ctdi 再入門 - jst
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討論会テー
マ : 『X 線検査 にお ける医療被ば く線量標準測定法』の確立に 向けて
CTDI再入門
名古屋 大学 医学部保健学科 小山 修 司
1.はじめ に
近年 の IEC や ICRP などの 勧告等で, X 線CTの 被 ばく線量 につ い て CTDI を用 い た方法が 決め
られ ,定着して きて い るもの と思われる.また,計
測分科会の 例 年の 事 業 で ,医療被 ばく測 定セ ミ
ナ ーとい うもの を,年間数回 ご と,各地 方部会と
一緒 に行 わせ て い た だ き,診断X 線に 関する線
量測定法 の 普及に 勤め,そ の 中で もCTDI を用 い
た方法 につ き説 明させ て きて い ただ い て い る.こ
こ で は ,セ ミナーで 行 っ て い る方法論 に基 づ き,
その エ ッ セ ンス を濃縮 して 述 べ て みた い と思う.
2.どの ような単位で 測るか
X 線 CT の 線 量表 示 として,現在最もよく用 い
られて い る の は,CTDIvolとDLP (Dose Length
Product)である. CTDIv 。1は,目的の ス キ ャ ン条
件に お ける,円筒形 の ア ク リル 樹 脂製フ ァ ン トム
中にお ける,特定で は ない どこか の一点にお ける
平均的な線量を表 し,DLP は,そ の 点の 線量 に長
さを乗 じた ,い わ ゆ る,線積分 線量 を表 して い
る,こ こ で い う線 量は,フ ァ ン トム中に お ける空 気
吸収 線量 (ある い は,空気 カ ーマ )で あり,単位
はグ レイ (Gy )で ある.測定 の 目的 によっ て は t そ
の 他の 単位 で の 評価が 必 要 になるか も知れ ない
が こ こ で は,これ らの 値を求め て い くや り方 を説
明する,
3 .X 線 CT の 被 ばくの 特殊性
X 線 CT に よる被検者被ばくの 仕方は,一般撮
影や透視などと異なる.一般撮 影 などで は X 線の
入射が一
方向で ある の に対 して,X 線 CT で は被
検者 の 周 囲360度方向か らX 線が入射する点で
ある.また ,1回 の 検査 に つ い て ,前者 が 1ない し
数方向か らの X 線照射 で 終わ る の に対 して,後者
は数十 回の 照射 (ス キャン)が行 われ る点も前者
と異 なるところで ある.
X 線 CT で の 被 検 者 の 被 ばくの 仕 方 を,図 1に
示す,
患 者
ガン トリー
図 1 X線 CT での被検者の被ばくの仕方
なお ,こ こ で の 説明は,理 解をしや す くするため
にイン ク リメ ンタ ル (もしくは コ ン ベ ン シ ョ ナル )型
の CT で 行 うが,こ れ はヘ リカル CT などで も同 じ
ように 考えるこ とが で き,後 の 節 で 詳 しく述 べ
る.図 1にお い て,X 線 CT 装置 の ガ ン トリの 部分
に 注 目すると,X 線 管は ス キ ャ ン毎に一
定の X 線
を出しなが らガ ン トリ内を回転する,すると,図中
の 山形で 示され る線量プ ロ フ ァ イル が 発生 する .
これ は ,人体 の ような散乱体 がなけれ ば ス ライ
ス 厚で 制 限された 幅 を持 つ 矩 形 となるが ,散乱
体の 中で は X 線 の 吸収 ・散乱により図の ような緩
や か な斜面 を持つ 山型 となる.こ こ で ,被検者体
内の一
点P に 注目する .ス キ ャ ン が 始まる と,点 Pは,ス キャ ン 中心か ら左側 に離 れた 線量 プ ロ フ ァ
イル 裾 野の 線 量を吸収する.次に,ス ライス 厚分
被検者及び体内の 点 P が 移動 し,線量 プロ フ ァ イ
ル の より内側 の 高さの 線量を吸収する.さらに点
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諞 会 翡 ξ嬲 071 〃 /鰍 /ヲ 4 」ψ 修房
Pが移動 して ,その 高さ の 線量を吸収する動 作 を
繰 り返 す.点 P は線 量プ ロ フ ァ イル 各部 の 線 量を
吸収し,やが て,そ の 影響 を受 けない ところまで
離 れ て 行 き検査が 終了する.する と,点 P は線量
プ ロ フ ァ イル 全体 の 線量を吸収した こ とに なる.
