財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2009年度在宅医療助成一般 ... ·...

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財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2009 年度在宅医療助成一般公募(前期) 在宅療養患者においてスピリチュアルケアの効果を検証する研究 2010 8 31 日提出 最終報告書) 特定非営利活動法人 臨床パストラル教育研究センター (東京都世田谷区瀬田 1-28-2副理事長 吉田 彪 一般社団法人 ライフケアシステム (東京都千代田区三崎町 1-3-12 水道橋ビル) 代表理事 辻 彼南雄 (概要) 在宅療養患者に対する臨床調査を通して、スピリチュアルケアの効果を定量的・定性 的に把握する試みを行った。臨床調査に先立って行った在宅医に対するアンケートで も、効果がわからないという回答が最も多く、効果を明らかにすることの必要性を確 認した。本研究の中で臨床調査の方法を検討し、調査マニュアルを作成した。これに 基づき臨床調査を行い、調査票を分析したところ、スピリチュアルケアの効果は「直 接的効果」「感情的効果」「哲学的効果」の 3 種類に分けられることがわかった。実際 のケアでもこれらの効果が実現されていることを示すことができた。また、目指して いる効果の違いから、傾聴や薬剤療法とは異なるスピリチュアルケアの位置づけを明 確にすることができた。 1

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財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2009 年度在宅医療助成一般公募(前期)

在宅療養患者においてスピリチュアルケアの効果を検証する研究

(2010 年 8 月 31 日提出 最終報告書)

特定非営利活動法人 臨床パストラル教育研究センター (東京都世田谷区瀬田 1-28-2)

副理事長 吉田 彪 一般社団法人 ライフケアシステム

(東京都千代田区三崎町 1-3-12 水道橋ビル) 代表理事 辻 彼南雄

(概要) 在宅療養患者に対する臨床調査を通して、スピリチュアルケアの効果を定量的・定性

的に把握する試みを行った。臨床調査に先立って行った在宅医に対するアンケートで

も、効果がわからないという回答が最も多く、効果を明らかにすることの必要性を確

認した。本研究の中で臨床調査の方法を検討し、調査マニュアルを作成した。これに

基づき臨床調査を行い、調査票を分析したところ、スピリチュアルケアの効果は「直

接的効果」「感情的効果」「哲学的効果」の 3 種類に分けられることがわかった。実際

のケアでもこれらの効果が実現されていることを示すことができた。また、目指して

いる効果の違いから、傾聴や薬剤療法とは異なるスピリチュアルケアの位置づけを明

確にすることができた。

1

1.調査研究趣旨

日本は欧米に比べ、スピリチュアルケアの普及は極めて遅れていると考えられる。欧米

ではスピリチュアルケア(パストラルケア)は多くのところで受け入れられており、国に

よってはケアワーカーを病院に常駐させておくことを義務付けている。しかし日本では宗

教的・文化的背景が異なることもあり、臨床の現場でスピリチュアルケアが抵抗なく受け

入れられているとは言えない。特に、医療関係者の中には「スピリチュアルケアの効果が

わからない」という問題を指摘する人が多い。 このような状況の日本においてスピリチュアルケアを普及させるには、スピリチュアル

ケアの効果を明らかにし、効果があることを示す必要があると考えられる。このため本調

査研究では、臨床調査を通してスピリチュアルケアの効果を明確にし、その検証方法を検

討した。これにより、スピリチュアルケアの認知度向上と普及を目指している。

2.調査研究方法

スピリチュアルケアの効果が何であるかを明確にし、ケアにおいて効果があることを検証

するために、本研究では以下のような調査方法をとった。 (1)定量的調査と定性的調査 スピリチュアルケアの効果を定量的に示せれば、日本においてもスピリチュアルケアが

医療現場に受け入れやすくなると考えられる。定量的調査に使えそうなものとして QOL が

あり、ケアの前後で QOL の評価値を比較することが考えられる。スピリチュアリティの関

連で現在よく使われている QOL は「FACT-SP(がん患者の QOL におけるスピリチュアリ

ティの評価)」(注1)であり、本研究でもこれを用いた。 しかし実際に使ってみると、この QOL の評価値の差では、効果を測定するのにあまり適

さないことがわかった。これは、 ・1 回のケアの前後では差異がほとんど見られなかった ・実際は効果があったと考えられるのに数値的には低下した ・ケアの効果だと思われることがあっても、それがこの QOL 評価票の項目として用意さ

れていなかった ・この QOL による評価は患者のスピリチュアリティの“状態”を把握するためのもので

あり、そのときに提供したケアの“効果”を測定するのには向かないと考えられる ・QOL は最近 1 週間の平均的状態を答えるという前提で作られているので、短期的な変

化を調べるには向かないと考えられる などがあったためである。 効果を測定するのであれば、「効果(変化)はあったのか」という観点から患者に直接ヒ

2

アリングする、またはスピリチュアルケアワーカーの観察やワーカー自身の評価判断など

を定性的に記録することが必要であろう。このことから、本調査では項目が固定的な QOL評価ツールだけでなく、定性的な記述ができる調査票も用いて、新しく見出された効果も

記録できるようにするのがよいと考えられる。このため、定性的調査として、 ・患者本人へのヒアリング ・医者へのヒアリング ・家族等へのヒアリング ・スピリチュアルケアワーカーによる観察や体験

を行った。 (注1)出典 下妻晃二郎、江口成美:がん患者用 QOL 尺度の開発と臨床応用(I).「FACT-SP(第 4-A版)」日医

総研ワーキングペーパー No. 56 2001 年 11 月

(2)中・短期的変化も把握する効果測定方法 スピリチュアルケアの効果が現れるのは、いくつかの段階にわかれると考えられる。ひ

とつは、その日のケアの中で変化したもの(短期的変化)、もうひとつは、そのケアをきっ

かけに考え始め、何日かしてから変化したもの(中期的変化)、もうひとつは、何回かのケ

ア全体を通して変化したもの(長期的変化)があると考えられる。 定量的調査と定性的調査、および時期の異なる効果の把握もできるように調査項目を構

成し、調査マニュアルを作成した。その中の臨床調査フローの概要を次ページに示す。

3

患者紹介

図1.臨床調査フローの概要

第 1 回目訪問

調査説明・同意書

訪問ケア時調査 (1)患者へのヒアリング (2)スピリチュアルケアワーカーによる観察 (3)スピリチュアルケアワーカー自身の体験

終了時調査 (1)患者への QOL アンケート (2)医者へのヒアリング (3)家族等へのヒアリング (4)スピリチュアルケアワーカーによる観察

在宅医から患者の紹介を受ける

スピリチュアルケアワーカー(SPCW)は、原則として第 1 回目は在宅医に同行して患者訪問する

SPCW は、調査期間の開始時に QOL の状態等を患者からヒアリングする。また、医師や家族等からその患者の現状を聞く。また、患者の状態を観察する。【定量/定性調査、長期変化】

SPCW は、調査期間の終了時に、開始時と同様の調査を行う。【定量/定性調査、長期変化】

調査期間中に複数回訪問ケアをする。SPCW は、各回訪問後に、患者へのヒアリングや観察等を行い、担当医および研究者に報告する。【定性調査、中/短期変化】

調査のまとめ SPCW は、その患者へのケア期間全体を通してのレポートをまとめる【定性調査、長期変化】

訪問ケア時調査

調査を始める前に、SPCW は調査について患者および家族等に説明し、調査に関する同意書を取る

開始時調査 (1)患者への QOL アンケート (2)医者へのヒアリング (3)家族等へのヒアリング (4)スピリチュアルケアワーカーによる観察

訪問ケア時調査

4

3.在宅医へのアンケート実施

今回の臨床調査を始めるにあたって、在宅医にアンケート調査を行った。ここでは、在

宅医はスピリチュアルケアをどう見ているのか、また、この調査に協力していただけるか

どうかを、勇美記念財団の在宅医紹介のホームページを基にし、関東近郊のスピリチュア

ルケアに関心のあると思われる在宅医に郵送でアンケート調査した。 実施時期:2009 年 11 月~2010 年 1 月 発送数:20 件 回収数:15 件 (回収率 75%)

