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Japanese 　Sooiety 　of 　Physioal 　Eduoation

体育学研究　49 ： 335−346， 2004 335

事例 報告

国内一

流女子 ス プリ ン ター における トレ ー ニ ン グ経過に

　　　　ともなう形態的 ・ 体力的要因と疾走動作 の 変化

新井　宏昌’〕

前村　公 彦4〕

渡邉　信晃21／

岩井　浩一　5，

高本　恵美3）

宮下　　憲6）

真鍋　芳明4）

尾縣　　貢6）

Changes 　in　anthropometric 　factor，　physical　fitness　and 　sp   11t 　motlon

　　　　　　　　during 　the 　training 　process　in　elite　female 　sprinters

Kousuke 　Arai1，　Nobuaki　Watanabe2，

　Megumi 　Takamoto昌

，　Yoshiaki　Manabe ‘

，

　　Kimihiko　Maemura4，　Kouichi　Iwai5

，　Ken 　Miyashita6　and 　Mitsugi　Ogata6

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Abstract

　　　Astudy 　was 　conducted 　to　investigate　the　changes 　in　anthropometric 　factors，　physical　fitness，

and 　sprint 　ability 　and 　motion 　during　the　preparatory　and 　competitive 　periods　in　two　Japanese　fe−

male 　elite 　sprinters ，　The 　measurements 　were 　carried 　out 　f士om 　the　preparatory 　period　to　the　com −

petitive　period　three　times．　The　main 　results 　were 　as 　fbllows：1）In　both　athletes ，　sprint 　speed 　de−

creased 　after 　the　preparatory 　period　and 　increased　in 七he　competitive 　period，2）High −intensity

sprint 　training　during　the　competitive 　period　led　to　hypertrophy　of 　the　psoas　m 句or 　muscle 　and 　im −

provement　of　anaerobic 　power　of　the 　upper 　limbs．3）During 　the　competitive 　period　in　both　athletes ，

the　knee　continued 　to　flex　after 　contacting，　and 　took　off 　while 　maintaining 　a　minimal 　angle ，　These

results 　suggest 　that　the　performance 　of 　elite 　sprinters 　changes 　through 　each 　training　period，　and 　is

influenced　by　a　combination 　of 　anthropometric 　factors，　physical　f1tness　and 　spriht 　motion ．

D 兵庫県立盲学校

　　 〒 655−0884 神 P．市垂水区城が II．14−1一ユ

2） 山形県立 米沢女子短期大学

　　 〒 992・0025　LLI形県米沢 市通 町 6−15−1

3） 大 阪 体育 大 学

　　 〒 590−0496　大 阪 府泉 南 郡 熊 取町 朝代台 1−1

4）筑波大学大学院体育科学研究科

　　 〒 305−8574　茨 城 県 つ くば 市天 王 台 1−1−15）茨城県立 医療 大 学人 間科学セ ン ター

　　 〒 300−0394　茨城県稲敷郡 阿 見町 大字阿 見4669−2

6） 筑波大学体育科 学 系

　　 〒 305−8574　茨城県つ くば市天 土台 1−1−1

連絡先　尾縣　貢

1．H ／tyogo 　Prqfect．u・rat 　Sσんoo ‘扣 r　th召 B 置加 d　a．nd 協 s 〜綿 Z勿

　　IvrtPa・i’reci

　　4−1−1Sh ，iro．qαya，’m ・a，

，　Ta．ri〃 厩

，　Kob 召

，　Hyogo 　655−0884

2

3

Yo？zeora・lva 　Women ’

