高速道路路面管理へのテクスチャの 適用性についての検討 -...

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【土木学会舗装工学論文集 第4巻1999年12月 高速道路路面管理へのテクスチャの 適用性についての検討 七五三野 茂1、 早川 泰史2 1 正会 員 博(工)日 本道路公団 試験研究所 舗装研究室 室長(町 田市忠生1-4-1) 2 正会 員 日本道路公団 試験研究所 舗装研究室(町 田市忠生1-4-1) 高速道路で測定された、SMTD(mm)とBPNを それぞれマクロテクスチャとミクロテクスチャを示す指標として、これま で に得 られてい る研究結果 をもとにテクスチャによ り計算 されたすべ り摩 擦係数 と実測値 の比較を行い、テ クスチ ャの 路面管理への適用性 を検討 した。その結果、次の内容が明らかとなった。(1)密粒系舗装ではテクスチャの適用が可能 であ り、すべ り摩擦の測定値の分布や舗装耐久性を考慮 して管理 目標値を設定できる。(2)半たわみ性舗装については デー タ数 に限 りがあ るが、 テクスチ ャ適用の可能性が あるものと考 え られ る。(3)排 水性舗装 につ いては、 マクロテ クスチャが著 しく大 き く密粒 系舗装 と同様 の方法 でテクスチャを適用す ることがで きなか った。今後、 テクスチャの測 定 ・評価方法 を更 に検討す る必 要が ある。 KeyWords: Macrotexture, Microtexture, Skid Resistance, PDI, SMTD, BPN, Monitor of Pavement 1.は じめ に 高速道路 で は安全 な路面 の確 保 が最 も優先 され る課題 で あ り、舗装路面 のすべ り摩擦 の測 定、管理 はその最 も 基本となるものである。このため、日本道路公団(以 下、 JHと いう)で は2台 の大型のすべ り測定車を所有 し、 全 国の高速道路網 のすべ り摩擦 を定 期的 に測定 、管理 し ている。平成10年 度末の高速道路の総延長は約6,400km に達 し、今後 も車線延長が増加する中で合理的なすべ り 摩擦の測定、管理が必要である。 ところで、 ヨーロッパの幾つかの国々では、すべ り摩 擦 と密接な関係 にあるといわれているテクスチャを路面 管理 の実務 の中に取 り入れ てお り1)2)、テクスチ ャをすべ り摩擦の測定 と合わせて利用することにより効率的な路 面管 理が可能 となる ことは明 らかである。 そ こで、本研 究で はすべ り摩擦 と密接 な関係 のあ るテ クスチ ャに着 目 し、筆 者が これ まで に行 って きたテ クス チ ャ とす べ り摩擦 に関 す る研究 内容 に基 づ き、 テ ク ス チ ャをすべ り摩擦測定 の補助的 手段 と して路面管理 に適 用で きるかを検討 した もの であ る。 なお、対象 とす る舗 装は これ までの経緯 よ り高速道 路上 の密粒 度 アスフ ァル ト混合物を用いた通常舗装であるが、半たわみ性舗装お よび排水性舗装についても検討を試みた。 2.研 究方法 (1)目 的 と手 法 本 研 究 の 目的 は これ ま で の テ ク スチ ャ とす べ り摩 擦 の 関 係 に基 づ き、 テ ク ス チ ャ を用 い て 推 定 した す べ り摩 擦 係数 と実測 によ り得 られたすべ り摩擦係数 を比較す るこ とによりテクスチャによる高速道路の路面管理が可能で あ る か を検 討 す る こ とで あ る。 この 場 合 、 す べ り摩 擦 係 数 の計 算値 と実 測 値 の 間 の 相 関 関 係 を求 め る こ とで は な く、計算値が実測値の測定範囲内でどのように分布 して い る か を 調 べ る こ と に よ りテ ク ス チ ャに よ るす べ り摩 擦 推 定 の適 否 を検 討 す る も の で あ る。 ま た 、 テ ク ス チ ャ に ついては路面管理への適用の観点から、実用的でかつ容 易 な測 定 方 法 に よ り得 られ た もの を用 い る こ と を 前 提 と す る。 なお 、 本 研 究 で 取 り扱 う マ ク ロテ ク ス チ ャ と ミク ロ テ ク ス チ ャはPIARCの 定 義3)に 示 され る 内 容 で あ る。 そのため、マクロテクスチャについては非接触の レー ザ ー を搭 載 したMTM(Mini Texture Meter)に より れ たSMTD(Sensor Measured Texture Dep す る。 これ は 、 従 来 の サ ン ドパ ッチ ン グ な ど の 容 積 法 と 比 べ て 、MTMに よ る測 定 は迅 速 で あ り、 測 定 者 に よ る誤 差 も極 め て 少 な い こ とや 、 これ に よ り得 られ た 平 均 プ ロ ファイル深さはすべ り摩擦 との相関が高い ことなどが指 ―9―

