0 13.3 0.0 0.0 17.0 37.8 3.0 6.7 19.0 42.2 45.0

松之山町 6.0 20.0 1.0 3.3 11.0 36.7 0.0 0.0 12.0 40.0 30.0

大島村 6.0 25.0 1.0 4.2 6.0 25.0 1.0 4.2 10.0 41.7 24.0

牧村 14.0 33.3 2.0 4.8 8.0 19.0 6.0 14.3 12.0 28.6 42.0

中頸城郡 66.5 20.2 68.0 20.6 19.5 5.9 45.0 13.6 131.0 39.7 330.0

柿崎町 8.0 14.5 13.0 23.6 4.0 7.3 6.0 10.9 24.0 43.6 55.0

大潟町 7.0 38.9 7.0 38.9 2.0 11.1 0.0 0.0 2.0 11.1 18.0

頸城村 10.0 16.4 23.0 37.7 4.0 6.6 9.0 14.8 15.0 24.6 61.0

吉川町 8.0 14.0 7.0 12.3 1.0 1.8 7.0 12.3 34.0 59.6 57.0

24― ―

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妙高高原町 1.0 6.3 4.0 25.0 1.0 6.3 3.0 18.8 7.0 43.8 16.0

中郷村 1.0 12.5 3.0 37.5 0.0 0.0 1.0 12.5 3.0 37.5 8.0

妙高村 3.0 27.3 4.0 36.4 0.0 0.0 1.0 9.1 3.0 27.3 11.0

板倉町 12.0 25.5 5.0 10.6 4.5 9.6 11.5 24.5 14.0 29.8 47.0

清里村 6.0 28.6 0.0 0.0 1.0 4.8 3.0 14.3 11.0 52.4 21.0

三和村 10.5 29.2 2.0 5.6 2.0 5.6 3.5 9.7 18.0 50.0 36.0

西頸城郡 15.0 18.8 5.0 6.3 8.0 10.0 4.5 5.6 47.5 59.4 80.0

名立町 8.0 30.8 0.0 0.0 2.0 7.7 2.5 9.6 13.5 51.9 26.0

能生町 5.0 12.5 3.0 7.5 4.0 10.0 2.0 5.0 26.0 65.0 40.0

青海町 2.0 14.3 2.0 14.3 2.0 14.3 0.0 0.0 8.0 57.1 14.0

岩船郡 7.0 3.6 30.0 15.5 4.0 2.1 17.0 8.8 136.0 70.1 194.0

関川村 0.0 0.0 13.0 28.3 0.0 0.0 2.0 4.3 31.0 67.4 46.0

荒川町 2.0 8.0 10.0 40.0 0.0 0.0 2.0 8.0 11.0 44.0 25.0

神林村 1.0 2.9 2.0 5.9 0.0 0.0 4.5 13.2 26.5 77.9 34.0 山神社系4

朝日村 3.0 6.8 3.0 6.8 2.0 4.5 2.5 5.7 33.5 76.1 44.0 熊野社5,山神社系2

山北町 1.0 2.2 2.0 4.4 2.0 4.4 6.0 13.3 34.0 75.6 45.0 山神社系9

粟島浦村 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 神社なし

佐渡郡 11.0 5.8 0.0 0.0 0.0 0.0 7.0 3.7 172.0 90.5 190.0

相川町 1.0 1.9 0.0 0.0 0.0 0.0 2.0 3.7 51.0 94.4 54.0 熊野社9

佐和田町 2.0 11.1 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 8.3 14.5 80.6 18.0 白山社3

金井町 1.0 6.7 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 10.0 12.5 83.3 15.0 白山社2

新穂村 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.0 100.0 15.0 日吉社4,熊野社2,白山社2

畑野町 1.0 4.3 0.0 0.0 0.0 0.0 1.0 4.3 21.0 91.3 23.0 熊野社5

真野町 3.0 15.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5 2.6 15.5 81.6 19.0 白山社1

小木町 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.0 100.0 12.0 白山社3

羽茂町 2.0 10.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 18.0 90.0 20.0 白山社5

