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古河電工時報 第119号(平成19年1月) 13 1. はじめに 近年,携帯電話,モバイルコンピュータ,パーソナル携帯情 報機器(PDA),デジタルスチルカメラ(DSC)などに代表され るエレクトニクス製品は,小型化,軽量化及び高機能化が飛躍 的に進んでいる。これらの市場動向に伴い,エレクトロニクス 製品に搭載される半導体パッケージについても,小型化,薄肉 化,軽量化及び実装基板への高密度実装が強く要求されてきて いる(図1)。 このような背景のもと,ウエハ状態のままでパッケージング まで行うWL-CSPと呼ばれる新しい半導体パッケージ技術が 注目されている。WL-CSP は,ウエハプロセスで再配線や電極 形成→樹脂封止→ダイシングまでを全て行い,最終的にウエハ を切断した半導体チップの大きさがそのままパッケージの大き さであるため,小型化及び軽量化の観点からも理想的であると いえ,既に携帯電話などに採用されている。我々は,はんだ付 きテープ基板とウエハを貼り合わせる新規の工法によって,短 納期への対応と低コスト化を実現しうるWL-CSP製造技術の 開発を行った。更に,実装基板との接続電極を樹脂突起電極構 造としたことにより,高い接続信頼性が確認できた。今回,新 製造法により開発された高接続信頼性WL-CSPについて報告 する。 2. 当社製 WL-CSP 開発の背景 当社では,軽量化,薄型化及び高速化に対応する半導体パッ ケージ用インターポーザとしてFBTI ® (Flexible Bumped Tape Interposer) 1) を開発し 2001 年より上市している。これは 従来のワイヤボンディング接続と比較して,省スペース化と高 周波に適しているフリップチップ接続を前提としたインター ポーザである。これは図2 及び図3 に示すとおり,半導体チッ ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発 Development of Wafer-level Chip Size Package (WL-CSP) 浅田敏明 * 天野俊昭 * 日笠和人 * Toshiaki Asada Toshiaki Amano Kazuhito Hikasa 菅原賢一 * 大島宏文 * 小野義視 * 2 Kenichi Sugahara Hirofumi Oshima Yoshimi Ono 概要 近年,電子機器の小型化,軽量化及び高機能化が著しく進む中,そこに搭載される半導体パッ ケージについても小型化,薄肉化,軽量化及び実装基板への高密度実装が要求されてきている。この ような状況の中,ウエハレベルチップサイズパッケージ(以下WL-CSPという)と呼ばれる新しい半 導体パッケージ技術が注目されている。我々は roll to roll ロールによって連続製造したテープ基板と ウエハを貼り合わせることにより,コスト低減と納期の短縮化を図り,外部接続電極を樹脂突起構造 とすることにより高信頼性を確保したWL-CSPを開発した。本報では,当社オリジナルのWL-CSP に関する構造,製造プロセス,特徴,試作結果及び信頼性評価結果について報告する。 * 研究開発本部 環境・エネルギー研究所 * 2 設備部 第一生産技術開発センター QFP SOP CSP BGA 携帯電話 の変遷 1993 デジタル 2001 FOMA 2004 i-mode Felica 1987 アナログ 2010 第4世代 モバイルマルチメディア カラー液晶 カメラ付き SIP 挿入実装 表面実装 周辺端子 エリア端子 小型化・軽量化 高機能化 パッケージ積層 チップ積層(スタック→Si貫通電極) WL-CSP ウェハープロセス上で再配線, 電極形成,樹脂封止を行い, これを個片化したリアルチップ サイズパッケージ 3D対応の新技術へ 3D対応の新技術へ 1993 デジタル 2001 FOMA 2004 i-mode Felica 1987 アナログ 2010 第4世代 カラー液晶 カメラ付き 1993 デジタル 2001 FOMA 2004 i-mode Felica 1987 アナログ 2010 第4世代 モバイルマルチメディア カラー液晶 カメラ付き WL-CSP DIP SIP SOB 図1 半導体パッケージの技術動向 Trend of semi conductor package technology. フリップチップ実装面 導体 SnAg Solder Bump バンプ部 製品形状(外観) Via部 実装端子面 Via SnAg Solderめっき 導体 SnAg Sololderder Bump バンプ部 Via部 Pitch:150µmp Bump Diameter: 75 Bump Height:10~25 Via SnAg Solderめっき Pitch:500µmp Via Diameter:150µ Via Height:2.0~16.0 導体 SnAg Solder Bump バンプ部 Via部 Pitch : 150 µmp Bump diameter:75 µmφ Bump height:10~25 µmt Via SnAg Solderめっき Pitch : 500 µmp Via diameter : 150 µmφ Via height : 2.0 ~16.0 µmt 図2 FBTI 外観写真 Appearance of FBTI.

