講義10 システムの可制御性と可観測性 - kagoshima...

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はじめての現代制御理論 講義10 1 講義10 システムの可制御性と可観測性 線形システムの構造について理解しよう システムの可制御性・可観測性について理解しよう 可制御性と可観測性の双対性について理解しよう 講義10のポイント 1.線形システムの構造 2.線形システムの可制御性・可観測性 3.双対システム 講義10の内容 はじめての現代制御理論 講義10 2 10.1 線形システムの構造 次元1入力1出力システム の固有値: 行列 すべて異なる 固有値に対応した固有ベクトル: :正則行列 とする状態変数変換によりシステムを変換

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  • 1

    はじめての現代制御理論 講義10 1

    講義10 システムの可制御性と可観測性

    線形システムの構造について理解しようシステムの可制御性・可観測性について理解しよう可制御性と可観測性の双対性について理解しよう

    講義10のポイント

    1.線形システムの構造2.線形システムの可制御性・可観測性3.双対システム

    講義10の内容

    はじめての現代制御理論 講義10 2

    10.1 線形システムの構造次元1入力1出力システム

    の固有値:行列 すべて異なる

    固有値に対応した固有ベクトル:

    :正則行列

    とする状態変数変換によりシステムを変換

  • 2

    はじめての現代制御理論 講義10 3

    10.1 線形システムの構造

    とする

    はじめての現代制御理論 講義10 4

    10.1 線形システムの構造次元1入力1出力システム

    とする状態変数変換

    の固有値に行列

    対応する

    個のサブシステム

    から構成

    各サブシステム

    モード

  • 3

    はじめての現代制御理論 講義10 5

    10.1 線形システムの構造変換後のシステム

    場合によっては もしくは が0になるのとき:入力 と がつながらない

    を変化させても状態 を制御できない

    不可制御なサブシステム

    のとき:状態 と出力 がつながらない

    を観測しても の情報は未知

    不可観測なサブシステム

    はじめての現代制御理論 講義10 6

    10.1 線形システムの構造サブシステムの分類

    かつ なサブシステム

    可制御かつ可観測なサブシステム

    かつ なサブシステム

    不可制御かつ可観測なサブシステム

    かつ なサブシステム

    可制御かつ不可観測なサブシステム

    かつ なサブシステム

    不可制御かつ不可観測なサブシステム

    の値によりつぎの4つのサブシステムに分類

  • 4

    はじめての現代制御理論 講義10 7

    10.1 線形システムの構造サブシステムの分類

    なので

    に が

    作用しない

    制御不能

    なので

    の値が に

    影響しない

    は観測不能

    はじめての現代制御理論 講義10 8

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合

    伝達関数を求める

  • 5

    はじめての現代制御理論 講義10 9

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合

    とすると

    となるので必要な余因子を計算すると

    よって伝達関数はつぎとなる

    極と零点がキャンセル

    極零相殺

    はじめての現代制御理論 講義10 10

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合

    伝達関数を求める

    もとのシステムは3次元システム3つの状態変数伝達関数の分母多項式は1次

    1次元システム??

  • 6

    はじめての現代制御理論 講義10 11

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合

    対角正準系に変換し,サブシステムを求める

    係数行列 の固有値:

    対応する固有ベクトル:

    はじめての現代制御理論 講義10 12

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合

  • 7

    はじめての現代制御理論 講義10 13

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合対角正準系の構成図

    可制御,可観測なサブシステム

    不可制御,可観測なサブシステム

    可制御,不可観測なサブシステム

    はじめての現代制御理論 講義10 14

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合伝達関数

    サブシステム

    極: と零点: が極零相殺

    不可制御なサブシステム

    固有値: に対応

    不可観測なサブシステム 固有値: に対応

    極零相殺が起こるのはサブシステムが不可制御,不可観測であるため

  • 8

    はじめての現代制御理論 講義10 15

    10.1 線形システムの構造例10.1: 3次元システムの場合可制御,可観測なサブシステム

    サブシステムの伝達関数:

    もとのシステムの伝達関数と一致

    システムの伝達関数は可制御,可観測なサブシステムのみの入出力特性を表現

    極零相殺された極: 不安定な極

    伝達関数における極: 安定なシステム

    状態空間表現では不安定なシステムと判定

    不安定なモード

    はじめての現代制御理論 講義10 16

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性システムを構成するサブシステムの可制御,可観測であるかを判別する

    与えられたシステムを対角正準形式に変換

    システムの可制御性,可観測性の定義と,変換によらない可制御性,可観測性の判定方法について

    次元1入力1出力システム

    について考える

  • 9

    はじめての現代制御理論 講義10 17

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性線形時不変システムの可制御性の定義

    を任意に与えられたベクトルとする.このとき

    すべての初期ベクトル に対して,有限な時刻

    と操作量(入力) が存在し,

    とできるならばシステムは可制御である

    という.