赤泊村 1.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5 3.6 12.5 89.3 14.0 白山社5

合計 916.3 18.8 766.2 15.8 391.3 8.0 370.8 7.6 2417.3 49.7 4862.0

・太字は,市町村内で最多の数値・斜体は,第1位の神社名が複数ある場合に,当該市町村の類型とした神社名の数値・下線は,地域区分の調整によって,第1位以外の神社名を当該市町村の類型としたものの数値

25― ―

である。神社数が小数の端数になっているのは,「神明社・諏訪社相殿」や「神明諏訪社」のように,

神社名に 2つまたは 3つの複数の神名が入っている場合,それぞれの神社に等分したためである(松井

は,それぞれの神社で 1と数えているようである 21))。各神社数自体は昭和 61年と大きな相違がなく,

神社名称別の順位も同じである。

なお,グラフには示さなかったが,神社名の中で一群のまとまりとして見なせるものに,地名のみを

冠した神社がある。『新潟県宗教法人名簿』では神社所在地の大字程度しか対照できないが,それでも

280以上(約 5%以上)の神社がそれに該当する。市町村によっては,1割を超えているところもある。

これ以外に,明治行政村名や小地名を冠しているケースもあるであろう。地名を含む神社名も分析テー

マの 1つとなるであろうことを付記しておく。

次に,神社の名称別に神社の分布状況を見ておく。名称別・市町村別の主な神社数は表 2のとおりで

ある。粟島浦村は,『新潟県宗教法人名簿』に神社が記載されておらず,宗教法人としての神社数はゼ

ロである。神社数が最も多い諏訪社は,図 11のように,新潟市から長岡市にかけてと上越市周辺に多

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図11 諏訪社の分布 図12 神明社の分布

図13 十二社の分布 図14 八幡社の分布

26― ―

く,真宗系寺院の分布と似た傾向を示している。神明社(図 12)は,新潟市から新発田市にかけての

地域に分布の中心がある。十二社(図 13)は,十日町市・中魚沼郡を中心とする県南部にかなり偏っ

た分布を見せている。八幡社(図 14)は県全域に見られ,それほど際立った分布の特徴がない。なお,

神明社と十二社は,佐渡には 1社も存在しない。

2. 神社数最多名称による地域分類と地域区分

寺院の場合と同様,神社の場合も,各市町村で神社数が最多の神社名称を特定し,それを地図化した

のが図 15の地域分類図である。新潟県全体の総数で多い諏訪社(42市町村),神明社(26),十二社(14),

八幡社( 4)以外にも,山神社系( 5)22),白山社( 5),熊野社( 4),日吉社( 1)が市町村で最多

の神社名称になっている場合が見られる。また,神社数最多の名称が複数ある町村は 9つある(うち青

海町は 3種類の神社名が同数)。

次に,神社の場合は『新潟県寺院名鑑』のような類似資料が存在しないため 23),第 1位の神社名が

複数ある場合に 1つにしぼる町村分類作業と地域区分の作業とを並行して行なった。結果は図 16である。

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図15 神社数最多神社名による地域分類(最多神社名が複数ある町村を表示)

