溶射技術の航空機部品整備における適用と今後の動向 ~「現...

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1 溶射技術の航空機部品整備における適用と今後の動向 ~「現状と今後の課題」~ (株)国際先端技術コンサルティング 代表取締役社長 大坪 利行

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Page 1: 溶射技術の航空機部品整備における適用と今後の動向 ~「現 …otsubo/air001.pdfサーメットの組成の1例としては、TiC-20TiN-15WC-10Mo2C-5Ni が挙げられる。3.航空機部品整備への適用事例

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溶射技術の航空機部品整備における適用と今後の動向

~「現状と今後の課題」~

(株)国際先端技術コンサルティング 代表取締役社長 大坪 利行

Page 2: 溶射技術の航空機部品整備における適用と今後の動向 ~「現 …otsubo/air001.pdfサーメットの組成の1例としては、TiC-20TiN-15WC-10Mo2C-5Ni が挙げられる。3.航空機部品整備への適用事例

航空機部品整備における溶射技術目次

1.はじめに

(溶射作業のイメージ)

(溶射作業現場)

(溶射の歴史)

2.溶射の種類と特徴

(溶射の目的)

(溶射装置)

(溶射用粒子)

3.航空機部品整備への適用事例

(特にジェットエンジン関係)

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4.溶射粒子について(種類)(製法)

5.微粒子という観点からの研究テーマ(装置の選定:HVOF)

(粒度分布の変化)(粒子の流れの制御)

6. その他

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航空機部品整備における溶射技術

3

熱源+流れ

1.はじめに

粉体供給セラミック,サーメット,金属,合金,プラスチック,これらの混合材料自動ハンドコントロール

集塵により回収

噴射

部品

散乱防止板

溶射作業イメージについて

プラズマ,火炎,アーク,レーザー

Gun

キャリアーガスAr,He等(不活性ガス)

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航空機部品整備における溶射技術1.はじめに(つづき)

4

溶射作業現場

写真2

写真1

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航空機部品整備における溶射技術1.はじめに(つづき)

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【溶射の歴史】1909 Dr.M.U.Schoop(スイス)金属溶射法発明,特許出願1914 Dr.M.U.Schoop(スイス)アーク溶射法の開発1920 溶射技術を日本に導入(江沢謙次郎) ガス溶線式溶射,

電気アーク式溶線溶射1937 Schori式粉末溶射ガン発明WWⅡ以後自溶合金の発明1950 Meteco社(粉末式),Norton社(棒式) セラミックのフレーム溶射に成功1952 Linde Air Products社 爆発溶射法の開発1957 Union Carbide社(USA)プラズマ溶射ガンの基本特許1970 福田ら(九州大)ら,線爆溶射法を開発1973 E. Muehlber 7th ITSCで減圧プラズマ溶射を発表1982 J.A.Browning 高速フレーム(HVOF)溶射装置 Jet Koteを開発1989 Meteco社 DJガン(HVOF)を開発1989 J.A.Browning Jガン (高圧HVOF)を開発1991 J.A.Browning エアロ・ジェットガン(HVAF)を開発1994 Northwest Mettech社(カナダ)中心軸粉末供給型プラズマ溶射装置

を開発1994 A.P.Alkimovら(ロシア)のCold Spayの特許が米国で承認

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴

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(溶射の目的)

溶射は高硬度、高強度、耐摩耗、防錆、耐食、耐熱、断熱、導電性、絶縁性などの機能性を基材表面に与えるための表面コーティング技術である。

この技術は日進月歩の発展を続け、大型構造物から小型機械の部品の表面改質に優れた特性を付与させる重要な加工技術となっている。

近年、機械は高速化、長寿命化、そして高安全性などの付加価値が求められているため、機械を構成する部品の表面改質として、溶射加工によるハードフェーシング技術が常用され、全産業分野において、その使用環境に耐え得る表面加工技術として着実に拡大し利用されている。

溶射技術の最大の特徴は親和性の異なる基材と皮膜を結合させることができることである。つまり、ハードフェーシング溶射の一例として金属基材に炭化物、酸化物などの高硬質セラミックスの溶射皮膜が形成できることである。