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【土木学会舗 装工学論文集 第4巻1999年12月 】

高速道路路面管理へのテクスチャの

適用性についての検討

七五三野 茂1、 早川 泰史2

1正会員 博(工)日 本道路公団試験研究所 舗装研究室室長(町 田市忠生1-4-1)

2正会員 日本道路公団試験研究所 舗装研究室(町 田市忠生1-4-1)

高速道路で測定された、SMTD(mm)とBPNを それぞれマクロテクスチャとミクロテクスチャを示す指標として、これま

でに得られている研究結果をもとにテクスチャにより計算されたすべり摩擦係数と実測値の比較を行い、テクスチャの

路面管理への適用性を検討した。その結果、次の内容が明らかとなった。(1)密粒系舗装ではテクスチャの適用が可能

であり、すべり摩擦の測定値の分布や舗装耐久性を考慮して管理目標値を設定できる。(2)半たわみ性舗装については

データ数に限りがあるが、テクスチャ適用の可能性があるものと考えられる。(3)排 水性舗装については、マクロテ

クスチャが著しく大きく密粒系舗装と同様の方法でテクスチャを適用することができなかった。今後、テクスチャの測

定 ・評価方法を更に検討する必要がある。

Key Words: Macrotexture, Microtexture, Skid Resistance, PDI, SMTD, BPN, Monitor of Pavement

