上部消化管癌における分子異常...②microsatellite instability (msi)...

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77 北里医学 2018; 48: 77-84 Received 4 December 2017, accepted 5 January 2018 連絡先: 細田 (北里大学医学部上部消化管外科学) 252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1 E-mail: [email protected] 上部消化管癌における分子異常 細田 1 ,渡邊 昌彦 2 ,山下 継史 1,3 1 北里大学医学部上部消化管外科学 2 北里大学医学部下部消化管外科学 3 北里大学医学部新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門・先進外科腫瘍学 ゲノム医療の広がりに伴い,癌の発生における分子異常の解明はますます重要になって いる。上部消化管癌に関しては,胃癌,食道癌ともにThe Cancer Genome Atlasプロジェク トの一環としてゲノム解析が行われ,胃癌は大きく次の4サブタイプ,①Epstein-Barr virus (EBV) サブタイプ,②microsatellite instability (MSI) サブタイプ,③genomically stable (GS) ブタイプ,④chromosomal instability (CIN) サブタイプに分類された。また,食道癌は扁平上 皮癌,腺癌に大きく分類されるが,食道扁平上皮癌は3つのサブタイプに分類された。これ らの分類は個別化医療への道しるべとなることが期待されている。サブタイプごとに遺伝子 変異,プロファイルが異なるが,裏を返せばそれぞれのサブタイプにおける“oncogene addiction”が異なる可能性がある。まさにゲノム医療の幕開けとなる“oncogene addictionの解明が目前にせまっている。 Key words: 胃癌,食道癌,分子異常,サブタイプ,ゲノム医療 はじめに 胃癌は世界で4番目に多い癌であり,癌による死亡原 因としては3番目に多く,年間およそ723,100人の患者 が胃癌でなくなっている 1 。ステージIの胃癌は外科切 除または内視鏡切除のみで根治する。一方で,ステー IVの胃癌は集学的治療が行われるが,根治が困難で ある。ステージII/IIIの胃癌に対しては外科切除と術後 化学療法がおこなわれるが,3040%の患者が5年以内 に再発する 2-4 。このことは胃癌が臨床的には不均質な 疾患から構成されること,ひいては,癌細胞の分子的 な特徴がそれぞれ違う可能性があることを示唆してい る。 胃癌発生の分子的な理解により,この複雑な疾患の 患者予後が改善する可能性があり,実際,韓国で行わ れたTOGA studyの結果,HER2遺伝子過剰発現を認め た胃癌患者の予後が,化学療法単独べ,化学療法 HER2抗体であるtrastuzumab加えることで,有意 に改善することが報告された 5 。この臨床研究は胃癌に おける compound marker明された最初報告とい る。これまで,胃癌に対するゲノムレベルの分子 プロファイにより,いくつかのジェィッもしくはエピジェィックな変化が,胃癌にきて いることが分かってきた 6-8 。またThe Cancer Genome Atlas (TCGA) プロジェクトの一環として,胃癌のゲノ ム,プロテーム解析が行われ,胃癌が4つの分子サブ タイプに分類できることが明らかになり,治療ター トになりうる分子が同定された 9 。その分子サブタ イプとは,①Epstein-Barr virus (EBV) サブタイプ, microsatellite instability (MSI) サブタイプ,③genomically stable (GS) サブタイプ,④chromosomal instability (CIN) サブタイプ である (1)一方,食道癌は性に多く,性にると世界で7目に多い癌であり,癌による死亡原因としては6番目に 多い。年間およそ455,800人が食道癌に患し,400,200 人が死亡している 1 。ステージII/III食道癌に対して,では術前化学放射線療法が,日本では術前化学療法 標準治療となっているが 10,11 ,いれの治療でも半数 以上が5年以内に増悪または再発する。たしこの術前 化学放射線療法により30%の患者は理学的に完全 奏功られており,術前治療の果を予できれ ば,より効率的な個別化治療が可能になる。食道癌は 組織学的に大きく2つのタイプ,すなわ食道扁平上皮 (esophageal squamous cell cancer, ESCC) と食道腺癌 (esophageal adenocarcinoma, EAC) に分類される。 トの発癌にはなくとも46個の遺伝子の変異が

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     総  説 北里医学 2018; 48: 77-84 

