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高真空の計測が可能な マイクロ真空計 立命館大学 理工学部 マイクロ機械システム工学科 教授 木股 雅章 1

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Page 1: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

高真空の計測が可能なマイクロ真空計

立命館大学 理工学部

マイクロ機械システム工学科

教授 木股 雅章

1

Page 2: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

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内 容

✔ 研究の背景と目的

✔ 赤外線センサと真空封止

✔ 従来のマイクロ真空計とその問題点

✔ 新技術によるマイクロ真空計とその特徴

✔ 想定する応用分野

✔ 実用化に向けた課題

✔ 企業への期待

Page 3: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

・「安全・安心・省エネ」を実現するキー・デバイスとしての赤外線センサへの期待が増大

・MEMS技術を利用した非冷却赤外線イメージセンサの

小型化/高性能化が進展・新しい市場を目指した小規模非冷却赤外線アレイセンサの開発がスタート

研究の背景と目的

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非冷却赤外線イメージセンサ/非冷却赤外線アレイセンサの普及には

真空パッケージング技術の生産性向上/低コスト化が不可欠

真空パッケージング技術の評価手法が未完成

Page 4: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

何故赤外線センサに『真空封止』が必要か?

空気を通して逃げる熱

構造体を通して逃げる熱

基板

温度センサ

赤外線

真空封止

大気を通した熱放散を阻止

温度変化増大

感度向上

赤外線センサは赤外線エネルギーを熱に変え温度変化を計測することで

光を検出

真空封止で赤外線センサの感度を10倍向上させることも可能!!!

赤外線センサの感度と真空封止①

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Page 5: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

圧力(対数軸)

感度

(リニア軸

熱損失が構造体の熱コンダクタンスで決まる領域

気体の分子の平均自由行程が構造体空隙より長くなり熱損失が気体分子密度に依存する領域

気体の分子の平均自由行程が短く気体の熱伝導率が一定とみなせる領域

熱コンダクタンスの小さいMEMS赤外線センサ真空封止が感度改善に大きく寄与

熱コンダクタンスの大きいMEMS以前の赤外線センサ構造体を通した熱伝導が支配的で真空封止の効果小

非冷却赤外線イメージセンサの感度の真空度依存性

Support Leg

Detector

Si ROIC

Ferroelectric

Metal Bump

OrganicMesa

赤外線センサの感度と真空封止②

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Page 6: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

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小さなセンサで十分な感度

赤外線

出力

赤外線

出力

低感度高感度

ウエハ

センサチップ

画素

信号処理回路

小型化 レンズ、システムが小型化できる。

低コスト化 1枚のウエハからたくさんとれる。

高感度化レンズ

センサパッケージ赤外線窓

レンズ一体型パッケージ

アレイ化 画素を小さくでき、アレイ化できる。

真空封止による高感度化がもたらす効果

Page 7: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

(1)一定面積に働く力を計測・計測範囲は、低真空〜中真空領域

(2)分子密度を計測・温度が一定であれば、圧力は分子数に比例・計測範囲は、中真空〜高真空領域・加速した電子で気体分子をイオン化し、イオン電流を計測・マイクロデバイスでも強電界による電子放出は可能で、原理的には実現可能

(3)気体の性質の圧力依存性を利用・気体を通した熱量の伝達、気体の粘性の利用が可能・計測範囲は、中真空領域・熱伝導方式は、マイクロ化も容易

赤外線センサへの集積化は熱伝導方式を最適

計測圧力範囲、赤外線センサ製造プロセスとの互換性

真空度の計測方法

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Page 8: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

構造体を通した熱伝導 気体を通した熱伝導 熱輻射

基板(ヒートシンク)

ヒータ

空洞

浮遊構造体

配線/支持構造

配線/支持構造熱電対/支持構造

熱伝導型マイクロ真空計の構造

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Page 9: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

構造体を通した熱伝導と熱輻射により伝達される熱量

圧力(対数軸)

ヒータに印

加する電

力=

伝達

され

る熱

分子流領域 粘性流領域

熱伝導型マイクロ真空計の動作

電源 –+

+

CONTROL

定温駆動計測可能圧力範囲

(対数軸)

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Page 10: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

浮遊構造体の面積→大気を通した熱伝導による熱量の伝達→輻射による熱量の伝達

配線&熱電対の長さ→構造体を通した熱伝導による熱量の伝達

空洞の深さ→粘性流から分子流に移る圧力

温度センサ種類→製造プロセス→計測精度

熱伝導型マイクロ真空計の設計

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Page 11: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

