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- 学級経 1- 人間関係づくりを基礎としたあたたかい学級集団づくり hyper-QU の分析結果を効果的に活用した授業デザインの提案- 学級経営充実班 桐生市立川内小学校 北澄 弘貴 桐生市立新里東小学校 金井 美季 あらまし 本研究では、「あたたかい学級集団づくり」を目指して hyper-QU の活用に着目する。 hyper-QU の分析結果から明らかになった学級集団の課題について、日々の授業を通 して、児童の自己有用感をはぐくむことが「やる気のある、居心地のよい学級集団づ くり」に有効であることを、授業実践を通して明らかにする。 主題設定の理由 昨今の学校現場において、いじめや不登校などが大きな社会問題となっている。文部科 学省は、いじめ防止等のための基本的な方針を示し、社会性や規範意識、思いやりなどの 豊かな心を育むため、学校の教育活動全体を通じた教育の推進が示されている。さらに、 不登校の対応のあり方では、自己理解を深め、社会性の育成や人間関係づくりを目指した 様々な取組が求められている。いじめや不登校といった問題は、人間関係に関する問題で あり、学級の集団づくりの重要性が求められ、児童生徒の自己有用感を育むことが必要で ある。 また群馬県教育委員会は、児童生徒の現状を踏まえ、学校教育の指針(解説)の中で、 人間関係づくりとして自己有用感をはぐくむことが必要であると述べている。自己有用感 をはぐくむためには、生徒指導の3つの機能である、児童生徒に「自己存在感を与えるこ と」「共感的な人間関係の育成」「自己決定の場を与えること」を生かした教育活動が必 要であるとしている。 さらに桐生市教育委員会は、桐生市教育大綱の中で、「桐生を好きな子供の育成」を掲 げ、「人を思いやる心やものを大切にする心を育む事業」を推進している。重点施策とし て、平成27年度に hyper-QU が導入され、学級経営のさらなる充実、児童生徒理解の促 進やいじめ防止、不登校児童生徒へのきめ細かな配慮等に活用が臨まれている。しかし、 hyper-QU の効果的な活用についての実践的な研究は多くされていない。hyper-QU の効果 的な活用について、特別活動や道徳の時間での実践が考えられるが、小学校における教科 指導において実践されることが効果的であると考える。 そこで本研究では、人間関係づくりを目指し、hyper-QU の効果的な活用について、小 学校における教科指導に着目し、自己有用感をはぐくむ授業実践を通して、やる気のある 居心地のよい学級集団の育成を目的とする。

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- 学級経 1 -

人間関係づくりを基礎としたあたたかい学級集団づくり

- hyper-QUの分析結果を効果的に活用した授業デザインの提案-

学級経営充実班

桐生市立川内小学校 北澄 弘貴

桐生市立新里東小学校 金井 美季

あらまし

本研究では、「あたたかい学級集団づくり」を目指して hyper-QUの活用に着目する。hyper-QU の分析結果から明らかになった学級集団の課題について、日々の授業を通して、児童の自己有用感をはぐくむことが「やる気のある、居心地のよい学級集団づ

くり」に有効であることを、授業実践を通して明らかにする。

Ⅰ 主題設定の理由

昨今の学校現場において、いじめや不登校などが大きな社会問題となっている。文部科

学省は、いじめ防止等のための基本的な方針を示し、社会性や規範意識、思いやりなどの

豊かな心を育むため、学校の教育活動全体を通じた教育の推進が示されている。さらに、

不登校の対応のあり方では、自己理解を深め、社会性の育成や人間関係づくりを目指した

様々な取組が求められている。いじめや不登校といった問題は、人間関係に関する問題で

あり、学級の集団づくりの重要性が求められ、児童生徒の自己有用感を育むことが必要で

ある。

また群馬県教育委員会は、児童生徒の現状を踏まえ、学校教育の指針(解説)の中で、

人間関係づくりとして自己有用感をはぐくむことが必要であると述べている。自己有用感

をはぐくむためには、生徒指導の3つの機能である、児童生徒に「自己存在感を与えるこ

と」「共感的な人間関係の育成」「自己決定の場を与えること」を生かした教育活動が必

要であるとしている。

さらに桐生市教育委員会は、桐生市教育大綱の中で、「桐生を好きな子供の育成」を掲

げ、「人を思いやる心やものを大切にする心を育む事業」を推進している。重点施策とし

て、平成27年度に hyper-QU が導入され、学級経営のさらなる充実、児童生徒理解の促進やいじめ防止、不登校児童生徒へのきめ細かな配慮等に活用が臨まれている。しかし、

hyper-QU の効果的な活用についての実践的な研究は多くされていない。hyper-QU の効果的な活用について、特別活動や道徳の時間での実践が考えられるが、小学校における教科

指導において実践されることが効果的であると考える。

そこで本研究では、人間関係づくりを目指し、hyper-QU の効果的な活用について、小学校における教科指導に着目し、自己有用感をはぐくむ授業実践を通して、やる気のある

居心地のよい学級集団の育成を目的とする。

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- 学級経 2 -

Ⅱ 研究のねらい

hyper-QU の分析結果から学級の実態把握を詳細に行い、自己有用感をはぐくむ授業実践を通して、やる気のある居心地のよい学級集団を育成する。

Ⅲ 研究の見通し

hyper-QU の結果を分析・活用し、日々の授業実践において、教師の声かけを含む授業構想、年間を見通した教科経営を通して、児童の自己有用感をはぐくむ手立てや工夫を行

