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脂質(1)(生化学1) 令和1年6月20日 病態生化学分野教授 山縣 和也

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脂質(1)(生化学1)

令和1年6月20日病態生化学分野教授

山縣 和也

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本日の学習の目標

脂質の種類と特徴について理解する

脂質の運搬について理解する

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• 脂質は生命にとって不可欠の成分エネルギー貯蔵(脂肪組織),生体膜の構成要素,ホルモンやビタミンとして機能,必須脂肪酸

• 脂質は水(極性溶媒)に難溶の有機化合物構造的特徴はない.非極性溶媒(クロロホルム等)にはよく溶ける.

脂質

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主要な脂質

コレステロール

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主要な脂質

コレステロール

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脂肪酸

• 脂肪酸は長い炭化水素鎖をもつカルボン酸

• 多くは直鎖状で,炭素数が偶数の場合が多い

• 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある

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ω3脂肪酸は抗炎症作用をもち、健康に有益αリノレン酸(植物油)、EPA・DHA(魚油)に多く含まれるEPA・DHAはαリノレン酸(必須脂肪酸)からも合成される

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インスリンの作用を抑制

生活習慣病に予防的に作用

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トランス脂肪酸

• 天然の不飽和脂肪酸はシス二重結合で

ある

• トランス脂肪酸は飽和脂肪酸のように

ふるまい、トランス型脂肪酸の摂取は

心臓血管障害のリスクを高める

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主要な脂質

コレステロール

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トリアシルグリセロール(中性脂肪)

3価アルコールのグリセロールと脂肪酸のエステル

主要な貯蔵型脂肪酸

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•脂肪酸は燃料として大切(糖質の酸化で得られるエネルギーの2〜3倍,脂肪細胞に貯蔵)

•脂肪酸はトリアシルグリセロール(TAG)と呼ばれる中性脂質として貯蔵される

• TAGは3炭素であるグリセロールに、3分子の脂肪酸アシル基がエステル結合したもの

• TAGは非常に疎水的で,脂肪細胞内に無水状態で保存される(例,脂肪滴)

•エステルは、カルボン酸(R−COOH,特性基の名称はカルボキシル基)とアルコールが脱水縮合してできた化合物

•カルボン酸エステルの特性基(R-COO-R‘)をエステル結合と呼ぶ

•アシル基:カルボン酸からヒドロキシル基(OH基)を除いた官能基 R-CO-

グリセロール トリアシルグリセロール

トリアシルグリセロール (Triacylglycerol)は

主要な貯蔵型脂肪酸

(トリグリセリド、中性脂肪)

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Fig2-78

脂肪の分解

β酸化

中性脂肪は脂肪酸とグリセロールに分解される。脂肪酸のβ酸化によりATPが産生される。

Lipase

β-oxidation

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主要な脂質

コレステロール

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• ステロイドはイソプレノイドの一種.炭素5個のイソプレンに由来し、シクロペンタノペルヒドロフェナントレン(ステロール核) 誘導体

• A,B,Cという三つの六員環と,Dという五員環の計四つの環が縮合した基本骨格をもつ

ステロイド Steroid

(実体モデル)

• コレステロールはステロイドホルモン、性ホルモン、ビタミンDや胆汁酸の前駆体

• 細胞膜や血清リポタンパク質の主要構成成分

• ステロールの一種(C-3にヒドロキシ基をもつ)

• OH基のためにわずかに両親媒性

イソプレン

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CO

CH2OH

OH

O

OH

コルチゾール

COOH CHO

アルドステロン

CH2OH

O

OH

テストステロン(アンドロゲン)

細胞膜の構成成分 ホルモン合成の前駆体

コレステロールCholesterol in plasma membrane

Cortisol

Aldosterone

Testosterone

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高コレステロール血症と動脈硬化

血清コレステロールの濃度が高いと心臓の酸素を供給する血管に動脈硬化がおこり、血管内腔の狭窄がおこると狭心症や心筋梗塞(虚血性心疾患)が発症する

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- 重要なコレステロールの2つの供給源 -

体内でアセチルCoA

から合成食事で摂取

卵、いくら、うなぎ、レバー、しらす、いか、うに、カステラ、ケーキ

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コレステロール合成経路(肝臓)

Acetyl-CoA(アセチルCoA)

Acetoacetyl-CoA

HMG-CoA

Mevalonate(メバロン酸)

Mevalonate-PP

Isopentenyl-PP

Geranyl-PP

Farnesyl-PP

Squalene

Cholesterol(コレステロール)

Dimethylallyl-PP Isopentenyl-

tRNA

Dolichol

cGeranylgeranyl-PP

HMG-CoA Reductase

TransferaseSqualene

Synthase

cis-Prenyl

グルコース、脂肪酸

Statins(スタチン)X

高コレステロールの治療薬

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主要な脂質

コレステロール

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グリセロール 3-リン酸

グリセロリン脂質

グリセロリン脂質

• リン脂質(グリセロリン脂質)は生体膜中で最も多い脂質

•グリセロールを基本骨格としてもつ(グリセロール 3−リン酸の誘導体)

ホスファチジン酸

Xの部分がH。リン脂質合成の出発材料。疎水性の部分と親水性の部分からなる。

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グリセロリン脂質

フォスファチジルコリン(PC)

フォスファチジルエタノールアミン(PE)

フォスファチジルセリン(PS)