基板(ヒートシンク)

Poly-Siヒータ

空洞

熱電対Al/支持構造Al配線/支持構造

Al配線/支持構造浮遊構造

熱電対Poly-Si/支持構造

熱伝導型マイクロ真空計の例

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100 μm

Page 12: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

圧力(対数軸)

真空計出力

赤外

線センサ

感度

(対数軸)

従来技術の問題点

計測可能圧力範囲

真空度劣化

封止圧力

問題点赤外線センサの感度劣化が観測されるまで真空度の劣化を検出できない。

構造体を通した熱伝導で決まる計測下限

構造体を通した熱伝導の低減効果

熱輻射で決まる計測下限(原理的な限界)

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Page 13: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

気体を通した熱伝導 熱輻射

基板(ヒートシンク)

ヒータ

空洞配線/支持構造

配線/支持構造

熱電対/支持構造

新技術によるマイクロ真空計の構造①

放射率の低い材料で作製した浮遊構造体

表面だけでも可

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Page 14: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

気体を通した熱伝導 熱輻射

基板(ヒートシンク)

ヒータ

空洞

赤外線透過率の高い材料で作製した浮遊構造体

配線/支持構造

配線/支持構造

熱電対/支持構造

新技術によるマイクロ真空計の構造②

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Page 15: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

圧力(対数軸)

従来技術と新技術の真空計出力

赤外

線センサ

感度

(対数軸)

新技術の効果

真空度劣化

計測範囲拡大従来技術の計測可能範囲

輻射低減による伝達熱量減少効果

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Page 16: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

✔熱伝導方式のマイクロ真空計では最も低い圧力の計測が可能

✔CMOS LSI互換プロセスで製造が可能(低コスト、大量生産)

✔従来の真空計の1/100〜1/1000サイズの超小型化を実現

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新技術の特徴

従来の真空計のサイズ

10-2 10-1 100 101 102 103 105104

新技術で目標とする計測範囲

ピラニ真空計

キャパシタンスマノメータ

電離真空計

真空度Pa

マイクロ真空計のサイズ

Page 17: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

想定される用途

■真空封止MEMSデバイスなどの信頼性評価、自己診断

■微小空間の真空度測定

■従来真空計の置き換え

赤外線窓 パッケージ

赤外線センサ 真空計

真空

赤外線窓 パッケージ

赤外線センサ 真空計

真空

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Page 18: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

想定される業界

■ 電子デバイスメーカ赤外線センサ、慣性センサ、圧力センサ、RF MEMSデバイスなどの

真空封止信頼性保証と自己診断機能付加

■ 電子デバイス実装受託加工メーカ受託加工の仕様を保証するための製品検査、信頼性試験

■ 電子デバイス用部品メーカ真空パケージ用部品の性能保証、信頼性検証

■ 真空機器メーカ既存真空計の置き換え、微小空間の真空計測による新規市場の開拓

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Page 19: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

実用化に向けた課題

✔ 本特許の構造を従来のCMOSプロセスにバルクマイクロマシニング技術を付加して作製する技術は開発済み。製造プロセスに関する問題はない。

✔ 本特許によるマイクロ真空計と従来のマイクロ真空計の性能比較は現在実施中。

✔ 現状では、全てのマイクロ真空計を1個ずつ校正しており、校正にかかる手間が大。信頼性試験に使用するためには、スループットの高い簡便な校正手法の確立が不可欠。

✔ 製品形態が、独立した真空計となる場合は、壊れやすいMEMSデバイスであることを考慮した実装技術の開発が必要。

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Page 20: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

企業への期待

✔ 真空パッケージングの信頼性評価に関する

共同研究等の実施

✔ 真空計の校正に関する技術協力

✔ 赤外線センサ以外の真空パッケージングデバイス

に関する技術情報の提供

✔ 単体真空計製品のパッケージング技術の共同開発

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Page 21: 高真空の計測が可能な マイクロ真空計 - JST...従来のマイクロ真空計とその問題点 新技術によるマイクロ真空計とその特徴 想定する応用分野

本技術に関する知的財産権

•発明の名称 :マイクロ真空計

•出願番号 :特願2008-021826

•出願人 :学校法人立命館

•発明者 :木股雅章

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お問い合わせ先

立命館大学

理工リサーチオフィス

近藤 光行

TEL: 077-561-2802(ext.6550)FAX: 077-561-2811 E-mail: [email protected]

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