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古河電工時報 第119号(平成19年1月)  13

1. はじめに

近年,携帯電話,モバイルコンピュータ,パーソナル携帯情報機器(PDA),デジタルスチルカメラ(DSC)などに代表されるエレクトニクス製品は,小型化,軽量化及び高機能化が飛躍的に進んでいる。これらの市場動向に伴い,エレクトロニクス製品に搭載される半導体パッケージについても,小型化,薄肉化,軽量化及び実装基板への高密度実装が強く要求されてきている(図1)。このような背景のもと,ウエハ状態のままでパッケージング

まで行うWL-CSPと呼ばれる新しい半導体パッケージ技術が注目されている。WL-CSPは,ウエハプロセスで再配線や電極形成→樹脂封止→ダイシングまでを全て行い,最終的にウエハを切断した半導体チップの大きさがそのままパッケージの大きさであるため,小型化及び軽量化の観点からも理想的であるといえ,既に携帯電話などに採用されている。我々は,はんだ付きテープ基板とウエハを貼り合わせる新規の工法によって,短納期への対応と低コスト化を実現しうるWL-CSP製造技術の開発を行った。更に,実装基板との接続電極を樹脂突起電極構造としたことにより,高い接続信頼性が確認できた。今回,新製造法により開発された高接続信頼性WL-CSPについて報告する。

2. 当社製WL-CSP開発の背景

当社では,軽量化,薄型化及び高速化に対応する半導体パッケージ用インターポーザとしてFBTI®(Flexible Bumped

Tape Interposer)1)を開発し2001年より上市している。これは従来のワイヤボンディング接続と比較して,省スペース化と高周波に適しているフリップチップ接続を前提としたインターポーザである。これは図2及び図3に示すとおり,半導体チッ

ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発

Development of Wafer-level Chip Size Package (WL-CSP)

浅 田敏明* 天野俊昭* 日笠和人* Toshiaki Asada Toshiaki Amano Kazuhito Hikasa

菅 原賢一* 大島宏文* 小野義視*2 Kenichi Sugahara Hirofumi Oshima Yoshimi Ono

概要 近年,電子機器の小型化,軽量化及び高機能化が著しく進む中,そこに搭載される半導体パッケージについても小型化,薄肉化,軽量化及び実装基板への高密度実装が要求されてきている。このような状況の中,ウエハレベルチップサイズパッケージ(以下WL-CSPという)と呼ばれる新しい半導体パッケージ技術が注目されている。我々はroll to rollロールによって連続製造したテープ基板とウエハを貼り合わせることにより,コスト低減と納期の短縮化を図り,外部接続電極を樹脂突起構造とすることにより高信頼性を確保したWL-CSPを開発した。本報では,当社オリジナルのWL-CSPに関する構造,製造プロセス,特徴,試作結果及び信頼性評価結果について報告する。

* 研究開発本部 環境・エネルギー研究所 *2 設備部 第一生産技術開発センター

QFP

SOP

CSP

BGA

携帯電話の変遷

1993デジタル

2001FOMA

2004i-modeFelica

1987アナログ

2010第4世代モバイルマルチメディアカラー液晶カメラ付き

SIP

挿入実装 表面実装

周辺端子 エリア端子

小型化・軽量化

高機能化

パッケージ積層 →

チップ積層(スタック→Si貫通電極)