図16 神社数最多神社名による地域区分

27― ―

以下,細かくなるが,調整の手続きを述べていく。

分かりやすい越後平野から説明を始めたい。中蒲原郡横越村は,諏訪社と八幡社が 3社ずつで同数で

ある。周囲の市町村は諏訪社か神明社が最多の区域であり,同数第 1位のうち諏訪社を採用する。西蒲

原郡西川町と潟東村は,ともに諏訪社と神明社が同数である(西川町は 7社ずつ,潟東村は 9社ずつ)。

西川町・潟東村は,新潟市をはじめ周囲がすべて諏訪社最多の市町村で囲まれているので,両町とも諏

訪社の区域とする。西蒲原郡弥彦村は神明社がいちばん多く 9社あるが,周囲の町村はすべて諏訪社最

多である。したがって,弥彦村も第 2位( 4社)の諏訪社の区域とする。燕市は八幡社が 11社で最多

であるが,周囲の市町村はすべて諏訪社最多である。そこで,燕市も第 2位(8.5社)の諏訪社の区域

とする。三島郡越路町は神明社が最多の 7社あるが,北側の諏訪社の区域と南側の十二社の区域にはさ

まれて孤立している。越路町の第 2位は 6社の諏訪社なので,越路町も諏訪社の区域とする。

中頸城郡大潟町は,諏訪社と神明社が 7社ずつで同数である。大潟町と接する市町村のうち,柿崎町

と頸城村は神明社が最多であるが,上越市と吉川町は諏訪社が最多である。ここに部分領域として神

明社の 1区画を設定するか否かによって判断が分かれるところであるが,柿崎町と頸城村の神明社数

が 13社,23社と多いことから(諏訪社は 8社,10社),当該区画を設定するという前提のもとに,大

潟町も神明社区域とする。東頸城郡大島村は,諏訪社と十二社が同数の 6社ある。西側の諏訪社区域と

東側の十二社区域とのちょうど境界にあたっており,諏訪社と十二社いずれの区域にするか決しがたい

ところである。ここでは,諏訪社・神明社同数の北西の大潟町を神明社区域としたことを考慮して,そ

れと引き替えに大島村は諏訪社区域にしておきたい。県西南端の西頸城郡青海町は,諏訪社,神明社,

十二社がいずれも 2社ずつある。唯一隣接する糸魚川市が諏訪社最多であるので,青海町も諏訪社区域

とする。

県北部の岩船郡神林村は,八幡社が 4.5社で最多であるが,北側の山神社系区域と南側の神明社区域

にはさまれて孤立している。神林村の第 2位は 4社の山神社系なので,神林村も山神社系区域とする。

同郡朝日村は 5社の熊野社が第 1位であるが,近隣に熊野社最多の市町村が存在しない。村上市と朝日

村を合わせても熊野社が最多となるので,これらで 1区画を設定することも考えられるが,そうすると,

北端にある山神社系区域の山北町が孤立してしまう。逆に山北町も合わせて,山北町・村上市・朝日村

の 3市町村で合計すると,山神社系が第 1位となるので,2社しかないが朝日村も山神社系区域とする。

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28― ―

東蒲原郡三川村は 3.5社の八幡社が最多であるが,周囲の市町村は山神社系,神明社,諏訪社のいず

れかの区域である。三川村の第 2位は 2社の山神社系と諏訪社であり,隣接区間の長い山神社系区域と

する。中蒲原郡村松町と南蒲原郡下田村はともに神明社が最多であるが(数は 10.5社と 10社),この

2町村だけで孤立している。 2町村で独立した区画を設定するかどうかで,周辺の市町村に合わせるか,

このままにするかの判断が分かれる。県内の他地方では中頸城郡の妙高高原町・中郷村・妙高村の 3町

村が自然に神明社区域を形成しているが,後者には神明社数が合わせて 11社しかない。村松町と下田

村の神明社数はそれよりも多く(計 20.5社),面積も広いことに鑑み,村松町と下田村は神明社区域の