うことで、児童一人一人にとって「やる気のある居心地のよい学級集団づくり」を行うこ

とができるだろう。

Ⅳ 研究内容と方法

1 研究計画

1学期 ○研究課題の確認

○研究主題・サブテーマの検討

○主題設定の理由・研究のねらい・研究計画の検討

○ hyper-QUの1回目実施(5月)○ hyper-QUについての結果分析について○主題検討会

2学期 ○中間検討会

○検証方法の検討(質問紙調査、インタビュー調査)

○自己有用感をはぐくむ授業の指導案検討および作成

○授業実践

○授業検討会・草案検討会

○ hyper-QUの2回目実施(11月)○調査結果からの考察

3学期 ○実践における成果と課題の検討

○紀要原稿の作成

○紀要原稿のまとめ

2 基本的な考え方

(1)自己有用感をはぐくむ授業デザインについて

自己有用感をはぐくむ授業デザインは、個と集団に視点を当て、さらに、生徒指導の3

つの機能である「自己存在感を与える」、「共感的な人間関係の育成」、「自己決定の場を

与える」から手立てを行うこととする。

個別への手立ては、児童生徒の実態を十分に把握し、授業中における声かけを行い、「自

己存在感を与える」、「自己決定の場を与える」手立てから自己有用感をはぐくむ。具体

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- 学級経 3 -

的には、得意な教科や身についている知識や技能を把握し、授業中で活躍できる場を設定

したり、「文字が丁寧であること」や「問題解決できたこと」、「考える視点がよい」など

些細なことでも賞賛する。

集団への手立ては、各教科の特性や学習内容に応じて、「共感的な人間関係の育成」か

ら、自己有用感をはぐくむ。交流のさせ方や他者との関わり方を伸ばし、個を配慮するこ

とを意識させ、集団として共に問題解決することを集団にはたらきかけることを支援する。

具体的には、次の表に示す。

交流の 他者との関わり 個への配慮

させ方

ペア ○教師が「□□がすごいね」と具体的に声をかけ ○つまづいている子

たり拍手することでモデルを示し、自己の思いや に対し、話を聞き、

考えに自信をもたせる。友だちに安心して表現さ 一緒に考え、手伝う

せる。 など助言する。

グループ ○教師がそれぞれの思いや考えについて比較・検 ○グループ内ででき

討させ、それぞれのよさを認め合う活動を通して、 そうな役割を与える

グループ内での関わりに自信をもたせる。 など助言する。

学級 ○個やグループの思いや考えを大事にし、めあて ○課題解決に向けて

に応じて思いや考えのよさをいかして振り返るこ 数人で援助するよう

とを通して、学級全体で協力して解決させる。 助言する。

(2)やる気のある、居心地のよい学級集団について

○やる気のある学級集団について次のように定義し、学級集団のルールづくりを手立て

として支援する。

・互いに競い合いながら、高め合うことができる集団。

・主体的に自分の考えや思いを表現し合い、学習内容を深めることができる集団。

○居心地のよい学級集団について、次のように定義し、リレーションシップづくりを手

立てとして支援する。

・安心して自分の考えや思いを表現し合い、互いを認め合える集団。

・「すごい」など互いを賞賛し合い、「一緒にがんばろう」と励まし、助け合うことが

できる集団。

3 検証方法

検証・分析は、次の2点から実施する。① hyper-QU を事前(5月)と事後(11月)に実施し、児童の変容について検証する。② hyper-QU における変容した児童について、

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- 学級経 4 -

自己有用感をはぐくむ授業デザインのどのような手立てが有効であったか分析する。

検証は、hyper-QU の学級満足度尺度結果を活用し、被侵害得点、承認得点それぞれの変容について行う。また、児童へのインタビュー結果を用いて分析する。

4 学級集団の実態

(1)川内小5年2組の実態 (hyper-QU5月実施の結果より)○集団全体(人:男・女)

学級生活満足群(10:8・2) 非承認群(5:2・3)

侵害行為認知群(3:1・2) 学級生活不満足群(6:5・1)

要支援群(3:1・2)

表1 学級満足度尺度 結果のまとめ(川内小)

○学級< hyper-QUの所見>・学級満足度尺度における承認得点と被侵害得点の分布から、本学級の子どもたちが、満足できている子どもたちと、そうでない子どもたちとに、大きく分離してしまっていることが想定される。不満足感の強い子どもたちは学級内で不適応感が強く、ストレスが高まっている。教師や友だちから認められているという思いや自分らしく活動できる・したいという意欲が著しく低く、学級内で建設的に活動・生活できない心理状態になっていることが想定される。・今後の学級経営方針としては、この状況を意識した取り組みを行っていく必要がある。対応の骨子は二つある。一つは、学級生活や活動に取り組む意欲が低下し、被建設的な行動をしている子どもたちへの個別対応である。心情面にそった対応が望まれる。もう一つは、学級全体への一斉指導の工夫である。学級内のルールの定着度が低下し、子どもたちの人間関係の軋轢やトラブルがしばしば発生することにより、学級全体での一斉の活動に支障をきたすことも考えられる。そこで、一つの活動を簡単なルールのもとで短めに展開する、承認得点が低い子どもたちが認められる場面を意識して設定する、などの対応が必要。<担任の所見>・本学級の実態として、hyper-QU の所見にあるように、学級全体が二分していることがあげられる。学級内の人数が、男子17名・女子10名であることから、男子の意見が強い。また、高学年となり思春期に入り始めたと見られる子どもが多く、同姓の結束力が強くなり、男女間でぶつかることが多い。そのことから、特に女子の満足群の人数が少なくなっている