1.は じめに

高速道路では安全な路面の確保が最も優先される課題

であり、舗装路面のすべり摩擦の測定、管理はその最も

基本となるものである。このため、日本道路公団(以 下、

JHと いう)で は2台 の大型のすべり測定車を所有 し、

全国の高速道路網のすべり摩擦を定期的に測定、管理し

ている。平成10年 度末の高速道路の総延長は約6,400km

に達し、今後も車線延長が増加する中で合理的なすべり

摩擦の測定、管理が必要である。

ところで、ヨーロッパの幾つかの国々では、すべり摩

擦と密接な関係にあるといわれているテクスチャを路面

管理の実務の中に取り入れており1)2)、テクスチャをすべ

り摩擦の測定と合わせて利用することにより効率的な路

面管理が可能となることは明らかである。

そこで、本研究ではすべり摩擦と密接な関係のあるテ

クスチャに着目し、筆者がこれまでに行ってきたテクス

チャとすべり摩擦に関する研究内容に基づき、テクス

チャをすべり摩擦測定の補助的手段として路面管理に適

用できるかを検討したものである。なお、対象とする舗

装はこれまでの経緯より高速道路上の密粒度アスファル

ト混合物を用いた通常舗装であるが、半たわみ性舗装お

よび排水性舗装についても検討を試みた。

2.研 究方法

(1)目 的と手法

本研究の目的はこれまでのテクスチ ャとすべ り摩擦の

関係に基づき、テクスチャを用いて推定 したすべ り摩擦

係数 と実測 により得 られたすべ り摩擦係数 を比較す るこ

とによりテクスチャによる高速道路の路面管理が可能で

あるかを検討することである。 この場合、すべ り摩擦係

数の計算値 と実測値の間の相関関係を求めることではな

く、計算値が実測値の測定範囲内でどのように分布 して

いるかを調べることによりテクスチャによるすべり摩擦

推定の適否を検討するものである。また、テクスチャに

ついては路面管理への適用の観点から、実用的でかつ容

易な測定方法により得 られたものを用いることを前提と

する。 なお、本研究で取 り扱 うマクロテクスチャとミク

ロテクスチャはPIARCの 定義3)に示される内容である。

そのため、マクロテクスチャについては非接触の レー

ザーを搭載 したMTM(Mini Texture Meter)に より測定 さ

れたSMTD(Sensor Measured Texture Depth)に より評価

する。これは、従来のサンドパ ッチングなどの容積法 と

比べて、MTMに よる測定は迅速であり、測定者による誤

差 も極めて少ないことや、これにより得 られた平均プロ

ファイル深さはすべ り摩擦 との相関が高い ことなどが指

―9―

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図-1BPNの 大小別 のPDIと

すべ り摩擦係数の関係

摘 されており勘、ISO標 準5)となるとともに、ASTMの 試験

法 のとして確立されているためである。

また、 ミクロテクスチャについては これ までのところ

直接測定、評価できる測定方法は見当たらないが、 これ

までの研究より振 り子式 スキ ッドテスタにより測定され

たBPN(British Pendulum Number)に より間接的な評価が

可能であることか ら、迅速 さや測定者による誤差などの

多少の課題があるものの、BPNに よ り評価することとし

た。

(2)こ れまでの研究結果

これまで、定置式変位計により詳細に測定 されたプロ

ファイルについてヒス トグラムによる評価を行 うととも

に、 ヒス トグラムより求められた平均プロファイル深さ

の一種である、PDI(Profile Depth Index)と いう指数と

すべ り摩擦係数の関係を分析す ることにより の、すべ り

摩擦係数 とPDIの 間に(1)式 のような関係が得られた8)。

(1)

μ(80):す べ り摩擦係数(測 定速度80km/h)

PDI:ヒ ス トグラムよ り求められた平均プロファイ

ル指数

また、すべ り摩擦へのテクスチャの影響要因を分析す

ることにより、マクロおよび ミクロテクスチャがすべ り

摩擦に与える影響について(2)式 のような関係が得 られ

た8)。

(2)

SP:す べり摩擦係数(測 定速度80km/h)

表-1測 定箇所と舗装種別

SP(PD):マ クロテクスチャに関係 し、タイヤの貫入

深さがすべ り摩擦に影響を及ぼす因子

SR(CN):ミ クロテクスチャに関係 し、タイヤと路面

の接触数がすべり摩擦 に影響を及ぼす因子

Sp(MICT):ミ クロテクスチ ャの形状がすべ り摩擦 に

影響を及ぼす因子

分析の結果、SR(PD)、 即ち、マクロテクスチャの影響

が卓越するが、SR(CN)、 即ち、ミクロテクスチャも影響

を及ぼすことが明らかとなった。Sp(MICT)に ついてはBPN

の大きさによりミクロテクスチャの影響を間接的に評価

できることがわかった。

図-1は 、PDIと すべ り摩擦係数 の関係 において

Sp(MICT)の 影響を示 したものである。▲印は、新たにBPN

の低い個所での測定結果を追加 したものである。バ ラツ

キは大きいものの、PDIが0.9近 傍においてもPDIが1.2

近傍 と同様に、BPNが 小 さい場合は同 じ大きさのPDIに

も係わらず、すべ り摩擦係数が約15%小 さくなる傾向を

示 していることが確認された。

(3)測 定内容

① 測定個所

表-1に 測定個所 と舗装種別を示す。測定個所につい

ては、秋田道以外は供用中の路線である。舗装種別につ

いては、タイプA、Bは 密粒度混合物であり、2 .5mmふ る

い通過量はタイプAが42%程 度、タイプBが45%程 度であ

る。 タイプGは ギャップ粒度混合物であ り、2.5mmふ る

い通過量は38%程 度である。なお、1個 所当たりの測定

延長は200mで ある。

② 測定方法

―10―

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表-2定 置式変位計のレーザーセンサーの仕様

表-3MTMの 仕様

a)すべ り摩擦抵抗の測定(JHS222-1992)9)