X 線 CT で は,この 線量 プ ロ フ ァ イル で 示 され
る線量を積算して 測定し評価を行う.
4.測定の 概念
前節 で 示した ように,X 線CT の 被ば くは ,線量
プ ロ フ ァ イル の 積 算を行 うこ とで 測定 で きるが,
こ れを具体 的に行 う考え方が,CTDI (CT Dose
Index )とMSAD (Muitiple Scan Average
Dose )で あ る.
CTDI の考え方を,図 2に示 す.図中の 山型の 曲
線 が 線量 プ ロ フ ァ イル で ,そ の 上 に示 した の は,
軸方向 に均一な感度 を持 つ 長尺型 の 検出器 であ
る,具体的に は,CT 用 に 開発 され た ペ ン シル 型
の 電離 箱などである.こ れ をフ ァ ン トム 中に装 着
しT1 回 の ス キ ャ ン を行うこ とに よっ て ,線量 プ ロ
フ ァ イル を一・度に測 定 して しまうの が CTDI の 考
え方で ある.
MSAD の 考え方を,図3に 示す. MSAD で は,
点状の 測定器 を用 い ,こ れ を固定 して ,線量プ ロ
フ ァ イル がス キ ャ ン と共に移動して い くイメージ で
考えるとわ か りや す い .図中 の X 座標 の 0の 位置
に測定器 を配置 したとする,図 1で も示 した よう
に ,測定点で は各ス キ ャ ン で の 線 量プ ロ フ ァ イル
の それぞれの 高さを積算する こ とになり,こ れは
全体的に見 ると,全部 の 線量 プ ロ フ ァ イル を積 算
した 合計 の 線 量プ ロ フ ァ イル の 高さで 示 され る
線量 を測定する こ とになる.こ の 場 合の ,測定器
は具体的に は,熱 ル ミネッ セ ン ス 線量計 (TLD )
や小型の 蛍光 ガ ラス 線量計などを用 い る.
なお,MSAD の 線量 の 積算 にお い て,視 点を
変えてみ ると,X 座標 0位置は 中央の 1ス キ ャ ン の
線量 プ ロ フ ァ イル 中央部分 の 高さの 線量 に,そ の
両 隣を折 り込んで 積算 しt さらにその 両外側 ,ま
たその 両外 側 を折 り込 んで 積算 して い っ た もの
になり,これはすなわち1つ の 線量 プ m フ ァ イル の
積算 したもの となる .した が っ て t 原 理 的 に は
CTDI とMSAD は,同じもの を測定 して い る こ と
に なる.しか し,実際に は測 定器 の 長さの 制限な
ど か ら同 じに ならな い こ とも後 の 説明か ら理解 し
て い ただけると思う.
線量の比
2.0
L5
1.0
0.5
0 −4T −2T O 2T 4T
ス キ ャ ン 位置
図 2 CTDI の 概念 図 .山形 の 線 量プ ロ フ ァ イ ル
をz 軸方 向 に長い 検出器 で 1回 の ス キャ ン
で測 定する,
ヒ
T
も .避. .譲
・
靉’「
熱.鵬
、、・請 、 靉・耽 N 霽.....
