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測量現場最前線 SOKURYOU GENBA SAIZENSEN 連載 NO.2 続します。 三脚設置:積雪はないものの,夜間の気温が氷点下とな ることで,地中の水分が凍結し早朝の作業では三脚の石 突きが踏み込めない状態になります。しかし,日中に気 温がプラスに転じると,地面はゆっくり溶け出し,三脚 が傾斜しトータルステーションは,「チルトオーバー」→ 「制限オーバー」となります。このような傾斜を防ぐため, あらかじめ脚杭を設置して三脚の不等沈下による傾きを 防ぎます。 測量鋲設置:寒冷地ではアスファルトが凍り,測量鋲を 打ち込めないことがあります。このようなとき,バー ナーで凍結したアスファルトを温めることで,スムーズ に測量鋲が設置できます。 バッテリー消耗:GNSS測量では長時間観測を行うこ とが多いため,バッテリーを長持ちさせることは重要な 対策となります。静止測量の場合,観測を中断すること はできないため,少しでも長持ちするように,GNSS 受信機本体やバッテリーを携帯カイロなどで保温します。 さらに,GNSS受信機を保冷バッグに入れ,冷たい外 気になるべく触れないようにします。こうした二重の温 度管理により,寒冷地のGNSS観測を行います。 トータルステーションや水準測量では気象補正の影響 を考慮した観測が重要です。 気象補正をお忘れなく! 2月に入り本格的な冬シーズンの到来となりました。今 冬シーズンは早くから各地で積雪の便りが届き,現場最前 線で測量を行う技術者にとっては,辛い季節となります。 普段,積雪のない地域で測量を行っている技術者に とって,積雪時の測量は想像以上の手間と時間を要する 現場となります。そこで今回は,寒冷地,積雪地での測 量作業を行う測量技術者から,冬の装備や工夫,留意点 に関するアドバイスを紹介します。 わずか2cmの積雪で,測量ポイントを見失い測量作 業は極端に苦労します。まず,降雪予報が出たら,「基 準点」や「測点」など,重要な測量ポイントには高めの目 印ポール(測量ポール,リボン棒など)をポイントの近く に設置しておきます。 次に,重要な測量ポイントを道路上へ設置する場合は, 重機による除雪で飛ばされないよう工夫が必要です。降 雪地域ではアスファルト上面を軽くザグリ,深く打ち込 むことで,亡失のリスクを回避しています。 気温の低下による弊害は多く,寒冷地では想定外が連 本格的な冬シーズン到来 積雪前の準備 寒冷地の工夫 冬の測量支度…… 脚杭の設置は,軟弱地盤以 外にも寒冷地でも有効な方 法! 除雪車による亡失 道路面より下げる事で亡失リスクを回避 18 THE JOURNAL OF SURVEY 測量 2013.2

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  • 測量現場最前線SOKURYOU GENBA SAIZENSEN

    測量現場最前線

    連載 NO.2

    続します。三脚設置:積雪はないものの,夜間の気温が氷点下となることで,地中の水分が凍結し早朝の作業では三脚の石突きが踏み込めない状態になります。しかし,日中に気温がプラスに転じると,地面はゆっくり溶け出し,三脚が傾斜しトータルステーションは,「チルトオーバー」→「制限オーバー」となります。このような傾斜を防ぐため,あらかじめ脚杭を設置して三脚の不等沈下による傾きを防ぎます。

    測量鋲設置:寒冷地ではアスファルトが凍り,測量鋲を打ち込めないことがあります。このようなとき,バーナーで凍結したアスファルトを温めることで,スムーズに測量鋲が設置できます。バッテリー消耗:GNSS測量では長時間観測を行うことが多いため,バッテリーを長持ちさせることは重要な対策となります。静止測量の場合,観測を中断することはできないため,少しでも長持ちするように,GNSS受信機本体やバッテリーを携帯カイロなどで保温します。さらに,GNSS受信機を保冷バッグに入れ,冷たい外気になるべく触れないようにします。こうした二重の温度管理により,寒冷地のGNSS観測を行います。

     トータルステーションや水準測量では気象補正の影響を考慮した観測が重要です。

    気象補正をお忘れなく!

