高齢者の「ささえる」スポーツの 普及促進に向けた …...1.週1回以上...

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令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成 2020/05/29 高齢者の「ささえる」スポーツの 普及促進に向けた大規模疫学研究 辻 大士(つじ たいし) 筑波大学体育系 (採択時: 千葉大学予防医学センター) メールアドレス: [email protected]

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Page 1: 高齢者の「ささえる」スポーツの 普及促進に向けた …...1.週1回以上 2.月1~3回 3.年に数回 4.行っていない 「ささえる」スポーツの内容

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成 2020/05/29

高齢者の「ささえる」スポーツの普及促進に向けた大規模疫学研究

辻 大士(つじ たいし)

筑波大学体育系(採択時: 千葉大学予防医学センター)

メールアドレス: [email protected]

Page 2: 高齢者の「ささえる」スポーツの 普及促進に向けた …...1.週1回以上 2.月1~3回 3.年に数回 4.行っていない 「ささえる」スポーツの内容

Japan Gerontological Evaluation Study 2

研究の背景

• 第2期スポーツ基本計画(文部科学省, 2017)では、「する」のみならず「みる」「ささえる」スポーツへの参画人口の拡大を目指している

• 「ささえる」スポーツに着目した研究は、特定の地域・団体における報告に限られている

• 全国規模の疫学調査を基に規定要因や健康指標との関連性を検証した研究は見当たらない

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

研究の目的

全国多市町村の高齢者を対象とした大規模調査を実施し

① 高齢者の「ささえる」スポーツ(=スポーツに関わるボランティア活動)の実態と規定要因を把握する

② 高齢者の「ささえる」スポーツと健康指標との関連性を明らかにする

これにより、高齢者の「ささえる」スポーツの普及促進に向けた定量的な資料を得る

3令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

研究の概要図

4令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

研究の方法(JAGES調査フィールド)

東川町東神楽町美瑛町

苫前町

当別町

余市町

栗山町

十和田市

六戸町

八戸市

南部町

三戸町

五戸町

守口市門真市四条畷市

小坂町

岩沼市

豊中市葛尾村

大洗町

長柄町

睦沢町

市原市

八王子市

新潟市

十日町市

加賀市

松本市

高浜町鳥取市

智頭町

福岡市

松浦市

御船町

九重町

竹田市

臼杵市

津久見市

多可町

神戸市 森町

小山町

さいたま市

八尾市

天理市

生駒市

早川市

中央市

町田市 横浜市

柏市

松戸市

市川市

名古屋市 半田市 碧南市常滑市 東海市 大府市知多市 東浦町 武豊町

愛知県

■ 2019調査協力保険者■過去の協力保険者

JAGES 2013/14

参加市町村数 30 送付数 約19.5万人

回収数 約13.8万人 回収率 約70.8%

JAGES 2016/17

参加市町村数:41 送付数 約30万人

回収数 約20万人 回収率 約69.5%

JAGES 2019

参加市町村数 63

送付数 約36.9万人

回収数 約25.4万人

回収率 約68.9%

(2020年6月時点)

JAGES 2010/11

参加市町村数 31 送付数 約16.9万人

回収数 約11.2万人 回収率 約66.3%

Japan Gerontological Evaluation Study: 日本老年学的評価研究

5令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

研究の方法(JAGES調査票構成)

pp.15-16自治体独自

項目(任意)

自治体が把握したい

事柄の項目(例:地域包括

支援センターの認知・

利用度)

【健康とくらしの調査】

介護予防・日常生活圏域ニーズ調査の拡張版

(A3用紙2つ折り4枚 16ページの冊子)

pp.13-14バージョン別項目

A~Eの5種類

探索的な項目、研究者の関心に

沿った項目

pp.13-14バージョン別項目

A~Eの5種類

探索的な項目、研究者の関心に

沿った項目

pp.13-14バージョン別項目

A~Eの5種類

探索的な項目、研究者の関心に

沿った項目

pp.13-14バージョン別項目

A~Eの5種類

探索的な項目、研究者の関心に

沿った項目

pp.13-14バージョン別項目

A~Hの8種類

探索的な項目、研究者の関心に

沿った項目

自治体内でA~Hの回答者をランダム

に割り付け

pp.3-12コア項目

ポピュレーションアプローチによる

介護予防に有用であることが先行研究で示された

項目、調整すべき重要項目

健康とくらしの調査

p.1 挨拶・協力依頼p.2 過去の調査でわかったこと

パネル化が可能→ 個人・地域の経時変化がわかる

6令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

研究の方法(JAGES 2019調査項目)コア

身体状況健康状態

生活習慣 罹患 保健行動 BMI転倒状況

心理 うつ 幸福度

社会 ソーシャル・ネットワークソーシャル・サポート

社会経済的地位

年間世帯所得 世帯人数 教育就職(最長職)年金 生活保護

会・グループへの参加

ボランティア スポーツ 老人クラブ 町内会・自治会 趣味他

地域環境 (地域に対する)信頼 互酬性治安 祭り 近所付き合い

外出 外出頻度 交通手段

バージョン

A 認知症へ理解 地域資源、 救急車・インターネットの利用について

B 服薬、医療受診、かかりつけ医、看取りについて

C 睡眠や食事、目や耳の健康、地域活動やサロン活動への参加について

D 口の健康、災害への備え・意識、喫煙習慣

E 日常生活、思想、希死念慮、規範意識、差別について

F 住宅環境、温浴の利用、 生きがい・感謝、仕事・外出・乳製品の習慣について

G 運動の実施状況、スポーツ観戦、運動に対する意識について

H 健康状態、孤立、身体の痛みについてニーズ調査

7令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

高齢者の8%がスポーツボランティアを実践~スポーツボランティア実践者の特徴は?~

図. 特性ごとのスポーツボランティア実践者の割合(24,144人の回答より)