s　Coliege　qブYamaga ，ta，　Projlict？t’ne

6−15−170horimcu コh’i，｝’07zexa ？ll，a．，｝？r．717．a．gata，992−0025

05’（tka 乙触 初 靦1s寵〃 qプHealth　and 　SPort　3c勿7zo召 8

1−1　Asα b’Ft．’i・rodai

，撫   ‘o 厘

，　Sθv乙η α 7ら Osa，kα 590−0496

4．Doctoral　Prog71arri、　in　Health α 7zd 　SpO71ts．9cie7zceST

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　　 300−0394

6．編 s覦 観 θ 呼 He （協 ’6 ω 認 Spo・rt・s　3（，’ie・Tt，｛］（ts，ひ齢 昭 γ額 ‘μ

　　 Of　Ts？ik ？め α

　　 1−／−iTewn ？，od ，〔扁，　 T．〜 u，kv，〜）a・，　Zわα γ  規 3θ5−85 　74

Corγespondin9 αuthor 　 η2．tstugU＠Cai・iku．　Csukuba ，αC．ゴP

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336 新井ほ か

Key 　words 　；　sprint 　running，　performanee ，

　training 　cycle，　preparatory 　period ，

　competi ・

　　　　　　 tive　period

　　　　　　　　　　　　　 （Japan 　J．　Phys ．　Educ 。　mth ．　Spo瓧 Sci．49：335−346，　July

，2004 ）

キーワー ド　パ フ ォ

ーマ ン ス ，トレー

ニ ン グ周期，

　　　　　　準備期 ， 試合期

1 目 的

　 こ れ まで の ス プ リ ン ト走 に 関する研究は， その

多 くが パ フ ォー

マ ン ス レ ベ ル の 比 較的近 い グ ルー

プにお い て ，疾走能力 に影響する要因を統計的手

法に よ り検討 した もの で ある．こ うい っ た研究 は，

パ フ ォー

マ ン ス， または，そ の 重要な規定因子 と

な りうる疾走速度を向上 させ る ため には，どの よ

うな形態的 ・体力的 ・技術的要 因が必 要 とされ る

の かを知 るヒ ン トに なる．実際 に ， 多 くの競技者

や コー

チ は ，こ れ らの 研究か ら得 られ た知見をも

と に， 基礎的 な体力を身に つ け る ト レーニ ン グか

ら技術 トレーニ ン グ まで を構成 して い る．

　 こ の よ うな トレーニ ン グ の 構成は，性差 を考慮

せ ずに行われ て い る と言えるが ，生 物学．．ヒ，女性

は男性 と比較 して ， 思春期以降 にお い てホ ル モ ン

の 影響に よ り筋量は増加 しに くく，脂肪量が増加

しや す くなる．その ため ，これ まで の 研究で指摘

されて い る よ うに，女性 が男性 と同様の トレーニ

ン グを行 っ た と して も， 絶対的な筋量 は同 じ様 に

増加 しない ． また筋量の 影響 を受ける筋力 に関 し

て も同様の こ とが言 え る （Colliander　and 　Tesch ，

1990 ；Abe 　et　al．，2000）．そ して 筋量や ， その

影響 を受ける筋力は疾 走能力を高め る うえで 重要

な 要 因 と な る こ と は 先 行研 究 で 示 され て い る

（Alexander，1989 ；杉 田ほか，1994；狩野ほか，

1997 ；渡邉ほ か，1999， 2000 ；久野 ほか ， 2001＞．

そ の た め ，絶対的な筋量 の 獲得や ， そ れ に と もな

う筋力 の 獲得が 制限 され るなか で ，女子競技者で

は ，い か な る変容が疾走 能力向 上に貢献 して い る

の か興味深 い と こ ろ で あ るが ，それに つ い て 検討

した研究 はほ とん ど見当た らない ．

　 こ れまで に，秋田・金高 （2000）が男 子大学 ス

プ リ ン タ ーの 2年 間の レ ース パ ター

ン の 分析を 行

うとともに，そ こか ら得られ た問題点を解決 し，

最大疾走速度を向上 させ るため の ト レーニ ン グの

考え方とそ の 実践 を報告 した もの や，当時の 日本

記録保持者であ っ た岩本敏恵選手の 疾走能力向上

における トレーニ ン グ の 考え方 と疾走動作の 変化

を示 した報告が ある （伊藤 ， 1999）．さ らに ， 稲

葉ほ か （2002） は， 女子ス プ リ ン ター 1名を 6年

間追跡 調査 し， トレー

ニ ン グにお ける意識の 変化

と筋力や筋横断面積，疾走動作の 変化か ら疾走速

度向上 に影響した要因を検討 して い る．この よ う

な事例研究の 蓄積 は ， 選手個々 の 特徴 に合わせ て

トレ ーニ ン グを構成 して い くうえで ，非常に有益

な情報 とな りうる と思 われ るが ， こ うい っ た研究

は少ない ．

　そ こ で本研究で は ， 競技歴が 長 く，長期にわた

り トレーニ ン グ を行 っ て きた国内一流女子 ス プ リ

ン ター2 名を対象に ， 準備期お よび試合期の トレ

ーニ ン グに よ っ て ，形態的 ・体力的要因 ， 疾走動

作お よび疾走能力が どの よ うに変化 したか を事例

的に示すこ とによ り，ス プリ ン トの トレ

ーニ ン グ

の ため の 資料 を得る こ とを 目的 と した．

Il 方 法

　 1．対象者 と研究の流れ

　対象者 は ， 国内．．流 女子ス プ リ ン ター2名と し

た （以 下 A，B）．　 A は ，1998− 2002年日本陸上

競技選手権大会 ユOOm ．200m優勝 ， 現 200m 日本

記録保持者 ， B は，2002年 日本学生対校陸上 競技

選 手権大 会 100m 優勝者で あ り，2 名 とも国内 ト

ッ プ レ ベ ル の ス プ リ ン タ ーで あ っ た．

　 A に お い て は，2001 年 10 月 （測定 1）， 2002年

3月 （測定 II），2002年 7 月 （測定 III） に ，　 B に

お い て は 2001年 10月 （測定 D ，2002 年 4月 （測

定 II），2002年 7 月 （測定 lll） に，3 回の 測定 を

行っ た．測定 1か ら測定 IIの 期 間を準備期，測定

IIか ら測定 IIIの 期間を試合期 と した．

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女子ス プ リ ン ターの トレーニ ン グ に よ る変化 337

