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産学連携による観光産業の実務人材確保・育成事業 平成31年3月 観光庁観光産業課観光人材政策室 先進的な実践授業事例集

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Page 1: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

産学連携による観光産業の実務人材確保・育成事業

平成31年3月

観光庁観光産業課観光人材政策室

先進的な実践授業事例集

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産学連携による観光産業の実務人材確保・育成に関する業務の概要

「即戦力となる地域の実践的な観光人材」に焦点をあて、企業や大学等によるインターンシップも含めた先進的な産学連携の実践授業の調査・発信を行った。

1. 産学連携による先進的な実践授業の調査調査対象とした大学・学生・連携先に対しヒヤリングを実施。実践授業の内容・効果・課題等について聴取した。

跡見 学園女子大学/熊本学園大学/静岡英和学院大学/淑徳大学/城西国際大学/桜美林大学/摂南大学/帝京大学/同志社女子大学/東洋大学/長野大学/奈良県立大学/阪南大学/文教大学/安田女子大学/立教大学/立正大学/和歌山大学

大学 学生 連携先(自治体等、企業/団体)

自治体/観光協会・協議会/宿泊施設/旅行代理店/鉄道事業者/出版・メディア/金融機関/飲食業・小売業/シンクタンク 等20大学計約40名

2.先進的な長期インターンシップの調査就職後のミスマッチ解消のための長期インターンシップ(※)について調査し、調査対象とした大学・学生・

受入企業において、プログラム内容・実施目的・効果・課題について聴取した。 ※期間が1ヶ月以上のもの

熊本学園大学/東洋大学/明海大学(平成29年度)琉球大学(平成30年度)

大学 学生 受入先

宿泊施設/旅行代理店/コンベンションビューロー 等

4大学計約30名

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1.産学連携による先進的な実践授業の調査

2.先進的な長期インターンシップの調査

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学生⇔企業・団体・自治体の間で双方向でやり取りがあり、その結果を企業/団体が活用してい

る例を「先進的な実践授業」と見做し、調査を行った。

• 先進的な実践授業の定義とタイプ

学生と企業・団体・自治体との間の連携時の情報ベクトル

「一方向型」 「双方向型」

連携のベクトルが一方向である• 企業・団体・自治体

等が、題材となる情報を提供する

• 学生の取り組み報告を企業が聞く

• ディスカッションなど双方向的な取り組みによって、連携している

討議・提案 連携した結果を企業/団体が活用

企業等と大学でディスカッションを実施

授業の成果を企業等のHPや観光案内所で発信

より先進性が高い「実践授業」と見做し、調査対象とした(大きくは以下3タイプ)

情報発信 商品企画・開発イベント・事業

運営

授業の成果を企業等のHPや観光案内所で発信

連携して商品を開発

連携してイベントや事業運営を開催

1. 産学連携による先進的な実践授業の調査:概要(1/3)

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• 調査対象の実践授業一覧

※詳細調査の対象:定期的に視察やインタビューを行い、より詳細な情報を収集した

20大学の21の実践授業の取組みについて調査を行った結果、おおよそ以下のようにタイプ別に

分類でき、様々な連携先のパターンが確認された。

1. 産学連携による先進的な実践授業の調査:概要(2/3)

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調査対象大学 タイプ 連携先

タイプ # 所在地 大学 学部 担当教官名 情報発信商品企画

・開発イベント・事業運営

自治体/省庁

企業 団体

情報発信系

1 和歌山 和歌山大学※ 観光学部 観光学研究科 堀田祐三子教授 〇 〇

2 大阪 摂南大学 経済学部経済学科 植杉大教授 〇 〇 〇 〇

3 静岡 静岡英和学院大学 人間社会学部人間社会学科 毛利康秀准教授 〇 〇 〇

4 長野 長野大学 環境ツーリズム学部環境ツーリズム学科 山崎隆之准教授 〇 〇

5 広島 安田女子大学 現代ビジネス学部国際観光ビジネス学科 戸井佳奈子教授 〇 〇 〇

6 埼玉 淑徳大学 経営学部観光経営学科 朝倉はるみ准教授 〇 〇 〇

7 京都 同志社女子大学 現代社会学部社会システム学科 大津正和教授 〇 〇

8 東京 東洋大学 国際観光学部国際観光学科 森下晶美教授 〇 〇 〇 〇

商品企画・開発系

9 熊本 熊本学園大学 商学部ホスピタリティ・マネジメント学科 波積真理教授 〇 〇 〇

10 東京 帝京大学 経済学部観光経営学科 大下茂教授 〇 〇 〇

11 大阪 阪南大学 国際観光学部国際観光学科小林 弘二教授、李貞順教

授〇 〇 〇

12 東京 桜美林大学ビジネスマネジメント学群ビジネスマネジメント学類

五十嵐元一教授 〇 〇 〇

13 奈良 奈良県立大学 (やまといろプロジェクト)増本貴士特任准教授、須川まり特任講師、平郁子特任講師

〇 〇

14 神奈川 文教大学 国際学部国際観光学科 横川潤教授 〇 〇

15 東京 跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部観光デザイン学科 篠原靖准教授(南阿蘇) 〇 〇 〇 〇 〇

16 東京 帝京大学 経済学部観光経営学科 有馬貴之准教授 〇 〇 〇 〇

17 千葉 城西国際大学 観光学部 観光学科 山本剛助教 〇 〇 〇

イベント・事業運営系

18 東京 跡見学園女子大学※ 観光コミュニティ学部観光デザイン学科 篠原靖准教授(いすみ市) 〇 〇 〇 〇 〇

19 長野 長野大学 環境ツーリズム学部環境ツーリズム学科 松下重雄教授 〇 〇 〇

20 東京 立正大学 経営学部経営学科 吉田健太郎教授 〇 〇 〇 〇

21 東京 立教大学 観光学部観光学科 庄司貴行教授 〇 〇 〇 〇

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実践授業の調査結果から、その目指すべき方向性などについて以下のような示唆が考えられる。

• 学生が、より観光業界への就職に興味を持つためのポイントの1つに、「この業界で自分は活躍・貢献できる」という感触を持たせることが考えられる。

• その「活躍・貢献」とは、単に「観光業界の現在の業務」を体験し、自分もこなせそうだ、という感触を持つ事だけではない。

• 「現在観光業界でうまく出来ていないことを、自分なら解決に向けて何か出来そうだ」という感触を掴むことが、観光業界により確信を持って進むことに繋がる傾向が見られる。

• それを踏まえると、実践授業のような企業・団体との連携の場で「課題解決的な活動」に取り組むことが、有効策の1つとして考えらえる。

– 例えば、社内や業界内で、機能が固定化して縦割りになっている状況に対し、学生が自由な立場を活かして横断的に話や意見を聞き、全体最適的な提案を行う。

– 学生が、若者の目線から、あるいは最近の情報通信技術などに詳しい立場から提案を行う。

• 一方で実践授業では、大学とは立場の異なる企業・団体を巻き込んだ活動となるため、調整業務が多く、トラブルのリスクも高い。

• そのため、授業の企画から実施までを担う大学教員の負荷は高く、なるべく活動そのものが「定型化」していることが望ましい、という面も存在する。

• 先進的な実践授業の普及には、「課題解決的な活動」を、いかに「定型化」して最小のトラブルで運営するか、という、ある面でトレードオフ的な2要件をどう両立させるか、が重要な検討テーマになると見られる。

• 第1歩としては、実践授業の事例を、大学・企業など関係者間で共有していくことから始めることが考えられ、以下に調査結果の概要を紹介する。

実践授業の目指すべき方向性1 実践授業の目指すべき方向性2

1. 産学連携による先進的な実践授業の調査:概要(3/3)

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• NTTタウンページの和歌山版に掲載する、地元企業や観光スポット紹介記事を、2014年から和歌山大学の学生が作成。

• 学生は紹介先の選定から取材、記事作成、レイアウトデザインの検討まで担当している。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 和歌山大学 観光学部観光学研究科

担当教官 堀田祐三子教授

対象観光地 和歌山県

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • NTTタウンページ(NTT東日本100%子会社)と連携し、タウンページで和歌山の観光スポットや飲食店等を紹介する誌面を作成。

• NTTタウンページ関西営業本部がタウンページの内容刷新を図ろうと、大学側に提携を打診したことを契機に、2014年から取り組み開始。

• NTTタウンページの社員が定期的に授業に参加しつつ、毎年参加学生がコンセプトを作り、企画を確定。企画に沿って地域の協力を得ながら取材を行い、レイアウトも含め、学生が原稿作成。

• 毎年5月に活動を開始し、企画~取材~原稿作成を経て翌年1月に入稿、9月タウンページ発行というサイクルで回し、今年で5年目を迎えている。

参加学生の進路(例)

• 航空系、住宅、市役所、食品商社、生保、等

実践授業の事例紹介:1.和歌山大学 プロジェクト自主演習

↓学生が作成した誌面

↓共同研究会議の様子

↓2018年9月発行和歌山県版タウンページ

写真:NTTタウンページ(株)提供

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主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • (学生への情報提供、刷新されたタウンページの贈呈式のほかは、特に直接の連携なし)

企業/団体

• NTTタウンページ株式会社(NTT東日本100%子会社)

• 大学とNTTタウンページは共同研究として契約を締結。授業時間外での活動に必要な費用は共同研究費から支出。

• NTTタウンページ関西営業本部の社員が定期的に授業に参加し、議論を行う。

• 取材方法や写真の撮影方法の研修、オフィスや印刷工場の見学などもNTTタウンページにより実施。

• 地元取材先(飲食店、宿泊施設、商業施設、観光スポットなど)

• 地元の協力は学生が自らコネクションを作り、協力をお願いしている。

• 地元メディア(テレビ和歌山)

• 学生が作成したご当地タウンページをニュースで取り上げ、学生自身も番組で説明。

連携に至った背景

• NTTタウンページ関西営業本部が「地域と暮らしの情報メディア」としてタウンページの内容刷新を図ろうと、和歌山大学側に提携を打診した。

• 案件の特性から、観光学部で担当することを検討。地域連携の担当をされていた堀田先生が主担当となり、2014年から取り組み開始。

• 当初は有志学生によるプロジェクトとして実施。2017年度は一部インターンシップ方式を採用。2018年から「プロジェクト自主演習」として授業化。

• タウンページについて大学と連携するのは和歌山大学が初であったが、本取組を契機に他大学(武庫川女子大学、奈良女子大学、近畿大学、甲南大学)にも取り組みが拡大した。

実践授業の事例紹介:1.和歌山大学 プロジェクト自主演習

• タウンページの刷新を図りたいNTTタウンページより和歌山大学に相談があり、活動開始。• 紙面企画・取材は学生主体で進め地元企業に直接コンタクト。教員指導の下、 NTTタウンページと

定期的に議論を行って内容・レイアウトを詰め、記事を仕上げた。

B.実践授業の体制

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効果等

大学の視点 • 和歌山県外の出身者も多く含まれる学生が、本活動を通じてそれぞれの視点・立場から和歌山という地域について考え、理解を深め、地域のために何が出来るか、を考える良い機会を与えられた。

• 何をいつまでにやればよいか、という基本的なプロジェクトマネジメントの力や、社会におけるマナーやコミュニケーション能力を身に着けさせることが出来た(特に複数年関わる学生)。

• 今後は、企業の雰囲気をより体感できるような活動を企業と相談していきたい。

学生の視点 • 就職活動、及びその後の社会人活動に役立った。

• 学外活動自体が比較的珍しく、また目に見える形に残る活動のため、就職活動などでも説得力を持って説明できた。

• 新しいこと、難しい状況でも挑戦する気持ちが鍛えられた。例えば人との関係作りでは、「はじめまして」から始めて取材をさせてもらい、一定の信頼関係を構築することを覚えた。

• 発行者が伝えたいこと、取材先が伝えたいこと、読み手が知りたいこと、など、複数視点からのニーズをくみ取ることは、社会人になっても仕事で役に立っている。

• 月2回(終盤は3回)ペースで取り組んできたが、議論の効率を考えると、もっと頻度を上げてもよいかも知れない。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 表紙や巻頭特集を学生の視点で創ることにより、新タウンページ構想のコンセプトの1つである「『地域とくらしの情報メディア』として、開いてもらう、使ってもらう」の実現に大いに貢献した。

• 和歌山大学というブランド力の高い大学とのコラボレーション、テレビ和歌山などマスコミによる取組紹介によるPR効果もあり、広告媒体としての価値向上も期待できる。

• 実際の活動では、欠席した学生にも情報共有を行っていくなどの配慮が必要。

当該授業の良かった点と改善点

• 学生は記事作成を通じて、広告事業者(出版元)、地域、観光に関わる事業者(取材先)、読み手の立場をそれぞれ考える経験を積むことが出来、就職活動及び就職後の仕事に役だった。

• 企業は大学・学生とのコラボレーションにより新しい企業活動・価値を実現できた。

C. 実践授業の効果等

実践授業の事例紹介:1.和歌山大学 プロジェクト自主演習

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実践授業概要

実践授業概要

大学情報 摂南大学 経済学部経済学科

担当教官 植杉大教授

対象観光地 宮城県気仙沼市、兵庫県神戸市中央区(南京町)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 摂南大学経済学部植杉ゼミの学生は、気仙沼市の企業や神戸市中央区「南京町商店街」と連携し、同商店街にて開催された「南京町生誕150年事業」の一環として、東日本大震災復興支援イベント「食べる!遊ぶ!復興支援する!!気仙沼出張屋台村@南京町広場」を企画・運営した。