ままとする。

ところで,村松町と下田村を神明社区域のままとすると,新発田市を中心とする北側の神明社区域と

の間に五泉市と三川村がはさまる格好になる。しかし,三川村には神明社がまったく存在せず,ここを

神明社区域にして北側とつなぐのは無理がある。一方,五泉市は, 8社の諏訪社が最多であるが,神明

社は 7社で僅差の 2位である。そこで,五泉市を神明社区域とし,北側の神明社区域と村松町・下田村

の神明社区域とを一体化したい。

北魚沼郡の守門村と入広瀬村は,ともに十二社と守す も ん

門社 24)が同数で最も多い(守門村は 9社ずつ,

入広瀬村は 3社ずつ)。守門社は,これ単独で最多とする市町村が存在しないため,両村とも,南西か

ら続く十二社の区域とする。同じ北魚沼郡の湯之谷村は,八幡社が 3社で最多である。境界を接する町

村の多くは,今の入広瀬村を含めて十二社が最多であるので,湯之谷村も 2社ある第 2位の十二社の区

域とする。同郡小出町は,諏訪社と神明社が 4社ずつで最多であるが,上記のように湯之谷村も十二社

区域とすると,周囲がすべて十二社最多の町村となる。小出町には十二社が 1社しかないが,まわりの

町村に合わせて十二社の区域とする。

佐渡は次のように考える。真野町は 3社の諏訪社が最多であるが, 1町だけ孤立している。そこで,

南に隣接する町村で最多であり,真野町にも 1社ある白山社の区域とする。新穂村は,日吉社が 4社で

最多だが,やはり孤立している。第 2位は熊野社と白山社が 2社ずつで,周辺の市町にはどちらもあり

判断に迷うが,真野町を白山社の区域としたので,こちらは熊野社の区域としたい。

以上の調整を集計すると,第 1位が複数ある 9つの町村は,諏訪社区域にしたものが 5,神明社にし

たものが 1,十二社にしたものが 3(うち 1町は同数第 1位ではなく,第 3位の十二社区域に変更)で

ある。また,最多神社名以外の区域に変更したものは全部で 10市町村である。内訳は,諏訪社→神明

社が 1,諏訪社→白山社が 1,神明社→諏訪社が 2,八幡社→山神社系が 2,八幡社→諏訪社が 1,八

幡社→十二社が 1,熊野社→山神社系が 1,日吉社→熊野社が 1である。寺院の場合に比べて神社は分

布状況が複雑で,第 1位以外のものに変更したケースが多い。最終的な 112市町村の類型の内訳は,諏

訪社が 49市町村,神明社が 26,十二社が 18,山神社系が 8,熊野社が 4,白山社が 6,神社なしが 1

である。調整の結果,当初の地域分類図にあった八幡社と日吉社は,地域区分図では見えなくなった。

八幡社は,神社総数では県内第 4位になるが,特定の地方に集中する傾向がないため,神社数第 1位の

市町村があっても他の市町村に連続せず,地域区分では表に出ない結果になったと考えられる。

地域区分のラインは以上のようにして引けたので,最後に図 17のように区画の名称を付しておく。

県最北部の山神社系区域は村上市と岩船郡の大部分を含むので,「村上・岩船 山神社系区域」とする。

その南の神明社区域は,岩船郡南部から新発田市を経て南蒲原郡下田村まで続くが,神社数が多いのは,

北部の新発田市・豊栄市・新津市と北蒲原郡である。したがって,「新発田・北蒲原 神明社区域」とす

る。新発田・北蒲原神明社区域の東南には,県境にかけて山神社系区域が広がる。ここはちょうど東蒲

原郡の 4町村と合致するので,「東蒲原 山神社系区域」とする。北魚沼郡から小千谷市・十日町市・中

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図17 神社数最多神社名による地域区分(区域名称)

