による光接触皮膚炎発症後 の注意 -...

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本冊子は、モーラステープ20mg、モーラステープL40mgで光接触皮膚炎が発現した 場合に、患者さんの症状が悪化しないように、治療や日常生活上の注意を示したものです。 治療や患者さんへの指導の指針としてお使いください。なお、光接触皮膚炎は日光 (紫外線)にあたることにより症状増悪や再燃を起こすことがありますので、適切な治療 とともに紫外線を避けることが必要です。 1.光接触皮膚炎とは 2.光接触皮膚炎が発現したら(初期症状) 3.光接触皮膚炎の特徴 4.症例紹介 5.光接触皮膚炎の治療薬 6.症状消退後の注意 7.確定診断のために 8.禁忌について 9.患者指導箋のご案内 問い合わせ先 〒100-6330 東京都千代田区丸の内2-4-1 TEL:0120 - 381332 学術部 お客様相談室 - 光接触皮膚炎を悪化させないために - による 光接触皮膚炎発症後 注意 特集編 2015年8月改版

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  •  本冊子は、モーラステープ20mg、モーラステープL40mgで光接触皮膚炎が発現した場合に、患者さんの症状が悪化しないように、治療や日常生活上の注意を示したものです。 治療や患者さんへの指導の指針としてお使いください。なお、光接触皮膚炎は日光(紫外線)にあたることにより症状増悪や再燃を起こすことがありますので、適切な治療とともに紫外線を避けることが必要です。

    1.光接触皮膚炎とは2.光接触皮膚炎が発現したら(初期症状)3.光接触皮膚炎の特徴4.症例紹介5.光接触皮膚炎の治療薬6.症状消退後の注意7.確定診断のために8.禁忌について9.患者指導箋のご案内

    問い合わせ先

    〒100-6330 東京都千代田区丸の内2-4-1TEL:0120 - 381332

    学術部 お客様相談室

    - 光接触皮膚炎を悪化させないために -

    による光接触皮膚炎発症後の注意

    特集編2015年8月改版

  •  モーラステープ20mg、モーラステープL40mg(以下、モーラステープ)の貼付部に発疹・発赤、紅斑、そう痒感など初期症状が現れた場合には、直ちに本剤の使用を中止し、症状の出た部位を紫外線にあてないように指導してください。紫外線にあてると症状の増悪や再燃を繰り返すことがあります。本剤によりこのような皮膚症状が現れた場合には、皮膚科専門医への紹介が望まれます。 なお、この段階では光接触皮膚炎か接触皮膚炎かは確定できませんが、接触皮膚炎の場合でも同様の処置が必要です。

     モーラステープによる光接触皮膚炎の多くは、貼付中または剥離後1週間以内に紫外線曝露により発現していますが、中には剥離して3~4週間後発現する症例も報告されています。モーラステープ剥離後も4週間は貼付部を紫外線にあてないよう患者さんに指導してください。 モーラステープによる光接触皮膚炎は、手首、手部、下腿等、露光しやすい部位に多く報告されています。このような患部の疾患に処方される場合には、特に貼付部を衣服やサポーターで覆うなど紫外線に対する注意喚起をお願いいたします。薄手のシャツなどでは、光が透過して光接触皮膚炎が発現することが稀にありますので、紫外線遮断効果の高い生地で遮光してください(4頁参照)。なお、腰部など露光しにくい部位での光接触皮膚炎の報告はほとんどありません。

    - 1 -

    紫外線をあびることにより皮膚炎が生ずる疾患を総称して光線過敏症といいます。その中でも、薬剤を外用した後に紫外線をあびることにより生ずる接触皮膚炎のことを光接触皮膚炎といいます。ケトプロフェン外用剤による光接触皮膚炎は、紫外線を避けることによりその発症を防ぐことができます。

    非露光部

    症例

    露光部

    時間経過

    光接触皮膚炎の発現 遮光されていれば発現しません

    皮 膚外用剤 外用剤

    感作成立

    日 光 日 光

    症状発現

    高度

    軽度

    時間経過皮 膚

    外用剤

    日 光

    遮 光 症状発現なし

    感作成立しない

    薬剤性光線過敏症

    光線過敏型薬疹(露光部に発現)