一方、摩耗した機械部品の修復などのメンテナンス加工技術としても利用でき、世界的に省資源やリサイクルが叫ばれる中で、溶射加工は最適の表面改質加工技術と言える。

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

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(溶射装置)溶射は、金属やセラミックスなどの材料を、さまざまな熱源を用い溶融し、基材表面に吹き付けて、皮膜を作る表面加工技術である。

溶射は、溶射材料を溶融し基材に吹き付けるので、熱源が必要になる。溶射材料を溶融して皮膜を形成する方法は、JIS H 8200(溶射用語)で下記に示すように分類されている。

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

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<出展:ICS社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

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<出展:ICS社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

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<出展:ICS社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

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<出展:ICS社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術2.溶射の種類と特徴(つづき)

12<出展:ICS社提供資料>

サーメット:cermetはceramics(セラミックス)とmetal(金属)からの造語である。1959年にセラミックスよりは靭性の点が少し大きい工具材料として開発されたのが最初である。

金属の炭化物や窒化物など硬質化合物の粉末を金属の結合材と混合して焼結した複合材料で、定義上は「超硬合金」と呼ばれる炭化タングステン(WC)を主成分としたものも含まれるが、これを別のものとして扱うことが多い。サーメットの組成の1例としては、TiC-20TiN-15WC-10Mo2C-5Ni が挙げられる。

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航空機部品整備における溶射技術3.航空機部品整備への適用事例

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<出展:溶射技術 Vol。9 No.2>

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航空機部品整備における溶射技術3.航空機部品整備への適用事例

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<出展:ICS社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術3.航空機部品整備への適用事例

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回転体の周囲部材(ケーシング、シュラウド等)との接触を考慮して、動翼やラビリンス・シールの先端部には、周囲部材の接触面の材質に対して相対的に硬い材料で接触する相手を削り取るアブレイシブ・コーティング(Abrasive Coating)を施す。 これに対し、周囲部材側には相対的に削られやすい材料のアブレイダブル・コーティング(Abradable Coating)が施させれる。

これは、コーティングの硬度の違いにより、ガスタービン駆動時に、回転体の先端部で周囲部材の側を削り取ることによって、チップクリアランスやシール・クリアランスを最小限となるように調整するためのものである。

VTR

PHOTO1

PHOITO2

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航空機部品整備における溶射技術

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4.溶射粒子について

(種類) セラミック,サーメット,金属,合金,プラスチック(製法) 以下を参照

粉末製造法

アトマイズ法

メルストピニング法

回転電極法(PER)

機械プロセス

化学プロセス

ガスアトマイズ法

水アトマイズ法

遠心力アトマイズ法

プラズマアトマイズ法

プラズマREP法

粉砕法

メカニカアロイング法

酸化還元法

自由落下法

高圧法

破砕法

粉砕法

Closed Coupled法

EIGA&PIGA法

塩化物還元法

湿式冶金技術PER=Rotating Electrode Process

EIGA=Electrode Inert Gas Atomization

PIGA=Plasma Inert Gas Atomization

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(装置の選定:HVOF)

プラズマ溶射装置でもよいが、今後の発展性が期待できる上、各種の粒子で実験が可能。また、装置も安価である。

(粒度分布の変化)粒子の組成そのものは「溶射学会」に任せることし、粒子径や粒子形状、粒子構成<分布>によって、付着効率がどう変化するかがポイントと思われる。

(粒子の流れの制御)ノズル形状は「溶射装置メーカー」よってかなり研究されているが、噴射端から被溶射物体までの約10cmの間の空気の流れは研究されていない。かなりの高温になるのでハードルは高いが付着効率がどう変化するかを確認

できると発見がある可能性がある。

注)現状では付着効率は13%~18%と非常に悪い。

論文

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化:計測)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化:計測)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術

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5.微粒子という観点からの研究テーマ(案)

(粒度分布の変化:計測)

<出展:アイシン企業社提供資料>

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航空機部品整備における溶射技術6.その他

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自然の溶射??

以上吸い込まれたか火山灰が燃焼室で解けてタービンベーンに付着する。