WL-CSPウェハープロセス上で再配線,電極形成,樹脂封止を行い,これを個片化したリアルチップサイズパッケージ

3D対応の新技術へ

3D対応の新技術へ

1993デジタル

2001FOMA

2004i-modeFelica

1987アナログ

2010第4世代

カラー液晶カメラ付き

1993デジタル

2001FOMA

2004i-modeFelica

1987アナログ

2010第4世代モバイルマルチメディアカラー液晶カメラ付き

WL-CSP

DIP

SIP

SOB

図1 半導体パッケージの技術動向 Trend of semi conductor package technology.

フリップチップ実装面基材

導体SnAg SolderBump

バンプ部

製品形状(外観)

Via部

実装端子面

Pitch:150µmpBump Diameter: 75Bump Height:10~25

基材

Via SnAg Solder めっき

Pitch:500µmpVia Diameter:150µVia Height:2.0~16.0

基材

導体SnAg SololderderBump

バンプ部

Via部

Pitch:150µmpBump Diameter: 75Bump Height:10~25

基材

Via SnAg Solder めっき

Pitch:500µmpVia Diameter:150µVia Height:2.0~16.0

基材

導体SnAg SolderBump

バンプ部

Via部

Pitch : 150 µmpBump diameter:75 µmφBump height:10~25 µmt

基材

Via SnAg Solder めっき

Pitch : 500 µmpVia diameter : 150 µmφVia height : 2.0~16.0 µmt

図2 FBTI外観写真 Appearance of FBTI.

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古河電工時報 第119号(平成19年1月)  14

一般論文  ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発

プと電気的接続を行うためのSnAgはんだバンプがテープ基板上に形成されている。このはんだバンプ付きテープ基板であるFBTIは,低コストを狙ったroll to rollと呼ばれる連続的方法で製造している。FBTIのアプリケーションとしては,㈱東芝セミコンダク

ター社においてTQON(Thin Quad Outline Non-Leaded)及びSBM(System Block Module)と呼ばれる半導体パッケージの実績がある。これらの製品では,半導体チップ上に形成したAuスタッドバンプとFBTI上のSnAgはんだバンプをフリップチップ接続する構造を採っており,アプリケーションとしても高い信頼性が確認されている。これらの実績から,FBTIの低コスト化を狙ったテープ基板の製造技術と,それを使用するアプリケーションにおいて,信頼性が確認されているフリップチップ接続による接続技術を組み合わせることにより,当社オリジナルのWL-CSPを具現化する可能性があると判断し開発に着手した。

3. 当社製WL-CSP開発のコンセプト

既に市場において採用実績のある銅ポストタイプのWL-CSPと当社製WL-CSPの構造をそれぞれ図4と図5に示す。市場における他社製WL-CSPは70 ~ 100 µmの銅ポストをウエハ再配線上に形成することで,実装基板との接続信頼性を確保することが構造上の特徴である。銅ポストタイプWL-CSPの製造は,ウエハ上で引き回し用の回路を形成する再配線形成→銅ポストの形成→樹脂封止を行うことから,ウエハプロセスに必要な特殊な製造装置を保有する必要がある。また,構造上の特徴である銅ポストを形成する長時間のめっき工程が必要であり,更に,ウエハを受け取ってから製造を開始するため完成までの製造時間が長く掛かるといわれている。一方,当社製WL-CSPの製造プロセスは,樹脂突起電極付き

テープ基板の製造,ウエハへのAuスタッドバンプの形成及びウエハとテープ基板の貼り合せの三つに大きく分けられる(図6)。樹脂突起電極付きテープ基板の製造プロセスとしては,既にFBTIで製造実績のあるroll to rollによるテープ基板の製造法を適用することで低コスト化が可能である。また,設計情報が事前に入手できればテープ基板の製造ができることから,ウエハ入手後にはAuバンプの形成及びテープ基板とウエハの