29― ―

魚沼郡を経て東頸城郡東部にかけては十二社の

区域になっているが,特に十日町市と北魚沼郡・

中魚沼郡に多い。そこで,ここは「十日町・魚

沼 十二社区域」とする。南魚沼郡の南部 3町

は神明社の区域となっており,区域外だが同郡

北端の大和町も神明社が僅差の第 2位である。

ここは「南魚沼 神明社区域」とする。上にも

述べたように,妙高山麓の中頸城郡西南部 3町

村は神明社区域になっており,「妙高山麓 神明

社区域」とする。同じ中頸城郡の柿崎町など北

部 3町村も,神明社区域として残すことにした

ことは上述のとおりであり,ここは「中頸城北

部 神明社区域」とする。越後で残るは諏訪社

区域で,新潟市から長岡市,柏崎市,上越市を

経て県西南端の西頸城郡まで海側の広い範囲に

広がる。ここは「新潟・上越 諏訪社区域」とする。佐渡は,東北部と西南部に分かれる。東北部は「東

北佐渡 熊野社区域」,西南部は「西南佐渡 白山社区域」と呼ぶことにする。以上のように,神社の名

称を指標にして,新潟県を 10の区域に地域区分できる。

寺院の場合と同様,図 16,図 17の地域区分図を,松井論文の区分図(第 8図)と比べておく。松井

の分類は,神社系統だけに限れば,諏訪社,神明社,山岳・地域神,熊野・白山社それぞれの卓越空

間と多神社混合空間との合わせて 5類型である 25)。そして,諏訪社卓越空間,神明社卓越空間,山岳・

地域神卓越空間はそれぞれ 2つの区画に分かれているので,新潟県は 8つの区画に区分されている。本

稿の諏訪社区域の広がりは,松井論文の諏訪社卓越空間とおおよそ同じである。しかし,神明社区域は

松井論文の神明社卓越空間より範囲が広い。これは,本稿で中頸城北部神明社区域と妙高山麓神明社区

域を設定したことにもよる(松井論文では,当該区域は諏訪社卓越空間になっている)。一方,松井論

文では山岳・地域神卓越空間を,県北部から南部内陸部にかけての広い範囲に設けているが,これは本

稿の山神社系区域と十二社区域を合わせたものに近い。佐渡は,松井論文では熊野・白山社卓越空間 1

つにまとめられているが,本稿では熊野社区域と白山社区域を区別したため,佐渡内での地域差が浮か

び上がった。

3. 寺院による区分と神社による区分の統合

最後に,松井論文が行なった,寺院による区分と神社による区分との統合について考えておきたい。

本稿の最終的な地域区分では,112市町村は寺院宗派で 4つ,神社名称で 6つに分類された(「神社なし」

を除く)。したがって,寺院による区分と神社による区分とを重ね合わせると,市町村の類型は,可能

性としては 4× 6 =24とおりの組み合わせができる。しかし,実際にはすべての組み合わせは存在せず,

10以上の市町村が該当するパターンだけを挙げれば,「真宗系+諏訪社」(39市町村),「曹洞宗+神明社」

(16),「曹洞宗 +十二社」(12)の 3とおりである。これらは当然,地図化でき,幸い分布域も連続す

るので,「上越・頸城 真宗系・諏訪社区域」のようなものを設定することが可能である。

しかし,寺院の分布と神社の分布との間に,どちらかがもう片方に影響を与えたというような関係が

なければ(あるかないかは未調査であるが),形式的な統合をしても意義がないのではなかろうか。も

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ちろん,真宗系寺院の分布と諏訪社の分布がかなり重なるという本稿の結果は,そのような関係を探る

