肝臓がん(肝細胞がん)...
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肝臓がん(肝細胞がん)の内科的治療 神奈川県立がんセンター
消化器内科 肝胆膵
上野 誠
肝細胞がんの治療の種類
• 局所療法
経皮的ラジオ波焼灼術( RFA)
経皮的エタノール注入(PEI)
• カテーテル治療
肝動脈化学塞栓療法(TACE)
肝動注化学療法(TAI)
• 全身化学療法
• 放射線治療
• 手術
• 肝移植
肝細胞がんの治療の種類
• 局所療法
経皮的ラジオ波焼灼術( RFA)
経皮的エタノール注入(PEI)
• カテーテル治療
肝動脈化学塞栓療法(TACE)
肝動注化学療法(TAI)
• 全身化学療法
• 放射線治療
• 手術
• 肝移植
肝臓がんの治療決定因子
肝機能
がん因子 (数、大きさ、
場所)
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン
肝細胞癌治療アルゴリズム
肝障害度
肝細胞癌
A,B C
単 発 2,3個 4個以上 1~3個 4個以上
3cm以内 3cm超 3cm以内‡
切除 局所療法†
切除 局所療法
切除 塞栓
塞栓 動注
移植 緩和
* 脈管侵襲,肝外転移がある場合には別途記載 † 肝障害度B,腫瘍径2cm以内では選択 ‡ 腫瘍が単発では腫瘍径5cm以内 ※ 脈管侵襲を有する肝障害度Aの症例では肝切除が,肝外転移を有する症例では化学療法が選択される場合がある.
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脈管侵襲,遠隔転移 全身化学療法
腫瘍数
腫瘍径
治療
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン
肝細胞癌治療アルゴリズム
肝障害度
肝細胞癌
A,B C
単 発 2,3個 4個以上 1~3個 4個以上
3cm以内 3cm超 3cm以内‡
切除 局所療法†
切除 局所療法
切除 塞栓
塞栓 動注
移植 緩和
* 脈管侵襲,肝外転移がある場合には別途記載 † 肝障害度B,腫瘍径2cm以内では選択 ‡ 腫瘍が単発では腫瘍径5cm以内 ※ 脈管侵襲を有する肝障害度Aの症例では肝切除が,肝外転移を有する症例では化学療法が選択される場合がある.
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脈管侵襲,遠隔転移 全身化学療法
腫瘍数
腫瘍径
治療
局所療法ー経皮的ラジオ波焼灼術
原理:電極の先端から周囲組織にRF波の交流が流れ組織中のイオンが変動し摩擦熱が発生、組織の凝固を引き起こす。 局所治療のほとんどを占める
治療針
経皮的ラジオ波焼灼術の実際
熱を発生させる.
針を冷やす
超音波像
経皮的ラジオ波焼灼術の特徴と限界 • 対象:肝機能良好・単発あるいは(3個以内)
大きさは約3cmまで.それ以上の大きさでは手術が第一選択
• 特徴:12分で終了.手術に比較し低侵襲
• 合併症:出血,疼痛
• 限界:穿刺不可能な場所がある.
胆嚢,腸管と接する部位は穿孔のリスクあり
肝門部は胆管損傷のリスクあり
経皮的ラジオ波焼灼術の効果
治療前 治療後
手術との比較
手術 根治性が高い 肝機能良好例 侵襲は大きい
ラジオ波 根治性はやや劣る
肝機能低下例でも可 侵襲は少ない
ラジオ波と手術を比較する臨床試験が進行中
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン
肝細胞癌治療アルゴリズム
肝障害度
肝細胞癌
A,B C
単 発 2,3個 4個以上 1~3個 4個以上
3cm以内 3cm超 3cm以内‡
切除 局所療法†
切除 局所療法
切除 塞栓
塞栓 動注
移植 緩和
* 脈管侵襲,肝外転移がある場合には別途記載 † 肝障害度B,腫瘍径2cm以内では選択 ‡ 腫瘍が単発では腫瘍径5cm以内 ※ 脈管侵襲を有する肝障害度Aの症例では肝切除が,肝外転移を有する症例では化学療法が選択される場合がある.
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脈管侵襲,遠隔転移 全身化学療法
腫瘍数
腫瘍径
治療
カテーテル治療 • 肝動脈化学塞栓療法
• 肝動注化学療法
がんナビ 肝がんとともにより引用
原理:肝細胞がんに栄養を送っている動脈に抗がん剤を局所投与して腫瘍を縮小させるとともに,薬剤によって動脈にふたをして,がんを兵糧攻めにして壊死させる治療.
カテーテル
肝動脈化学塞栓療法の実際
塞栓前 塞栓後
肝動脈塞栓化学療法の特徴と限界
• 対象:
肝機能良好,多発病変
腫瘍径は問わない
• 特徴:
肝臓全体を治療域とすることが可能.
• 合併症:
発熱,肝機能低下,塞栓症,出血
限界: 治療を繰り返すことで肝動脈が消失あるいは,他の動脈から腫瘍が栄養される.
肝動脈化学塞栓療法の症例
治療前
血管造影像
肝動注化学療法
• 門脈浸潤を伴う進行肝細胞がんなどで,塞栓は行わず,化学療法(抗がん剤のみ注入)を行う場合がある.