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- 学級経 5 -

と考えられる。しかし、単純に、男女で二分しているわけではない。男女間でのトラブルはほとんどが個々であり、男子と女子が全体で衝突しているわけではない。・また、クラスの中で意見主張ができる子どもとおとなしい子どもで、二分していると考えられる。男女間の衝突のほとんどが学級内で意見主張できる目立っている子どもであることが多い。学級満足度尺度の分布図を考察すると、普段目立っている子どもは、比較的満足群にいることが多く、目立つことが少ない子どもは、非承認群、非承認群に近い不満足群に分布している。・今後の学級経営方針としては、まず授業で、多くの子どもが活躍できるような場面を設定する。例えば、簡単な活動を授業の導入で取り入れるなど、低位の子どもが意欲的に参加しやすいような工夫をすることである。また、係活動を一人一係とし、責任の所在を明確にして取り組ませたり、個別の声かけを増やしていったりするなど、授業以外でも子どもの自己有用感を育むための工夫をしていく。

(2)新里東小6年2組の実態 (hyper-QU5月実施の結果より)○集団全体(30人:男13人・女17人)※女1名未実施

学級生活満足群(17:6:11) 非承認群(7:2:5)

侵害行為認知群(0:0:0) 学級生活不満足群(4:4:0)

要支援群(1:1:0)

2 学級満足度尺度 結果のまとめ(新里東小)

○学級< hyper-QUの所見>・本学級の結果を全国的な傾向と比較すると、被侵害得点は全体的に低く、学級内に大きなトラブルは少ないようだ。学級内のルールや行動規範がほとんどの子どもたちに共有されていると考えられる。しかし、承認得点には差が見られ、学級内で認められていて意欲的に活動できている子どもと、そうでない子どもとが明確に分かれていることが考えられる。<担任の所見>・本学級の児童は、男女の仲が良く、大きなトラブルはほとんど見られない。しかし、係の仕事の様子を見ると、進んで取り組む児童とそうでない児童の差が大きい。また、学習の様子を見ても、挙手をして積極的に発言をする児童や自主学習をしてくる児童はほとんど決まっていて、全員が活躍することはできていない。

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- 学級経 6 -

Ⅴ 研究の実践

1 桐生市立川内小学校 5年生社会科の実践

平成28年11月1日(火)第3校時 5年2組教室

(1)単元(題材)名 わたしたちの生活と工業生産

小単元名 自動車をつくる工業

(2)単元(題材)の目標

自動車をつくる工業を通して、日本の工業生産について意欲的に調べ、自動車産業に従

事している人々の工夫や努力、工業生産を支える貿易や運輸などの働きを理解するととも

に、国民生活を支える日本の工業生産の発展について考えようとする。

(3)学習(指導と評価の)計画(全7時間予定)

過 時 学習活動 指導上の留意点及び支援 評価項目程 ◎ hyper-QU の不満足群・非承認

群への支援 関 思 技 知

見 1 ・自動車には、どんなメー ◎知っている日本や世界の自動 ○通 カーや車種があるのかを知 車メーカーを書く活動を通して、し る。 取り組んだことを褒める。を ・日本の自動車が、国内や ・日本では、多種多様な自動車も 海外でたくさん売れている が数多く生産されていることをつ 理由を考える。 おさえ、日本の自動車が国内外

で多くの需要があることに気づかせる。

追 1 ・日本の自動車メーカーや ◎導入で、自動車メーカーの売 ○ ○求 工場がある場所を知る。 り上げベスト3クイズを取り入す ・愛知県豊田市のトヨタ自 れることで、学習への意欲を高る 動車について調べる。 める。

・自動車がどのように作ら ・グラフや地図を提示することれているのかいるのかを予 で、資料をもとに自動車産業が想し、学習の見通しをもつ。 さかんな地域を捉えることがで

きるようにする。

1 ・自動車ができるまでの過 ・写真や映像資料を活用するこ ○ ○程や作業上の工夫について とで、興味・関心を高める。調べる。

1 ・自動車の関連工場につい ・ジャストインタイム方式の利 ○て調べる。 点や欠点を話し合わせることで

組み立て工場と関連工場が密接につながっていることに気づかせる。◎話し合う活動では、机間指導をし、グループ内で積極的に参加できるように促す。

1 ・自動車の輸出や現地生産 ・日本からの輸出と海外での現 ○について調べる。 地生産を比較させることで、そ

れぞれのよさに気づかせる。

深 1 ・環境、安全、福祉に配慮 ・自動車生産について、環境、 ○め した自動車作りについて調 安全、福祉など多くの視点から

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- 学級経 7 -

る べる。 考えさせることで、自動車産業が様々なニーズに応えていることに気づかせる。

1 ・これまでに学習したこと ・これまで学習したことを振り ○(

を振り返る。 返ることで、学んだことを生か本 ・学習したことを生かして、 して自分の考えを表現すること時 未来の自動車を考え、発表 ができるようにする。)

する。 ◎付箋紙を用いて感想を交換させることで、自分や友だちの考えのよさを視覚的に共有させ、自分の考えに自信をもたせる。◎話し合う活動では、机間指導をし、グループ内で積極的に参加できるように促す。◎全体交流の場で、友だちの発表のよさを発言させることで、学級全体で考えを深め合えるようにする。

(4)本時

①ねらい

日本の自動車生産のよさについて調べたことをもとに、社会や消費者のニーズに応え

た未来の自動車を考えワークシートにまとめ、広げることができる。

②授業改善の視点

グループの中で付箋紙を用いて交流させたことは、友だち同士で考えを深め合うこと

に有効であったか。

③準備 ICT機器(ipad、スクリーン、プロジェクター、実物投影機)付箋、ワークシート、振り返りシート、磁石

④展開

学習活動 時 指導 指導上の留意点及び支援・評価・予想される児童の 間 形態 ◎努力を要する児童への支援 ◇評価反応 ● hyper-QUの不満足群・非承認群への支援