    Received 4 December 2017, accepted 5 January 2018連絡先: 細田 桂 (北里大学医学部上部消化管外科学)〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1E-mail: [email protected]

    上部消化管癌における分子異常

    細田 桂1,渡邊 昌彦2,山下 継史1,3

    1北里大学医学部上部消化管外科学2北里大学医学部下部消化管外科学3北里大学医学部新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門・先進外科腫瘍学

     ゲノム医療の広がりに伴い,癌の発生における分子異常の解明はますます重要になって

    いる。上部消化管癌に関しては,胃癌,食道癌ともにThe Cancer Genome Atlasプロジェク

    トの一環としてゲノム解析が行われ,胃癌は大きく次の4サブタイプ,①Epstein-Barr virus

    (EBV) サブタイプ,②microsatellite instability (MSI) サブタイプ,③genomically stable (GS) サ

    ブタイプ,④chromosomal instability (CIN) サブタイプに分類された。また,食道癌は扁平上

    皮癌,腺癌に大きく分類されるが,食道扁平上皮癌は3つのサブタイプに分類された。これ

    らの分類は個別化医療への道しるべとなることが期待されている。サブタイプごとに遺伝子

    変異,プロファイルが異なるが,裏を返せばそれぞれのサブタイプにおける“oncogene

    addiction”が異なる可能性がある。まさにゲノム医療の幕開けとなる“oncogene addiction”

    の解明が目前にせまっている。

    Key words: 胃癌,食道癌,分子異常,サブタイプ,ゲノム医療

    はじめに

     胃癌は世界で4番目に多い癌であり,癌による死亡原

    因としては3番目に多く,年間およそ723,100人の患者

    が胃癌でなくなっている1。ステージIの胃癌は外科切

    除または内視鏡切除のみで根治する。一方で,ステー

    ジIVの胃癌は集学的治療が行われるが,根治が困難で

    ある。ステージII/IIIの胃癌に対しては外科切除と術後

    化学療法がおこなわれるが,30〜40%の患者が5年以内

    に再発する2-4。このことは胃癌が臨床的には不均質な

    疾患から構成されること,ひいては,癌細胞の分子的

    な特徴がそれぞれ違う可能性があることを示唆してい

    る。

     胃癌発生の分子的な理解により,この複雑な疾患の

    患者予後が改善する可能性があり,実際,韓国で行わ

    れたTOGA studyの結果,HER2遺伝子過剰発現を認め

    た胃癌患者の予後が,化学療法単独に比べ,化学療法

    に抗HER2抗体であるtrastuzumabを加えることで,有意

    に改善することが報告された5。この臨床研究は胃癌に

    おける compound markerが証明された最初の報告とい

    える。これまで,胃癌に対する全ゲノムレベルの分子

    プロファイリングにより,いくつかのジェネティック

    もしくはエピジェネティックな変化が,胃癌に起きて

    いることが分かってきた6-8。またThe Cancer Genome

    Atlas (TCGA) プロジェクトの一環として,胃癌のゲノ

    ム,プロテオーム解析が行われ,胃癌が4つの分子サブ

    タイプに分類できることが明らかになり,治療ター

    ゲットになりうる分子が同定された9。その分子サブタ

    イプとは,①Epstein-Barr virus (EBV) サブタイプ,

    ②microsatellite instability (MSI) サブタイプ,③genomically

    stable (GS) サブタイプ,④chromosomal instability (CIN)

    サブタイプ である (図1)。

     一方,食道癌は男性に多く,男性に限ると世界で7番

    目に多い癌であり,癌による死亡原因としては6番目に

    多い。年間およそ455,800人が食道癌に罹患し,400,200

    人が死亡している1。ステージII/III食道癌に対して,欧

    米では術前化学放射線療法が,日本では術前化学療法

    が標準治療となっているが10,11,いずれの治療でも半数

    以上が5年以内に増悪または再発する。ただしこの術前

    化学放射線療法により約30%の患者は病理学的に完全

    奏功が得られており,術前治療の効果を予測できれ

    ば,より効率的な個別化治療が可能になる。食道癌は

    組織学的に大きく2つのタイプ,すなわち食道扁平上皮

    癌 (esophageal squamous cell cancer, ESCC) と食道腺癌

    (esophageal adenocarcinoma, EAC) に分類される。

     ヒトの発癌には少なくとも4〜6個の遺伝子の変異が

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    積み重なって起こると考えられており12,エピジェネ