H

フォスファチジン酸

生体膜で最も量の多いリン脂質。レシチンともよばれる乳化試薬。

PC細胞膜の外側、PE、PSは膜

の内側に分布している。アポトーシスの進行に伴い、膜の表面にPSが露出し、細胞がマクロファージに貪食される。

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新生児呼吸窮迫症候群

日独医報2012

肺を含ませるのに必要なサーファクタントが欠乏した病気。未熟児で起こりやすく、肺胞が虚脱するため呼吸障害が生後おきる。

ジパルミトイルホスファチジルコリンは代表的なサーファクタントである。

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フォスファチジルイノシトール

グリセロリン脂質

細胞内伝達に重要

インスリン

インスリン受容体

PI3キナーゼ

ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸 (PIP2)

ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸 (PIP3)

インスリン作用を伝達

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• スフィンゴ脂質:スフィンゴシン(C18)が基本骨格(C-4とC-5の間にトランスの二重結合,C-2にアミノ基,C-1とC-3にヒドロキシ基をもつ

• セラミド:スフィンゴシンのC-2のアミノ基に脂肪酸アシル基がアミド結合したもの

スフィンゴ脂質 Sphingolipid

生体膜中でグリセロリン脂質の次に多いのはスフィンゴ脂質である.中枢神経系に多い

セラミドはスフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド)の前駆体

アミド結合

脂肪酸アシル基

骨格はアミノ酸のセリン

スフィンゴシンがアシル化されたもの

パルミチン酸由来

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• スフィンゴミエリン(リン脂質に分類):セラミドのC-1のヒドロキシ基にホスホコリンが結合したもの

• 細胞膜に存在し、特に神経軸索を包むミエリン(鞘)の主成分

ミエリン:神経軸索を取り巻き渦巻き状に重層する膜系で、絶縁体として神経興奮伝導を助けている

スフィンゴミエリンSphingomyelin

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Gaucher(ゴーシェ)病

セラミド グルコース(セレブロシド:セラミド+糖)

セラミド

グルコセレブロシダーゼ(β-グルコシダーゼ)

グルコセレブロシダーゼ欠損症

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Fabry(ファブリー)病

遺伝子変異が原因で細胞内ライソゾーム中の加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA(α-GAL)活性の欠損あるいは低下によって様々な症状が引き起こされる病気。細胞内でα-ガラクトシダーゼA酵素が欠損すると、体内の細胞内に糖脂質が蓄積されるため、進行的な組織障害が起こり、腎機能障害、心肥大、四肢疼痛、角膜混濁、被角血管腫など多彩な臨床症状を呈する。

セラミド グルコース

セラミド

α-ガラクトシドセレブロシダーゼ(α-ガラクトシダーゼ)

ガラクトース ガラクトース

グルコース ガラクトース

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脂質の運搬とリポタンパク質

リポタンパク質は高分子複合体であり、血液中で脂肪の運搬に用いられる。

リン脂質とタンパク質からなる外膜を備えており、疎水性のトリアシルグリセロールとコレステロールエステルの内核を包み込んでいる。

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0.95 1.006 1.019 1.063比重 d [g/mL]

カイロミクロン

(CM)

VLDL IDL HDLLDL

VLDL レムナント

粒子径 [nm] 80 30 26 20 7

CM レムナント

0.95 1.006 1.019 1.063比重 d [g/mL]

カイロミクロン

(CM)

VLDL IDL HDLLDL

VLDL レムナント

粒子径 [nm] 80 30 26 20 7

CM レムナント

リポ蛋白質の種類

VLDL: 超低比重リポ蛋白、IDL:中間比重リポ蛋白、LDL:低比重リポ蛋白、HDL:

高比重リポ蛋白

リポタンパク質(脂質運搬のトラック)にはカイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLがあり、密度の違いによって分離される。

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リポタンパクの役割

コレステロール

血液

総コレステロール

肝臓

腸管

トリグリセリドコレステロール コレステロール

VLDL LDL

HDL

コレステロール

コレステロール

体細胞

コレステロール

組織の細胞や血管壁から余ったコレステロールを拾い集め、肝臓に持ち帰る。

トリグリセリドコレステロール

CM

トリグリセリド

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血漿リポタンパク質

中性脂肪が豊富 コレステロールが多い

腸から肝 肝から末梢 肝から末梢

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食事由来の脂質はカイロミクロンにより運搬される

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VLDLからLDLが産生される

肝臓

末梢組織にコレステロールを運ぶ

リポ蛋白リパーゼ

中性脂肪が分解される

フィブラートにより活性化される

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低HDLコレステロールは動脈硬化を促進させる

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1. パルミチン酸は不飽和脂肪酸である 「 」2. リノール酸は必須脂肪酸である 「 」3. EPAは心血管障害を増加させる作用がある 「 」4. 中性脂肪はグリセロールに2分子の脂肪酸が結合したものである 「 」5. ホスファチジルコリンはグリセロリン脂質の代表である 「 」6. セラミドはスフィンゴ脂質である 「 」7. ゴーシェ病はスフィンゴ脂質の代謝異常で発症する 「 」8. LDLは中性脂肪リッチである 「 」9. カイロミクロンは肝臓から末梢に脂質を運ぶ 「 」10. HDLコレステロールが低いほど動脈硬化になりにくい 「 」11. VLDL中の中性脂肪はリポ蛋白リパーゼにより分解される 「 」

理解の確認のために