すべり摩擦抵抗は、すべ り摩擦測定車(車 輪 ロック方

式)に より測定され、80km/hの 走行時の縦すべり摩擦係

数に換算される。測定は、普通乗用車とほぼ同様の寸法

のラジアルタイヤの前面に散水 して水膜を作 りなが ら約

4kNの 荷重を載荷 して、測定軸及びブ レーキにかかる負

荷を測定 し、その負荷と載荷荷重の比からすべ り摩擦係

数を算出するものである。測定は、キロポス トに従い200m

ごとに3秒 間、外側わだち部中央 にて測定用タイヤを

ロックすることを繰 り返 して行われる。

b)プ ロファイルの測定

表-2に 示す仕様の レーザーセンサーを備えた定置式

変位計によりプロファイルを測定 した。外側わだち部中

央線上に縦断方向に50cmの 範囲を1回 に測定することが

できる。レーザー光のスポット径が約0.1mmで あるから、

1回 の測定で5000点 の(水 平 ・垂直)変 位データが測定

される。プロファイルの測定位置は、200mご とのすべり

摩擦測定個所に合わせて、 この区間の両端及び中央の3

個所とした。

c)マ クロテクスチャの測定4)

表-3に 示す仕様のMTMに よりマクロテクスチャを測

定 した。外側わだち部中央線上に縦断方向に連続的に測

定する。測定 されたデータは、30cmご とにRSM(Root Mean

Square)が 算出され、10mご との平均値 としてSMTD(mm)を

出力する。すべ り摩擦抵抗の測定と同じく外側わだち部

中央にて200m間 の測定を行い、平均値を算出する。

d)ミ クロテクスチャの測定(JHS221-1992)9)

ミクロテクスチャはBPNに より間接的に評価する。BPN

は、高速道路ではすべり摩擦抵抗 を評価するひとつの指

標 として使用 されており、測定は、振 り子式ポータブル

スキッ ドレジスタンステスターによる。BPNの 測定個所

は、プロファイルの測定 と同じ個所である。

図-2 PDIとSMTDの 関係

3.検 討結果

(1)密 粒系舗装におけるテクスチャによるすべ り摩擦係

数の推定

はじめに、ここではこれまでにテクスチ ャとすべ り摩

擦の関係を調べ る際の対象 としてきた、密粒度 アスファ

ル ト混合物 を用いた舗装(密 粒系舗装)に ついて検討す

る。

図-2は 、すべ り摩擦を測定 した区間(66m)に おける密

粒舗装のSMTDの 平均値とPDIの 平均値の関係を示 したも

のである。 この結果より、SMTDとPDIの 間には相関関係

が見られ、両者には(3)式 が成 り立つ。

(3)

筆者のこれまでの研究により、(2)式 の関係をもと

にすべ り摩擦 とテクスチャの関係は(4)式 のように表

す ことが可能である。

(4)

αはミクロテクスチャの程度によって変わ る係数であ

る。図-1に 見られるように、BPN小 のグループのデー

タ数が限 られてお り分布幅 も大 きいが、以降ではBPN大

とBPN小 ではすべ り摩擦が15%程 度異なるものとする。

そこで、(3)式 と(1)式 よりSMTDと すべ り摩擦係数の

関係を示すと、(5)式 が得られる。

(5)