線量 の比
2.0
1、5
1.0
O.5
0
図 3
比T
一4T −2T O 2T 4T
ス キ ャ ン 位置
MSAD の 概念 図 .ス キ ャン ごとの線量 プロ
フ ァ イル を合成した もの が 検 査 あた りの 線
量プロ フ ァ イル となり,この高 さに比例 する
線量 をポ イン ト型 の 検出器 で測 定する.
5 .測定の 実際
X 線 CT で の ,被 ば く線 量 測 定 の 考 え方 に
CTDI とMSAD があることを説明した.こ こ で の
目的は,前述 した とお りCTDI 測定であ る.した
が っ て,本 稿で も,CTDI の 測定 を中心 に解説 を
する.
こ れ も前述 の 通 りで あ るが,こ の ときの CTDI
の 線量は,フ ァ ントム 中の 空 気 吸収線量 Dair(あ
るい は,空気 カ ーマ Kair)で 求め ることが
一般的
で ある.Dairは,照 射線 量に空気の W 値 を乗じ,
電子の 電荷量 で 除して求め られ るため,エ ネル ギ
ーの 情報を必要としない ,
測定の 手順 は,(1)CT 用電離箱 の 校正 ,(2)
CTDI の測定の 2 つ を行 う.
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纛 穿 縦 嬲 07101 再スfiダ 4、ψ 修 房
6.CT 用電離箱 とアクリル樹脂円筒形フ ァ ン トム
CT 用電離箱は,電離長さが 10cm で ない もの も
市販 され て い るが,標準 的に は 10cm の CTDI を
測定する こ とに なっ て い る.市販 され て い るもの
の 例 を図4に示す.
アクリル 樹脂製 フ ァ ン トム は,直径 32cm の もの
と,直径 16cm の もの が 市販 され て い る .前者 は
腹部を想定 した もの で あり,後者 は頭 部を想定し
た もの で ある,奥行 きは,15cm程 度で,それ ぞれ
中央 と外周 表面か らlcm の 深 さ の 4箇所,計 5カ
所に CT 用 電離箱を挿入する孔 が 開けて ある.こ
れ ら の 孔で,CT 用電離 箱を挿入 して い ない とこ
ろ に は,ア クリル 樹脂 の 棒 を詰め て測定 を行 う.
こ の フ ァ ン トム の 一例を図5に示す
7。測定手順
(1)線量 計の 校正
一般に , 線量計の 出力は,そ の ままで は使用せ
ず 照射され た X 線の エ ネル ギー
に応 じた校 正 定
数を乗 じ,さらに大気補正 (空気密度補正 )係数
を乗じて 照射線量絶対値 (C/kg または mR )とし
て使用する,
そこ で, 最初に 求め るの が 線量 計の 校正定 数
である.こ の 測定の 配 置を,図 6に示す.こ こ で 用
い るリフ ァ レ ン ス 線量 計 (基準線 量計)は ,産業
技術 総合研 究所 における国家基 準 とトレーサ ビ
リティを持たせ たもの で,具体的には 二 次校正業
者な どに委託 して校正 定数が 把 握 され て い る も
の である,リフ ァ レ ンス線 量計 とCT 用電離箱 を同一
照射野内に配置 して ,一
般撮影装置などを用い
て 照射 を行 う.線 量計の エ ネル ギー特性 の 面 か
ら,実際 の X 線 CT 装置 を用 い て校正 を行うと良
い が,X 線 CT で は,回転軸 (以 後 z 軸とする)方
向の ス ラ イス 厚で 設定 され る コ リメーシ ョ ン が あ
るため,照 射野 が十分に 開けず,リフ ァ レ ン ス 線
量計が 照射 野 内に入 らな い こ とが 懸念され る.こ
の ため,一般 撮影装置などを用 い て 校 正 を行 う.