出発点としての意義はあるであろうが。相関関係があることは因果関係があることを必ずしも意味しな

いという統計分析の基本に留意して,両者の統合は慎重に検討されるべきであろう。

. おわりに

以上,本稿では,松井の行なった先行研究をもとに,あらためて寺院と神社による新潟県の地域区分

を行ない,それぞれの地域区分図として提示した。地域分類と地域区分を概念的に区別し,市町村の分

類の指標としては,寺院数が最多の宗派と神社数が最多の神社名称を用いた。また,地域区分図を作成

する手順を,ブラックボックスに入れず詳述した。

最後に,今後の課題を 2点挙げておく。第一は,指標第 1位の寺院・神社が複数ある場合の措置であ

る。日本全体の地域区分を都道府県単位で行なうのと違って,市町村の分類の場合,寺院・神社の絶対

数が少ないため,第 1位の寺院・神社が複数になることが少なくない。本稿では,寺院・神社とも 1割

弱の 9町村がそうであった。本稿の寺院の場合は,別の資料を援用して分類を決定したが,年次や性格

の違う資料を併用することに問題がないわけではない。そうすると,本稿の神社の場合のように,地域

分類と地域区分を並行して行なうことになるが,微妙な判断をせまられるケースも出てくる。

課題の第二は,区分地域の数と他の区分方法である。本稿では,寺院で 9区域,神社で 10区域に分

割したが,明瞭さという面では,いくぶん多すぎたきらいがある。それは 112という市町村の数の多さ

によるところもあるが,もう少しシンプルな地図にするには,数市町村のかたまりは無視して,思い切っ

て区分線を引くことが求められる。たとえば, 3町村で設定した妙高山麓神明社区域は,神明社の分布

(図 12)の中ではあまり重要ではないところであり,新潟・上越諏訪社区域に統合することも考えられる。

同一宗派・神社名内での割合といったものを考慮する必要があるのかもしれない。簡潔明瞭な地図を目

指して,どのような場合に無理のない大胆な区分線が引けるのか,今後の検討課題である。

1) 小田匡保「日本における仏教諸宗派の分布―仏教地域区分図作成の試み─」,駒澤地理 39,2003,37-58頁。

2) 永幡豊「北海道における神社の分布について」,北海道地理 57,1983,20-25頁。

3) 竹村一男「神奈川県における日蓮系寺院の分布概要」,文教大学女子短期大学部研究紀要 53,2010,1-7頁。

4) 松井圭介「新潟県の宗教空間─寺院・神社・教会の分布を通して─」,地域調査報告 15,1993,143-152頁。

5) 新潟県総務部文書学事課編『新潟県宗教法人名簿:昭和61年 3月31日現在』,1986。インターネットでの蔵

書検索によると,新潟県立図書館など,新潟県内の一部の図書館には所蔵されている。

6) 新潟県総務部文書学事課編『新潟県宗教法人名簿:昭和51年 3月31日現在』,1976。なお,蔵書検索によれ

ば,平成 7年 3月31日現在のものも刊行されている。

7) 松井はここで注記していないが,天台宗系で最も多いのは修験宗(現・本山修験宗)であり,天台宗そのも

のではない。松井も,論文最後の地域区分においては,「修験宗・臨済宗卓越空間」と名付け,「天台系の本

山修験宗と臨済宗が卓越する」(151頁)と記している。

8) 『高等学校学習指導要領解説:地理歴史編』の地理Bでは,「地域区分図」とならんで「類型地域の分布図」

を挙げるが,本稿の「地域分類図」は,「類型地域の分布図」を空白の単位地域が出ないように重ね合わせ

たものとも言えるであろう。文部科学省『高等学校学習指導要領解説:地理歴史編』教育出版,2010,105-

108頁。ウェブ上の2009年pdf版では103-107頁。

http: / /www.mext.go.jp /component/a_menu/education/micro_detail /_icsFiles/afieldfile /2010/01/29/1282000_3.pdf

Page 19: 新潟県における寺社の分布と地域区分repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/32564/rcr047...県の寺院分布に関する竹村の研究3 )があるが,地域区分的なことまで行なっているのは松井4

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9) 松井によると,昭和61年 3月31日現在の『新潟県宗教法人名簿』所載の寺院数は2879というが,松井論文の