• 気仙沼市の企業や団体からの協力を受け、気仙沼地域の料理販売や体験観光インストラクターを招いた観光地の紹介、被災について語る「語り部」の開催等を実施した。

• 同イベントの準備に当たり、参加学生は気仙沼市でフィールドワークを行い、現地の取材や関係者への協力依頼を主体的に行った。

参加学生の進路(例)

• 金融機関、不動産業者、メーカー等

実践授業の事例紹介:2.摂南大学 植杉ゼミ

• 摂南大学経済学部植杉ゼミの学生は、神戸市中央区「南京町商店街」と連携し、気仙沼市でのフィールドワークを通じて現地の理解を深めたうえで、宮城県気仙沼市の観光を紹介するイベントを企画・運営した。

A.実践授業の概要

←2018年8月に実施した気仙沼市でのフィールドワークの様子

←気仙沼関係者とのイベントについての打合せ、協力要請の様子

←神戸市の南京町でのイベント当日、参加学生が気仙沼名物の料理を販売する様子

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主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等• 復興庁(後援団体)

• 「新しい東北」官民連携推進協議会 (助成団体)

企業/団体 • 南京町生誕150年記念事業実行委員会(南京町商店街振興組合等で構成):企画内容の提案・アドバイス、イベントの広報、場所の提供等

連携に至った背景

• 震災ボランティア関係者を通じて繋がりがあった気仙沼市と植杉先生で、復興支援活動の一環として観光紹介イベントを開催することになった。開催場所を探していたところ、植杉ゼミが準備等で協力していた「南京町生誕150年記念事業」で場所を提供いただけることになり、連携が決まった。

実践授業の事例紹介:2.摂南大学 植杉ゼミ

• 学生は、一つの地域と向き合い信頼関係を築くことの大切さを学び、将来に渡って地域活性化に取り組む意欲が芽生えた。

• 連携団体は 「南京町生誕150年記念事業」の運営で学生から積極的な協力を得た。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 気仙沼市でのフィールドワークや南京町の関係者へのプレゼン等を通じて、学生の議論の質が大きく変化し、自己表現力も向上する等、社会人としての基礎力を培う機会を提供できた。

学生の視点 • 気仙沼市への訪問等を通して地元の人たちと密に関わることで、自分の熱意が相手にも伝わり、協力の輪が広がる等、一つの地域と向き合い信頼関係を築くことの大切さを学んだ。

• ライフワークとして地域活性化に取り組みたいと思うようになった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 参加学生は、気仙沼関係のイベント以外でも、「南京町生誕150年記念事業」にボランティアとして積極的に協力してくれ、非常に助かった。

• 学生の活動費用は大学や学生自身が負担しており、「新しい東北」官民連携推進協議会からの助成金も加わり、南京町商店街としても学生の企画実現に協力しやすかった。

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• 震災ボランティア関係者を通じて繋がりのあった気仙沼市と植杉先生との話し合いで気仙沼市の観光紹介イベントの開催が決まり、「南京町生誕150年イベント」にて場所の提供を受けて開催することとなった。

• 同事業実行委員会は学生に対し、開催場所の提供他、企画内容のアドバイス等を行った。

B.実践授業の体制

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実践授業概要

実践授業概要

大学情報 静岡英和学院大学 人間社会学部人間社会学科

担当教官 毛利康秀准教授(「地域創造フィールドワーク」および毛利ゼミの授業内で取り組みを実施)

対象観光地 呉服町・七間町(静岡駅近くの商店街)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 「地域創造フィールドワーク」では、地域の商店街等で構成される地域活性化団体「I Loveしずおか協議会」と連携し、静岡駅周辺に位置する呉服町・七間町の課題と改善策を検討した。

• 「I Loveしずおか協議会」が対象地域の選定や関係者との仲介を行い、学生は各地域への訪問を通じて魅力・課題を抽出、必要に応じて街頭アンケートなどの独自調査も実施した。

• 学生は各町の商店主や商店街理事との月1回の定例会議で、調査結果や提案内容を発表し、講評を聞いた。

• 初年度は「地域創造フィールドワーク」という授業の中で取り組まれていたが翌年以降は同大学毛利ゼミの学生も加わって取り組んでいる。

参加学生の進路(例)

• (参加学生は就職活動前の3年生中心)

実践授業の事例紹介:3.静岡英和学院大学 毛利ゼミ

• 静岡英和学院大学の授業「地域創造フィールドワーク」では、地域活性化団体「I Loveしずおか協議会」と連携し、静岡駅周辺に位置する呉服町・七間町を対象として、町の魅力や課題・改善策の抽出と提案を行った。

↓学生から七間町への最終報告資料(抜粋)

↓活動対象地域

静岡駅

呉服町七間町

↓学生と七間町とのミーティングの様子

写真提供:静岡英和学院大学毛利ゼミ

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A.実践授業の概要

Page 15: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体• I Loveしずおか協議会:活動開始時の対象地の選定、各町関係者との仲介等

• 呉服町・七間町の商店主・商店街理事:学生との定例会議出席、学生提案へのコメント等

連携に至った背景• 創立130周年を機に「地域に貢献する人材を育成する」という建学の精神に立ち返り、PBL

型(課題解決型)授業を拡大することとなった。その際、一部のゼミが提携していたI Love しずおか協議会との取り組みを拡大することとなり、本取り組みが開始された。

実践授業の事例紹介:3.静岡英和学院大学 毛利ゼミ

• 学生にとっては、地域活性化に関する具体的な取り組みや課題を学ぶ機会となった。• 連携した地域の団体にとっては、町の人が定期的に集まり、課題認識を共有するきっかけができた。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 純粋に活動内容に興味のある、非常にモチベーションが高い学生を集めることが出来た。

• 初年度の活動期間は4か月程度だったが翌年からは通年での活動とし、長い期間取り組めるようにした。

学生の視点 • 対象地域のシャッター街化を防ぐ取り組みを見て、地域活性化を具体的にイメージできるようになった。

• 地域活性化の取り組みに必要なお金の問題等、これまで知らなかった現実的な側面を知ることができた。今後は活動のテーマや目的を踏まえてタスクや役割分担をより整理して取り組めると良い。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 本取り組みの定例会議で町の人が定期的に集まることにより、課題認識を持ち共有できるようになった。

• 本取り組みに参加した商店街のメンバーと学生との間でネットワークが出来、別のイベントにも活かされた。

• 大学の創立130周年を機に、課題解決型の授業を拡大することになり、元々一部のゼミが提携していたI Love しずおか協議会と本取り組みを開始することとなった。

• I Love しずおか協議会からは、活動対象地の選定や関係者との仲介等で協力を得た。

B.実践授業の体制

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Page 16: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

実践授業概要

大学情報 長野大学 環境ツーリズム学部環境ツーリズム学科

担当教官 山崎隆之准教授

対象観光地 長野県・新潟県(しなの鉄道沿線)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 長野大学山崎ゼミの学生は、CI総研長野事務所が年4回発行し、しなの鉄道沿線を中心に配布されるフリーペーパー「しなの鉄道各駅停車」で、連載企画を担当した。

• 同取り組みでは、沿線の観光地や魅力を学生目線で紹介する記事を掲載した。

• 学生は、自分たちで設定した連載テーマに沿って取材先を選定した。取材先へのアポ取りや掲載交渉、記事の作成も、学生が主体的に行った

• CI総研長野事務所との主なやりとりは、山崎先生が行った。

参加学生の進路(例)

• 県内産品小売業等

実践授業の事例紹介:4.長野大学 山崎ゼミ

• 長野大学山崎ゼミでは、地元のフリーペーパー「しなの鉄道各駅停車」と連携し、記事の作成・掲載を通じて、沿線の観光地や魅力を発信した。

• 学生は、取材先の選定やアポ取り、掲載交渉、原稿の執筆等、紙面作りを主体的に取り組んだ。

↓年に4回発行されるフリーペーパー「しなの鉄道各駅停車」

↓実際に学生が作成し、掲載された紙面(一例)

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A.実践授業の概要

Page 17: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体 • CI総研長野事務所:原稿の最終確認、取材費用の負担等

連携に至った背景

• 首都圏からの観光客誘致を目的に、CI総研長野事務所が21年前から発行しているフリーペーパー「しなの鉄道各駅停車」の読者層の拡大のため、若者の視点を取り入れた紙面作りをしようと、CI総研長野事務所から長野大学地域連携センターに連携を依頼したことで取り組みが開始された。

実践授業の事例紹介:4.長野大学 山崎ゼミ

• フリーペーパー「しなの鉄道各駅停車」に若者の視点を取り入れるため、CI総研長野事務所が長野大学に連携の相談をしたことをきっかけに、取り組みが開始された。

• 取材先の選定や取材、紙面作成は学生が主体的に行い、CI総研長野事務所が原稿の最終確認を行った。

• 学生は、担当教官による最終的な品質管理があることで、安心して主体的な紙面作りに取り組み、学外との関わりの中で社会に出るための準備期間を過ごすことができた。

• 連携企業にとっては、学生が取材に行くことで地域からより積極的な協力が得られた。

C. 実践授業の効果等

大学の視点• 学外との関りの中で、社会に配布される成果物を作り出すことで、学生に緊張感が生まれ、社会に出るための良い準備期間を与えることができた。

学生の視点 • 取材活動や原稿作成は学生が自由に行いつつ、先生が成果物の品質管理を行うことで、学生の主体性と成果物の品質を両立させることが出来た。

• フリーペーパーに読者アンケートを付ける等、読者や外部の人の反応を見る仕掛けがあるとより良い。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 学生が取材に行くことで、地域の取材先がより積極的に協力してくれた。

• 今後は学生と「何を対象に、どのような取材をすべきか」について議論し、学生の視点を活かした切り口での取り組みをもっと行っていきたい。

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B.実践授業の体制

Page 18: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

実践授業概要

大学情報 安田女子大学 現代ビジネス学部国際観光ビジネス学科(実践授業の当時は現代ビジネス学科)

担当教官 戸井佳奈子教授

対象観光地 広島(宮島周辺・広島駅周辺)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 戸井ゼミでは、広島電鉄と連携し、外国人観光客がバスで広島を周遊しやすくするための英語版バスマップの制作に取り組んだ。

• 学生は、広島電鉄の他、広島市の協力も得て、レイアウト作成、実地調査、原稿作成、掲載する地域の飲食店との取材交渉等を実施した。

• 完成したマップは、広島電鉄の関連施設や観光案内所、観光協会で設置・配布した。

参加学生の進路(例)

• 金融機関等

実践授業の事例紹介:5.安田女子大学 戸井ゼミ

• 安田女子大学戸井ゼミでは、広島電鉄と連携し、外国人観光客向けの観光マップを英語で作成し、観光案内所や観光協会に設置・配布した。

• 参加学生は、レイアウト作成、実地調査、原稿作成、掲載する地域の飲食店との取材交渉等を主体的に行った。

←学生が作成したマップ(抜粋)

←企業との打合せの様子

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A.実践授業の概要

Page 19: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 広島市:マップに掲載するWi-Fiスポットや各観光施設の説明を作成。

企業/団体 • 広島電鉄バス事業本部:マップの内容協議、発行、配布協力(自社関連窓口への設置手配、一部観光関連施設との設置交渉等)

連携に至った背景• 広島電鉄の社員が大学で講義を担当していたつながりで、大学から実践授業での連携を

依頼。同社でも課題意識のあった英語版マップの取り組みを行うこととなった。

実践授業の事例紹介:5.安田女子大学 戸井ゼミ

• 安田女子大学で講義を担当していた広島電鉄に対し、大学から連携を依頼し本取組が開始された。

• 広島電鉄がマップ作成から配布まで協力をしたほか、広島市からも協力を得た。

B.実践授業の体制

• 学生にとっては、企画力・実行力が身に付いた他、広島の魅力を再確認し、地元での就職意欲が明確になった。

• 連携企業は、業界の常識に囚われない学生の新鮮な視点でマップを作成することができた。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 学生に対し、常に「なぜか?」を考えながら取り組むよう指導したため、物事を深く考察する力がついた。

• 大学の学科改組と重なったため単年の取り組みとなってしまったが、今後機会があれば再開し、マップ利用者の反応を踏まえて改善する、というサイクルを回したい。

学生の視点 • 広島の魅力を改めて実感し、広島で就職したいという気持ちが強くなった。

• 次回は観光ガイドブック専門の会社等にアドバイスをお願いすると良いのではないか。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 観光スポットを基準に市内をエリア分けする等、業界の常識に囚われない視点でマップを作成することができた。

• 活動を継続していくことで、マップの内容をより充実化させ、他の取り組みにも活かすことができるだろう。

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Page 20: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 淑徳大学朝倉ゼミでは、東武鉄道と連携し、埼玉県越生町のハイキングパンフレットを作成。学生自身が、現地ロケ、原稿作成、デザイン検討などを行い、学生目線でのお勧めスポット計17か所を紹介するパンフレットを作成した。

実践授業概要

大学情報 淑徳大学 経営学部観光経営学科

担当教官 朝倉はるみ准教授

対象観光地 埼玉県越生町

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 越生線沿線への誘客および埼玉県越生町の活性化を目指して、観光パンフレット「おごせ街あるき 山あるき」を製作。(2016年度)

• 埼玉県内の鉄道の活性化を目的とした、埼玉県の「地域鉄道元気アップ協働事業」の一環として、東武鉄道と淑徳大学、跡見学園女子大学が連携して実施。

• 学生自身が、現地ロケ、原稿作成、パンフレットデザイン検討などを実施。学生目線でのお勧めスポットを合計17か所紹介した。

• 東上線池袋駅において、両大学の大学生と越生町が共同で同パンフレットを配布する観光キャンペーンを実施。

参加学生の進路(例)