ただ し,X 線 CT とエ ネル ギーをそろえる た め に,
X 線 CT と同 じ管電圧とし, さらに実効エ ネル ギー
が同 じになるように,射出ロ の 部分 に ア ル ミニ ウ
ム などで 附加フ ィル タを施す
また,ここで 重要なこ とは,CT 用電離箱 に,図
4で 示され るような鉛ス リーブを装着し,X線 の 入
射 する幅 を適当な幅 (こ こ で は,1cmとする)に制
限してお くこ とで あ る,ここで,電 離部分 を1cmに
鉛ス リ
図4 CT用 電離箱の一例.中央部 10cm が検 出部
になっ てい る,右の図は,線量計校 正時に 用
い る鉛ス リーブを装着 した状態.
CTDI 測定時には,鉛ス リーブを使用 しない .
3
1
160mm
寺
図 5
llア クリル 樹 脂性 円 筒 形フ ァ ントムの模 式図 ,
左が腹部を想 定 したサ イズ の もの で , 右 が
頭部を想 定 したサイズ の もの
リフ ァ レ ン
線量計
用電離箱 リ フ ァ レ ン ス CT 用電離箱
陶
図6 CT 用電 離箱の校正 時の幾何学的配置図
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制 限した (lcm あた りの )CT 用電離 箱の 校 正 定
数をF とする.
なお ,線量計の 校 正 は,校 正 業者に直接 委託
する方法 もある.
(2)CTDI の 測定
CTDI の 測定で は,前述の アクリル 樹脂 製円筒
形 フ ァ ン トム (以 下 フ ァ ン トム とする)に CT 用電離
箱を挿入 して,X 線 CT 装置 の ガ ン トリ内に配置 し
て 測定 を行 う.測 定の 基 本 は ,シ ン グ ル ス キ ャ ン
(1 回の ス キ ャ ン )で ある が,実 際 に は測定誤 差
を小さくした り,ヘ リカル ス キ ャ ン の本来の 評価 を
行 っ た りするため に,複数 ス キ ャ ン を行い ,測定
値を回 転数 で 除すこ とにより,シ ン グ ル ス キ ャ ン
の 値を得る.
測 定に際 し,CT 用電離 箱 を挿入 した フ ァ ン ト
ム の 設 置の 仕方に, ベ ッ ド上 に固定する方 法
と, ガ ン トリ内に支持具を設置 しその 上に固定
する (ベ ッ ドか らは 浮かせる)方法が ある.
通 常は の 方法 で 良 く, の 方法 は シ ン グ ル
ス ラ イス ヘ リカル CT が主流 で あ っ た 時期に よく
使用 された ,こ れ は ,当時の シ ン グ ル ス ラ イ ス ヘ
リカ ル CT が,寝台 を固定した状 態で複 数 回ス キ
ャ ン する機能を持 っ て い なか っ た ため,測定 中に
フ ァ ン トム が 動い て しまい CT 用電 離箱が 線量 プ
ロ フ ァ イル か らはずれ てしまうこ とを防 ぐた めで
ある.
インクリメ ン タル CT で は , の 方法で良 い し,
また .近年 の マ ル チス ラ イス CT で は, Perfusion
CT などを行うため に,寝台 を固定 して 任意 の 回
数分 X 線管を回転させ る こ とがで きる ため の
ガン トリ
図 7 実際の X線 CT 装置におけるCTDI測定の配置
方法で 測定が 可能 で ある.た だ し,寝台 の X 線吸
収につ い て詳 しい 分析 が した い 場合 などは の
方法を用 い る こ とも有効で ある. の方法 に よる
測定の 配置 を図7に示す こ の 図で は.ガ ン トリの
前後に X 線吸収の 少な い 木製の 角材 を2本渡 し,
そ の上に フ ァ ン トムを固定 して い るが,発泡ス チ ロ
ール などで 固定して い る例 もある.