    光接触皮膚炎(外用適用部のうち露光部に発現)

    接触皮膚炎(外用適用部に発現)

    外用剤

    接触皮膚炎

    全身投与(内服・坐剤等)

    光接触皮膚炎とは1

    光接触皮膚炎が発現したら(初期症状)2

    光接触皮膚炎の特徴3

  •  モーラステープ20mgの光接触皮膚炎の症例を紹介いたします。 本症例は、モーラステープ20mgを友人から譲り受けて使用し、貼付部に症状が発現後、全身に症状が拡大しました。症状消失から7カ月後、副作用歴の申し出がなかったため、モーラステープ20mgを処方され、症状が再発しました。 このように、本剤による光接触皮膚炎の既往がある方への処方はお控えください(5頁参照)。

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    症例紹介4

    副作用患者性・年齢女性10代

    膝関節痛[感冒][完全右脚ブロック]

    右母指挫傷

    投与開始日

    (投与中止日)

    中止 4日後

    中止 9日後

    中止 10日後中止 11日後

    中止 16日後中止 17日後中止 19日後中止 21日後

    中止 32日後

    投与開始日(1回目の事象から約7ヵ月後)投与 2日後(投与中止日)中止 2日後

    中止12日後

    中止76日後

    モーラステープ20mg1 枚1日間

    モーラステープ20mg1 枚2日間

    併用薬:なし

    併用薬:なし

    使用理由[合併症]

    使用薬剤1日投与量投与期間 経過及び処置

    光接触皮膚炎+接触皮膚炎症候群(1回目の事象:譲り渡し)

    (2回目の事象:副作用歴あり)

    左膝関節の関節痛のため、友人からモーラステープ20mgをもらい左膝に1枚使用。その後、紫外線にあたり、左膝のテープ貼付部位に紅斑が出現。モーラステープ20mgを中止。受診。ジフルコルトロン吉草酸エステルクリームを処方され外用したところ、左膝の紅斑部に滲出液を伴うようになり浸潤してきた。頸部、四肢に皮疹が出現。全身に拡大し、そう痒感を伴った。この日、右膝蓋部にも左膝蓋部と同様の紅斑が出現した。夕方、他院を受診。静注と外用薬処方を受けた(詳細は不明)。全身の皮疹がさらに増悪。当院を受診。左膝の接触皮膚炎と全身の自家感作性皮膚炎と診断され、入院。当科初診時、頭皮を除く全身に浮腫性紅斑と紅色丘疹が多発。両膝蓋部には鱗屑を伴う長方形の鮮紅色浮腫性紅斑を1箇所ずつ認めた。全身性の紅斑、丘疹は両頬、両上肢、両手において著明であった。全身に強いそう痒感を認めた。同日より、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウムの点滴静注とオキサトミドドライシロップ、クレマスチンフマル酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩の内服、副腎皮質ホルモン外用薬を開始。以後、紅斑、そう痒感は漸次軽快。ベタメタゾンリン酸エステルナトリウムの点滴静注終了。退院。ベタメタゾン、テプレノン内服開始。内服していたベタメタゾンを終了。顔面、背部、膝蓋部において、紅斑、丘疹が再び増悪。強いそう痒感を伴った。このため、ベタメタゾンの内服を再開。以後、紅斑、丘疹、そう痒感は漸次軽快。外来受診。まだ、紅斑、丘疹、そう痒感が残存。プレドニゾロン、フェキソフェナジン塩酸塩内服開始。紅斑はおおむね褐色調となり、そう痒感もほとんど消失。

    約2週間前よりバスケットによる右母指痛を主訴に来院。モーラステープ20mgの副作用歴の申し出がなかったため、モーラステープ20mgを右母指に1日1枚投与開始。貼付部位に皮膚炎、次第に顔面、両上肢に薬疹出現。モーラステープ20mgの投与を中止。再診、症状説明、クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏、エピナスチン塩酸塩内服処方するも、改善なし。副腎皮質ホルモン内服を追加。その後、軽快。色素沈着を残す。