　表 1 に は，2 名の 年齢 ， 身体的特性 ， 各測定 日

に最 も近い 競技会で の 100m 走 の 記録 ， 測定 にお

ける実験試技で の疾走速度 ， ス トラ イ ド，ピ ッ チ

を示 し て い る．

　 2．測定項目

　1） 大腿部お よび大腰筋 の 筋横断面積

　筋横断面積の 算出は，MR 装置 （AR 工ASmate ，

日立 メ デ ィ コ 社 製）を用 い ，磁気共鳴映像法

（MRI ） に よ り行 っ た．大腿 部の 測定 で は脛骨頭

外側顆問隆起 を 0％ ， 大転子最上端を 100％ と し，

30，50， 70％部位 を決 定 した．各部位の 横断像

か ら筋 ご と に トレース を行 い ， コ ン ピ ューター

に

接続された ス キャ ナーを用 い て トレ ー

ス 画像を取

り込 ん だ ．各筋 の 横 断面 積 は，

ソ フ ト NIH

image （NIH 製） に よ り算出 した．

　大腿長の 70 ％ ，50 ％お よび 30 ％の 各部位で は

大腿四頭筋 （内側広筋 ， 外側広筋 ， 中間広筋お よ

び 大腿直筋），ハ ム ス トリ ン グ ス （大 腿二 頭 筋 ，

半腱様筋 ，

’卜膜様筋），内転筋群 （大 内転筋，小

内転筋，長内転筋，短内転筋 ， 薄筋お よび恥骨筋）

の 各筋 群 の 筋横 断面 積 を算 出 した ． た だ し ，

30％部位の 内転筋群 に つ い て は ， 薄筋以外の 筋

が消失して い る場合が 多い ため ，大腿 四頭筋 とハ

ム ス トリ ン グ ス の み 評価に用 い た．また大腿 部に

お い て は ， 各部位の 脂肪の 横断面積 も算出 した．

大腰筋の 測定で は ，第 4腰椎 と第 5腰椎 との 間を

撮影 し，左右の大腰筋横断面積を算出 した．

　 2）等速性筋力

　 等速性筋力の 測定 に は ，等 速 性 筋 力 測 定器

（Cybex6000，　 Lumex 社製） を用 い た．30， 180

お よび 300deg／s の 3 つ の 角速度 にお い て ， 短縮

性の 股関節お よび膝関節における屈曲と伸展 ， 足

関節 における背屈 と底屈を測定した．測定の 際に

は ， 卜分に ウ ォー

ミ ン グ ア ッ プを行い ，各角速度

に お い て 3− 5 回の 試技 を行 っ た．測 定 された最

高値 をピーク トル ク とし，最大筋力として扱 っ た ．

　3）ジ ャ ン プ パ フ ォー

マ ン ス

　 マ ッ トス イ ッ チ上 にお い て ， 反 動な し垂直跳

（以下 SJ）， 反動 あ り垂直跳 （以下 CMJ ）， 30cm ，

50cm の 台高か らの ドロ ッ プジ ヤ ン プ （以 ドDJ30，

DJ50 ）を行わ せ た． い ずれ も腕 の 振 り込み 動作

の 影響 を排除する ため に ，腰に 手を当て た姿勢で

行わせ た．DJ30，　 DJ50 は ， 接地後は で きる だ け

素早 く高く跳躍する よ う指示 した．評価の 対象 と

して， 滞 空時間か ら算出 した跳躍高，お よ び以下

の 式を用い て接地時間 と滞空時間か ら算 出 した ド

ロ ッ プジャ ン プ指数 （以 下 DJ　index） を用い た．

　DJ　index＝1／8 ・g

・ （滞空時間）ヲ接地時問

　4）上肢 ， 下 肢にお ける無酸素性パ ワー

　無酸素性 パ ワーの 測定 は ， 自転車エ ル ゴ メー

タ

ー（ハ イ パ ワ

ー自転 車 エ ル ゴ メ ー タ ー

；

表 1　身長・体重，パ フ ォ

ーマ ン ス お よ び疾走能力 の 変化

　 　 　 　 　 　 　 年齢　 身長　　体重対象者　 測定期日　 　 　 　 　 　 　 yrs　　　cm 　　　　kg100m

走 　疾 走 速 度 　ス トラ イ ド 　 ピ ッ チ

タ イム s 　 mf’S 　 　　 m 　　 　　HZ

A

B

　 1

　 矼

　 皿

工一

［［％

矼一nl％

　 I

　 rI

　 皿

工一

且％

H．．一皿％

778222

000222

ユ57，2

ユ57．7157

．3

　 0．3− 0．2154

，1154．8153

，8　 0．4− 0、6

51．552

，75LO

　 l．6− 3254

．855

．355

．3

　 0．90

1ユ．771

ユ．9811

．61

　 1．8− 3．ll2

．0512

．4012

．23

　 2，9− 1．3

　 8．74

　 8．70

　 9．25− 0，5

　 6．3

　 8，62

　 8．75

　 8，85

　 1．5

　 ユ．1

　 1，99

　 1，95

　 1，99− 2．0

　 2．0

　 1，81

　 ⊥，82

　 1．86

　 0．6

　 2，2

　 4．39

　 4．46

　 4．65　 1．6

　 4．3

　 4．76

　 4．81

　 4．76

　 ］．1− 1，0

1 ：2001 年 10月　 H ：A2002 年 3 月，　 B2002 年 4丿JI− H ：準備期　 矼

一皿 ：試合 期

皿 ：2002年 7 月

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338 新井 ほか

TKK1254a ，竹 井機器社製）を用 い て ，対象者に

最大 努力で の 10秒 間の 上肢に よる全 力 クラ ン キ

ン グ運動 と下肢に よる全力ペ ダ リ ン グ運動を行わ

せ た．運動負荷は ， L肢で は体重の 5％ ， 下肢で

は体 重の 10％ と した ．エ ル ゴ メ ーターは，対象

者自身が 運動を行 い や すい 高さに調節 した．クラ

ン キ ン グ運動で は，頭 をエ ル ゴ メ ーターにつ ける

よ うに指示 し ，ペ ダ リ ン グ運動で は ， 腰 をサ ドル

か ら上 げない よ うに指示 した ．評価 に は，

1秒毎

に 算 出 さ れ た パ ワー

の うち の 最 大 値 （Max

power ）， 10 秒間平均 パ ワー （Mean 　power）の

体重当た りの 値 を用 い た．

　 5）疾走動作 の撮影

　 約 50m の 全力 疾走 を行 わ せ ，ス タ ー トか ら

40m 地点 を中心 に側方 よ りパ ン ニ ン グ撮 影 した．

撮 影 は高速 度 VTR カ メ ラ （HSV −500C3VCR ，

NAC 社製 ：毎秒 250 コ マ， 露出時問 1／2000秒）

を用 い て 行 っ た．

　 （D 座標デ ータの 算出

　撮 影 された ビデ オ画像 を コ ン ピ ューターに取 り

込み ，ソ フ トFrame　diasll　for　windows （デ ィ ケ

イエ イチ 社製） を用 い て ， 毎秒 125コ マ で 右脚の

足 先，母趾球，踵骨点，外果点，腓骨頭，大転 r一

お よび胸骨上縁 点の 7点 と較正 マー

ク （対 象者の

近傍 4 点）の 2次元座標 を 読み 取 っ た ，分析は ，

左脚接地か ら再 びその 脚が接地す る瞬間まで の 1

サ イク ル に渡 っ て 行 っ た．なお，座標の 読み取 り

は，平滑化処理や微分処理等を考慮して，分析範

囲の 前後 7 コ マ を加えた．画像か ら読み取 っ た身

体各部の 座標値はt 較正 マー

クの 座標値を基準に

実長に換算 したの ち ， デ ジ タ ル フ ィ ル タ リン グ処

理 を行っ た．平滑化に用 い た遮断周波数は ， X 成

分， Y 成分共に 3．75− 625Hz で あ っ た．

　（2）算出項 目

　  疾走速度 ，ス トライ ド，

ピ ッ チ

　分析の 対象とな っ た 1サ イ ク ル （2 歩）の ス ト

ラ イ ド （左右 の 平均） を算 出した。また，1サイ

ク ル に要 した時間か ら 1秒間あた りの ピ ッ チ を算

出し，これ に ス トラ イ ドを乗じる こ とに よ り疾走

速度を算出 した．

　  角度お よび角速度

　 疾走 動 作 に関す る分 析項 目に は，伊 藤 ほ か

（1998）が 算出 した もの を用 い た （図 1 を参照の

こ と）．本研究で も， 伊藤ほ か （1998）に なら い，

地面に着い て い る脚をキ ッ ク脚，空中にある脚を

ス イ ン グ脚 と定義 した．

　 3． トレ ーニ ン グ記録の分析

　対象者には，用意 した記録用紙に毎日の トレー

ニ ン グ を記録する こ とを義務づ けた．また準備期

お よび試合期の トレーニ ン グにお い て ，形態的 ・

体力的要素お よび疾走動作にお ける トレーニ ン グ

課題も記入 させ た．

キ ッ ク脚

接地 瞬間・股関節角度・膝関節角度

・足 関節角度

接．地 中・膝関節最小角度・足 関節最小角度

　 　離地 瞬 間　　　 接地中

　 　・股関節角度 　　

・股関節最大伸展速度

　　 ・膝関節角度　　 ・

膝 関節最 大伸展速度　　 ・足 関 節角度　　 ・足 関節最 大 伸展速度

図 1　疾走動作 に関 す る分析項 目

接地中・脚全 体の

　 最大 ス イ ン グ速度

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女子ス プ リ ン ターの トレーニ ン グ に よ る変 化 339