• ホテル、旅行会社等

実践授業の事例紹介:6.淑徳大学 朝倉ゼミ

←学生が作成したパンフレットの表紙

←パンフレットに記載されている街歩きマップ

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A.実践授業の概要

Page 21: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 埼玉県越生町

企業/団体• 東武鉄道株式会社:全体企画、地元店舗・町役場との調整・交渉、校正時のフィードバック

• 株式会社JTBコミュニケーションズ:パンフレットの編集や写真の撮影、文章校正等

連携に至った背景

• 以前より東武鉄道の社員が淑徳大学観光経営学科で年に1~2回の講義で接点があった。

• 埼玉県から東武鉄道に沿線活性化企画の話があった際に、以前朝倉ゼミで実施した「川越市まちなか再生支援事業」の成果が東武鉄道の印象に残っていたため、東武東上線沿線にキャンパスがあるメリットも考慮され、淑徳大学に声がかかった。

• 同沿線で観光系の学部・学科がある跡見学園女子大学と共同で取り組んだ。

実践授業の事例紹介:6.淑徳大学 朝倉ゼミ

• 東武鉄道社員が淑徳大学観光経営学科で講義を担当していた関係で接点があり、本授業において連携。東武鉄道は、企画全体のとりまとめや町役場との連絡・交渉、学生の取材活動費の負担等、取り組み全般に渡って支援を行った。

大学の視点 • 学生に対して、鉄道業界で沿線の地域活性化に取り組むプロフェッショナルと活動を共にし、観光業の広がりや仕事の進め方を学ぶ機会を提供することが出来た。

学生の視点 • 「観光」という言葉ひとつとっても中身は色々とある等、観光業の多様性に対する理解が深まった。

• 就職活動の面接の際、活動内容について興味を持たれることが多く、他の大学の学生と差別化できた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 学生は遊び心やアイデア、最新のツールを使うセンスがあって視点が大人と異なり、面白いものができる。例えば「F1」世代*の取り込み等で、新鮮で参考になるアイデアが聞ける。

• 今後は活動の効果測定がしやすいように取組み内容を設計していくことが課題。

• 学生は観光業の多様性に対する理解を深め、就職活動時も他の学生と差別化できた。• 企業は学生の発想や視点を観光商品に活かすことが出来た。

C. 実践授業の効果等

*:20-34歳の女性を指す(FはFemaleを意味する)

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B.実践授業の体制

Page 22: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

実践授業概要

大学情報 同志社女子大学 現代社会学部社会システム学科

担当教官 大津正和教授

対象観光地 長崎県

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 大津ゼミを中心とした有志による参加学生が、長崎県庁との連携により、長崎の観光モデルコースを策定した。

• 女子学生は、2泊3日のフィールドワークの旅に長崎を訪れ、訪問中にSNSを通じて旅行の様子を発信した。

• フィールドワークの様子は、長崎県観光連盟が運営する「ながさき旅ネット」でも紹介された。

• 訪問後には長崎県庁からの提案で新聞紙面の作成も実施。年度末には長崎県庁に対しての報告を行った。

• 同活動は長崎県庁の予算で実施しており、学生の旅費・飲食費等を含む活動費は長崎県が負担した。

参加学生の進路(例)

• 金融機関、小売業、IT企業等

実践授業の事例紹介:7.同志社女子大学 大津ゼミ

• 同志社女子大学では大津ゼミ学生を中心とした有志学生が、長崎県による関西圏を対象とした誘客促進事業の一環として、長崎の魅力を発見・発信する活動に取り組んだ。

• 参加学生は長崎県と協議しながら観光モデルコースを策定し、実際に旅をする様子をSNS等を通じて発信した。

↓長崎県観光連盟が運営する「ながさき旅ネット」での活動広報

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A.実践授業の概要

Page 23: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等• 長崎県観光振興課(同志社女子大学が産官学連携による共同研究として契約を締結):

学生による長崎訪問時のプラン作成・手配、新聞レイアウト作成・原稿チェック・発行、活動費負担等

企業/団体 • -

連携に至った背景• 九州新幹線西九州ルートの開業を見据え関西圏からの誘客に取り組む長崎県が、若い女

性の視点による長崎の魅力発信を目的に、同志社女子大学に連携を打診した。

実践授業の事例紹介:7.同志社女子大学 大津ゼミ

• 関西圏からの誘客に取り組む長崎県から同志社女子大学に連携の打診があり、取り組みが開始された。

• 長崎県は同志社女子大学と共同研究契約を締結しており、学生の活動費は長崎県の予算で賄われた。

• 実践授業を通して地域活性化に関心を持つ学生が多く、就職先でも地域活性化に関する配属先や活動を希望している。

• 長崎県職員にとっても、長崎の観光資源について学生から生の声を聞く機会となった。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 長崎の魅力を発信する立場を経験することで、学生が地域の魅力や課題を考える視点や力を身に着ける機会を提供することができた。

• 学生の自主性に任せていたが、今後は事前リサーチやスケジュール管理についてアドバイスしていきたい。

学生の視点 • 活動を通して地域活性化に関心を持ち、地域活性化を担当する部署へ就職先に配属を希望したり、地域住民と連携した地域密着型の企業活動に意欲を示すようになった。

• 珍しい取組みのため、就職活動の面接において有効なPR材料になった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 長崎県の職員が学生とともに観光コースを巡る中で、長崎の観光地や食について学生から生の声を聞くことができた。

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B.実践授業の体制

Page 24: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

大学情報 東洋大学 国際観光学部国際観光学科

担当教官 森下晶美教授

対象観光地 阿寒(北海道)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 森下ゼミでは、2018年度、株式会社JTB総合研究所の協力により「北海道・道東エリアにおけるアドベンチャーツーリズム市場獲得にむけた戦略構築」事業に学生が参加。

• 具体的には、主に以下2点について取り組んだ 。①阿寒DMOやJTB総合研究所などと共に、アドベ ン

チャートラベルプログラム(ツアー)を企画。学生は阿寒で企画のための調査を行い、アドベンチャートラベ ルの国際組織であるAdventure Travel Trade Associationと意見交換や交流を行って企画を完成させた。

②調査・企画の結果を、阿寒におけるアドベンチャートラベルの可能性として「ツーリズムEXPOジャパン2018」にて英語で発表。EXPOではATTAも参加し、発表を評価した。

参加学生の進路(例)

• (株)JTB、ANAセールス(株)、東日本旅客鉄道(株)等

実践授業の事例紹介:8.東洋大学 森下ゼミ

• 東洋大学・森下ゼミは、株式会社JTB総合研究所と連携し、北海道・道東エリアにおけるアドベンチャーツーリズム市場獲得に向けた戦略構築のため、同エリアでのアドベンチャートラベルの可能性を探る調査・企画を行い、ツーリズムExpoジャパンにて発表する取組みを行った。ExpoにはATWS2021 を主催するAdventure Travel Trade Association (ATTA)も参加し、企画へのコメントとフィードバックも行った。

↑阿寒での合宿におけるATTAとの意見交換の様子

↑ツーリズムExpoジャパン2018における、学生による発表の様子

↑←ツーリズムExpoジャパン2018における、学生による発表資料(一部)

写真・資料提供:東洋大学森下ゼミ

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A.実践授業の概要

Page 25: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 北海道経済産業局

企業/団体

• 株式会社JTB総合研究所(以下、JTB総研):連携調整、調査・企画への助言• Adventure Travel Trade Association (ATTA):ATに関するレクチャー、調査・企画への助言• 鶴雅ホールディングス:討議会場、宿泊先提供、ネイチャーツアー実施• 阿寒観光協会まちづくり推進機構(DMO):阿寒観光に関するレクチャー

連携に至った背景

• 旅行商品や地域への誘客を行う企画・立案について、単なるアイデアだけではない調査データをもとにした企画を、実際の地域や企業と共に考えながら企画のあり方を学ばせたいと考えた森下先生が、別の事業を通じて知り合ったJTB総研の担当者に相談し、協業することとなった。

実践授業の事例紹介:8.東洋大学 森下ゼミ

• 株式会社JTB総合研究所の研究員が2~3週間に一度程度、森下ゼミに参加し、学生 による調査・分析の方向性や、プレゼンについてアドバイスを行って支援した。

• 現地研修においては、阿寒DMO、鶴雅、ATTAも加わり、阿寒の観光の現状やアドベンチャートラベル、ネイチャーツアーについて学生へのレクチャーや意見交換を行った。

大学の視点 • JTB総研の複数の社員がプロの視点で学生にフィードバックを行うことで、学生は観光業の泥臭い部分も含めて理解を深めることが出来た。

• 学生の考える力を培うために、ちょうどよいレベルの難易度の課題や環境を提供することが難しい。

学生の視点 • 実践授業を通じて、ターゲット層を意識した商品作りやマーケティングの面白さ・難しさを学んだ。

• ツーリズムExpoでの発表やATTAの幹部職員からのフィードバック、JTB総研による指導等、旅行業界で活躍するプロの視点に直接触れ、机上では出来ない学びとなったと共にビジネスにすることの厳しさも分かり、刺激を受けた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• ツーリズムExpoでの学生の発表は業界の人間から見ても完成度が高くて視点も面白く、刺激になった。

• 旅行業界の人材育成に貢献できたという達成感を感じた。

• 学生は、ツーリズムExpoでの発表やJTB総研、ATTAとの意見交換等、プロの視点に多く触れることで、ビジネスとしての商品化を考える視点など、学びと大きな刺激を得た。

• ATTAからは、海外のビジネス事例を学びグローバルな視点も得ることが出来た。

C. 実践授業の効果等

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B.実践授業の体制

Page 26: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 熊本の地場金融機関、行政、旅行会社、地元メディア等で実施した熊本県内日帰りツアーのコンペに応募し、ツアー企画を提案。

• 最優秀案は実際に旅行商品として組成・販売され、メディアでも紹介された。

実践授業概要

大学情報 熊本学園大学 商学部ホスピタリティ・マネジメント学科

担当教官 波積真理教授

対象観光地 熊本県

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 肥後銀行と熊本県観光課、熊本電鉄旅行センター、熊本リビング新聞社の協力のもと、熊本の観光を盛り上げるために学生の力を借りるプロジェクトとして、熊本県内日帰りツアーの企画をコンペティション形式で実施し、最優秀案を実際に催行した。

• 大学側は2015年は熊本学園大学と東海大学・観光ビジネス学科とのコラボレーションで全12チームで参加。

• ゼミ所属の2,3年生がチームに分かれ、熊本定番の観光地である阿蘇に行けない3月開催で5-6千円程度で実施可能なツアーを考案し、実施された最優秀案のツアーにも参加した。

参加学生の進路(例)

• 旅館、信用金庫、自動車ディーラー等

実践授業の事例紹介:9. 熊本学園大学 波積ゼミ

写真出所:熊本リビング新聞社「熊本リビング」(2015年2月14日号;1370号)、熊本学園大学商学部Facebookより

↓地元フリーペーパー「熊本リビング新聞社」での学生考案バスツアーの宣伝広告ページ

ツアーコンペへの応募書類やコンペ企画の紹介記事、ツアー参加者への配布チラシなど→

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A.実践授業の概要

Page 27: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 熊本県観光課(主にコンペの審査者として関与)

企業/団体

• 熊本電鉄旅行センター

• 企画提出受付、実際のツアー商品組成・販売を担当。コンペ審査者としても関与。

• 企画の提出時、及びツアーチラシ原稿の作成時に学生と連携。

• 熊本リビング新聞社

• フリーペーパーにてコンペでの企画採用について記事掲載。記事作成にあたり、学生と頻繁に連携。コンペ審査者としても関与。

• 肥後銀行

• 活動立上げの発案者。立上げ後はコンペの審査者として関与。

連携に至った背景

• 産官学金での観光人材育成支援として、肥後銀行が関係者に声掛けを行い、熊本県観光課、熊本電鉄、熊本リビング新聞社に大学側から東海大学と熊本学園大学が参加する体制が立ち上がった。

• 熊本学園大学には、熊本県観光課からもともと接点のあった波積先生に打診があり、詳細を熊本電鉄と詰めながら取組みを詳細化した(当初2年間は東海大学も参加)。

• コンペでは、熊本電鉄が用意したツアー商品企画書のフォーマットに、学生が必要事項を埋めるかたちで企画を検討・作成する等、熊本電鉄旅行センターからの協力の貢献が大きかった。

• 地元金融機関である肥後銀行の声掛けにより、産官学金での観光人材育成の支援を目的とした活動が立ち上がった。

• 熊本県観光課、熊本電鉄、熊本リビング新聞社に大学側から東洋大学と熊本学園大学が参加する形で大学生のツアー企画コンペを実施し、商品化を行う取組みとなった。

実践授業の事例紹介:9. 熊本学園大学 波積ゼミ

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B.実践授業の体制

Page 28: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

効果等

大学の視点• マーケティングのゼミとして、実際に売れる商品づくりを学生に経験させたいという問題意識があった。

• もともと弁当などモノの企画・販売に取り組んでおり、サービスの企画・販売に取り組みたいというニーズに当件がマッチした。

• 実践的な取組みにより、例えばあまりターゲット顧客を絞り込むとコンセプトが面白くても成立しない、ということが学べた。

学生の視点 • 旅行商品の企画・予算策定・視察・広報・実行の各ステップにおいて、旅行会社だけでなく複数の関係者がどのように関わっているか理解することが出来た。

• 企画立案の方法論を身をもって学ぶことが出来た。

• 実践授業を経て、観光業界に進みたいという気持ちは高まった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 大学生のアイデアや感性を活かした結果、新たな視点での観光商品開発ができ、商品開発自体にもストーリーを描くことが出来るようになった。