第1図の注記によれば,単立宗教法人を除いた数であり,後の分析も,単立寺院を除いて行なっているよう

である(単立宗教法人の除外は適切ではないと筆者は考える)。なお,昭和58年発行の『新潟県寺院名鑑』

は,県内の全寺院数を2980としている。新潟県寺院名鑑企画編集委員会編『新潟県寺院名鑑』新潟県寺院名

鑑刊行会,1983。

10) 「真宗系」は,真宗大谷派,浄土真宗本願寺派,真宗仏光寺派,真宗浄興寺派,真宗高田派,真宗誠照寺

派,真宗北本願寺派の合計,「真言宗系」は,真言宗豊山派,真言宗智山派,真言宗醍醐派,高野山真言

宗,真言教団(これに属していた寺院の現在の宗派から,今は真言宗豊山派の一部になっていると思われ

る),真言宗御室派,教養真言宗湯殿山派,真言宗室生寺派,真言宗金剛院派の合計,「日蓮宗系」は,日蓮

宗,法華宗陣門流,日蓮正宗,本門佛立宗,日本山妙法寺大僧伽の合計である。「その他」の内訳は,時宗

23,天台宗17,臨済宗円覚寺派 9,天台寺門宗 9,臨済宗妙心寺派 3,臨済宗東福寺派 2,真言律宗 1,黄

檗宗 1,如来教 1,卍教団 1,御嶽修験宗 1である。松井論文で「天台宗系」が2.2%(約63寺)と高く出

ているのは,注 7)でも触れたように,天台宗と天台寺門宗以外に,修験宗をこれに含めているからであろ

う。文化庁編『宗教年鑑』の系統分類に従うならば,修験宗を「天台宗系」に含めてもおかしくはないが,

天台宗よりも修験宗が多いという新潟県の特徴に鑑みれば,修験宗だけで独自に集計するほうが,その性格

が際立つことになろう。

11) 『新潟県宗教法人名簿』には,中魚沼郡の曹洞宗寺院のうち 2寺が川西町,12寺が津南町と記載されている

が,津南町の 4寺は川西町の誤りであり,表 1は川西町 6寺,津南町 8寺に修正した数値で集計している。

また,西頸城郡能生町・青海町の真宗大谷派寺院,曹洞宗寺院の所在地にも誤りがあり,真宗大谷派は能生

町16寺,青海町 6寺,曹洞宗は能生町10寺,青海町 3寺で集計している。

12) 前掲注 9)。

13) 神社本庁以外の神道系宗教法人は,御嶽教(34法人),金光教(24),神習教(21)などである。

14) 中村によれば,十二社は新潟県に多い神社で,日本全体の約2 /3が新潟県に所在する。新潟県では普通,山

の神と見なされている。祭神は大山祇神が多いが,天神七代地神五代など他の神を祀る神社もある。中村

は,古くからあった山の神が,熊野信仰の影響で「十二」の社号を用いるようになったと推測している。①

中村辛一「十二神社について」,上越市史研究 2,1997,1-11頁。新潟県内には規模の大きい有名な十二社

はなく,『全国神社名鑒』の新潟県「著名神社名鑑」80社や『全国著名神社名鑑』の新潟県39社には,

「十二」を冠する神社は含まれていない。②全国神社名鑑刊行会史学センター編『全国神社名鑒上巻』全国

神社名鑑刊行会史学センター,1977,361-379頁。③神社新報社編『全国著名神社名鑑』神社新報社,

2005,207-213頁。

15) 「地域神社系」とは,松井の説明によれば,守門・川内・弥彦・松芋ママ

(苧)・矢放・黒姫・八海・古志王・金

北山・菱・各神社の合計である。これらの地域神社を一括することに意味があるのか疑問を感じないわけで

はないが,本稿ではこの議論には立ち入らない。

16) 松井は「系統」という言葉を使っているが,そうすると,菅原神社と天満宮のように表記がまったく異なる

ものも同系統の神社としてまとめていく必要がある。神明社の場合なら,皇大神宮のように称する神社を含

めるかどうか判断する必要がある。本稿では,判断の煩雑さを避けるため,「系統」ではなく神社の「名称」

のみで区別することにした。なお,宗教法人名簿には祭神の記載はなく,祭神によって系統の同定や神社の

分類をすることは不可能である。

17) 「諏訪社」は,神社名が「諏訪社」「諏訪神社」とあるもの(相殿の場合は「諏訪」の文字が含まれているも

の)で,六日町の「上諏訪神社」「下諏訪神社」も含めた。吉川町米山の「諏山神社」は諏訪神社の誤記と

判断し(吉川町史編さん委員会編『吉川町史第2巻』吉川町,1996,480頁),算入した。能生町の「諏訪楫

取神社」は1 /2にカウントした。

18) 「神明社」は,神社の名称が「神明社」「神明宮」「神明神社」とあるもの(相殿の場合は「神明」の文字が

含まれているもの)である。糸魚川市の「七社神明社」,村松町の「晃宮神明宮」は,相殿の場合と同じよ

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うに合成神社名と考えて,それぞれ1 /2とした。ただし,村上市の「伊勢神明社」,巻町の「槇神明宮」は,