1いろいろな自動車 10 一斉 ・スライドを用いて、様々な自動車を例示し、環境や安があることを確認す 分 全など、様々な分野に配慮した自動車があることを確認る。 することができるようにする。

・昔の車を提示することで、長い期間をかけて自動車工業の技術が進歩してきたことに気づかせる。

視点をもって未来の自動車を提案しよう。

2自分が考えた自動 15 個人 ・何に配慮した自動車なのかを明確にさせることで、こ車をワークシートに 分 れまでの学習を生かせるようにする。まとめ交流する。 ・イラストは自動車の一部でもよいことを伝え、簡単に⑴ワークシートにま 書かせる。とめる。 ◎定型文(「私は○○という名前の自動車を考えました。

特ちょうは、△△です。」「私は、○○に配りょした自動

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- 学級経 8 -

車を考えました。特ちょうは、△△です。」)を提示することで、考えた自動車の特徴を簡潔に説明することができるようにする。◎期間指導で児童のアイデアを褒める声かけをすることで、自信をもって友だちと交流することができるようにする。

⑵グループで交流す 10 生活 ・発表を聞いた 児童に、付箋を用いて 一言感想を書かる。 分 班 せ、発表者のワークシートに貼らせることで、児童が互

いに褒め合えるようにする。◎発表の付箋に書かせる定型文(○○ がいいね!○○がすごい!)を提示することで、短時間で感想を書けるようにする。●話し合う活動では、机間指導をし、グループ内で積極的に参加できるように促す。◇【思考・判断・表現】日本の自動車生産のよさについて調べたことをもと

に、社会や消費者のニーズに応えた未来の自動車を考えワークシートにまとめ、広げることができる。

3本時のまとめをす 10 一斉 ・全体の中で、友だちの発表のよさを別の児童に発言さる。 分 せたり、共通点や違いを探させることで、学級全体で考⑴ワークシートを黒 えを深め合えるようにする。板に貼り、発表する。 ・児童が書いた付箋の内容を紹介し、友だちのよさを見

つけていることを褒める。⑵本時の振り返りを ・友だちの考えから、環境や安全、性能、値段など、様する。 々な分野に配慮した自動車が求められていることをおさ

える。

⑤QU授業の様子

授業の成果として、まず、導入においてスライドを用いて写真を提示し、これまで学習

したことを振り返ったことで、意欲的に活動に取り組む様子が見られた。また、スクリー

ンに作業する内容や定型文などを大きく示したことで、全員がワークシートの自分で考え

た自動車の説明を書くことができた。グループ交流において付箋を用いたことで、友だち

からのコメントを視覚的に残すことができた。授業の課題として、全体でまとめる際に、

黒板に児童のワークシートを貼り、実物投影機を用いて、何名かの児童のワークシートを

写し出し、よいところなどを他の児童に発言させたが、時間も短く、深まりが浅かったよ

うに思われる。

図3 生活班で発表し合う 図4 全体で発表し合い共有した

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- 学級経 9 -

(5)結果

① hyper-QUの比較とインタビュー結果5月の実施結果と11月の実施結果を比較し、児童の変化について、以下の表にまとめ

る。

②被侵害得点について

○被侵害得点の変化

得点変化 -4以下 -3~-2 -1~+1 +2~+3 +4以上

人数 6人 4人 7人 6人 3人

○+4以上の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・1学期よりも男子とのトラブルが減った。友だちとケンカをしなくなった。

・友だちがすごいアイデアを考えていてすごかった。

・テレビの画面に、自分のプリントが写ってうれしかった。

○授業のようす

・1学期よりも集中して取り組むようになり、わからない問題を後で教師へ質問に来るよ

うになった。

・授業中に「わからない」と発言することが減った。

○-4以下の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・図工の時間に同じ班の男子に馬鹿にされて嫌なことがあった。

・近くの席の子が苦手。

○授業のようす

・1学期は前向きに授業に取り組んでいたが、集中できない場面が何度か見られる。

・特に算数で、全体の中で授業について行けていない。

③承認得点について

○承認得点の変化

得点変化 -4以下 -3~-2 -1~+1 +2~+3 +4以上

人数 4人 5人 7人 7人 3人

○+4以上の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

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- 学級経 10 -

○インタビュー

・家庭科や理科の細かい作業のときに、クラスの子が自分を頼ってくれてうれしかったこ

とがある。

・友だちから褒められてうれしかった。

・班の子からいろいろなコメントがもらえてよかった。付箋の「いいね」という一言がう

れしかった。

・自分の考えをしっかり友だちに説明することができ、それをみんなが付箋のコメントで

たくさん褒めてくれてうれしかった。

・特に、○○さんに、自分のアイデアを付箋で褒められて、うれしかった。(複数人)

・勉強がわかるようになってきた。

○授業のようす

・算数の時間に、いろいろな考え方を自分で発見して自信をつけていた。

・授業で前よりも自分から発表できるようになった。

○-4以下の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・算数の勉強が難しい。

・自分は目立てないけど、仲のよい友だちが目立っていて複雑な気持ちになった。

○授業のようす

・友だちと関係のない話をして注意されることが増えた。

・わからない問題があると諦めてしまうことが多くなった。

(6)考察(成果○と課題●)