    ティックな原因による発現の変化も発癌に影響を及ぼ

    す。発癌が極めて複雑な要因によりもたらされるにも

    関わらず,ある一つの遺伝子異常を正常化することに

    より癌細胞の増殖が劇的に抑制されることが示されて

    いる。この現象をWeinsteinらは癌遺伝子中毒 (oncogene

    addiction) という言葉で定義した13。例えば,KIT遺伝子

    変異GIST (gastrointestinal stromal tumor) やEGFR遺伝子

    変異非小細胞肺癌は“oncogene addiction”の状態であ

    り,それぞれimatinib,gefitinibによる治療が劇的な効

    果を発揮する14,15。ゲノム解析により上部消化管癌も遺

    伝子変異,エピジェネティックな変異が解明されてき

    たが,どの癌遺伝子の中毒状況かについての検討はほ

    とんどされていない。

     本稿では上部消化器癌である胃癌・食道癌の分子異

    常と治療の関連について,その現状をタイプ別に概説

    する。

    胃  癌

    1. EBVサブタイプ EBVサブタイプはEBウイルス (EBV) 陽性胃癌であ

    る。EBVは二本鎖DNAをゲノムとするヘルペスウイル

    ス科に属するウイルスであり,1964年にEpsteinらによ

    りBurkittリンパ腫培養細胞中に見出された。胃癌にお

    けるEBV陽性割合は9%で16 ,17,EBVサブタイプは

    細田 桂,他

    CDKN2A遺伝子抑制,PIK3CA遺伝子変異が特徴であ

    る。CDKN2A遺伝子は癌抑制タンパクであるcyclin-

    dependent kinase inhibitor 2A (CDKN2A) をコードして

    いる。

     CDKN2Aはp16とも呼ばれ,細胞周期の調整に重要

    な役割をはたしており,その変異は胃癌をはじめ18,19,

    食道癌20,21,膵臓癌22,23など様々な癌の発生リスクを高

    めている。EBV陽性胃癌は高度なCpG island methylation

    phenotype (CIMP) を示し24,CDKN2A (p16) 遺伝子のプ

    ロモーター領域高メチル化が見られたが,MSIサブタ

    イプで特徴的なMLH1遺伝子の高メチル化は見られな

    かった。

     また,PIK3CA遺伝子変異がしばしばおこることも報

    告されている25,26。 PIK3CA遺伝子はphosphatidylinositol

    3-kinase (PI3K) の触媒部のサブユニットであるp110α

    をコードしている。PI3Kは様々なシグナル分子をリン

    酸化し,化学シグナルを細胞内に伝達する反応を引き

    起こす。中でもAktはPI3K経路の主要なエフェクター

    であり,mTORなど下流の分子を介して細胞増殖,遊

    走,浸潤そして血管新生などの様々な機能をつかさ

    どっている。PIK3CA遺伝子の変異はp110αサブユニッ

    トの変化によりPI3Kが制御なくシグナル伝達を行うこ

    とになり,細胞増殖が制御不能となり,様々な癌を引

    き起こす。発現抑制を伴わないPIK3CA遺伝子変異はこ

    のサブタイプの約80%にみられるのに対し,他のサブ

    タイプにおけるPIK3CA遺伝子変異は3〜46%と報告さ

    図1. 包括的分子検索による胃癌サブタイプ分類 (文献9より引用改変)

    EBV陽性胃癌にはPIK3CA遺伝子変異,CDKN2A遺伝子不活化が特徴である。MSIサブタイプ胃癌はMLH1遺伝子の発現が低下している。TP53遺伝子変異はCINサブタイプに集中しており,diffuse typeが少ない。CIMP, CpG island methylation phenotype

