高度蛋白尿と腎機能障害を呈し、糸球体、血管、尿細管周囲に コ … · 症...
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症 例症 例:47歳 男性主 訴:左片麻痺入院目的:腎機能障害・蛋白尿精査加療現病歴:6歳の頃より肥満傾向が出現し、高
校生で100kgとなった(最高体重140kg)健診は受けたことがなかった。
2001年(47歳)7月9日右放線冠の梗塞による左片麻痺で横浜新都市脳神経外科病院に入院。多発性脳梗塞、動脈硬化、高度蛋白尿を指摘された。
T-P5.6g/dl,Alb3.3g/dl,Cre1.7mg/dl,T-cho257mg/
dl,U-Pro+3
同院を退院後、同年8月27日当院紹介受診。T-P6.2g/dl,Alb3.7g/dl,Cre1.6mg/dl,U-Pro5.01g/
dayと腎機能障害・高度蛋白尿を認め、精査加療目的にて10月11日当科入院既往歴:31歳扁桃摘出入 院 時 現 症: 身 長 170cm,体 重 84.2kg
(BMI29,iBW63.6kg),体 温 36.6 ℃ ,血 圧138/78mmHg,脈拍 72/分 ,不整
<頭頚部>舌の左偏位<肺>肺音清<心>第5
肋間胸骨左縁にて収縮期雑音を聴取 ,不整<腹部>平坦、軟、自発痛無し、圧痛無し、
<四肢>左片麻痺 浮腫(-) <眼底>H3S3
鑑別診断1.Amyloidosis
2.クリオグロブリン血症3.良性単クローン性免疫グロブリン血症4.fibrillary glomerulopathy (FGN)
5.immunotactoid glomerulopathy (ITGP)
6.Fibronectin nephropathy
7.collagenofibrotic glomerulopathy
本症例の総括本症例の臨床的な特徴は、肥満・若年からの
高血圧・高度蛋白尿・腎機能障害である。病理組織学的には、非アミロイド性のPAS
好染無構造物質の糸球体・尿細管・血管への沈着を認めた。電顕的にはタンニン酸染色陽性よりコラーゲ
ンと考えられた。
考 案①コラーゲン沈着症の診断は妥当か?②コラーゲンの沈着が糸球体のみでなく、尿細管・間質・血管に見られたが、これは稀か
③本症例の治療をどうするか④本症例の臨床経過を一元的に説明可能か? などについて御教授願いたい。
高度蛋白尿と腎機能障害を呈し、糸球体、血管、尿細管周囲にコラーゲン沈着を認めた一症例
広 瀬 真 中 山 隆 弘 川 上 貴 之小 島 一 郎 加 藤 秀 樹 鈴 木 隆 慈長谷川 毅 井 上 嘉 彦 森 田 博 之吉 村 吾志夫 出 浦 照 国
昭和大学藤が丘病院 腎臓内科 Key Word:高度蛋白尿,肥満,非アミロイド性,PAS陽性物質,コラーゲン沈着
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入院時検査所見(Ⅰ)
尿検査蛋白 (3+)
糖 , (-)
潜血 (-)
硝子円柱2-4/全顆粒円柱1-2/全
蓄尿Ccr 46.3ml/min
U-P 2.46g/day
血算WBC 6900/μ l,
Hgb 12.4g/dl,
Hct 36.6%,
PLT 21.3×103/μ l
生化学T-P 5.6g/dl
Alb 3.3g/dl
BUN 25.2mg/dl
U-A 7.3mg/dl
Cre 1.4mg/dl
Na 144mEq/l
Cl 109mEq/l
K 4.4mEq/l
Ca 8.1mg/dl
P 3.8mg/dl
T-Bil 0.4mg/l
GOT 14IU/l
GPT 38IU/l
LDH 327IU/l
Al-P 185IU/l
ChE 292U/l
Amy 63U/l
CK 76U/l
T-cho 176mg/dl
HDL-cho 24mg/dl
TG 184mg/dl
LDL-cho 99mg/dl
CRP 0.3mg/dl
TIBC 247μg/dl
Fe 66μg/dl
フェリチン 214ng/ml
HbA1c 5.2%
入院時検査所見(Ⅱ)
内分泌検査FT3 3.2ng/dl
FT4 1.31pg/ml
TSH 0.96μ IU/ml
アルドステロン 4.1ng/dl
血中・尿中カテコラミン正常尿中17-OHCS 12.5mg/24hr
尿中17-KS 20.2mg/24hr
尿中遊離コルチゾール 190μg/24hr
<デキサメサゾン抑制試験>コルチゾール 10.4→0.7μg/dl