  •  光接触皮膚炎が発現した場合には、症状に応じて次のような薬剤が用いられます。光接触皮膚炎では接触皮膚炎と比較し、症状が高度化する場合が多いのでなるべく皮膚科専門医での治療をお薦めください。

    - 3 -

    光接触皮膚炎の治療薬5

    頸などの顔に近い部分にはクロベタゾン酪酸エステルやヒドロコルチゾン酪酸エステルなどのMildなステロイド外用剤が用いられます。

    光接触皮膚炎の特徴の一つとして、激しいそう痒がしばしば発症します。そのような場合に用いられます。

    皮疹が貼付部から拡大するなど、高度で、ステロイド外用剤で症状を抑えきれない場合に用いられます。

    水疱が破れ、糜爛となり二次感染が生じる場合に用いられます。

    光接触皮膚炎の皮膚炎症は比較的高度のため、クロベタゾールプロピオン酸エステルやフルオシノニド等強力なステロイド外用剤が多く用いられます。ステロイド外用剤

    (下表参照)

    抗ヒスタミン剤抗アレルギー剤

    ステロイド内服剤ステロイド注射剤

    抗生剤

    軽 度

    高 度

    表 ステロイド外用剤の分類

    Strongest

    Very strong

    Strong

    Mild

    Weak

    クロベタゾールプロピオン酸エステル

    ジフロラゾン酢酸エステル

    フルオシノニド

    ジフルプレドナート

    モメタゾンフランカルボン酸エステル

    ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル

    ベタメタゾンジプロピオン酸エステル

    ジフルコルトロン吉草酸エステル

    アムシノニド

    酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン

    デキサメタゾンプロピオン酸エステル

    デキサメタゾン吉草酸エステル

    デプロドンプロピオン酸エステル

    ベタメタゾン吉草酸エステル

    ベクロメタゾンプロピオン酸エステル

    フルオシノロンアセトニド

    プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル

    トリアムシノロンアセトニド

    デキサメタゾン

    ヒドロコルチゾン酪酸エステル

    クロベタゾン酪酸エステル

    アルクロメタゾンプロピオン酸エステル

    プレドニゾロン

    ソルベガ、デルモベート

    ジフラール、ダイアコート

    トプシム

    マイザー

    フルメタ

    アンテベート

    リンデロンDP

    テクスメテン、ネリゾナ

    ビスダーム

    パンデル

    メサデルム

    ボアラ、ザルックス

    エクラー

    ベトネベート、リンデロンVG

    プロパデルム

    フルコート

    リドメックス

    レダコート

    グリメサゾン、オイラゾン

    ロコイド

    キンダベート

    アルメタ

    プレドニゾロン

    赤文字は当社商品を示しています。 (日本皮膚科学会雑誌:119 (8), 1515-1534, 2009 より抜粋し、改変) (2015年8月現在)

    強さ分類 一 般 名  商 品 例 示

  •  症状が消失した後もしばらくの間は、衣服やサポーターなどで紫外線から皮膚を守るようにしてください。まれに、強い紫外線に露光後、症状が再燃することがあります。 衣服は、暗い色、濃い色ほど、紫外線をカットします。また、ポロシャツに使用される鹿の子などはカット率が高く、薄手の生地や織り目が粗いガーゼなどはカット率が低いようです。なるべく、紫外線遮断効果の高い衣服で貼付部を覆うようご指導ください。なお、紫外線を遮るためのサンスクリーンの使用は、お奨めできません。 モーラステープにより光接触皮膚炎が発現した患者さんは、以後本剤を使用できません(5-6頁参照)。他のケトプロフェン製剤も使わないよう、ご指導ください。

    - 4 -

    症状消退後の注意6

    石橋 博ほか:鹿児島短期大学紀要 自然科学編No.44,p29-40,1993.

    坂本 光ほか:繊維製品消費科学34(12),p29-36,1993

    石橋 博ほか:鹿児島短期大学紀要 自然科学編No.44,p29-40,1993.