(1) よく知っ

ており、実践

している13.3%

(2) よく知っ

ており、人に

説明できる40.0%

(3) 知って

いる26.7%

(4) 聞いた

ことはある20.0%

(5) 知らな

い0.0%

認知度

(1) 非常に

必要性を感

じている40.0%

(2) 必要性

を感じてい

る20.0%

(3) あって

もよいと思う26.7%

(4) 必要性

を感じない13.3%

(5) ないほ

うがよい0.0%

必要度

40.0%

13.3%

13.3%

13.3%

13.3%

6.7%

0.0% 20.0% 40.0% 60.0%

効果がわからない

悪化する可能性がある

非科学的である

宗教関係はお断りしている

費用がかかるなら、導入したくない

精神療法・心理療法で十分と思う

スピリチュアルケアに関する問題点[複数回答]

図2.在宅医へのスピリチュアルケアに関するアンケート集計結果

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●「スピリチュアルケアに関する問題点」の設問でのコメント ・対応しても効果がなかなか得られない局面がある ・導入の方法が難しい。患者さん、ご家族との信頼関係をどう構築するか・・・。 ・人的資源、情報の不足 ・流派(カウンセリングの方法論・流派が多数あるように)があり、宗教を否定する形も絶対視

する形も、信頼しにくいため ・シシリーソンダースが最初に述べた事がしっかり理解されず、多くの人に誤解されている。ま

た、実践している方も自己の自由な理解でやっておられる方が多い。 ・チーム全員で行うものと認識しています。 ・学問的なものではなく、傾聴、共感、手当、ユーモアから生まれるものと考えている ・特別にスピリチュアルケアが必要のないような状況改善が先でしょう 【考察】 スピリチュアルケアに関心があると思われる在宅医に対して行ったアンケート調査なの

で、認知度は高く、必要度も高い。しかし、必要としているにもかかわらず、スピリチュ

アルケアには問題があると感じており、その中でも「効果がわからない」という意見が最

も多かった。 このことからも、この「必要である」という声に応え、スピリチュアルケアを普及させ

ていくためには、「効果」を示さないとならないと考えられる。 また、コメントを見ると、「スピリチュアルケア」が何であるかという共通認識もあまりで

きていないように感じられる。 本調査研究を通して、スピリチュアルケアの効果を明確にしていき、その普及に寄与し

ていきたいと思う。

4.調査結果

本調査では、2 名の患者に調査協力をしていただくことができた。患者の状況や身体状態に

より、一部調査できないデータもあった。 患者 A 氏(40 代男性) 調査前ヒアリング・QOL 調査 2010 年 2 月 20 日 第 1 回ケア(ケア後ヒアリング調査) 2 月 20 日 第 2 回ケア(ケア後ヒアリング調査) 5 月 6 日 第 3 回ケア(ケア後ヒアリング調査) 7 月 30 日 調査後ヒアリング・QOL 調査 7 月 30 日 ケアワーカーによる全体感想 8 月 4 日 患者 B さん(40 代女性) 調査前 QOL 調査 2010 年 7 月 28 日

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第 1 回ケア(ケア後ヒアリング調査) 7 月 28 日 第 2 回ケア(ケア後ヒアリング調査) 8 月 6 日 調査後 QOL 調査 8 月 12 日 ケアワーカーによる全体感想 8 月 6 日

5.考察

(1)定量的調査の分析 QOL 評価を分析したところ、必ずしもスピリチュアルケアの効果を正確に反映していな

いことがわかった。後述の例にあるように、患者 A 氏の場合、臨床調査の開始前と開始後

に回答してもらった QOL の結果を比較してみると、開始前よりも終了後の QOL の方が、

「心穏やかである」「心安らいでいる」などの項目において評価が低くなっており、「心穏

やかになれない」といった項目の評価が上がっている。 この QOL 評価の変化の結果から、スピリチュアルケアの効果がなかった、または悪影響

を及ぼした、とは結論付けることはできない。なぜなら、そのときの定性的調査の調査票

を見ると、最終回(第 3 回目)のケアの直前の時期に、 ・これまで A 氏が生きがいを持って行ってきたことに対して脅す人が出てきて、身の危

険を感じたのでやめることにした ・検査の結果が思わしくなかった ・病気を治すことに専念し、復職をこれからの目標とした

などがあったために、調査終了後に測定した QOL では、スピリチュアルケアの効果に関係

なく、評価が下がったのだと考えられる。 最終回のケアの後のケアワーカーの観察や感想としては、「生きる目標をはっきりさせる

ことができた」「強くなったと感じた」である。これはむしろ、スピリチュアルケアが良い

効果をもたらしたと考えられる。また、患者が「病気を治すことに専念する」ことにした

からこそ、悲しみや不安が以前よりも増したとも考えられる。 このように、この QOL 数値の変化だけでは、スピリチュアルケアの効果を測るのは難し

い(実際の状況と合致しない)場合があることがわかった。従って、スピリチュアルケア

の効果を定量的に把握しようとする場合、従来の患者のスピリチュアリティの状態を測定

把握する QOL では適切ではなく、新たに効果を測定するための QOL を考案する必要があ

ると感じた。 例)A 氏のケース 定性的調査では、患者ヒアリングで「気がかりを聞いてもらえた」「安心した」「わかっ

7

てもらえてうれしい」で、ケアワーカー観察で「生きる目標をはっきりさせることができ

た」「強くなったと感じた」「明るくなった」であり、ケアワーカーの感想ではケアの効果

はポジティブな意味で「かなりあった」と感じている。 しかし定量的調査では、下記に示すように、ネガティブな度合いが強まっている。(心の

安らかさや穏やかさのところ(Sp1、Sp6、Sp7、Sp9)であてはまる度合いが下がり、心

穏やかになれない(Sp4)で上がっている。)このほか、他の分野の質問(「悲しいと思って

いる」「神経質になっている」など)でも、ネガティブな度合いが強まっている。

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

Sp1 心が安らかだ。 0 1 2 3 4

Sp2 私には生きがいがある。 0 1 2 3 4

Sp3 私の人生は充実している。 0 1 2 3 4

Sp4 なかなか心穏やかになれない。 0 1 2 3 4

Sp5 自分が生きていることの意義を感じ

る。 0 1 2 3 4

Sp6 自分自身の心の奥底に、安らぎを感

じる。 0 1 2 3 4

Sp7 心が穏やかな状態に保たれている。 0 1 2 3 4

Sp8 自分の人生には意味も目的もない。 0 1 2 3 4

Sp9 心の安らぎを感じさせる人生観をも

っている。 0 1 2 3 4

Sp10 強く生きるための人生観をもってい

る。 0 1 2 3 4

Sp11 病気を患ったお陰で、自分の人生観

はいっそう深まった。 0 1 2 3 4

Sp12 病気でどんなことになっても、大丈

夫だ。 0 1 2 3 4

調査開始前 調査終了後 ネガティブな質問

図3.定量調査:調査前と調査後の QOL 評価の比較(一部分)