① hyper-QUの児童の変容について(個と集団から)<被侵害得点の変化から>

○教師の発問に対し間違いを言える雰囲気作りは、人間関係を良好にし、被侵害得点を

下げることに有効である。

・「授業中に間違うことはよいこと」という雰囲気作りを行い実践をしてきたことで、

「間違うこと」は、他者から侵害されないと児童に理解させることができたことに起

因すると考える。また、児童のインタビューに「図工の時間に同じ班の男子に馬鹿に

されて嫌なことがあった。」とあり、児童は、馬鹿にされることで侵害されたと感じ

たことで被侵害得点を上げたと考える。

○友だちとの人間関係が円満な児童は、授業にも前向きに取り組み、被侵害得点が向上

する。

・児童同士の人間関係が円満であることで、児童は学習に協同して取り組むことが容易

となったことで、学習意欲の向上に効果があったと考えられる。児童のインタビュー

に「1学期よりも男子とのトラブルが減った。友だちとケンカをしなくなった。」と

あり、トラブルの減少によって侵害されない関係を意識できたと考える。さらに、「友

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- 学級経 11 -

だちがすごいアイデアを考えていてすごかった。」とインタビューにあるように承認

へと変容が見られた。

●学校生活で不満や不安を抱える児童は、授業内の手立てだけでは被侵害得点を向上さ

せることは困難である。

・学校生活全般における人間関係が授業に影響を及ぼしている。授業中の手立ては、授

業以外のトラブル解消のきっかけになることもあると考える。授業と学校生活相互の

手立てが向上させるために必要である。

<承認得点の変化から>

○授業において教師や友だちから認められることは、自己有用感が高まり、承認得点を

向上させる。

・授業中にペアやグループで交流させる機会を設けたことは、児童にとって自分の考え

が認められたと感じ、承認得点の向上に起因したと考えられる。さらに、児童は、教

師や友だちからの賞賛の声かけによって、自信をつけることができたと考えられる。

●学習困難児童へのきめ細かな支援、対応が必要である。一斉指導中の支援に加え、別

の時間に個別支援が必要である。

・学習意欲や学力に課題のある児童には、賞賛だけでなく個別対応が必要であると考え

られる。

・積極的に発言することが苦手な児童には、教師側の意図的な指名などにより、発言さ

せる機会を増やすことが必要である。

②自己有用感をはぐくむ授業デザインについて

○机間指導における励ましの声かけは、児童の承認された意識を高め、自己有用感を向

上させることに有効である。

・一つ一つ児童ができたことを賞賛することで、自信をもって学習に取り組ませること

ができた。さらに、児童は、教師や友だちに認められたと実感を伴った理解をするこ

とができると考えられる。

○視覚的に理解できる簡単な問題を提示し、多くの子に発表させたことは、児童の学習

意欲を向上させ、承認意識を高めることに有効である。

・授業の導入で、スライドを用いて簡単な問題を提示し、普段答えに自信のない児童で

も積極的に発表させることができた。学習に対し苦手意識のある児童にとって、意欲

的な取組は、他者からの承認も変化が見られることが推測される。

○友だちの考えのよさを書かせ交流させることは、承認意識を高めることに有効である。

・授業中に付箋等を用いて友だちからの賞賛のコメントを交流させることで、たくさん

のコメント紙が視覚的に理解され、児童が友だちから認められたと感じることに効果

があったと考えられる。

●発表することに自信がもてない児童には、簡単な問題を提示するだけでなく、意図的

に発表する機会を与える等、工夫が必要である。

●学習に対し、児童が自信をもった取組ができるように、学習内容をしっかりと身につ

けさせることが必要である。そのため、低位の児童には、授業中、授業外の両方で個

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- 学級経 12 -

別の対応など工夫が必要である。

2 桐生市立新里東小学校 6年生社会科の実践

平成28年11月15日(火)第3校時 6年2組教室

(1)単元名 世界に歩み出した日本

(2)単元の目標

<理解態度>日清・日露戦争、条約改正、科学の発展やそれらにかかわる人物の働きを

理解し、我が国の国力が充実し、国際的地位が向上したことや、それによって人々の生活

や社会が変化したことがわかるとともに、それらにかかわる人物の願いや働きを考えよう

とする。

<能力>日清・日露戦争、条約改正、科学の発展やそれらにかかわる人物の働きから学

習問題を見いだし、調べたことをまとめ、我が国の国力が充実し、国際的地位が向上した

ことやそれらにかかわる人物の願いや働きについて思考・判断したことを適切に表現す

る。

(3)学習(指導と評価の計画)(全6時間予定)

時 学習活動 指導上の留意点及び支援 評価項目【観点】(方◎ hyper-QU の不満足群・非承認群へ 法)の支援

1 ○紡績工場の写真や資料 ○紡績工場で働いている女性、鹿鳴館 【関意態】・年表を見て、気づいた でダンスを踊っている女性を見比べ、 日本の産業の発展やことを話し合う。 同じ時代にいろいろなことがあったこ 外国とのかかわりに○「日本の西洋クラブへ とに気づかせる。 関心をもち、進んでの仲間入りをえがいたま ○二つのグラフを比べ、産業の変化と 調べようとしていんが」を見て気づいたこ 発展を読み取らせる。 る。とを話し合う。 ◎グラフや資料をもう一度見て、注意○読み取った資料からわ すべき項目や数字を示し、工業の発展かったこと、疑問に思う を具体的に捉えさせたり、ペアなどで、ことを話し合い学習問題 相談をしたりする時間を作る。をつくる。

2 ○図を見て不平等条約の ○関税自主権がない場合、例えば、外 【技能】内容を話し合う。 国産の安い綿織物に高い関税をかけら 不平等条約が日本に○条約改正に向けた陸奥 れず大量に輸入され、国内産の綿織物 もたらしていた不利宗光の働きや願いを読み は売れなくなる。具体的な例で条約の 益や条約改正に取り取る。 不平等さに気づかせる。 組んだ陸奥宗光の願