8 .測定値の 取扱 い
(1)イ ン ク リ メ ン タル CT
測定に よ っ て 得 られ た CT 用電 離箱の 読 み値
か ら,CTDI を求め るため の 概念 に つ い て 図 8
を用 い て 説明す る .図 中の 山型 の 曲線 が 線量
プ ロ フ ァ イ ル で ,そ の 下 に 示 し た の が , CT
用電離箱 で ある ,仮想 的に線量 プ ロ フ ァ イ ル
お よび CT 用電離 箱 を,校 正 の と き に使用 し
た の と同 じ 1cm に区画 して 考える ,
まず,中央 の 区画で は,線量 プ ロ フ ァ イル
中央 の 曲線 で 示 され る も の の 平均的 な 高 さ の
線 量 を, CT 用 電 離 箱 中央 の 区画 で 吸収 す
る.こ の 区画 で 線 量計 の 出力す る量 を,Ioと
す る.こ の loに, CT 用電離箱の 校正の と こ ろ
で 求め た検出幅 1cm あた りの 校 正定数 F を乗
じ れ ば , こ の 区画で の 正 確 な照 射 線 量 XO
[C/kg】が 求め られる ,また ,その 1 つ 右隣の
区画で は,線量 プ ロ フ ァ イ ル の 斜 め に下 が る
部分 の 平均 の 高 さ で 示 さ れ る 線 量 を ,CT 用
電 離箱 の そ の 区画 が 出力 し ,こ れ をll とす
る .CT 用電離 箱の 長軸上 の 感度 は均 一で あ
る の で ,こ の 区画 で の 校正 定数もF が そ の まま
適用され る.したが っ て ,11に F を乗 じて,この 区
画 で の 正 確な 照射線量 X1 [C/kg ]が 求 め られ
る.
1t=ス ライ ス
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9k/CKKXXX==
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=Σ XI [C/Kg] 1= 5
図 8 CTDIを求めるための 概念図
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齧 鬆 拶蝦 07▼ρ ノ鰍 !写 4必 修可
ほかの 区画 も同様 である.こ れ らの 式 を,図 中の
右側 に示した ,こ れ らの 式を積算する と,Σ liは
CT 用 電離箱か らの 出力その もの で あ り,こ れ に
1cm あ た りの 校 正 定数 F を 乗 じ る こ とに よ っ
て ,線 量プ ロ フ ァ イル 全体 を積 算 した 照射線量
ΣXi[C/kg】が求め られ る こ とになる.こ れが,照
射線量として得られた CTDI とい うことに な る.
(2)シ ン グ ル ス ラ イス ヘ リカル CT
ヘ リカ ル CT で は , X 線管 が 1回転す る間に ,
寝台が 移動 する .こ の こ とに よ るイ ン クリメ ン タ
ル CT とヘ リカ ル CT の 被 ば くの 仕方と測定の 概
念 を合 わ せ た模 式 図を図9に 示 す.イ ン ク リメ ン
タ ル CT で は ,前節 で も解 説 した ように線 量 プ
ロ フ ァ イル を区画で 考 え,各 区画の 実 効中心点
が ,1回 の ス キ ャ ン 毎 に 1区画分 ずつ 移 動 す る
こ とか ら,線 量 プ ロ フ ァ イル を 区画の 積 算 とし
て考えた .シ ン グ ル ス ラ イス ヘ リカル CT で ,イン
クリメ ン タ ル CT と条 件 を同じにするた め に ,ピ
ッ チ (寝 台移 動 速度 /ス ライス 厚 )を1と仮定す
る と,測 定 点 (被 ば くを考慮 する点)が ,1回転
毎 に各 区画分 を積算 し なが ら移動 して い くこ
とに な り,結果 的 に 線 量 プ ロ フ ァ イル 全 体 を,
定義通 り積 算す る こ とに なる .すな わ ち,考え
方として は ,イン クリメ ン タル CT と同じで良い と
い える.
