慢性腎臓病治療のガイドラインと 慢性腎臓病の進行 …...2...
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京都桂病院腎臓内科
田川美穂
慢性腎臓病治療のガイドラインとトピックについて
慢性腎臓病の進行を遅らせるには?
ガイドライン1.血圧を下げる。
目標 <130/80 mmHg
(蛋白尿1g/日以上の患者では<125/75 mmHg)
MDRD study (NEJM 1994: 330, 877-884)
Study 1: GFR 25-55 ml/min, study 2: GFR 13-24 ml/minClosed circle: usual BP control (MAP 107) Open circle: low BP control (MAP 92)
The lower, the better?• Randomized controlled trial
• 1094人のアフリカンアメリカン(18歳から70歳)の高血圧性腎症によるCKD患者(eGFR 20-65 ml/min)
• 降圧目標が140/90 mmHg (standard controlgroup)と130/80 mmHg (intensive controlgroup)の2群にランダムに分けて末期腎不全、Cre倍化、死亡を比較。
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尿蛋白/クレアチニン比>0.22
尿蛋白/クレアチニン比<=0.22
末期
腎不
全/C
re倍
化/死
亡の
累積
発症
率
結論
• 高血圧腎症において降圧目標140/90 mmHgと、130/80 mmHgで腎臓病悪化に差はなかった。
• 蛋白尿のある患者では降圧目標が130/80mmHgの方が腎臓病の悪化が少なかった。
The lower, the better?
私見
• 糖尿病性腎症のようなHyperfiltrationを主体
とした慢性腎臓病では、血圧の厳密なコントロールを。
• 腎血管性の慢性腎臓病のようなIschemiaを主
体とした慢性腎臓病では、降圧目標を少しゆるめに。
慢性腎臓病の進行を遅らせるには?
ガイドライン2.蛋白尿を減らす。
目標 1日尿たんぱく0.5g以下
手段 血圧をまずコントロールする
ACE阻害剤(タナトリル、レ二ベースなど)
ARB(ディオバン、ミカルディス、ブロプレ
ス、オルメテックなど)
ARBと蛋白尿
尿たんぱくの変
化率
月
プラシーボ
イルべサルタン150mg
イルべサルタン300mg
NEJM 2001; 345: 870-878
ARBを投与すると尿たんぱくが40%減少
糖尿病性腎症に対するARBの効果
Creが元の
2倍
になった人
の割
合
イルべサルタン(ARB)
アムロジン(Ca拮抗薬
プラシーボ
NEJM 2001: 345: 851-860
3
糖尿病性腎症に対するARBの効果
NEJM 2001: 345: 851-860
透析
になった人の
割合
アムロジン
プラシーボ
イルべサルタン(ARB)
ARBによって透析になった人が23%減少
NEJM 2001: 345: 851-860
The more, the better ?Combination of ACE-I and ARB?
Lancet 2003; 361: 117-124.
1日蛋
白尿
併用群
ロサルタン(ARB)
トランドラプリル(ACE-I)
ACE-I, ARBの併用で単剤の場合よりさらに蛋白尿が減る。 ACE-IとARBを併用すると腎不全進行を抑える。
Creが
2倍になるか
透析になった患者
の割合
併用群
ロサルタン(ARB)
トランドラプリル(ACE-I)
Lancet 2003; 361: 117-124.
併用とARB単剤の比較
併用とACE-I単剤の比較
併用がよい 単剤がよい
蛋白尿の量
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2008年に開始目標1,850人5年のfollow-up
The more, the better ?Combination of ACE-I and ARB
私見
• ネフローゼ患者の蛋白尿を減らす為には有用。
• Type I DMに伴うDM腎症のようなhyperfiltrationを主体とした慢性腎臓病では積極的に用いる。
• 動脈硬化性病変の強い慢性腎臓病患者では慎重投与、あるいは避ける。
• 今後の研究結果に注目
慢性腎臓病の進行を遅らせるには?
ガイドライン3.食事療法
MDRD studyStudy 1.
1585人のGFR 25-55ml/1.73m2の患者
Study 2.
2225人のGFR 13-24ml/min/1.73m2の患者
Usual-protein diet1.3g/kg/day
Low-protein diet0.6g/kg/day
Usual BP (MAP 107)
Low BP (MAP 92)
Low-protein diet0.6g/kg/day
Very-low-protein diet0.3g/kg/day
Usual BP (MAP 107) 必須アミノ酸のサプリ
Low BP (MAP 92) 必須アミノ酸のサプリ
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MDRD study
実線:low-protein diet点線:usual protein diet
実線:low BP点線:usual BP
3年後の腎機能は有意差なしだが、low protein dietの方がGFRの低下のスロープが後半でゆるやかになっている。
MDRD study
実線:low-protein diet点線:very-low-protein diet
実線:low BP点線:usual BP
有意差なし。
有意差なし。
MDRD study, Long-term Follow-up
AJKD 2006; 48: 879-888
Usual protein dietとlowprotein dietで末期腎不全(透析か移植が必要な状態)に差はなかった。
蛋白制限には本当に意味がない?
蛋白制限には本当に意味はない?
AJKD 2007; 49: 569-580.
患者背景:70歳以上、GFR 5-7 ml/min
non-DM CKD
方法:透析とvery-low-protein diet (0.3g/kg/day,必須アミノ酸のサプリ)に割り付け
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AJKD 2007; 49: 569-580.