  • 79

    上部消化管癌における分子異常

    ル欠失,またはプロモーター領域のメチル化によって

    起こっている41,42。家族性胃癌は全胃癌の約10%を占め

    るといわれているが43,44,その一つがE-cadherinの変

    異・メチル化で生じることがNew Zealandの家系で報告

    された45。E-cadherinはカルシウム依存性細胞接着分子

    であり,細胞膜を貫通する膜タンパク質である。この

    細胞内ドメインは,α-,β-,γ-,そしてp120 cateninを

    介してアクチンと結合し,上皮構造の確立と,細胞極

    性の維持,そして分化に重要な役割を果たしている。

    E-cadherinは細胞間接着以外にも,発癌におけるいくつ

    かのシグナル伝達に関与している。E-cadherinの発現抑

    制により遊走,浸潤能が増し,またE-cadherinの欠失は

    上皮間葉移行 (Epithelial mesenchymal transition, EMT)

    を開始させるシグナルを刺激する46。

     Wnt/β-catenin経路によりβ-cateninの細胞質内濃度が

    上昇すると,β-cateninは核内へ移行し,TCF/LEF1ファ

    ミリーに結合し,Wntターゲット遺伝子であるCD44,

    c-MYC,cyclin D1,MMP7などの遺伝子の発現を促す47。

    これらの遺伝子の活性化により細胞増殖,腫瘍進展が

    促される。E-cadherinはβ-cateninを細胞接着部位にとど

    まらせることで,Wnt/β-catenin経路を抑制し,腫瘍進

    展を防いでいると考えられている。このE-cadherinの異

    常がどのような癌原性に関連しているかの報告は少な

    く,今後の研究が待たれる。

     Rho GTPase経路も胃癌の伸展に関与している。その

    うちRhoA,Rac1,Cdc42が特に詳しく解析されてい

    る48,49。これらの分子は細胞骨格の制御,細胞運動に重

    要な役割を果たすことが知られている50。そのうち

    RhoA遺伝子の活性化は遊走能の亢進を促すが,このこ

    とは遺伝性胃癌に関連したE-cadherinの細胞外ドメイン

    におけるミスセンス変異によっておこることが明らか

    になった51。RhoA遺伝子はdiffuse-type胃癌のうち25%程

    度に機能獲得型変異が起こっていると報告されてお

    り52,GSサブタイプは5FUへの抵抗性が最も高く予後

    不良であるが40,RhoAがこのサブタイプの薬剤開発の

    標的になるかもしれない。

    4. CINサブタイプ CINサブタイプ胃癌は異数体が顕著であり,The

    Cancer Genome Atlasでは胃癌全体の約50%を占め,

    HER2をはじめとした受容体型チロシンキナーゼの部

    分的な増幅がしばしばみられることを特徴としている9。

    このタイプの胃癌は,GSサブタイプ胃癌 (diffuse type

    胃癌) には少ないとされるTP53遺伝子変異が多く9,実

    に71%がTP53遺伝子変異を有していた。Intestinal type

    胃癌が多いのが特徴であるが,intestinal type胃癌のう

    ち,p16,MLH1遺伝子メチル化症例を除いたものが

    CINサブタイプということもできよう。生命予後はGS

    サブタイプに次いで不良であるが,補助化学療法の恩

    恵を最も受ける40。エピジェネティック発癌ではなく

    れている9。PI3K-Akt-mTORシグナル経路をターゲット

    とした薬剤はこのサブタイプにおいて正に oncogene

    addictionに関わっている可能性があり,臨床試験が有

    望である27。

     EBV陽性胃癌の生命予後は良好である28。詳細なメ

    カニズムは不明であるが,細胞障害性CD8+Tリンパ球

    が腫瘍に広範に浸潤することで,癌細胞の根絶を促す

    といった,腫瘍免疫が関係していると考えられてい

    る29-31。EBV陽性胃癌は腫瘍への広範なリンパ球浸潤で

    気付かれることもある。

    2. MSIサブタイプ プロモーター領域のメチル化によりMLH1遺伝子,

    MSH2遺伝子などのミスマッチ修復遺伝子が不活化さ

    れ,このDNAミスマッチ修復システムの障害により引

    き起こされるのがMSIである。中でもMLH1遺伝子の発

    現異常がその70%以上を説明し32,MSIサブタイプは胃

    癌全体に対して約22%を占める9。Lynch症候群は生殖

    細胞変異により,DNAミスマッチ修復システムの障害

    を起こし33, MSIサブタイプの胃癌を発症させる。し

    かし,MSIサブタイプの多くはMLH1遺伝子のCpG領域

    のメチル化異常が原因であり,体性細胞異常を示す。

    すなわち, MSIサブタイプ胃癌はEBVサブタイプ胃癌

    とともに,CIMPとして生じていると考えられている。

     MSIサブタイプの胃癌に対して,周術期の化学療法

    は効果が少ないとする報告がある 3 4。このことは

    choromosome stableであり,核型がdiploidであるためと

    考えられている。一方で,このタイプの胃癌はフレー

    ムシフト変異やミスセンス変異により新しいペプチド

    (neoantigen) が形成され,主要組織適合性複合体 (MHC)