(2)定性的調査の分析 患者ヒアリングやケアワーカー観察などの定性的調査の調査票等から「効果」と思われ

るキーワードを抽出したところ、これらは 3 種類のカテゴリーに分類することができるこ

とがわかった。(実際のキーワードやカテゴリー分けの結果については別紙参照)ここでは

それらのカテゴリーを「直接的効果」「感情的効果」「哲学的効果」とした。

8

・直接的効果・・・聞いてもらえた、教えてもらった、話したら問題が明確になった、

など、スピリチュアルケアワーカーと会話することによって得られ

た効果。直接的・客観的・物理的な成果。 ・感情的効果・・・スピリチュアルケアワーカーと話した結果として、本人の中にネガ

ティブな感情や考えが生じなくなったり、ポジティブな感情や考え

が出てきたりするようになったという効果。本人の中に自然に出て

くる感情や考えの変化。 ・哲学的効果・・・スピリチュアルケアワーカーと会話することを通して、本人の中に

核となるもの、確信が形成されたという効果。条件反射や反応とし

て自然に出てくる感情や考えとは異なるものであり、本人が悟った、

掴んだという類のもの。 これは、例えば、不安に関しては、 ・不安を聞いてもらえた・・・直接的効果 ・不安がなくなった・・・感情的効果 ・状況は変わっていないのに不安がなくなった自分に気がついた・・・哲学的効果

とすることができる。 このようにカテゴリー分けすることで、スピリチュアルケアの効果を把握しやすくなっ

たと思う。これによって、「スピリチュアルケアの効果がわからない」としている医療関係

者にも、イメージを掴んでもらいやすくなったのではないかと思う。 (3)分析結果の適用 今回の分析で明確になった効果が、他のスピリチュアルケアにもみられるかどうかを検

証した。下記の例は本調査で行ったスピリチュアルケアではないが、スピリチュアルケア

がある場合とない場合の違いが明確であり、これを例にして示す。 この例の C さんはまず母親をガンで亡くし、その後父親もガンで亡くした。母親の時は

スピリチュアルケアワーカーがいなくて、後悔の残る別れだった。しかし父親の時はスピ

リチュアルケアワーカーが介在し、患者本人も家族も悲しみではない意義のある別れをす

ることができ、罪悪感が残らなかった。(C さんの手記全文については、別紙参照)以下の

図では、スピリチュアルケアがある場合とない場合の患者本人および家族の心の状態の違

いを比較して示している。また、スピリチュアルケアがあった場合の状態に哲学的効果が

見られるので、それを色つきで示す。 このように、スピリチュアルケアがあることによって、哲学的効果なども多く実現され

ていることがわかった。

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■看病中 ► ガンを受け入れられず

► 不安でいっぱい ► 死が恐怖でしかなかった

► どうしてあげればいいかわからなかった

► 家族が疲れ果てていた

► 動揺 ► 気持ちの整理もできず

► 他の人を薄情だと怨む

► 自分自身を傷つけた

► 現実逃避した ■患者の死後 ► 寂しさと悲しみ ► 後悔 ► 何もしてあげられなかった

► ありがとうと一言も言えなかった

► 準備もお別れもできないまま

► いたたまれない気持ち

► 医療に疑問と不信 ► 残った傷は深く、悪化する一方

スピリチュアルケア

► 「旅立ちの準備を一緒にしていきましょうね」

► 「そのままでいい。そのままを受け入れる。ありのままを愛する」

► 「旅立つその瞬間、それは、その人の魂が一番輝くとき」

► 「だんだんお父さんにしてあげられることがすくなくなってくるけれども、それでもいい」

► 「そばにいるだけでその人の力になる」

► 「もうお別れの準備はできた?」

► 「自分たちの準備ができたこと、好きなときに旅立っていいことを伝えてね」

► ケアワーカーがいるだけで、なんともいえない空気感

スピリチュアルケア無し スピリチュアルケアあり

患者本人(母親) ► 「迷惑ばかりかけてごめん」

家族

► 手放してゆだねている ► 「とうとうきやがったな。死が。」

► 「もうお別れやな」 ► 気持ちや感情の整理ができていくよう

► 一緒にいることを楽しんでいるよう

► 幸せそうな表情

患者本人(父親)

家族 スピリチュアル

ケアワーカー

C さんとご両親の別れの例(C さんの手記から)

■看病中 ► 死の受け入れと別れの準備 ► 怖くなくなった ► 「死は、生まれるのと同じくらい自然なものでは。」

► 怨むことなく穏やかにいられることに感謝

► 何があっても動じない自分 ► 受け入れることを学んだ ► 人の気持ちがわかるようになった

色付き:哲学的効果

► さみしく思っても悲しみではない

► 罪悪感が残らなかった ► 一緒にすごした残りの日々がとても深い意味があった

► 心の傷が癒された

■患者の死後

► 腹が据わった ► 魂が一番輝く瞬間を楽しみに ► 一緒に乗り越えるという感覚 ► 動揺無し ► ケアワーカーに話すことで、心の整理ができていった

► 安心感 ► 一緒にいることを楽しんだ ► 患者と向き合う中で、泣き、笑い、怒り、感謝し、感動した

► 受け入れることができた

図4.スピリチュアルケアワーカーの有無による結果の違いと効果

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(4)他の手法との位置づけ また、このカテゴリー分けで考えれば、他の手法(傾聴、薬物療法など)との位置づけ

の違いについても明確になるのではないだろうか。すなわち、「傾聴」は直接的効果を目指

し、その結果感情的効果や哲学的効果にまで波及することを期待しているといえるのでは

ないか。「薬剤療法」や「ヒーリング」、「心理療法」などは感情的効果を目指し、その結果

哲学的効果にまで波及することを期待しているといえるのではないか。そして「スピリチ

ュアルケア」は最初から哲学的効果を目指しているといえると考えられる。

図5.他の手法との位置づけを比較したイメージ

6.まとめ

本研究では、在宅療養患者に対してスピリチュアルケアの効果を検証するための調査方

法を考案し、実際に臨床調査を行った。それと同時に、今回考案した調査方法についての

検討も行った。 その結果、定量的調査方法については、従来の QOL 評価を用いた方法ではスピリチュア

ルケアの効果を測定するのに適さない事を確認し、新たな QOL の必要性を示すことができ

た。 また、定性的調査を分析して、スピリチュアルケアの効果とは何であるか、をカテゴリ

ー分けを行うことで明確にすることができた。さらに、それらの効果が実際のケアでも現

れていることを確認できた。しかし、まだ確認の手法が確立したわけではないので、検証

したとまでは言えないだろう。今後検証方法の確立が求められる。 これらの調査研究結果を通して、医療関係者にも一般の人にもスピリチュアルケアの効

果が把握しやすくなり、効果があることに納得し、欧米のようにスピリチュアルケアが普

11

12

及することを願っている。 今後の展開としては、定性的調査で明らかになった効果を基にして、定量的な測定がで

きるよう、新たな QOL 評価または効果測定の指標を作ることが考えられる。この指標に基

づいてそれぞれのスピリチュアルケアでどのカテゴリーの効果がどのくらいあったか、を

検証する方法を確立すれば、ケアの質の向上を図ることも可能になるだろう。 また、この効果の指標はスピリチュアルケアワーカーのスキルを把握するのにも使える

かもしれないが、ケアワーカーのスキルをケアの効果の多寡で判断することの是非につい

てはまだ検討の余地があるだろう。 最後に、本調査研究に協力していただいた患者の方々をはじめ、家族や先生方、患者会

や医療関係者の方々、並びに本研究に関係していただいた全ての方々に、感謝を申し上げ

たい。 ※本報告書は、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成によって行われた調査

研究の報告である。

(別紙)