◎「関税自主権」「領事裁判権」など、 いや働きを、資料や言葉の意味を全員で確認をしながら進 本文から読み取っめる。 て、まとめている。

3 ○「朝鮮をめぐる日本、 ○風刺画と戦争の地図を比べて、視覚 【思判表】ロシア、中国」の風刺画 的に各国の関係をつかませる。 二つの戦争に勝利しを見て、朝鮮をめぐる三 ○グラフから、二つの戦争の戦死者数 たことが、日本の世国の関係を話し合う。 に注目させ、日本は勝利したものの、 界における地位向上○教科書の本文や資料を 二つの戦争によって多大な損害を受け につながったことを見て、二つの戦争の様子 たことに気づかせる。 考え、ノートなどにや結果を読み取る。 ◎日本の地位向上についてイメージが 表現している。

沸かない児童には、「ことば」を改めて読んだり、ペアで確認をしたりする時間を取りながら進める。

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- 学級経 13 -

4 ○写真や地図を見て、日 ○教科書の写真やグラフから、朝鮮の 【思判表】本が朝鮮の人々にどのよ 人々が日本語を学ばなければならない 医学などの分野で国うなことをして、それを ことになった事実に気づかせ、朝鮮の 際的に活躍した日本朝鮮の人々はどう思った 人々の思いを考える学習につなげる。 人の存在が、国際的のかを考える。 ○人物については、それぞれの業績だ な地位の向上につな○条約改正を果たし、欧 けでなく、願いや努力にも着目させる。 がったことを考え、米諸国と対等な関係を築 ◎条約を改正できた理由について戦争 ノートなどに表現しいたことを調べる。 での勝利や韓国併合という具体的な事 ている。○世界で活躍した日本人 実を取り上げ、日本の国際社会のなかの様子や国内での新しい での地位が高まったことを全員で確認文学や科学の発展につい をする。て調べる。

5 ○産業の発展によって生 ○盛り沢山な内容なので、写真やコラ 【知理】活がどのように変わって ムを参照しながら、本文を丁寧に読ま 産業の発展がさまざきたのかを調べる。 せ、出来事の内容と意味を読み取り、 まな面で人々の生活○人々の民主主義への意 どういう時代であったのかを考えさせ に変化をもたらした識の高まりについて調べ る。 ことをわかっている。 ◎人々がどのような意図をもって運動 る。○カードの( )にそ に取り組んでいたのかを確認しながれぞれ言葉を入れて、そ ら、生活や社会お変化についてグルーの人物と業績についてま プ等で話し合わせる。とめる。○民主主義の広がりについて自分の考えに近い人を選び、ワークシートに理由を書く。また、こうした方がもっと良かったという理由も書く。

6 ○調べてきたことを人物 ○人物とその業績については、その人 【思判表】本 カードに整理してまとめ 物を取り上げた際に調べたことをもと 日本の国力の充実や時 る。それぞれ言葉を入れ に、確認させる。 国際的な地位の向

て、その人物と業績につ ◎書くことが難しい児童は、友達と相 上、それらにともないてまとめる。 談をしてよいことを伝える。 う社会の変化を、人○前時に選んだ人物が同 物の働きや思いと関じ児童同士で集まり、確 連づけ、適切に表現認をして、まとめる。 している。○選んだ人物ごとに全員が発表をする。○それぞれの人物が何をしたか、表にまとめる。

(4)本時

①ねらい

日本の国力や充実による国際的地位の向上や国内での民主主義の広がりについて文章

で表現する。

②授業改善の視点

付箋を使い自分たちの考えをまとめることは、一人一人の意見を尊重するのに有効で

あったか。

③準備(児童)教科書、ワークシート、ふせん、筆記用具

(教師)人物の写真、言葉のカード

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- 学級経 14 -

④展開

学習活動 時間 指導 指導上の留意点及び支援・評価・予想される児童生徒の 形態 ◎努力を要する児童への支援 ◇評価反応 ● hyper-QUの不満足群・非承認群への支援

1本時の学習課題をつか 5 一斉 ○前時まで、日清・日露戦争、条約改正、産業、科む。 学の発展について学習してきたことを確認する。

○日本の国力の充実による国際的地位の向上や国内での民主主義について6人の人物が活躍をしたことを確認する。○6人の人物のつながりを、同じ所と違う所を比べながら考えよう。◎本時の学習に出てくる人物がわかりやすいように、写真を貼る。

民主主義の広がりについて理解を深めよう

2これまでの学習を振り 5 一斉 ○陸奥宗光、東郷平八郎、与謝野晶子、小村寿太郎、返り、それぞれの人物が 野口英世、平塚らいてう、がどんなことを行った人行ったことなどを、確認 物が分かりやすいように、カードや図を使う。する。 ○教科書や資料集も参考にしてよいことを伝える。

◎黒板の言葉や、前時までにノートに書いてきたことを参考に書く。

○陸奥宗光→領事裁判権 ○東郷平八郎→日露戦争勝利 ○野口英世→細菌学○与謝野晶子→詩を作り戦争に対する反対 ○平塚らいてう→選挙権○小村寿太郎→ポーツマス条約、関税自主権

3選んだ人物が同じ児童 10 グル ○同じ人物を選んだ児童同士で集まり、理由を共有同士で集まり、確認をし ープ させて、考えを深めさせる。て、まとめる。 ○考えが書けない児童には、周りの児童が助けてよ