ACTH 感度以下
免疫血清検査CH50 41.7U/ml
C3 101.1mg/dl
C4 26.1mg/dl
IgG 1050mg/dl
IgA 185mg/dl
IgM 68mg/dl
抗核抗体<40倍抗CLβ2GPⅠ抗体 <1.2U/ml,
抗 ss-DNA抗体 IgG 5.3AU/l
抗ds-DNAIgG抗体 5.7IU/ml
C3d結合免疫複合体 7.1μg/ml
クリオグロブリン(-)
BGA(Room Air)
pH 7.387
PCO2 44.3mmHg
PO2 77.4mmHg
HCO3 26.0mmol/l
BE 0.8mmol/l
凝固系PT 73.5%,
APTT 83.7%,
Fibrinogen 546mg/dl
FDP-E 125ng/ml
入院時検査所見(Ⅲ)
<入院時胸部X線>肺野異常なし ,CTR44.0%
<入院時心電図>PVC(単発 ,monofocal),High voltage
<HolterECG>PVC≒26570beats/day,monofocal
<UCG>normal LV systolic function,EF69%,Tr trivial
<頸動脈エコー >両側ともにcategory 4
<頭部CT>陳旧性脳梗塞あり<上部内視鏡>アミロイドの沈着なし<下部内視鏡>アミロイドの沈着なし<骨髄穿刺>形質細胞は1.0%でmyelomaを疑う所見なし
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図7
討 論 遠藤 どうもありがとうございます。臨床のほうで,ご質問ありますか。高度肥満で,高血圧,脳梗塞の既往があって,ネフローゼなのですね。広瀬 そうですね。ただ,蛋白尿のほうが持続して3g以上というわけではなくて,2g~ 3g前後で,コレステロールも入院中には170前後になっておりますので,ネフローゼかどうかというところはちょっと疑問です。遠藤 ございませんか。臨床からの印象や病理の組織を見て,その印象で何かご質問ありませんか。 さっきの腎臓組織の segmentalのような病変というのは,全体の中にはかなりあるのですか。あと,はっきり結節というような像がなかったような気がするのですが,ほかに結節はありましたか。森田 共同演者の森田と申しますが,DMにたとえていうと,び漫性病変にあるような,小さな segmentの結節性病変というのはかなり目立ったと思います。遠藤 あと,segmentalにもありましたよね。segmentalの sclerosisとnyalinosis。森田 PAS陽性無構造物質の沈着は,一部の糸球体で目立ったことはありますが、100%に近い糸球体でということはありません。遠藤 ほかにございませんか。山口先生。山口 喫煙は。広瀬 喫煙は,1日40本×30年です。遠藤 よろしいですか。では,先に病理の先生にご解説いただいて,またディスカッションにしたいと思います。山口先生,お願いします。山口 【スライド】これは見せていただいたところ,先ほど出ましたように,糖尿病性の糸球体硬化症のdiffuse regionにすごく似ているわけですね。組織学的にはほとんど区別がつかないと思います。糸球体の,毛細血管網が非常に細かくなって,大きな展開をしています。こっち
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はちょっとcollapseして小さいですけれども。やや,mesangiumのmatrixが拡大して,それから,細動脈の硝子化も見られている。【スライド】細動脈の硝子化が非常に強くて,
segmentalなhyalinosisも部分的には出ています。globalにもつぶれてきていると。【スライド】Massonのほうが少しわかりやすいですかね。非常に毛細血管腔というのは細かいのがずいぶん,糸球体全体に大きくなって,それで,ボウマン嚢との癒着を伴うような seg-
mentalな regionがあって,scleroticでもあるし,フィブリンキャップをつくるのかなという感じもあって,ボウマン嚢下にも少しルーズな物質がたまってきていると。ですから,どう見ても糖尿病を考えてしまうのですね。 ただ,最近,obesity associate nephropathyという,100㎏以上ある人ですと,1つはこういう segmentalな病変が出てくると。それから,もちろんfiber filtrationで糸球体が非常に育ってくるということはあるみたいです。capsular