• 学生の企業への関心が高まり、観光部門への就職希望者が増えた。

当該授業の良かった点と改善点

• 「実際にお客様に購入して頂くものを企画する」という体験が、座学では学びにくいマーケティングの実感や、多様な関係者の存在を理解するのに貢献した。

実践授業の事例紹介:9. 熊本学園大学 波積ゼミ

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C. 実践授業の効果等

Page 29: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

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Page 30: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 帝京大学大下ゼミでは、高速バス利用による地方活性化をテーマに、バス旅行に携帯出来るお菓子の詰め合わせ商品を考案し、バスタ新宿で販売。商品の企画や販売にあたっては、株式会社ファミリーマートやお菓子製造元の株式会社ナガトヤの協力を得た。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 帝京大学 経済学部観光経営学科

担当教官 大下茂教授

対象場所 新宿高速バスターミナル「バスタ新宿」

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所と大下ゼミが連携して取り組んだ、「バスタ新宿から地方を元気に!!」をテーマにした研究の一環として実施。

• 新宿高速バスターミナル「バスタ新宿」から出発する地方向け中・長距離バスの乗客向けに、持ち込めるお菓子の詰め合わせ商品を学生が企画し、バスタ新宿内のファミリーマートで販売。

• 商品の企画・販売にあたっては、株式会社ファミリーマート及びお菓子製造元の株式会社ナガトヤが協力。

• 商品のパッケージも学生がデザインしたものを採用。

参加学生の進路(例)

• 旅行会社、バス会社、鉄道会社、航空会社等

実践授業の事例紹介:10.帝京大学 大下ゼミ

↓学生が考案した商品の宣伝チラシ

↑「ばすケット」と命名し、限定5,000個を製造・販売。販売開始から約2か月で完売」

写真提供:帝京大学大下ゼミ

学生によるファミリーマートへのプレゼン

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Page 31: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 国土交通省関東地方整備局道路部道路計画第二課、同東京国道事務所

企業/団体• 株式会社ファミリーマート:商品企画のアドバイス、販売支援(売り場提供)等

• 株式会社ナガトヤ:菓子の提供、商品企画のアドバイス及び製造 等

連携に至った背景

• バスタ新宿の利便施設の向上に取り組む関東地方整備局から、国土交通省でアドバイザーを複数回務めていた大下先生に協力の打診があり、取り組みが開始された。高速バス利用による地方活性化をテーマに第一弾の取組みとして「ばすケット」を企画・提案、バスタ新宿に店舗を持つ株式会社ファミリーマートから、実現化に向けて土産用菓子に豊富な実績を有する株式会社ナガトヤが紹介された。

実践授業の事例紹介:10.帝京大学 大下ゼミ

• 関東地方整備局が、国土交通省関係の業務に関わりの多い大下先生に連携を打診。商品の企画・販売にはバスタ新宿に店舗を持つ株式会社ファミリーマートと、土産用菓子に豊富な実績を有する株式会社ナガトヤが協力した。

B.実践授業の体制

• 学生は、地方活性化の重要性や魅力を学び、職業選択に役立てた。• 企業は、商品開発に学生の視点を取り入れることが出来、また学びの機会を提供することで、社会

貢献が出来た。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 民間企業や行政組織等、様々な立場から地方活性化や観光に携わる社会人と接する機会を学生に与えることで、大きな刺激と学びの機会が提供できた。

• 実学を通じ地域貢献に寄与できた。

学生の視点 • 取組みを通じて地方活性化の重要性や魅力を感じ、就職先選定の考え方に影響を与えた。

• 消費者のニーズを意識しながら魅力的な商品を企画することの難しさと面白さを学ぶことができ、自信につながった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 大学生の視点を商品開発に取り入れることが出来た。

• 学生に対して、サービス業の仕組みや商談を学ぶ機会を提供することで、社会貢献が出来た。

• 各関係者の役割分担や責任の所在を事前に覚書等で明確にすることで、一企業として安心して協力することが出来た。

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Page 32: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

大学情報 阪南大学 国際観光学部国際観光学科

担当教官 小林弘二教授、李貞順教授

対象観光地 福井県あわら市

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 学生はあわら市の観光客誘致のための宿泊プランや旅行プランの作成に取り組む。

• 3年次前期の授業期間にインターネットなどを活用しグループごとに調査・企画作りを実施。

• 夏休みに韓国の観光学会学生大会で阪南大学での取組みを報告。また、同様の取組みを訪韓日本人客集客に向けて現地提携大学生とゲスト・ホスト双方の視点を交えて宿泊・旅行プラン作成のための合同調査合宿を実施。

• 帰国後希望学生はあわら市の旅館で1週間程度のインターンを実施。同時に地元住民や観光客へのヒアリング調査、観光実地体験、現地のイベント(祭り)運営に参画。

• 年度末の2月頃にあわら市関係者・観光協会・阪急交通社に対して最終現地報告会を実施。

参加学生の進路(例)

• 旅行会社、ホテル、鉄道会社、金融、等

実践授業の事例紹介:11.阪南大学 小林ゼミ・李ゼミ

←あわら市での最終報告会の様子

↑地元新聞「県民福井」での最終報告会開催に関する記事

• 阪南大学小林ゼミ(地域マーケティング)・李ゼミ(サービスマネジメント)が指導教員の専門性を活かした観点から、あわら地域活性化に向けた宿泊プランや旅行プランの企画に取り組んだ。

• 学生はゲストとホスト双方の視点をプランに取り入れるため、インターンシップ体験、地元住民や観光客にアリング等を行い、年度末にあわら市関係者・観光協会・阪急交通社に対して現地報告会を実施。

A.実践授業の概要

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Page 33: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体• 一般社団法人あわら市観光協会:小林ゼミ・李ゼミとの間で産学連携協定を締結。

• ㈱阪急交通社教育旅行センター:小林ゼミ・李ゼミとの間で産学連携協定を締結。

連携に至った背景

• 以前、韓国の地方旅行プランにゼミ学生のアイデアを活用した阪急交通社に、指導教員の専門性を活かした地域活性化に向けた産学連携を模索していた小林教授が相談。

• 阪急交通社が以前から取引のあるあわら市の観光活性化について産学連携を提案。

• あわら市は大規模な旅行客を収容できる宿泊施設が多いが、団体旅行の減少により新たな発想、特に学生等若年層の目線からの観光客誘致の必要性を認識。

実践授業の事例紹介:11.阪南大学 小林ゼミ・李ゼミ

• 団体旅行が減少傾向にあったあわら市で、ホスト側(地域住民・事業者)と交流を図りながらゲスト側である学生・若者の目線から観光客誘致を図ることを目的に、阪急交通社・あわら市観光協会と小林ゼミ・李ゼミの間で産学連携協定を締結し、活動を実施。

B.実践授業の体制

• 学生は学内の座学では得られない経験により旅行会社や宿泊施設の仕事に対する理解が深まった。

• 受入団体は、学生目線の観光商品(宿泊プラン・旅行プラン)に関するアイデアを得られた。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 地域マーケティングやサービスマネジメントといった専門的な知識が実践的な取組みによって深められた。

• 大学が推薦するインターンと時期が重複しており、参加できない学生がいるのが課題。

学生の視点 • 阪急交通社、あわら市観光協会の人に対して報告をする等、学内の座学では得られない経験を得られた。

• 旅行会社に対して華やかなイメージを持っていたが、情報収集など泥臭い一面もあることが理解できた。

• 一方、活動がデスクトップサーチが中心であり、もっと多く現地を訪問すべきだったとの感想も聞かれた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 学生目線の観光商品(宿泊や旅行プラン)に関するアイデアを得られ、商品化を実際に目指している(すでに観光協会ホームページに阪南大学プロデュースとして宿泊プラン等が紹介されている)。

• 学生が、より多くの関係者と接点が持てると良い(例:滞在期間の増加、交流イベントの追加、最終報告の後の継続的な検討、等)。

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Page 34: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 桜美林大学五十嵐ゼミでは、群馬県四万温泉の観光振興について取組み、観光客に対する街頭アンケート等の現地調査を踏まえて、群馬県四万温泉の旅館や温泉協会に対し、旅行商品企画や課題解決の提案を行った。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 桜美林大学 ビジネスマネジメント学群ビジネスマネジメント学類

担当教官 五十嵐元一教授

対象観光地 群馬県四万温泉

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 五十嵐ゼミでは、群馬県四万温泉の柏屋旅館や温泉協会に対して、学生が四万温泉全体に対する商品企画や課題解決の提案を行った。

• 2017年は以下のようなテーマで提案を行った。

① 四万温泉の観光振興

② おみやげ商品企画(温泉饅頭以外のもの)

③ 若者が四万温泉で働きたくなる施策

• 5~6月の四万温泉合宿で、現地調査を行い、その後、提案内容を検討した。

• 11月頃の合宿で、学生が温泉協会や旅館に対して、提案を発表した。

参加学生の進路(例)

• ホテル業界、エンターテイメント業界、航空業界、飲食業界等

実践授業の事例紹介:12.桜美林大学 五十嵐ゼミ

←2017年11月に群馬県中之条町の四万温泉協会で開催された、五十嵐ゼミの学生による観光振興策の発表

↓2017年の五十嵐ゼミの観光振興提案資料

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Page 35: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体• 四万温泉柏屋旅館

• 一般社団法人 四万温泉協会

連携に至った背景

• 地元とは異なる視点での提案を求めた四万温泉柏屋旅館が、全国の観光系大学に対して旅行商品企画を募集し、桜美林大学が応募したことをきかっけに連携を開始。

• 当初、複数の大学から応募があり、柏屋旅館は3~4の大学を受け入れた。現在も毎年継続して取り組んでいるのは桜美林大学のみ。

実践授業の事例紹介:12.桜美林大学 五十嵐ゼミ

• 四万温泉・柏屋旅館が、全国の観光系大学に対して旅行商品企画を募集したことがきっかけで、桜美林大学との連携が実現。学生のプレゼンには四万温泉協会など地域の関係者にも声をかけ、地域全体の活動に繋げていこうとしている。

B.実践授業の体制

• 学生にとっては観光業界の社会人に対する提案等の有意義な経験をすることで、業界の具体的なイメージの理解が進むとともに、就職活動で良いアピール材料となった。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 座学では教えられない宿泊業を中心とした観光業の現場について学ぶ機会を与えられた。

• 学生の自由度と適切な指導のバランスが難しい(観光客向けアンケートの設計方法等)。

学生の視点 • 就職活動の面接で、この取組みを説明したら質疑応答が活発になり、興味を持ってもらえた。

• アンケート調査の設計で、観光客の内訳による違いが明確に出来ない問題に気が付く等、現地で調査してみないとわからないことを理解することができた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 宿泊施設や会議場を提供するだけでなく、一緒に考えたり学生の提案に向き合う姿勢が重要と考え、学生の活動に主体的に関与した。

• 学生の提案内容の商品化の確度を上げていくために、学生と直接議論する機会を増やす等の工夫をしていけると良い。

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Page 36: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 奈良県立大学の「やまといろプロジェクト」では、奈良信用金庫と連携し、有志の学生が奈良市の観光について、訪日外国人観光客に対するアンケート調査やツアーの企画等を行っている。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 奈良県立大学

担当教官 増本貴士特任准教授、須川まり特任講師、平郁子特任講師

対象観光地 奈良等(奈良信用金庫のサービスエリア)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 奈良県立大学の「やまといろプロジェクト」では、有志学生が奈良信用金庫と連携し、観光調査やツアーの企画等、奈良市の観光に関する取組を行っている。

• 年度初めに学生を募集。学生の希望をもとに、奈良信用金庫とも協議しながら、6~7月頃を目途に活動テーマを決定。

• 夏休み明けから調査・分析等具体的な活動に取り組み、進捗は月に1回程度開催される定例会議で共有。定例会議には大学学長も参加。

• 年度末に成果報告シンポジウムを実施。

• 活動において地域の企業や店舗の協力が必要な際は奈良信用金庫も学生に同行して交渉実施。

参加学生の進路(例)

• 金融、アパレル、公務員、商社、等

実践授業の事例紹介:13.奈良県立大学 やまといろプロジェクト

↑活動において学生が作成した報告書の例

↓2016年度の活動の成果報告シンポジウム実施の様子

出所:奈良県立大学Webサイト、奈良信用金庫からの受領資料

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• 学生が奈良の魅力を理解することで、キャリア選択に良いヒントを与えた。企業側は当活動をCSR活動として位置づけ、県外出身者の多い奈良県立大学を地域に結び付ける一助となったと考えている。

C. 実践授業の効果等

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体• 奈良信用金庫:テーマ選定協議への参加、学生の地域関係者訪問への同行、費用負担。

• 日本総合研究所:アンケートの質問設計支援、データ打ち込み、簡易集計。

連携に至った背景

• 2004年に策定された奈良信用金庫の中期経営計画において、観光が重点支援産業と位置付けられたが、取組むにあたっては観光業界に知見を有する組織の支援が必要と考え、当時の奈良信用金庫常務(現・理事長)が奈良県立大学と協議、「地域振興についての連携協定」として2011年に締結した。

• 最初は大学で市民向けのシンポジウム等を開催していたが、学生と連携したほうが良いという議論になり、当取組みを開始した。

実践授業の事例紹介:13.奈良県立大学 やまといろプロジェクト

• 奈良信用金庫が奈良県立大学に連携を打診したことから取り組みが開始された。• 大学は学生の自主性を尊重し、基本的には学生が主体的に行動している。毎月の定例会議には大学