• 使用薬剤:シスプラチンが多数
• 門脈浸潤を伴う症例では,通常の塞栓化学療法は不可.
• 近年はネクサバールとの組み合わせが注目されている.
門脈 肝動脈
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン
肝細胞癌治療アルゴリズム
肝障害度
肝細胞癌
A,B C
単 発 2,3個 4個以上 1~3個 4個以上
3cm以内 3cm超 3cm以内‡
切除 局所療法†
切除 局所療法
切除 塞栓
塞栓 動注
移植 緩和
* 脈管侵襲,肝外転移がある場合には別途記載 † 肝障害度B,腫瘍径2cm以内では選択 ‡ 腫瘍が単発では腫瘍径5cm以内 ※ 脈管侵襲を有する肝障害度Aの症例では肝切除が,肝外転移を有する症例では化学療法が選択される場合がある.
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脈管侵襲,遠隔転移 全身化学療法
腫瘍数
腫瘍径
治療
全身化学療法 • 従来の抗がん剤はほとんど効果なし. • ソラフェニブ(ネクサバール®)800mg投与が標準治療と位置付けられる.
全生存率
(%)
ランダム化からの期間 (月)
100
0
75
50
25
0 4 6 8 10 12 14 16 2 1 3 5 7 9 11 13 15 17
ソラフェニブ (n=299) 中央値 : 10.7ヵ月
プラセボ群 (n=303) 中央値 : 7.9ヵ月
ハザード比:0.69 [95% CI:0.55‐0.87] p<0.001 (層別Log‐rank検定)
ソラフェニブの作用機序(分子標的薬の一つ)
RAS
血管内皮細胞など
増殖
移行
血管形成 :
細管形成
VEGFR PDGFR
パラクリン刺激
分化 ミトコンドリア
アポトーシス
腫瘍細胞
VEGF
増殖
生存
ミトコンドリア
HIF
アポトーシス
ERK
RAS
MEK
RAF
核
ERK
MEK
RAF Mcl-1
HGF
EGFR
オートクリン・ ループ
ソラフェニブ ソラフェニブ
HGF=肝細胞成長因子 Avila MA, et al. Oncogene. 25:3866(2006) Liu L, et al. Cancer Res. 66:11851(2006) Semela D, et al. J Hepatol. 41:864(2004) Wilhelm SM, et al. Cancer Res. 64:7099(2004)
FLT‐3/c‐KIT
PDGF
核
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細胞の信号経路の一部を選択的にブロックする. ソラフェニブは,RAFキナーゼとVEGFR, PDGFRをブロックする.
ソラフェニブの効果 患者 (%)
0 1‐2
ソラフェニブ (n=161)
プラセボ (n=164)
ソラフェニブ (n=138)
プラセボ (n=139)
奏効率 (CR + PR) 2.5 0.6 2.2 0.7
SD 77.6 70.1 62.3 64.0
PD 13.7 25.6 23.2 22.3
判定不能 6.2 3.7 12.3 13.0
病勢コントロール率* 46.6 36.0 39.9 26.6
SHARP 試験より引用
治療のパワーとしては,手術,RFA,TACEに劣る.これらの治療の対象とならない症例が適応である.また副作用も無視出来ない.
ソラフェニブの効果
治療前 治療後
ソラフェニブの副作用
• 下痢
• 手足の皮膚反応
• 疲労感
• 発疹
• 食欲不振
• 脱毛
• etc
• 治療効果を維持するには,手足の皮膚反応などをコントロールし,休薬,減量,中止を少なくすることが重要. 角質処理
刺激除去
保湿・クリームの使用
放射線治療
• 従来のエックス線治療は,肝細胞がんには力不足.
• 骨転移による疼痛の緩和治療に用いられていた.
• 近年,粒子線治療が注目されている.
X線 γ線
電子線
負パイ 中間子
陽子 中性子
ヘリウム 炭素 ネオン
シリコン
アルゴン
重粒子線
粒子線
陽子線 炭素イオン線
中性子線 X線,ガンマ線 病巣への集中性
生物学的効果(殺細胞効果)
良い
高い
放射線の種類と特徴
群馬大学 重粒子医科学センター 大野達也先生ご提供
重粒子線治療装置
・ X線と比べて細胞破壊力が強い ・ 良好な線量分布 ・ 先進医療で約300万円 今までのX線治療で
効かなかったがんが治る!
放医研ホームページより
11.2cmの他治療後の再発腫瘍 52.8GyE/4回照射後、病巣はほぼ消失
肝細胞癌の重粒子線治療
線種 : 炭素線 エネルギー : 140 ~ 400MeV/n 照射法 : ワブラー法,スキャニング法 治療室数 : 4室(水平:2室,水平/垂直:2室) 2015年12月治療開始.
重粒子線治療施設のイメージ図
神奈川県立がんセンター
まとめ • 局所療法(経皮的ラジオ波焼灼術)
• カテーテル治療(肝動脈化学塞栓療法)
• 全身化学療法(ソラフェニブ)
• 放射線治療(重粒子線,他.)
様々な治療法を,その時々の病態に合わせて,上手に使い分けていくことが重要である.
ご清聴ありがとうございました.