dropみたいな病変もあります。【スライド】似たような,mesangial matrixがだいぶ増えてきています。それで,癒着してcap-
sular drop様の病変ができていますし,日医の先生たちがやっています血管局部の毛細血管の断面が比較的目立ってきているというような所見も,ときには見られるというふうに思います。【スライド】ちょっと薄いのですが,やはり
mesangialな拡大がだいぶ強い。それから,非常に細かな毛細血管腔がたくさんできているという印象です。【スライド】segmentalな病変のところを見ますと,癒着とfibrin cap様のhyalinosis,ここもhyalinosis,このへんもそうだろうと思います。内皮下の蛋白の沈着が非常に目立っているというわけですね。【スライド】それからもう1つ,この人は動脈病変が非常に強いのですね。壁構造は比較的厚くなっています。ただ,もう sclerosisがだいぶ進展してきている。それから,もう1つ
は,内皮下のこういう浮腫状の変化がずいぶん出てきています。hyalinosisとともにmyxoid
なmatrixがちょっと増えているということですね。thrombotic microangiopathyを示唆するようなmalignant hypertensionに近いような,何かそういう病態が少しからんできているのかなという印象を受けます。【スライド】細動脈の病変ですね。もうほとんど内腔がmyxoidなmaterialで,閉塞しています。こういうところもそうです。ほとんど内腔が消失しているわけで,obesityとhypertensionと,両方が非常に腎血管系に負荷がかかっているという1つの証拠だろうと思います。【スライド】これはアルクワタンぐらいのorder
ですが,通常見るアルクワタンにしたら,まず,筋層が非常に肥大しています。内膜の肥厚はまだ大したことはありませんけれども,肥厚したところにもずいぶんコラーゲンが増えてきて,動脈硬化が進展してきているという。おそらく,ある程度,過剰負荷に伴う繊維化だろうと思います。【スライド】先生たちが問題にしているコラーゲンなのですが,基本的には,通常,間質に出てくる普通のコラーゲンのファイバーで,特に異常なものというわけではないように思います。二次的に,こういうように糸球体は,生きた糸球体の電顕がなくてほとんどつぶれてしまった糸球体なのですが,なぜ出したかというと,やはりGBMの瀰漫性にやや厚いかなということで,これはどこまでも糖尿病を示唆する所見。それから,mesangium matrixもややnodularになっているわけです。 最近,「Human pathology」にダナティたちが,idiopathic nodular global sclerosisという新しい,糖尿病がなくて糖尿病とまったく組織学的には区別できない,そういう疾患群を提唱しているわけで,そのリスクファクターとしては,もちろん高血圧とヘビースモーカーということが挙げられているわけです。もしかしたらこの症例はダナティたちが言っている idiopathic nodular
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global sclerosisといったものに相当するものかなと私は思います。以上です。遠藤 どうもありがとうございます。重松先生,よろしくお願いします。重松 【スライド01】だいたい似たような意見になりますけれども,結局この人は非糖尿病性で,かなりコラーゲンに富んだ結節性病変,あるいは,FGS様の病変を糸球体につくって,そして,間質のperitubular capillaryのまわりにも線維症が起こっているという特徴があるわけです。そうなりますと,結局,いま山口先生がおっしゃったように,non-diabeticですから,idiopathicのnodular global sclerosisか,あるいは,obesityに伴うFGSか,そこらへんに絞られてくるだろうということです。【スライド04,05】これは血管性の変化で,動脈硬化がかなり進行して,浸み込み病変,hya-