学長も参加している。

B.実践授業の体制

大学の視点 • 授業外の有志プロジェクトとして実施しているため、モチベーションの高い学生を集めることができた。

• 生徒の特性の見極めや各生徒に必要なケア等の対応が十分できるよう、担当教官の一部の会議出席を免除するなど、当プロジェクトに時間を割けるようにしたのが功を奏した。

学生の視点 • 本取組により奈良の魅力に気付き、キャリア選択の参考になった(例:県外出身者が地元に戻らずに奈良で就職)。

• 地元の人や信用金庫社員との交流を通じて、マナーを学ぶ等、社会勉強ができた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 奈良県立大学の学生は県外出身者が7~8割と多く、大学と地域を結びつけることにより、県外からの斬新な視点を地域に提供できた。

• その結果、地域における奈良信用金庫のプレゼンスも向上することが出来た。

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文教大学 国際学部 国際観光学科

大学情報 文教大学 国際学部国際観光学科

担当教官 横川潤教授

対象観光地 なし(全国)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 観光に限らずどの業界でも使えるスキル、特にマーケティングを学ぶことを目的としたゼミ。

• 2002年から産学連携による実践的な授業を行っており、1年で2テーマに取り組んでいる。

• 直近では、長岡商事のラムチョップのソース提案と、ロイヤルグループのアールアンドケーフードサービス株式会社が運営するフローズンヨーグルトショップ「ピンクベリー」の「アンバサダープログラム」に参加し、メニュー提案に取り組んだ。

• ピンクベリーのメニュー提案では、ゼミ生14名が4チームに分かれ、「3C・4Pマーケティング分析→メニュー検討→商品提案プレゼン→企業からのフィードバック」のサイクルを繰り返し、企画をブラッシュアップした。

• 最終的に提案メニューが採用・商品化され、2018年10月現在ハロウィンメニューとして販売されている。

参加学生の進路(例)

• 宿泊、エアライン、旅行業、飲食、ブライダル等

実践授業概要

• 文教大学横川ゼミでは、マーケティング学習の一環として年間2テーマの産学連携学習に取り組んでおり、2018年にはフローズンヨーグルトショップ「ピンクベリー」に対してメニューの提案をし、商品化に至った。

A.実践授業の概要

実践授業の事例紹介:14.文教大学 横川ゼミ

←横川ゼミの学生が提案し、実際に商品化されたメニュー

↑商品提案プレゼンでアールアンドケーフードサービス株式会社を訪問した際の写真

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主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体 • アールアンドケーフードサービス株式会社(ロイヤルグループ):「ピンクベリー」のメニュー提案に関する市場・顧客・競合分析の指導、提案内容に対するフィードバック、商品化

連携に至った背景

• 通常の卒論等では学生が受動的になる傾向があるという問題意識から、学生の能動的取組を意図して実践授業を開始。

• 日本フードサービス学会に参加していた横川先生が、当時、学会の副会長であったロイヤルホールディングスの菊地会長に2017年2月に打診し、実現。

• 学生はマーケティングや企画提案、プレゼン等の実践的なスキルが身に付くため、ゼミの人気が高まり優秀な学生が集まる効果がある。企業はCSR活動として社会及び学生にアピールできるほか、学生が飲食業界に興味を持つ良いきっかけづくりにもなっている。

C. 実践授業の効果等

大学の視点

• 在学中の学生へのアピール効果があり、ゼミの人気が高まり優秀で真面目な学生が集まる。

学生の視点• 観光に限らずどの業界でも使えるスキル(マーケティング力、企画提案力、プレゼンテーション力)が身につく。これらのスキルは実際に就活でも役立ち、企業に評価されている。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 企業のCSR活動の一環として、社会及び学生にアピール出来る。

• 企画した商品がメニューになることで学生が飲食業界に興味を持つきっかけとなる。

• 属人的な繋がりに依存しないマッチングシステムがあると良い。

• 2002年から産学連携を開始し、以降年2回ペースで産学連携の取組を継続。先生の個人的な繋がりを活かして提携先を発掘し、取組内容が決定した後、学生が参加

B.実践授業の体制

実践授業の事例紹介:14.文教大学 横川ゼミ

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• 熊本地震で被災した南阿蘇村の観光復興を目的に、大学・国土交通省・南阿蘇村・旅行会社ジャルパックが産学官連携し「南阿蘇観光未来プロジェクト」を結成。建設中の立野ダムを観光資源化する「インフラツーリズム」や雄大な阿蘇の「ジオツーリズム」を総合的プロデュース。

• 学生に地域の観光資源の発掘から旅行ツアー商品の企画・販売・集客を通して観光による地域振興のストーリーを体験・滞在・交流を通して深い学びを実現した。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部

担当教官 篠原靖准教授

対象観光地 熊本県南阿蘇村・高森町

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 熊本地震の影響で観光客が半分以下に落ち込んでいる熊本県阿蘇地域を対象に、「南阿蘇観光未来プロジェクト」を結成。新たな観光振興の仕掛けを支援する主旨で、篠原ゼミの学生が中心となって着地型旅行商品を企画した。

• 学生は株式会社ジャルパック(以下「JALPAK」)と地元の観光協会の支援を受けながら手作りのツアーを企画。11月に東京発の現地ツアーを催行し大好評を博しマスコミでも大きな話題となった。

• 5年後完成予定の「立野ダム」(南阿蘇村)および南阿蘇地域のさまざまな観光資源を掘り起こしツアーに学生が自らツアーガイド役を務めながら、観光資源の付加価値のつけ方を学生とJALPAKが地元に対して具体的に提案した。

参加学生の進路(例)

• 旅行会社、シティホテル、町役場、海外青年協力隊等

実践授業の事例紹介:15. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(南阿蘇)

↓学生が観光資源を収集し組み立てたツアーの募集広告

↑立野ダムの建設予定地付近を視察する大学生たち↑

出所:南阿蘇観光未来プロジェクトモニターツアー、(株)ジャルパックhttps://www.jal.co.jp/domtour/kyu/minamiaso_project/

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実践授業の事例紹介:15. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(南阿蘇)

←熊本地震で被災した「地獄温泉 清風荘」。阿蘇のマグマ直熱温泉で、復興に向け日々取り組まれている。南阿蘇村の観光資源を学生目線で体感

↑跡見学園女子大学にてキックオフ会議を開催。↑学生からツアーコンセプトを発表

↑南阿蘇村の観光関係者と意見交換会。地元の意向を把握

↑熊本地震により一部運休中の「南阿蘇鉄道」。レストラントレインの運行の可否を確認

↑立野ダム工事現場にて工事概要を把握。ツアー時の観光客への魅せ方を模索

↑レストラントレインでお弁当を提供頂く地元の店舗へ協力依頼

【6~8月】ツアー案の提案、及び

ツアー実施に向けた地元

調整

【5月】現地調査による観光資源の把握及びツアーコンセプトの提案

【9~10月】ゼミ生全員によるツアーの予行練習・

ツアーの改善

【11月】モニターツアー

実施

←阿蘇のジオとインフラへの理解を深めるためのシナリオ作成

←南阿蘇鉄道と地元の協力のもとレストラントレインを運行

↑熊本地震で崩落した阿蘇大橋。地元の語り部から当時の状況を説明

↑ ↑ ↑レストラントレインではヘッドマークや看板、お客様一人一人への

メッセージを作成。この日のためにお揃いの制服を準備

↑立野ダム工事現場では、工事説明だけでなく、真っ暗なトンネル内を歌で盛り上げる演出

←世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2018」にてツアーをPR

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• 政府が推進するインフラツーリズムをベースに、建設中の立野ダムを地元の新たな観光資源としたい国土交通省と震災復興を加速させたい南阿蘇村の思いを実現するため、篠原ゼミがプロデュ―ス役を務め「南阿蘇観光未来プロジェクト」をJALPAKが参画し結成。

• 観光による地域振興を産学官連携で地元に提案するための組織と仕組みを構築した。

B.実践授業の体制

実践授業の事例紹介:15. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(南阿蘇)

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体・

省庁等

• 熊本県南阿蘇村・高森町:企画に関する意見交換、会議場所の提供

• 国土交通省 九州地方整備局 立野ダム工事事務所:立野ダムを含む南阿蘇地域案内、及びダムインフラツアーの案内内容検討支援

• 「阿蘇・立野峡谷」ツーリズム推進協議会 :ツアーガイド内容の検討、及び着地型旅行商品の試行

企業/団体

• JALPAK:モニターツアー企画支援・商品化・販売・催行

• みなみあそ村観光協会:地元の飲食店等の紹介・手配・精算

• 南阿蘇鉄道:列車内でのレストラントレインサービス提供協力

• 阿蘇ユネスコ世界ジオパークガイド協会:ジオツーリズムの案内内容検討支援及び案内

• 村本建設(株):トンネル工事現場見学と演出の協力

• 地獄温泉清風荘:足湯体験、熊本地震の被災体験の説明

• 阿蘇東急ゴルフクラブ:昼食会場の提供(立野ダムカレー)

• ポア・ジョリ,久長屋,75th St:食材等の協力

• 道の駅 あそ望の郷くぎの:モニターツアー休憩場所の提供

連携に至った背景

• 2017年のツーリズムEXPOジャパンで開かれた「観光まちづくりプロジェクト観光庁長官賞受賞成果発表会」で、跡見学園女子大学篠原ゼミのプレゼンテーションを見たJALPAKの社員が、ゼミの活動に共感し篠原先生に、これまでに無い新しい旅行商品開発を相談。

• 別途、立野ダムを観光に繋げていこうと「阿蘇・立野峡谷」ツーリズム推進協議会を立ち上げたばかりの立野ダム工事事務所が、八ッ場ダムのインフラツーリズムの立ち上げを成功させた篠原ゼミの実績を見て篠原先生に相談。

• JALPAKと立野ダムをマッチングさせ、これまでに無かった新しいスタイルのツアー商品開発に取り組むこととした。

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• 学生は旅行業務の多様な面を直接経験しその大変さも理解しつつ、その苦労が仕事の遣り甲斐に十分見合うことを理解し業界に就職する思いを強めることが出来た。

• 旅行会社単独では商品造成が難しい地域の観光資源を学生が開拓することにより、着地型の観光ツアーの新しい可能性が期待できるようになった。

C. 実践授業の効果等

効果等

大学の視点 • 講義中心の観光学ではなく、「課題解決型授業」を通じて地域課題の発掘から解決までのプロセスを学生に経験させることを目指している。本企画では地域の人たちと力を合わせて手作りのツアーで思いを伝える、という体験が、学生たちに観光の様々な側面と可能性について考えさせる貴重な体験となった。

学生の視点• 旅行業務の内容の多様さを、実感をもって理解できた。

• 実際に販売する旅行商品の企画、訪問先調整、販売準備、案内準備、アテンドを経験でき、業務がいかに多くの内容で構成されているか、理解できた。

• 旅行業界の仕事の遣り甲斐を自らの体験で理解し、就職意欲が高まった。

• 実際の旅行の企画、準備、アテンドを体験することで、やることが多くて大変であることを理解した。

• 一方で、その苦労を上回る遣り甲斐があることも、顧客の笑顔や声などの反応によりリアルに理解でき、旅に携わりたい思いを強めた。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 旅行会社では入り込みにくい地域の関係者との間に学生が入り込むことにより、若者目線,よそ者目線で雄大な阿蘇の魅力や地元南阿蘇の魅力を引き出し、斬新なアイディアを組み込んだ、地元や企業単独では造成が難しいツアーを企画することが出来た。

• ガイドシナリオやアテンド方法等、ツアーの受け入れ側の視点だけでなく、ツアー参加者の視点に立ったきめ細やかな“おもてなし”の心を感じていただけるツアー商品に仕上げることが出来た。

• インフラ(ダム)の役割や建設の目的など、参加者の方々に分かりにくい専門用語を、掛け合いによる説明シナリオを作成し、参加者にも好評であった。

• 今回の取組み以前に、産学連携で地域活性化の支援が出来るのでは、という仮説があったが、それを検証することが出来、今後のツアー企画の可能性を広げることが出来た。

実践授業の事例紹介:15. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(南阿蘇)

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Page 44: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

実践授業概要

大学情報 帝京大学 経済学部観光経営学科

担当教官 有馬貴之准教授

対象観光地 秋川渓谷(東京都あきる野市)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 有馬ゼミでは、2016年、2017年の2年間、JR東日本が実施する「駅からハイキング」と連携し、秋川渓谷(東京都あきる野市)のハイキングコースを作成した。

• 参加学生は、1年間のゼミ活動を通じて、現地調査、関係者との交渉、パンフレット作成、観光客へのアンケート調査・分析、関係者への最終報告等を行った。

• あきる野市観光協会及びあきる野市観光まちづくり推進課が、コース設定等のアドバイスを提供し、当日の運営にも協力した。

• ハイキング実施後には、JR東日本の武蔵五日市駅長や八王子支社、あきる野市役所観光まちづくり推進課、あきる野市観光協会に対して最終報告会を実施した。

参加学生の進路(例)

• ホテル、観光コンサル業、旅行会社、鉄道会社、ブライダル会社等

実践授業の事例紹介:16.帝京大学 有馬ゼミ

↓武蔵五日市駅長へのインタビュー

↓2016年に実施した有馬ゼミによる「駅からハイキング」のマップ

↓あきる野市の観光客へのアンケート調査結果

• 帝京大学有馬ゼミでは、JR東日本が実施する「駅からハイキング」と連携し、秋川渓谷でのハイキングコースを作成した。ルートの設定や現地店舗との交渉等は学生主導で取り組み、JR東日本の担当者とも直接連絡を取り合った。