・調査マニュアル ・訪問ケア時調査票(A 氏第 1 回~第 3 回、B さん第 1 回~第 2 回) ・QOL 調査票(A 氏、B さん) ・効果のカテゴリー分けの実際 ・C さん手記

財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2009 年度在宅医療助成一般公募(前期) 「在宅療養患者においてスピリチュアルケアの効果を検証する研究」

調査マニュアル

2010 年8月 特定非営利活動法人 臨床パストラル教育研究センター

1.概要

原則として、以下のフローに従って在宅療養の患者を訪問し、スピリチュアルケアを提供

し、効果を検証する調査を行う。ただし、実施においては担当医の指示を優先し、患者や

家族等の関係者の要望を尊重する。調査のために無理をしたり、無理をさせることのない

よう注意する。なお、スピリチュアルケアによって何らかの問題や著しい変化があった場

合は、すぐに担当医および研究者に報告する。

第 1 回目訪問

調査説明・同意書

訪問ケア時調査 (1)患者へのヒアリング (2)スピリチュアルケアワーカーによる観察 (3)スピリチュアルケアワーカー自身の体験

終了時調査 (1)患者への QOL アンケート (2)医者へのヒアリング (3)家族等へのヒアリング (4)スピリチュアルケアワーカーによる観察

スピリチュアルケアワーカー(SPCW)は、原則として第 1 回目は在宅医に同行して患者訪問する

SPCW は、調査期間の最初に QOL の状態等を患者からヒアリングする。また、医師や家族等からその患者の現状を聞く。また、患者の状態を観察する。【定量/定性調査、長期変化】

SPCW は、調査期間の終了時に、開始時と同様の調査を行う。【定量/定性調査、長期変化】

調査期間中に複数回訪問ケアをする。SPCW は、各回訪問後に、患者へのヒアリングや観察等を行い、担当医および研究者に報告する。【定性調査、中/短期変化】

調査のまとめ SPCW は、その患者へのケア期間全体を通してのレポートをまとめる【定性調査、長期変化】

訪問ケア時調査

訪問ケア時調査

調査を始める前に、SPCW は調査について患者および家族等に説明し、調査に関する同意書を取る

開始時調査 (1)患者への QOL アンケート (2)医者へのヒアリング (3)家族等へのヒアリング (4)スピリチュアルケアワーカーによる観察

患者紹介 在宅医から患者の紹介を受ける

2

2.患者の紹介と同意書の確認

在宅医から調査協力可能な患者を紹介してもらう。ケアワーカーは原則として第 1 回目は

在宅医と同行して訪問することが望ましい。 ケアワーカーは第 1 回目の訪問時、患者および家族等に調査について説明し、調査協力の

同意書をとる。同意書においては、以下のことを明示する。 ・患者および家族等の要望により、いつでも調査を中止することができること ・ケアワーカーおよび調査研究者は担当医の指示に従って行動すること ・ケアワーカーおよび調査研究者は個人情報やプライバシーに関する守秘義務を遵守す

ること 3.開始時・終了時調査

長期的に出てくる変化を捉えるため、調査期間の開始時と終了時に、QOL アンケート、医

者・家族へのヒアリング、スピリチュアルケアワーカーによる観察を記録する。この記録

は、開始時と終了時で差分を取る。これによって、調査期間全体にわたっての効果の有無

や内容を捉える。 なお、調査期間が何カ月にも及ぶ場合は、期間の途中に何度か(月 1 回程度)、同様に調査

することが望まれる。 なお、患者の状態に変化があった場合、それが何によるものと思われるかといった見解を

患者本人だけでなく、医者や家族にも聞くことが望ましい。 (1)患者への QOL アンケート(様式1) (2)医者へのヒアリング(様式2) (3)家族等へのヒアリング(様式2) (4)スピリチュアルケアワーカーによる観察(様式2) 4.訪問ケア時調査 短・中期的に出てくる変化を捉えるため、各回訪問してケアをした後に、観察やヒアリン

グを行う。(様式3) なお、ケアワーカーはこの結果を随時その患者の担当医および研究者へ報告する。報告は

郵送または手渡しとする。(FAX の誤送信によるプライバシー流出を防ぐため) (1)患者へのヒアリング ①今回のケアでの感想

短期的に出てくる変化を捉えるため、今回のケアの感想を聞く。 (例)今回ケアをしてもらう前まではこの病気が嫌で嫌で死が恐ろしかった

が、ケアワーカーと話しているうちに、この病気は自分の人生をゆっく

3

り振り返るために与えられた機会かもしれないと思うことができ、心が

少しだけ落ち着いてきた。 ②以前の状態との比較

中期的に出てくる変化を把握するため、前回訪問時と今回訪問時の状態の変

化を聞く。 (例)以前は家族との関係は良好で何も問題もないと思っていたが、最近は

家族に対してものすごい感謝の気持ちが出てきたし、それを伝えていな

いことに気がついた ③再訪可否

各回の訪問の終了時に、次回訪問して良いかを患者(または家族等)に尋ね、

その結果を記述する。次回訪問を拒否された場合は、担当医および研究者に

報告し、この患者への訪問ケアは終了とする。 (2)スピリチュアルケアワーカーによる観察 なるべく客観的な視点で患者を観察し、記録する。 ①身体的状況、表情、会話内容の変化、など

(例)表情が明るくなり、ベッドから上半身を起こして話すようになった。 (3)スピリチュアルケアワーカー自身の体験 スピリチュアルケアワーカーの主観的な情報を記録する。 ①ケアの効果の有無

(例)かなりあった ②効果の概要 (例)患者は人生に対して前向きになってきた。 ③具体的状況

(例)今回のケアにより、患者から「死ぬまでに○○したい。それまでは死

にたくない」という言葉が出た。このことから、患者は完全に死を受容

したというところまでは行っていないが、これまでの死を感情的に忌み

嫌って見ないようにしていたところから、死を冷静に見て、これからど

う生きていくか、ということに考えを向けることができるようになった

と思う。これは、患者が「なぜこんな病気になったのか」と悩んでいた

時に、こちらから「“なぜ”というより“なんのために”と置き換えて

一緒に考えてみませんか。」と言ったことがきっかけだと思う。 ③感じたこと

(例)患者の表情が見違えるように明るくなり、前向きに生きるようになっ

たので、とてもうれしい。この患者が○○できるよう今後力づけていく

4

が、たとえできなかったとしても安らかな心でいられるよう、寄り添っ

ていきたいと思う。 5.調査のまとめ

その患者へのケア期間全体を通してのレポートをまとめる。形式は自由。(様式4) 6.訪問ケアの終了

所定の訪問回数を終えた時、または患者および関係者からの要望・事情等で訪問が行えな

くなった時、または在宅医からの指示があったとき、訪問ケアを終了する。ケアワーカー

はその旨を研究者に報告し、その時点で調査のまとめを行う。 研究者 NPO 法人臨床パストラル教育研究センター 副理事長 吉田彪 [email protected] TEL 03-3700-3425 FAX 03-3700-3427 URL http://pastoralcare.jp/ 担当者 NPO法人臨床パストラル教育研究センター 企画部長 藤生崇則 [email protected] TEL 080-5558-1459 FAX 048-542-3202

5

(様式1) 年 月 日

患者

ケアワーカー

QOL調査票(FACT-SP)

