手術用ロボット「ダビンチ」による前立腺全摘術の …...2018/01/25 ·...
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発行 岩手県立胆沢病院
編集 広報委員会
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岩手県奥州市水沢区
字龍ケ馬場 6 1
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F A X 0 1 9 7 - 2 4 - 8 1 9 4
平成30年1月25日(木) 岩手県立胆沢病院広報 第 613 号
手術用ロボット「ダビンチ」による前立腺全摘術の現況
平成27年6月に胆沢病院に導入された内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」。同年9月よ
り手術を開始し、週1件〜2件のペースでRALP(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術)を続
け、平成29年8月末までのちょうど2年間で100件に到達することができました。導入当初の
最低限の目標はクリアできたと考えています。
100人の患者さんの平均年齢は67.5歳。腫瘍マーカーPSA(前立腺特異抗原)の平均値は、診
断時8.16ng/mL。胃の手術や肝臓、胆嚢、腎臓の手術、盲腸(虫垂炎)や鼠径ヘルニア手術など
の既往がある方も25人ほど含まれますが、大きな問題なくRALP手術ができました。
RALP手術の平均時間は4時間弱(実際にダビンチを
使っている時間は3時間程度)。同じ前立腺癌の手
術を開腹で行っていた頃は、平均1,390㏄の出血があ
り、95.2%の患者さんで何らかの輸血を行っていまし
たが、RALPでは、平均出血量118.2㏄で、輸血を行った
方は一人もいませんでした。食事再開まで2日、尿
道カテーテル抜去まで7日、入院期間は全部で12日
間、が平均的な経過です。手術の合併症で一部処
置・小手術を要するものもありましたが、重篤なも
のはありませんでした。また、機械の不具合に起因
した合併症は皆無でした。右図のように、広く県南
を中心に患者さんをご紹介いただき、スムーズに導
入ができたものと感謝しております。
平成27年2月24日、胆沢病院へのダビンチ導入が決まった時、達増知事から3つの宿題が出
されました。①ロボット手術の県南センター施設としての役割を果たすこと。②手術件数・
手術成績・経済的収支など、実績を上げること。そして③次世代の医療を担う人材確保や育
成に活用すること。これに関しては、研修医や学生、病院見学者へのアピール、中高生の病
院体験イベントなどで活用する、という形で取り組んでいます。
ダビンチ見学は、院内職員・地元医師会向けに内覧会を開催しているほか、医学部など医
療系学生の病院見学、他院臨床研修医、他医療機関の職員、
中高生の職場体験、知事・市町村長・議員・医療局職員・保
健所職員等の来院時、日程に必ずダビンチ見学を組み、時間
の許す限りダビンチの操作体験を実施しています。ダビンチ
用シミュレーターは、ゲーム感覚でダビンチの操作の練習が
できる機械ですが、見学者みなさんに体験していただくこと
が可能で、「チーム・ダビンチ」メンバーの立会いの下で行
います。また、ダビンチ本体を動かす実機体験も、見学イベ
ントなどの開催時に行っています。 2P目→
RALP手術 は、平成29年8月末までの
2年間で 100件 に到達しました。
≪今後に向けて≫
平成24年度に、国内で初めて前立腺癌手術の健康保険適応が認められ、平成28年度には腎癌
の部分切除術が保険適応となりました。さらに、平成30年度には、胃癌や直腸癌などが保険適
応となる可能性が高いとも言われています。これま
で泌尿器科だけで行われてきたロボット手術が、来
年度は外科など他の領域にも広がり、新しい展開を
見せそうです。また、泌尿器科では、膀胱癌に対す
る膀胱全摘手術も保険適応となる可能性が高まって
きており、今まさに時代が大きく変わってきている
ところだと感じています。県立病院唯一、県南唯一
のダビンチ導入病院として、今後もしっかり取り組
んでいきたいと思います。
副院長兼泌尿器科長 下田 次郎
平成29年11月11日、胆江地域災害医療実地訓練が
開催されました。初めに、訓練にご参加頂いたボラ
ンティアの皆様、訓練にご協力頂いた一関駅・水沢
駅の皆様に厚く御礼申し上げます。
奥州保健所、奥州金ケ崎消防本部等関係各所と春
から数回の話し合いを重ね、各病院における訓練
(情報伝達訓練、傷病者トリアージ訓練など)、JR
水沢駅における傷病者搬送訓練、およびDMAT出動訓練を行うことが決定。
DMATは奥州病院、水沢病院、胆沢病院から派遣することになりました。
当院では、約100名の院内スタッフおよび35名のボランティア(防災みな
み、水沢学苑看護専門学校、国際医療福祉専門学校一関校)に参加して頂
き訓練を施行。13時に訓練放送が入り、頭を災害モードに切り替え。勝又院長=災害対策本部
長の災害宣言を皮切りに、大会議室に災害対策本部を開設。アクションカードを参照に、各本
部員の役割分担を行い、それぞれが仕事を開始しました。今回
の訓練では、クロノロの記載、EMIS入力(Emergency Medical Infor-
mation System:広域災害救急医療情報システム)、診療部門との
連携に重点をおいて頂きました。クロノロ記載は勉強会の参加
をしてくださった方や、雷災害時に実際に活動した事務の方が
いらっしゃったので、かなり見やすいものが記載されていまし
た。EMISには病院の被災状況、受け入れ可能患者数などを登録
する必要がありますが、リアルタイムに更新。診療部門との連
携は伝令・PHS・院内情報共有システムの3つを活用して情報のやりとりができていました。
診療部門では外来診療責任者である外科楠田先生を中心に、各リーダーおよび担当者の指
名、トリアージポストおよび赤・黄・緑の診療エリアを設置。その後、各トリアージポスト・
各診療エリアで模擬患者のトリアージ、診断・治療を行って頂きました。患者一覧表作成、本
部との情報のやりとりに重きを置いて頂き、患者の情報が本部に正確に伝わり、入院・転院搬
送まで進んでいました。実際の災害時は診断・治療にさらに時間がかかるでしょうし、入院や
転院搬送も訓練のようにスムーズにいかない可能性がありますが、今回の訓練が必ず役にたつ
ものと考えています。参加したスタッフの皆様本当にお疲れ様でした。今後ともよろしくお願
いいたします。 災害医療科長 忠地 一輝
見やすいと評価が高かったクロノロ記載
的確なトリアージをするスタッフ
ボランティアや院内スタッフの皆さん、ご参加いただきありがとうございました!
JR水沢駅における傷病者搬送訓練
およびDMAT出動訓練を実施
岩手県立胆沢病院 風と心 第613号
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