A.実践授業の概要

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Page 45: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • あきる野市観光まちづくり推進課:事前調整、学生による最終報告の聴講等

企業/団体

• JR東日本八王子支社(及び武蔵五日市駅):ルート確認、パンフレットの校正、学生による最終報告の聴講等

• 一般社団法人あきる野市観光協会:コース設定等のアドバイス提供、当日運営協力等

連携に至った背景• JR東日本八王子支社から、あきる野市役所観光まちづくり推進課経由で有馬先生に参加

の打診があり、連携することとなった。あきる野市と帝京大学では基本協定を締結している。

実践授業の事例紹介:16.帝京大学 有馬ゼミ

• JR東日本八王子支社から帝京大学に「駅からハイキング」への参加について打診があり、連携を開始。武蔵五日市駅の駅長を中心に、JR東日本やあきる野市観光まちづくり推進課が全体を通して実施し、当日の運営等ではあきる野市観光協会も協力した。

B.実践授業の体制

• 学生にとっては、一つのイベントを成功させる苦労と達成感を学ぶ機会となり、就職活動にも役立てることができた。

• 企業にとっては、学生の視点で企画した観光コースにより顧客から好評を得た。

C. 実践授業の効果等

大学の視点• 出来る限り学生の主体性を重視し、外部とのやりとりも含めて実践的な体験をさせることで、「観光を通じて社会を見る」機会を提供できた。

学生の視点 • イベントの企画・集客の苦労と達成感を学び、旅行業界での就職面接の際にも、実体験を交えて意欲を示すことができた。

• 目的意識を持って調査する力や考える力が身に付き、就職活動や卒業後の仕事でも役に立っている。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 学生による斬新なテーマのコース設定や、JRや観光協会の職員の知らないお店や景勝地のコース盛り込みにより、観光客から評判の高いハイキングイベントが企画できた(JR)。

• 現地コースの確認(実踏)が夏休みだと参加できない学生が出るため、実施時期の工夫が必要(JR)。

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Page 46: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

実践授業概要

• 城西国際大学の選択授業「観光プロジェクト」では、JR東日本の既存企画である「駅からハイキング」と連携し、学生が安房小湊駅からのハイキングコースを企画・提案・運営。コース作成や地元観光関連施設等への協力依頼に加え、当日の運営・現地ガイド等を体験した。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 城西国際大学 観光学部観光学科

担当教官 山本剛助教(「観光プロジェクト」)

対象観光地 房総半島(安房小湊駅~安房鴨川駅)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 「観光プロジェクト」という選択授業の中で、JR東日本の企画「駅からハイキング」と連携し、学生が安房小湊駅からのハイキングコースを企画する実践授業。

• 春頃からJR東日本と相談しながらコースの内容を検討し、夏ごろにJRがパンフレットを作成・発行・広報を実施。

• 秋頃に開催されるハイキング本番では、学生が現地でお客様と交流をしたほか、地元の観光施設などにも協力を得ながら、お客様へのお土産提供や施設利用割引を行った。

参加学生の進路(例)

• 旅行会社、鉄道会社、航空会社、空港、旅館、ホテル、イベント会社等

実践授業の事例紹介:17.城西国際大学 観光学部観光学科

↓JR東日本の担当者が学生に向けて初回事業で行ったプレゼン(一部抜粋)

←JR東日本の「駅からハイキング」パンフレットに掲載されたハイキングコース↓

↓「駅ハイ」当日、観光客を迎える学生とJR東日本職員

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Page 47: 先進的な実践授業事例集 - MLIT概要 実践授業概要 大学情報 和歌山大学観光学部観光学研究科 担当教官 堀田祐三子教授 対象観光地和歌山県

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体 • 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)千葉支社

連携に至った背景

• JR東日本千葉支社と共同で、「快速リゾートあわトレイン」運行時の「地元の食材を使ったオリジナル弁当」企画を2016年まで4年間継続したが、「快速リゾートあわトレイン」運行終了に伴い、大学がJR東日本に「駅からハイキング」(以下、「駅ハイ」)への参加について相談し、授業の一環として開始された。

実践授業の事例紹介:17.城西国際大学 観光学部観光学科

• 城西国際大学観光学部からJR東日本へ、「駅からハイキング」への参加を打診したことで、取り組みが開始。千葉支社の「駅からハイキング」担当者と大学・学生が協同して実施した。

B.実践授業の体制

• 学生と市民との連携により観光商品を企画でき、自由度も高く、旅行の企画から準備、運営までの全プロセスを体験することが出来るため、学生が進路を考える上で豊富な検討材料を与えることが出来ている。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 「駅ハイ」は一定の枠組みがありながらも詳細な内容は決まっておらず、コース設定や、協力頂く地元観光施設の選定など、学生自身が自由に決められるので、取り組み方次第で学習効果が高い内容となる。

学生の視点 • 一つのプロジェクトの中で様々な立場を経験するので、ツアーのプランニングだけではなく、観光のどの部分に携わりたいのかを、幅広く考えられるようになった。

• 「駅ハイ」で色々な立場の経験をしつつ、観光業界や人材育成業界などを経験した担当教員から、それぞれ関連する業種に関するアドバイスを得られたことが、より勉強になった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 地元で学ぶ学生が企画することで、地域のつながりが強化され、食事やおみやげ購入など地元経済へ貢献するという地域活性化効果がある。

• パンフレットやウェブサイトに掲載されることで、発地側が発信した沿線の観光の魅力をPRできる。(「駅ハイ」はリピーターが多く、パンフレットやウェブサイト等を定期的に見ているので、PR効果が高い)

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活動 時期 活動内容

現地観光資源に関する基礎理解、体験合宿の企画

6~

7月

• キックオフ

• 現地視察による既存の観光資源の確認、理解

• 8月の集中体験合宿に向けた企画、調整

現地観光資源の集中体験合宿(一部イベント実施)

8月 • 現地観光・市民イベント体験(15プログラム以上)への参加

• いすみ鉄道列車アテンドによるいすみ市の魅力PR活動

• 10日間に渡り現地泊まり込みで実施(一部メンバー入替え)

観光コンテンツとしての活用企画・改善提案

9~

3月

• いすみ市役所に対する中間報告会(10月)

• いすみ市民に対する報告会(10月)

• 次の取組みに向けた打合せ(2月)

• 市長・副市長及び関係者に対する成果報告会(2月)

実践授業概要

• 千葉県いすみ市の地域活性化や地域の課題解決の推進戦略の一環として、学生が夏季に10日間の地域魅力PRイベント等の情報発信を実施。その体験を踏まえて今後に向けた提案を、いすみ市役所や地元団体などの地域関係者に実施した。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部

担当教官 篠原靖准教授

対象観光地 千葉県いすみ市

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • いすみ市が4大学と取り組んでいた「域学連携事業」の観光領域を強化する形で平成30年より参画。

• 事前の現地視察、文献調査などを踏まえて企画した、夏の現地観光資産の集中体験合宿(15プログラム超)を踏まえて、観光コンテンツとして今後活用していくための企画や改善提案を検討、報告書作成。

• 市役所関係4課と市内の関係者・関係団体を集めて報告会にて報告・提案したほか、いすみ市長・副市長へのプレゼンテーションを実施し、次年度に向けた事業計画の提案を行った。

• 大学側はゼミ生2・3・4年生の合同チームで実施。次の年に向けた活動内容の継承が図られている。

参加学生の進路(例)

• 旅行業、ブライダル他(同ゼミ卒業生)

実践授業の事例紹介:18. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(いすみ市)

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実践授業の事例紹介:18. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(いすみ市)

【9~3月】観光コンテンツとしての活用企画・

改善提案

【8月】現地観光資源の集中体験合宿(一部イベント実施)

【6~7月】現地観光資源に関する基礎理解、体験合宿の企画

←市役所の関係4課とキックオフ交流会

←ゼミ生全員(約40名)でいすみ市を訪問、具体的な観光資源をひととおり視察

↑いすみ鉄道に実際に乗車し、浴衣姿でいすみ市の魅力をPRするアテンダント体験

↑酒蔵見学にて、単に製造プロセスだけでなく、そこに込められた先代先々代のこだわりと苦労を理解 ↑地元の特産品を活用した

漁師飯づくり体験

↑循環型農業の仕組みについて説明を受けたあと、実際に牛舎で搾乳とバターづくりを体験

↑10月時点の市役所及び市民に対する成果報告会 ↑2月の市長・副市長に対する成果報告会と報告資料

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学生主体での取組みであり、各年で必要な地元の協力は学生が自らコネクションを作り、協力を求める

実践授業の事例紹介:18. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(いすみ市)

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等

• 千葉県いすみ市(4課横断体制;企画政策課、水産商工課、農林課、オリンピック・観光課)

• いすみ鉄道

• 学生による列車内でのいすみ市の魅力PR活動の実施、及びその体験を踏まえた今後の観光資源としての活用提案

企業/団体

• 高秀牧場:循環型農業の研修、搾乳・バターづくり体験を踏まえた今後の健康資源としての活用提案

• 木戸泉酒蔵:酒蔵見学・ヒアリング、利き酒体験を踏まえたPOP掲示提案・サンプル作成

• 星空スペース:トマト収穫・トマトソースづくり等の既存イベント体験を踏まえた活用提案

• みねや営農組合:稲刈り・小田掛け体験及び関係者ヒアリングを踏まえた今後の観光資源としての活用提案

• 夷隅東部漁業組合・いすみ市商工会:学生による“港の朝市”来訪者へのアンケート調査、漁業教室及び漁師飯作り体験を踏まえた今後の観光資源としての活用提案

• 農家民泊:学生の宿泊先提供、市内関係者情報提供・紹介

• その他、国吉神社・吉田洋品店・楽働会など協力者多数

連携に至った背景

• 平成27年10月にいすみ市にて域学連携事業を開始。当初は千葉大学、早稲田大学、武蔵野美術大学、千葉工業大学の大学で開始。

• 観光系の大学がないため観光面の強化をしたいといすみ市が考え、いすみ市みらいづくり委員会など複数の委員会で委員長を務めた跡見学園女子大学の篠原先生に参加を依頼をした。

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• 観光分野を強化したいと考えたいすみ市役所が、過去にいすみ市の委員会で委員長を複数回務めた跡見学園女子大学の篠原先生に支援を依頼。市と大学間で協定を締結し、平成27年に他の4大学と開始していた「域学連携事業」に合流する形で活動を行った。

• いすみ鉄道の活用を端緒としつつ、活用できそうな観光資源関係者に市役所等を通じてコンタクトし、幅広い領域での活動・提案を実現した。

B.実践授業の体制

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効果等

大学の視点 • 学生が学内で学んだ理論を、様々な立場のいすみ市民と交流しながら地域振興の実践を学ぶことにより、将来の地域創生を担う人材育成に貢献できる。

学生の視点 • 実在する地域とその関係者を相手に交流し議論することで、自分のやりたいことへの道筋が見えてきた

• 地域活性化に資する観光を手掛けていくために、目指すべき業種や職種が見えてきた。

• 卒業後、社会人として振る舞うために必要なことを理解し、順次身に着けていくことが出来る。

• 単純な見方をしていたものが、多面的に理解することが出来るようになった。

• 観光客を受け入れる側の視点を考えたことがなかったが、理解することが出来た。

• 現地で人脈を作ることで、行政、市民、宿泊事業者、物販など様々な立場での見方を理解できた。

• 地域に魅力があるだけではダメで、それを観光コンテンツとして繋いでいく必要性を理解した。

• 地域の当事者に、提案内容を直接プレゼンテーションする経験を積み、担当教官から改善すべき点のフィードバックを受けていくことで、限られた時間で効果的にプレゼンする力をつけることが出来る。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 大学がない市内にあって、地元では分かりにくい“都会の若い人の感覚”を施策に導入することが出来る。

• 学生に心を開いて意見交換を行う場を持つことで、従来の慣習や発想からなかなか抜け出せない取組みも、物事が前に進む可能性が高くなる。

• 学生が地域のことを考えて一生懸命取り組んだのを見た地域の関係者が、その取組みに理解を示し、活動を少しずつ継承していくことで、行政や地域関係者だけでは変えられなかった変化を起こすことが出来る。

• 跡見学園女子大学の学生の明るく親しげな振る舞いが、関係者の本音を引き出し議論を前に進めることがある。

当該授業の良かった点と改善点

• 「観光による地域活性化」等に関心のある学生に、具体的な地域の問題に向かい合せ、その多様性や解決の可能性、取り組む魅力について手触り感を持って理解することで、観光業界への関心を高め、適切な将来の進路について考えさせることが出来る。

• 新しい視点や発想が必要な地域や市民・団体に対し、行政やシンクタンク等の活動では起しづらい変化の機会を与えることが出来る。

C. 実践授業の効果等

実践授業の事例紹介:18. 跡見学園女子大学 篠原ゼミ(いすみ市)

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• 長野大学松下ゼミでは上田電鉄と連携し、沿線を紹介するナビゲーションマガジンの発行や、沿線でのフォトラリーイベントの企画等に取り組んだ。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 長野大学 環境ツーリズム学部環境ツーリズム学科

担当教員 松下重雄教授

対象観光地 上田電鉄沿線(下之郷~別所温泉間)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 長野大学の最寄りの路線である上田電鉄と連携した取り組みを実施。