lll結果および 考察

　表 1 は，3回の 測定時の 身長 ， 体重 ， 疾走能力

の 測定結果お よび 各測定 日 に最 も近 い 競技 会の

100m 走の 記録 を示 して い る．対象 者 A と B の 2

名ともパ フ ォーマ ン ス の 変化は準備期後に は低下

し， 試合期 に お い て 向上 する とい う同様の 変化が

み られ た こ とか ら，共通 した変化を中心に検討 し

た．

　表 2 は，準備期 と試合期の トレー

ニ ン グ課題 と

内容を対象者別に示 して い る．

　 1。形態的要因お よび体力的要因の変化

　表 3 は ， MR 撮影か ら算 出された大腿部お よ び

大腰筋の 筋横断而積を示 して い る．表 4は ， 下肢

三 関節の 等速性筋力を示 して い る 。表 5は， 各ジ

ャ ン プにお ける パ フ ォーマ ン ス を示 して い る．表

6 は ， 上肢お よび下肢 の 無酸素性 パ ワーを示 して

い る．

　A は，準備期 にお い て大腿 部の 筋 量の 増加 を課

題 として ウエ イ トトレーニ ン グ を行 っ て い た こ と

もあ り，大腿 部全部位の 全て の 筋に 5．0− 19．9％

の横断面積の 増加がみ られた。こ れは ，

．般 女性

に筋力 トレーニ ン グを行わせ た結果， lttw部の 筋

は肥 大したが ， 大腿部の 筋は 肥大 しなか っ た とい

う報告 （Cureton　et　aL ， 1988）や 女子競技 者が

筋 を肥大 させ る に は 3 カ月間 ， 週 2 − 3回 程度の

筋力 トレ ーニ ン グ で は十分で ない 可能性が ある と

示唆 して い る先行研究 （渡邉ほか ， 2000）とは異

な り， かな り トレーニ ン グ された一

流競技 者で あ

る A の 行 っ た週 4回の 頻度の ウ エ イ トト レーニ ン

グは，筋肥大 を起 こ させ るの に十分 な負荷で あ っ

た こ とを示 して い る．しか し ， 準備期における筋

量の 増加は ， 等速性筋力 には反映 されず，準備期

後 に は 多 くの 測定値で 低下 を示 した．一方の B は

準備期の 課題 として 大腿部 の 筋量増加 をあげて い

る の に もかか わ らず ， 滅少 を招 い た測定部位 もあ

っ た こ とか ら， ト レ ーニ ン グ頻度や種 目な ど の 面

か ら準備期の 筋力 トレーニ ン グを再考す る必 要 も

ある と言 える．

　試合期にお い て は ， A ，　 B にお い て 大腿部の 多

くの筋群が断面積の 減少傾 向を示す・方で ， A は

準備期で は増加が認 められなか っ た大腰筋の 横断

面 積の 増加 を示 した ．　・方の B も ， 準備期で

2．Ocm2の 増加 （7．7％）を示 したが，試合期 で そ

れ を上 回る 3．2cm2 （IL4 ％ ） の 増加を示 した．大

腰筋は股関節屈曲に 関係する 筋で あ り，こ の 筋が

肥大した結果，A で は全て の 角速度の 股関節屈曲

筋力 に お い て ， B で は 300deg／s の 角速度の 股関

節屈曲筋 力にお い て増加が見られた もの と推測で

きる．こ の大腰筋は ， 疾走 にお い て脚が後方に ス

イン グされた状態か ら切 り返す動作 に おい て 重要

な働 きをす る （阿江 ほ か ， 1986 ：馬場 ほ か ，

2000） こ とや ， 走速度が増加する ほ ど，

こ の 筋群

にかか る負荷 は大 きくなる （阿江 ほか ， 1986）こ

とか ら高い ス ピー ドで の 疾走が筋肥大 を招 く負荷

に な りうる 可能性が考え られ る ．A に お い て は ，

準備期で は ス ター トダ ッ シ ュ や加速走が行 われて

お らず，試合期の み に高強度の 走運動が導入 され

た こ とが ，こ の よ うな大腰筋の 変化を導い た もの

と考える こ とがで きる．一方の B は ，A とは異 な

り，準備期の 走運動の 中心は ス ピードの 比 較的低

い テ ンポ走，快調走であ る もの の ， 加速走 ，ス タ

ー トダ ッ シ ュ や レ ペ テ ィ シ ョ ン な どの 高強度の 走

運動 も行っ た こ とが ， 準備期にお い て も大腰筋の

筋肥大 を招 い た もの と推察で きる．こ れ らの 結果

は，

ウ エ イ トトレ ーニ ン グが大腰筋の 肥大 を起 こ

させ る よ うな負荷に は な りに くい こ と を示唆す る

もの で ある ．こ の 理 由とし て は，通常行っ て い る

ウ エ イ トトレーニ ン グで は脚 を後方か ら切 り返す

よ うな，大腰筋や 内転筋群が 引 き伸ば され る状態

で 力を発揮す る こ とが少 な い こ とが あげ られる．

その た め ， 股関節屈曲筋群に対す る トレーニ ン グ

手段 につ い て再考する必要があろ う．

　 無酸素性 パ ワ ーに お い て は ， 2 名と も準備期で

は下肢の パ ワ ーが 増加 し，試合期で 一L肢 の パ ワ ー

が増加 して い た．準備期で は 股関節や膝 関節の 伸

展筋力に一貫 した増加 は認め られなか っ たが ，膝

関節 と股 関節の 複合的で ， よ り動 的な筋力発揮 が

必 要 とされ る下肢の 無酸素性パ ワー

が増加 したわ

けで ある．こ れ は ， 下肢 の 最大無酸素性 パ ワー

と

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340 新 聾 ほか

表 2 準備期 と試合期の トレーニ ン グ課 題 と内 容

対 象者 A

走 運動 ウ エ イ ト トレーニ ン グ 縮 強運動 トレーニ ン グ課題

準備期

負荷走

テ ン ポ走

快調走

セ ッ ト走

坂ラ ン ニ ン グ

階段 ダッ シ ュ

80mlOO− 30Dm

l50m60．−t50m80− 120m30− 12Dm

全 身運動系

ク リーン

ス ナ ッ チ

上肢 運動系

ダ ンベ ルベ ン チ

10RMx510RMx5

聖O− 15RMx3

バ ウ ン デ イ ン グ

（平地 or 坂〕

　