【調査開始時・期間中・終了時調査】

下記はあなたと同じ症状の方々が重要だと述べた項目です。項目ごとに、ごく最近(過去7日間

程度)のあなたの状態に最もよくあてはまる番号をひとつだけ選ぴ、○で囲んでください。

1.身体症状について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GP1 体に力が入らない感じがする。 0 1 2 3 4

GP2 吐き気がする 0 1 2 3 4

GP3 体の具合のせいで家族への負担と

なっている。 0 1 2 3 4

GP4 痛みがある。 0 1 2 3 4

GP5 治療による副作用に悩んでいる。 0 1 2 3 4

GP6 自分は病気だと感じる。 0 1 2 3 4

GP7 体の具合のせいで、床(ベッド)で休

まざるを得ない。 0 1 2 3 4

2.社会的・家族との関係について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GS1 友人たちを身近に感じる。 0 1 2 3 4

GSX1 家族を親密に感じる。 0 1 2 3 4

GS2 家族から精神的な助けがある。 0 1 2 3 4

GS3 友人たちからの助けがある。 0 1 2 3 4

GS4 家族は私の病気を充分受け入れてい

る。 0 1 2 3 4

GS5 私の病気について家族間の話し合い

に満足している。 0 1 2 3 4

GSX2 私は病気ではあるが、家族の生活は

順調である。 0 1 2 3 4

GS6 パートナー(または自分を一番支え

てくれる人)を親密に感じる。 0 1 2 3 4

Q1 次の設問の内容ぱ、現在あなたの性生活がどの程度あるのかとは無関係です。答えにくいと、思われる場合は下記の四角にレ印を付け、次の

ページの設問に進んで下さい。ロ

GS7 性生活に満足している。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 1/3)

6

3.精神的状態について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GE1 悲しいと感じる。 0 1 2 3 4

GE2 病気を冷静に受け止めている自分に

満足している。 0 1 2 3 4

GE3 病気と闘うことに希望を失いつつあ

る。 0 1 2 3 4

GE4 神経質になっている。 0 1 2 3 4

GE5 死ぬことを心配している。 0 1 2 3 4

GE6 病気の悪化を心配している。 0 1 2 3 4

4.活勁状況について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GF1 仕事(家のことも含む)をすること

ができる。 0 1 2 3 4

GF2 仕事(家のことも含む)は生活の張

りになる。 0 1 2 3 4

GF3 生活を楽しむことができる。 0 1 2 3 4

GF4 白分の病気を充分受け入れている。 0 1 2 3 4

GF5 よく眠れる。 0 1 2 3 4

GF6 いつもの娯楽(余暇)を楽しんでい

る。 0 1 2 3 4

GF7 現在の生活の質に満足している。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 2/3)

7

5.その他心配な点

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

Sp1 心が安らかだ。 0 1 2 3 4

Sp2 私には生きがいがある。 0 1 2 3 4

Sp3 私の人生は充実している。 0 1 2 3 4

Sp4 なかなか心穏やかになれない。 0 1 2 3 4

Sp5 自分が生きていることの意義を感じ

る。 0 1 2 3 4

Sp6 自分自身の心の奥底に、安らぎを感

じる。 0 1 2 3 4

Sp7 心が穏やかな状態に保たれている。 0 1 2 3 4

Sp8 自分の人生には意味も目的もない。 0 1 2 3 4

Sp9 心の安らぎを感じさせる人生観をも

っている。 0 1 2 3 4

Sp10 強く生きるための人生観をもってい

る。 0 1 2 3 4

Sp11 病気を患ったお陰で、自分の人生観

はいっそう深まった。 0 1 2 3 4

Sp12 病気でどんなことになっても、大丈

夫だ。 0 1 2 3 4

出典/参考:下妻晃二郎、江口成美:がん患者用 QOL 尺度の開発と臨床応用(I). 「FACT-SP(第4-A版)」

日医総研ワーキングペーパー No. 56 2001 年 11 月

(FACT-SP 3/3)

8

6.自分自身の状態について

(案1:記述中心)

※答えにくい場合は、無回答でもかまいません

①信仰 なし・あり( )

②信念・信条・より

どころ なし・あり( )

③死生観 なし・あり( )

④今の状態

(身体的・社会的・

心理的・スピリチュ

アル的・)

⑤その他

9

(様式2) 年 月 日

患者

ケアワーカー

医者・家族等へのヒアリング調査票

【調査開始時・終了時調査】

(1)医師へのヒアリング ①病状 ②痛みや苦痛を訴える程度・頻度 ③処方箋 ④病状・余命の告知有無 ⑤その他 (2)家族等へのヒアリング ①患者の状態(身体・社会(人間関係)・心理・スピリチュアル的など) ②痛みや苦痛を訴える程度・頻度 ③家族等への態度(優しい、怒りっぽいなど) ④その他

10

(3)スピリチュアルケアワーカーによる観察 ①患者の状態(身体・社会(人間関係)・心理・スピリチュアル的など)

11

(様式3) 年 月 日

患者

ケアワーカー

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1)患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

③再訪可否

(2)観察結果

①身体状況、表情、会話内容の変化など

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

③具体的状況と効果の内容

④感じたこと

12

(様式4) 年 月 日

患者

ケアワーカー

調査のまとめ

【調査期間終了時】

13

14

(別紙1)

同意書

私は、下記のことが遵守される条件で、貴殿の調査研究に協力いたします。

・患者および家族等の要望により、いつでも本調査を中止することができること

・スピリチュアルケアワーカーおよび調査研究者は担当医の指示に従って行動すること

・スピリチュアルケアワーカーおよび調査研究者は個人情報やプライバシーに関する守

秘義務を遵守すること

年 月 日

患者住所

患者氏名 (代筆者)

研究者 NPO臨床パストラル教育研究センター 副理事長 吉田彪

[email protected] TEL 03-3700-3425 FAX 03-3700-3427 〒158-0095 東京都世田谷区瀬田 1-28-2 URL http://pastoralcare.jp/ 担当者 NPO臨床パストラル教育研究センター 企画部長 藤生崇則 [email protected] TEL 080-5558-1459 FAX 048-542-3202

(様式3) 2010 年 2 月 20 日

患者 A氏(第 1回)

ケアワーカー Y.I.

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1) 患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

・話を聴いてくれる人が目の前にいることが嬉しい

・(開始時に患者が記入した)調査票を見ながらの方がスムーズに話ができる。見ないでやるやり

方であれば、話をする目的を決めて、スピリチュアルペインを引き出す質問をもっとする方が良か

ったと思う。

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

以前は治療にしろ生き方にしろ、こうした方が良いと思うことをやっていた。今は本当に自分が思

っている通り、まね事はやめた。信念を貫こうと思うようになった。

(2)観察結果

①身体状況、表情、会話内容の変化など

明るく生き生きとした表情。ご自分の生きがいの事を話されたとき、生き生きしていた。

②再訪可否:可

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

患者は自分の生きがいを生き生きと語ることができた。

③具体的状況と効果の内容

調査票を見ながら、生きがいとは何か質問した。それに対して、詳しく説明してくださった。ワーカ

ーが、患者の病気が悪化した時、心配なことは何か聞いた。患者は、「死ぬこと」と言ってから、も

っと心残りなのは、多くの人に政治的危機を聞いてもらえなくなる事と言って、詳しく話してくれた。

ワーカーは、聴いて受け止めた。

④感じたこと

・患者が自分の生きがいを詳しく説明してくださったとき、生き生きしていると感じた。

・今一番心配なことは、あと 1 年で職場復帰しなければ、退職しなければならないということである

ことが分かった。そのために、あらゆる手を尽くして病気と闘かおうとする患者の意気込みが感じ

られた。

・患者から、ケアの仕方、質問の仕方を逆に教えられた。真剣に、今できることをしようとしている

と感じた。

(様式3) 2010 年 5 月 6 日

患者 A氏(第 2回)

ケアワーカー Y.I.