• 初年度の2016年は上田電鉄別所線沿線(下之郷~別所温泉間)のナビゲーションマガジン(フリーペーパー)を発行。

• 2017年は、ナビゲーションマガジンを活用し、マガジン掲載地を回りながら写真を撮るフォトラリーのイベントを開催。

• 学生は毎週のゼミ授業時間を活用して、上田電鉄担当者との議論を通じ、方針検討や、フリーペーパーに掲載する店舗・施設の取材等を実施。

• シオナビ発行費やイベント広告費用等は上田電鉄が日本民営鉄道協会の補助制度を活用しサポート。

参加学生の進路(例)

• 住宅メーカー、アパレル等

実践授業の事例紹介:19.長野大学 地域協働のまちづくりゼミ(松下ゼミ)

↑初年度に発行したナビゲーションマガジン(フリーペーパー)「シオ★ナビ」

↓2年目に実施した、マガジン掲載地を巡るフォトラリーイベント「フォトレイン」

出所:長野大学Webサイト、上田電鉄Webサイト

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主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • -

企業/団体 • 上田電鉄株式会社

連携に至った背景

• 長野大学は上田電鉄別所線沿線にあり、通学で多くの学生が利用している。通学のため以外でも別所線に乗って沿線を巡る目的地を、若い人の目線で発掘し塩田平を活性化することができないかと考え、上田電鉄から長野大学の地域づくり総合センターへ話が持ち込まれた。

• 地域協働のまちづくりをテーマに掲げ、フィールドワークを重視した活動を展開していることから、松下ゼミで話を受けることとなった。

実践授業の事例紹介:19.長野大学 地域協働のまちづくりゼミ(松下ゼミ)

• 企業は学生と連携することで、企業単独で取り組む場合に比べてより地域の協力を円滑に得られるようになった。

• 観光まちづくり分野において、企業と連携した実践的な地域協働教育プログラムを構築することができた。

C. 実践授業の効果等

大学の視点 • 企業が実践的に連携・協力することで、通常のゼミ活動の枠を超えて、実社会で情報冊子の発行や観光イベント運営を実現させることができた。

• 長野大学が推進する地域協働教育の一つとして、地域に根ざした企業と連携した観光まちづくり教育プログラムの実践例を示すことができた。

学生の視点 • 地域を自分の足で回り、直接地域の人とコミュニケーションをとる中で、地域への理解が深まった。• 地域での取材活動やイベントの企画実践活動を通じて、計画力、実行力等が向上した。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 学生の取り組みである方が、企業が単独で取り組むよりも地域の協力を得やすい。• 大学側は長いスパンで活動に取り組む事を考えていたが、上田電鉄としては年度内で成果物を作成し次につなげて行くと考えていたため、年度の後半に作業が集中してしまった。2年目には改善し、事前に大学側とコミュニケーションを取ることでスケジュールに遅れなく活動を実施できた。

• 上田電鉄が大学に、学生と連携した取り組みを打診して取組みが開始された。• 学生と企業との間で直接議論し進める環境を重視し、学生主体で活動の方向性や内容を定められ

るよう担当教員が配慮した。

B.実践授業の体制

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実践授業概要

• 観光地の地域住民への聞き取り調査を踏まえて、高齢者や地域住民同士のつながりを深める場が必要との問題認識から、コミュニティカフェの企画・運営を行った。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 立正大学 経営学部経営学科

担当教官 吉田健太郎教授

対象観光地 鎌倉市

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • 地域住民への聞き取り調査から「観光客向けの店ばかりで地域の人がくつろげる場所が少ない」という課題を調査。

• 解決の手段として、鎌倉で高齢者や地域住民同士のつながりを深めるコミュニティカフェ「RUKcafe」を、ゼミ生が企画・運営した。

• カフェでは鎌倉の地元食材「あかもく」を活用した「あかもく丼セット」等、地産地消を意識したメニューも提供。

• 運営を通じて見えてきた課題は現場でメモを取り、改善策についてゼミ授業の時間で先生を交えて協議、対応方針を決定。

• 運営資金は、大学がブランディング戦略事業の一環として割り当てた予算を活用、学生が管理した。

参加学生の進路(例)

• 不動産会社、旅行会社、鉄道事業者等

実践授業の事例紹介:20. 立正大学 吉田ゼミ

←鎌倉の地元食材「あかもく」(海藻)を使用したメニュー「あかもく丼セット」

↓RUK cafeの看板

写真出所:https://twitter.com/rukcafe_rissho、http://www.ris.ac.jp/pressrelease/2015/release20151120_01.html

↓内装完成後、オープンを待つカフェ

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授業を実現するための体制(1/2)

主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等

• 市役所:鎌倉の課題についてヒアリング。また、カフェで料理提供するにあたり、料理研究家の紹介などを依頼。

• 商工会議所:地場産業の取組みについてヒアリング。

企業/団体

• 地元NPO:地元NPO等50団体以上と接触。(例)みらいふる鎌倉(高齢者クラブ):鎌倉地域の人的ネットワークを広げるための協力を

得たほか、「あかもく丼」開発の協力(試食会のアンケート調査協力)を頂いた。

• 10団体以上と接触。特に深い繋がりがあったのはうち2~3団体。(例)鎌倉の森林を守る団体が鎌倉の木を使って作った、箸・積み木・弁当箱などを販売。

• 漁業組合:カフェで「あかもく丼」を提供するにあたり、仕入れ面で漁業組合の協力を得た。

• 地元主婦:手芸を趣味とする地元主婦の手芸作品をカフェで販売。

連携に至った背景

• 担当教官自身が鎌倉在住であり、現状について課題認識があったほか、主要な関係者と接点があった。

• 観光地化しており、観光資源には多くの投資がなされる一方、公園など、子育て世代の交流の場となる場所が十分に存在していない。

学生主体での取組みであり、各年で必要な地元の協力は学生が自らコネクションを作り、協力を求める

• 学生主体で運営。ゼミ生を運営係・商品開発班・情報発信班の3つに分け、各班に5~6名の学生を配置。

• 地元のNPO・漁業組合等、必要な協力先は学生自身で探し、交渉して協力を取り付けた。• 運営における課題は、学生自身でリストアップし、毎週のゼミ授業の時間で解決方法を議論。教員

は学生のモチベーションを重視しつつ、適宜軌道修正を行う。

B.実践授業の体制

実践授業の事例紹介:20. 立正大学 吉田ゼミ

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効果等

大学の視点 • 充実した実践活動を実現することで、優秀な学生の確保にも貢献できると考える。

• 当該授業の授業内容に魅力を感じ立正大学に入学する学生が、一定数存在(ゼミの定員15名を上回る応募がある)。

• 1人の担当教官への依存が高くなる傾向があり、持続可能な活動としていくためには、今後どう複数の教員で運営していく体制を構築するかが鍵。

• 大学自体のPR効果にも貢献すると考えられるが、“大学の宣伝”の目的意識が強くなると、本来行いたい活動がしづらくなるという問題もある。

学生の視点 • 先生はあまり直接指示をせず、学生主体で取り組むことで、学生が自分のやりたいことを自分で形にしている実感が持てた。

• 運営における課題発見・解決も基本的には学生主体。ただし担当教官が裏側でかなりの調整を実施。

• 実践的に外部と関わる時間が多く取れることに意義を感じる。

• 全般的に学生のモチベーションは高い。

• もともとモチベーションの高い学生が集まる傾向があり、協力的で支え合うことが出来た。

• 活動やゼミの人気が高まると、人気が高いことを理由に参加する学生が、必ずしもモチベーションが高くない、という問題が今後想定される。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 地元としては、世代間の交流が希薄化する中で、よいコミュニケーションの機会になった。

• 高齢者にとっては、若者とコミュニケーションを取ることが生きがいにもつながる。

当該授業の良かった点と改善点

• 学生に任せるスタイルを取ることで、学生が“遣り甲斐がある”と考えていることを、自ら形にする実感を持たせることに成功し、密度の濃い活動となり、大学としても高いPR効果があった。

• 担当教官側の負荷分散・軽減が今後の課題。

C. 実践授業の効果等

実践授業の事例紹介:20. 立正大学 吉田ゼミ

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実践授業概要

• 当初は志賀高原の現地で合宿を行いビジネスプランの提案を行っていたが、「言うは易し」との反省から、「観光地としての志賀高原の方策提案」をテーマに、夏季の志賀高原にて飲食店の運営を学生自身により企画・実施した。

A.実践授業の概要

実践授業概要

大学情報 立教大学 観光学部観光学科

担当教官 庄司貴行教授

対象観光地 志賀高原(長野県下高井郡山ノ内町)

連携先 自治体・省庁 企業 団体

取組み概要 • スキーで有名な志賀高原がスキー人口の減少とバブルの崩壊で通年での収入源確保が課題となっていることを受け、夏の集客につながる施策提案を検討、2010年から夏季限定の飲食店運営の取り組みを開始。

• 学生は2-3年生全員(40名)が参加、夏季休業期間の8月1ヶ月間飲食店を運営。運営期間中、学生はシフト制で志賀高原に泊まり込んだ。

• 飲食店の運営に協力が必要な地元企業・団体は、学生自身で探し、協力のための交渉・契約を実施。レストラン運営では現地のシェフを募集、広報では地元の温泉旅館に協力を仰ぐなど、現地の観光関係者と幅広く接点を持った。

• 秋以降は地元の方と繋がりが出来た学生が自主的に現地のお祭りや行事に参加した。

参加学生の進路(例)

• ホテル、リゾート施設等

↓2013年度の「ガーデンやまのうち」(ランチ付きのワインテイスティングバー)準備・運営の様子

実践授業の事例紹介:21. 立教大学 庄司ゼミ

写真出所:「観光振興を基盤とした持続可能な地域活性化の方策に関する実証的研究」報告書(2013年度立教大学受託研究;立教大学観光学部観光学科 庄司貴行研究室)

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主に大学と連携した観光関連プレイヤー

自治体等 • 長野県下高井郡山ノ内町

企業/団体

• 財団法人和合会(志賀高原の土地所有団体)

• 志賀高原リゾート開発株式会社(和合会が大株主のエリア運営会社。地元行政とは別に協議・交渉主体となる)

• 志賀高原観光協会

• 地元の宿泊施設、飲食店

連携に至った背景

• 和合会のメンバーの方が、大学同期の友人である庄司先生に、バブル後の疲弊した志賀高原の立て直しのアイデアを依頼。

• 当初は、現地で学生による合宿を行い、ビジネスプランの提案のような活動を実施していたが、地元の住民と親しくなるにつれ「言うは易しだ」との指摘を受けるようになり、実際の活動をゼミにて実施しようということになった。

• 志賀高原を実証の場として活用しても良いとの承認をいただき、観光協会と契約書を交わして、夏季期間の観光客もてなしの試行として、2010年からカフェ運営を開始した。

• その後活動が認められ、2012年に長野県下高井郡山ノ内町から補助金を受け活動を継続。

• 運営にあたって協力要請が必要な地元企業等は、学生が各年交渉し、契約を締結した。

実践授業の事例紹介:21. 立教大学 庄司ゼミ

• 現地の主要団体との繋がりをもっている担当教官が、適宜現地の関係者との連絡・調整を行うが、基本的には学生に考えさせ任せつつ、必要に応じてアドバイス等する立ち位置を取った。

• 各年の活動に必要となる協力者とのコネクションづくりは、全て学生自身で実施した。

B.実践授業の体制

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効果等

大学の視点 • 学生の裁量に多くを任せることで、学生の主体性と高いモチベーションを引き出せた。• ただし実際には裏で担当教官が関係者間の調整を行っており、担当教官側の負荷が非常に高いのが課題。

学生の視点 • 「地域活性化」への興味– 地域の良さを、学生という第3者からの目線で発見し、地元の人に伝え、理解してもらう、というプロ

セスを体験できた。– 飲食店運営の活動を通して現地の様々な人を巻き込むことで、夏の終わりには現地の人たちと人間

関係がかなり構築された結果、秋以降にもイベントや祭り、おてんま(温泉の手入れ等の手間のかかる仕事)の手伝いに参加し、観光客視点ではわからない現地の新しい魅力発見にもつながった。

• 複眼的な視点で観光業界を俯瞰できる– 様々な観光プレイヤーと関わることで、就職後に多様なプレイヤーの視点を持った発想が出来るよう

になった。

連携先(自治体等、企業/団体)の視点

• 地域内のインナープロモーション効果– 学生が頑張る姿を見ることで、従来の発想からなかなか離れられない地元関係者へのいい刺激に

なった。• シンクタンクよりも受入のハードルが低い

– 閉鎖的で旧態依然とした地方の観光地では、シンクタンク等の外部者の参加に抵抗を示すことが多いが、学生の活動受け入れは反発が少ない。

– 「学生の実証実験」という名目で行うことで、先進的な取り組みも導入が比較的容易だった。

当該授業の良かった点と改善点

• 学生の地域活性化への興味を高め、観光業界を俯瞰する視点を養うことに加え、受入地域側に刺激を与えることで、地域の観光人材育成にも寄与していると考えられる。

C. 実践授業の効果等

実践授業の事例紹介:21. 立教大学 庄司ゼミ

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1.産学連携による先進的な実践授業の調査

2.先進的な長期インターンシップの調査

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人材育成上の課題

• ポテンシャルのある学生の観光専攻不志望

• インターンシップ不参加

• 観光産業への理解進まず、あるいはネガティブな印象増幅

• 観光産業就職を敬遠

• 観光産業就職後の離職

長期インターンシップが

持つ可能性

:当初は観光業に興味のない学生が観光業に興味を持つきっかけを与える

:将来のキャリア選択への効果を示すことで、学部・学科の魅力を高め、優秀な学生を確保し得る

:成績をインターン参加の要件としたり、インターンを経験した学生が講義に参加したりすることで、講義の活性化につながる

:業務を任せられる期間が長いため、企業が真剣に教育・育成を行うインセンティブが働く

:観光系学部の学生が就職先に求める「社会的意義」や「自分の存在意義」を実感させ、観光産業への就職を促すことができる

:一見不利に見える待遇や労働環境の条件が、やりがいと比べて問題になるレベルかどうかを学生が確認できる

:実践で体感することにより講義内容を深く理解できることに加え、現場社員との交流により、在学中に自分がなすべき事について気付きを得る

:自企業の理解促進とアピールを時間をかけて出来るため、企業にとって効率の良い採用ルートとなり得る

:大学やインターン生との交流から、企業が他社の好事例などを学び、自社の業務環境改善の示唆を得られる

:学生が業務環境をよく理解して就職判断するため、早期離職が抑制できる

留意点・必要と考えられる

アクション

①研修内容の見える化、及び関係者間の共有②大学と企業間でのフィードバックや好事例共有

③学生に伝えるべき“企業・産業の魅力”の再整理、明示

④学生と企業の丁寧なマッチングプロセス構築⑤学生の準備期間の確保(マインドセット含む)