    により免疫系に提示される。そのため,このタイプの

    胃癌に対する有効な治療薬として,nivolumabなどの免

    疫チェックポイント阻害薬の有効性が提唱されてい

    る35,36。ただし,元来生命予後の良い癌であることが報

    告されてきており37-39,われわれの研究室における胃癌

    患者の解析でもこのことを支持する結果が確認されて

    いる (data not shown)。現在nivolumabの術後補助化学療

    法の臨床試験が行われているが,高価な薬剤でもある

    ため,治療効果が高い患者を選別して投与する必要が

    あると考えている。

    3. GSサブタイプ GSサブタイプは組織学的にはdiffuse typeとなり,

    The Cancer Genome Atlasによると胃癌全体の約20%を

    占めた。しかし,日本においてはこのように少ないこ

    とはなく増加傾向にあるといえよう。5FUへの抵抗性

    が最も高く,生命予後は最も悪い40。比較的若年者に

    多い癌で,体細胞性コピー数変化が少ないのが特徴で

    ある。Diffuse type胃癌はE-cadherinの発現抑制が高頻度

    におこっている。この発現抑制は,点突然変異,アレ

  • 80

    ジェネティック発癌をする胃癌であり,大腸癌と同様

    の発癌プロセスをたどって発癌し,慢性炎症によって

    惹起される。 CINサブタイプ胃癌はTP53遺伝子に

    oncogene addictionとなっている可能性があり,p53を標

    的とした治療が有望であるかもしれない。

    5. p53の gain of function (GOF) 野生型p53のcanonical functionには成長停止,アポ

    トーシス,DNA修復がある。細胞周期停止はp53の転

    写標的遺伝子であるp21,14-3-3δ,reprimo遺伝子を介

    して行われる。アポトーシスの過程でBax遺伝子がp53

    により直接的53 または間接的に誘導され,Baxはミトコ

    ンドリア内のcytochrome cを開放し,多くのcaspaseを活

    性化させることでアポトーシスを引き起こす。DNA修

    復はp53によって誘導されるGADD45,XPC,p53 R2遺

    伝子の発現を介して,厳密に調整されている54-56。

     一方で,p53のnon-canonical functionには,オート

    ファジーに関連するDRAM遺伝子57,細胞周期停止とア

    ポトーシスに関連するmiR-34s58,解糖の抑制と酸化的

    ストレスに対する防御に関連するTIGAR遺伝子59,ミト

    コンドリアの呼吸に関連するSCO2遺伝子60,血管新生

    の抑制に関連するBAII遺伝子61など,数多くの標的があ

    るが,それらの詳細なメカニズムはいまだ不明である。

     変異型p53は癌細胞でしばしば過剰発現する62。TP53

    遺伝子の変異は野生型p53の機能消失のみならず,変

    異型p53の発癌性機能獲得 (gain of function, GOF) を引

    き起こす。マウスモデルでは,R175HとR273Hでの変

    異がGOFを介して転移を促進することが確認されてい

    る63-65。GOFを説明するには変異型p53の直接結合する

    パートナーを同定する必要がある。p63やp73がそのよ

    うな分子として同定されており,変異型p53と結合し

    て腫瘍進展に関連している66 (図2)。

     H. pylori感染による胃粘膜の慢性炎症は胃癌におけ

    る癌抑制遺伝子のDNAメチル化に関連していることが

    証明されてきた67。このようなエピゲノムコントロー

    ルは腫瘍の悪性化に関連していることが示されてきて

    いる。p53経路に関連する3つの癌抑制遺伝子 (PGP9.5,

    NMDAR2B,CCNA1) は,胃癌をはじめ,頭頸部癌,食

    道癌などで高度にメチル化を受けている68,69。われわれ

    は,これらの3遺伝子の高度メチル化は,野生型TP53

    遺伝子を持つ胃癌にのみ認められ,変異型TP53遺伝子

    を持つ胃癌には認められないことを報告した70。この

    TP53遺伝子変異/CINサブタイプとCIMP/MSIサブタイ

    プの排他的関係は大腸癌においてもみられる現象であ

    る71。このようなp53経路に関連する遺伝子の高度メチ

    ル化とTP53遺伝子変異は,intestinal type胃癌に多くみ

    られる。

     変異型TP53遺伝子は治療ターゲットともなりうる。

    治療戦略としては,①ゲノム変異によって失われた正

    常p53の機能回復 (PRIMA-1),②p53欠失細胞への直接

    攻撃,③正常p53機能の増強 (Nutlin-3a, RITA),④ウイ

    ルスによるDNA損傷の模倣の4つに大きく分類でき,

    現在臨床試験が行われている。

    食 道 癌

    1. 食道扁平上皮癌 (ESCC) ESCCは中部食道に発生することが多く,喫煙とア

    図2. p53のgain of functionにかかわる分子 (文献84より引用改変)