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1) 患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

政治的な事を、少しでも多くの人に聞いてもらいたいと思っているので、ワーカーが受け止めてき

ちんと聴いてくれたことが嬉しかった。 少し、元気が出た。

体調は、変化なし。

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

体調は、一貫して良い。

自分の本当の気持ちに従って生きるという気持ちが、強くなった。

(2)観察結果

①身体状況、表情、会話内容の変化など

表情も穏やかで、リラックスしているように見えた。ワーカーの質問に丁寧に答えてくださった。

心残りな事を話す時、特に力が入っていた。

②再訪可否

決めなかった

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

心残りに思っている事をワーカーがきちんと聴いて受け止めたので、元気が出た

③具体的状況と効果の内容

ワーカーが、患者の病気が悪化した時、心配なことは何か聞いた。患者は、「死ぬこと」と言ってか

ら、もっと心残りなのは、多くの人に政治的危機を聞いてもらえなくなる事と言って、詳しく話してく

れた。ワーカーは、聴いて受け止めた。

④感じたこと

今はとても冷静に病気を受けとめているが、医者から初めて悪性リンパ腫だと言われた時は、死

を予想して不安だったと知り、それを克服したきっかけについても聞く事ができ、患者を理解する

上で良かったと思う。今は、冷静でいられるが、これから先病状が悪化して、死が近づいた時、ど

うなるかわからないと仰る。客観的に自分を見つめることができる方だと思った。

(様式3) 2010 年 7 月 30

日 患者 A氏(第

3回目)

ケアワーカー Y.I.

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1) 患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

今一番気がかりなことを聞いてもらったので、安心した。

書き込みをされた事 イ、ブログに、脅しととれる

ロ、復職できるかどうか

体調は、ちょっと疲れた。

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

いる所が一部ある(肝臓・骨髄の数値が上がっている)

ようになった。

血液検査の結果に、一喜一憂している。

ガンマーカーが、少し下がった。(嬉しい事)

一方で、がん細胞が活性化して

死が怖いと思う

(2)観察結果

①身体状況、表情、会話内容の変化など

今まではいつも毛糸のキャップを被っていたが、今日は帽子無しだった。今までより明るくみえた。

し、今は、復職することを生きる目的として、病気を治すこと

思うとおっしゃった。

会話は終始落ち着いて、冷静に話された。

まず最初に、一番気がかりな事を話

に専念しようと

②再訪可否

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

生きる目標をはっきりさせることができた。

③具体的状況と効果の内容

ブログに脅すような事を書いてきた人がいて、身の危険を感じたので、これからは病気を治すこと

に専念するため、ブログを全部削除した。病気を治して、復職することがこれからの目標ですと言

われた。

④感じたこと

自分の信念を送り続けてきたブログを、病気を治す事の方が先決だと思い、削除しなければなら

なかった A 氏に、潔さを感じた。また、病気を治して復職するという目標に向かって進んで行こうと

ている A 氏が、強くなったように感じた。 し

(様式3) 2010 年 7 月 28 日

患者 Bさん(第 1回目)

ケアワーカー Y.I.

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1) 患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

体調は、昨夜、寝付けなかった。今は、身体が痛いが、痛み止めを飲めばなおるので、心配して

いない

気持ちの変化はなし。

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

初回なので、記入せず。

(2)観察結果

①� 身体状況、表情、会話内容の変化など

会話中、身体の痛みを訴えることもなく、ワーカー自身気がつかなかった。

表情は、時に笑顔で、時に真剣に話してくださった。

最初は、医者に対する不信感があったが、別の医者にかかることにより克服した事。

いつ何が起こるか分からない病気であるが、家族の事も心配せず、淡々と生きている事など。

②再訪可否

8月6日に再訪する約束をした。

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

③具体的状況と効果の内容

ケアの効果があったかどうか、聞かなかった。

④感じたこと

「今を生きる」こと、「たのしく 、明るく、おめでたく」生きることにしているので、気が楽だと笑って

言われる。子供には 小さい時から自分の事は自分でするようにという考えで育ててきたので、自

分がいつ死んでも心配はしていない。生きていけると思っている。

「キャロットクラブ」で同じ病気を抱えている人たちと話すことにより、病気を重荷とは思わなくなっ

た。何も心配はないように話されるが、心の奥底の声を聞くまでには至らなかった。

今回は最初なので、まだ構えていたのかと思う。

(様式3) 2010 年 8 月 6 日

患者 Bさん(第 2回目)

ケアワーカー Y.I.

訪問ケア時調査票

【毎回調査】

(1) 患者へのヒアリング

①今回の訪問ケアによる体調・気持ち・考え方の変化

体調は、話を聞いてもらっている間は、病気を忘れられたので、よかった。

気持ち・考え方は、自分の中にしっかり持っているものがあるので、変らない。

②前回の訪問から今回の訪問までに起きた体調・気持ち・考え方の変化

体調は、痛かったり、熱が出たり、だるかったり、変化が毎日のようにある。それでも生きている。

気持ちは、特に変わりはない。

(2)観察結果

①身体状況、表情、会話内容の変化など

二階のレストランで話をしたので、階段を上って行くとき、疲れた様子だった。

しかし、話を始めると、生き生きとして、特に目が大きく見開かれて、印象的だった。

3 年前にがんを宣告された時は、ちょっとショックだったが、すぐに、これもたくさんある病気の一つ

だと思うようになった。がんは、90 パーセント精神的ストレスなど自分が引き起こしたもので、あと

の 10 パーセントは、食べ物が原因と思っている。

家族や友人に、病気であることを心配してもらいたくない。心配されると、かえって自分がつらく、

ストレスになる。普通に接してもらいたい。などと話された。

②再訪可否

(3)ケアワーカー自身の体験

①ケアの効果の有無(プラス面もマイナス面も考慮)

全くなかった わずかにあった 多少あった かなりあった 非常に多くあった

②効果の概要

B さんは、体調はあまり良くないが、話を聞いてもらっている間は、病気の事を忘れられた。

話しているうちに、いろんな気付きがあって、それを自分なりに明確にすることができた。

③具体的状況と効果の内容

3 年前にガンになったことにより、病院・医者・友人・宗教などいろんな出会いがあった。それらに

よって今を生きていられるのだということに気付かれた。

④感じたこと

B さんは、ご自分の中に、確固たる信念・信仰のようなものがあるので、どんなに体調が悪くても、

動揺しないでいられるのだと思った。このことは、前回の話には出なかったこと。

B さんご自身は、特にケアを必要とされないのかなと思った。

(様式1) 2010 年 2 月 20 日-2010 年 7月 30 日

患者 A氏

ケアワーカー Y.I.