α:ミ ク ロテ ク スチ ャの 影 響 を 示 す 係 数 で 、BPN>60

の場 合、 α=1.0、BPN≦60の 場 合 、 α=0.85

(5)式 に基づきSMTDに よりすべ り摩擦係数を計算 した

ものと、実測 した ものの関係を示 したものが図-3で あ

―11―

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図-3マ クロ及びミクロテクスチャに よるすべ り

摩擦係数の計算値 と実測値の関係

る。なお、平成6年 度 に測定 された密粒系舗装のすべ り

摩擦係数の平均値は0.45で あり、標準偏差は0.07で あ

る。そこで、図中の1:1の 線に平行な破線は標準偏差

の範囲を示 したものである。 マクロテクスチャのみなら

ず ミクロテクスチャを考慮 した場合のすべ り摩擦係数の

計算値は、一部で実測値よりも過小 となるものも見 られ

るが、大部分のものが標準偏差を加味 した範囲内あるい

は破線付近に分布 しており、特に計算値が大きくなるよ

うな偏った傾向は見 られない。

図-4は 、(5)式 のミクロテクスチャの影響を考慮

しない(α=1.0)場 合の計算値 と実測値の関係を示 した

ものである。 この関係よ り、1:1の 線 より下、即ち、

計算値の方が実測値よりも大 きくなるものが多 く、分布

幅 も大きくなっている。 この結果、SMTD、 即ち、マクロ

テクスチャのみのではすべ り摩擦を大 きめに推定 して し

まう傾向があ り、テクスチャによるすべり摩擦の推定が

危険側 となるケースが多くなることがわかる。

以上の結果 より、密粒系舗装においてはSMTDの みでは

なくBPNも 含めてテクスチャを評価することにより、安

全上支障な くテクスチャを路面管理に適用できる可能性

があることがわかった。

(2)半 たわみ性舗装におけるテクスチャによるすべ り摩

擦係数の推定

半たわみ性舗装は、セメントミルクが用いられるため

表面の仕上げの状態によって施工直後のすべり摩擦が低

くなることが多い10)11)。簡易な方法で施工時の路面の状

態を確認することができればその後の対応を適切かつ迅

速に行 うことができる。そこで、2路 線6個 所で実施 さ

れた測定結果をもとに施工直後における半たわみ性舗装

へのテクスチャの適用性について検討 した。なお、供用

後に摩耗 により表面のモルタル分が除去された場合は通

常の密粒系舗装 と同様にテクスチャによるすべ り摩擦係

図-4マ クロテクスチャによるすべり摩擦係数の計算値と実測値の関係

数の推定が可能であると考えられるため、今回の検討対

象としていない。

図-3の ▲印は、(5)式 に基づき5wmとBPNに より半

たわみ性舗装のすべ り摩擦係数の計算値 と施工直後の実

測値の関係を示 したものである。今回の測定結果では、

データ数が限 られ るものの6箇 所中5箇 所のデータが標

準偏差を加えた範囲内に分布 しており、テクスチ ャによ

りすべ り摩擦の状態を推定できることを示 している。

今後、更にデータ数を増や して施工直後の半たわみ性

舗装に対 してすべ り摩擦の推定にテクスチャを適用でき

るか検証する必要がある。

(3)排 水性舗装におけるテクスチャによるすべり摩擦係

数の推定

排水性舗装のマクロテクスチャは密粒系舗装 と比べて

著 しく大 きいため、密粒系舗装用に導かれた(5)式 より

すべ り摩擦係数を推定することは困難である。そこで、

ここではSMTDとBPNを 個別にすべり摩擦係数 と比較する

ことにより、排水性舗装のテクスチャとすべ り摩擦係数

の関係を調べた。今回の測定の対象 となった排水性舗装

(表-1)は 、すべて空隙率が約20%、 アスファル ト量約

5.0%で ある。また、供用前の路線については工事用車両

等によ り舗装表面が多少摩耗 を受けてお り、供用後の路

面状態に比較的近いと思われる個所を選定 した。

図-5は 、BPNと すべ り摩擦係数の関係を示 したもの

である。密粒系舗装に見 られるようにBPNが60を 境にし

てすべ り摩擦係数 の値 に違いが見 られ ない。 また、

図-6はSMTDと すべり摩擦係数の関係を示 したものであ

る。データ数が限 られているものの両者の間には相関関

係が見られ る。なお、この関係にはBPNの 大きさによる

影響は見られない。

今回の測定では、排水性舗装のマクロテクスチャが著

しく大きく、マクロテクスチ ャのすべ り摩擦への影響が

―12―

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図-5高 機能舗装 のBPNと

すべ り摩擦係数の関係図-6高 機能舗装のSMTDと

すべ り摩擦係数の関係

表-4密 粒系舗装のテクスチャ管理目標値の例