プ

プ

ン

ン

ヤ

ヤ

ジ

ジ

ト

ル

ツ

動

ド

リ

運

一

プ

筋

ハ

ス

腹

ダ ン ペ ル ロー

イ ン グ IO− 15RM 　x 　3　メ デ ィ シ ン ボ ール 投 げ

ダ ン ベ ル プ レス

サ イ ド レ イ ズ

下肢運動 系ス クワ ッ ト

lO−．15RM 　 x 　310− 15RMx3

10− 15RM 　× 5ス ク ワ ッ トジ ャ ン プ IORM × 3レ ッ グカ

ール 　 　 　 15RMx3 　 4

レ ッ グ ラ ン ジ 　　 　 10RMx3レ ッ ダ プ レ ス 　 　 　 10RMx3

ハー

ドル 補 強

チ ューブ 補強

ミ ニ A 一ドル

ラ ダー

形態 的要素

・ハ ム ス トリ ン グ ス の 筋：［設増加

体力的要 素

・筋バ ラ ン ス を整える

・心肺機能の 強化

疾 走動f乍or レ ース 局 面

・大腿 部を使っ た 走 り

・ス タ

ートか らの ス ム ーズな加速

　 　 　 　ス タートダ ッ シ ュ

　　　　 （直線 or コー

ナー

）

　　　 加速走

　 　 　 セ ッ ト走

　　　 快調 走

　 　 　 テ ン ポ走

試合期 　坂 ダ ッ シ ュ

　 　 　 　トー

イン グ

30− 60m 　 全 身運動 系

　 　 　 　 　 　ク リーン

60 − 200m 　ス ナ ッ チ

100 ．200m 上肢運動系

100− 200m ダ ン ベ ル ベ ン チ

10RMx510R

、｛ x5

］0− 15RMx3

バ ウ ン デ イ ン グ

階段 も も ヒげ

坂もも上 げ

腹筋運 度

メデ ィ シ ンボ ール投 げ

200 − 300m ダ ン ベ ル ロ 　イ ン グ lo− 15RM 　 X　3 ハ ードル補 強

30− 120m 　 ダン ベ ル プ レ ス　　 10− 15RMx3 　ミ ニ ハー

ドル ＋

60 − 80m 　 サ イ ドレ イ ズ 　 　 　IO− 15RM 　x　3 ス プ リ ン ト

　 　 　 　 　 下肢 運動系

　 　 　 　 　 ス ク ワ ッ ト　 　 　 10− 15RM × 5　 　 　 　 　 ス クワ ッ トジ ャ ン プ leRM × 3

　 　 　 　 　 　レ ッ グ カ ール 　 　 　 15RMx3 − 4

　 　 　 　 　 　レ ッ グ ラ ン ジ 　 　 　 10RMx3

　 　 　 　 　 　レ ．ン グプ レ ス 　 　 　 10RMx3

形態 的要 素

・脂肪率の 減少

体力 的要素・筋 バ ラ ン ス を整え る

・ス ピ ード持久力向 ヒ

疾 走動作 or レー

ス 局面・

ス タートか らの ス ムーズ な加速

補足　Q）走運動は．準備期で は 1DO− 300m の ス ピードの 比較 的低い テ ン ポ走 が中心 で，試合期で は 40− 60m の ダ ッ シ ュ や加速走が中心，　　   ウエ イ ト トレ

ーニ ン グ の 頻 度は ，準 備期 で は 遍 に 4 同、試合 期で は週 2 回、

　　   補強 運動 は，種 目 を選 択 し て 刎 1実施，

対象者 B

疋運動 ウ エ イ ト ト レーニ ン グ 補 強運動 ト レーニ ン グ課題

快調 走

テ ンポ 走

ビ ル ドア ツ プ走

ポ イ ン ！・走

100 ．．150ml50− 500nコ

100 − 150m

80m ，250m　 　 　 　レペ テ イ シ ョ ン走 10U − 300m準備期　 　 　 加速 走

Ins　and 　Outsス タ

ートダ ッ シ ュ

30 ＋ 30mな ど

120m30− 80m

全身運 動系

ク リー

ン

ス ナ ッ チ

．ヒ肢運 動系ベ ンチ プ レ ス

下肢運動系ス ク ワ ッ ト

レ ッ ダ カ ール

レ ッ グ ラ ン ジ

　 　 　 　 　 　 　 　　 バ ウ ン デ イ ン グ

10−・．12RM × 3− 5　 （平地 or 坂 ＞

IO − 12RM × 3−−5 ホ ッ ピ ン グ （平地 or 坂 1　 　 　 　 　 　 　 　　 腹 筋運動

10− 12RM × 3−−5 背筋運動

　 　 　 　 　 　 　 　　 腕 Lン：て

10− 12RMx3 − 5　懸承

］0− 12RMX3 − 5 メ デ ィ シ ン ボー

ル 投 げ

10一ユ2RNI　 x 　3− 5　ミ ニ ハ ードル

　 　 　 　 　 　 　 　　 ラ ダー

形態的要素・大腿部 お よび体幹 部筋壁 増加・脂肪率の 減少

体力的要 素・股関節屈 曲筋力の 向．L・ス ピ

ード持久 力向上

疾走 動作 or レー

ス 局面・ス タートの低 姿勢・接 地準備期 をつ くる

・脚の 流 れ を防 ぐ

ス ター

トダ ッ シ ュ加速走

　 　 　 Ins　and 　Outs試 合 期 　イ ン タ ーバ ル 走

　 　 　 　テ ン ポ走

　 　 　 　 トーイ ング

　 　 　 　リ レー練 習

30− 80rll30＋ 30m ，

60 ＋ 30m50

　＋　100【n

i20m．　150mlDO− 300m200− 250m

全 身運動系

ク リー

ン

ス ナ ッ チ

1：肢 運動 系

ベ ン チ プ レ ス

下肢 運動系

ス ク ワ ッ ト

レ ッ グ カ ール

レ ッ グ ラ ン ジ

5− 10RMxl − 35− 10RM × 1−．3

5− 10RM × 1− 3

5−．10RMXl − 35− 10RMx 　1− 35− 10RMx 　工一3

バ ウ ン デ イ ン グ

伴 地 or 櫛

ホ ッ ピ ン グ （平地 Dr 坂）

腹筋運動

背 筋運動

腕立て

懸 垂

メ デ ィ シ ンボ ール 投 げ

ミ ニ ハ ードル

ラ ダー

サ ーキ ッ ト

形態的要素・体 幹部の 筋量増 加・脂 肪率の 減少

体力 的要素・股 関節屈出1筋力 の 向一ヒ・

ス ピ ード持久力 向上

疾走動作 ur レース 局面・

ス タ ートの 低姿勢

・接地準備期を つ くる

・脚の 流れ を防 ぐ

補足　  準 備期で は 100　 500m の ス ピードの 比 較的低 い テ ン ポ 走，ビ ル ドア ッ プ走，快 調走 が 中心で ，試合期で は 30− 60m の ダ ．ノ シ ュ

　 　 　や 加 速走が 中心．　　　  ウ エ イ トトレ

ーニ ン グ の 頻 度 は．準備期，試合 期 と も に 週 2 回．

　　　  補強運動 は ，種 目を選択 して ほぼ 毎 rl実 施．トレーニ ン グ 種目の 説 明

負荷 走 ：重量 物 〔ス レ ッ ド｝ を牽きなが らの 走．テ ン ポ走 ：決 め られ たテ ン ポ （ペー

ス） で の 走 ．快調 走 ：快 調 なペ ース で の 走．

セ ッ ト走 ：100m ＋ ⊥00m ．200m ＋ leOm の よ うに 複 数の 走 を 七 ッ トで 行 う走．加速 走 ：あ る一

定の 距 離の 加速 区問の 後，定速 走に 移 る逢．トーイ ン グ 1 前方 か ら牽 引 を受 けな が らの 走．ビル ドア ッ プ 走 ；徐 々 に ス ピードを ヒげて い く走，ポ イン ト走 ：技 術的 な ポ イ ン トを考慮 し

なが ら の 走，lns　and　Outs：全力で の 疾 走で あ る Ins と．ス ピードは 維持 され る が．努JJ度 を揶 えて 惰性 で 走 る Outs を交互 に 入 れ る 走 ．

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女子 ス プ リ ン ター

の トレーニ ン グに よ る変化 341

表 3　大腿部お よび 体幹部の 筋横断面積

70％ 5096 30％弐寸象者　　　i貝叮定其月日

Quad，　 Ham ．　 Add ．　 fat　　 Qし1ad ．　 Ham ．　 Add．　 fat　　 Quad．　 Ham ．　 fat　　 Psoas、

A

B

　

　

　

％

％

IH

皿

H皿

In

皿

　

　

　