いことを伝え、この後、発表をすることを伝える。○発表しやすいように、机をグループにする。○前時までに書いた付箋を使い、全員が理由を発表の為の紙に書きやすいようにする。(赤の付箋→共感したところ)(青の付箋→もっと頑張ってほしかったところ)○付箋の内容をそれぞれが班の中で発表をする。○班の人の考えについて発表が終わったら、賞賛しあうことを伝える。○同じ考えの付箋は、一つにまとめさせる。◎貼ることが難しい児童は、友達と相談をしてよいことを伝える。◇【思判表】日本の国力の充実や国際的な地位の向上、それらにともなう民主主義の広がりを、人物の働きや思いと関連づけ、適切に表現している。

4それぞれの人物が何を 15 一斉 ○代表者が発表しやすいように、聞く態度を確認し、したか、表にまとめなが 発表が終わったら、友達の考えに賞賛することを伝ら選んだ人物ごとに全員 える。が発表をする。 ○言葉のカードや人物の写真を使い、黒板に関係な

どをまとめる。◎皆で一つの関係図を作るので、助け合いながら完成することを伝える。

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- 学級経 15 -

6本時のまとめをノート 5 一斉 ○本時は、民主主義の広がりについて自分の考えかに書く。 ら人物を選び、理由をまとめたことを確認する。

○様々な分野で活躍した人がいることを確認する。○選択していない人物も活躍したことを確認する。○次時はテストをすることを伝える。

7本時の振り返りをす 5 個人 ○民主主義の広がりと人々の働きについて、自分のる。 考えに一番近い人物を選び、理由を班でまとめるこ

とができたかを振り返りをさせる。よくできた・ふつう・もう少しで、挙手をさせる。

⑤QU授業の様子

授業の成果として、本時は、単元の最後の時間であったが、単元を通して付箋を使って

学習を進めてきたので、スムーズに班ごとにまとめることができた。また、授業の課題と

して、民主主義の広がりについて児童に発表をさせながら各人物の関係図を作っていった

が、つながりについて児童主導で行った所、なかなかまとまらなかったので、教師主導で

行う必要があった。また、発表の声が小さい児童が多かった。

図5 人物ごとに付箋を貼りまとめる① 図6 人物毎に付箋を貼りまとめる②

(5)結果

① hyper-QUの比較とインタビュー結果5月の実施結果と11月の実施結果を比較し、児童の変化について、以下の表にまとめ

る。

②被侵害得点について

○被侵害得点の変化

得点変化 -4以下 -3~-2 -1~+1 +2~+3 +4以上

人数 3人 3人 18人 3人 2人

○+4以上の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

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- 学級経 16 -

・みんなと仲良くできている。

・仲の良かった友達と、更に仲良くなった。

○授業のようす

・どの教科でも、進んで発表をしてクラスの授業を盛り上げてくれている。

・話をよく聞き、真剣な表情で授業に取り組めている。

○-4以下の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・ケガなどで思うように生活ができずに、「めんどくさい」と思うことがあった。

・勉強が嫌いで苦手である。

○授業のようす

・苦手なことや嫌なことがあると、すぐに保健室に行きたいと言う。

・好きな教科と苦手の教科がはっきりとしていて、苦手な教科は下を向いていることが多

い。

③承認得点について

○承認得点の変化

得点変化 -4以下 -3~-2 -1~+1 +2~+3 +4以上

人数 2人 1人 17人 6人 3人

○+4以上の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・友達と仲良く楽しく生活できている。

・けんかなどをしない。

○授業のようす

・宿題を忘れることが多かったが、以前に比べるとやってくることが増えた。

・算数や図工の時間に、おもしろい解き方をしたり、丁寧に絵を描き彫刻刀で作品を作る

ことができた。

○-4以下の児童を対象にしたインタビュー結果と授業のようす

○インタビュー

・休み時間に友達とけんかをしたことがあった。

・友達関係、学習面において普通であった。

○授業のようす

・授業後に質問をするなど、以前よりも学習意欲があるが、隣の席の子とトラブルが多い。

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- 学級経 17 -

・挙手をして発言をすることが少ない。

(6)考察(成果○と課題●)