CKDに対する蛋白制限について
私見
• 日本人では平均蛋白摂取量が1g/kg/day。
• 特に若年者でのCKDでは、私は蛋白量は1g/kg/dayで栄養指導。
• 過度の蛋白制限は有害。日本人はまじめなので、蛋白制限を指導するとAlbが下がったりする。
• 高齢者で透析の導入をなんとか避けたいと思う患者に対して、尿毒症症状発現を遅らせる意味での蛋白制限には意味がある。
Is it protein or phosphate that reallymatters??
リンが高い方が腎不全への進行が速い。腎機能が悪い人の方がリンが高いのである意味当たり前。
統計学的に腎機能(eGFR)、性別、蛋白尿、血圧などで補正しても、リンが、1mg/dL上るごとに、末期腎不全に至る率が1.84倍になる。 リンが高くなるとACE-Iによる腎保護効果がなくなる。
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1,25 (OH) Vit Dが減少すると、レニン、アンギオテンシン系が活性化され、Klothoを減少させFGF-23を増加させる。その結果1a-Ohaseの活性が低下し、悪循環に陥る。
Klothoは尿細管、副甲状腺で産生され、FGF-23の働きを助ける。
リン/蛋白比< 5 mg/g
リン/蛋白比5-10 mg/g
リン/蛋白比10-15 mg/g
リン/蛋白比15-25 mg/g
リン/蛋白比> 25 mg/g
卵白 子羊の肉鶏もも肉牛肉牛ひき肉鶏むね肉豚肉鱈
大豆鮭蟹ベーグルコッテージチーズ平目ツナニジマス豆腐ビーフジャーキーピーナッツバター全卵
ピーナッツ枝豆クリームチーズカマンベールチーズブルーチーズモッツァレラチーズアーモンドくるみ卵黄小豆
ソーセージ牛乳クリーム
慢性腎不全の進行を遅らせるには?
ガイドライン4.適正な体重を保つ、禁煙するなど生活習慣改善。
慢性腎不全の進行を遅らせるには?
腎臓に悪いことをしない。
• 非ステロイド性抗炎症薬(特に術後や発熱時など)
• 造影剤(どうしても必要な時には前もって輸液などを行い腎臓に与える悪影響を少しでも減らす)
• 市販薬、漢方の中にも腎毒性の物質が多い!
• 脱水の予防
What else can we do?Topics in CKD
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睡眠時無呼吸とCKD
尿酸とCKD
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• 1.35 < Cre <4.50 mg/dL、1日尿蛋白> 0.5 gのCKD患者51人をアロプリノール100-200mg/日投与群と対照群にランダムに振り分け、1年間follow。
• ベースラインにおける尿酸値は
アロプリノール群:9.75 ±1.18 mg/dL
対照群: 9.92 ± 1.68 mg/dL
Cre増
加率
• eGFR < 60 ml/minのCKD患者113人をアロプリノール100mg/日投与群と対照群にランダムに振り分け、2年間follow。
• ベースラインにおける尿酸値は
アロプリノール群:7.9±2.1 mg/dL
対照群: 7.3±1.6 mg/dL
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Isn’t it too good to believe??
尿酸、アロプリノールとCKD
• 高尿酸血症は腎不全進行のリスク因子である。
• 2つのランダム化比較試験でアロプリノールが腎不全の進行を抑える可能性が示唆されている。しかし、両研究とも少人数の研究であり、さらなる研究が必要と考えられている。
• アロプリノールの効果は尿酸を下げることによるのか、抗炎症作用によるのか分かっていない。
アルカリとCKD
アルカリとCKD(Past)
• CKDが進行すると腎からのアンモニア排せつが減少し、代謝性アシドーシスになる。
• 代償をするために骨からリン酸が溶出。
• 代謝性アシドーシスは尿毒症症状(嘔気、嘔吐など)の原因となる。
• 代謝性アシドーシスの治療として、アルカリ(重層、NaHCO3)を投与。
• CrClが15-30ml/min/1.73m2、HCO3 16-20mEq/LのCKD患者134人が対象。
• NaHCO3投与群(600mg3T分3から開始し、HCO3 23mEq/Lを目標に調整)と対照群にランダムに割り付け、2年間follow
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• CKD stage 2の高血圧性腎症の患者120人が対象。
• 対照群、NaCl群(0.5mEq/kg/day)、NaHCO3群(0.5mEq/kg/day)にランダムに割り付け、5年間follow。
CKD stage 1ではHCO3, F+Vで蛋白尿に変化はなかったが、CKDStage 2ではHCO3, F+Vで蛋白尿が同程度減少
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CKD stage 1ではHCO3, F+Vで尿NAGに変化はなかったが、CKDStage 2ではHCO3, F+Vで尿NAGが同程度減少
CKD stage 1ではHCO3, F+Vで尿TGFに変化はなかったが、CKDStage 2ではHCO3, F+Vで尿TGFが同程度減少
NaHCO3とCKD(Now)
• NaHCO3は腎臓でのTGFやエンドセリンの産生を抑えることで、腎の線維化を防ぐ??
• 安価で安全なCKD進行抑制治療として注目!
• カリウムを下げる作用があるので、ACE-I, ARB
を併用しやすい。ビタミン源である生野菜、果物の摂取を可能にする?
So, after all….Guideline is a guideline.What you believe and
what you do isanother thing.