IH

工一

且 ％

［1−一皿 ％

48，8　　　12．754．6　　　15．252．4　　　12．5

11．8　　　19．7− 4．0　

一　工7，8

58．6　　　ユ2．3

57，3　　　1i254．1　 　 9．3−　2，2　　−　8．9

−　5．6　−

　17．0

60，467

．065．710

．9− 1，958

．66Ll60

，0

　 4，3一1．9

8ユ．379．486，0

一2，48

．377．490

．791．617

，21

．0

52．457

．558．5

　 9，7　 1．871

．470

．772，8

− 1，0　 3，0

　 32．6

　 36．5　 32．6

　 ユ2．O− 10，7　 31．4

　 33．6　 32．8

　 7．O− 2，4

38，9　　 50．1

41，9　　50．1

47．9　　46．37．7　 　 0

⊥4．3　−　7．5

37．5　　44．7

41．6　　50．639．5　　 46．510．8　　　13．2

一　5．1　　−　8．2

43．4　　　39、2　　　34．ア　　　　29．746．4　　　41、2　　　34．0　　　　29．0

43．4　　　39．3　　　35．1　　　　31．3　 6．9　　　　5．O　　

−　2．O　　　

−　2．3

− 6．6　　− 4．6　　　3，3　　　　　7．9

545　　　35，2　　　34，7　　　　26，4

57．5　　　41，8　　 35．3　　　　2＆4

582　　　37．9　　　39．6　　　　31．6　 5．6　　　18．7　　　　1．7　　　　　7．7

　 L2　　− 9．2　　 12．2　　　　1ユ．4

単 位 ：cm2

Quad．：Quadriceps　fcmDris　muscles ，大腿四頭筋

Ilam．：Hamstring　muscles ，ハ ム ス トリ ン グ ス

Add．：Adductor　muscles ， 内転筋

Psoas．：Psoas　nlajor　muscles ，大腰筋

1 ：20  1年 10 月 　H ：A2002 年 3 月，　 B　2002　＃　4 月　IH ：2002 年 7 月

1− H ：準備期　 H一皿 ：言式イ 期

股関節伸展筋力や 膝関節伸展筋力との 問に 有意な

正の 相関関係が認め られる とい う報告 （Manning

et　aL ，1988 ；尾縣 ほ か，2000） にも裏付 け られ

る，また ， 上肢の ウ エ イ ト トレーニ ン グが 行われ

て い たに もかかわ らず ， 準備期 にお い て上肢の 無

酸素性パ ワー

が増加せ ず，試合期にお い て増加し

たこ とか ら， 上肢 の 無酸素 パ ワー発揮 に ウエ イ ト

トレーニ ングがそれほ ど影響 しなか っ た可能性 も

考えられ る．こ の こ とか ら試合期に行うレペ テ ィ

シ ョ ン走や 加速走の ような最大努力で速度維持 を

課題 とする走運動に よ っ て ヒ肢の 無酸素性 パ ワー

が改善 された もの と考 えられ る ．

　 2．疾走動作の 変化

　表 7 は，キ ッ ク脚に 関する動作分析結果を示 し

て い る．疾走速 度は，キ ッ ク動作 の 変化 に よ っ て

影響 を受 けて い る と言える．特 に 2 名が もっ と も

高い 疾走速度 を示 した 時の 動作の 特徴 と して ，接

地中にキ ッ ク脚 の 膝関節が屈 曲 して い く動作があ

げ られ る （対象者 A は 3回の 測 定時全て 同 じだ っ

たが ）．伊藤ほか （19．　9．　4，1998）は，キ ッ ク脚 の

膝 関節や 足関節の 屈 山 ・伸展 を小 さく抑 える こ と

が ，キ ッ ク脚全体の ス イ ン グ速度を高め る こ とに

つ なが るために合理的な技術で ある と指摘 して い

る．また ，世 界選手権の 100m レース 決勝 に進出

す る レベ ル におい て は ， キ ッ ク脚の 膝関節が屈 曲

し続ける選手 の 方がキ ッ ク脚全体 の ス イン グ速度

は 高い とい う結果が得 られ て い る ，こ れに加 え，

キ ッ ク脚の 膝関節 ， 足関節最大伸展速度が小 さ い

者ほ ど疾走速度が 高い こ とを明 らか に して い る．

　図 2に示 した対象者 A の 測定 II ・IIIにお ける

ド肢関節角速度の 変化 を参考 にす ると，キ ッ ク脚

各関節の 角速度の 相互関係が理解 しやすい ．A は ，

3回の 測定 と も接地 し て か ら膝関節は屈曲し，最

小角度 を保 っ たまま離地す る とい う合理的 な特徴

を示 して い る ．特に 測定 IIIで は キ ッ ク脚の 膝関

節最 大伸展速 度が 一llO．9deg／s と小 さ く・（1 ：

− 1．3deg ／s ，　 II ：

− 7．8deg／s）， これ が高 い 疾走

速度 に結 び つ い た と考 える こ とが で きる．B にお

い て も最 も高 い 疾走速 度を 示 した測 定 IIIで は ，

A と同 じよ うに接 地後屈曲 し，最小角度 を保 っ た

まま離地す る とい う動作 を示 し，また膝関節最 大

伸展速 度が一5．3deg／s と負 の 値 を示 した （1 ：

141．9deg ／s ，　II　： 237．8deg／s）．

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342 新井ほ か

表 4　下 肢 三 関節の 等速性筋力

屈曲筋力 （Nm ＞ 伸 展筋力 （Nm ）

角速度 （Cleg／s） 角速度 （deg！s）

対象者　 測定期 日　　30180 　 　 300 30180 　 　 300

股関節

へ

B

　 1　 　 　 148

　 H　 　 　 149

　 皿　 　　 　163王一H96 　　 0，7

1r一皿 ％ 　 　 9．4

　 1　 　　 161

　 11　 　 　 149

　 HI　 　 　 l33

1 −−U　gfo　　−　7，5且一mg6 　

− 10．7

134127141

− 521LOl52153153

　 0．7

　 0．0

　 99　　　　　　263　　　　252

　 89　　　　　　235　　　　258　 94　　　　　　222　　　　239−　10．1　　　

−　10．6　　　　2，4

　 5，6　　　　−　5．5　　　−　7，4

　 111　　　　　　254　　　　282

　 108　　　　　　264　　　　262　 1上9　　　　　　243　　　　270−　2．7　　　　　　　3，9　　　

−　7．1

　 1D．2　　　　　−　8，0　　　　　3，1

222222201

　 0，0− 9．5262239244

− 8．8

　 2ユ

膝 関節

A

B

　 I　　　 lO8

　 且　　 　　100

　 田　 　 　 　 85

工一H　o

／o　　−　7．4

1一田 96　一　ユ5．O

　 I　 　 　 　 96

　 H　　　 　 84

　 田　　 　　 98

1− II　％ 　　−　12．5

H一皿 96　　16．7

　 88

　 80

　 83− 9．1

　 3．8

　 68　 61

　 68− 10．3

　 11．5

　 62　　　　　　155　　　　107

　 64　 　 　 138　 　 98

　 61　　 　 137　　　 89　 3．2　　　　

−　ll、0　　　

−　8．4

− 4．7　　　　− 0、7　　　

− 92　 47　 　 　 171　 　 　 89

　 46　 　 　 137　 　 　 94

　 49　　　　　　183　　　　115−　2．1　　　

−　19，9　　　　 5．6

　 6．5　　　　　　33，6　　　　22．3

9」

　