  •  光接触皮膚炎と接触皮膚炎との鑑別診断は困難です。患者さんの今後の生活のためにも、パッチテスト、光パッチテストにより確定診断及び原因物質を究明することが大切です。 なお、光パッチテストは施行条件によっては陽性反応が出ない場合もありますので、皮膚科専門医による施行が望まれます。

     

     禁忌の患者さんへの処方はお控えいただくため、処方前に今一度次の事項をご確認ください。

    - 5 -

    確定診断のために7

    禁忌について8

    【禁忌】(次の患者には使用しないこと)(1)本剤又は本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者(「重要な基本的注意」の項 (1) 参照)(2)アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[喘息発作を誘発するおそれがある。]

    (3)チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート並びにオキシベンゾン及びオクトクリレンを含有する製品(サンスクリーン、香水等)に対して過敏症の既往歴のある患者[これらの成分に対して過敏症の既往歴のある患者では、本剤に対しても過敏症を示すおそれがある。1)]

    (4)光線過敏症の既往歴のある患者[光線過敏症を誘発するおそれがある。](5)妊娠後期の女性 (「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)

    (1)パッチテスト パッチテストとは、布またはアルミ皿などを絆創膏の上につけたパッチテストユニットに試料をのせ、被験者に貼り、皮膚反応をみる検査のことです。通常48時間、背中に貼付し、剥離1時間後、24時間後、48時間後の反応を見ます。 パッチテストは最大の反応を引き出す必要がありますが、濃度と基剤によっては反応が生じませんので皮膚科専門医による施行が望まれます。

    (2)光パッチテスト 光パッチテストは、パッチテストと同一試料を2つ背中に左右対称に貼り、24時間後に一方の試料を除去し紫外線(通常UVA3~6J/cm2)を照射します。再び遮光し、48時間後と72時間後、1週間後に両方の反応を比較して判定します。光パッチテストは、さらに手技、判定とも難しいため皮膚科専門医による施行が望まれます。

    UV非照射部 UV照射部

    試料 試料

    判定基準(ICDRG*基準)*International Contact Dermatitis Research Group

    -:+?:+:

    ++:+++:

    反応なし紅斑のみ紅斑+浸潤(丘疹)紅斑+浸潤+丘疹+小水疱大水疱

  • 【禁忌】(1)について

     ケトプロフェン外用剤により接触皮膚炎や、光接触皮膚炎の既往のある患者さんへモーラステープを投与することにより、光接触皮膚炎が発現する症例が報告されております。

    【禁忌】(3)について

     チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート及びオキシベンゾンはベンゾフェノン骨格と類似構造を有しており、ケトプロフェンとの交叉感作が知られております。 オクトクリレンは、ベンゾフェノン骨格と類似する構造を有していませんが、欧州でオクトクリレンに過敏症(接触皮膚炎、光接触皮膚炎)の既往のある患者で、ケトプロフェン外用剤を使用して過敏症(接触皮膚炎、光接触皮膚炎)が発現する症例が報告されたため、禁忌に記載しました。

    参考:サンスクリーンについて

     オキシベンゾン、オクトクリレンは、サンスクリーンや化粧品等に使用されています。本剤による光接触皮膚炎発現後に紫外線を防御する際には、患部を衣服やサポーターなどで覆ってください。サンスクリーン剤の使用はお奨めできません。やむをえず使用する場合は、オキシベンゾン、オクトクリレンの配合されていないサンスクリーンを使用するよう、患者さんに指導してください。

    - 6 -

    ベンゾフェノン骨格

    ケトプロフェン チアプロフェン酸 スプロフェン

    フェノフィブラート オキシベンゾン オクトクリレン

  •  弊社では、光接触皮膚炎を防ぐために、患者さんへのご指導の一助となるよう患者指導箋を用意しております。ご希望の方は、弊社医薬情報担当者までお知らせください。

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    患者指導箋のご案内9

    2015年8月作成

    モーラステープ20mg版※モーラステープL40mg用の患者指導箋もございます。

    4製剤共通版

    光線過敏症(光接触皮膚炎)、接触皮膚炎その他副作用が疑われる症例がみられた場合には、弊社医薬情報担当者までご連絡ください。弊社医薬情報担当者が訪問して、副作用の症状、発現に至った経緯などをお伺いしますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

    弊社の他のケトプロフェン外用剤を処方する際も同様にご注意ください。

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