貼り合せ以降の工程となるため短納期への対応が可能であると考える。当社製WL-CSPの構造的な特徴は,樹脂突起電極と呼んでいる外部接続用電極が樹脂を内包していることが挙げられる。一般的に,WL-CSPは外部接続用電極部分にはんだボールを供給して,実装基板に実装されて使用される。基板に実装された半導体パッケージなどの電子部品の実装信頼性は温度サイクル試験と呼ばれる試験により評価されることが多く,はんだボールを介して基板に実装するWL-CSPの場合,シリコンである半導体チップとFR-4と呼ばれる実装基板の熱膨張係数の差によって,はんだボールに応力が掛かり,WL-CSPとはんだボールの間又は実装基板とはんだボールの間でクラックが生じる。このクラックが成長する疲労破壊により断線が発生することが一般的な不良要因である。つまり,信頼性試験の試験条件において,はんだボールに掛かる応力が小さいほど,破壊に至るまでの寿

Bottom view

BGA pad

DCA pad withSnAg solder bump

Polyimide film(Glass epoxy)

Top view

Solderplated

Cross-section

図3 FBTI構造図 Schematic structure of FBTI.

Cu re-distribution

Cu post

IC

Al pad

UBM

PI layer

Epoxy seal

図4 市販のWL-CSPの構造図 Schematic structure of commercially available

WL-CSP.

IC Passivation

Al pad Au stud bumpAdhesion

Cu pattern

図5 当社製WL-CSPの構造図 Schematic structure of Furukawa’ s WL-CSP.

トレイへpick&placeBG/ダイシングRtoR工程SnAgはんだバンプ付きテープ基板形成

ウェハ上にAuバンプ形成反転

ウエハ貼り合わせ

Au/SnAgフリップチップ接合によるウエハ実装

図6 当社製WL-CSP製造プロセスのコンセプト Concept of Furukawa’s original WL-CSP manufacturing

process.

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一般論文  ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発

古河電工時報 第119号(平成19年1月)  15

命が長くなるといえる。図7及び図8に示すとおり外部接続電極構造のシミュレーションによる応力解析では,いわゆる銅ポスト構造と比較して樹脂突起構造の方が,はんだ接合部における最大応力を軽減することができ,接合寿命の改善が期待できる。また,当社製WL-CSPは,ウエハ(半導体チップ)上のAuスタッドバンプとテープ基板上のはんだバンプがフリップチップ接合している構造をとっている。このAuとSnAgによるフリップチップ接合は,前述したとおり半導体パッケージとして既に実績がある工法である。高周波対応としても有利な構造であるので,今後市場に出てくるDDR3-DRAMと呼ばれる高速メモリーにも対応できると考える。

条件 Cuポスト高さ 100 µm 接続高さ 90 µm -40℃⇔+125℃温度サイクル試験 最大応用力 914 MPa

図7 他社製WL-CSPの応力解析 Calculated stress distribution of a commercially

available WL-CSP.

条件 突起高さ  50 µm 接合高さ  50 µm -40℃⇔+125℃温度サイクル試験 最大応用力 284 MPa

図8 当社製WL-CSPの応力解析 Calculated stress distribution of Furukawa’ s WL-CSP.

4. 当社製WL-CSPの技術的課題

他社製WL-CSPの製造工程では,ウエハ上で引き回し用の回路形成を直接行うことから,ウエハに直接感光性樹脂の塗布・露光・現像,金属めっき・エッチングなどの工程がある。露光用のマスクを精度よく合わせるなどの技術的ポイントはあるもののウエハプロセスの採用で対応しているのが一般的である。一方,当社製WL-CSPは前述したとおり他社製と全く異なる工法で,ウエハ上に形成するAuスタッドバンプとテープ基板上に形成するはんだバンプをフリップチップによって接合する工程を前提としていることから,二つの大きな課題があった。1つは,テープ基板に高い寸法精度が求められること,もう1つ