イ ン クリメ ン タル CT と シ ン グ ル ス ライス ヘ リカ
ル CT の 理論 的 な線 量 の 違 い は,イン クリメ ン
タ ル CT で 1回 の ス キ ャ ン 毎に含まれ る X 線 ス イ
ッ チ ン グ に よる立ち上 が り・立 ち下が り成 分 が,
シ ン グ ル ス ラ イス ヘ リカル CT で は存在 しな い こ
とと,逆 に シ ン グ ル ス ライス ヘ リカル CT で ス キ
ャ ン の 前後 にz 軸方 向の 投 影デー
タ補完 の ため
の ス キ ャ ン に よるX 線 成分 を含 むこ とである.
(3)マ ル チ ス ライス CT
マ ル チ ス ライ ス CT は ,シ ン グ ル ス ライス ヘ リ
カ ル CT と同様に考 えることが で き,線 量計 校
正 時の 校正 の 幅を,ス ライス 厚 と列 数を乗 じて
得 られ るビーム 幅 とする こ と,ピ ッ チ の 補正 を
す る こ とをす れ ばCTDI を求 め る こ とが で き
る .
こ こで は,さら に理 解 を深 め るた め に,異 な
っ た考え方で の 求め方 に つ い て 説明する.
まず, 「CTDI の 測定j で述 べ た よ うな,線量
測定の 配置で あるが ,こ こ で もCT 用電離箱を
挿入 した フ ァ ン トム を ベ ッ ド上 に配置するか,
図 7 で示すよ うに し て 測定 を行 う.
こ こ で ,測 定の 概 念 を,図10の よ うに考え
る.す なわち,上記 の 配置で,フ ァ ン トム お よ
びCT 用電離箱が 動か な い よ うに し て ,実際の
撮影 と同 じス キ ャ ン 数で ス キ ャ ン を行 う.する
と,こ の と きの CT 用 電離箱 の 全積算値は ,仮
想的 に 考 えた軸方向 に長 い フ ァ ン トム とCT 用
電離箱 をベ ッ ドに載せ て ,寝台 を動か して 測定
した全積算値と同 じに なるはずで ある .
こ うして 測定された 全積算値に つ い て,フ ァ
ン トム 中z軸上の 1点 Pの 正確な 照射線量 を求め
る の で あるが,図10に示 した とお り,線量 プ ロ
フ ァ イ ル の 中か ら線 量計校正 の 単位 で あ る幅
lcm分 の 測定値を切 り出 して , こ れ に CT 用電
離箱1cmあた りの 校正定数F を乗 じれ ば よ い .
:a :コ ン ベ ン シ ョ ナ ル ス キ t ン
i歹1亅卩 τscan〆1sec10
shrft
,.bliヘ リカル ス キ ャ ン
佰1亅. 11scan and IO $hlft;.
!1sec
図9 コ ンベ ン シi ナ ル (イン クリメンタル )CT と
ヘ リカル CT (シングル ス ライス )での CTDIの
考え方の 概略図
灘一
図 10 マ ル チスライス CT での CTDjの 測定の 概念
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繍 会驪 07T〃 z再ス戸グ るくψ 修 房
す なわ ち, CT 用 電 離箱に よ る総 線 量測 定値
を,撮影範囲 [cm 】で 除 し て ,こ れ に校正定数F
を乗ずる わけで ある.
ヘ リ カ ル CT に お い て の 線量 プ m フ ァ イ ル
は,フ ァ ン トム の 中心軸上 で は,図llの ように
平坦 な形状 となるが ,フ ァ ン トム 表面 から1cm
下 の 位置 で は,ピ ッ チ や ス ラ イ ス 厚 の 関係 に よ
っ て,照射 に重 な りや 隙間が で き,平坦で な く
なる こ ともあ る,こ れを,あえ て 平均的に見 る
の で あれば,線量 プ ロ フ ァ イル が 平 らで あ る も
の と して 扱 えば よ い が ,正確 に測 定す る場合
は,TLD な ど の 補助手段 を用 い て ,そ の 様子
を把握する必要がある .