8.0%

10.4%

5.8%

8.0% 8.1%8.4%

5.7%

9.6%

8.1%

5.6%

9.5%8.9%

7.3%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

スポーツボランティア実践者(年数回以上)割合

教育歴 等価所得

男性、誰かと同居、社会経済状況が良好な者で実践者が多い

(収入合計÷√家計を共にする人数)

n = 24144

n = 11659

n = 12485

n = 13531

n = 10613

n = 20322

n = 3576

n = 7408

n = 10584

n = 5558

n = 2582

n = 8551

n = 10253

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研究の結果①

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

「ささえる」スポーツの内容は?~大会・イベントの運営や世話が人気!~

図. スポーツに関わるボランティア活動の内容(実践者1,684人の回答より)

実践割合 ■「ささえる」スポーツの頻度問18-3-1)あなたはこの1年間に平均してどのくらいの頻度で、スポーツの指導やスポーツ大会の運営、自身や家族が所属するスポーツクラブの手伝い(練習や大会での参加者の送迎、参加者の飲料や弁当の準備等)など運動・スポーツに関するボランティア活動を行いましたか。

1.週1回以上 2.月1~3回3.年に数回 4.行っていない

■ 「ささえる」スポーツの内容※上の問で1~3に回答した人に対して

問18-3-2)その活動は具体的にどのような内容ですか。あてはまる番号すべてに○をつけてください。

(選択肢は左図の7項目)

※ 送迎、飲料や弁当の準備、施設の予約・手配、指導や審判の補助役員や会計等、チラシの作成等

34.1%

32.8%

25.3%

19.7%

8.7%

6.4%

13.1%

0% 10% 20% 30% 40%

大会・イベントの運営や世話

スポーツ団体やクラブでの

補助的な活動 ※

スポーツクラブ・団体の

運営や世話

運動・スポーツの指導

スポーツの審判

スポーツ施設の管理の手伝い

その他

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研究の結果②

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

「ささえる」スポーツの内容は?(性別・年代別)

実践割合

36.8%

31.3%

28.2%

22.2%

10.6%

7.3%

11.2%

0% 10% 20% 30% 40%

大会・イベントの運営や世話

スポーツ団体やクラブでの

補助的な活動

スポーツクラブ・団体の

運営や世話

運動・スポーツの指導

スポーツの審判

スポーツ施設の管理の手伝い

その他

35.7%

29.2%

20.1%

15.1%

5.3%

4.6%

16.4%

0% 10% 20% 30% 40%

スポーツ団体やクラブでの

補助的な活動

大会・イベントの運営や世話

スポーツクラブ・団体の

運営や世話

運動・スポーツの指導

スポーツの審判

スポーツ施設の管理の手伝い

その他

35.1%

33.0%

23.5%

19.2%

9.3%

4.2%

13.1%

0% 10% 20% 30% 40%

大会・イベントの運営や世話

スポーツ団体やクラブでの

補助的な活動

スポーツクラブ・団体の

運営や世話

運動・スポーツの指導

スポーツの審判

スポーツ施設の管理の手伝い

その他

32.8%

32.6%

27.7%

20.3%

9.2%

7.9%

13.1%

0% 10% 20% 30% 40%

大会・イベントの運営や世話

スポーツ団体やクラブでの

補助的な活動

スポーツクラブ・団体の

運営や世話

運動・スポーツの指導

スポーツ施設の管理の手伝い

スポーツの審判

その他

実践割合

男性(n = 1081)

女性(n = 603)

前期高齢者(n = 958)

後期高齢者(n = 726)

男性の10.4%が実践 女性の5.8%が実践

前期高齢者の8.0%が実践 後期高齢者の8.1%が実践

図. スポーツに関わるボランティア活動の内容(性別・年代別)10

研究の結果③

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study

スポーツボランティア実践者では健康感が高い~性・年代を問わず一貫した結果~

図. スポーツボランティアの実践状況と主観的健康感(24,144人の回答より)

主観的健康感が“とてもよい”者の割合

実践者では主観的健康感が良好な者が約10%多いn = 24144

n = 11659

n = 12485

n = 13531

n = 10613

n = 20322

n = 3576

n = 7408

n = 10584

n = 5558

n = 2582

n = 8551

n = 10253

14.1%

23.1%

13.4%

22.7%

14.8%

23.9%

15.4%

24.0%

12.5%

22.1%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

非実践 実践 非実践 実践 非実践 実践 非実践 実践 非実践 実践

全体 男性 女性 前期高齢者 後期高齢者

n = 22210

n = 1934

n = 10446

n = 1213

n = 11764

n = 721

n = 1

245

2

n = 1079

n = 9758

n = 855

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研究の結果④

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study 12

研究のまとめ

• 高齢者の8%が「ささえる」スポーツに参画

• 男性、誰かと同居、社会経済状況が良好な者に多い

• 活動内容は、大会・イベントの運営や世話が最多

• 「ささえる」スポーツ実践者は主観的健康感が良好

今後は…

• 各種要因を調整した多変量解析を実施

• 本調査をベースラインとした縦断研究を実施

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

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Japan Gerontological Evaluation Study 13

謝辞

令和元年度健康・体力づくり事業財団健康運動指導研究助成(辻大士)

本研究は下記の団体や皆さまのご協力を得て実施しました

記して御礼申し上げます

• 公益財団法人健康・体力づくり事業財団

• 調査にご協力いただいた市町村の担当者

ならびに調査参加者の皆さま

• 日本老年学的評価研究(JAGES)に関わる研究者

ならびにスタッフの皆さま