linosisなんかがある。それから,mesangiumには,かなり軸部のexpansionがあってそれもどうもmatrix優位のexpansionがあるということがわかります。【スライド06】そして,硬化のかたちですけれども,こういうふうな浸み込み病変によって起こってくる変化ですね。それから,全節性硬化になっていますけれども,どうも結節性に硬化が順次進行しているような印象を与える糸球体がある。案外けろっとしているけれども,部分的にmesangiumのexpansionがあるところが見られます。尿細管は,こういうふうに,HE染色のレベルだとむしろTBMが厚くなっているのか,あるいは,lamellationを起こしているのかという感じですが,あまり間質自体に強い線維症があるという印象はどうもないということです。【スライド03,02】Massonでみますと,糸球体に出てくるのは,やはり染みこんだ変化ですね。そういう変化が非常に強く出ております。部分的には,Massonで trichromeの色をよくとって,間質型のコラーゲンが糸球体でも増えているようなところが示唆されます。血管壁にも,やは
り糸球体と同じような染み込み病変がある。こういうところが糖尿病に非常によく似ているわけですけれども,それが臨床的に糖尿病は否定されていますので,そうすると,たばこをそれほどのまない,高血圧もそれほどひどくないということになれば,むしろobesityを伴うFGS
を疑う必要があろうかと思います。【スライド07】それで,これは先ほど山口先生が指されたのと同じところの糸球体ですね。これはhyalinosisといわれるような浸み込み病変がすごく進行しているところです。それから,こういうふうにPAM染色で示しますと,普通typeⅣコラーゲンだと,黒々と染まるのですけれども,間質のコラーゲンだと茶っぽく染まっているところがずいぶんあるということですね。これは,今回問題になった異常なコラーゲンが糸球体に増えているのではないかということにつながっているのだろうと思います。【スライド06】やはり極めつけはこういう病変だと僕は思うのですね。糸球体のこの部分は癒着をして,虚脱型の係蹄があって,病巣を呈しているわけですね。そして,foam cellがここにあるということで,こういうパターンをとってくるとなると,まずobesityに伴うglomerulopa-
thy,FGS類似病変,あるいは secondaryなFGS
ということになってくると思います。 それで,obesityに伴うglomerulopathyというのは,けっこうこのごろ日本でも見られるようになっていると思いますけれども,これは昔,病理の教科書で,cyanotic glomerulopathy
として発見された変化と,ものすごくよく似ているということですね。cyanosisを起こすようなファロー四徴症の子どもではすごいFGS様の病変が出てくることがあるわけです。その場合にも,糸球体には,異常なコラーゲンが,間質型のコラーゲンの出現があるということがありまして,最近はobesityに伴うFGSもcyanotic
glomerulopathyと非常に似た病変であって,やはり肥満による心臓障害とか,鬱血とか,そういうものが糸球体に影響を及ぼしているのでは
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ないかという考え方が出ております。 この方も,一時は140㎏になるような時代もあったということで,かなり強い心臓の負担もあっただろうと思われますので,特別なfibrotic
glomerulopathyとか,そういうものを考える前に,もっと単純にobesityに結びつけた糸球体病変というふうに考えたほうが,この症例については解釈がしやすいのではないかと思いました。以上です。遠藤 どうもありがとうございます。この症例に何かご意見の追加,何かご質問ありますか。藤野 すみません,聖マリアンナ医科大学の藤野と申します。 ちょっと聞き漏らしてしまったのですけれども,脳梗塞で脳外科に入院されたときの血圧というのはどのぐらいだったのでしょうか。広瀬 すみません。そちらのほうが前医に問い合わせたのですが,はっきりわからなかったのですね。藤野 眼底でH3のS3とおっしゃっていたので,そのときの血圧が120以上あれば,一応malignantと か,acceleratedなhypertensionと いう診断がついて,その脳梗塞も血圧によるものという,malignant hypertensionで説明がつく可能性も一応あるということでしょうか。 すみません。あと,蛋白尿を指摘されたのは,今回初めてで,その間は検診とかはされていないのですか。広瀬 検診は受けていなかったです。 脳外科のほうに入院されたときに,こちらのほうではおそらく蓄尿していなかったと思うのですけれども,3+程度の高度蛋白尿を指摘されています。それ以前は,検診は受けていなかったので,経過は不明です。藤野 経過中,その血圧が下がって,かなり早期に蛋白尿は改善されているのでしょうか。こちらに来られたときには2gぐらいだった。広瀬 当院初診時には5gなのですけれども,前医から転院されるときには,すでにACA,RBとカルシウム拮抗薬を内服されていました