絶対線量 を求め る ため には大気補正係数K が
必 要 で あ る.測 定 時 の 気 温 を t[℃ 】,気圧 を
P[hPa】とする と,
κ 一脇嬲 )・’
笋3 … …・・・…
とな る.CT 用電離箱 出力X 。 ut に,これ ら の 補
正項 を乗 じ,フ ァ ン トム 中で の 照射線量で示 さ
れる CTDI の X 【C/kg】が 求め られ る.
x [c/瓮9]=
Xout× F × K ×(2.58× 10−4) [(C/kg)/R 亅
…… … (3)
轜嬲
韈巨 …
覊飜
中心軸以外
叙服
蠶讓ヒ
嵐。≡蹄
鞳
最後に,こ の 照射線量 か ら空気 吸収線量 Dair
に変換する.空気の W 値 をW [eV 】,電子 の 電 荷
量 をe [C】とする.
中心軸 に お い て は、均 等照 射
図 11 ヘ リカル CT での フ ァ ン トム中の各位置 に
おける線量 プロ フ ァ イル の様子
こ の よ うな計算の 考え方 は,マ ル チ ス ラ イス
CT だ け で な く, コ ン ベ ン シ ョ ナ ル CT や ヘ リ カ
ル CT に 適用す る こ とも可能で ある.また, CT
用電離箱の 校正 の 単位を,1cm として きた が,
こ れ に こ だ わ る 必 要もな い . もしも,校正の 際
の 長 さ の 単位 を変えた の で あれ ば,CT 用電離
箱に よ る総線量測定値か ら,校正 の 長 さ単位分
の 線量値 を切 り出して ,校正 定数を乗ずれ ばよ
い .
9.計算方法
計算の 手始め は,CT 用電離箱の 校正定数 F
を求め る と こ ろか ら始ま る.こ こ で ,リ フ ァ レ
ン ス線 量計 で 得 られ た照射線量絶対値 を,Xr
「mR 】とし, CT 用 電離箱の 1cm あた りの 出力 を
Xicm [mR ’ cm ]とする と
Dair[Gy] =
x ・・c/・・]・緋 (1.6×10
.19)[〃衫y]
e [α ・・◆・・・… (4)
なお ,W 値 は, ICRP で 33.97と い う値が 採
用 され,わ が国の 法令 で も同 じ値が 採用 され
て い る,電子 の 電荷量 は 1.6 × 10−19[C】.また ,
[eV1 か ら[J】へ の 変換係数 が ,式に も記 され て
い る よ うに 1.6 × 10−19で ある. こ れ らを代入 し
て ,式を整理す る と,
1)air 【Gッ亅=X [()/ゐ団 × 33.97しレ
iq ・・… (5)
となる .これ が ,空気吸収 線量 で 表示 された
CTDI で ある.
な お , (5)式 にお い て 空気吸収線量 Dairを
空気カー
マ Kairとして 扱 う場合 もあるが ,厳密
に 空気 カーマ を求め るに は,二 次電子の 制動放
射に よ り逃げて い く成分の 補正が 必要 となる.
しか し,診断領域 の エ ネ ル ギー
にお い て は,逃
げて い く成分 は ほ ぼ 0で あ るた め, こ の 工 不 ル
ギー領域 にお い ては,空気 カ ーマ を吸収線量 と
同 じ式で扱 っ て も問題 はない .
F 、.=
x・ 一 ___ (1)
Xlcm
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諞 会 発鋤 矇 CT 〃 ∫鰍 1『ダ 4、〃 修房
10,CTDIv 。1とDLP (Dose Length Product)
前節 まで で, フ ァ ン トム 中の 中心 もし くは外
周表面 下 1cm の 点で の 空 気 カ ーマ で 表 した
CTDI が求め られた.現在,実際の 評価 に用 い
られ て い る数量 は,こ の CTDI を基礎 に求め ら
れるCTDIvo1とDLP (Dose Length Product)で あ る c 以下 ,こ れ らの 計算 に つ い て 説明す
る.