卓越 しミクロテクスチャの影響が見られない結果となっ

た。排水性舗装では路面の水膜の形成が密粒系舗装 と異

なることか らミクロテクスチャの影響をほとんど受けず

マクロテクスチャのみで路面管理できる可能性があるが、

SMTDの 測定結果への空隙の影響なども含めて今後更に測

定、評価方法の検討が必要である。

(4)管 理目標値

以上より、密粒系舗装ではSMTDとBPNを 用いてテクス

チャによる路面管理が可能であることが確認された。 こ

こでは密粒系舗装についてテクスチャにより路面管理を

行う場合の管理 目標値について検討 した。

はじめに、すべ り摩擦係数(測 定速度80km/h)に つい

ては平成6年 度の平均値である0 .45を 中心に、標準偏差

0.07の 分布幅を考慮 して、下限を0 .38、上限を0.52と

する。マクロテクスチャの管理 目標値を求める手順につ

いては、まず、図-1よ りすべ り摩擦係数とPDIの 関係

に基づきすべ り摩擦係数からPDIを 求め、次に図-2の

PDIとSMTDの 関係からSMTDを 求め、最後に小数第1位

に丸めた。

表-4に 、密粒系舗装のテクスチャの管理 目標値の例

を示す。()内 の値は、これまでの試験結果より得 られ

た関係(MTD=2.8SMTD+0.36)12)を 基 にサン ドパ ッチン

グにより測定 した平均テクスチャ深 さ(MTD)を 参考までに

示 したものである。ミクロテクスチャの影響が小さい(BPN

≦60)場合、1ラ ンク上のマクロテクスチャの管理 目標値

を適用 しなければならないことがわかる。

これまでの研究ではマクロテクスチャが大きくなって

もタイヤの貫入深 さがそれほど変わ らなくなるためすべ

り摩擦の大 きさは変化 しな くなること8)、 マクロテクス

チャは2.5mmふ るい通過量 との相関関係があるが、必要

以上に粗骨材量を多 くすることはアスファル ト量の減少

を招き、はく離やひびわれなど耐久性低下の原因となる

こと13)などから、マクロテクスチャを必要以上に大 きく

しても効果がない。例えば、ギ ャップ舗装ではひびわれ

などに配慮 して2.5mmふ るい通過量を38%程 度 とした場

合、その時のマクロテクスチャ(SMTD)の 最大値はおよそ

0.5mmで ある12)。すべ り摩擦係数の上限値(0.53)に 対 し

て、上述の手順により求めたSMTDは 最大で0.60と なる

が、舗装の耐久性を考慮 してマクロテクスチ ャの上限値

は0.50程 度 とすることが妥当であると考えられる。

そこで、 ミクロテクスチ ャの影響が普通(BPN>60)の

場合、 マクロテクスチ ャ(SMTD)の 管理 目標値の範 囲は

0.20~0.50mmで あり、 ミクロテクスチャの影響が小さい

(BPN≦60)場 合、マクロテクスチャの管理 目標値の範囲は

0.30~0.50mmと なる。以上より、マクロテクスチャのみ

で路面管理する場合の管理 目標値の範囲は0.30~0 .50mm

となる。平均テクス チャ深さの範囲は0.50~1.0mm

であり、 ドイツにおける高速道路用のマクロテクスチャ

管理 目標値の範囲2)と結果的に同程度 となった。

ただ し、 ここではマクロテクスチ ャについての望まし

い管理 目標値の範囲を示 したものであり、マクロテクス

チャ(SMTD)が0.20kmあ るいは0.30mmを 下回ったか らと

いって即危険な状態ということではない。

―13―

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4.ま とめ

以上、SMTDお よびBPNを それぞれマクロテクスチャ

とミクロテクスチ ャの指標として、テクスチャによるす

べり摩擦係数の計算値 と実測値の比較をとお して高速道

路の路面管理へのテクスチャの適用性について検討 した

結果、以下の内容が明らかとなった。

(1)マ クロテクスチャのみを用いてすべ り摩擦係数を計

算 した値は、実測値よりも大 きく危険側となる場合

が多いが、ミクロテクスチャも考慮することにより

実測値に近い値となる。

(2)密 粒系舗装では、すべ り摩擦係数の測定値の分布や

舗装の耐久性を考慮 して管理 目標値を設定 し、テク

スチャを路面管理に適用することが可能である。

(3)半 たわみ性舗装では、データ数が限られ るが、同様

にテクスチャを路面管理に適用できる可能性がある。

(4)排 水性舗装では、マクロテクスチャの影響が卓越 し

ているためミクロテクスチャの影響がほとんど見ら

れず、密粒系舗装 と同様の方法でテクスチャを路面

管理に適用することはできない。密粒系舗装と比べ

てマクロテクスチャが極めて大きいが、その測定方

法や評価方法について検討が必要である。

5.お わ りに

MTMや 振 り子式スキッドテスタといった機器により容易