    変異p53は様々な遺伝子の転写を促進し,そのタンパクと直接結合することで癌進展にかかわる。

    細田 桂,他

  • 81

    ルコール暴露に関連している。E S C CはE S C C 1,

    ESCC2,ESCC3の3つに分類される。

     ESCC1はNRF2経路の変化が特徴である。NEF2L2遺

    伝子 (NRF2) 変異は予後不良であり,化学放射線療法

    への抵抗性と関連している72。ESCC1はアジアの患者

    で多く,アルコール代謝に関連し,遺伝子変異がアジ

    ア人に多いとされるALDH2,ADH1B遺伝子の変異は,

    NFE2L2遺伝子変異と関係があるのかもしれない。また

    SOX2遺伝子とTP63遺伝子の増幅が高頻度に発生して

    いる73 (図3)。同様な体細胞変異は,頭頸部癌,肺扁平

    上皮癌でもみられている74,75。ただし,SOX2遺伝子,

    TP63遺伝子がESCCの伸展にどのようにかかわってい

    るのかはいまだ不明であり,解明が待たれる。

     Sox2はiPS細胞の誘導に必要な4つのいわゆる山中因

    子 (Oct3/4,Sox2,c-Myc,Klf4) のうちの一つで76,胎

    生に必要な様々なシグナル伝達経路に含まれる転写因

    子である。p63はp53ファミリーに属する転写因子であ

    り,TP63遺伝子は2つのisoform (TAp63,deltaNp63) を

    コードしており,deltaNp63は成人の幹細胞制御に関連

    し77,TAp63はアポトーシスに関連している。われわれ

    はステージII/III ESCCに対しDocetaxel/Cisplatin/5FU

    (DCF) による化学療法を施行後に根治手術を行ってい

    るが,SOX2遺伝子,deltaNp63遺伝子の増幅が,組織

    学的奏功度と相関していることを見出している (未発表

    )。すなわち,これらの遺伝子の増幅が見られれば,

    DCFによる術前化学療法の効果があることが予測でき

    る可能性が示唆された。 DCF療法は現在の標準治療で

    あるCF療法に比べて有効であるとされているが,有害

    事象も多く,効果がない患者も存在する78-80。術前化学

    療法の効果を予測できれば患者にとって大きな福音と

    なる。

     ESCC2にはNOTCH1,ZNF750遺伝子変異の割合が高

    く,KDM6A,KDM2D遺伝子の不活化,CDK5遺伝子の

    増幅,そしてPTEN,PIK3R1遺伝子の不活化が多く見

    られた73。遺伝子メチル化におけるESCC1との違い

    は,BST2遺伝子のメチル化がESCC2でより低いことつ

    まりBST2の発現がより高いことが示され,BST2抑制

    という治療の可能性が示唆された。このタイプの

    ESCCは東ヨーロッパ,南米の患者であることが多

    かった。

     ESCC3はPI3K経路の活性化,KMT2D/MLL2遺伝

    子,SMARCA4遺伝子の体細胞変異が見られ,このよ

    うなプロファイルは頭頸部癌では見られず,食道の扁

    平上皮癌のみにみられ,すべて北米の患者であった73。

     胃癌の原因の一つにEBVによる感染があったよう

    に,ESCCの原因の一つにHPVの感染が報告されてい

    る81。ただし,ESCCのmRNAシークエンス解析では

    HPV陽性ESCCのHPV転写レベルはHPV陰性頭頸部癌

    のそれとほぼ同様であった73。 ESCCにおけるHPVの関

    わりはいまだ不明である。

    2. 食道腺癌 (EAC) EACはBarrett食道を母地として発生することが多

    い。そのBarrett食道は胃食道逆流が主な原因である

    が,胃食道逆流症のみではBarrett食道は発生しない。

    Barrett食道の発生には胃酸逆流だけでなく,胆汁酸逆

    流も関与していると考えられている。実際,EACの細

    胞株を胆汁酸で刺激すると細胞増殖能が促進されるだ

    けでなく,山中因子の一つでproto-oncogeneであるc-

    Mycの発現が増加することが報告されている82。

     EACではTP53,CDKN2A,ARID1A,SMAD4,

    ERBB2遺伝子が高頻度に変異している83。CDKN2A遺伝

    子に関しては,EBVサブタイプ胃癌と同様に発現が抑

    制されており,胃癌との類似性が示唆される。また

    ERBB2遺伝子に関しては,CINサブタイプ胃癌におい

    て過剰発現例がみられるが,EACにおいても30%程度

    に過剰発現がみられ,HER2高発現EACには抗HER2抗

    体であるtrastuzumabの効果が期待できるかもしれない。