は,テープ基板とウエハを精度よく貼り合わせることである。テープ基板の寸法精度については半導体チップの電極ピッチなどの設計によって求められる精度に違いはあるが,例えばAuスタッドバンプの形成精度±3.5 µm,テープ基板とウエハの搭載精度±5 µmの機械精度と,Auスタッドバンプ先端径φ15 µm,最小ギャップ25 µmを前提とすると図9の関係が導きだされる。つまり,8インチウエハで半導体の電極ピッチを80 µmと想定した場合,テープ基板のはんだバンプの位置精度は100 mm(8インチウエハのセンターから周辺までの距離)に対して約19 µm以内に抑える必要がある。将来,半導体チップの電極ピッチが更に狭くなる場合や,ウエハサイズが大型化して12インチウエハに対応する場合は,①Auスタッドバンプの先端径を小径化する,②最小ギャップを狭く設定する,③テープ基板の精度をより上げるなどの方策が必要となる。当社製WL-CSP用においてはテープ基板の製造に,roll to rollの連続製造方法を採用していることや,変形しやすいテープ基材を採用していることから,基材の取り扱い方法や変形を抑える工夫が重要なポイントとなっていた。その中でも,基材を固定するキャリヤの選定と固定方法の工夫や回路形成方法などの方策を組み合わせることによって,位置精度を±5 µm以内にすることを可能とした(図10)。更に寸法精度を向上させるには,テープを製造する環境(温度,湿度)を管理する必要がある。もう1つの課題であるテープ基板とウエハを位置合わせして貼り合わせる工程も当社製WL-CSP固有の工程である。当然,この装置の搭載精度によって,テープに求められる精度に影響を及ぼすことから,できるだけ搭載精度のよい装置が必要であった。この搭載精度±5 µmを仕様とした装置について市場

0

5

10

15

20

25

30

40 50半導体の電極ビッチ(µm)

60 70 80 90 100

テープ基板の必要な位置精度(µm)

前提条件(装置精度)

金スタッドバンプ精度±3.5 µm

貼り合わせ精度±5.0 µm

仮定条件

金スタッドバンプ先端径φ15 µm

最小ギャップ25 µm

図9 テープ基板に求められる位置精度 Accuracy requirement for tape substrate.

テープ基板のはんだバンプ位置精度

-0.0200-0.0150-0.0100-0.00500.00000.00500.01000.01500.0200

工程1

工程2

工程3

工程4

工程5

仕上がり

プロセス

シート中心からの公差

(mm) ±5μm以内

テープ基板精度100 mm

テープ基板のはんだバンプ位置精度

-0.0200-0.0150-0.0100-0.00500.00000.00500.01000.01500.0200

工程1

工程2

工程3

工程4

工程5

仕上がり

プロセス

シート中心からの公差

(mm) ±5μm以内

テープ基板のはんだバンプ位置精度

-0.0200-0.0150-0.0100-0.00500.00000.00500.01000.01500.0200

工程1

工程2

工程3

工程4

工程5

仕上がり

プロセス

シート中心からの公差

(mm)

8インチウエハ対応

±5 µm以内

図10 テープ基板の位置精度 Accuracy of tape substrate.

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古河電工時報 第119号(平成19年1月)  16

一般論文  ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発

の調査を行ったが,独特な工程のためこの仕様に合致する装置が見つからなかった。そこで,社内の生産技術開発センターがアライメントプレス装置の開発及び製造を行い,現在はその装置を用いてサンプル作成及び評価を実施している(図11)。現状では,テープ状基板とウエハを張り合わせた場合の,Auスタッドバンプとはんだバンプの位置合わせ精度についても十分良好であることを確認している(図12)。

5. 信頼性評価

信頼性評価は次の2つに分けられる。1つはWL-CSP(パッケージ)単体の信頼性評価(以下,一次実装信頼性評価という)で,もう1つはWL-CSPをはんだボールで基板に実装した場合の信頼性(以下,二次実装信頼性評価という)である。サンプルチップには図13に示すとおり,大きさ6.30 mm角で,電極がチップ周辺部に48ピンある評価用TEGチップを使用した。5.1. 一次実装の信頼性テープ基板は,TEGチップとテープ基板からなるWL-CSP