只り

5尸’

7762

．一13，364778820

．3143

足関節

、

B

　 I

　 H

　 mI−

【1 ％

H− HI％　 I

　 n　 田

1一矼 ％

u− m ％

　 52

　 58　 57

ユ1．5一

ユ．7106

　 98

工14− 7．516

．3

23293716

．127

．6625056

18232427

．84．3433842

一　19．4　　

−　ll，6

12．0　　　　10．5

55500999001

ー

ユ

α

α

11100

8，09

．08．012

．5一11．11114

ユ127

．3

00DOO997033300

　

　

α

一21．4　　−　22，2

1 ：2001 年 10 月　H ：A2002 年 3月，　 B2002 年 4 月

1一且 ：準備期　 H ・』．皿 ：試合期

皿 ；2002年 7 月

　こ の 膝関節 に関す る動作は ， キ ッ ク脚全体の 高

い ス イン グ速度を得るだ けで は な く，キ ッ ク後 に

ス イ ン グ脚 を素早 く前方 に運ぶ こ とに も貢献す る

と考え る こ とが で きる．渡邉 ほ か （ユ999）は ， 接

地後半 に キ ッ ク脚の 膝関節 の 伸展が な い こ とは ，

脚の 切 り返 しを素早 く行うこ とを可能に して ，脚

の 流れを防 ぐと指摘 して い る。 こ の 指摘 か らする

と，B が 試合期 の 疾走動作面 の 課題と して あげた

“脚の 流れ を防 ぐ

”こ とは，達成 され た もの と考

え られ る、

　足 関節にお い て は，A ，　 B と もに最 も走速度が

高か っ た測定 IIIで 最小 関節角度時点か ら離地 ま

で の 伸 展角 度が 小 さい とい う結果が 得 ら れ た

（A − 1 ： 23．4deg ，　 II： 24．9deg ，

　 III：8．3deg，　 B

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女子 ス プ リ ン ターの トレーニ ン グに よる変化 343

表 5 各ジ ャ ン プ に おけるパ フ ォーマ ン ス

対象者　 　 　 　　 　 　 　跳躍高 （cm ）測定期 冂　 　 　 　　 SJ　　　CMJ 　　 DJ30　　DJ50

DJ　index（m ／’s）

DJ30　　DJ50

A

B

　

　

　

％

％

　

　

％

％

　

　

　

　

　

　

　

叮腿

皿

　

　

　

U

田

　

　

　

　

IH

皿

IH

皿

　

　

　

　

　

　

　

　一

一

　

　

　一

一

　

　

　

lH

　

　

　