     2月に入り本格的な冬シーズンの到来となりました。今冬シーズンは早くから各地で積雪の便りが届き,現場最前線で測量を行う技術者にとっては,辛い季節となります。 普段,積雪のない地域で測量を行っている技術者にとって,積雪時の測量は想像以上の手間と時間を要する現場となります。そこで今回は,寒冷地,積雪地での測量作業を行う測量技術者から,冬の装備や工夫,留意点に関するアドバイスを紹介します。

     わずか2cmの積雪で,測量ポイントを見失い測量作業は極端に苦労します。まず,降雪予報が出たら,「基準点」や「測点」など,重要な測量ポイントには高めの目印ポール(測量ポール,リボン棒など)をポイントの近くに設置しておきます。 次に,重要な測量ポイントを道路上へ設置する場合は,重機による除雪で飛ばされないよう工夫が必要です。降雪地域ではアスファルト上面を軽くザグリ,深く打ち込むことで,亡失のリスクを回避しています。

     気温の低下による弊害は多く,寒冷地では想定外が連

    本格的な冬シーズン到来

    積雪前の準備

    寒冷地の工夫

    冬の測量支度……

    脚杭の設置は,軟弱地盤以外にも寒冷地でも有効な方法!

    除雪車による亡失

    道路面より下げる事で亡失リスクを回避

    18 THE JOURNAL OF SURVEY 測量 2013.2

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  • 測量現場最前線SOKURYOU GENBA SAIZENSEN

    測量現場最前線測量現場最前線

    連載 NO.2

     気象補正式は機器ごとに与えられていますが,例えば測距儀の場合,

    X(ppm)=278.96- 0.3872・(P気圧)1+0.003661・(t気温)

    この器械では,・気圧:1000mmHg ・測距:100m・気温:-10° ・補正量:約1cm *図解測量学概論:吉澤孝和より また,気温による補正として標尺の膨張係数の影響も忘れてはいけません。特に,簡単で便利なアルミ標尺の膨張係数は大きく,-5°で2mmの伸縮補正を必要とする場合があります。

     冬季の測量作業は観測者の負担も大きいため,観測者の防寒対策と安全対策も忘れてはいけません。 ・防寒着(なるべく目立つ色) ・インナーシャツ,タイツ ・防寒ソックス ・携帯カイロ ・寒冷地仕様手袋 ・防寒長靴(スパイク仕様) ・毛糸の帽子 ・かんじき

    冬の装備品

     ・アルミ三脚天板とプリズム台座が,凍りつき外れなくなる。

     ・ケーブル類が,寒さで硬くなり無理な配線による断線。

     ・降雪の時,GNSSアンテナの積雪による精度低下。 ・標尺底面に雪が付着し制限オーバー。

     積雪地,寒冷地では事前準備を確実に行っても,防げないトラブルが発生します。冬季測量現場では、工程に余裕のある測量計画の立案と安全を優先し,作業員,機材の防寒対策を行い,観測を行っていただきたいと思います。*道路上への測量鋲設置に伴うザグリは,道路管理者の許認可を取得した上で,行ってください。*機材の保温についてはメーカー,販売店に確認した上で行ってください。

    【協 力】秋吉誉治:ランドシステム有限会社荒 信三:株式会社ハイデックス・和島西本憲正:株式会社日本海コンサルタント矢口雅宏:株式会社十日町測量� (中日本航空株式会社:鵜飼尚弘)

    寒冷地の失敗談

    冬季作業にあたり

    カイロと保冷バッグによる二重の温度管理

    外気を遮断

    全身の保温 足元の保温

    首元の保温

    携帯カイロ

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