を二次実装信頼性評価用の基板に実装した場合に,デイジーチェーンになるように設計を行った。テープ基板とウエハの貼り合わせ条件については,Auスタッドバンプの変形状態,SnAgはんだのAuスタッドバンプへの付き回り状態,絶縁層

の厚さなどから最適化を行った。評価内容については,表1にある項目について,外部接続電

極部を四端子法で導通の有無を確認し,外観及び断面の観察により異常の有無の確認を行った。特に断面観察においては,Au/SnAg接合部分のクラック発生状態や半導体チップ/接着剤層及びテープ基板/接着剤層の剥がれについて注視した。その結果,今回作成評価したサンプルの信頼性試験においては,表1に示す通り全サンプルが合格という良好な結果が得られたことから,半導体パッケージとして信頼あるものといえ,改めてAu/SnAgのフリップチップ接合の信頼性が確認された。

表1 一次実装頼性結果 Conditions and results of PKG reliability test.

Test Condition Failure rateThermal shock -65 ⇔ 150℃ 1,000 cycles 0/22High temp. storage 150℃ 1,000 hrs 0/10Autoclave 121℃ 85%RH 500 hrs 0/10Pre-conditioning(JEDEC)

85℃ 85%RH 168 Hrs 250℃ reflow 3pass 0/22

5.2. 二次実装の信頼性実装用評価基板は,実装基板として最も一般的であるFR-4を使用した。実装端子ピッチは0.5 mmとし,はんだボールには直径0.3 mmのSnAgCuはんだを使用した。サンプルの評価は,チップの厚みと実装するはんだボールの配置に注目をした評価を行ったのでその評価結果を次に示す。1つは,チップ厚が530 µmで実装のはんだボールを周辺部の48箇所(基板に実装した場合にデイジーチェーンを形成するのに必要な最少数)としたペリフェラル実装とした場合と,もう1つは,チップ厚が200 µmではんだボールを0.5 mmピッチでフルアレイに実

図11 アライメントプレス装置 Appearance of alignment press machine.

Auスタッド径 60 µmSnAgバンプ径 150 µm

図12 軟X線による位置合わせ精度の確認 Soft X-ray image of WL-CSP.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

W-CSP単体の信頼性評価

基板へ実装した状態での接合信頼性評価

チップ上面からの透視図6.30

5.00

6.30

5.00

 青:テープ基板の配線パターン 黒:実装端子 赤:チップの配線パターン 緑:フリップチップ接合部

パッド径:φ230 µmハンダボール:φ300 µm SnAgCuチップ厚さ:530 µm,200 µm実装端子径:φ230 µm実装端子ピッチ:0.5 mm実装端子数 フルアレイ実装 :121 ペリフェラル実装: 48

図13 サンプル形状 Sample for reliability evaluation.

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一般論文  ウエハレベルチップサイズパッケージ(WL-CSP)の開発

古河電工時報 第119号(平成19年1月)  17

装した場合である(図14)。熱衝撃試験(-40℃⇔125℃ 各7分保持)において,実装基

板とWL-CSPで形成されたデイジーチェーンの導通をモニタリングしながら信頼性評価を行った結果を図15のワイブル図で示す。青い線は,半導体チップ厚が530 µmで,はんだボールによる実装がペリフェラル実装の試験結果である。これは,当初の開発目的であった1%不良確率において,400サイクル以上をクリアできたことを示している。また,チップ厚200 µmのパッケージ(はんだボールを除いたパッケージ総厚280 µm)で,はんだボールによる実装がフルアレイ実装の試験結果が赤い線である。こちらにおいては更に良好な結果が得られており,小面積だけではなく薄型パッケージの可能性が見えてきた。他社製WL-CSPにおいては,銅ポストの高さが約100 µmであることや,その銅ポストを埋め込むために樹脂で厚く封止していることから,発生する大きな応力のためにチップを薄くすることが難しいと言われている。これに対して当社製WL-CSPはウエハとテープ基板を貼り合わせた後にバックグラインドを行うことから,今回評価を行ったパッケージよりもチップ厚を薄くできる可能性がある。また,熱衝撃試験後の断面観察による故障解析から,破壊の