QOL調査票(FACT-SP)

【調査開始時・期間中・終了時調査】

下記はあなたと同じ症状の方々が重要だと述べた項目です。項目ごとに、ごく最近(過去7日間

程度)のあなたの状態に最もよくあてはまる番号をひとつだけ選び、○で囲んでください。

調査開始前 調査終了後 ネガティブな質問 1.身体症状について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GP1 体に力が入らない感じがする。 0 1 2 3 4

GP2 吐き気がする 0 1 2 3 4

GP3 体の具合のせいで家族への負担と

なっている。 0 1 2 3 4

GP4 痛みがある。 0 1 2 3 4

GP5 治療による副作用に悩んでいる。 0 1 2 3 4

GP6 自分は病気だと感じる。 0 1 2 3 4

GP7 体の具合のせいで、床(ベッド)で休

まざるを得ない。 0 1 2 3 4

2.社会的・家族との関係について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GS1 友人たちを身近に感じる。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 1/3)

GSX1 家族を親密に感じる。 0 1 2 3 4

GS2 家族から精神的な助けがある。 0 1 2 3 4

GS3 友人たちからの助けがある。 0 1 2 3 4

GS4 家族は私の病気を充分受け入れてい

る。 0 1 2 3 4

GS5 私の病気について家族間の話し合い

に満足している。 0 1 2 3 4

GSX2 私は病気ではあるが、家族の生活は

順調である。 0 1 2 3 4

GS6 パートナー(または自分を一番支え

てくれる人)を親密に感じる。 0 1 2 3 4

Q1 次の設問の内容ぱ、現在あなたの性生活がどの程度あるのかとは無関係です。答えにくいと、思われる場合は下記の四角にレ印を付け、次の

ページの設問に進んで下さい。ロ

GS7 性生活に満足している。 0 1 2 3 4

調査開始前 調査終了後 3.精神的状態について ネガティブな質問

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GE1 悲しいと感じる。 0 1 2 3 4

GE2 病気を冷静に受け止めている自分に

満足している。 0 1 2 3 4

GE3 病気と闘うことに希望を失いつつあ

る。 0 1 2 3 4

GE4 神経質になっている。 0 1 2 3 4

GE5 死ぬことを心配している。 0 1 2 3 4

GE6 病気の悪化を心配している。 0 1 2 3 4

4.活勁状況について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GF1 仕事(家のことも含む)をすること

ができる。 0 1 2 3 4

GF2 仕事(家のことも含む)は生活の張

りになる。 0 1 2 3 4

GF3 生活を楽しむことができる。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 2/3)

GF4 白分の病気を充分受け入れている。 0 1 2 3 4

GF5 よく眠れる。 0 1 2 3 4

GF6 いつもの娯楽(余暇)を楽しんでい

る。 0 1 2 3 4

GF7 現在の生活の質に満足している。 0 1 2 3 4

2

5.その他心配な点 調査開始前 調査終了後 ネガティブな質問

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

Sp1 心が安らかだ。 0 1 2 3 4

出典/参考:下妻晃二郎、江口成美:がん患者用 QOL 尺度の開発と臨床応用(I). 「FACT-SP(第4-A版)」

日医総研ワーキングペーパー No. 56 2001 年 11 月

(FACT-SP 3/3)

Sp2 私には生きがいがある。 0 1 2 3 4

Sp3 私の人生は充実している。 0 1 2 3 4

Sp4 なかなか心穏やかになれない。 0 1 2 3 4

Sp5 自分が生きていることの意義を感じ

る。 0 1 2 3 4

Sp6 自分自身の心の奥底に、安らぎを感

じる。 0 1 2 3 4

Sp7 心が穏やかな状態に保たれている。 0 1 2 3 4

Sp8 自分の人生には意味も目的もない。 0 1 2 3 4

Sp9 心の安らぎを感じさせる人生観をも

っている。 0 1 2 3 4

Sp10 強く生きるための人生観をもってい

る。 0 1 2 3 4

Sp11 病気を患ったお陰で、自分の人生観

はいっそう深まった。 0 1 2 3 4

Sp12 病気でどんなことになっても、大丈

夫だ。 0 1 2 3 4

3

6.自分自身の状態について

オレンジ文字:調査開始前、青文字:調査終了後

※答えにくい場合は、無回答でもかまいません

①信仰

なし・あり (神のような存在は信じる)

②信念・信条・より

どころ なし・あり (神のような存在は信じる/人は人とつながってのみ人となりうる)

③死生観 なし・あり(肉体は滅んでも魂は残る/魂は不滅)

④今の状態

(身体的・社会的・

心理的・スピリチュ

アル的・)

体力は落ちているが、具体的な症状はない。休職中。治そうと思っている。精神的

には落ち着いている。

検査結果に一喜一憂している

⑤その他

4

(様式1) 2010 年 7 月 28 日-2010 年 8月 12 日

患者 Bさん

ケアワーカー Y.I.

QOL調査票(FACT-SP)

【調査開始時・期間中・終了時調査】

下記はあなたと同じ症状の方々が重要だと述べた項目です。項目ごとに、ごく最近(過去7日間

程度)のあなたの状態に最もよくあてはまる番号をひとつだけ選び、○で囲んでください。

調査開始前 調査終了後 ネガティブな質問 1.身体症状について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GP1 体に力が入らない感じがする。 0 1 2 3 4

GP2 吐き気がする 0 1 2 3 4

GP3 体の具合のせいで家族への負担と

なっている。 0 1 2 3 4

GP4 痛みがある。 0 1 2 3 4

GP5 治療による副作用に悩んでいる。 0 1 2 3 4

GP6 自分は病気だと感じる。 0 1 2 3 4

GP7 体の具合のせいで、床(ベッド)で休

まざるを得ない。 0 1 2 3 4

2.社会的・家族との関係について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GS1 友人たちを身近に感じる。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 1/3)

GSX1 家族を親密に感じる。 0 1 2 3 4

GS2 家族から精神的な助けがある。 0 1 2 3 4

GS3 友人たちからの助けがある。 0 1 2 3 4

GS4 家族は私の病気を充分受け入れてい

る。 0 1 2 3 4

GS5 私の病気について家族間の話し合い

に満足している。 0 1 2 3 4

GSX2 私は病気ではあるが、家族の生活は

順調である。 0 1 2 3 4

GS6 パートナー(または自分を一番支え

てくれる人)を親密に感じる。 0 1 2 3 4

Q1 次の設問の内容ぱ、現在あなたの性生活がどの程度あるのかとは無関係です。答えにくいと、思われる場合は下記の四角にレ印を付け、次の

ページの設問に進んで下さい。ロ

GS7 性生活に満足している。 0 1 2 3 4

調査開始前 調査終了後 3.精神的状態について ネガティブな質問

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GE1 悲しいと感じる。 0 1 2 3 4

GE2 病気を冷静に受け止めている自分に

満足している。 0 1 2 3 4

GE3 病気と闘うことに希望を失いつつあ

る。 0 1 2 3 4

GE4 神経質になっている。 0 1 2 3 4

GE5 死ぬことを心配している。 0 1 2 3 4

GE6 病気の悪化を心配している。 0 1 2 3 4

4.活勁状況について

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

GF1 仕事(家のことも含む)をすること

ができる。 0 1 2 3 4

GF2 仕事(家のことも含む)は生活の張

りになる。 0 1 2 3 4

GF3 生活を楽しむことができる。 0 1 2 3 4

GF4 白分の病気を充分受け入れている。 0 1 2 3 4

(FACT-SP 2/3)

GF5 よく眠れる。 0 1 2 3 4

GF6 いつもの娯楽(余暇)を楽しんでい

る。 0 1 2 3 4

GF7 現在の生活の質に満足している。 0 1 2 3 4

2

5.その他心配な点 調査開始前 調査終了後 ネガティブな質問

全くあては

まらない

わずかにあ

てはまる

多少あて

はまる

かなりあて

はまる

非常によく

あてはまる

Sp1 心が安らかだ。 0 1 2 3 4

Sp2 私には生きがいがある。 0 1 2 3 4

Sp3 私の人生は充実している。 0 1 2 3 4

Sp4 なかなか心穏やかになれない。 0 1 2 3 4

Sp5 自分が生きていることの意義を感じ

る。 0 1 2 3 4

Sp6 自分自身の心の奥底に、安らぎを感

じる。 0 1 2 3 4

Sp7 心が穏やかな状態に保たれている。 0 1 2 3 4

Sp8 自分の人生には意味も目的もない。 0 1 2 3 4

Sp9 心の安らぎを感じさせる人生観をも

っている。 0 1 2 3 4

出典/参考:下妻晃二郎、江口成美:がん患者用 QOL 尺度の開発と臨床応用(I). 「FACT-SP(第4-A版)」

日医総研ワーキングペーパー No. 56 2001 年 11 月

(FACT-SP 3/3)