    有限な時間経過 の間に初期ベクトル

    から任意の状態 へ変化させることの

    できる操作量(入力) が存在するかどうか?

    存在すれば,そのシステムは可制御

    はじめての現代制御理論 講義10 18

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性線形時不変システムの可制御性の判定方法

    可制御性行列 をつぎで定義する

    を満たすことである.ただし はシステムの次数

    は 次元正方行列

    システムが可制御であるための必要十分条件は

    1入力システムの場合,

    は と等価

    線形時不変システムの可制御性の条件

    システムの可制御性は のみで決まる

    対 は可制御である

  • 10

    はじめての現代制御理論 講義10 19

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性例10.2: システムの可制御性の判定

    並列な2タンクシステム

    2タンクシステムの例(1.5節)

    システムの次数は2

    可制御性行列

    システムは不可制御

    操作量 を使ってどちらか一方のみの

    タンクの水位しか制御できない

    はじめての現代制御理論 講義10 20

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性例10.2: システムの可制御性の判定

    直列な2タンクシステム

    2タンクシステムの例(1.5節)

    システムの次数は2

    可制御性行列

    システムは可制御

    操作量 を使って上下タンクどちらの

    水位も制御できる

  • 11

    はじめての現代制御理論 講義10 21

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性例10.3: 例9.1のシステムの場合

    可制御性行列

    システムは可制御

    状態フィードバック制御

    によりシステムを安定化できた例

    の固有値: システムは不安定

    はじめての現代制御理論 講義10 22

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性例10.4: 例9.4のシステムの場合

    可制御性行列

    システムは不可制御

    閉ループシステムの極を指定した位置に配置する状態フィードバックベクトルが存在しなかった例

  • 12

    はじめての現代制御理論 講義10 23

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性状態フィードバック制御系が構成できる条件

    次元1入力1出力システム

    状態フィードバック制御則

    閉ループシステム

    の固有値)を任意に

    配置できるための条件

    閉ループシステムの極(

    システムが可制御であること

    (対 が可制御であること)

    はじめての現代制御理論 講義10 24

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性線形時不変システムの可観測性の定義

    を正の実数とする.システムにおいて有限な

    時間区間 での制御量

    より,初期ベクトル が唯一に決定できるならば

    システムは可観測である という.

    有限な時間区間 の間での制御量

    と操作量 のデータよりその時間区間に

    と操作量

    おけるすべての状態変数 の時間的変化を

    計算できる

  • 13

    はじめての現代制御理論 講義10 25

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性線形時不変システムの可観測性の判定方法可観測性行列 をつぎで定義する

    を満たすことである.ただし はシステムの次数

    は 次元正方行列

    システムが可観測であるための必要十分条件は

    1出力システムの場合,は と等価

    線形時不変システムの可観測性の条件

    システムの可観測性は のみで決まる

    対 は可観測である

    はじめての現代制御理論 講義10 26

    10.2 線形システムの可制御性,可観測性例10.5:

    可観測性行列

    システムは可観測

    システムの可観測性は講義11で学ぶオブザーバにおいて重要となる

  • 14

    はじめての現代制御理論 講義10 27

    10.3 双対システム2つの2次元システムの双対関係システム1 システム2

    システム1とシステム2の関係互いに双対なシステム

    システム1について システム2について

    共に可制御,可観測なシステム

    はじめての現代制御理論 講義10 28

    10.3 双対システム2つの2次元システムの双対関係システム1について システム2について

    互いに双対なシステム

    システム1が可制御であることはシステム2が可観測であることと等価

    システム1が可観測であることはシステム2が可制御であることと等価

  • 15

    はじめての現代制御理論 講義10 29

    10.3 双対システム状態変数変換と可制御性・可観測性

    状態変数変換前の可制御性行列:

    可観測性行列:

    状態変数変換後の可制御性行列:

    可観測性行列:

    :状態変換行列 は正則行列なので

    システムの可制御性・可観測性は状態変数変換に

    はじめての現代制御理論 講義10 30

    10.3 双対システム最小実現について

    与えられた伝達関数 に対応する状態空間表現

    を求めること

    伝達関数 に対する実現

    実現は状態変換行列の選び方により

    さまざまなパターンが存在する

    与えられた伝達関数 の実現が可制御かつ可観測

    最小実現

    与えられた伝達関数を最も少ない状態変数

    の個数で表現

    対角正準形,可制御正準形,可観測正準形

  • 16

    はじめての現代制御理論 講義10 31

    講義10のまとめ

    線形システムの構造を知るためのシステムの形式として対角正準形式があるシステムの可制御性・可観測性はそれぞれシステムの可制御性行列,可観測行列の階数(rank)を調べることでわかる.システムの可制御性・可観測性が互いに双対な概念であることがわかった.