CTDI は決 ま っ た大 きさ の フ ァ ン トム を使用
した 規格 測 定 で あ る .こ の 規格 は ,ICRP や
IECで採 用 され て い るが ,そ こ で は, CTDI は
中心か ら ± 5cmす なわ ち10cm (100mm )の 問
を測定す る こ とに な っ て い る,こ の 幅で 測定 し
た もの を,CTDIIooと表記す る .
また,
フ ァ ン ト ム 中心 で の CTDIIGO を
CTDIloo,c,外 周表面下 lcm の そ れ を CTDIloe.pと表記する.CTDIloo.p は 4カ所 (0時,3時,6
時,9時方 向) ある の で ,こ れを平均 した もの
をあ らため て CTDIloo,p として ,次式 で求 め る
フ ァ ン トム 内 の 平均 的 なポ イ ン トの CTDIioo
を,CTDIw (weighted CTDIIoo)と呼ぶ,
一 一 1・塒 ・
+ 1・・脳 臓 、、)
ヘ リ カ ル CT (シ ン グ ル ス ライス ,マ ル チ ス
ラ イ ス )で は,ピ ッ チに よ っ て ,X線照射範囲
に重 な りや隙間が で きて くる.例 えば,ピ ッ チ
1 に対 して ピ ッ チ 2 で は,各ポ イ ン トの 線量
は, (1/2)とな り,ピ ッ チが O.5の と きは,各
ポイ ン トの 線量が 2倍 に なる こ とは明 らか で あ
る,こ の 補正 を行 っ て 表 される の が,CTDIv 。1
で ある.ピ ッ チ をPitchで 表す と,
CTDI ,。t . 禦 D跏 。_ _ .(7) ∫
)itch
なお,本稿で 異 な っ た考え方と して 説明 した の
マ ル チ ス ラ イ ス CT で の 測定値の 取扱法で は,
ピ ッ チ の 成 分が,測 定値 にす で に 含 まれ て お
り,こ の 場合 は, (7)式に よる補正 は 必要 な
い .
DLP [Gy ・cm 】は ,文字通 り線積分 線量 で あ
り, こ れは,1回の 検査 で被検者が 受ける総線
量 と い うこ とで あ る.こ の 値 は ,さ きほ ど の
CTDIv 。 1に照射 され た 範囲 の 長 さ L[cm ]を乗 じ
て求めれ ば よ い ,
DLP [Gy ・cml =CTI)ん・t [Gy]×L [cm ]
……… (8)
また,こ れ ら の 値は,IEC 規格 に準拠 したX
線CT 装置に お い て ,ス キ ャ ン パ ラ メ ータ を設
定した時点で ,装置の 持 っ て い るデー
タか ら計
算 され, コ ン ソール に表示 され る ようにな っ て
い る.
ll.まとめ
X 線CT の 線量 は, CTDI や MSAD とい っ た概
念で測定され る こ とを説明した,また,実際の
測定の 仕方につ い て .そ の注意点 も含め解説 し
た.現在一
般的 に使用 され て い る評価値は,
CTDI をベ ース としたCTDIv 。1とDLP で あ り,
こ の 計算法 につ い て も詳し く説明 した.
本解説を十分理 解 して い た だ き,実際の測定
に役立 て て い ただ けれ ば幸 い で ある.
12.文 献
1)前越 久 他 : 医療被ば く測定セ ミナーテ
キ ス ト.日本放射線技術学会中部部会 ・日
本放射線技術学会計測分科会, (1998),
2)前越 久 監修 : 光子減弱係 数デ ータブ ッ
ク. 日本放射線技術学会, (1995),
3)西 谷源展,山田勝彦,前越 久共編 :放射
線技術 学 シ リ ーズ 「放 射 線計測学」,
(2003).
4)前 川 昌 之 編 : 放 射 線 医 療 技 術 学 叢 書
(25),医療被ば く測定テ キス ト.日本放
射線技術学会計測分科会, (2006),
74
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