に測定されたテクスチャについて、高速道路上の密粒系

舗装の路面管理に適用す ることが可能であることがわか

った。新設あるいは供用中の路面のすべ り摩擦の状態を

推定できるため、すべ り摩擦測定の補助手段 として実務

上で直ちに利用することが可能である。今後は、密粒系

舗装についても更にデータ数を増やすとともに、施工

面積が急速に拡大している排水性舗装について、テクス

チャの測定や評価方法についての検討を進める予定であ

る。

参考文献

1) Design Manual for Roads and Bridges, Volume 7

Pavement Design and Maintenance, The

Department of Transport, U. K., 1994. 1

2) 七五三野 茂、 アウ トバー ンにお ける路面管理 につい て、道

路建設、No.585、1996. 10

3) 土木学会、舗装機 能の評価法 、1992. 5

4) 日本道路協会、舗 装試 験法便覧 別冊 、1996. 10

5) ISO 13473-1:1997, Characterization of Pavement Texture

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Profile Depth, ISO, 1997

6) ASTM E 1845-96, Standard Practice for Calculating

Pavement Macrotexture Mean Profile Depth, ASTM, 1996

7) 七五三野 、 アス フ ァル ト舗装 の テクスチ ャの特性 とす べ り

摩擦へ の影響、舗装工学論文集、第1巻 、土木学会、1996. 12

8) 七五三野 、川 村、高速域 のすべ り摩 擦 に与 えるテクスチ ャ

の影響要因分析、舗装工学論文 集、第3巻 、土木学会 、1998. 12

9) 日本道路公団、 日本道路公団試験法、1992. 4

10) 林 、林 田、光 谷、半 たわみ性舗 装のすべ り抵抗 に関す る実

験的検討、第22回 日本道路会議論文集、1997. 12

11) 早川、七五 三野 、金 田、半たわみ性舗装 の表面処理 に関す

る検討、第23回 日本道路会議論文集、1999. 10

12) 七五 三野 、小 川、川村 、高速道路 にお け るアスフ ァル ト舗

装の テクスチ ャの特徴 とすべ り摩擦への影響、舗 装Vol, 32,

No.6、1997. 6

13) 松崎、佐藤、七五 三野 、寒 冷地 にお けるギ ャップ混合物 の

配合設計手法、ハ イウェイ技術No.7日 本道路公団試験研究

所、1997. 4

A Study on Applicability of Texture to Pavement Surface Monitoring in

Expressways

Shigeru SHIMENO, Yasushi HAYAKAWA

The SMTD(Sensor Measured Texture Depth) measured by Mini Texture Meter and BPN measured by the

British Pendulum were used to estimate the coefficient of skid resistance and the estimated values were compared

the measured skid resistance on expressways to testify the applicability of texture to the monitor of pavement

surface. As the result, followings were made dear; (1)it is possible to apply the texture for monitoring dense-graded

asphalt pavement, (2)it might be applicable the texture for monitoring semi-rigid pavement considering the limited

number of data ,(3) it is not possible to apply the method which is applicable to dense-graded asphalt pavement for

drainage pavement due to the extraordinary large macrotexture and measurement technique.

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