(神名でなく)地名が付加されていると考え, 1にカウントした。新発田市城北町の「神名社」は「神明社」

の誤植と判断し(新発田市史編纂委員会編『新発田市史下巻』新発田市,1981,911頁),数に算入した。同

じ伊勢信仰の系統でも,伊勢社,両皇大神宮,皇大神宮,皇大神社,豊受神社などと称する神社は除外した

が,これらは少数であり,大勢には影響がない。

19) 「十二社」は,神社名に「十二」の文字が含まれているものを数えた。ほとんどは「十二社」か「十二神社」

という神社名であるが,「十二社神社」(十日町市に 2社),「上十二社」(糸魚川市),「十二宮社」(笹神

村),「十二宮」(村松町)も含めた。また,「十二所神社」(村上市に 2社と相殿 1社,朝日村に 2社)と

「十二所社」(巻町)は,熊野十二所権現との関わりも推測されるが,「十二社」自身もそういう推測が成り

立ちうるので,本稿では「十二所」とあるものを区別せず,「十二社」に一括した。ただし,「十二山神社」

(栃尾市に 2社,五泉市に 1社,湯之谷村に 2社,広神村に 1社)は,山神社との合成神社名,「十二若神

社」(糸魚川市)は若宮社との合成神社名と考え,それぞれ1 /2とカウントした(高柳町の山神十二社も同様

である)。塩沢町の「熊野十二社」,大和町の「薬師十二社」(これは薬師如来の十二神将に由来する可能性

もあるが)も1 /2とした。

20) 「八幡社」は,神社名が「八幡社」「八幡宮」「八幡神社」とあるもので,他に「八幡宮社」(長岡市),「正八

幡宮」(柏崎市),「宇佐八幡宮」(小千谷市),「鎧八幡宮」(西川町),「長津八幡神社」「西八幡神社」(とも

に朝日村)は 1とカウントした。「若宮八幡宮」「八幡若宮神社」のように,社名に「若宮」が入るものは,

「若宮神社」と称する神社が別にあることから,1 /2に数えた(豊栄市の「若八幡神社」,「若宮」の誤植と判

断した上越市富岡の「若宇八幡宮」,同じく加茂市鵜森の「若山八幡宮」を含む)。

21) 第 4図の注記に「合祀殿はそれぞれの神社において数に入れている」とある。

22) 「山神社系」は,松井と同様,神社名が「山神社」「大山祇神社」に類するものを一括した。上川村や鹿瀬町

など東蒲原郡では「山神社」がほとんどであるが,山北町や村上市など県北部では「大山祇神社」が多い。

三川村中ノ沢の「大山神社」は,判断がつかないので除外した。なお,『新潟県宗教法人名簿』には「大山

祗4

神社」とあるが,神道関係の辞典類では通常,神名を「大山祇4

神」と表記し,著名な愛媛県大三島の同種

の神社も「大山祇4

神社」であるので,本稿でも「大山祇神社」と表記しておく。

23) 昭和52年刊の『全国神社名鑒』には神社の所在地が掲載されているため,第 1位の神社名が複数ある町村の

いくつかは 1つにしぼることができようが,それ以外に選別できるデータはない。前掲注14)②。

24) 守門社は,守門岳(現在の三条市と魚沼市の境に山頂がある)への信仰に由来する神社である。

25) 松井論文のF修験宗・臨済宗卓越空間は,本文中で神明社が多いと記されているので,神明社卓越空間に含

める。

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* Department of Geography, Komazawa University

Distribution of Buddhist Temples and Shinto Shrines in Niigata Prefecture and the Division of the Region

ODA Masayasu*

Geographical division of a prefectural area from a religious viewpoint was once discussed by Matsui (1993) in the case of Niigata, which, however, lacks the description of the dividing process. This paper aims to reexamine his argument and to draw dividing lines on the map of Niigata Prefecture in terms of Buddhism and Shinto based on the distribution of temples and shrines. Firstly, the author expresses his view on the conceptual difference between “classification of regions” and “division of the region” and on the method of dividing the region geographically. Concerning Buddhism, after surveying the distribution of temples by denomination, he classifies 112 municipalities according to the denomination with the largest number of temples. Based on the classification map, the division map of the region is made, where the Prefecture is divided into 9 subregions. As for Shinto as well, municipalities are classified by the name of shrine with the largest number of shrines, and the geographical division of the Prefecture is proposed as the map which consists of 10 subregions. Lastly, the paper refers to the meaning of the integration of the division by temples and that by shrines.

Keywords: distribution of religion, Buddhist temple, Shinto shrine, Niigata Prefecture, division of the region