発生ははんだボールと実装基板若しくはWL-CSPの間で起こっており,更に詳しく観察すると銅がはんだに拡散してできた硬いCuSn化合物層と柔らかいはんだの界面に亀裂が生じている。破壊の発生箇所については,半導体チップと基板の熱膨張係数の差によって大きな応力が掛かる,四隅のはんだボールへの影響が大きく,実際の評価においても導通不良は四隅のはんだボールから多く発生することが確認されている。はんだボールを剥離した面の観察を行うと,WL-CSPのコー

ナーから中心方向に対して垂直な向きに連続的な縞模様が見られる(図16)。これらの故障解析より,半導体と実装基板の線膨張率差によって発生する繰り返しひずみにより,硬い金属化合物層と柔らかいはんだ層の間で亀裂が起こり,この亀裂が成長する疲労破壊であることが判る。樹脂突起電極という独特な構造を持つ当社オリジナルのWL-CSPにおいても,はんだボールで基板に実装する一般のBGA部品と同様な破壊モードであることから,実装基板に対する信頼性の考え方はBGA部品と同じであるといえる。現在も更なる薄型化及び高信頼性を確保すべく改良法の検討を継続している。

6. おわりに

今回,小型化及び軽量化の観点で理想的といわれるWL-CSPについて,従来のウエハプロセスと全く異なるテープ基板とウエハを貼り合わせる工法の開発を行った。新しい工法により短納期への対応と低コスト化を両立でき,更に外部接続電極構造に樹脂を内包する構造の採用により実装基板への接続信頼性を確保できることを確認した。チップの厚さが200 µmの薄型パッケージ(はんだボールを除いたパッケージ総厚280 µm)についても良好な信頼性が得られたことから,WL-CSPによる薄型パッケージの実現性を確認できた。他社製WL-CSPはウエハプロセスを使って製造を行うことから,歩留まりの良いウエハに適用されているが,当社製WL-CSPにおいては良品のチップのみを使ったフリップチップボンダーによる個別実装も可能である。また,電極数の多い半導体においては,チップの下面に実装端子を全て配置(fan-in)できない場合もあるが,チップの個別実装においては,チップの外側にも実装端子を配置(fan-out)も可能であることから,樹脂内包外部接続用電極を有する高信頼性半導体パッケージとしての展開が期待できる。

参考文献

1) 日笠和人,天野俊昭,掛上俊哉,菅原賢一,豊田尚之:“FBTI®(Flexible Bumped Tape Interposer)の開発,”古河電工時報,112(2003),55.

ペリフェラル実装 フルアレイ実装

図14 実装状態の比較 Comparison of surface mounting methods.

-10

-9

-8

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

10 100 1000 10000

累積不良率lnln(1/(1-F(t)))

チップ厚200μmtフルアレイ実装

チップ厚530μmtペリフェラル実装

各7分保持

サイクル数(回)

累積不良率F(t)(%)

99.99999.9999.999959080706050403020151075432

10.70.50.40.30.2

0.1

0.050.040.030.02

0.01

Y-PLOT

0.07

1.5

0.15

0.015

チップ厚200 µmtフルアレイ実装

6.30

チップ厚530 µmtペリフェラル実装

-40℃⇔+125℃各7分保持

6.305.00

6.305.00

6.305.00

6.305.00

図15 二次実装信頼性結果 Test results of solder joint reliability.

反射電子像

銅箔Cu3Sn

Cu6Sn5

Cu3Sn

Cu6Sn5

反射電子像

銅箔Cu3Sn

Cu6Sn5

Cu3Sn

Cu6Sn5

破壊進行方向反射電子像

銅箔Cu3Sn

Cu6Sn5

Cu3Sn

Cu6Sn5

反射電子像

銅箔Cu3Sn

Cu6Sn5

破壊進行方向破壊進行方向

はんだボールを剥離した面

拡大

CuSn層

破壊進行方向拡大

図16 故障解析 Analysis of failure.