IH

37．244

．243

．518

．8一1，746

．035

．740

．5一22．413

．4

44．846

．046．6

　 2，7

　 1．351．348

．250

．2− 6．1

　 4．2

30，9　　　　 29，3

36．0　　　　34．335，5　　　　31．2

16，6　　　　 17．0−　L5　　　

−　8．9

38．3　　　　37．6

4ユ．5　　　　39．1

44．1　　　　43．2　 8．4　 　 　 4．0

　 6．3　 　 10．5

2．66　　　　1．88

2．71　　　　2．60

2．7ユ　　　　2．38

1．9　 　 38．3

0．0　 　− 85

2．31　　　　2．35

2．43　　　　2，51

2．51　　　　2，905．2　 　 　 6．7

3．3　 　 15，5

1 ：2001 年 10 月　ll：A2002 年 3 月，

I　 H ：準 備期 　 1一皿 ；試 合 期

2002年 4 月　田 ：2002 年 7 月

表 6　上 肢お よ び下肢の 無酸素最大パ ワーと 10秒問平均パ ワ

ー

　 　 　　 　 　 　 　 上 肢 （watt ・’kg）対象者　　測定期 凵　 　 　 　 　 　 　 　 　 Max 　　　Mean

下 肢 （wa しレkg）

Max 　　　Mean

A

B

　 1　 　 　 　 　 4．7

　 皿　 　 　 　 　 4．0

　 皿　 　 　　 　 5．OI一且　％ 　　　

−　14，9

正1−一田［％ 　　　　　　25．O

　 I　 　 　　 　 4．7

　 11　 　 　 　 　 4．6

　 HI　 　 　　 　 5．51− H　〔｝6　　　　

−　2ユ

H 一皿 ％ 　 　 　 19．6

　 4．0

　 3，4

　 3．9− 15．O

　 l4．7

　 4ユ　 4．0

　 4．7− 2．5

　 17．5

13，3　　　　　ユO，9

14．2　　　　　11．9

14．O　　　　　ll．8　 6．8　 　 　 9．3−　1．4　　　

− 0．8

13，l　　　　 ll．313．8　 　 　 12．1

14，4　　　　　12，3

　 5．3　 　 　 7，1

　 4．4　 　 　 1．7

1 ：2001年 10月　n ：A2002 年 3 月，　 B2002 年 4月

皿 ：2002年 7 月

1 ．．H ：準備 期　∬一．皿 ：試 合 期

一 1 ： 15．Odeg，　 II：24．Odeg，　 III：13．9deg ）．ま

た ， 測定 IIIで A ，　 B 揃 っ て 足関節最大伸展速度

が最 も小 さくな っ た （A − 1 ： 543．6deg／s ，　 II ：

596．6deg／s ，　 III： 404．3deg／s ，

　 B − 1 ： 509，4

deg ／s，　II　： 533．2deg ／s ，　III　： 467．2deg ／s ）．　こ

の よ うに，測 定 IIIで は，足関節 も膝 関節同様に

キ ッ ク 中固 定 され る傾 向 に あ っ た．伊 藤 ほ か

（1998）は ， 足 関節の 役割は キ ッ ク 脚全体の ス イ

ン グ速度を上 げる こ とで は な く， 股 関節伸筋群で

発揮 された キ ッ クカ を，その まま地面に伝達す る

こ と で ある と指摘 し て い る ．こ の 指摘か ら，A ，

B ともに キ ッ ク脚の 足関節 を 固定する こ とが疾走

速度を高める こ とに つ なが っ た と推測で きる．

　女子 ス プ リン ター 1名を 19歳か ら 24 歳 まで の

間 ， 走動作 ， 筋力お よび筋 断面積か ら追跡 した稲

葉 ほか （2002）の 研究で は ， 科学 的知見を取 り入

れ た トレー

ニ ン グ を実施する こ とに よ り，接地 中

に おい て 膝や足 関節 を固定 した脚全体の ス イ ン グ

速度 を高 め る よ うな疾走動作 へ 改善 され ，また等

速性脚屈曲力お よび大腿後面の 筋断而積が増大 さ

れ た こ とに よ っ て 100m タ イ ム は短縮 し た と報告

され て い る．本研究で は ， 冬季 トレ ーニ ン グをは

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344 新井ほ か

表 7 キ ッ ク 脚の 角度，角度変位お よび角 速 度

角度 （deg）

接地瞬問 最 小 離地 瞬間

対 象者　測 定期 日　股 関 節 　膝 関節 　足 関節 膝関節　足 関節 股関節　膝関節 　 足 関 節

A

B

　 I　　　　　l43．6　　　158．8　　　1352　 11　　　　　142，l　　　l58．5　　　131，6

　 皿　　　　 145，4　　 161．5　　 145．2

1 − H　9も　　一　1，1　　　−　O．2　　　−　2．6H −一皿 ％　　　　2，3　　　　　19　　　　10．3

　 1　　　　　139．8　　　157．6　　　140．8

　 H　　　　　l29．2　　　15ユ．3　　　132．6

　 皿　　　　 138．4　　 157．7　　 141，7

1− H　％　　− 7．5　　　

−　4．0　　　

−　5、8

H − m　％　　　　7．1　　　　 42　　　　　6．8

　 　 　 127．6

　 　 　 126．l

　 　 　 l33．4

　 　 　− 1．2

−　 　 　 　5．8

152，0　　　128、01452　　　125．6−

　 　 　133．1− 4．5　　　

−　1．9

−　 　 　 　6，0

184、9　　　143．9　　　　15LO

184．2　　　149．2　　　　工5LO

］87．6　　　148．6　　　　14］．7− 0．4　　　　3．7　　　　　0．0

　 1．9　　　− 0．4　　　

−　6」

195．5　　　157．3　　　　143、O

l89．4　　　153．5　　　　149．6188．4　　　15〔｝．O　　　　l46．9−　3．1　　　

−　2．5　　　　　4，6

−　0．5　　　−　2．3　　　　−　1．8

角度変位 （deg ） 最大角速度 （deg〆s）

屈曲 伸展 伸展

対象者　測 定期 日　膝関節　足 関節 膝関節　足関節 股関節　 膝関節

　 　 　 　 脚全体

足 関節　 ス イ ン グ

へ

B

　 1　　　　　　14．9　　　　　7．6

　 11　　 　　 9．3　　　 5、5

　 皿 12、811 ．8

1− Il　g6　−　37．5　　−　26．8［一

皿 ％ 　　38．3　　113、5

　 1　　　　　　　5．6　　　　12、8

　 H　　　　 6．1　　 7．0　 皿　 　 　 　 7．7　 　 8．6

1− H　96　　　　9．7　　−　45．3H一皿 ％ 　　26．ユ　　 22．7

　 　O．0　 　 0，0

　 0．0

　 0、0　 0．0

　 5．3

　 8．3

　 0．0

　 54．9− 100．0

23．424．98

．36．5

一66．515

．024．0

ユ3．960、0

一42．2

518，5　　　　−　1．3　　　　543．6　　　　635，7

578．0　　　　一　ア．8　　　　596．6　　　　6ユ1，5

565．7　　　−　1ユ0．9　　　　　404．3　　　　650，3　 11．5　　　　 500，0　　　　　　9．8　　　

−　3．8

−　2」　　　　1322、0　　　　−　322　　　　　　6，3699．7　　　　　141．9　　　　　509．4　　　　672，9777．9　　　　　237，8　　　　　533．2　　　　698」

618，6　　　　− 5，3　　　　467．2　　　 689．2

　 112　　　　　　67．6　　　　　　　4．7　　　　　 3，7−　20，5　　　−　102．2　　　　−　12．4　　　　−　1．3

1 ：2001年 10 月　 H ：A2002 年 3 月，2002年 4月

1− H ：準備期　 U一皿 ：試 合期

皿 ：2002年 7 月

さん だ 約 10 カ月 間国内・流 ス プ リ ン タ ー 2名を

追跡 したが ， 稲葉ほか （2002）の 報告 と動作 面の

改善は類似 して お り，こ の 改善が疾走能力の 向上

に貢献 して い る もの と考えられる．本研究の 結果

と稲葉 ほか （2002）の 報告か ら， 伊藤 ほ か （1994，

1998）が合理的 とする ，“キ ッ ク脚 の 膝関節 や足

関節の 屈曲 ・伸展 を小 さ く抑え ， キ ッ ク脚全体の

ス イ ン グ ス ピードを高め る動作

”は，疾走能力に

影響 を及 ぼす重要 な要因で あ り，技術練習 を通 し

て習得で きる もの で ある こ とが明 らか に なっ た．

IV　ま　 と　 め

本研究 は ， 国内一流 k’　f一ス プ リ ン タ

ー 2名 を対

象に，準備期お よ び試合期の トレーニ ン グによ る

形態的 ・体力的要因お よび疾走動作の変化を明ら

か に し，そ れ らの 変化 と疾走能力の 変化 との 関連

を事例的に示 し，ス プリ ン トの トレ

ーニ ン グ の た

め の 資料を得る こ とを 目的 とした ．

　主な結果は，以下の 通 りで ある．

　1）対象 者 A と B の 2 名は，疾走速度は準備期

後 に は低下 し， 試合期にお い て向上す る とい う変

化 を示 した，

　2）準備期の ウ エ イ ト トレ ーニ ン グ が大腰筋の

肥 大を起 こ させ る よ うな負荷に は ならず，試合期

で の 高強度の 走運動が 筋肥大を招 く可能性が示 さ

れた．

　3）試合期 に行 うレ ペ テ ィ シ ョ ン 走や加速走 の

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Japanese Society of Physical Education

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Japanese 　Sooiety 　of 　Physioal 　Eduoation

女子 ス プ リ ン ターの トレーニ ン グ に よ る変化 345

800

　 600

尋ぎ 4009

　 200墾

潤　 0

　− 200

一400

800

　 600勿密 400ε　 200

謬 ・

一200

一400

測定 H

測定 ［H

（s）

8

・一一・一・膝関節

一一一股 関節一

脚全 体

（s）

図 2　キ ッ ク脚の 下 肢 関節角速度の 変化’対象者 A の 測定

　 1レ HI

ような最大努力で行 う走運動が上肢 の 無酸素性 パ

ワ ーを増加 させ る こ とにつ なが っ た もの と考えら

れる．

　4）最 も高 い 疾 走速度 を示 した試合期 の 測定で

は ， 接地 して か ら膝関節は屈曲 し ， 最小角度 を保

っ た まま離地す る とい う動作 Eの 特徴を示 した．

　国内一流女子 ス プ リ ン ター

にお い て は ， 各 トレ

ーニ ン グ期を通 して パ フ ォー

マ ン ス が変化 し，そ

れ は形態 的 ， 体力的 ， 動作的要因に複合 的に影響

を受けて い る こ とが明 らか に なっ た．

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　　　　　　　　　　　（　　　　　　　　　　　　平成 15年4 月15 日受付

　　　　　　　　　　　　平成 16年 2月 7 日受理　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ．

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