⑥研修期間中のリスク・トラブル管理体制の確保

⑦学生生活の多様性の確保・維持

長期インターンシップが持つ可能性と、留意点・必要と考えられるアクション

入学前

初期 中期 後期

就職後

学生参加前

インターン期間参加後

在学中

対大学

対大学

対学生 対学生

対学生

対学生

対企業

対企業

対企業

対企業

1日~1週間程度のインターンシップと比べて、長期インターンシップは観光産業における実務人材の育成上の課題解決に貢献できる可能性がある。

長期インターンシップの実施により期待される効果

出所:大学の観光系学部学科、及び学生・卒業生・受入企業へのヒアリングとアンケート結果による(サンプリング調査)

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長期インターンシップの留意点・有効と考えられるアクション

リスク 留意点・有効と考えられるアクション 【実施主体: ◎:主、○:副】

長期インターン生が単純労働のみに従事する「人手」とされてしまう可能性

①研修内容の見える化、及び関係者間の共有 【大学◎、企業◎】

• 研修内容を “研修計画”として明文化し、大学と企業間で予め共有するサイクルを構築するほか、企業内でも人事関係者と現場担当者で共有し、企業内での不整合などを回避する

②大学と企業間でのフィードバックや好事例共有 【大学◎、企業〇】

• 実施されたインターンシップについて、大学・学生と企業からそれぞれお互いにフィードバックし合う仕組みを構築するほか、受入企業間でも取組み事例を共有できる交流会等の開催により、企業側に建設的な気付きを与え、産業全体としての水準向上を図る

企業・産業の「負の側面」を経験しマイナスイメージを持ってしまう可能性

③学生に伝えるべき企業・産業の魅力の再整理、明示 【企業◎】

• 下記メッセージを企業側・産業側の関係者間で共有し、学生に繰り返し伝えていく“企業・産業の魅力”(社会的意義、働いて感じられる存在意義)は何か企業・産業が抱える課題を、どのように認識し改善しようとしているのか

様々なトラブルの発生率・深刻度が上がる可能性

④学生と企業の丁寧なマッチングプロセス構築 【大学◎、企業〇】

• 期間が長い分、ミスマッチのダメージも大きくなるため、大学の教員などが一定の時間を使い丁寧にマッチングするプロセスを設定する。

⑤学生のマインドセット含めた準備期間の確保 【大学◎、企業〇】

• インターンシップ開始前に、ある程度の社会人研修や、生活環境を含めた留意点の理解、当該企業に関する理解深化を目的とした事前研修を実施する

⑥研修期間中のリスク・トラブル管理体制の確保 【大学◎、企業◎】

• 長期インターンシップ生の日常的なフォローとトラブル時の対応について、大学側と企業側で明示的な役割分担を行う

学生生活における様々な活動とのトレードオフの可能性

⑦学生生活の多様性の確保・維持 【大学◎、企業〇】

• 長期インターンシップの対象学年や期間等に柔軟性を持たせることなどにより、講義聴講、部活動、アルバイト、就職活動、留学、大学や地域のイベント参加などへの制約の最小化に努める

長期インターンシップには特有のリスクも想定されるため、実施にあたっては以下の点に留意して進めていく必要がある。

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• 3ヶ月間のインターンシップを年2回(前期・後期)実施(選択制)。

• 地元の宿泊施設、エアライン等の民間企業に加え、県庁や観光連盟等の官公庁にも派遣している。

実施しているインターンシップの

特徴

↑インターンシップ経験者である先輩学生との情報交換 ↑研修風景(宿泊施設) ↑インターンシップ研修記録(学生・企業担当者が記入)

長期インターンシップの事例紹介:①熊本学園大学

出所:本事業インタビュー調査(大学・企業・学生/卒業生)

大学の工夫と効果 企業の工夫と効果 学生の感想

• 研修内容をイメージ出来るよう、インターンシップ経験者である先輩学生との情報交換の場を設けている。

• インターンシップ期間中、週に1度登校し、ゼミ教員に対して、日次で記録している研修記録の提出と、インターンシップ先での状況報告を実施している。

• 企業側に対し、事前に研修計画の提出を依頼(来年度以降)。

• 大学と企業の懇談会や、学生のレポート集を企業に送付することにより、他社事例を参考にできるようしている。

• 教育プログラムであることを十分に認識した上で、業務の目的を伝えながら指導したり、学生の習熟度や意欲に応じて担当領域の幅を広げることで、学生が意義を感じられるよう配慮。インターンシップ経験者からの内定者も出ている。

• もともと観光産業にあまり興味は無かったが、インターンシップが2ヶ月ほど経過した頃に、将来の就職先として考え始めるようになった。

• 社員からの指導が非常にポジティブであり、次々に任される業務も増え、非常にやりがいを感じる濃密な時間を過ごすことができた。

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出所:本事業インタビュー調査(大学・企業・学生/卒業生)

↑高校生向けのイベントで紹介 ↑学会でインターンシップの進捗を報告 ↑ホテルでの面接試験

• 2017年度新設の「国際観光学部観光プロフェショナルコース」において、3年間(週3-4回、半日)のインターンシップを実施している(事実上の必修)。

• 宿泊施設や旅行会社、業界関連団体等、約10の事業所に各1~2名の学生を派遣している。

実施しているインターンシップの

特徴

大学の工夫と効果 企業の工夫と効果 学生の感想

• 受入企業の選定にあたっては、教員の人脈を活用し、信頼のおける企業を選定している。

• 週に1度、学生同士がインターンシップ先での状況を共有できる場を設定している。

• インターンシップと通常講義を両立できるようにカリキュラムを構成している。

※ 観光プロフェッショナルコースでのインターンシップは2017年度から開始した取組であるため、効果に関しては今後の議論となる。

• 3年間かけてローテーションを行い、それぞれの部署で経験する業務の意義を明確に設定し、指導日誌を学生に配布することで、学生に学びがあるよう工夫している。

• 企業側にとっても、学生を受け入れることによって、日々の業務の効率化や社員の人材育成力向上といったメリットがみられる。

• 長期インターンシップを経験した学生を、新卒の学生とは異なるプロセスで採用しようと考える企業もある。

• 観光産業に元々興味はなかったが、3年間のインターンシップという珍しさに惹かれて入学した。実際にインターンシップを経験するうち、興味が湧いてきた。

• 大学の講義内容をインターンシップ先でより実践的に理解することが出来ている。

• 当初は学生生活との両立が大変であったが、同じ境遇の仲間と励まし合い、乗り越えることができた。

長期インターンシップの事例紹介:②東洋大学

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↑研修風景(沖縄県・宿泊施設) ↑研修風景(東京都・宿泊施設) ↑研修風景(海外・旅行会社)

出所:本事業インタビュー調査(大学・企業・学生/卒業生)

• 40日程度のインターンシップと5ヶ月程度のインターンシップの2種類を実施している(選択制)。

• 国内の宿泊施設・交通施設等のほか、海外の宿泊施設や旅行会社等の支店に派遣している。

大学の工夫と効果 企業の工夫と効果 学生の感想

• 事前研修を行い、学生に対してインターンシップのマインドセットや生活上の注意、企業研究等を行っている。

• 40日程度と5ヶ月程度の2種類のインターンシップを用意し、学生が選択出来るようにしている。

• 遠隔地での研修も実施しているため、学生に対して定期的な連絡を義務付けたり、インターンシップ担当教員と常に連絡が取り合える体制を構築したりしている。

• 5ヶ月間のインターンシップ期間中、料飲・宿泊の2部門で研修を行っており、学生がホテル全体の業務を俯瞰的に経験することが出来ている。

• 遠隔地であってもトラブルなく円滑なインターンシップを可能にするため、学生に対して勤務面だけでなく、生活面でもサポートにしている。

• 宿泊業にも様々なタイプがあることが理解出来、自分の適性を見極めることができた。

• 現場の社員と話す中で、大学で勉強すべきことがより明確になった。

• 5ヶ月間のインターンシップは、自分にはハードルが高かったため、40日間のインターンシップが選択できたことは良かった。

長期インターンシップの事例紹介:③明海大学

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実施しているインターンシップの

特徴

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長期インターンシップの事例紹介:④沖縄観光コンベンションビューロー(琉球大学)

大学の工夫と効果 受入団体の工夫と効果 学生の感想

• 企業での短期でのインターンシップはアルバイト体験とあまり変わらなくなるとの問題意識のもと、座学と実務をバランスよくこなせる長期インターンシップを企画。

• MICEの誘致から受入まで幅広い業務を扱っているOCVBであれば、学生は企業ネットワーキングのための勉強会や、運営受託を行っている観光施設の運営に係ることで、多面的で有意義な体験ができると考え、実施。

• 大学側は、受入団体側との調整、学生への呼びかけ、フォローアップを担当。

• 9月から最初1週間は座学に加え、MICE現場視察としてMICE関連施設を視察するほか、実際の会議参加を体験。

• その後実務研修として、日替わりで委員会や人材養成講座、ネットワーク部会の業務に参加し、MICEを様々な角度から見ることが出来る体験プログラムを提供。

• 10月からは、OCVBで大きなイベントがある都度、月1回程度参加をするという“通い”モデルに移行、学生が都合に合わせて柔軟に参加できる形を確保している。

• 観光行政に関心があり、大学の座学でのMICE情報だけでは物足りなかったので、またとない機会だった。

• 長期的にOCVBの活動に参加することで、様々な体験が出来、いろんな視点で学べるので貴重な機会だった。

• OCVBは勉強会などで様々な企業との活動があり、観光業界を多面的に理解でき、とても有意義だった。

商談会後の懇談会の準備

←沖縄コンベンションセンターにて「第87回全国民生委員児童委員大会沖縄大会」開催をサポート

←なごアグリパークにて、商談会に参加した海外のバイヤーのお出迎え

出所:本事業インタビュー調査(大学・団体・学生)

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• 2018年度初の取組みとして、沖縄観光コンベンションビューロー(以下OCVB)が、琉球大学観光産業科学部観光科学科の学生を9月から長期受け入れるインターンシップを実施。

• OCVBは9月に約1か月間、学生を業務の現場に参加させ、その後はOCVBでの大きなイベント実施の際に月に1回程度、1月まで参加する長期インターンシップを実施。

実施しているインターンシップの

特徴

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出所:(株)御祓川HP、(株)御祓川森山社長インタビュー

セッションシートを利用した月1回の定期振り返り面談(コーディネーター、学生、企業の3者で実施)→

地域のホテルで受け入れた長期インターンシップ生の中間報告セッション→

大学の工夫と効果 受入団体の工夫と効果 学生の感想

①能登地域企業への長期インターンシップ受入コーディネート

ほとんどのケースで大学の直接の関与はなく、学生が個人的に応募(一部個別の大学から依頼を受けてプログラムを提供)。

【㈱御祓川=コーディネーター】

• コーディネーターは、受入団体の課題発見から、それを解決するためのプロジェクト設計、インターン募集、マッチング、研修、プロジェクト推進、定期面談・フィードバック、キャリアメンタリングまで企業・学生に伴走して支援。

• インターン生には受入団体の定常業務を任せるのではなく、課題解決に取り組ませるよう設計。

– 学生:課題解決力向上、キャリアデザイン等

– 受入団体:新規事業立上げ、人材育成力強化等

• 受入団体の課題について取り組むため、企業側が真剣に学生に向き合ってくれ、遣り甲斐が大きい。

• プロジェクトを進めるための関係者の巻き込み方を学べた。

• 他企業担当のインターンシップ生や地域起業家等と交流することで、自分を客観視しキャリアを考える良いきっかけとなった。

②㈱御祓川自身での長期インターンシップ受入

ほとんどのケースで大学の直接の関与はなく、学生が個人的に応募。

【㈱御祓川=受入団体】

• 学生に㈱御祓川の職員として複数のプロジェクトのコーディネート業務の支援を経験させることで、仕事への理解深耕を網羅的に出来るようにインターンプログラムを設計。

• インターンシップを通して能登が好きになり、ツアーの企画経験で自信を得たことから、能登の旅行会社にIターン就職した。

長期インターンシップの事例紹介:⑤株式会社御祓川

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• 2011年から「能登留学」として長期インターンシップを運営しており、これまで170名以上を実施(1か月と4か月以上のインターンシップを提供)。うち79%が石川県外の学生。

• 地域企業・団体(宿泊施設、工芸品店、食事処、観光系協議会等)の課題解決の現場に、御祓川がコーディネーターとしてインターンシップ生を派遣。自社での直接受入も行う。

実施しているインターンシップの

特徴