① hyper-QUの児童の変容について(個と集団から)<被侵害得点の変化から>

○授業中だけでなく休み時間など、友人関係が良好で充実している児童は、被侵害得点

が向上する。

・児童同士の友人関係が良好であることで、授業における課題に、協力的に参加するこ

とが楽しくなったと推察される。さらに、授業における学級の雰囲気作りを、自他の

考えを発表する際、認め合うように支援した結果、児童の発言を増加させることがで

きた。児童の自己肯定感が高まり、被侵害得点を下げたと考えられる。

●友人関係に不安のある児童は、被侵害得点が上がる傾向にある。

・児童のインタビューに「ケガなどで思うように生活ができずに、『めんどくさい』と

思うことがあった。」とあり、けがや身体の不調に起因し、被侵害得点に影響する場

合があった。

●学習に困難な児童、苦手意識や嫌なことから逃避したいと考える児童は、被侵害得点

が上がる傾向にある。

・学習に困難な児童は「苦手なことや嫌なことがあると、すぐに保健室に行きたいと言

う。」「好きな教科と苦手の教科がはっきりとしていて、苦手な教科は下を向いてい

ることが多い。」などが、授業中に見受けられる。個別の支援などきめ細かな対応を

行い、わかる・できた喜びを感得させ、学習に自信をもたせることが必要である。

<承認得点の変化から>

○自己の考えや得意なことについて学級全体で認め合うことを実感できた児童は、承認

得点が向上する。

・承認得点が向上した児童の授業のようすは、「授業の算数や図工の時間に、おもしろ

い解き方をしたり、丁寧に絵を描き彫刻刀で作品を作ることができた。」等が見られ

た。児童は、おもしろい解き方や丁寧に仕上げた作品を認めてもらうことで、自信を

もって学習に取り組み、意欲の向上が図れたと推測される。意欲の向上は承認得点の

向上につながったと考えられる。

●友人関係に不安やトラブルのある児童は、承認得点が減少する傾向にある。

・承認得点が減少した児童は、「席の近い児童とトラブルになり、改善がみられない状

態であった」ことなどから、友人関係のトラブルと承認得点の変化には関係があると

考えられる。

②自己有用感をはぐくむ授業デザインについて

○児童同士で認め合う活動は、自己有用感を向上させることに有効である。

・ペアやグループで話し合う活動を行うことで、児童同士の発言回数が多くなり自信を

もった交流活動につながり、お互いに認められたと容易に感じることができたと考え

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- 学級経 18 -

る。さらに、良い考えやおもしろい考えをした児童を全体で認め合う活動は、考えた

児童だけでなく、周りの児童にもやる気を出させ、認め合うことができることにつな

がった。

・付箋やワークシートを使い学習を進めることで、交流活動が手際よくでき、また交流

活動が再現できるので、児童の意欲を喚起することや見通しをもたせることに有効で

あった。

●授業デザインにおいて、児童主体で学習する場面、教師主体で指導する場面を明確に

する必要がある。

・学習内容に応じて、児童が主体的に学習することで、他者との交流が促進され、自他

の認め合うことにつながると考える。児童の対話的な学びを構築することが必要であ

る。

Ⅵ 研究のまとめ

1 成果

(1)hyper-QUの児童の変容について(個と集団から)<被侵害得点の変化から>

○教師の発問に対し間違いを言える雰囲気作りは、人間関係を良好にし、被侵害得点を

高めることに有効である。

・「授業中に間違うことはよいこと」という雰囲気作りを行い、「間違うこと」は、他

者から侵害されないと児童に理解させる。

○友だちとの人間関係が円満な児童は、授業にも前向きに取り組み、被侵害得点が向上

する。

・児童同士の人間関係が円満であることで、児童は学習に協同して取り組むことが容易

となり学習意欲の向上に効果がある。また、授業における課題に、協力的に参加する

ことが楽しくなると推察される。

<承認得点の変化から>

○授業において教師や友だちから認められることは、自己有用感が高まり、承認得点を

向上させる。

・ペアやグループでの交流は、児童にとって自分の考えが認められたと感じ、承認得点

の向上に起因する。さらに、児童は、おもしろい解き方や丁寧に仕上げた作品を認め

てもらうことで、自信をもって学習に取り組み、意欲の向上が図れたと推測される。

意欲の向上は承認得点の向上につながったと考えられる。

(2)自己有用感をはぐくむ授業デザインについて

○机間指導における励ましの声かけは、児童の承認された意識を高め、自己有用感を向

上させることに有効である。

・児童ができたことを賞賛することで、自信をもって学習に取り組ませることができた。

また、児童は、教師や友だちに認められたと実感を伴った理解ができる。さらに、全

体で認め合う活動は、考えた児童だけでなく、周りの児童にもやる気を出させ、認め

合うことができる。

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- 学級経 19 -

・付箋やワークシートを使い学習を進めることで、交流活動が手際よくでき、また交流

活動が再現できるので、コメント紙が視覚的に理解され、児童が友だちから認められ

たと感じることに効果があった。児童の意欲を喚起することや見通しをもたせること

に有効であった。

○視覚的に理解できる簡単な問題を提示し、多くの子に発表させたことは、児童の学習

意欲を向上させ、承認意識を高めることに有効である。

・授業の導入で、図や絵を用いて簡単な問題を提示し、自信のない児童でも積極的に発

表させる工夫を行った。学習に対し苦手意識のある児童にとって、意欲的な取組は、

他者からの承認も変化が見られることが推測される。

2 課題

(1)hyper-QUの児童の変容について(個と集団から)<被侵害得点の変化から>

●学校生活で不満や不安を抱える児童は、授業内の手立てだけでは被侵害得点を下げる

ことは困難である。

・学校生活全般における人間関係が授業に影響を及ぼしている。授業と学校生活相互の

手立てが必要である。

●学習に困難な児童、苦手意識や嫌なことから逃避したいと考える児童は、被侵害得点

が上がる傾向にある。

・個別の支援などきめ細かな対応を行い、わかる・できた喜びを感得させ、学習に自信

をもたせることが必要である。

<承認得点の変化から>

●学習困難児童へのきめ細かな支援、対応が必要である。一斉指導中の支援に加え、別

の時間に個別支援が必要である。

・学習意欲や学力に課題のある児童には、賞賛だけでなく個別対応が必要であると考え

られる。また、積極的に発言することが苦手な児童には、教師側の意図的な指名など

により、発言させる機会を増やすことが必要である。

●友人関係に不安やトラブルのある児童は、承認得点が減少する傾向にある。

・友人関係のトラブルと承認得点の変化には関係があると考えられる。

(2)自己有用感をはぐくむ授業デザインについて

●発表することに自信がもてない児童には、簡単な問題を提示するだけでなく、意図的

に発表する機会を与える等、工夫が必要である。さらに、低位の児童には、授業中、

授業外の両方で個別の対応など工夫が必要である。

●児童主体で学習する場面、教師主体で指導する場面を明確にする必要がある。

・学習内容に応じて、児童が主体的に学習することで、他者との交流が促進され、自他

の認め合うことにつながると考える。児童の対話的な学びを構築することが必要であ

る。