Sp10 強く生きるための人生観をもってい

る。 0 1 2 3 4

Sp11 病気を患ったお陰で、自分の人生観

はいっそう深まった。 0 1 2 3 4

Sp12 病気でどんなことになっても、大丈

夫だ。 0 1 2 3 4

3

6.自分自身の状態について

オレンジ文字:調査開始前、青文字:調査終了後

※答えにくい場合は、無回答でもかまいません

①信仰

なし・あり ( )

②信念・信条・より

どころ

なし・あり ( )

③死生観

なし・あり ( )

④今の状態

(身体的・社会的・

心理的・スピリチュ

アル的・)

⑤その他

4

効果のカテゴリー分けの実際 2010.8.14

患者ヒアリングやケアワーカー観察などの定性的調査の調査票等から「効果」と思われ

るキーワードを抽出したところ、これらは 3 種類のカテゴリーに分類することができるこ

とがわかった。 ここではそれらのカテゴリーを「直接的効果」「感情的効果」「哲学的効果」とした。 ・直接的効果・・・聞いてもらえた、教えてもらった、話したら問題が明確になった、

など、スピリチュアルケアワーカーと会話することによって得られ

た効果。直接的・客観的・物理的な成果。 ・感情的効果・・・スピリチュアルケアワーカーと話した結果として、本人の中にネガ

ティブな感情や考えが生じなくなったり、ポジティブな感情や考え

が出てきたりするようになったという効果。本人の中に自然に出て

くる感情や考えの変化。 ・哲学的効果・・・スピリチュアルケアワーカーと会話することを通して、本人の中に

核となるもの、確信が形成されたという効果。条件反射や反応とし

て自然に出てくる感情や考えとは異なるものであり、本人が悟った、

掴んだという類のもの。 これは、例えば、不安に関しては、 ・不安を聞いてもらえた・・・直接的効果 ・不安がなくなった・・・感情的効果 ・状況は変わっていないのに不安がなくなった自分に気がついた・・・哲学的効果

とすることができる。 以下、実際にカテゴリー分けをした結果を示す。

1

■直接的効果 ・話せた ・聞いてもらえた ・わかってもらえた ・受けとめられた、受け入れられた ・一緒にいてもらえた ・死への準備や心構えについて、教えてもらった ・そのままでいいと言われた ・そのまま受け入れることを学んだ ・死生観、宗教観について話ができた ・人生について話すことができた(話す機会を得られた) ・心や頭の中でもやもやしていたことを、人に話すことによって明確にすることができた ・相手がいるからこそ、今まで抑えていた自分を表現できた ・人に話すことで、自分にしみこんだ ・家族には心配をかけるので言えないこと(弱音・本音)でも、ケアワーカーだから言えた ・話を聴いてくれるのがうれしい ・気がかりを聞いてもらったので安心した ・多くの人に聞いてもらいたいことがある ・会話が楽しかった ・わかってもらえてうれしい。安心 ・不安なことを聞いてもらえた ・質問してくれてうれしい ・生きがいについて話せた ・ひとりぼっちではない ・がん患者は、自分のことを言うと、相手の負担になるのでは、と思ってなかなかいえな

い。ケアワーカーなら、聴くというところで来てくれているので、とても助かる ・話していると病気のことを忘れられる ・本音を出すことができた ・「ガンになったことでいろいろな人との出会いがあった」と明確に表現(ある意味宣言)

できた ・再訪してもよい(また話したい、また話しても良い) ・話を始めると生き生きとして、目が大きく見開かれた ・話しているうちにいろんな気づきがあって、自分なりに明確にすることができた ・心残りな話をするとき、力が入った ・不安を克服したきっかけを話せた ・自分を客観的に見つめることができた

2

■感情的効果 ①ネガティブな感情・考え・表情がなくなった ・不安 ・恐怖 ・罪悪感 ・虚無感・無価値感(人生に意味が無い) ・迷惑 ・後悔 ・心残り ・執着 ・陰鬱 ・痛み ・孤独感 ・あきらめ ・怒り ・動揺 ・退屈 ・身体的痛み ・心理的痛み ②ポジティブな感情・考えが出てきた ・生きがい ・満足感 ・安らぎ ・笑顔 ・赦し、許し ・完了 ・貢献 ・信仰心 ・人間関係 ・謝罪 ・充実 ・覚悟 ・愛 ・無執着

3

・死生観 ・熱心 ・真剣 ・冷静 ・潔さ ・強さ ・目標 ・自己価値感 ・感情の整理 ■哲学的効果 ・考えが深くなった ・強くなったと感じた(自分自身で/周囲から見て) ・信仰や信念を持つようになった ・死生観を持つようになった ・正面から向き合うようになった(専念するようになった) ・死を受容した(諦めからではなく) ・積極的な行動が見られるようになった ・自分自身(社会/世界/神仏)との一体感が増した ・病気や死に関するオープンな会話ができるようになった ・自己存在が肯定されたと感じた ・自己存在を自分で肯定できるようになった ・これまでに無い自己表現ができるようになった ・自分の長所や支えを発見(確信/活用)した ・執着がなくなった ・死の準備に取り掛かっている/済ませた ・受け入れられたと感じた ・人生を完了したとの実感を得られた ・心残りがなくなった ・死を旅立ちと捉えられるようになった ・心の整理がついた ・家族が、接し方がわかった ・その人が、自分の人生に対する意味づけができるようになった。 ・その人が、自分の人生を語れるようになった(ナラティブ) ・自分を生きているという実感がある

4

5

・自分を生き切った ・「なぜ」から「何のために」と考えられるようになった。 ・人間にはどうにもできないこともある。 ・生きるエネルギーがある ・自己存在の肯定感 ・生きがいを自覚した ・治療と復職に専念する ・生きる目的が変わった ・病気と正面から向き合うようになった ・わかってもらえた感は生きる力(エネルギー)になる。 ・心のレベルで受けとめる-患者の心の中、奥底の悩みを引き出す ・生きる目的の明確化 ・病気を治すことに専念。覚悟を感じた ・自己存在の肯定-結局これにつながるのでは? ・自分の中にしっかりしたものを持っている(持てるようになった、持っていることを確

信できた) ・人との出会いが私を支えている ・病気を肯定的に捉えることができた ・1 回だけではケアの効果云々はいえない! ・初回から深く話してはもらえない。今回は調査ということで、最初から話してくれた特

異な例 ・何も心配はないように話すが、心の奥底の声を聞くまでには至らなかった ・「それでも生きている」と言った ・ガンになったことにより、出会いがあった ・自分の中に確固たる信念があるので、動揺しないでいられる ・確固たる信念ができた ・動揺しなくなった ・(知識)死なない可能性もある ・残された命をどう使おうか、と考えるようになった ・自分の本当の気持ちに従って生きたい ・多くの人に知ってもらいたい ・自己主張しよう ・今できることをしよう ・本当の気持ちに従って生きる ・心配なことは、死ぬこと、それよりも危機を聞いてもらえなくなること ・生きる目的がはっきりした