ので,当院に来てからは,もう比較的血圧コントロールは落ち着いています。藤野 蛋白尿もそれとともにかなり。広瀬 経時的に下がってきている印象はありませんけれども,当院に来てからは,ばらつきはかなりありますけれども,2g~ 3g前後です。藤野 クレアチニンもいっしょに少し下がったりしたのでしょうか。広瀬 いや,あまり変化はないです。藤野 クレアチニンは変わらない。ありがとうございました。遠藤 ほかにございませんか。森田先生,よろしいですか。森田 タンニン酸染色の電顕は,私たちはしょっちゅうやるというわけではないのですが,数少ない経験のなかからこの症例を見ますと,V型を中心をすると思われるような間質型コラーゲンがかなり見られるように,私たちは思ったのです。通常のFGS,あるいはその他の病態で,これほど密度が高いコラーゲンファイバーが,タンニン酸染色で見られるのでしょうか。密度が異常に高いとすると,やはりコラーゲンが沈着する病態を考えなくてはいけないのではないかと思ったものですから,そこらへんを病理の先生にうかがおうと思ったわけです。山口 特に密度が濃いということはないように思いますけれども。我々,普段だとタンニン酸していないので,非常にわかりづらいのですよね。タンニン酸をやると,確かにコラーゲンが浮き出てきますので,非常に目立って見えてくるわけですけれども,実際に相当腎障害が進んできていますと,あのぐらいの程度のものはいくらでも出てくるだろうと思いますけれども。遠藤 よろしいですか。ほかに。佐藤 すみません。聖マリアンナ医大の佐藤です。コメンテーターの先生にお聞きしたいのですけれども,肥満に伴う腎症,ORGと最近いわれているようですけれども,その病態に補体系の関与が考えられて,抗体で染めるとC3が陽性になったりとか,そういったことがいわれ
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ています。今回の症例では,そういったことがなかったみたいなのですけれども,そのへんはいかがでしょうか。重松 特に肥満傾向が認められるときに出てくるFGSということで,考え方は先ほど言いましたように,cyanotic glomerulopathy類似病変で私たちは循環障害で考えているのです。あまり immunologicalな影響は考えていませんし,特にこのobesityのときのFGSに補体が優位に沈着するということについて,私自身はそれほど関心をはらっているわけではありませんので,ちょっとコメントはできません。遠藤 佐藤さん,それでよろしいですか。ほかにございませんか。吉村先生。吉村 昭和医大の吉村です。病理の先生にちょっとお聞きしたいのですけれども,光顕でPASを見ると,尿細管の周囲に選択的にべたべたと染まって,本当に初めはamyloidosisではないかなと思ったのですけれども,ああいうのはあまり specificではないのでしょうか。山口 基本的に specificではないですね。アミノロイドは,あまりTBMのところにはそんなに出ないです。吉村 私達もamyloidosisではおかしいなと思ってタンニン酸染色の電顕を行いました。確かに,光顕でのコラーゲンの染色に成功していないので,この前の症例とはちょっと違うなという感じは持っているのですけれども。山口 僕の意見は,ダナティたちが言っているidiopathic nodular global sclerosisプラス,obesity
associate nephropathyというふうに考えていますので,重松先生はobesityだけでもしかしたら説明できるだろうというご意見です。遠藤 よろしいですか。ほかにございませんか。いいですか,十分ですか。では,どうもありがとうございます。
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