     EACはESCCよりもむしろ胃癌,特にCINサブタイプ

    胃癌に分子プロファイルが類似している73。ただし,

    図3. 食道癌における,細胞分化に関連するシグナル伝達経路にかかわる遺伝子の体細胞変異 (文献73より引用改変)

    ESCCにおいて,TP63/SOX経路の遺伝子増幅が高頻度にみられる。

    上部消化管癌における分子異常

  • 82

    ヘリコバクターピロリ感染との逆相関や,好発地域の

    違いなどから,EACとCINの胃癌とは何らかの違いが

    あるはずである。

    おわりに

     ゲノム解析により上部消化管癌も遺伝子変異,エピ

    ジェネティックな変異が解明され,ゲノム医療が日本

    でも本格的に始まろうとしている。今後,“oncogene

    addiction”のより詳細な解明により劇的な効果を生む

    分子標的薬剤の開発が待たれる。

    利益相反

     本論文内容に関する著者の利益相反: なし

    文  献

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    細田 桂,他

  • 83

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    上部消化管癌における分子異常

  • 84

    Molecular aberrations in upper gastrointestinal tract cancer

    Kei Hosoda1, Masahiko Watanabe2, Keishi Yamashita1,3

    1Department of Upper Gastrointestinal Surgery, Kitasato University School of Medicine2Department of Lower Gastrointestinal Surgery, Kitasato University School of Medicine3Division of Advanced Surgical Oncology, Department of Research and Development Center for New MedicalFrontiers, Kitasato University School of Medicine

    With the widespread use of genomic medicine, elucidation of the molecular aberration in the cancer developmentis becoming increasingly important. Regarding the upper gastrointestinal tract cancer, genome wide analysiswas performed as part of the Cancer Genome Atlas project for both gastric and esophageal cancers. As a result,gastric cancer was largely divided into the following 4 subtypes: 1. Epstein-Barr virus (EBV) subtype,2. microsatellite instability (MSI) subtype, 3. genomically stable (GS) subtype, and 4. chromosomal instability(CIN) subtype; while esophageal squamous cell carcinoma was classified into three subtypes. Theseclassifications are expected to become a guide to personalized medicine. The gene mutation profile differs ineach subtype, i.e., the causative gene of "oncogene addiction" possibly differs in each subtype. The elucidationof "oncogene addiction" is close at hand, which leads directly into the beginning of genomic medicine.

    Key words: gastric cancer, esophageal cancer, molecular aberration, subtypes, genomic medicine

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    細田 桂,他